2014年03月19日

◆教科書の違いもっと分かれば

澤辺 隆雄


この春から使われる高校教科書の記述を比較した指導資料集を、埼玉県教育委員会がつくった。日本史を中心に世界史、地理、現代社会、政治経済の教科書計60冊の内容を調べたものだ。諸説ある歴史事項など47項目を挙げ、教科書の該当箇所や内容のポイントを整理している。

項目は「邪馬台国の所在地」「豊臣秀吉の朝鮮出兵」「鎖国」「明治維新」「南京事件」「戦後賠償」「自衛隊の国際貢献」「領土をめぐる問題」「拉致問題」「国旗・国歌法」など。どんな用語が使われているか、記述の分量はどうかなど教科書の課題を知ることができる。

例えば南京事件では、「南京大虐殺」とする教科書が相変わらずある。被害者数について「多数」とする教科書のほか、中国側が宣伝する「30万人以上」を紹介する教科書もある。特に高校では近現代史を中心に、日本をことさら悪く描く自虐史観が抜けない教科書が目立つことが分かる。

項目に応じて政府答弁や公的な調査結果などの資料をつけている。教科書によって書きぶりに違いがあることを踏まえ、「多面的、多角的なものの見方や考え方」「公正に判断する力」を育てるねらいだ。

教科書の違いを知らせ授業に役立てようという教育委員会による取り組みは、ありそうでいて、なかった。(論説副委員長)
産経ニュース【風を読む】 2014.3.18


◆木を見て森を見ない「反省なき議論」

浅野 勝人


菅 内閣官房長官は記者会見で、「河野談話の見直しはしない」と明言しました。( 1993年8月4日:韓国における戦時下の慰安婦に対し、軍の関与の下に名誉と尊厳を深く傷つけたことを心から詫び、反省を表明した宮沢内閣・河野洋平官房長官談話 )。木を見て森を見ない議論のなかから抜け出そうとする当然の政府方針です。

ところが、その一方で作成経過を検証する方針を示しています。安倍総理の理念ファンに対する配慮でしょう。しかし、政局に配慮した二律背反的整合性の追求は、諸外国からは理解されません。もっと正確に言えば、外国人には理解できないでしょう。

ですから、そんなことは先刻承知の菅 長官の腹の内は「見直すつもりはない」が真意に違いありません。菅 長官の考えに賛同します。菅長官は国益を利すると判断した自らの信念を貫くべきだと考えます。

翻って、戦時下の慰安婦問題が再燃したのは、旧軍が強制、管理に関与したかどうかを調査すべきだという指摘に端を発しています。反語として、軍の関与はなかったから「河野談話」は根幹に誤認があると示唆しています。

そもそも、慰安所の設置や慰安婦の扱いについて、当時、強制・管理した詳細を記録に残す軍人ないしは軍属がいたはずがありません。そんな事実が判明したら軍の権威は失墜し、後々に計り知れない汚点を残す結果となります。

もし、仮に記録していた正直に〇〇のつく軍人がいたとしても、敗戦が色濃くなった状況下では、秘密書類の中でも真っ先に焼却して撤退するのが軍の常識です。一番知られたくない文書だからです。従って、戦後70年経った現在、調査してみたところで証拠となる文書が見つかるはずがありません。ヒョッコリ見つかろうものなら、改めて、公式に旧日本軍の恥を世界にさらすだけです。
軍の関与を再調査せよという人の神経が私には理解できません。

「河野談話」をまとめる段階で、韓国側とすり合わせをしたかどうかを問題視する感覚についてです。

事実関係は知る由もありませんが、およそ外交文書、外交上の重要文書を関係国同士が水面下で折衝を繰り返してまとめあげるのは常識です。共同声明作りが、下準備の交渉で決裂して発表されなかった例は幾らもあります。

「河野談話」は日本政府の声明ですから、確かに韓国側と事前折衝をする類の文書にはなじみません。

しかし、問題を解決するための声明ですから、発表して事態が却ってこじれてしまったのでは声明の意味がありません。仮に、内々、韓国側の了解を求めた経緯があったとしてもむしろ当然の外交的思慮でしょう。

作成過程の再検証とは、河野談話の取りまとめに骨を折った当時の関係省庁の官僚ないしはOBに韓国側との接触の有無を問い質すことを意味しているのでしょうか。

あるいは日韓双方の関係者に確かめる作業を想定しているのでしょうか。こんな幼稚なことをホントにやろうとしたら、日韓関係は決定的な不信感に陥り、抜き差しならない泥沼にはまって、改善を求めるアメリカも匙を投げるでしょう。

作成の過程を調査するには、韓国や中国、オランダの元慰安婦にさせられた方々の事情聴取は避けられません。生存しておいでの方が少なくなった高齢の婦人に、今更、昔の痛みを根ほり葉ほり聞き質して、堪えがたい苦痛を改めて与えるつもりですか。

かつて、この人たち十数人が恥を忍んでソウルの日本大使館の前で「証拠ならここにいる」と叫ぶ姿が世界にキャリーされたことを私は忘れていません。

第一次安倍内閣の外務副大臣だった折、民主党の女性議員二人が付き添って、韓国人の戦時慰安婦だった方を外務省に連れて来られました。厳しい抗議を受ける覚悟はしていましたが、植民地下で旧軍の行った全ての行動について、現在の日本政府及び日本人にも道義的責任が伴うこと。

お詫びして許されることではないけれども、先輩たちの犯した罪については我が事として改めて謝罪させていただきたい旨を申しあげました。

そして、戦後60年の節目に発表された小泉談話が「過去を直視して、歴史を正しく認識し、アジア諸国との相互理解と信頼に基づいた未来志向の協力関係を構築していきたいと考えています」(2005年8月15日)と述べていることを丁寧に紹介しますと、その高齢の韓国婦人はうっすらと涙を浮かべたあと、私の目を見て微笑んでくれました。

だから「どこの国でもやっていたではないか」というNHK会長の発言は世界のもの笑いです。自国の歴史に対する評価に値しないからです。

維新の会の石原慎太郎代表が、2月28日(2014年)衆議院予算委員会の質疑で「当時の河野官房長官がバカな発言をして従軍慰安婦を捏造した」と指摘したことについて、自由人の立場にあるジャーナリストOBに「国会内での自由な発言は憲法で保障されているとはいえ品性に欠ける」と感想を求めました。「キチガイにバカと言われるのは正常な証拠。ヒトさまざまだねぇ」との応答には恐れ入りました。

それに「強制連行でなければ構わない」と受け取られかねない橋下・大阪市長の証拠と事実の使い分けは、法廷では勝訴するかもしれないが、政治家の発言としては繰り返さない方がいい。
 
