櫻井よしこ
日本ルネッサンス 第983回
岸田文雄首相にとって今年最大の関心事は7月10日予定の参議院議員選挙
であろう。公明党と合わせて過半数を取れば、その後3年間、選挙の心配
をしなくてよい安定期が手に入る。首相は自分の思い描く政治を思い切り
実行出来る。
世界大激変の中で日本の首相であることは、日本国にも世界にも大きく貢
献し、重要な歴史的使命を担うということだ。首相は具体的に自分の使命
をどうとらえているだろうか。
1月7日「言論テレビ」で今年の岸田政権を予測、分析した。首相就任から
100日近くが過ぎたが、首相の言葉からは日本と世界を動かす大きな志は
見えてこないという結論で論者一同が一致した。産経新聞論説委員の阿比
留瑠比氏は岸田氏を「有言不実行の人」と言い、雑誌「正論」発行人の有
元隆志氏は、言葉も行動も「空洞の人」と語った。政治ジャーナリストの
石橋文登氏は「朝日新聞にほめられたい人」と喝破した。
人権重視を強調しながら、首相はウイグル人虐殺問題で対中非難決議を止
めさせた。中国の脅威に対処するために自衛隊を強化し、国防費をGDP
の2%以上にするとの公約にも消極的で、フタを開けてみれば来年度の国
防費は殆ど増えていない。出入国管理法見直しは先延ばしで、敵基地攻撃
能力の保持も明言しなかった。
このような岸田政権に米国側は、1月7日の「2+2」(外相・防衛相による
戦略会議)で共同文書に「敵基地攻撃」を念頭に「日本はミサイルの脅威
に対抗するための能力を含め、国家の防衛に必要なあらゆる選択肢を検討
する」と書き込むよう求めた。
「戦略を完全に整合させ、共に目標を優先づけることによって、同盟を絶
えず現代化し、共同の能力を強化する決意」も明記した。岸田首相の優柔
不断振りとは対極を成す強い国家意志が表現された。
石橋氏の指摘だ。
「参院選までは摩擦を起こしたくないのです。国益に関わる大事な法案で
あっても、野党から攻撃されたり、朝日新聞から批判されるようなことに
は一切手をつけたくないと考えている。そう思えば岸田政治は全て手に取
るように分かります」
維新は公明に取って替る
何もしないにもかかわらず、岸田氏への支持率はゆるやかな右肩上がりで
66%を超えた。なぜか。「政治史を振り返れば、何もしなかった政権の方
が支持率も高く寿命も長い。たとえば、佐藤栄作氏がそうでした」と阿比
留氏は語る。
反対に立憲民主党代表の泉健太氏は自信喪失気味だ。昨秋の衆院選の得票
数を基本にすると、参院の32の1人区で立憲民主がとれるのはわずか数議
席になると言って警戒する。またもや立民大敗、自民大勝が7月に再現さ
れるのか。「自民大勝など考えられない」と石橋氏が真っ向から反論した。
「1月4日、伊勢神宮での年頭記者会見で岸田さんは非常に元気でした。去
年の総選挙で予想以上の261議席、得票数2760万、追加公認の分を入れた
ら2800万票近くとりました。安倍晋三元総理が3回の衆院選それぞれで得
た票数より圧倒的に多い。それで非常に自信を深めたのでしょう」
岸田氏は、このまま問題や摩擦を起こさずに参院選まで行けば勝てる、そ
の先に本格的政権への道が開けてくると読んでいるのであろう。だが衆院
選での大健闘は、いくら自民党に不満でも立憲民主や共産党に入れる気の
ない人たちが、立憲・共産の候補者に競り負けそうな自民党候補者を見て
危機感を抱き、自民党に戻ってきたからではないのか。「自民大敗、立憲
大勝」では日本は生き残れないと、思い直した人達は少なくない。自民党
の善戦はそのような有権者の立憲・共産忌避の結果でもある。もし、選挙
区に日本維新や国民民主の候補者がいれば、保守層はそちらに票を投じた
かもしれない。自民党への本当の支持はかなり弱含みだ。
国防や憲法で深刻な違いが目立つ自民・公明の連立政権よりも、自民党と
日本維新の方が親和性は高く国益にも適うと考える有権者は少なくない。
維新は公明党に取って替り得るのではないのかと思う。石橋氏が語る。
「日本維新は、橋下徹知事を支えるか否かで自民党大阪府連がまっ二つに
割れ、除名された人々が作った政党です。10年以上かけて、ここまで力を
つけた。大阪府内の市議会のおよそ全てで、最大会派は維新です。選挙の
手法も自民党と一緒、いわば第二自民党です。
彼らは連合の組織票に頼る国民民主を冷ややかな目で見ており、立憲には
敵意すら感じていると思います。だから自民党は維新と協調すべきなので
す。維新が1人区で国民と住み分けをして候補者を立ててきたら、自民に
とっては大きな脅威です」
70代後半の候補者たち
自民党は総崩れを起こしかねない。岸田政権の重要な仕事は、まず維新と
意思の疎通をはかることだが、それができていない。維新とのパイプは菅
義偉前首相と安倍晋三元首相だ。岸田氏は両氏との関係再確立に努力すべ
きだろう。次に一日も早く自民党の選挙態勢にメスを入れることだ。新聞
には32の1人区の候補予定者名が報じられている。その中で目を引くのが
70代後半の候補者たちだ。
「今回の衆院選でも70代以上の議員には辛い面があった。小沢一郎さんも
選挙区で落選した。75歳前後の候補者は黄色信号でしょう。たとえば長崎
の金子原二郎さん、農林水産大臣ですが、今、77歳、当選すれば84歳まで
議員です」と石橋氏。
福井の山崎正昭氏は79歳、元参院議長だ。鹿児島は78歳の野村哲郎氏が候
補者だ。
人生100年の時代であり、個々人によって知力も体力も異なるため一概に
言えないのは当然だ。だが、余程しっかり人選しなければ、自民党は危う
い。人口減で1人区が増え、2人以上の複数人区は減少するばかりだ。その
中で自民党が過半数をとれるところは、大阪も東京も含めて、ほとんどな
い。維新は本気で次の参院選で「ねじれ」を起こすつもりだ。
維新に選挙協力などを働きかけ、自らも魅力的な候補者を立てなければ、
自民党は大敗の恐れがある。
「安倍一強の秘策は、3割の岩盤支持者の支持を徹底的に守ったことで
す。立憲や蓮舫を支持するのはせいぜい1割だけだと考えて揺らがなかっ
た。今、保守支持層の3割が、岸田さんで大丈夫かと思い始めている。維
新に少しやらせたいと思う人が増えている。フワフワの66%を追う余り、
足下の岩の崩れに気付かないとしたら、危険です」
石橋氏の分析には説得力がある。選挙まであと半年余、岸田首相の猛省を
促したい。
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◆日銀「緊急利上げ」に現実味
