2018年11月17日

◆中国の若者の起業を支援した私募債

宮崎 正弘


平成30年(2018年)11月15日(木曜日)通巻第5890号   

 中国の若者の起業を支援した私募債、ベンチャーキャピタルに冷風
   資金が集まりにくくなって前年比70%もの激減

和歌山県だったか、ウーバー型の相乗り自転車(シェアサイクル)。中国
資本がやってきて、客が殆ど付かず、すぐに倒産した。

中国でも競争が激しい上に主客のはずの大学生がモラルを守らず、乗り捨
て放題。なんと2500万台の自転車は焼却処分となった。

まったくビジネスにならず、そもそも日本ではウーバーなんて無理なの
だ。タクシーのウーバーは中国やアメリカなら、タクシーが少ないから成
功するだろう。日本は手を挙げればタクシーが停まる。地方都市へ行けば
駅にずらーっと空車が並んでいる。

運転手さんに聞くと、一ヶ月に7万円くらいの収入でもまぁまぁやってい
ける。定年組が、閑だから、家でぼぅっとしているよりはマシなのだという。

北京では朝夕、空車がいない。とくに夕方は一時間まっても空車がない。
付近で一台でもとまって客が降りると、支払いの前にさっさと助手席に乗
り込む。空車を拾うにも喧嘩腰、だからと言って地下鉄も乗り降りが命が
けである。

ドアが3秒くらいで開閉してしまうのだ。もし全員を始発駅からのせたら
 次の駅で一人も乗せられないからだ。

ベンチャービジネスで盛業中は出前ウーバー、貨物トラックなど。特に出
前ウーバーは独自の電話注文を受けて配達料金を取って代わりに配達する。

冒頭にのべたように、ウーバー型のシェアサイクルは中国でも駄目だっ
た。客が付かず、40社もあったウーバー自転車企業は、いま三社しか残っ
ていない。20億ドルのベンチャーキャピタルが回収不能となった。

これらのベンチャーは若者が起業し、地方政府は奨励金を払ったりオフィ
スのレンタルを無料にして支援し、また証券界、金融界は私募債を発行し
たり、ファンドがベンチャーキャピタルを組織した。

過去5年間のベンチャー、秋風から冷風にかわり、中国の私募債、ベン
チャーキャピタル業界は、冬の時代を迎えた。証券企業は政府の後押しも
あって積極的に私募債起債に協力し、また有望企業の上場にも積極的だっ
たが、年初来の上海株式の値崩れ(20%)、人民元の崩落予兆(すでに
10%の下落ぶり、中国人民銀行が1ドル=7元を突破されまいと連日為替
介入に貴重な外貨を投じている)

逼迫した市場の状況をみれば、ファンドが、以後も投資を続行するとは、
考えにくいだろう。

皆が第2のアリババを夢見た。

そしてアリババの再現はなかった。過去五年に投入された資金は1・2兆
ドルという。ブームだから、借り手の審査が緩く、とくに目論見書を巧み
に書いて(作文でありもしない市場をでっち上げる)、将来の薔薇色をか
たる才能がある、別な語彙でいうと詐欺師が、このブームを悪用しないは
ずがないだろう。

ことし9月までに600億ドルがあつまった。成功したベンチャーは殆どない。
       
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評BOOKREVIEW
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空の守りを引き受けて、F4ファントムは半世紀、日本防衛の最前線で戦った
愛着の深いパイロット、それを支えたメカニック集団のチームプレー

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小峯隆生著・柿谷哲也撮影『永遠の翼 F4ファントム』(並木書房)
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わが空自のエースだったF4ファントムは、あと二年で完全に引退する。
後継機はF35。日本の空を守り続けて半世紀。「有り難う! ファント
ム」の熱い思いを込めて、軍事ジャーナリストの小峯氏は、自衛隊基地を
訪ねて歩き、また製造元の取材を重ねた。

「F4は機械じゃない。生き物なのだ。格好良い猛獣なんだ」と喩えた猛
者もいた。

こうしたパイロットの経験談、指揮官の談話など防空の苦労もさりなが
ら、この人たちは本当にF4を愛したのだという切実な情感が湧いてくる。

若きパイロットの多くが、じつは『劇画ファントム無頼』を読んで、大空
の勇士にあこがれたのだという。だから小峯氏は原作者の史村翔氏のもと
にも駆けつけ、作家としての思いを聴くのだが、史村氏もまた航空自衛隊
出身者だった。

 彼は言う。

「百里でコクピットに座った時、やっぱりベトナムで戦い抜いた獰猛な生
き物だと実感した。ファントムに関わった人間にしかわからない愛着や魅
力を忘れることはない。そう、おまえは格好良い猛獣なんだ」。

 この名機はイスラエルでも空中戦で大活躍したが、欧州の空軍専門家ら
も、日本に見学に来てF4に感心し、写真を撮影して帰るという。

NATOの主力機はトーネードだが、やはり日本の、嘗てのゼロ戦フィア
ターが、いかにして操縦するのかを知りたがった。
 全盛期には六個飛行隊だったF4はいま2個。最後の飛行は301飛行
隊が行い、F35と交替する計画という。
 長いあいだ、お疲れ様!

2018年11月15日

◆こんどはマダガスカルが。。

宮崎 正弘


平成30年(2018年)11月14日(水曜日)弐 通巻第5889号   

こんどはマダガスカルが「あの国」に狙われた
 カヌー漁業へいきなり近代漁船330隻を投入、大統領のスキャンダルに発展

マダガスカル? 地球の何処にある?

アフリカ東海岸モザンビークの東沖合400キロに浮かぶ島。しかし「島」
とは言っても面積は日本の1・6倍、人口は2200万人強。大半の国民は一
日2ドルで暮らす最貧国。もとはフランス植民地だった。

突然、この国にスポットが当たったのは、テレビの旅行番組だった。

マダガスカルにしかいない「横っ飛びの猿」(ベローシファカ)、キツネ
ザルなど珍しい動物とキノコのお化けのような木々がジャングルに群生す
るという不思議。自然に興味の向き是非とも行ってみたいと思うかも知れ
ない。かくいう筆者、1985年に一度、行っている(といっても正確に言う
と、ヨハネスブルグの帰路、2時間ほどトランジットしただけですが)。

世界政治から、突然、マダガスカルが注目を浴びたのは「コバルト」だっ
た。世界のコバルト消費量の48%が中国、20%が日本。スマホの急発展に
よって、リチゥムイオン電池の需要が急伸し、その基幹のレアメタルがコ
バルトである。

日本の企業も、コバルト輸入には神経質となっており、げんにコバルト価
格は過去3年で4倍に膨れあがっている。世界一のコバルト生産はコンゴ
民主共和国(昔のザイール)。鉱山経営のアメリカ企業から、中国はぽん
と26億ドルのキャッシュを支払って筆頭株主となっている。

このコバルトがマダガスカルで生産されているのだ。日本企業もはやばや
と住友商事がコバルト鉱山開発に手を染めている。コバルトは銅、ニッケ
ル鉱に付随して産出されるので、精錬に高度の技術が必要とされる。

それまでは旧宗主国フランスも経済支援には投げやりで、なにしろ主要部
族だけで16。多くの部族語はボルネオあたりから漂着したマレー語が源流
とも言われる。統一言語がないため、フランス語と英語が公用語である。
ちなみ通貨単位は「アリアリ」。何もないのに在るとは、これ如何に?

政情不安、機能しない政府、憲法に基づかない政権交代など、要するに法
治主義とは何かが分かっていない人々が、この国を統治している。
地理学的には紀元前にアフリカ大陸から千切れ、インド亜大陸から、もぎ
取らてれ孤島となってしまい、世界との交流は少なかったため、独自の
動・植物が育った。沿岸部ではカヌーを改良したような小舟の原始的な漁
業が営まれている。


 ▼マダガスカルの基幹産業が壊れる

降って湧いてきた壮大無比のプロジェクトは、やっぱり「あの国」からで
ある。

近代的漁船330隻がマダガスカルに投入されるという。総額27億ドル
(マダガスカル史初の巨額)という漁業協定はマダガスカル政府ではな
く、民間企業と北京政府系の中国企業コンソシアムとの間に署名され、し
かもその企業は、当時のヘリー・ジャオナリマンビアニ大統領の息子が取
締役を務める会社である。

だれが考えても面妖な話、しかもこの協定にマダガスカル政府漁業省が一
切関知していない。民間企業は「マダガスカル経済発展推進社」とかの、
公的なニュアンスを匂わせる会社だが、実態は不明である。
 
署名式は9月5日、北京で行われた。しかも署名式の部屋の片隅にヘ
リー・ジャオナリマンビアニ大統領が映っている証拠写真がメディアに
よって報じられ、大統領は「私は知らない。なんの署名式だったのか、関
与していない」と誰もが嘘と分かる弁明。

同大統領はその2日後に辞任した。このため90日以内に大統領選挙が行わ
れるが、下馬評でトップを走るのが、やはり、このヘリー・ジャオナリマ
ンビアニ大統領なのである。

 中国が近代的漁船を大量に派遣して漁業を営めば、マダガスカルの漁業
資源はあらかたが取り尽くされる。なにしろ漁獲量の殆どは中国への輸出
に廻される契約となっているらしい(契約内容は公開されていない)。

地元漁民は小型ボート(エンジンもない)、沿海でしか操業できず、中国
の「漁業侵略」が始まったらひとたまりもなく失業するだろう。それでな
くとも北部に住み着いた華僑を通して、地元民はその阿漕な遣り方を知っ
ており、中国人が嫌いである。


 ▼中国の乱獲、独占は悪名高いゾ

『アジアタイムズ』(2018年11月12日)に拠れば、中国側の契約相手は七
つの民間の漁業、船舶、港湾開発など特定できない中国企業で、最初の三
年間に7億ドルを投じ、まず港湾と整備し、漁場を調査・観測し、保冷倉
庫や輸出設備を造成、地元漁民も一万人が雇用されるという薔薇色の青写
真が提示されている。

その後、14メートルの近代的な漁船には保冷設備を内蔵し、トロール方式
で漁獲効率をあげるというが、日本でも小笠原諸島近海で、赤珊瑚を根こ
そぎ盗んでいった実績を誇る中国の漁船団は、近年、アフリカの海も荒ら
し回っており、EU委員会の報告に寄れば、2017年度だけでも250万トン
の魚介類を水揚げした。

マダガスカルのEEZ(経済的排他海域は、宏大であり、合法的にも中国
の船団が入ってくれば、海の生態系も変わる。

マダガスカルにおいて欧米の自然環境保護団体が多数活躍しており、彼ら
が自然破壊に繋がると懸念を表明している。地元漁民の反対デモなどはま
だ確認されていないが、数日中に大統領選挙の投票時を迎える。
大統領選挙、どういう結果になるか?
      
