2021年09月19日

◆河野氏支持は真の保守か

【櫻井よしこ 美しき勁き国へ】 2021.9.16

岸田文雄、河野太郎、高市早苗の3氏が立候補を表明した自民党総裁選で
節操を欠く事象が起きている。世論調査で高い支持率を誇る河野氏に当選
3回生以下の衆院議員が群がっているのだ。ここでは彼らを都合上、年齢
に関わりなく「若手議員」と呼ぶ。彼らに問う。河野氏支持の理由は何
か、と。

彼らの多くは安倍晋三前首相に寄せられた保守層および保守中間層の強い
支持ゆえに当選した。安倍氏は野党時代を含め6回の国政選挙で圧勝し平
成29年の衆院選では284議席を獲得。その結果生まれたのが彼ら若手議
員だ。その数は現在126人、党所属の衆院議員の4割超だ。

彼らは多くはいまだ自身の政治基盤に自信が持てないでいる。落選の可能
性がないとはいえない。そのため党の顔に人気者を据えて自らの足らざる
ところを補ってもらおうとの思惑が透けてみえる。

政治家の真価はその有する価値観にある。政治信条・政策こそ政治家の命
だ。同じ視点に立てば安倍政権への保守層。保守的無党派層の支持で当選
したと言ってよい若手議員らが河野氏支持に走るのは節操を欠くのではな
いか。後述のように河野氏の政策は保守とは程遠い。総裁選を前に自民党
への保守層の支持を揺るぎないものにした安倍氏の主な政策を思い出したい。

▽日本の国土、国民を守るために、自衛隊を強くする。憲法に自衛隊を書
き込み憲法改正に着手する。▽日本の国柄を成す皇室を尊崇し、国民の幸
福を祈り続けてくださる皇室を、これからも本来の形のまま守るため男系
男子による皇位継承をゆるがせにしない▽国民生活を支える経済を活性化
する。経済・産業の基盤であるエネルギーの安定供給のため、再生可能エ
ネルギー、原子力発電、火力発電の最善の組み合わせを図る。

これら重要事項における安倍自民党の考え方を保守層が支持した結果、選
挙の度に自民党は圧勝した。それゆえに当選した議員諸氏はその先の政策
についての従来の自民党の考え方を大事にする義務があるといえる。政策
を横に置いて、人気の度合い次第で旗印を変えるような行動は、有権者へ
の背信である。

 3氏に改めて問うべき第1の点は国防だ。中国の脅威が強大化し、わが
国を取り巻く安全保障環境が急速に悪化する中で、国防の危機に対処する
覚悟はあるのか。

 最も明確なのが高市氏だ。氏は経済安全保障への取り組み強化に加え、
迅速な敵基地攻撃能力の構築を主張する。岸田氏も敵基地攻撃能力を「有
力な選択肢」と捉える。一方、河野氏は「弾道ミサイルの移動式発射台を
見つけて破壊するのは困難」として、日米同盟に基づく抑止力全体の向上
で対応するとする。これでは曖昧すぎて分からない。具体的に説明すべきだ。

 「価値観」守ってこその自民

 そもそも河野氏の国防に対する考え方には根本的な問題がある。氏が防
衛省だったときに地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショ
ア」をめぐり問題が起きた。同装備は北朝鮮、中国によるミサイル攻撃に
備えるものだ。その装備計画を、河野氏はいきなり中止した。迎撃ミサイ
ル発射後にミサイルから切り離されるブースターが自衛隊施設内を超えて
民家に落ちる危険性があるという理由だ。

 北朝鮮や中国のミサイルに核や生物兵器が搭載されない保証はなく、そ
の場合、数十万人単位の人命が失われかねない。河野氏はその重大な危険
を、ブースターの民有地落下の危険と同列に並べ、代替案も示さず独断的
判断でやめさせた。保守層はこの無責任な決断を受け入れない。そんな河
野氏を若手議員は信じられるか。

 経済、国民生活、産業の基盤としてのエネルギーを大切にしながらも他
のエネルギー源、とりわけ原子力を活用しなければ電力の安定的供給など
不可能だ。エネルギー政策で最も明確なのが岸田氏で、安全確保を前提に
原発再稼働を支持する。使用済み核燃料を再処理して繰り返して使う「核
燃料サイクル」の維持も支持している。

 他方、河野氏の原発論には二枚舌の疑いがある。長年原発ゼロ論者とし
て鳴らしてきた氏は東京電力福島第1原発事故の後、超党派議員連盟「原
発ゼロ・再エネ100の会」(「原発ゼロの会」から今年6月に改称)を
設立。立憲民主党の近藤昭一氏と並んで共同代表に就いた。

 同連盟の公式ブログには河野氏は今、「休会中」とあるが、氏の活動基
盤のひとつである同議連はメンバー構成からみて立民が主導し、共産党と
社民党が支えている。

 河野氏はそうした活動を表に出さず、「安全が確認された原発は当面は
再稼働していくことが現実的だ」(9月10日、出馬表明記者会見)と述
べ、保守的な自民支持層に近づこうとする。

 氏の言葉を額面どうりに受け取れないのは、「核燃料サイクルは一日も
早くやめるべきだ」という発言もあるからだ。この発言は、中核的施設で
ある青森県六ケ所村の再処理施設をやめるという意味だ。

 再処理をやめれば各原発から生まれる使用済み燃料の行き場がなくな
り、原発を受け入れている自治体は猛反発する。結果として、原発の再稼
働を許さない流れが生まれ、原発は全て止められる。

 河野発言は手を変えた原発廃止論である。口では安全性確保と原発再稼
働を言いながら原発ゼロに向けて巧妙に仕掛けている。このような言説を
弄することは「嘘をつく」ことである。自民党支持者に嘘をついているの
でなければ、河野氏は原発をエネルギー源の確固たる柱に位置付けると明
言せよ。

 皇室についても最も正統な保守は高市氏である。わが国の深い歴史と国
柄に沿う形で男系男子による皇位継承を明言し、いまや細い1本の線とな
りつつある皇統の系譜を守り支える具体策として旧宮家の皇籍復帰を提唱
した。岸田氏は女系天皇は選択肢に入れるべきではないと語るが、その先
は不明瞭だ。河野氏は8日、記者団に「男系で続いているのが日本の天皇
の一つのあり方だ」と述べたが、女系天皇を排除はしていない。

 石破茂元幹事長は15日、総裁選不出馬とともに河野氏支持を表明した。
石破氏が河野氏を支えることになれば、河野氏の政策はさらに、本来の自
民党政策の逆を行くことになるだろう。本当にそれでよいのか。

 大激変する国際情勢の下ではわが国の命運は基本的にわが国の力で守ら
なければならない。国益実現には国柄を踏まえた力強い戦略、戦術がい
る。その核心を政策にし、安倍氏は掲げた。保守層と保守的中間層はそれ
を支えた。価値観を大事にしたからこそ、自民党は勝ち続けた。

 間近に迫った総裁選で自民党議員がそのことを忘れてどうするのだ。国
民は自民党の選択を見ている。選択いかんが今秋の衆院選、来年の参院選
に決定的な影響を及ぼす。政治家は信念、政策によって判断されることを
肝に銘じるときだろう。

産経新聞 令和3年9月16日 【櫻井よしこ 美しき勁(つよ)き国へ】

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松本市 久保田 康文 
【産経ニュース】採録

         
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◆誰が「国防の最高指揮官」に最適か
 
【有本香の以読制毒】
 北がミサイル2発発射、総裁候補3氏の「第一
声」比較 「言葉の力」火を見るより明らか 20219.17 【zakzak】ニュース


 防衛省は15日、北朝鮮が同日午後、日本海に短距離弾道ミサイル2発
を発射したと発表した。変則軌道で約750キロ飛行し、日本の排他的経
済水域(EEZ)の内側に落下したとみられる。北朝鮮は13日にも、新
型長距離巡航ミサイルを試射している。中国の軍事的覇権拡大に加えて、
日本にとって「安全保障上の深刻な脅威」といえる。自民党総裁選は17
日告示(29日投開票)を迎えるが、新総裁・新首相は「国防の最高指揮
官」となる。前哨戦でバトルを繰り広げる、岸田文雄前政調会長と、高市
早苗前総務相、河野太郎行革担当相の危機意識と覚悟はどうなのか。
ジャーナリストの有本香氏が分析した。


 総裁選は17日告示である。正式な出馬会見を行ったのは、岸田氏と高
市氏、河野氏の3人。「野田聖子幹事長代行も立候補か」と伝えられた
が、16日朝時点ではっきりしない。

 出馬会見を終えた3氏が目下メディア出演を盛んにしていたなか、北朝
鮮は15日午後、日本海に向けて弾道ミサイル2発を発射した。岸信夫防
衛相は同日夜、日本のEEZに落下したとの推定結果を明らかにした。

 幸い、海上の船舶にも被害はなかったが、国の安全を揺るがしかねない
一大事である。こうした時に、国内外にどんなメッセージ、第一声を発信
できるか−。これは国のトップ、政治家の資質を測る1つの物差しだ。
さっそく、総裁候補の3氏に当てはめてみたい。

 まず、元外相の岸田氏。自身のツイッターで次のように発信した。

 「本日、北朝鮮がまたもや弾道ミサイル2発を発射しました。政府によ
れば、今回のミサイルも変則的な飛翔(ひしょう)を行った可能性があり
ます。私が提唱しているように、我が国の平和と安定を守り抜くために
は、相手領域内でのミサイル阻止能力の真剣な検討も含め、ミサイル防衛
能力の強化が不可欠です」

 極めて抽象的、具体策を一切示していない。しかも、発信時刻は15日
午後6時58分。ツイートで引用したNHKの報道から6時間後の発信
は、SNS時代の今日、いかにも遅い。

 次に高市氏。岸田氏より早く、同5時前に記者に対し、次の発信をした。

 「日本だけでなく、国際社会全体の脅威だ。各国と連携して抗議してい
くと同時に、防衛大綱の見直しも含めてミサイルに対しての防衛力をつけ
ていかなければ、日本の国民の命も国土も守れない」

 防衛大綱の見直しにまで踏み込んだ言及は、勇気あるものと評価でき
る。高市氏は今日以前のメディア出演の際、たびたび「敵基地無力化」の
手法について具体的に語っている。

 河野氏は出演していたテレビ朝日の情報番組内でのコメントだったため
タイミングは最も早く、内容は次のとおりだった。

 「日本として情報収集能力と、日米同盟での抑止力を高めていくことが
必要(中略)そういう意味で、いろいろと自衛隊のこれからのあり方も装
備の面からしっかりと考えていく必要がある」

 1年前まで防衛相を務めていたにしては、ぼんやりとした発言だ。

 ここで思い起こされるのが、河野氏が防衛相だった昨年6月に突然表明
し、自民党「防衛族」ともギクシャクした、陸上配備型迎撃ミサイルシス
テム「イージス・アショア」の配備計画停止の一件だ。

 今般の北朝鮮のミサイルは、不規則な軌道を描くもので迎撃は困難とさ
れているが、かといってイージス・アショア計画停止とは無関係と切り離
すのは早計だ。むしろ首相を目指す河野氏はこの機を捉えて、今後のミサ
イル防衛のグランドデザインの一端でも示すべきである。

 あちこちから、「有本は高市贔屓(びいき)だ」とお叱りを受けるのを
承知の上であえて言えば、出馬会見においても、冒頭はっきりと、国の使
命は「国民の生命と財産」「領土、領海、領空、資源」「国家の主権と名
誉」を守り抜くことだと言い、「その使命を果たすために私のすべてをか
けて働くことを誓う」と宣言したのは高市氏だけだった。

 北朝鮮のミサイル、中国の脅威、ロシアも北の空を脅かし、韓国も敵対
行為を繰り返す現下、多くの国民が誰の言葉に力を感じるかは火を見るよ
り明らかだ。

 出馬会見で「日本の民主主義を守る」と言った岸田氏に謹んで申し上げ
たい。民主主義国では、言葉こそ政治家の命ではないですか。

 ■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市
生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。
国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に
『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬
舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国
紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。

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松本市 久保田 康文 
夕刊フジ【zakzak】ニュース 採録
    

          

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◆タリバン勝利、米軍撤退に触れず

「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021)9月13日(月曜日)弐
通巻第7049号  

アルカィーダのザワヒリがヴィデオで登場。911「20年」にあわせてはい
るが。。。
61分のメッセージだが、タリバン勝利、米軍撤退に触れず

 死んだと言われていたアルカィーダのザワヒリ(70歳)。
 ところがNY貿易センターテロ(911)のタイミングで突然、ヴィデ
オで登場し、やっぱり生きているようだとの観測が流れている。

ザワヒリのメッセージは61分に編集されており、2021年一月の事件
に言及しているが、米軍のアフガニスタン撤退、タリバン勝利に関してひ
とことも触れておらず、生きているとしても、録画は半年以上前に撮影さ
れたものと推定される。
ザワヒリには2500万ドルの懸賞金がかかっており、もし生存している
とすればアフガニスタンのどこかに潜伏しているのではないか。

 アルカイーダは首魁のビンラディンが、2011年5月1日にパキスタ
ンの潜伏先を米国特殊部隊によって殺害されて以後、ナンバー2のザワヒ
リが主導権をとってきたと専門家のあいだでは言われた。

 現実にアルカィーダは、その意味が「基地」だから(因みに中国語では
「基地組織」)、司令部構造は権力集中のピラミッド型ではなく、地域
別、国別に分化しており、中東各地からアフリカ、フィリピンなどにもア
ルカイーダをなのる武装過激派が存在し、競うかのようにテロ事件をおこ
す。げんに2013年にアルジェリアで起きたテロ事件で日本人十名が殺
害されたが、この実行部隊はアルカイーダのアルジェリア組織
[AQIM]だった。

 さてザワヒリはエジプトの裕福な家庭で育ちカイロ大学を卒業。専門は
医学で、医者として活躍していた。サダト大統領暗殺事件の容疑者として
拘束され、三年刑務所にいた。すっかり思想的な過激純化を完成し、アル
カィーダでは神学の理論的指導者である。
    ☆▽□☆◎み☆◎□☆や□▽◎☆ざ▽◎□☆き◎☆◎▽
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  ■どくしゃのこえ ●読者の声 ★READERS‘ OPINIONS
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(読者の声1)「ふわふわとした根拠でのワクチンパスポート導入への疑義
 ◆各国事情
 新型コロナは現在、ワクチンの普及により重症者が減った一方、感染力
が高いデルタ株の流行で第二フェーズに入った感がある。
 欧米中心に各国では、ワクチンパスポートの導入が図られており、フラ
ンス等では基本的にこれを提示しなければレストランでの食事が出来なく
なっている。米国でも鬩ぎ合いながらも各州で導入が進む州が出ている。
また、これに先んじて米軍や連邦政府ではワクチン接種が義務図けられつ
つある。(これらに於いて定期的な検査をワクチン接種の代替にする措置
もあるが、有料になったり禁止になったりして来ている)
 民間でも例えばCNNのような企業でワクチン未接種でのオフィス出勤者
が実際に解雇されているのに加え、バイデン政権は、 9月9日に従業員100
人以上の企業に対し、従業員のワクチン接種か毎週の検査を義務化する方
針を示した。
 日本でも経済活動再開のため、財界を含め各方面からワクチンパスポー
トの導入の声が上がって来ている。政府分科会は「ワクチン・検査パッ
ケージ」を提唱し、定期的な検査でもワクチンの代替可と考えているよう
だが、検査が無料とならなければ実質的なワクチン義務化と地続きになる
だろう。

 一方、ワクチン自体の効果に関しては、学術的にはともかく少なくとも
各国政府は感染予防効果が期待されるとして接種キャンペーンを始めたも
のの、デルタ株の影響等により接種者のブレークスルー感染が増えたため
それが怪しくなって来ている。今では「ワクチンは主に発症予防効果や重
症予防効果のためのものだ」とし、ゴールポストがずらされた感もある。
 もちろん、未知の新型コロナと戦うために急遽作ったワクチンなので、
色々と状況変化が出て来るのは必然ではある。

◆感染予防効果は?
 ブレークスルー感染は増加しているものの、感染予防効果は落ちてはい
るが依然有意に残っているというのが、各国政府と主流の専門家の主張し
ている所である。しかし、ワクチンの発症予防効果や重症予防効果で発症
しなかった場合若しくは極軽症で済んだ場合には、そもそも医療機関に行
かず従って検査を受ける事は少ないだろうから、実際には自覚の無い感染
者はもっと多いのではないかと思われる。
 米国マサチューセッツ州7月上旬に同州バーンスタブル郡内で複数の大
規模な集会やイベントが開かれ、数千人の観光客が訪れた。その後に感染
者が469人確認されたため、CDCが調査したところ、74%にあたる346人
が、規定の回数のワクチン接種を終えていたことが判明したとの事であ
る。そういった包括的な調査を行えば、同様な結果が出るのではないか?
https://www.yomiuri.co.jp/world/20210731-OYT1T50168/

 もしそうであるなら、ワクチンパスポートの導入意義は基本的には根本
から崩れる事となる。また、他者に感染させる二次感染防止効果を主張す
るなら、更に詳しい研究調査が必要であろう。
 感染予防効果の調査対象群の細かい内訳は、少なくとも通常のニュース
レベルでは報道される事が無いが、各国はワクチンパスポート導入議論の
前提として明示すべきである。
 「ワクチンのメリットは結局接種者個人に帰し、社会的な意義があると
すれば、それは重症化を防ぎ医療逼迫を避ける効果である」と実感から述
べる臨床医も出ている。そうであるなら、各国政府の率直なアナウンスが
望まれる。
 ワクチンは、抗体減少やウイルス変異で3回目のブースター接種が必要
とされつつあり、また特にm-RNAワクチンや、ウイルスベクターワクチン
等の最新遺伝子工学を用いたものは、短期の副反応に加え、長期的副作用
リスクが不明な上に、ウイルス耐性強毒化変異株の拡散を招く可能性もあ
り社会的にもリスクと隣り合わせである。
 イスラエルは既にブースター接種に踏み切り、今後も収束しない限り継
続的にワクチンを打ち続ける「ウイズ・ワクチン」に舵を切った感がある
が、そうであるなら人体がそれに耐えられるのかを含め実験的な取り組み
と言える。
 これらを鑑み、今後コロナ対策の切り札は、変異への対応力があり、少
なくとも遺伝子工学由来の副作用リスクは少ない治療薬へ移行する事とな
るだろうと筆者には思われる。
 ワクチンパスポート導入は、必然的に社会分断と前述のワクチン自体に
由来するリスクを伴う。であるなら、それを相応に上回る明確な感染予防
効果と二次感染予防効果のメリットが必要であり、ふわふわとした根拠で
国民を錯覚させたり誘導したりして進めるものであってはならないだろ
う。(佐藤鴻全)

   ♪
(読者の声2)最近のメディア調査では河野が総理候補の筆頭とされてい
るのを見て唖然です。国民大衆はお笑い番組の連続に思考回路が消滅して
いると思いました。
 習近平国家主席は先週、バカ番組の放送停止を指示したようですが、我
が日本にこれほどの統制力をもったリーダーは出現しないのでしようか?
(KM生、沖縄)

   ♪
(読者の声3)ウィリアム・ストラウス 、ニール・ハウ共著の「Fourth
Turning」(フォース・ターニング 第四の節目)1996年初版。世代毎に世
の中が変わる、それが繰り返される、という米国の歴史書。予想が当たっ
た、というので最近話題になっている。
著者によると、米国の「内部分断が危機的」に極端になっている、とい
う。英国を敵にまわした独立戦争も、実は内戦、つまり「安全と安定」を
求める親英派と、「独立と自由」こそすべてだという米国派の激しい内部
抗争であった。
南北戦争は紛れもない内戦。1929年に始まった世界大恐慌に始まる社会主
義的独裁政権、個人の自由を奪う政策も国内で激しい対立を生み出した。
そして今、2020年に始まる武漢菌を理由に大胆な規制、トランプ大統領の
不当な罷免、などによってすでに内戦が始まっている状態にある、という。
過去の例では、顕著な経済の縮小と反都市化が起こった。かつては、帰る
実家や親戚が田舎にあった。北京で失業した労働者も国に帰る。(余談に
なるが、1990年にソ連が崩壊し政府の機能も止まり、ルーブルも無価値に
なったが、普通の国民の生活はあまり影響を受けなかった。狭い住宅は国
営であり家賃も光熱費ももともとタダ。地下鉄もほぼ普通。店ではいつで
も品不足なので、自給自足、自家農園でお互いに賄っていた。)
 確かに便利で優雅な都会の施設がすべて閉鎖されていては、高い家賃を
払って住む理由がない。おまけに地方にいてもZOOMなどで会議ができる。
そこで都会から郊外へ地方へ、という大移動が始まり、地方都市の不動産
価格が高騰している。
いつ終わるのか知れない武漢菌問題も、個人の自由を大きく制限し、雇用
か自分の健康かの選択を迫られる。
これに輪をかけるのが、全世界の中央銀行が始めた同時進行中の「全ての
資産のバブル」と「歴史上最大の官民、個人の借金」で、必ず弾ける巨額
な金融危機問題が、手ぐすね引いて、待っている。
 大企業は必ず政府が救済してくれるが、中小企業、個人は自己責任で解
決せよ。周りには武漢菌で苦しみ、ろくな治療も受けられず、苦しみ死ん
でいく友人や家族がいる。インフレは公には5%で一時的、というが現実
にはとうに10-20%を超えている。
家賃、家のローンを払わなくて良い、という政府の命令も期限が切れる。
大量の浮浪者が街に溢れる。米国の人口は約3億、武器は6億丁ぐらいある
らしい。武器を扱える軍人も多い。
米国憲法、修正第2条は、鹿やウサギを銃で殺す権利だ、という狭い歪曲
した解釈をする学者もいるが、「自己防衛のために国の内部の専制政府を
倒す」国民の権利と理解する者も多い。つまり「武力による内戦は憲法で
保障」されているとも言える。
いや、権利どころか義務だ、と建国の父は言う。それが怖いから民主党は
機会があるたびに「刀狩り」をする。見かけの繁栄とは裏腹に、米国は深
く多方面で病んでいる。あるいは、見方を替えれば、今だに健全である。
例えれば、自ら高熱を出して自己の免疫を高め、内部のウイルスを殺す。
 かつての「英国病」という社会主義化による病気は女性首相サッチャー
氏が治療して立ち直った。早苗氏は若き頃、会う機会があって影響を受け
たと言っている。ヤマハの450のバイクを乗り回した、というから必要
な度胸もあるのだろう。
ヘヴィー・メタルのバンドをやっていたそうだ。つまり、反体制派を自認
している。(在米のKM生) 

2021年09月15日

◆薬害エイズを怠慢の口実にする厚労省

櫻井よしこ

『週刊新潮』 2021年9月9日号
日本ルネッサンス 第965回

気になることを二度続けて聞いた。中国の武漢から始まったコロナウイル
スと変異株に国際社会全体が翻弄されている中、厚生労働省が日本製のワ
クチンや治療薬の承認に消極的なのは、薬害エイズで酷く非難された苦い
記憶ゆえだというのである。

一度目は有力政治家から、二度目は8月25日、BSフジの「プライム
ニュース」で、外交評論家の宮家邦彦氏から聞いた。このような情報流布
の背景に厚労省の「進講」があるのではないかと、私は感じたが、そう的
外れではないだろう。

コロナウイルスで国全体がこれ程の被害に遭っているいまは、平時ではな
く有事である。ウイルスという目に見えない敵と戦うには、ワクチンの開
発にしても薬の承認にしても通常のプロセスをうんと簡略化してスピード
感をもって当たらなければならない。にも拘わらず、日本製ワクチンやア
ビガンのような治療薬の治験も承認も遅々として進まない。後述するよう
に厚労省、とりわけ薬系技官が頑としてプロセスを早めることを拒否して
いるのが原因である。医薬品業界の既得権益と利害をかけた熾烈な争いも
その背景にあるに違いない。だがそうした汚い側面を隠すかのように、一
連の遅れの原因は薬害エイズで批判された深い傷の痛みだという的外れな
情報が流されているのである。