今市太郎
財政危機と東証「市場再編」で日本株の地位はどん底へ
2022年の相場はかなりリスクが大きくなると考えざるを得ません。日本の
財政は火の車となり、東証は世界のローカル市場に成り果てる……昔から言
われてきたことが、いよいよ具現化していくと予想します。(『今市太郎
の戦略的FX投資』今市太郎)
日銀の指標から見えてきたインフレの兆し
2022年の私的相場リスク予想をさせていただきます。日本株特有の問題、
とりわけ日銀が主導する大問題について予想します。
先週の中銀政策発表ウイークの中で、まあったく事前から市場の興味を注
がれなかったのが、日銀の政策決定会合でした。しかし、新型コロナウイ
ルス対応の資金繰り支援策の縮小という結果発表が報道された途端に、日
経平均はあれよあれよと下げ始め、結果500円安で後場を終えることにな
りました。
本邦勢にとっては、コロナ感染が一段落した国内の状況下では、この手の
支援縮小の実施など、およそ相場下落の要素にはならないと誰もが思う内
容でした。
ところが、市場は完全に日銀も他の主要国の中央銀行の政策変更とともに
引き締め方向に動くのではないかといった憶測が飛び交ってしまった様子。
米国をはじめとして、いよいよインフレが到来しようという時に、日本だ
けデフレのままで緩和継続が続くわけがないと見られていることがいきな
り露見する状況となってしまいました。
ただ、その後の会見に登場した黒田総裁は、日本の物価上昇率は、一時的
な要因やエネルギーを除いてもプラス0.5%程度で、23年度でも1%程度の伸
びにとどまるとして、本邦にはインフレ一切関係なしを改めて強調して涼
しい顔をしていたのが印象的でした。
しかし、本邦にインフレが来ないというのは果たして本当なのでしょうか?
当の日銀が発表している経済指標からは、外的要因を含めてインフレの波
がすでにひたひたと押し寄せてきていることがわかります。
日銀が12月10日に発表した11月企業物価指数、いわゆるCGPIの速報値は、
前年比プラス9.0%と、過去40年来で最高の伸び率となっているほか、輸
入物価指数は円ベースで前年比プラス44.3%と、凄まじい上昇率を記録し
ています
海外からの影響で国内でもインフレが進行するのは、もはや避けられない
ところに来ている状況です。
日本はインフレが来ても利上げできない?
黒田総裁も「実質インフレ率2%は超えるかもしれない」とは発言してい
るようですが、実際、日銀内では相当この状況に慌てふためいているとい
う話も漏れ伝わってきています。
どこかで政策変更を余儀なくされることは、すでに自覚している可能性が
高そうです。
このメルマガでは、折に触れて書いてきましたが、アベノミクスは確か
に、デフレ脱却・円安推進・株価大幅上昇といったことが表面上の主目的
でした。
ところが、実は2%の実質インフレ達成を大義名分にして、日銀は金融抑
圧、つまり金利を限りなく0%に押しとどめて爆発的に発行している赤字
国債の金利、いわゆる国債費を強烈に低下させることに寄与してきたわけ
です。
そのため、「インフレが到来しました。はい、それでは利上げしましょ
う!」というわけには行かないのが現実のところ。
最初からいけるところまで行くという恐るべきインパール作戦に、いよい
よ破綻的終焉が見えてきていることが窺われます。
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◆自動車は大変動期に突入
「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和四年(2022)1月24日(月曜日)
通巻7195号
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SONY「ウォークマンEV」vsアップル
「iPhone EV」
ダムは決壊し、自動車は大変動期に突入してしまった
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十年後の自動車産業はどうなっているか。
トヨタは全米販売でもGMを抜いて、時価総額も40兆円を超えた。だ
が、トヨタはいつまで王者の位置を守れるだろうか?
EV市場は十年後に800兆円のマーケットになると予測されている。
SONY「ウォークマンEV」vs アップル「iPhone EV」の未
来図までが語られ、EVの欠陥が指摘されているにもかかわらず、EVを
目指してダムは決壊し、自動車は大変動期に突入してしまった。
ソニー、アップルばかりか車体開発に名乗りを上げた鴻海精密工業(ホ
ンハイ)は米国のGM閉鎖工場を買収した。中国の検索エンジン「百度」
は吉利汽車と共同出資会社を設立した。
EVへの参入を発表し、途中でやめたのはダイソン(英国、家電)と恒大
集団(中国の倒産寸前のデベロッパー)。部品でEVへの参入をきめたの
はファーウェイ(中国)や日本電産だ。
EVは充電のスタンドが必要な上、電力消費は二倍になる。寒冷地帯で
は長時間使用に耐えず、高速道路大渋滞の原因となったが、この問題は解
決されていない。
日本の場合、EVスタンドが従来のガソリンスタンドに代替できるの
か、GSは半分近くが営業停止に追い込まれた。それでもEVはすでに中
国で五十万円台の廉価版が人気を集めており、日本の地方都市ではクルマ
がないと生活できないから、必然的にEV市場が開ける可能性がある。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜書評 しょひょ
う BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北極熊は「地球温暖化」で絶滅どころか、四倍にふえていた
キリマンジャロの雪はヘミングウェイが描いたように残雪に輝いている
♪
杉山大志『15歳からの地球温暖化』(育鵬社)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
地球温暖化の嘘がまかり通る世界。
異常気象、台風頻発、洪水多発。そして凶作、飢餓。すべては地球温暖化
の所為だという面妖な言説が世界を覆い、カーボンニュートラル(脱炭
素)、EVが合い言葉となって、不思議なことに効率悪く、コスト高の太
陽光パネル、風力発電に傾斜する。ひょっとして、これは『彼ら』の利権?
