2014年03月13日

◆中国環境保護相発言に不満の声続出

藤村 幸義


5日から開幕した全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、周生賢環境保護相が記者団に「大気汚染はかなり好転した」と語ったことに対し、ネットを中心に不満の声が続出している。

中国各地では今年に入ってからも深刻な大気汚染が続いており、とても好転したとはいえないからだ。

周環境保護相は「一般市民はあまり感じていないかもしれないが、大気汚染はかなり好転している。大気汚染の指数は昨年に最高値が1000余りだったが、今年に入って900余りに下がっている。北京市、天津市、河北省の平均値は昨年の500〜600から今年は500余りに下がってきている」と語った。

ところが中国青年報がネット上に寄せられた約2000人の意見を分析してみたところ、92.8%が周環境保護相の発言に不満を抱いているという結果が出た。「この程度でかなりの好転といえるだろうか」「周氏が引用した大気汚染指数が適切かどうか疑問だ」などの声が挙がっている。

中国の大気汚染の指数は6段階に分かれており、300を超えると「厳重汚染」(すべての者は屋外活動を中止)となる。したがって1000余りから900余りに下がったとしても「厳重汚染」に変わりなく、「かなり好転」と言うには早すぎよう。

李克強首相は全人代での政府活動報告の中で、「貧困に宣戦を布告したように、汚染問題との戦いを断固として宣言する」とぶち上げた。そして今年の具体的な対策として、小型石炭ボイラー5万台の淘汰(とうた)、石炭火力発電所の脱硫改造1500万キロワット相当、脱硝改造1億3000万キロワット相当、集塵(しゅうじん)改造1億8000万キロワット相当、排ガス基準を満たさない車や旧式車600万台の淘汰、などを列挙した。

しかし一方で今年の経済成長率目標は昨年と同じ7.5%に据え置いた。内部では、目標数値を引き下げるべきだとの意見もあったようだが、成長率を下げると雇用確保に問題が生じ、社会の安定を損なうとの懸念から却下された。

汚染問題との戦いを宣言しておきながら、一方では相変わらず高度成長志向の考えから脱却できずにいる。汚染問題を解決するには、投資中心の高度成長路線そのものを改める必要があろう。

これでは二兎を追うもの一兎をも得ず、ということになりかねない。何よりも周環境保護相のような汚染問題に対する認識の甘さが気にかかる。           (拓殖大学国際学部教授)
(フジサンケイビジネスアイ)2014.3.12


◆「真珠湾」の1年前(5)

平井 修一


其の中(うち)一つ我々の関心事として考えるのは、現在其のキャリアー・ストライキング・フォース(海上電撃隊、今でいう空母機動部隊)と云うものをアメリカは七単位くらい出来る訳であります。是が将来は十九単位出来る訳であります。その航続力は今日の計算では一万二千マイル程ありますからハワイを根拠地として出勤した場合に於ては日本の近海に参りまして、相当長い間作戦が出来るのであります。

若し主力艦の決戦と云うものがない場合には此の航空母艦に依る襲撃部隊が太平洋に於ては相当の活動をするのではないかと考えられるのであります。何故快速巡洋艦を使うかと言いますと、それは敵の潜水艦、或は駆逐艦による襲撃に対し其の巡洋艦に依って航空母艦を護衛するのであります。

今アメリカの一万トン軽巡洋艦と云うものがあるのでありますが、それはブルークリンと云う型の艦でありますが、十五門の六インチ砲を備えて居りまして、其の六インチ砲は一分間に九発の砲弾を発射しますから、(十五門で)一分に百三十五発を発射し得る訳であります。従って相手方の駆逐艦、潜水艦等は容易に之に近寄ることが出来ない。

だからそれを航空母艦に付けて、そうして二つが一体となって三十二ノット以上三十五ノット位迄の速力を以て方々荒し廻る。それから海上の警戒は軍艦の飛行機を母艦から飛ばせれば恐らく三百海里(556キロ)から五百海里(926キロ)の遠方を警戒することが出来るのであります。

斯う云うような所想はアメリカの海軍にのみ生れたのでありまして、元をたずねますと一九三〇年に軍令部長であったブラット提督がロンドン会議で初めて空軍巡洋艦と云うようなことを言い出したのであります。それは半分が巡洋艦で半分が航空母艦、詰り巡洋艦であって後の方を平面にして航空機発着用のデッキを付けて二十四の飛行機を積む、それから前面は六インチ砲を八門備えてそうして三十五ノット位の速力で走る軍艦斯う云うものをアメリカは着想したのであります。

ロンドン会議で日本及イギリスの全権は大変なものが現れたので実はびっくりした。其の時色々な制限が論じられて居る中に巡洋艦に十数機乃至二十機の飛行機を積むことを認めろと云う案をアメリカが提議した。其の提議に対しては実は日英の専門家はびっくりしたのでありますが、後で調べて見るとそれが詰り航空巡洋艦と云うようなものである。

処が其の巡洋艦は帯に短し襷に長し、色々な欠点があると云うので放棄されまして、其の代り寧ろ二艘を以て一体としてここにキャリアーストライキングフォースと云うものを造り上げた。それが今日のアメリカの作戦思想となって現れて居るのであります。

次に駆逐艦は度々失敗した結果、最近出来上がって居るソマース級と云うのは千八百トンの駆逐艦でありますが、是は航続力が約七千マイルで日本の吹雪と丁度同じ位の大きさでありますが、六千マイル単独に航海し得ると云うことはミッドウェーから油を詰めれば東京の近海に参りまして約二週間以上の作戦が出来ると云うことを意味するのであります。それから其の次に造って居るアンダーソンと云う新しい駆逐艦は恐らくそれよりも尚
早く走れるのではないかと思われます。

大体アメリカの駆逐艦は従来は三千マイル位が航続の限度であった。従って母艦が之を連れて来てそうして海上で燃料を補給しなければ遠海で作戦が出来なかったのであります。アメリカの主力艦隊が西太平洋に来て作戦する場合に最も肝心の駆逐艦の防御がない為に其の作戦が困難であり、又仮りに日本と戦う場合に於ける最大のハンディキャップとされたのでありますが、今や其の駆逐艦が六千マイル以上の航続力を持ったのが六十一艘造りつつある。そうして新に造らんとして居るのが百十五艘であります。

斯うなると給油船を伴わないで単独に西太平洋に作戦力を持って居りまして、ヴィンソン案に於ける最初の潜水艦はパーヂと云う艦でありまして、僅かに千三百三十トンでありますが、是が単独で一万五千マイル走ることが出来る。一万五千マイルの航続と云うことは是もウエークかミッドウェーから出れば朝鮮海峡に来てそれから津軽海峡を廻って優に単独で自分の根拠地に帰り得るのであります。

我国の如きは既に十余年前に一万数千マイル単独に歩く潜水艦を造っていますからアメリカの現在を驚くには当たりません。ただ吾々の誇りであったものを今やアメリカが学んで潜水艦は全部一万五千マイル以上の航続力を持って居ることを知れば足りるのであります。