一体薬害エイズがどんな問題だったのかを、彼らは覚えているのだろう
か。薬害エイズで厚生省(当時)が何をしたか、しなかったかを記憶して
いるのだろうか。一言でいえば厚生省の担当者らは異常なほど情報に鈍感
だった。患者の命がかかっている切迫した問題に対応しなかった。その感
度の鈍さは、国民の健康を支えることこそ自らの責務だという自覚を欠い
ていたからではないのか。

血友病患者に奇病発生という情報は、1981年末の「ニューイングランド・
ジャーナル・オブ・メディスン」でまず、報告された。

82年7月、米国のCDC(疾病管理予防センター)が非加熱血液製剤を使
用していた血友病患者3名がカリニ肺炎で死亡、と発表した。

同年9月、CDCは非加熱血液製剤を介して発症する病気を後天性免疫不
全症候群(エイズ)と命名した。

恐怖の報告

83年1月にはロサンゼルスの内科医、キャスパー氏が「ヘモフィリア・ブ
ルティン」(血友病情報誌)で、血友病患者は治療薬の濃縮血液製剤を介
してHIVに感染すると報告した。

同年3月にはCDCが正式に血友病患者のエイズは非加熱製剤が原因だと
発表した。CDCは製薬企業に、患者への非加熱血液製剤投与をやめて、
ウイルスを死滅させた加熱血液製剤に転換するよう明確に促したのである。

では日本の厚生省はどうしただろうか。彼らの医療行政の下で、日本の血
友病患者はCDCの警告のあともずっと非加熱血液製剤しか与えられな
かったのだ。厚生省は長い時間を怠惰に過ごした後、85年7月になってよ
うやく加熱血液製剤を承認したのである。米国より2年4か月も遅かった。

さらに加熱製剤を承認した後も厚生省は業界の事情を優先した。業界大手
のミドリ十字などに配慮して、製薬企業が抱えている大量の非加熱製剤の
在庫を、加熱製剤に優先して患者に使用させるのを黙認した。

もっと信じ難かったのは、加熱製剤承認に必要とされた治験を、加熱製剤
の開発で一番遅れていたミドリ十字に合わせる形で調整するのを黙認し
た、つまり、承認を遅らせたのである。

この2年4か月の遅れの中で多くの血友病患者がHIVに感染し、少なから
ぬ人々が亡くなっていったのは周知のとおりだ。

患者はどれほどの危機感を抱いていたことか。たとえば82年11月23日、
「東京ヘモフィリア友の会」(東友会)総会が開かれ、日本の血友病の最
高権威とされていた帝京大学医学部長の安部英氏が患者を前に語っている。

「皆さんが使っている血液製剤のうち、約90%がアメリカからの輸入血漿
です」「肝炎とか何とかも離れて、次から次へと重大な病気があるらしい
ということが分かってきつつあるんです」「(輸入非加熱血液製剤には)
肝炎などよりもっと恐ろしい病気があるらしいことも分かってきています」

この恐怖の報告を聞かされた血友病患者たちはより正確な情報を求めた
が、安部氏らは応えていない。

このような状況下で、厚生省は83年6月になってようやくエイズ研究班を
立ち上げた。そこからさらに2年以上を費やして85年7月に加熱製剤を承認
したが、そのときでさえ、製薬企業による非加熱製剤の在庫一掃を見逃し
たことは前述した。

国民に治療薬を届けたい

これで患者や国民が怒らない方がおかしい。厚生省も医師も追及されない
理由はないだろう。にも拘わらず、厚労省は薬害エイズに関して批判され
た苦い体験を思い出すとき、果敢に薬事行政に取り組むことができなくな
ると泣き言を言うのか。

本来なら、今が厚労省の働きどきである。ワクチン開発に取り組む企業を
助け、一日も早く完成させることだ。それによってまず日本国民の命と健
康が守られる。経済も回復する。地球上の困っている国々や民族、人々に
手を差しのべて救っていくこともできる。

わが国は米国とも中国とも異なる。軍事力による影響力拡大は不可能だ。
日本なりのやり方で、日本と協調する国々をふやし、中国の脅威に抑止を
効かせなければならない。そのひとつの方法が医療最先進国となり、世界
を助けることだ。その観点に立って厚労省はいま、必死に働いて医療界を
主導し、日本のワクチン完成やコロナの治療薬完成を急がせるときなの
だ。ところが、全くそうはなっていない。

2020年5月15日、私は「言論テレビ」に安倍晋三首相(当時)を招いた。
安倍首相は5月中のアビガン承認を念頭にこう語った。

「アビガンは通常の治験であれば6月、7月でしたが、企業治験が終了しな
くても、観察研究と臨床研究の成果で有効性が確認されれば薬事承認がで
きればと思っています」

一日も早く、国民に治療薬を届けたいという思いが伝わってきた。臨機応
変に対応しようとする首相の姿勢にも大いに共鳴した。厚労大臣も事務次
官も局長も、首相の考えを了承した。ところが、その下の薬系技官らがど
うしても了承しないのだ。政権が菅義偉首相に移った今もアビガンは承認
されていない。自分たちのルールこそ全てだと考える薬系技官はしかし、
国民の命をどう考えているのか。薬害エイズのときは患者への加熱製剤の
供給(承認)を大幅に遅らせた。今もアビガンで同じことをするのか。厚
労官僚は今も国民の命を軽く考えているのではないか。



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◆次期首相の敵はインフレ

吉田 繁治

2022年、オイルショック級の物価上昇が日本と世界を襲う

コロナ禍で世界のサプライチェーンはズタズタに壊れました。コンテナ便
の運賃は異常な上昇をみせており、2022年にはすべての商品にインフレが
及ぶと思われます。私たちは1970年代に起きたオイル・ショック級のイン
フレを覚悟しないといけないでしょう。(『ビジネス知識源プレミアム』
吉田繁治)

国際サプライチェーンにコロナ直撃
21世紀の世界の産業は、部品と製品のサプライチェーンで深く結ばれてい
ます。「近代国家の枠を超えるサプライチェーン」が、21世紀の産業の構
造変化でした。

産業、つまり製造と小売・流通が、国際サプライチェーンに変わったので
す。人的なサービス業のみが国内産業となりました。

国際サプライチェーンでの部品・商品調達と、生産の障害になったのが、
今回のコロナ危機です。

日本の企業の多くは、東南アジアと中国で生産しています。SONYやパナソ
ニックのAV機器も、多くが中国製造です。米欧の企業も同じです。中国の
工業は世界の約40%の商品は生産しています。

中国版アマゾンとも言えるアリババのサイトを見ると、日本のマーケット
プレイス「楽天」をはるかに超える商品の多さがわかるでしょう。

当方も海外に個人輸出する「Ali-Express」で、オーディオ機器を買うよ
うに変わりました。価格は、およそ3分の1です。日本人の多くは、中国の
工業生産の大きさを知りません。品質がよくないという定評があります。
確かに、選別しないと「100均品質」も多い。50%くらいでしょうか

多くは、3分の1の価格だからといっても、品質は3分の1ではない。中国の
工業が、物価の上がらない21世紀を作ってきたのです。

先端のオーディオ機器は、素子がIC回路であり、品質の問題は、ほとんど
ありません。日本製を超えたものも多い。買って使ったことからの評価です。

ドイツのメーカーでも、中国生産が日本よりはるかに多い。われわれは、
量的緩和というアベノミクス幻想の中で、約10年も、アジアの変化(発
展)を見ていなかったのです。

<アジアの流通網を襲ったデルタ株>
東南アジアの部品や製品の生産が、デルタ株の蔓延で休業、または停止し
ています(※筆者注:中国では、1人でもコロナ患者が出ると全員PCR検査
を行い、港湾の出荷作業や工場は停止されます)。

2020年のアルファ株では、アジアでは感染が少なかった。インド発のデル
タ株が、日本、韓国を含むアジアでの感染を増やしました。

アジアの感染は、デルタ株により新たなステージに乗ったのです。

ロイターのサイトで、21年6月末からの、アジア諸国の新規コロナ感染数
の急増を見てください。

工場とコンテナ港の休業がわかる数値です。テレワークでは、コンピュー
タで金融と事務作業はできても、工場とコンテナは動きません。人が集ま
る「エッセンシャルワーカー」の世界だからです。

<サプライチェーンの分断>
2011年の東日本大震災(工場の震災)のときと同じ「部品と生産のサプラ
イチェーンの分断」が国際的に起こっています。

トヨタと自動車会社の減産がこれです(2021年9月40%減産:トヨタ)。
世界中のメーカーが、トヨタと同じようにアジアの工場の、休業の影響を
受けています。

ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン…食品、衣料、
部品、機械、家電、AV、木製品、化学製品。世界の工場に広がったジャス
トインタイムの仕組みは、サプライチェーンの障害に脆弱です。日本の家
電やAVの多くは、中国での製造であり、日本と世界に輸出されています
(三角貿易)。

コロナが兵器とすれば、それは、世界中がつながったサプライチェーン網
の物流を破壊する、高度なものだったのです(※筆者注:新型コロナ人工
説は、中国は否定していますが、その遺伝子配列から有力です。生物兵器
説の検証はできずに否定されています。武漢研究所、またはCCP=中国共
産党からの内部告発がない限りは不明のままです)。

<メディアの報道はない>
経済新聞は、日本メーカーの、アジアの生産委託工場の様子は報じませ
ん。海外ニュースとしては、外信の翻訳しかしていないからです。

特派員の常駐も、アジアには少ない。衣料のSPA(専門店製造直売)が進
出しているミャンマー(人口5,400万人)ではゼロ。中国の特派員ニュー
スには検閲があります。

減産の原因は、アジアのデルタ株です。

Next: コンテナ運賃は6.6倍に高騰。日本の物価上昇は始まっている?
     
            
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◆ 珍しい論争は「共同富裕」

「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021)9月9日(木曜日)
通巻第7045号  

中国の独裁体制のなかで、珍しい論争は「共同富裕」
  金儲けの神さま=関羽像を解体する動きと矛盾しているが。。。

 湖北省刑州市の「関公義園」に巨大な関羽像がある。高さが57メート
ル。洪水の町として居られる刑州で、観光事業のシンボルだった。
 ところが中央政府の路線変更により、無駄な金遣いだったとして解体作
業が始まった。9月8日現在、頭の部分が解体された。建築ならびに解体
費用は合計で3億2700元(日本円で55億円)。

 ならば中国全土いたるところにある関羽像、関羽廟も解体される憂き目
になるのか。
 関羽は後漢時代の将軍だが、張飛とならんで劉備を補佐した飛車角。最
後まで蜀への忠誠を忘れず、戦死ののち、神格化された。
 なぜなら道鏡も儒教も、忠孝の義士として利用する価値が大いにあった
からで、関帝廟が作られ、孔子に対抗して武公とも呼ばれた。髭がたいそ
う立派だったので、美髭公のニックネームも付いた。

 中国全土ばかりか関羽廟は世界のチャイナタウンにあって、ベトナム、
マレーシアにもあるがひときわ立派な関羽廟は台湾にある。台北の都心部
にある「行天宮」が関羽廟である。日本でも各地チャイナタウンおよそ十
ケ所に関羽廟があって、線香の列が絶えないが、信仰の拠り所は、なぜか
金儲けの神さまなのである。

 本拠地の湖北省は関羽の生まれ故郷、しかも刑州は関羽の主戦場だった
ゆえに高層ビルのような関羽像を聳立させたのだ。習近平の「共同富裕」
キャンペーンは金儲けを慎めということでもあり、言論の自由のない中国
で、この共同富裕をめぐる論議だけはおおっぴらに展開されているのも不
思議な話だ。
    
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■どくしゃのこえ ●読者の声 ★READERS‘ OPINIONS
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(読者の声1)貴誌前々号「橘奈良麻呂の乱」が藤原仲麻呂の自作自演と
見るのは、卓見です。
 乱の首班とされたのは、万葉集を著した大伴家持の従兄であり、大伴氏
の氏上の大伴古麻呂である。彼は遣唐副使として渡唐した時、朝賀の席次
が新羅の下だと抗議し、席を入れ換えさせた。さらに、鑑真和上を密かに
入船させて帰国した硬骨漢である。
そのように優れた男が、なぜ、東国を治める要の三関(さんげん)の一つ
のである美濃の不破関をふさごうとしたのか。平城京の藤原仲麻呂を暗殺
するに、なぜ、遙かに遠い東国を塞ぐ必要があったのか。この稚拙さは、
武門大伴氏がするような戦略ではないからだ。
今まで、不思議であった。それも、捕縛された後、弁明も許されずに笞打
刑で惨殺された。仲麻呂は、優れた政敵の古麻呂を除こうと、用意周到に
囮捜査を進めていたのか。まさに、孝徳天皇の遺児の有間皇子が、蘇我赤
兄の囮捜査に遭って刑死したようなものだったのだ。
乱は藤原仲麻呂の策謀だったと見れば、目からうろこが落ちた観です。あ
りがとうございました。(斎藤周吾)

  ♪
(読者の声2)貴誌前々号の「自民党総裁選と藤原の仲麻呂と弓削の道
鏡」の寓話ですが、なぜ自民党の総裁選挙の、いってみればコップの中の
嵐と、奈良朝におきた政治陰謀の事件の数々とが比較されるのか。よく分
からず、三回読んで、なんとか納得です。
 要するに保守本流は陰謀によって奸計によって潰されるが、最後には必
ず保守の政治家が静かに勝つという歴史的寓話なのですね。
 それにしても、さすがに宮崎先生、時局の流れる矛先を、歴史の教訓か
ら示唆するのは余人ができないことでした。(CC生、神戸)

  ♪
(読者の声3)IMFが韓国の「ひとりあたりのGDP」が、日本を超え
たとの比較評価があり、これは2018年に逆転、2020年に日本の
@GDPが40048ドルに対して、韓国のそれは42297ドルだった
そうです。
 日本のメディアが騒ぎませんが、韓国ごときに抜かれた事実は伏せてお
きたいのでしょうか。(JJセブン)


(宮崎正弘のコメント)「ひとりあたりのGDP」は、まだドル換算で、
日本のほうが上の筈です。IMF統計はPPPの比較です。PPPは購買
力平価ですから、物価と給与との配分を指数化すれば、たしかに韓国が日
本より上になります。つまり韓国の方が物価が高く、暮らしにくいという
事実を著しているのです。

   ♪
(読者の声4)20年前の9月11日の米国攻撃、そして20年後の米国のアフ
ガンからの敗走、は「戦争の仕組み、戦争のやり方」について根本的な
「問い」を投げかけた、がそれをまともに「答える」国も政治家も軍事専
門家もいない。とにかく軍事費を増やす、新しい兵器を作る。軍産共同体
の利益、論理、惰性。
  20年前の極めて効果的な奇襲攻撃は、直ちに「真珠湾」の再来と政治
家・論者たちは叫ぶが、完璧に本質を無視し理解していない。
数人の男が普通の片道航空券を買って、世界の金融機関の中心地をタダで
瞬時に、主に地球の重力を使って破壊し、米国に壊滅的な打撃を与えた。
以後、懲らしめのために、20年間にわたって「既存の伝統的な軍事行動」
をつずけ、完璧に敗北した、と世界に証明した。
軍事的予算・資産では米国は群を抜いているが、現在、数名の個人が再
び、覇権国家のアキレス腱をちょん切る、ことは簡単にできる。
例えば、毎年1月には、大統領が「年頭教書」という演説をする。一つの
部屋に3権全ての指導者、政府、立法、司法を詰め込んで芝居掛かった演
技をする。かつては書面で行なっていたが、テレビが生まれて以来、政治
家は機会を逃さない。
そんな芝居の最中、小さな爆弾一つで、米国連邦政府が消える。その配達
方法は簡単にいくらでも考えられる。一番困ることは、誰が犯人か判らない。
つまり反撃の目標が決まらない。巨大な軍も敵が特定されないと、無力。
船頭を殺され、「卑怯なり!」と「戦争の規則・倫理」を破る「悪人・英
雄」を非難しても歴史は、負けた方が悪い、と判決する。
 この状態は米国に限らず、どこの国でも同じで、「東京に国の全てが集
中」している日本では、特にその危険が高い。
自然の敵、例えば直下地震では、その破壊力は同じ。「東京遷都」は、安
全保障、国防の要でもある、と真剣に幾度も指摘されているが、誰も考え
ない。
政府・官僚の支配・悪影響を弱める意味で、霞が関をどこか遠くの辺鄙な
場所に「村八部」にする。悪の根源、東大、文科省、NHKなども地方に分
散して、結託して日本を破壊しないようにする。高市早苗氏が総理になれ
ば、可能かも。
他のおじさん総理では、確実に日本は「静かに虐殺される」と思ふ。
(在米のKM生)

  ♪
(読者の声5)来る9月15日の未来ネット、「宮崎正弘の生インタ
ビュー」はゲストが韓国ウォチャー(元時事通信ソウル支局長)の室谷克
実さんです。
 以下のサイトから予約できます。
 9月15日午後四時〜五時 生放送
https://youtu.be/bYnvr_a8LL0
    (未来ネット(旧林原チャンネル))

2021年09月08日

◆アフガン陥落、米中再接近も視野に

櫻井よしこ

『週刊新潮』 2021年9月2日号
日本ルネッサンス 第964回

アフガニスタン全土がタリバンの手に落ちた。タリバンの勢力が首都カ
ブール近郊に迫った8月15日、米軍の大型輸送機が低く空を飛び交い、米
国人や米国に協力したアフガニスタン人の国外脱出が加速した。空港は大
混乱となり、バイデン大統領もブリンケン国務長官も、タリバン勢力の全
土制圧の速度は「予想以上だった」と認めた。タリバンとの20年戦争にア
メリカは敗北したのだ。

撤退に関するバイデン氏の言葉を聞く限り、米国の敗北の意味はますます
暗いものとなる。

8月19日、バイデン氏はABCニュースの花形アンカー、ステファノポロ
ス氏の番組で苦しい弁明を強いられた。

ステファノポロス氏はバイデン氏が事態急変前に「タリバンが(アフガニ
スタンを)奪回することはほとんどない(highly unlikely)」と語った
ことについて、なぜ状況を読み間違えたのか、米国情報機関の間違いだっ
たのかと質した。

バイデン氏は口ごもりながら答えている。

「タリバンが奪回できるかどうかの見通しにはある前提があった……」

「米国が訓練した30万人のアフガン部隊、我々は彼らに武器・装備を整え
てやった。その30万の軍が簡単に崩壊し、屈伏してしまうとは誰も予想し
なかった」

ステファノポロス氏は喰い下がった。マコーネル上院議員はインテリジェ
ンス報告に基づいて、タリバンによる全土奪回は予想できたと語っていた
とし、アフガン情勢の混乱は、情報当局の失敗なのか、それを受けての撤
退計画、遂行、判断の誤りなのかと質した。

対してバイデン氏は責任逃れの答えを返した。

「アフガン政府のリーダーが飛行機に飛び乗って逃げた。30万の軍は装備
を捨て去り消えた。それが起きたことなんだ」

インドの戦略論の大家、ブラーマ・チェラニー氏は米国の敗北は自ら招い
たもので、アフガンにおける屈辱は国際社会における米国への信頼を無残
な形で傷つけたとして、次のように書いた。

「年老いた大統領が現地の状況を考慮せず、将軍や情報当局の考えを排除
して、非現実的で欠陥だらけの行動計画を実施せよと命令すれば、外交が
悲劇的結果に落ち込むのは当然だ。全土をテロリストに掌握されたアフガ
ニスタン情勢への国際非難はそっくりそのまま、歴代大統領の中でも最も
年老いたジョー・バイデンの戸口に刻むべきだ」

チェラニー氏の祖国はインドである。タリバンが支配するアフガニスタン
は、これから間違いなくテロリスト集結の中核地となる。そして彼らとパ
キスタンとの関係は深まる。インドは最も厳しい状況に直面するだろう。

同盟国はどうしたら…

ABCニュースではバイデン氏のもうひとつの重要な発言があった。氏が
8月16日にホワイトハウスの会見で語ったこと、つまり米国はどのような
場合に軍事的にコミットするかという基準と重なるものだ。

バイデン氏はこう語っている。

「アフガンと台湾、韓国、北大西洋条約機構(NATO)との間には根本
的な違いがある。米国は(それらの国々と)内乱に基づかない合意をし
た。彼らは統一された政府を持つ」

バイデン氏は度々言い間違いをする。文章も完結する前に、曖昧な形で次
の文章に移る場合が多い。右の発言もその一例だが、出来るだけ正確に訳
したつもりだ。ポイントは、バイデン氏が、各国と結んだ安全保障条約は
「内乱・内戦(civil war)に基づかない」合意だと述べている点だ。そ
の中にバイデン氏は台湾を入れているわけだが、中国は台湾問題は「国内
問題」だと主張する。もし軍事紛争になっても、それは内乱或いは内戦で
あるから、他国は介入してはならないという主張だ。

バイデン氏は続けた。

「我々は聖なる第五条を守ると誓約している。第三者がNATO諸国を侵
略すれば、我々は反撃する。日本に対しても同様だ。韓国に対しても同様
だ。台湾に対しても……、同様だ。(アフガニスタンの事例と)較べるべき
ではない」

バイデン発言は安全保障問題担当大統領補佐官、ジェイク・サリバン氏の
会見でも取り上げられた。8月17日、ホワイトハウスのプレスルームで、
記者が尋ねた。

―朝鮮戦争は内戦として勃発した。米国が内戦ではない争いにだけコミッ
トするのなら、同盟国はどうしたらよいのだ。中国は台湾問題を国内問題
だと言う。韓国はどうするのか。

サリバン氏がアフガン戦争を振り返り20年間に米兵2448人が戦死したなど
と説明を始めると、質問者が遮って「内戦の定義について答えてくれ」と
声をあげた。

中国との協調関係

「台湾は根本的に異なる問題で……」とサリバン氏が話し始めると、質問者
に「朝鮮戦争は内戦だが米国は……」と再び遮られた。結局、サリバン氏は
米国の軍事介入の基本論理についてきちんとした説明ができなかった。同
盟国が米国との関係に不安を抱く一因となるのは間違いないだろう。

米国の威信低下に加えて日本にとって重大な変化が起きる可能性がある。
16日の会見でバイデン氏はテロリスト勢力はガン細胞のように転移・拡大
中だと次のように語った。

「ソマリアのアルシャバーブ、アラビア半島のアルカーイダ、シリアのア
ルヌスラ、シリアとイラクに領地を築きつつあるISIS、アフリカ大陸
とアジアにも広くテロ勢力は拡張中だ」

これから間違いなくテロ勢力の集結地になると見られるアフガニスタンは
パキスタンの隣国だ。パキスタンはアルカーイダを匿った。彼らの持つ
160発の核の一部がテロリストの手に渡る日が来ることも考えなければな
らない。

中国はそのような状況にとりわけ強い警戒心を抱くだろう。イスラム原理
主義のタリバンをはじめとするテロ勢力が、中国内のイスラム教徒、ウイ
グル人に働きかけることを断固阻止するだろう。

ここで私たちは20年前の苦い記憶に引き戻される。9.11のテロ攻撃に見舞
われたブッシュ大統領は、それまで戦略的ライバルと位置づけていた中国
への姿勢を一転させた。中国がイスラム教徒のウイグル人をテロリストだ
と言い、彼らの言うテロリスト情報をブッシュ氏に提供した。その結果、
米国はいとも簡単に中国との協調関係に入った。

