2012年03月01日

◆極秘会談から「小沢切り」と「話し合い解散」

杉浦 正章



事前に極秘会談があったことを前提にすると、いつもとトーンの違う党首会談の“謎”が見えてくる。どうみてもおかしかったのだ。これまでのようなぎすぎす感が双方になく、自民党総裁・谷垣禎一も公明党代表・山口那津男も条件を挙げて、クリヤーすれば与野党協議に応ずるような感触を示している。


要するに討論は出来レースであった可能性が濃厚なのだ。だとすれば「小沢切り」で消費増税での政界再編や話し合い解散が見えてくるのだが、実態は今後の展開に待つしかあるまい。
 

29日の永田町の関心は党首討論より、日テレの報道の真偽に集中した。日テレは野田と谷垣が25日に極秘会談を行い、消費増税を含む社会保障と税の一体改革や衆院「1票の格差」是正への打開策を話し合ったと大スクープを報じたのだ。日経が追いかけた情報によると、野田は国会近くのホテルの日本料理店で官房長官・藤村修と約1時間昼食をともにしたことになっているが、その間、谷垣と極秘に会っていたという。


同紙は「29日の政府・民主三役会議に出席した幹部によると、藤村が『外向けには会っていないということだ』と説明した」と報じている。ということは確かに会ったことになるが、野田は「会っていません」と主張し、谷垣も否定している。
 

2人ともうそをついているのだろう。党首討論の展開を見れば極秘会談があった可能性が十分うかがえる。谷垣はこれまでのようにスピッツ型の吠え方をピタリとやめた。そのせいか双方の質疑応答が論理的に統一されて、かみ合う感じが濃厚だった。従来の激突、物別れ、言いっ放しではなく、次につなげる側面が出てきたのだ。


例えば谷垣の「新年金制度の看板を外さないなら、一緒に議論できるところもなかなか議論できない。新年金制度をどうするつもりなのか。棚上げなのか、撤回なのかを聞きたい」と同制度の一体改革からの切り離しを質している点が注目される。


もともと実現の可能性のない新年金制度など野田の本心では未練はないことを見透かした条件提示と受け取れる。野田が近いうちに同制度を断念すれば条件はクリヤーされることになる。
 

一方で、谷垣が「小沢の乱」を質したのに対して野田は「きちんと手順を踏んで、今の方向を決めているし、今度は年度内に法案を提出する。51対49の党内世論でも、手続きを踏んで決めたら、みんなで頑張っていくということは、皆さんの前に示したい」と述べた。


「51対49」というきわどい数字をあえて提示したのは、野田の並々ならぬ決意の表明と受け取る事が出来る。場合によっては「小沢切り」をしてでも、消費税法案の閣議決定と成立を成し遂げる覚悟の表明に他ならない。
 

さらに重要なポイントは、解散・総選挙問題だ。いつもなら冒頭に質し、最後にも質すように解散にこだわる谷垣が、時間切れになってから聞いたのだ。その前の質問で「時間がない」と時間を気にしていたから、これは意図的に時間切れを狙って、野田への配慮の格好づけをしたと受け取れる。


それも質問内容は「野田総理大臣が、本当に消費税率の引き上げを成し遂げたいならば、国民との信頼関係をきっちり作り直していくこと、つまり、解散することだ。それをきちんとやれば、私たちと方向性が合って、協力する道はいくらでも開ける」と、「協力する道」に言及している。


これは極秘会談で「話し合い解散」まで踏み込んだ可能性があることを物語るのではないか。あえて回答を求めないのはもう済んだことであった可能性がある。山口が消費税法案と社会保障関係の法案が「ばらばらでは一体的な議論が成り立たない」と社会保障関連法案の早期提出を要求したことが注目される。これは野田が早期提出をすれば済む話であろう。条件提示と受け取れるのだ。
 

このようなやりとりから出てきた構図は、与野党協議が必ずしも不可能ではないという方向性だ。新年金制度を撤回し、社会保障関連法案の早期提出を図れば条件は整う流れとなる。野田の消費増税法案への決意表明からは、これに反対する小沢一派を切ってでも成し遂げようとする意志が濃厚にうかがえる。


谷垣にしてみれば話し合い解散を勝ち取れば御の字だし、野田にしてみれば消費増税を達成できる。そのポイントをトップ同士の極秘会談が見逃すはずはない。従って政局の流れは増税反対で倒閣路線をとる小沢とそのグループの孤立化が見え始めてきた。小沢を除いた「消費税再編」すらうかがえるし、解散も話し合った重要な会談であったのだろう。


もちろん維新の会も存在感が薄れる。問題は野田と谷垣が今後党内的にどう説明して、秘密会談の内容を実現させてゆくかだ。

<今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2012年02月29日

◆前原はマスコミとのけんかの仕方を知らない

杉浦 正章



産経新聞記者の記者会見出席拒否問題は、結局民主党政調会長・前原誠司が一転して出席を認め決着した。23日以来一週間で前原の“完敗”に終わった。一連の動きを観察していたが、どう見ても前原は政治家として幼い。マスコミとのけんかの仕方を知らない。


よく首相・佐藤栄作の最後の記者会見との類似性が言われるが、佐藤とは比べものにならない幼稚さがある。本格的な首相候補になるには、坊主になって1000日修行でもしてくる必要がある。
 

産経は前原に対して「言うだけ番長」とネーミングして、それを過去に16回も使ったという。この「言うだけ番長」は1967年から71年まで続いた人気コミック「夕焼番長」をもじったもので、新党日本の田中康夫が名付け親だ。八ッ場ダムのいきさつからいって、見事なニックネームだ。


前原にしてみれば確かに産経の記事は神経逆なで型だ。とりわけ前原が怒りを爆発させたとみられる19日付の記事は、「前原氏『言うだけ』また露呈、輿石氏『尻ぬぐい』に奔走」と見出しを取り、国家公務員給与削減をめぐる民主、自民、公明の3党基本合意の内幕をえぐっている。


そして「言うだけ番長の能力不足はもはや取り繕いようがない」と決めつけている。前原でなくても敵意と悪意に満ちた記事と受け取れる性格のものだ。
 

しかし、前原はこれにまともに反応してしまった。それも、もっとも稚拙な会見出席拒否という対応だ。実は前原には“前科”があり、報道されなかったが北海道新聞記者など2,3人に対して出席拒否を宣言しているのだ。


産経はもともと民主党政権発足以来、徹底した反民主党のキャンペーンを続けており、かねてから不満をうっ積させていたに違いない。しかしけんかのやり方を知らない。


その点佐藤は、けんかのやり方を知っていた。佐藤は普段から自らの発言に対する新聞の“コメント”に不満を持ち、秘書官の楠田實に「真意が報道されない」と不満を漏らしていた。そして政権7年8か月の最後の最後で怒りを爆発させたのだ。

佐藤は退陣会見で「テレビカメラはどこかね?新聞記者の諸君とは話さないことにしてるんだ」と言い放って、まず記者団の退去を求めた。そして、ひたすら無人の会見場でテレビカメラ相手にしゃべり続けた。佐藤のけんかは我慢に我慢を重ねて、退陣直前に堪忍袋の緒を切ったのだ。新聞は社説でたたいたが、後の祭り。政権は終わったから、何の痛痒も感じないのだ。
 

佐藤のけんかのすごさは西山太吉事件でも発揮された。外務省の機密漏洩事件だ。1972年、西山は沖縄返還に絡んで簿外の四百万ドルが動いたことを知ったが、記事にせず、社会党に証拠を渡して政局にしようとした。外務省高官の女性秘書を籠絡しての取材だった。これを東京地検を使って摘発したのだ。