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1819回】        
 ――「支那の國ほど近付いてあらの見ゆる國は無し」――關(3)
關和知『西隣游記』(非売品 日清印刷 大正7年)

               ▽
じつは清朝八大親王の1人である肅親王善耆は、「男装の麗人」「東洋の
マタハリ」と呼ばれた川島芳子こと金璧輝の父親である。母親は肅親王善
耆の第四側妃。芳子には2人の妹がいたが、下の妹の愛新覚羅顕?は『清
朝の王女に生まれて』(中公文庫 1990年)に金璧輝が川島芳子になった
理由を、「父が日本人を利用して清の復辟を祈願していたため、当時父に
取り入っていた川島浪速という日本人に、連れられて行きました」と記す。

川島「お雇い外人」として末期の清朝で警察官の養成に当たったが、その
際、肅親王善耆やその娘婿に当たる蒙古王公のカラチン王と親交を結んだ。

清朝崩壊後、北京を離れ旅順鎮遠町十番地に移り住んでいる。おそらく關
和知らは、この鎮遠町十番地に肅親王善耆を訪れたのだろう。

1912年、川島は肅親王善耆を擁して第1次満蒙独立運動を計画するが、日
本政府の命令で計画は頓挫する。その後、1916年(大正5)年に第2次大
隈内閣の進める「反袁政策」の下で第2次満蒙独立運動を画策するが、日
本政府の方針転換と袁世凱の死で失敗に終わった。

1922(大正11)年の肅親王善耆の死を『清朝の王女に生まれて』は、「父
は北京をでる時、(清朝崩壊と亡命の悲哀を綴った)詩を作って、それっ
きり北京の土は踏みませんでした。復辟(退位した皇帝を再び復位させる
事)運動にも失敗して、わずか享年57歳で、亡命の地旅順に在って最後の
息を引き取ったのです」と記す。

關ら6人は1917(大正6)年10月から12月にかけて旅行しているところか
らみて、一行が面会し当時の肅親王善耆は、第2次満蒙独立運動失敗の失
意に落ち込んでいた頃と思われる。

「日本人を利用して清の復辟を祈願し」ていた肅親王善耆である。はたし
て清朝復辟のために日本人と見たら誰彼となく「人を動かす」ような言辞
を弄していたのだろうか。

肅親王善耆の次は反日運動を考えたい。

「支那人の日本人に對する惡感は依然として存在」するばかりか、最近
では盛んになってきて、「往々にして我が威令を輕じ、時に反抗的態度に
出づ」。たとえば「埠頭に於ける苦力のストライキ」であり、「荷馬車曳
のストライキ」であり、「日本婦人に對する支那車夫の侮辱」などだ。

その責任を考えると、やはり「日本に於ける我政府の對支方針が、單に支
那の歓心を買ふを以て能事とする、所謂親善主義なるもの」にある。それ
というのも、日本側の微温的な対応が相手側に「帝國の威信を輕ずるの弊
を誘致」してしまったからである。その一例として鄭家屯事件を挙げ、事
件を曖昧な形で収束させてしまったことが「帝國政府自ら輕ずるの甚だし
き一例」とする。

鄭家屯事件とは、1916(大正5)年8月に日本人売薬店員と中国兵のささい
な口喧嘩が発端となって遼寧省鄭家屯で起こった両国軍衝突事件。

日本軍が同地を占領した後、当時の大隈重信内閣は中国側の司令官の懲戒
に加え、南満洲・東部内蒙古の必要地点への警察官の駐在を要求した。じ
つは1900年の北京で起こった義和団事件(北清事変)を機に結ばれた北京
条約によって、日本は欧米諸国と同じように自国民保護のために軍を駐留
させる権利を得ていたのである。

当時の両国関係を簡単に振り返っておくと、1915(大正4)年1月、日本が
提出した対華21カ条要求をめぐる交渉がはじまったものの、日本はイギリ
スの抗議を受け、要求の一部を取り下げた。

この対応が、日本がイギリスの圧力に屈したことであり、延いては中国側
の日本に対する軽侮・蔑視的態度を誘発するとの考えが当時の陸軍から生
まれる。

その筆頭が、袁世凱に密着していた陸軍支那通の代表的存在の坂西利八郎
らしい。
  

2018年11月14日

◆クラ運河の構想は消えていなかった

宮崎正弘


平成30(2018年)11月13日(火曜日)通巻第5887号  

 この話は本当か? クラ運河の構想は消えていなかった
  タイ軍事政権、調査レポート作成チームを再組織

タイの軍事政権は、クラ運河構想に前向きの姿勢を見せた。
 タイの新国王がクラ運河建設に前向きとされ、国内の経済界が相手にし
なかったプロジェクト構想が緒に就こうとしている。
むろん、中国の積極的なタイ政・財界根回しが背後にある。

クラ運河はタイの地政学的要衝としての有利さがあり、海洋航路の短
縮、効率的運搬の拠点として有望とされる。もし完成すれば、マラッカ海
峡という迂回路をバイパス出来る。つまり、タイの国益より、中国の国益
につながる。

マラッカ海峡の代替ルート、一番裨益するのは中国である。

現在、マラッカ海上を通過する船舶は中国が第一位。まもなくキャパを
越えるのは明らか。しかし20万トン以上のタンカーはマラッカを通過で
きないから、ロンボク海峡へと迂回する。タンカーの通過量は、スエズの
3倍、パナマ運河の15倍。

シルクロード世界フォーラムに、北京は意図的にタイを招待しなかっ
た。理由は露骨に圧力を明示して、クラ運河構造、プロジェクトの青写真
を早くまとめろとした、政治的要請だった。

軍事政権は自国の経済効果が疑わしく、さして利益もなく、国土が東西
に分断され、しかも競争相手のシンガポールから恨まれる。
だから重い腰を上げようとはしなかったのだ。

タイの政治の裏側で何かが動いている。
      
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BOOKREVIEW 書評BOOKREVIE 
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  「人斬り半次郎」のイメージは池波正太郎の創作
  桐野利秋の実像は剣士、軍略家、ピストル名人、そして農業改革者

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桐野作人『薩摩の密偵 桐野利秋――人斬り半次郎の真実』(NHK出版新書)
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面白く読んだ。この作者のものは初めてだが、筆力のある作家のよう
で、なによりも評者(宮崎)と同様に「『西南戦争』の立役者は、西?で
はなく桐野の戦争」と見ていることが印象的だ (宮崎『西郷隆盛 日本
人はなぜこの英雄が好きなのか』(海竜社参照)。

タイトルにある「密偵」という語彙は誤解を招きやすい。

密偵というよりも、情報戦で必要とされたのは敵の動きを探ることも重
要だが、身内に潜入したスパイの探索(防諜)も重要な役目であり、桐野は
長州の藩士等と近づき、酒を酌み交わし、動きを探る一方で、天狗党の蹶
起では、かれらのあとを追って指導者と会っている。大胆な行動力があった。

桐野利秋は、小説や大河ドラマで「下級武士」として扱われているが、
桐野の出自は歴とした「城下士」に属した事実を本書は指摘している。
西?、大久保ら薩摩の英雄達は大半が『御小姓与集団』に属し、「島津齋
彬の遺志を継ごうとして結成された精忠組のメンバーもほとんどが、この
家格の者である」(17p)。

しかし桐野は何故か「人斬り半次郎」として知られた。

滅法剣に強いが闇雲にテロに走ったのではなく、たとえば赤松小三郎の暗
殺は防諜の責任者として一種「公務」だった。

赤松小三郎は上田藩士だったが、会津藩と親しく、私塾も主宰し、学者と
して京では尊敬を集めていた。しかし内偵の結果、赤松が幕府の密命を帯
びたスパイであることが判明し、桐野は五条東洞院下ルで待ち伏せし斬
殺、「斬?の制札を四条東洞院と三条大橋に掲げた」(79p)。
その斬?の制札に曰く。「西洋を旨とし、皇国の御趣意を失い」云々。

知られざる逸話として、不忍池に残る岩崎邸、じつは桐野の東京における
住まいだった(東京妻がいた)。艶福家でもあり、そして桐野は書道家でも
あった。

なによりも桐野は「軍人」であり、のちに陸軍少将にまで上り詰めた。そ
れは単純に剣術使いという理由からではなく、「戦機を見るに敏であり、
決断すれば神速のごとく、常に最前線で戦い、麾下を叱咤し奮発を促して
勝利を収める将才を評してのことである」(88p)

桐野はまた人情に厚く、佐賀の乱で逃亡してきた武士等を薩摩にふたり
匿ったり、新政府の外国の圧力に押されてのキリスト教解禁でも「隠れ切
支丹」に優しかった。そうだ、かれは熊本鎮台の司令官でもあった(半年
だが)。谷干城の前任である。

もう一つ、本書で教えられた事実がある。

戊辰戦争後、薩摩に帰省した西?をたずね、聞き書きの『南洲翁遺訓』
を編んだのは庄内藩士だった。同様に聞き書き桐野をまとめた『桐陰仙
譚』は明治七年に薩摩で農業開拓団を率いた桐野を訪ねた石川県士族が
綴った。

「桐野の宇都谷開墾地を訪れた人々のうち、もっとも関心と因縁を感じる
のは石川県士族の陸義猶と長連豪である。(中略) この2人に注目する」
と作者が力説する。評者も石川県生まれなので、この2人の名は知っている。

明治11年、紀尾井坂で馬車を待ち伏せし、大久保利通を暗殺したのは 石
川県士族の6人組だった。陸義猶が斬?状を起草し、長連豪が暗殺の首
領だった。


桐野は西郷下野と行動をともにしたが、べったりではなく、西郷とも士
学校とも距離を置いた。桐野は農村の開拓に志をつないだ。

だが、「男にはやらねばならないことがある」として西南戦争が勃発する
や、西?側近として殆どの軍事作戦を立案指導した。最後は城山に華々し
く散った。

生前、桐野が語った言葉が、言論陣の陸?南が主宰した新聞『日本』に
「桐野利秋談」として発表された(明治26年4月に5回連載)。
 その中で、桐野は憂国の情を吐露した。

「わが日本は東洋海中に孤立し、二千五百有余年の国風に慣れ親しん
で、まだ五大州の情勢を熟知していない。また国力が衰え、軍備は空虚、
人心は惰弱で自主独立の気象がない。いやしくもこのような因循のまま推
移すれば、それほど時が経たないうちに自滅して、他国に隷属することは
明らかである」(桐野作人著作より重引用)。
 いまの日本、まさに同じ環境にあるのでは?
              