中東のテロリストは米中共通の敵であり脅威である。であれば、今また、
20年前と同じく米中が対立含みの緊張関係から協調関係へと移る可能性が
ある。それは日本の苦難の始まりになり得る。日本はどんな環境でも生き
ていける強い国にならなければならない。その準備と覚悟が必要である。

         
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◆タリバンの人質要求が始まった

Andy Chang

AC 論説No.859 
数時間前にテキサスの国会議員Michael McCaulが発表したニュースでは、
アフガンのMazar-i-Sharif空
港に六機の飛行機がアメリカの民間人や通訳を乗せたままタリバンの許可
を得ることができず、離陸で
きない状態になっていると伝えた。タリバンはこの六機に登場した民間人
や通訳を人質にして”見返り”を
要求していると言う。MacCaul議員の発表だけで国務省の発表はまだない。

ホワイトハウスのRon Klain首席補佐官はアフガンに居残るアメリカの民
間人は100から200人ほどで
述べたが全くのデタラメ、嘘である。8月31日に米軍の総撤退が終結した
あと、世界各国のメディア報道
員とその家族だけでも500人がいまだに脱出できていない。アフガンに取
り残されたアメリカの民間人
はバイデンやブリンケン国務長官が発表した100人から200人に止まらな
い。今日の発表にある六機の
飛行機(民間機と思われる)に搭乗した人数だけでも1000人以上と思われ
る。ペンタゴンのミリー参謀
総長はこのニュースについてこれは軍隊の関与することでなく外交交渉の
問題だと答えた。

また、今日のタリバン側の発表によるとカブールの空港では民間機の発着
を許可したというが、レーダー
が機能していないため飛行機の発着は日中に限られているという。

バイデン大統領は8月31日、カブールの空港に駐屯していた兵隊や一部の
民間人を乗せた17機のC-17
が離陸した後で米軍の総撤退が完了した。その翌日、バイデンはホワイト
ハウスで30分にわたる初めか
ら終わりまで嘘で固めた演説(テレプロンプターを読むこと)を行った。
バイデンは撤退は大成功だっ
た、20年にわたる戦争を終結させた、この決定は賢明だったなどと自画自
賛した。しかし誰もこの演説
を信じていない。バイデンは850億ドルの武器とアフガンに居残る民間人
を全て見捨ててアフガンから
逃げ出したのである。

アメリカは20年前にニューヨークのツインタワーが攻撃を受けたあとアフ
ガン攻撃を開始した。あれか
ら20年経ってバイデンの総退却でアメリカの敗北が明らかになったのであ
る。アメリカはこの20年戦争
でトランプ大統領の時まで負けていなかったのにバイデンが総退却したた
め敗北となったのだ。

民間ではバイデンの度重なる嘘に呆れるだけでなく、腹の底から憤怒が湧
き起こっている。
バイデンは就任以来度重なる失敗、国家の危機について一度も陳謝や詫び
言葉を発表していない。



 
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◆米国、タジキスタン国境警備強化に協力

「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021)9月2日(木曜日)
通巻第7035号  

 タリバン連立政権、まもなく閣僚名簿発表し、発足へ
  米国、タジキスタン国境警備強化に協力、インドでは反イスラム運動


 パキスタンのクレシ外相は、「近くタリバン政権が閣僚名簿を発表する
だろう」と予測し、アクンザダ師が最高指導者として位置づける筈だと
語った。
 米国軍はアフガニスタンを去ったが、アメリカ人は数十から数百人がま
だアフガニスタンに滞在しているらしい。げんにアメリカ人記者はカブー
ルに留まり、状況を映像で伝えている。

 米国が警戒しているのは、置き去りにしてきた最新兵器ならび、アフガ
ニスタン政府軍に梃子入れし供与してきたアメリカ製の武器が、タリバン
に渡ったことだ。
 退去前に飛行場倉庫にあったヘリコプターなど多くを破壊してきたが、
政府軍の腐敗や局地戦の敗戦で、機関銃から夜間ゴーグル、特殊戦闘服、
軍靴に至るまで横取りされた。
その最新鋭の装備で、タリバン特殊部隊が現れた。

インドではイスラムのマイノリティ集落で、ヒンズー教原理主義過激派の
襲撃計画があるとされ、極度の緊張状態にある。

またパキスタンでもバロチスタン独立運動の武装集団と政府軍が交戦、
11名のテロリストが死んだとパキスタンは発表している(9月1日)。

米国はロシア軍、中国軍が駐在するタジキスタンの国境警備に協力すると
している。
 中国もこの点で警戒を強め、国連軍縮委員会中国代表のリ・ソンは「紛
争国には武器供与をしない協定の適用強化」などと演説した(ジュネー
ブ、8月31日)。盗人猛々しいとはこのことだが。。。。。。

 「米国の撤退はアジア諸国に米国依存リスクをあたえ、中国は台湾侵攻
の口実として火遊びをやらかすだろう。ロシアはウクライナの完全支配を
ねらって軍事行動をおこすのではないか」とする米国の世論に対して、ア
ダム・スミス米国連邦議会下院軍事委員会委員長は「アフガニスタン撤退
後も、軍事バランスは保たれている」と否定した。

 欧米メディアは「タリバン最高指導者のアクンザダ師が、いかなる人物
か」の特集を始めている。

 日本はこうした国際情勢にまった無頓着で、二階幹事長が辞めるやめな
い、管は続投か退陣かなどと、国政政治からみれば、まさに辺疆の田舎芝
居を演じている。
    ☆▽□☆◎み☆◎□☆や□▽◎☆ざ▽◎□☆き◎☆◎▽
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  ♪
樋泉克夫のコラム 
@@@@@@@@

【知道中国 2270回】          
 ──英国殖民地だった頃・・・香港での日々(香港152)

     △
 ここで、『修訂平劇選』の冒頭を飾る「打漁殺家」に注目すると、冒頭
に置かれたわけだから、修訂作業の模範例であり、?介石政権からして理
想的な「社会教育の意義」を期待できる演目であったと考えても強ち間違
いはないだろう。

『水滸後伝』の第九回を種本にした「打漁殺家」の主人公は漁師の蕭恩
で脇を固めるのは娘の桂英。敵役は網元とその背後の県知事。いわば強欲
非道な越後屋と悪逆苛烈なオ殿サマだ。彼らの役どころを往時の東映映画
で例えるなら蕭恩は大友柳太朗、桂英は高千穂ひづる。
となれば網元は進藤英太郎で県知事は山形勲・・・イメージとしてはサイ
コーだ。

 県知事の権力を笠に着て網元は悪逆非道・苛斂誅求の限り。人々の苦し
みは増すばかり。我慢に我慢を重ねた蕭恩だが、遂に堪忍袋の緒が切れ
た。桂英を引き連れ、たった2人で網元の屋敷に乗り込んで大暴れ。網元
一族を皆殺しにした末に、2人は何処かへ去る。

「打漁殺家」の山場は網元の屋敷での大立ち回りだが、結局は大量殺人
物語。「社会教育の意義」は大いに疑問だ。だが修訂の結果、「貪官汚吏
や悪徳地主の罪悪を告発し、彼らの悲惨な末路を描く。
社会を諫め、庶民の不満を代弁する。極めて有意義な教育的意義を持つ」
と認定される。蒋介石政権にとっては大陸ではもとより遁走先の台湾で
も、「貪官汚吏や悪徳地主」は打倒すべき対象だった。自らを巡る環境が
激変しようと、「打漁殺家」は蒋介石政権が求めた「社会教育の意義」を
表現していることになる。

ところで「打漁殺家」は稀代の戯迷であった毛沢東が好んだ演目の1つ
であり、主人公の蕭恩が見せる『好漢(おとこ)振り』にゾッコン惚れ込
んでいる風でもあった。蕭恩こそ、毛沢東好みの「官逼民反(官ガ逼レバ
民ハ反ス=役人が横暴だから民衆は反抗する)」を体現する英雄像に近
い。だから民衆を「官逼民反」「造反有理(造反ニ理有リ=造反には道理
がある。反抗は正しい)」で煽るには、「打漁殺家」は格好の演目となる
はずだ。

 ただ毛沢東は「娘と2人だけでは、蕭恩は無謀が過ぎる。やはり民衆と
共に網元屋敷に乗り込むべきだった。それこそが民衆蜂起と言える」と
いった趣旨の発言もしている。
 この毛沢東の発言を受けたかのように、共産党は「打漁殺家」を種本に
した現代京劇「松花江上」を制作した。1938年7月1日、延安で抗日戦争1
周年と共産党建党17周年を祝賀すべく開催された戯劇節において、毛沢東
を筆頭とする共産党幹部の前で披露されたのである。

「松花江上」は「打漁殺家」を換骨奪胎気味に書き換え、舞台を満州事
変後の松花江一帯に設定している。蕭恩は趙瑞と名前が変わるが娘は同じ
く桂英。趙瑞の2人の友人は共産党軍の司令官で、網元を後ろから支えて
いるのが県知事ではなく日本軍。松花江は「九・一八」(=満州事変勃発
の1931年9月18日)と並んで抗日のシンボルだったのだ。

 筋運びは「打漁殺家」と同じだが、最後のシーンが大いに異なる。助っ
人として登場した共産党軍司令官は、「趙瑞と娘に合流して、網元屋敷を
襲撃だ。県知事と背後の日本軍を打倒せよ。いまこそ抗日戦争が始まるの
だ。中国を救え。満州国打倒だ」と、舞台の上の民衆役を煽るが、同時に
舞台の下の観衆を煽り抗日の意義を説いた。

 もう多くを言う必要はないだろう。誰もが知っている「打漁殺家」とほ
ぼ同じ設定の「松花江上」を見せることで、抗日の宣伝・教育を狙ったの
である。
芝居の持つ「借古諷今(古ヲ借リテ今ヲ諷メル=過去を題材に現在を批
判・告発・風刺する)」という働きである。

「借古諷今」から考えるなら、「松花江上」はともあれ、「打漁殺家」
に求めた「社会教育の意義」は、国民党も共産党も五十歩百歩ではなかっ
たか。
 第六劇場でも「打漁殺家」は屡々公演された。もちろん「社会教育の意
義」を求めるはずもない。
京劇として面白いが、じつは小規模一座でも公演が出来るからだろう。
     ○△□◇ヒ◎○△□イ○△□◇ズ◎○△□ミ△□◇◎   
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  ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆  ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆  ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆     
  読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 
読者之声
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
   ♪
(読者の声1)貴誌前々号書評の島田洋一教授『アメリカ解体』を読み、
早速、同書を購入して、先生の言われる「ワシントン情報の鮮度」を味わ
いました。
 この本には、先生の書評では触れておられませんでしたが、オバマがバ
イデンを馬鹿にしていたという逸話。あの馬鹿のような外交展開のオバマ
からもバイデンが馬鹿にされていたということから、現在のアフガン撤退
の無様さを連想しました。大統領の器ではない人物だということが良く理
解できます。
 こういう事態が続けばバイデン再選はないでしょうし、2024年トラ
ンプ復活というシナリオも十分に考えられるのでは?(DK生、世田谷区)


(宮崎正弘のコメント)政治は一寸先が闇ですから、なんとも言えません
が、とりあえずは2022年中間選挙でしょう。トランプ支持の共和党議
員が議会で多数派を形成できるか、どうかによって、トランプ政治の復活
になりますから。

  ♪
(読者の声2)法的に夫婦別姓を認めよと獅子吼してみたり、意味がよく
分からない用語でジェンダ−フリ−だと騒ぎたてている人達がいますが、
この人達は闇の社会から操られている人達でしょうか?
多分自己判断の出来ない愚かな人たちでしょう。
 「お前百まで、儂しゃ九九まで。共に白髪の生える迄。」が日本人夫婦
愛のあり方で、何処かの民族の様に、得て勝手にコロコロと相手を変える
様な民族とは質も歴史も違う。
 識者ぶった世迷い言は、言わないでもらいたいものです。
   (北九州素浪人

(宮崎正弘のコメント)闇の社会に手繰られている、というより公然と
ネット上の左翼に洗脳されているのでしょうね。オルテガが言った「もの
を考えない人たち」です。

  ♪
(読者の声3)中国の大連で京都風の観光テーマパークが人気だという。
「盛唐・小京都」といい、意匠デザインは株式会社石井建築事務所。宣伝
動画はこちら。
https://www.youtube.com/watch?v=gjFKeVCNk0E
観光客が撮った動画
https://www.youtube.com/watch?v=6TXI9mCWhng
 大連は毛沢東時代には旅順と合わせて旅大と呼ばれていましたが、軍事
上の観点から閉鎖都市だったため文化大革命時にも破壊をまぬがれた、と
中国駐在武官の自衛官が書いていた。日本疎開時代の建築が残る上海とと
もに親日的な土地柄なのでしょう。
 中国といえば何かと話題のファーウェイ(華為)ですが、社長は大の親
日家として知られ本社内に京都の街並みまで作ってしまった。
https://www.youtube.com/watch?v=972SsY_ccvQ
 動画の15秒あたりから出てくる町家風の玄関、引き戸の上には各種登録
証や会員証が貼られている。一見本物に見えますが実は偽物。なにしろ
「京都県」と書かれている。
 日本でも今年の夏はネットで「京都県」が話題になった。甲子園出場の
京都国際高校(元韓国学校)を紹介する字幕が「京都県京都市」。NHKに
は外国人しかいないのか。字幕担当がおそらく外国籍で都道府県の違いな
どわからない。字幕チェックも外国人?
https://buzzcutangler.com/shoking/47661/
 NHKはアナウンサー自体が劣化しており数年前のラジオのニュースでは
新日鉄住金を「しんにってつじゅうきん」と読み訂正もなし。住友金属が
合併で消えてまだ数年のこと、製鉄会社が住宅金融とはなさけない。
 NHKも民放も工作資金が流れ込んでいるのか午後7時のニュースで韓国の
女性アイドルグループの来日をトップで伝えたり、サムスンのスマホの新
製品をニュース内で堂々と紹介(宣伝)する。総務大臣はなんのためにい
るのでしょうね。(PB生、千葉)

2021年09月03日

◆尖閣諸島で「日米共同訓練」を開始せよ


櫻井よしこ


東京五輪もあと数日、卓球、体操、水泳、陸上と、応援する側も、本当に
忙しい。池江璃花子さんが女子競泳400メートルメドレーリレーを泳ぎ
きって、一緒に泳いだ選手たちと抱き合って号泣していた姿、その後は晴
れやかな笑顔になって「幸せ!」と語った姿。きっとずっと記憶に残ると
思う。

日本中が五輪で盛り上がっている間、世界と中国との対立は深まり続けて
いる。57年前、東京五輪に合わせて核実験をしたように、中国はいつも相
手国の不意を突く。「言論テレビ」は五輪の最中の7月30日、陸海空自衛
隊の元幹部を迎えて危機に陥っている尖閣と台湾を取り上げた。

元陸上幕僚長の岩田清文、元空将の織田邦男、元海将の堂下哲郎の三氏
は、いずれも軍事の専門家として台湾も尖閣も、日台両国は完全に中国の
戦略にはまっていると危惧すること頻りだった。

たとえば尖閣諸島周辺海域にはほぼ毎日、中国人民解放軍(PLA)傘下
の海警の船が侵入し続けている。海上保安庁の巡視船は口頭で退去を求め
るが、中国側は気にもしない。日本政府は、領海侵犯される度に「遺憾で
ある」と言い、尖閣諸島の施政権はわが方にあると繰り返す。

しかし国際社会の目には、日中双方の船が毎日せめぎ合っている尖閣の海
は、両国の共同管理下にあるように見えるのではないか。「尖閣問題に関
して日中間に領土問題は存在しない」と日本政府は主張するが、中国側が
尖閣海域への侵入を開始して10年以上が経ったいま、残念ながら「領土問
題は存在する」状況になっている。中国の戦略は功を奏しているのだ。

台湾情勢は日本よりはるかに厳しく、「単独では風前の灯」だ。岩田氏が
指摘した。

「台湾の窮状は空において最も顕著です。2020年10月に、台湾空軍の参謀
長がその年の1月から10月までの緊急発進の回数を発表しました。4596回
という、異常な回数でした。台湾は極度な緊張下に置かれています」

「台湾はギブアップ」

10か月で4596回は1日平均で15回以上になる。わが国にも中国機やロシア
機は接近を繰り返している。回数は年々増えており、過去5年間の平均で
見ると、中国機への緊急発進は625回に上る。航空自衛隊は毎日、1〜2回
緊急発進しているのである。たとえ1回であろうと2回であろうと、日々緊
急発進を迫られるのは戦闘機乗りにとっても航空自衛隊全体にとっても大
きな負担である。ところが台湾空軍は毎日15回だ。PLAは悪魔のような
力と執拗さで戦闘機を飛ばして、台湾を圧迫する。そこで何が起きている
か。岩田氏が続けた。

「台湾空軍が音を上げたのです。パイロットは緊張の毎日で心身共にもち
ません。空軍としては機体の整備も十分にできない。燃料代もバカになら
ない。そこでやむなく緊急発進はかけないというところに落ちついたのです」

中国軍機の接近に対して台湾空軍が緊急発進をかけなくなったということ
は、軍事上どういう意味があるのか。織田氏が説明した。

「台湾は平時の対領空侵犯措置をギブアップしたということです。これで
は台湾空軍は訓練もできません。事故もあり得るし、機体整備の必要性も
あるということで、台湾軍機を(空へ)上げていないのですが、はっきり
言って敗北です」

平時の領空主権は国際法上絶対的であり排他的である。たとえばトルコ政
府は15年11月、ロシア軍機を撃墜した。トルコ、ロシア両国は戦争状態に
あるわけではなく、両国関係は平時のものであった。ところが、ロシア軍
機はシリアに対する空爆を開始、トルコ領空を侵犯し始めた。トルコ側は
領空侵犯機に5分間で10回の警告を発した。それでもロシア機が従わな
かったためにトルコ側は国際法に基づいて撃墜した。

プーチン大統領は激怒し、7か月後、トルコ側が「深い哀悼の意」を表明
して、事件は決着した。要は、トルコには国際社会からもロシアからも報
復はなかったということだ。

「領空主権という絶対的主権を持っているのが国家なのです。それを守ら
なければ国家ではないのです。台湾が自分たちは国家だと考えるのであれ
ば、ここは苦しくても続けなければならないと思います」

織田氏が台湾の現状を厳しく指摘するのは、領空主権を守ることの重要性
を骨身にしみて知っているからであろう。氏は35年間、戦闘機のパイロッ
トとしてスクランブル発進も含め、日本の空を守ってきた。日本上空に向
かってくる中国軍機は全てミサイルという実弾を搭載している。当然自衛
隊機も同様に武装している。制空権を奪われれば、海でも陸でも勝目はな
くなる。国の運命を担って日々領空を守るために、国際法に厳密に従いつ
つ、決して相手につけ入る隙を与えないように実弾装備で構え続けた織田
氏の指摘を心に刻みたい。

日米両軍の結束を強調

空自機は、中国軍機が「上がった」という情報を掴んだら、即時緊急発進
して中国軍機よりも先に尖閣上空に到着する。

「我々がそこに先にいれば、中国軍機は入って来れませんから」と織田氏。

日米両国は台湾(台湾海峡)の安定と平和を守ると国際社会に向けて公約
した。中国が台湾を押さえれば、台湾海峡は日本の瀬戸内海のような形で
中国の内海となる。日本のタンカーや貨物船が自由に通ることもかなわな
くなるだろう。南シナ海への展開も難しくなり、日本はまさに危機に陥
る。台湾と尖閣・沖縄さらに日本は、すべて一体と考えなければならない
のだ。

クリミア半島や南シナ海の島々の例からも、領土は奪ってしまった方が勝
ちなのだ。領土が奪われた時は被害国も国際社会も声を上げるが、暫く時
間が過ぎると、やがて皆、黙ってしまう。奪った側は実効支配の実績を積
み重ねていけばよいだけだ。だから、領土は決して奪われてはならない。

いま、尖閣で中国が手を出さないのは、米軍と事を構えたくないからだ。
しかし一旦、有事となれば、必ずこちらが守り通せるともいえない状況が
ある。どうするのか。日米の結束と力を中国に見せつけなければならな
い。ひとつの方法として、8つの尖閣の島のひとつ、久場島を日米両軍が
共同訓練の場として活用する手がある。

久場島には高い山はなく、平地が広がっている。米軍はずっと同島で軍事
訓練をしていた。が、1978年に米国務省が久場島での軍事訓練を凍結し
た。理由は79年1月に米国が中国と国交を正常化すると決定したからだ。

いま、その凍結を解くよう、米国を説得するのがよい。台湾海峡の平和と
安全にコミットした菅義偉首相は、尖閣を守り通すためにも、日米両軍の
結束を強調してみせることで、自らの約束を果たせるはずだ。

『週刊新潮』 2021年8月12・19日合併号
日本ルネッサンス 第962回


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◆「常在戦場/76金欠習近平の金持ち叩きが始まった」

          “シーチン”修一 2.0

【Anne G. of Red Gables/360(2021/8/30/月】習近平式の“文革2.0”が始
まったが、彼はトウ小平の「改革開放経済」の全面否定、毛沢東の「共産
主義統制=節約閉塞経済」への復帰を目指しているかのようだ。

毛沢東は1957年の反右派闘争(経済自由化を求める反体制派狩り)発動の
直前に、経済建設が思うように進まないのは汚職や浪費のせいだとして、
こう懸念を示している

「現在、我々の多くの要員の間に、大衆と苦楽を共にすることを望まず、
個人的な名誉や利益をとやかく言いたがる危険な傾向が芽生えている。こ
れは非常に良くない。我々は増産・節約運動の中で、機関を簡素化し、幹
部を下部に降ろし、かなり多くの幹部を生産面に戻すことを要求している
が、これはこうした危険な傾向を克服する方法の一つである」

<1957年6月8日、毛沢東は人民日報で「少数の右派分子が共産党の整風を
助ける名目で、共産党と労働者階級の指導権に挑戦し、はなはだしきに
至っては、公然と共産党に“下野しろ”とわめいている」と批判。10月15
日、党中央は「右派分子を決める基準」通知を出し、1958年には55万人の
右派が辺境への労働改造や失職などの憂き目に遭い、あるいは死亡した>
(WIKI)

我らが習近平はそれを真似ている。石平氏の論稿「高所得層は不合理故に
収奪せよ――習近平政権の危うい『劫富済貧革命』」現代ビジネス2021/8
/27から。

<経済成長に伴う貧富の格差の拡大を是正し、「共同富裕社会」の実現を
目指すのは良いことであって社会全体の安定にもつながる「善政」であろう。

問題はむしろ、どのようにして「共同富裕」を達成するのかである。人民
日報の公式発表から見れば、習政権の考える「共同富裕」の達成手法は実
は、共産党政権ならではの危ういものである。

例えば、貧富の格差是正の手段として「第一次分配」「第二次分配」と並
んで、「第三次分配」が言及された。

普通の市場経済においては、投資者・生産者がその投資と生産活動の代償
として利益を上げて所得を得るのは「第一次分配」であって、政府が企業
や個人から税金を徴収して社会全体の福祉に当てるは「第二次分配」である。

しかし習政権の提唱する「第三次分配」となると、それは当然、通常の税
収・社会福祉事業以外の政治的手段を使って富の再分配を図ることとなろ
う。その具体的なやり方として会議の発表記事は次のような重要なことを
述べている。

「不法収入を断固として取り締まり、不合理収入を整理・規制することに
よって、収入分配の秩序を立て直す」「高収入層に対する規制と調節を強
化させ、高収入を合理的に調節し、高収入層個人と企業が社会により多く
報うように誘導しそれを促す」と。