もともと河野談話や村山談話( 1995年8月15日、戦後50周年の終戦記念日:植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた。歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明した村山総理談話 )A級戦犯を祀った靖国神社への政府首脳の参拝自重は、近隣諸国との歴史認識をめぐる反目の繰り返しを断ち切るための高度の政治判断だったはずです。

愛国心とは、自らの国を大切に育み、他国から侵略を受けたら、命を賭して戦う決意です。その場合、4月で76才の私は鉄砲を担いで戦います。おそらく何方の決意にも負けることはありません。とても大切なことは、愛国心の中には自国が犯した過ちを率直に認める勇気が重い位置を占めている点です。だから、河野談話や村山談話がアメリカやヨーロッパの国々で至極当然な日本の歴史認識として受け入れられているのでしょう。

菅 長官は迷わず、真っ直ぐに己の信念を貫くべきです。国益に沿う判断だからです。

河野談話や村山談話を見直すことによって骨抜きにし、天皇陛下も自重しておいでの靖国参拝を総理大臣に強いる自民党の一部や多くの維新の会の国会議員の諸君、木の枝ぶりだけにこだわらず、森全体を眺める勉強をしていただきたいと念じます。

★安保研ネット既載原稿(2014/3/11)に一部加筆しました。

安保政策研究会理事長(2014/3月11日:元内閣官房副長官、元外務副大臣)

< 3月15日:付記 >
安部首相は、14日の参議院予算委員会で「河野談話を見直すことは考えていない」と明言しました。これに関連して、韓国の朴槿恵大統領は「幸いなことだと思う」と述べ、アメリカ国務省は河野談話の維持を歓迎する意向を明らかにしました。




2014年03月18日

◆徐才厚が末期膀胱ガン!!

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
 

<平成26(2014)年3月17日(月曜日):通巻第4185号> 

 〜徐才厚(元軍事委員会副主任)が末期膀胱ガン
   汚職追求の「双規」を中断、事実上の「死刑判決だ」と〜

『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』(南方早報、香港の英字紙)が速報で伝えた。

軍事委員会元副主任(事実上の軍トップ)を2004年から10年間つとめた徐才厚が末期ガンであることが判明し、「双規」(最高幹部の取り調べ)から除外されたことが判明したという北京の情報(同紙、3月17日付け)が伝えている。

徐才厚は江沢民に引き立てられ胡錦涛政権の軍のお目付役として軍のトップの座にあり、軍の近代化を主導したが、同時に軍の装備にかかわる汚職を黙認し、また失脚した薄煕来と親しい関係にあったため、密かに取り調べを受けていた。

「蠅も虎も容赦はしない」という王岐山チームは、『大虎』『老虎』という抽象的な名称でターゲットを明かさなかったが、「大虎」は周永康(元政治局常務委員、序列第9位)、「老虎」は徐才厚だったわけだ。

さきにも軍の腐敗の象徴として軍事委員会装備部副主任だった谷俊山が、86億元(邦貨換算で1500億円)の装備調達関連汚職を調べていた過程で「収賄容疑」で逮捕され、失脚している。

その背後に徐才厚がいるという情報は前々からあった。

同情報筋は、徐は末期ガンであるとし、これは「死罪に匹敵する」として、取り調べが中断されたという。

◆フォークランドに学ぶ中国(2)

平井 修一


フォークランド諸島領有権と紛争の経緯をみよう(ウィキなどによる)。

1850年代、日本の幕末からアルゼンチンの自由主義政権は近代化政策のためイギリスから借款を得るなど友好関係を築き、フォークランド諸島領有権問題は発生しなかった。以降、イギリスによる実効支配が続き、1860年代にはスコットランド人入植者により牧畜のための羊と牛が島に持ち込まれ、やがて羊毛産業が主産業になる。

1880年代から20世紀にかけて英国資本がさらにアルゼンチンに流入し、アルゼンチンは大英帝国の非公式帝国として経済的な従属国となるが繁栄し、ブエノスアイレスは大都市になる。

フォークランド諸島は2度の大戦を通じて英軍の補給基地としての戦略的な重要性も確認された。

イギリスはこの間「条件付で諸島返還を認める」としてきたが、1979年に就任したサッチャー首相は国際連合憲章の「人民の自決の原則」にもとづき、フォークランド諸島住民の帰属選択を絶対条件にしていた。

1981年12月に、軍事政権を引き継いでアルゼンチン陸軍司令官のガルチェリが大統領に就任。ガルチェリ大統領は国民の不満をそらし内政批判をかわすためにフォークランド諸島の領有権問題を訴え、領土ナショナリズムを刺激した(現在の中共そっくり!)。1982年には民間義勇軍を組織してフォークランド諸島を奪還しようという動きにまで発展した(中共の海上民兵、武装漁船そっくり!)。

1982年3月19日にはアルゼンチン海軍艦艇がフォークランド諸島の東にある英領サウスジョージア島に2度にわたって寄航し、イギリスに無断で民間人を上陸させた(サウスジョージア侵攻)。当初はガルチェリの思惑通りに大統領官邸前は大統領の決定を支持する国民で埋め尽くされた。

サッチャー首相はサウスジョージア島からのアルゼンチン民間人の強制退去命令を出すとともに、1982年3月28日に米国のヘイグ国務長官に圧力をかけるよう依頼した。

3月31日、アルゼンチンが正規軍を動かし始めたとの報せを受けて、4月1日にサッチャーはレーガン大統領に事態収拾の仲介を要請し、閣議を招集して機動部隊の編成を命じた。

4月2日にはアルゼンチン陸軍約4000名がフォークランド諸島に上陸、同島を制圧したことで武力紛争化した。同日に英下院で機動部隊派遣が承諾され、4月5日に航空母艦2隻を中核とする英海軍第一陣が出撃した。

4月25日にはサウスジョージア島にイギリス軍の特殊部隊が上陸、同島におけるアルゼンチン陸軍の軍備が手薄だったこともあり即日奪還した。その後も国連で和平案の議論が行われたが、サッチャーは「我々は武力解決の道を選択する」と決断した。

戦闘は一進一退だったが、6月14日にイギリス軍は守備隊陣地を突破して首都ポートスタンレーへ肉薄。これを受けてアルゼンチン側は14日正午ついに降伏。司令官メネンデス准将は指揮下の9800人の兵士とともに投降した。首都の陥落を受けて翌15日にはガルチェリが「戦闘終結宣言」を出したが、すでに求心力を失っており2日後に失脚する。