大体武器と云うものは我国が長く其の特権を維持することが出来ないものであって、Aの国が特に勝れたものを造って天下に誇ればBは之を追越す為に非常な苦心をして遂にそれを追越すものを造り上げ、或はそれに匹敵するものを造り上げ、そこでAの優越は長く続かない。

空軍に於きましても、例えば嘗てはフランスが世界を制し、すると其の翌年にはロシヤが世界を制した。其の次はロシヤが衰えてイタリーの番である。今度はイタリーよりもドイツが立派になったと云うのが今日の状態であります。

これ亦外のどの国がドイツを追い越すか分りませぬけれども、ようするに是が武器競争の通則でありまして、何時迄も世界を率るような立派な武器を独占すると云うことは出来ない。其の例に洩れないでアメリカも苦心の結果最近は相当立派な軍艦を造るようになったのであります。

斯う云う風な状態を見ますと、「我々はアメリカの艦隊を決して軽視してはいけない」。アメリカは今日の勢力に於ては日本に攻めて来ることは恐らく不可能であろうと私は思うのであります。リチャードソン提督が最近も新聞記者に語って、アメリカは即時開戦する為には兵力が不足であると云うことを述べて居ります。それは今の主力艦の実力とそれから補助艦艇の実力とそれだけでは西太平洋に来て主力艦の決戦を挑むと云うことは恐らく不能でありましょう。

併しながら其の不可能は何時迄も続く訳ではなくして、只今迄申上げましたようなアメリカの建艦が其の儘進捗して行くならば或時にはそれは可能である。又アメリカは主力艦の決戦が行い得ないから戦争はしないかと云うとそうばかりとも限らない。

主力艦決戦以外に海軍が作戦し得る幾多の戦術があるのでありますから、従って我々は矢張り「太平洋の彼方にはアメリカ海軍あり」と云うことを意識しつつ我々は自ら備えを固くし、且つ心の準(なずら)へを練ることが必要であると思うのであります。相手を軽んずることがあってはなりません。其の為にアメリカ海軍の特徴に就いても大体御話を申上げた次第であります。(おわり)(2014/3/11)

             ・・・

小生思うに「日本海、東シナ海、南シナ海の彼方には中共軍あり」と云うことを意識しつつ我々は自ら備えを固くし、且つ心の準備を練ることが必要である」。へたれイルカの米国は当てにはできない。自立自存で備えを固めなければならない。まずは核弾頭ミサイル1万発でハリネズミになるべし。 

2014年03月12日

◆重大な誤認につき訂正いたします!

浅野 勝人


本日本誌掲載しました3月11日付、「木を見て森を見ない典型。菅 長官は自らの信念を貫け!」の原稿の中で、河野談話の作成過程における日韓間の対応に関連して、以下の記述があります。

「国会の答弁で、何かまずいことをしたような印象を与えた石原元副長官は、問題を蒸し返すことが歴史に対して重大なマイナスになる認識に欠ける」。

これを読んだ現役のジャーナリストから次の指摘をいただきました。

「石原信雄氏は誠意をもって国会答弁をしたと思います。本人が残念だといったのは、韓国側のその後の対応に対してというよりも、当時の日韓両国政府の努力によって一定の合意をなしたことに対して、その苦労を知らず、かつそのマイナス効果も読めずに、その非をあげつらうことに血道をあげる今の日本の政治に対してではないかと感じました。」

重大な指摘をいただき、直ちに再検討、再確認をいたしました。

その結果、筆者が石原氏の発言について正当な解釈を誤った事実誤認と確認いたしました。

原文を、上記の指摘通りに訂正させていただくと共に、石原信雄氏の名誉を傷つけたことを深くお詫びいたします。
   安保政策研究会理事長(元内閣官房副長官、元外務副大臣)

◆人治社会への逆戻り傾向も

矢板 明夫


【北京=矢板明夫】中国の最高人民検察院(最高検)の曹建明検察長と、最高人民法院(最高裁)の周強院長は10日、北京で開会中の全国人民代表大会(全人代=国会に相当)でそれぞれ活動報告を行った。

両氏は今年の重点目標について「司法改革」などを掲げたが、報告書は、習近平政権が昨年から推進する政治運動を称賛、毛沢東時代の言葉が多く引用されるなど保守的な傾向が映し出されている。「法治ではなく、人治社会に逆戻りしようとしているのでは」と懸念する北京の法曹関係者もいる。

最高検は、昨年1年間に汚職などで立件された公務員が前年比で8・4%増の5万1306人だったと発表したうえで、この数字は習近平国家主席が主導する反腐敗キャンペーンの「新しい進展」と称賛した。

最高裁の報告書は昨年行われた薄煕来元重慶市党委書記や劉志軍元鉄道相に対する裁判を「反腐敗運動の実績」と位置づけた。

また、2つの報告書は共に毛沢東時代の言葉「楓橋経験」に言及した。浙江省の楓橋という小さな町の政府が1960年代、地元のさまざまなトラブルを上級政府を煩わせることなく、自力で解決したことを毛沢東が高く評価したことに由来する言葉だが、両報告書は「今後の仕事の中で楓橋経験を堅持し発展させていく」としている。

さらに、複数の「優秀な検察官」と「模範的な裁判官」の名前と業績が報告書で紹介され、全国の司法関係者に「(彼らに)学ぶ運動」を呼びかけたことも昨年までなかった内容だ。産経ニュース2014.3.11

◆震災で身にしみた「一日の貴さ」

新保 祐司


東日本大震災の発生から3年の月日が流れた。しかし、あの当時の不安は、今も記憶にはっきりと残っている。今日は、鎮魂に深く思いを致す日である。

多くの日本人と同じく私も何気なく続いていた日常生活が、突然断ち切られ、ふと人間が生きているということの根柢(こんてい)にある何かを垣間見たような瞬間に襲われた。

このときに向こうからやって来たような感覚をもって感じ取ったことは、極めて貴重な経験であって、試練の中で体得した思考が、これからの日本人および日本の在り方の根本を支えるものとなっていかなければならないであろう。

 ≪戦後日本人の思考を変える≫

それは、長く続いてきた日本人の思考の「戦後的なるもの」を打ち砕くはずであるし、戦後の高度経済成長時代に出来上がってしまった日本人の生活観を変えるものに違いない。それに伴い、日本という国家のかたちも、折しも進行している安全保障環境の苛烈化の中で大きく変更していかなければならなくなっている。

大震災の被害があまりにも大きいので、当初、動揺するしかなかったのだが、その頃、頭をよぎったものの一つに、中原中也の詩集『在りし日の歌』の中の絶唱「春日狂想」があった。愛児の死という悲痛の中で書かれた詩である。

