2012年02月13日

◆野田は最低年金の「謝罪」が先決だ

杉浦 正章



何が胸くそ悪いかと言って、政権が国民にうそをつき、それをごまかすことほどむかつくことはない。大阪弁の「けったくそ悪い」がぴったりだ。迷走の末公表した新しい年金制度の試算をめぐる顛末(てんまつ)ほど国民を愚弄したものは無い。



最低保障年金7万円の破たんは、数多いマニフェストの公約破棄のうちでももっとも悪質な部類に入る。首相・野田佳彦はごまかしではなく、まず謝罪から入らなければ、与野党協議など進展するわけがない。
 


最低保障年金7万円が、「年金を払っていない人にまで出る」と言って2年半前の総選挙で圧勝したこと自体がまるで“フィッシング詐欺”であった。同年金についてはマニフェストの最初に明記されており、まさに公約の1丁目1番地だった。


誰もが政権が代われば、すぐにもらえると疑っていなかった。問題は年金がわずかしかもらえないか、もらっていない層を狙った悪質さである。哀れにも「年金が7万円ももらえるから」と投票した老人を何人も知っている。
 

おそらく幹事長・小沢一郎の「財源など政権取ればいくらでも出る。無駄の削減で予算の1割は捻出できる」の“空想性虚言”を根源として、財源は16.8兆円確保出来るとの誤算がまかり通っていたのだ。


しかし問題は、社会保障と税の一体改革を昨年6月に決めるに当たって、「民主党幹部の間で、『最低年金をどうする』ということになり、実現は無理だから理論武装をしようということになった」(民主党筋)というのだ。誰かが「制度改革だから遠い先になる」とアイデアを出し、そして事務当局に「試算」なるものを作らせた。もちろん実現は遠い半世紀以上先に設定したのである。
 

この結果、「試算」ができたのだ。最低保障年金を導入すると、いまの基礎年金制度を続ける場合に比べて、2075年度で最大25兆円あまりの追加財源が必要となるうえに、消費税10%への引き上げとは別に、新たに7%分の増税が必要になるという「試算」である。

要するに、今にも実現するという有権者の思い込みを修正する必要に迫られて作ったものに他ならない。そして今年に入って国会論戦を前にマスコミに試案をリークして、「公表せよ」、「いや公表しない」の論議の過程を経たうえで、結局公表したのだ。「先延ばし定着」のための実に巧妙な操作だが、すぐにばれることが分かっていない。
 

何故ばれるかと言えば、物事は原点を見ることだ。有権者は紛れもなく選挙演説で「明日にも実現」と思い込まされていたのだ。当然「話が違う」ということになるが、民主党幹部は「試算」で言い逃れできると思っている事がサル知恵なのだ。

そもそも選挙演説で「半世紀後の話です」と断った候補がどこにいたかということだ。すべての候補が「政権取れば実現」で当選してきているのだ。マニフェストに「半世紀後の話」などと「註」がついていたかということだ。つける訳がない。党を挙げての確信犯であった。
 

政権の中でもさすがに正直派がいるが、嘘つき派もいまだに存続している。正直派は政調会長代行・仙谷由人、嘘つき派は副総理・岡田克也だ。仙谷はさすがに逃れられないとみたか、5日のNHKで「総選挙で明日にでも実現するような説明をした。もう少し丁寧にやるべきだった。明日から7万円の議論になってしまったことは、訂正して謝罪しないといけない」とあっさりかぶとを脱いだ。

一方、偏執癖のある岡田は11日、最低保障年金について「『絶対これは譲らない』と言ったら(与野党)協議にならない」と述べ、与野党協議促進のため、撤回の余地もあるとの考えを示した。しかし撤回の余地もへったくれもない。

もともと虚構の最低年金であり、撤回でなく、政権は仙谷のようにに訂正して謝罪するのが筋なのだ。野田は方針通りに来年、年金改革法案を国会に提出するとしているが、それまで政権が続くのか。来年のことを今言えば、鬼が笑うのだ。自民、公明両党も馬鹿ではないから、虚構の構図はおそらく推察している。だから与野党協議には応じないのだ。
 

野田は消費税率の引き上げ法案の「大綱」を17日に閣議決定し、場合によっては単独ででも国会提出する構えだ。いよいよ将棋で言えば中盤戦激突の火花が散る段階に入る。野田の消費税導入路線自体は正しいが、成立できたとしても総選挙となれば、最低年金で必ず有権者の手痛いしっぺ返しを受ける。

それにしても17日と言えば小沢裁判の重要な転機となる日である。元秘書・石川知裕の供述調書が証拠採用されれば、4月の判決は有罪へと向かい、小沢グループは崩壊の危機にひんする。証拠採用されないことになれば、小沢の無罪の可能性も出てきて、またまた小沢が大見得を切って六方を踏む。

その日を狙ったわけでもあるまいが、民主党政権にとって厄日となりそうだ。暦は友引とある。朝晩は吉、昼は凶だ。
<今朝のニュース解説から抜粋>    (政治評論家)


2012年02月12日

◆橋下氏、次期衆院選へ新方針

早川 昭三


橋下大阪市長が、国政進出への意向を明らかにしたのは、今年1月20日開いた市長就任後初めての政治資金パーティーの席上でのことだ。

市長は「大阪都構想がゴールではない。大阪がこのように動き始めているのなら、次なる目標として日本国も動かしていこう」と述べ、「本年勝負させてください」と、次期衆院選での候補擁立を示唆した。

当時この発言は、「大阪都構想」実現に横車を押す既成政党や各党幹部に威圧感を与えるためだけの、いわば橋下流の「劇場型政治」のひとつではないかとみる向きが多かった。

ところがその直後、橋下市長率いる大阪維新の会がこの4月に「維新政治塾」を立ち上げ、次期衆院選の候補者養成をめざすことにしたことから、市長が国政進出を本気で進めていることを伺わせた。

「維新政治塾」に講師には、塾長の橋下氏と松井大阪府知事のほか、堺屋太一元経済企画庁長官、中田宏前横浜市長、山田宏前杉並区長、東国原英夫前宮崎県知事らが当たるという。

参加希望者は、定員400人だが、締め切り日の10日夜時点で、全国の地方議員や元国会議員、官僚らから、2750人余りが応募しているという。

「塾」は、最終的に塾生の中から衆院候補者300人に絞り、200議席の獲得を目指すとしている。

しかし、切迫も想定される衆院選挙までに、果たして200議席を獲得出来る塾生を養成できるのかの疑問は捨てきれない。第一、塾生を国政進出させる政治論・方針が如何なるものかも見えていなかった。

ところが橋下氏は10日、「幕末の志士・坂本龍馬が練った国家構想に例え<船中八策>を大阪維新の会で作り、維新の会が衆議院選挙を視野に国政に向けた政治方針をまとめ、やろうとしていることをはっきり国民に示す太い軸をまとめること方針」を示し、それを「維新政治塾」で議論していく考えを示した。

それによると、「国政は統治機構が分散型になっていない。国がお金を集めて地方に渡す仕組みを断たないといけない」と今の国政に反発。地方交付税の廃止や道州制の導入を掲げる考えを主軸としている。