著者の杉山氏はキヤノングローバル戦略研究所研究主幹。一貫して
EV、脱炭素の行き過ぎを警告してきた稀有の論客である。
北極熊は減少すると言われた。えっ? 一万頭から四万頭に増えていた。
キリマンジャロの雪は消えていなかった。ゴア元副大統領等の『不都合
な真実』は、2020年にキリマンジャロから雪はなくなると予測してい
たっけナ。
珊瑚礁の島嶼国家は海に沈んだか? どっこい、ツバルもモルディブも
沈んでおらず、タヒチでは大珊瑚礁があらたに見つかった。
日本の砂浜の90%がなくなると言われた。実際にはダム工事、護岸工
事で砂が大量に転用されたからで地球温暖化とは無関係である。
日本の猛暑は東日本で起こったが、地球温暖化ではなく自然変動が原因
だった。
山火事と地球温暖化の因果関係はなく、第一に山火事は自然発生であ
り、第二に森林管理が杜撰若しくはマネジメントが悪い。焼失面積は逆に
減っている。
熊が出没する。猪、鹿も。
典型例が蝦夷鹿の獸害だろう。これは地球温暖化ではない。猟師不足、強
い禁猟規制、そして狼の絶滅が原因である。
なぜ炭素が敵視され、原発も問題と酷評され、地球全体が熱病のように
「地球温暖化」なものを問題としているのか。
起源をしらべると国連の委員会報告にいきつくが、誰が深刻な問題だと火
をつけ、誰が、それによって裨益したかを考える視点が必要だろう。
EVが究極的にトヨタ潰しの中国とドイツの仕掛けた宣伝工作から始ま
り、中国が世界産業の主導権確保を狙っていることは周知の事実となった。
グレタとかの活動家をメディアはヒロインに育てあげ、先進国では高校
生がデモを展開するのも、背後に見えない組織が蠢動しているようだ。
嘘だらけ、間違いだらけの地球温暖化議論に根本から図解を多用して、
平明に説いた啓蒙書である。
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
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日露戦争直前、蒙古、チベット、ウイグルに工作に赴いた熱血の日本男児
現地人になりきり、言葉を覚え、食事も生活作法も同じにして工作に
従事した
♪
小滝透『中国から独立せよーー帝国日本と蒙、蔵、回』(集広舎)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
異色の出版社から、また異色の本が出た。
満州の馬賊となったり、大暴れした大陸浪人のことは大いに語られた。
伊達順之介をモデルの『夕陽と拳銃』は映画にもなった。
反面、埋もれた裏面史がある。こんにちの日本でほとんどの人が関心の
ないモンゴル、チベット、ウイグルの独立運動に、いかに日本の青年達が
拘わっていたのか。
日本は防共回廊を構築し、蒙蔵回をソ連の侵略から守る一方でシナへ反
転させようとする大戦略があった。そのためにモンゴルとチベットと東ト
ルキスタンに現地人になりきった青年達を要請し、派遣した。
東トルキスタンで日本と協力したウィグルの志士らは日本の敗戦後、決
死の覚悟で独立を夢にて帰国しようとして、タクラマカン砂漠に消えた。
内モンゴルには親日カラチン王がいた。カラチン王府は地政学的にもソ連
と日本の狭間に位置し、「王府の北には鉄道の要衝である赤峰がひかえて
いる。これは、対露戦を考えた場合、重要な位置を占める。ロシア軍の南
下がその進路にあたるからだ」
明治36年に日本政府はカラチン王を博覧会に招待した。
「これが王の心を一新させた」(87p)。
カラチン王ら蒙古の王族は日本に期待を寄せていた。河原操子は単身、
教員として赴任し、何時、馬賊や敵に襲撃されてもよいように下着は毎日
替え、ピストルを護身用に持ち歩いた。
二十年ほど前に評者(宮崎)この赤峰からタクシーを雇って、あいにく
の雨の中、カラチン王府を見学した。河原操子の写真パネルや展示コー
ナーがあった。
チベットとは仏教坊主との交流があり、深く食い入る手筈が整えられつ
つあった。
日本の最前線はパオトウである。現在、皮肉にもパオトウは内蒙古自治
区に編入され、なんとレアアール世界最大の生産地となった。
敗戦後もベトナム、インドネシアに日本兵は残り、独立運動を寡黙に支
援した。インドとミャンマーの独立にも日本の情報機関が関与した。台湾
には白団が軍事顧問団として秘かに派遣され、まだ根本中将は釣り人を
装って蒋介石支援に駆けつけ金門島の激戦で人民解放軍を駆逐した。
だが、モンゴル、チベット、ウイグルで日本の戦いは突然、断絶した。
現地に溶け込んで工作をした日本の若者達はどうなったのか、或る者は処
刑され、或る者は何年も現地で生きのびてから帰国した奇跡の人もいた。
驚くべきは、戦後帰国したこの残置諜者が外務省に報告に行くと、誰も
興味を示さなかったという。
「埋もれたもののふ、彼らの記録は殆ど残らず、完全に歴史からわすれ
られてしまうのだろうか」
本書の巻末に、丁寧な解説を久野潤氏が書いている。
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読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
♪
(読者の声1)貴誌に紹介のあった、宮崎正弘先生の『葬られた古代王朝
高志国と継体天皇』(宝島社新書)ですが、昨日、駅前の書店で発見し
購入しました。「重版」となっていたので、しばらく品切れだったのですね。
富山には高志の紅ガニがあり、また富山市の誇る文学館は「高志の文学
館」です。なぜ、高志かとかねてから不思議に思っていたことが、本書で
謎がとけました。
また万葉集は奈良の都で編まれた筈なのに、なぜ富山県高岡市の駅前に巨
大な大伴家持像が聳えていて、伏木に行けば万葉歴史文学館があるのか
も、不思議におもっていました。故郷のことを何も知らなかったのです
が、これも貴著で簡潔明瞭に沿革が書かれていて納得です。
富山県は越中、古代には能登も越中の範囲だったのですね。貴書に触発
され故郷の古代史に俄然興味が湧きました。有り難う御座います。
(UI生、高岡市)
♪
(読者の声2)前回紹介した1942年の世界地図に続いて今回は1932年(昭
和7年)のもの。
【一目でわかる漫画世界現状地図】
