2016年01月19日

◆将来の台湾像を示せなかった

宮崎 正弘 


<平成28年(2016)1月18日(月曜日)通算第4781号 >

〜台湾総統選挙で蔡英文が地滑り的大勝となったが
  国民党の敗因は、将来の台湾像を示せなかったからだろう〜

台湾取材から還りました。

町は醒めていて選挙をやっているかどうかも分からないほど静かでした。直前の票読みでも蔡英文の大勝は分かっていましたが、予測を超えて、56%(直前の情報では51%)、しかし25%とみられた国民党も6%伸ばして31%をはじき出しました。

国会議員選挙が同時に行われ、民進党が過半数を取れず、学生運動の新党「時代力量」との「連立政権」を組めるか、どうかというのが見所でした。

ところが蓋を開けると、民進党だけで単独過半、だれも予想しなかった数字でした。

日本からも総勢200人近い取材団でしたが、日頃の取材の積み重ねが希薄希薄なので、どの記事も皮相ですね。

問題は、これからです。

北京は早速にも「蔡英文政権は台湾独立を完全に引っ込めなければ両岸関係はうまく行かない」などと脅迫めいた反応をしています。

蔡英文次期総統は、まず周囲を固め、四つ派閥のいがみ合いを克服し、党内をしっかり纏めながら、国会の審議を円滑化し、何から先に実践してゆくのか。

国民に何をアピールするか、「現状維持」と言っているだけでも、年末あたりに身内からも批判を浴びるかもしれません。

なにしろ今度は「勝ち過ぎ」でした。慢心を慎み、ふんどしを締め直すことが大事ではないかと思いました。

◆脆弱な民主主義と敵対勢力

池田 元彦

 

第1次世界大戦後のドイツの憲法は、優れて民主的なワイマール憲法だ。共和制、任期7年の大統領・議院内閣制、主権在民、満20歳以上男女平等普通選挙、経済活動の自由、労働者団結権や団体交渉権等々を掲げている。直接選挙で選出の大統領は、大きな権限を持っていた。 敗戦後の混乱や共産党の跳梁もあり、大統領が公共の安全及び秩序回復為に、武装兵力による介入や、人身の自由、住居の不可侵、信書・郵便・電信電話の秘密、発言の自由、集会・結社の権利、所有権の保障等を一時的に停止すること迄出来る程の大きな権限だった。

民意反映の民主的な方法として比例代表制議員選挙としたが、小党分立の政党政治混乱を来し、ヒンデンブルク大統領は先の強権発動を繰返し、後のヒトラーはこの大統領緊急命令権と議会解散権を逆用して、総統迄登り詰め独裁体制を強固にするに至ったのだ。

ヒットラーは総統として、第2次世界大戦を惹起し、狂気のユダヤ人虐殺を遂行した。言いたいことは、正邪・善悪・賢愚の議論ではなく、多少の乱暴もあったが、ヒットラーは民主的なワイマール憲法の下で、国民の支持を得て、正式な手続きで合法的に総統になり、彼の施策を実現したのだ。

戦後、ユダヤ人虐殺等はナチス・ヒットラーが単独にやったのであり、一般国民は無関係だったと強弁するが、当初に於いては圧倒的な民意がヒットラーを支えた。ドイツ国民も責任はあるのだ。

しかし、ここでの問題は民主主義の脆弱性であり、欧米、日本の民主主義にも同じリスクがあることだ。敵はヒットラーではなく、匿名の反日日本人達の日本崩壊への執念深い長期戦略に基づく諸活動だ。就中共産党、日教組、全労連、及びその配下に有る国会議員、官僚、そしてNPOだ。

ヒットラーはワイマール憲法の下で総統になった。反日日本人は現日本国憲法を死守させ、国防を蔑ろにし、反日憲法諸条項に基づく反日諸法令を維持、或は更に改悪する運動を公然と続け、崇拝する国の日本侵攻、占領、及び植民地支配を本気で想定していることに気付くべきだ。

即ち、共通することは、民主主義憲法下の社会は、反対勢力であってもその存在を容認し、存分の反対意見表明も拘束されることなく自由に行える。政策でなく政府に反対であっても法令に違反しない限り、長期的戦略に基づく政府転覆の思想も、活動も気兼ねすることなく許されるのだ。

不思議なことは、反日連中の崇める国は全て一党独裁、選挙権もなく、自由平等処か、人権無視の人治国家で他国を武力等で強圧し、支配層が巨富を占有し、庶民は最低限の生活に喘ぐ国々だ。自由な意見処か些細な事で拘束、監禁、拷問、暗殺等を法令無視で行う国だ。

自己矛盾には、最早狂気の沙汰のカルト宗教の熱心な信者には通じない。日本の自由民主の手続き制度を悪用し、古き良き習慣・伝統を取り崩すのなら、本来は逮捕し国外追放出来る仕組を確保するしかない。逮捕、国外追放が可能となる反日法、スパイ防止法は最優先の課題だ。

何が言いたいか。民主主義には、斯様な実に危険な欠陥がある。30年以上も前「民主主義の終焉」という著書でJ.フランソワ・ルヴェルが、「民主主義は危険が致命的であっても明白なものにならない限り目を覚まさない」と警告をしているが、誰も気付かない。誰も対策を講じないのが現状だ。

「敵は、市民の特権である合法的な反対や批判の下、民主主義そのものを破壊する意図や、絶対権力等の追及を巧みに隠して」工作中の事実に、国民は覚醒しなければ、日本は乗っ取られる。



◆私の「身辺雑記」(304)

平井 修一



■1月16日(土)、朝は室温11度、快晴、ハーフ散歩。寒い。昨日から靴下は2枚。子・孫で朝から賑やか。120デシベル。N母子の弁当も作る。

カミサンは機嫌よくさえずりっぱなし。朝の1時間で小生の1年分はしゃべる。

2歳女児「ライオンはガオーって言うんだよ」
カミサン「じゃあ亀さんは?」
2歳女児「もしもし」

モーモー牛さん、モシモシ亀さん。座布団5枚だ。2歳にして大喜利。将来は落語界のプリンセスか。

間もなく65歳になるからペンネームを厨房修一、厨坊修一あたりにしたらいいかもしれない。ただ「平井修一」で検索すると9000件ヒットする(有難いことにあちこちで引用されている)から改名する必要性は全然ないのだが。ま、ゆっくり考えよう、どーでもいいが。

台湾の投開票日だが、こちらは大いに気になるな。『台湾の声』から。

<在日台湾同郷会声明:台湾の民主のために投票を

95年前、日本の東京で台湾議会設置請願運動が起きた。第2次大戦後、中国国民政府が台湾を接収して、台湾は2・28事件を経験し、引き続き白色テロ期が始まった。1992年まで、台湾人は、人権・民主・自由がないという恐怖をその身をもって経験し、夜、安心して眠ることが出来なかった。

台湾は、また、長い間、政党結党の自由を持たなかった。野百合学生運動を経て、1992年にやっと立法院の全面改選が実現し、1996年になって総統直接選挙を、2000年に政権交代を実現した。台湾が今、手にしている民主は、いわば、台湾の百年来の夢であり、あれほど多くの尊い命と引き換えに得たものである。

今、まだ、正義への移行が実現していない中で、旧勢力が不当に擁する資源を用い、あるいは司法を濫用し、台湾の民主を阻害している。それどころか、民主を許さない国家ないし勢力と組んで台湾の民主・人権を阻もうとしている。

今日は台湾の民主を祝う日と言える。もしかすると大学の期末試験が多少なりとも大学生の投票の機会に影響を及ぼすかもしれないが、我々は必ず投票に行かなければならない。そうしなければ台湾の民主を守ることが出来ないのだ。

我々は、台湾の民主・人権を尊重する候補者が当選し、国会の大多数を占め、正義の移行を実現することを願う。そうやってこそ、恐怖の中から脱出し、安心して生活することができるのである。

我々、在日台湾同郷会は既に多くのメンバーが帰国し投票に備えている。
また日本の国会議員が、台湾総統選挙国際監視団に参加していることに感謝するものである。

我々は、中国に対して、手出しをしないように忠告する。歴史も自由な選挙も共有しない中国共産党には、台湾人の民意を理解することは不可能であり、ただ、台湾人の反感を招くだけである。

また、国際社会に対し、これから台湾が示す民意を尊重し、台湾の民主的な選択を支持すると声明するよう呼びかける。そうすることで、負けを認めようとしない勢力ないし特定の国家が台湾で混乱を起こそうとするのを阻止することができるのである。

最後に、台湾の国軍および治安情報当局に対し、台湾が新総統を選出した後、その民意を尊重し、全力で、台湾の新総統および台湾社会を守り、負けた一方が国家の安全を損なうことを決して許さないよう呼びかける。

台湾の民主万歳! 2016年1月16日 在日台湾同郷会会長 邱文章>

泣けるなあ。我々は歴史の瞬間を目撃しつつある。日台は兄弟姉妹だ。Viva Formosa、麗しの島! 李登輝先生の蒔いた種が今ヒマワリの大輪となって開花する。

昼は長男一家も参戦しラーメン9人前!(新記録)、夜は大鍋2つでタコ入りオデン。結構な運動量だった。

■1月17日(日)、朝は室温11度、快晴、ハーフ散歩、寒い。フォーカス台湾1/17から。

<台湾の立法委員選:民進党、初の単独過半数 国民党は議席大幅減、台湾の総統選:日米、初当選の蔡英文氏に祝辞>

昨晩、日本李登輝友の会・台北事務所は蔡英文全国競選総部からこう報告した。

<見てください、この大群衆。民進党本部前は蔡英文総統の誕生を祝う支持者で立錐の余地もありません。新しい台湾の到来です!>

興奮が伝わってくる。

「両岸は現状維持、中共とは距離を置く」という民進党が勝って中共は改めてがっかりだろう。中共は締め付けるか・・・今の経済状態ではそんな余裕はないと思うが。台湾と日米との絆は強まり、中共包囲網は強まるはずだ。中共はますます暴れ、孤立を深めるに違いない。

台湾の内閣は近く総辞職するが、馬英九が5月初めまで居座るのは嫌な感じ。悪さをしそうだ。

さて、中共。川島博之/東京大学大学院農学生命科学研究科准教授の論考「中国の未来を悲観的に見なければならない理由 農民を豊かにできなければ真の大国にはなれない」(JBプレス1/14)から。