6月20日にはイギリス政府も停戦宣言を出し、かくして72日間にも及び、両国に多大な犠牲を出した戦争は終わった。

ガルチェリの「国民の不満をそらし内政批判をかわすために島の領有権問題を訴え、ナショナリズムを刺激する」というのは現在の中共のやり方となんと似ていることだろう。我々は武力衝突を覚悟し、備えなければならない。ロシアのウクライナ侵略からも学ぶべし。移民を受け入れると狡猾に領土を奪われる。脳内お花畑ではやがて祖国を失う。(つづく)
(2014/3/17)

2014年03月17日

◆フォークランドに学ぶ中国(1)

情報収録:平井修一


田中邦貴氏のサイト「尖閣諸島問題」にこうあった。

<中国側が尖閣諸島をどのように見ていたかは、人民日報1953年1月8日の記事に見て取れる。

「琉球群島はわが国台湾の東北と日本の九州の西南の海上に散在しており、尖閣諸島、先島諸島、大東諸島、沖縄諸島、大島諸島、トカラ諸島、大隈諸島の7組の島嶼を含んでおり、それぞれには大小さまざまな島嶼があり、総計で名称のある島嶼50と400余りの無名の小島があり、陸地の総面積は4670万平方メートルである(人民日報「琉球群島人民のアメリカ占領に反対する闘争」より)」。

中華人民共和国成立以降も、このように中国は尖閣諸島は日本の一部と認識していたのである。自己の言動に矛盾する主張はできない、いわゆる禁反言の法理があるが、この法理を尖閣に当てはめると、共産党機関紙である人民日報で尖閣が南西諸島に属すると主張している以上、中国は尖閣の領有を主張出来ない。

同年、中国の地図出版社が発刊した『中華人民共和国分省地図』や『中華人民共和国分省精図』には中国の領土に尖閣諸島が含まれていない>

この人民日報の記事の原文の出だしは以下である。

<資料:琉球群島人民反対美国占領的闘争

琉球群島散布在我国台湾東北和日本九州島西南之間的海面上、包括尖閣諸島、先島諸島、大東諸島、沖縄諸島、大島諸島、土葛喇諸島、大隈諸島等七組島嶼>

同年(1953)12月25日、「米国民政府布告第27号」が発布され、琉球列島の地理的境界を「米国民政府及び琉球政府の管轄区域を北緯24度、東経122度区域内の諸島」とした。

この布告の目的と意味することについて、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の美根慶樹氏が「尖閣諸島の法的地位」と題してこう書いている(2014/3/12)。

<サンフランシスコ平和条約に(日本が領土を放棄しないが、米国の統治に委ねられることとなった領土と)記載されている「南西諸島」にしても「琉球諸島」にしても多数の島から構成されており、この2つの島名だけでは米国の統治に委ねられる範囲を特定できない。したがって、布告を出して確認しようとしたのは米国として当然であり、また必要であった。

この布告は、沖縄を統治していた「米民政府」の長官命令として発出されたので、形式的には行政行為のように見えるが、平和条約第3条の解釈に関わるものであり、したがって、この布告は米民政府の行政(の一環)であると同時に平和条約第3条を解釈するという2つの性格を兼ねていた。

米国はこの範囲画定を米国だけで行なうこと、いわゆる有権解釈はできなかった。米国の統治に委ねられる範囲は条約で定められており、その解釈を単独の締約国が決定することはできないからである。したがって、この布告は、米国としての考えを示して他の締約国に異議がないか確認するものであった>

中共は尖閣などを「琉球群島」、すなわち日本の領土と認めているのだから、この布告に異議を唱えてはいない。「1969年5月、東シナ海の大陸棚には石油資源が埋蔵されている可能性があることが公表され、これが契機となって1970年9月、台湾省議会が尖閣諸島の領有権を主張する決議を採択した。 同年12月、中国の北京放送が新華社の報道として、尖閣諸島に対する中国の領有権を主張」(田中氏)するようになったのだ。

今、中共は尖閣諸島を強奪するため日本に戦争を仕掛けている。米軍は当てにはできない。我々は自衛の戦力を強化しなければならない。

1年前に産経が「フォークランドに学ぶ中国 尖閣略奪へアルゼンチンに急接近の“奇手”」と題する記事を掲載している(2013.2.3)。大阪版に掲載されたようで、その他の地では多分知られていないから以下、要旨を紹介する。
             ・・・

尖閣諸島の領有権を主張する中国が、31年前に大西洋で起きたある紛争を学んでいるという。英国とアルゼンチンが南米最南端から約600キロのフォークランド諸島の領有権をめぐって、約70日間の戦闘に発展した「フォークランド紛争」だ。

予期せぬ侵攻に英国が逆襲して勝利したが、いま再びアルゼンチンが自国領との主張を強めている。しかも「尖閣略奪」を狙う中国がアルゼンチンに急接近。「侵攻などとばかげたことを…」。もし日本の指導者がそう考えるなら、歴史に学ばなかったことになる。

■領土「略奪」ですり寄る中国とアルゼンチン

1982年4月2日。フォークランド諸島にアルゼンチンの艦隊が迫った。島のラジオは「侵攻軍は空母1隻、駆逐艦4隻、揚陸艦4隻」と報じた。島を守る英海兵隊は70人ばかり。大軍を前に、わずかな抵抗を試みただけで降伏するしかなかった。

2カ月余にわたったフォークランド紛争について2012年末、サッチャー首相の証言が公開されたが、その中で、鉄の女ともいわれたサッチャー氏にも誤算があったことが白日のもとにさらされた。上陸2日前まで全く予期していなかったのだ。「侵攻などというばかげたことをするとは、考えてみたこともなかった」。

紛争終結30年に当たる2012年6月、温家宝首相がアルゼンチンを訪れた。フェルナンデス大統領は、中国が世界で果たす役割は極めて重要だと持ち上げたうえで、「マルビナス(フォークランドのアルゼンチン側の呼称)諸島領有権についての、中国政府の支持に感謝します」と述べた。アルゼンチンにとって奪還失敗を思い起こさせるこの時期を、フェルナンデス大統領はリベンジへの決意に変えてみせた。

01年にデフォルト(債務不履行)に陥ったアルゼンチンは、傷を引きずったまま世界的な景気後退に見舞われた。有効な対策を見いだせない政権は保護主義に走り、自動車などの輸入制限をめぐって日本、米国、欧州連合に世界貿易機関に提訴された。このため欧米との摩擦が強まっている。