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【知道中国 1818回】             
――「支那の國ほど近付いてあらの見ゆる國は無し」――關(2)
關和知『西隣游記』(非売品 日清印刷 大正7年)

「辭令の妙」に任せて、肅親王は一行を心地よく擽る。

昔から東洋には大義名分という東洋道徳がある。「日本は大義名分の
國」であり「世界の大勢より達觀すれば、日支の提携は特に必要にして且
つ急務」である。であればこそ「時機一度到らば日本は必ずやその東洋
道?の根本義に基つき大義名分の下に支那を指導して以て二國の?史的親
交を鞏うし、列國競爭に對せざる可からず」。

この発言を「堂々たる復辟 派の大宣言」、つまり清朝再興派の「大宣
言」と受け取った關は、「所謂 東洋道?なるものは即ち君臣の大義にし
て、支那帝政の復興は大義の上よ り日本の援助を期待するの意思」を痛
感し、ひたすら感激している。

大隈が「自愛」と「日支提携の爲め」の尽力を求めると、肅親王は「余
學淺く?薄く以て大事に任ずるに足らず、幸に卿等の?を待つこと切な
り」と。やはり肅親王らは飽くまでも清朝復辟を目指す構えのようだ。

 彼らの中には「清朝を復して支那皇帝とし、日本の天皇を亞細亞皇帝と
し、支那皇帝は命を亞細亞皇帝に聽ことゝ爲さば、以て亞細亞大帝國を建
造し、覇を世界に稱ふるを得べし」と、日本側に説く者もいたほどだった。

 復辟問題に就いて關はこの辺りで筆を止めている。だが、ここで心に留
めておきたいのは復辟を目指す宗社党のなかに清朝皇帝は「支那皇帝」と
なって我が天皇を「亞細亞皇帝」として戴き、「亞細亞大帝國を建造し、
覇を世界に稱ふるを得べし」――満州国皇帝となった溥儀と天皇の間柄を彷
彿させる関係――という考えの持ち主がいた点である。

満洲国建国に際し、飽くまでも清朝皇帝という地位に拘泥する溥儀の希望
を受け入れず、日本側は強引に執政に据え、後に満洲皇帝とし、天皇の下
に置いたといわれているが、「亞細亞皇帝」云々の話を知ると、どうもそ
うでもないらしい。

溥儀の弟である溥傑は自らの人生を回想した『溥傑自伝 「満州国」皇
弟を生きて』(河出書房新社 1995年)に辛亥革命後、紫禁城内で皇帝一
族の生活継続を許されていた当時の思いを、「私には清室を振興するに外
援が絶対必要であるという考えが強くなった。(紫禁城内)の中にいなが
らも、将来どの国の援助に頼って帝制を回復するか、ということが」私の
頭から一時も離れなかった」と綴っている。やはり清朝復活は一族の強い
願いだった。

そこで溥儀・溥傑兄弟の父親に当たる醇親王載?が「満州国皇帝に就くこ
とに反対した」にもかかわらず、溥儀は日本側の誘いに応じ、満洲国執政
から皇帝即位への道を選ぶ。満洲国皇帝即位後の振る舞いは、どうやら
「清朝を復して支那皇帝とし、日本の天皇を亞細亞皇帝とし、支那皇帝は
命を亞細亞皇帝に聽ことゝ爲」すとの考えに近かった。

昭和20年8月9日のソ連軍の侵攻から10日ほどした18日午前1時に行われた
満洲国緊急参議府会議で満洲国解体と皇帝退位が決定する。
退位式を、溥傑は次のように綴る。

「退位式は簡素で厳粛に執り行われた。皇帝溥儀は退位宣言を読み終えた
後、参会者一人一人と静かに握手をしてひっそりと退場した。彼はもう平
民になったのだ。溥儀は芝居がうまい。退位発表の時、自分から跪いて、
/『自分の無能のため、日本の天皇に迷惑をおかけした。天皇に許しを請
う』/といい、退場する時も側に立っている日本兵と抱擁して別れを告げ
たので、日本兵はみな感激の涙を流した。

私は溥儀に反感を覚えた。ここまできて、どういう気持ちでこの醜態を演
じたのか、と」。

「天皇を亞細亞皇帝」にとの提言から溥儀の「自分の無能のため、日本
の天皇に迷惑をおかけした。天皇に許しを請う」との懺悔まで、その場限
りの「辭令の妙」ということだろう。

だから日本側は彼らの「辭令の妙」に弄ばれてはならない。厳重注意!

      

2018年11月13日

◆パプア・ニューギニアでAPEC

宮崎 正弘


平成30年(2018年)11月10日(土曜日)通巻第5885号  

 パプア・ニューギニアでAPEC、豪の対中「巻き返し」が本格化
  11月17日、安倍首相、ペンス、習近平、プーチンも勢揃い

パプア・ニューギニアはどちらかと言えば、豪の縄張りに入る。

東西が、まっすぐ縦の国境線で分断され、西のインドネシアと別れた国家
だが、かつて大航海時代の定石通りポルトガル、オランダ、英国とやって
きた。戦時中は日本軍が上陸したが、全島の占領にいたらず、悲惨は敗北
を喫した。

戦後は豪の信託統治から1975年に独立、大英連邦のメンバーだけれど、豪
が主として保護してきた。パプア・ニューギニアは日本より25%も面積
が多いが、人口はわずか800万強。一人あたりのGDPは2200ドル足ら
ず、最貧国の一つ。

このパプア・ニューギニアがAPECの開催地となる。(大丈夫かぁ)
11月17日からのAPECには習近平、李克強、プーチン、安倍首相、
そして豪はモリソン首相と29ヶ国から元首が揃い、同国始まって以来の
お祭り騒ぎにもなっているという。
 
首都のポート・モレスビーには豪軍が派遣され、厳戒態勢を敷いている。
くわえて豪空軍が空中を警戒、なにしろ同国の軍隊は2100名しかおら
ず、空軍はヘリコプターしかない。治安維持のためには豪の全面協力が必
要である。
パプア・ニューギニアはASEANのオブザーバーでもある。

豪政府はこのところトランプを見習って中国への警戒、企業買収の阻止に
懸命であり、CK集団のAPA買収を阻止したし、家庭用ガス・パイプラ
インの会社がなぜ香港華僑の経営になるのか、と安全保障が理由である。

海底ケーブル工事へのファーウェイの入札も拒絶した。南西太平洋は豪の
守備範囲と自認しているからには、中国の無神経な進出には神経質となる。

さて豪の本格的反撃ぶりである。

中国のAIIBに対抗するかのように、「豪は『南西太平洋インフラ銀
行』を設立し、資本金22億ドルを投下する」とモリソン首相は11月7日に
発表し、このインフラ建設プロジェクトには米国、日本、ニュージーラン
ド、そしてフランスと英国の提携があるとした。

米国は既にBRIに対抗して「インド太平洋ファンド」を増資して、本格
的インフラ建設の協力をするとしている。

なにしろ南西太平洋の範囲にはパプア・ニューギニア、ソロモン諸島、バ
ヌアツ、クック諸島、フィジー、マーシャル群島などが含まれ、フランス
はその先の仏蘭西領ポリネシア、とくにニューカレドニア、タヒチなどが
事実上の植民地、これらの島々に強い関心を寄せるのは国益上、当然だろう。

モリソン豪政権の構想は、南西太平洋に戦略的安定、主権保護、経済安定
のためのインフラ、運輸の充実とエネルギー産業の育成、通信網の拡充を
はかるべきであり、中国のいうBRI(一帯一路)の1兆ドルに対抗し
て、米国が発表したプログラムに予算を上乗せする。

これらの地域への1016年の支援実績は豪が8億ドル、ニュージーランドが
1・9億ドル、世銀1・4億ドルなどに対して中国も1・4億ドルを注ぎ
込んで、南西太平洋地域への投資を膨張させている。

     
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1817回】                  
 ――「支那の國ほど近付いてあらの見ゆる國は無し」――關(1)
關和知『西隣游記』(非売品 日清印刷 大正7年)

                   ▽

關和知(明治3=1870年〜大正14=1925年)は九十九里に面した千葉県長
生郡に生まれる。豪農だった父親の事業失敗によって苦学を余儀なくされ
たが、東京専門学校(現在の早稲田大学)へ。立憲改進党機関紙記者の後
に米国留学(イェ―ル大学、プリンストン大学)。帰国後、『萬朝報』記
者を経て『東京毎日新聞』編集長に。明治42(1909)年の衆議院補欠選挙
当選以来、連続7回当選。

「支那は今日に於て單なる支那に非ず、支那の民族、支那の社會、支那の
國家は、其の盛衰興亡の係はる所、直に我が帝國の運命に關す」。殊に第
1次世界大戦後の国際情勢の激変を考えれば、「支那問題は同時に帝國の
死活問題」であるから、「支那を研究し、支那を視察する」ことは急務
だ。かくして「余等同人昨秋相携へて」40日ほどの視察旅行を行った。
『西隣游記』は、その際の記録である――と巻頭に綴る。

「同人」の6名は大隈重信の養嗣子で早稲田大学名誉総長を務めた大隈信
常を筆頭に、以下は衆議院・貴族院議員をつとめた横山章、報知新聞社長
を経て東京市長を務めた頼母木桂吉、衆議院議員(1915年〜45年12月)で
日本タイプライター社長を務めた桜井兵五郎、陶芸家の原文次郎、それに
關和知である。
もちろん、ここに示した肩書は必ずしも旅行当時のものではない。

一行は、朝鮮を経て奉天、大連、青島、旅順、長春、撫順、天津、北京、
武漢三鎮、蕪湖、南京、杭州などを巡り、上海から帰国している。足を運
んだ各地において早稲田大学で学んだ留学生の成功者から歓待を受け、こ
れに在留邦人の早稲田大学卒業生が加わり、さながら“稲門同窓会巡り”の
感なきにしもあらずである。

たとえば北京では、「私立中國大學を參觀す、早稲田出身者の多數により
て經營さるゝもの、其組織、學制殆ど早稲田の專門部に則る、(中略)現
校長は姚君と稱す稲門の出なり」。かくして文中、屡々「早稲田の勢力
仲々に盛んなり」の一文にお目にかかることになるが、やはりゴ愛敬と
いっておこう。

『西隣游記』は「西隣游記」、「隣游餘録」、「不可解の支那人」、「支
那土産談」、「支那と列國の共同保障」で構成されている。これといって
特徴のない視察報告記といった趣の「西隣游記」は敢えて割愛し、「隣游
餘録」から読み進むことにする。

先ず清朝の重鎮で旅順に逼塞する「清室の連枝、肅親王に謁」す。肅親王
は大隈を見届けるや開口一番に、「父侯爵(大隈重信)は余が平常老先生
として敬事する所、今卿に接す恰も兄弟相見ゆるの感あり」と。

じつは肅親王と大隈重信の関係は「未見の舊識」だった。にもかかわら
ず、「恰も兄弟相見ゆるの感あり」である。すかさず關は「辭令の妙人を
動かす」と綴る。とかく日本人は彼らの「辭令の妙」に簡単に乗せられて
しまう。要厳重注意!