<*今後の中国は「農村」にかかっている

筆者は農業・農村から中国を見てきたが、今後、中国が成長を続けて米国をもしのぐ大国になるかどうかは、その農村政策にかかっていると考えている(「農業」政策ではない)。

中国を人口13億人の国と見ることは適切ではない。中国は都市戸籍を持つ4億人と、農民戸籍である9億人によって構成されている。そして、農民戸籍を持つ人の中の3億人が都市に出稼ぎに出ている。その多くは「農民工」と呼ばれ、工場で働いている。

彼らを低賃金で働かせることによって、中国は安い工業製品を作り出すことに成功した。それが奇跡の成長をもたらしたが、その果実は都市戸籍を持つ人々が独占してしまった。日本に爆買いにやって来る人々は、ほぼ全員が都市戸籍である。

このまま農民を農民工として働かせていても、一向に農工間格差を是正することはできない。この先、農民を豊かにするために残された道は、農村にサービス産業を起こすことだ。現在、どの先進国においても産業の中心はサービス産業である。

*一向に埋まらぬ戸籍格差

そのような目で見ると、中国の未来は限りなく暗い。農民を馬鹿にしてきたことのつけが回って来たとも言ってもよい。

そもそも、「都市戸籍」「農民戸籍」などと言って、戸籍によって人を区別することがおかしい。戸籍制度は共産党が作ったものだが、このような制度ができた背景には、農民を一段下の人間として見る中国の伝統があった。だが、農民をないがしろにしてきたことは、中国が経済発展を続ける上で大きな足かせになっている。

国務院人口調査(2010年)によると、中国の大都市(城と呼ばれる)の人口は4億人であるが、そこに住む人の22%は大学を出ている。23歳に限って見れば大卒の割合は42%にもなる。一方、約6億人が住む農村(郷と呼ばれる)の大卒割合は2%に過ぎない。23歳に限っても8%。都市と農村の教育格差は大きい。

工業が発展する際には勤勉な人材が求められる。学歴は中卒や高卒程度でも十分だろう。しかし、サービス業が発展する際には創造性が豊かな人材が不可欠だ。それには高度な教育が必要になる。

中国の未来を悲観的に見なければならない理由が分かるだろう。都市と地方の教育格差が中国ほどではない日本でも、地方にサービス産業を根付かせることに苦労している。それを考えれば、大卒人口が2%でしかいない中国の農村にサービス産業を育成することは不可能に思える。

*岐路に立つ中国

マクロな観点から見ると、戸籍制度によって都市住民と農民を峻別した中国は工業化に適した社会であった。しかし、農村部でサービス産業が発展し難い社会になっている。その結果として、米国を上回るような国になることができない。

米国は田舎にもそれなりに教育が行きわたり、規制緩和が進み、言論や報道の自由もある。サービス産業が発展するインフラが整っている。それに対して、中国の農村部は教育の普及が著しく遅れ、かつ規制が多く、言論や報道の自由がない。そんな状況でサービス産業が発展することはない。

農村部の教育に多額の投資をするなどして格差の縮小に勤めれば、少々回り道になっても中進国の罠にはまり込むことなく、少しずつ成長を続けることができるだろう。しかし、農民を馬鹿にして彼らを低賃金労働者としてしか見ないような態度を貫けば、中国がこれ以上に発展することは難しい。

工業化が一段落した現在、中国はまさに岐路に立っている。2016年は中国が今後どのような道をたどるかを見極める上で重要な年になるだろう>(以上)

サービス産業(3次産業)とは一般的に宿泊、レジャー、金融、教育、情報、医療、レンタル、専門技術、アウトソーシング、郵便、運輸(物流)、交通、通信、外食、エネルギー、エンターテイメント、コンサルティングなどを指す。

確かに「真面目に黙々と手を動かす」製造業(肉体労働、労働集約産業)と違って、サービス業は専門知識や専門技能、マーケティング能力などが求められるし、第一、サービスを必要とする市場も必要だ。日本の地方だって難しいのだから、中共の農村部にそれらを期待するのは無理だろう。

2013年の就業人口(ILOなど)は日本では1次産業(農林水産業など)3.7%、2次産業25.8%(製造業)、3次産業70.5%。中国はそれぞれ31.4%、30.1%、38.5%だ。中国での3次産業は都市部で発展しても地方の農村部では発展しそうもない。

ちなみに米国はそれぞれ1.5%、17.5%、81.0%だ。3次産業はシンガポール81.4%、英国80.2%、ドイツ70.8%など。付加価値と生産性が高い3次産業が伸びないと国家は成長しないということだ。

格差を示すジニ係数は0.4以上が社会騒乱の多発する警戒ラインとされるが、「中国では、2010年にはジニ係数が0.61(西南財政大学)、2012年には0.73(北京大学)と格差が拡大した。すでに“危険水域”に突入していると考えられよう」(澁谷司/拓殖大学海外事情研究所教授)。

中共は痛みを伴うリストラをしないと未来はないが、それをすれば易姓革命になりかねない。いずれにせよ経済低迷で数年間(最低でも3年)は苦しむだろう。内政危機を戦争に転化する可能性は高まっているのではないか。

■1月18日(月)、朝は室温12度、寒い、大雪、散歩不可。雪国の人からすれば何ということもないが、慣れていないから転倒する人が少なくない。山と都心を結ぶ電車は一部運休とか。

中共が禁書とする書籍・雑誌などを売る香港の書店関係者5人が中共に拉致された模様だ。一国二制度は嘘だったということ。韓国も似たようなもので自由・民主・人権・法治はない。ウィキで「禁書」について調べてみた。

<中国では秦の始皇帝による焚書が余りに著名であるが、その後2000年、現代に至るまで禁書政策は、歴代の王朝によって繰り返し施行され続けている。

記録にある最古の例は、戦国初期の秦国で行なわれた禁書である。秦の天下統一後の焚書坑儒の反動から、前漢代は一転して開放的な政策がとられた。禁書が復活するのは後漢代になってからであるが、この時に禁止されたのは、予言的な内容で盛行した讖緯の書であった。

続く魏晋南北朝時代も、讖緯の書をしばしば禁じた外、廃仏時の仏書や道教経典の禁止などを除けば、長期間にわたる禁書は見られなかった。隋唐代に至っても、同様の傾向が続き、会昌の廃仏などの一時期を除き、大掛かりな禁書は見られない。

宋代以降、時代の変化に応じて、禁書の範囲は拡大する。黄庭堅や蘇軾など旧法党の文人の文集が、新法党と旧法党の政争により禁書の措置を受けたが、これは前代までには見られないことであった。元朝は、讖緯の書や偽撰と認定した道教経典を禁止したなどの事件が見られる程度である。

明代、思想的な書物のみならず、『剪灯新話』などの多くの小説の類も禁書処分を受けた。明末の思想家李卓吾に至っては、その名も『焚書』などの著作によって人心を扇惑させたとして、最後は遂に獄死し、著書は全て焼却処分を受ける程の弾圧を受けた。

清朝の禁書は更に厳しさを増す。これは、同じく北方の民族が興した王朝である元とは対照的である。清代の禁書を「文字の獄」という。歴代の皇帝は絶えず禁書政策を発し続けていたし、その輝かしい文化政策も反面、文化弾圧政策としての一面を持つものであった。一大叢書である『四庫全書』の編纂が、それである。

その編纂過程で、世に流通が許された書物を確定した。陽明学の書など、あるものは本文を改変して四庫全書に収録し、価値の低い書物は目録にのみ記載し、目録に記載されなかったもののうちからブラックリストを作成して禁圧するという措置がとられた。

現代中国でも中国共産党に対する批判や歴史的事件などの書籍・伝記などは、社会秩序に反するとして中国本土では違法書籍となる場合がある。香港を除く中国国内では、文化統制政策のもとに国務院直属の新聞出版総署が各省・自治区・直轄市の各新聞出版局に方針を通達し、発禁書籍リストを作成、公安関係機関と連携して取り締まりを行なっている。

2012年5月、上海で起きた違法書籍の販売・所持事件では、違反者に5年5カ月〜6年の懲役と罰金が課せられ、違法書籍は没収の上、焼却処分されている。

*有名な禁書

歴史上有名な禁書行為としては古代中国の始皇帝による焚書、近代のカトリック教会による禁書目録の作成、ナチス・ドイツによる政治的禁書および焚書、中国の文化大革命における禁書・焚書などがあげられる。

また大規模なものではないが、李氏朝鮮がその成立において儒教とは相容れない問題があったため、明で出版された「明紀輯略」等を禁書とし、国内への搬入を拒むだけでなく、明にその処分、訂正を外交的に要求していたという例もある>(以上)

GHQは日本占領期の7年間、厳しい言論統制と焚書で歴史と真実を歪め、時には隠蔽した。風刺週刊誌を襲ったイスラム過激派は狂気ゆえだが、香港の書店まで弾圧するのは中共の焦りゆえだろう。書店には「中共の不都合な真実」が詰まっていたのだ。

皇帝と紅い貴族が支配する、前近代の封建独裁国家。中共王朝は末期的である。(2016/1/18)

          

◆共産主義国家に市場経済の本質は理解不能

渡辺 哲也



株式バブルが崩壊してから、実体経済に反映され顕著化するまでに6カ月程度かかる。中国の株式バブル崩壊が明確化したのは昨年7月8日だった。それから約半年後が現在ということになる。

経済にとって、お金とは血液であり金融市場や銀行は心臓だ。株式の暴落や金融不
安は心筋梗塞のようなものであり、これが起きると血流が止まり末端から壊死してゆ
く。国家も企業も赤字だけでは破綻しない。その直接的破綻原因は資金ショートであ
り、黒字でも手元資金が足りなくなれば破綻する。今回のバブルの崩壊と金融不安は
これを決定づけるものだ。

                 ◇

 さて、中国の経済だが、共産主義による計画経済と自由主義による資本主義経済の
良い所採りをしてきたものであり、経済理論からすれば最初から論理的には破綻して
いる。共産主義であれば資産は全て国有であり、株式市場が成立するわけがない。資
本主義であれば、計画経済は許されず、市場への国家による極端な介入は認められな
い。しかし、強引に矛盾を抱えた経済政策を行ってきたのが中国の実像であり、これ
が破綻しつつあるのが現在だ。

