2013年08月03日

◆中国経済の絶体絶命

石 平
  

下限と上限を設けるジレンマ…

中国安徽省の建設現場で作業する労働者たち。中国経済の成長鈍化が顕著になってきた=今年7月(ロイター)

先日、中国の李克強首相が専門家や経営者を招いて「経済情勢座談会」を開いた。そこでの李首相の発言が政府の今後の経済運営の大方針を示したものとして注目を集めている。いわく、「(今後の)経済政策の主な目的は、経済の急激な変動を避け、運営を合理的な範囲内に保つことだ。その下限は安定成長の維持と雇用確保であり、上限はインフレの防止だ」と。

李首相はここで、就任後、初めて、政府の経済政策の「下限」と「上限」を口にしたのだが、それは一体どういう意味だったのか。

前任の温家宝首相時代、中国政府は貨幣を乱発し公共事業投資や不動産投資をむやみに拡大させ、高い成長率を維持してきた。その結果、貨幣の過剰供給が深刻なインフレの発生を招き、食品を中心とした物価の高騰が社会全体の安定を脅かすこととなった。

それを受けて政府は、インフレ退治の厳しい金融引き締め政策を実施した。インフレ率は、それで落ちてはきたのだが、引き締め政策の副作用として中小企業の倒産潮(ラッシュ)や公共事業投資の落ち込みなどが生じ、中国経済は栄光の高度成長から悪夢の減速へと転じたのである。

そして李首相の時代となった今、経済減速の流れがより加速化している中で、李首相自身も本来なら、財政出動で成長の回復を図りたいところだろうが、情勢がそれを許さない。財政出動のために貨幣の過剰供給をもう一度やってしまえば、インフレの悪夢が蘇(よみがえ)ってくるからである。

だからこそ、李首相の部下である楼継偉財務相は7月21日の会議で「中国はふたたび大型の経済刺激策を打ち出すことはない」との方針を明確にした。貨幣乱発の景気対策の余地は既にない。李首相のいう「インフレ防止」という経済政策の「上限」とはまさにそれである。

しかしこのままでは、成長率のさらなる減速は避けられない。それどころか、通常の銀行とは異なる金融機関から高利で貸し借りをする「シャドーバンキング」の問題が浮上している中で、金融危機の発生を防ぐため政府がふたたび金融引き締め策に転じたことで、実体経済の受けるダメージはさらに深刻となった。

中国中小企業協会の李子彬会長は最近、国務院の副総理に送った手紙の中で、金融引き締めによる「融資難」の影響を受け、全国の中小企業が「深刻な生存難」に直面していることを直訴している。

中国経済の約6割を支えている中小企業が「生存難」に陥ってしまえば、実体経済のよりいっそうの冷え込みは必至だ。そしてその後にやってくるのは、全国的な大量失業の発生であろう。

実際今年度、大学を出た約700万人の卒業生のうち就職が決まったのは4割未満との報道もあり、経済減速の雇用への悪影響はすでに現れている。7月16日には、北京大学光華管理学院の蔡洪濱院長が、「今後、経済全面衰退のリスクがますます高まってくる中で、全国的な失業潮が起きる可能性がある」との警告を発した。

ただでさえ社会的不安が高まってきているこの国で、全国的な「失業潮」でも起きれば一体どういうことになるか。最高指導部の一員として李首相もこのような悪夢の襲来を何よりも恐れているはずだ。彼が「安定成長の維持と雇用確保」を経済政策の「下限」に設定していることの理由はまさにここにある。

しかしながら、もう一方の「上限」であるインフレ防止のために、彼らは思い切った景気対策もできなければ、実体経済を救うための金融緩和もできない。「安定成長」を維持できる決め手は何一つない。「雇用の確保」も結局絵に描いた餅となろう。

深刻なジレンマに陥っている李首相と中国経済は今、まさに絶体絶命の窮地に追い込まれている。


【プロフィル】石平
せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年 来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経 て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、 日本国籍を取得。
産経ニュース[石平のChina Watch] 2013.8.1

<「頂門の一針」から転載>

2013年08月02日

◆輿石副議長容認−それでいいのか?

阿比留 瑠比


参院自民党執行部に問いたい。あなた方は本当にそれでいいのですか、お天道)様(おてんとうさま)と国民に恥じるところはありませんか、と。もちろん、民主党の輿石東(こしいし・あずま)参院議員会長を、栄えある参院副議長候補として容認するという件についてである。

輿石氏といえば、教員を違法・脱法の政治活動に駆り立てることで知られる山梨県教職員組合(山教組)委員長出身で、「日教組のドン」と呼ばれる存在だ。

「(日教組は)政権交代にも手を貸す。教育の政治的中立などと言われても、そんなものはありえない。私も永遠に日教組の組合員である自負を持っている」

輿石氏が平成21年1月の日教組会合で、こう高らかに宣言したことはあまりに有名である。これに対し、「教育基本法や教育公務員特例法に抵触する」「憲法26条の『国民の教育を受ける権利』を侵害する」などと国会で強く批判してきたのは自民党ではないか。

安倍晋三首相も参院選期間中の7月7日、甲府市内での街頭演説で強調した。

「私たちはすべての子供たちが真っ当な規範意識、道徳観を身につける機会を保障していく。残念ながらそれに反対する人々が教育現場にもいる。この地域にはその親分の一人もいる。断固として子供たちの未来のために戦っていく」

名指しはしていないが、どう考えてもこれは輿石氏と日教組のことである。いわば戦うべき「宿敵」が副議長という栄誉を担うことに対し、自民党が協力するというのは筋が通らない。

今回、新たに自民党の参院議員会長に就いた溝手顕正(けんせい)氏がかつて、輿石氏についてこう揶揄(やゆ)していたことも記憶に新しい。「支離滅裂、まさに例えればヌエのような存在だ」

ヌエとはサルの頭にタヌキの胴、トラの手足にヘビの尾を持つ伝説の生き物だ。つまり溝手氏自身が、輿石氏をほとんど妖怪扱いしていたのである。

そんな相手が三権の長である正議長に準じ、皇位継承の順序変更にもかかわる皇室会議メンバーでもある副議長に就任するのを何ら抵抗もせずに認める−。国会対策上の必要性があったとしても、これでは国民を愚弄していると受け止められても文句は言えない。

「安倍首相への問責決議案提出を主導した輿石氏を認めたら、自民党は『きっと裏取引がある』といわれるだろう。古い自民党に戻ったなとの印象もある」

輿石氏の「君臨」にうんざりしている山教組OBの一人はこう語る。首相に近い複数の自民党参院議員も「輿石氏には投票しない」と明言しており、自民党の足並みも乱れそうだ。