更に、既存政党との連携については慎重な姿勢を示す一方、既存政党を離れた政治家と連携する条件については「地方交付税廃止や道州制を本気でやってくれるかどうか」の有無を連携の必須条件とにしている。

また橋下市長は、<船中八策>の中で「参議院の廃止」を盛り込む方向も掲げている。参院廃止は<船中八策>のうち「財政再建・行政改革」分野の柱に据ているという。

国政に欠かせない環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加も盛り込む方針を明らかにするとともに、特に外交・安全保障では日米同盟を基軸とする考えも含んでいるそうだ。

確かに、「既成政党ではできない改革」を旗印として、衆院定数削減を唱えながら協議が進展しない国政に“挑戦状”を突き付ける狙いがあるのは分かる。

しかし、米軍普天間飛行場移設など沖縄県の基地問題については、「個人的には考えがある」とし、党内論議を深めるとして明言を避けており、一番知りたい橋下政治方針は明確にしていない。

対中国・韓国・ソ連との領土問題はどうするのだろうか。これ良くわからない。

自民党の麻生太郎元首相は先日、橋下徹大阪市長ら「大阪維新の会」による国政進出の動きについて、「市長として、言うだけでなく実績を示してもらう。その上で(意見を)聞くという態度が正しい」と牽制(けんせい)した。

やはり、「大阪都構想」も今回飛び出してきた<船中八策>も、いづれもわからないところが多い。市長職務とは、国政進出への熱はさて置き、まずは大阪市民の安全と景気に力を注いでほしいという声が次第に高まってきている。(了)
                2012.02.11

2012年02月10日

◆“亀井遠心力”で「石原新党」混迷

杉浦 正章



「亀井が動けば動くほど遠心力が働く」と、たちあがれ日本の幹部がぼやいている。「亀井にしゃべればテレビでしゃべったのと同じですぐ全国的に伝わる」とも漏らす。国民新党代表・亀井静香の“信用度”がここにきてがた落ちとなっている。


「亀井の怪情報」(都知事・石原慎太郎)に踊らされたのか、先月27日一面トップで「石原新党3月発足 亀井・平沼氏と合意 」とやった朝日新聞も、4日に「石原新党、波乱含み たちあがれ日本、亀井氏主導に不満 」と早々と軌道を修正し始めた。まるで亀井が関与しては「石原新党」も砂上の楼閣になりかねない気配だ。
 

それでも亀井は「新党発足は3月中。石原と橋下は既に話が付いている」とアンダーグラウンドでしきりに煽っているが、これに乗るマスコミはもはや皆無だ。新党への動きの焦点は小沢一郎が動くかどうかだが、亀井は小沢一郎が「石原新党」に「乗りたがっている」ともリークしている。


しかし小沢側近によると「小沢さんが亀井さんと最近話をしたとは聞いたことがない」と全面否定。小沢自身も「石原新党」に懐疑的で「確定的な動きではない。不確定な部分がある」と否定的な分析をしている。


9日もインターネット番組で消費増税に関して「歌を忘れたカナリアは我々ではない。忘れた人たちが民主党を離党すればいい」と逆に執行部のマニフェスト違反を指摘、「離党・新党」の動きを否定している。
 

小沢が現在感じている恐怖感は、首相・野田佳彦が消費税解散に突っ走って、小沢チルドレンを全滅させる結果を招くことにある。小沢も独自の調査をして選挙情勢を分析しているが、結果は民主党惨敗と出たという。


小沢にしてみれば4月の陸山会事件での地裁判決がシロと出れば、代表選に打って出る余地が残っており、それには人数が不可欠だ。まだ一か八かの「新党」の賭に出る選択肢はないのだ。だいいち消費税大反対の小沢が、推進論者の石原と一致できるわけがないし、石原の小沢嫌いは有名だ。


水と油がいっしょになれるのかということだ。民主党政調会長代行・仙谷由人が「小沢さんは亀井さんのように極端な財政出動や金融緩和は言わない。食い違ったまま一緒になることはない」と分析しているが、その通りだろう。消費税に関して言えば亀井は石原だけでなく大阪市長・橋下徹とも180度方向が違う。
 

問題は亀井が活用しようとしている石原の動きだが、石原は79歳という加齢もあってかその発言が四分五裂気味だ。たちあがれ日本の会議で「皆さんに命を預けて一緒にやろうじゃないか」と、明らかに新党に前向き姿勢を示したかと思うと、その舌の根も乾かぬうちに記者会見で「私から新党について言ったことがありますか」というのだから手に負えない。


しかし石原の真意について政界筋は「ちょっと今は出来ないというところにある」と分析している。こうした状況の中で、たち日代表・平沼赳夫は8日の記者会見で「3月は都知事は都議会などで忙しいわけだから、それも勘案しながら進めていきたい」と述べ、3月の新党結成が先送りされる方向であることを認めた。たちあがれ日本幹部からは「1〜2か月冷却期間を置く」と言う声が漏らされるに至った。
 

こうして朝日がトップで報じた「石原新党」は、「亀井遠心力」が原因で海のものとも山のものともつかなくなってきた。問題は行き場がなくなったが満たされない思いだけが強い政治家たちが、二大政党が激突する衆院選を前に消滅の危機感からじたばたしているところにある。亀井然り、平沼然りだ。もうそろそろ悟るべき年であることが分からないのだ。


一方で維新の会は「大阪に本店を置いて国会の支店に社員を派遣する」と大変な鼻息だが、吉幾三の唄のように「オラ東京に行くだ」まではいいが「銀座でべこ飼うだ」になりませぬように。


そもそもカリスマだけの存在である橋下が国会議員となることに怖じ気づいているようでは、いくら塾生が1000人集まっても烏合(うごう)の衆の集まりに過ぎない。課題の少ない地方でチヤホヤされて、落選必至の国会議員がわらをもつかむ思いで参加しても、国を巻き込むうねりとはなるまい。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年02月09日

◆普天間固定化で“日米暗黙の了解”の構図

杉浦 正章
 


すべては「普天間固定化での暗黙の了解」がなければ進展しなかった話のはずだ。丹念に経緯を追い情報を分析すれば、普天間移設と海兵隊移転をパッケージとする日米ロードマップが崩壊した過程が見えてくる。


首相・野田佳彦の全面否定にもかかわらず、米政府や議会筋の情報からも普天間固定化が現実問題となったことが分かるのだ。野党側は日米秘密交渉の根源部分を14日からの予算委集中審議で追及することになる。


舞い上がった首相・鳩山由紀夫の発言がすべての発端だ。「最低でも県外」が、自公政権が積み上げてきた普天間移設をガラガラと根底からぶちこわしたのだ。ガラス細工であったが故に、8日の普天間移設と海兵隊移転の切り離し発表は、補修は不可能という方向を証明したものに他ならない。


鳩山発言は2010年の普天間移設の日米再合意以降も祟(たた)り続けたのだ。沖縄現地の反対運動に火が付き、にっちもさっちもいかなくなったのである。
 

こうした中でしびれを切らした米議会は昨年12月12日海兵隊グアム移転の予算の全額削除で合意、議会有力者の間では普天間移設を「断念せざるを得ない」との見方が強まった。米軍嘉手納基地への統合の検討を含めた現行計画の見直しを政府に求める動きも生じた。辺野古を代替施設にすることは不可能視されるに至ったのだ。これが落ち目のオバマ政権への圧力となって陰に陽に作用し続けた。
 