https://blog-imgs-116.fc2.com/o/s/y/osyoube/1932map1.jpg 新潮社発行の大衆雑誌「日の出」9月号の付録。漫画の宍戸左行は米国
暮らしの経験もある当時の人気作家。監修の稲原勝治と米田實は「国際問
題評論家」。どちらも米国の大学を卒業し大手紙の外報部長やロンドン特
派員を歴任。
大山卯次郎は1923(大正12)年にロサンゼルス日本総領事、昭和4年には昭
和天皇に御進講、国際反共連盟評議員。野田良治は大使館書記官(通訳官)
で南米移民に詳しく「大アマゾニヤ : 調査三十年」という著書もある。
この地図では当時の政治経済文化が一目でわかる。ひときわ大きく描か
れる人物はスターリン、フーバー、ガンジー。
ソビエトは5カ年計画で教会堂も工場に。農業集団化も描かれるが同時に
ウクライナで自営農民を餓死に追い込んでいた。
ポーランドでピアノを弾いているのはパデレフスキー、ドイツではヒト
ラーとヒンデンブルクが掴み合い。
フランスは当時世界の金の4分の1を保有、エッフェル塔と踊り子と油
絵。イギリスはローザンヌ賠償会議をまとめたマクドナルド首相。労働党
出身だけに半分労働者、半分貴族の絵。スペインは国王が国外へ逃亡し第
二共和制。イタリアはムソリーニ、トルコはケマル・パシャの改革で婦人
も短髪・洋装となっている。
アフリカは欧州勢力による草刈場、モロッコはフランス、スペイン、ベ
ルギー、イタリアが争っている。皇統三千年のアビシニア(エチオピア)、
土匪に悩ま
されるスーダンの英国兵。野獣横行する中央アフリカ一帯ではアメリカの
映画会社が撮影を開始、これもアメリカ資本政策の一端と肯ける。南アフ
リカは注釈
が詳しい。「抜け目のない英国はダイアモンドの生産地南ア連邦をしっか
り握って離さない。そしてこの辺りは有色人種絶対排斥、日本人は差別待
遇とあって世界三大強国の我が国民も土人と同一視されている」「白人と
有色人との混血児が多くその娘をケープガールといい、コーヒーに牛乳を
入れたのもケープガールといっている」。大英帝国臣民を自負していたガ
ンジーが反英になるきっかけが南アフリカの人種差別だった。
アラビア半島は馬とラクダとガソリンステーション、さらに水タバコ。
ペルシャは絨毯と石油、アフガンの戦士、バルチスタンの楽器弾き。イン
ドはガンジーに縄をかけようと必死な英国人、ヘビと虎と宝石、タージマ
ハルにリプトン紅茶。ビルマは米とルビー。セイロンは世界の茶の6分の1
を産する。シンガポールは軍港の拡張中。
タイは「小革命のあったシャム 立憲君主国となる」。フィリピン「太
平洋争奪戦の場合、アメリカの東洋根拠地となるフィリピン諸島、アメリ
カ官憲は近頃日本人の増加を大いに恐ろしがっている」。
日本周辺は満洲では宣統帝溥儀が執政就任。馬賊が横行し張学良に操ら
れる馬占山。外蒙古にはロシアの息が盛んにかかる。
日本では東北の冷害で鋤鍬の農民一揆。日米関係は悪化の一途。日本船
舶の独擅場だった太平洋航路も米加両国の汽船に客を奪われハワイでは日
本人に対する警戒心が高まる。
アメリカの太平洋側には空母サラトガ、大西洋側に最新鋭空母レキシン
トン。日米開戦は避けられないと識者は盛んに叫び、米国は5月に大西
洋・太平洋両艦隊合同の大演習を日本を仮想敵国として行った。海軍軍令
部長プラット大将は大西洋艦隊全部を挙げて根拠地を太平洋岸に置くこと
を命じた。
北米地図で面白いのはカナダが小麦と木材以外はエスキモーとインディ
アン、トナカイや犬ぞり。アラスカは白熊とトーテムポール、この地方の
インディアンは亜細亜人とは親戚筋らしく顔が瓜二つ。
合衆国はさすがに詳しく、フーバー大統領は不景気と赤字に頭を悩ま
せ、後ろにはドルの大金を持った紳士(顔は100%金融資本)が控える。
フォードの自動車
と大穀物倉庫、夜の大統領アルカポネは檻から首を出して笑っている。野
球はベーブ・ルース、ボクシングにアメリカンフットボールとスポーツが
盛ん、「何事にも世界第一を誇りたいのがヤンキーらしい」。南部ではベ
ンチに失業者、黒人がサックスを吹き、フロリダの海岸では水着姿の女
性。「女極楽、男働け」とあるのはレディファーストの揶揄か。禁酒法反
対のデモ、カリフォルニアは映画と金と石油。ロサンゼルスオリンピック
で日本選手の活躍。
キューバは葉巻で世界一。ベネズエラの石油は米英が利権を争い、いつ
◆夏の参院選、自民大敗の可能性も
櫻井よしこ
日本ルネッサンス 第983回
岸田文雄首相にとって今年最大の関心事は7月10日予定の参議院議員選挙
であろう。公明党と合わせて過半数を取れば、その後3年間、選挙の心配
をしなくてよい安定期が手に入る。首相は自分の思い描く政治を思い切り
実行出来る。
世界大激変の中で日本の首相であることは、日本国にも世界にも大きく貢
献し、重要な歴史的使命を担うということだ。首相は具体的に自分の使命
をどうとらえているだろうか。
1月7日「言論テレビ」で今年の岸田政権を予測、分析した。首相就任から
100日近くが過ぎたが、首相の言葉からは日本と世界を動かす大きな志は
見えてこないという結論で論者一同が一致した。産経新聞論説委員の阿比
留瑠比氏は岸田氏を「有言不実行の人」と言い、雑誌「正論」発行人の有
元隆志氏は、言葉も行動も「空洞の人」と語った。政治ジャーナリストの
石橋文登氏は「朝日新聞にほめられたい人」と喝破した。
人権重視を強調しながら、首相はウイグル人虐殺問題で対中非難決議を止
めさせた。中国の脅威に対処するために自衛隊を強化し、国防費をGDP
の2%以上にするとの公約にも消極的で、フタを開けてみれば来年度の国
防費は殆ど増えていない。出入国管理法見直しは先延ばしで、敵基地攻撃
能力の保持も明言しなかった。
このような岸田政権に米国側は、1月7日の「2+2」(外相・防衛相による
戦略会議)で共同文書に「敵基地攻撃」を念頭に「日本はミサイルの脅威
に対抗するための能力を含め、国家の防衛に必要なあらゆる選択肢を検討
する」と書き込むよう求めた。
「戦略を完全に整合させ、共に目標を優先づけることによって、同盟を絶
えず現代化し、共同の能力を強化する決意」も明記した。岸田首相の優柔
不断振りとは対極を成す強い国家意志が表現された。
石橋氏の指摘だ。
「参院選までは摩擦を起こしたくないのです。国益に関わる大事な法案で