「支那の時局」に関して肅親王は、「中國今上下を擧げて道義退廢人倫地
に墜つ、斯の如くんば遂に亡國の運を免れず」。というのも「南方は徒に
西洋思想の直譯的に流れ、空論自ら悦ぶもの到底國家を經緯するに足る無
し」。一方の「北方は全然大義名分を辯ぜざる野心家の集合にして利己以
外の何ものをも有せざる賊子なり」。

南北が対立抗争しているものの、「南方の武力は到底北方に敵す可から
ず」。だから北方が武力で「壓迫せば南方は遂に屈服すべし」。

だが、そうなったらそうなったで、「北方派は必ず内に軋轢を生じて互い
に紛爭を事とする」。だから「中國の統一は容易に望む」ことはできない。

だが「大旱の後には時雨の到るが如く」に「國内の擾亂其極に及べば大義
名分を明らかにし、國民治を望むの念自ら興起すべく、統一の事業は是に
よりて成」るはず――だが、「辭令の妙人を動かす」ような肅親王の見解で
ある。はたして信を置いてもいいものか。

2018年11月12日

◆中国の住宅の22%が空き屋

宮崎 正弘


平成30年(2018年)11月10日(土曜日)弐 通巻第5886号  

 中国の住宅の22%が空き屋、空室は5000万戸と有名教授
  「もしいっせいに叩き売りにでれば、中国経済に悪夢が訪れる」

曾理(中国の西北大学教授)が近く発表に踏み切る研究報告によれば、
「中国全体の空室は22%、5000万戸だろう」。

「もしオーナー等がいっせいに叩き売りに動くと、それは中国経済の悪
夢となる」とも警告した。ブルームバーグなどは、この曾発言を大きく取
り上げている。

実際に不動産価格暴騰は、中国人の射幸心というより博打好きがなした
ことで、誰もが別荘をローンで買える環境があった。当局が購入を煽った
側面もある。

ところが、一転して不動産価格暴騰を抑えるため、金利あげ、課税強
化、とくに2軒目の住宅購入者には別税率を適用し、都市部では固定資産
税の導入などに踏み切ったが、効果は薄かった。

ようやく2017年頃から中国人自身が、不動産価格が日本よりも高いこと
に自信を深めるのではなく、深い疑問を抱くようになった。(市場が操作
されているのではないか?)。

そのうえ、殆どが空き屋というのも、納得がいかない。デベロッパーは
「党幹部とか、金持ちが投資用に買ったのであり、住む意思はないが、確
実に相場はあがる」などと説明した。

無理に借金して住宅を買った中間層が、組織だって抗議行動を始めた。
切っ掛けはP2P(ネット間の金の貸し借り)の破産で、大金を失った
人々はP2Pのオフィスなどに押しかけたが、経営幹部はとうに夜逃げ、
この人たちが「金融難民」となって、監督官庁に抗議し、そのうちにマ
レーシアのフォレストシティが値崩れ、デベロッパーの「碧桂園」(中国
不動産業界三位)本社にも連日デモ隊が繰り出された。

さて曾理教授は「22%が空き屋」というが、その程度ではない。「持 ち
主がいて、住んでいない」のか、「始めからまったく売れていないか」
でも空室率が異なる。

幽霊都市が際限もなく造られ、夜まったく電灯が付いていないゴースト
シティを見ていると、空室率が40%近くの地域があり、空き屋は中国全
土で8000万戸から一億戸と見られる。
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 中国の最初の躓きは独断が強すぎて、トランプを誤断したことにある
  TPP脱退、ディール優先のトランプを中国は「商人」。「扱いやす
い」と見た

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近藤大介『習近平と米中衝突』(NHK出版新書)
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 米中対決を「新冷戦」と捉える筆者は、この大攻防の深層を追求し、
『アジアの新皇帝』となった習近平の世界戦略とは何かに迫ろうとする。
 習近平の権力基盤の脆弱性についても、すこし触れているが、本書が特
筆しているのは、中国のトランプ政権への誤断が生じたのはファーストコ
ンタクトから矛盾、齟齬が生まれていたという見立てだ。

 貿易戦争は、いまのところ高関税の掛け合いで、中国が「最後までおつ
きあいする」(奉陪到底)と豪語したように、お互いに譲る気配はないよ
うに見える。が、中国がさきに悲鳴を挙げているのが実態で、先週の王岐
山発言にあるように「そろそろお互いの譲歩」を模索する段階を迎えてい
るかにも見える。

高関税など、トランプにとってはディールの一手段にすぎず、アメリカ
の狙いは知的財産権を中国に渡さないために、企業買収を阻止し、技術ス
パイを摘発し、留学生のヴィザを規制し始めたことによっても明瞭だ。
5Gに代表される次世代通信技術をファーウェイやZTEには絶対に渡さ
ないとする。

中国の最初の誤断は、それ以前の環境の変化があったからだ。

第一にトランプはTPPからの脱退を表明していたので、中国囲い込み
にもなりかねないTPPにアメリカが加盟しないことは中国に得策、だか
らヒラリー支援をやめてトランプに乗り換えた。

第二にトランプは南シナ海問題にほとんど言及せず、また人権問題には
関心が薄かったので、この男なら「はなせる」と誤信した。北朝鮮問題へ
の協力をする「努力をするふり」をすれば良いと。

第三にトランプは政治素人ゆえに、扱いやすい、ディールに乗ってくる
と安易な相手だと考えた。

第四にトランプは商人であることは計算とカネ、つまり中国はトランプ
をカネで操れると考えたのである。そこで中国はイヴァンカ夫妻に異常接
近を試みた。イヴァンカを招待し、彼女のブランドを中国全土で売った。
 
ついでアリババの馬雲をNYに飛ばし、大々的な投資を打ち上げた。

ところが、トランプは商人ではなかった。

最初の驚きはトランプが「中国は一つという外交原則には拘らない」と
表明したことで、これには中国が慌てた。南シナ海の自由航行作戦も復活
させ、ついで本格的に貿易不均衡への不満を爆発させるにいたる。

習近平訪中による米中新時代は、北朝鮮の核が目の前にぶら下がってい
たので、トランプは習近平に期待した。なにがしかの前進があるとトラン
プはフロリダ州での階段で、習近平に「百日の猶予」を与えたが、これは
脅しとは取らず、結局、中国は何もせず、むしろ米朝首脳会談への道を拓
いた。

米中の貿易不均衡について、中国が用意した「大風呂敷」は、米国
シェールガス開発への投資(837億ドル)、アラスカ州のガス開発(430億
ドル)、ボーイング300機を購入(370億ドル)、クアルコムから携帯電話
部品を購入(120億ドル)、大豆を1200万トン追加輸入する(50億ドル)
など、合計2535億ドルだとした(ボーイングなど例外を除き殆どは実現さ
れず、約束は自然発火的に反古となった)。

次にトランプが中国の躍進を許せば、アメリカが深刻なヘゲモニーの衰
退に繋がると懸念した。軍事力の大躍進ばかりか、経済的な脅威の一つ
が、中国の推進する「一帯一路」だった。

これは中国の唱える「六路」(鉄道、道路、水路、空路、管路(パイプ
ライン)、信路(通信網))戦略であり、これらのプロジェクトを通して
中国が世界にヘゲモニーを確立するとアメリカは見たのだ。

著者の近藤氏がみるところでは、「アメリカは中国との『貿易戦 争――技
術覇権戦争―軍事衝突』という角逐を、すでに一体化して考えてい る」
(244p)と捉え直している。

 中国通の著者、最新情報満載のうえに立った分析である。
        

2018年11月11日

◆あの「アラブの春」から7年

宮崎 正弘


平成30年(2018年)11月9日(金曜日)通巻第5884号  

あの「アラブの春」から7年が経過したが、いま「アラブの冬」の時代に突入
サウジアラビア、周辺国の援助継続不能。イエーメンとの戦費も無理に

ジャメル・カショギ殺害でサウジ王家は世界的な批判に晒されているが、
もっと切実な問題はサウジの財政破綻である。

サウジは潤沢なオイルマネーのおかげで、豊かな教育、福祉サービル、健
康保険も充実し、外国人労働者も高給が取れた。

「この余裕を再び回復できるには原油価格が1バーレル@87ドルとならな
ければ行けない」(『フォーリン・アフェアーズ』、2018年11月、12月
号、マルアン・ムアシェル氏の寄稿)。

状況が激変したのは2014年からの原油価格大暴落だった。

とくにヨルダン、エジプトへの支援が難しくなった。先月のイムラン・
カーン(パキスタン首相)のリヤド訪問でも60億ドルの財政支援を約束し
たと伝えられたが、本当に実行されたのか、どうか。予定していた「アラ
ムコ」の上場は不可能となり、資金をかき集める手だてをなくした。アブ
ドラ皇太子の指導力が陰った。

サウジがイエーメンとの戦争に費やしているのは毎月60億ドルから70億ド
ルにも達しており、最大で年間800億ドルを超えるカネが砂漠に消えている。

高価な武器と傭兵による。

このため国内の福祉、社会サービス、教育無償化などのプログラムの実行
ができなくなっている。国民の不満を逸らすために女性の自動車運転を認
めるなど小細工も講じているが社会全体の擾乱気配は深化している。

サウジの国内バラマキは年間300億ドル、クエートは国民各自に@3500ドル
を給付した。オマーンは道路掃除など公共事業に三万の雇用を無理矢理つ
くりだし、優秀な若者には奨学金の無料交付なども続けた。すべてが物理
的に継続不能となった。

中東全体で失業率は30%前後とされ、とくに産油国でないエジプトとヨル
ダンは、サウジ、クエート、UAE等からの支援で社会保障を維持してき
た。財政悪化状態はサウジとUEA、オマーンなど同じである。

産油国が周辺国を金銭的に支援するプログラムが継続可能という展望がない。

このためエジプトは120億ドルの償還が出来ずIMF管理となり、ヨルダ
ンではデモが発生し、クエートも社会擾乱の兆し、これらの国々へ出稼ぎ
にでていたフィリピン人が最近は大挙して帰国している。

あの「アラブの春」から七年を閲し、民主化どころか、状況は泥沼。原油
価格高騰の局面にはあるが、1バーレル@100ドル時代の到来は想定しにく
い。産油国のどこが最初に「第二のベネズエラ」となるか?

