2016年05月05日

◆「フィナンシャル・タイムズ」も中国を

宮崎 正弘 



<平成28年(2016)5月4日(水曜日)弐 通算第4894号 >

 〜英紙『フィナンシャル・タイムズ』も中国を見限ったようだ
   来年の党大会前後に中国経済崩壊の山場がやってくるだろう〜

英紙『フィナンシャル・タイムズ』もついに中国経済を見限ったようだ。
というのも、4月30日付けのコラムに寄稿したジョージ・マグナス
(USB顧問)のコメントを読んで、「?」。

まさにキャメロン政権の中国寄りスタンスと180度異なって、近未来の中
国経済に悲観的、いや絶望的でさえあるからだ。
 
マグナスはいう。

「中国経済の絶頂は2011年だった。世界第2位の高さを誇る上海タワー
(632メートル)がピークを象徴する。そして不動産バブルがはじけ、下
降が始まった。地方政府などに債券の発行を認め、急場を凌いだ。シャ
ドーバンキングを黙認し、生命保険の資金などを使って梃子入れし、銀行
の不良債権比率を低く見せかけ、架空の信用創造を築いてきた中国経済だ
が、遅かれ早かれ、終わりを告げる。問題は、これが世界経済に与える悪
影響だ」。

次のように続けた。

「貸し付けのベースは経済成長の4倍、債務の転がしが17年の党大会まで
続くかも知れないが、すでに大量の失業、暴動の頻発によって習近平政権
の権力は基盤が崩れ始めている。

このうえ、経済の不安定化が続くとなれば、政権はますます不安定となる
から、大量失業、業界再編の大鉈(なた)ばかりか、銀行、大企業の倒産
を認めるという路線のシフトが早晩おこるであろう」(同コラムより要訳)。
 
日本のマスコミは習が権力基盤を固めたと書いているが、実態は逆であ
る。なによりも、それを象徴する事件は「任志強」事件だろう。

任志強は「中国のトランプ」を言われ、不動産ビジネスで当てたが、共産
党中枢を批判するので「任大砲」とも呼ばれた。彼のブログは3700万
人のフォロアーがいて、共産党をぼろくそに批判するごとに中国の庶民は
溜飲を下げた。
 

 ▼任志強事件が意味するのは権力状況が星雲状態化していることだ

任志強は習近平がマスコミの幹部を集め「党の方針通り、マスコミ論調を
堅持せよ。党とは異なる報道をしてはならない」と言った。すると、「党
が報道を統制するなど、笑止千万」と強い批判を展開し、ついにブログは
閉鎖された。

5月1日に、彼は「1年間の観察処分」とされた。

党を批判した知識人は「10年以上」も監獄に入れられるのに、なぜ拘束も
されず、任志強は、逮捕も取り調べも受けずにたった一年間という「観察
処分」に付されたのか。「軽すぎる」のではないか、と訝る声があがる。

じつは任志強は反腐敗キャンペーンの中心的推進者である王岐山と近く、
また彼は曽慶紅に近い。曽慶紅はいうまでもなく江沢民派の重鎮、元国家
副主席。しかも習政権を誕生させた最大の功労者である。
 曽は太子党の強力な領袖でもある。

つまり、曽慶紅に繋がる人脈に習近平は鉄槌をおろせない。習の権力基盤
は逆に脆弱となっており、こうした権力状況を把握しているからこそ、任
志強は随分と大胆な発言を繰り返すことが出来たのである。

党大会前に人事抗争はもっと荒れるだろう。

しかし、その前に、人民元の暴落が開始されるだろうが、前出マグナス論
文はそこのところを曖昧としている。

◆「NHK7時のニュース」の定点観測中

MoMotarou



<いま日本にはまともな新聞もまともな役人もいない。
 
そんな環境の中で世界を見通していくには「観察」しかない。

以下はつれづれに世の中を観察して浮かび上がった事象を書き綴ったものだ。
ここに述べたように観察には技術もこつもない。それにやり始めると面白い。

みんなが面白がれば、新聞も少しはまともにならないと売れなくなる。>
 
    2008年初夏  高山正之 「ジョージ・ブッシュが日本を救っ
た」より

             ☆彡

熊本大震災より数週間。不謹慎ながら「NHK7時のニュース」の定点観測
を続けております。気が付いた点が幾つか。画面の配色に「赤色白色」が
多い。危機感とか重要性を強調しているのかも知れないが落ち着きませ
ん。我が国の伝統では「紅白」は“慶事”に使う。震災画面以外は強調には
「赤黄色」だ。中華街の看板でよく見る色使いだ。

■災害報道

「火の国熊本」は東京都とは違い、日本共産党仕立ての“市民”が目立たな
い。だから現地の人々の落ち着いた常識的なコメントが続く。次第に政府
非難の市民たちが登場してくるだろう。なぜかボランティアに焦点を当て
ている。まるで政府の対応を”黙殺”しているかのようだ

■異常に多い北朝鮮:36年ぶりの党大会を盛り上げる為の協賛か?

最近多いのは北朝鮮関連だ。ミサイルか花火を度々打ち上げるのでウンザ
リだ。25日だったか元調理人が出演。この人物を登場させて日本世論を誘
導しようとしている。昔なら簡単だったけど、今はネットがあるから、気
の利いた庶民は信用しない。

北の登場人物達の服装がファッショナブルに成ってきている。金豚の留学
経験が生きているのだろう。派手にミサイルを打ち上げているが“在庫”は
大丈夫だろうか。在日朝鮮総連は請求書が届くのを心配している。“アベ
は”は報道はされないが、在日に対しては厳しい。

■舛添さんは韓国から勲章だろう。

舛添東京都知事は湯河原にある自分の温泉に「公用車」を使って往復して
いるらしい。英気を養うためらしいが、日本では天皇陛下でもされない。
公私混同だ。

舛添さんが新宿に韓国学校を作る話。チャンネル桜の討論で判明したこと
は、この学校は普通の「在日」では入校出来ないような“超金持ち”のも
の。要するに韓国の金持ち子弟のもので韓国の大学入試の資格が得れる。

 なぜ東京都が韓国人の為に新宿の一等地を提供しなければならないの
か。都民をバカにしている。舛添さんを都知事に推薦したのは、滅多に出
てこなくなった石破さんと石原息子議員。東京都は「運」が落ちて来てい
る。大地震やテロが心配になってきた。

 *ロンドン市長の東京訪問の経費比較があった。すごい!
  http://blogs.yahoo.co.jp/momotarou100/63529771.html

■「国際派日本人養成講座」のお陰だ!

安倍政権は頑張っている。ただマスコミは「報道しない自由」を駆使して
政権妨害工作をしている。彼らはソ連・中共・北朝鮮により訓練を受けた
工作員の指導下にあると見るべきだ。攪乱工作など得意中の得意。中国の
漢族の得意技は「堕落化」である。金と女。

私10年近く倫理団体などに参加しております。まぁ、美人が多かったので
助平根性から始めた“潜伏”です。どの団体も「平和・環境」の話題が当た
り障りなく記事にされております。これは団体の名前を隠せば「日本共産
党」の主張と同じになります。ほぼマスメディアを駆使した洗脳工作が成
功したという事になるのでしょう。

私も団体で実績が付いてきたので、数年前より、少しずつですが、反攻を
始めて来ました。女性やお母さんが多い。「共産主義・男女共同参画」な
どを、社会現象の説明の中でさりげなく登場させます。昨年の国会前デモ
にも一言触れた。今回の熊本大震災報道でも同じ。選挙なら503票だ。
皆さんもできることから始めて見てください。  

敵はプロフェッショナルな勢力だ。「無名有力効果」で頑張るぞ!

◆老後破産を煽るタチの悪いNHK

室 佳之

ケアマネージャーとして最近担当している老夫婦は2ヶ月に1回の年金額
がおよそ10万円で、いよいよ預貯金が底をつき、長男と相談し生活保護申請をすることとなった。長男が『NHKでやってた”老後破産”ですよ。全く同じです』と何度も発していたので、少々気になってテレビ欄を見てみたら、たまたま再放送があり、録画して見てみた。

番組名は『NHKスペシャル老人漂流社会団塊世代 忍び寄る老後破産』。見て驚いた。いや、何に驚いたかって、このNHKの編集の仕方にぶったまげた。

NHKは何人かの初老に焦点を当てていた。最初に登場したのは、埼玉の某
団地街に住む男性。独り住まいだが、横浜の施設に母親がいる。息子もい
るがあまり連絡が取れない間柄だとのこと。

男性の年金は月14万円程度。この時点で『ん?』となった。『ふた月14
万円の間違いじゃないの?』と画面を見直した。月14万あれば、少なくと
も小生の関わっている利用者のほとんどは問題なく過ごせている。

この男性の使い道は、家賃・駐車場4万5千、食費5万、その他医療費、保
険料云々で赤字が9千円とのこと。1回往復5千円の交通費がかかる母への
見舞いは月1回が限度だそうだ。

男性はご飯と味噌汁と納豆という粗食風景を映されていた。ちょっと待っ
てほしい、NHKはちゃんと取材したのだろうか。粗食で過ごす初老の一人
暮らしで食費5万はおかしいと思わないのか。

気付かない視聴者は、結論の赤字というところだけを間に受けてしまうだ
ろう。おまけに家賃・駐車場と書かれていたが、駐車場費とは何だ?母親
の施設費は母の年金でまかなえているとのことだから収入の使い道は自分
だけの問題である。

『年金だけだと正直足りない。削れるとしたら食費』

と男性は発していたが、当たり前すぎることであって、こんな発言を深刻
に映そうとするNHKの編集がくだらない。

2人目の初老夫婦は、一軒家(小生からみれば充分豪邸)で、介護を要す
る母と今は就職活動中の息子とその孫(中学生くらいか)との4世代同
居。息子家族は色々あって出戻りしたそうだ。

この初老夫婦の収入は月37万。目が点になった。NHKは世間を相当馬鹿に
している。NHK側の意図は、それだけの収入があっても老後破産しそうだ
との主張である。しかしその使い道を見ると改めて理解に苦しむ。住宅
ローンが9万、息子は収入がほとんどなし、孫の小遣いに1万、通信費など
雑費で8万6千、極め付けは食費が月15万。もうバカバカしくなる。食費・
通信・雑費で計23万をサラッと流すNHKは相当悪どい。

初老の妻は『こうなるとは思ってもいませんでした』だと。

家を売って資金を作るなどの提案すらないのか。

バブルが崩壊して転職したから退職金がないと嘆いているが、小生も介
護職にいて3回転職しているが退職金など出た試しはないし、この先も今
の会社で退職金は出ない。こんなの破産でもなんでもない。単なる我が儘
だろう。

小生が腹立たしいのは、出てくる初老の方々に対してではない。その初老
の方々へのNHKの編集の仕方である。都合の良い数字だけ並べて破産状態
でない人達をあたかも破産寸前のように編集し、視聴者の不安を煽る。

こんな編集が可能なら、年収1千万あっても老後破産という結論に持って
いけるだろう。冒頭の小生が担当している利用者の長男が、しきりに
『NHKの老後破産と同じですよ』という発言に対して、声に出せないが
『いやいや、全然違う。お宅のほうが深刻です』と云いたかった。

番組を一緒に観ていた家内からは『本当に老後破産する人は、そんな姿を
テレビの前に晒さないのでは?』とボソッと云った。核心をついている。

NHKは社会に不安を煽って日本をどこへ向かわせたいのだろう。実にタチ
の悪い番組だった。

◆日本語をなぜ“片仮名文字”にする

渡邊 好造



わが国には漢字という折角の表意文字があるのに、いつのまにか聞いたこともない英語、仏語などをもとにした片仮名文字に変えてしまう。

それで、意味不明にしたり、都合のよい解釈をする。いかにも目新しく、恰好よく見せかけているだけではないか。ちょっと拾ってみるだけでも腹がたつ。

 [片仮名文字=日本語なら⇒本当の裏の意味]

1)カジノ=博打場、とばく場⇒堂々とてら銭をとる公共の超法規的賭場施   設。もうすぐ日本にも。
2) シェフ=優秀調理士⇒板前、板長、料理人、包丁頭なら目の前で調理して くれる。シェフは命令するだけ。
3)タレント=芸人⇒ただのお笑い芸人なのになんでも完全にこなす能力が ありそうで、照れず厚かましい。
4)コンシェルジェ=ホテルの接客責任者⇒客がどんな悪辣なことを言った  り、したりしても我慢できる接客係。
5)ファイナンス=金貸し⇒利息も安く、簡単に貸してくれ、取立ても厳しく ない善意の金融業者。


6)コンプライアンス=規定・法律を遵守した行動⇒規定・法律の抜け道をど  こに見つけるかが秘訣。
7) マニフェスト=公約⇒公に約束はするが、後で訂正自由。最近の貼り薬”膏薬”は剥れないのに。
8)アジェンダ=政策課題⇒期限がなく実行希望の政策。後で間違いなく"唖  然とする"。
9)タトウ-=刺青⇒やくざのいれる全身のモンモンとは違い、体の一部に化  粧するような軽い感覚。
10)エッセイ=随筆⇒タレントが「エッセイ書きました」は、起承転結のな い日記、手紙、メモなどの駄文が多い。


11)コラボレ-シヨン=協同競演作業⇒過去の栄光をひきずる者同士の再生 競演策。
12)レシピ=調理法⇒美味そうに感じさせる秘密の調理法。美味くない時の  表現”この味は玄人好みですね”
13)パフォ-マンス=表現、才能、処理能力⇒派手な言動、ごまかし、でた らめ演技。
14)リベンジ=雪辱する⇒仇討ち、復讐、返り討ち、闇討ち、暗殺。
15)ホ-ムレス=住む家のない哀れな人⇒道路や公園を不法に占拠する同情   の余地のない浮浪者、乞食。