ここに出てくるのは「収入」というキーワードであって、ポイントとなっ
ているのは「高収入層」、たくさん儲かっている人々のことである。彼ら
こそは、習近平流の「共同富裕社会達成」のための政府手段の標的となろう。

注目すべきなのは、こうした高収入層に対しては、その「不法収入を断固
として取り締まり、不合理収入を整理・規制する」という表現である。
「不法収入」ならその意味するところは明確であろう。不法な手段で得た
収入や、脱税によって増やした収入などがそれである。問題は「不合理収
入」とは何かだ。

「不合理収入」はここでは「不法収入」と別々にされているから、中央会
議のいう「不合理収入」は当然「不法収入」に当たらない。つまり、合法
的な収入であってもそれが「不合理収入」であれば、政府による「整理・
規制」の対象となるのである。

しかし一体どういう収入が「不合理収入」なのか。それに対する厳密な法
的規定は当然ない。結局のところ政府が「不合理」だと認定すればそれは
すなわち「不合理収入」となるのである。ここまで来たら、習近平政権の
やろうとしていることはもはや明々白々である。

国中の高収入層を標的にし、彼らの得た不法収入を取締りによって没収す
るのと同時に、高収入層が合法的な手段で得た正当的な収入に対しても、
政権はそれを「不合理収入」だと勝手に認定した上で、政治的手段を用い
てそれを収奪するのである。

中国では昔から「劫富済貧」という思想があって、金持ちを脅かしてその
財産を奪い、貧民に分配して救済する、という意味合いである。

近代以前、歴代の王朝時代の農民一揆や政治的反乱は往々にしてこれをス
ローガンに掲げて民衆の支持を取り付けようとしていた。実は当の中国共
産党も、党設立の当時からこの思想を旗印にして「革命」を起こして政権
奪取に成功したという歴史がある。

政権樹立後の毛沢東時代、中国共産党はやはり「劫富済貧」をモードとし
た社会主義経済体制を作り上げて、効率の悪い経済運営を行っていたが、
やがてトウ小平の時代になると、政権が「先富論」を持ち出して瀕死の中
国経済に活力をもたらし、それが今までの高度成長につながったわけである。

しかし今、政治運営とイデオロギーの面で毛沢東時代への逆戻りを進めて
いる習近平政権の下では、高収入層を標的にした現代版の「劫富済貧革
命」は再び起こされようとしている。

今後、いわば「不合理高収入の整理・調節」という大義名分の下では、中
国の中央政府とその各級の地方政府があらゆる名目・口実を用いて、高収
入層に対する「上納金」や「寄附金」の強要、罰金の乱発などの手段で、
高収入層・富裕層に対する劫奪が常態化していくのであろう。

そうするとことによって習政権は、中央政府と各級地方政府の悪化してい
る財政状況を改善するのと同時に、裾の広い貧困層・一般平民からの支持
を取り付けるという「一石二鳥」の政策効果を得ることができる。

そういえば今年に入ってから、アリババなどの大企業に対して巨額な罰金
を課することは中国政府の慣用手段の一つとさえなっているが、どうやら
今後において、収奪の標的は企業にとどまらず、幅広い富裕層全体に拡大
していく勢いである。

しかし、世紀の蛮行ともいうべきこのような「劫富済貧革命」は短期的に
習政権に莫大な利益をもたらすことがあっても、長期的に見れば、それは
むしろ多くの投資者や経営者からやる気を奪うことによって中国経済の活
力を削ぐこととなろう。

現に「劫富済貧」的な社会主義政策を実施した毛沢東時代、中国経済はど
ん底に陥っていて、中国は当時の世界の最貧国家の一つに成り下がっている。

内政・外交を問わずにして、習近平政権のやっている政策の大半は実は、
中国自身の首をしめているのである>

劫富済貧の「劫/ごう」は「おびやかす。おどす。かすめる」の意、劫掠
(ごうりゃく)は脅して奪い取ること。「中国近代の反体制的秘密結社
“青幇”“紅幇”。その最も特色あるスローガンは劫富済貧(富者を劫掠して
貧者を救済する)である」(世界大百科事典)。

中共は元々がゴロツキを駆り集めた山賊みたいなものだから「劫奪」「劫
盗」「劫掠」はDNA。貧すれば鈍する、「貧乏になると愚かで馬鹿な行動
をする人になり得る」(weblio)は世の倣い、ユスリタカリも芸のうち、
習近平は先祖返りしたわけだ。毛沢東原理主義!

思い出すなあ、「贅沢は敵だ、欲しがりません勝つまでは」・・・真綿で
首を締める包囲網は効き目がある。歴史は繰り返す、一度目は悲劇として
二度目は喜劇として。

悲劇か喜劇かは分からないが、習近平一派を駆逐しないと14億の民は地獄
行きの「苦難の行軍」を強いられることになる。プーチン・ロシアだって
自国の十倍の支那人が国境を突破して逃げてきたら、1900年の「アムール
河の虐殺」を再演せざるを得なくなるだろう。

中国専門家で元英国外交官のガーサイド (Roger Garside)氏は今春『
中国クーデター :自由への大飛躍(China Coup: The Great Leap to
Freedom)』を上梓したという。中共軍も銭ゲバ拝金教の利権集団だから
クーデターはあり得ない話だろうし、林彪も毛沢東に睨まれ、暗殺・クー
デターに失敗し、空路でソ連逃亡の途次、墜落事故死した(らしい)か
ら、西側諸国が中共軍に期待するのは無理筋。

やはり対中包囲戦で干上がらせて自滅を待つしかないのだろうか。小生
が先に昇天しそうだ。

         
━━━━━━━━━━━━━━━


◆CIA長官、極秘にカブール入り

「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021)8月25日(水曜日)弐
通巻第7027号  

 CIA長官、極秘にカブール入り。タリバン最高幹部と会談か『ワシン
トン・ポスト』が速報。CIAは沈黙

 8月23日に、CIAのウィリアム・バーンズ長官が極秘にカブールへ
入り、タリバン最高幹部のバラダルと面談したと『ワシントン・ポスト』
((8月24日)が伝えた
 CIAは否定も肯定もしておらず、確認は取れていないが、世界のメ
ディアは大騒ぎをしている。

 
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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【知道中国 2266回】      
 ─英国殖民地だった頃・・・香港での日々(香港148)

     △
 周囲は普段は見たこともない老若男女が大騒ぎ。しかも、それがワンサ
カといるわけだから、2人が緊張しないわけはない。その緊張ぶりが繋い
だ手から伝わってくるようだった。人混みをかき分けながら第六劇場へ。

 劇場とは言うものの、芝居小屋と呼ぶに相応しい侘しげな佇まい。入
り口にドアがあるわけではなく、外から中は丸見え。だから立ち見を我慢
しさえすれば、無料で芝居を見ることが出来る。スルッと中に入って最後
列の椅子に座ってしまえば、タダで舞台が楽しめる。誰といって咎め立て
する者はいない。なんとも鷹揚で長閑な時代だった
もっとも、入場客の大部分が京劇なんぞに興味があろうはずもないから、
入り口に立ち止まってもヒヤカシ程度で立ち去る。カネまで払って第六劇
場に入れあげるような「戯迷(しばいくるい)」は、当時の香港でも、や
はり余ほどのモノズキであったに違いない。

 程なく、晴れて戯迷の仲間入り、いや見習い扱いを受け、観劇三昧の
日々を送ることなったわけだ。事実、京劇にはまり、夜の?園通いが日常
化するようになると、第一日文の学生などを含め、周囲の誰からも奇異の
目を向けら、誰の顔からも「モノズキにも程がある」といった雰囲気が伝
わってくるようだった。だが、この道だけは止められない。

  第六劇場に戻る。
入り口の右手に置かれた縦横1.5mで高さが2mほどの小屋が切符売り場
だった。その中にオッサンが座席表を客の方に向けて座っている。客が望
みの座席を指さすと、手にしたチビた赤鉛筆で座席表に印をした後、切符
に座席番号を書き込み渡してくれる。ここで忘れてならないのは、演目の
予定と役者名が記された「戯単」を受け取ること。それというのも戯単は
芝居を楽しむ上での最良の手引きだからだ。いずれ細かく論じてみたい。

かくて切符と戯単を手に入場するが、場内案内などいるわけがないから
自分で座席を探す。 
 もっとも足繁く通うようになると、最前列の舞台に向かった右から3番
目(2番目?)の席が定席となった。そこでオッサンはこちらの顔を認め
ると即座に座席表に印し、黙って切符を渡してくれるようになった。1年
ほど通う頃には「自己人(なかま)」と認められたのか、晴れて顔パス待
遇に昇格していた。

 第六劇場の構造を簡単に記すと、土間はコンクリートの打ちっぱなし
で、客席は舞台に向かって緩い下り勾配だった。中央の通路を挟んで両側
に、坐る部分が折りたためる木製の安っぽい椅子が片側6、7席ほど。小
屋全体では満席で300人ほどになろうか。

 じつは京劇を含む中国の伝統芝居は、基本的には大道具は使わない。
椅子に机に小道具、それに役者の五体の動きと場面(おはやし)の音だけ
で、ありとあらゆる情景を舞台の上に描き出してしまう。
取り立てて大きな舞台は必要ない。だから第六劇場のような小ぶりの舞台
であっても、無限の空間を描き出せる。第六劇場では役者の息づかいが客
席最前列の客には皮膚感覚で堪能出来た。芝居をライブで楽しむには手ご
ろな規模の小屋だった。

 とはいうものの、板を打ち付けただけの壁で、なんの装飾もない。夏は
暖房で冬は冷房だから、とてもじゃないが快適とは程遠い。天井に大型扇
風機が設置されているが、これが役に立たない。そんな時は戯迷仲間の誰
かが冷えたビールを持ち込んで、銘々に紙コップを渡し、幕間にグビーツ
と喉を潤す。

冬は寒い。建て付けの悪い老朽化した木造建築だけに、方々の隙間から
冷たい風が吹き込、み、うちっ放しのコンクリートの床からの冷気が靴底
に伝わり、やがて体全体を冷やしてしまう。
だが舞台に集中するから首から上は熱い。すると頃合いを見計らって、戯
迷仲間の誰かが第六劇場隣の客家料理レストランに行って、熱燗の紹興酒
を持ち帰って仲間に振る舞ってくれる。
最前列で京劇を楽しみながらの紹興酒。至福中の至福の時だ。
     
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  読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 
読者之声
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(読者の声1)随分前でしたが、貴誌がフィリピンの次期大統領選挙をめ
ぐって、パッキオ(ボクシング世界チャンピオン)も出馬するし、ドゥテ
ルテ大統領は長女(ダバオ市長)を立候補させ、自分は副大統領で、事実
上の院政をひく可能性が高いと予測されていました。
24、ドゥテルテ大統領は、正式に「次は『副大統領』に立候 補する」
と表明しています。プーチンが大統領から首相となり、また大統 領とな
り、憲法改正で先の先まで居座るように、ドゥテルテ大統領も同じ 手口
でのぞむというわけですね。(DS生、さいたま市)


(宮崎正弘のコメント)ただし、フィリピンの選挙制度では大統領、副大
統領のチケットで臨むというアメリカ式ではなく、大統領と副大統領は
別々の選挙(投票日は同じ)です。

 政治の世界は一寸先が闇、長女は健康問題を抱えており、大統領はパッ
キオ、副がドゥテルテという、アンバランス政権となる可能性も0・5%
ほどあります。
      

2021年09月01日

◆尖閣諸島で「日米共同訓練」を開始せよ


櫻井よしこ

東京五輪もあと数日、卓球、体操、水泳、陸上と、応援する側も、本当に
忙しい。池江璃花子さんが女子競泳400メートルメドレーリレーを泳ぎ
きって、一緒に泳いだ選手たちと抱き合って号泣していた姿、その後は晴
れやかな笑顔になって「幸せ!」と語った姿。きっとずっと記憶に残ると
思う。

日本中が五輪で盛り上がっている間、世界と中国との対立は深まり続けて
いる。57年前、東京五輪に合わせて核実験をしたように、中国はいつも相
手国の不意を突く。「言論テレビ」は五輪の最中の7月30日、陸海空自衛
隊の元幹部を迎えて危機に陥っている尖閣と台湾を取り上げた。

元陸上幕僚長の岩田清文、元空将の織田邦男、元海将の堂下哲郎の三氏
は、いずれも軍事の専門家として台湾も尖閣も、日台両国は完全に中国の
戦略にはまっていると危惧すること頻りだった。

たとえば尖閣諸島周辺海域にはほぼ毎日、中国人民解放軍(PLA)傘下
の海警の船が侵入し続けている。海上保安庁の巡視船は口頭で退去を求め
るが、中国側は気にもしない。日本政府は、領海侵犯される度に「遺憾で
ある」と言い、尖閣諸島の施政権はわが方にあると繰り返す。

しかし国際社会の目には、日中双方の船が毎日せめぎ合っている尖閣の海
は、両国の共同管理下にあるように見えるのではないか。「尖閣問題に関
して日中間に領土問題は存在しない」と日本政府は主張するが、中国側が
尖閣海域への侵入を開始して10年以上が経ったいま、残念ながら「領土問
題は存在する」状況になっている。中国の戦略は功を奏しているのだ。

台湾情勢は日本よりはるかに厳しく、「単独では風前の灯」だ。岩田氏が
指摘した。

「台湾の窮状は空において最も顕著です。2020年10月に、台湾空軍の参謀
長がその年の1月から10月までの緊急発進の回数を発表しました。4596回
という、異常な回数でした。台湾は極度な緊張下に置かれています」

「台湾はギブアップ」

10か月で4596回は1日平均で15回以上になる。わが国にも中国機やロシア
機は接近を繰り返している。回数は年々増えており、過去5年間の平均で
見ると、中国機への緊急発進は625回に上る。航空自衛隊は毎日、1〜2回
緊急発進しているのである。たとえ1回であろうと2回であろうと、日々緊
急発進を迫られるのは戦闘機乗りにとっても航空自衛隊全体にとっても大
きな負担である。ところが台湾空軍は毎日15回だ。PLAは悪魔のような
力と執拗さで戦闘機を飛ばして、台湾を圧迫する。そこで何が起きている
か。岩田氏が続けた。

「台湾空軍が音を上げたのです。パイロットは緊張の毎日で心身共にもち
ません。空軍としては機体の整備も十分にできない。燃料代もバカになら
ない。そこでやむなく緊急発進はかけないというところに落ちついたのです」

中国軍機の接近に対して台湾空軍が緊急発進をかけなくなったということ
は、軍事上どういう意味があるのか。織田氏が説明した。

「台湾は平時の対領空侵犯措置をギブアップしたということです。これで
は台湾空軍は訓練もできません。事故もあり得るし、機体整備の必要性も
あるということで、台湾軍機を(空へ)上げていないのですが、はっきり
言って敗北です」

平時の領空主権は国際法上絶対的であり排他的である。たとえばトルコ政
府は15年11月、ロシア軍機を撃墜した。トルコ、ロシア両国は戦争状態に
あるわけではなく、両国関係は平時のものであった。ところが、ロシア軍
機はシリアに対する空爆を開始、トルコ領空を侵犯し始めた。トルコ側は
領空侵犯機に5分間で10回の警告を発した。それでもロシア機が従わな
かったためにトルコ側は国際法に基づいて撃墜した。

プーチン大統領は激怒し、7か月後、トルコ側が「深い哀悼の意」を表明
して、事件は決着した。要は、トルコには国際社会からもロシアからも報
復はなかったということだ。

「領空主権という絶対的主権を持っているのが国家なのです。それを守ら
なければ国家ではないのです。台湾が自分たちは国家だと考えるのであれ
ば、ここは苦しくても続けなければならないと思います」

織田氏が台湾の現状を厳しく指摘するのは、領空主権を守ることの重要性
を骨身にしみて知っているからであろう。氏は35年間、戦闘機のパイロッ
トとしてスクランブル発進も含め、日本の空を守ってきた。日本上空に向
かってくる中国軍機は全てミサイルという実弾を搭載している。当然自衛
隊機も同様に武装している。制空権を奪われれば、海でも陸でも勝目はな
くなる。国の運命を担って日々領空を守るために、国際法に厳密に従いつ
つ、決して相手につけ入る隙を与えないように実弾装備で構え続けた織田
氏の指摘を心に刻みたい。

日米両軍の結束を強調

空自機は、中国軍機が「上がった」という情報を掴んだら、即時緊急発進
して中国軍機よりも先に尖閣上空に到着する。

「我々がそこに先にいれば、中国軍機は入って来れませんから」と織田氏。

日米両国は台湾(台湾海峡)の安定と平和を守ると国際社会に向けて公約
した。中国が台湾を押さえれば、台湾海峡は日本の瀬戸内海のような形で
中国の内海となる。日本のタンカーや貨物船が自由に通ることもかなわな
くなるだろう。南シナ海への展開も難しくなり、日本はまさに危機に陥
る。台湾と尖閣・沖縄さらに日本は、すべて一体と考えなければならない
のだ。

クリミア半島や南シナ海の島々の例からも、領土は奪ってしまった方が勝
ちなのだ。領土が奪われた時は被害国も国際社会も声を上げるが、暫く時
間が過ぎると、やがて皆、黙ってしまう。奪った側は実効支配の実績を積
み重ねていけばよいだけだ。だから、領土は決して奪われてはならない。

いま、尖閣で中国が手を出さないのは、米軍と事を構えたくないからだ。
しかし一旦、有事となれば、必ずこちらが守り通せるともいえない状況が
ある。どうするのか。日米の結束と力を中国に見せつけなければならな
い。ひとつの方法として、8つの尖閣の島のひとつ、久場島を日米両軍が
共同訓練の場として活用する手がある。

久場島には高い山はなく、平地が広がっている。米軍はずっと同島で軍事
訓練をしていた。が、1978年に米国務省が久場島での軍事訓練を凍結し
た。理由は79年1月に米国が中国と国交を正常化すると決定したからだ。

いま、その凍結を解くよう、米国を説得するのがよい。台湾海峡の平和と
安全にコミットした菅義偉首相は、尖閣を守り通すためにも、日米両軍の
結束を強調してみせることで、自らの約束を果たせるはずだ。

『週刊新潮』 2021年8月12・19日合併号
日本ルネッサンス 第962回


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◆「常在戦場/76金欠習近平の金持ち叩きが始まった」

          “シーチン”修一 2.0

【Anne G. of Red Gables/360(2021/8/30/月】習近平式の“文革2.0”が始
まったが、彼はトウ小平の「改革開放経済」の全面否定、毛沢東の「共産
主義統制=節約閉塞経済」への復帰を目指しているかのようだ。



毛沢東は1957年の反右派闘争(経済自由化を求める反体制派狩り)発動の
直前に、経済建設が思うように進まないのは汚職や浪費のせいだとして、
こう懸念を示している。



「現在、我々の多くの要員の間に、大衆と苦楽を共にすることを望まず、
個人的な名誉や利益をとやかく言いたがる危険な傾向が芽生えている。こ
れは非常に良くない。我々は増産・節約運動の中で、機関を簡素化し、幹
部を下部に降ろし、かなり多くの幹部を生産面に戻すことを要求している
が、これはこうした危険な傾向を克服する方法の一つである」



<1957年6月8日、毛沢東は人民日報で「少数の右派分子が共産党の整風を
助ける名目で、共産党と労働者階級の指導権に挑戦し、はなはだしきに
至っては、公然と共産党に“下野しろ”とわめいている」と批判。10月15
日、党中央は「右派分子を決める基準」通知を出し、1958年には55万人の
右派が辺境への労働改造や失職などの憂き目に遭い、あるいは死亡した>
(WIKI)



我らが習近平はそれを真似ている。石平氏の論稿「高所得層は不合理故に
収奪せよ――習近平政権の危うい『劫富済貧革命』」現代ビジネス2021/8
/27から。



<経済成長に伴う貧富の格差の拡大を是正し、「共同富裕社会」の実現を
目指すのは良いことであって社会全体の安定にもつながる「善政」であろう。



問題はむしろ、どのようにして「共同富裕」を達成するのかである。人民
日報の公式発表から見れば、習政権の考える「共同富裕」の達成手法は実
は、共産党政権ならではの危ういものである。



例えば、貧富の格差是正の手段として「第一次分配」「第二次分配」と並
んで、「第三次分配」が言及された。



普通の市場経済においては、投資者・生産者がその投資と生産活動の代償
として利益を上げて所得を得るのは「第一次分配」であって、政府が企業
や個人から税金を徴収して社会全体の福祉に当てるは「第二次分配」である。



しかし習政権の提唱する「第三次分配」となると、それは当然、通常の税
収・社会福祉事業以外の政治的手段を使って富の再分配を図ることとなろ
う。その具体的なやり方として会議の発表記事は次のような重要なことを
述べている。



「不法収入を断固として取り締まり、不合理収入を整理・規制することに
よって、収入分配の秩序を立て直す」「高収入層に対する規制と調節を強
化させ、高収入を合理的に調節し、高収入層個人と企業が社会により多く
報うように誘導しそれを促す」と。



ここに出てくるのは「収入」というキーワードであって、ポイントとなっ
ているのは「高収入層」、たくさん儲かっている人々のことである。彼ら
こそは、習近平流の「共同富裕社会達成」のための政府手段の標的となろう。



注目すべきなのは、こうした高収入層に対しては、その「不法収入を断固
として取り締まり、不合理収入を整理・規制する」という表現である。
「不法収入」ならその意味するところは明確であろう。不法な手段で得た
収入や、脱税によって増やした収入などがそれである。問題は「不合理収
入」とは何かだ。



「不合理収入」はここでは「不法収入」と別々にされているから、中央会
議のいう「不合理収入」は当然「不法収入」に当たらない。つまり、合法
的な収入であってもそれが「不合理収入」であれば、政府による「整理・
規制」の対象となるのである。



しかし一体どういう収入が「不合理収入」なのか。それに対する厳密な法
的規定は当然ない。結局のところ政府が「不合理」だと認定すればそれは
すなわち「不合理収入」となるのである。ここまで来たら、習近平政権の
やろうとしていることはもはや明々白々である。



国中の高収入層を標的にし、彼らの得た不法収入を取締りによって没収す
るのと同時に、高収入層が合法的な手段で得た正当的な収入に対しても、
政権はそれを「不合理収入」だと勝手に認定した上で、政治的手段を用い
てそれを収奪するのである。



中国では昔から「劫富済貧」という思想があって、金持ちを脅かしてその
財産を奪い、貧民に分配して救済する、という意味合いである。



近代以前、歴代の王朝時代の農民一揆や政治的反乱は往々にしてこれをス
ローガンに掲げて民衆の支持を取り付けようとしていた。実は当の中国共
産党も、党設立の当時からこの思想を旗印にして「革命」を起こして政権
奪取に成功したという歴史がある。



政権樹立後の毛沢東時代、中国共産党はやはり「劫富済貧」をモードとし
た社会主義経済体制を作り上げて、効率の悪い経済運営を行っていたが、
やがてトウ小平の時代になると、政権が「先富論」を持ち出して瀕死の中
国経済に活力をもたらし、それが今までの高度成長につながったわけである。



しかし今、政治運営とイデオロギーの面で毛沢東時代への逆戻りを進めて
いる習近平政権の下では、高収入層を標的にした現代版の「劫富済貧革
命」は再び起こされようとしている。



今後、いわば「不合理高収入の整理・調節」という大義名分の下では、中
国の中央政府とその各級の地方政府があらゆる名目・口実を用いて、高収
入層に対する「上納金」や「寄附金」の強要、罰金の乱発などの手段で、
高収入層・富裕層に対する劫奪が常態化していくのであろう。



そうするとことによって習政権は、中央政府と各級地方政府の悪化してい
る財政状況を改善するのと同時に、裾の広い貧困層・一般平民からの支持
を取り付けるという「一石二鳥」の政策効果を得ることができる。



そういえば今年に入ってから、アリババなどの大企業に対して巨額な罰金
を課することは中国政府の慣用手段の一つとさえなっているが、どうやら
今後において、収奪の標的は企業にとどまらず、幅広い富裕層全体に拡大
していく勢いである。



しかし、世紀の蛮行ともいうべきこのような「劫富済貧革命」は短期的に
習政権に莫大な利益をもたらすことがあっても、長期的に見れば、それは
むしろ多くの投資者や経営者からやる気を奪うことによって中国経済の活
力を削ぐこととなろう。



現に「劫富済貧」的な社会主義政策を実施した毛沢東時代、中国経済はど
ん底に陥っていて、中国は当時の世界の最貧国家の一つに成り下がっている。



内政・外交を問わずにして、習近平政権のやっている政策の大半は実は、
中国自身の首をしめているのである>



劫富済貧の「劫/ごう」は「おびやかす。おどす。かすめる」の意、劫掠
(ごうりゃく)は脅して奪い取ること。「中国近代の反体制的秘密結社
“青幇”“紅幇”。その最も特色あるスローガンは劫富済貧(富者を劫掠して
貧者を救済する)である」(世界大百科事典)。



中共は元々がゴロツキを駆り集めた山賊みたいなものだから「劫奪」「劫
盗」「劫掠」はDNA。貧すれば鈍する、「貧乏になると愚かで馬鹿な行動
をする人になり得る」(weblio)は世の倣い、ユスリタカリも芸のうち、
習近平は先祖返りしたわけだ。毛沢東原理主義!