輿石氏は22年春、北海道教職員組合(北教組)幹部らが、民主党の小林千代美衆院議員(当時)に違法な選挙資金を提供した政治資金規正法違反事件が起きた際、北教組とウグイスの鳴き声をもじってこう唱え、記者団をけむに巻いた。

「ホー、ホッキョウソ」 何が言いたかったのかはいまだに謎である。ともあれ、参院副議長の職責にふさわしいとはとても思えない。(政治部編集委員)(阿比留瑠比の極言御免)産経ニュース2013.8.1

<「頂門の一針」から転載>

2013年08月01日

◆権力闘争で劣勢に立つ習氏

矢板 明夫


中国の江沢民(こうたくみん)元国家主席(86)が7月初め、米国のヘンリー・キッシンジャー元国務長官(90)と会談し習近平(しゅうきんぺい)国家主席(60)について「非常に仕事ができ、智恵のある国家指導者だ」と絶賛した。

引退した政治家が公式の場で現役執行部メンバーを評価することは近年の中国では異例のこと。少数民族問題や外交などで失敗を重ね、求心力が弱まっている習氏を応援する狙いがあるとみられる。完全引退したはずの江氏の力を借りなければならない習主席は今、党内の権力闘争で苦しい立場に立たされていることがうかがえる。

江氏が異例の助け船

江氏とキッシンジャー氏との会談は、7月3日に上海市内で行われた。中国官製メディアはこれをすぐに伝えなかった。会談後約3週間が過ぎた22日になってから、中国外務省のホームページでその内容が発表された。

それによると、江氏はキッシンジャー氏に対し、習主席について「最近、新疆(しんきょう)ウイグル自治区で暴動があった際に断固たる決断で、迅速に沈静化させた」と評価したうえで、6月に訪米しバラク・オバマ大統領(51)との米中首脳会談を行ったことにも触れ、「率直に両国関係における多くの重要課題や国際・地域問題について意見交換を行った。中米関係の発展に非常に有益だ」とたたえた。

江氏は最近、習氏と直接電話でやり取りしたことを明らかにし、「自分は新指導部をとても信頼している」と称賛した。

中国では改革開放が始まった直後の1980年代から90年代にかけて、●(=登におおざと)小平(とうしょうへい)氏(1904〜97年)ら引退した政治家が外国要人と会談する機会を利用して、内政、外交政策について意見を述べ、現役指導部の仕事に干渉した時期があった。

「長老政治」「二重権力構造」などと国内外から批判がよせられた。トウ氏ら大物長老の死去にともない、90年代後半からこうしたやり方が是正され、引退した政治家は党の内部会議では発言するが、外交活動には原則的に参加しない。政策に対しても公式の場では意見を発表しないことが定着した。

少数民族問題、外交で

今回、江氏がこうした伝統を無視して習氏への支持を表明したのは、共産党内の権力闘争が白熱化し、習氏は胡錦濤(こきんとう)前国家主席(70)が率いる派閥との対決で劣勢に立たされていることが背景にあるとみられる。

習氏が現在、党内で最も批判されているのは新疆ウイグル自治区で起きた暴力事件への対応と、対米外交の失敗である。江氏があえてこの2つの件を取り上げたのは、長老として「お墨付き」を与えることで、党内の習氏への批判を沈静化させる狙いがあるとみられる。

新疆ウイグル自治区では、4月23日に警察官とウイグル族グループが衝突し、死者21人の暴力事件が発生した。習執行部は武装警察を大量投入して締め付けを強化したが、直後に複数の暴力事件が発生。

北東部のルクチュンで6月26日に起きた暴動では死者が35人に上った。習指導部はその後、ウイグル人から刀を取り上げるなどさらに弾圧姿勢を強化した。党内から「4月の教訓が生かされていない」「懐柔策も同時にやらないと駄目だ」と言った批判が寄せられている。

また、習氏自身の強い意向で実現した6月の訪米では、準備不足のため何の具体的効果も挙げられず、日本と対立する尖閣(せんかく)諸島(沖縄県石垣市)問題で米国の中立表明をしつこく求めたことで、オバマ大統領の態度を硬化させた。その後、太平洋地域における米中の対立が逆に深刻化したことについて、党内から「行くべきではなかった」といった批判が出ている。

全面抗争に発展も

共産党筋によると、6月末に行われた政治局会議では、胡氏に近い汪洋(おうよう)副首相(58)ら改革派が最近の対外強硬路線と国内への締め付け強化への不満を表明。習氏の側近である劉雲山(りゅううんざん)・政治局常務委員(66)が批判された。

政治局の中では汪氏を支持する意見が過半数を占めているため、習氏は一気に劣勢に立たされた。胡派の強い圧力を受けて、昨年失脚し、習氏とは近い存在であった元重慶市トップの薄煕来(はくきらい)・元政治局員(64)の初公判も近く開かれることになった。

江氏が表に出て習氏への支持表明したことで、今後、胡派VS習派・江派連合の対立構造はさらに明確化し、全面抗争に発展する可能性もある。産経ニュース 【国際情勢分析】 矢板明夫の目013.7.28

<「頂門の一針」から転載>

◆平等院鳳凰堂「平成の大改修」に賛否

渡部 裕明


平等院鳳凰堂(ほうおうどう)(京都府宇治市)といえば、10円硬貨の絵柄にも採用されている日本を代表する名建築だ。その鳳凰堂の外観が来春、一新される。

京都府教育委員会が進める「平成の大改修」で建物全体を赤く塗り、鳳凰に金箔(きんぱく)を施すなどして平安時代の創建時の姿に近づけることが決まったのだ。

現在の地味で枯れた印象から、「真っ赤で金ピカ」の姿に大変身するわけだが、この改修をめぐり「歴史的に意義がある」「いや古色が失われ、違和感を覚える」と研究者らの間で賛否の声がわき上がっている。

 ◆「丹土塗り」に復原

 「新しい鳳凰堂の姿に期待してほしい」

7月9日、平等院で記者会見した神居(かみい)文彰住職と鶴岡典慶・府教委文化財保護課副課長は、こう言って胸を張った。

国宝で、世界遺産にも登録されている平等院。大改修は平成2(1990)年から始まった。その過程の発掘調査で、天喜(てんぎ)元(1053)年、関白・藤原頼通によって創建された際は屋根瓦が木製だったのが、約半世紀後の修復で、現在のような粘土瓦による総瓦葺(そうかわらぶき)になったことなどが明らかにされた。

平成大改修の仕上げは外観の彩色、つまり柱や扉の塗り替えと、屋根を飾る鳳凰などの手直しである。

国宝建造物などの修復にあたっては、可能な範囲で古い形式や仕様に復原する方針が取られる。はっきりした痕跡などが確認されれば現状を改め、古い形態に戻すのだ。

鳳凰堂は戦後間もない昭和25年に修理された。その際の外観の彩色は、鉛を焼いて作った赤色顔料の「鉛丹(えんたん)」で塗り直した。しかし今回、古い瓦に付着した顔料を分析したところ、かつては鉛丹でなく酸化鉄と黄土を混ぜた「丹土(につち)」だったことが判明した。