 中国は拡大した経済を武器に世界的影響力の拡大に邁進した。BRICs銀行やアジア
インフラ投資銀行(AIIB)などがその典型であり、人民元の特別引き出し権(SDR)
構成通貨入りもその結果だ。これには「中国が自由化を進め市場を開放し、ルールを
守り大国としての責任を果たす」という大きな前提が存在した。成長余地が少ない先
進国にとって、膨大な人口を抱える中国市場が自由化し開放されれば、自国産業の参
入が容易になり利益につながるからだ。

 しかし、それは最初から幻想に過ぎなかったともいえる。何故ならば、自由化と開
放を経済分野だけで行うことは困難であり、それは支配者である中国共産党とその幹
部を否定することになる。

 世界一の格差と階級が存在する国、それこそが共産党が独裁する中国の現状であり
実態だ。たとえ、民間企業であってもそれは共産党幹部や役人たちがオーナーであ
り、利益を独占している。たとえ、外資系企業であっても、ほとんどがそのような地
元企業との合弁だ。自由化は、その基本構造を破壊するとともに、国家統制と一種の
粉飾と汚職で成立している中国そのものの否定する。

 そして、今世界の投資家達は経済的政治的リスクが高まった中国からの離脱を進め
ている。だからこそ、人民元と株価が連動する形で暴落し、外貨準備が一気に失われ
ている。これに対処するため、中国当局は株式に対する売り規制やドル買いに対する
為替規制を強めているが、逆に投資家の不安と離脱を煽る結果になっている。

 自由に売ることができない株式市場など価値はなく、自由に売ることができない通
貨には価値がない。これまで計画経済を是としてきた中国の当局には、この市場経済
の本質を理解できないだろう。

                ◇

わたなべ・てつや 経済評論家 日大法卒業。貿易会社に勤務した後、独立。複数の
企業運営などに携わる。著書は「突き破る日本経済」など多数。45歳。愛知県出身。


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【高論卓説】中国版「満鉄調査部」を創設せよ 中国研究員が“仰天”提言
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一路」構想加速に向け写真あり

産経ニュース【高論卓説】2016.1.17
              (採録: 松本市 久保田 康文)

◆続々「友とのメール」そのB

 
浅野 勝人(安保政策研究会理事長)


<極似 = 頼朝 と 太宗 (唐2代皇帝)>

吉川英明さん、文豪・吉川英治が父親でなければ書けない生き証人のコメントを有難うございました。まことに貴重なメールをいただきました。

義経と泣きの涙で別れ、都に残った静(しずか)御前(ごぜ)(義経の側室)は、頼朝の命で身柄を鎌倉に送られます。かの女は義経の子を身籠っていました。静を預かった安達新三郎は、「女子なれば、構いないが、出生の子が男なれば、処分を要する」という頼朝の底意を知っています。

「・・・あわれ、女子であれよ。産まれるお子が、女子でさえあれば」と安達は人知れず、祈っていた。

― だが、月満ちて、生まれた子は、男であった。
やがて、頼朝の内示があった。
「― 反逆人義経の胤(たね)、男子とあっては、将来の禍(か)因(いん)。芽のうちに摘むを可(よし)とする。襁褓(きょうほう)(むつき)にくるんで、由比ヶ浜に投げ捨てよとの御諚(ごじょう)である」と厳達された。

「こよいの、うちに」
と、事も急な、厳命なのだ。(19巻、216頁)

家の子郎党が櫓を漕ぐ小舟に乗った安達新三郎は、重石(おもし)を海に投げ捨てて、「重石をつけ、沖に沈め参らせた」と検視の武者たちを誤魔化して、赤子を助けます。

そして、浜辺で自害しようとする静を止めて、「これだけは、天地にちかって、たれにも告げまいとしていた一事を、かれは、静にだけもらした」

まもなく、かの女は、この砂丘から、姿を消していた。(238頁)

作者は、その一部始終を、旅の途中、近くで野宿していた西行法師に見届けさせます。

「・・・げにも、こよいのお立場は、生涯の御難儀でもありましたろうに、ようありがたい御処置をとられたものかなと、あの木陰にて、伏し拝まれていたことでございました。−さきに、ここを立ち退いた静御前が、再生の光に会うたのはいうまでもありますまい。

いつまで続く来世のやみかと嘆かれていたわたくしなども、ああまだ世は廃(すた)りきったわけではない。おん許(もと)のような御仁もおられると、人事(ひとごと)ならず、うれしくて、お礼を申しあげずにはおられませぬ」

吉川英治は、好きな歌を詠みながら流浪の旅を続ける西行法師を久々に登場させて、主君の命に背いて義経の胤を助けた安達新三郎清隆を「一場(いちじょう)の浄土」と称賛させます。

李(り)淵(えん)は、文武に優れた3人の息子の力添えで唐王朝を建国して、初代皇帝「高祖」となります。ところが、建国早々の王朝は、皇太子の李(り)建(けん)成(せい)派と次男の李(り)世(せい)民(みん)派に分かれて、激しい勢力争いが起こります。人望の厚い皇太子は、帝位を継ぐことを約束されていましたから、李世民は兄を亡き者にしない限り帝位を奪うことができません。

李世民はクーデターを決意します。参内する兄・李建成と弟・李(り)元吉(げんきち)を待ち伏せして、だまし討ちにします。李世民は兄と弟を殺したばかりではありません。兄と弟には、それぞれ5人の子がいましたが、1人残らず殺してしまいました。中国史で知られる「玄武門の変」(626年6月)です。

李世民は、父親を退位させて、唐王朝第2代皇帝に即位して「太宗」と名乗り、元号を貞(じょう)観(がん)元年と改めます。

ところが、皇帝となった太宗は、公平な人材の登用と質実な政治姿勢を貫き、果敢な決断力を駆使して善政を施し、唐289年の礎を確立します。中国では、在位23年に及んだ「貞観の治」は理想的な時代と評価されており、太宗は名君の一人に数えられています。

後に、歴史家呉(ご)兢(きょう)が太宗の政治理念をかいた「貞観政要」は、古今を通じた名著です。(詳細:浅野勝人著「北京大講義録 日中反目の連鎖を断とう」<NHK出版> 第7章:草創と守文と孰(いず)れが難き)
ただ、太宗が中国で“いまいち人気がない”のは、兄弟殺しよりも、比類稀な美女だった弟・元吉の妻だけ助命して、自分の妃にした「弟の女房簒奪者」が原因のようです。

平清盛と常盤御前のような例は、洋の東西を問わず、間々あるのでしょうか。

頼朝は、あの時、13才の己が命を助けた清盛を反面教師として冷徹に生き抜きますが、同時に太宗の生き様を学んだのではないか。頼朝は確実に「貞観政要」を読んでいます。唐王朝が長期政権を維持した理念を鎌倉政権140年の教訓にしたにちがいありません。

頼朝が、なぜ「貞観政要」を愛読していたと確信するかは、女房の北条政子が菅原為長に命じて、漢文の原典を日本語に翻訳させて読んでいるからです。夫が強い影響を受けている著書を自分もマスターしたいと思ったからにちがいありません。頼朝があっけなく逝ったあと、尼将軍として政権を維持し続けただけのことはある女傑です。

政治家、頼朝と太宗は似ていすぎます。

続々「友とのメール」(おわり:2016/1月18日、元内閣官房副長官)


2016年01月18日

◆北は江沢民派の鉄砲玉

平井 修一



「北朝鮮は江沢民派/上海閥=序列5位の劉雲山=瀋陽軍区のカイライ」と小生は思っているが、これはほぼまちがいなさそうだ。大紀元1/12「北朝鮮“水爆実験”中国政府の政策変化の裏」から。

<6日の北朝鮮の水爆実験に国際社会の関心が集まる中、中国政府は諸外国とともに強い反対の意を表した。実験発表の直後、中国外交部は声明で「断固たる反対」を表明、北朝鮮に厳正な交渉を行い、駐中国の北朝鮮大使を呼びつけ厳重抗議するなど、いままでになく北朝鮮へ厳しい姿勢を示している。

習近平陣営に近いとされる中国ニュースサイト「財新網」は同日、「北朝鮮はこれまでに行った全3回の核実験を、すべて中米両国に事前に通知したが、今回は事前の知らせはなかった」と報じた。

長年、北朝鮮を政治・経済の両面で支援してきた、友好国である中国政府のこうした態度の変化について、大紀元本部の専属コラムニストは中朝関係をめぐる中国最高指導部内部の方向転換について分析した。

「江沢民元国家主席が率いる政治グループは、その次期の胡錦濤・温家宝体制まで、北朝鮮と親密な関係を押し通してきた。度重なる(実質的成果のない)6カ国協議や北朝鮮の核実験などは中朝両国の連携プレーで、北朝鮮は日韓米などの国々から経済支援などを引き出し、中国は政治的影響力をアピールする、そのための外交カードだった」

「一方、2012年末に発足した習近平体制は江沢民派と反して、国際社会に腫れ物扱いされている北朝鮮と距離を置くようにしている。それを邪魔するため江派は北朝鮮を中国に近付けさせようとしている。直前にドタキャンとなった昨年末の北朝鮮御用楽団、モランポン楽団の訪中親善公演は江派が意図的に企画したものという情報がある」

夏氏は「江沢民派こそが北朝鮮の盟友であり、長年裏で(経済・政治の)バックアップをし、北朝鮮を操っていた」と指摘している。

このことを一部裏付ける中国メディアの報道がある。独自報道で人気を集める北京の大衆日刊紙、新京報の昨年10月5日付の報道は、直近15年間に訪朝した中国指導部の高官をリストアップし、度々北朝鮮を訪れたとして江沢民氏とその側近ら(曽慶紅・元国家副主席、周永康・前中央政治局常務委員、現中央政治局常務委員の張徳江と劉雲山両氏)の北朝鮮との親密な関係を強調した。

習近平氏が北朝鮮を疎遠にしている兆候はほかにもある。公式発表では、習氏はトップ就任後に5回ほど韓国の朴槿恵大統領と会談しものの、北朝鮮の金正恩第1書記とは一度も会っていない。金氏が幾度も訪中をアプローチしたが、習氏は承諾しなかったという未確認情報もある>