思い出すなあ、「贅沢は敵だ、欲しがりません勝つまでは」・・・真綿で
首を締める包囲網は効き目がある。歴史は繰り返す、一度目は悲劇とし
て、二度目は喜劇として。



悲劇か喜劇かは分からないが、習近平一派を駆逐しないと14億の民は地獄
行きの「苦難の行軍」を強いられることになる。プーチン・ロシアだって
自国の十倍の支那人が国境を突破して逃げてきたら、1900年の「アムール
河の虐殺」を再演せざるを得なくなるだろう。



中国専門家で元英国外交官のガーサイド (Roger Garside)氏は今春『
中国クーデター :自由への大飛躍(China Coup: The Great Leap to
Freedom)』を上梓したという。中共軍も銭ゲバ拝金教の利権集団だから
クーデターはあり得ない話だろうし、林彪も毛沢東に睨まれ、暗殺・クー
デターに失敗し、空路でソ連逃亡の途次、墜落事故死した(らしい)か
ら、西側諸国が中共軍に期待するのは無理筋。

やはり対中包囲戦で干上がらせて自滅を待つしかないのだろうか。小生
が先に昇天しそうだ。

         
━━━━━━━━━━━━━━━


◆CIA長官、極秘にカブール入り

「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021)8月25日(水曜日)弐
通巻第7027号  
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 CIA長官、極秘にカブール入り。タリバン最高幹部と会談か『ワシン
トン・ポスト』が速報。CIAは沈黙
****************************
 8月23日に、CIAのウィリアム・バーンズ長官が極秘にカブールへ
入り、タリバン最高幹部のバラダルと面談したと『ワシントン・ポスト』
((8月24日)が伝えた
 CIAは否定も肯定もしておらず、確認は取れていないが、世界のメ
ディアは大騒ぎをしている。

 ☆▽□☆◎み☆◎□☆や□▽◎☆ざ▽◎□☆き◎☆◎▽
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  ♪
樋泉克夫のコラム 
@@@@@@@@

【知道中国 2266回】      
 ─英国殖民地だった頃・・・香港での日々(香港148)

     △
 周囲は普段は見たこともない老若男女が大騒ぎ。しかも、それがワンサ
カといるわけだから、2人が緊張しないわけはない。その緊張ぶりが繋い
だ手から伝わってくるようだった。人混みをかき分けながら第六劇場へ。

 劇場とは言うものの、芝居小屋と呼ぶに相応しい侘しげな佇まい。入
り口にドアがあるわけではなく、外から中は丸見え。だから立ち見を我慢
しさえすれば、無料で芝居を見ることが出来る。スルッと中に入って最後
列の椅子に座ってしまえば、タダで舞台が楽しめる。誰といって咎め立て
する者はいない。なんとも鷹揚で長閑な時代だった
もっとも、入場客の大部分が京劇なんぞに興味があろうはずもないから、
入り口に立ち止まってもヒヤカシ程度で立ち去る。カネまで払って第六劇
場に入れあげるような「戯迷(しばいくるい)」は、当時の香港でも、や
はり余ほどのモノズキであったに違いない。

 程なく、晴れて戯迷の仲間入り、いや見習い扱いを受け、観劇三昧の
日々を送ることなったわけだ。事実、京劇にはまり、夜の?園通いが日常
化するようになると、第一日文の学生などを含め、周囲の誰からも奇異の
目を向けら、誰の顔からも「モノズキにも程がある」といった雰囲気が伝
わってくるようだった。だが、この道だけは止められない。

  第六劇場に戻る。
入り口の右手に置かれた縦横1.5mで高さが2mほどの小屋が切符売り場
だった。その中にオッサンが座席表を客の方に向けて座っている。客が望
みの座席を指さすと、手にしたチビた赤鉛筆で座席表に印をした後、切符
に座席番号を書き込み渡してくれる。ここで忘れてならないのは、演目の
予定と役者名が記された「戯単」を受け取ること。それというのも戯単は
芝居を楽しむ上での最良の手引きだからだ。いずれ細かく論じてみたい。

かくて切符と戯単を手に入場するが、場内案内などいるわけがないから
自分で座席を探す。 
 もっとも足繁く通うようになると、最前列の舞台に向かった右から3番
目(2番目?)の席が定席となった。そこでオッサンはこちらの顔を認め
ると即座に座席表に印し、黙って切符を渡してくれるようになった。1年
ほど通う頃には「自己人(なかま)」と認められたのか、晴れて顔パス待
遇に昇格していた。

 第六劇場の構造を簡単に記すと、土間はコンクリートの打ちっぱなし
で、客席は舞台に向かって緩い下り勾配だった。中央の通路を挟んで両側
に、坐る部分が折りたためる木製の安っぽい椅子が片側6、7席ほど。小
屋全体では満席で300人ほどになろうか。

 じつは京劇を含む中国の伝統芝居は、基本的には大道具は使わない。
椅子に机に小道具、それに役者の五体の動きと場面(おはやし)の音だけ
で、ありとあらゆる情景を舞台の上に描き出してしまう。
取り立てて大きな舞台は必要ない。だから第六劇場のような小ぶりの舞台
であっても、無限の空間を描き出せる。第六劇場では役者の息づかいが客
席最前列の客には皮膚感覚で堪能出来た。芝居をライブで楽しむには手ご
ろな規模の小屋だった。

 とはいうものの、板を打ち付けただけの壁で、なんの装飾もない。夏は
暖房で冬は冷房だから、とてもじゃないが快適とは程遠い。天井に大型扇
風機が設置されているが、これが役に立たない。そんな時は戯迷仲間の誰
かが冷えたビールを持ち込んで、銘々に紙コップを渡し、幕間にグビーツ
と喉を潤す。

冬は寒い。建て付けの悪い老朽化した木造建築だけに、方々の隙間から
冷たい風が吹き込、み、うちっ放しのコンクリートの床からの冷気が靴底
に伝わり、やがて体全体を冷やしてしまう。
だが舞台に集中するから首から上は熱い。すると頃合いを見計らって、戯
迷仲間の誰かが第六劇場隣の客家料理レストランに行って、熱燗の紹興酒
を持ち帰って仲間に振る舞ってくれる。
最前列で京劇を楽しみながらの紹興酒。至福中の至福の時だ。
     ○△□◇ヒ◎○△□イ○△□◇ズ◎○△□ミ△□◇◎   
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 
読者之声
 
 +++++++++++++++++++++++++++++++++++
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
   ♪
(読者の声1)随分前でしたが、貴誌がフィリピンの次期大統領選挙をめ
ぐって、パッキオ(ボクシング世界チャンピオン)も出馬するし、ドゥテ
ルテ大統領は長女(ダバオ市長)を立候補させ、自分は副大統領で、事実
上の院政をひく可能性が高いと予測されていました。
昨日(24日)、ドゥテルテ大統領は、正式に「次は『副大統領』に立候
補する」と表明しています。プーチンが大統領から首相となり、また大統
領となり、憲法改正で先の先まで居座るように、ドゥテルテ大統領も同じ
手口でのぞむというわけですね。
   (DS生、さいたま市)


(宮崎正弘のコメント)ただし、フィリピンの選挙制度では大統領、副大
統領のチケットで臨むというアメリカ式ではなく、大統領と副大統領は
別々の選挙(投票日は同じ)です。
 政治の世界は一寸先が闇、長女は健康問題を抱えており、大統領はパッ
キオ、副がドゥテルテという、アンバランス政権となる可能性も0・5%
ほどあります。

2021年08月14日

五輪開催は成功だ、皆喜んでいる

五輪開催は成功だ、皆喜んでいる
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          櫻井よしこ

日本ルネッサンス 第961回

7月23日金曜日、「東京2020」五輪が始まった。武漢ウイルス禍の中で本
当にいろいろあったが、よくここまで辿り着いた。よかった、の一言である。

私は毎週金曜日の夜9時に生配信している「言論テレビ」で、西岡力氏と
洪熒氏をゲストに、きっちり1時間、朝鮮半島情勢を伝えて、途中から開
会式を見た。素直に感動した。

第一、選手の皆さんの表情が何ともいえないほどよかった。マスクはして
いたが、どの選手もどの人も喜びを体全体で表し、目が笑っていた。マス
クの下では大きな笑みがこぼれていたことだろう。五輪中止を叫んだ人た
ちに、こんなに晴々とした選手たちの様子を見てほしいと心から思ったも
のだ。
 
視聴率調査会社のビデオリサーチによると、約4時間にわたった東京五輪
開会式の視聴率は56.4%、実に多くの人が見たのだ。

開会式には日本の文化文明の穏やかさと、物みな全てに対する日本人の優
しさが詰まっていた。決して派手ではない澄んだ輝きが胸に沁み込み、不
思議な落ちついた気持ちにしてくれた。

空に浮かんだ市松模様のエンブレムが静謐な光を放ちながら、形を変えて
次第に地球になっていく。なんと美しい地球生成か。

市松模様の一片一片が浮遊し、位置を変え、新たな形を作っていくその動
きは1824機のドローンで表現したそうだ。こんなに繊細で雅な動きをド
ローンを駆使して表現できる技術力の冴え。そこで表現されたのは人工的
に創造したものというより、まるで群れをなす蛍のように、自然に生まれ
出た光が自分の意思で群れ合って、和の心でひとつの世界を創ったという
感じだった。

豊かな緑の森と澄んだ水に恵まれている日本の自然そのもののように、そ
こに存在し、息づき、命をつないでいく美しい日本と美しい地球を表現し
ているのではないだろうか。この光の地球の映像に、何千万人、何億人と
いう人々が、世界各国の町や村で釘づけになっていたはずだ。

そして聖火台の美しさは何と表現すればよいのだろうか。大坂なおみさん
が聖火を掲げて富士山を上ると、その頂上に魂が吸い込まれるような雅で
研ぎ澄まされた聖火台が出現した。こんなに美しい聖火台はこの世に二つ
とないだろう。

聖火台の炎は、福島県浪江町から運んできた水素による炎だそうだ。この
水素を製造した福島水素エネルギー研究フィールドを、私は過日訪ねたば
かりだった。福島で故郷の復興に力を尽くしているハッピーロードネット
の西本由美子さんはこう語る。

「このオリンピックは復興五輪。そのことを私たち福島の住人はとても大
事に思っています。浪江町の水素や福島のトルコ桔梗が聖火やブーケの形
で五輪に登場しています。うれしい気持ちです」

挨拶は長すぎた

夜中近くになって、五輪組織委員会の橋本聖子会長や国際五輪委員会の
バッハ会長が挨拶をした。橋本さんはあの混乱の中で会長を引き継ぎよく
やった。けれど挨拶は長すぎた。バッハ氏の話も長すぎた。

一方、天皇陛下の開会のお言葉は短く、あっという間に終わった。開会宣
言とはそういうものであろうから致し方ないとしても、陛下の御紹介は
もっときちんとして差し上げるべきだ。

天皇陛下はまだワクチン接種を一度しか受けておられない。ご臨席をお願
いするのであれば、政府として二度の接種をお願いし、当日までに済ませ
ていただけるよう手配すべきだった。皇室への姿勢にはもう少し敬意と配
慮が払われて然るべきだ。

さて翌日から種々の競技や試合が始まった。原稿を書いていても、つい見
てしまう。それにしても阿部家の詩さんと一二三さんの仲よし兄妹の活躍
は凄かった。二人で一緒に金を取るなんて、あり得ないことが起きてし
まった! おまけに、詩さんも一二三さんもご挨拶がすばらしい。

「このオリンピックを開催していただいて、金メダルを取ることができた」

金メダルのようにキラキラと光る汗を額や首筋にしたたらせながら、きち
んとした言葉遣いで詩さんは言った。「お兄ちゃん」もさわやかだ。

日曜日に戻りたい。各紙が柔道男子60キロ級の高藤直寿選手の金メダルを
一面で大きく伝える中、朝日新聞だけが体操の王者、内村航平選手の落下
を一面トップにもってきた。朝日らしい。

この日私は、新潮社から出版予定の単行本のゲラをチェックする合間に、
言論テレビの放送で見られなかった開会式の前半を見ることにしたのであ
る。すると姪の慶が言った。

「開会式の音楽がすぎやま(こういち)さんのドラクエだったの。聞いた
途端に全身に電気が走ったみたいで、泣きそうになった」

彼女は大のすぎやまさんファンでドラクエの子なのである。秘書の鈴木麻
也も言う。

「これだ!って思いました。日本人全員が感激の涙、涙ですよ」

すぎやまさんに電話

なのに、NHKは曲の紹介ですぎやまさんのお名前も、ドラクエだという
ことも言わないといって、二人は不満そうだった。しかし、言わなくても
皆がすぐにわかるので大丈夫ということにもなった。

私はすぐにすぎやまさんに電話した。すぎやまさんの所には、明らかに多
くの人から連絡があったようで、お元気そうな声で、「ありがとう!」と
返ってきた。ドラクエの生みの親は、真に日本のアイドルなのである。

この五輪から私たちが学べることの第一は、平凡かもしれないが前向きに
考えることの大切さだという気がする。五輪開催に反対する朝日新聞や毎
日新聞、各テレビ局のワイドショーのコメンテーターはおよそ全てについ
て、足りないところ、不完全なところを探し回る。あげつらう。斜に構え
て批判する。

だが、物事を決めて、目標に向かって進む人々は文句を言わずにひたすら
努力する。五輪開催が決定したときから、多くの人々が誰も見ていなくて
も凄まじい努力を重ねて、五輪を成功させようと歩んできた。大会に寄せ
る日本と世界の期待に応えようとしてきた。それがこんなにすばらしい大
会につながった。

武漢ウイルスに世界が振り回され、日本も大変な状況だが、それでも日本
はよく制御している。河野太郎氏の稚拙な手法ゆえに遅れがちではある
が、ワクチンの普及も進んでいる。そうした中で、日本が五輪をきちんと
やり遂げることがどれだけこれからの日本にとって励みとなることか。多
くの人々、国々にとっても同じである。困難に打ち克ってやってみせる。
その気持ちを持つことの大切さを学んで、それを私たちのメダルとしたい。
       



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太陽光発電の闇と小泉純一郎氏
━━━━━━━━━━━━━━

           乾正人 

 閉会式が終わり、「東京五輪ロス」になってしまった。

 連日連夜、アスリートたちが繰り広げた筋書きなきドラマに一喜一憂
し、緊急事態宣言の禁を破って一杯やりに外へ出かけたいとは17日間、一
度も思わなかったのは、五輪の効能だった(もちろん連日のように過去最
多を更新した新型コロナウイルスの感染者数増も抑制効果大だったが)

 さて、五輪期間中、あまり大きく報道されなかったが、注目すべき出来
事が、永田町であった。

 東京地検特捜部が、公明党議員の議員会館事務所を家宅捜索したのであ
る。国会閉会中とはいえ、国会議員の事務所が、地検特捜部に「ガサ入
れ」されるのは、よくよくのことだ。

 案件は、太陽光発電関連会社の「テクノシステム」社長らが起訴された
融資詐欺事件に絡んで公明党の議員秘書が、無登録で政府系金融機関の融
資を仲介していた貸金業法違反容疑というのだが、秘書が勝手にやった、
というわけではなかろう。何しろ公明党は、自民党と違って党内の統制が
厳しく、議員の許可無く秘書が独自の行動をとるとは考えにくい。

 地検特捜部の狙いは、別のところにありそうだが、「テクノシステム」
社長の生田尚之容疑者は、政治家との交遊を自慢し、商売にも利用してい
たという。

 最大の広告塔として利用されたのが、小泉純一郎元首相である。

 日本経済新聞には、生田容疑者と小泉元首相の対談広告記事が、昨年2
回にわたって掲載されている。この中で、反原発論者の小泉元首相は、
「すごいな、生田君の仕事は夢がある。(中略)ぜひこれからも頑張って
ほしい」などと、手放しで褒めあげている。

 小泉元首相の長男、孝太郎氏もテクノシステム社のコマーシャルに起用
され、小泉家に「太陽光マネー」が転がり込んでいた。

 原発を目の敵にし、何かというと太陽光発電を推奨する進次郎環境相の
足もとは大丈夫だろうか。

 小泉一族を使った広告効果は大きく、地方銀行をはじめ多くの金融機関
が実体のない事業へ多額の融資をしてしまい、「太陽光詐欺」に易々(や
すやす)と引っかかってしまった。結果的に詐欺の片棒をかついだ小泉家
の責任も免れまい。

 猫も杓子(しゃくし)もSDGsだ、クリーンエネルギーなら太陽光だ
と騒いでいるが、読者の皆さんもおいしい話にはご用心、ご用心。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
松本市 久保田 康文 採録

           

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チベットのラサ空港に第三ターミナル
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「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021)8月10日(火曜日)
通巻第7009号  
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 チベットの
ラサ空港に第三ターミナル
  標高3570メートル、年間900万の観光客と8万トン貨物輸送を見込んで
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 総工費6億ドル強。しかもBRI(一帯一路)プロジェクトの一環。
 標高3570メートルのチベット高原。中国は州都のラサ空港に第三
ターミナルを建設中だが、2025年完成を目指している。完成すれば、
年間900万の観光客と8万トン貨物輸送が見込めるという。

対外発表では、第三ターミナルは国際線専用とし、ひろく東南アジア諸
国からの観光客を呼び込むという。これまで外国人ツアーは隣の四川省成
都で旅行代理店を通じて五人集まると組織できた。国内ヴィザ(団体旅行
許可書)が必要だった。

すでに青海省西寧からラサまでの青蔵鉄道は完成し、鉄道ファンやビジ
ネス客を運んでいるが、工事期間中には労働者の多くが高山病にかかっ
た。しかも十月から四月は気候変動により、工事は中断する。
 
四川省でも新幹線工事は続けられており、ラサとニンチ間が開通した。
この区間は印度のアナチャルブレデシュ州との国境まで僅か15キロ。

要するに新幹線も航空路も兵力輸送が真の目的である。

中印国境は3488キロにも及び、印度の保護領であるネパールとブー
タンが、安全保障上の脆弱性をもつ。
インドはブータン防衛に本腰を入れているが、ネパールのほうは、マオイ
ストの跳梁によって反インド感情が拡がり、この隙に入り込んだ中国がカ
トマンズへ直行便を飛ばし始めると、ネパール中が中国人で満員となった。
     

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読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS  読者之声
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  ♪
(読者の声1)『路地裏中国』を熟読しました。(宮崎正弘『日本人が知
らない 本当の路地裏中国──乗って歩いた! 全33省旅遊記』啓文社書房)。

世界一乱暴な国の民たちがどんな生活をしているのか、政治はどうなっ
ているのか、新幹線の全乗車を通して浮き彫り。地図と照らし合わせなが
ら拝読しました。実に面白い! 

奇妙で、田舎者で、元気が良くて、気にしなくて、ずるくて、人なつこ
くて、そして、ほんとに怖い中国人。
 そしてまた、気の毒な中国人。と思っていると、日本はどうなのか、こ
れが見えてきて、少々しょんぼり。
 前著『地図にない国を行く』(海竜社)もそうですが、宮崎さん旅本の
根底にあるのは、ニーチェ的肯定論ですね。楽天的な捉え方を最終にも
つ。読後感がとても爽やかなのはそのためですね。
読みながら、吉田松陰『西遊記』の序文を思い出し、あらためて序文・本
文を通読しました。
「序、道を学び己れを成すには、古今の跡、天下の事、陋室黄巻にて固よ
り足れり。豈に他に求むることあらんや。顧(おも)ふ に、人の病は思
はざるのみ。則ち四方に周遊すとも何の取る所ぞと。曰く、「心はもと活
きたり、活きたるものに必ず機あり、機なるものは触に従ひて発し、感に
遇ひて動く。発動の機は周遊の益なり」と。
松陰は西遊日記を綴りました。「そうだ、私も旅をしよう!」と思えど、
コロナの怖さかな。
 次の旅本を楽しみにしております。暑さが応えます。ご自愛を。(HN
生、新潟)


   ♪
(読者の声2)貴著最新刊『日本人が知らない 本当の路地裏中国』啓文
社書房)を興味深く拝読しました。最大の特色は現地を歩くというフィー
ルドワークですね。情報はやはり現地、現物で自分の目耳など五感を総動
員したものでなければ、真実を穿つことはできないと思いました。中国の
各地、それこそ小生は一度も行ったことがない中国の路地裏まで目撃され
る現場感覚の作品にかなう物なしと思うに到りました。
食事やアルコールも現地に適応されることは敬服に値しますし、なんぴと
も真似の出来る業では有りません。
  (TF生、練馬区)

  ♪
(読者の声3)イベルメクチンについては、期待しているのですが、ある
呼吸器科のドクターが、 「効果がある」という証拠のもとになった論文
を見に行ってみたら、正式論文として発表される前の論文が掲載される
サーバーに置いてあって、パスワードがかかってくるそうです。

つまり、著者に許可をもらった人にしか読めない!