地検は起訴状で「外務省の女性事務官と密かに情を通じ、秘密漏洩をそそのかした」と取材の実態を浮き彫りにしたのだ。最高裁まで行って有罪が確定したが、本物の政治家の“けんか”のすごさをまざまざと感じさせるケースであった。佐藤は新聞に対しては、勝つけんかしかせず、普段は我慢の子であった。
 

佐藤と比べれば前原のけんかは児戯に等しい。くちばしの黄色さが目立つのだ。一つは政治家にとって一番危険なヒステリックな対応であることだ。産経が反民主党政権であることは誰が見ても明白であり、これにまともに反発すれば、待ってましたとばかりに3倍の反発を食らうことを知らない。


こと言論の自由の問題と関わるとマスコミは当然のことながら一致結束する。産経とは対極にある朝日までが社説で批判する結果を招いた。第二に「口だけ番長」の表現は誰が見てもうなずけるものであることだ。なぜなら国交相の時は八ッ場ダムの工事を「マニフェストに書いてある」という理由だけで中止宣言したが、着工が固まり、以来発言はない。


外相時代は尖閣事件で官房長官・仙谷由人とつるんで船長釈放に動いて、米国務長官・クリントンに「近く解決します」といち早く情報を伝えたが、その後は知らんそぶり。
 

要するに重要ポイントであっけらかんとして軽いのだ。最近も永田町では誰もが首をかしげる維新の会に大接近。あの船中八策なる愚策を「われわれの考え方とかなり共通する」と絶賛。みんなの党と競わんばかりのすり寄り方だ。維新の会のブームで問われているのは、既成政党の毅然(きぜん)とした態度だ。すり寄り政治家ではとても国政を委ねられまい。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年02月28日

◆野田訪沖に見る“アリバイ作り”の虚飾

杉浦 正章
 


辺野古への移転が唯一有効とする首相・野田佳彦と、それを「無理」とする沖縄県知事・仲井間弘多との会談は平行線をたどった。根底には、出来ないものを粉飾しようとする民主党政権の虚飾の体質がある。少なくとも野田は自らの政権で普天間移設が実現するとは思っていまい。


そうだとすれば国内向けにも対米関係においても“アリバイ作り”の不誠実さが浮かび上がらざるをえないのだ。普天間固定化の流れには依然として変化はない。
 

仲井間は野田に対して「辺野古はものすごく時間がかかる」と述べた。一見、辺野古を完全否定していないように見えるが、会談の基調は普天間基地の県外移設を求める立場に変わりがないことで一貫しいる。「ものすごく時間がかかる」とはどのくらいかと言えば、恐らく4分の1世紀単位でのことであろう。


そのような長期のスパンで米国が極東戦略を練ることはあり得ない。海兵隊移転と普天間移設との切り離しの大転換と、オーストラリア、グアム、フィリピンへの展開は、中国の海洋進出への喫緊の課題ととして出てきているのだ。
 

野田は、仲井間に対してテーブルに頭が届くかと思われるほど深々と頭を下げてみせたが、基本的には「遅ればせ」とはこのことを言う。流れを振り返れば野田の訪沖は、日米両国が普天間と海兵隊の切り離しで合意してから、やっとその必要に気づいたとしか言いようがない。


もともと5月頃の訪沖を予定していたのだ。訪沖に当たっての野田の基本姿勢は、陳謝とは裏腹に言葉は悪いが、振興策という“札束”で頬をたたく印象が強いものとなった。


野田が「沖縄振興予算は2937億円で636億円増」と言い、現地の要望の強い那覇飛行場滑走路増設に前向きの発言をしたのもその現れだ。仲井間は当然歓迎するが、それと普天間問題とは別だ。
 

沖縄側はこれを見抜いている。名護市長・稲嶺進が“大盤振る舞い”にについて「日本政府の常套手段だ。もう通用しなくなったことが分かっていない」と冷淡な反応をしたことが象徴している。政府が提出した辺野古移転に関する環境評価書に対して、県は科学者の調査、検討結果に基づいて「自然環境の保全は不可能」との知事の意見書を提示した。


これを野田はどう覆すのか。科学調査を政治でひっくり返せるのか。非現実的なことをあたかも可能であるかのように説得してみせるのは、もうやめたほうがよい。
 

野田訪沖の虚飾の側面は、対米関係においても著しい。野田は大型連休中の訪米で日米共同声明を発表する方針を明らかにした。この中でも普天間の辺野古への移転を堅持する方針だという。


しかし、米国は既に普天間移設に見切りをつけたのであり、日米合意は普天間固定化を暗黙に認めたものに他ならない。それにもかかわらず共同声明で普天間の辺野古移転をうたっても、むなしさばかりが残るだろう。


米国は日本政府が普天間移設の能力がないことを、元首相・鳩山由紀夫の「最低でも県外」発言以来のてんまつで、十分すぎるほど承知しているのだ。にもかかわらず野田が訪米で普天間の辺野古移設に固執すれば、米政府は国内向けのジェスチャーと受け止める。だいいち、日米同盟にとって不誠実ではないか。
 

ひるがえって野田政権の展望を見れば、消費増税法案が成立してもしなくても、早期解散はさけられまい。政界再編も視野の内に入りつつある。野田政権は消費増税処理で力尽きる運命が見えるのだ。野田自身も消費増税という、一内閣一仕事を達成すれば、政権に未練はないのではないか。度々消費税解散に言及するのがその証拠だ。

したがって野田のスケジュールには自らの政権在任中の普天間問題解決は存在していないし、実際に存在し得ないのではないか。野田は記者会見で「現状を自分なりに把握し、スタートラインに立つことができた」と述べたが、やっとスタートラインでは、在任中の問題解決はますます疑わしい。


野田の言う「具体的になるべく早い段階で実績を作る」ことなどとても無理だ。ここは正直に普天間の辺野古への移設を断念して、新たな極東安保体制の構築を大統領・オバマと虚心坦懐に語り合うときではないか。

<今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2012年02月27日

◆小沢の“保身”が招く国政の危機

杉浦 正章



裁判で秘書の証言が証拠採用されなければ、民主党代表・小沢一郎が「六方を踏んで躍り出る」と予測したとおりとなった。先週末以来、弁慶ばりのの大見得を切って、「政界再編だ」「倒閣だ」ととどまるところを知らない。首相・野田佳彦は説得する意向を示しているが、消費増税で小沢と激突の流れは変わりそうもない。


小沢がここに来て何故強硬姿勢に転じたかと言えば、本人がその根拠にするようにそこに国家観はない。ひとえに保身だけが際立つ。一人の政治家の独善性が国政の危機を招きかねない構図が浮かび上がっている。
 

「小沢攻勢」のきっかけは17日の証拠不採用だ。かつて同じく証拠不採用になった秘書は3人すべて有罪となったから、小沢が無罪になるとは断定できない。そこに小沢には攻勢に出なければならない理由がある。

「無罪の可能性」を背景に据えて短期決戦に出なければならないのだ。なぜなら有罪となってしまえば小沢は孤立化して、あらゆる戦略が成り立たなくなるからだ。無罪の「可能性」をエネルギーに変えるべく決戦に出るのだ。
 

そこで小沢の描く戦略はどこにあるのか。基本は数の論理を活用して消費増税反対を軸に、政権揺さぶりを展開させる方向だ。まず3月下旬の増税閣議決定に向けて反対派を糾合して、野田に揺さぶりをかける。