国内では経済失策に対する大規模デモも起こり、政権への風当たりは強い。これに対して女性大統領が繰り出すのは、欧米批判と「マルビナス奪還」のかけ声だ。

■「180年前に島を奪われた」

折しもフォークランド周辺で、英国企業による石油探査が進む。大統領はこれら「資源搾取」に対する法的措置や、周辺での英国の軍事力強化に対する国連への提起に言及。フォークランドに立ち寄ったクルーズ船の、アルゼンチンでの入港が拒否されるという事態も発生している。

フォークランドでは3月、帰属の希望をたずねる住民投票が行われる。約3千人の住民のほとんどは英国系で、結果は開票するまでもない。英国が領有の根拠とするのが、住民意思の尊重だ。アルゼンチンは、いまの住民は先の住民を追い出してから来た植民者の子孫だとし、住民投票は茶番だと批判している。

アルゼンチンは旧宗主国のスペインからフォークランドの主権を継承したが、1833年、英国に砲艦で奪われたとしている。今年はじめ、フェルナンデス大統領は英紙にキャメロン首相あての公開書簡を掲載した。「180年前に英国はマルビナスを奪った」と批判し、「いかなる形態の植民地主義も終結させる」ことを促した1960年の国連決議などを根拠に、対話による解決を迫った。

■領有権争いをダシに発言力強める中国

中国にとってアルゼンチンの主張は、尖閣に応用できる都合がいいものだ。日清戦争を通じて日本に掠め取られたとの主張を、同じ脈絡に置ける。中国はすでに英国から香港返還を実現しており、ひとつの「植民地形態」を終わらせた実績もある。

1965年、国連はフォークランドについて「植民地時代の残された問題の一つ」と位置づける決議を採択した。欧米の相対的な政治力が弱まる一方、国連では数で勝る旧植民地諸国の発言力も強まっている。フォークランドについては中南米諸国がアルゼンチン支持で固まっており、欧米を圧倒する勢いだ。これらの国々との連帯は中国にとっても強い援軍となる。

さらに注目すべきは、軍事的な接近だ。アルゼンチンのブリチェリ国防相は昨年7月、中国を訪問した。装備更新にあたって中国軍の協力を依頼し、開発中のステルス戦闘機「殲20」購入の可能性にも言及した。同国防相はベトナムやフィリピンとの軋轢が強まる南シナ海における領有権についてもこの訪問で、中国支持を表明している。

2011年9月、英国の退役将軍らがまとめた報告書は刺激的だ。軍事予算削減が緊張高まるフォークランド防衛の弱体化を招くと指弾し、「中国の支援を受けたアルゼンチン軍に奪われた場合、奪還は極めて難しい」と結論づけた。

■世界の事例を尖閣にあてはめ「尖閣奪還」もくろむ

フォークランド紛争を招いた一因が、当時の南大西洋における英軍の存在感の欠如とされる。アルゼンチンの軍事政権は「英国が反撃に出ることはない」と判断していたという。

ジェームズ・ホームズ米海軍大学准教授は昨年の論文で、「アルゼンチンが領有権の主張を高めだしたことと、英軍の奪還能力が減退していることは無関係ではない」と指摘した。また「南大西洋で起こっていることに中国の戦略家が注目していることは間違いない」とし、自国に近い海域にフォークランド紛争をあてはめて多くの教訓を得ているという。

「取り返せるかどうか誰にもわからなかった」とまで思い詰めたサッチャー首相はその後、断固とした奪還作戦に転じた。軍事政権と関係が良かった米国も最初は中立の立場で介入したが、同首相はレーガン大統領を説き伏せて英国支持につかせた。

英国側に255人、アルゼンチン側にも約650人の戦死者を出したフォークランド紛争の二の舞を避けるため、日本も学べる教訓は多い。尖閣に一大事があれば、大阪のみならず日本全体が巻き込まれる。(つづく)(2014/3/15)



◆見えてきた原発ロボの可能性

坂口 至徳

 
東京電力福島第1原子力発電所の事故の調査や処理作業に導入されるロボットの性能が向上している。強い放射線に進入を阻まれていた現場の状況が明らかになるに伴い、個々のロボットが対応すべき技術の課題が絞られてきたからだ。十分に実力を発揮するにはいまだ時間がかかるとはいえ、先を見据えた形での技術開発は着実に進んできている。

日本製が面目保つ

平成23年3月の事故発生当初、原発内の撮影には、軍事などで実績があり、過酷な条件でも無線操縦できる米国製のロボットが導入された。原発での日本製の災害対応ロボットはすでに開発されていたが、「安全神話」などの影響で常備するまでには市場が広がらず、実際に使われないまま放置されていたため、即戦力にはならない、と判断された。そのときは「世界一といわれるロボット技術は産業用のものにすぎない」とさえ言われた。

ところが、米国製にも弱点があり、急な階段などを昇降することができなかったのだ。このため、3カ月後には千葉工業大学などが開発した可動式のクローラー(無限軌道)を備えた災害対応ロボット「クインス」が入り、原子炉建屋の1階から5階まで、線量測定、写真撮影などを行い、日本製の面目を保つことになった。

その後、改良された「桜2号」は、床に水がたまっていても移動できる水陸両用で、線量測定の「ガンマカメラ」など最大60キロの機器を搭載でき、ロボットアームにカメラを取り付けると高さ約2メートルの位置で俯瞰(ふかん)しながら撮影できる。充電池も長持ちするなど、それまでの問題点をきめ細かく拾い上げて克服する仕様になった。

米国のロボット開発拠点であるカーネギーメロン大学の金出武雄教授(元同学ロボティックス研究所長)は「災害ロボットの投入には技術力、実際力、実施力が必要です。実際力とは、災害の現場を実際に経験して得られるもので、事故当初の日本にはなかった。

これからは、産官学が一緒になって技術を出し合い、3つの力がそろったシナリオを描き、それに沿ってニーズ駆動型の開発をすることが大切でしょう」と指摘する。

見え始めた成果

現在、福島第1原発内には、日本と米国のロボットが入り、放射線源・線量の測定、がれきの除去などを行っている。昨年11月には、遠隔操作できるカメラを搭載したボート型の水中ロボットが1号機の格納容器下部の配管から水漏れがあるのを初めて確認した。

すべての水漏れ箇所が特定できれば、それをふさいで格納容器を冠水させ核燃料を取り出すことができるだけに、廃炉作業の進展につながる重要な発見だ。

また、人の近づけない現場で点検・保守だけでなく補修作業もできる遠隔作業ロボットも開発され、今年1月に1号機内で放射能汚染物質を吸引したり、汚染表面を削り取ったりする除染作業などの実証試験も完了した。2本のアームにドリルや物を挟む爪を装着して、穴を開けたり、サンプルを取り出したりできる。事故処理でのロボットの用途を先に進める開発だ。

