河添 恵子
【習近平の蹉跌】
月刊正論11月号から転載。
■反習近平派の金融クーデターか?
9月3日に北京で行われた「抗日戦争勝利70周年」の式典と軍事パレードは、歴史捏造と軍備拡大と「皇帝・習近平」を内外に誇示しただけの退屈なショーだった。経済損失などお構いなしで中山服姿の本人一人、さぞかし自己陶酔できたのだろうが、中国はいよいよ「伏魔殿国家」の様相を呈している。
胡錦濤前国家主席の元側近中の側近で、巨額収賄などの容疑で党籍剥奪と公職追放の処分が下った令計画(前党統一戦線工作部長)の弟、令完成らに中国機密資料2700余りが米国へ持ち出されたとされる亡命事件、上海A株市場の大暴落となりふり構わぬ株価維持対策、天津で起きた大爆発、中国人民銀行(中央銀行)による人民元の切り下げなど-世界に異様な姿を晒し続けている。
人口13億の巨大国家を牛耳る「チャイナセブン(中国共産党政治局常務委員の7人)」は共産主義青年団(団派)、太子党、江沢民派(上海閥)といった派閥だけでは語れない7人7党の総称である。
地方の高級幹部なども含め、この瞬間も各自の野望が蠢き、陰謀を企て牽制し合う関係にあると私は考えている。
●(=登におおざと)小平が掲げた改革開放政策以降、中国共産党幹部は各々、一族を手足に「紅い財閥」として醜く肥大を続け、人脈&金脈&利権を国内 外に構築してきた。「紅二代(太子党やその子女)」や「官二代(党・政府等の高級 幹部の子女)」が国内外で少なからず台頭・暗躍している現実に鑑みても、政権内 部の派閥闘争という単純かつ矮小化し
た見方では、中国の権力構造の実体を表現しき れない。
歴史的にもそうだったように、それぞれが、米英の国際金融資本家、欧州経済を牽引するドイツ、ロシアといった大国、さらにはアジアの超大物華人財閥と 密接なつながりをもっている。そしてそれは諸刃の剣であり、中国の支配体制そのも のを破壊する力にもなり得る。
習政権にとって目下、凶器となりつつあるのが紅・官2代を中心に米国ウォールストリートや香港のシティを主舞台にノウハウを培ってきた金融という・時 限爆弾・である。
7月に起きた中国A株市場の大暴落について、国内外のメディアや 有識者からは、「このような操作が可能なのは、内部の政治状況や中国特有の金融事 情に精通している国内の専門家集団」「権力闘争の一環。反習近平派である江沢民・ 曾慶紅一派の陰謀」などの声が上がっている。
中国A株市場は、いわば共産党が胴元の「博打場」だ。中国はこの1年余り、「人民日報」をはじめ官製メディアを通じて「AIIB(アジアインフラ投資銀 行)、一帯一路プロジェクトなどは株価上昇の材料」と株式市場ブームを煽り立ててい た。
過熱する不動産市場の抑制策を次々と導入する中での株式市場へのマネーシフトと 言われてきたが、ジリ貧の人民の不満の鉾先が習政権へ向かわないようにする思惑も あったはずだ。
景気減速下で所得や貯蓄が伸び悩む中、銀行融資は前年比で15%近く 増加しており、闇金融も貸しまくり、知識も経験もない十代の個人投資家(股民)す ら激増し、個人投資家の大多数が信用取引(借金)でマネーゲームをやっていた。
挙げ句、億単位の・無知で裸の個人投資家・を巻き込み、「株価と地下が逆連動」という不可解な動きとなり、昨年7月から6月中旬までの1年間で260%まで 高騰した上海総合指数は、その後の3週間ほどで40%前後も乱高下した。
焦った習政権 が公安まで動かし、「悪意ある空売り」を禁じ取締まる体制を整えたことからも「株 価暴落は陰謀」説は絵空事と言い切れまい。
中国へのマネー流入を支えてきたのは香港で、2008年のリーマンショック以降、その傾向は強まっており、「2014年には全体の流入額の7割強を占める」と のデータもある。
習主席の政敵、江沢民派の拠点の一つが香港で「江沢民派は2011年 から準備を進めてきた。動かせる資金は数兆元に上る」との情報もある。「ハエも虎 も叩く」「狐狩り(海外逃亡者を連れ戻す)」と宣戦布告された反習近平勢力が、 「中国経済をコントロールできるのはオレたちだ」とその力を誇示すべく反撃に出た のがこのたびの株価暴落だ、との見方だ。