ウィキによると張徳江は序列3位、共青団出身で、大学では朝鮮語専攻、金日成総合大学経済学部に留学している。1980年8月に帰国し、吉林省延辺朝鮮族自治州党委常務委員兼延吉市党委副書記に就任。1985年4月、延辺朝鮮族自治州党委副書記に昇進。

1986年8月、中央に移り、民政部副部長(次官)に就任。1988年3月、第7期全国人民代表大会代表(議員)に選出される。1990年3月、当時の党中央委員会総書記であった江沢民の就任後初の外遊となった北朝鮮訪問に随行し、これをきっかけに江沢民の知己を得て、引き立てられていく。10月、吉林省党委副書記兼延辺朝鮮族自治州党委書記に就任。

2006年1月に金正日が広州市を視察した際には「朝鮮通」として随行している。

張徳江は北とのパイプが相当太いのだろう。江沢民派は北をすっかり手なずけ、習近平を抑え込むための狂犬、鉄砲玉として飼っている。今の最大の暗闘は軍事改革で、習は最大の危険因子である瀋陽軍区を東北戦区(瀋陽軍区+北京軍区+北海艦隊)」としたいようだ。

つまり北京の統制・監視が行き届くように瀋陽軍区と北京軍区をガラガラポンし、事実上、江沢民派の牙城、瀋陽軍区を自分のものにしたいのだ。それをしないと枕を高くして眠れやしない。

たっぷりおいしい利権を貪っている瀋陽軍区の将校たちは当然のことながら軍事改革に大反対だろう。イザとなればクーデターを起こすことも厭わないはずだ。習の白髪は増えるばかりだろう。(2016/1/16)


◆「天皇」と呼び捨てにしながらの共産党

酒井 充



永田町で取材をしていると、「常識とはなんぞや」と感じることが多い。今年も最初からその連続だった。

正月気分も抜けない1月4日、早々と通常国会が召集された。天皇陛下をお迎えして参院本会議場で行われる開会式に、共産党の志位和夫委員長ら幹部6人が出席した。

共産党議員の開会式出席は昭和22年以来で、約69年ぶりとなった。本会議場の志位氏らは天皇陛下をお迎えする際に起立し、頭を下げ、他党の議員と同様の振る舞いだった。

国会議員が開会式に出席するのは「当たり前だ」と思っていた。だが、少なくとも共産党にとっては常識でなかった。いわく、天皇陛下のお言葉には政治的な発言が含まれ、「高い玉座からお言葉を賜る」(志位氏)という形式に反対だったからだという。

ところが今回、天皇陛下のお言葉が「ここ三十数年は儀礼的、形式的な発言が慣例として定着した」(志位氏)と判断し、方針を転換した。ならば昨年から出席してもよかったのに、なぜ今年からなのか。安全保障関連法の廃止を目指す野党連立政権「国民連合政府」構想を提唱する共産党にとって、他党の「共産党アレルギー」を払拭する狙いがあるのは明らかだ。

志位氏は開会式後の記者会見で「私たちは一貫している。現行憲法の国民主権、主権在民、そして天皇の制度については国政に関する権能を有さないという制限条項を厳格に守ろうと。この1点でこれまでも対応してきたし、これからも対応する。

変わらない」と説明した。「なぜ今回からなのか」の説明になっていないが、開会式での所作に関する次の言葉にはもっと驚いた。

「衆院議長にしろ、天皇にしろ、礼をしたときに私たちも礼をした。人間として当たり前だ」

礼をするのが当たり前ならば、公の場で天皇陛下を「天皇」と呼ばないことも当たり前ではないか。呼び捨てにする感覚は、少なくとも私にはない。

志位氏が「厳格な順守」を訴える憲法の第1条には、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」とある。天皇陛下を尊重しない姿勢は国民をないがしろにすることにつながり、憲法の精神にもとる。

このことからしても志位氏の言うところの「当たり前」を共有できない。

さらに驚くべきことは2日後に起こった。北朝鮮の核実験への反応だ。安倍晋三首相のみならず、民主党の岡田克也代表も、維新の党の松野頼久代表も、一様に「重大な脅威」との表現を使って北朝鮮を厳しく非難した。

しかし、志位氏が6日に出した談話は、「暴挙」や「糾弾」などの表現はあったが、「脅威」という文言はなかった。紙で出した談話では言葉足らずだったのかもしれない。しかし、穀田恵二国対委員長も6日の記者会見で「脅威」との言葉を使わず、「けしからん話だ」と述べるにとどまった。

それもそのはず。志位氏は昨年11月のテレビ東京番組で、安保関連法を批判する文脈で「アフガニスタン、IS(イスラム教スンニ派過激組織『イスラム国』)、南スーダンのPKO(国連平和維持活動)の任務の拡大に実際は危ないところがある。北朝鮮の問題、中国の問題にリアルの危険があるのではない」と述べていた。

いくら安保関連法を「戦争法」と呼んで批判しているとはいえ、一般論として北朝鮮に脅威がないと本当に認識しているのだろうか。そんな認識の政党が「国民連合政府」を樹立しようとしているわけだ。

 共産党幹部で最初に「脅威」に言及したのは小池晃政策委員長で、8日の記者会見で「この地域と世界の平和と安定に対する重大な脅威だ」と述べた。

たったそれだけのことを表明するのに2日間も要したのが共産党だということがよく分かった。(産経新聞政治部記者)

産経ニュース【永田町の非常識(1)】2016.1.16
                 (採録:松本市 久保田 康文)

酒井 充

永田町で取材をしていると、「常識とはなんぞや」と感じることが多い。今年も最初からその連続だった。

正月気分も抜けない1月4日、早々と通常国会が召集された。天皇陛下をお迎えして参院本会議場で行われる開会式に、共産党の志位和夫委員長ら幹部6人が出席した。

共産党議員の開会式出席は昭和22年以来で、約69年ぶりとなった。本会議場の志位氏らは天皇陛下をお迎えする際に起立し、頭を下げ、他党の議員と同様の振る舞いだった。

国会議員が開会式に出席するのは「当たり前だ」と思っていた。だが、少なくとも共産党にとっては常識でなかった。いわく、天皇陛下のお言葉には政治的な発言が含まれ、「高い玉座からお言葉を賜る」(志位氏)という形式に反対だったからだという。

ところが今回、天皇陛下のお言葉が「ここ三十数年は儀礼的、形式的な発言が慣例として定着した」(志位氏)と判断し、方針を転換した。ならば昨年から出席してもよかったのに、なぜ今年からなのか。安全保障関連法の廃止を目指す野党連立政権「国民連合政府」構想を提唱する共産党にとって、他党の「共産党アレルギー」を払拭する狙いがあるのは明らかだ。

志位氏は開会式後の記者会見で「私たちは一貫している。現行憲法の国民主権、主権在民、そして天皇の制度については国政に関する権能を有さないという制限条項を厳格に守ろうと。この1点でこれまでも対応してきたし、これからも対応する。

変わらない」と説明した。「なぜ今回からなのか」の説明になっていないが、開会式での所作に関する次の言葉にはもっと驚いた。

「衆院議長にしろ、天皇にしろ、礼をしたときに私たちも礼をした。人間として当たり前だ」

礼をするのが当たり前ならば、公の場で天皇陛下を「天皇」と呼ばないことも当たり前ではないか。呼び捨てにする感覚は、少なくとも私にはない。

志位氏が「厳格な順守」を訴える憲法の第1条には、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」とある。天皇陛下を尊重しない姿勢は国民をないがしろにすることにつながり、憲法の精神にもとる。

このことからしても志位氏の言うところの「当たり前」を共有できない。

さらに驚くべきことは2日後に起こった。北朝鮮の核実験への反応だ。安倍晋三首相のみならず、民主党の岡田克也代表も、維新の党の松野頼久代表も、一様に「重大な脅威」との表現を使って北朝鮮を厳しく非難した。

しかし、志位氏が6日に出した談話は、「暴挙」や「糾弾」などの表現はあったが、「脅威」という文言はなかった。紙で出した談話では言葉足らずだったのかもしれない。しかし、穀田恵二国対委員長も6日の記者会見で「脅威」との言葉を使わず、「けしからん話だ」と述べるにとどまった。

それもそのはず。志位氏は昨年11月のテレビ東京番組で、安保関連法を批判する文脈で「アフガニスタン、IS(イスラム教スンニ派過激組織『イスラム国』)、南スーダンのPKO(国連平和維持活動)の任務の拡大に実際は危ないところがある。北朝鮮の問題、中国の問題にリアルの危険があるのではない」と述べていた。

いくら安保関連法を「戦争法」と呼んで批判しているとはいえ、一般論として北朝鮮に脅威がないと本当に認識しているのだろうか。そんな認識の政党が「国民連合政府」を樹立しようとしているわけだ。

 共産党幹部で最初に「脅威」に言及したのは小池晃政策委員長で、8日の記者会見で「この地域と世界の平和と安定に対する重大な脅威だ」と述べた。

たったそれだけのことを表明するのに2日間も要したのが共産党だということがよく分かった。(産経新聞政治部記者)

産経ニュース【永田町の非常識(1)】2016.1.16
                 (採録:松本市 久保田 康文)

2016年01月17日

◆イスラム国が一掃されても中東の平和は遠い

加瀬 英明



10月にプーチン大統領がシリアに軍事介入して、アメリカを出し抜き、翌月、イスラム国(IS)のテロがパリを襲った。

そのために、アメリカにおいてオバマ大統領の支持率が、さらに低落した。

 オバマ大統領がISがパリにテロ攻撃を加えた直前に、「ISはじきに平定されよう」と、テレビで語ったことも、減点となった。

 だが、ロシアの空軍機が加わってISを攻撃し、フランスのオランド大統領がパリの事件後に復讐心に燃えて、ISに対する攻撃を強化したから、オバマ大統領が予見したように、ISが近い将来、崩壊するかもしれない。

ISは主な資金源として、占領したイラクとシリアの油田から石油の密輸出に頼っている。11月に入ってから、アメリカ軍司令部が空から116台のISの石油タンカー車を、ロシア国防省がロシア空軍がISの石油タンカー車を1千台破壊したと、発表している。どこまで、この数字が信用できるか分からないが、ISの手持ちの石油タンカー車に限りがあるはずだ。

では、ISを壊滅するのに成功したとして、どうなることだろうか?