野田が無理矢理閣議決定すれば、提出した法案に反対で動く。政権の最重要法案に反対すれば離党を覚悟しなければならないが、小沢はこのところ勉強会に100人余りを集めており、法案否決の態勢は整いつつある。衆院の過半数は241人であり、民主党の勢力は291人だから50人が反対に回れば可決を阻止できる。
 

可決阻止の場合は当然離党・新党結成へとつながるということだろう。しかしやみくもに新党といっても、国民的求心力が萎えきった小沢自身では選挙に勝てない。


そこで“活用”しようというのが橋下徹・大阪市長が率いる大阪維新の会だ。小沢は最近親しい議員らに大阪維新の会について「彼らは議席を持っていない。こっちがまとまっていれば(政界再編の)主導権はとれる」と漏らした。この発言は極めて重要だ。何を意味するかというと、新党への動きを維新の会の動きと連動させ、巻き込むという発想に他ならない。


なぜなら維新の会は「新党」が結成できないからだ。新党結成には国会議員5人が必要となるが、今のところそれがない。小沢の新党と“連動”させれば、狙っているように比例区と選挙区で300人擁立も可能となるのだ。小沢は自らのの悪印象を橋下でぬぐい去れると踏んでいるのだろう。
 

小沢はこのままでは消滅するチルドレンを、橋下人気で救済するという虫のいい舞台回しを考えているわけだ。利口な橋下が、これに気づけば、警戒して小沢には接近しなくなる可能性があるから、実現はそう簡単ではない。


一方で野田がどう出るかだが、野田は自民党総裁・谷垣禎一が「小沢を切れ」とけしかけているように、いずれは「小沢切り」に直面する可能性がある。しかしこれも増税法案可決の前か後かで状況が全く変わる。


可決前に「小沢切り」をする場合には自民、公明両党と「話し合い解散」で法案成立を目指すという調整がついている必要がある。この調整がつけば事態は成立後に解散・総選挙に突入して、決着は国民の判断に委ねられる。
 

一方で消費増税法案が、否決されてしまった場合の「小沢切り」は、あまり意味がなくなる。なぜなら同法案の不成立は最重要法案であるから政治的には内閣不信任案の成立と同じことになる。野田は自らが解散か総辞職を迫られることになる。総辞職の選択を野田がすることはまずあり得ないから、解散となるが、いかにも追い込まれての解散となり、「小沢切り」などどうでもよくなってしまう。



おまけに念願の消費増税は実現のめどが立たないことになる。野田が「小沢の乱」に巻き返すには話し合い解散しかなくなってきているのが実態である。これに不信任案上程が絡むから、事態の展開は一層複雑化する。
 

それにつけても、小沢の逆襲の本質は、すべて“保身”にあることが明白となった。悪質なのはかって自らが唱えていたはずの消費増税という政権の存亡に関わる問題を盾にとって、「消費増税では筋道が通らない。国民は絶対に賛成しない」と言い切る姿勢にある。



とりあえず小沢チルドレンの温存を図り、その数の力で袋小路に入った自らを救い出すことしか念頭にないのだ。そこには「壊し屋」で政界を渡ってきた、自己保身のみがあって、国家などは眼中にないのだ。

      <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2012年02月26日

◆木津川だより  中津道の散策D

白井繁夫


木津川の左岸は、大和と山城国の交通の要衝「泉津」(イズミノツ)を中心に拓け、奈良時代は僧行基や良弁(ロウベン:後の東大寺別当)が開基したと云われている寺院も、当地には若干見られます。

しかし残念なことですが、木津川の氾濫原因のためか、再三の水害に因り建造物の遺構や美術遺品が残っていないとも云われています。

前回訪ねた幣羅坂神社の北側に隣接する安養寺(アンヨウジ:木津川市市坂 地図Z:C番)も寺伝によると、奈良時代:天平八(763)年に行基が開基した(旧称)阿弥陀寺と云われていました。
  地図Z:http://chizuz.com/map/map118310.html

当時は行基が刻んだ阿弥陀仏を本尊とした寺院でした。だがその後衰微し、鎌倉時代建久七(1196)年、法然上人の弟子:僧安楽(中興の祖)の努力で復興しましたが、やはり災害のためか、また衰亡しました。

江戸時代延寶元年(1673)僧學順が再建し、智恩院の尊空上人が安養寺と命名して現在に至っています。

僧行基は、民間布教や公共事業に尽力し、架橋の寺、別名「泉寺布施屋」を建て、労働者用の宿泊所とし木津川に泉大橋を架けました。また、彼はこの北岸(大狛村)の僧院「泉橋寺」に対して、南岸の木津郷には尼院「誓願寺」も建てました。

安養寺も、行基が民間布教に尽力した当時の寺の一つと云われています。創建時の美術遺品と断定はできませんが、この寺院も下記の寺宝があります。

★ 法然上人の書『六字の名號』 念仏石との掛合い量り比べの名號(ミョウゴウ)
★ 地蔵菩薩立像(像高:34.5cm) 厨子内壁には『聖武天皇念持仏地蔵菩薩』墨書
銘があり、行基に下賜の地蔵と云われています。
★一刀三禮荒木尊像弥陀仏   鑑査状下付:行基の開山彫刻と云われています。
★ 薬師如来座像(像高:46.6cm)  薬師堂本尊:藤原風の面影を強く残すが、かなり損傷しています。

明治の廃仏毀釈以前の安養寺の伽藍配置の説明です。

『現在の奈良街道に面する念仏石堂、観音堂の北側に惣門がありその門をくぐり松並木の参道を奥にすすむと、地蔵堂、薬師堂、鐘楼などが建ち並び、正面玄関の本堂と鎮守堂のあいだの中庭の池のほとりには茶亭もある大きな寺院で幣羅坂神社と併存していました』。
(参照:明治33年5月製作銅版画:念仏院州見山安養寺之景)
下記の写真は、現在の安養寺
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現在の安養寺の伽藍は、平成15年〜17年に再建されました。

次は安養寺から奈良街道を南へ奈良坂越え(山城:市坂越え、大和:般若寺越え)の峠の高座、国境の刑場跡を経て(地図Z:5番)、般若寺の近くにある能面(翁舞)で、有名な奈良豆比古神社(ならづひこじんじゃ)を目指して散策します。

安養寺から5〜600mの所に、東大寺開眼供養時の衆徒などが法然上人を追いかけて出会った所、『高座』と今も地名が残る場所があります。この国境の峠を挟んで木津側の高座には昔から旅人相手に茶店がありました。

しかし、交通手段の変化で山越えの峠道は、立派な府道754号になり、現在の高座付近は大きく環境が変化してしまいました。嘗ての高座の茶屋の子孫(引間氏)は、農業に勤しんでいます。

高座から峠を越えて大和(奈良市)へ入ると、すぐ左(東側)に一本の大きい木があり、その根もとに『南無妙法蓮華経』と刻まれた『石碑』があります。ちょうど石碑のすぐ近くで、焚火に当たっていた数人の老人との会話の概要を下記に記述します。

(ここが昔の処刑場跡で、処刑された人の供養のため建てた石碑ですか?との質問の返事)
老人たちはみんなこの地で生まれ暮してきており、彼らが祖父母から聞いた話だそうですが。

この地は刑場跡で昔は沢山の人々が処刑され、処刑に使用した刀剣を洗うと池の水が鮮血で赤く染まったので、昔から『血の池』と云われましたが、今は現道路の敷設で小さい水溜りとなって、R754の梅谷口交差点の北東角隅に残っているだけです。

彼らが子供の時、夜まで遊んでいると、処刑された人々の幽霊にとりつかれると叱られました。また当時の村の祈祷師は、村人に夜半に急用で峠道を通る場合は必ず数珠を携帯するようにと忠告していました。