一方、日本側も膠着状態打開の道が見当たらなかったが、沖縄側は知事・仲井間弘多が外相・玄葉光一郎に非公式に「移設・移転の分離が出来ないか」と打診。玄葉は当初は断ったが、次第に分離論へと傾いて米側を打診した。しかし米側は分離に難色を示し、日米双方が問題を抱えたまま、降着状態に陥った。


動きが出始めたきっかけは、昨年11月17日にオーストラリアの議会で行ったオバマ演説だ。オバマは「アジア太平洋が最優先」と位置づけ、世界戦略の軸足を中国の台頭著しいアジア太平洋地域に移す宣言をしたのだ。この戦略上の大転換は、来週13日の大統領の予算教書発表で定着するが、そのためには日米間ののどに刺さった骨を除去しなければならない。海兵隊移転の早期実現が不可欠になったのだ。


大統領演説を受けて国務・国防両省は、かねてから玄葉が打診していた「移設・移転の切り離し」に前向きに応ずるようになった。おそらく12月19日の玄葉・クリントン会談も切り離しが最大のテーマとして確認されたことが予想される。この切り離しの大方針を受けて審議官クラスの秘密実務者会議で13日の予算教書をデッドラインとして協議が進められ、8日の発表につながったのだ。


このような経過から推測する限り、「普天間の固定化」は話し合いにあたって暗黙の大前提になっていたことが分かる。しかし日本側は鳩山発言で壊した問題を日米再合意で修正したのであり、さらに固定化となれば二転三転を印象付け、とても野田政権は持たない。野田としては「普天間移設死守」を表明し続けなければならないのだ。


こうして発表は「切り離しだが普天間固定化はしない」となったものだが、米側は日本の政治事情など考慮しないからその点気安く情報を漏洩する。共同通信によると、米政府高官が1月末、米軍普天間飛行場移設問題の停滞を直ちに打開するのは困難で、普天間を当面現状維持するしかないとの考えを日本側に伝達、「固定化」はやむを得ないとの認識を示していたことが分かったという。


また別の情報によると国防総省が米議会との水面下の交渉で、普天間を辺野古に移設するための代替施設建設を断念する意向を伝達していたことが分かったという。状況証拠的にも米側が普天間飛行場の再整備に乗りだし、日本側に費用の分担を求めていることが注目される。
 

民主党政権の必死のカバーアップにもかかわらず、米側からはボロボロ交渉の実態が漏れ始めているのだ。自公両党にしてみれば鳩山に壊された普天間移設のロードマップを、民主党政権が修復したふりをしてまた壊したことになるわけだから怒り心頭に発するのも無理はない。


副総裁・大島理森が「普天間基地の移設と海兵隊のグアム移転を分離することは、これまでの日米合意を根底から覆すもので、普天間基地の固定化につながるゆゆしき事態に陥っている」
と述べているとおりだ。

今後消費増税問題に勝るとも劣らない問題として国会論議の焦点となる。これを乗り切るにはまず最大のアキレス腱である防衛相・田中直紀を、追い詰められてからでなく、一刻も早く更迭することから始めなければ、事態はぐちゃぐちゃになる。

この際田中は自発的に「任にあらず」と辞任するのが政治家としての立派な出処進退なのだが、どうか。今後米側から新事実が次々に出されることも予想され、野田政権は第二波第三波に見舞われていくだろう。 


2012年02月08日

◆「エイリアン」と「GKB」では情けない

杉浦 正章

 

「しっかりとセンテンスを見て欲しい」というから、しっかり見たが、どうみても自民党幹事長・石原伸晃の「胃ろうエイリアン」発言はひどすぎる。「我が身をつねって人の痛さを知れ」は、政治の要諦だと思うが、おぼっちゃまの冷たい上から目線しか感じない。

同じく、政府の自殺防止キャンペーンの標語も、アイドルグループをもじって遺族を傷つけた。この国の政治のレベルの低下は目を覆わんばかりだ。


 石原と同じような言い訳を、かって父親の都知事・石原慎太郎がしたことを思い出す。1999年府中療育センターを視察した後に、同センターに入所している重い知的障害と重度の身体障害をあわせもつ子どもや大人をさして、「ああいう人って人格あるのかね」と述べたのだ。発言後あわてて「文脈を見よ」と言い訳したが後の祭りで、ごうごうたる非難の的となった。
 

その遺伝子か、刷り込み教育か、今回の伸晃発言は父親に勝るとも劣らない。「意識が全くない人に管を入れて生かしている。何十人も寝ている部屋を見せてもらったとき、何を思ったかというと、『エイリアン』だ」と述べたものだ。このセンテンスはどうみても言い逃れが利かない。問題になった後の弁明で「私自身も『胃ろう』のようなことは行わないと、夫婦の間で決めている」と“追撃”したことからも確信犯的である。
 

ことは人間の生命の尊厳に関わる問題であり、軽率のそしりを免れない。とりわけ胃ろう治療の知識の欠如は政治家としてもいかんともしがたい。専門家によれば胃ろうは末期の患者に施されるとは限らず、完治して外して元通りになるケースもいくらでもある。患者自身や介護者の負担も軽減され、大政党の幹事長からエイリアン呼ばわりされる筋合いのものでもない。
 

政治家には弱者を見る眼差しが不可欠だ。国宝級の観世音菩薩像の眼差しだ。それが最近の政治からは欠落してしまっている。その原因の一つが、軽佻浮薄な民放テレビ討論のはびこりだ。キャッチフレーズを使って、相手をやり込めて悦に入る。ワンプレーズ・ポリティックの繰り返しで、タレント系の石原のような発言が重宝される。

口から生まれてきたような政治家に人気が出て、まじめな勉強型は脚光を浴びない。石原の発言を見ればエイリアンを嚆矢(こうし)として、父親の石原新党の動きを「人の懐に手を入れる」「父は利用されている」「ハムレットの心境」とまるで他人事だ。

国民新党幹事長・下地幹郎が「親子でよく話せ」と皮肉っているのが永田町の空気をよく現している。このようなタイプの政治家ばかりがはびこりだしたから、日本の政治レベルの低下が著しくなったのだ。石原は世に「石・石戦争」といわれ、後継総裁に石破茂と競うような形となっているが、重厚味は格段に石破の方がある。
 

そのレベルの低さの象徴が政権の側にもある。自殺防止キャンペーンの標語に人気アイドルグループ「AKB48」をもじって「GKB47」とやろうとしたことだ。「GKB」は「ゲートキーパー・ベーシック」の頭文字で、自殺のサインに気づいて防止する「門番」の役割をもじったものだ。

47は都道府県の数だ。これも自殺をテレビのアイドルと同一線上に置く、軽率きわまりない造語だ。政権内外からの非難の対象になったが、担当の副総理・岡田克也は、当初は原理主義者の評判通り標語に固執した。

しかしあまりの評判の悪さに「どうしても困る方がいれば耳を傾ける」と渋々軟化。それでもゲートキーパーにこだわって「あなたもゲートキーパー宣言」とした。しつこいのである。1度ケチがついた言葉にこだわるのは、若者流に言えば「サムっ!」であり、「イタっ!」でもある。
 