16)バッシング=たたく、攻撃⇒高収入、好待遇に見合う行動、成果をあげ  ないとやっかみで眼の敵にされる。
17)パテシエ=製菓技術者⇒砂糖とクリ-ムをたっぷり使い、高血圧や糖尿病  を忘れさせてくれる菓子職人。
18)ボランテイア=時間と能力の無償提供奉仕⇒作業量に見合った経費のい  らない、善意に期待した労働。
19)アドバイサ-=助言者⇒野球賭博や脱税など楽して儲かることを教えてく  れる人。
20)バックパッカ-=リュックサックを背負う旅人⇒金のない貧乏のふりを  して、安上がりの旅行をする人。


21)リーズナブル=価格が手ごろなさま⇒品質が良く、より安いのを手ごろというが、、。つい騙されやすい価格。
22)キャンペーン=企業・団体の目的をもった宣伝活動⇒消費者のためとみ  せかけて、自社の販売拡大が狙い。
23)アウトソ-シング=外部発注⇒下請け会社に無理やり安く発注し、資金  が少なくてすむ経営方法。
24)アシスタント=助手⇒安い給料で便利にこき使える我慢強い見習い人  で、「今にみておれ」と歯噛みしている。
25)エコカ-=燃料節約車⇒燃費が安いといわれる高級車で、税金で補填して  くれるのでよく売れる車。


26)コメンテ-タ-=解説者⇒聞かれたことの3倍以上にしゃべりまくること  の出来る人。「、、そうすね」は失格。
27)カリスマ=教祖⇒一見すると能力ある風で、他人と違うことをする目立  ちたがりの超変人。
28)コンテンツ=内容物、中味⇒内容のない、中味のないものでもなんとな  く見たくさせる。
29)セレブリテイ=話題の人 、有名人⇒親の莫大な遺産を相続しただけ   で、実力があるとは限らない。
30)モラトリアム=(融資金返済)一時停止⇒単なる一時停止なのに、「も  う取らぬ」と全額返済不要と錯覚させる。


ハングル文字に統一した韓国では、漢字の自分の名前が読めない人が現れたという。中国の物まね商品、商標権侵害を非難したら「日本は漢字を盗んだ」と開き直った。その大事な漢字を略字にしてしまう中国は変な国だ。

片仮名文字はこれからも増え続ける。以上、日本語で”ボヤキ”。(完 再掲)

2016年05月04日

◆日本の憲法成立の実情

加瀬 英明




これは独立なき供与である

敗戦のすぐ翌年に、マッカーサー総司令部の25人の部員が、日本国憲法案
を僅か7日間でつくった。

中の1人のユダヤ人青年が、「法律の専門家を加えてほしい」と求めたと
ころ、その場で外された。

部員は全員がズブのシロウトで、憲法はおろか、法律の専門家が1人もい
なかった。

そのうえで、ホイットニー少将が日本国憲法案を東京白金(しろかね)の外
相公邸で、吉田茂外相に手交して、「日本政府がこの原案を呑まなけれ
ば、天皇の一身の安全を、保障することができない」といって、威嚇した。

 ホイットニーの回想録

ホイットニーは回想録のなかで、「吉田は目を通すと、顔色がたちまち黒
い雲によって包まれたように変わった」と、記している。

 日本の憲法であるはずなのに、大急ぎで原案を日本語に慌てて訳したた
めに、何よりも恥ずかしいことに、日本語が誤っている。

日本国憲法の前文を、読んでいただきたい。

「われらとわれらの子孫」は何を指すのか

「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、わ
れらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土
にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の
惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、この憲法を確定する」
と、始まっている。

 翻訳調だ。何と長たらしく、読みづらいものか。

この中の「われらとわれら」は、いったい、誰を指しているのだろうか?

仮に「太郎と花子は自転車に乗って、われわれのために菓子を買いに行っ
た」という文章があったとしよう。「われわれ」が太郎と花子を指してい
ないことは、明らかである。

日本国憲法の前文にある「われら」が、日本国民であるはずがない。とこ
ろが、前文を最後まで読んでも、「われらとわれらの子孫」が、いったい
誰なのか、説明がない。

まるで、誰かがどこか陰に隠れているようで、不気味だ。

 平和を愛する諸国民の実情

「われら」が誰なのか、さっぱり分からないから、日本語として意味をな
していない。

さらに、前文に「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支
配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正
と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とい
う、文言がある。

この「われら」も、日本国民でありえない。

憲法の制定の経緯からいって、「われら」というのは、連合国の国民のこ
となのだろうか。「アメリカ国民とその子孫のために」と読むと、よく理
解することができる。

かりに、中学校の公民の授業中に、生徒が手を挙げて、「センセー! こ
の前文のなかに、『日本国民はわれらとわれらの子孫のために』と書いて
ありますが、この『われら』とは、いったい誰のことなのでしようか?」
と質問したら、どうなるか。答えにつまって、立ち往生するにちがいない。

 主語をきちんと定めると明快

日本国憲法の原文は、英語だ。原文で読むと、きわめて明快だ。「We,
the Japanese people‥‥」といって、始まっている。

「われら日本国民は‥‥われらとわれらの子孫のために」と訳すればよかっ
たが、それではあまりにも翻訳臭が強くなってしまうので、きっと出だし
の「われら」を、省いてしまったのだろう。だが、「日本国民」の上に
「われら」を入れなければ、英文和訳の答案だったら、落第である。

せめて、憲法は正しい日本語で、書いてもらいたい。憲法の前文が判じも
のであるのは、日本の尊厳にかかわることだ。

この他にも、現憲法には衆参両院の選挙とも、「総選挙」と定めているの
をはじめ、誤まりが多い。

このような憲法を、まるで御神体のように崇めているのは、異常なことだ。

憲法がいい加減だから、戦後の日本は何ごとについても、真剣味を欠いた
国となってしまったのだろう。

 独立国とは何か

もし、日本が国家であるならば、自分の手で作った憲法を、持たなければ
ならない。

占領下の日本は、自国の国旗を掲げることすら、許されなかった。

日本だけに「自主憲法」という言葉がある。このような言葉は、世界に他
に存在しない。

敗戦の翌年3月に、閣議が憲法改正政府草案を承認したときの模様が、幣
原内閣の厚生大臣で、のちに首相となった芦田均氏の日記に、描かれている。

「閣議終了の直前、幣原首相は特に発言を求め、次のようにいわれた。

『かような憲法草案を受諾することは、極めて重大な責任である。おそら
く、子々孫々に至るまでの責任であろうと思う。この案を発表すれば、一
部の者は喝采するであろうが、また一部の者は沈黙を守るであろう。しか
し、深く心中、われらの態度に対して憤激を抱くに違いない』閣僚の中に
は、涙をふいたものが多かった。」

 現憲法は涙のなかに、成立した。

アメリカの意図は明白

アメリカは日本を従属させるために、憲法によって日本を完全に非武装化
した。ある国を属領とする時には、まず国防権を奪う。

「日本国憲法」は制定されてから、もう70年にわたって、日本に居座って
いる。

人間生活では、あらゆるものが相対的なものであって、流動している。し
たがって、人が状況に合わせてゆかねばならない。憲法も生活の道具の1
つでしかない。

日本人は素早く動くことが、苦手なのだ。

私は日本が“座る文化”であるのに対して、ユダヤ・キリスト・イスラム社
会が“動く文化”だということが、その裏にあると思う。

ユダヤ教からキリスト教が生まれ、ユダヤ・キリスト教の母胎から、さら
にイスラム教が生まれた。

日本には、「神が鎮まっている」という言葉がある。日本の神は静的なのだ。

 神の「鎮座」の意味

神が「鎮まる」という表現は、日本だけのものだ。日本では神は「鎮座」
しているが、ユダヤ・キリスト・イスラムの神は、能動的な神だ。

西洋の神は、ギリシア語で「空気」「息」を意味する、「プノイマ」だと
いわれる。一ヶ所に留まることがなく、風のようにつねに動いている。
「ダイナミック」の語源は、ギリシャ神話の神の一つである、「デュナミ
ス」に発している。

日本には「座」という、言葉がある。「社長の座」から、「妻の座」まで
ある。みな、それぞれ自分の「座」を持っていて、その座に対して敬意が
払われる。社長も、妻も、その座から動くことなく、そこに鎮まっている
という、考えかたがある。

日本ではトップに立つ者は、動かなくてもよいという考えが、強かった。
頂点に“立つ者”というより、“座る者”といったほうがよかろう。

社長の座とか、妻の座とか言われるが、座に据(す)えられた人よりも、座
のほうに値打ちがある。

私の仕事場に、ときどき約束なしに、「ちょっと、そこまで参りましたの
で、ご挨拶にお寄りしました」といって、現われる人がいる。突然こられ
て、困ることもある。

確めないで訪問するのは、相手がかならずその座にいることを、前提とし
ているにちがいない。日本は「座る文化」なのだ。名刺か、菓子箱を置い
てゆくが、座に対する供え物なのだろう。

 日本国憲法の公布がもたらすもの

日本国憲法が公布されてから、世界の大部分の国が憲法を何回も改めている。

日本人は動かない静的なものに対して、憧れを抱いている。

この意味では、日本国憲法は天皇制に似るようにすらなっている。いつの
間にか、現憲法は天皇制に近い力を持つようになってしまった。


◆官邸直属の「諜報機関」を

佐藤 優



国際情勢が以前にも増して複雑になっている。今年に入って起きた主な出
来事だけでも、過激派組織「イスラム国」(IS)によるテロ、サウジア
ラビアとイランの国交断絶、北朝鮮による核実験と長距離弾道ミサイルの
発射、米国におけるトランプ旋風、「パナマ文書」が暴露されたことによ
るタックスヘイブンを用いた政治家、富裕層、多国籍企業などの税逃れ疑
惑などがある。これらの問題が複雑に絡み合って、現実の国際政治は動い
ている。

中東史やイスラム事情の専門家で国際関係全般にも通暁している山内昌之
明治大学特任教授が、「中東複合危機」というキーワードで情勢分析を
行っているが、この概念を拡大して現下の状況を「世界複合危機」と呼ん
でもいいと思う。

現時点で、半年後の国際情勢をズバリ予測するという人がいたとするなら
ば、その人は嘘つきか、国際情勢をよくわかっていないかのいずれかであ
る。それは現実に与える変数があまりにも多くなって一義的な分析ができ
なくなっているからだ。だからといって、分析や予測をあきらめて、場当
たり的な対処をすることは国益を毀損(きそん)する。こういうときにこ
そ、高度な分析力を持った対外インテリジェンス(諜報活動)が必要になる。

「日本人はインテリジェンスが苦手だ」と能力を過小評価する傾向がある
が、それは間違いだ。日露戦争のときの明石元二郎、大東亜戦争のときの
陸軍中野学校や陸軍参謀本部第二部第八課(謀略担当)、陸軍登戸研究所
などの業績を見れば、当時、国際水準で第一級の対外インテリジェンスを
行っていたことがわかる。戦後も外務省には機微に触れる情報を入手し、
任国の中枢に食い込んだ外交官は何人もいる。

警察庁のカウンターインテリジェンス(防諜活動)も世界最高水準だ。サ
イバー・インテリジェンスにおいても自衛隊は高い能力を持っている。さ
らに民間の総合商社、新聞社、大学などの組織、独自の人脈を構築するの
に長けたロビイストが機微に触れる情報を持ち、的確な分析や予測を行っ
ている事例も少なくない。

問題はこれらのインテリジェンスが総合されず、日本国家と日本国民のた
めに有効に用いられていないことだ。対外インテリジェンスやカウンター
インテリジェンスに従事する外務省、内閣情報調査室、警察庁、防衛省、
公安調査庁の垣根を取り払い国益のために団結せよという指摘は数十年前
からなされているが、省庁間の壁を打ち破ることはいまだできていない。
現実的に考えて今後も無理だ。だから首相官邸に直属する新設対外インテ
リジェンス機関を構築することが不可欠だ。

この作業には時間をかけなくてはならない。国家公務員総合職試験に合格
した人の中から対外インテリジェンス機関が独自に採用を行う。そしてま
ず外務省が行っているのと同じ条件で国外で2〜3年間研修し英語とイン
テリジェンスの対象となる国家や地域の言語の習得に努めさせる

さらに対外インテリジェンス業務に必要な技法を習得させる。中央官庁、
自衛隊、大学院、総合商社などで対外インテリジェンスに適性のありそう
な人材がいれば、中途採用し同様の教育を行う。公務員試験合格者であれ
中途採用者であれ、この職務に適性がないことが明らかになった場合は転
職させる。こうすれば10年後に国際基準の対外インテリジェンス・オ
フィサー集団が生まれる。

ここで重要なのは、対外インテリジェンス機関の業務からテロリスト鎮圧
のような実力行使を伴う事項を除くことだ。テロとの戦いには待ったなし
で取り組まなくてはならないので、時間をかけて組織を作っている余裕が
ない。さらにそもそも論になるが、対外インテリジェンス機関は、「武器
なき戦い」「知恵の戦い」に従事する機関なので、実力行使によって課題
を解決するというオプションを外しておかないと、「知恵」が十分に研ぎ
澄まされない危険がある。テロとの戦いについては警察庁の専管事項とす
べきだ。外交一元化は、首相官邸で担保されればよい。テロとの戦いに関
しては、警察庁が外務省に遠慮せずに自由に活動できる環境を整えるべきだ。

               ◇

【プロフィル】さとう・まさる 昭和35年、東京都出身。同志社大学大学
院神学研究科修士課程修了。60年に外務省入省。在露日本大使館勤務など
を経て、平成10年に国際情報局分析第1課主任分析官。作家として、主
な著書に「国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて」(新潮社刊)、
「国家の自縛」(産経新聞出版刊)などがある。

産経ニュース【世界裏舞台】2016.4.17
 

◆世界に流布、中国の慰安婦40万人説

櫻井よしこ

「中国の新しい反日プロパガンダが本格化し始めました。彼らは慰安婦は
20万人ではなく40万人だった、真の被害者は中国人慰安婦だったという資
料を作成して欧米社会を説得しています」
 