公共性でも先進国に

米国で日本の災害ロボットが評価された例もある。

福島原発の事故をきっかけに、米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)の主催で行われた災害救助ロボットの競技会が昨年12月に開かれ、日本のベンチャー企業が作製したヒト型ロボットが難なくダントツで予選を通過した。ベンチャーは米国の企業に買収されたものの、日本の技術力の底力を見せつけた。

もともとロボット技術そのものが多くの要素技術の集積である。原発事故対応というターゲットに向けて個々の技術の開発や組み合わせがうまくかみ合いはじめたようだ。

それを後押しし、ニーズを広げて軌道に乗せるのが、産官学一体となった組織であり、ロボットの性能を実証するための研究拠点づくりだ。高度な技術であるほど応用範囲は広い。経済産業省、国土交通省は、老朽化した橋などインフラの維持管理、災害対策として次世代社会インフラ用ロボットの開発を進めており、こうしたニーズにも原発ロボットは対応でき、開発の支えになるだろう。日本のロボット技術が、産業だけでなく、公共性のあるロボットの先進国としての成果を挙げることに期待したい。

(さかぐち よしのり・論説委員)産経ニュース【日曜に書く】    
                           2014.3.16

◆北の劣悪、南の痴呆

平井 修一


韓国のサイト「デイリーNK」は北朝鮮情報を北の住民から得て報道している。北朝鮮で携帯電話事業を行う高麗リンク社は昨年4月、北朝鮮での携帯電話加入台数が200万台を突破したと発表した。抜群の人気で現在は250万台が普及しているとみられる。このためいろいろな情報が漏れだしている。1月10日のニュースから――

<2014年、北朝鮮住民は政府の堆肥生産の督促に慌ただしい年始を送っている。北朝鮮内部消息筋は「北朝鮮政府が今年を『農業第一主義』と決めた。世帯別には、去年は人糞500kgと家畜排泄物と腐植土合わせて1t500kgを納めさせたが、今年は人糞700kg、腐植土1tを納めなければならない。腐植土は集団で現場へ行って確保すれば良いが、人糞はどこで集めたらいいか。見通しは暗い」と言った。

それとともに消息筋は「人糞を盗もうとする住民が去年も多かったが、今年はもっと奪い合いが酷くなるだろう。人民組会議で『人糞を買いに農村へ行かなくちゃいけない』と言う住民たちもいる。一部の住民たちは『食べるものがあるからこそ人糞も生産されることではないか。食糧供給もないのに、出すものは出せということか』と不満を言ったりする」と付け加えた。

北の農業は人糞頼り!? 人糞泥棒!? 凄まじい国である、と言うか、ほとんど国家として破綻しているようだ。

1月13日のニュースは食糧配給について。

<平壌の消息筋は10日、デイリーNKとの通話で「去る3、4日にかけて半月分の食糧が配給された。上(政府)では、15日後にまた住民に配給を与え、それ以後も正常に配給ができるようにするように指示が伝わった」と伝えた。

引き続き消息筋は「去年から“正常配給”を宣言したことに疑いを抱く住民が多かったが、実際に配給がきたことを喜んでいる。去年12月と年初から比較的多い量の配給がきて、平壌の米の価格も5000ウォン強程度を維持するなど、全般的に安定の動きを見せている」と付け加えた。

一方、平壌を除いた地方は、中心都市であっても未だに配給が滞っている。去年4月は、軍糧米を使って米の配給が行なわれたが、今年も配給は持続すると政府は豪語したものの、何の連絡もないと消息筋が伝える。

両江道の消息筋は「いまだに配給に関する指示がなく何の話もない。一般住民は配給を受けることができないが、軍人、国家安全保衛部、保安員の家族には比較的豊かな配給がなされている。

大部分の住民は『元々出ないのだから配給はあきらめよう』と言っている。去年は質の悪い米でも上から住民に配られたが、それさえももないから住民の間では『くれないのなら最初っから何も言わなければいいものを』というがっかりした雰囲気」と言った>

北の住民の最大の関心事は今日の米、明日の米なのだ。

韓国の東亜日報は1月11日、「与野党の有力政治家、(正月明け)早くも統一問題でイニシアチブ争い」と報じているが、韓国はこんな破綻国家を抱え込むつもりなのだろうか。異常である。

朝鮮日報の顧問として金大中(キム・デジュン)元大統領は1月12日にこう書いている。

<2013年の最初のコラムで、私は「韓国人だけが知らない三つのこと」に言及した。

第一に、韓国人は自分たちがどれほど良い暮らしをしているか知らないらしい。

第二に、韓国人は自分たちがどれほど危険な対立状況(対北朝鮮)に置かれているか知らないらしい。

そして韓国人は、隣国の中国と日本がどれほど強く、恐ろしい存在かを知らないらしい、という3点だった。

あれから1年が過ぎた2013年の末、その三つの「知らないこと」が韓国人の無神経、無知、無感覚の壁を越え、韓国人の目前に現実となって現れ、韓国人に警鐘を鳴らしている。

韓国人は(上記の三つの注意喚起を)無視したり意図的になおざりにしていたという罪(?)により、罰を受けているのだ>

まあ、太陽政策で北に金を注ぎこみ、結果的に北の核開発を促進した金大中の懺悔みたいなものだが、韓国民は「韓流音頭」や「反日音頭」「親北統一音頭」を踊っている場合ではないということだ。その現実に近頃は多少は気づき始めたのかもしれない。多少は・・・。(2014/1/14)

2014年03月16日

◆法匪と集団的自衛権

池田 元彦


「最高の責任者は私だ。政府答弁に私が責任をもち、そのうえで私は選挙で国民の審判を受ける。審判を受けるのは内閣法制局長官ではなく、私だ。」と安倍首相が憲法解釈について発言。内閣法制局は内閣の管轄下にある諮問機関だ。全く問題ない発言だ。

早速、左翼野党が騒ぎ、公明党が牽制する。マスコミは、朝日・毎日・東京が反対論、読売・日経・産経が賛成論と別れる。反対派は憲法有りき、9条厳守、長年の解釈を政治環境変化で急に変えるな、合意形成不足、一歩踏み込むと国際的信用を失墜するという。

賛成派は、東アジアの安全保障情勢は急速に悪化しているとの認識で、同盟国の被災を傍観すれば日米同盟破綻、偽装漁民等の離党占拠等の外国勢力侵攻の抑止力だ、憲法改正迄時間がかかる、国際法上認められる権利で何故現実を直視しないのか、という。

左翼側が憲法厳守・解釈変更不可、右翼側は現行憲法が現実とズレており改正迄時間を要するから、解釈変更で対応すべき、ということだ。今年年初の産経・FNN合同調査では、集団的自衛権の行使について、容認43.9%、反対35.7%で、容認が8%上回った。