こうした思慮のない言葉は池田勇人の「貧乏人は麦を食え」以来、我が国政治家の伝統だが、昔は少なくとも“温み”があった。近ごろとみに目立つのは冒頭述べた「冷たい政治」だ。石原も岡田も強者の論理をまかり通らせようとする傾向があるように見えてならない。


これでは「サムっ!」「イタっ!」「ツメタっ!」の三拍子がそろう。


<今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)


2012年02月07日

◆普天間固定化は事実上確定だ

杉浦 正章

 
「例えば10年間は固定化で、その後は固定化でないかも知れないから固定化ではないと言うのか」と、6日の参院予算委で自民党の林芳正が皮肉ったが、普天間移設問題の状況をよく言い表している。


日米秘密交渉がブルームバーグ通信にばらされ、3日外相・玄葉光一郎が明らかにした海兵隊移転見切り発車の日米合意は、普天間の固定化そのものである。すべての報道に先だって2日に筆者が「民主政権による普天間移設は絶望的となった」と書いた見通しがピタリと裏付けられた。
 

玄葉の最近の口癖は「抑止力を維持しながら静かに協議」だが、「静かに」などという言葉が外交に使われるのは珍しい。おそらく米国務長官・クリントンから漏洩しないようにクギを刺されていたのだろう。林が「静かにとは、こそこそ隠れて、議事録をとらないということではないか」と指摘したとおりだ。秘密外交を象徴している。


民主党政権の外交が自転車の初心者の練習のように「危ない危ない」と言われながら転倒したのが、今回の米軍普天間移設と海兵隊のグアム移転問題の切り離しだ。予兆は昨年秋からあったことだ。米議会は海兵隊移転の予算を拒否し、米政府、議会の双方から陰に陽に「普天間固定化」が警告的に発信され続けて来た。


12月19日から日米外相秘密交渉が始まり、13日の大統領教書発表を前にして、いよいよ猶予がならなくなって公表を迫られたのが顛末だ。
 

野田は林の質問に「抑止力を維持しながら、沖縄の負担軽減を具体的に進めるために、どう知恵を出すかということ」と発言したが、知恵は米側が出したのである。今さら出す知恵があるのか。要するに見切り発車だ。


米政府にしてみれば、議会の圧力に加えて、中国の海洋進出で極東への兵力シフトは一段と切迫してきており、猶予は出来ない状況になった。大統領の一般教書ではおそらくアジア重視の新国防戦略を表明するのだろう。そのためには日米間の、のどに刺さった骨を取り除かなければならなかったのだ。
 

すべては元首相・鳩山由紀夫の「海外、最低でも県外」発言に起因する。それでも懲りずに鳩山は、記者団に「普天間がずっと固定化する状況にならないよう、クギを刺しておかないといけない」などと相変わらずノーテンキなことを言っているが、もう予見しうる将来普天間は固定化されるのだ。


米政府が普天間継続使用のための維持、補修の経費を日本側に要求してきていることなどがその証左だ。米側は海兵隊移設費用の日本側負担も要求し続ける方針であり、日本政府は基地移設がないまま費用だけを分担するという結果になりそうだ。


最大28億ドルの分担を軽減できるかどうかだが、どうも米側は“やらずぶったくり”の構図を描いているようだ。8000人のグアム移転が4700人になったのだからと言って、やすやすと分担の大幅な軽減に応ずるとは思えない。米側にとっては8000人が沖縄から移動することに変わりないからだ。
 

問題は野田が「普天間固定につながることがないよう全力で協議を進める」と、この期に及んでも依然移設を進める“ポーズ”を見せていることだ。しかし、この発言の本質は問題の糊塗に過ぎない。「移設断念」とでも言えば政権は即退陣に直結しかねない。


海兵隊の一部を岩国へ移駐させる案が米側から出ているが、日本側は拒否の方針だ。ここは普天間移設の“光明”を消すことが出来ないのだ。普天間移設のラッパは最後まで手放さずに、消費増税法案の今国会成立に専念できる態勢を作りたいのが本音だ。消費増税が実現すれば、一内閣一仕事で、普天間問題は次の内閣以降の課題になるというのが野田の思惑ではないか。
 


この結果市街地のど真ん中にある基地の危険性は、残念ながら除去されがたい方向となった。1万人の海兵隊は残留して普天間は維持されるのだから、沖縄の負担が大きく軽減されるなどという見方は甘い。沖縄県民にとっては最悪の選択となるが、野田は未だに訪沖して県民に直接働きかけることをしない。


首相周辺には移転実現を「内閣の得点」と宣伝する向きがあるというが、これこそカラスをサギと言いくるめる論理破たんだ。民主党政権は鳩山らが自ら作った虚構の報いを自分で受ける結果となった。これを自業自得という。


それにつけても、この切迫した真剣勝負の予算委質疑の中で、防衛相・田中直紀の存在が羽毛の如く軽い。その存在自体が“国難”に思えてくる。
   
<今朝のニュース解説から抜粋>     (政治評論家)

2012年02月06日

◆首相は「原発ゼロ」を黙認するのか

杉浦 正章


防衛省問題と消費増税論議の影に隠れているが、我が国のエネルギー政策が危機に瀕している。肝心かなめの経産相・枝野幸男が「今夏の原発全面ストップ」を公言し始めているのだ。


首相・野田佳彦はかねてから安全確認を前提に休止中原発の再稼働を明言してきたが、国のエネルギー政策の大転換を一経産相が口にして、そのまま放置するのか。それとも、野田政権は、解散・総選挙を意識して、なし崩しに原発ゼロにもってゆこうとしているのか。


枝野は朝日新聞とのインタビューで、「この夏原発がゼロになる可能性はある」との認識を示した。今夏に全国で稼働している原発をゼロと想定したのだ。


東京電力福島第一原発事故の影響で地元の同意を得るのが難しくなっているのがその理由であるという。枝野は「安全と安心をないがしろにして稼働することは許されますか」と開き直っている。しかしこの発言は政府の基本方針と大きくずれているのではないか。
 


もともと定期検査で停止した原発は、ストレステストを実施した上で、安全と確認されれば再稼働する方針であった。停止原発を稼働させなければ4月下旬にも全54基の原発が止まり、電力の3割を失う非常事態に陥る。そのストレステストの公平さを確認するために国際原子力機関(IAEA)に調査を依頼したのは日本政府ではないか。


IAEAは1日、経済産業省原子力安全・保安院によるテストは「IAEAの安全基準に準拠している」と評価して、妥当とする報告書を提出した。条件は整ったはずではないか。それをこともあろうに担当相が「安心と安全」という極めて漠然とした感情的な理由を挙げて「原発再稼働せず」を明言して良いのか。
 


かねてから枝野はその発言傾向から推察して、イデオロギー的な原発反対路線をとっていると感じていたが、今回の発言はますますその感を強めさせる。前首相・菅直人がソフトバンク社長の孫正義と連携して新エネルギーが今にも実現するような虚構をばらまいたが、新エネルギーが全エネルギーのたった1%の域を抜け出る方策・技術など遠い先の話だ。