明星大学教授の高橋史朗氏が4月15日、インターネット配信の「言論テ
レビ」の番組で語った。
 
高橋氏は、2014年12月16日の中国メディアに掲載された記事、「FOCUS-
ASIA」を紹介した。そこには中国慰安婦問題研究センターの統計として、
「南京大虐殺の犠牲者数に相当する約30万人の女性たちが日本軍に蹂躙さ
れて死亡、これは全体の75%に相当」と記されている。
 
30万人が殺害され、それが全体の75%に当たるのであれば、慰安婦の全体
数は40万人という計算になる。

「全体数40万人、死者30万人、中国人慰安婦20万人というのは完全なフィ
クションで対日歴史戦争の柱のひとつです。この作り話に学問的な装いを
施して信憑性を高めているのが、先程の記事に登場する中国慰安婦問題研
究センターです。

同センターは上海師範大学の中にあり、中心人物が蘇智良教授です。蘇氏
は『中国人慰安婦(CHINESE COMFORT WOMEN)』という英語の本を14年に
出版しました。以来、中国代表としてさまざまな国連関係の委員会に出席
しています」
 
昨年10月10日、ユネスコの世界記憶遺産に「南京大虐殺」が登録されたの
は記憶に新しい。登録を決定したのが国際諮問委員会で、蘇氏はその会議
にも中国代表として参加していた。
 
氏の『中国人慰安婦』は12人の女性の口述歴史集である。同書を幾度も読
み返した高橋氏は、その内容には裏づけがないこと、あったとしても日本
では全く信頼性のない伝聞が恰も重大な証拠資料であるかのように使われ
ていることを突きとめた。結論から言えば信頼には全く値しない書物だ
が、そこには逃げの手が打たれていると、高橋氏は言う。

「レイプ・センター」

「オーラルヒストリー、口述歴史集と書いています。少々の記憶違いが
あったとしても、許容範囲内だと計算しているのでしょう。気の毒な女性
たちの苦難を巧みに喧伝し、それを欧米社会は正当な訴えだと受けとめて
います」
 
蘇智良氏の著書は出版元がオックスフォード大学だという点で権威の衣を
まとう。本の裏表紙には慰安婦問題の権威の1人とされるマクドゥーガル
氏の推薦文も載っている。
 
氏は国連の特別報告者として1998年に慰安婦問題の報告書を書いた人物
だ。クマラスワミ氏に続いてマクドゥーガル氏がまとめた報告書は、慰安
所が「レイプ・センター」とされるなど、クマラスワミ報告よりさらに厳
しく感情的な内容だ。
 
高橋氏が指摘した。

「マクドゥーガル氏は蘇智良氏の本の推薦文で、『日本の慰安所で残酷な
仕打ちを受けた中国人女性の生存者の証言を読むと深い苦悩を感じる。し
かし、この話は語り継がなくてはならない。第二次世界大戦中に日本軍の
支配地域で起こった酷い虐待の犠牲者を理解するのに、この本は多大な貢
献をする』と誉め上げています」
 
オックスフォード大学出版、国連特別報告者の推薦などで権威を高めた蘇
智良氏は国際社会にその存在を知らしめ、昨年12月31日には米CNNにも
登場した。12月28日の日韓両政府の慰安婦問題についての合意を受けての
番組だった。高橋氏は同番組をしっかり見たと言う。

「番組は上海師範大学の蘇智良教授によれば、という解説付きで、慰安婦
は全体で40万人だった、半数が中国人女性で無給で売春を強いられたと強
調する内容でした」
 
年明けの1月3日、同じく酷い内容がカナダのローカル紙、「オタワ・シチ
ズン」に報じられた。

「蘇智良氏らの40万人説に基づいたのか、慰安婦は41万人とされていま
す。多くの被害者は14歳から18歳の少女で、日本軍の狙いは処女だった、
抵抗する家族は殺されるケースもあった、生存者は46人のみと、でたらめ
な内容です。
 
中国の対日歴史戦争の嘘が英語媒体を介して北米に広がっています。本
来、日韓合意と中国人慰安婦は無関係ですが、中国は確実に蘇智良氏を世
界に登場させてきています」
 
中国が昨年の「南京大虐殺」に続いてユネスコの記憶遺産に慰安婦を登録
すべく準備中であるのは周知の事実だ。日本政府は阻止できるのか。実態
はお寒い。

「南京大虐殺」は登録からすでに6か月が過ぎても日本政府は目録しか見
ていない。日本側が要求しても中国は目録しか出さない。世界記憶遺産
は、大事な歴史資料を誰でもアクセス可能な形で保存することを目的とし
た制度である。にも拘らず、半年が過ぎても目録しか出さない中国の行為
はユネスコの趣旨に反している。

さらに、南京の件は、14人のメンバーで構成するユネスコの国際諮問委員
会が審査したが、その中の誰一人として資料を見ていない。実質的な審議
は国際諮問委員会の下部機関、登録小委員会が行ったが、その小委員会で
中国が提出した書類を見たのはたったの1人だった。再び高橋氏。

「小委員会にも、上部機関の国際諮問委員会にも、南京事件について多少
でも知っている歴史の専門家はいないのです。彼らは公文書保管の専門職
員(Archivist)なのです」

外務省こそ元凶
 
中国は他の5か国を取りまとめて慰安婦を登録申請する構えだ。締め切り
は5月末。日本が、彼らが作成中の資料にひとつひとつ反論しても「もう
間に合わない」と高橋氏は言う。そんなことより、記憶遺産登録制度の非
常識と不条理を訴えて、制度そのものを変えなければならない。それは外
務省の役割だ。
 
だが外務省にはそもそもそんなことは期待できないと、元衆院議員の杉田
水脈氏が強調する。杉田氏はこれまで国連などで慰安婦は強制連行ではな
いと訴えてきた。国連本部に集う反日的NGOの代表らにも、同様の説明
をしてきた。

「私のようないわば保守系NGOの一員から見ると、外務省の動きは理解
を超えています。外務省は日弁連を中心とした反日的言動を展開する
NGOと、協賛でイベントを行っているのです。勿論その中で慰安婦も、
反日的な形で取り上げています」
 
安倍晋三首相は国会で、慰安婦は強制連行の証拠はない、性奴隷は実態を
反映していない、20万人説には根拠がないと明言済みだ。外務省の任務は
首相発言に基づいて情報発信することではないのか。NGOに共鳴して、
反日的と言われても仕方のない、首相の国会発言とは異なる情報をなぜ発
信するのか。外務省こそ歴史問題の元凶だとの思いを強くするものだ。
『週刊新潮』 2016年4月28日号 日本ルネッサンス 第702回

2016年05月03日

◆国をあ げて歴史捏造に立ち向かわねば

櫻井よしこ



なぜ岸田外相は中国・王毅外相の不遜な主張に反論しないのか? 国をあげて歴史捏造に立ち向かわねば

岸田文雄外相に、王毅外相は北京で4月30日、ニコリともせずに言った。「中日関係は度々谷間に陥った」「その原因は日本側が一番よく分かっているのではないか」

一方的な対日非難に等しい不遜な主張の王毅氏に、岸田氏は「両国外相の往来が途絶えていることは望ましくない」と、穏やかに返した。

居丈高になる必要はないが、日本外交はこんなことでよいのか。中国は国連教育科学文化機関(ユネスコ)の記憶遺産に慰安婦を登録するため、昨年5月、韓国、北朝鮮、台湾、フィリピン、オランダと連帯委員会を発足させた。

彼らは今月末の申請締め切りをにらんでいる。日本の外相とし て、王氏に慰安婦などの歴史問題を公正に扱うよう、冷静にクギを刺すく らいのことはすべきであろう。

明星大学教授の高橋史朗氏が早くから警告してきた『中国人慰安婦 日帝国の性奴隷からの証言』(UBCプレス)の凄まじい内容を外務官僚は岸田氏に伝えたのか。中国がユネスコに提出する申請資料の核となるとみられている書で、すでにCNNやウォールストリート・ジャーナル紙などで紹介されている。

同書は、上海師範大学教授の蘇智良氏ら3人の共著で、英文で250ページ余り。カナダのブリティッシュコロンビア大学、香港大学、オックスフォード大学の協力で出版された。内容は荒唐無稽だが、名門オックスフォード大学も出版に関わっているため国際社会の信用を勝ち取りやすい。

読めば、クマラスワミ報告を読むのと同様の暗澹たる思いになる。物語の非現実性と無残な描写は、日本人ではなくむしろそれを書いた中国人の精神性をよく表現している。日本人は政治家、外交官、一般国民まで、中国人がどのように歴史を捏造するか、知っておくべきだ。

「序言」にはいきなり15歳のリュー・ミアンフアン氏が母親の眼前で 日本軍に拉致されたという以下の証言が登場する。日本軍は村人を一カ所に集めた。30歳前後の日本兵が「お前はとても美しい」と、彼女を引きずり出した。抵抗してひどく殴られた。3〜4時間歩かされ、日本軍の拠点に連行された。その日「数人の日本兵」に犯された。

娘を心配した父親が、飼っていたヒツジ全てを売り払い、銀貨100枚の身請け金を用意した。軍の拠点を訪れ、日本の軍人に叩頭して娘の解放を頼んだ。父親は通訳を介し、娘は病気だ、解放されて病気が癒えたら必ず連れ戻すとも懇願した。日本軍は金を受け取り解放に応じた。

このような話、日本軍が身請け金を受け取るなど逆立ちしてもあり得ないと、日本人ならわかる。身請け話が真実でなければ、日本軍が女性の美醜を吟味して直接連行したという、そもそもの事の始まりも真実かと疑うものだ。

しかし、これは序の口だ。蘇氏は同書で中国人慰安婦102人の証言を記録したとして、87人は日本軍が「直接」拉致したと断じている。

同書では慰安婦は全体で約40万人、少なくとも半分は中国人慰安婦、日本軍が中国人慰安婦の大部分を自らの手で拉致したという非難が繰り返される。日本軍の直接関与と女性への苛酷な扱いが、中国における日本軍の特徴だと日本政府の責任を問うている。

蘇氏は上海大学の中国慰安婦研究センター長でもある。同センターの統計に基づいて、慰安婦の75%が日本軍に蹂躙されて死亡した、その数は(40万人の75%で)30万人という報道もなされている。

同センターの慰安婦研究に中国政府から資金が出ていることを高橋氏が摘しており、中国政府が慰安婦に関する蘇氏らの捏造を背後から支えていると言ってよいだろう。中国は本格的な対日歴史戦を仕掛けてきているのである。反日教育で醸成された中国人の底知れぬ暗い情念と、そこから生まれる歴史戦のとてつもない厳しさを、日本人、とりわけ外務省は認識しているのか。

著書には日本人の残虐性を描写するくだりが多数あるが、それらはいずれも日本人の行動ではなく、むしろ中国の古書「資治通鑑」に見られる中国人の行動に通底する。たとえば日本軍は「6カ月の妊婦を裸にして広場のテーブルに縛りつけ、乱暴を働きながら撮影し、腹部を切り裂き銃剣で胎児を引き出した」などである。

この種の無残な記述のあと、同書は、日本兵が生まれつき邪悪でないと仮定しても、「日本軍の残忍さと無慈悲さは理解し難い」と書いて、あたかも日本人が中国人や米国人らとは異なる特殊な蛮民であるかのように貶めている。

昨年、中国はユネスコの記憶遺産に「南京事件」を登録、日本はそれを防げなかった。今回、慰安婦の登録を阻止できるのか。記憶遺産の選考過程をより公正・透明にする制度改革が進みつつあるのは日本政府の働きかけとして評価してよい。だが、制度改革だけでは不十分だ。中国の登録を止めても、捏造された歴史を覆す情報を日本側は精査し、発信準備を整えているか。

安倍晋三首相は慰安婦問題で、「性奴隷あるいは20万人といった事実はない」「強制連行」を示すものはない。「軍の関与」は慰安所の設置、健康管理、衛生管理、移送についてだと明確に回答済みだ。

外務省は一連の首相発言を同省ホームページにも掲載していない。客観的事実の発信は日韓慰安婦合意にも反しないが、発信する気がないのか。発信だけでなく、捏造を覆す情報の発掘や研究にも外務省は消極的である。

国家あげての中国の企みに、日本も国をあげて立ち向かわなければならないいま、民間情報センターの必要性を痛感するものだ。

産経ニュース【櫻井よしこ 美しき勁き国へ】2016.5.2

◆私の「身辺雑記」(339)

平井 修一



■4月30日(土)、朝5:30は室温17.5度、このところ下がっているが快晴、快適、ハーフ散歩。

支那は実に面妖な国だ。ほとんど異星人のよう。驚く話がいっぱいで、絶叫笑奇奇怪怪。近藤大介氏の論考『中国でキケンな「不動産バブル」が再燃中! 消費低迷でも「6.7%成長」のカラクリ 焚きつけているのは中国政府だ』(現代ビジネス4/25)から。

<*国家統計局長の「突然の失脚」

中国の国家統計局が発表する第1四半期(1月〜3月)の各種主要統計が出揃った。

統計の解説の前に、まずは国家統計局の「顔」である王保安局長(大臣)が、1月26日に忽然と消えた一件から述べよう。

王局長は1月19日に記者会見を開き、内外の記者団を前に、「2015年の中国のGDPの成長率は6.9%だった」と胸を張った。

(その後の「中国のハードランディングは避けられない」とのソロス発言を打ち消そうと)1月26日、王保安局長が再度、記者会見に臨んだのである。

王局長はいつもの強気の口調で、こう述べた。

「中国経済のプライオリティと、V字回復の勢いはまったく変わっていない。ソロスのうわごとのような中国経済の予測は、起こりようもない。中国の株価が多少下がったからといって、それが中国経済全体に与える影響は微々たるものだ。中国の株式市場は、これからも自信を持って進んでいく」