あるいは、9月に迫っていたIMF(国際通貨 基金)の「特別引き出し権(SDR)」の構成通貨に人民元が採用されること(人民 元の国際通貨化)を絶対に阻止したい米国などの国際金融資本の一部が、紅・官二代と結託して仕掛けた「金融クーデター」だったのかもしれない。
5年前のSDR構成通貨の見直しでは、上海の外国為替市場で事実上の為 替管理を続けていることなどが問題視され、辛酸を舐めた経緯がある。ただ、IMFの ラガルド専務理事は、この数年、「加えるかどうかの問題ではなく、いつ加えるかの 問題だ」と人民元のSDR入りに肯定的な発言を繰り返してきた。
ラガルド体制で副専 務理事に昇格していた・ミスター元・の異名を持つ朱民(中国人民銀行の周小川頭取と並ぶ中国金融界のエリート)の陰が見え隠れするが、主要7カ国(G7)
の欧州メン バー(英独仏伊)も中国依存症に陥りSDR入りに前向きだった。
確かに近年、アジア周辺国は人民元経済圏として膨張を続けており、香港やシンガポールのみならず欧州やカナダなどでも人民元オフショア・センターが設 立され、昨年には英独仏などで人民元決済の銀行も決定している。
国際銀行間通信協 会によると、2014年12月の世界の資金決済比率で、人民元はカナダドルも豪ドルも 抜き、日本円に次ぐ5位に急浮上していた。しかしながら、8月4日に公表されたIMFス タッフ報告は、「現在のSDR構成通貨を2016年9月30日まで維持すべき」との見解で、 人民元が早々に採用される可能性はほぼ消えた。
昨年11月からは上海と香港の両証券取引所による株式越境取引制度も始まり、中国の個人投資家が人民元で本土以外の株式を売買できるようになり、金融規 制緩和のステップを具体的に踏んでいるかに「見せて」きた中国だったが、土壇場で 再び墓穴を掘ったのだ。
■「紅2代」は金融覇権を目指す
江沢民派の超大物、周永康(前政治局常務委員・序列9位)が、収賄と 職権乱用、機密漏洩などの罪で無期懲役と政治的権利の終身剥奪、個人財産の没収を 宣告されたことは記憶に新しい。江沢民自身は軍事パレードに出席し健在ぶりを示し たものの、かなりの高齢である。そういった中でここ数年、急浮上してきたのが江沢 民の長男で還暦を過ぎた江綿恒、ではなくその彼の息子で江沢民の直系の孫に当たる 1986年生まれの江志成だ。
ハーバード大学を卒業後、ゴールドマン・サックスに入社し投資手腕を磨いたとされる江志成は、2010年に博裕投資顧問(Boyu Capital)を創設した。
投 資者にはシンガポール政府系投資会社テマセク・ホールディングス、フォーブス誌の 長者番付の常連(2015年度は世界17位・アジア1位)である長江実業グループの総 帥・李嘉誠などの名前も並ぶ。博裕は創業翌年、北京や上海の国際空港にある免税店を 運営する日上免税行の経営支配権を取得し、「祖父の七光り」を見せつけた。
一躍、彼の名を世界に知らしめたのは昨年、アリババ・グループ・ホールディングス(阿里巴巴集団/馬雲会長/浙江省杭州の電子商取引企業/1999年創立) の新規株式公開(IPO)に関わり、NY証券取引所に上場した際に莫大な富を得たと報 じられた時だ。
ニューヨーク・タイムズ紙(2014年7月21日)は、「アリババの背後 にある、多くの紅2代株主が米国上場の真の勝者」との論評を掲載した。
複数の香港メディアも江志成の他、劉雲山政治局常務委員(序列5位)の息子・劉楽飛らがアリババに投資したことを報じている。
「アリババの馬雲会長と 江沢民の孫や劉雲山の息子などの紅2代らは、尋常でない政治的野心を持っている」 「江沢民の孫ら一部の紅2代の同盟は単純なものではなく、北京当局が警戒してい る」などの記述も散見する。