東電は原発停止を理由に工場やオフィスなど大口契約者向けの電気料金を、平均17%値上げする方針だ。家庭向けも値上げを実施する流れだ。この電力料金の消費者への転嫁は、まさに増税と同じであり、消費増税より一足先に「電力増税」が行われるのだ。しかも原発の再稼働がなければ、全国の電力会社に波及することは目に見えている。
 

電力不足が3年続いた場合、製造業の6割が国内生産を縮小・停止させるという調査結果が出ており、この夏までに停止原発を再稼働することが出来るかどうかにすべてがかかっていると言っても過言ではない。電力不足が、産業空洞化と雇用の減少を引き起こすことは火を見るより明らかだ。


諸外国はおおむね「フクシマ・ショック」から立ち直って、原発建設推進が再び大きな潮流になろうとしている。石油王国のサウジアラビアですらそうだ。サウジの高官は最近日本政府関係者に対し「資源は有限だ。人類のために長く使えるようにする。そのために原子力発電と太陽光発電に力を注ぐ」と述べると共に「フクシマの経験を生かしてより安全になった日本製原発を使いたい」と申し入れてきた。太陽パネルも安価な中国製品より高くても日本製が良いと述べたという。


その中国ですら専門家が「日本が原発をゼロにすれば化石燃料の高騰を招く。早く稼働して欲しいというのが中国政府の本音だ」と政府関係者に伝えてきているという。もちろん中国は原発大増設計画を推進している。それにもかかわらず日本だけが一部マスコミのイデオロギー的な扇動もあって、原発再稼働アレルギーですくんでしまっているのはどう見てもおかしい。


野田は久しぶりに大局観がある首相かと思っていたが、閣僚の「今夏原発再稼働なし」発言を黙認するのか。それとも解散・総選挙を意識して、原発再稼働は票にならないと判断しているのだろうか。原発政策で大転換するなら、堂々とその方針を掲げて選挙に臨むべきではないか。

一番政権担当者として良くないのは、国家にとってクリティカルな問題で態度をを鮮明にしないことだ。原発なくして日本経済の再興はあり得ない。ここはIAEAの判定を追い風に、原発を再稼働して突破口を開くことだ。このままでは財界に不安感が残って、生産工場の海外移転がさらに促進されるばかりではないか。
<今朝のニュース解説から抜粋>      (政治評論家)


2012年02月05日

◆「大阪都構想」が足踏み

早川 昭三


大阪府と大阪市・堺市を再編する「大阪都構想」を巡り、竹山修身堺市長が、「大阪都構想」実現させる関連条例案を2月市議会へ提出する考えの無いことを3日、松井一郎大阪府知事と橋下徹大阪市長を直に伝えた。

つまり「大阪都構想」から堺市は離脱することを明らかにしたのだ。「都構想」は、足元から揺らいだことになる。本件は追々。

ところで、橋下氏と同氏が率いる地域政党「大阪維新の会」は、平成27年度に「大阪都」移行を目指しており、それには地元議会の議決や住民投票による過半数の賛成、さらには国会で法改正など、難題が山積している。

肝心の「大阪都構想」だが、広域行政体と基礎自治体の二重行政解消が目的で、広域行政体を「大阪都」に一本化。基礎自治体は人口30万人を「あるべき規模」の「特別自治区」に再編する。特別自治区には、公選の区長と区議会を新設という。

更には、「大阪都」と「特別自治区」に財源を振り分ける財政調整制度を設け、地方交付税や固定資産税、法人市民税などの財源は約6割を「特別自治区側」に配分するという。

27年度に「大阪都」にした後は、都知事選と都議会選、特別自治区長選、特別自治区議選を実施。28年度以降に、都域内の市町村合併などを促進。都域内の全基礎自治体を中核市並みにして「関西州に備える」としている。

ところが、「大阪都構想」実現に必要な法改正が国政で煮え切らない場合に備え、橋下市長は、次なる目標として国政を動かす維新の会の国政進出に強い意欲を明らかにした。

大阪維新の会によると、次期衆院選で200議席の確保をめざし、300人規模の候補者擁立に向けて準備を進める方針を固めており、候補者の養成を急ぐ「維新政治塾」を3月に立ち上げるという。

橋下氏自身は、国政には出ないとしているが、ここにきて橋下氏が、「大阪都構想実現」を前面にして、「維新政治塾」のメンバーに国政を目指させながら、陰で国政参与していく実態が浮き彫りとなったと見る向きが強まってきた。橋下氏の“野望”は底知れないものがあるという訳だ。

事実、石原東京都知事、大村愛知県知事、河村名古屋市長らと国政に向けた緊密な連携も公然と進められている。その結果、次期衆院選を控えて早くも、各政党へ様々な思惑や影響与えている。この国政への“投石”は、メディアの影響で、橋下氏の思い通りに進行しているようだ。

ところが、話は冒頭に戻るが、国政進出の基盤にしている「大阪都構想」の構築構図の重要一角が、崩れてしまった。

3日の3者会談で、竹山市長は「今の(政令市)制度でやっていくのがよい」とし、「堺市は政令市になって6年目で、もっと権限と財源を使って発展したい。納得できない条例案を議会に提出はできない」と拒否したという。

これに対し、橋下市長は「都構想を進めていこうという堺市民の民意を無視していいのか」と同意を求めたらしいが、竹山市長に聞く耳は頑として無かったという。橋下氏らには、いきなり足元にひずみが出来たことには、多少は予想していたとは云え、ショックだったに違いない。

橋下氏は、さしあたり大阪府と大阪市の再編を先行させて「都構想」実現の推進ぶりを打ち出していくだろうが、権限と財源の大きい堺市が加わらなければ、「都構想」は見た目にも足踏み状態となる。

となれば橋下氏は、これから国政進出などにどう動き出していくか、目が離せない。(了)
                                      2012.02.04

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2012年02月03日

◆石原は“ハーメルンの笛吹き男”を戒めよ

杉浦 正章


自らの政治信条があるならば、自民党幹事長・石原伸晃がとるべき道は自ずと見えてくるはずだが、「かったるい」の一言だ。

父親石原慎太郎の「新党」結成への動きを止めることもできずに、マスコミ向けに批判していてどうするのか。そもそも大政党の幹事長たるものの置かれた立場を理解していない。「石原新党」が出来て、たとえ数人でも自民党からこれに参加すれば、責任をとって幹事長を辞任するのが憲政の常道であることを知らない。


「日本は最低でも、核装備のシミュレーションをやるべきだ。私が新党に参加するなら、必要条件の一つにする」と、もともと核武装論者の石原慎太郎が、新党綱領の条件として核武装シュミレーションで世界を“脅迫”することを主張している。

社民党党首の福島みずほが就任以来一つだけいいことを言ったとすれば、それは「石原新党と大阪維新の会の連携は、古いファッショと新しいファッショが手を結ぶことだ。本当に危機的な状況だ」であろう。

慎太郎という政治家は、後期高齢者特有の「短絡傾向」が最近とみに著しくなっており、一国の宰相としてもっともふさわしくないバランス感覚欠如の傾向を示している。もちろん自民党立党の綱領とも著しく異なっている。
 
石原家の親子関係がどうなっているかは知らないが、おそらく専制的な父親の下、滅多に口答えできない環境で育っていることがうかがえる。

しかし、現在の事態は、大政党の幹事長たる立場と父親との親子関係を当然切り分けなければならない水域に到達している。それにもかかわらず、せいぜい父親に向かって“遠吠え”するばかりである。