だが、王局長の防戦虚しく、この日の上海市場は6.4%、深セン市場は6.9%も暴落したのだった。

(平井:彼の名を後ろから読むと安保王。「経済がどん底でも安保王がいれば安心だ。適当に数字を創るから」という小話がある、今は「あった」の過去形)

この会見の直後、思わぬ展開になった。国家統計局の内部事情に詳しい中国の経済関係者が明かす。

「王保安局長の記者会見が始まったのが、午後3時だった。4時頃に会見を終えた後、王局長は夜7時半から、国家統計局の幹部たち全員に招集をかけ、『国家統計局活動会議』を行うとしていた。国務院を統括する李克強首相の新たな講話を学習するというのが、会議の目的とされた。幹部たちは『なぜ夜に会議なんか開くのか?』と訝りながらも、待機していた。

だがその実、王局長は局長専用車の運転手に、会見が終わったら北京首都国際空港に向かうよう指示していた。同日夜7時発のパリ行きエールフランスと、夜9時発のフランクフルト行きルフトハンザのファーストクラスを、それぞれ2枚ずつ予約していた。身の危険を察した王局長は、何と愛人とヨーロッパに亡命するつもりでいたのだ。

会見が終わった後、王局長は隣の控え室に移り、そこに置いてあったカバンとコートを取って出ようとした。その時、党中央紀律検査委員会副書記と助手、それに二人の特警(特殊警察)が控え室に踏み込み、王局長を引っ捕らえた。

王局長のカバンの中からは、『黄国安』『丁毅』という名義の2枚の偽造公用パスポートが見つかった。愛人は、北京首都国際空港の貴賓室にいるところを引っ捕らえられた。

王局長には、古巣の財政部時代に数億元を不正蓄財し、それらをアメリカとヨーロッパに隠匿していた容疑がかかっている」

(平井:まるで小説のよう。記者会見の檜舞台から一気に奈落の刑務所へ。逃げるタイミングを誤った。タレコミでばれたか)

*新局長となった寧吉浮ニいう男

そんなわけで2月26日、国家発展改革委員会の寧吉封寰蜚Cが、新たに国家統計局長に就任した。

1月末の「王保安事件」で国家統計局が大揺れとなったため急遽、国務院を括する李克強首相に送り込まれたのだ。李克強首相と寧局長が話す時は、安徽省方言を使うほど、李首相から信任を得ている。

その寧局長になって初めての経済統計発表が4月15日に行われ、4月19日に寧局長自身が「中国政府ネット」で解説した。

今回、発表された経済統計で、ひときわ目を引いたのが、不動産の動向だった。3月の主要70都市の不動産調査で、新築商品住宅(マンション)価格が2月から上昇したのは、62都市に上った。また、中古住宅(マンション)価格が上昇したのも、54都市に達した。

前年同月比で見ると、北京の新築マンションは116%、上海は125%、深センに至っては161%にハネ上がった。同様に中古マンション価格は、北京が135%、上海が127%、深センが160%に上昇した。

第1四半期の全国不動産開発投資額は1兆7677億元で、名目で6.2%(物価要素を控除すると9.1%)伸びている。昨年通年の伸びが1.0%だったことを鑑みれば、まさにV字回復しているのだ。

*あまりにも場当たり的な経済政策

このカラクリは、中国政府が固定資産投資を増加させ、「政府主導型の不動産バブル」を演出しているからに他ならない。そうしたら北京、上海、深センと、どんどん上がり出した。「もはや危険水域に達した」と見た上海市は、3月25日に突然、新たな(購入)規制を発表した。

あっちへ行ったりこっちへ行ったりと、ジグザグと場当たり的に進むのが、習近平政権の経済政策の一大特徴である。よく言えば、中国人的な「走りながら進む」臨機応変の方法だが、あまりに朝令暮改で、政策が変わるたびに国民は振り回されている。要は経済に対する理念・哲学といったものが欠如しているのである。

*「消費の転換」は起こってるかもしれないが…

ところで、気になる統計データもあった。第1四半期の固定資産投資の伸びが、10.7%に達したのだ。こちらは、ありがたくないV字回復である。

中国は、リーマンショック後に4兆元(当時の邦貨で58兆円)もの緊急財政支出を宣言して、世界経済復活の牽引役となった。この時に主導したのが、固定資産投資だった。日本で言う公共投資である。

習近平政権になってからは、この(ゴーストタウン、過剰設備に象徴される)ゾンビのような固定資産投資を減らしていき、国民の消費が主導する健全な経済発展を目指したのだった。

(伸び率は)昨年の第1四半期で13.5%まで減らし、昨年通年では、ついに10.0%まで落とした。さらに減らしていき、その分、消費が増えていけば、晴れて中国経済復活の暁光が見えてくる。

ところが、今年第1四半期の民間の固定資産投資は5.7%まで落ちた。そこで再び、政府による固定資産投資の増加という「悪癖」が始まったのだ(平井:需要のない公共事業による景気浮揚策)。

*65歳以上が総人口の1割を突破

さて、国家統計局は4月20日、もう一つ興味深い統計データを発表した。それは「2015年全国1%人口ピックアップ調査主要データ公報」である。

注目すべきは、年齢別人口である。65歳以上が1億4374万人と、日本の総人口を上回る数だ。しかもその比率が10.47%と、5年前の8.77%から1.70ポイントも上昇し、初めて総人口の1割を突破したのだ。

これは中国社会が、ものすごいスピードで老齢化社会に向かっていることを意味する。このペースで進めば、20年後には深刻な社会問題と化すだろう。

なぜ大仰に全国で人口調査なんかやるのか。そもそも中国には、15ケタか18ケタからなる身分証が全国民に与えられているので、身分証発行元の公安部は、正確な人口を把握しているはずではないか。

当時(2010年)、少なからぬ中国人にこの疑問を投げかけ、帰ってきた回答も多岐にわたったが、その中で納得できたものが二つあった。

一つは、一人っ子政策などのため、身分証を持たない「無戸籍者」(こっそり産んだ二人目以上の子供)が数千万人単位でいるというのだ。だからきちんと対面して調査を行う必要がある。

もう一つは、公安部が掴んでいる正確な人口は、すでに15億5000万人を超えている。そんな数は国家が養えないから、人口調査をやって、わざと少ない統計が出るようにしているというのだ。

いずれにしても(デタラメ、手抜き横行の)中国で正確な統計データを取るのが難しいこと、及び中国の統計データには多くの場合「目的」があるということを、理解したのだった>(以上)

異常を通り越して何でもありの“超常国家”、新常態でもこれは変わらない軍事予算の半分が軍高官のポケットに入るそうだが、それなら他の部署も同様なのだろう(今は一時的に鳴りを潜めているようだが)。

北京発表の2015年の総人口は13億7349万人、実際は15億5000万人超ということは1億7651万人が「いないことになっている」・・・一種の棄民か。貧しい者が切り捨てられている。

人口統計で13%もの誤差がある国はかなり珍しいだろう。他の数字も推して知るべし、VW、三菱、東芝のようなものか。数字を創る。

国家としては二流なのか・・・農村の暮らしは厳しいようだ。9億人が農村戸籍(二流国民)だそうだが、経済成長の恩典がさほど達していないのか、以下は安徽省の農村だが「人種が違う」感じがする。ちょっとショック。↓

http://jp.xinhuanet.com/2016-04/28/c_135318840_9.htm

<安徽省出身者に限らず、貧しさゆえの各地からの出稼ぎは多く、みな同様に差別されています。ただ安徽省は中国全土でも有数の貧困地帯ゆえ、全国的に安徽省出身者の出稼者が多いため目立っているのです。

私は上海に10年ほど住んでいました。上海は安徽省に近いため安徽人がとても多い。そしてほとんどが社会の底辺の仕事についています。工事現場のワーカー、お手伝いさん、ホステスや売春などの風俗業の人々といえば安徽省出身と相場が決まっていました>(知恵袋2014/5/41)

習近平は彼らを救えない。「中国夢」? 圧倒的多数の農民が夢も希望も持てない絶望大国なのに・・・「中国儚」か。♪儚い夢だったわねえー

■5月1日(日)、朝4:30は室温19.5度、快晴。

春は曙。ようよう白くなりたる屋根際、少し明かりて。カラスを追いかける2羽のツバメ、いとおかし。

団結すれば紅龍を封じ込められる。大丈夫だ。共産党は排除され、そして(そんなこととは関係なく)支那人は4000年のDNAでゼニ儲けにいそしむ。執念のレベルだな。

小生が1984年に起業した際、社是は「真面目にコツコツいい仕事」だった。美辞麗句や大言壮語を掲げても1年もたない会社もあったし、3年後には半分、10年後には3割しか生き残れない世界だ。特にこれという才能もない普通の人なのだから「コツコツ勤勉がなによりだ」と日本人の多くは思っているのではないか。

支那人の労働観とはずいぶん違うのだなあとは感じていたが、以下の論考を読んで、なるほど、そういうことか、別世界だな、と大いに納得した一方で、支那は中身のない「張子の虎」(毛沢東の大好きな言葉。まあ勃起不全、フニャマラの意だな)のようで「大丈夫なのか」と心配してしまう。

(亡国で14億人が難民となれば世界中が迷惑する)

在中コンサルタントの田中信彦氏の論考『「投資」の中国、「仕事」の日本 中国の配車アプリに見る「中国経営」を考える』(WISDOM4/28)から。結構ショッキングだった。 

<*「お金に働かせる」中国人

中国人と日本人のビジネスで、何が最も違うか。それはお金を稼ぐために「投資」をしようとするか、「仕事」をしようとするかという点である。

中国人は「お金が欲しい」と思った時、まず考えるのは「投資」である。現実に何らかの仕事に就いて働くとしても、それは投資の原資を稼ぐとか、その業界や市場の知識を得るために働くのであって、頭の中には常に投資(=お金に働かせる)という観念がある。

一方、日本人は、頭にまず出てくるのは「仕事」であり「働くこと」である。仕事や労働は収入を得るための手段であると同時に、時にはそれ以上に、それ自体が価値を持っている。良い仕事をして世間に認められれば結果的にお金が入ってくる――と考える。それをコツコツと蓄積して資産をつくる。

もちろんこれは「ゼロか100か」という話ではなく、どちらが良くて、どちらが劣っているという話でもない。中国にも日本にもさまざまな考え方の人がいる。だが、現実に両国において大筋でこういう傾向があるのは間違いないように思う。

日本企業や日本人が中国でビジネスをするのは難しいとよく言われる。もちろん成功例もあるが、比率はそう高くない。その成功にしても日本と中国の地理的、経済的、歴史的関係の深さからみれば、必ずしも大きなものだとは言えないだろう。

それにはもちろんさまざまな要因があって、一党独裁の政治体制(意図的な反日世論形成なども含む)は大きな要素には違いないが、より根幹の部分にあるのは、上述したような「お金を儲ける」ことに対する基本的な観念の違いではないかと私は感じている。

*「投資」が変える中国社会

中国でここ数年、スマートフォンを利用したタクシーやハイヤーなどの配車アプリが爆発的に広がっていることは、耳にされたことがあると思う。いまや世界のビジネスパーソンのスタンダードと言ってもいいUberも中国の主要都市のほとんどで使える。

そのほかに「中国版Uber」みたいな配車アプリが、主なものだけで3つあって、Uberを含めた計4社が激しい競争をしている。

中国の配車アプリにはユニークな仕組みがたくさんあって楽しいのだが、今回はサービス自体を紹介するのが目的ではないので、機能については触れない。ここで考えたいのは、なぜこうした配車アプリが中国では全国民必携のレベルにまで普及しているのに、日本ではそうならないのか――ということである。

監督官庁の規制が直接の要因であることは確かだ。世界中で広く使われているUberにしてからが日本では肝心な部分が骨抜きで、ただのタクシー配車サービスと大差ない。

余談になるが、最近中国の友人たちが日本に来ると、言葉ができないからまずUberのアプリを立ち上げるのだが、あまりに使えないのでびっくりする。日本のタクシー・ハイヤー業界も懸命の努力をしているのは知っているが、現状は十年一日、相変わらずの仕組みで大きな革新は起きていない。

しかし考えてみれば、中国でもタクシー会社の多くは国有企業で、政府の強いコントロール下にある。台数も料金も政府の管理下にあり、経営の裁量は非常に狭い。ある意味で日本よりも「官」との関係は深いといえる。

にもかかわらず、そのガチガチの業界に外部から膨大な資金が投入され、高機能の配車アプリがまたたく間に数億人に普及して、一気に社会のIT化、デジタル化を象徴する業界に躍り出た。それはなぜなのか。

その理由を解く鍵が、冒頭に掲げた「投資」の中国――何事も「投資」を基準に考えて行動する中国社会の観念にある。中国の社会はお上から庶民まで、いったん「こうやったらお金がもっと増える」というやり方が出てくると、その実現に向けて大規模な投資をする人や企業が現れ、既存の仕組みをダイナミックに変えようとする。

そして多くの人がその動きに便乗し、自分の取り分も増やそうと考える。そうやって仕組みそのものがどんどん変わっていくパワーがあるのである。

*配車アプリへの凄まじい投資

iPhoneが日本で発売されたのは2008年の夏。スマートフォンの本格普及はそこからである。中国での普及はそれよりやや遅く、2010年以降のことだ。配車アプリが本格的に広がり始めたのは2013年。わずか3年しか経っていない。

配車アプリの普及前、タクシーは路上で手を挙げて停めるか、タクシー会社に電話して車を寄越してもらうものだった。日本では今でもこの状況に近いかもしれない。そこにスマートフォンが普及し、運転手と利用者の双方が地図とGPSを常に持ち歩くようになったので、中国ではその両者を組み合わせて初期の配車アプリがスタートした。