この世の無常という感じに深く襲われていたことも影響したかもしれないが、大震災の惨禍は、普通に生きている人間にも「狂想」に追い込んでいくような衝撃があったのである。その詩の中に「まことに人生、一瞬の夢、ゴム風船の、美しさかな」という心に沁(し)み込んで来るような詩句があった。

その詩の冒頭で、中也は自ら死を思わないではなかったが、「けれどもそれでも、業(?)が深くて、/なほもながらふことともなつたら」と続けて、そのときには「奉仕の気持に、ならなけあならない」と書いている。

そして、2節は「奉仕の気持になりはなつたが、/さて格別の、ことも出来ない」と始まり、次のような独創的な詩句が続く。

 そこで以前(せん)より、本なら熟読。

 そこで以前より、人には丁寧。

 ≪テムポ正しき散歩をなして≫

 麦稈真田(ばっかんさなだ)を敬虔(けいけん)に編み−−

 以前より「丁寧」「熟読」

この「春日狂想」は、中也という悲劇的な人生を歩んだ人間ならではの深い孤独感の表現ではあるが、東日本大震災という衝撃の中では、この詩が持っている悲しみというものが、改めてしみじみと伝わってくるようであった。

大震災「以前より」、人間に対して「丁寧」になるように心がけているつもりであるし、大震災「以前より」、本ならば「熟読」するようになった。この「丁寧」や「熟読」によって、人生の時間が深まったような気がする。

日本は、大震災を契機に成熟の時代に入っていかなければならないが、成熟の時代とは人間の生きている時間感覚が深まっていくことに他ならない。携帯電話やメールのやりとりという交際は、「人には丁寧」の逆であり、本を情報源として速読している人は「本なら熟読」の時間を持っていない。これでは成熟社会の実現など難しいし、明治の文明開化以来の慌ただしい路線をいつまで経っても走り続けることになるであろう。

このところ、内村鑑三の『一日一生』を「熟読」している。1月1日から始まり1年365日分、1日ずつ聖書の1節を引用し、それに関連した内村の文章からの抜粋が掲載されている本である。序文の冒頭に「一日は貴い一生である。これを空費してはならない」と題名の由来が書かれている。

 ≪「多くの実を結ぶべし」≫

私は、これを古い角川文庫版で「熟読」しているが、「熟読」しているという意味は、この本を文字通り、その日の1日分だけ読むということである。文庫の解説の中で、弟子の山本泰次郎が「変化と生気と感興と迫力とが全巻にあふれて、応接にいとまないほどに読者をグングンと引っぱり、一日に数日分、時に十数日分、数十日分をさえ一気に読ませずにはおかない力を持つ。本書の貴い価値であると共に、貴い欠陥でもある」と書いて
いる。

大震災の「以前」、この本を愛読した若い頃は「貴い欠陥」のせいで、私も「一日に数日分、時に十数日分、数十日分をさえ一気に」読んだりしたものであるが、「以前より熟読」となった今では、1日分だけを「テムポ正し」く読んでいる。

次の日のものも読みたいという気も起きてくることがあるが、それを抑えることができるようになった。東日本大震災の衝撃によって、「一日」は「一日」のものを学べば足れり、という「敬虔」さと「一日は貴い一生である」という覚醒が与えられたからである。

ふと3月11日のところを見たらこの日の聖書の引用はヨハネ伝12章24節の「まことにまことに汝(なんじ)らに告ぐ、一粒の麥(むぎ)もし地に落ちて死なずばただ一つにてあらん。もし死なば、多くの実を結ぶべし」であった。何か偶然ならざるものを感じさせることであった。

(しんぽ ゆうじ 文芸批評家、都留文科大学教授)
                   産経[正論]2014.3.11

◆「真珠湾」の1年前(4)

平井 修一


彼等(海軍のアメリカ人)が勇猛心に富んで居るのはアメリカの国民性の中にまだ植民地的なワイルドな点が残って居ることと、もう一つはアメリカ海軍の伝統政策と云うものは、「海軍は即ち決戦の具である、軍艦は決戦をする為に存在する、従って海軍と云うものは攻勢を執る為に存在するものである」と云う精神が、是は伝統的に海軍の中に植え付けられ成長して居る点であります。

その点はアメリカの人的要素の中の一つの特徴であります。

造艦力でありますが、是はアメリカが世界で一番大きい力を持って居るのであります。今大戦艦の船体を造るには恐らく千万円単位の金を要すると思うのでありますが、船体を仮りに経済的に造ることが出来ましても、そこから大きな戦艦を進水させる港の広さ等色々の関係からこの船体が容易に出来ないのであります。

それから金は御承知の通り材料も十分にあるのだから本当に造る気があれば出来るのであります。又今迄それを造りかけたこともあるのであります。

問題は造艦技術がどんなものであるかと云うことであります。果たして立派な船が出来るのかどうかと云う問題であります。そこで四、五年前には「アメリカの軍艦は案外だらしがない」と云う風な説が世界に伝えられたのであります。「アメリカは其の材料設備はあるけれども一部には大したものでない」と云う風な批評がつい三四年前迄世界一般に行はれて居ったのであります。

処が最近のものはどうかと言いますと、欠陥によって今後改造すべき点を知り、又遠慮なく改造した結果色々な重要な材料を発見しまして、最近に於ける各軍艦の内容は先ず世界の一流として差支えない程度になって居るのであります。

是は常識で考えましてもあれだけ立派な飛行機を作り得るアメリカが単り軍艦に於てのみ世界の一流海軍に較べて劣って居ると云うことはないはずでありまして、失敗の経験に依って今日では立派な艦が出来るようになったのであります。

其の相当の艦と云うのは全体どう云う風な威力を持って居るかと云うことを考えなければならないのであります。今造って居るアメリカの戦闘艦は十艘でありますが、其の中の六艘が三万五千トンの日本の陸奥、長門に匹敵するものであります。

後の四艘が四万五千トン乃至五万三千トンと言われる巨艦であって、是はアメリカから言わせますと日本も大きいのを造って居るから俺もそれに敗けないものを造ると称して之を起工したのであります。

アメリカの発表に依りますと四艘の中二艘は四万五千トンと決定して居りますが後の二艘は五万トン乃至五万三千トンと云う風に言われて居ります。其の六艘は本年の六月進水したワシントン、ノース・カロライナ級でありまして、是は大体に日本の陸奥、長門に匹敵し、そうして陸奥、長門よりも厚いアーマー(装甲)を持って居るものと思えば大して間違いないと思うのであります。

日本の山城、扶桑に匹敵するのがオクラホーマー級のものでありまして、それ等を見ますると、アメリカ戦艦の特徴は非常な厚いアーマーを張って、其の代り速力が遅いという点であります。其のオクラホ―マー級の戦艦でも尚重要な点には十六インチの厚さの鋼鉄を張って居るのでありまして、是は恐らく日本のものよりも厚いのであります。