2018年11月10日

◆英国もファーウェイを排撃

宮崎 正弘


平成30年(2018年)11月8日(木曜日)通巻第5883号  

英国もファーウェイを排撃、豪はCK(香港和記)のパイプライン企業買
収に「NO」
大英連邦も、遅ればせ中国資本の浸透を警戒

ファーウェイ(華為技術)の製品は、米国トランプ政権によって米国市場
から締め出され、とくに公務員、軍人はファーウェイのスマホの使用を禁
止された。

英国にも、この動きが拡がり、英国政府は近く厳しい制限を発表するとさ
れる(サウスチャイナ・モーニングポスト、11月7日)。

豪も急激に反中姿勢を固めている。モリソン政権の財務長官ジョ・フライ
デンバーグは「買収の動きのあるCK和記のAPA集団の買収を許可しな
い。国家安全保障上からの判断である」とした。

具体的に何が問題かと言えば、1万5000キロのパイプラインを所有し、130
万家庭にガスを供給するAPA集団を、CK和記集団が10億ドルという市
場予測の3倍の値段を提示して買収しかけたことである。
何が問題か? ずばり中国の影だ。

CK和記集団とは旧名「ハッチソン・ワンポア」。かの香港財閥のボス李
嘉誠が牽引する長江実業と統合して、香港最大の企業集団の一つである。
2012年以来、長男のヴィックター李がCEOを努めるが、実際にこの長男
は決断が鈍く、影にいる李嘉誠がほぼ全てを決める。

豪政府の警戒は、李が中国のトップレベルの政治家と親しく、また長男は
人民政治協商会議のメンバーであることだ。つまり中国共産党の意をてい
していると考えられるからだ。

ちなみに李嘉誠実にはふたりの息子がおり、前述の長男ヴィクターは1992
年に誘拐され、10億香港ドルの身代金をギャング団に支払ったとされる。

次男のリチャード李は、兄より早くから実業界の乗り出し、通信ビジネス
に特化、一時は八重洲口の高層ビルを買収し、PCCWビルとして話題を
集めたこともある。

同社はイタリアで既に「イタリア・モバイル」に25億ドルを投じて、同
社筆頭株主になっている。この次男も北京市政治協商会議のメンバーである。

     
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【知道中国 1816回】        
 ――「支那人は不可解の謎題也」・・・徳富(41)
徳富蘇峰『支那漫遊記』(民友社 大正7年)

    ▽

日本が建設した山東鉄道を「支那横斷の一大幹線」として、「他日中央亞
細亞を經て、歐洲に達す」るようにすべきだ。「上海の對岸なる海門よ
り、甘肅の蘭州に達する、所謂海蘭線と、何處にてか接觸すべきは」当然
のことだ。

「我が當局者が、支那の生命線とも云ふ可き鐵道を、列強の分割」するが
ままに任せて「拱手傍觀」している姿は「切に遺憾と爲す」しかない。こ
のままでは、日本が得ている鉄道に関する既得権すら失いかねないではな
いか。徳富の義憤は募るばかりであった。

 ■「(85)亞歐の大聯絡」
 
誰もが満蒙を説き、長江流域を説く。満蒙も揚子江流域も日本にとっては
重要だが、やはり「獨逸人の山東省に著眼し」、「露人滿蒙に龍蟠し」、
「英人揚子江流域に虎踞し」た”先見性”に着目すべきだろう。

将来、「中部亞細亞を横斷し、亞歐を聯絡するの大鐵道は」、やはり「山
東より君府(コンスタンチノーブル)に達せざる可からず」。この「世界
的大經綸」に基づけばこそ、ドイツは早々と山東に食指を働かせたのである。

将来を構想するなら「地下の富を數へ」るべきだ。地下資源が将来の「世
界の運命に、重大なる關係を有する」ことは、もはや言うまでもない。
「世界の運命は、鑛脈を辿りて、運行しつゝある」のだから。

現在の我が当局のように「天惠地福を、空しく放抛して、之を顧みざる」
状況では、「如何に城禍西來の不幸を招くも、遂に如何とも」し難い。で
あればこそ、「支那に於ける新運命の開拓は、實に今日以後にある」とい
うのである。

■「(86 \)多大の希望」

「支那は懷舊弔古の老大國」でも「古代文明の標本を提供する、一の豐富
なる博物館」でもない。やはり「今日及將來に於て、世界の大舞臺に、其
れの役目を働く可き、偉大なる邦國として取扱はざる」をえない。たしか
に「一方より見れば、老幹朽腐するも、他方より見れば、新芽?々とし
て、舊株より發生しつゝある」ではないか。

たしかに多くの欠点を持つが、「支那人は東亞に於て、偉大なる人種」で
ある。だから我が国が「東亞の大局を料理せんとするには、支那人を除外
して、何事をも做す」ことはできない。「此の見地より」して、「日支の
親善と、提携とを望まずんばあらず」。

「兩國の識者にして、若し一たび興亞の大經綸に想到」するなら、双方が
「反目敵視」することはないだろう。

彼らは「老子、孔子の世界的大宗師を出した國民」であり、「管仲、唐太
宗の如き大政治家を出した國民」であり、「六經、四書、諸子、百家の思
想界大産物を出したる国民」であり、「萬里の長城を築き、江南より燕薊
に至る運河を開鑿したる世界的大工事を成就したる國民」である。ならば
今後、「空しく白人の雇奴たる」を唯々諾々と受け入れることはないだろう。

であればこそ、「日支親善の要訣は、何より先づ互いに亞細亞人たる自覺
あるのみ」ということになる。

――旅の折々の思いを綴った「遊支偶?」、支那と支那人を多角的に論じた
「(一)前遊と今遊」から最終の「(八六)多大の希望」までの「禹域鴻
爪?」。「遊支偶?」と「禹域鴻爪?」によって構成された『支那漫遊記』
を閉じることになる。

『支那漫遊記』は「日支親善の要訣は、何より先づ互いに亞細亞人たる自
覺あるのみ」と結ばれる。だが彼らに「亞細亞人たる自覺」はあるのか。
同じ「亞細亞」を思い描いていたのか。
「互いに亞細亞人」と思い込んでいたのは日本人だけだった・・・のでは。

2018年11月06日

◆フリーダムハウス 報告書

宮崎 正弘

平成30年(2018年)11月5日(月曜日)通巻第5877号   

 米NGO「フリーダムハウス」報告書が指摘
  中国の「デジタル・シルクロード」は監視の網を海外にも拡げた

11月2日、米政府系の「フリーダムハウス」による年次報告書『デジタル
専制政治の台頭』によれば、ビッグデータ、フェイクニュース、ネット上
のプライバシーの監視によって、民主主義が破壊される危機にさらされる
可能性があるとした。

同報告書はフェイスブックから5000万人の個人データが流失した事実にも
触れて、防御を強く呼びかけている。

ネット上に流れたフェイクニュースの影響を受けた選挙では、バングラデ
シュ、スリランカ、印度などで暴動が発生した。米国の大統領選挙でもロ
シア、中国のハッカー攻撃と同時にフェイクニュースが何回も流され、選
挙への介入が目立った。

またエジプト、ケニヤ、ナイジェリア、フィリピンなどではデジタル社会
の影響を受けて、民主主義の劣化が見られるとした。

同報告者は中国の新彊ウィグル自治区における住民弾圧、とりわけ百万も
の人々を収容所に入れての再教育を批判しつつ、「この収容されたウィグ
ル族の人々はネットによる通信が傍受されたことによる」と特筆している。

中国のシルクロード構想とは、相手国に光ファイバーや通信機材、設備を
輸出してもいるが、多くで光ファイバー網の建設を同時並行している。
この結果、外国のネット通信の防聴もが可能となっており、まさに「デジ
タル・シルクロード」だと批判している。

      
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【知道中国 1814回】               
――「支那人は不可解の謎題也」・・・徳富(39)
徳富蘇峰『支那漫遊記』(民友社 大正7年)

     ▽

「善言者は、善行者にあらずとは」、「支那人一般に適用す可き名言
也」。だが、彼らが「善く行はれざる」からといって、支那古典に満ちて
いる善言が「善言たるの價値を損」するわけはない。

「白皙人種と競爭するは、單に武力の一點張り、若しくは生産の一方面の
みに、限る可きにあらず」。やはり「此の學問の中樞、若くは中樞の一た
る、支那古典の研究」こそが肝要である。「日支兩國を、精神的に提携せ
しむる」ことからも、「蓋し支那學問の興隆は、興亞の一大長策也」。

 ■「(78)空論國」

議論の際に「動もすれば熱拳を揮」う日本人に対し、「支那人は戰爭中に
も、尚ほ議論を事とする」。「要するに支那は、何よりも先づ言論の國」
であり「文字の國」である。「露骨に云はヾ、空論國」ということになる。

「文字言論の國柄として、支那人の辭令に巧妙なるは、先天的と云ふも
可」であり、同時に「饒舌なるは、亦是れ一種國民的性格」ともいえる。
そこで「言論を以て能事とする代議政治は、支那に取りては、寧ろ適當の
政治」といえるだろう。

「支那が言論國なればとて、我が日本も亦た、之に倣はねばならぬ必要」
はない。「俗吏政治」は問題だが、さりとて「巧辯家政治」にも難があ
る。欧米諸国が「既に言論の厄運に遭ふ」ていることを考えれば、「東亞
も亦た、果して同樣の厄運を迎へざる」を得ないようだ。

■「(79)空論亡國」

日本では「支那的空論の流行」が見られ、残念だが「我が日本は、追々と
空論繁昌の世の中となりつつあり」。「東亞の空論國は、支那のみにて既
に澤山」であるというのに。

じつは「議論の効用は、實行にあ」るわけで、溺れる人を前に、溺れた理
由、救助は必要か、救助された後に褒賞はあるかなどと「御託を並べんよ
りも。寧ろ直ちに手を出して、之を援くるを先務と」すべきだろう。やは
り「日本は專ら實行の方面に、其力を竭」すべきだ。なぜなら「支那人、
印度人、何れも言多くして、實少き」ゆえに、「今日其の國家の衰微若く
は亡滅を招」いているからである。

「我國爲政者」が「他國爲政者の饒舌」に倣うようになっては、日本とい
う「我が國家の前途や、實に憂ふ可きの至り」というものだ。

■「(80)豐富なる?史」

「支那人には、新奇の物なし」。なんであれ「吾國に固有せり」と自慢す
る。それというのも「支那は舊國也、大國也。舊且つ大にして最も百科字
彙的國」だから、ないものはないのが当たり前ともいえる。たとえば「即
今歐米諸國の問題たる、『國民協盟(リーグ、オブ、ネション)』の如き
も、支那には春秋時代に、既に幾許か之を試みたる者ありし也」。

「吾人(徳富)は支那には、殆んど總ての事物存し、然も之れと同時に、
總ての事物、殆んど皆な其の存在の意義を失墜しつゝあるを見る也」。か
くして「此の如き豐富なる?史を有するは、現在及び將來の支那人に取り
て、幸乎、不幸乎、未だ猝かに斷言し易からざる也」と。