石原伸晃は31日午前の記者会見で、新党構想について「ひとの財布に手を突っ込んでお金を取るといっているのと同じだ。わが党所属議員がそうした行動に動くべきではないと断言する」と発言しているが、これは直接父親に向かって諫めるべき話ではないか。記者会見で他人事のように言うべきことではない。
 

それどころか石原伸晃は、愛知県知事の大村秀章に「親子で戦うことになった真田幸村のような心境だ」と漏らすと共に、「親子で戦った場合はおやじをよろしく頼む」と述べた。なんと父親との連携・協力を要請しているのだ。

父親が息子の立場を全く考慮せずに、仕掛け人・亀井静香の誘いに乗って年寄りの冷や水を呑もうとしているのに、息子は「父親を助けよ」と自民党を除名した知事に頼む。これは幹事長としては口が裂けても言ってはならない言葉だし、まじめな党員から見れば辞任に値する。

新派大悲劇で言うなら、父親に対して逆に「私の立場を考えてください。場合によっては首相になれるかも知れないときに、あんまりではありませんか」と泣いてすがりつく場面だ。要するにお坊ちゃま育ちでタレント出身の伸晃が大政党の幹事長として、「大丈夫かい」という状況に置かれていることを自分自身が認識していないのだ。
 

大阪維新の会の知事・市長選圧勝で、東京、大阪、愛知の首長らが、中央政界へ向けて“盛り”がついてしまった感じだが、何か日本中がドイツの民間伝承ハーメルンの笛吹男たちに騙されているような感じがする。

東京の後期高齢笛吹き男から、愛知の国政賞味期限切れ笛吹き男。そして大阪のタレント系笛吹き男の笛に踊らされているのだ。

同じ維新でも明治維新とは何であったかといえば、国を挙げての外交・安保論争であった。これに対して、大阪維新の会が緊張感に満ちあふれた国際情勢を語ったとは聞かない。沖縄普天間の解決策を示したとも聞かない。

国政をつかさどるつもりなら、派手なパフォーマンスは必要ない。外交・安保、財政・経済で確たる信条を語るべきだ。半世紀も前から語られている道州制の亜流のような主張を繰り返すだけで、国政がつかさどれるのか。


千葉県の森田健作が2日、石原新党構想について「地方の知事が連携して国を変えようと主張しているが、国を変えるのは国会議員の仕事。本末転倒ではないか」と発言している。別に地方の首長が、国政を論じてはいけないなどと言うべきではないが、本質が政界再編への“風”と“勢い”頼みでは政権を取ればすぐに馬脚を現す。

もしそれで政権が出来れば、確定的に、民主党政権の繰り返しとなる。いいかげんに、有権者はあちこちで現れた笛吹男にだまされ続ける政治レベルを脱すべき時ではないか。もっと自らのガバナビリティー(被統治能力)を高めるべきだ。

民主党政調会長代行・仙谷由人が、大阪市長・橋下徹について「英雄待望論みたいなもので、この時代を乗り越えていけるのか」と切り捨てているが、その通りだ。有権者は冷静に見極めるべきだ。石原伸晃は父親の笛をまず取り上げることが出来るかどうかで、政治家としての力量を試される。
<今朝のニュース解説から抜粋>    (政治評論家)


2012年02月02日

◆民主政権による普天間移設は絶望的となった

杉浦 正章


すべての原因はルーピー首相・鳩山由紀夫の「最低でも県外」発言で、普天間移設のガラス細工を壊したことに端を発しているが、今度もその“祟り”といってもよい。いわばベテランで最後の切り札として登場した沖縄防衛局長の不祥事である。

これにより、もう民主党政権下において普天間移設問題が解決することは不可能視されるに至った。小躍りして喜んでいるのは軍拡膨張主義をとり続ける中国だけだ。


朝日がトップで「防衛局長厳重注意へ」とやったのを見て、そんなに処分が軽くて済むのかと思ったが、急きょ「更迭論強まる」へとかじを切り始めた。マスコミも政府も甘いのだ。

官房長官・藤村修は局長・真部朗の進退問題について何と、「『いいことだ』という評価も出るかもしれない。国家公務員が選挙にどう臨むか。公選法違反にならないようにというための活動はあってもいい」と驚くべき見当違いぶりを発揮している。

自民党と共産党の候補がいて、隊員を呼び集めて「投票を棄権するな」と言えば、自民党候補への投票を促すもの以外の何物でもない。投票を促すのは選挙管理委員会の仕事だ。何で防衛局長が代行するのか。問題は昨日筆者が指摘したように、これが防衛省の組織ぐるみで行われている可能性が強いことだ。

朝日もこれに気づいたか2日付社説で「こうした動きは沖縄県内だけなのか。全国の自衛隊駐屯地でも似たようなことがありはしないか」と問題の拡大を予想している。「第3者調査期間で徹底的な検証を」と主張している。


こんご国政選挙、地方選挙を問わず自衛隊“集票マシーン”の組織ぐるみの選挙介入が暴かれ、クローズアップする可能性が強い。問題は、ことが自民党政権時代に定着させた自衛隊の“活用”の構図であることだ。

今度も自民党候補への投票を企図している。自民党は深く追及すればタコが足を食らう構図となる。まさに因果はめぐる火の車だ。深刻なのは局長の更迭で済む問題ではないということだ。防衛相・田中直紀への問責決議可決への“補強材”となることは間違いない。とりもなおさず首相の任命責任も連動して問われる。

次々にこれでもかと言った具合に普天間移設問題をめぐって生ずる波乱要素が何を意味するかだが、普天間移設への日米合意など、全くめどが立たなくなったといえる。


政府は2012年度予算で沖縄振興費を沖縄の要求通りに満額回答で積み増しし、手順を踏んだ上で6月には辺野古沿岸の埋め立てを仲井真知事に申請するシナリオを描いていた。

こうした青写真は普天間移設問題のキーマンである防衛局長が「犯す前に犯すと言うか」発言をして更迭されたかと思えば、今度は選挙介入で大頓挫だ。統率する大臣は“素人”に続いて“愚鈍大王”が就任、連日の予算委で面接試験が行われている。まるでパロディーではないか。

首相・野田佳彦は5月訪沖を検討しているというが、野田は消費増税という大事業を抱えて、正直沖縄どころではないというところだろう。消費税政局のテンポも、普天間移設問題にかかわっている“隙間”がないとみるべきだろう。

いつ解散に追い込まれてもおかしくない上に、5月から6月の会期末にかけては、政局が燃えさかる最中である。そこに大混乱を伴う辺野古埋め立てなどを挿入できる余地などゼロといってよい。
 

こうした体たらくをみて、米議会でも移転先を辺野古にすることの困難さを認識して、別の方策を検討・主張し始めている。米政府も海兵隊の再配置を含めて現実的な対応をとらざるを得なくなるものとみられる。

中期的には「普天間固定」が現実のものとなりつつある。触手を伸ばす中国は日本の混乱と、これがもたらす日米関係の齟齬(そご)を、欣喜雀躍(きんきじゃくやく)して見守っている。それでも防衛省は、日米合意に固執して、普天間移転に執着し続けているのが実態だ。