また憲法改正も同様で、賛成44.3%、反対42.2%、で粗同数だが、憲法改正がやや上回っている。年齢別では、両調査とも20代から40代は共に50%以上が憲法改正も集団的自衛権も賛成で、集団的自衛権では20代から40代の全世代60%前後以上が賛成している。

朝日等が右傾化、軍国主義化だと騒ぐが、国民の大半は東アジアの特定3ヵ国の反日言動や中国の尖閣諸島強奪意図等を勘案して、集団的自衛権の解釈変更による行使・非行使の選択的権利制定を必要としている。その他欧米、アジア諸国は概ね容認している。

国際的信用失墜等全くの嘘出鱈目だ。中韓のみが騒いでいるとマスコミは書かない。中国の防衛予算増大、海洋諸国への島嶼強奪、尖閣侵略意図が、集団的自衛権早期容認の背景にあるのだから、左翼の憲法云々は日本の国益毀損を狙う反日策動としか考えられない。

集団的自衛権は国際的に認められた主権国家の権利だ。憲法に反するから行使出来ないとの馬鹿な解釈を長年続けた内閣法制局の無為無策は職務怠慢だ。法令の審査も仕事だが同時に首相や大臣等に意見を具申する義務もある。憲法や特定の法律が国際環境・時代・世論に馴染まないと判断するなら、見越した対案を先読みして総理大臣に提案すべきだ。

字義的解釈のみで憲法法律論を言うのは「法匪」の馬鹿学者に任せればいい。左翼マスコミ同様、国益を顧みず只管、憲法・法律の字句に拘るのは、勘違いも甚だしい。

小松一郎新内閣法制局長に反対派は難癖を付け妨害しているが、総理・担当大臣との連携で、世論動向、国際情勢を反映した判断提案を、早期に掲げていただきたい。

一昔前の日中国交正常化交渉の最中、周恩来に法匪と罵倒され国外退去を求められた男がいる。高島益郎元条約局長(後に外務事務次官)だ。賠償金請求意図を剥き出しで日中間未だ戦争終結せずと言立てる周恩来に、1952年の日華(=台湾)平和条約で法的に戦争終結済と、彼は譲らなかった。

後に我国にあれ程の人材が居たらと周恩来をして言わしめた。国際会議で譲らなかった高島と、従来の内閣法制局長の違いは、「国益」前提に物事を思考できるかどうかの違いだ。

◆「房総沖」に震災の教訓生かせ

中本 哲也
 

房総半島沖を震源とする津波地震について書く。

中央防災会議が昨年12月に発表した首都直下地震の被害想定と対策の最終報告に、1677年の「延宝房総沖地震」の評価が初めて盛り込まれた。

この地震は東日本大震災を起こした東北地方太平洋沖地震の震源断層域の南側に位置し、「(大震災に)誘発される可能性のある地震と考えられる」としている。

揺れはそれほどでもないのに大きな津波を起こす「津波地震」である可能性が高いとされ、海岸での津波の高さは、千葉、茨城県の太平洋岸や伊豆諸島の広い範囲で6〜8メートル、高い所では10メートルに達すると推定される。延宝の津波の痕跡は福島、宮城の太平洋岸でも確認されている。

津波は東日本大震災に匹敵する規模である。大震災に誘発されるとしたら切迫性は極めて高い。

中央防災会議は「大きな津波が想定される地域では、津波避難の対象として対策を検討する必要がある」としている。

しかし、最終報告の中で、延宝房総沖地震の記述はごくわずかでしかない。住民や関係自治体に十分にメッセージが伝わっているとは思えない。

 内閣府の防災担当者は「今回の報告は、首都中枢機能の維持に重点が置かれたので、都心への影響が大きくない房総沖地震の扱いは相対的に小さくなった」と説明する。だが、大震災級の津波を首都直下の付け足しのような扱いで済ませていいはずはない。

大震災前の「貞観地震(869年)」に対する認識を、思い起こしてほしい。

東北大学や産業技術総合研究所の調査で、仙台平野に大津波をもたらす地震が1000年周期で発生していることが分かっていた。前回の貞観地震からは約1100年が経過しており、研究者は「いつ起きてもおかしくない」と警鐘を鳴らしていた。産経新聞も、平成21年7月27日付の科学面で「1000年間隔で襲う津波 仙台内陸部まで遡上(そじょう)」と報じた。

しかし、東日本大震災では1万9千人もの命が、巨大津波にのみこまれた。警鐘は、住民や自治体に届いていなかったのだ。

国や自治体の津波対策が間に合わなかったとしても、貞観地震の知識と研究者の警鐘が頭の片隅にでもあれば、助かった命は少なくないはずだ。

延宝房総沖地震の現時点での認知度は、大震災前の貞観地震と同程度ではないだろうか。悲劇を繰り返さないために、3つのことを知ってほしい。

1つは、房総半島から東北南部にかけての太平洋岸を、約340年前に巨大津波が襲ったこと。2つ目は、同じタイプの地震が東日本大震災に誘発されて起きることを、地震研究者が懸念していること。3つ目は、揺れが小さくても大規模な津波が発生する恐れがあること、である。

自治体や地域単位の避難対策も急務だが、住民自身の判断で命を守ることが何よりも重要だ。

内閣府や中央防災会議は、住民に届くように情報を発信すべきだ。私たちメディアにも、それを伝える責務がある。(論説委員)
産経ニュース【一筆多論】 2014.3.15

2014年03月15日

◆中国は南シナ海に軍事力誇示

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
 

<平成26(2014)年3月14日(金曜日):通巻第4183号> 

〜マレーシア航空機事故捜索にかこつけて中国は南シナ海に軍事力誇示。ベトナムは過敏に反応、マレーシアは静かな怒り、アセアンは中国軍の行動を注視〜

MH370便が消息を絶って1週間。依然として手がかりが無く、乗客乗員239名のうち、150名以上が中国人、しかもスパイ企業として名高い華為技術の社員が30名前後も搭乗していたため、「捜索が遅い」と北京は居丈高にマレーシアをしかりつける。

そればかりか中国人民解放軍は南シナ海に「全面展開」(Full display)しており海域のマレーシア、ブルネイ、ベトナムをいらだたせている。「事故捜索」にかこつけて、まるで南シナ海で全面的な軍事演習をしているではないか、と。

とくに人工衛星を10個、軍艦を4隻、航空機8機という異様な展開ぶりで、なかでも二万トン級で攻撃能力の高い戦艦「金剛山」と「昆倫山」の弐隻が加わっていることに米海軍も注目した。

ベトナムは中国の空域からの捜索要請をはねつけ、「当該空域は完全にベトナムが掌握している」と伝えた。

ベトナムの南の海上にあるコンダオ島からさらに南方の海域が遭難現場とされたからである。

マレーシアは華僑が経済実験を握っているため親中的外交を展開してきたうえ、通貨スワップでも香港についで2番目に承認したほど中国寄り姿勢だった。スプラトリー諸島への中国海軍の侵攻に関しても形ばかりの抗議をしてきただけだった。

ほんの2ヶ月前、マレーシア海域にあるジェイムズ岩礁に中国軍艦が接近し、投錨し続けた。この岩礁はサラワク(マレーシア)から僅か80キロ、中国からは1800キロの地点である。

それでもマレーシアは中国非難を避けてきた。


 ▲なぜ、中国はかくも軍事的演習を誇示するのか?