同じ赤色顔料ながら、丹土は鉛丹に比べてより落ち着いた色調になる。最近再建された平城京大極殿(だいごくでん)も丹土塗りで、費用もほぼ同じことから、府教委は丹土塗りの採用を決めた。

昭和の修復では、柱の下方は鉛丹を塗らないなど、古色を重視していた。今回は柱をすべて塗り、赤色が目立つようにする。

 ◆「特注瓦」も復活へ

彩色とともに注目されるのは、軒瓦を12世紀初頭のものに変更することだ。発掘で出土した瓦は、平等院の荘園だった向山(むかいやま)(大阪府八尾市)の瓦窯(がよう)で焼かれていた。軒丸瓦のデザインはハスの中心に巴文(ともえもん)があり、平等院用の特注品だった。これが、実に900年ぶりに復活する。

それ以上に目を引くのは、金具類に金箔を押すことだろう。鳳凰堂のシンボルで名前の起源の鳳凰は青銅製だが、創建当初は金鍍金(ときん)=めっき=されていたことがわかっており、今回、金鍍金か金箔押しで復原される。

また左右の翼廊(よくろう)の屋根を飾る「露盤宝珠(ろばんほうじゅ)」も金色に変わる。こうした変化を、観光客はどう感じるのだろう。

創建時の姿への復原がいいのか、くすみなどの経年変化が現れた現在の姿を大切にすべきか。古建築を多く抱える奈良や京都では、大きな化粧直しがあるたび、議論が巻き起こった。

昭和56(1981)年、薬師寺に西塔が再建された際、外観は創建時を想定して極彩色に塗られた。この時は「“凍れる音楽”と例えられる東塔(国宝)の古色にそぐわない」と地元から大反対が起きた。

清水寺三重塔(重文)は修理の際の調査で創建時は極彩色だったことがわかり昭和62(1987)年、復原された。寺側は渋ったが、その後、西門(同)も極彩色で塗り直され、景観は華やかになった。

一方、「天平の甍(いらか)」として有名な唐招提寺金堂(国宝)は平成12(2000)年から解体修理されたが、彩色面では現状を変えなかった。創建時の彩色も一部判明したが、全体の復原には「資料不足」(文化庁)と判断されたためだ。

 ◆答えが出るのは来春

平等院鳳凰堂についても、専門家や歴史ファンから「創建時の姿を知ることは意義がある」「せっかくの『古色』が失われ、『わび・さび』の感覚からも外れる」と、さまざまな声が上がっている。

平等院修理の方針について学識経験者らが話し合う「修理委員会」委員長、斎藤英俊・京都女子大教授(建築史)は「歴史的に裏付けされた形態に戻すのは基本方針。鳳凰堂には宗教施設と文化財という両面があり、最初は違和感があるかもしれないが、10年もたてば慣れる」と話す。

一方、「もう少し議論すべきだ」と主張するのは杉本秀太郎・国際日本文化研究センター名誉教授(フランス文学)。重要文化財に指定されている杉本家住宅に住み、祇園祭の懸装品(けそうひん)の復原にも関わってきた杉本氏は「外観は大事で、できるだけ現状から変えない方がいい。祇園祭の懸装品でも違和感を覚えるものがある。元の色に戻したあと、もう一度古色を加えるなど工夫してはどうか」と指摘する。

彩色などの工事は、間もなく始まる。作業を終え、鳳凰堂を覆う工事用素屋根(すやね)が完全に取り払われるのは来春だ。訪れた観光客は、どんな「答え」を出すのだろうか。
産経新聞 7月29日

<「頂門の一針」から転載>

2013年07月31日

◆米上院「尖閣」で中国非難の決議

古澤 襄


アメリカ議会上院は29日、中国当局が沖縄県の尖閣諸島の周辺に船を派遣して地域の緊張を高めていると非難したうえ、中国側に自制を求める決議会一致で採択した。

<この決議はアメリカ議会上院の外交委員会に所属する与野党の議員が提出したもので、上院は29日の本会議で、全会一致で採択しました。

決議は沖縄県の尖閣諸島を含む東シナ海や南シナ海で中国の海洋当局が活動を活発化させていると指摘したうえ、「中国の海洋当局の船が尖閣諸島の周辺で、日本の領海に侵入したり、中国海軍の艦艇が海上自衛隊の護衛艦に射撃管制レーダーを照射したりしたことが地域の緊張を高めている」として中国を非難しています。

そのうえで、決議は「尖閣諸島は日本の施政下にあり、アメリカは日本の施政権を損なおうとするいかなる一方的な行為にも反対する」として、中国側に自制を求めています。

アメリカ上院は去年、尖閣諸島を日米安全保障条約の適用範囲とする法案を可決しましたが、先月行われた米中首脳会談で、中国側が尖閣諸島を巡って従来の主張を崩さなかったことから、こうした決議を採択することで、中国をけん制するねらいがあるとみられます。(NHK)>

<【ワシントン時事】米上院は29日の本会議で、沖縄県・尖閣諸島周辺を含む東シナ海や南シナ海での中国の「威嚇行為」を非難し、全ての当事国に平和的な解決を求める決議を全会一致で採択した。こうした立場を取るオバマ政権に歩調を合わせ、中国をけん制するのが狙い。メネンデス外交委員長(民主)ら超党派の議員が6月に決議案を提出していた。

決議は、尖閣諸島の領有権を主張する中国の動きに対して「米政府は日本の施政権を害そうとするいかなる一方的な行動にも反対し、そうした行動に米国の立場は影響されない」と表明。日米安全保障条約に基づき、対日防衛義務を負っていることを明記した。 

また、海上自衛隊護衛艦に対する中国海軍フリゲート艦の射撃管制用レーダー照射や、中国とベトナムやフィリピンとの間の領有権争いに言及し、「地域の緊張を一段と高めている」と批判した。(時事)>2013.07.30

<「頂門の一針」から転載>

2013年07月30日

◆君臨7年、輿石氏の何がいい?