其の代り速力は日本の戦闘艦よりも一割方遅いのであります。此の点は両国の主力決戦を観察する場合の大きな又興味ある点であります。

アメリカの海軍は攻勢の為に存する、守る為にあるのではなくして攻める為にある。攻める場合の一番の重大な要件は何かと言えば砲力と防御力である。速度は第二の問題であります。何となれば自分は逃げない。

敵が逃げれば自分より早ければ之を逸するかも知れないが、併し自分は飽迄(あくまで)或(ある)戦略に副ふて決戦場迄行く、そうして敵と戦う、敵と戦う場合に一番大事なことは無論砲力であるが、もう一つは敵に打たれても沈まないと云う点、詰り長く攻撃に耐えるという点が戦闘艦をして攻撃の武器たらしめる為に必要であるのである。

斯う云う思想がアメリカには前からあるのであります。従って「アメリカの戦艦は遅いけれども強い」。そう云う意味に於ては世界で一番な戦闘艦でありましょう。今造りつつありますワシントン、ノースカロライナ級の戦闘艦は重要なる部分には皆十八インチの鋼鉄板を張っております。それから中甲板にも又四インチ前後の銅鉄板を張って居ります。それから上甲板は十インチの鉄板を以て張られて居ります。之は申す迄もなく弾く為の
ものであります。

恐らくワシントン級に至ってはそれよりも尚防御鉄板の為に余計のトン数を割いて居るのであろうと思うのであります。其の代り速力は二十七ノット位しか走らない。今世界の戦艦はドイツで最近に出来ると思いますがビスマーク級の三万五千トン戦艦は恐らく三十一ノット走ると思うのであります。

イギリスの戦艦は三十ノット、日本が若し造るとすれば或はそれよりも速いものを造るかも知れませぬ。少なくとも三十ノットは常識となって居る時に、それよりも一割も遅い二十七ノットの速力で満足して居ると云う所にアメリカの戦闘艦の特徴があるのであります。

是は唯決戦をする為に真っしぐらに戦場に臨んでそうしてそれで自分は逃げずに最後迄戦うと云う戦闘精神が軍艦の上に表現されて居るのであります。此の戦艦の特徴と相俟って我々はアメリカの海軍政策が常に攻勢的であると云うことを考え得るのであります。

アメリカで非常に大事にされて居るのが航空母艦であります。此の航空母艦を中心としたアメリカの新戦略に付ては本月も私は東京の或る雑誌へ其の一部を書いて置いたのでありますが、アメリカが空軍を完全に使用することは恐らく外の国よりも最も先に発達して来たのであります。

現在浮いて居るのが六艘、造って居るのが五艘、是から造るのが八艘でありまして、其の航空母艦の勢力はどこの国よりも多くなるわけであります。日本でもサラトガとかレキシントンと云う名前は子供でも知ってる位に有名になって居る艦であります。此の外に最近になってアメリカはエンタープライズ、ヨークタウン、レンジャー、ワスプの四隻(二万トン級)を造ったのであります。

其の航空母艦は元は戦闘機と偵察機と爆撃機と水雷機と四種類の飛行機を積むのが定石であったのでありますが、最近は其の中から偵察機と戦闘機とを取ってしまって、爆撃機と水雷機、此の二つに集中して来たのであります。サラトガ、レキシントンは大体百十二程積んで居るのであります。

アメリカは此の航空母艦を単独に外国の襲撃の為に使う戦法を考えて居った。所謂キャリヤー・ストライキング・フォース、空軍攻撃戦隊、私は之を海上電撃隊と云う風に訳して置いたのでありますが、それは一艘の快速巡洋艦とが組んで一体となって、そうして敵の都市要塞の爆撃、敵の商船の爆撃、或は商船隊の襲撃、又是が海上の決戦を行う場合は両軍の主力艦の前方に立ふさがってそこから水雷及爆弾を以て敵の主力艦の運動を妨害すると云う、そう云う風な幾つもの作戦に利用されるのであります。(つづく)(2014/03/10)

◆菅 長官は自らの信念を貫け!

浅野 勝人


「合格を待ちて逝きたる孫思い 泥にまみれし写真を洗う」。
石巻市の阿部敬子さんの歌と毎日新聞の「余録」が紹介しています。 11日の各紙は、どの記事も涙して文字が曇ります。もう、丸3年なのですねぇ。

菅 内閣官房長官は記者会見で、「河野談話の見直しはしない」と明言しました。木を見て森を見ない議論のなかから抜け出そうとする当然の政府方針です。その一方で作成経過を検証する作業はする方針を示しています。安倍総理の理念ファンに対する配慮でしょう。

政局に配慮した二律背反的整合性の追求は、諸外国からは理解されません。もっと正確に言えば、外国人には理解できないでしょう。

ですから、そんなことは先刻承知の菅 長官の腹は「見直すつもりはない」が真意に違いありません。菅 長官の信条に賛同します。そして、菅長官は国益を利すると判断した自らの信念を貫くべきだと考えます。

翻って、戦時下の慰安婦問題が再燃したのは、旧軍が強制、管理に関与したかどうかを調査すべきだという指摘に端を発しています。反語として、軍の関与はなかったから「河野談話」は根幹に誤認があると示唆しています。

そもそも、慰安婦の扱いについて、当時、強制・管理したことを記録に残す軍人ないしは軍属がいたはずがありません。そんな事実が判明したら軍の権威は失墜し、後々に計り知れない汚点を残す結果となります。

もし、仮に記録していた正直者に〇〇のつく軍人がいたとしても、敗戦が濃くなった状況下では、秘密書類の中でも真っ先に焼却して撤退するのが軍の常識です。一番知られたくない文書だからです。

従って、戦後70年経った現在、調査してみたところで証拠となる文書が見つかるはずがありません。ヒョッコリ見つかろうものなら、改めて、公式に旧日本軍の恥を世界にさらすだけです。

軍の関与を再調査せよという人の神経が私には理解できません。

「河野談話」をまとめる段階で、韓国側とすり合わせをしたかどうかを問題視する感覚についてです。

事実関係は知る由もありませんが、およそ外交文書、外交上の重要文書を関係国同士が水面下で折衝を繰り返してまとめあげるのは常識です。共同声明作りが、下準備の交渉で決裂して発表されなかった例は幾らもあります。

「河野談話」は日本政府の声明ですから、確かに韓国側と事前折衝をする類の文書にはなじみません。しかし、問題を解決するための声明ですから、発表して事態を却ってこじれせたのでは声明の意味がありません。

仮に内々韓国側の了解を求めた経緯があったとしてもむしろ当然の外交的配慮でしょう。国会の答弁で、なにかまずいことをしたような印象を与えた石原元官房副長官は、問題を蒸し返すことが歴史に対して重大なマイナスになる認識に欠けています。

作成の過程を調査するには、韓国や中国、オランダの元慰安婦にさせられた方々の事情聴取は避けられません。残り少なくなった高齢の婦人に、今更、昔の痛みを根ほり葉ほり聞き質して、堪えがたい苦痛を改めて与えるつもりですか。 