それでもかなり便利になったのだが、爆発的な普及を呼んだのは、配車アプリに代金決済システムが組み込まれるようになってからだ。タクシーは小銭のやりとりが面倒だし、多額の売上金を持つと盗難の心配もある。

そして何よりも利用客と運転手の双方が決済システムを持っていれば、需要と供給に合わせた柔軟な料金体系が実現できる。

繁忙時に運転手に割増金を支給することも、逆に閑散時に利用客の代金を割り引くこともできるし、車がつかまらない時に、利用客が自らチップの支払いを提示して車を引き寄せることもできる。硬直した運賃体系にとらわれなくて済むようになるのである。

この点に注目したのが、独自の代金決済システムを持っていたIT企業である。ひとつは皆さんご存じ、ジャック・マー(馬雲)率いるアリババグループであり、もうひとつは中国の代表的SNSで、いまや携帯電話やメールをしのいで中国人の中心的な通信手段となった感があるWeChat(ウィチャット、微信)を擁するテンセントである。

特にテンセントは当時、代金決済システムでアリババグループの「Alipay(アリペイ)」に大きく遅れをとっており、アリババに追いつき追い抜くためにも、何とか自前の代金決済システムを育てたいとの強い思いがあった。

そこでテンセントが狙いをつけたのが、有力なタクシー配車アプリ「滴滴打車」(「滴滴(ディディ)」は愛称、「打車」は「タクシーを拾う」という意味の中国語)である。

中国のタクシーは日本の都市部のように「ぜいたく品」ではなく市民の足であり、年間数十億人が利用する。その配車アプリで自社の決済サービスを広めれば、認知度を飛躍的に上げることができる。

そこでテンセントは「滴滴」に30億元(当時のレートで約500億円、以下、当時のレートで日本円換算した表記を使用する)を出資して経営権を把握。タクシー配車アプリに同社の決済サービス「WeChat Pay(ウィチャットペイ、微信支付)」を導入した新しいシステムを立ち上げた。

テンセントがすごいのはここからだ。「滴滴」はこの500億円の資金を惜しげもなく使い、タクシーの運転手にはボーナスを出し、利用者には運賃を大幅に割り引く大盤振る舞いを始めた。最も多かった時期には、運転手は客を乗せるだけで初乗り運賃を上回るボーナスを手にして、利用客はほとんど無料でタクシーに乗れるという状況まで出現した。

当然、タクシーの運転手は競って「滴滴」の配車アプリに加入しようとする。利用者も同じで、このアプリを使わない手はない。他の競合する配車アプリも応戦して割引合戦が始まった。かくしてわずか数カ月で「滴滴」の登録者数は2億人以上も増えたと言われている。

*500億円の投資で4兆円を得る

しかし、このタクシー配車アプリのビジネスは、もともと収益源は配車手数料しかなく、極めて薄利な商売である。しかも投資した巨額のカネのほとんどを運転手と利用客にバラ撒いてしまうのだから、いつになったら儲かるのか見当もつかない。

ではなぜそんなことをやるのかといえば、それが「投資」である。具体的に言ってしまえば、狙いは株価の上昇にある。株価とは企業の将来に対する期待の大きさを反映するから、経営者はこの企業が大化けするかもしれないという期待を投資家に持たせようとする。テンセントの「滴滴」に対する500億円の投資はまさにそれである。

実際、決済システム「WeChat Pay」の利用者が前述のように一気に2億人も増えたことで、香港市場に上場しているテンセントの株価は急騰した。2013年4月、「滴滴」に出資した時点で250香港ドル程度だった同社の株価は「WeChat Pay」導入の2014年1月には500ドル台まで上昇した(その後、株式を5分割したので現在の株価は100香港ドル台)。わずか8ヵ月ほどの間に同社の時価総額は4兆円以上増えたとみられている。

もちろんその全てが「滴滴」への投資によってもたらされたとは言えないが、「滴滴」への投資が株式市場でのテンセントの評価を一気に押し上げたことは事実である。

やや極端に言えば、テンセントは500億円の投資で4兆円以上の資産を得た。そう考えれば配車アプリでの大盤振る舞いなど安いものである。

これが中国人、中国企業のビジネスの真骨頂である。

テンセントの狙いは配車アプリというサービスで稼ぐことではなく、配車アプリに投資することで決済サービスの利用者を増やし、株価を上げることにあった。タクシーを配車するという「仕事」で稼ぐのではなく、そこに投資することで自社の価値を上げる。そういう考え方である。

もちろんこの神州専車(平井:追い上げを狙うライバルだが略す)にせよテンセントにせよ、その戦略が成功する保証はない。壮大な投資が水泡に帰す可能性もある。しかし投資家がリスクを取って一見無謀とも思えるほどの大胆な投資を行うことで、「便利なもの」が一気に世の中に広まっていく。社会が劇的に変わる。

こうした中国社会のダイナミズムは、これらの企業行動によって支えられているのもまた事実である。

*規模や効率、資金力で勝負する中国的経営

いま話題の配車アプリを例に話をしてきたが、どの業界でも考え方の基本は同じである。例えば小売業にしても、中国のスーパーやショッピングモールの経営者は、極論すれば「よい店をつくること」を目指しているわけではなく、「よい店をつくることを通じて企業の価値を上げ、資産を増やそう」と考えている。

だから、大型のショッピングモールの開発では、店自体を良くするための「仕事」も当然するが、それよりもオフィスビルやマンション、ホテル、テーマパークなど他の業態と組んでモールそのものの付加価値をどうやって上げるか、地元の政府を巻き込んで地下鉄や高速道路などを引き寄せて、いかに周辺の地価を上げるかといったことを真っ先に考える。

お客様に愛される店になることをひたすら目指すという経営をする中国の経営者は多くない。

かくして、中国の経営者は自社の価値を上げるためなら何でもありの総合的な商売をしてくる。一方、日本の経営者は自分の家業、自分の強みとする「仕事」に徹して、「この道一筋」で商売に切れ味を出そうとする傾向が強い。

こういう両者が組んでもなかなかうまくいかないし、仮に中国の市場で両者が競争関係になると、どうしても最後には日本勢は規模や効率、資金力で負けてしまう。

冒頭に書いたように、これはどちらが良い、どちらが優れているという話ではないが、中国という巨大かつ未開拓部分の多い市場を前にすると、細部の積み上げで価値を出していく日本的な「仕事志向」は劣勢に立たされてしまいやすい。

*中国は「投資」で成り立つ国

考えてみれば、中国という国そのものが「投資」で成り立っているようなものである。日本では国(政府)はいわば中立の立場であり、民間のプレーヤーが仕事をしやすくする行司役みたいな存在である。

ところが中国では国や政府は中核的なプレーヤーであり、どのように投資したら自分たち(国、政府、党)の資産価値をいかに上げられるかを、日々考えている。

中国政府が高速鉄道や高速道路をここまで急いで全国に造るのは、やや意地悪く言えば、人民の生活が便利になるからではない。インフラの整備によって周辺の地価が上がるからである。中国政府は中国全土の土地のオーナーなのだから、国土の価値が上がれば、まさに天文学的な額の利益が生まれる。

せっせと学校をつくって人を育て、産業を興して社会を豊かにし、税金を払ってもらうという「仕事」をするより、インフラに投資して地価を上げ、そのリターンを得るほうが何倍も何十倍も手っとり早く、利益が大きい。権力者はそのことをよく知っている。そして現実は、まさしくそうなっている。

かくして中国は世界にも稀に見るスピードで豊かになった。それは国を挙げて「仕事」ではなく「投資」をしてきたからである。それがいつまで続くのか、長い目で見て中国の13億人の人々のために本当になるのか、それは私にはわからない。

ただ現時点では、私の30年来の中国の友人たちはほぼ例外なく、私よりはるかに資産持ちになったし、豊かな暮らしを実現した。別に悔しいと思っているわけではないが、若い頃には考えたことがなかった「投資」と「仕事」の違いを、この歳になって考えるようになった。「何をいまさら」と中国人には笑われるに違いないけれども>(以上)

いやー、実にいい論考だ。目からウロコ。日本人から見れば支那人は異星人だが、支那人から見れば日本人は異星人なのだろう。価値観が大きく離れているから一緒には仕事はできないかもしれない。彼らはウォール街の人々のようだ。“長城街住人”。

日本人は土佐の鰹一本釣り、大間の鮪一本釣り、匠を目指してシコシココツコツ技を磨く。支那人はトロール船でごっそり獲る。支那近海の魚は激減して“ゴーストシー”、遠洋漁業で世界を荒し回っている。

彼らの投資先は国外にも向かい、カナダも豪州も日本もマンション価格は騰がっている。投資して資産価値が上がっているわけだ。米国も同様だろう、特にニューヨークの住宅は高騰し、もはやカタギには手が出ないし、それはロンドンも同様だ。

チャイナマネーはどこへ行く。マンションの次は企業買収に向かうのか。ホンハイ(本社は台湾だが拠点は支那)はシャープを買い取った。和をもって貴しとなす、万機公論に決すべしの日本と違って支那企業/資本家は拙速を恐れないからスピードが速い。トップダウンで即断即決なのだろう。

カネがカネを生む。マネーゲーム、財テクだ。実業の製造業は発展しているのだろうか。百均向けの雑貨が多いような気がするが(世界中に輸出して後進国の軽工業を壊滅に追い込んでいる)、ハイテク産業は育っているのだろうか。育てるよりは買収の方が手っ取り早いが、これでは人材は育たない。

「人材? カネを出せば世界中からいい人材を得られる。この電気釜はサンヨー出身のベテランが作ったのよ。おいしく炊けて、日本の半額だ。シャープ、三菱自動車、東芝・・・人材の宝庫だな」

そういうことなのだろう。昔から「汗をかくのは下賤の仕事」であり、貴族はひたすら投資するのが今の支那人の資本主義なのだ。いいのかどうか・・・

「長い目で見て中国の13億人の人々のためになるのか、それは私にはわからない」と田中氏は記しているが、小生にも分からない。

支那は雑貨、サウジなどは原油以外に世界へ“売る”ものはあるのか。

<湾岸協力会議(GCC)諸国は、2018年末までに3〜5%の付加価値税(VAT)を導入する方向で調整している。背景には原油価格の低迷による財政悪化がある。GCC諸国の2015年の歳入は2014年に比べて30〜40%減る見込み>(JETRO 2/17)

「30〜40%減る」というのは、これは・・・大恐慌だぜ、マジ、革命が起きかねない。大丈夫かよ。「神は偉大なり、アッラーフ・アクバル!」と祈ったって、ちっとも解決しないと思うがの。

原油と観光以外に売るものがないからVATを導入するしかない。無税国家だったが、国民から税金をとるしかないのだ。GCC諸国でも「汗をかくのは出稼ぎ外国人の仕事」なのだろう、人材や経済インフラが脆弱、いびつで、震度4あたりで倒壊しかねない。

支那はもはや世界の工場ではなくなりつつある。世界有数のハイテク技術もない。偽物を速攻で作るとか、ネズミの肉でハンバーグを作るとかの奇妙奇天烈な技術はあるが・・・「中国製=安いだけの粗悪品」のイメージは世界中に広がっている。

マネーゲーム、カジノ、カネがカネを生む投資経済・・・骨と筋肉のないデブみたいだ。これで14億人に三度三度の飯を食わせ続けられるのだろうか。

遂に中共の泣きが入った。「四つのお願い」だと。要はこういうことだ――

1)歴史を反省し「南京虐殺はなかった」「紅軍は皇軍とまともに戦ったことはなかった」などと言わないでほしい、

2)ひとつの台湾、ひとつの中共、だなんて言わずに「一つの中国」を認めてほしい、

3)武力で地域の秩序を変えようとしているなんていう「中国脅威論」を
煽るのはやめてほしい。

4)今苦しんでいるところだから「中国経済衰退論」をまき散らさないで
欲しい。

嗤うべし、そうはイカの金玉、こうするね。

♪一つ 厳しく非難する
二つ 好き勝手にはさせないぜ
三つ 絶対孤立させるからな
四つ 悪事は世界にばらすぞ

♥王毅丁稚小僧「4つのお願い聞いて 聞いてくれたら あなたに私は夢中 恋をしちゃうわ」?

キモイ! あっちいけホイ! あーっ! 落ちちゃった・・・魯迅曰く「打落水狗」(水に落ちた犬は打て)。

「愚直な人は、犬が水へ落ちたのを見て、きっと懺悔するだろう、もう人に咬みつくことはあるまいと思うだろうが、それはとんでもない間違いである。犬は道義などを絶対に解さぬのだから」

情け容赦なく「打落水習」で行けということだ。阿Qは処刑。

GWで早朝は街の人口は半減したのか、ひっそりしている。元気な人は旅行や帰省、残っているのはヂヂババばっかりみたいだったが、昼ごろから賑わってきた。

カミサンは上野のアフガン展などへ。とても感動したようだ。「博物館や美術館は一人で行くのがいいわ。自分の好みやペースがあるからね」

ふーん、確かにそうだが・・・個人主義の行く先は独身主義になりかねない。独身者と母子家庭、同性婚ばっかり・・・「子供は要らない、犬で十分」・・・犬が介護してくれるのか、看取ってくれるのか・・・100年もたずに亡国だな。

「産経を含めてあちこちで寄付を募っているが、結局、赤十字が仕切る。被災者にカネが届くのは早くて半年後。いかがなものか。現地のボランティアに速攻でカネを回せ」

笹川陽平氏も赤十字のどうしよもない愚かさを危惧している。法定主義・・・時にはそんなことより「緊急事態だ、各員、現場で良かれと思うことを速攻ですべし」とやるのが正解のことが多いだろう。

夏彦翁曰く「正義はやがて国を亡ぼす」。臨機応変、超法規でやらなくてはいけないことは多いだろう。現実を直視しろ、ということだ。

■5月2日(月)、朝1:30は室温22度、窓を少し開けているが、ずいぶん暖かくなった。昨日は半袖で過ごした。

それにしても1:30、早過ぎる。折角だからとハンク・ウィリアムスのカントリー&ウエスタンを聴きながら朝食の準備をしたが、それでも2:30。一杯、引っかけて眠るしかない。

ちょっと寝坊して6:50起床、晴、今季初、半そでポロシャツでハーフ散歩。10日ほど前の増水で大きな鯉が遊歩道に乗り上げて成仏。そのうち蛆虫がびっしり、やがて小鳥と鳩が来て蛆虫をうれしそうに食べ、カラスは干物と化した肉をつつき始めた。

最初は気持ち悪いなあと思っていたのだが、鯉は死ぬことによって多くの鳥の命の糧になったわけだ。なるほど、風葬とはそういうことかと感心した。小さな老齢の命でも役立つことはあるだろう。一旦緩急あらば義勇公に奉じん、イザ!