――徳富は「未だ猝かに斷言し易からざる也」とするが、やはり「此の如き
豐富なる?史」は不幸というものだろう。なぜなら、彼らが胸を張る「中
華民族の偉大さ」を支える「總ての事物、殆んど皆な其の存在の意義を失
墜しつゝある」からである。

2018年11月05日

◆ボルソナロ新大統領が中国批判

宮崎 正弘


平成30年(2018年)11月4日(日曜日)通巻第5876号 

 「ブラジルのトランプ」=ボルソナロ新大統領が中国批判
  われわれは「侵略者から国を護る」と当選後の第一声

10月28日のブラジル大統領選挙は、「ブラジルのトランプ」と言わ れた
ナショナリストのボルソナロが当選し、喜びの声はホワイトハウスか
ら、悲しみと落胆は北京から起きた。

選挙中、ボルソナロは「MAKE BRAZIL GREAT 
AGAIN」とまるで、トランプ風の標語と掲げ、「汚職追放、国有企業
削減」ばかりか、「台湾との関係強化」、「イスラエル大使館のエルサレ
ム移転」なども公約としていた。

11月1日、ボルソナロ次期大統領は初めての記者会見に応じて、「わ れ
われは侵略者から国を守る。基幹産業を外国には渡さない」と発言し、
間接的に中国を痛罵した。かと言って具体的に中国への貿易制裁や、規制
強化などのプランを発表したわけではない。

ブラジルは人口が2億900万人(世界第5位)という大国である。

国民ひとりあたりのGDPは9900ドル、日系移民が190万。国民の 65%が
カソリック、公用語はポルトガル語である。

日本との関係は歴史も長く、深い。フィリピンから帰還した小野田少尉も
ブラジルに渡って牧場を経営したし、近年は日本への出稼ぎが多く、浜松
あたりでは「ブラジル村」ができたほどだ。

安倍首相は五輪委員会で2016年にブラジルを訪問している(このとき 東
京五輪が決定した)。ボルソナロ大統領当選直後に祝電を送った。

さて、ボルソナロ新政権は反中路線を掲げて、基幹産業の鉄鉱石や農作
物への中国資本への不満を述べたが、現実問題としてブラジルが中国を排
斥することは考えにくい。

貿易相手国として、すでに中国が米国を抜いてダントツの1位であり、双
方の貿易額は750億ドルに達している。

そのうえ近年、中国資本は通信、自動車から金融にも及んでおり、27 あ
る州のうち、北部では70%の融資が中国工商銀行によって為されている。
 北京はブラジル新政権の出方を固唾を呑んで待っているという構図である。
    
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(速報)
 ロシア金保有、初の2000トン突破
  保有米国債は140億ドルに激減
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世界の国別の金保有や産金国の生産状況、価格推移などを統括する
WGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)が11月1日に発表した直近
の統計がある。


ロシアの金保有は年初来93・2トン増やし、全体で2000トン突破 の新記
録となった。これは世界の中央銀行が保有する金全体の17%を占 める。

また金価格を、当日のレート(1214・8ドル@オンス)で計算する と、時
価になおして780億ドルに達する。

反面でロシアは米国債を市場で売却し、その残高は140億ドルに激減さ
せていた。

また中国から大量の金を買い付けたほか、一部の国の貿易決済を金で受け
取ったことが大きな要因と見られる。
      
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  11月25日は憂国忌です!
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三島由紀夫氏追悼 第48回 追悼の夕べ
「憂国忌」のご案内
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前略 貴台におかれましてはご健勝のことと存じ上げます。

ことしもまた憂国忌の季節となりました。三島先生の没後48年にあた
り、政界、言論界でも「最後の檄文」の主張にもある憲法改正の方向性
が出てきました。

また本年は明治150年にあたり、背景に明治の残映から始まる三島先 生の
傑作『春の雪』(『豊饒の海』第1巻)を中心としたシンポジウムな ど
を執り行います。万障お繰り合わせの上、ご臨席いただきますれば幸甚
です。 実施要綱は下記の通りです。

           記

 日時   11月25日(日曜) 午後2時(午後1時開場)
 場所   星陵会館大ホール(千代田区永田町2−16)
 資料代  お一人 2千円 

<プログラム>          (敬称 略、順不同) 

                   総合司会     菅谷誠一郎

午後2時   開会の挨拶     三島研究会代表幹事  玉川博己

      『春の雪』名場面の朗読           村松えり

      『天人五衰』最後の場面朗読         村松英子
午後2時半 シンポジウム  「『春の雪』をめぐって」
                    小川榮太郎、富岡幸一郎、松
本徹 
              司会  上島嘉郎(『正論』前編 集長)
    
  追悼挨拶「憲法改正の時が来た」   中西哲(参議院議員) 
午後4時15分    閉会の辞。 全員で「海ゆかば」斉唱    
 <憂国忌代表発起人> 入江隆則、桶谷秀昭、竹本忠雄、富岡幸一郎、
中村彰彦
西尾幹二、細江英公、松本徹、村松英子
  (なおプログラムは予告無く変更になることがあります。ご了承下さ
い) 

2018年11月03日

◆中国は身分不相応な立ち位置

宮崎 正弘


平成30年(2018年)10月31日(水曜日)通巻第5873号 

 「中国は身分不相応な立ち位置を求めるべきではない」
   トウ小平の長男(トウ僕方)が中国身体障害者大会で間接批判

トウ小平の長男(74歳)は文革中の1968年に、ビルの屋上から突き落とさ
れて身体障害者となり、爾来、車いすの生活。中国全国身体障害者組織の
会長として、社会活動に従事してきた。

さきに開催された全国大会で議長に再選され、挨拶に立ったトウ僕方は、
「中国は身分不相応な立ち位置を求めるべきではない」と発言したことが
分かった。これは間接的な習近平批判ではないのか、と。

「中国はもっと広い立ち位置を求め、野心を剥き出しにするような行為を
続けるべきではない。40年前に父が切り開いた路線は、そういう方向には
なかった」。つまり「養光韜晦」(能ある鷹は爪を隠す)というトウ小平
の遺言を重視しろ、と言っているのである。

僕方はまたこうも言った。

「たしかに国際情勢は激変しているが、われわれの求めるものは平和と発
展であって、世界のほかの国々との調和が重要である。それが本当の
『ウィンウィン戦略』である。身分不相応な目標を掲げるのではなく、中
国の国内に関して、もっと議論を為すべきではないか」

1970年代後半、文革が終わり中国は制度改革に踏み切って、民主化のうね
りが目立つ時期があった。それの動きは89年の天安門事件で押しつぶさ
れ、民主学生を弾圧したのもトウ小平だった。

このスピーチは9月16日に北京で開催された身障者全国大会で行われた
が、演説記録は非公開だった。『サウスチャイナ・モーニングポスト』
(2018年11030日)が別のルートから入手し、発表に踏み切った。
     
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1812回】             
――「支那人は不可解の謎題也」・・・徳富(37)
徳富蘇峰『支那漫遊記』(民友社 大正7年)

■「(72)何故に支那文明の同化力は宏大なる乎」

「蓋し支那人の外物を容るゝや、必ず之を支那化せずんば止まず」。「支
那文明の同化力の、其包容力に比して、更に一層宏大な」り。じつは「支
那の文明は、亞細亞の一大平原たる、殆んど一世界とも云ひ得可き地域に
發生し、四圍より、各種の要素を會湊し、之を凝結し、之を結晶したる者
なれば」こそ、「同化作用の無敵なる所以」であり、「如何なる外來の勢
力も、之を其の根底より破壞するは、到底不可能」である。

そこで考えられるのが「支那文明の敵ありとせば」、それは外来の文明で
はなく「其の久遠の?史」にある。「年代と與に、其の消耗する量の多き
に比して、新たに補充する量の少なき結果」、当然のように「文明の新
鋭、活?なる生氣を、減殺」することになる。

――ならば放っておけば、遅かれ早かれ自壊の道を進むということか。

■「(73)日支何れか同化力強き乎」

両国人を「公平に觀察すれば、支那人が日本化するよりも、日本人が支那
化する方、多かるべく推定さらるゝ也」。それというのも、「支那文明
は、其の物質上の愉快、及び便宜に於て、何となく人を引き附け、吸ひ込
むが如き力ある」からだ。

「之(支那文明)に接觸する久し」ければ、「何人も自から支那化し、支
那人化するを禁ずる能はざる可し」。「支那文明は、無意識の裡に、他を
催眠術に誘ふ底の魔力を有す」。かりに「支那が武力的に、不能者たるが
爲めに、總ての點に不能者視」したなら、それは「實に大なる油斷」であ
る。彼らは武力的な短所を補うだけの長所を、「他の方面に有する」こと
を忘れてはならない。

「吾人(徳富)は日支親善を、中心より希望す」るが、彼らの同化力には
「深甚の考慮を廻らさゞるを得ない」。彼らの「同化力や、今日と雖も決
して侮る可らざる也」。

■「(74)二重人格」

「支那人は僞善者」ではない。「心に思はぬ事を、口に語り、表裏二樣の
使ひ分けを、自ら承知の上にて、之を行ふ」という「先天的の二重人格」
の持ち主だ。だから「彼等は僞善を行ひつゝ、自ら僞善たる事に氣附か」
ない。気づかないのだから「之を僞善と云ふは、餘りに支那人を買被りた
る、判斷を云はざるを得」ない。

「表裏二樣の使ひ分けは、支那數千年を一貫したる、一種の國風、民俗」
というものだ。彼らは「理想を立てゝ、之に嚮往する」のではなく、「理
想は理想とし、實際は實際として、截然たる區別を定め」ている。だから
彼らの「實際を知らんと欲せば、寧ろ理想の反對を見る」がいいのだ。

「實際が理想の如くならざればとて、毫も疚しき所」はない。だからこそ
「彼等が煩悶なく、懊惱なきも、亦當然也」。そこにこそ「支那人が比較
的、樂天人種たる所以」がある。

――無原則という大原則に敵う術があるわけがない。ならば面子とは理想な
のか、実際なのか。彼らが掲げる理想のなかに実際があると仮定するな
ら、「實際を知らんと欲せば、寧ろ理想の反對を見る」のではなく、理想
の3,4割を実際と瀬踏みしてみるのがいいのではなかろうか。「煩悶な
く、懊惱なき」ゆえに無反省・・・これを無敵というに違いない。

■「(75)理想と實際」

「支那に於ては、一切の法度、如何に精美に出て來りとするも、概ね徒法
たるに過ぎず。然も徒法たりとて輕視す可からざるは、猶ほ廢道たりと
て、道として保存せらるゝが如し」。

なにせ「世界に支那程、空論國はなき也」。だから「議論の爲めに議論」
であり、「實行と議論とは、全く別物視」している。
そこに「彼等の議論が無責任」の背景がある。《QED》