ISの占拠地域は、イギリスの面積より大きいが、その大部分が砂漠だ。

預言者(マハディ)であり、イスラム世界の最高の権力者(カリフ)を自称する、アブ・バクル・アル・バグダディが率いる「イスラム国」は、国としての体裁をとって、占拠地域に住む800万人から1千万人と推定される住民を統治している。税金を徴収し、学校、病院もある。農業も営んでいる。

3万人の戦闘員を擁するとみられるが、住民は空襲に対する楯としても役に立つ。

 ISを滅したあとは、どうなるのか。

ISは全世界をイスラム化しようとしている。レーニンから、スターリンのソ連、毛沢東の中国が、世界を共産化、あるいは毛主義のもとに置こうとしたのと、同じ救世信仰にもとづく革命国家である。占拠地域を失っても、その脅威は続こう。アル・カイーダははじめから、占拠地域を持とうとしなかった。

ISが一掃されても、もとのイラクとシリアに戻ることはありえない。

イラクとシリアは第一次大戦まで、オスマン・トルコ帝国の領土だったのを、戦勝国のイギリスとフランスが切り取って造った人工国家であり、この時に英仏が引いた国境線は、もはや過去の遺物となっている。

いま、イラクとシリアにおける抗争地図は、複雑をきわめている。

アメリカ、英仏などの西欧諸国、トルコ、サウジアラビアなどのアラビア半島のスンニー派産油王国が、イラクとシリアのスンニー派を援けている。それに対して、ロシア、イラン、レバノンのシーア派民兵ヒズボラが、イラクのシーア派のアバーディー政権と、シリアのアサド政権を応援している。

ロシアはシリアに冷戦時代から、海軍基地をもってきた。アサド政権は、シーア派傍流のアラウィ派だ。

もっとも、アメリカはアバーディー政権に巨額の援助を注ぎ込み、武器を供与している。

イランは中東唯一つのシーア派の大国であり、イラクはイランを除けば、珍しくシーア派が多数を占めている。そのために、イランがアバーディー政権を支えている。

トルコ、イラク、イランに1500万人のクルド族がいて、独立を求めてきた。イラクで事実上の独立国家を形成しているが、アメリカに援けられて、ISと戦っている。

だが、トルコは国内のクルド族に独立されては堪らないから、クルド族を攻撃している。

ISはスンニー派だが、どの国も狂信的なISを恐れて、叩き潰そうとしている。

ISがいなくなれば、その空白を埋めて、スンニー派対シーア派、アメリカ、西欧諸国、湾岸諸国対イラン、ロシアの抗争が続くだろう。

平和は、まだまだ遠い。


              

◆中国共産党のソフトパワー戦略

櫻井よしこ


「書店主らの失踪、新聞買収に見る」

昨年暮れ、中国の人権派弁護士として知られる浦志強(ほ・しきょう)氏に北京の第二中級人民法院(地裁)は懲役3年、執行猶予3年の判決を下した。浦氏は2014年5月以来1年7カ月も拘束され、「民族の恨みを扇動した罪」「国家分裂を扇動した罪」で裁かれたのだ。
 
執行猶予付きの判決でも国際社会は決して安堵できない。その理由はもう1人の人権派弁護士、高智晟(こう・ちせい)氏の例を見れば明らかだ。
 
高氏は06年に逮捕され、懲役3年、執行猶予5年とされた。釈放されても自宅軟禁が続き、弁護士活動が許されないばかりか、常時監視され、しばしば根拠もなく警官に殴打された。

そして執行猶予期限終了直前、突然姿を消した。彼が再び逮捕収監され、3年の刑期に処せられたと、後日判明したが、弁護士の接見もままならない年月が過ぎた。14年8月に出所したとき、高氏は見るも無残な姿になっていた。
 
度重なる拷問で、ほとんどの歯を失い、記憶も薄れ言葉も満足に発することができず、精神に異常を来したとの情報も流れた。現在も高氏は親戚宅に軟禁され、当局の監視下にある。
 
浦氏の件も同様である。中国当局は、執行猶予を付けることで国際社会の批判をある程度和らげることはできたが、習近平体制の中国は言論・思想・信条の自由を断固排除する決意だ。
 
香港の銅羅湾書店は中国政府に批判的な書籍を出版・販売することで知られている。その書店の店主、店員、親会社の幹部ら5人が昨年10月以降、訪問先のタイや広東省で相次いで連絡を絶っている。
 
5人目の行方不明者、銅羅湾書店の株主で作家でもある李波(り・は)氏は中国の治安当局に拘束され、本土に連行されたと思われる。昨年12月30日、李氏は妻に電話し、「調査に協力している。

騒ぎ立てないでほしい」と、中国語で語ったそうだ。いつもは広東語を使うのに、と不審に思った妻が香港警察に相談し、李氏の電話は広東省深圳(シンセン)から発信されていたことが判明した。
 
中国の一部であっても、1国2制度の下で香港には独自の法制度および政治制度が許されている。香港特別行政区の梁振英行政長官が1月4日、「香港での法的権限は香港の法執行機関にのみ帰属する」と述べたように、中国共産党の司法権は香港には及ばない。報道、言論、出版の自由は香港の法律によって担保されているはずだ。
 
だが、習政権に1国2制度を守る気がないのは明らかだ。「偉大なる中華民族の復興」の一環で、人民を豊かにする手だてのひとつとして習国家主席は「法治の国」を語る。それはしかし、言葉だけなのであろう。
 
一党支配の下、国内の反対論は力による弾圧である程度、押さえ込めるかもしれない。しかし、国際社会はそうはいかない。そこで習主席が考えるのは偽情報発信の強化である。

そのひとつが香港発行の英字紙「サウスチャイナ・モーニングポスト」の買収ではないかといわれている。同紙は、中国当局とは一線を画したまともな報道で、中国大陸とは異なった視点を国際社会に提供してくれる貴重な新聞である。
 
同紙を巨大インターネット通販会社、アリババ集団の馬雲(ジャック・マー)会長が買収すると昨年12月に発表した。アリババ集団は、米国で株式上場し、巨額の資金を集め、世界の株主に利益を還元している。

これを米「ワシントン・ポスト」紙は「北京のイメージのロンダリング」と呼んだ。米国における中国批判を金の力で封じ込める、或いは和らげるのに一役買ったというのだ。
 
中国共産党の経済や情報活動を介してのソフトパワー戦略に惑わされるのではなく、私たちが見るべきは中国の行動である。尖閣諸島海域に侵入する中国船が武装船になったことを私たちは深刻に捉えるべきなのである。

『週刊ダイヤモンド』 2016年1月16日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1116


◆平成28年展望

上田 和男



■新元素「ジャポニウム」 米独露の独占を崩した誇るべき成果

冒頭から余談を挟み込ませていただきますが、年号には3種類あり、第1に「紀年法」(開祖に因み無限に継続される)、第2に「元号」(君主の即位退任等有限でリセットされる)第3に「干支(60年周期)」や「インディクテイオン(15年周期)」など循環式システムによるものがあります。

紀年法でいうと今年は、ユダヤ創生・紀元暦5777年、皇紀(神武国)2676年、釈迦入滅・仏暦2559年、キリスト生誕・西暦2016年、ヒジュラ(マホメット聖遷)イスラム暦1437年…となります。この中で一国家として紀年を継続しているのは日本だけで、世界最古の国家ということが分かります。

しかも、紀年法2種に加え、元号暦も干支暦も併用するといった融通無碍に多数の年号を使用する国は世界に皆無です。これからしても、日本文化が世界を取り込む融合術を持つ特異性を示しているといえましょう。

さて、話を本題に移します。平成28年は、嬉しい話で明けました。日本の「理化学研究所」が「新元素113番」を発見したことで認証確認を受け、“知の集大成”と呼ばれる「周期表」に、アジア初の快挙として、新規登録されることになりました。

科学技術の世界では、ノーベル賞受賞をはじめ、わが国は世界の最先端を走ってきましたが、「周期表」の分野においてもついに、米独露の独占を崩すに至ったのです。

命名権を得て「ジャポニウム」と命名される予定の新元素は、平和目的である原子核研究の一環から、核融合反応で元素合成に成功して生まれたものです。

誇るべき成果であり、唯一の被爆国日本が、世界の平和をリードする上でも、お墨付きを得たことになると考えられます。

■技術大国・日本の巻き返しは「原点回帰」で

青色発光ダイオードで世界をリードした日本ですが、プラズマや液晶ディスプレー
に関しては、アジアの追随者に模倣を許し、ソニー、パナソニック、シャープなど大手家電メーカーの苦戦が続いています。

しかしながら、「有機EL」の分野では進化の余地はまだ残されています。発光効率の向上と、より高機能な単一層のデバイス創作に取り組んでいるのは、九州大、東北大、京都大、東京大などのわが国の研究者たちで、軽量小型化の極致として、伸縮自在で曲げても折り畳んでも機能が維持される「有機電子部品」の実用化が待たれます。

先の大戦で、世界最大の工業国、最先端の技術国アメリカに敗れた後、奇跡的に「追いつき追い越す」ことができたのは、努力、勤勉、誠実、職人精神、忍耐力、協調チームワーク、創造力、細心器用さ、粘り強さ、学究・工夫力…といった日本人の伝統的な文化文明の独自性の賜であって、こうした原点への回帰を忘れなければ、わが国の巻き返しもかなうはずです。

■歴史戦 中韓の暴走にブレーキが掛けられるか

一方で、わが国の苦戦が続きそうなのが、近隣諸国に苛まれている諸難題と歴史戦でしょうか。北朝鮮による拉致被害者の帰国や北方領土や竹島の奪還など長年の懸案事項はなかなか実現しそうにありませんが、米国や国連まで巻き込んでの中韓による歴史戦の解決もなお時間を要すると思われます。

中韓が連携して捏造史を世界に向けて謀略喧伝する反日活動に関しては、中韓を責める前にわが国自身も深く反省・自覚すべきことがあります。朝日新聞をはじめ、左派ジャーナリストや一部の文筆家・学者・弁護士らは、史実にもとる自虐的な捏造史をばら撒き、中韓の“応援隊”を買って出る愚挙を犯しました。