そのはかない環境作りの一つが防衛局長の選挙介入であったのだが、ばれてしまっては元も子もない。要するに消費増税一辺倒の野田政権は、普天間問題を解決する余力がなく、政局の現実もそれを許さない。

消費増税が実現すれば解散は必至であり、民主党政権が続くことはおぼつかない。従って民主党政権下における普天間問題解決は絶望的な様相を示していることになる。 

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家・元時事通信編集局長)

2012年02月01日

◆“弱い脇腹”田中を「袋叩き」の予兆

杉浦 正章

 
「普段女房の真紀子から鍛えられているから持ちこたえる」と言うジョークが永田町で飛んでいるが、防衛相・田中直紀の予算委員会答弁をつぶさに見た限りでは、とてももたないのではないか。

あまりに人が良すぎる。人が良いと言うことは永田町では蔑称の代名詞だが、ちょっと度が過ぎている。おまけに事実上自らが集中砲火を浴びるための予算委外交・安保集中審議であることを理解していない。無断で15分も閣僚席を空けるなど、緊張感が全く足りないのである。


だから委員会における野党質問もまるで「口頭試問」のようになる。


例えば山谷えり子(自民)が南スーダンに派遣された自衛隊の警護について尋ねたのがその例だ。間違って「まだ決まっていない」と答えたが、実際にはバングラデシュ部隊が警護している。結局山谷から答弁撤回を求められて「理解してなかったことは大変申し訳ない」と陳謝する羽目に陥る。今後予算委はあの手この手でこの「面接試験型袋叩き」が繰り返される。そして、田中の“資質”が浮き彫りにされる。
 

横で右往左往ぶりを眺めていた首相・野田佳彦は「田中大臣は、外務政務次官や参議院の外交防衛委員長などを務めたことも踏まえて、適材として、判断した。就任直後で、いささか緊張している向きもあるかもしれないが、しっかり職責を果たしてほしい」と、今のところは擁護している。

しかし過去の閣僚辞任例における野田発言はすべて「しっかり職責を果たしてほしい」であった。この野田答弁が出始めると“更迭”の2文字が浮遊し始めるのだ。田中は義父田中角栄について「田中の父は国会論戦の名手として有名だった。そこが私との最大の違いだ」と述べたが、もともと比較に値する政治家ではあるまい。格が違うのだ。
 

既に難問が浮上している。共産党がやり玉に挙げた沖縄防衛局長・真部朗の進退問題だ。防衛局は自衛隊員に対して局長の宜野湾市長選をテーマとする「講話」への出席を呼びかけたのだ。防衛省が調査した結果、真部は投票に行くように啓発したものの、特定候補への投票依頼はしていないことが分かった。


しかし市長選は保守対革新の2人の候補で戦われる。局長が「講話」をするということは、共産党の推す候補でなく自民党の候補への投票をせよと言外に言っているに等しい。

国家公務員の選挙運動を禁じた公職選挙法などに直接的に抵触する可能性は少ないが、実態はまぎれもない選挙運動だ。だいいち「投票に行け」などという指示は選挙管理委員会の仕事だ。局長の更迭処分は免れまい。
 

この宜野湾市長選への自衛隊の“関与”は氷山の一角に過ぎない。これを機会に国政選挙や地方選挙における自衛隊の動きが注目の的となることは必至だ。


ネットでは元幹部自衛官がブログで、選挙関与の実態を暴露している。その内容は「自衛隊が選挙になると毎度、やっている教育。それはどこの党に投票する、そして視認情報を集めてくる教育である。その教育は部隊毎に行われ、定期秘密保全検査のため機会教育簿に教育をしたという証拠として記載する」のだという。


そしてこの「機会教育簿」には「『政党を良く承知せよ』と書かれている。『投票したならば中隊本部に連絡せよ』と言っている」と暴露している。「自衛隊では投票率が、ほぼ100%なのである」とも述べて、上部の意向が隊員に100%近く徹底されることを物語っているのだ。

最後に「国民のみなさん。自衛隊が、組織を利用して自○党に投票するよう教育し投票させる行為は、公職選挙法や自衛隊法違反ですがこんな事が許されていいのでしょうか?」と結んでいる。


自衛隊が各種選挙で“活動”することは周知の事実だが、これも本省レベルからの暗黙の指示がなければ出来る話ではあるまい。


今後宜野湾市長選をきっかけに過去の例が「本省ぐるみ」として暴かれてゆけば、防衛相の責任問題へと発展する。宜野湾市の例もハンドリングをあやまると田中を直撃することになりかねない。

それに普天間移設問題をはじめ緊張する北東アジア情勢を抱えて、防衛相は国会質疑の焦点でもある。これを野田がろくろく資質を確かめもしないで任命した責任は大きい。

防衛相への不信任案や問責決議案が上提されれば、可決されるケースも想定されよう。当然野党は政権の一番弱い脇腹である田中に照準を定めている。
<今朝のニュース解説から抜粋>         (政治評論家)


2012年01月31日

◆野田は“パンドラの箱”をどう閉める

杉浦 正章


愚かにも民主党政権はパンドラの箱を開けて、消費増税二正面戦争の構図を作ってしまった。

5%の増税ですら綱渡りというのに、年金抜本改革に固執して最大7.1%増税など不可能の極みだ。幹部の暗愚さにもあきれるが、首相・野田佳彦までが、30日になってもまだ2013年に抜本改革の法案を「提出する」などと言っている。

解散すれば明日をも知れぬ身になるというのに、来年の話など悪いジョークだ。またしても出来もしないマニフェストが祟りにたたっている。
 

今度の場合、先頭を駆けてずっこけた「暗愚テイオー」は幹事長・輿石東だ。その次が副総理・岡田克也、その次が官房長官・藤村修。裏にはいまや「政権祟りマン」と化した元厚労相・長妻昭の「視野狭窄(きょうさく)」があった。

そして最大の問題はこれを統御できなかった野田の洞察力の欠如だ。そもそも7万円の最低保障年金という莫大(ばくだい)な財源を必要とする問題を矢継ぎ早に出す力など、どこの政権にもない。にもかかわらず1月6日に政府・与党が発表した一体改革の素案には、長妻の強硬なる主張で新年金法案の13年国会提出が盛り込まれた。

鋭敏にもここに目をつけたのであろう、公明党が19日の与野党幹事長・書記局長会談で、消費増税の協議入りの前提として年金の全体像の提示を要求した。野党としては民主党マニフェストの金看板を崩すための見事な“仕掛け”であった。深い意味も知らずに輿石は「環境整備をしてまいります」応じてしまったのだ。

こうした中で筆者が就任早々危ういと指摘した副総理・岡田克也が22日「年金抜本改革に必要な財源は、今回の10%には入っていない。さらなる増税は当然必要になる」と“2兎を追う”かのごとき発言をしてしまった。追認したのは藤村。

23日に「将来に延長して計算していくと、消費税率は今のレベルで足りない」と述べ、2015年以降にはさらなる税率引き上げが必要になるとの見通しを示したのだ。要するに政府・与党幹部が皆、ことの重大さを意識しないまま野放図な発言を確信犯的に繰り返したのだ。