この人たち十数人が、かつて、恥を忍んでソウルの日本大使館の前で「証拠ならここにいる」と叫ぶ姿が世界にキャリーされたことを私は忘れていません。

第一次安倍内閣の外務副大臣だった折、民主党の女性議員二人が付き添って、韓国人の戦時慰安婦だった方を外務省に連れて来られました。

厳しい抗議を受ける覚悟はしていましたが、日本政府の植民地下で旧軍の行った全ての行動について、現在の日本政府及び日本人にも道義的責任が伴うこと。お詫びして許されることではないけれども、先輩たちの犯した罪については我が事として改めて謝罪させていただきたい旨を心の底から申しあげました。

その高齢の韓国婦人はうっすらと涙を浮かべたあと、私の目を見て微笑んでくれました。

だから「どこの国でもやっていたではないか」というNHK会長の発言は世界のもの笑いです。自国の歴史に対する評価に値しないからです。

もともと河野談話や村山談話、A級戦犯を祀った神社への政府首脳の参拝自重は、近隣諸国との歴史認識をめぐる反目の繰り返しを断ち切るための高度の政治判断だったはずです。

愛国心とは、自らの国を大切に育み、他国から侵略を受けたら、命を賭して戦う決意です。その場合、4月で76才の私は鉄砲を担いで戦います。おそらく何方の決意にも負けることはありません。

とても大切なことは、愛国心の中には自国の犯した過ちを率直に認める勇気が重い位置を占めている点です。だから、河野談話や村山談話がアメリカやヨーロッパの国々で至極当然な日本の歴史認識として受け止められているのでしょう。

菅 長官は迷わず、真っ直ぐに己の信念を貫くべきです。国益に沿う判断だからです。

河野談話や村山談話の見直し、破棄。天皇陛下も自重しておいでの靖国参拝を総理に強いる自民党や維新の会の国会議員の皆さん、木の枝ぶりだけにこだわらず、森全体を眺める努力をしていただきたいと念じます。
安保政策研究会理事長(元内閣官房副長官、元外務副大臣)

2014年03月11日

◆中国「旧東側」重視、鮮明に

矢板 明夫
 

【北京=矢板明夫】中国の王毅外相は8日の記者会見で、日本や米国を批判する一方、周辺国などへの挑発行為を行う北朝鮮やロシアに対する非難は避けた。欧米や日本と距離を置き、旧東側陣営との関係を重視する習近平政権の外交スタンスが、よりいっそう浮き彫りになった。

王外相は会見で、北朝鮮の核問題について「6カ国協議の議長国として協議の早期再開を希望している」などと述べ、中国の従来の主張を繰り返した。

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権が昨年12月、親中派の実力者、張成沢(チャン・ソンテク)氏の処刑に踏み切って中朝の要人の往来が一時止まり、関係が悪化したと指摘する声もあったが、王外相の発言で中国の対北政策に大きな変化はないことが明らかになった。

王外相はまた、「米朝双方に深刻な信頼関係の欠如があり、朝鮮半島情勢の緊張をもたらしている」との認識を示した。また、「各方面ともに冷静さを保ち、相手に善意を示すことが大事だ」と指摘した。最近も日本海に短距離弾道ミサイルなどを発射し、挑発行為を繰り返す北朝鮮を批判せず、米朝双方に責任があるかのような言い回しとなった。

また、緊張が高まっているウクライナ情勢については、「今日の事態に至った原因があり、背後には複雑な歴史経緯と利害の衝突がある」と語り、ウクライナへの圧力を強めるロシアへの非難を避けた。

その上で、「冷静さと抑制を保持し、さらなる緊張のエスカレートを避けることが急務だ」と語り、対露制裁を進める欧米諸国を牽制(けんせい)した。

米中関係については、「互いに領土や社会制度、核心的利益を尊重することが大事だ」と語った。オバマ大統領が最近、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世と会談したことを暗に批判した形だ。
       産経ニュース2014.3.9 01:06


           

◆「真珠湾」の1年前(3)

情報収録:平井 修一


アメリカでは7年間に之(337艘の軍艦)を造ると言って居りますが、最近は之を5年間に仕上げろと云う議論が非常に多いのであります。兎に角是が出来上がれば約300萬トンの大海軍が太平洋及大西洋に分れて動くのであります。

併しながらそれはいつ何時でも太平洋又は大西洋の一洋に之を集結することが出来るのでありますから、我我は矢張り300萬トンの大海軍が例えば太平洋に浮かんで来ると云うことを考えなければならないのであります。

丁度1938年に私はアメリカの議会で第2次ヴィンソン案が論議されて居た當時にワシントンに居たのでありますが、其の時或議員が今や日本は既に全体主義の陣営に参加して居る、従ってアメリカは大西洋ばかりでなく太平洋からも同時に攻撃される可能性がある、其の場合にはアメリカは果たして護り得るのか、斯う云う質問をした議員があるのであります。

そうすると軍令部長リー大将は「それは不可能である」。議員は又続いて「不可能と言って安心して居るのは困るじゃないか、何か海軍当局者に案はないか」と云う質問に対して、「若しアメリカが現在海軍の6割5分を増加して其の為に約45億円の経費を支出するならば3国の海軍に対抗 することが可能である」。

そう云う答弁をしました処が、議会では方々に笑声が起きまして、又海軍当局者自身も亦半ば冗談に之を答えた。詰り斯う云う計画はアメリカの大を以てしても不可能であると云う考を持って居ったものと明かに観取されたのであります。

私も亦そう云う風な大艦隊が造られるとは全く夢である と思って居ったのであります。いずくんぞ知らむか僅か2年後に是が本物 になって現れて来るようになったのであります。

其の結果、昔、日英米と云う3大海軍国が世界を支配したのに代わって、今度は此の儘で行くとアメリカ一国が其の海軍力を以て世界を支配するような時が来ないととも限らない。

仮りにアメリカの考に従って、敵は日独 伊の3国である、其の場合にアメリカの海軍力との比率はどうなるかと言 いますと、是は我が国の海軍計画がはっきりしませぬから従って間違のな い数字とは言いませぬけれども、大体に於てアメリカの艦隊が完成した場 合の割合を申上げますと、戦闘艦に於てはアメリカは32艘持つことに なります。

先程申上げました建造中のものが17艘、現在あるものが15、32艘になります。それに対して日独伊3国の戦艦は合計で31艘と推算さ れます。それから航空母艦は3国同盟の兵力が10艘、之に対してアメリカ は一国で13艘、それから大型巡洋艦、詰り日本の妙高、愛宕と云うよう な8インチ砲を積んだ大型巡洋艦に於ては3国と並ぶ35艘を持つこと になります。

即ち戦艦と航空母艦と大型巡洋艦に於きましてはアメリカ一国で日独伊三3国と対抗しうるという数字になっているのであります。唯軽巡洋艦に於て はアメリカの39艘に対して日独伊は58艘、それから潜水艦はアメ リカの大体130に対して3国の270、水雷艇に於ても亦アメリカの 2倍位になると思うのであります。