それにしても中国A株の大暴落が「金融クーデター」だったとして、い かなる方法で仕掛けたのか? 専門用語でダークプール(代替執行市場とも呼ばれ る)だと考えられる。証券取引所を通さず、投資家の注文を証券会社の社内で付け合せ て取引を成立させる取引所外取引の一種で、一般的に機関投資家やヘッジファンドが 参加者となる匿名証券取引である。
このダークプールについて、「市場の透明性を阻害している」との批判もあるが、米英そして香港の機関投資家の間で盛んだ。中国のA株市場も、借金して まで株に群がる裸の個人投資家以外、このダークプールに似た構造で動いているはず だ。
つまり紅・官2代の一部は、庶民には数えきれないほどの「0(ゼロ)」が並ぶ 巨額な資金を、匿名性も担保しつつ数字上で瞬時に動かす・新型兵器・を所持している。
■江沢民の長男の別称は「中国一の汚職王」
博裕の創業者・江志成が20代でひのき舞台に躍り出た背景として、その父であり、江沢民の長男である江綿恒の国内外での「働き」は無視できない。
1991年 に米ドレクセル大学で博士学位(超電導を専攻)を取得しヒューレット・パッカー ドで勤務していた時代に米国の永住権(グリーンカード)を手にしたとされる江綿恒 は、帰国後、親の七光りで冶金研究所の所長、中国科学院の副院長などを務めた 他、通信関係を牛耳り「電子大王」の異名を持つ存在になった。
胡錦濤国家主席の時代も、江沢民は院政を敷きながら息子の政治局常務委員入りを画策してきたが、共産主義青年団(団派)はもとより、太子党の多くにす ら忌み嫌われ果たせなかった経緯がある。なぜなら江綿恒の別称は「中国第一貪(中 国一の汚職王)」。銀行融資は、「パパの鶴の一声」で無尽蔵に与えられていたためだ。
拙著『豹変した中国人がアメリカをボロボロにした』(産経新聞出版・2011年刊)でも詳説したが、江沢民の息子や孫に限らず、中国共産党幹部の子孫たち は、この十数年、華麗な「紅色貴族」の人生を歩んできた。多くは北米や英国の名門 大学へ留学して修士や博士号を取得し、クリスチャンネームを持ち、北米や豪州の永 住権もしくは市民権(帰化)を取
得し、国内外に豪邸と超高級車を幾つも保有し、妻 子に加え2桁の愛人まで囲いと、グローバルかつ金満で奔放な生活を送っている。
仮令、相当に出来が悪く素行すら悪かろうと、親の威光を背中に米国ウォールストリートのJPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックス、モーガン・ス タンレー、クレディ・スイス銀行、ドイツ銀行、シティ・グループといった世界的な 銀行や証券会社に身を置き、中国の経済発展を追い風に、政企不分(政治と企業が分 かれていない)の特性も最大限
に悪用しながら桁違いなカネを扱う方法を覚えてき た。元来博打好きで覇権主義のDNAも包含する紅・官2代は、ハイリスク&ハイリターンを追求する金融という魔力に取りつかれたのだろう。
ウォールストリート・ジャーナル紙をはじめ、国内外のメディアがこの数年、紅・官2代のウォールストリートへの灰色就職について、ウィリアム・デー リー(1997年1月〜2000年7月、クリントン政権で商務長官を務め、2011年1月よりオバ マ政権で大統領首席補佐官に任命された)の関与などを報じており、米ホワイトハウ スの一部と中国共産党の一部勢力との癒着は否めない。
また、中国の外貨準備を多元的に投資する目的で、2007年9月に2000億 ドルで創設した中国投資有限責任公司(CIC)が最初の投資先に選んだのは、ニュー ヨークに拠点を置くプライベートエクイティファンド(未公開株、PE)大手のブラッ クストーン・グループだった。
CICから30億ドルの投資を受けたブラックストーン は、同年に上場。リーマン・ブラザーズを退職した金融のプロが1985年に設立し、今 や世界最大規模の投資運用会社とされるブラックストーンの主要株主には、今日もCICが名を連ねる。