大地震があっても小生は日本が大好きだ。何という素晴らしい国柄なのだろう。地球の奇跡だ。

坂本敏夫氏の論考『熊本大地震、そのとき「熊本刑務所」で何があった
か? 過去に例を見ない「決断」の舞台裏 現地ルポ』(現代ビジネス
4/30)から。

<熊本大地震の発生後、熊本刑務所が被災者のために施設の一部を「避難
所」として開放したことが話題になった。元広島拘置所総務部長で、『典
獄と934人のメロス』で関東大震災で被災した受刑者たちが起こした奇跡
を著した作家の坂本敏夫氏が、いまもなお約4万人が避難生活を送ってい
る現地に入り、熊本刑務所を訪ねた。その模様をレポートする――

*熊本刑務所へ向かう

4月23日(土)。私は、熊本地震被災避難者のために道場を提供している
熊本刑務所の取材のため現地に向かった。博多から先の九州新幹線は運転
を見合わせていたので、博多で降りて福岡矯正管区(九州沖縄の矯正施設
を監督管理する機関)を訪ねる。

熊本までは在来線で行けたが、熊本市内の宿はすべて満室だったので博多
の知人宅に泊めてもらう。熊本の宿は、全国から馳せ参じるボランティア
のために県・市当局が確保していたということだった。

24日(日)、この日から運転を再開した新幹線で、熊本に向かった。熊本
駅からは豊肥線で東海学園前まで行く。

熊本刑務所(熊本市渡鹿)に到着したのは正午少し前、屈強な若手刑務官
が立哨する表門に立つ。ここが刑務所内に入る唯一の門である。その刑務
官(看守)に取材に来た旨告げる。

ほどなく幹部職員の懇切な対応により取材は叶った。

正面の2階建てタイル張りの建物が庁舎(所長室、総務部門、会議室など
がある事務所棟)で、その東側に間口25メートルの車庫と道場(420平
米)が建ち並んでいる。

*開放は過去に例を見ない

道場では避難者に非常食(乾パン・缶詰など)が配られているところだっ
た。車庫は、護送車・公用乗用車などを屋外に出して、避難者のための物
資置き場、井戸水をろ過し給水する設備や、湯沸し設備が置かれ、避難民
接遇要員・警備要員として15名の刑務官が詰めていた。このうち半数は福
岡刑務所、長崎刑務所など他施設から応援派遣された刑務官である。

16日の未明に襲った二度目の激震(震度7・マグニチュード7.3)により周
辺地域の被害の甚大さを知った明石雅己所長(56歳)は、自己の判断で、
道場を地域住民の避難場所として開設することを命令。さらに受刑者用に
備蓄してある非常食を避難してきた市民に給与することを指示した。

道場は刑務官にとって、特別な場所である。武器を携帯所持しない刑務官
は我が身を素手で守る。護身術、柔道、剣道は職務の一環としての位置づ
けにあり、訓練や稽古は毎日この道場で行われている。刑務所が構内の重
要な施設を避難場所として市民に開放したことは過去例を見ない。

熊本刑務所の収容人員は500名前後で推移している。

ここは、長期受刑者(8年以上)400名を収容する屈指の重警備刑務所である。しかも長期受刑者の約半数が無期懲役で仮釈放の望みがほとんどないという現状に、刑務官たちは彼らの処遇に苦慮腐心している。

先の見えない無期懲役の受刑者でも20年、あるいは30年務めた者が仮釈放で出所する後ろ姿を見れば、何とか正常な意識を保って服役生活を送ることができるのだが、終身刑化している現実は非常に厳しい。

だから彼らは、いつしか妄想の世界に浸るのだ。ここに、無期懲役囚の特徴がある。私の経験から分析すれば、妄想による現実逃避が自暴自棄から逃れる唯一の自己防衛策ではないかと思えるのだ。

*囚人だって地震は怖い

さて囚人にとって地震ほど恐ろしいものはない。施錠されていて逃げ場がないからだ。今回の地震でも、たび重なる激しい揺れに悲鳴を上げる者あまた。房扉を蹴る者も少なからずいたらしいが、全体として大きな混乱は今のところ起きていないということであった。

道場の背後には、行刑区域(囚人を拘禁・処遇する舎房、工場、運動場などがある)を囲む高さ5.5メートルのコンクリート打ちっぱなしの塀が聳えている。

避難民は17日に最大で250人、前日は130人余りがここ、道場で夜を明かした。すべて近隣の住民で家族ぐるみで避難している人たちである。平日はここから通勤・通学、日曜日のこの日は家の片付けなどに出ている人が多く、道場内にとどまっていたのは、50人余り、ご高齢の人が多かった。

この地に40年以上住んでいるという女性は「まさか刑務所のお世話になるとは、夢にも思っていなかった。どちらかというと、迷惑施設だと思っていたが、本当にありがたい」と感謝の気持ちを述べてくれた。

刑務所の造り・設備は、近世の城郭に似ている。塀の外を職員宿舎で囲み24時間体制で非常事態発生の際の警備配置に備えている。また、構内には井戸が掘られ、上水道が断水しても水にだけは困らないように配慮されている。

したがって、この避難場所は飲み水の給水はもとより、道場内ある浴場(一度に7、8人が入浴できる浴槽とシャワーの設備がある)も使える。ちなみに、風呂はガスが使えるようになると同時に提供し、避難民からは大変喜ばれているとのことである。

*刑務所が倒壊しても、なぜか逃げない日本の囚人

刑務所に大きな被害をもたらした大地震といえば、大正12年9月1日午前11時58分に相模湾を震源地とするマグニチュード7.9の関東大震災である。外塀が倒壊した刑務所は以下のとおりだが、地震発生時には一人の逃走者も出していない。

『市ヶ谷刑務所』(現在の東京拘置所の前身)
煉瓦塀180メートル倒潰
炊事所、被服庫  全壊
炊事所煉瓦煙突倒潰

工場2棟 半壊
収容人員 1020名のところ死傷者なし。
炊事は空き地に土を掘って釜を据付ける。水道は断水も井戸水を使用し炊き出し可能

『小菅刑務所』
煉瓦塀全潰
工場13棟全潰
監房7棟、工場2棟 半壊 

収容人員1295名のところ死者3、重軽傷13。
外塀全潰するも混乱に乗じて逃走を企てる者なし。

『豊多摩刑務所』
煉瓦塀倒潰七ヶ所 延べ90メートル
収容人員920人のところ死傷者なし

『横浜刑務所』
煉瓦塀全潰
工場、舎房等建物すべて全半壊後焼失
収容人員1131名のところ死者48名、重傷50名。
当日午後6時半に解放するまで逃走者なし。

『小田原少年刑務所』
煉瓦塀全壊
工場、舎房等建物すべて全壊
収容人員394名のところ死傷なし。
9日に3名逃走するまでは逃走者なし。

なぜ日本の囚人は逃げないのか、明確な答えは見つからず、“日本人だから逃げない”としか言いようがない。

昭和に入ってからは、昭和53年6月12日午後5時14分に宮城県沖を震源地とするマグニチュード7.5の宮城県沖地震で宮城刑務所の赤煉瓦塀60%倒潰、隣接する仙台拘置支所のコンクリート塀40%が倒壊した。

当日の収容人員は宮城刑務所583名、仙台拘置支所109名で死傷なし。逃走者なし。

なお、平成7年1月17日の阪神淡路大震災、平成23年3月11日の東日本大震災では刑務所の塀の倒潰はなかった。

*「災害時には役に立ちたい」受刑者たちは実はそう思っている

関東大震災では横浜刑務所の受刑者が命懸けで救援物資の荷揚げ奉仕をした。これはわが国の歴史から抹殺されていた出来事である。 

震災翌日、瓦礫と灰塵の山と化した横浜刑務所では雨露をしのぐことも、腹を満たすこともかなわぬ囚人たちが我が身の不幸を顧みず、県知事からの救援物資陸揚げ要員出役要請を伝達する典獄(刑務所長)椎名通蔵(しいなみちぞう)に対し、全員立ち上がって「願ってもないこと。やらせてください」と声を上げた。

大阪や兵庫から次々に入港する救援船、そこからの荷役作業は壊滅した横浜港大桟橋で行うもの。足場が悪い上に余震が続く危険極まりない奉仕作業に9月3日から6日までの4日間、延べ520人の囚人が毎日10数時間従事したのである。

この感動的な物語は、拙著『典獄と934人のメロス』に詳細に著し、なぜ関東大震災の歴史から横浜刑務所でおきたことが消し去られてしまったのか、その謎を解き明かした。

*決壊した堤防の修復作業を行ったことも

昭和24年9月23日、長野県下は豪雨に見舞われた。旧長野刑務所西側約300メートルのところを流れる裾花川は濁流と化し、夕刻には数か所が決壊。全職員が出て特別警戒中の午後9時過ぎ、およそ500メートル離れた県庁から使者がやってきた。

堤防決壊個所の応急工事(土のう積み)に囚人1000人を出動願いたいという要請だった。所長は菊池信之丞(きくちしんのじょう)、菊池は病人を除く全受刑者と職員、合わせて860名に出動を命じた。25日未明に刑務所から1キロ先の決壊現場に到着。幅2キロにわたる決壊個所を昼夜兼行4昼夜をもってふさいだのである。

もちろん逃走者はなし。無事故で工事を終えている。

*義援金を送る受刑者たち

全国の受刑者たちからの義援金は、関東大震災の時から寄せられている。何もできない身ゆえ、せめて見舞金・義援金を!という受刑者からの発意によるものである。

阪神淡路大震災でも多額の義援金が寄せられたが、東日本大震災では震災発生後3か月で、8300人から6200万円が寄せられている。

一人あたりに換算すると7500円ほど。作業報奨金が時給7円から48円だから、彼らの実入りの一か月分以上の金額である。今回の熊本地震でも、おそらく全国の受刑者からまとまった額の義援金が寄せられるだろう。

最後に、もう一度熊本刑務所の話に戻るが、刑務所はどこも1週間程度の非常食を備蓄している。

福岡矯正管区によれば、管内施設から非常食の一部を供出させているとのこと。できることなら、塀の中で受刑者の手によって日に三度ごとに調理されている温かい汁物や米麦・副食を炊き出しのかたちで避難民の方々に提供できればいいのだが、それが許されない財務基準がある。食材を購入する国家予算の費目 は『被収容者食糧費』で、被収容者つまり囚人以外には食させてはならないということになっている。

もちろん、非常食もこの予算で買う。厳密にいえば、こちらも受刑者以外への提供は許されないのだろうが、消費期限があり定期的に払い出し、買い替えているところから、この度の処理は「払い出し」とか「管理換え」という帳簿処理を行うのだろう。

国の財務会計基準から見れば、問題のあることだが、それを恐れず、自己の責任で避難民救済を決断した所長には賛辞を送るべきである>(以上)

いやー、実にいい話だ。日本人は「奇跡の民族」なのではないか。もちろん嫌な人もいるのだけれど・・・坂本氏も上記の取材では不快な思いもしている。

<「そこで待て!」

と、いかにも偉そうに高飛車に出る看守は、私に一喝すると庁舎に入っていく。職責に燃えているのだろうが、部外者にははなはだ失礼千万な応対になっている。私が現職の時は温和で公共心のある刑務官を表門の担当に就けたものだ>

それでも「職責に燃えているのだろうが」とかばったりしている。この辺がどうにも日本人だ。好きです、私のニッポン! 極東の隅で愛を叫ぶ。
(2016/5/2)

         

2016年05月02日

◆新井貴浩、通算2000安打達成!

馬場 伯明



2016/4/26(火)17:30にはもう神宮球場にいた。三塁側内野席36列137。

3回表、その真下前方でカープの新井貴浩はプロ野球通算2000安打を見事
に達成した!心から祝福する。(カープファン歴60年の私です)。

「まさか、あのアライさんが・・・」と下手うまの字が印刷された赤いTシャツが売り出されていた。黒田博樹投手(41)の考案らしい。野球下手の新井(さん)の名球会入りには違和感があるという(友情の)ジョークなのか。だが、新井はあと1本をあっけなくやり遂げた。

2016/4/27のスポニチから。「広島の新井貴浩内野手(39)が26日のヤクルト戦で3回に成瀬から敵時二塁打を放ち、誌上47人目の通算2000安打を達成した。2008年にフリーエージェント(FA)権で阪神へ移籍し、15年に広島へ復帰。

FAで離れた古巣に戻っての2000安打達成は新井が初だ。2112試合での到達は大学、社会人出身者では最も遅い。出会った人に愛され、努力する才能に恵まれた男の金字塔を、神宮に詰めかけたファンが祝った」

2016/4/26の神宮球場の左半分をカープファンが真っ赤に染めた。まさに「真っ赤激!」だ。無死二塁、新井が第2打席に入る。アライ(応援)コールが鳴り響き、カンフーバットが打ち鳴らされ、鳴りやまない。

♪赤い心見せ 広島を燃やせ 空を打ち抜く大アーチ 
かっ飛ばせアライ!
ら〜ら ら〜ら アライ ら〜ら ら〜ら アライ
らららら アライ らららら アライ かっ飛ばせ アライ!