あっても、野党から攻撃されたり、朝日新聞から批判されるようなことに
は一切手をつけたくないと考えている。そう思えば岸田政治は全て手に取
るように分かります」
維新は公明に取って替る
何もしないにもかかわらず、岸田氏への支持率はゆるやかな右肩上がりで
66%を超えた。なぜか。「政治史を振り返れば、何もしなかった政権の方
が支持率も高く寿命も長い。たとえば、佐藤栄作氏がそうでした」と阿比
留氏は語る。
反対に立憲民主党代表の泉健太氏は自信喪失気味だ。昨秋の衆院選の得票
数を基本にすると、参院の32の1人区で立憲民主がとれるのはわずか数議
席になると言って警戒する。またもや立民大敗、自民大勝が7月に再現さ
れるのか。「自民大勝など考えられない」と石橋氏が真っ向から反論した。
「1月4日、伊勢神宮での年頭記者会見で岸田さんは非常に元気でした。去
年の総選挙で予想以上の261議席、得票数2760万、追加公認の分を入れた
ら2800万票近くとりました。安倍晋三元総理が3回の衆院選それぞれで得
た票数より圧倒的に多い。それで非常に自信を深めたのでしょう」
岸田氏は、このまま問題や摩擦を起こさずに参院選まで行けば勝てる、そ
の先に本格的政権への道が開けてくると読んでいるのであろう。だが衆院
選での大健闘は、いくら自民党に不満でも立憲民主や共産党に入れる気の
ない人たちが、立憲・共産の候補者に競り負けそうな自民党候補者を見て
危機感を抱き、自民党に戻ってきたからではないのか。「自民大敗、立憲
大勝」では日本は生き残れないと、思い直した人達は少なくない。自民党
の善戦はそのような有権者の立憲・共産忌避の結果でもある。もし、選挙
区に日本維新や国民民主の候補者がいれば、保守層はそちらに票を投じた
かもしれない。自民党への本当の支持はかなり弱含みだ。
国防や憲法で深刻な違いが目立つ自民・公明の連立政権よりも、自民党と
日本維新の方が親和性は高く国益にも適うと考える有権者は少なくない。
維新は公明党に取って替り得るのではないのかと思う。石橋氏が語る。
「日本維新は、橋下徹知事を支えるか否かで自民党大阪府連がまっ二つに
割れ、除名された人々が作った政党です。10年以上かけて、ここまで力を
つけた。大阪府内の市議会のおよそ全てで、最大会派は維新です。選挙の
手法も自民党と一緒、いわば第二自民党です。
彼らは連合の組織票に頼る国民民主を冷ややかな目で見ており、立憲には
敵意すら感じていると思います。だから自民党は維新と協調すべきなので
す。維新が1人区で国民と住み分けをして候補者を立ててきたら、自民に
とっては大きな脅威です」
70代後半の候補者たち
自民党は総崩れを起こしかねない。岸田政権の重要な仕事は、まず維新と
意思の疎通をはかることだが、それができていない。維新とのパイプは菅
義偉前首相と安倍晋三元首相だ。岸田氏は両氏との関係再確立に努力すべ
きだろう。次に一日も早く自民党の選挙態勢にメスを入れることだ。新聞
には32の1人区の候補予定者名が報じられている。その中で目を引くのが
70代後半の候補者たちだ。
「今回の衆院選でも70代以上の議員には辛い面があった。小沢一郎さんも
選挙区で落選した。75歳前後の候補者は黄色信号でしょう。たとえば長崎
の金子原二郎さん、農林水産大臣ですが、今、77歳、当選すれば84歳まで
議員です」と石橋氏。
福井の山崎正昭氏は79歳、元参院議長だ。鹿児島は78歳の野村哲郎氏が候
補者だ。
人生100年の時代であり、個々人によって知力も体力も異なるため一概に
言えないのは当然だ。だが、余程しっかり人選しなければ、自民党は危う
い。人口減で1人区が増え、2人以上の複数人区は減少するばかりだ。その
中で自民党が過半数をとれるところは、大阪も東京も含めて、ほとんどな
い。維新は本気で次の参院選で「ねじれ」を起こすつもりだ。
維新に選挙協力などを働きかけ、自らも魅力的な候補者を立てなければ、
自民党は大敗の恐れがある。
「安倍一強の秘策は、3割の岩盤支持者の支持を徹底的に守ったことで
す。立憲や蓮舫を支持するのはせいぜい1割だけだと考えて揺らがなかっ
た。今、保守支持層の3割が、岸田さんで大丈夫かと思い始めている。維
新に少しやらせたいと思う人が増えている。フワフワの66%を追う余り、
足下の岩の崩れに気付かないとしたら、危険です」
石橋氏の分析には説得力がある。選挙まであと半年余、岸田首相の猛省を
促したい。
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◆日銀「緊急利上げ」に現実味
今市太郎
財政危機と東証「市場再編」で日本株の地位はどん底へ
2022年の相場はかなりリスクが大きくなると考えざるを得ません。日本の
財政は火の車となり、東証は世界のローカル市場に成り果てる……昔から言
われてきたことが、いよいよ具現化していくと予想します。(『今市太郎
の戦略的FX投資』今市太郎)
日銀の指標から見えてきたインフレの兆し
2022年の私的相場リスク予想をさせていただきます。日本株特有の問題、
とりわけ日銀が主導する大問題について予想します。
先週の中銀政策発表ウイークの中で、まあったく事前から市場の興味を注
がれなかったのが、日銀の政策決定会合でした。しかし、新型コロナウイ
ルス対応の資金繰り支援策の縮小という結果発表が報道された途端に、日
経平均はあれよあれよと下げ始め、結果500円安で後場を終えることにな
りました。
本邦勢にとっては、コロナ感染が一段落した国内の状況下では、この手の
支援縮小の実施など、およそ相場下落の要素にはならないと誰もが思う内
容でした。
ところが、市場は完全に日銀も他の主要国の中央銀行の政策変更とともに
引き締め方向に動くのではないかといった憶測が飛び交ってしまった様子。
米国をはじめとして、いよいよインフレが到来しようという時に、日本だ
けデフレのままで緩和継続が続くわけがないと見られていることがいきな
り露見する状況となってしまいました。
ただ、その後の会見に登場した黒田総裁は、日本の物価上昇率は、一時的
な要因やエネルギーを除いてもプラス0.5%程度で、23年度でも1%程度の伸
びにとどまるとして、本邦にはインフレ一切関係なしを改めて強調して涼
しい顔をしていたのが印象的でした。
しかし、本邦にインフレが来ないというのは果たして本当なのでしょうか?