阿比留 瑠比


政治の世界は栄枯盛衰、権力者の移り変わりが目まぐるしい「ドッグイヤー」だ。そんな過酷な政界にあって、枢要な同一ポストに長年にわたってとどまるという離れ業を演じているのが、民主党の輿石東参院議員会長である。

輿石氏がこの地位に就いて、6月12日で丸7年となった。5月には喜寿(77歳)を迎え、ますます元気な様子なのは、誠に慶賀に堪えない。

とはいえ、民主党が一体何の目的と成算があって輿石氏にポスト独占を許してきたのかはさっぱり分からない。輿石氏に重責を担う政治手腕や理念が果たしてあるのかも甚だ疑問だ。

「参院選勝利、みんなで力を合わせていきたい。よろしくお願いする」

輿石氏は6月12日の党参院議員総会でこうあいさつした。日ごろから「顔合わせ、心合わせ、力合わせ」を口癖にしており、言っている内容は十年一日のごとく代わり映えがしない。

だが、まるで時代の潮流を無視するように居座る輿石氏とは対照的に、政界は大きく変遷してきた。

輿石氏が参院議員会長に就いた平成18年6月の時の首相は、小泉純一郎氏だ。それから首相は安倍晋三氏→福田康夫氏→麻生太郎氏→鳩山由紀夫氏→菅直人氏→野田佳彦氏から再び安倍氏へと7代変わった。時代はダイナミックに動いても、輿石氏はずっとそこにいる。

その間、民主党は野党から悲願の政権交代を果たして与党となり、今度は下野の悲哀を味わった。民主党が大敗した昨年12月の衆院選では、輿石氏は選挙責任者である党幹事長を兼任していたが、責任を取って参院議員会長の地位から降りることはなかった。

鳩山政権では首相の鳩山氏をかばおうとせず、8カ月余で辞任させた。菅政権では22年の参院選で自ら率いる参院民主党を敗北させ、「党内融和」を期待された野田政権では約70人の離党者を出す始末だった。

「離党防止策があるんだったら、ぜひ教えてくれ」

輿石氏は今年4月の記者会見では、記者団にこう問いかけている。国民はむしろ民主党に、「輿石氏のいいところがあるんだったら教えてほしい」と聞きたい気持ちではないか。

そうなると、輿石氏自身が改選を迎える3年後の参院選まで、10年間も党参院議員会長の座にとどまる可能性が高いのである。これはもはや「怪現象」だ。

かつて自民党で「参院の法王」「尊師」と畏怖された村上正邦元労相と、「参院のドン」と呼ばれた青木幹雄元官房長官の党参院議員会長在任期間はそれぞれ約1年半と約3年だ。この事実と比べても、現状がいかに異様かがわかる。

その村上氏は、輿石氏のあり方について手厳しい。

「長いねえ。参院議員会長として実績を上げてきたならまだいいが、何もない。もう役割は終わったし、これからやるべきこともない。これまでの責任を取って早く引退すべきだ」

それでも、民主党からは輿石氏に代わって自分が参院議員会長を引き受けようという議員は出てこないのか。参院第一党が、そこまで人材が枯渇しているというのなら、何をか言わんやだが…。

産経ニュース【阿比留瑠比の極言御免】2013.6.13


<「頂門の一針」から転載」

2013年07月29日

◆再編、カギは民主分裂?

坂井 広志


【野党戦線異状アリ】民維み、代表続投で増す厳しさ

参院選で自民党の独り勝ちを許した民主党、日本維新の会、みんなの党では、責任問題が曖昧なままそれぞれのトップの続投が決まった。

選挙で野党共闘を実現できなかった各トップがそのまま居座ることで野党再編への道のりが険しさを増したのは事実。しかし、一定規模を持つ最大野党の民主党が分裂すれば話は別で、同党の行方が注目される。

世論がネットで形成される時代を迎えたのは、民主党も同じ。「海江田(万里代表)降ろし」ともいえる代表選実施論は若手議員がツイッターでつぶやき始めたのがきっかけとなり、26日の両院議員総会で火を噴いた。

そのツイッターで細野豪志前幹事長は28日、「今日は地元活動。原点に返って地元活動もやろう」とつぶやいた。「原点回帰」を訴えた書き込みではあるが、「地元活動も」という表現に象徴されるように、中央政界で再編を狙う思いは衰えていない。

党国民運動委員長の辞意を執行部に伝えた長島昭久元防衛副大臣は27日にフェイスブックに「腹はくくってます!」と意味深長な書き込みをした。

海江田氏の続投は両院総会で了承されたが、党内は一枚岩ではなく、若手や非労組系を中心とした「代表選実施を求める再編論者」と、労組系を中心とした「代表選阻止を狙う再編反対派」に二分されている。党内に再編にはやる議員が相次いでいるのは、早期に再編に動けば主導権が握れる可能性が高いからだ。

再編志向の橋下徹・日本維新の会共同代表(大阪市長)は「大阪都構想」実現に向け、9月の堺市長選に全力投球する構え。同党の松井一郎幹事長(大阪府知事)は国会運営について「主体は国会議員団でお願いする」と明言しており、当面は野党再編にまで手を回さない方針だ。

みんなの党は再編に慎重な渡辺喜美代表と積極的な江田憲司幹事長の対立が続く不安定な状況にあるが、仮に分裂しても政党の規模からしてインパクトは大きいとはいえない。

細野氏は周囲に「俺は民主党しか知らない」と漏らし、ささやかれる離党説を打ち消すのに躍起となっている。だが、いずれにしても再編の場合は分裂は避けられそうもない。その「痛み」を乗り越えることができるかどうか−。民主党議員には今、その覚悟が問われてもいる。
産経ニュース 2013.7.29 00:03

<「頂門の一針」から転載>

◆虫が良すぎる韓国!

加藤 達也


戦時徴用で日本企業に賠償支払命令 一方で投資呼びかけ日本統治時代の韓国で労働者を戦時徴用した日本企業に対する賠償支払いを命じた裁判が、日韓の政府や経済界に波紋を広げている。判決は日本企業の在韓資産に対する差し押さえの仮執行を認めており、原告側は判決確定前にも強制執行で日本企業の在韓資産を差し押さえることができる。

万が一、強制執行されれば、日本企業の韓国に対する投資リスクの認識が高まることは必至で、韓国から投資引き上げが続出する可能性もある。韓国の「正しい歴史認識」の押しつけが日韓経済に本格的に影を落とすことになる。

判決は今月10日、朝鮮半島の日本統治時代、当時の日本製鉄に戦時徴用された元労働者が新日鉄住金(旧・日本製鉄)を相手取り個人補償を求めた訴訟の差し戻し控訴審で、ソウル高裁が示した。新日鉄住金に対し、原告4人にそれぞれ1億ウォンずつの賠償金支払いを命じている。

新日鉄住金の場合、韓国最大の製鉄会社でかつて技術移転して創業を支援したポスコ(旧・浦項総合製鉄)の株式や、取引で発生した債権などの在韓資産があるとされている。

強制執行で資産差し押さえを主張する勢力もある

新日鉄住金側は「国家間の正式な合意である1965年の日韓請求権協定を否定する不当判決で誠に遺憾だ」として韓国最高裁への上告の意思を示し、賠償支払いには応じない考えだ。