鳩山由紀夫にせよ、菅直人にせよ、この党の政権には“遠謀深慮”の4文字はない。

問題は野田が消費増税一点突破の姿勢を維持していたにも関わらず、これらの発言が問題化する前に手を打たなかったことだ。

やっと、ことの重大さに気づいた輿石が真っ青になって政府・民主三役会議で「15年に消費税が10%に上がり、その数年後にさらに7%上がると思われている。早く断ち切るべきだ」と主張したが、もう火の手は母屋にまで延焼しつつある。


鬼の首を取ったように自民党も公明党も31日からの予算委員会で追及する姿勢だ。朝日新聞によると自民党幹事長・石原伸晃は公明党幹部に「まんまと乗ってきた。お手柄ですよ」と胡麻をすっているという。
 

この開いてしまったパンドラの箱をどう閉めるかだが、まず新年金制度の財源試算などさっさと公表してしまうことだ。すべてのマスコミが公表してしまっているものを、政府だけが公表しないのは尖閣事件の漁船映像のケースと全く同じ「隠ぺい体質」だ。

公表した上で「試算は試算であって確立したものではない」と説明するのだ。それを狙ったのかどうか分からぬが、厚労省が驚くべき将来人口推計を発表した。

50年後の日本は世界でも突出した高齢化スピードで、65歳以上が5人に2人を占めるなど、年金の根幹である人口形態が大きく変化するのだ。これをチャンスとばかりに利用しない手はない。新試算を作り上げれば良い。時間も稼げるのだ。
 

加えて、どうせ破たんしたマニフェストの金看板などに固執する必要はない。政権内部でも年金抜本改革について「ただちに現実化できる方向には出ていない。

改めて時間をおいて再構築をせざるをえない」(財務副大臣・五十嵐文彦)といったまっとうな見直し構想が出ているではないか。

野田は30日「抜本改革法案は13年の法案提出を目指す」などと答弁をしているが、冒頭述べたように現行制度を根幹から変える大改革が来年可能になるなどと言う浅薄な判断をしているとすればは驚きだ。それとも出来ないことを承知で言い続けるつもりか。政治に虚構を入れて失敗したのは前2代の首相で十分ではないか。

ここは正直にマニフェストの“破棄”を宣言すべきところではないか。財源案などあらゆる金看板が不可能になったのだからもう破棄しかあるまい。その上で消費増税だけの一点突破に戻ることだ。大謝りにあやまって、消費増税だけを生き残らせる。これが野田に残された責任というものだ。

<今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2012年01月30日

◆維新の会へ“ただ乗り”狙う「後期高齢新党」

杉浦 正章

 
新党というとわくわく感が多少なりとも生ずるものだが、「いや〜な感じ」が先行するのはなぜだろうか。ちょっと考えてみれば分かることだ。老獪(ろうかい)政治家による、“あやかり商法”が根底にあるからだ。

「石原新党」は、自らの人気・力量に自信のない後期高齢政治家による「大阪維新の会」への「薩摩守忠則」(ただ乗り)が本質だ。離党へとふらつく民主党若手への誘い水でもある。そこには理念も定見もなく、「政局にらみの政局作り」だけが目立つのだ。いわば政策もなしに野合を目指す老害新党だ。

マスコミは朝日が「亀井静香の流す怪情報」(石原慎太郎)に乗せられたのか、派手に「3月新党」を報じたが、永田町は総じて「本当に出来るのかいな」と懐疑的だ。

しかし評論家の中には、岩見隆夫のように「細川新党だって第5党党首が首相になった」と「石原首相」を手放しで期待する発言をテレビでしている向きがいる。しかし、一応熊本県知事時代からカリスマのあった細川護煕と石原は全く異なる。

石原が都知事になって何をやったか。目立ったのは“文士の商法”で開業した「新銀行東京」を、わずか3年で1000億円の累積赤字を抱え、事実上破たんさせた都政史上にのこる大失政だけだ。都民一人当たり3000円に相当する400億円もの追加投資でしのいでいるが、これで国政をやられてはたまったものではあるまい。新銀行東京問題では石原の責任はうやむやになったままだ。国政なら確実に内閣不信任案可決だろう。

その石原を自民党福田派時代からの付き合いで担ぎ出そうとしているのが国民新党代表・亀井静香だが、背景には国民新党の埋没という危機感がある。

看板の郵政改革法案は成立のめども立っていないし、首相・野田佳彦は消費増税路線一辺倒で、亀井が反対を唱え続ければ連立解消も辞さぬ構えだろう。党内でも亀井の新党への動きにに「オオカミ老人がまたか」と反発が生じており、亀井は四面楚歌が実情なのだ。

平沼赳夫にいたっては、第3極になるはずだった「立ち上がれ日本」がなかなか立ち上がらず、存在感が希薄そのものだ。この旧福田派の3人は石原が79歳、亀井が75歳、平沼が72歳で、平均年齢74.33歳。年が若ければいいと言うものでもないが、この激動期に「後期高齢新党」では、夢も希望もあるまい。焦点の消費増税についても石原が推進、亀井が絶対反対ではまとまるわけがない。
 
その“おれがおれが老人”たちの狙いは、関西での「橋下ブームだ」。

石原は2月に橋下と会談を予定しているが、問題は“賢い”橋下が老獪の説得に乗るかどうかだ。石原は出来れば「首相の座」狙いで、橋下の力を“活用”しようと考えているに違いない。石原が3月の新党結成を断言しないのは橋下が乗るかどうか分からないからだ。

首相・野田佳彦が橋下との連携を探る動きについて「改革者として注目するところ大だが、シロアリがたかることがないよう祈ってやまない」と痛烈な一撃を食わせた。見事なタイミングでもあった。シロアリが誰を指すのかだが、シロアリには2種類ある。

後期高齢シロアリと、こまっちゃくれシロアリだ。こまっちゃくれシロアリのみんなの党代表・渡辺喜美は「シロアリがみんなの党のことを言っているなら問責に値する」と激昂したが、誰がみてもみんなの党を指しているのだから、問責決議に同調する野党などいない。
 
後期高齢シロアリが舌なめずりしている42歳の大阪市長・橋下は「この世界は気を許したら本当に食われちゃう。首相自らがメッセージを出してくれるなんてめちゃくちゃうれしい。シロアリに食われないよう気をつけます」と、素直に警戒感をあらわにしている。

維新の会そのものが海のものとも山のものともつかない一地方の政治現象であり、これを見極められないから、中央政界が“念のために”ちやほやしているのである。橋下も利口な男だからその分限をわきまえているのだろう。石原の接近は橋下を担ぐと言うより、まず自らが最後の死に花を咲かせたいという飽くなき権力追及意欲が根源にある。

自治体の長を長くやっていると、どうしても“裸の王様”になるのだ。橋下が自分の中央政界への転身を否定していることが、亀井や石原の狙いでもある。
 
要するに橋下は、自分の人気を活用しようとする中央政界の年寄りの冷や水というか火遊びに踊らされてはなるまい。

このままでは理念なき野合につき合わされることになる。問題は反野田姿勢を強めている小沢一郎が乗るかどうかだが、石原新党も維新の会も“小沢おんぶお化け”は敬遠だろう。これもイメージが悪すぎて新党という感じではない。当面小沢は若手の離党引き留め対策で大変だろう。    <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)