しょうがないので、読んだ人のレポートを見たら、年齢に偏りがあり、ほ
かにも突っ込みどころ満載のようです。
たくさんの論文を集めて、集計して、「効果あり」という結論を出してい
る論文には、その論文が組み込まれていて、「効果なし」という結果を出
している論文には、該当の論文が組み込まれていない、ということのよう
です。

ワクチンは、私は2回目も何ともなかったですが、息子は39度以上の熱
が出て、「死にそうや」って、言っておりました。大げさな! 若い人は
打たずに済むのなら、それに越したことはないと思いますが、今では、
「やめろ」とも言えませんね。

お二方の著名な学者が反対しておりますが、ファイザーの元副社長さん
の、「治療薬があるから」っていうのはちょっと無理があると思います
し、エイズウイルスを見つけたモンタニエ博士のご著書も拝見しました
が、専門分野以外のことも「あれも危険、これも危険」って、どうか
な?って思いました。

こんなことを言うと失礼ですが、いろんな専門分野でも、第一人者が、新
しい理論を受け入れられずに、しばらく進歩を止めてしまうということが
よくあるようです。

素粒子理論を認めなかったアインシュタイン。ブラックホールを認めな
かったエディントン。消毒によって、産褥熱を激減させた人に対して、
「医者の手は神聖なものだ。汚れているとは何事だ」って反対して、精神
病院送りにしてしまったウイルヒョー。

伊邪那岐命が伊邪那美命を裏切って、人間が死ぬようになったからか、彦
彦火瓊瓊杵尊が、石長比売を送り返してしまったために寿命というものが
できてしまった。どちらかはわかりませんが、正解だったのかも?(TT生)


(宮崎正弘のコメント)最後の段にある「彦彦火瓊瓊杵尊が、石長比売を
送り返してしまったために寿命というものができてしまった」。
 これは記紀にあるニニギノミコトの嫁取りで、美女のコノハナサクヤヒ
メの姉君は不美人だったため、追い返されたので、神々も死ぬことになる
という「不老長寿の象徴」となった女神のことですね。

  ♪
(読者の声4)一時はトランプを偲ぶ勢いで次期大統領候補に有力とまで
言われたクオモNY知事ですが、セクハラで告発されて弾劾寸前。民主
党って、この類いの偽善者が多いですね。クオモの政治生命はまもなく終
わりでしょう(DJ生、喜多見)


(宮崎正弘のコメント)クオモ黄昏の日々ですが、さて、クオモ支持の
NYタイムズが、クオモやめろと主張し、バイデンも辞職を勧告。という
ことは民主党がクオモを鼻つまみにしているということでもあり、同時に
セクハラに引っかかると、民主党の有力者といえども、民主党支持のメ
ディアの支持を失うということでもあり、党派をこえて、目に見えない反
差別のうねりが米国社会を席巻している実態がうかびあがります。
 森五輪委員長を辞任に追い込んだ、あの圧力。凄まじい魔物です。


2021年08月10日

太陽光発電を原発並みに規制せよ

太陽光発電を原発並みに規制せよ
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           櫻井よしこ

日本ルネッサンス 第960回

7月3日午前10時半頃、静岡県熱海市の伊豆山で発生した土石流では18人の
方が亡くなり、2週間がすぎた今も12人の方が行方不明だ。大きな被害を
もたらした土石流はなぜ発生したのか。そのすぐそばのメガソーラー開発
との因果関係に注目するのは当然だが、静岡県はメガソーラー設置が土石
流発生に直接の影響を及ぼしたのではないと発表した。

土石流はメガソーラー設置場所から200メートルほど離れた谷沿いに埋め
たてられた残土を主とする、約5万5000立方メートルとされている。この
中に産業廃棄物が含まれていたことから、静岡県はメガソーラー開発より
も残土を問題とする視点で今回の災害を説明した。

16日の「言論テレビ」では静岡県選出の衆議院議員、細野豪志氏と札幌医
大名誉教授の高田純氏を招き、熱海土石流とメガソーラー開発の関係を論
じた。静岡県の説明に異議を唱えたのが高田氏である。

「7月3日午前に発生した土石流について、静岡県副知事の難波喬司氏が会
見しました。最初から盛り土原因説を語っていました。そのこと自体が疑
問です。上空から撮影した写真には、崩落場所とその近くに設置されてい
るメガソーラー施設をつなぐ道路がはっきり写っています」

写真からは土砂崩落のすぐ近くの尾根沿いでメガソーラー発電が行われて
いるのが見てとれる。そこから崩落の起きたところまで道路が通じてい
る。パネル設置のための整地工事で生じた残土を、今回崩落した地点に運
び込んだ可能性はないだろうか。一連の工事は埋めたて量も50メートルに
及ぶ高さも業者の申告は嘘だった。埋めたて部分は崩れ落ちたが、ソー
ラーパネルはきちんと立っている。だから、パネル設置と土砂崩落には直
接的因果関係がないと難波副知事は言ったのであろう。

かつて熱海が自身の選挙区の一部だった細野氏が語った。

「メガソーラー設置の尾根が崩れていないからといって、メガソーラーを
土石流の原因からなぜ、排除するのか。調査の必要があります」

細野氏は民主党に所属していた時、福島の原発事故に関連して除染の長期
目標を放射線量年間1ミリシーベルト以下にすべしとして、土壌掘り返し
のパフォーマンスを行った。福島には、細野氏の当時の言動は大いなる間
違いだった、あの厳しい基準が多くの人々の故郷への帰還を妨げたと批判
する人は今も少なくない。現在の氏はその点も含めて、「歴史法廷で罪を
自白する覚悟」だという。

元産経新聞記者の三枝玄太郎氏は全国各地のソーラー発電を取材した体験
から次のように語った。

「私が取材したソーラー発電の事例では、少なくとも六つの事例でソー
ラーパネルの設置地域に土砂崩落が発生していました。下田では家が流さ
れていました。いずれもソーラーパネル自体は損傷していないのですが、
設置場所近くの山地が大規模土石流をおこしていたのです」

メガソーラー批判はタブー

埼玉県嵐山町での大崩落もその一例だという。同町では森林を伐採して4
万6000平方メートルの斜面が切り開かれ、約1万枚のパネルが敷き詰めら
れた。2020年10月、数日間にわたって降り続いた雨で斜面を支えるかつて
の森の部分が大きく削り取られて崩れた。森を切り尽くしたあとの山は、
森林が果たしていた保水機能が著しく失われ、大雨に持ちこたえられな
かったのだ。

再度強調したいのは、ソーラーパネル自体が崩壊していないから、山の崩
落がソーラー開発と無縁だとは断じて言えないということだ。

取材に応じた静岡県知事の川勝平太氏が意外なことを語った。「静岡県が
多くの犠牲者を出した土石流とメガソーラー開発には因果関係がないと判
断し、原因究明からメガソーラーを切り離している」などと報じられてい
ることに困っているというのだ。

川勝氏は難波副知事の専門的知識を評価しながらも、その発言が完全にメ
ガソーラーを土石流の原因から除外しているととらえられているのは本意
ではないと言うわけだ。両者間の因果関係を認めているともとれる。氏が
語る。

「メガソーラー問題は非常に深刻です。今回の土石流にメガソーラーがど
う関係しているか、県の調査委員会を設けました。7月12日には菅(義
偉)総理がおいでになり、総理も国として調査することを了承しました」

それにしても奇妙ではないか。副知事は、なぜ、土石流とメガソーラーの
因果関係を否定したととられるような説明をしたのか、また、テレビ局の
ニュースも殆どの新聞も通信社も、土石流とメガソーラーの関係を報じな
くなったのはなぜか。メディアによっては崩落現場近くのメガソーラーが
写らないような映像構成で報じている。恰(あたか)もメガソーラーに触れ
ることを恐れているかのようだ。いつからメガソーラー批判はタブーに
なったのか。何が原因なのか。

自然大破壊計画

言論テレビでも指摘したことだが、土石流を起こした現場周辺の広大な山
地の現所有者は、ZENホールディングスである。所有者の代理人は反原
発運動で社民党の福島瑞穂氏らと共闘してきた河合弘之弁護士だ。ZEN
ホールディングス、或いは河合弁護士らと真正面からぶつかることを恐れ
なければならない理由が、メディアや静岡県側にあるのか。メガソーラー
を批判しないことが何らかの利益につながるのか。

菅政権のエネルギー政策はここでどんな役割を果たしているのか。小泉進
次郎環境大臣は菅総理の秘蔵っ子として将来を嘱望される存在だ。氏が父
親の強い影響下にあるのは明らかで、原発ゼロとCO2削減を目指す余
り、どう考えても実現には非常に大きな犠牲を払わなければならない太陽
光発電の大幅増を推進する。それを後押しするのが菅総理である。

小泉氏は50年までのCO2排出の実質ゼロを目指して原発20基分、2000万
キロワットのソーラー発電新設を主張する。そのためには100平方キロ
メートルの山林伐採が必要だと高田氏は語る。

「仮に100メートル幅の太陽光発電所を造ったとして、1000キロメートル
のソーラー発電ベルトがなければ小泉氏の目標は達成できません。青森県
から東京を過ぎて西日本の方まで、緑豊かな山々を裸の山にしてソーラー
発電ベルトを作るのでしょうか。こんな自然大破壊を日本国民は望んでい
ません」

菅政権の下で、なぜ、こんな自然大破壊計画が推進されるのか。経済成長
を支える戦略だというが、瑞々しい国土を破壊し、土石流を起こし、多く
の犠牲者を出しかねないメガソーラー開発を菅政権はなぜ許すのか。メガ
ソーラーの開発を続けるとして、少くとも原発同様の厳しい規制を設ける
べきであろう。


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雀庵の「常在戦場/64 中共大崩壊は天命だ」
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       “シーチン”修一 2.0

【Anne G. of Red Gables/349(2021/8/8/日】近年では独裁国家を「権威
主義国家」と言い換えるのがマスコミのルールになっているようだ。権威
主義国家とは独裁主義、専制主義、全体主義などを含めた総称のようであ
る。選挙で選ばれた人は「権威」があるが、その統治を「権威主義」とは
言わない。変な言葉。

一説によると「権威主義国家」は独裁主義国家と民主主義国家の中間なの
だという。それを誰が、どのようにして評価して決めるのか・・・随分い
い加減だ。「覇権主義」というのもよく使われるが、「独裁主義と覇権主
義の違いを述べよ」と言われて答えられる記者っているのか? 記者は新
しい言葉を使ってみたいというだけではないか。少数派をマイノリティと
言ったり。まるで国語の破壊主義者。オシャレと思っているのだろうが、
軽薄なだけである。

外来語を含めて意味が定着していない言葉はあまり使わない方がいい。2
年ほど前に役所で「マイナンバーカードをお持ちですか」と聞かれて戸
惑った。カードには「個人番号」と表記されているのだから、そう言えば
いいものを・・・

まあ、そんなことを言っていたらキリがないが、せめて一般紙は固有名詞
以外は伝統的な日本語優先で書いてもらいたいね、熱心な読者はヂヂババ
なのだから。DX(デジタルトランスフォーメーション)、アルゴリズム、
ディープラーニング、ニューラルネットワーク、シンギュラリティ、イン
キュベーション、アカウンタビリティー、レジリエント・・・うんざり!

表現の自由? 勘違いしとりゃせんか? 「文明(モノ)文化(ココロ)
の母は言葉である」、ご先祖様や子々孫々が戸惑うような言葉は控えるべ
し。まあ、10年20年もすれば消えるだろうが。

自由主義国にあって独裁国家にないものの代表は「思想信条の自由」だろ
う。

<思想・良心の自由とは、人の精神の自由について保障する自由権。思
想・信条の自由ともいわれる。人間の尊厳を支える基本的条件であり、ま
た民主主義の前提である。信教の自由、学問の自由、表現の自由、言論の
自由とつながるものである。

国際法は市民的及び政治的権利に関する国際規約として、また、日本では
日本国憲法第19条で思想及び良心の自由として保障されている>(WIKI)

「思想信条の自由」が全くない中共独裁国家では、政策など国家の舵取り
はすべて上意下達である。内政ではそれがまかり通るが、自由主義国との
外交では反発を喰らう。共産主義者は己を絶対的な正義と“濁りなく”思っ
ているから、なぜ反発されるのかが全く分からない。「奴らは蛮族、愚か
だから、痛い目に遭わせるか、カネをくれて手なずけないとダメだ」と
思っている。

毛沢東曰く「カネ、女、名誉・・・欲しがるものは何でもくれてや
れ!」、けだし名言、されど今では多くの自由主義国では中共のメッキは
剝がれた。マルクスとヒトラーを育んだ頭デッカチのドイツ、中共とラブ
ラブだったメルケル・ドイツもインド太平洋に軍艦を差し向けた! 何と
なく“お試し”臭いけれど・・・

<ドイツ国防省は海軍のフリゲート艦「バイエルン」を8月2日にインド太
平洋へ派遣すると発表した。南シナ海を航行し、北朝鮮船の違法な「瀬取
り」に対する監視活動も行う。日米やオーストラリア、シンガポールとの
合同訓練も予定している。

イツ国防省は「価値観を共にするパートナーとともに、ルールに基づく国
際秩序を守る」と表明した。

欧米では中国に近かったドイツの変化を受け、中国外務省の趙立堅報道官
は「地域の平和と安定を損なうことはすべきでない」と批判し、「沿岸国
の主権と権益」を尊重するよう要求した>(夕刊フジ8/5)

習近平・中共は脅したりカネをやったりの「飴とムチ」で人間を操縦でき
ると思っているから、イソップ童話の「北風と太陽」を知らないだろう。
無知蒙昧、やることなすこと裏目に出る。(習近平は中坊どころか小5で
下放されたという説がある)


ブルームバーグ2021/8/6「中国には裏目、台湾産パイナップルの対日輸出
急増−地政学巡る象徴に」から。

<中国が5カ月前に台湾産パイナップルの輸入を突然禁止したのは、台湾
の蔡英文総統の政治的地盤を弱体化させる試みだと広く見なされてきた。
だが、貿易データは中国側が意図していたのとは逆の結果を示している。

台湾行政院農業委員会が集計した1−6月の統計によれば、中国による3月1
日の輸入停止後、台湾に親近感を抱く日本人消費者による購入もありパイ
ナップル輸出はかなり好調だ。3−6月の対日出荷は前年同期比で8倍余り
の1万6556トンに急増。台湾内での消費を促す呼び掛けも寄与した。

パイナップルは台湾の中部と南部の農家にとって重要な収入源で、蔡総統
の与党・民進党は南部が有力な地盤だ。台湾で収穫されるパイナップルの
約11%が輸出され、中国の禁輸措置まではほぼ全てが同国向けだった。

中国は害虫被害を防ぐとの名目で輸入を禁止。大幅な値崩れ懸念を抱かざ
るを得なかった台湾のパイナップル農家にとって、日本の輸入業者が救い
の手を差し伸べたことはうれしい驚きだった。中国は外交問題で対立する
オーストラリアからのワインや石炭、ロブスターといった産品輸入に対し
ても高関税や差し止め措置を講じている。

農業委員会農糧署作物生産組の陳立儀組長は「出血が始まる前に止血措置
が取られた」と述べた。

地政学的な観点から捉えれば、中国に代わり日本が主要な輸出先となった
台湾産パイナップルはこの地域における思いもよらない抵抗の象徴となっ
たわけだ。中国が禁輸をいつまで続けるかは不明で、この措置が解除され
れば、再び対中輸出が増える可能性は十分ある。ただ、日本の指導者は自
国と台湾の安全保障を直接結び付けて考えており、中国が威嚇を強める中
で、日台は関係を強化する方針を示している>

習近平・中共はやることなすことがトンチンカンで裏目、裏目の連
続・・・その先は中共崩壊としか思えない。

中国には伝統的に孔子・儒教由来の陽明学に「天命思想」がある。天がこ
の世の統治者「天子」(皇帝)を差し向けるが、やがて立身出世、私利私
欲、貪官汚吏の悪政になると、天は新たな「天子」に交代させる革命(天
の命令を改/革める)を起こすというものだ。天子が別の姓名に代わるか
ら「易姓革命」という。(易=取りかえる)


「天命思想の下では『皇帝による人民の絶対的な支配』が中国歴代王朝の
絶対的政治原理となる一方で、皇帝の絶対的支配を打ち倒して新しい皇帝
の支配権を確立する『易姓革命』もまた、伝統的な政治原理となった。天
命思想は、皇帝の政治権力を正当化する思想であると同時に、皇帝の政治
権力の剝奪と権力の交代を正当化する思想でもある」(石平氏)

天命に背いて腐敗堕落し、民を苦しめる天子は必ず排除されるから、私利
私欲ではなく、万民のための政治に努めなさい、というのが本来の陽明学
の教えだろうが、政治を動かすには出世しなければならない、出世すると
越後屋も寄ってくる、やがて蓄財蓄妾美酒美食になり、政治は乱れ、民の
不満が募り、そして易姓革命になる・・・


栄枯盛衰は世の倣いで、振り返ればこのサイクルは世界中で数千年以上続
いており、清朝末期は(美味しい思いにありつけなかったインテリ青年か
ら見れば)まさに内憂外患、亡国寸前の様相だったろう。


清朝崩壊後の混乱を経て毛沢東皇帝の第一革命で中共独裁帝国創立、しか
し経済は低迷して貧しいまま。毛皇帝が崩御すると、トウ小平宰相の改革
開放第二革命で資本主義経済導入、これが成功して一気に世界有数の経済
帝国に成長した。そして今、習近平皇帝は共産主義経済への復帰と世界制
覇を目指して軍事力を強化、民を締め付け、諸国を不安に陥れている・・・


中共の第三革命は「易姓革命」となるだろう。世界第2の経済・軍事大国
になったというのに、国民の半数近い6億は食うのがやっとと言う貧困層
である。一方で1億近い共産党員はろくな働きもせずに蓄財に励んでい
る。これってモラルか? 天も人民も許さないだろう。

世界の世論は「中共許すまじ」になりつつあり、中共とWinWinの進出企業
は「儲かれば悪魔とも取引する人権無視、道徳無視の許し難い銭ゲバ」と
罵声を浴び、不買運動で叩かれるようになるだろう。夏彦翁曰く「みんな
正義が大好きだ」。もうどうにも止まらない。進出企業は撤収作戦を密か
に研究しているはずだ。


「中国製品は買わない!」、庶民の小さな抗議はやがて中共大崩壊をもた
らすだろう。




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河南省豪雨被害、死者302
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「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021)8月3日(火曜日)弐
通巻第7005号  
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  河南省
豪雨被害、死者302,行方不明50名以上と発表
   無策の救援活動に省長、市長らの責任を問う声が
   満ちている
****************************
 映像は凄まじいものだった。地下鉄車内の浸水、幹線道路の河川化。そ
して道路のトンネル内に閉じこめられた数十台のクルマ。しかもほとんど
がSNSで投稿された映像や画像で、世界中に実像が流れた。
 7月17日から20日にかけて河南省を襲った豪雨は家屋倒壊三万戸、
避難民1300万、経済的損失が82億ドルという。

 8月2日になって当局は「正式」の数字を発表した。
死者302,行方不明50(このうち、鄭州市内だけの死者292名、行
方不明47名)。

中国は伝統的に災害や事故を隠蔽する。唐山地震のときは、いかなる対外
発表もなかった。唐山地震は1976年7月28日、中国は毛沢東の文革
終息期だった。犠牲者は中国のその後の発表で24万人、米国は衛星写真
などから死者は65・5万人とした。鎖国中だったが、発電所建設のため
日本から派遣されていた日立製作所の社員3名が含まれていた。

災害につきものの強盗、追いはぎ、死者がしている貴金属や時計が盗まれ
た。日本は神戸、東日本津波などの未曽有の災害時、助け合うという習慣
があるが、中国では救援より先に追いはぎ行為がある。四川省地震でも、
犠牲者の数字や「消えた都市」については一切の報道がない。

今回の鄭州大水害報道でも、隠蔽体質が強化され、現場で取材していた
AFP記者は撮影したフイルムを没収された。BBCの報じた内容を、当
局は「フェイク」と言い切った。
  
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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【知道中国 2260回】      
 ─英国殖民地だった頃・・・香港での日々(香港142)

   △

 1984年12月から97年6月30日までの「過渡期」の間に、共産党政権は特
別行政区としての「香港のかたち」を定めるため、香港特別行政区基本法
起草委員会(1985年6月18日、全国人代常務委員会決定)を皮切りに、基
本法諮詢委員会、同委員会執行委員会、港事顧問、特別行政記籌備委員会
予備工作委員会組成人員など、数々の機関を新設した。

これら新設機関に名を連ねた香港の名立たる企業家を挙げてみると、安
子介、包玉剛、李国宝、李嘉誠、劉皇発、霍英東、田北俊、李福兆、呉光
正、スタンレー・ホー、唐翔千、霍英東、曽憲梓、董建華、鄭裕?、霍震
霆、羅康瑞、羅徳丞、邵逸夫、胡應湘、徐展堂、黄志祥、梁振英、鐘士
元、李兆基、林百欣、郭炳湘、郭鶴年、陳永棋、包陪慶、李澤鉅、唐英
年、霍震寰など──越後屋は数知れず。
そら恐ろしい限り。これが現実である。

ことに注目すべきは長老格の安子介、霍英東、鐘士元、それに若手では
梁振英である。それというのも、これら企業家は複数の委員会で中心メン
バーとして動き、オ殿サマの取り巻きと一緒なってオ殿サマの意向を香港
基本法の行間に埋め込み、最終的に一国両制を形作ることに貢献したと考
えられるからだ。

さらに付け加えるなら、ここのメンバーにタイのCP(正大)集団総帥で
ある謝国民の実兄で同集団の対中部門を統括する謝中民、マレーシアの郭
鶴年一族などが加わって「香港明天更好基金会」なる組織を、返還直前に
立ちあげている。

当時のオ殿サマである江沢民の呼び掛けに応じ、いやオ殿サマの心情を大
いに忖度し、民間の立場から返還を大々的に祝おうというのが設立の趣
旨。返還を前に香港の主要街区を華やかに飾り、返還式典を挟んでヴィク
トリア湾の上空に華々しく花火を打ち上げ、香港を挙げて祝賀ムードを演
出した。

かくて香港全体をお祝いムードで覆い尽くし、大多数の住民の反中感情を
一時であれ抑え込んでしまう。いや麻痺させたようにも思う。

そういえば一連の返還行事参加のために北京から馳せ参じた江沢民以下
の一行が宿舎としたホテルは、九龍の先端に返還に合わせたかのように新
設された超豪華ホテル。眺望はバツグンで警備は万全。ホテルからヴィク
トリア湾を挟んで指呼の間に返還式典会場の国際会議場が位置する。

オーナーが李嘉誠と知れば、どんなボンクラでもオ殿サマのために特別に
用意されたホテルと想像できるはずだ。

なぜここまで超破格の接遇を・・・もちろんオ殿サマと越後屋の関係で
ある。後々の「稼ぎ」を考えれば、超豪華ホテルの一棟や二棟など安いも
のだろう。

それもこれも「越後屋、ソチも相当にワルよのう」「滅相もゴザイマセ
ン。とてもとても、オ殿サマには敵いません」「ブハッ、ブハッ、ブハッ
ハハハハ!」のアレなのだ

であればこそ、何度でも言っておきたい。極論するなら、越後屋を抜き
にした香港論議は畳の上の水練以下だ。役に立たない。いくら声高に民主
を叫ぼうと、それは単なる「口先介入」に過ぎず、オ殿サマにとっても越
後屋にとっても実質的には痛くも痒くもない。

たとえば李嘉誠である。北京のオ殿サマと『密談』を交わす一方で、じ
つは去り行くロンドンのオ殿サマに対してもセッセと、しかもシッカリと
政治献金を重ねていたというのだから、これはもう恐れ入谷の鬼子母神で
ある。


素人目には盗人に追い銭の類の『捨て金』と思えるが、そこは百戦錬磨の
越後屋である。万々一の場合の風険投資(リスク・マネージメント)を忘
れるわけがない。やはり保険の掛け方が違う。その証拠に、香港返還後も
李嘉誠はイギリスで大きなビジネスをセッセセッセと展開したではないか。

 李嘉誠がそうするわけだから、他の越後屋だって我先に真似するのが商
法のイロハ。だが、おそらく北京のオ殿サマも、そんなことは先刻ご承知
であったに違いない。
   
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読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS  読者之声
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  ♪
(読者の声1)貴書新刊の『日本人が知らない 本当の路地裏中国──乗っ
て歩いた! 全33省旅遊記』(啓文社書房)を拝読しました。内容は小生に
とって驚くことばかりで、たいへん面白く拝読、しかし宮崎さんはどうし
て、こんなに中国が好きな(?)のかと考えて、なんとなく分かった気が
しました。
 国家も民度も規範から大きく外れる中国は、厄介で、それゆえに滅茶苦
茶なところが、きっとお好きなのでは?
   (HS生、奈良)