あっ、打った!レフト線に糸を引いたようなライナーだ。2塁打、あっと
いう間の2000本目のヒットである。スタンドでは、カープファンの定番、
「♪宮島さん・・」が一斉に始まった。

♪宮島さんの神主が おみくじ引いて申すには 
今日もカープは 勝〜ち 勝〜ち 勝っち 勝ち
(このメロディをお聞かせできないのが残念である)

う〜〜〜〜〜〜 わっしょい・わっしょい わっしょい・わっしょい
今日もカープは 勝〜ち 勝〜ち 勝っち 勝ち
ばんざい ばんざい ばんざい ええええ〜〜い
(私たちは上下左右座席の人たちとハイタッチを交わす!)

新井は悠々二塁に達し仁王立ち。カープのベンチから花束が届けられ、ヤクルトベンチからも、カープに在籍していた福地コーチが渡した。新井は三塁側と左翼スタンドへ花束を高く掲げお辞儀をし、さらに、一塁側と右翼スタンドのヤクルトファンの拍手にも深々と頭を下げ答礼した。

試合はカープが11:3で大勝した。2回の本塁打3連発のエルドレッド・鈴木誠也・堂林翔太、鈴木は7回に満塁本塁打も。また好投したジョンソンなど、ヒーローたちが目白押し。しかし、彼らもこの夜は新井の引き立て役。ヒーローインタビューはやはり新井が指名された。

長いインタビューだった。「丈夫な体に産んでくれた両親、そして、僕の場合はたくさん人にお世話になり、支えられました。『おかげさま』です。そのとおりである。首都大学リーグ(駒大)なのにプロ球団はノーマーク、カープに6位指名で拾ってもらったのだった。

「勝ち試合で達成できてほんとにうれしいです」。「不器用で下手くそだった自分がよくぞここまで、自分のことだけど、入団当時を思い出すと純粋にそう思います」。努力と感謝のインタビューだった。

インタビューが終わり新井は左翼の出口に向かった。報道陣とカメラがあとを追う。三塁内野席のファンに手を振り、レフトスタンドの赤鯉の応援団の声援に両手を上げて応えた。生真面目な男なのである。

三塁側の内野席からは期せずして新井を讃える連呼が起こった。この夜何回目だろう。アライ、アライ、アライ、アライ、アライ〜〜〜ッ!

ところで、黒田博樹投手は次の登板に備え広島にいた(4/30黒田は4勝目を上げた)。黒田と新井の因縁は深い。次は黒田の祝福のエール。

「まさかあの新井が、という感じ。長い間第一線でやってきた証拠。すごいなと思う。(新井と自分は)共倒れというか、そういう時期もあったので、やっぱり感慨深いものがある」(東京スポーツ2016/4/28)。

黒田は阪神からカープへ復帰するに際し「戻らない方がいいのでは」と悩む新井から相談を受け「戻ったらいいじゃないか」と背中を押した。

次はよく知られた話だ。「新井さん(2000本での)思い出の一打は?」に新井が答える。「2005/10/7ヤクルト最終戦の3塁打。この勝ち越し打で、黒田さんの最多勝が決まったのです」。セリーグ最多勝の黒田と本塁打王の新井が並んだ笑顔の写真がある(2005/10/14時事通信)。

多くの人が賞讃のコメントを寄せた。私はスポーツ新聞・夕刊紙等をハシゴした。たとえば、前田智徳。「守りや走塁の力があったわけじゃない。打たなければ終わりの選手が、打力だけで2000安打まで到達したのだから、ものすごいことだと思う」(2016/4/27日刊スポーツ)

以下、各紙面の内容は省略するが、山本浩二、衣笠幸雄、野村謙二郎、緒方孝一(現監督)、大下剛史、松田元(カープオーナー)、鈴木清明(球団本部長)、新藤邦憲(全国広島東洋カープ私設応援団連盟会長)、また、多くの駒大の先輩後輩らの喜びの声の掲載があった(敬称略)。

新井が最も嬉しかったのが家族の喜びであろう。この夜、両親、妻、2人の息子らが最前列で応援していた。目の前で達成。以前新井の妻裕美子さんは母と千葉県に住んでいた。私の友人と家族ぐるみの親交あった。彼が裕美子さんと新井の結婚披露宴で広島に行くと聞き驚いた。

日刊スポーツ(2016/4/27)に裕美子さんの手記があった。「・・私と子どもたちは『貴浩丸』という船に乗っているのだから、どこまでも一緒だし途中で降りることができないの、だからよろしくね、と話したのを覚えていますか。大きな船に乗っているとばかり思っていましたが、実は大きなジェットコースターに乗っていたのですね(笑)」とあたたかい。

この後、新井貴浩は何を目指すのか。2000安打は通過点である。次はまず黒田の日米通算200勝にバットで貢献する。そして、絶対的な目標は2016年のセリーグ優勝と日本シリーズ優勝である。黒田との約束だ。(じつは、黒田、新井は2人ともカープでの優勝経験がない!)

プロ野球も開幕1ヶ月が過ぎた。今カープは投打ともに好調を維持している。勢いがある。首位巨人に0.5差に迫った。

新井も黒田も・・・そして球団と全国のファンも、秋には夢を実現し美味しい酒を飲もう。さあ、やってやろうじゃないか。(2016/4/30千葉市在住)






◆自由化が国土を脆弱にする

平井 修一



自由化とはおおむね競争促進だろう。いい方向へ行くことは多いだろうが、まずいことになるケースもある。

昔は日本全土に縁結びの神様がいて、「いい人見つけてあげるから、オバンサンに任せなさい」と、適齢期の男女を結婚へ導いたものだが、「恋愛の自由化」で、結婚できない、結婚しない人が増えた。

その上、GHQによる「少なく産んで、賢く育てる」キャンペーンと「妊娠中絶の自由化」が進み、結果的に少子高齢化が進んでしまった。大失敗だ。

川口マーン惠美氏の論考「先進国のドイツでしょっちゅう停電が起こるワケ 発送電を分離するとこんなことになる」(現代ビジネス4/29)から。

<*「電気がないと、私たちの生活は全滅よ」

4月14日の夜のことだった。8時半ごろ、自宅で仕事をしていたら、突然、電気が消えた。暗闇の中、目の前のパソコンのモニターだけが、ぼーっと光を放っている。停電だ・・・

なぜ停電になったのか。情報が欲しいが、インターネットが使えない。固定電話も、スマホのインターネットも、モデムがダウンしているので全滅。

さて、どうする? そろそろご飯にしようと思っていたのに、すべて電化なので料理もできない。パンとご飯は冷凍してあるが、電子レンジが使えないので役に立たず。あ、湯沸しポットもダメ。電気がないとお茶さえ飲めないということに気づく。

そうだ、スマホの電話機能だけは生きているので、誰かに電話して聞いてみよう。郊外に住むドイツ人の友達に電話した。

「ねえ、停電してるのよ。テロが起こったとかいうニュース、出てない?」「別に、出ていないわねえ」「真っ暗闇で、何もできないのよ」

「うちも、最近、工事のために3時間電気が止まったけど、確かに、何もできなかったわ。仕方ないから、買い物にでも行こうと思ったら、なんと、それもできなかったのよ。ガレージのドアが電動だったのを忘れてた。電気がないと、私たちの生活は全滅よ」

「そうね。10階とか20階に住んでいなくて良かったわ」

30分ほどすると、電気はパッと点いた。そのあと、インターネットがつながらず少しイライラしたが、モデムを再起動したら直ったのでホッとしたところ、また停電・・・ということが2度ほど繰り返された。それでも1時間後には無事回復。正直言って嬉しかった。

*国の基礎を支えるインフラを市場原理に委ねると…

次の日、この停電についての説明を見ようと電力会社、および送電会社のホームページを探したが、一切何も書かれていない。それどころか、「停電の場合は○×に知らせてください」などとあったので、バカにされたような気分になる。昨夜の停電をなかったことにするつもりか!?

やっとシュトゥットガルト新聞のオンライン版に記事を発見。驚いたことに、それによると、停電はシュトゥットガルトではしょっちゅう起こっている。とくに1月15日の金曜日の午後には、街の中心部が停電して、商業施設が大混乱したという。

前日の停電については、『シュトゥットガルトの一部が麻痺』という記事になっていたので読んでみたが、停電の原因は不明。おまけに、送電会社のスポークスマン談として、「我々は障害に比較的素早く対処したため、停電した世帯の90%に速やかに電気を供給することが可能となった」と、自画自賛のようなコメントが出ていたので呆れた。

ドイツの企業は、100%自分たちに責任があると証明されない限り絶対に謝らないことは知っていたが、電力会社もそうらしい。

停電には、大きく分けて二つの原因が考えられる。一つは発電量が消費量に追いつかない場合。そしてもう一つは、送配電設備の故障だ。電気というものは、供給量が需要を大きく上回っても、下回っても停電する。だから、発電量の調節の方は発電会社の責任。一方、送電設備の管理は送電会社の責任だ。

先進国では、発電会社が随時、電力の需要と供給を合わせるよう緻密な作業をしており、また、予備の電力も考慮されている。だから、電力不足で停電ということは、まずない。

ところが、電力の自由化が行われ、発送電が分離されていくと、先進国でも事情は変わってくる。小規模な事業者が多数参入して過酷な値下げ競争まれば、利益をもたらさない設備投資などは切り捨てられる。電力の安定供給のために誰が自腹を切るのかも曖昧になる。停電の危険が増すのである。

事実、電力の完全自由化の行われた国では、しばらくすると停電が起こり始める。90年代に自由化を行ったアメリカでも、その後、数々の大停電が発生した。とくに2003年に北アメリカ各地で発生した停電は、約5000万人に被害を与え、7000億円の金融赤字をもたらしたと言われている。

電気のように、国の基礎を支える複雑なインフラを市場原理に委ねてしまったツケだ。

ドイツでも1998年より電力が自由化されており、いまや販売会社は1000社を超える。しかし、電気料金は、現在EUで2番目に高い。

*ライフラインを守るという使命感

日本でも、4月から電力の自由化が始まった。電気を作らない人が、電気を売れるわけだ。

だからといって、すぐに停電が増えたり、停電の際、ドイツのように、皆が他人事対応を決め込んだりするとは思わないが、しかし、電気は他の商品のように、仕入れて貯めておけるものではないから、刻々と変わる需要に供給を合わせることが、そうでなくてもとても難しい。

しかも、発送電分離後は、その任を、自前の発電設備を持たない送電会社が担うことになっている。誰が緊急事の予備の発電力をどのように担保するのかも、懸念事項の一つである。

いま停電といえば、もちろん甚大な被害が発生した熊本地域を思う。熊本の被災者が味わった、暗闇の中でいつ終わるとも知れぬ余震に耐える極限状態は、それを経験しない人間には到底わからない。

停電が起こると、日本の電力会社の社員の体の中には、「電力を送り届けなければ」という本能が生き生きと蘇るらしく、熊本には、地震発生と同時に、北海道電力から沖縄電力まで9電力の600名もの社員が、85台もの高圧発電機車とともに続々と集結して、病院や避難所、行政機関などへの送電を行っていたという。

ライフラインを守るという使命感は、彼らの心にDNAのように組み込まれている。頼もしいし、有難い。

しかし、発電と送電がどんどん細切れになっていく将来、今回の熊本でのように、皆が一致団結するという保証はどこにもない。最悪の事態を防ぐため、去年、事業者間の横断連携を担う広域的運営推進機関が発足したが、緊急事の連携に関しては、なおも不安は残る。

そのうえ、日頃の電力安定供給のための投資が発電会社に押し付けられる事態になれば、いつか発電会社は破綻する。そうすれば、災害が起きなくても停電が起こる危険が高まる。家庭の停電など、2時間でも3時間でも大した被害はもたらさないが、日本の重要な産業ラインは、瞬時の停電で壊れてしまうだろう。

九州電力のホームページによると、熊本では土砂崩れなどで鉄塔が倒れたため、大急ぎで新たな送電線ルート作りに励み、その工事が27日には完了したそうだ。また、28日からは、全国から駆けつけていた発電機車も順次取り外し、配電線からの供給に切り替わっていくという。

電気の復旧とともに、一刻も早く事態が収束し、被災者の方々の生活が元に戻ることを祈るばかりだ。

それと同時に、将来、発送電分離となったとしても、成功例であったこれまでのシステムを壊さず、各社がうまく連携しながら、電気の安定供給を担ってくれることを願ってやまない>(以上)

まさに正論だ。電力自由化で国土の強靭化ではなく脆弱化をもたらす危険がある。ドイツでは脱原発という「安定電力から不安定電力への切り替え」で、ナント必要な電力の2倍もの電力設備ができてしまい、電力コストも上がっている。

こういう失敗を「学ぶか学ばないか」が、世界一安全で低価格の原発を目指すか、脱原発で脆弱化しコストを上げるか、の選択肢の違いになる。前方を見て運転するリアリストは前者を、バックミラーと夢を見ながら運転するマルキストは後者選ぶ。

事故を起こしてケガをするのはマルキストで、ドイツの電気代はフランスの2倍である。愚の骨頂だ。産業競争力にも影響するだろう。

<2016年3月にドイツ3州で行われた州議会選挙の結果は、メルケル政権だけでなく、この国のすべての在来政党に強い衝撃を与えた。メルケル(キリスト教民主同盟=CDU)の難民受け入れ政策に反対する政党「ドイツのための選択肢(AfD」が大躍進し、初の議会入りを果たしたのだ。

この内、ザクセン・アンハルト州では、約27万人がAfDを選び、得票率を24.2%に押し上げた。これは、第一党であるCDUの得票率(29.8%)に肉薄するものだ。有権者の3人に1人が、AfDに票を投じた選挙区もあった>(独断時評「メルケル首相に衝撃! - AfDの躍進」3/31)