しかし、判決は資産の差し押さえの仮執行を認めている。弁護士らは、「強硬手段は最後の手。速やかに日韓の政府とポスコ、新日鉄住金などで財団(基金)を作り、解決すべきだ」と当面、和解の道を探る意向を示しているが、韓国の元労働者の訴訟支援者やメディアには強制執行で資産差し押さえを主張する勢力もある。

ただ、新日鉄住金の主張の通り、問題は1965年の日韓請求権協定で「完全、かつ最終的に」解決しており、補償請求は自国内で解決するというのが、国際ルールに則った考え方だ。

日本政府は「現地の大使館や被告とされた企業と緊密に連絡をとり、資産の保全に万全を期する」(外交筋)としているが、差し押さえを認めた今回の判決の波紋は広がる一方だ。

韓国側の訴訟支援団体のひとつである「太平洋戦争被害者補償推進協議会」によると、日本製鉄に「強制動員」された労働者の数は名簿上3900人に上るという。この団体によると、元労働者のうち約180人に提訴の意思を確認しているといい、今回の判決を受け、今後、訴訟の動きが活発化する可能性が高い。

約200社の日本企業を「戦犯企業」としてリストアップ

新日鉄住金のほか、三菱重工業や産業機械メーカーの不二越鋼材工業など5社も同様の訴訟が起こされており、「これらの判決にも影響することは間違いない」(韓国の弁護士)。

さらに、韓国では国会議員や支援団体が、第2次大戦当時まで韓国と関係が深かった三菱、三井、住友など旧財閥系をはじめとした約200社の日本企業を「戦犯企業」としてリストアップ。名指しで攻撃しており、こうした企業の中からも、今後次々と訴えられる企業が出てくることが想定される。今回の判決はその意味で対日企業賠償請求訴訟の“パンドラの箱”といえる。

だが、ここにきて韓国の対日姿勢のちぐはぐぶりも相次いで露呈している。

日本に対する積極投資を呼びかけているのだ。

韓国の聯合ニュースによると、判決から1週間後の7月17日、韓国の尹相直・通商産業資源相は、旧財閥系商社などを含む日系企業のトップらとの懇談会でこう語った。

「新政府(朴槿恵政権)の経済目標達成のためには、外国人投資を通じた良質の雇用創出が重要だ」

韓国の弱みは、外国投資頼みの経済だけではない

韓国の産業通商資源省の発表によると、2013年第2四半期の韓国への海外直接投資は、契約ベースの前年同期比で3・3%減の46億400万ドルなった。円安に転じた日本からの投資減少が響いたと分析している。

円安による投資減少に危機感を抱く韓国政府は、今年上半期、日本向けの投資誘致に力を入れてきた。

6月には東京で出張説明会まで開催して投資を誘致。

韓国の弱みは、外国投資頼みの経済だけではない。“海外進出のアキレス腱”といわれる、銀行のファイナンス(資金調達)能力の決定的な不足だ。

現在、世界市場にダムや発電所などの大型事業を売り込む韓国の建設会社を、資金調達と信用面で支えているのは韓国の銀行ではなく、日本の銀行なのだ。

韓国の金融界は業界再編によるメガバンク化とスリム化に失敗。現在、「世界水準からはかけ離れたレベルで、海外で事業展開する巨大企業を支える力はない。日本や欧米のファイナンスがなければ海外進出は大幅な軌道修正を余儀なくされる」と韓国の財閥系経済研究機関の幹部はホンネを漏らす。

韓国の現在の対日姿勢は、「歴史認識」で一方的に日本を厳しく追及する大統領のほか、賠償金まで請求する市民がいる一方、“商売は別”とばかりに投資を呼びかける政府という、ムシが良すぎる状況だ。

「無効だった」として、「外交政策の過ち」を批判する声も目立つ

サムスン電子が堅調のいまは、日本の素材・部品メーカーが巨大投資を続けているが、万が一、強制執行で日本企業の在韓資産が差し押さえられるようなことになれば、日本側に「韓国は法治国家ではない」との認識が広まり、企業は韓国への投資をハイリスクと認識するだろう。

韓国政府は表向き「司法の判断」として状況を静観し、改善に積極的に動く姿勢をみせない。

経済発展のために日韓基本条約を結び請求権協定によって韓国に5億ドルの外貨をもたらしたのが、当時の朴正煕大統領だ。朴大統領の日韓国交正常化という外交政策については、韓国ではここのところ、「無効だった」として、「外交政策の過ち」を批判する声も目立つ。

その娘である朴槿恵大統領は「親日」批判を恐れるあまり、日韓関係の収拾に積極的に打って出られないという泥沼にはまっている。それどころか、日本には相変わらず「正しい歴史認識」を求めるばかりだ。

朴槿恵政権で外交関係を維持、外交の前面に立ち、関係を改善するべき韓国外務省は朴大統領の姿勢に逆らえず、かえって日本への挑発的な発言を強める。

韓国がこの事態をどう収めるか。日本は注視している。(在ソウル)

産経ニュース[追跡〜ソウル発]2013.7.21

<「頂門の一針」から転載>

2013年07月28日

◆朴大統領と安倍晋三首相は“鬼胎”

〜韓国大騒ぎ〜

黒田 勝弘 


韓国は漢字を捨ててしまった国なのに時々、妙な漢字語が話題になる。今回は「鬼胎(クィテ)」なる言葉で、本来は医学用語の「奇胎」と同じという。「妊娠の際、子宮内で胎児が育たず形をなさない病気」のこととかで、転じて「生まれてはいけない子供」の意味として最近、韓国政界で大騒ぎとなった。

朴槿恵(パククネ)政権の足を引っ張るのに懸命な野党のスポークスマンが「朴大統領は日本の安倍晋三首相と同じく“鬼胎”だ」と公言したため、与党側が「選挙で選ばれた大統領の正統性を否定する暴言だ」と激しく反発。

すったもんだの末、野党が謝って一件落着となったが、面白いことに「安倍首相にも謝るべきだ」などという声はどこからも出なかった。

韓国人のほとんど誰も知らないような難解な言葉を持ち出しての“鬼胎論争”だったが、発端は野党スポークスマンが「岸信介と朴正煕(チョンヒ)」と題する日本の本(翻訳)を読んだことからだという。

韓国マスコミによると、この本はタレント教授、姜尚中氏らが書いたもので、安倍首相の外祖父で戦前は旧満州国の官吏を務め戦後は首相になった「岸信介」と、朴槿恵大統領の父で戦前、満州国軍将校を務め、後に韓国の大統領になった「朴正煕」は、ともに“満州人脈”でつながっているから「日本帝国主義の鬼胎」というべき存在だったというのだ。

典型的な左翼的歴史観だが、とすると朴槿恵氏も安倍氏も“鬼胎”の血筋だから「本来、生まれてはいけない、存在すべきではない指導者」というこ
とになる。

この話に韓国の野党が飛びつき“朴槿恵たたき”に使ったのだ。血筋が大好きで、今なおネポティズム(身内びいきなど縁故主義)が蔓延(まんえん)している韓国ならではの発想だ。