だが今回の北京政府の口汚いマレーシア航空機事故非難は、あまりの品位の無さと傲慢さが目立ち、おとなしいマレーシア人も静かに怒りを広げている。

アセアン各国は中国軍の「偉容」を目撃して、心理的にも神経質になっており、米海軍と日本の自衛隊が本格支援に乗りだしてきたため、ようやくにして南シナ海のバランスをはかることができた。
 
こんな状況下、ベトナム共和国から主席(大統領)が来日し、天皇陛下宮中晩餐会のほか国会で演説することがきまった。16日来日、17日晩餐会。安倍首相は「南シナ海の航行の自由、国際ルール遵守」の共同声明を発表する予定という。

◆「台湾よさよなら」論考

Andy Chang


シカゴ大学のミアシャイマー(John Mearsheimer)政治学教授が最近「台湾よさよなら(Say Goodbye to Taiwan)」と言う論文をTheNational Interest 雑誌に発表して大きな反響があった。台湾の現状とはアメリカが覇権国を維持している間だけで、長期的には中国
が台頭して中国に併呑されると言う予測はショッキングである。

ミアシャイマー論文に対する反論は、The Diplomat誌の副主筆Zachary Keckの的確な反論を含めいろいろな人が反論を書いたが、将来のことは未確定要素が多いので誰が正しいかを議論する必要はない。私の感想ではミアシャイマー論文は世界政治の分析に優れて
いても台湾人の存在が考慮されていないことだ。台湾の将来は台湾人が決めなければならない。

●ミアシャイマー論文の要約

ミアシャイマー論文の要旨は、世界の歴史は覇権国のせめぎ合いであり、最強の覇権国は常に第二の覇権国の堀起を抑止する運命にあると言うことだ。アメリカは20世紀初頭のドイツ帝国の覇権台頭を叩きつぶし、その次にヒットラーと日本の覇権台頭を叩いた。アメ
リカが最強国を維持できればよいが、衰退すれば次の覇権国が覇権の分割を狙う。

アメリカが衰退すれば中国覇権が台頭する、今の中国はアメリカと戦う力はない。しかし長期的に見れば中国がアメリカと同じぐらいの覇権国となり、アメリカはアジアの覇権を中国に譲るだろうと予測する。その時にアメリカは台湾を見捨てることになると言う。

ミアシャイマーは中国の台頭に対して、台湾には三つの選択があるという。第一は台湾が核爆弾を保有すること、核を保有すれば中国も武力侵略を躊躇う。第二は台湾が中国の武力侵攻に多大な損害を与えうる防衛力を持つことである。第三は台湾が香港方式で中国の
属国かすることであると彼は分析している。

しかし、とミアシャイマーは分析を続ける。第一の核保有について、台湾は70年代に核開発をしたがアメリカがこれを発見して計画を潰した。核保有はアメリカの核の傘から離脱を意味し、中国も台湾の核保有に反対だから不可能である。第二に、台湾が中国の侵攻に
大きな犠牲を齎すだけの武力を持つにはアメリカの援助が必要だが、アメリカが衰退すれば台湾を見捨てるかもしれない。しかも中国の武力侵攻は台湾が戦場になることだから台湾人の犠牲は大きい。だから結論として台湾に残る選択は第三の香港方式であるとミアシャイマーは述べている。これは最も犠牲の少ない方式だから、長期的
には「台湾よ、さよなら」という結論である。

●Zachary Keckの反論

ミアシャイマー論文について、Diplomat誌の副主筆、ザッカリー・ケックは早速以下の理由をあげて反論した:

(1)中国がアメリカを凌ぐほど強くなるというミアシャイマー論文の前提にはかなり疑問がある。中国の繁栄は既に限界に達しており、国内にも多くの問題を抱えている。中国がいくら強大になってもアメリカと対等に戦えるほど強くはないだろう。
(2)台湾人アイデンティティの台頭を引き起こし、中国の併呑に強い反対運動が起きる。こうなれば中国の台湾併呑に大きな障害が起きる。現在でも台湾人の反中国、反併呑は強烈である。
(3)東亜諸国が中国の台湾併呑を黙視することはありえないし、アメリカには台湾関係法があるので台湾防衛に尽くすことは予期される。
(4)中国の併呑が現実に近くなれば、台湾が核保有を選ぶ可能性のほうが香港方式で中国の属国化するより大きいだろう。

●ミアシャイマー論文の考察

ミアシャイマー論文は国際政治の観点と分析でかなりの説得力がある。しかし、ミアシャイマー本人も16世紀のトーマス・ホッブスの言葉を引用して「現在の事象のみが実在する。過去に起きた事は記憶に残るだけで、将来の事はもともと存在していない」と言う。将
来の予測は予測に過ぎず、将来彼の予測が正しかったと言われる証拠はない。但し、ミアシャイマー論文がアメリカと台湾に警告を与えた事は否めない。ケック氏の反論も然りである。以下は私の考察である。

(1)中国の台湾併呑は武力に拠るのではなく、人口侵略と文化侵略である。中国人が政権を握っているかぎり、台湾人は中国人の大量移民に反対も出来ない。台湾人が中華民国を容認している限り、中国の人口侵略と文化侵略は止まらない。台湾人にはアイデンティ
ティの欠如と、中国人支配に抵抗する行動力がないから、長期的に見れば必然的に台湾は併呑される。

(2)中国の台湾併呑に反対するには台湾人の覚醒と団結が大切だが、台湾人は勝手な主張が多いうえに目標が定まらず団結しない。主張が明確でないから漢民族思想の文化侵略を防ぐことも出来ない。これが台湾人の致命的欠陥である。