その上、多くの与野党政治家や外務官僚は、国益をわきまえない“自縄自縛外交”を繰り返し、問題が大きくなるまで放置してきました。

ここへきて、遅ればせながら、現政権がこの問題解決に本腰を入れ始め、良識派の史家、学者、正道派の評論家・ジャーナリストらが世界へ向けて積極的な言論活動を継続するようになりました。

これに呼応するように、親日派で史実を良く理解している海外の有力オピニオンリーダーたちが、慰安婦問題や南京事件の嘘を暴き、強力な応援活動を展開してくれるようになり、ようやく中韓側の暴走にブレーキが掛けられるところまできたように思います。

■反日戦略の矛先鈍るも油断大敵

そんな中、中韓両国の経済低迷が内政の混乱を招き、反日戦略の矛先を鈍らせているかに見えて来ました。

中国は南シナ海問題で米国の糾弾を受けて外交的孤立を深め、内政面でも大事故や環境汚染も絡む抗議ストが続発し、汚職摘発が内部抗争を激化させているようで、「政治的反日派」と「経済的親日派」の綱引きも聞こえてきます。

一方、韓国では、歴史教科書の国定化をめぐって左右両派の対立が激化し、朴槿恵大統領退陣要請デモ隊が10万人にも達したそうで、内政面での経済対策を含め、反日の狼煙がどう変化するかを見極める必要があります。

今般、米国の差し金なのか、慰安婦問題の外交的な決着を急ぐかのような両国外相声明発表がありましたが、その文言は曖昧であり、今後とも論争と慰安婦像設置運動は不可避と思われます。

中国や国連、米地方議会をも巻き込んだ案件だけに、大切な詰めは、韓国のみを対手とせず、国連と米国、およびその他世界の良識派に向かって、史実(虚偽の訂正)に基づいた反論をし、「中韓両国こそが歴史修正主義者だ」という明確な宣伝広報を積み重ねることだけが、汚名を返上する最善の手立てであると確信致します。

■FRB利上げ、日本にとって吉か凶か

世界経済で少々気にかかるのは、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げです。BRICS新興国を含む世界の資金が米国へ移動する速度と量の多寡によっては、市場の

波乱要因となりかねません。中でも実質経済が見かけより悪化している中国の資金の急激な流動化が進むと、世界の景況にかなり甚大な負の影響を及ぼす「押し下げ圧力」になる恐れがあります。また、せっかく米経済(ことに製造業)が復活中なのに、中国に買ってもらえないとブーメラン現象になってしまいます。

わが国にとっても、資金の米国集中度が高まりすぎ、円のドル調達コストが急上昇してしまうと、ドル資金確保に不自由を強いられ、金融業や輸出産業戦略に齟齬をきたす恐れが出てきます。

もっとも、過去の実例を見ると、利上げ後は日本の実質輸出が上向きに転じているので、米国実体経済さえ堅調であれば、わが国には追い風と見るべきかもしれません
が…。

グローバル金融政策に関しては、世界政府機能を発揮すべき国連、G7などが頼りにならぬ以上、FRBのイエレン議長、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁、国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事、日銀の黒田総裁ら、世界的金融リーダーたちがそれぞれの領域を踏み出して、世界を俯瞰する智恵を分かち合って、世界経済の安定を図っていただきたいものです。

■米大統領選、共和党候補選出に注目

「世界のリーダー」に目を転じると、政界では、ロシアのプーチン大統領や中国の習近平主席といった“悪代官”が目立ち、併せて、米国のトランプ氏やフランスのルペン氏のような“過激派ポピュリスト”が結構人気票を集めております。

いずれも、民族宗教闘争をかかえる中、国際テロ、難民問題などに対する言動には「言論と暴力、自由と規律、権利と義務、競争と平等、福祉政策」などの政治難題に関わる大いなるジレンマが背景に見え隠れします。

ちなみに、米大統領共和党候補に関して私見を許していただければ、トランプ氏が最終的に選出されるか否かについては、かなりの疑問を持っております。

私の一押しは、マルコ・ルビオ上院議員(キューバ移民2世で弁護士、44歳、外交委員会で東アジア委員会筆頭を務めた)です。雄弁で「共和の星」と人気を集め、移民政策にも合理的な制度改革を示し、しかも対中強硬派で日米関係にも理解が深く、「アジアの安保を重視する」と主張しています。彼が一番政策的バランスが取れており、指名獲得を願ってやみません。

ワシントンの外交専門家や米国の知友たちの風評では、民主党の指名を受けそうなヒラリー・クリントン女史の対抗馬としては、ルビオ氏が最も脅威の強敵になれるといい、しかも共和党が勝つ可能性が大なのだそうです。

■喫緊の問題は「地球温暖化対策・二酸化炭素削減」レベルではない

最後に、地球規模の問題、人類社会の課題について展望したいと思います。COPが提唱する地球温暖化対策・二酸化炭素削減が話題の中心を占めていますが、世界が現下に取り組むべき最も重要で喫緊の問題は、もっと幅の広い、総合的環境対策だと思います。

大気と水(地表・地下の全て)、および土壌の汚染除去、宇宙や海陸上のあらゆるゴミの排除であるべきだと提言致します。

 地球温暖化には、そもそも疑問があり、気象学者や天文学者によれば、地球は長期的視点からは、むしろ寒冷化に向かっているそうです。平均気温の1〜2度上昇などは、太陽黒点移動次第で一挙に吹っ飛び、100年1000年の経時で、10〜20度も降下するケースがあることは、地球の歴史を顧みれば明白です。

ちなみに、北極の氷が解けても海水は上昇せず、ツバルが沈んでいるのはサンゴ礁沈下による現象で、実は米国東海岸で水位が下がっているそうです。

また、南極の氷は中央部でより高くなっていて、その圧力があがり、臨海部が押し出されて崩れるところだけを写真にとって、北極も南極も氷が解けだしたと大騒ぎする報道には、疑問を禁じ得ません。

一説に、欧米主導でCO2排出量を取引材料として、金融投資対象にしようとする一部政治経済界の暗躍も囁かれる中、人類にとって生存を脅かす問題点の排除と食料の確保など抜本的な対策こそ急ぐべきでしょう。

仮に少々の温暖化が進んでも、シベリアやカナダのツンドラ地帯への熱帯・砂漠地方からの移住者が増え、穀菜果実類が栽培可能となることで、世界の食糧自給が大幅に改善される方が、地球万民にとってはるかにメリットが高いはずです。

元来、軍事目的でスタートした宇宙開発にも見直すべき課題が増えています。仮想敵としての衛星をやたらと打ち上げ、それをミサイルで打ち砕く実験を繰り返した中国が、宇宙空間に膨大な大小ゴミを撒き散らせたままとなっているそうです。

この宇宙ゴミがいずれ航空産業の危険物に転ずる恐れがあり、早急な規制なり回収義務形を課すべきではないでしょうか。

いずれにせよ「地球民が挙って人間らしく生きられる新世界を築く」努力が急務だと信じます。



           ◇

【プロフィル】上田和男(こうだ・かずお) 昭和14(1939)年、兵庫県淡路島生まれ。37年、慶応大経済学部卒業後、住友金属工業(鋼管部門)に入社。米シラキュース経営大学院(MBA)に留学後、45年に大手電子部品メーカー、TDKに転職。米国支社総支配人としてカセット世界一達成に貢献し、57年、同社の米ウォールストリート上場を支援した。その後、ジョンソン常務などを経て、平成8(1996)年カナダへわたり、住宅製造販売会社の社長を勤め、25年7月に引退、帰国。現在、コンサルティング会社、EKKの特別顧問。

産経ニュース【日本千思万考】2016.1.14
             (採録:松本市 久保田 康文)


◆草の根“文革”が始まった

平井 修一



毛沢東を真似て習近平は盛んに「整風運動」のようなスローガンを掲げる。遠藤誉氏によれば――

<(毛沢東の)「整風運動」は「形式主義、官僚主義、享楽主義」を取り締まって風紀を正そうという運動で、(習近平の)「四風運動」とは「形式主義、官僚主義、享楽主義、贅沢主義」を取り締まって党内の風紀を正そうとする運動である。毛沢東の「整風」に「贅沢禁止令」を付け加えただけで、すべて毛沢東の物真似だ>

スローガンだけならまだしも、新聞、雑誌、出版、テレビ、映画、ネット、文学、ゲーム、マンガ、学者、弁護士・・・あらゆるものを規制しているが、「上に政策あれば下に対策あり」の国柄だから、人民は実にシブトイ。

習は「マルクス主義を学習しろ」と時代錯誤的に叫んでいるが、人民には馬耳東風、誰も従わない。今はナント、習の大嫌いな日本発祥の「オタク文化」が支那の若者に急速に広まっているという。

在中の中島恵氏/フリージャーナリストの論考「“停滞”中国を救うオタク文化の目を見張る成長ぶり」(ダイヤモンドオンライン1/14)から。

<*本当に中国?怪しい漫画喫茶で日本の漫画を読み漁る人々

(北京清華大学近くの日本式漫画喫茶の)店内には見渡す限り、日本語の漫画本がズラリと並んでいた。

『ワンピース』『黒子のバスケ』『キャプテン翼』『宇宙兄弟』――。漫画事情に疎い筆者でさえ知っている漫画本が、床から天井近くまで本棚にぎっしり収まっており、それを熱心に読んでいる若者がいる。しかも、こんなに怪しい雑居ビルで……。午後3時頃だったが、うどんやお好み焼きなどの日本料理メニューを注文して食べている人もいた。

店内にいる学生らしき男の子に声をかけてみた。

「日本のアニメにすごく興味があります。ストーリーが面白いし、主人公が魅力的だから。クリエーターの情熱も感じますね。勉強の合間にときどき来て、ここで息抜きしています。日本の漫画を読んだ後は勉強もはかどるので」

答えてくれたのは、清華大学の3年生で経済を学ぶ学生だった。日本とのゆかりは特にないが、子どもの頃から見ていたアニメ好きの延長で日本語を学び、日本語の漫画も読めるようになったという。日本からちょっと遅れて郵送されてきた漫画雑誌を、むさぼるように読んでいる女子学生もいた。