2018年11月02日

◆中国の身分不相応な立ち位置

宮崎 正弘

平成30年(2018年)10月31日(水曜日)通巻第5873号 

 「中国は身分不相応な立ち位置を求めるべきではない」
   トウ小平の長男(トウ僕方)が中国身体障害者大会で間接批判

トウ小平の長男(74歳)は文革中の1968年に、ビルの屋上から突き落とさ
れて身体障害者となり、爾来、車いすの生活。中国全国身体障害者組織の
会長として、社会活動に従事してきた。

 さきに開催された全国大会で議長に再選され、挨拶に立ったトウ僕方
は、「中国は身分不相応な立ち位置を求めるべきではない」と発言したこ
とが分かった。これは間接的な習近平批判ではないのか、と。

「中国はもっと広い立ち位置を求め、野心を剥き出しにするような行為を
続けるべきではない。四十年前に父が切り開いた路線は、そういう方向に
はなかった」。つまり「養光韜晦」(能ある鷹は爪を隠す)というトウ小
平の遺言を重視しろ、と言っているのである。

僕方はまたこうも言った。

「たしかに国際情勢は激変しているが、われわれの求めるものは平和と発
展であって、世界のほかの国々との調和が重要である。それが本当の
『ウィンウィン戦略』である。身分不相応な目標を掲げるのではなく、中
国の国内に関して、もっと議論を為すべきではないか」

1970年代後半、文革が終わり中国は制度改革に踏み切って、民主化のうね
りが目立つ時期があった。それの動きは89年の天安門事件で押しつぶさ
れ、民主学生を弾圧したのもトウ小平だった。

このスピーチは9月16日に北京で開催された身障者全国大会で行われた
が、演説記録は非公開だった。『サウスチャイナ・モーニングポスト』
(2018年10月30日)が別のルートから入手し、発表に踏み切った。
     
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1812回】             
――「支那人は不可解の謎題也」・・・徳富(37)
徳富蘇峰『支那漫遊記』(民友社 大正7年)

■「(72)何故に支那文明の同化力は宏大なる乎」

「蓋し支那人の外物を容るゝや、必ず之を支那化せずんば止まず」。「支
那文明の同化力の、其包容力に比して、更に一層宏大な」り。じつは「支
那の文明は、亞細亞の一大平原たる、殆んど一世界とも云ひ得可き地域に
發生し、四圍より、各種の要素を會湊し、之を凝結し、之を結晶したる者
なれば」こそ、「同化作用の無敵なる所以」であり、「如何なる外來の勢
力も、之を其の根底より破壞するは、到底不可能」である。

そこで考えられるのが「支那文明の敵ありとせば」、それは外来の文明で
はなく「其の久遠の?史」にある。「年代と與に、其の消耗する量の多き
に比して、新たに補充する量の少なき結果」、当然のように「文明の新
鋭、活?なる生氣を、減殺」することになる。

――ならば放っておけば、遅かれ早かれ自壊の道を進むということか。

■「(73)日支何れか同化力強き乎」

両国人を「公平に觀察すれば、支那人が日本化するよりも、日本人が支那
化する方、多かるべく推定さらるゝ也」。それというのも、「支那文明
は、其の物質上の愉快、及び便宜に於て、何となく人を引き附け、吸ひ込
むが如き力ある」からだ。

「之(支那文明)に接觸する久し」ければ、「何人も自から支那化し、支
那人化するを禁ずる能はざる可し」。「支那文明は、無意識の裡に、他を
催眠術に誘ふ底の魔力を有す」。かりに「支那が武力的に、不能者たるが
爲めに、總ての點に不能者視」したなら、それは「實に大なる油斷」であ
る。彼らは武力的な短所を補うだけの長所を、「他の方面に有する」こと
を忘れてはならない。

「吾人(徳富)は日支親善を、中心より希望す」るが、彼らの同化力には
「深甚の考慮を廻らさゞるを得ない」。彼らの「同化力や、今日と雖も決
して侮る可らざる也」。

■「(74)二重人格」

「支那人は僞善者」ではない。「心に思はぬ事を、口に語り、表裏二樣の
使ひ分けを、自ら承知の上にて、之を行ふ」という「先天的の二重人格」
の持ち主だ。だから「彼等は僞善を行ひつゝ、自ら僞善たる事に氣附か」
ない。気づかないのだから「之を僞善と云ふは、餘りに支那人を買被りた
る、判斷を云はざるを得」ない。

 「表裏二樣の使ひ分けは、支那數千年を一貫したる、一種の國風、民
俗」というものだ。彼らは「理想を立てゝ、之に嚮往する」のではなく、
「理想は理想とし、實際は實際として、截然たる區別を定め」ている。だ
から彼らの「實際を知らんと欲せば、寧ろ理想の反對を見る」がいいのだ。

 「實際が理想の如くならざればとて、毫も疚しき所」はない。だからこ
そ「彼等が煩悶なく、懊惱なきも、亦當然也」。そこにこそ「支那人が比
較的、樂天人種たる所以」がある。

 ――無原則という大原則に敵う術があるわけがない。ならば面子とは理想
なのか、実際なのか。彼らが掲げる理想のなかに実際があると仮定するな
ら、「實際を知らんと欲せば、寧ろ理想の反對を見る」のではなく、理想
の3,4割を実際と瀬踏みしてみるのがいいのではなかろうか。「煩悶な
く、懊惱なき」ゆえに無反省・・・これを無敵というに違いない。

■「(75)理想と實際」

「支那に於ては、一切の法度、如何に精美に出て來りとするも、概ね徒法
たるに過ぎず。然も徒法たりとて輕視す可からざるは、猶ほ廢道たりと
て、道として保存せらるゝが如し」。

 なにせ「世界に支那程、空論國はなき也」。だから「議論の爲めに議
論」であり、「實行と議論とは、全く別物視」している。
そこに「彼等の議論が無責任」の背景がある。
《QED》

2018年10月31日

◆キリスト教会を破壊し、

宮崎 正弘


平成30年(2018年)10月29日(月曜日)通巻第5871号 

「キリスト教会を破壊し、聖書を焚書し、信徒を弾圧している」(ペンス
演説)
「バチカンは中国内のキリスト教徒を絶滅させるつもりなのか」(香港の
枢機卿)

香港のカソリック教会枢機卿であるジョセフ・ゼンは「バチカンは中国国
内1200万人のキリスト教信徒を絶滅させようとしている」として、激しく
バチカンのフランシスコ法王を批判した。

「もし私が漫画家なら、ローマ法王が、あろうことか習近平にひざまずい
て『どうか私をローマ法王と認定して下さい』と懇請している構図のもの
を描くだろう」とフランシスコ法王の異常な遣り方を非難する。カソリッ
クの枢機卿が法王を批判したのである。

たしかに現在のローマ法王フランシスコはイエズス会出身の異端児、その
うえアルゼンチン出身でイタリア留学組である。

南米はカソリックの王国であり、プロテスタントは少なく信徒の大市場ゆ
えに選ばれたという説も流れたが、法王に着座以来、キューバを訪問した
り、正教会と和解したり、イスラム教とも対話を推進するなど、型破りの
行動をとってきた。

特筆すべきはアルバニア訪問だった。この無神論の国へ赴いてマザー・テ
レサを追悼するミサを行ったのだが、中国のキリスト教徒を「マーケッ
ト」と見立て、9月には中国共産党と暫定合意を結んでいることに直截に
繋がる。つまり中国共産党が任命する地区の司教をバチカンが追認すると
いう破戒的な合意である。

台湾は、すぐさまカソリック司教をバチカンに派遣したが、ローマ法王は
すげなく台湾への招待を断り、外交観測筋は年内にもバチカンが台湾と断
交し、中国と国交を開くかも知れないと予測する。

中国国内のキリスト教徒は推定6000万人、カソリックはこのうちの1000万
人から1200万と見積もられているが、中国共産党御用達のキリスト教会に
背を向け、大半の信者は地下教会に通う。

 英文政権発足以来、台湾と断交した国々は五ヶ国。ところが米国は最近
になって台湾と断交したドミニカ、パナマ、エルサルバドルから大使を召
還し、一方で台湾への梃子入れが顕著である。

駐台北の米国大使館(米台交流協会)の警護は海兵隊が行い、トランプ政
権は「台湾旅行法」の制定以来、台湾防衛を鮮明にして武器供与を加速化
している。


▼バチカンへ間接的な警告を為したトランプ政権

これは米国のバチカンへの無言の圧力である。

そのうえ、10月4日のペンス副大統領の宣戦布告的な演説のなかに「中国
はキリスト教会を破壊し、聖書を焚書し、信徒を激しく弾圧している」と
の文言がある。

キリスト教徒の多い米国では、これまでウィグル族弾圧にそれほどの関心
がなかったが、キリスト教徒への弾圧を聞いて、中国への敵愾心はさらに
高まっている。「反中」は全米のコンセンスなのである。

香港の枢機卿による激しいローマ法王批判は、大いに注目しておく必要が
ある。

      ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆書評 しょひょう 
BOOKREVIEW 書評BOOKREVI
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痛快・豪快に戦後日本の思想的衰弱、文春の左傾化、知的劣化をぶった斬る
マハティール首相は激しく迫った。「日本は明確な政治的意思を示せ」

  ♪
渡部昇一 v 西尾幹二『対話 日本および日本人の課題』(ビジネス社)
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この本は言論界の二大巨匠による白熱討論の記録を、過去の『諸君』、
『WILL』、そして「桜チャンネルの番組」(『大道無門』)における
収録記録などを新しく編集し直したもので、文字通りの対話扁である。

討議した話題はと言えば、自虐史観、自由とは何か、歴史教科書問題、戦
後補償などという奇妙な政治課題、朝日新聞と外務省批判、人権など多岐
にわたり、それぞれが、対談当時の時局を踏まえながらも、本質的な課題
をするどく追求している。

目新しいテーマは文藝春秋の左傾化である。

評者(宮崎)も、常々「文春の3バカ」として立花隆、半藤一利、保阪正
康の3氏を俎上に乗せて批判してきたが、文春内では、この3人が「ビン
の蓋」というそうな。えっ?何のこと、と疑えば文春を右傾化させない防
波堤だという意味だとか。半藤などという極左がまともな議論が出来ると
でも思っているのだろうか。

半藤よりもっと極左の論を書き散らす立花隆について西尾氏は「かつて
ニューヨーク同時多発テロが起こったとき、立花は日本の戦時中の神風特
攻隊をアフガンテロと同一視し、ハッシッシ(麻薬)をかがされて若者が
死地に追いやられた点では同じなんだという意味のことを得々と語ってい
ました(『文藝春秋』2001年10月緊急増刊号)。条件も情勢もまったく違
う。こういう物書きの偽物性が見通せないのは文春首脳部の知性が衰弱し
ている証拠です」と批判している(252p)。

文藝春秋の左傾化という文脈の中で、「朝日が慰安婦虚偽報道以来、いま
の『モリカケ問題』を含め情けないほど衰弱していったのは、野党らしく
ない薄汚い新聞」に変わり果て、文春はどんどんその朝日に吸い込まれる
かたちで、たぶん似たようなものになってくる」と嘆く。

評者が朝日新聞を購読しなくなって半世紀、月刊文春もこの10年以上、読
んだことがない。なぜって、読む価値を見いだせないからである。

戦後補償について渡部昇一氏は「戦後の保障は必ず講和条約で締結されて
いる」のであって、戦後補償という「とんちきな話」が半世紀後に生じた
のは社会党があったからだと断言する。

この発言をうけて西尾氏は「中国の圧力を日に日に感じているASEAN
では、米国の軍事力がアジアで後退しているという事情もあって、日本に
ある程度の役割を担って貰わなければならないという意識が日増しに高
まっている。マハティール首相の発言にみられる『いまさら謝罪だ、補償
だということをわれわれは求めていない、それよりも日本の決然たる政治
的意思を明らかにして欲しい』というあの意識です。こういう思惑の違い
ははっきり出てきている。結局、戦後補償がどうのこうのというのは日本
の国内問題だということですね」(104−105p)

活字を通しただけでも、2人の熱論が目に浮かんだ。

2018年10月30日

◆れっ、こんなことありか?