(祈祷師は霊が見えるので、夜半に山中の峠道を通ると鎧を纏った古武士が肩に縋りついたり、無実なのに処刑されたと泣きつく人が出たりするので、その都度数珠で払いのけていると。)

『石碑』についてですが、現在の奈良街道の建設工事で林を切り山を崩して開通した当初、ここの峠近辺では交通事故などの多発で傷ついたり、死亡した人が沢山あったそうです。

そのため、村人たちはここの石碑に花を供えて供養し、これ以上犠牲者が出ないようにお地蔵さんにもお祈りしました。その後、今もお花を供えている為か、事故の多発はなくなったとの事です。
下記の写真は、現在の木津川市と奈良市の境界近くの刑場跡の石碑
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次回の散策は、奈良豆比古神社から東大寺の転害門を訪ねようと思っています。

<郷土愛好家>

2012年02月24日

◆ルーピー発言はいまや「口害」の域

杉浦 正章

 
山本リンダではないが「もうどうにも止まらない」のが「鳩山発言」。あらゆる政治現象に首を突っ込んでは、コメントをし続ける。マスコミがこれを報道する。聞いた人や読んだ人は、内容にかかわらず何故か不快感が先に立つ。


恐らく、間違って首相にしてしまったという悔悟の念が伴うからであろう。新聞の投書欄でも批判が目立つ。いまやルーピーこと元首相・鳩山由紀夫の発言は「口害」になりつつある。
 

1番ひどいのが何と言っても昨年12月の「辺野古以外があるか。私は決してないとは思っていない」という発言。普天間基地移設をめぐって「海外、少なくとも県外」発言が、ガラス細工であった同問題をぶちこわし、自らの退陣を招いたことも忘れたかのように、いけシャーシャーと語ったのだ。


さすがに温厚な官房長官・藤村修も「真意を聞きたい」と不快感を示したものだ。この発言が象徴するものは、やっぱり地球人ではなく宇宙人であったということかもしれない。自責の念などかけらも見られないのだ。
 

大阪維新の会の公約「船中八策」についても鳩山は23日「不十分。一切数字が書かれていないが、私どものマニフェストから学ばれたのか」と皮肉った。数字を書いてことごとく実現不可能が証明された自らのマニフェストへの反省どころか、自虐ネタにする“軽さ”である。


そのマニフェストについても「マニフェストを守れない政治家は辞めた方がいい」である。開いた口が塞がらない。隗(かい)よりはじめよと言いたい。


自説にもこだわり続ける。「環太平洋経済連携協定(TPP)よりアジア共同体構想を優先すべきだ」といった具合だが、同構想が米政府に疑心暗鬼を生んで日米関係を悪化させたことなど、全く分かっていないのだろう。


民主党はなんと、その鳩山の“功績”をたたえるつもりなのだろうか「外交担当最高顧問」とするのだという。これだけで民主党支持率は5%下がる。幹事長・輿石東の判断力はもう少しましかと思ったが、結局ごますりマンであったか。ここは「外交」担当でなく、逆さに読んで「口害」担当とすべきところだ。朝日川柳の「外交をつい口害と読み違え」が秀逸。
 

本人は、自らの政治理念「友愛」をもじって「由紀夫を友紀夫と改名する」などと、面白くもないだじゃれを飛ばしているが、世のひんしゅくを買っていることなど、つゆほども気づいていない。一般国民も不愉快に思っている向きが多いと見えて、新聞の投書欄にも批判が掲載される。


朝日声欄には、「辺野古以外にないとは思わない」発言を「懲りもせずにぶち上げた。相変わらずの宇宙人ぶりだ」「マスメディアは民主党の小沢一郎元代表、鳩山由紀夫元首相の話題を大きく取り上げすぎではないかと苦々しく思っている」といった批判が載る。
 

民主党内では、何とか止める方法はないものかと思案投げ首だ。議員の間では「鳩山発言禁止法を議員立法する」「大阪市長が改憲するついでに21条の言論の自由を鳩山さんだけ適用除外してもらう」「新聞が『今日の口害』欄を設けて、そこに掲載する」といった珍説奇説が冗談紛れに語られている。

1番いいのはマスコミが取り上げないことだが、仮にも元首相の公の場での発言であるから、取り上げざるをえまい。取り上げて判断は読者に任せるしかない。


かつて引退声明したとおり引退すればいいのだが、本人は発言を撤回。民主党支部は北海道9区の公認候補とすることを決めた。度し難い発言は続き、民主党票を減らす。

朝日川柳には「いつまでも残って消えぬ鳩の糞(ふん)」とある。まさに「ふん口害」だ。
 

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年02月23日

◆小沢、消費税政局で“激突”を宣言

杉浦 正章

 
ついに春の突風「春疾風(はやて)」が、小沢一郎から吹いた。22日夜、消費増税法案の3月下旬の閣議決定に結束して反対するようにグループ内に呼びかけたのだ。


23日付朝日新聞のインタビューでも小沢は、解散・総選挙前の政界再編に言及しており、政局は民主党分裂もあり得る危機的状態に突入しそうだ。当然野党は民主党内の動きに連動して内閣不信任案を上程するものとみられ、解散・総選挙も視野に入ってきた。3月危機が現実のものとなり始めたのだ。
 

NHKによると小沢は、近い議員らとの会合で消費増税について「時期的に、法案の閣議決定が最初の一つのポイントになる。閣議決定は簡単ではない」と明言、閣議決定に結束して反対する方針を明らかにした。


さらに小沢は「消費税の増税は、いくら野田君が頑張ろうとしても、世論が後押ししないかぎり無理だ。これからの世論の動向は、われわれが思っているよりも厳しいものがあるはずで、そういう世論を受けて、なお突っ走ることは、おそらくできないだろう」との見通しを述べた。
 

一方、朝日とのインタビューはもっと生々しい。小沢は首相・野田佳彦が消費増税解散に踏み切った場合にについて「民主党内閣、民主党自身の終わりだ。選挙前の再編を含め、国家が混乱しない方策を考えなければならない」と野田政権に見切りをつけたとも受け取れる発言をした。


政界再編の時期について「選挙前にやらないとダメ」と繰り返した上で、「安定した過半数の政権ができるようにしないといけない」と消費税反対での政界糾合に意欲を示した。これまで、小沢は自らの議員グループの会合を頻繁に開き100人近い出席者らに消費増税反対の姿勢を明らかにしてきた。


さる16日の前首相・鳩山由紀夫、幹事長・輿石東との会談でも、党分裂の危機に言及した模様だ。鳩山が「このままいったら党が大変なことになる」と内容を漏らしている。
 

小沢は自らの裁判が秘書の証言が証拠採用されなかったことで、有利になったと勢いづいている形であり、4月の判決を待たずに行動を開始した形となった。背景には判決がクロと出た場合にはかえって身動きがとれなくなるとの判断があるものとみられる。


小沢は朝日に「野田さんが思い直して初心を忘れずに努力してもらうことを、最善の策として望む」とも述べ、首相・野田佳彦の翻意を促している。しかし、消費増税に向けての野田の姿勢は全くぶれていない。


22日の衆院予算委でも「私は党代表選で明確に消費増税をかかげ、素案の決定も時間をかけて着々と議論し、握手と拍手で終わった。強引な意思決定はやっていない」と増税大綱決定に至る手続きに瑕疵(かし)はないことを強調した。