即ち奇襲艦艇、軽い方の艦隊に於きましては3国の方が勝って居りますけれども、決戦の主力としての重艦艇に於てはアメリカ一国が優に日独伊に対抗すると云う形になるのであります。

先程も申上げましたように斯う云 うような大艦隊は2年前迄は夢物語であると思われたのでありますが、そ れが今日の形勢に於ては愈々出来上がるのではないかと云う風に考えられ るようになったのであります。

そこで第二の問題はそう云う風な大艦隊が果して完全に整備され、又完全に運用され、又各軍艦の威力は我が国の軍艦と較べて優劣がないのか、又アメリカの海軍作戦はどう云う点にあるか、艦ばかりあっても人が不完全であれば大艦隊必ずしも驚くに当らない。

そこで只今迄申上げましたアメリカ海軍の数字は我々を驚かすに足りるのでありますが、其の作戦用兵、建艦技術、人間、それ等の点で果して同じように我々を驚かし得るか、此の点を少し御話申上げて見たいと思うのであります。

アメリカの人的要素に対しては日本では「大して恐るゝに足りない」と云う風に伝って居るようであります。それは決して間違ではないのでありますが、併しながら恐るゝに足りない所ばかりではなく、我々が警戒すべき点も亦あると思うのであります。

先ず欠陥として一般に認められて居る方面から申上げますと、第一にアメリカの海軍将校は年をとり過ぎて居ると云う点にあるのであります。世界と同じような制度に直さなければならぬと云う議論がアメリカ海軍の一部には前からあるのであります。現在はそれが改まって居りませぬから、若い元気の宜い将官と云うものが少ないのであります。

それから士官以下水兵の方面に於きましては、兵員を補充することが非常に困難なのであります。是は前々からあるのでありまして、大体アメリカは海国ではなくて、陸の国、詰り陸上にたくさんの商売があって、何も海の上で職を求める必要と云うものは日本やイギリスに較べて非常に少ない関係上、御承知のようにアメリカにはあれ程大きな国であって何事も世界一を目指すのが、商船隊に於ては昔から劣っておる。詰り海員に成り手が
少ないのであります。

大きな艦隊を作るけれども、それに完全に水兵を乗り組ませてそれを大きい戦闘艦なら完全に戦うために1500人の水兵が必要であると云う場合には1300人しか集まらない、と云う風な欠点が考えられるのであります。

是は我が国でも既に今日までしばしば「アメリカでは人間が集まらぬ、船は幾ら造っても人間が集らぬ」と云う風に殆ど決まり切った事実のように報道される。非常に強がりを云う場合に「アメリカなぞ驚くに足りない、軍艦があっても人間がない」、そう云う風な観測が行われるのは決して理由のないことではないのであります。

処がそう云う風な欠点があると同時に他方ではアメリカの水兵が馬鹿にならないと云う点があるのであります。それは「科学の知識が発達して居る為に軍艦へ乗り込んで軍艦を憶えるのが非常に早い」のであります。

例えばそういう電気と科学の知識の低い国民の水兵が三年間掛って漸く軍艦を憶えるのにアメリカの水兵は1箇年で之を憶えると云う位の割合で早く軍艦を知るのでありまして、アメリカでは戦闘艦は全部今は電気推進でありまして、総ての軍艦の運動は電気に依て居ります。

是は只今申上げました水兵の補充が困難であるし、成るべく人員を少くしようと云う関係からも来て居るのでありますが、其の電気をいじるのに普通の点でも田舎の水兵なら長いこと掛って漸くやるのを、アメリカの或水兵は一日で戦闘艦を動す方法を呑みこんでしまうと云うようなのがあるのであります。

此の前の世界大戦当時1箇年に八十何船と云うような多数の駆逐艦を造って之を欧州の戦場に送った時に海軍の水兵募集をしまして之を使ったのでありますが、皆短日月に呑みこんで役にたつようになったと云うことが記録されて居ります。

其の反対の例としてはバルチック艦隊が日本海の海戦に於て水兵が成って居らなかったと云う点と対照されるのであります。是等はロシヤの山の中から引っ張り出して狩り集めた水兵が24000マイルを航海して対馬海峡 へ来る迄の間にまだまだ軍艦を本当にハンドルすることに馴れなかったと云うことを説明する宜い証拠でありまして、今日の微妙なる軍艦はなかなか簡単に呑み込めないものであって、それの呑込みの早いのがアメリカの水兵の特徴の方に属するのであります。

それから将校が多く年寄であり、覇気に乏しいと云う風な欠点があることを申上げましたが、其の反面には一つの警戒すべき点として彼等が「勇猛心に富んで居る」と云う点であります。換言すれば「非常にワイルドである」と云う点であります。(つづく)(2014/3/8)

◆ウクライナ情勢 出遅れの米国

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
 

平成26(2014)年3月10日(月曜日)弐:通巻第4179号 

 〜ウクライナ情勢を巡る欧米露中の情報戦争、舞台裏は電話会談
   仲裁の中心はドイツのメルケル首相が握っている実態が判明、出遅れの米国〜

オバマ米大統領は、ほとんどしどろもどろ。外向的無能という醜態をさらしている。

米国議会と共和党保守派はオバマの無能を批判している。ウクライナの内戦状態から発展したクリミア分離独立問題である。
 
なにしろ、オバマの対ロシア外交はジグザグである。「ヴィザ発給停止、資産凍結、貿易と投資制限の制裁を加える」と言っていたかとおもうと、いつの間にあやらトーンダウンだ。日本は明確に「制裁には加わらないしウクライナへのIMFの方針が決まれば(援助を)熟慮したい」と述べたことが米国を動かしたか。

ともかく直近の米国の態度には「劇的な変化がある」(プラウダ)。

クリミア自治共和国のロシア編入を巡る住民投票は3月16日に急遽行われるが、結果は火を見るよりも明らかで、住民の大多数はロシア人である。セバストポリで開催された住民集会はロシア国旗が乱立している。

プーチンはしかしながら「クリミアは併合はしない」と明言しているため、かつての南オセチア型の決着になるだろう。つまりロシア国内では、クリミア自治共和国は独立国家扱いされ、欧米は容認しないが、既成事実が積み上がる。

欧米の論理は「クリミアへのロシア軍派遣は国際法に違反し、ウクライナ憲法に違反する」というものだ。

一方、プーチンのそれは「クリミア半島にすむロシア人の安全を保護するためであり、ウクライナに誕生した暫定政権は非合法である」とする。

2008年8月8日、北京五輪開会式の日、開会式に出席したプーチンのもとに飛び込んできたのがグルジアにおけるサアカシビリ大統領(当時)の戦闘開始というニュースだった。グルジア民族主義に立脚するサアカシビリ大統領がオセチアに分離独立は認めないとして戦争を仕掛けたのだ。