当の日銀が発表している経済指標からは、外的要因を含めてインフレの波
がすでにひたひたと押し寄せてきていることがわかります。
日銀が12月10日に発表した11月企業物価指数、いわゆるCGPIの速報値は、
前年比プラス9.0%と、過去40年来で最高の伸び率となっているほか、輸
入物価指数は円ベースで前年比プラス44.3%と、凄まじい上昇率を記録し
ています
海外からの影響で国内でもインフレが進行するのは、もはや避けられない
ところに来ている状況です。
日本はインフレが来ても利上げできない?
黒田総裁も「実質インフレ率2%は超えるかもしれない」とは発言してい
るようですが、実際、日銀内では相当この状況に慌てふためいているとい
う話も漏れ伝わってきています。
どこかで政策変更を余儀なくされることは、すでに自覚している可能性が
高そうです。
このメルマガでは、折に触れて書いてきましたが、アベノミクスは確か
に、デフレ脱却・円安推進・株価大幅上昇といったことが表面上の主目的
でした。
ところが、実は2%の実質インフレ達成を大義名分にして、日銀は金融抑
圧、つまり金利を限りなく0%に押しとどめて爆発的に発行している赤字
国債の金利、いわゆる国債費を強烈に低下させることに寄与してきたわけ
です。
そのため、「インフレが到来しました。はい、それでは利上げしましょ
う!」というわけには行かないのが現実のところ。
最初からいけるところまで行くという恐るべきインパール作戦に、いよい
よ破綻的終焉が見えてきていることが窺われます。
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◆自動車は大変動期に突入
「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和四年(2022)1月24日(月曜日)
通巻7195号
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SONY「ウォークマンEV」vsアップル
「iPhone EV」
ダムは決壊し、自動車は大変動期に突入してしまった
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十年後の自動車産業はどうなっているか。
トヨタは全米販売でもGMを抜いて、時価総額も40兆円を超えた。だ
が、トヨタはいつまで王者の位置を守れるだろうか?
EV市場は十年後に800兆円のマーケットになると予測されている。
SONY「ウォークマンEV」vs アップル「iPhone EV」の未
来図までが語られ、EVの欠陥が指摘されているにもかかわらず、EVを
目指してダムは決壊し、自動車は大変動期に突入してしまった。
ソニー、アップルばかりか車体開発に名乗りを上げた鴻海精密工業(ホ
ンハイ)は米国のGM閉鎖工場を買収した。中国の検索エンジン「百度」
は吉利汽車と共同出資会社を設立した。
EVへの参入を発表し、途中でやめたのはダイソン(英国、家電)と恒大
集団(中国の倒産寸前のデベロッパー)。部品でEVへの参入をきめたの
はファーウェイ(中国)や日本電産だ。
EVは充電のスタンドが必要な上、電力消費は二倍になる。寒冷地帯で
は長時間使用に耐えず、高速道路大渋滞の原因となったが、この問題は解
決されていない。
日本の場合、EVスタンドが従来のガソリンスタンドに代替できるの
か、GSは半分近くが営業停止に追い込まれた。それでもEVはすでに中
国で五十万円台の廉価版が人気を集めており、日本の地方都市ではクルマ
がないと生活できないから、必然的にEV市場が開ける可能性がある。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜書評 しょひょ
う BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
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北極熊は「地球温暖化」で絶滅どころか、四倍にふえていた
キリマンジャロの雪はヘミングウェイが描いたように残雪に輝いている
♪
杉山大志『15歳からの地球温暖化』(育鵬社)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
地球温暖化の嘘がまかり通る世界。
異常気象、台風頻発、洪水多発。そして凶作、飢餓。すべては地球温暖化
の所為だという面妖な言説が世界を覆い、カーボンニュートラル(脱炭
素)、EVが合い言葉となって、不思議なことに効率悪く、コスト高の太
陽光パネル、風力発電に傾斜する。ひょっとして、これは『彼ら』の利権?