既に、不成立の場合の解散・総選挙の可能性にも言及している。この結果、小沢の発言はまさに野田との正面衝突の方向を示していることになる。野田と小沢の間に立った形の輿石は、野田、小沢、鳩山との4者会談で調整を図る動きを見せているが、まだ定かではない。
 

小沢が今後具体的な閣議決定反対戦略をどう描くかだが、閣僚の大勢は消費増税賛成であり、反対を大仕掛けに実現することは難しい。


やはり反対している国民新党と連携することも視野に入れているものとみられる。代表亀井静香を通じて郵政改革相・自見庄三郎を反対させる。グループの防衛相・田中直紀も、反対して辞任という方向に持って行きたいのだろう。2人しか反対しなくても十分起爆剤にはなり得る。
 

野党も、小沢の動きを固唾をのんで見守る。自民党総裁・谷垣禎一は、「首相は野党に協議を求めるなら、まず小沢元代表とさしで話し合い、『賛成するなら一緒にやりましょう。反対するなら(党を)出て行ってください』と言うべきだ」と、野田の「小沢切り」をけしかけている。不信任決議や問責決議の提出時期もうかがっている。


小沢が再編も辞さぬ反対に踏み切る姿勢を明らかにしたことは、自民、公明両党の早期解散戦略に大きく作用する。小沢グループが党分裂も辞さぬ構えとなれば、内閣不信任案が成立しうる。会期末の6月の決議上提を早める流れが生じるだろう。


3月末から4月にかけての政局は民主党内の動きに、野党の思惑が絡んで三つどもえ、四どもえの展開を見せることが予想される。さらに、大阪維新の会、「石原新党」など波乱要素も加わり、まさに何でもありの状況になるだろう。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年02月22日

◆「新党」で「いつか来た道」を繰り返すな

杉浦 正章


みのもんたに代表される民放テレビの浅薄なセンセーショナリズムと国政批判によって、既成政党は「悪」であるという概念が有権者に定着し、これが大阪維新の会に「風」を吹かせている。


維新の会は何と改憲が必要な統治システムの改革を唱え、独裁的な政治手法の指導者が国政に乗り出す機会を窺っている。


既成政党はなすすべを知らずに、卑しげな秋波を送り続けている。歴史は繰り返すというが、まさに政友会と民政党の不毛の対立が軍部独裁を招き、国を滅ぼしたいつか来た道の危うさがそこにある。
 

既成政党を褒めるのはマスコミのタブーのようになっている。批判することが日本のインテリのレーゾンデートルであるかのようである。ちゃんちゃらおかしいと言いたい。


大衆にこびを売り正義の味方とばかりにみのもんた風の司会者が朝から晩まで政党の“ていたらく”だけを誇大に伝え、批判し続け、忙しい有権者はそんなものかという思考が定着する。戦後の日本の政党政治はそんなに悪かったのだろうか。
 

ここは世界的視野から日本の立ち位置を俯瞰(ふかん)する必要がある。例を挙げれば、米国の“本音”が「日本の失敗という神話」と題してニューヨークタイムズのオピニオン欄に載った。「日本が今やとても意気消沈した国になってしまい、本当に後退してしまったというように描き出すのは神話というものだ」で始まって、日本の隆盛ぶりを語っている。


日本人の平均寿命は、1989年から2009年にかけて4.2歳も伸び、アメリカ人より4.8歳も長生きである。インターネットのインフラ構築で著しい進歩があり、最速のネット・サービスが享受できる世界の50都市中、日本の都市は38もあったのに対して、アメリカの都市はたった3つだけ。


1989年末を基準にすると、円は米ドルに対して87%、英ポンドに対して94%も上昇した。失業率は4.2%で、アメリカの約半分である。500フィート以上の高層ビルは、「失われた数十年」開始以降、81棟が東京で建設された。それに対して、ニューヨークでは64棟。といった具合である。
 

日本の繁栄を羨望のまなざしで見る論調で貫かれているのである。この視点は金融危機に直面する欧州や発展途上のアジア諸国からみれば共通する側面があり、それをもたらした日本の戦後政治は、少なくともみのもんたが朝から晩まで批判するようなものではあるまい。


駄目と言わなければ視聴率を稼げない、自虐趣味でなければ有識者とみなされないような民放テレビの政治報道は、すべてを短絡させて伝達し、やはりタレント出身の大阪市長・橋下徹の政治手法に大きな影響を与えているかに見える。


橋下が船中八策で唱える首相公選と参院無用論は、戦後営々として築いてきた議会制度システムを根本から変えようとするものに他ならない。橋下がなぜそれを唱えるかと言えば、自分の政治手法にもっともマッチしたシステムであるからだ。たちが悪いのは自らは国政に立候補せずに、裏でコントロールしようという意図がありありと見えることだ。
 

公選首相なら独断的政治手法を自由に駆使しやすい上に、ねじれで政治が遅滞する参院がなければ、法案処理も速まる。朝日川柳に「独裁に賭けたくもなる閉塞(へいそく)感」があった。気持ちは分かるが、政治とは我慢の連続である。ガバナンス(統治)の側もガバナビリティ(被統治能力)の側も忍耐が不可欠だ。


中国のことわざに「国を治むるは田を鎒(くさぎ)るごとし」がある。政治は田の雑草を取り除くような地味な作業の繰り返しであるというのだ。チャーチルは政治の要諦を「忍耐し、我慢しさえすればやがてよくなる」と形容した。
 

ここ数年の政治に目を移せば、自民党政治の末期症状を嫌気して、よかれと選んだ民主党政権がマニフェストの虚飾が露呈、有権者は政治への失望感に苛まれている状態だ。浮動票は響きのいい「新党」へと向かいかねないムードも生じている。


しかし維新の会も「石原新党」も、独裁傾向で相通ずる「危うい」側面がある。繰り返すが大正から昭和にかけての政党の体たらくが生んだ、ファシズムを繰り返してはならない。政権交代が期待外れであったからといって、決して国政には選んではならない政治家たちなのである。


謀反の心を異心というが、朝日川柳で「野暮(やぼ)なことただの異心を維新とは」と看破されているとおりだ。朝から晩まで民放が政治批判を繰り返すから、政治システムまでも変えるのか。この国の政治を民放政治ショーの司会やコメンテーターレベルの政治にしてしまって良いのか。


ここは有権者が自ら選んだ二大政党制を我慢の子で育成するべきだ。維新の会や石原新党などというムードに押されて、これに飛び付き、誤判断を繰り返すべきではない。新党にバラ色の未来など絶対にあり得ないのだ。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家・元時事通信編集局長)

2012年02月21日

◆「活路」乏しく、政界2つの“消滅”の危機

杉浦 正章


沈む船からネズミが逃げるというが、まだ沈むと分かってもいないのに、ジタバタと見苦しいのが国民新党と小沢チルドレン。

政治権力の蜜になんとしてでも吸い付きたい代表・亀井静香の「泥亀スッポン」が、おひいさま「亀姫」亀井亜紀子をたぶらかして、論理矛盾の消費増税反対宣言。やがては連立与党解消も視野に入れているに違いない。

チルドレンは選挙情勢調査で落選必至の結果が出て、「新党」へとなびく。一世を風靡(ふうび)した「小沢ガールズ」もいまや「徳川幕府崩壊時の大奥のように右往左往」(民主党幹部)だという。
 

世が世なら旧津和野藩藩主・亀井伯爵家の直系姫君である政調会長・亀井は、かねてからなかなか賢い女性だと思っていたが、19日のNHK党論ではがっかりした。泥亀代表の言うがままを露呈したのだ。

消費増税に反対なのに大綱の閣議決定に反対しなかった理由について「大綱の中に書かれていることは実現不可能なので黙認しろという代表の大局的判断で行った」と内情を語ったのだ。