  ♪
(読者の声2)当地は一ヶ月遅い御盆です(東京は新盆でしょう?)。首
都圏はコロナ騒ぎがたいへん、「毎日味噌汁を口にしていれば大丈夫」と
その筋の権威筋のお医者が発言しています。
 さて、現在、時間的余裕はそれほどあるわけでもないのですが、貴書
(石平さんとの激辛対談シリーズ第12弾)『中国が台湾を侵略する日 
 ──習近平は21世紀のヒトラーだ!』(ワック)を再読しております。
再読するのは渡部昇一先生のほかは初めてで、これからも一種愉しくもな
るような諸作を期待していております。
  (KN生、佐賀県鹿島市)

  ♪
(読者の声3)8月2日の日経新聞の一面トップ記事は「マネーと経済 
切れた連動」とあり、「ニクソンショックから50年を迎える。通貨は膨
張し、変動相場制での為替の急変は通貨危機をもたらすようになった。
漂流する通貨をどう制御して豊かさにつなげるか、新たな模索が始まって
いる」と総括し、「マネーの量は世銀によると、GDPの6割から1.3倍
になり、一日あたりの為替の取引額は国際決済銀行によると6.6兆ドル
と30年前の12倍となった」と記述されている。
さらに「90年代まではドルの供給量が増えると米国のGDP成長率は連動
して高まる傾向があったが、2010年以降は供給量が2.4倍になって
もGDP は1.6倍止まり。株の時価総額は3倍程度となったが、実態経済
を潤す力が衰えている」と単なる表面的な「状況説明」に相変わらず終始
しています。この記事で問題なのは、なぜこのような「経済」になってし
まっているかの根本的理由や、その原因がどこにあるのかといったことが
「スルー」されていることです。
もちろん経済学者による研究論文集などの中には答えがあるのかも知れ
ず、我々はそれらを見落としているかもしれない。然るに日経のような経
済専門紙こそ、そのような研究発表を探し出して報じてもらいたいもので
す。特に、コロナ禍の「追い風」で、MMTが経済先進国のもっぱらの経済
政策となってしまった昨今の世界経済下では、「マネーと経済が切れた連
動」状態はさらに拡大してゆくはずです。
まさに我々の直面している最重要課題は現行の資本主義経済体制の根本的
メカニズムを明らかにすることであるはずです。
 ところで経済学を学ぶと本の中に「資本主義のメカニズムに存在する重
要な理論は内生的貨幣供給理論」と必ず書かれています。
「この理論が資本主義を発展させた」のだと、どんな経済学の本にも紹介
されているのですが、なぜかその重要さに反して、著者たちはなんとなく
「ヨソヨソシイ」説明ですまし、「スルー」気味なのですが、この理論に
対する、素人である私の解釈・見解は「融資の際、民間銀行が全く何の裏
付けもなしに、融資額を簿記に資産計上しているのはおかしいし、それは
トリックではないか」ということです。
換言すれば「王様はやっぱり服を着ていないし、裸だ!」ということなの
です。
この不可解性を抱きながらMMTを考えますと明らかになるのですが、要す
るに、「民間銀行を国家(中央銀行)に置き換えた姿での内生的貨幣供給
理論がMMTとなるのだ」ということなのです。
これは民間銀行が融資行為において「価値イコール通貨である」という前
提(=トリック)で行うやり方を、同じく「価値イコール通貨である」と
して国家が踏襲(継承)している現象なのです。
 おそらく「マネーと経済 切れた連動」は今後の世界ではますます顕著
になりましょう。しかし、「この内生的貨幣供給理論そのものに疑いを持
ち、やはり「価値イコール通貨ではない」という「真実」を認めない限
り、問題は解決には向かわないと思います(SSA生)

  ♪
(読者の声4)通巻第7004号で、議論打ち切りの提案がありました。
私の投稿に対して先に反論されたのは反論者さまの方ですから、納得して
の打ち切りなら兎も角、納得されないままの打ち切りは議論のやり方とし
て如何なものかとも考えますが、この辺りで収束することに依存はありま
せん。
 前のメールでは長くなるため、公孫氏滅亡後の韓地への別軍の派遣は成
立しないことを述べるに留めました。まだ納得はされていないようです
が、新たな論点の提示も無いようですので、あと少し述べて最後といたし
ます。
反論者さまによれば、「倭国を懐柔するように司馬懿の命を受けた劉夏
は、倭国に遣使を促し、景初三年六月に帯方郡に来た難升米らを洛陽に護
衛を付けて送りました。司馬懿にとっては、自らの功績を最大限にアピー
ルする最も重要なチャンスですから、幼い皇帝の補佐役になった司馬懿
は、たとえ明帝の喪中であっても、卑弥呼の遣使を絶賛する詔勅を景初三
年十二月に作らせたのだと推理できます。」
 とのことですが、ここで述べられていることは、ご自身で「推理」と言
われるように全て推測であり、根拠(三国志のどこからそのように読める
のか。或いは考古学的物証など)が明示されないままの推測は単なる思い
込みであり、改めて論じるに値しないと考えます。
 仮に、その「推理」を俎上に乗せたとしても、次の三点は合理的には説
明できないと考えます。
(1)喪中の使者を半年も都にとどめた理由
(2)半年も留めて、喪が開けるのを待たず、喪明け直前の12月に急いで
詔勅を作らせた理由
(3)その挙句に、卑弥呼の使者が贈り物を持ち帰らず、魏の使者が遠路
わざわざ届けることになった理由
 終わるに当たり、自然体で読めばどのように読めるかということを申し
上げておきます。
卑弥呼の遣使は原文にある通り、景初2年6月に行われたのであり、戦中
の遣使であったからこそ、思い切って決断した明帝の心を打ち、不相応と
も見える質・量とも優れた見事な返礼品の贈呈となりました。
本来ならば新年早々華麗な授与の儀式が行われ、卑弥呼の使いは意気揚々
と持ち帰ったはずが、明帝の急死により全てが中止となり、卑弥呼の使い
は手ぶらで戻り、喪が明けた正始元年に魏使が卑弥呼に届けることになっ
たのです。
 倭人伝には明帝からの授与状に、次のように記載されています。
「皆裝封付難升米・牛利。還到?受、(略)」
つまり(卑弥呼に対して)皆装封して(使者の)難升米・牛利に渡すの
で、(使いが)還り到れば貰った物を記録した上で受け取りなさい、と
言っているのです。
 何事もなければ卑弥呼の使いが持ち帰る段取りであったことが明らかで
す。反論者さまに限らず、通説ではこの肝心なところを読み飛ばして(或
いは無視して)、何か普通状態での贈り物のやり取りのように解釈される
ので、勝手な想像が膨らむ原因になっていると考えています。倭人伝を丁
寧に読めば、再三強調されるような遣使の景初3年説は成立せず、また、
倭人伝は陳寿が誇張したものではなく事実を淡々と記したものであること
がご理解頂けると思います。(高柴昭)

2021年07月28日

◆五輪開催反対の朝日の「二重基準」

櫻井よしこ


『週刊新潮』 2021年7月22日号
日本ルネッサンス 第959回

東京五輪は観客なしでいく。

7月8日の決断である。6月21日には観客数は各会場の定員50%以内で最大1
万人と発表したが、2週間余りで反転した。

決定は東京五輪・パラリンピック組織委員会、東京都、政 府、国際五輪
委 員会、国際パラリンピック委員会の5者によるものだが、矢面に立たさ
れ ているのは菅義偉首相である。世論を気にしすぎる、世論次第で武漢
ウイ ルス対策も定まらないなど、首相への評価は芳しくない。

7月6日、萩生田光一文部科学大臣は世界一の能力を持つスパコン、「富
岳」による国立競技場に観客1万人を入れた場合の感染リスク予測を発表
した。それによると、観客の中に10人の感染者がいた場合でも、空席を設
けて、各自がマスク着用などの対策をとれば、武漢ウイルスの新規感染者
は1人未満になるという。1万人で1人未満は感染率0.01%未満で、限りな
くゼロに近い。1万人を密集させて風の向きを変えたとしても、最大感染
者数は4.7人、0.047%だという。

1万人を入れても、密を避けマスク着用を徹底すれば、新規感染者はほぼ
出ないのだ。国立競技場の本来の定数は6万8000人、間を空けて1万人を収
容するなど何の問題もなくできる。菅首相が全力を注ぐワクチン接種も進
むだろう。そのことも含めて総合的に考え、大会関係者は自信を持って、
1万人を入れて開催するのがよいと、私は思う。

7月9日、インターネット配信の「言論テレビ」に経済評論家の上念司氏を
招いて「五輪と朝日新聞」を語り合った。日本よりはるかに多くの感染者
を出している国々が、種々のスポーツ大会開催で武漢ウイルスに立ち向
かっている事例を検証し、私たちは東京五輪の無観客決定は過剰反応だと
いう点で意見が一致した。

「英国ではサッカー欧州選手権にファン6万人以上が集い、熱狂しまし
た。感染者は多少増えたけれど、英国のジャビド保健大臣が言っていま
す。『サッカー大会で感染者は増えるかもしれないが、ワクチン接種が進
み死者や重症者はそれほど増えていない。我々はコロナウイルスのことだ
けを考えては生きていけない。他の健康問題や経済、教育の問題も考える
必要がある』。このように政治がはっきりと説明し、決定すれば国民は納
得します。それが日本の場合、見られません」と、上念氏。

先述のように一連の決定は東京都も含めて5者協議で下したものだ。それ
でも菅首相一人に批判が集中するのは、首相及び菅政権の情報発信力が弱
いからだ。おまけにメディアは極めて非協力的だ。これは政権の意向に従
わないという意味で言っているのではない。メディアが何でもかでも政権
叩きの材料にしてしまう結果、どんな情報もきちんと伝わらないという意
味だ。

反政権、反保守、反日

世論は或る意味、メディア次第だ。そのメディア、とりわけ朝日新聞が甚
だしく迷走しており、情報はおよそいつも歪曲される。反政権、反保守、
反日が朝日の特徴である。

新聞のあるべき姿は、社説で社論を説き、紙面では全体像を見渡す公正な
報道を展開してみせることだ。朝日の社説は兎にも角にも政権叩きを旨と
する。これはこれで朝日の主張であるから、そういうものだと受けとめる
しかない。

だが、社説で五輪中止を要求し、五輪のオフィシャルパートナーは降りな
い。スポーツ面では五輪大会を盛り上げる。五輪開催に重なる時期に予定
されている甲子園の高校野球も盛り上げるが、その理由が矛盾している。

社説子が掲げた五輪開催中止要求の理由のいくつかはそのまま甲子園に当
てはまる。まともな新聞人ならスポーツ記事でも社説でも甲子園を中止せ
よとの論調にならなければおかしい。

たとえば武漢ウイルス拡散への懸念だ。五輪で大勢が集えばウイルスが拡
散すると反対するのであれば、4万7000人が集う甲子園にも反対すべきだ
ろう。中止でなければ無観客だとの強い意思表示が、朝日側から出てこな
ければおかしい。

もうひとつは酷暑対策だ。朝日は酷暑を五輪開催中止要求の理由のひとつ
としている。ならば、甲子園こそ中止すべきだろう。

高校野球の数々の問題点については、門田隆将氏が詳細な説明と共に指摘
済みだ。暑さが最も厳しい夏に、文字どおりの熱戦を展開させて感動物語
に仕立て上げ、朝日はそれを商売にする。結果、才能ある球児たちが肩、
肘、膝を壊し、野球を続けられなくなった例は少なくない。酷暑の夏の過
密日程で球児たちの夢をつぶし、健康な体を傷つける商売の手法は、いい
加減修正すべきだ。

部数拡張を狙う偽善

しかし、朝日は反省などしない。批判の矛先は東京五輪と菅政権に向いて
も、決して己れには向かない。ダブルスタンダードで部数拡張を狙う偽善
こそ朝日の実相だ。それでも、朝日は日本社会で未だ大きな影響力を持
つ。しかし、その未来展望は暗いと上念氏はズバリ表現した。

「第二の毎日新聞になります」

毎日新聞は部数が減って、大阪の大阪本社ビルを譲渡しても経営が苦し
い。そのために、昔ながらの固定ファンである左系の読者にしがみつくよ
うに、いよいよ左翼路線を走り急いでいる印象が強い。朝日もそうなると
言うのだ。

朝日の発行部数は公称で2020年度が494万7000部、14年度より215万部強の
減少だ。毎年約40万部、毎日1000部強の減少といえば、その深刻さがわか
る。公称部数から約3割と見られる押し紙を引いた346万部あたりが今の実
力だろう。350万部を切っていると見るべきで、21年度末には、300万部を
割るかもしれないのだ。

朝日は経営の苦しさから19年には社員の給与を一律165万円引き下げるこ
とを決めた。希望退職者も募ったが20年9月の中間連結決算で赤字に落ち
た。今年4月1日には渡辺雅隆社長が引責辞任した。後任の中村史郎社長の
下でも経営は改善されず、5月には21年3月期決算の最終赤字が約442億円
と発表された。部数急減と赤字急増。尋常ではない。

上念氏が語る。

「赤字は朝日の純資産で埋めています。残り純資産は3500億円規模。この
まま行くと、純資産を食い潰して債務超過ということもあり得ます。経営
合理化の視点で考えれば、新聞事業を切り捨てて不動産事業に集中するこ
とも、会社生き残りの有効な手立てです。しかし、それは出来ないでしょ
うから、新聞事業を守ろうとする。その道の先には『朝日の毎日化』しか
ないのです」

紙媒体の衰退もあろうが、左翼思想を前面に押し出し、事実を曲げ、日本
を貶めるばかりの朝日新聞が、心底いやになっている人が多いということ
であろう。

2021年07月22日

◆創立百年、中国共産党の弱みを知れ

    櫻井よしこ


『週刊新潮』 2021年7月15日号
日本ルネッサンス 第958回

7月1日、中国共産党が創立100年を迎えた。周辺の民族や国々に強圧的政
策を取り続ける隣国共産党のこれからを、特定の思い込みに陥らずに冷静
に見て行く必要がある。

にも拘わらず、日本の多くのメディアは、100周年記念の習近平国家主席
の演説を、既成のイメージに基づいて読んだのではないか。大半のメディ
アが「台湾」を見出しにとり、「台湾独立のたくらみも断固として粉
砕」、「中国人民が国家主権と領土を完全に守るという強い決心、意志、
強大な能力を見くびってはならない」などの部分を引用して、中国の戦闘
的姿勢を強調した。

しかし、65分間の演説で台湾に関する発言は一番最後の方に出てくるだけ
だ。文字にして一段落分、短い言及だ。その一部を大きく見出しにとって
論ずることは、習政権の実態を見誤らせることになる。

たしかに中国共産党は台湾併合を狙い続けるだろう。軍事力の強化にも余
念がない。対外強硬策は決して止まらないはずだ。しかし習政権はいま、
意外にも息をひそめている。中国共産党はウイグル人弾圧をジェノサイド
とされるなど、四面楚歌だ。まともな国はどこも中国の行為を認めない。
そうした中、中国は面子にかけて北京五輪を開催したい。そのために今だ
け大人しくしているのであれば、わが国は尖閣諸島についても他のことに
ついても、今こそ、積極姿勢に出る好機なのである。

習氏は演説で米国にも日本にも触れていない。話のほとんどを国内世論の
高揚と引き締めに費やした。中華民族がいかに偉大な民族であるかを繰り
返し、国民の愛党感情を掻き立てた。

中華民族について、偉大な民族、偉大な夢、偉大な復興、偉大な成果、偉
大な転換、偉大な道、偉大な事業、偉大な建党精神などとあらん限りの言
葉で賞賛した。中華民族こそ世界にそびえ立つ優れた民族だと強調し、習
氏はこう語った。

「100年前、中華民族が世界の前に示したのは一種の落ちぶれた姿だっ
た。今日、中華民族は世界に向けて活気に満ちた姿を見せ、偉大な復興に
向けて阻むことのできない歩みを進めている」

毛沢東への個人崇拝

なぜ中華民族は蘇ることができたのか。習氏はこう説明した。

「中国を救えるのは社会主義だけであり、中国を発展させられるのは中国
の特色ある社会主義だけだ」

「中国の特色ある社会主義」は習氏の思想である。習氏は、毛沢東は中国
を「立ち上がらせた」、ケ小平は「豊かにした」、自分は「中国を強くし
た」と自負する。

自分自身を毛沢東になぞらえて、終身、国家主席の地位にとどまろうとし
ているのは周知のとおりだ。その自分の唱える中国の特色ある社会主義だ
けが中国を発展させることが出来ると、100周年演説で幾度も強調した。

習氏はこうも語る。

「カギとなるのは党だ」「中国共産党がなければ新中国はなく、中華民族
の偉大な復興もない」「中国共産党の指導は、中国の特色ある社会主義の
最も本質的な特長だ」。

つまり自分の思想があって初めて中国は成り立ち、中華民族の国の偉大さ
が実現されるというわけだ。

この熱烈な演説の二日前、習氏は「七一勲章」授与式に臨んだ。七一勲章
とは市井の暮らしの中で自分の職務に忠実に黙々と奉献する平凡な英雄に
与えられるもので、中国共産党の最高の勲章だそうだ。七一勲章を受けた
「人民」の中に、尖閣周辺などで跋扈する海上民兵が入っていた。尖閣奪
取は中国共産党の執念なのだ。この授与式で習氏は次のように国民を諭した。

「全党の同志はマルクス主義に対する信条、中国の特色ある社会主義に対
する信念を生涯追い求め」なければならない。「永遠に党を信じ、党を愛
し、党のために働き、各持ち場で必死に頑張り、崇高な理想のために奮闘
する実践を絶えず前に推し進めていかなければならない」。

党への絶対的な信頼、絶対的服従、熱烈な愛を要求している。その党の根
本を導くのが習氏自身の思想だと言っている。国民に要求している絶対的
信頼や永遠の愛はすべて習氏に集中されるべきだということになる。毛沢
東への個人崇拝の再来そのものではないか。

右の二つの演説から習近平政権の近未来の路線が読みとれる。それは、中
国が少しでも開かれた国になり、穏やかな大国になってほしいとの大方の
希望とは根本的に異なるものだ。

外交専門雑誌「フォーリン・アフェアーズ」は7・8月号で「中国は台頭し
続けられるか」として特集した。その中に興味深い論文があった。ミシガ
ン大学政治学部の准教授、ユエンユエン・アン氏による「北京のドロボー
貴族」だ。

借金は4兆ドル

アン氏は中国の汚職はケ小平のときに進化したと指摘する。ケは中国を豊
かにするためにひたすらカネを生み出す現実路線をとったが、党に忠誠で
ある限り、腐敗も許容したというのだ。

その結果、想像を絶する腐敗が横行した。彼女が挙げた実例のひとつに鉄
道担当大臣の汚職がある。それによると彼は350室の大マンション一棟と
一緒に1億4000万ドル(約154億円)の賄賂を受け取っていた。他にも100
人の愛人のハーレムを持ち、現金3トンをためこんでいた高官もいたそうだ。

摘発によってこのようなハチャメチャな汚職の実態は中国国民の知るとこ
ろとなった。そして汚職の形態は変化し、土地のリースが汚職の主軸と
なった。中国の国土は全て国が所有し、誰も買い取ることはできない。し
かし借りることはできる。そこで地方政府などは元々タダの国土を法外な
値段でリースし始めた。99年以降の20年間で、地方政府の歳入は土地の
リースによって120倍にふえたという。共産党とのコネを利用した土地の
リース、またもや共産党のコネで金融機関からの多額の融資によって、一
部の者が天にも届くカネを手にし、実体経済とかけ離れた好景気が続い
た。結果地方政府の借金は4兆ドル(440兆円)に達し、破綻地獄に近
づいている。

習氏はこうした汚職追放に力を入れたが、その追放や改革はルールに基づ
くのではなく、習氏につながる人脈を保護する形で恣意的に行われている
にすぎない。これでは中国経済の真の立て直しは困難だとアン氏は見立て
る。それは少なからぬ専門家に共通する解釈でもある。

毛沢東は戦略に優れていたが、最後は文化大革命の暴力に溺れて死んだ。
毛沢東を見習う習氏の脆弱さを見詰め、それをわが国の国益につなげるの
だ。中国の一瞬の隙を突いて、尖閣を守る手立てを講ずるだけでなく、今
こそ、自衛隊の強化と憲法改正に向かって走るべきときだろう。

2021年07月12日

◆背景に左翼勢力、横行する実子誘拐

櫻井よしこ


『週刊新潮』 2021年7月8日号
日本ルネッサンス 第957回

これからお伝えするのは不条理な離婚のあり様と気の毒な父親の物語であ
る。この悲劇を抉り出したのが、ノンフィクション『実子誘拐ビジネスの
闇』(池田良子 飛鳥新社)である。読めば、左翼陣営が如何に巧妙に日
本社会に浸透し、家族を崩壊に導きつつあるかが見てとれる。

卒田譲司氏(仮名)は2006年に結婚し翌年長女が誕生した。しかし夫婦は
不仲となり、10年5月、卒田氏が仕事で不在のとき、妻は長女を連れて家
を出た。
 
事情もわからない中での突然のことだった。卒田氏は娘に会わせてほしい
と懇願し、同年7月、2歳半の娘に会えた。娘は「パパ、手を握ってて」と
言って強い力で必死に卒田氏の手をつかんだが、やがて迎えの車に押し込
まれた。泣き叫ぶ娘に卒田氏は「必ず迎えに行くからね」「もう少し待っ
ててね」と約束した。

その後、同年9月末にもう一度会えたが、娘との面会はそれが最後となっ
た。11年近くが過ぎ、娘は中学生になっているはずだ。

親権を巡る裁判で元妻は、卒田氏はDV夫で子供を連れて逃げたのはやむ
を得なかったと主張し卒田氏は全く身に覚えがないと反論した。千葉家
裁松戸支部は、1、卒田氏のDVを認定しなかった、2、妻が娘を囲い込ん
で育てることを認めなかった、3、両親による娘の共同養育を認めた。

これは離婚後も両親双方による養育を認める点において、日本で初めての
画期的判決だった。しかし東京高裁に移ったとき、大ドンデン返しが起き
た。ごく普通の夫婦の離婚話なのに、元妻擁護に31人もの左翼系弁護団が
結成されたのだ。共同養育を認めた松戸判決に彼らが如何に動揺したかを
物語るものだ。結論をいえば、東京高裁も卒田氏のDVは認めなかった
が、親権を元妻に与えてしまった。卒田氏が娘に会えない状態は今も続い
ている。

愛し合って結婚して、子供まで授かった夫婦が離婚に至るとき、片親が子
供を連れて家を出るという話はよく聞く。この場合、子供と共に家を出て
行くのは、勿論父親の場合もあるが、圧倒的に母親が多い。

子供の海外への連れ去りは、ハーグ条約で禁止されており、連れ去り自
体、欧米諸国では刑事罰に問われる。両親は離婚後も協力して子供を見守
り育てることが求められている。

「フェミカン」

対照的に日本では母親が子供を連れて家を出るのは罪とはならず、父親が
子供に会いたくて、または子供の養育に関わりたくて、子供を連れ戻そう
とすると、犯罪になる。日本では先に連れ去った方が勝ちであり、子供の
連れ去りが罪に問われない国は世界で日本くらいなものだ。

なぜこうなるのか。背景に松戸判決に驚いて大弁護団を結成した左翼系弁
護士らの暗躍がある。はすみとしこ氏編著の『実子誘拐』(ワニ・プラ
ス)には、このあたりの事情が詳述されている。結婚問題で悩む妻は女性
相談所やカウンセラーを訪れる。彼女たちの悩みを聞き親切に相談に乗る
のは「フェミカン」(フェミニスト・カウンセラー)と呼ばれる人々が多
いそうだ。相談窓口、フェミカン、そこから紹介される弁護士などは圧倒
的に左翼系が多く、妻に、あなたが受けているのは実はDVなのですよな
どと教唆するという。