日本のは安倍氏の祖父、岸信介元首相を意識することはないお付き合いさせられた安倍首相は苦笑しているだろうが、日本の国民(有権者)は安倍支持にしろ安倍批判にしろ、彼の母方のおじいさんである岸信介元首相を意識することなどほとんどない。安倍首相としては朴槿恵大統領と一緒にしてもらっては困る、ということになる。

ところで日本の左翼学者や韓国の野党が関心の、いわゆる満州人脈については別の観点が可能だ。実は北朝鮮建国の祖・金日成(キム・イルソン)も満州との関係が深かったからだ。

彼は出稼ぎの父に連れられ満州に移住し満州で育った。後に中国共産党の抗日武装闘争に加わり、日本の敗戦時はソ連軍配下にあってソ連軍大尉として北朝鮮に帰還した。

金日成はソ連および中国共産党系の満州人脈で北朝鮮を建国し国家運営にあたったということになる。一方、日本軍指導下の満州国軍に所属し、日本の陸軍士官学校に留学した朴正煕も、後に韓国の指導者として「岸信介」をはじめ満州人脈を活用したが、金日成との違いはそれが日本系の満州人脈だったことだ。

現在、北朝鮮は飢え韓国は飽食している。金日成と朴正煕はともに満州体験を持ち、満州人脈が国家経営の背景にあったにもかかわらず、ソ連・中国系の金日成は失敗し日本系の朴正煕は成功したのだ。

この地で南北どちらの指導者が国民を幸せにしたか。歴史の総括でいえば、結果的には反日の金日成とその子孫こそがむしろ“鬼胎”だったということにならないか?

産経ニュース2013.7.27

<「頂門の一針」から転載>

◆尖閣諸島「問題」の行方

馬場 伯明


国が尖閣諸島を購入し一件落着したかに見える。だが、あの大騒ぎは何だったのか。石原慎太郎(前)東京都知事による尖閣諸島(3島)の購入と活用のための国民有志の寄付金はどうなったのか。

「(国が買ってしまったので)・・もう購入はできないので、(目的を)活用にシフトしたわけです。寄付金は国に譲渡することになるでしょう。寄付金の返還は当初から想定していません。(都の「尖閣諸島寄付担当」談・2013/2/6「日刊ゲンダイ」より)」

単純で素朴な愛国者として私は些少・最低限の寄付をした。石原(前)知事のメッセージに「いざ鎌倉!」の一種高揚した気分で応じた。寄付総額は1,485,201,967円、103,602件。無論寄付者に返還する必要はない。

猪瀬直樹東京都知事による残金の「国への譲渡(再寄付)」で本件が終結となるのでは、肩透かしにあったような気がして、私は釈然としない。

尖閣諸島が日本の領土であることは実効支配上からも国際法上からも明白である。中国の挙動は、泥棒(自分)が、侵入した家の主人に向かって「泥棒!」と叫んでいるような倒錯した理屈である。

ところが、中国へのそれなりの応援者もいる。野中広務氏と鳩山由紀夫氏が利敵行為ともいうべき仰天発言で世間を驚かせた。

そこで、本誌主宰者は、かつて園田直外務大臣の秘書官として同行した北京等での「事実」に基づき、間髪をいれず、完璧に反論した。この反論は確かによかった。だが、それでも、私は、まだ、釈然としない。

中国は1970年以降、尖閣諸島「問題」では自信満々である。「俺たちには最強のカードがある!」と嘯く。「アメリカ」というスペードのエース。

でも、なぜ、アメリカなのか。尖閣諸島「問題」の「そもそも論」に立ち返り、尖閣諸島購入の経緯などを反芻してみたい。

尖閣諸島は、魚釣島(うおつりしま)、久場島(くばしま)、大正島(たいしょうとう)、北小島(きたこじま)、南小島(みなみこじま)の5つの島と3つの岩礁(沖の北岩・沖の南岩・飛瀬)からなる。総面積5.57k!)。

石原(前)知事は、5島の内、魚釣島、北小島、南小島の3島(栗原国起氏所有)を購入の対象とした。しかし、久場島(古賀花子氏所有)と大正島(国有)の2島は外した。2島は米軍に提供された射爆撃場である。

「2島は購入しないのですか」と指摘され、石原(前)知事は「久場島も購入する」と急きょ言明した(2012/6/4)。しかし、その後、何と、あっさりその購入方針を撤回してしまった(2012/9/7)。

どういうことだ。大正島は国有だが、個人所有の久場島を中国に購入されたらどうするのか。尖閣諸島では久場島がなければ画竜点睛を欠く。「中国が所有する米軍射爆撃場!」ならブラックユーモアだ(笑)。

石原(前)知事はなぜ購入方針を撤回したのか。筋が通らない。

発端は石原(前)知事のヘリテージ財団での講演である。中国を刺激した。(1)核兵器の開発のシミュレーション、(2)ピンポイント非核超高速ミサイルの開発、(3)尖閣諸島(ただし3島)購入の3点セットだ。

アメリカの有力な対中国強硬派であるヘリテージ財団との合作ないし事前の容認があったと(私は)邪推!する。石原(前)知事は(民主党政権と)中国を刺激することが主目的であり、久場島の購入や久米島との2島返還は、端から頭になかったと思われる。

じつは、中国艦船が久場島付近を通過し上陸や発砲したら、アメリカは、安保条約とは無関係に、自国(施政権)侵犯排除の戦闘に入らざるを得ないから困るのだ。だから「日本と中国は仲良く!」と強く要請している。

一時的な政治パフォーマンスではなく、戦略的に、かつ真面目に考えれば、尖閣諸島5島3岩礁を国有化すべきであることは明らかであろう。

「親分(アメリカ)、預けた娘(久場島)が長らくお世話になりました。そろそろ舎弟の私(日本)に返してください」。「そうだな、お前(日本)の娘(領土)だからな。そうしよう」・・・と、アメリカには「日本の領土である」という決定的な発言をしてもらいたい。

だが、アメリカは尖閣諸島の領有・帰属で「あいまい戦略」をとっている。アメリカは尖閣諸島「問題」で中立の立場をとる。だから、日本と中国(台湾を含む)の間には「領土問題が存在する」という立場の国なのだ。

中国はアメリカの「領土問題が存在する」という絶大な援軍があるので強気である。これが尖閣諸島「問題」のねじれと混迷の根本的な原因である。では、日本は何をするべきか。

第1.アメリカに対し「尖閣諸島の領有は日本である」と明確に認めるように何度でも迫る。無二の同盟国のアメリカだ。遠慮せず主張する。「蛙の面に・・」の確信犯の中国ではなく、敵は本能寺(アメリカ)である。