即座に民主党政調会長・前原誠司が「それなら閣議決定に賛成すべきではない。全くの論理矛盾」とたしなめたが、亀姫は記者団にも「スタンスは変えてない。消費増税はずっと反対」と言い切った。幹事長・下地幹郎が、陳謝して回ったが後の祭り。国民新党の分裂ぶりを露呈してしまった。

それでは静香の支離滅裂な「大局的判断」とはなにかを分析すれば、「石原新党」結成までは大人しくしようということに尽きる。消費増税に賛成の石原のご機嫌を損ねてもまずいという党利党略が「大局」というわけだ。
 

静香は、たったの衆院5人で民主党との連立を果たして、それなりの存在感を示すことが出来た。ここで“政権の蜜の味”が、遠ざかる事に焦燥感を感じているのだ。人間の業というのは限りがないもので、いったん権力の座の味を知ると、能力がなくてもしがみつこうとする。その姿勢は大きな魚に寄り添って、おこぼれにあずかるコバンザメ型だ。

総選挙の展望は惨たんたる状況であり、このままでは衆院選で消滅の危機が待っている。そこで寄り添う相手を都知事・石原慎太郎に移した。先に、衆院議員・中島正純(大阪3区)を、民主党現職のいる東京23区で擁立すると発表したのも、石原の力を利用しようとする作戦だ。

静香は新党が可能となれば、石原人気を利用できる選挙区に次々鞍替えさせる戦略のようだ。もう持論であったはずの郵政改革法案成立などは眼中にはなくなったようにみえる。そこには政治家に不可欠な信条・信念はなく、口先八丁で離合集散の中から活路を見いだそうとする政治屋の姿しかない。
 

民主党にしてみれば、小沢グループが造反すれば別だが、衆院は291議席あるからやろうと思えば増税法案を強行採決できる。したがって5人の国民新党はどっちみち不要だ。

参院4人は、もともとねじれで野党が優位だから、与野党協議で話し合いがつかなければ不要。消費増税という大目標のためには国民新党などは、与党でなくても十分なのだ。野田は増税法案閣議決定で反対に出れば、切って捨てるくらいの覚悟は出来ているのだろう。
 

一方で、小沢チルドレンにも動揺が走っている。

小沢が昨年末からチルドレンに選挙区帰りを勧めている理由は、党の選挙情勢調査で104人の小選挙区の新人のうち8割が落選の可能性と出たのが理由だ。もともと「風」だけで当選したチルドレンは小泉チルドレンと同じで、政治的に見れば「1期限りの使い捨て」の側面が濃厚だ。

小沢が消費増税に反対しているのは、連動した解散・総選挙で勢力消滅の危機に瀕しているからだ。ここは何としてでも解散・総選挙を遠ざけて、態勢の立て直しを図らないと小沢の政治生命も消滅の危機となる。少なくとも9月の代表選までは、勢力を維持しなければならないのだ。
 

しかしチルドレンの実態は、新人議員らが、新党きづなを結成したことが物語るように遠心力が強く作用している。維新の会からの出馬や「石原新党」に活路を見出すべく、その成り行きを固唾をのんで見守っているのが実情だ。

しかし度し難いのは、柳の下にドジョウが2匹いると思っている甘さだ。小沢は政治塾でチルドレンもガールズも「人生あきらめが肝心」と教えなければなるまい。

自民党総裁・谷垣禎一が朝日の社説のまねをして、野田に「足元を固めないと駄目だ。小沢氏と首相が一対一で話し、『賛成するなら一緒にやりましょう。反対なら出て行って下さい』と整理しなければ、政治の力は生まれてこない」と小沢グループ切り捨てを勧めた。

しかし勧めるまでもなく自壊作用は生じており、小沢は食い止めに懸命だ。当分目が離せない状況が続く。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)


2012年02月20日

◆増税大綱の決定が攻守ところを変えた

杉浦 正章

 
消費増税をめぐる戦いが、野田内閣が税と社会保障の一体改革の大綱を閣議決定したことで、にわかに攻守ところを変える形となった。


新聞論調は自民、公明両党の硬直した増税協議拒否の姿勢を一斉に批判。自民党総裁・谷垣禎一は党内からも強い突き上げにさらされて、窮地に陥っている。


自公両党とも解散・総選挙狙いの党利党略が前面に出すぎて、さもしいとうけ止められているのだ。両党の狙いが話し合い解散にあるのなら、堂々とこれを主張して法案の成立を図るべきではないか。
 

副総理・岡田克也が19日のテレビで野田の消費増税への姿勢について「全くぶれていないし、変わっていない。今後頻繁にメディアに出て国民を説得する」と述べた。確かに野田の姿勢は微動だにしていない。側近には「ここは愚直にまっしぐらの場面だ」と漏らしているという。


一体改革がここで挫折すれば、日本経済の再生はあり得ないばかりか、海外のハゲタカファンドの絶好の餌食にされて、“日本売り”が始まる。野田の立ち位置は過去の首相の中でも、際だってすっきりしている。大義を握ったのだ。政調会長・前原誠司がNHKで国民新党の反対しながら大綱に賛成した論理矛盾を「めちゃくちゃな論理」と突いたのも、政権分裂覚悟の姿勢で潔い。
 

一方で、ひたすら早期解散・総選挙を追い求める自公両党の姿勢があまりにも党利党略一辺倒でみすぼらしく見える。岡田が「そもそも2015年に10%にする方針は自民党の公約。解散・総選挙ばかりを言うが、それでは選挙で消費増税を訴えるのか訴ええないのか。万一政権を取ったら消費税を上げるのか上げないのか。明確にすべきだ」と矛盾点を指摘したが、まさにその通りだ。


今までは「閣議決定すらされていない」と協議を拒んできた谷垣は、大綱が決まっても「事前に密室で談合しろという意味ならお断りだ。国会で堂々と議論したい」と拒否の姿勢を貫こうとしている。次々にハードルを高くする発言は、もはや白々しさしか感じない。増税は「賛成だが反対」では国民は自民党の政策を理解出来ない。
 


谷垣は小沢一郎が増税反対なのに関して、野田に対して「出て行ってください」と言うべきだと19日発言した。しかし、これは18日付朝日新聞の社説「もし、最後まで増税に反対する勢力がいるのならば、たもとを分かつしかない。


首相には、その覚悟を強く求める」のコピーそのものだ。一党の党首が社説の受け売りでは情けないではないか。元首相・森喜朗がしびれを切らして批判したかと思えば、若手・中堅議員ら十数人が「リーダーシップを発揮せよ」と申し入れるといった事態が生ずるのも無理はない。自民党は大義を失った。何でも反対政党に変貌したのか。
 

大綱決定に全国紙各紙は一様にこれをバックアップする社説を掲載した。朝日は「野党との事前協議が成り立たないのだから、政府・与党単独での大綱決定は当然だ」と主張。読売は「首相は国民の理解を広げるため、全力を挙げねばならない」と鼓舞している。


これに対して自民党の姿勢については、朝日が「とりわけ自民党には失望させられた。消費増税の必要性を認め、当面10%という引き上げ幅も同じなのに具体的な対案を示さない」と批判。


読売も「自民党は、早期の衆院解散・総選挙を求めるだけで、与党との協議を拒み続けている自民党への支持は広がっていない。自民党の姿勢が党利党略と受け取られているからだろう」と看破している。
 

このような世論の潮流は民放の政治ショーでそのまま真似して引き継がれて、自民党が袋叩きに遭うといった状況だ。それでもひたすら自公両党は強硬姿勢を崩さない。なりふり構わぬ激突のコースをたどるつもりのようだ。自公両党首脳とも大局を見る目がない。