やっとまともな政党が現れた。このAfDはエネルギー政策でも独自性がある。

<代替エネルギー導入のための補助金が一般税収から回されているので、ドイツの再生可能エネルギー法(EEG)は廃止されるべきであるとしている。他の先進工業諸国の状況を顧みないまま、代替エネルギーの導入拡大を優先したドイツの2020年エネルギー活用目標を党は批判している>(ウィキ)

日本は「国家百年の計」で原発再稼働、新設を進めるべきである。
(2016/4/30)


         


◆言葉から窺う記紀

大江 洋三



古事記も日本書紀も、672年の任甲の乱を制して、即位した天武天皇の勅命によるものである。

ものごとは時代背景を探った方が分かりやすい。紀元後の倭国あるいはヤマト朝廷は、支那各王朝と朝鮮半島で激しい覇権争いをしていて、属邦・百済の救援遠征軍が663年、唐・新羅連合軍に白水江の戦に敗れる大事件も起きている。

船団を組んで、半島に遠征する発想そのものがヤマト朝廷は半島に一定の影響力を持っていたことになる。

朝廷は氏族の台頭で、思うように船団を組織できず、そのぶん百済を見殺しにした形跡もある。

つまり、天皇の統治権は緩いものであった。

事実、6世紀には仏教を廻って曽我氏と物部氏が深刻な争いをして、後の聖徳太子ほか皇族まで巻き込まれている。

最たる事件は、645年の中大兄皇子による崇仏の流れにある曽我入鹿の暗殺事件であろう。

隣の支那では、618年に隋王朝が滅び代わって唐王朝が興きている。7世紀は内外ともに騒々しい時代であった。

●「記紀」の編纂目的は、倭国の真の統治権者は誰か、公文書で内外に知らしめる必要があったからだと考えられる。

日本書紀は天皇の事跡を正調漢文でまとめた「正史」であり、古事記は伝承をやまと言葉(源日本語)で編纂した文学書である。

文学といえども編纂目的がある。

天武天皇の前の近江朝・天智天皇没後のとき、系統譜が焼失しているから、古事記は「天皇」の由緒証明書だと推測している。

天皇は選出的存在ではないから、由緒こそ正統性の証である。

古事記・序2段に天武天皇の編纂目的が記されている。

「諸家の持たる、帝紀及び本辞は、既に誠実に違う。今のときその誤りを正さねば、幾年を経ずしてその旨滅びむとなす」

ここからも、7世紀には天皇家の権威・権力が、十分に定まっていなかった事が窺える。

一方で、天武天皇は各名門の伝承も勅命で纏めさせている。

東洋史の泰斗・岡田英弘名誉教授によると、古事記が完成するまで勅命から200年を要している。名誉教授は正しいと思われる。

古事記は各地の伝承を拾い上げて一本化した形跡もあるから、時間を要したであろう。

出雲の国の出自は、天照大御神の尊い持ち物に由来する。出雲の顔をたてながら、古代より朝廷の権威は出雲より上にあることを示す大らかな漫談的創話である。

この種の創話が随所に登場する。

●本居宣長の解析は、古事記完成後の更にその800年後のことである。ひらがなが開発されたのは古事記完成後のことで、編纂時に間に合わなかった。

ひらがなに依る、世界に冠たる長編小説「源氏物語」が生まれる前のことである。

日本書記も古事記も漢字で書かれことに違いはないが、前者は当時の世界語である漢字仕様で書かれたのに対して、後者は万葉カナで書かれた。いわゆる宛て字(借字)である。

万葉集によると、富士山のフジは「不尽」と漢字を借字・借用した。つまり、発声音に合わせ相当する漢字を引っ張ってきた。

姫(ヒメ)も同じで発声音に合わせ「比賣」と漢字借用した。

事情を知らない女性はカンカンに怒ると思う。

漢字は一字々々に意味があるからだ。逆に言えば、富士や姫は古代より「フジ」「ヒメ」と発声していたことが分かる。

言葉(源音)を変えず文字だけを変えた。この源音を「やまと言葉」という。

古事記は、律令やお教という漢字に対して日本語を守る目的が大きかったと推量している。

●過日、両者の違いについて某所で講釈したところ「訳の解らんことをいう」とお叱りを頂戴したので、いずこも同じだろうと思い、敢えて当メルマガを借用することにした。

古事記を訓読みにすると「ふることふみ」という。

音読みでコジキと発声すると、なんとなく堅苦しく思想書じみてくる。
ふることふみに依ると、

「あめつち初めて発(ひら)けしとき、タカアマハラに初めに成れる神のみ名はアマノミナカヌシ」

原文通り、漢字で表記すると下記のとおりである。

「天地初発之時、於高天原成神名、天乃御中主神」

「アメツチ」「タカアマハラ」などと訓音にして、我々は言葉の意味を知る。日本書紀風に「テンチショハツ」「コウテンゲン」と発声すると、お教になる。

角田忠信医学博士により、我々の脳は母音反応することが実験的に確かめられている。

タカアマハラと発声すると「タカ」「アマ」「ハラ」と我々の脳は母音反応解釈し、辞書を引かなくてもそれぞれの発声印象を足し算して「尊い所」と写実的に理解している。

アマノミナカヌシと発声する場合は、「アマ」「ミナカ」「ヌシ」とそれぞれの発声音に反応し我々の脳は、偉い神様だと捉える。

●やまと言葉は一音々々に意味があると理解し、古事記を最初に解読したのは本居宣長であった。

宣長は、万葉カナの研究者だったので解読可能だった。彼は伊勢の人なので、近江伝承(ホツマ伝)を承知していたことが解釈を助けたと思われる。

古事記の原文をみると、当時の世界語である漢字をいかにして日本語(やまと言葉)と融合させるか苦心惨憺していたことが分かる。

古事記の序第3段から、抜粋意訳すると下記の通りである。

「上古のとき、言意(ことばこころ)は朴(すなお)で、漢字で句や文を構えることは難しい。然れども、漢字の訓理解は既に広まっているので、言意に及ばないが用いた。訓だけでは、いたずらに長くなるので音・訓併用にした」

結論を先に言えば、訓は漢字の意味表現で、その音が「やまと言葉」という事になる。
●過去のことだと簡単には片付けられない。

我々の小学生時代は「英語を公用語にしよう」とかの理由でローマ字を覚えさせられた。

世の中もローマ字で溢れた。鉛筆の硬度もH付きになって今日に至っている。

いまこうして、ローマ字変換で文を表しているのは当時の教育のおかげである。

そういう流行りが7〜8世紀にもあり、身分の上下なく言葉心(詩)を「とりあえず」漢字で表わした。知識人は夢中で仏教漢字を模写した。現在も当時と似ていて、科学研究者の論文は英語にしないと価値が少ない。

ここ10年、日本では研究者論文の数が逓減しつつある。

それは英語論文に馴染めない者が多数いることを示すもので、頭脳が衰えているわけではない。

いまから、凡そ1000年前カタカナや平仮名を開発してやまと言葉(日本語)を発展させた。カタカナは法律や行政用語(男文字)、平仮名は文学用語(女文字)として日本語は発展した。

今後は人口知能が英語仕様を助けるであろう。話し言葉と異なり論文体なら、精度の高いものになると推測している。

漢字を訓理解して熟語を作るが如である。

世間を賑やかせた小保方晴子氏のスタップ細胞問題も、男達がノーベル生理医学賞に幻惑されて、英語論文を急ぎ過ぎて誤ったと理解している。
(H28.4.30)


  


2016年05月01日

◆「中国の夢」を煽り続けている

村井 友秀



日本軍に押され続けた日中戦争

日中戦争が拡大していた1938年に、毛沢東は「弱い中国」が「強い日本」に勝つ戦略として「持久戦論」を書いた。「持久戦論」によれば、日本は強力な帝国主義国家で、軍事力・経済力は東洋第一である。しかし、国土が小さく、人口、資源が欠乏し、長期戦には耐えられない。

他方、中国は半植民地・半封建国家で軍事力・経済力は日本に及ばない。しかし、国土が大きく、資源が豊かで人口・兵力が多く、長期戦に耐えることができる。したがって、長期戦になれば日本は敗北する。

また、「持久戦論」は戦争を3段階に分けている。第1段階は、日本軍の進攻と中国軍の防御の時期である。日本軍は大都市や交通線を占領する。第2段階は、日本軍と中国軍の対峙(たいじ)の段階である。

日本軍の兵力不足と中国軍の抵抗により、日本軍は進攻の終末点に達する。この段階で中国は弱者から強者に転じる。第3段階は、日本軍の退却と中国軍の反攻の時期である。中国軍は最終的に日本軍を殲滅(せんめつ)する。

すなわち、毛沢東の軍事戦略は、敵が強い時には戦わず、敵が弱くなったときに一挙に殲滅するという戦略である。日中戦争の実態を見ると、共産党軍は日本軍との戦闘よりも重要地方都市の占領を優先し、国民党の地方軍閥は対立抗争を繰り返していた。共産党軍は日中戦争の主要な戦闘には参加せず、1937年の上海戦、38年の徐州戦、武漢三鎮攻防戦、その後の長沙戦にもビルマ戦線にも現れなかった。
 
38年には徐州など華北・華中の主要都市は日本軍に占領された。さらに、日本軍は44年から45年にかけて日中戦争の中で最大規模の「大陸打通作戦」を実行し、鄭州、洛陽、長沙を占領した。中国の戦場では45年になっても日本軍は優勢であった。
 
しかし、米ソの対日戦争で日本軍が崩壊し、日本は戦争に敗れた。その結果として中国戦線でも日本軍は降伏した。毛沢東の軍事戦略は現実ではなく夢であった。

毛沢東が徹底した思想教育

日中戦争における毛沢東思想の意義は、共産党軍兵士に自らの戦いが正義の戦いであり必ず勝利するという信念を植え付け、共産党軍の士気高揚に大きく貢献したことである。

近代中国では、兵士は略奪暴行を目的に戦うならず者であると見なされてきた。蒋介石の軍事顧問であった米国陸軍中将は国民党軍を「自分のことしか考えない、ならず者の集団である」と評価していた。初期の共産党軍兵士も軍閥軍と同様に、遊民無産階級出身者が多く、各地で略奪暴行事件を起こした。

しかし、毛沢東は徹底した思想教育と厳しい軍紀によって、ならず者の貧民の集団を、厳正な兵士の集団に変身させた。

 日本軍が降伏した後、共通の敵を失った共産党と国民党の間で内戦が再発した。48年から49年にかけて三大戦役といわれる大きな戦いがあり、共産党が勝利した。いずれの戦役を見ても数的に共産党軍が優勢であり、勝敗は優勢な敵を目の前にした国民党軍の戦意が崩壊したことによって決着した。

三大戦役によって国民党軍は数十万人の兵士を失ったが、その7割は逃亡、投降、寝返りであった。蒋介石は日中戦争の中で、「戦争の勝敗を決する要素の中で武力が占める割合は多くとも1割から2割であり『精神によって物質に勝つ』ことができる」と述べていた。精神力に欠ける国民党軍が勝つチャンスはなかった。

近代中国では、兵士は略奪暴行を目的に戦うならず者であると見なされてきた。蒋介石の軍事顧問であった米国陸軍中将は国民党軍を「自分のことしか考えない、ならず者の集団である」と評価していた。初期の共産党軍兵士も軍閥軍と同様に、遊民無産階級出身者が多く、各地で略奪暴行事件を起こした。

しかし、毛沢東は徹底した思想教育と厳しい軍紀によって、ならず者の貧民の集団を、厳正な兵士の集団に変身させた。

日本軍が降伏した後、共通の敵を失った共産党と国民党の間で内戦が再発した。48年から49年にかけて三大戦役といわれる大きな戦いがあり、共産党が勝利した。いずれの戦役を見ても数的に共産党軍が優勢であり、勝敗は優勢な敵を目の前にした国民党軍の戦意が崩壊したことによって決着した。

三大戦役によって国民党軍は数十万人の兵士を失ったが、その7割は逃亡、投降、寝返りであった。蒋介石は日中戦争の中で、「戦争の勝敗を決する要素の中で武力が占める割合は多くとも1割から2割であり『精神によって物質に勝つ』ことができる」と述べていた。精神力に欠ける国民党軍が勝つチャンスはなかった。

国民の不満そらすスローガン

北京にも共産党軍は無血入城したが、意気揚々と北京に入城した共産党軍の先頭を切ったのは、赤旗を掲げた旧日本軍の九七式戦車であった。専門知識のレベルが低い国共両軍には、降伏後、多くの旧日本軍将兵が軍事顧問として参加していた。

結局、近代化が遅れた軍閥軍が中心である国民党軍や戦闘力が低いゲリラ中心の共産党軍は、日中戦争当時、世界有数の軍事大国であった日本軍に勝つことはできなかった。中国人が熱狂する中国の夢も外国人には無意味である。

しかし、国共内戦は、問題だらけの現実を守ろうとする腐敗した国民党軍兵士と、現実にはあり得ない完全無欠の共産主義社会の実現を夢見る共産党軍兵士の戦いになった。国共内戦は両軍兵士の戦う意志の差で勝敗が決着した。

ただし、政権を取った後の共産党は現実の体制を守る側になったが、さまざまな国内矛盾を解決することができず、現実の国内問題から国民の目をそらすために、夢を掲げる戦略から脱却することができなかった。

数年以内に経済力で英国を追い抜く「大躍進」(58年)政策から、反革命分子を打倒し正しい社会主義文化を創生する「文化大革命」(66年)、皆が金持ちになる「改革開放」(78年)、そして超大国の復活を目指す「中華民族の偉大な復興」まで、共産党は国民を熱中させる「中国の夢」を煽(あお)り続けているのである。(むらい ともひで・東京国際大学教授)

産経ニュース【正論】2016.4.29