第2.久場島を国が追加購入する。米軍の射爆撃場の久場島と大正島の2島は1979年以降使用されていないのだ。東京都に保管されている寄付金を使わせてもらえばよい。寄付者に異存があるはずがない。

歴代の政府、外務省、石原(前)知事らは、これまで上記の2つをまともに検討し発信し実行しては来なかったし、今なお無為が続いている。

また不思議なことに、日本のマスコミ、さらに、右派言論人の多くも、久場島の国による購入と大正島(既国有)を合わせた2島の日本への返還をアメリカに求めていない。

なぜか。アメリカに拒否されたからだ。その訳は戦後68年去勢されたようなアメリカへの盲従体質にあると思われる。アメリカの言いなりばかりではだめなのだ。日本はアメリカに対しても、正面・裏面の両方からものが言える、まさに「普通の国」になるべきである。

「普通の国にしたいだけなんだ」と唱える本誌投稿者の一人である平井修一氏には、尖閣諸島を巡る日米中(台湾を含む)のねじれ現象をときほぐし、正常化する方策をぜひご提案いただきたい。

尖閣諸島が日本の領土であると(本音では)認識しており、日本が最も信頼する同盟国であるにもかかわらず、アメリカは、尖閣諸島について、中国が大喜びし、日本が困る「あいまい戦略」を、なぜ、取り続けてきたのだろうか。

それは、日中(台湾を含む)間に揉め事(魚の小骨)を残しておく、それにより、アメリカの存在価値を両国に高く売ることができるという「政治的な思惑(手段)」であったと推測される。

しかし、姑息な手段はいつか行き詰る。日中間の戦闘が始まればアメリカも出動せざるを得なくなる。小骨は大骨になって顕われる。だから、アメリカは「日中は話し合いで・・・」と必死で要請しているのである。

日本は、尖閣諸島の日本領有をアメリカに明確に認めさせ、久場島ら2島は返還してもらい、久場島は国有化する。これが中国の急所を衝く最上の策である。

石原(前)知事の尖閣諸島「問題」の発言は急減している。日本はいたずらにアメリカに盲従しその周りを徘徊するのではなく、民族の誇りと矜持を有する独立国家としてしっかり立つ。

「国際社会において名誉ある地位を占める」というのは、そういうことではないのか。
(2013/7/26千葉市在住)

<「頂門の一針」から転載>

2013年07月27日

◆労組依存が再編の足かせ

桑原 雄尚


参院選惨敗を受けて党の立て直しが迫られる民主党の海江田万里新体制は、日立労組出身の大畠章宏氏の幹事長起用により労働組合に依存する守りの姿勢が鮮明になった。

野党再編を意識する若手や非労組系の議員の失望は広がり、かえって路線対立は激化、「海江田降ろし」は収まりそうにない。海江田代表の自浄努力も問われる。

「まず皆さま方におわびしなければいけないのは、先の参院選の結果であります…」

26日午後、党本部で開かれた両院議員総会で、海江田氏は謝罪の言葉から始めた。その後、若手から容赦ない言葉が相次いだ。

「敗軍の将は引き際を間違えてはいけない。すぱっと辞めて、みんなで一丸となって前に出るのが正しい道だ」(田嶋要衆院議員)

「代表選こそが最大の総括につながる」(柚木道義衆院議員)

時折メモを取りながら耳を傾けていた海江田氏は「危機感はある。今後のプロセスを示すしかない」などと釈明を繰り返した。同時に「代表選をやるときは私が退くときだ」と強弁もした。

海江田氏を支持する大畠グループの篠原孝元農林水産副大臣が「参院選で敗れたからといって、代表のせいにするのはもってのほかだ」と反論したが、拍手はまばら。

最後に挨拶した大畠氏は「朝早くから夜遅くまで働き、それでも年収200万円の方がたくさんいる。その方々の立場に立つ政党が必要だ」と訴えた。

締めは「ガンバロー」三唱。労組色の濃い総会に、非労組系の一人は「むなしい。虚無感を覚える」と吐き捨てた。渡辺周元防衛副大臣は記者団に「代表選をやるべきだ。野党再編に向かうのか。独自路線を行くのか。路線をめぐって代表選で意見をぶつけ合って、決まったことに従うべきだ」と訴えた。

海江田氏への不満には、参院選で「反党行為」をした菅直人元首相への処分にもある。海江田氏は、一度は菅氏に離党を促しながらも、一部議員から「重すぎる」と言われて党員資格停止に軽減した。「鳩菅」時代を完全に幕引きさせることができず、代表の威信を失墜させた。

それでも、海江田氏には「続投」の二文字しかなかった。21日の参院選投開票日に早々と続投を表明したのも、辞任の方がかえって党は崩壊すると踏んだためだ。海江田氏は、野党再編に意欲をみせる細野豪志幹事長の辞任を8月末から26日付に前倒し、自身の基盤固めを急いだ。

細野氏を支援する若手議員らは26日、国会内で会合を開き、当面は海江田氏の党運営を注視する方針を確認した。海江田執行部に距離を置く前原誠司前国家戦略担当相は記者団に対し、野党の結集は必要だとしながらも、細野氏らへの牽制(けんせい)として「理念や旗頭も大事だ。拙速でもいけない」とも述べた。

海江田氏も、両院議員総会で、民主党主導による野党再編に前向きな発言をした。もっとも、日本維新の会をはじめ野党再編に前向きな勢力は、公務員制度改革で障害となる労組との決別が大前提であり、労組依存を強める海江田新体制は再編の相手にならないのだ。その点からして、細野氏らと海江田新体制との対立は解消しそうにない。

26日深夜、細野氏は自身のツイッターに「今後も、民主党議員の一員として海江田執行部を支えていきます」と書き込んだ。その約15分後にはこうも記した。

「肩書きがなくなり、等身大の議員活動と日常生活に戻ります。根を張り、幹を太くしない限り、第二幕は開きません。課題はたくさんあります」 産経ニュース2013.7.27

<「頂門の一針」から転載>

◆韓国はなぜ「反日」なのか

古森 義久


韓国の反日病はまさに病こうもう、というところでしょうか。官民あげて、日本をののしり、叩き、止まるところを知りません。

この人たち、一体、なんなのだ、という感じです。東京の大久保あたりで毎日曜に「反韓」デモが起きるのも、わかる気がします。では韓国はなぜ反日病なのか。

朝鮮半島ウォッチャーでは世界的な権威の産経新聞、黒田勝弘氏がおもしろい分析をしています。黒田氏の近刊の書『韓国 反日感情の正体』です。

黒田氏の指摘では、韓国のいわゆる反日には裏があり、実は日本が好き、魅されている、羨望している、という実態があるそうです。そのへんの様子をこの書はわかりやすく、おもしろく、報告しています。お勧めの書です。

◆内容紹介

激化するように見える韓国人の反日行動だが、実際は「昼は反日、夜は親日」。

昼間、公式の場で反日を叫んでいた人も、夜、懇親会や夕食会の場面では一変して、日本に対する親近感を語るのだ。なぜなのか?