宮崎 正弘


平成30年(2018年)10月28日(日曜日)通巻第5870号 

 「れっ、こんなことありか?」。コロンボの政変
   ラジャパクサ前大統領が、スリランカ首相に電撃就任

スリランカで珍型の政変が起きた。

2018年10月27日、シリナセ大統領は親米、親インド路線の有力政治家とし
て知られるウィックラマシンハ首相を突如更迭し、前の大統領で親中派と
して悪名高いラジャパクサを、首相に任命した。

そのうえ、そそくさと就任儀式を執り行った。この模様はテレビ中継さ
れ、スリランカ国民ばかりか、インド政界に衝撃をもたらした。

ラジャパクサ前大統領といえば、スリランカ南方のハンバントタ港を中国
に売り渡した張本人である。

中国は99年の租借権を手にいれ、港湾の近代化、工業団地、免税倉庫など
を建設中で、付近の飛行場もラジャパクサ空港と命名された。後者の飛行
場は閑古鳥、ドバイ、アブダビからの定期便も客数がすくなくて欠航が続く。

インドならびに西側の軍事専門家は、「中国はハンバントラを軍港にする
のだ」と分析した。ラジャパクサ前大統領は、言ってみれば、「腐敗の象
徴」であり、彼を批判して現在のセリナセが大統領に当選したのではな
かったのか。

つまり2015年のスリランカ大統領選挙は「借金の罠」に落ちたラジャパク
サ前大統領の汚職体質を猛烈に抗議するキャンペーンが基軸となった選挙
戦だった。インドが背後で野党を支援したといわれる。

ラジャパクサ前大統領は、一方で10年にわたったタミルとの内戦を終結さ
せたが、その強硬な武力発動に対して欧米から非難の声があがった。落選
後、しばらく沈黙してきたが、周囲に押され政界復帰を狙っていた。

とくにラジャパクサ前大統領にとって、インドとの関連が最重要であり、
過去三ヶ月、頻繁にニューデリーに出かけてインド政界へのロビィイング
を展開してきたという(『ザ・タイムズ・オブ・インディア』、10月28日)

この政変劇は、シリセナ大統領をささえる与党が連立政権であり、統一自
由人民連合党が、とつじょ連立から離脱したために、議席のバランスが崩
れておきた。ラジャパクサ前大統領派の議会工作による。

しかし、「議会が承認するまでわたしは首相の座にある」として、ウィッ
クラマシンハ首相は、27日以来、首相官邸に立て篭もり、ラジャパクサ
前大統領の首相就任に抗議している。スリランカ国会は11月5日に開会さ
れる。

おりしも、28日、インドのモディ首相が来日する。
      
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いま戦わなければ中共の軍門にくだり、自由世界の人々がシナの奴隷に
  トランプは米中貿易戦争という「大英断」を下したのだ

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ケント・ギルバート『「パクリ国家」中国に米・日で鉄槌を!』(悟空出版)
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いま店頭に並ぶ『NEWSWEEK』日本語版(2018年10月30日号)は、
なんと「ケント・ギルバート現象」特集である。

なぜ「ケント本」が書店にうず高く積まれベストセラーを続けるのかの秘
訣を探ろうとし、同誌の結論は、とどのつまり白人のアメリカ人が、日本
の保守論客になりかわって左翼リベラルをぶっ叩いていることが小気味良
いので、読書人も釣られて買うのだという底の浅い分析である。

そんなことよりケントさんは、日本人が露骨に批判しないところを、まっ
すぐに批判するというポイントを見逃してはならない。そのうえ、言い分
はあくまでも論理的であり、さすがに弁護士だけあって、日本の左翼特有
の感情的な批判ではなく、論拠を明示した論の組み立て方に、注意するべ
きではないかというのが評者の感想である。

それはそれとして、アメリカ人が、なぜ中国に怒りを表明しているのか。
日本はあれほど中国に苛められ、莫迦にされ、顔に泥を塗られ、利用され
るだけ利用され、技術もカネも盗まれても、中国を非難しない。

そればかりか、安倍首相訪中でも「競合から協調へ」などと唐変木な言辞
を吐いて、中国の狙う日米分断に策略に引っかかろうとしている。エド
ワード・ルトワックは、米国は対中認識では与野党、右翼・左翼、メディ
アを問わず「反中というコンセンサス」があって、中国を潰すという戦略
で結束しているという(今月号の「HANADA」と「WILL」を参照)

ケント・ギルバート氏は、この背景を詳述してはいないが、米中貿易戦争
はトランプ大統領がしかけた「大英断」(76p)という

「勝てる間に勝つことが重要」と判断したトランプは、中国は対面を重視
するという弱点があるため、「中共は、負ける戦争では、できるだけ権威
が傷つかない形で早めにダメージ・コントロールしようと考えます。そこ
がアメリカの狙いどころであり、オールマイティーなカードにもなる」
これによりアメリカは北京から多くの譲歩を獲得できると説く。

その上で、ケントさんは米中貿易戦争を批判している人に問いたいと反論
する。

「現在ですら貿易ルールを守らない中共が、今後さらに経済成長した結
果、誰も逆らえない技術力や軍事力、政治力を手にした場合、自由貿易や
WTO体制を破壊し、世界大戦を脅し文句に、もっと傍若無人に振る舞う
のは、火を見るよりも明らか」

「私たちは、肥大化した中共の下で、彼らの言いなりになって暮らすこと
を拒否したい」。

それゆえに戦いは早いほうがよく、「いま戦うしかない」という結論が導
かれる。

ちょっと日本人評論家が書かないような語彙(たとえば「大英断」とか
「中共」など)、その力強き言辞に感心しながら読み終えた。

        
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1810回】              
――「支那人は不可解の謎題也」・・・徳富(35)
徳富蘇峰『支那漫遊記』(民友社 大正7年)

                ▽

「支那人をして、斯くの如く思惟せしむる」ために、「只だ、興亞の一天
張りを主要とする、大旗幟の下に、日支協同の一大新聞を、發行」させる
べきだ。そこで問題になるのが人材と資金だが、いずれ「英、米、獨逸其
他の國人」は必ず新聞創刊に踏み出すはずだ。その時になって「如何に
七?八到するも時機既に晩しと云はざるを得ず」。であればこそ、日本人
は躊躇せずに一日も早く新聞創刊に踏み切れ。


■「(65)道?の天下」

「儒教は、治者階級少數者に?にして、然もそれさへ實際は覺束なく、唯
だ看板に過ぎず。佛教も寧ろ、曾て上流社會の一部に行はれる迄」であ
り、「強ひて國民的宗教」をあげようとするなら「道?に若くはなかる可
し」。「未來の安樂を豫約する佛?よりも、現在の福利を授與する道?が
支那の民性に適恰す」る。

道教と国民性の関係を考えれば、「道?支那人を作らず、支那人道?を
作」るというべきだ。いわば「支那人ありての道?にして、道?ありての
支那人」ではない。「道教其物」こそ「支那國民性の活ける縮圖」なのだ。

■「(66)回教徒」

「若し支那に於て、眞に宗?と云ふ可きものを求めば、恐らくは唯回?あ
らんのみ」。それというのも形式にも虚儀に流れない回教だけが「聊か活
ける信仰と、活ける力を有」しているからだ。

「回教とは、新疆より北滿に及び、寨外より南海に至る迄、殆んど一種の
秘密結社たるの風あり」て、彼らは異郷にあっても「必ず回?徒の家に宿
す」。彼らの「分布の地域は、支那の領土に普」く、「彼等が?徒として
の氣脈相接し、聲息相通じつゝある團結は、蓋し亦た一種の勢力」という
ものだ。

なぜ回教徒が全土に住んでいるのか。それは「支那は、世界のあらゆる物
の會湊所也、即ち溜場」だからだ。宗教をみても「佛?あり、道?あり、
拝火?あり。猶太?も、今尚ほ若干開封府に存し、景?に至りては、唐代
に於ける盛況」が伝えられている。

少数派である彼らは「宗門の戒律を守」ることで、自らを守る。であれば
こそ「少なくとも支那に於ける、他の宗?に比して、其の活力の若干を保
持しつゝあるは」否定できない。

■「(67)日本の?史と支那の?史」

「日本の歴史は、支那に比すれば、稀薄にして、其の奥行き深からず」。
だから「如何に贔屓目に見るも、支那の?史に於て、太陽中天の時は、日
本の?史に於ては、僅かに東方に曙光を見たるならむ」。だが「唯だ日本
が支那に對してのみならず、世界に向て誇り得可きは、我が萬世一系の皇
室あるのみ」。「此の一事に於ては。空前絶後、世界無比」といっても過
言ではないが、「帝國其物の?史は、質に於ても、量に於ても、到底支那
の敵にあらず」。

――さて蘇峰山人の説かれる歴史の「質」が何を指し、「量」は何を指すのか。

■「(68)一大不思議」

「吾人(徳富)が不思議とするは、支那史の久遠なるにあらずして、其の
久遠なる繼續にあり」。「或る意味に於ては、支那の保全は支那其物の爲
めのみならず、世界に於ける活ける最舊國の標本として、是非必要」だろう。

たしかに「老大國」であり「老朽」ではある。「舊國民として多くの缺點
を有する」。「に拘らず、尚ほ若干の活力を有するを、驚嘆」しないわけ
にはいかない。