そして「ブラックストーンのような評価の高い会社に、最初の投資が行えることは大変に喜ばしい」と語ったCICの初代董事長・楼継偉は、習政権で財務部 長(大臣)を務めている。
■米中金融機関の「灰色」な癒着
近年、共産党幹部による汚職問題が日常的に報じられるようになったが、中国の金融業界は20年以上前から問題山積だった。1993年11月、朱鎔基首相(当 時)は自ら中国人民銀行の総裁に就任し金融改革を宣言したが、人事刷新するため任命 した上層部も、次々と犯罪に手を染め失脚している。
温家宝が首相に就任した2003年 3月、早々から力を注いだのは金融システムの整備により国際金融市場に適応する金 融体制を構築することだった。
だが、同年8月に関係当局が国務院に提出した報告書 には、「全国金融業界の不良債権を査したが、正確な数字の提示が困難」「各金融機関の会計が大変に不透明であり、資金の不正流出が継続している」「政府機関の裏 口座の残高が上昇している」などと記されていた。
2005年10月には、失笑事件も起きた。「中国四大銀行の支店長・副支店長ら42人が香港経由で海外に集団逃亡。不正に持ち出された資金は、最低740億元と 22・3億ドルに上る」と報じられたのだ。香港金融機関の視察や研修を理由に、支店長 らが各々のグループで香港に渡り、その後、国慶節の休暇と偽り海外に出国してその ままトンズラ。
逃亡先は豪州やニュージーランド、北米などで、逃亡者の家族の大半 は現地で待機しており、金融官僚らによる組織的かつ計画的犯行とされた。100億円 近く横領してカナダへ逃げ込んだ中国銀行哈爾浜支店の元支店長の身柄の引き渡しを 巡り2国間の政治問題へと発展したが、カナダ市民の間でも侃侃諤諤となった。
十数年前からすでに「工商銀行、建設銀行、農業銀行、中国銀行の四大国有商業銀行の累計不良債権額は天文学的数字」とされ、金融エリートはごっそり持 ち逃げ。
日本の常識からすれば「経済犯罪者集団」「腐敗者集団」でしかないが、4 大商業銀行の株式上場を目指していた中国は、米国の銀行に主幹事の担当を依頼する など、「手取り足取り指南」してもらうことで株式公開にこぎつけている。一体全 体、どんなウルトラCを使ったのか?
しかもそれ以来、銀行株の時価総額番付の上位の常連となった。2006年 5月にゴールドマン・サックスから26億ドルの出資を受け、その他アメリカン・エキ スプレス他から出資を受けて同年に上場した中国工商銀行は、ランキング1、2位が定 位置である。
今年7月に『フォーチュン』が発表した世界企業番付「フォーチュ ン・グローバル500」でも、「利益ベース」で中国工商銀行(447億ドル)がトップだっ た。2位アップル社(395億ドル)に、中国建設銀行、米エクソン・モービル、中 国農業銀行、中国銀行と続き、上位6社のうち4社を「中国四大商業銀行」が占めた。
現在進行形で膨らんでいるはずの巨額の不良債権はどこに? 人民元は 中国に「管理」された通貨である。とすれば、少なくとも米中の金融業界は「灰色の 癒着」をしている。
■歴史は繰り返す
昭和16年の『神戸新聞』(4月26日付)に、興味深い記事を見つけた。 表題は「ユダヤ財閥頻に暗躍 南方資源の買占めに狂奔 サッスーン、香港で反日策 動」。その内容を一部抜粋する。
--(前略)ユダヤ財閥の暗躍は熾烈を極め東亜におけるユダヤ財閥の巨頭フリーメーソン東洋部長サッスーンは我が大東亜共栄圏建設妨害の一行為として このほど仏印における米の買占めに成功したといわれているが、上海よりの情報によ れば5月中頃香港において開催される重慶支持の南洋、蘭印、仏印、印度華僑の代表 者会議はサッスーンと介石政府との談合により我が南方政策の先手を打って物資の 買占めをせんとするものであり、これが資金は一切サッスーン財閥によって支弁され る、これはサッスーン財閥がアメリカユダヤ財閥と緊密なる連絡の下にかく反日行動に出たもので、ユダヤ研究者間の定説でありまたサッスーンと介石、仏印当局との深 き関係等々、陰に敢行されていた聖戦妨害行為は漸く表面化し、各方面の憤激の 焦点になりつつあり、このサッスーン財閥の動向は聖戦貫徹の上から重視されている-