置かれていたのは100%日本語の漫画本や雑誌だが、筆者が店内にいる間、日本人の姿は1人もなかった。

日本好きな若者はどこの国にも一定数はいる。いわゆる「日本オタク」と呼ばれる人々だ。

この漫画喫茶もそうした“特別な”空間なのだろうか? 中国中の若者が日本の漫画やアニメに夢中になっている、という極論を言うつもりはもちろんない。

だが、日本のサブカルが心の拠り所となっている若者が少なからずいることもまた事実だ。

別の日、北京大学構内にある「明治大学マンガ図書館北京大学閲覧室」に向かった。2014年末に明治大学が北京大学に漫画図書を提供したもので、北京大学が運営、約2万冊を収蔵しているという。

筆者が訪れたときには休暇中で学生たちの姿を見ることはできなかったが、同外国語学院の副教授によると、現在のところ漫画の貸し出しはしていないが、図書室内で熱心に読んでいる北京大学生が多いという。

北京大学といえば、日本人にもよく知られている中国随一の名門大学。しかし、ここに「元火」(オリジナルファイヤー)という名称のアニメサークルがあり、なんと800名もの学生が在籍しているという。同大学で2番目に人数が多いサークルというから、驚きだ。

主に日本のアニメのコスプレをしたり、アニメのイラストを描いたり、同人誌を発行したりして活動している。清華大学にもアニメサークルがあるが、エリート学生であっても、日本アニメに夢中になっていることがわかる。

*「お帰りなさ〜い!」北京にも進出したメイドカフェ

北京ではメイドカフェも人気だということで、行ってみた。5つ星の老舗「ケンピンスキーホテル」のすぐそばにある店に入ると、「お帰りなさ〜い」という甲高い女の子たちの声が響いてきた。メニューには日本の居酒屋メニューなどのほか、オムライスなどメイドカフェの定番も。

日本人駐在員も多いが、中国人のオタクもしばしば足を運んでいる。北京在住の日本人の友人によると、こういう店が何店舗もあるのだとか。

オタクというと、日本では「暗い」「ひきこもり」などを連想させ、どちらかというとネガティブなイメージがあるが、中国ではそんなことはない。中国語では「御宅」「宅人」「宅男」などというが、その呼び方もすっかり定着し、一般にも広まりつつある。明らかに日本のオタクの影響だ。

中国では「こだわりのある面白い人々」というポジティブな意味で捉えられており、日本でのイメージとは少し異なる。筆者が見たところ、こうした人々が中国で少しずつ“市民権”を得るようになっていると感じる。

爆買いには目もくれず、日本でオタク的行動を取る人々もぽつぽつ出てきた。

*日本の寺で写経をする富裕層 訪日中国人に広がる「鉄ちゃん」

たとえば、来日しても一般的な観光には行かず、日本のお寺で写経をして心を落ち着かせる富裕層や、日本全国のこだわりのあるオーベルジュ(宿泊設備を備えたレストラン)などを旅して、日本のホテルやレストラン経営などを学んでいる人々など。

オタクとまでは言えなくても、自分の意志や明確な目的を持っていて、“他人と自分は違う。自分の好きなことをとことん追求する”人々が、今後は猛烈な勢いで増えていくだろう。

北海道各駅停車の旅をしている中国人などもいると聞いた。友人の友人がやっていて、微信(中国版ツイッター)のタイムラインを見せてもらったことがある。ローカル線の各駅で下車し、駅名が入った看板の前で記念撮影した写真を微博にアップするのだ。日本人と同じく「鉄ちゃん」の中国人もいるのである。

中国人のオタクの中心は主に20〜30代と日本よりも若い世代だが、潜在的にオタク気質を持った人々がいることが考えられるので、実際には相当な数に上るはずだ。筆者は中国でオタク文化が広がっていることに、中国社会の明るい兆しを感じている。

それはどういうことか。日本にはオタクがあまりにも多い(!)ので気がつかないかもしれないが、こだわりを持って生きることは社会の多様化、価値観の多様化につながっているということだ。

そういう人が社会で許容されていくことで、様々なアイデアや発想が生まれ、それが各方面へと伸びていく。他人とは違う生き方、違う目線を持つ人々が増えることで、想像力が拡大するのではないかというのが筆者の考え方だ。

数年前まで中国で若者を取材していて感じたのは、「息苦しさ」や「堅苦しさ」だった。中国の学校では(少なくとも高校までは)恋愛禁止だ。クラブ活動もほとんどない。勉強しか評価の基準がない超競争社会で勝ち抜いて行くには、勉強で一番になるしかない。勉強ができない上に、親のコネなどがない人は、社会に居場所がなく、落ちこぼれていく。

価値基準が少ないので「こうあるべき」という生き方を外れることは難しい。日本のように、勉強以外に音楽やスポーツの才能があれば、それを伸ばし、別の生き方で人生を充実させていくことができるが、そういった柔軟な生き方は中国では認められにくい。

しかし、日本のアニメなどがネットを通じて拡散し、オタクが少しずつ増えてきたことで、「他人と違った生き方もあるのか」「面白いことをやってみよう」「勉強ができなくても、自分はこんなことが得意なんだ」という人の生きる場所が確保されてきた、という気がしているのだ。

具体的に中国の体制がこう変わった、というわけではないのでここでは説明しにくいのだが、昨今叫ばれている深刻な中国経済の低迷とは裏腹に、社会にはむしろ「ゆとり」が生まれてきているのではないか、と肌で感じている。足もとで経済は悪化しているのだが、社会は成熟化の方向へと進んできているのだ。

具体的な現象として、たとえば数年前から、中国では全国各地で同人イベントが開催されるようになってきた。筆者が知っているだけでも数十はあり、小さなものを含めると、数百ヵ所で行われている。

また、コスプレも盛んで、大学のキャンパスや公園などでコスプレをするイベントも多い。集会やデモなどの活動には厳しい目を光らせる中国でも、こうした趣味の集まりには寛容になってきており、中国人から見れば「ユニークな」活動も認められてきている。昨年は、日本のAKB48にも似た、中国初のアイドルユニット「idol school」もついに誕生した。

筆者は昨年、「idol school」の主催者と会ったが、彼も筆者と同様のことを感じていると話してくれた。

オリジナルなコンテンツをつくりたいという原動力は、多様な考え方や豊かな発想から生まれてくるものだ。2000年代前半の経済成長のお蔭で、親は子どもに勉強だけでなく、音楽やその他の習い事などをさせる余裕ができ、そうした情操教育も影響しているものと思われる。

それに、中国人にはない発想の日本アニメなども影響を与え、それが中国の負の遺産であるパクリ文化の減少にもつながっているのではないか、というのが筆者の見立てだったが、彼も同意してくれた。

*不安を抱える中国経済にとってオタク文化の隆盛は一筋の光?

中国では昨夏、初の国産アニメ映画『西遊記之大聖帰来』が大ヒットした。政府は長い間、国産アニメの制作に力を入れてきたが、それがついに実を結んだ。そして最近、ウェブアニメ『愛神巧克力ing』(愛の神チョコレーティング)という学園アニメも誕生し、話題沸騰中であるという。

中国では「学校は勉学に励むところ」という画一的な固定概念があるにもかかわらず、このアニメは学園ハーレム(男子学生が主人公で女の子にモテモテになるドラマ)ものという、中国ではあり得なかった突拍子もないものだそうだ。それだけ中国社会が変わり、価値観が大きく多様化している証拠だろう。

日本のメディアを見渡すと、中国を発端とする世界同時株安や中国経済の不安定さ、脆さを論じる記事が散見される。中国社会が不安要因を抱えているのは事実だろう。だが、停滞する中国にとって、社会の多様化は悪いことではない。若者文化の広がりに、筆者は中国が成熟化に向かう「小さな萌芽」を感じている>(以上)

PM2.5が臭っている生々しい、生き生きしたいい論考だ。若者は習の望みとは逆方向の多様化、個性化、多分「私は私、干渉しないで」という近代的、現代的な個人主義化へ向っているようだ。これは共産主義とは相容れないものだ。毛沢東曰く――

<党の規律をもう一度言明しておかなければならない。すなわち、

(1)個人は組織に従い、(2)少数派多数に従い、(3)下級は上級に従い、(4)全党は中央に従うという規律である。

これらの規律を破るものは党の統一を破壊するものである(1938年10月)

党の規律のひとつは、少数が多数に従うことである。少数者は自分たちの意見が否定された場合には、必ず多数で採択した決議を守らなければならない。必要があれば、次の会議にもう一度出して討議することができるが、それ以外に、行動の上では、どのような反対の態度も示してはならない(1929年12月)>

中共中央に逆らう者は「殺すぞ」ということだ。当時も今もまったく同じだが、オタクは別の道を進んでいる。日本発“オタク文化”が中国を救う!? 草の根“文化大革命”がどうやら始まったようだ。(2016/1/15)


◆続々「友とのメール」その A

浅野 勝人 (安保政策研究会理事長)



新平家物語 = むさぼり読みました!