このサアカシビリの軍事的冒険は欧米が支援してくれるだろうという計算があったからだが、結果的に欧米は軍事支援をせず、その後、ロシアは南オセチア共和国独立を認め、世界はそれを認めなかった。

欧米の外交的矛盾は、ロシア同様に国益重視のご都合主義である。 シリアへの爆撃を一度は決定しながらも、英国は議会の反対を理由に逃げ、米国は追随して、アサド政権の横暴をみて見ぬふりをふることにした。セルビアへ5000メートル上空から介入したクリントン政権のようなまねもできなかった。

シリアでは、プーチンが明確に欧米の介入に反対したため、ロシアでは「プーチン外交」の勝利と評価された。今回のウクライナ問題でもクリミアへの軍隊派遣を決断したプーチンの人気が急上昇を示している。ロシア議会は満場一致で軍の派遣を決めた。しかもロシア国民の70%近くが、クリミア分離独立に賛成している。

東チモールの独立で欧米は「住民投票の結果を重視する」と言い、セルビアからのコソボ独立も、スーダンからの南スーダン独立も同じ論法で支持した。

それでいながら、クリミアのウクライナからの分離独立には反対するというのは論理的矛盾である。住民の意思を尊重するという原則は、結局、列強のご都合主義に振り回されるのだ。

住民の意思を尊重するのならば、新彊ウィグル自治区もチベット自治区も中国から分離独立しなかればなるまい。

▲ このややこしい時期に中国外交の鵺的行動が始まった

電話外交が国際政治の舞台裏で行われている。

仲介役はどうやらドイツのメルケル首相である。メルケルは中国の消極的沈黙を揺るがす目的を含めて、なんとか中国を欧米よりの姿勢に転化させることができないか模索しているようである。

中国の沈黙が欧米にとって不安材料となったらしいのだ。
 
メルケル独首相は3月2日、5日、9日の3回に亘ってプーチン大統領に電話をしている。キャメロン英首相とも頻繁に電話している。

同時にメルケルは3月2日、4日、7日にオバマ大統領に電話している。

他方、ロシアはラブロフ外相が「同盟」の中国に対して3日に王毅外相に電話し、プーチン大統領は4日に習近平に電話したことが判明している。 ラブロフは6日にも、楊潔チ国務委員(外交担当、前外相)に電話をかけているが、米国はライス大統領補佐官が、6日に楊潔チに電話しているだけ。それは「意見交換」しただけで、要するに米国は中国にさぐりをいれただけである。

こうみてくるとメルケルが3月9日に習近平に電話したことを、いかに評価するか。

3月下旬にドイツ訪問をひかえる習近平は、さきにホロコースト記念塔の見学希望を断られたが、メルケルは「訪問は歓迎する。中独両国の相互理解は重要であり、ウクライナ問題では平和的解決を希望する。中国の影響力は重要であり、この平和的解決に向かっての中国の協力が必要である」と述べたという。

また中独関係の発展を評価し、マレーシア航空事故での中国人の犠牲に哀悼の意を表した。

対して習近平は「ウクライナ問題は複雑であり。中国はあらゆる事態を考慮したうえで『法と秩序』に従った均衡を重視したい」と述べるにとどめた。

日本? ウクライナ問題では、例によって列強からまったくの蚊帳の外におかれている。

◆中曽根康弘会見記

浅野 勝人


● 大勲位への書簡

本日は、30分余の長時間にわたって面談の機会をたまわり、誠に有難く光栄に存じました。同道するよう誘って下さった中野清先生に感謝申しあげております。

内閣総理大臣を4年間全うし、間もなく96才におなりの長寿・元老のお立場にありながら、私どもに対して片言隻句に謙虚な思いやりが忍ばれ、感銘を刻みました。

人間は、ここまで達することができるのかと眩く映りました。遠く及ばぬことは申すまでもございませんが、余生の目標をいただきました。ご教導、まことに有難うございました。
ご自愛を切に祈念申しあげます。
         2014/3/5      浅野勝人   

●経 緯

現役時代の議員仲間で、中曽根教の信者、元衆議院議員・中野清さんが、私の著書、北京大学講義録「日中 反目の連鎖を断とう」を読んで感ずるところがあり、それに関連して大勲位(中曽根康弘)に会うので、著者のオマエも同道せよというのが面談に至った経緯です。

中野清さんは、今も川越菓匠くらづくり本舗会長で、埼玉県内に和菓子の店舗を数十店構える大店(おおだな)の主です。現役の頃、中野議員が商店街活性化をめざす「町おこし議員連盟」を立ち上げる際、協力を求められたのが付き合いのきっかけでした。

対外政策については、中野議員は一貫していわゆるタカ派の立ち位置を堅持しておいでだったこともあって、外交・安保政策をめぐって議論した記憶はありませんから妙な組み合わせの弥次喜多道中です。

●面談の中から2題

私の講義を聞いた北京大学の学生の感想文(著書に掲載)の中から、国際関係学部の女子学生のレポートの一部、「憎しみと誤解を抱えていては相互理解には至らない。相手の立場に立って配慮することや相手を許すことも出来ないままでは、共に発展することはできないと悟りました。これは今後の中日関係を律するうえで最も重視されるべき点だと気づかせていただき、今日の講義の最大の収穫でした」(鴻雁錦書の東来=東の方<日本>からの便り)

もうひとつ、物理学部の男子学生のレポートの一部、「浅野先生の北京大学での講義が一年ぶりに再会されると知りました。この機会に講義に参加しましたが、私にとっては日本人の話に耳を傾ける初めての経験でした。

まず、穏やかな教室の様子に驚きました。この信頼感に満ちた雰囲気は、日頃、中日関係に関する報道やネット発信からは微塵も感じられない不思議な安らぎでした。

中日関係に隔たりを作ってしまうのは、もしかしたら幅の狭い海峡やいくつかの島の存在ではなく、お互いに知ることを怠り、寛容の精神に欠けていることから来る心の障碍ではないかと思わず考えてしまいました」(相互理解の実践)2編を読み上げて、聞いていただきました。
 
中曽根先生は驚きの表情を浮かべて、「あなたの講義を聴いた学生の感想ですか。いい経験をしましたね。たいへん大切なことをやっておいでだと思います。しかも、後世に記録を残したことはまことに貴重です」とおっしゃって褒めて下さり、週末にじっくり読んでみたいと約束してくれました。

席上、「私はこの著書について、かなりの部分は賛同していますが、納得しかねる問題点がいくつかあります。例えば、尖閣問題の扱いをめぐって領有権論争を棚上げ・先送りして話し合い解決を求めるトウ小平の提案は、今の時代の人々には入れられません」。
中野さんらしい主張をして見解を質しました。

「話し合い以外に解決する方策があるでしょうか。日中双方が50年でも100年でもかけて根気よく話し合うことが肝要でしょう。いま、その雰囲気にないことは理解しますが、話し合い解決の環境づくりをするのが政治に求められる重要な役割だと思います」