昭和12年からの支那事変(日中戦争)は約8年に及んだが、国民党・介 石軍の戦費の大部分はユダヤ財閥サッスーン(当時、英ロスチャイルド家の東アジア 代理人で、アヘン密売で莫大な富を築いたとされる一族)が援助してきたこと、孫文 や介石の妻となった宋家(浙江財閥)がユダヤ資本と入魂の関係にあったことは周知 の事実だ。
20世紀初頭に「魔都」「東洋のニューヨーク」などと呼ばれたサッスーン家の富の象徴、上海の外灘(バンド)の摩天楼は、1世紀を経た今日まで中国の繁 栄を象徴す
る顔だ。
●(=登におおざと)小平復活とワンセットで1979年に創設された のは国策投資金融会社、中国国際信託投資公司(現・中国中信集団公司CITIC Group)で、「紅い資本主義」路線で外資導入による経済発展への道のりを歩んできた 中、国際金融資本との緊密な関係により「紅い財閥」が群雄割拠する時代となっている。
ちなみに江沢民の実父(江世俊)は汪兆銘政権の官僚、つまり戦時中に日本に協力した「漢奸(売国奴)」であり、国民党特務機関の一員だったことも暴露 されている。
共産党の「皮」を被っただけの一部勢力の「成果」が汚職による巨万 の富の蓄財と、国内外を震撼させかねない「金融爆弾」のノウハウだとすれば、「ハ エも虎もキツネも退治」の大号令で、粛清に躍起になる習政権を支持する海外勢力が 存在していてもおかしくはない。
大胆かつ大雑把に言えば、中国共産党内の熾烈なバトルは、米国VS英独仏国などとの代理戦争の意味合いが大きいと考えている。国共内戦ならぬ「共・共内 戦」だ。江一族は米国の国際金融資本と少なからず近い関係にあり、周永康を手足に 長年培ってきた石油利権を通じてロックフラー財閥との繋がりも強い。ASEAN諸国 を主軸に大中華経済圏を形成していくためにも、欧州列強との経済関係の強化に邁進 してきた団派を含めた習近平一派と、英王室チャールズ皇太子による「おぞましい、 古びた蝋人形」との酷評に激怒したとされる江沢民を主軸とする米国利権派という構造だ。
中国は紛れもなく、進みつつある国際秩序の大転換の主役(悪役)である。一方で中国は、国共内戦時代どころか清朝末期に先祖帰りしているようだ。「抗 日戦争勝利70周年」の式典でも、習主席は天安門広場でなく故宮の太和殿の中庭に赤 絨毯を敷いて、各国の来賓を迎えていた(清朝までの皇帝スタイル。時代劇にも良く あるシーン)。
9月末、習主席は初の米国公式訪問に臨み、年内には「江沢民の天敵」 英国を公式訪問してエリザベス女王にも謁見する予定だ。習政権の存続は現状、五分 五分だろう。だが国共内戦に敗れた国民党・介石軍が台湾へ逃げ込み、今日に至る までまがりなりにも政権与党であり続けてきたように、「共・共内戦」に敗れた中国 共産党幹部も、どこかで延命していくはずだ。危惧するのは、中国国内が混乱を極め 国防動員法が発令され、日系企業とその資産が事実上、接収されるなどの経済的な大 ダメージを受けること。そして、かつての国民党軍のように中国共産党幹部や野蛮な人民解放軍が「沖縄」になだれ込むことだ。その可能性はゼロではない。
■河添恵子氏■ 昭和38(1963)年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学を卒業。86年より北京外国語学院、翌87年から遼寧師範大学へ留学。主に中 国、台湾問題をテーマに取材、執筆活動を続ける。『中国人の世界乗っ取り計画』『豹 変した中国人がアメリカをボロボロにした』『だから中国は日本の農地を買いにやっ て来る』(いずれも産経新聞出版)、
『国防女子が行く』(共著、ビジネス社)な ど著書多数。
(ノンフィクション作家)2015.11.7
(採録:松本市 久保田 康文)