永冶ベックマン啓子
ドイツ人は節約精神に富み食糧品は大切にして再利用し、捨てる事などないと思っていましたが、それはどうやら戦争を知る世代にのみ当てはまる事だったようです。
2年ほど前ですが、意外にも美味しそうな大量のパンがゴミ箱に捨てられている写真付きの新聞記事にまさかと言う驚きの声が出ました。
アフリカでは飢死があり、気候変動の食糧難が考えられ食料品や種の値上がり、ロマの子供達は毎日ゴミ捨て場にゆき食料を探すのが日課という現実が近隣緒国にあります。
国連報告ではアジアとアフリカが深刻で8人に1人が慢性的な栄養不足との報告がある中で、ドイツでは3人に一人が太りすぎ、豊かな物があふれる使い捨て社会となりスキャンダルな出来事が起きていたわけです。
スーパーのゴミ箱から十分食べられる食料品を故意に拾い生活している元東ドイツの若者達がこれで全部生活出来てしまうとテレビで紹介されていました。
輸入物のバナナやオレンジが年一度クリスマスの時期にしか手に入らなかった元東ドイツでは「もったいない」という価値観を忘れていないドイツ人達もいました。
またパリのヨーロッパ最大の魚市場では売り残ったものが廃棄されているなど、メディアで色々と食品に関する問題が取り上げられていました。
以前と比べて、スーパーの数も野菜や果物販売の屋台も最近増え、どこに行っても食料品があふれしかも一般の店は食品がとても安いと私自身も感じていました。
連邦政府農林大臣(女性)のイルゼ・アイグナーさん(CSU)は、これは大変な問題なので調査する必要があるという意見が余りにも多くなり、実情を昨年シュトゥットガルト大学の農業食糧消費者保護の担当部に科学的な調査を委託させましたが、その結果は実に驚くべき事実が判明しました。
ドイツは食糧自給率は90%位と高く、一部の気候的に生産が無理な野菜や果物は輸入していますが、お肉や乳製品はかなり輸出もしている国です。
ドイツはゴミの分類やリサイクルが進み、ゴミの量が減ると共にゴミ処理料金も下がる中で、一方食糧品ごみは大変多く1100万トン廃棄する国になっていました。
調査によりますとドイツ人1人頭、年間81、6kg(バイエルン州では64kg)の食料品をゴミ箱に捨て、これは毎日225gの食品、つまりほぼ平均的な家庭の朝食を捨てている事になります。
金額に換算しますと、年間1人頭235ユーロ、4人家族では940ユーロもの金額になり、国としましても膨大な額の浪費になります。これらの食品廃棄物の61%に当たる667万トンは個人の家庭から出され、次に17%の190万トンをレストランや食堂などの大消費者、同じ17%が食品販売製造産業由来、そして残りの5%は量にしますと55万トンが流通運送経由となっていました。
これは食糧品を積んだトラックが50万台分の量ですが、ベルリンと北京の間を繋ぐ列ができまして、大変な長さと量になります。
家庭由来の廃棄食品の中で一番多い物が野菜26%、果物18%となり半分近い44%にもなっています。
研究では、野菜と果物は形がいびつで大きさがそろわない場合は、全て商品にならなくゴミ箱行き、15%のパンや焼き菓子、12%の食べ残し、8%の乳製品、7%の飲み物、6%のお肉と魚、 5%のパスタ類、その他が3%です。
この野菜や果物パンやお菓子を満載したトラックを想像するドイツ人は、誰も驚きショックを受け、反省した事でしょう。
以前、ミュンヘン市民の出すゴミは袋に詰めて並べるとモスクワまで到達する長さになり、一人の人が1年間で出すゴミを透明のプラスチックの箱に入れて市庁舎前マリエン広場に設置して視覚的に市民に訴え、ゴミを買わない作らないように日常生活で努力すればゴミ処理料金が減りますとキャンペーンを行い、ゴミの大幅な減少に成功しました。
パンだけをを見ましても20%余分に製造され、夕刻6時にスーパーはパンの棚に商品が十分あることを要求しているので、捨てざるを得ないようです。数%は新しいパン製造にも使えますが、木材と同でよい燃料とされている所もありました。
ジャガイモ農家で収穫した時大きさの選別がなされ、その時大きすぎる物、形がいびつなもの、また小さすぎるものは販売できず、近所の方に分けるか、農家の直売店で販売するか、売れないものは農地に放置して肥料にするんだそうです。
中世では人生35年のヨーロッパ人飢餓を救い、寿命を獲得させたジャガイモは今半分近くは捨てられています。当然、廃棄された食料品の65%は各方面で対策を講ずれば予防できるものだそうです。
ヨーグルトなどは賞味期限が過ぎても十分問題なく食べられますし、賞味期限のつけ方にも問題があり、賞味期限が近づきますと人々は購入しませんから捨てるか寄付しかなくなりますが、法的な考慮も必要とされます。スーパーに並ぶ半分の食料品は捨てられる運命にあるそうです。自由経済社会での生産調整も難しい面があるそうです。
ヨーロッパ人が捨てる食料品で、世界の飢餓人口の2倍を救う事が出来るとも言われています。アイグナーさんは、200以上のレシピーも集めて国民に紹介され、2020年までに食糧品廃棄物を半分に減らそうというプロジェクトが今ドイツで始まっています。食料品の自給自足率が比較的低い日本では一体どうなんでしょう?
(ミュンヘン在住)
<「頂門の一針」から掲載>