このまま激突すれば、マスコミは政治の体たらくを批判し、政界全体の地盤沈下は覆うべくもなくなる。そこを狙って「危うい」大阪のハイエナや東京の核武装論者が舌なめずりをしているのが、全く分かっていないのだ。


維新の会や石原新党は政界が揺れる間隙を縫って、政界での実績がゼロにもかかわらず、「風」だけに乗って進出を図ろうというのがその基本戦略なのだ。しかし、もうこの国に出てはつぶれるパフォーマンスの新党など不要なのだ。
 

自公両党とも、ここは与野党協議に応じて消費増税を与野党激突のテーマから取り除くべきだ。紛れもなく消費増税は、自民党の長期政権がもたらした財政危機に端を発しており、民主党と共同責任を負うべきものだ。


国民向けに枝葉末節をとらえて、民主党による増税反対を唱えても、有権者はだませない。民主政権を倒すことが出来ても、総選挙では浮動票の迷走を招いて、この国の政治の混迷を増幅するばかりだろう。 

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)


2012年02月17日

◆大綱閣議決定で野田は地雷原に入る

杉浦 正章


消費増税大綱を17日に閣議決定する首相・野田佳彦の心境は、もう中央突破しかないというところだろう。地雷原は3月危機から始まって6月危機へと続く。


触発が続く荒野を突破しても、会期末には解散・総選挙か、内閣総辞職か、話し合い解散かの選択肢しか残っていない状況となる。野田が目をつむって突撃して、火花が散ってその中から何が生まれるかという、近来希な政局の展開に入ることとなる。
 

この期に及んで何を話し合ったかが極めて注目されるのが16日夜の小沢一郎・鳩山由紀夫・輿石東会談だ。将来中身が浮上すれば、あのときの2時間の会合で流れが出たということになる。情報は鳩山が「このままいったら党が大変なことになる」と言ったことしか漏れていない。


小沢一郎の第1の側近だったはずの輿石は、幹事長になって以来、消費税に関しては完全に野田の路線に歩調を合わせている。一方小沢と鳩山は消費増税反対を確認し合っている。そのなかで会談の構図を見てきたように予測すれば、まず輿石が、「明日大綱を決定せざるを得ない」と方針を説明、理解を求めた。


ここは分かりやすく、くだけた表現を使えば、小沢と鳩山が輿石に「こっち側に戻れよ」と持ちかけ、輿石は消費税だけは野田を裏切るわけにはいかず、言を左右にしたというところではないか。最後に小鳩は「このままでは子分が黙っちゃいねぇ」とすごんだのだろう。「党が大変なことになる」というのは紛れもなく「分裂するぞ」の脅しでもある。


いつ分裂するかと言えば、「増税法案閣議決定の際かもしれん」と小鳩が脅したのだろう。同法案の閣議決定は3月20日に予定されている。民主党政権は法案の閣議決定は党の事前承認を必要とする。
 

それでも野田は初志を貫徹する姿勢だ。増税推進派の態勢は既に固まっている。輿石をはじめ副総理・岡田克也、政調会長代行・仙谷由人、政調会長・前原誠司ら主要メンバーの姿勢も一致している。閣僚の造反も今のところ出ていない。そして今日の閣議決定が何を意味するかだが、民主党単独でも増税法案を通すという意思表示の現れに他ならない。


今日決めないと3月末の法案国会提出が事務的にも間に合わないのだ。しかしこの姿勢は党内と野党を強烈に刺激する。もちろん国会は与野党対決ムードが一段と増幅するだろう。おそらく野党は大きな波動を2度にわたって起こそうとするだろう。
 

それが3月危機と6月危機となるが、3月危機はまだ“瀬踏み”ともいえる段階ではないか。自民党が場合によっては内閣不信任案を3月の段階で上程する可能性も消えたわけではないが、小沢の動きがまだ定かではない可能性があり、可決は流動的だ。


なぜかといえば小沢は裁判の4月判決を控えて身動きが取れないからだ。今日17日の公判の証拠採用の是非によってもある程度分かるが、裁判がクロと出れば破れかぶれで不信任案に同調。シロと出れば堂々と分裂を宣言して不信任案に同調という構図が考えられるからだ。


同調しなくても不信任本会議欠席という、かって福田赳夫が使った手法もある。この場合は不信任を可決しても分裂の回避が可能だ。従って自民、公明両党の解散戦略は「3月瀬踏み、6月本命」の戦略だろう。
 

自公の武器は2つある。1つは消費増税法案反対を主軸に置く。他の1つは、赤字国債発行のための予算関連法案の人質化がある。したがって予算が例え4月上旬に自然成立しても、関連法案成立のめどは会期末まで立つまい。上旬には消費増税法案の審議にも入る。


したがって4月以降6月21日の会期末までが本格的な地雷原入りとなる。こうした中で野田は増税法案を5月連休明けにも衆院だけは通過させ、様子を見る方針だろう。しかし、たとえ小沢の造反を押さえて、衆院を通過させても、参院でのねじれは成立を不可能とする。


そこで野田の言葉「解散しろという野党に対しては、やるべきことをやって、やり抜いて民意を問うことをはっきり宣言したい」が生きてくる。野党と党内に向けて参院で可決成立しなければ、小泉郵政解散と同じ手法をとるぞという恫喝(どうかつ)である。
 

不信任案が成立した場合にも野田が総辞職を選択することはあり得ない。消費増税への信条に反するからだ。国民に信を問うしか選択は無い。こうした野田と野党、小鳩との激突の火花の中から何が出てくるかだが、考えられる落としどころは話し合い解散しかあるまい。増税法案成立で野田は納得。解散で野党は納得の図式だ。


いずれにしても小沢グループは選挙惨敗・崩壊の瀬戸際に立たされる。3方1両損ではなく、小沢だけ100両損の構図だ。
 
<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年02月16日

◆船中八策は、総じて嘲笑、褒めるものは下心

杉浦 正章



この政治現象をどうとらえるかだが、しょせんは「おもしろうてやがてかなしき鵜舟かな」(芭蕉)だろう。

大阪のタレント市長をマスコミ、とりわけ浅薄な民放テレビが政治ショーで盛り上げて、維新の会が国政に進出できても、竹下登ではないが「政治家1年歌手2年の使い捨て」だ。民主党マニフェストと同じで偽物はすぐにばれるのだ。

維新チルドレンに引っかき回されて、日本の政治が民主党政権に次いでまたまた政治空白の脇道にそれないことを祈るばかりだ。


市長・橋下徹の“船中八策”は、予想通り政界から総スカンの体だ。政界の反応は「総じて嘲笑、褒めるものは下心」と言う形に2分類できる。褒める方の双璧が首相・野田佳彦とみんなの党。野田はどうも橋下に子供っぽく「うれしい」と言わせるのがうまいようだ。

「シロアリにたかられないように」発言では、「めちゃくちゃ嬉しい」。こんどの「問題提起は良いことだ」のよいしょには「めちゃくちゃ」はつかないただの「うれしい」。野田の狙いはどこにあるかといえば、選挙対策だ。少しでも民主党の目減りを減らすには維新の会と連携出来ればという下心だ。

加えていまや“消費税マニア”と化した野田にしてみれば、船中八策が消費税導入であることが、これまた「めちゃくちゃ嬉しい」のだろう。もっとなりふり構わぬのがみんなの党だ。渡辺喜美はもう少し骨のある男かと思っていたが、年増女のような“すり寄り”方で薄気味悪い。
 