私がNHK政治記者だったあの頃の中曽根康弘とはおよそ異なる穏やかな語り口ですが、まるで遺言のような確かな響きが感じられました。そして、私の方を向いて黙って所感を求められました。

「領土問題をめぐる解決策は二つしかありません。戦争をして結着をつけるか、話し合いで折り合いをつけるかです。戦さを選ぶのは愚かな選択です。北京大学の講義では、中国の若者たちにそのように語っています」と申しますと、中曽根先生はうなずかれましたがコメントはありませんでした。感動の35分間でした。
(安保政策研究会理事長・元NHK解説委員、元内閣官房副長官)





2014年03月10日

◆「ビットコイン」は人民元の最大脅威

田村 秀男


電子空間で創造される「ビットコイン」。その本質は史上空前の無国籍通貨である。ビットコインは金(きん)並みの希少価値があると思わせるうえに、保有者は身元を知られずに、安いコストで瞬時に資産を国外に移す手段になるのだから、自国通貨に信用が置けない国民にとってはまさに最後のよりどころとなる。当然、最大の攻防の場はバブル不安の中国となる。

ビットコインは2009年、「サトシ・ナカモト」と名乗る人物のインターネット論文の賛同者によって開発され、10年7月からインターネット上で各国通貨との取引が始まった。

ビットコインの入手(「採掘」と呼ばれる)は複数のコンピューターを駆使してきわめて複雑で高度な数式を解くことが条件となる。総量は限られ、採掘者が多くなればなるほど、入手量(供給)は少なくなる。利用者(需要)が増えるに従って相場が上昇する仕掛けだ。

最近ではビットコイン専用の現金自動預払機(ATM)も登場し始めた。ビットコインでの支払いを受け付けるレストランや商店も世界各地でぼつぼつ増えている。それでも、通貨としての使い勝手はいまいちだ。

モノを買ったり、一般の人の手から手へと流通するには限度があるし、そのままでは国債や株式にも投資できないし、融資も受けられない。

各国の紙幣や硬貨にないビットコインの強みはそれ自体が国家の保証がなくても価値を持つ点だ。ビットコインは国境を軽々と越え、アフリカの紛争国から鎖国状態にある北朝鮮の通貨ウォンまでも交換できるというから驚く。

昨年3月に勃発したキプロスの金融危機はビットコインの存在価値を飛躍させた。同国金融機関に資産を預けていたロシアの大口預金者が一斉にビットコインに殺到し、1単位あたり60ドル前後だった相場は3倍以上に高騰した。

そのあと、ビットコイン取引が急増してきたのが中国である。世界最初のATM設置場所は、多くの中国の富裕層とその一族が永住権を取得しているカナダ、次いで香港、さらにカナダに次ぐ移民先のオーストラリアといたれりつくせりだ。

13年夏から秋にかけて、中国では高利回りの理財商品の焦げ付き不安が出始めた。すると、中国国内にあるビットコイン取引所は大いににぎわうようになり、世界のビットコイン取引の3分の1を占める最大の市場になった。人民元を売ってビットコインを買い、資産を第三国に移す。ビットコイン相場はみるみるうちに急上昇し、2カ月間で10倍だ。

中国でのビットコイン熱は単なる富の逃避では済まされない。何しろ、中国への投機マネー(熱銭)の出入りの規模が大きい。不動産相場が高騰していた2011年秋には年間ベースで3千億ドルの熱銭が外部から流入し、不動産価格が下落に転じた翌年には同2千億ドル以上の資金が国外に流出した。厳しい政府の資本流出入規制をものともせずに熱銭を動かせるのは共産党幹部ら既得権者以外になく、いびつな中国の金融構造は変えようがない。

理財商品には熱銭が大きくかかわっているうえに、中国国内の預金者が投資している。理財商品で調達された資金の多くは不動産開発に投じられている。不動産バブルが崩壊すれば3兆ドル規模の不良債権が発生しかねない。その不安からビットコインが買われ始めたわけで、ビットコイン熱が高まれば高まるほど、人民元資産が売られて、バブル崩壊を加速しかねない。

危機感を募らせた中国人民銀行はそこで12月5日、「人民元の法定通貨としての地位を損なうのを防ぐ」として、金融機関に対しビットコインを使った金融商品や決済サービスの提供の禁止を発表した。金融機関の関与を封じれば、大口の資金逃避は防げると判断したのだ。

このショックでビットコイン相場は暴落したが、今年1月に入ると相場は反転した。理財商品の焦げ付き不安が再燃したのだ。そこで中国政府は非公式に介入して理財商品を救済したが、モグラたたきに近い。

2月に入ると、大手のビットコイン取引所「マウントゴックス」(東京・渋谷)がハッカーによる攻撃を受けて払い戻し停止に追い込まれ、世界のビットコイン愛好者が衝撃を受けた。

が、それにもめげず香港では2月末にビットコインの世界初の対面型販売所がオープンした。ビットコイン相場はロシア軍のウクライナ介入を機に、持ち直しつつある。中国当局は次にはどんな手を打つのだろうか。
                  産経【日曜経済講座】2014.3.9


◆ウクライナを見捨てざるを得ない

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
 

平成26(2014)年3月7日(金曜日):通巻第4174号 <前日発行>

 〜中国のウクライナ投資は200億ドル、捨て金になるか
   ロシアとの友好演出のためにはウクライナを見捨てざるを得ない〜

昨師走にウクライナを訪問した習近平はヤヌコビッチ大統領(当時)と投資協定に署名し、80億ドルの援助ならびに投資を取り決めた。

ワシントンのシンクタンク「CATO研究所」のドラグ・バンドウ研究員よれば「無駄になる懼れが高まった。そればかりか、中国はウクライナへ過去の投資を見捨てざるを得なくなるだろう」と予測する(FOX ニュース、3月6日)。

過去2年間に中国はウクライナへ200億ドルもの大金を注ぎ込んだといわれる。
 
主目的は農地買収で、開拓した農地へ中国から農民を移民として送り込むのである。ところが、農地買収を契約したとされるウクライナのKSGアグロ社は「中国とは『目論見書』(LETTER OF INTENT)にサインしただけで契約はしていないと言う。
 
契約が暗礁に乗り上げた理由は「中国の農地買収の究極目的は移民であり、ウクライナは農民の移民を受け入れない。しかも300万ヘクタールの大地を外国へ売却するはずがない。報道されているのは3000ヘクタールの別件である」。

ただでさえウクライナは中国の密航ルートとして活用されてきた。ウクライナからポーランドやチェコへもぐりこむマフィアが斡旋するルートが存在し、いちどEUへ入れば域内の移動が自由になるため、およそ100万人から200万人が、この密航ルートでEU域内へ潜り込んだとされる。

他方、ウクライナ用地の買収はフランスのロスチャイルド系列ドレフェス社が行っているが、これはウクライナ農民を雇用して農作物を生産している。