読了しました。暇を見つけては、むさぼり読むこと50日。「日本人に生まれてよかった」これが、新平家物語を読み終えた“私の読後感”です。

作者の知性と読む者の思いが1行ごとに交叉して、自分が日本人であることをかみしめさせてくれました。一行一句疎(おろそ)かにしない15万行に出会えたのは幸せでした。

壇ノ浦の最終場面で、源平双方の総大将が対峙します。

義経が、つと進んで、相手の眸(め)へ、その全姿を与えたとき、知盛もわれから少し歩み出ていた。星明りの下、およそ10歩ほどをおいて二人は相見た。どっちの顔もその夜の夜空のようにぬぐわれていた。なんらの敵愾心(てきがいしん)や恨みを残している風でなかった。

「権中納言(著者註:知盛)どのとは、其許(そこもと)にてあるか。さても、きょうはよく戦われしも、お志も空(むな)しゅう、さだめし残念なことでおわそう。− 名をいうも恥と仰せあったが、さすが入道どの(著者註:平清盛)のおん名はけがし給わぬ軍(いくさ)をなされしよ。義経こそ、ただ潮(しお)幸(さち)に乗って勝ったるまでのこと」

「その仰せ、勝者のお口より伺うこととて、一しお欣(うれ)しく存じ侍(はべ)る。おなじ敗るる軍、亡(ほろ)ぶ平家の運命(さだめ)ならば、其許のごとき大将の手にかかりしは、せめて一門の者にとっても菩提の扶(たす)けとなり申さん。この知盛までも、今は思い残す何事もない」

「いや、すがすがと仰せあれど、お心の底は察し入る。義経にさえ、恨み多き戦の始末であったものを。・・・かばかり、罪なき人びとまでを、死なせんとは、本意でもなかったに」(17巻、290頁)

源(げん)判官(ほうがん)義経と言葉をかわし終えた知盛は、錨を抱いて海中に消えます。平家のダメ公(きん)達(だち)の中にも武士(もののふ)はいた。両者のやり取りに武士道の萌芽を見て、日本人のすがすがしさを秘かに誇らしく思いました。

吉川英治が新平家を書いた頃は、敗戦の荒廃からやっと立ちあがって、復興から高度成長に向かおうとする時期と重なります。

吉川英治は、おそらく、戦争の悲惨な代償がどれほど無辜(むこ)の人々を苦しめ、戦後の後始末が勝者にとってさえ、なんとむなしいものか、
新平家物語は、「戦争の愚かさ」と「平和の尊さ」を書き綴ったメッセージだったと私は確信します。

貴兄が歌舞伎で一番好きという20巻の「安宅(あたか)ノ関」「安宅ノ関・その二」「野々市(ののいち)殿」「勧進帳(かんじんちょう)」の武蔵坊弁慶と関守の冨樫左衛門尉(とがしさえもんのじょう)泰家との丁々発止のやり取りと暗黙の心の交流は、興味深く読み返しました。ことさら、都落ちして逃避行を続ける義経一行への作者の思いが滲(にじ)んでいます。
 
あれこれ、思い合わせると、自分も、何かの宿縁に、(著者註:義経と)つながっている一人と思わずにいられない。泰家は、さっきから、涙を外に見せまいとし、そのため、いっそう容儀(著者註:姿勢を正しくすること)をかためていたのであった。

そして、ひそかには、問答坊(著者註:詰問役の坊主)に対する弁慶の答えが、見事とも、賞(ほ)めてやりたいほどに思われていたのである。ほっと、自分までが、救われた気がしたのだった。(20巻、275頁)

10名足らずで逃避行を続ける義経、弁慶の一行を、首取るまで追求の手を緩めない腹違いの兄、頼朝の「義経恐怖心」がだんだんと分かってきます。

若い戦略の天才、作戦・戦闘の名人、生死を共にする腕っこきの側近、人望厚い行政官に対して、なぜ、戦わずして都落ちしたのか、兄との戦闘だけは避けたい義経の理想主義を理解できない頼朝にとっては、いずれ台頭してくる唯一の強敵としか映りませんでした。


保元、平治の乱から一ノ谷の逆落とし、屋島、壇ノ浦に至る悲惨を極めた必然的な源平決戦よりも、義仲、頼朝、義経による源氏の骨肉の争い、内ゲバにむしろ哀しい人間の性(さが)を見て、心が痛みました。

本来、勝ち目の薄い戦闘にことごとく圧勝した“ 戦(いくさ)の名人 義経”は、「願うらくは、戦(いくさ)なき国で暮らしてみたい」と念じます。

「それが、義経を勝者から敗者へと転落させていく。戦うことを止めた義経の生き方は、覇者を握った頼朝の側から見れば、みじめな敗北であったものの、文化史的な観点からは圧倒的な『勝利』だった。なぜならば、義経は政治的な『勝者』から『敗者』への変貌のプロセスで、珠玉のような武士道を生み出したからである。」という巻末書評、島内景二の解説に100パーセント満足します。

だから、日本人は誰もが義経の贔屓(ひいき)で、「判官(ほうがん)贔屓(びいき)」という造語を生んだのだと思います。

貴兄が、本文もさることながら、各巻ごとの島内景二氏の書評を
ゆるりと味わってほしいといった意味が分かりました。

行きがかり上、古典「平家物語」を遮二無二読まざるを得なくなりました。幸い、半世紀前、駆け出し記者の頃、安月給叩いて買いそろえた「国民の文学」(谷崎潤一郎、川端康成監修、河出書房新社)全18巻のなかに中山義秀訳の平家物語が、保元物語、平治物語と一緒に収録されています。

なにか、肩の荷を下ろした気分です。
(2016/1月14日、浅野 勝人)

◆返事:(2016年1月15日、吉川 英明氏から)

ツボを押さえて読んでくれました!
 これまでのお付き合いの経験から、貴兄の読書のスピードは凄いものだと感じていましたが、さすがに暮れの繁忙期の全20巻は大変だったようですね。それでも丁寧な読後感を拝読し、ツボを押さえて読んでくださったと感謝しています。
 
「新平家」は、私が中学一年の時から大学二年までの7年間という長期連載でした。戦後5年間、長編らしい小説はほとんど書かずに構想を練ったうえで、ある種の覚悟を抱いて書いたのが新平家です。

ですから「戦争と平和、そして人の世の幸せとは何かというテーマを、800年前の戦乱の時代に塗りこめた大作を書き綴る」という意気込みを持って臨んだようでした。
 
「武蔵」を書いていたころの父の書斎の姿というものは記憶にないのですが、「新平家」執筆時代の父の仕事ぶりは、私自身の少年期から青年期にかけてのものだけに、強烈な印象を持っています。
 
貴兄(浅野氏)の「一行一句疎かにしない15万行に出会えたのは幸せでした」というご感想、何よりも有り難く感謝します。(吉川英明)

(吉川英明氏は文豪・吉川英治のご長男。半世紀余り前、浅野とNHK同期の記者)

<註> 友とのメールは、浅野勝人著「融氷の旅」(青灯社) 3章「ネット随想:友とのメール」などがある。

2016年01月16日

◆正統性持たぬ国家の約束など信じてはならぬ

古田 博司



人間のすることで、持続し続けるものを挙げることは難しい。苦しみは必ず終わるときがくるが、喜びもやがてはかき消える。だから、人は希望は持っても単純に喜ばないことだ。慰安婦問題での日韓合意も然りである。

 ≪韓国の伝統的な「遷延策」≫

昨年12月28日、岸田文雄外相と尹炳世外相は会談の後に、慰安婦問題の合意を共同記者会見で表明したが、正式な合意文書はなく記者からの質問も受け付けない異例の形となった。

合意文書は世論の動向を懸念する韓国側の要請によって見送られた。ここがおそらくはこれからの外交戦略の鍵であろう。

韓国側は、ソウルの日本大使館前の慰安婦を象徴する少女像の撤去に努力すると合意したが、韓国挺身隊問題対策協議会など元慰安婦支援6団体は「屈辱的な談合だ」と早くも反発を強めている。

日本側は、努力するという合意の実行を韓国側に執拗に求めることで、韓国国内で政権と世論の間に大きな揺らぎを生じさせることが肝要である。

0世紀の歴史学者マイネッケは次のように述べている。「(小国は)権力が乏しければ乏しいほど、ますます強く国家理性(=国益)の強制によって醜い手段の使用に追いやられることがある。このことによって、小国の一段と不愉快な政策は、もはや道徳的に非難されず、むしろ因果的に説明され是認されたのである」(マイネッケ『近代史における国家理性の理念』)

日本がなすべきことは、韓国国内の「道徳的非難」を韓国政府に向け、「不愉快な因果」を徹底的に断ち切ることである。

今回、朴槿恵政権が合意したのは、今年4月の総選挙を有利に進めるため、韓国民の嫌う安倍晋三首相からのおわびと謝罪金という、“鬼の首”を取ることが目的であるにすぎない。

従って、4月以前に慰安婦像の撤去をまず実現しなければ、韓国側は“鬼の首”だけを取って、平然と約束を反故にすることであろう。反故と言わなくても、彼らには伝統的な「遷延策」という引き延ばしの戦術があることを忘れてはならない。

韓国にとっては、少女像撤去も、アメリカの高高度防衛ミサイル(THAAD)設置と同じ遷延戦術の要にある。

 ≪注意が必要な人道支援金≫

ゆえに日本側としては、「おわび」をできる限り引き延ばして対抗する必要があるだろう。

岸田外相は、共同記者会見発表で「慰安婦問題は、当時の軍の関与のもとに、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している」と言及した。

これはアメリカ政府向けの外務省的言辞だろうが、政府や学者、市民団体の努力により、アメリカは既に慰安婦がキャンプフォロワー(camp follower)であることを知っている。

中国に「離間策」を取られぬよう、とりあえず日韓の不和を解消しておきたいというのが望みであるから、この言辞はここで終わりにしてよいと思われる。

つぎに韓国政府が設置する財団に、日本政府が10億円程度を基金として一括拠出するという、元慰安婦のための人道支援についてである。これは韓国側の運営団体と関係者によって食われてしまい、気づいたときには誰も罰せられないまま、金は煙と化すことが予想される。

朴大統領の名誉を毀損したとして産経新聞の加藤達也・前ソウル支局長が起訴された事件でも明らかになったように、韓国は近代の法治に大いに瑕疵のある国家だ。

100年前は古代だった「半古代国家」であることを再確認するときがくることだろう。加えて、人道支援金はくれぐれも国家賠償との言質を取られないように、名目と内容を工夫する必要があるだろう。

 ≪画期的な歴史的合意にあらず≫

最後に、前出のマイネッケの著作に引用される、フリードリヒ大王の箴言を引いておこう。「(小国の)小君主の政策は、悪事のかたまりである。
それにたいし、大君主の政策は、むしろ分別、偽装および名誉心をもっている」

今回の日韓合意は、画期的な歴史的合意でもなければ、日韓新時代を開くものでもない。韓国は憲法で上海亡命政権の法統を継ぐと明記する限り、日本統治時代は不法な悪の時代として葬り去らなければならない無窮の動機を持つ。

日本と戦ったことも、独立を勝ち取ったこともない、国家の正統性をもたない国である。それゆえテロリストやキャンプフォロワーを銅像にし、英雄にしなければならず、それを恥と思う感性を持たない国である。

そのような国の「最終的・不可逆的に解決」という約束を信じる日本人がいるとすれば、それは大国としての分別も名誉心も持たないということであろう。

まれな先見性を持ち、優れた政治家である安倍氏が、それを承知で韓国に対していることを信じたいものである。

産経ニュース【正論】2016.1.11

(筑波大大学院教授・ふるた ひろし)
                (採録:松本市 久保田 康文)