「そこに引っかかった場合は、100%離婚を勧められる」と、はすみ氏は
書いているが、離婚の具体的行動の第一歩が子供を連れて家を出ることな
のだ。

私は6月25日、この「実子誘拐ビジネス」問題をネット配信の「言論テレ
ビ」で取り上げ、「正論」編集長・田北真樹子氏と、子供連れ去り事件を
手掛ける弁護士の上野晃氏と共に語り合った。その結果、確信したのは、
日本においては家族のあり方まで「赤い勢力」の深謀遠慮によって蝕まれ
つつある、知らず知らずの内に日本社会の深部まで左翼思想が浸透してい
るということだった。

左翼陣営が、世界の潮流とは正反対に子供の連れ去りへと誘導する理由は
大別して二つだと、上野氏は語る。第一はカネである。離婚を成立させれ
ばそこには慰謝料や教育費、養育費などさまざまな名目の金銭が関わって
くる。条件は個々のケースで異なるだろうが、多種多様な名目の金銭の、
10%から30%が手数料として弁護士に入る

現在日本では、結婚する人の3人に1人が離婚する。上野氏はその内、子供
連れ去りに関わる案件は年間15万件から16万件と推測する。この人々が左
翼系弁護士らにとっての大事な客となり収入源ともなる。

弁護士らは妻と子供を守るためと称して活発に動く。まず全ての手続きを
引き受け、妻が夫と直接会わなくてよい状況を作る。生活費や養育費も弁
護士がきちんと処理する。「DV夫」と直接会う必要はないようにして妻
側を全面的に守るという姿勢だ。見返りに全ての種類の支払いの一定割合
を懐に入れるのだ。

「第2のクレサラ特需」

こうした仕組みの大前提は夫婦が離婚すること、離婚後の夫婦は互いに会
うことなく、あくまでも弁護士が間に入ることである。それによって弁護
士は確実に手数料をとれる。松戸判決のように、夫婦が共同養育をする場
合、弁護士の介在は不必要となり弁護士の収入源も断たれる。31人もの大
弁護団結成の背景に、収入源を奪われてなるものかという動機があったの
ではないだろうか。

弁護士の世界ではこの実子連れ去り離婚からもたらされる利潤は「第二の
クレサラ特需」と呼ばれているそうだ。クレジット会社とサラ金業者への
借金返済問題で、過払い利息返還請求が起きた。返還額は大手4社で1.4兆
円にも上り、弁護士らに特需をもたらした。それと似たような「ビジネ
ス」になっているのが、「DV夫とされてしまった夫」から子供と一緒に
逃げる「子供連れ去り」事件の数々だというのである。

もうひとつの理由は左翼弁護士らの価値観の実現だと、上野氏は語る。

「家族に対する彼らの考え方は、一言で言えば家族の否定です。彼らは家
族を壊したいと考えている人たちだと、私は認識しています」

上野氏が断定調で語るのは、氏が卒田さんの弁護を引き受け、千葉家裁松
戸支部で約5年にわたる長い裁判を闘った体験ゆえであろう。

氏は言論テレビでざっと以下のように説明した。卒田氏の元妻側について
いる左翼勢力の考え方を凝縮すると、共同体としての家族は子供にとって
必ずしもよいものではない、子供は個人として尊重されるべきであり、家
族から解放されるべきだ│となるという。

日本だけでなく、どこの国でもおよそ通用しない考え方だろう。マルクス
主義社会ではあるまいし、家族は日本社会の基盤だ。左翼的考え方で毎年
多くの親たちが子供と生き別れの悲劇に突き落とされている。この事態を
見逃し続けてはならない。

2021年07月08日

◆防衛力強化で首相は有言実行を

櫻井よしこ


『週刊新潮』 2021年7月1日号
日本ルネッサンス 第956回

「防衛費、まさかの日韓逆転」と、日経新聞が6月21日付けで報じた。防
衛費でついに日本が韓国に抜かれてしまったのは多くの日本人にとっては
衝撃であろう。

だが韓国に抜かれるのは当然だ。なんといっても日本は四方の海に囲ま
れ、米国に甘え、太平の眠りを貪ってきたのだから。

韓国は人口5000万人、日本の半分以下、GDPは1.6兆ドル余、日本の5兆
ドル余の3分の1以下だ。だが、彼らは変わりゆく国際情勢の下で少なくと
も努力をしている。日本を見返してやるという闘志もある。

他方、日本は1945年の敗戦以来反省ばかりしてきた。反省漬けで呆けてし
まい、日本以外の一切の国、つまり国際社会をほめあげて、その後は考え
ない。憲法9条も前文も駄文にすぎない。なのに「平和憲法」を口角泡を
飛ばして擁護し、改正論を叩く。

この左の人たちを含めて日本全体がいま発想を大転換するときだ。世界の
大潮流ががらりと変化しているからだ。菅義偉首相は6月13日、初参加の
先進7か国首脳会議(G7サミット)後の記者会見で、「国際秩序をリー
ドしたい」と語った。

バイデン米大統領との首脳会談では世界に向けてこう語った。

「私から、日本の防衛力強化への決意を述べ」、「台湾海峡の平和と安定
の重要性について、今回改めて確認しました」「この声明は、今後の日米
同盟の羅針盤となる」と。

首脳会談の後、米国の有力シンクタンク、戦略国際問題研究所
(CSIS)主催のオンラインセミナーの講演では、中国を名指しして、
一方的な現状変更の試みを継続中だとし、「私は、主権に関する事項、民
主主義、人権、法の支配などの普遍的価値について、譲歩する考えはあり
ません」と断固たる決意をみせた。

そしてこうも明言してみせた。

「日米同盟を更なる高みに引き上げていく。これは私の重要な責務である」

一連の菅首相の決意表明は実に画期的だった。そのとおりに実行すれば、
日本は大転換を遂げ、自立したまともな国になる。首相は戦後体制の負の
遺産を払拭した大宰相として名を残すだろう。

政治家冥利に尽きる

首相の決意を後押しするのがバイデン氏である。バイデン氏はG7サミッ
トに先立って英国首相ジョンソン氏と会談し、「新大西洋憲章」を発表し
た。この新大西洋憲章の重要性を戦略論の大家、田久保忠衛氏も指摘した。

80年前の1941年8月、米英両国を代表してフランクリン・ルーズベルト大
統領とウィンストン・チャーチル首相が大西洋上で会談し、大西洋憲章を
発表した。同憲章は「両国ハ領土的其ノ他ノ増大ヲ求メス」に始まる第1
条から、「『ナチ』ノ暴虐ノ最終的破壊ノ後」、米英両国は全ての国の国
民に対し、自国内で安全に暮らせるよう平和を確立するとした第6条、
「両国ハ一層広汎ニシテ永久的ナル一般的安全保障制度ノ確立ニ至ル迄ハ
斯ル国ノ武装解除ハ不可欠ノモノナリト信ス」とした最後の条文まで、8
項目にわたる。

必ず武装解除すべき「斯ル国」とは、独伊日だった。日米戦争はまだ始
まっていなかったために、「日本」の名前は登場しないが、41年8月時点
では、米英両国はアジアの雄であった日本を許容できない敵国と位置づ
け、完膚なきまでに叩きのめすと決意していた。

それから80年が過ぎて、米英両国が新たな大西洋憲章を打ち出した。80年
前と同じく民主主義の価値観に基づいた公正な世界の実現を目指してい
る。80年前と異なるのは、敵と見做す対象国が日独伊から中国に変わった
ことだ。80年という長い時間が過ぎて、陣営が入れ変わったのである。

かつての大西洋憲章の精神は第二次世界大戦後の秩序作りの基本となっ
た。国際連合、世界銀行、国際通貨基金(IMF)、北大西洋条約機構
(NATO)などが生まれた。これら国際秩序の基盤となった価値観、そ
れを体現する国際機関を根本から突き崩そうとしているのが中国だ。だか
らこそ米英は明確に中国をはじめとする権威主義の国々、一党独裁のファ
シスト国家を自陣営の対立軸としてとらえ、闘おうとしている。

かつて敵として叩きのめされた日本は、今や『米英vs中国』の対立の構図
で米英側の主要な味方勢力として位置づけられた。米国にとって比類なく
重要な欧州におけるパートナーが『特別な関係』の英国であり、アジアに
おけるパートナーが同盟国である日本になったのだ。

この新大西洋憲章の精神の下で、全体主義勢力に対抗して新たな国際秩序
作りが始まろうとしている。その中核を担う役が日本と菅首相に回ってき
た。この局面で日本のみならず、世界に対して大きな責任を担えることは
政治家冥利に尽きるはずだ。

卑怯な精神

日本は地政学上計りしれない重みをもっている。日本の経済力も軍事力も
他国が代替できるものではない。日本の強みがここにある。それを日本人
自身、とりわけ菅首相がはっきりと認識できれば、強みを日本とアジアの
為に活用できる。そのことは、日本を悪と見做してひたすら大人しくし続
け、中国のジェノサイドにさえ一言も言えない卑怯な現行憲法の精神から
脱却するということでもある。

首相は「台湾海峡の平和と安定の重要性」を強調し、事実上、台湾の平和
と安定を守ると誓約した。日本の防衛力の強化も公約した。だが、台湾も
わが国の尖閣諸島も中国の脅威の前で風前の灯だ。防衛費の顕著な増額は
国際誓約であると同時に、実は何よりも日本再生のために必要な切実極ま
る重要事なのだ。

「日本の海軍力はすでに中国との比較で回復不可能なところまで落ち込ん
だ。いま、根本的大改革を断行しなければ海上自衛隊は10年以内に中国海
軍に永久に置き去りにされる」(中国海軍の分析における第一人者、ト
シ・ヨシハラ氏)。

だからこそ、守勢から攻勢への転換が、直ちに必要なのだ。第一歩として
日本でしか通用しない専守防衛の概念を捨て去ることだ。

第二に、中国やロシアが配備した極超音速滑空ミサイルをきっかけに議論
が始まった、敵基地攻撃能力の保有を決断することだ。第三に、GDP比
でわずか0.9%の日本の防衛費を、菅政権は恒久的にNATO諸国並みの
2%に引き上げる努力を始めることだ。ちなみに韓国は2.7%である

そしてその先に、大目標としての憲法改正をなし遂げるのが菅首相の歴史
的使命であろう。

国際社会への首相の誓約を守ること、首相の有言実行が世界への貢献であ
り、日本の国益である。

2021年07月02日

◆ワクチン接種加速で国難克服だ

櫻井よしこ


『週刊新潮』 2021年6月24日号
日本ルネッサンス 第955回

イギリス南西部の町、コーンウォールで開催された先進7か国首脳会議
(G7サミット)では、全首脳が東京五輪への「力強い支持」を表明し
た。菅義偉首相も「主催国の総理大臣として東京大会を何としても成功さ
せなければならない。決意を新たにしました」と決意表明した。

「安全、安心の大会(運営)について説明し、全首脳から大変力強い支持
をいただきました」と語ったときの表情はいつもの首相らしく冷静だった。

東京五輪開催への鍵は武漢ウイルスと変異株の拡散を抑えこめるかどうか
だ。今のところ、人類が手にしているコロナウイルスと戦う手段はワクチ
ンだけだ。その意味で、ワクチン接種の加速と拡充こそが決め手である。
3週間前、本欄で私は赤坂区民センターでのワクチン接種の体験を報告し
たが、6月13日の日曜日に、2回目の接種を終えた。

3週間前の同センターでの接種と較べて、今回はさまざまな点ではるかに
効率がよくなっていた。同センターでの週末の団体接種は3週間前が初日
だったために、区側も戸惑う部分が多かったのだろう。しかし、今回は官
僚的な四角四面から生まれる無駄が消えていた。経験を積んで合理化さ
れ、お揃いの黄色いシャツを着た係員の動きもキビキビしていた。被接種
者も前回よりずっと多く、会場全体に活気があった。

前回同様、私は接種時間の30分前に着いた。あのときはすぐ2階の会場に
案内されたが、今回は1階のロビーに椅子が配置され、一旦ここで待たさ
れる。それだけ時間当たり、一日当たりの被接種者の数を増やしたのであ
ろう。椅子に座って眺めていると、予約時間ギリギリに小走りで来る人や
1時間以上も前に来る人、さまざまだ。

そこに高齢の痩せた男性が杖をついてやってきた。屈強そうな息子さんが
付き添っている。杖を頼りに覚束ない足取りのお父さんに、その3倍も体
重がありそうな息子さんが「ちゃんと歩きなさい」と言って叱っている
(ように聞こえた)。すると黄シャツの係員の男性が駆け寄って「お父さ
ん」を丁寧な態度で介助し椅子に導いた。

「スパルタですね」

また少しすると、高齢の女性がタクシーから降りてきた。右足が不自由で
階段を上がるのが大変そうだ。黄シャツの係員が、他の人たちにするのと
同じ質問をした。

「ご予約は何時ですか」

彼女は耳を指差し、唇に手をあてて首を横に振った。会話が不自由なこと
が見てとれる。黄シャツの人は差し出された書類を見て言った。「接種会
場は2階です。行きましょうか」。

彼は女性の歩くペースに合わせて、その足の運びを見守りながらそろそろ
と付き添い、エレベーターに消えた。二人の背中を見ながら、私は「どう
か最後まで付き添ってね」と心の中で呟いた。

そして私自身の予約の時間が近づいた。「密を避けて3〜4人ずつ、エレ
ベーターに乗って下さい」と注意され、2階の接種会場に行き、再び順番
を待つ。整理券など必要な書類の準備を促すお知らせがあって、気がつい
たらさっきの「お父さん」が私の少し前にいた。

いよいよ接種だ。「お父さん」の番だ。「お父さん」は椅子から立ち上が
ろうとしたけれど、お尻がストンと落ちて立ち上がれない。と、周りの椅
子の人たちがさっと立ち上がって一斉に手を差しのべた。その反応の素早
いこと。か弱いお年寄りを守ろうとするそのごく自然な姿に、私は感動した。

そのときだ。「立てるんだから、ちゃんと立って!」と声が飛んだ。息子
さんである。「お父さん」はこうして兎にも角にも「シャンと」立って歩
き始めた。

私もやがて接種会場の中に導かれたが、前回体験したような「時間のロ
ス」―被接種者が目の前の椅子に並んで座っていて、医師と看護師もブー
スで待っていて、定められた予約時間のくるまで、お互いに睨めっこしな
がら待つという何とも奇妙な時間のロス―は今回はなかった。

接種は順調に進んだ。前回同様、医師も看護師も、係の人たちも皆、優し
く丁寧で細やかな心配りを欠かさない。2回目のワクチンを打ってもらっ
て、15分間待機していると、あの「お父さん」が15分の観察時間を無事に
終えて会場を出ようとするところだった。

その姿を見て思わず、お隣りの女性と顔を見合わせた。彼女とはロビーで
も一緒だったのだ。「お父さん」がものすごい早足で歩いていったのだ。
屈強な息子さんに背中を押されている。

「凄い早足ですね」「スパルタですね」と、私たちはクックッと笑った。
しかし、私は考えずにいられなかった。

小池都知事の姿は

「お父さん」は毎日、どんなふうに暮らしているのかしら、と。「お父さ
ん」の為でもあろうが、叱咤激励する息子さんの前では「お父さん」は気
が抜けないのではないか、それにしても男同士の会話はあんなふうに素っ
気ないものなのか。しかし、ワクチン接種に付き添ってくれるのだから、
息子さんは根は優しい人に違いない。そんなことを考えてぼんやりしてい
ると、後方から弾んだ声が聞こえてきた。

「いやあ、今日は本当に楽しかった。ありがとう!」

振りかえると恰幅のよい男性が周りにいる黄シャツの人たち一人一人にお
礼を言っていた。男性も笑顔、黄シャツの皆も笑顔、部屋の中に笑顔が溢
れた。皆に優しく丁寧に対応してもらって満足している男性、そのことへ
の感謝と嬉しさを表現してもらって、これまた幸せな気分になっている黄
シャツの人たち。次々に訪れるさまざまな人たち全員にこんなに優しく丁
寧に対応できる日本人は本当にすばらしい人たちだ。胸の奥があたたかく
なった瞬間である。

菅首相の強い決意もあって、ワクチン接種はようやく順調に進み始めた。
6月10日時点で接種回数は2000万回を超えた。あちらこちらの自治体や大
学や職場で工夫が重ねられて、独自に接種を進める動きが増えた。1日に
100万回の接種が可能として計算すれば10日で1000万回だ。その中には2度
目の人も含まれているため、単純には計算できないが、国民の3割にワク
チン接種が行き渡れば感染の勢いは目に見えて衰えるという。

「読売新聞」の調査によれば先行接種した医療従事者の感染は9割も減少
しているそうだ。専門家らは3月から本格化したワクチン接種の効果だと
見ている。

もうひと息だ。できるだけ早く、若い世代にも接種し、皆で力を合わせて
東京五輪を無事に迎えたいものだ。それにしても菅首相が前面に出て頑
張っているのに、小池百合子都知事の姿は全く見えてこない。小池さん、
一体何をしているのかしら。
  

2021年06月13日

◆ワクチン接種と五輪を支える自衛隊

櫻井よしこ


日本ルネッサンス 第953回

だれか黙々と働く人がいて世の中は成り立っている。その縁の下の力持ち
に国民も社会も国も感謝してこそ、健全な国が創られる。それが本来の日
本、勁い国の姿であるはずだ。

「朝日新聞」が5月26日の社説で五輪中止を菅義偉首相に求め、理由の第
一に「健康への脅威」を挙げた。万単位の人々が世界からやってきて、ウ
イルスが広がっていくとの懸念を朝日は強調した。

だがこの1年間、世界では430の国際スポーツ大会が選手5万4000人の参加
を得て開催された。テニスの全米、全豪、全仏オープンやサッカーのクラ
ブワールドカップ、ゴルフのマスターズをテレビで見た方も多いはずだ。
いずれの大会でもウイルス拡散はなかった。東京五輪はこれらの世界大会
に学び、対策をさらに厳しくした。

選手ら来日者全員に出発前の4日間で2回のウイルス検査を義務づけ、出発
前の空港では陰性証明の提示が義務化された。日本入国時に検査し、入国
後3日間は自室に隔離され毎日検査を続ける。空港から宿舎、ホテルへの
移動、練習会場、試合会場への移動も全て専用車輌や専用バスに限定し、
公共交通機関の使用は認めない。外国の人たちを泡のように包み込み、動
きは特別の動線に従ってもらう。基本は一般の日本国民と接触させないこ
とだ。これを「バブル方式」と呼ぶ。違反者には帰国のペナルティも考慮
中で、かなり万全な対策だと思う。

朝日は医療の逼迫も懸念する。しかし、日本の組織委員会と各国の五輪委
員会(NOC)が合意し、NOCが各々の随行医療専門家をふやして日本
の医療負担を軽減することになった。日本への入国予定者は当初の18万人
から7万8000人に減らし、その80%がワクチンを接種済みで来日する。万
が一、問題発生のときは五輪選手らのコロナ医療はスポーツドクターが担
当し、国内のコロナ医療への新たな負担は生じさせない仕組みだ。

日本の当事者たちは本当に頑張っている。だが、朝日は「人々が活動を制
限され困難を強いられるなか」五輪開催の意義はあるのかと問う。人々の
活動が制限され困難を強いられるのは武漢ウイルスに打ち克つためであ
り、朝日の主張は後先を間違えているのではないか。

必死の努力

後述するように菅首相は、まず一番リスクの高い高齢者にワクチンを行き
渡らせ、最大の危機を乗り切ろうと必死の努力をしているではないか。欧
米諸国に較べても日本国も日本国民もよくやっている。あとひと息ふた息
頑張って、ワクチンを打ち、皆でコロナを乗り越え、五輪開催を実現する
ことで日本の力が証明される。人類が予想もしなかった、武漢ウイルス襲
撃の中でのスポーツの祭典としての五輪開催の意義は、そこにこそあるの
ではないか。

朝日は前向きのことは殆ど書かず、五輪中止の主張を喧伝する。日本共産
党や立憲民主党と同じく、政局狙いではないのか。仮に五輪が頓挫して
も、それは本来菅首相の責任ではない。むしろ小池百合子都知事の責任だ
が、朝日は間違いなく菅首相の責任問題を持ち出すだろう。そこでどれだ
け菅首相が努力しているかを見てみよう。

あらかじめ断っておくが、私はこれから述べることに強い違和感を抱いて
いる。ただ首相が国家、国民のために必死の努力をしていることは認めたい。

現在、医師には1回のワクチン注射で2070円が支払われる。時間外なら
2800円、休日なら4200円になる。1回の注射料としてはかなり高いと思う
が、なぜか、接種に医師らの協力はあまり得られなかった。業を煮やした
首相は自衛隊の医官の活用を打ち出した。日本に1000人しかいない医官か
ら80人を選抜し、東京と大阪に振り分け、日々1万5000人の接種を目指し
たのは周知のとおりだ。

日本に危機や有事が発生するとき、最後の拠り所が自衛隊である。中国の
脅威増大の前に、ただでさえ人員不足で大変な自衛隊から医官や看護官を
引き抜いて武漢ウイルスとの戦いの現場に投入したのは、政府にとって一
大決心だったはずだ。

本来ならこの決断を見て、東京都医師会や日本医師会が改めて傘下の開業
医にワクチン接種への協力を大いに勧めてくれればよかった。

ここで再び明確にしておきたいのは、コロナ発生時から献身的に診療活動
に参加してくれた医師は少なくないということだ。問題は日本医師会や東
京都医師会なのだ。彼らが組織として十分な協力をしてくれたとは到底言
えない。医師にはワクチンを優先接種したにも拘わらず、東京都医師会の
場合、5月4日時点で接種に協力していたのは全体の22%にとどまっていた。

あまりにも非常識な差

政府には医師会への命令権がないため、打つ手は限られている。そこで5
月25日、医師への奨励金上積みを決めたのだ。1回のワクチン注射に最高
で4200円が支払われることはすでに述べた。これをさらに高くし、いくつ
かの条件さえ満たせば1回の注射で最高7200円が支給されることになっ
た。この高額提示に、消極的だった医師らも前向きになったといわれる。

そこで菅首相に質したい。命の問題であるからワクチン接種を急ぐのは当
然だが、人をカネで動かすような手法でよいのか、と。お金の使い方は実
に難しく、お金で動く人も組織も危うい。医師会にも問いたい。医師会や
医師のモラルはこれでよいのか。私は強い違和感を拭いきれないでいる。

菅首相は政権全体の力を結集して国民の心に訴えかけるべきだ。いま、コ
ロナ禍を脱する唯一の手段はワクチンしかない。一日も早く接種を終えて
落ち着いた日々を取り戻したい。そのために医師は使命を果たしてほし
い。国民を守ってほしい。国民もあとひと息ふた息の辛抱だ。どうか頑
張ってほしい、と、首相が自ら語るのがよい。

もう一点、是非言いたい。黙々と働く自衛隊医官と看護官の処遇である。
ワクチン接種でまさに縁の下の力持ちとなっている彼らには、1日3000円
か1620円が支給される。国家公務員であることに加えて、ダイヤモンド・
プリンセス号で患者の診療などに当たったとき1日4000円、あるいは3000
円支給したことを鑑みたそうだ。

民間の医師への手当てと較べてあまりにもおかしい。このあまりにも非常
識な差を埋め合わせるには、自衛隊の隊員全員にわかるように、明確かつ
深い感謝を表現するしかない。

国家公務員の中で使命達成に身命を賭すと宣誓するのは自衛官だけだ。政
府の命令にひたすら従い、国民を守ってくれる彼らへの感謝を広く形にす
べきだ。そのひとつは、この際統合幕僚長を認証官にすることではないか。


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