著者の杉山氏はキヤノングローバル戦略研究所研究主幹。一貫して
EV、脱炭素の行き過ぎを警告してきた稀有の論客である。
北極熊は減少すると言われた。えっ? 一万頭から四万頭に増えていた。
キリマンジャロの雪は消えていなかった。ゴア元副大統領等の『不都合
な真実』は、2020年にキリマンジャロから雪はなくなると予測してい
たっけナ。
珊瑚礁の島嶼国家は海に沈んだか? どっこい、ツバルもモルディブも
沈んでおらず、タヒチでは大珊瑚礁があらたに見つかった。
日本の砂浜の90%がなくなると言われた。実際にはダム工事、護岸工
事で砂が大量に転用されたからで地球温暖化とは無関係である。
日本の猛暑は東日本で起こったが、地球温暖化ではなく自然変動が原因
だった。
山火事と地球温暖化の因果関係はなく、第一に山火事は自然発生であ
り、第二に森林管理が杜撰若しくはマネジメントが悪い。焼失面積は逆に
減っている。
熊が出没する。猪、鹿も。
典型例が蝦夷鹿の獸害だろう。これは地球温暖化ではない。猟師不足、強
い禁猟規制、そして狼の絶滅が原因である。
なぜ炭素が敵視され、原発も問題と酷評され、地球全体が熱病のように
「地球温暖化」なものを問題としているのか。
起源をしらべると国連の委員会報告にいきつくが、誰が深刻な問題だと火
をつけ、誰が、それによって裨益したかを考える視点が必要だろう。
EVが究極的にトヨタ潰しの中国とドイツの仕掛けた宣伝工作から始ま
り、中国が世界産業の主導権確保を狙っていることは周知の事実となった。
グレタとかの活動家をメディアはヒロインに育てあげ、先進国では高校
生がデモを展開するのも、背後に見えない組織が蠢動しているようだ。
嘘だらけ、間違いだらけの地球温暖化議論に根本から図解を多用して、
平明に説いた啓蒙書である。
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
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日露戦争直前、蒙古、チベット、ウイグルに工作に赴いた熱血の日本男児
現地人になりきり、言葉を覚え、食事も生活作法も同じにして工作に
従事した
♪
小滝透『中国から独立せよーー帝国日本と蒙、蔵、回』(集広舎)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
異色の出版社から、また異色の本が出た。
満州の馬賊となったり、大暴れした大陸浪人のことは大いに語られた。
伊達順之介をモデルの『夕陽と拳銃』は映画にもなった。
反面、埋もれた裏面史がある。こんにちの日本でほとんどの人が関心の
ないモンゴル、チベット、ウイグルの独立運動に、いかに日本の青年達が
拘わっていたのか。
日本は防共回廊を構築し、蒙蔵回をソ連の侵略から守る一方でシナへ反
転させようとする大戦略があった。そのためにモンゴルとチベットと東ト
ルキスタンに現地人になりきった青年達を要請し、派遣した。
東トルキスタンで日本と協力したウィグルの志士らは日本の敗戦後、決
死の覚悟で独立を夢にて帰国しようとして、タクラマカン砂漠に消えた。
内モンゴルには親日カラチン王がいた。カラチン王府は地政学的にもソ連
と日本の狭間に位置し、「王府の北には鉄道の要衝である赤峰がひかえて
いる。これは、対露戦を考えた場合、重要な位置を占める。ロシア軍の南
下がその進路にあたるからだ」
明治36年に日本政府はカラチン王を博覧会に招待した。
「これが王の心を一新させた」(87p)。
カラチン王ら蒙古の王族は日本に期待を寄せていた。河原操子は単身、
教員として赴任し、何時、馬賊や敵に襲撃されてもよいように下着は毎日
替え、ピストルを護身用に持ち歩いた。
二十年ほど前に評者(宮崎)この赤峰からタクシーを雇って、あいにく
の雨の中、カラチン王府を見学した。河原操子の写真パネルや展示コー
ナーがあった。
チベットとは仏教坊主との交流があり、深く食い入る手筈が整えられつ
つあった。
日本の最前線はパオトウである。現在、皮肉にもパオトウは内蒙古自治
区に編入され、なんとレアアール世界最大の生産地となった。
敗戦後もベトナム、インドネシアに日本兵は残り、独立運動を寡黙に支
援した。インドとミャンマーの独立にも日本の情報機関が関与した。台湾
には白団が軍事顧問団として秘かに派遣され、まだ根本中将は釣り人を
装って蒋介石支援に駆けつけ金門島の激戦で人民解放軍を駆逐した。
だが、モンゴル、チベット、ウイグルで日本の戦いは突然、断絶した。
現地に溶け込んで工作をした日本の若者達はどうなったのか、或る者は処
刑され、或る者は何年も現地で生きのびてから帰国した奇跡の人もいた。
驚くべきは、戦後帰国したこの残置諜者が外務省に報告に行くと、誰も
興味を示さなかったという。
「埋もれたもののふ、彼らの記録は殆ど残らず、完全に歴史からわすれ
られてしまうのだろうか」
本書の巻末に、丁寧な解説を久野潤氏が書いている。
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読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS
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♪
(読者の声1)貴誌に紹介のあった、宮崎正弘先生の『葬られた古代王朝
高志国と継体天皇』(宝島社新書)ですが、昨日、駅前の書店で発見し
購入しました。「重版」となっていたので、しばらく品切れだったのですね。
富山には高志の紅ガニがあり、また富山市の誇る文学館は「高志の文学
館」です。なぜ、高志かとかねてから不思議に思っていたことが、本書で
謎がとけました。
また万葉集は奈良の都で編まれた筈なのに、なぜ富山県高岡市の駅前に巨
大な大伴家持像が聳えていて、伏木に行けば万葉歴史文学館があるのか
も、不思議におもっていました。故郷のことを何も知らなかったのです
が、これも貴著で簡潔明瞭に沿革が書かれていて納得です。
富山県は越中、古代には能登も越中の範囲だったのですね。貴書に触発
され故郷の古代史に俄然興味が湧きました。有り難う御座います。
(UI生、高岡市)
♪
(読者の声2)前回紹介した1942年の世界地図に続いて今回は1932年(昭
和7年)のもの。
【一目でわかる漫画世界現状地図】
https://blog-imgs-116.fc2.com/o/s/y/osyoube/1932map1.jpg 新潮社発行の大衆雑誌「日の出」9月号の付録。漫画の宍戸左行は米国