一方で政治家として筋を通しているのが、たちあがれ日本の平沼赳夫だ。船中八策をいみじくも「国家観がない」と断じたのだ。「並べてあることは憲法改正事項が非常に多く、果たして本気でこんなことを考えているのかという感想を持った」と批判した。

平沼は「石原新党」で維新の会との連携を模索しているのかと思ったが、この激しさでは連携を断ち切ったとも受け取れる。まじめで信条を重要視する平沼らしい反応だ。

総じて政界の反応は参院の自民党国対委員長・脇雅史が「論評に値しない。憲法を変えなければできない話もあり、とても公約になんかなるわけもない」「2年半前に民主党がとんでもないマニフェストを出して、今日まで来たが、全部できなかった。また2年半前と同じことなる」というところに尽きる。


傑作なのは維新の会のブレーンとされてきた堺屋太一が「参院の廃止なんてとんでもない」と批判したことだ。逆に推察すると堺屋は船中八策で全然相談されていないことになる。その堺屋も講師となる維新政治塾は3月24日開講となり、月2回程度開かれるという。5月下旬までには「中間考査」で2500人の塾生から、衆院選候補を徐々に絞って、最終的には300人として、200人の当選をめざすのだという。

政治塾とは名ばかりで、何のことはない総選挙向けの“ふるい”にすぎないということになる。12万円もの受講料を払ってふるいに掛けられるためにのこのこと3000人あまりもがよく集まるものだ。


この「維新塾選挙」には大きな問題点が少なくとも3つは存在する。1つは解散・総選挙に間に合うかということだ。5月下旬に「中間選考」で、ディベート能力や街頭演説の能力をみるという。2500人にそんなことをしていれば、もう解散されてしまっているかもしれない。少なくとも解散間近となろう。

2つは、例え間に合っても急ごしらえの未知の人間を候補に据えるいいかげんさである。国政選挙をなめているとしか言いようがない。これは橋下人気という“風”だけを頼りにしている証拠であり、おそらく選挙運動も統一が取れず、はちゃめちゃに混乱する可能性が高い。

3つは橋下が選挙に出ないことを公言していることだ。橋下人気だけが頼りの選挙で主役が出ずに“お囃子役”に徹するのでは、まさに責任回避の“敵前逃亡”ではないか。


今回の衆院選挙は消費税と並んで普天間固定化問題が象徴する外交・安保が焦点となる。できもしない首相公選や参院の廃止でなく、憲法9条への対応や、集団的自衛権の是非など国家の直面する重要問題がなおざりにされてはなるまい。

地図を見れば中学生でも気づくオーストラリアを含めた「日米豪連携」などでお茶を濁せる問題ではない。
<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年02月15日

◆野田政権の支持率低下は底なし沼だ

杉浦 正章



内閣支持率が低落する度に思い出す人がいる。竹下登だ。1988年に消費税を初めて導入してから支持率が低落の一途をたどり、退陣直前の時事通信の調査で4.4%に至る。内閣支持率史上に燦然(さんぜん)と輝く金字塔を打ち立てたのだ。


当時筆者は政治部長だったが、数字を持参して、退陣要求のデモ隊に囲まれた竹下邸(旧佐藤栄作邸)に他社の仲間と潜り込んで、「ここまで来ました」と見せた。竹下は「そろそろ潮時だわな。周りの家にも迷惑だしな」と漏らしたものだ。すごいのは竹下が4.4%にいたるまで「潮時」と思わなかったことだ。結局総辞職した。
 

連綿と続く時事の調査によると40%台で辞めたのが細川、羽田内閣。30%台で辞めたのは池田、小泉内閣。20%台は福田赳夫、大平、中曽根、海部、村山、橋本、安倍内閣だ。10%台は佐藤、田中、三木、鈴木、宇野、宮沢、小渕、森、福田康夫、麻生、鳩山、菅内閣となっている。一ケタで辞めたのは竹下だけだ。これで内閣支持率が20%台に入ると、何故危険水域入りするのかが分かる。
 

それでは首相・野田佳彦の場合はどうか。


内閣支持率は1月に時事が28.4%となったのを皮切りに、最新の調査で朝日が27%、産経が26・4%と3割を割り込んだ。辛うじてNHKと読売は30%にとどまった。支持率低下の原因はすぐに思いつくだけでも、防衛相人事にはじまって、マニフェスト崩壊、普天間固定化、消費増税、環太平洋経済連携協定(TPP)、最低保障年金の大嘘と枚挙にいとまがない。これだけそろえば下がらないのがおかしいのだ。 


その野田は竹下の輝く金字塔4.4%を追い抜く可能性があると言ったら読者は驚くだろうが、あるのだ。竹下の低落はリクルート事件もあったが、消費税導入が最大の原因であった。導入後辞任せずに政権にとどまったのが致命傷となったのだ。

消費税3%で金字塔だから、合計5%ではどうなるかというと、「大金字塔」になり得るのだ。というのも、野田は消費増税解散も総辞職も否定している。「解散は増税実施前に国民の信を問う」との方針で一貫している。その方針なら法案を通した後も政権に居続けるということになり、支持率はとどまるところを知らぬ下落となる。底なし沼だ。
 

もっとも、政権が使命感に燃えているのも確かだ。野田が「支持率に右往左往しない。本当に国家国民のためなら、現状では厳しい世論であっても説得していくことを覚悟しなければいけない場面もある」と決意を表明。副総理・岡田克也も消費増税に原因があることを認めながら、「ひるむことなくしっかり前に進めていく」と述べる。


野田に完全同調しているのだ。野田政権は「撃ちてし止まん」で、消費税に関してだけは潔い。これが支持率で最低の大金字塔を打ち立てることのできる“根拠”である。その先に見えるのは野垂れ死にしかない。哀れな末路となりたくなかったら野田は、消費増税法案を通して直ちに解散で信を問うしかないということだ。
 

ところが、選挙しか頭にない元代表・小沢一郎はこの政権首脳の対応がどうしても納得できない。「内閣支持率が下がっているときに本当にやれるのか」とか「こんなときに消費増税なんて冗談じゃない。何を考えているのか」と批判する。ここで使命感に突き進む政治家と、マニフェストでごまかしても「選挙に勝てば勝ち」という価値観でしか政局を見れない「政治屋」との差が歴然と出る。
 

しかし小沢も往生際が悪い。こんな時もどんなときもない。民主党は自分がうそついた罰でどっちみち負けるのだ。今度の調査の特徴を見れば分かる。各社共通の傾向として無党派層が異常に拡大しているのだ。


朝日が前回の55%から63%へ、読売が45%から54%へと大幅に上昇している。これは前回民主党を支持した層が、行き場をなくして“浮遊”していることを物語る。最終的にどこへ流れるかというと自民党と、“響き”だけはいい新党に流れるだろう。


自民党執行部がだらしがないのが新党の動きに対して毅然とした態度を取らないことだ。新党とは既存政党の否定であるのに、まだ未練たらしく選挙協力でもできないかなどと「裏の政治」を模索する。


維新の会の選挙公約を見れば民主党より悪いど素人集団であることは歴然としている。石原慎太郎は核武装も辞さぬファシストだ。昔の自民党だったらバッシッとたたくのだろうが、今の執行部はいつも「ハムレットの心境」(幹事長・石原伸晃)でしかない。自民党総裁・谷垣禎一以下勝負をしようという気力に欠ける。このため、判断力に欠ける有権者は、たたく既成政党がないから、いきおい新党へと向かってしまうのだ。


優柔不断ではこの政局は乗り切れないことが分かっていない。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)