竹島の領有権や慰安婦問題など、激化するように見える韓国の反日行動などから、裏側にひそむ複雑な民族感情にせまる。在韓30年の日本人記者による緊急レポート。

◆内容(「BOOK」データベースより)

今や街には反日は無い。無いどころか、若者街などではカタカナや平がなの看板がカッコいいと堂々と目に付くところに出ている。

日本語をしゃべっていても誰も振り返ってくれない。日常生活での日本拒否の減少などまったく見当たらないのだ。(序文より)

ではなぜメディアや政治は執拗かつ極端な反日行動をとるのか? 反韓・嫌だけでは見えない驚きの実態が明らかに!

◆著者コメント

「嫌韓・反韓では分らない韓国の反日感情」

韓国駐在記者として三十年になる。訪ねてくる友人たちは「何が面白くてそんなに?」とその長居をいぶかるが、正直言って韓国は日本人記者にとってそれほど面白い。

業界用語的にいえば、いくら居ても「ネタは尽きない」し「飽きない」のだ。この本は今はやりのいわゆる“嫌韓・反韓本"ではない。

「韓国は嫌い」「韓国はイヤだ」「韓国はケシカラン」だけではそんなに長居はできない。嫌いやケシカランを越えて、とにかくこの隣国は日本人にとって実に興味深く面白いのだ。

本の帯封には「昼は反日・夜は親日」とあるが、本文では三十年付き合った韓国について「反日風化と反日激化」「世界一反日で世界一親日」と書いた。

また日本人と韓国人の関係については「似ているようで異なり、異なるようで似ている」という「異同感」からくる難しさと面白さもある。

こうした必ずしも単純ではない「韓国反日感情の正体」を多角的かつ体験的に紹介したのだが、したがってそんな相手に単にケシカランと怒ってもはじまらない。

お互い引っ越しはできないのだから、そういう相手なんだと達観しつつ付き合えばいいのだ。ただ付き合いに際しては相手の“正体"を知っていた方が楽だし都合がいい。論争になっても太刀打ちできる。

恋愛するにもケンカするにも、まず相手を知らなければ話にならないではないか。
2013.07.20

<「頂門の一針」から転載>

2013年07月26日

◆参院選後の安倍外交

宮家 邦彦


「ムーブ・ザ・ゴールポスト」という英語がある。試合中にフットボールのゴールを動かすことから転じ、ゲームの途中でルールを変更する不条理さを揶揄(やゆ)する言葉だ。

先週ワシントンに出張した。米政府系シンクタンク主催の日米韓シンポジウムに出席する一方、複数の連邦議会議員を含む多くの議会関係者や外交問題専門家とじっくり意見交換する機会を得た。

先方の求めに応じ筆者が日中・日韓関係の現状を説明する際、用いたのがこの英語表現だ。筆者のロジックは次のとおりである。

 ●1945年、日本は「生まれ変わった民主国家」として再出発した。

 ●1965年、長い交渉の末に韓国と基本条約を結び、請求権も含め懸 案を処理した。

 ●1995年には村山談話で戦争と植民地支配に対し「心からのおわ び」を表明した。

 ●日本国民から集めた償い金を女性たちに届けるべくアジア女性基金まで立ち上げた。

 ●ドイツの謝罪はホロコーストに対するもの。フランスはアルジェリア戦争・植民地化を謝罪しただろうか。

 ●1945年以来70年近く、日本が行った努力はかくも丁寧、かつ真 摯(しんし)なものだった。

 ●フットボールで言えば、50ヤードも前進したのに、ゴールポストは 逆に遠のいた。

 ●心ある多くの日本国民が中国や韓国との関係改善を望んでいることは間違いない。

 ●同時に、多くの日本国民は、韓国や中国がゴールポストを動かし、日本のゴールを永久に認めないのではないかと心を痛めているのだ。

手前みそかもしれないが、ある米国政府関係者は「こんな説明を聞いたのは初めてだ」とまで言ってくれた。図らずも今回の出張は、対米情報発信がいかに重要かを再確認する旅となった。

そのワシントンから先週末、参院選投票のため急いで帰国した。米国の識者たちも選挙後の安倍外交には強い関心を示していた。投票日は帰国翌日だが、時差で朦朧(もうろう)としていた筆者にも今回の参院選挙の意義は明らかだった。

第1に、安倍自民党の最大の勝因は経済であり、必ずしも外交が評価されたわけではない。安倍外交の真の評価はこれからだろう。

第2に、国会のねじれ解消により、日本政府の外交的立場は強化されたと思う。少なくとも最大3年間、国政選挙はないので、安倍首相は内政外交に専念できる。外国も日本政府の足元を見ることはできなくなるだろう。

第3に、そもそも安倍外交はまだ始まったばかりであり、参議院選挙後に大きく変化すべきものではない。安倍政権の姿勢は昨年12月以来、内外のさまざまな情勢に対応して進化しつつある。外交には継続性と一貫性も大事だ。戦後築き上げてきた日本に対する信頼を維持・強化していくことも重要な課題である。

最後に、最大の課題は中国、韓国との関係改善だ。ただし、中韓両国を同様に扱うべきではない。

中国の対日政策は2008年末戦略的に変化した。中国側がこの姿勢を 近い将来変えるとは思えない。尖閣問題は南シナ海でASEAN諸国が直 面する問題と基本的に同一でありこれらの国々を重視する安倍内閣の姿勢は正しい。

これに対し韓国は日本と同様米国の同盟国であり、自由、民主、人権といった価値を共有する隣国だ。しかも韓国の対日問題は韓国の国家戦略というよりも内政である。韓国大統領の任期は5年で再選がない。大統領の地位は米国ほど強力ではないのだ。

過去10年間、東アジアでは地殻変動が起きている。中国の台頭という パワーシフトに対し韓国、ASEAN諸国、米国は本格的に対応し始めている。これに対し過去数年間日本外交は迷走が目立った。参院選後の今こそ日本外交への信頼を再確立すべきだ。

              ◇

【プロフィル】宮家邦彦

みやけ・くにひこ 昭和28(1953)年、神奈川県出身。栄光学園 高、東
京大学法学部卒。53年外務省入省。中東1課長、在中国大使館公 使、中
東アフリカ局参事官などを歴任し、平成17年退官。第1次安倍内 閣では
首相公邸連絡調整官を務めた。現在、立命館大学客員教授、キヤノ ング
ローバル戦略研究所研究主幹。
産経ニュース【宮家邦彦のWorld Watch】2013.7.25

      <「頂門の一針」から転載>