(3)中国の覇権拡張には台湾を併呑して太平洋に進出することが必要である。台湾が中国に併呑されれば日本、フィリッピンなどの東亜諸国は中国の覇権に取り込まれる。中国が強大になればアジア諸国の連合が必要になる。

(4)アメリカが台湾を放棄すれば中国の太平洋進出を阻止できなくなってアメリカはハワイまで後退する。このような事態になる前に諸国連合で中国に対抗する動きが出るのは当然で、私がこれまで何度も主張してきた東南アジア平和連盟(PASEA)の締結を急ぐべきである。

(5)ケック氏が指摘したように中国が将来アメリカよりも強くなるとは限らない。アメリカの現状は、ミアシャイマーが論文で大幅に省略した、朝鮮戦争に勝てなかったアメリカと、ベトナム戦争に負けたアメリカの精神的な落ち込み状態と似ている。だがベトナム戦争に負けたアメリカは立ち直ったではないか。アメリカの衰退はオバマに半分以上の責任があると言われている。オバマの任期はあと二年だが、オバマのあとアメリカが衰退を続けるか、復興するかは将来の大統領と国会にかかっている。

台湾が中国の併呑から逃れて独立建国を果たすには、何よりも中華民国を打倒し、台湾国を世界に認めてもらうことである。民進党が選挙に勝って政権をとっても中華民国は変わらない。台湾国が存在しなければ国連加盟はできない。

あるグループは台湾が永久中立国になることを主張しているが、国がないのに永久中立を主張しても誰も認めてくれない。台湾が独立建国を果たす以外に方法はない。ミアシャイマー論文で台湾人が覚醒し団結して中華民国打倒に努力するよう期待したい。

2014年03月14日

◆軽すぎる村山元首相発言

阿比留 瑠比


亀の甲より年の功とはいうものの、最近90歳になった村山富市元首相のこのところの言動は、あいまいで軽すぎ、危ういと感じる。他の何人かにも言えることだが、元首相という重い立場をわきまえてほしい。

先月27日の日本記者クラブでの記者会見では、こんなことがあった。村山氏は慰安婦募集の強制性を認めた平成5年の河野談話について、冒頭から事実に反することを述べていた。

「(日本政府が)実際に慰安婦の皆さんに会って証言を求めたようなことはないかもしれない」

だが、甚だおざなりではあったものの、政府が韓国で元慰安婦16人の聞き取り調査を行い、それを河野談話の根拠としたことは議論の大前提だ。耳を疑うとはこのことである。

この点に関しては、さすがに記者側から「当時の宮沢喜一政権は元慰安婦16人からヒアリングをしている。それで事実関係はよろしいか」と確認が入ったが、それに対する村山氏の答えはこうだった。

「はいはい。それは慰安婦から聞いていますね。訂正してください」

この程度の認識で河野談話について「事実がなかったと言ってあげつらって何の意味があるのか」「そんな軽はずみに根拠も何もないのにつくった作文ではないと思う」と擁護・発信されても当惑してしまう。

おやっと思った点はまだある。安倍晋三首相が「侵略という定義については定まっていない」と述べたことについて、「(植民地支配と侵略を謝罪した)村山談話と矛盾を感じたことはないか」との質問に、村山氏は言葉を濁したのだ。

「安倍さんが侵略という言葉に国際的な定義はないと国会で発言して、いろいろな議論がある」

だが、すでに当欄(1月23日付)で指摘した通り、村山氏自身が首相在任中の7年10月に、次のように全く同じ趣旨のことを述べていたではないか。

「侵略という言葉の定義については、国際法を検討してみても、どういうものであるかという定義はなかなかない」

どうして「ワシもかつてそう語った」と素直に言えないのか。首相答弁の一貫性を内外に示すいい機会だったのに残念である。

また、村山氏は自身の名前を冠した村山談話に関して「ある意味、国際的な約束事、日本の国是みたいなものだ」と胸を張っていたが、これにも違和感を禁じ得なかった。

村山氏は「村山富市の証言録 自社さ連立政権の実相」(新生舎出版、23年9月刊)の中で、「談話を歴代首相も踏襲すると思っていたか」と問われ、こう答えていたからだ。

「そんなことまでは想定していませんでしたね。(中略)期待はあったにしても、誰がなるか分からないのでね、そこまでは考えて談話を出したわけではないね」

このほか、村山氏は記者会見で靖国神社参拝問題の話題になると、安倍首相の名前を2度「小泉さん」と間違えた。尖閣諸島(沖縄県石垣市)については、「(日中)どちらに占有権があるのか、歴史的にみると尋ねてみないとなかなか分からない」などと、無責任な発言をした。誰に尋ねるというのだろう。

元首相らの伸び伸びとした自由な発言に接するたびに、敬老精神が薄れそうになる。(政治部編集委員)産経ニュース【阿比留瑠比の極言御免】 2014.3.13


◆中国の連鎖デフォルト、混乱警戒

河崎 真澄


【北京=河崎真澄】中国経済の先行きに対する不透明感が市場で一段と強まっている。中国債券市場で7日起きた初の社債デフォルト(債務不履行)と、前年同月比で18.1%減少した8日発表の2月の中国輸出統計の影響が広がった。

銅を担保にした資金調達が減るとの思惑から上海先物取引所で週明けから銅相場が続落し、12日は株式市場の上海総合指数も反落した。

13日閉幕の全国人民代表大会(全人代=国会)で採択される経済改革案も「既得権益層など中国内の抵抗勢力の政治パワーで“骨抜き”にされる」(市場関係者)との懸念も強まっている。

丸紅経済研究所の鈴木貴元シニア・エコノミストは「中長期的な改革の方向性は間違っていない」とみるが、昨年の全人代後に一気に高まった李克強首相の経済政策「リコノミクス」への期待は、短期的な成果を求めがちな市場の間では急速にしぼみ始めている。

中国初の債券デフォルトは、リスク意識の甘さからモラルハザード(倫理の欠如)を起こしている中国の投資家への「警告」にはなったが、市場では連鎖デフォルトによる混乱や「影の銀行(シャドーバンキング)」関連の金融商品への飛び火を警戒している。

また、輸出低迷は人件費の高騰や人民元高による中国製品の国際競争力の低下を裏付けた。李首相が全人代の「政府活動報告」で訴えた消費拡大はまだ効果を上げていない。成長エンジンだった公共事業などの投資が抑制され輸出も伸びないとなると、「経済成長率で政府目標7.5%を達成するのは困難」(北京のエコノミスト)な情勢だ。

外需も内需も伸び悩む中で、デフォルト問題へのコントロールがきかなくなれば、中国は成長減速のみならず、“成長失速”の黄信号すら点灯しかねない。
産経ニュース 2014.3.13 00:36