暮らしの経験もある当時の人気作家。監修の稲原勝治と米田實は「国際問
題評論家」。どちらも米国の大学を卒業し大手紙の外報部長やロンドン特
派員を歴任。
大山卯次郎は1923(大正12)年にロサンゼルス日本総領事、昭和4年には昭
和天皇に御進講、国際反共連盟評議員。野田良治は大使館書記官(通訳官)
で南米移民に詳しく「大アマゾニヤ : 調査三十年」という著書もある。
この地図では当時の政治経済文化が一目でわかる。ひときわ大きく描か
れる人物はスターリン、フーバー、ガンジー。
ソビエトは5カ年計画で教会堂も工場に。農業集団化も描かれるが同時に
ウクライナで自営農民を餓死に追い込んでいた。
ポーランドでピアノを弾いているのはパデレフスキー、ドイツではヒト
ラーとヒンデンブルクが掴み合い。
フランスは当時世界の金の4分の1を保有、エッフェル塔と踊り子と油
絵。イギリスはローザンヌ賠償会議をまとめたマクドナルド首相。労働党
出身だけに半分労働者、半分貴族の絵。スペインは国王が国外へ逃亡し第
二共和制。イタリアはムソリーニ、トルコはケマル・パシャの改革で婦人
も短髪・洋装となっている。
アフリカは欧州勢力による草刈場、モロッコはフランス、スペイン、ベ
ルギー、イタリアが争っている。皇統三千年のアビシニア(エチオピア)、
土匪に悩ま
されるスーダンの英国兵。野獣横行する中央アフリカ一帯ではアメリカの
映画会社が撮影を開始、これもアメリカ資本政策の一端と肯ける。南アフ
リカは注釈
が詳しい。「抜け目のない英国はダイアモンドの生産地南ア連邦をしっか
り握って離さない。そしてこの辺りは有色人種絶対排斥、日本人は差別待
遇とあって世界三大強国の我が国民も土人と同一視されている」「白人と
有色人との混血児が多くその娘をケープガールといい、コーヒーに牛乳を
入れたのもケープガールといっている」。大英帝国臣民を自負していたガ
ンジーが反英になるきっかけが南アフリカの人種差別だった。
アラビア半島は馬とラクダとガソリンステーション、さらに水タバコ。
ペルシャは絨毯と石油、アフガンの戦士、バルチスタンの楽器弾き。イン
ドはガンジーに縄をかけようと必死な英国人、ヘビと虎と宝石、タージマ
ハルにリプトン紅茶。ビルマは米とルビー。セイロンは世界の茶の6分の1
を産する。シンガポールは軍港の拡張中。
タイは「小革命のあったシャム 立憲君主国となる」。フィリピン「太
平洋争奪戦の場合、アメリカの東洋根拠地となるフィリピン諸島、アメリ
カ官憲は近頃日本人の増加を大いに恐ろしがっている」。
日本周辺は満洲では宣統帝溥儀が執政就任。馬賊が横行し張学良に操ら
れる馬占山。外蒙古にはロシアの息が盛んにかかる。
日本では東北の冷害で鋤鍬の農民一揆。日米関係は悪化の一途。日本船
舶の独擅場だった太平洋航路も米加両国の汽船に客を奪われハワイでは日
本人に対する警戒心が高まる。
アメリカの太平洋側には空母サラトガ、大西洋側に最新鋭空母レキシン
トン。日米開戦は避けられないと識者は盛んに叫び、米国は5月に大西
洋・太平洋両艦隊合同の大演習を日本を仮想敵国として行った。海軍軍令
部長プラット大将は大西洋艦隊全部を挙げて根拠地を太平洋岸に置くこと
を命じた。
北米地図で面白いのはカナダが小麦と木材以外はエスキモーとインディ
アン、トナカイや犬ぞり。アラスカは白熊とトーテムポール、この地方の
インディアンは亜細亜人とは親戚筋らしく顔が瓜二つ。
合衆国はさすがに詳しく、フーバー大統領は不景気と赤字に頭を悩ま
せ、後ろにはドルの大金を持った紳士(顔は100%金融資本)が控える。
フォードの自動車
と大穀物倉庫、夜の大統領アルカポネは檻から首を出して笑っている。野
球はベーブ・ルース、ボクシングにアメリカンフットボールとスポーツが
盛ん、「何事にも世界第一を誇りたいのがヤンキーらしい」。南部ではベ
ンチに失業者、黒人がサックスを吹き、フロリダの海岸では水着姿の女
性。「女極楽、男働け」とあるのはレディファーストの揶揄か。禁酒法反
対のデモ、カリフォルニアは映画と金と石油。ロサンゼルスオリンピック
で日本選手の活躍。
キューバは葉巻で世界一。ベネズエラの石油は米英が利権を争い、いつ
も睨み合っている。コロンビアはバナナとコーヒー、パナマ帽。ボリビア
は世界一の黄金国、南米航路の日本郵船はチリから硝石を満載して帰航す
る。ブラジルは日本人を差別せず日本人移民が13万人。
戦前の日本は本土の人口7千万人すら養えず移民を推進した。現在は少
子高齢化といっても1億2500万人以上。欧州諸国から見れば十分すぎるか
もしれない。中東の産油国などすべての国のGDPを合計してもスペイン程
度しかない。石油・天然ガスに代わる産業を育てないと人口過剰でジリ貧
となる。インドネシアは2003年ころから石油は輸入国に転落している。イ
ンドネシアが首都をボルネオに移転するというのも東マレーシアとブルネ
イの資源を狙っているのかもしれない。
2015年ころの記事で日本海と東シナ海にある手つかずの石油・天然ガス
資源をめぐって、アメリカは台湾と尖閣で日中対立を煽り、戦争で最初は
日本を支援するが徐々に手を引き、日本が弱ったところで仲裁に入り資源
を分捕るというストーリーがあった。今後10年以内に大戦争が起こる可能
性は高いのではないか。
(PB生、千葉)
(宮崎正弘のコメント)貴重な漫画地図、本質を掴んでいますね。なにか
の番組でも紹介したいと思います。
も睨み合っている。コロンビアはバナナとコーヒー、パナマ帽。ボリビア
は世界一の黄金国、南米航路の日本郵船はチリから硝石を満載して帰航す
る。ブラジルは日本人を差別せず日本人移民が13万人。
戦前の日本は本土の人口7千万人すら養えず移民を推進した。現在は少
子高齢化といっても1億2500万人以上。欧州諸国から見れば十分すぎるか
もしれない。中東の産油国などすべての国のGDPを合計してもスペイン程
度しかない。石油・天然ガスに代わる産業を育てないと人口過剰でジリ貧
となる。インドネシアは2003年ころから石油は輸入国に転落している。イ
ンドネシアが首都をボルネオに移転するというのも東マレーシアとブルネ
イの資源を狙っているのかもしれない。
2015年ころの記事で日本海と東シナ海にある手つかずの石油・天然ガス
資源をめぐって、アメリカは台湾と尖閣で日中対立を煽り、戦争で最初は
日本を支援するが徐々に手を引き、日本が弱ったところで仲裁に入り資源
を分捕るというストーリーがあった。今後10年以内に大戦争が起こる可能
性は高いのではないか。
(PB生、千葉)
(宮崎正弘のコメント)貴重な漫画地図、本質を掴んでいますね。なにか
の番組でも紹介したいと思います。