2020年01月28日

◆累積赤字が拡大しているのに

宮崎 正弘

 
令和弐年(2020)1月22日(水曜日)通巻6348号   

中国新幹線、累積赤字が拡大しているのに、まだ新線を強気建設
  GDP拡大路線のツケが表面化しているゾ

 2008年北京五輪直前に、中国新幹線第一号「北京─天津」間が開通した。爾来僅か12年、全国に網の目のように拡大された新幹線の営業キロは35000キロ、とうに日本の10倍以上に達している。(中国では新幹線を「高速鉄道」と言う)。

 「三大無視路線」といわれるのは、環境破壊、安全性、財務バランス無視という基本の発想があり、ひたすら拡大することにある。経済性は最初からネグレクトされている。

測量しながら設計し、同時に着工するという3つ同時の離れ業!

事故は気にせず、手抜き工事は常識、安全性は保障されず、ひたすらレースを敷いて、橋を架け、トンネルを掘り、高架の連続。基本的に土地の収用は手間がかからず、立ち退かない場合は夜中にブルトーサーを投入、立ち退き家屋の保障も、地元幹部によってちょろまかされている。

工費対収入バランスはどうかと言えば、黒字化したのは北京─上海、広州─香港くらいで、しかも運賃が安いため、元が取れるかどうか。たとえば北京 ─ 張家口は運賃が僅か13ドル。一等車とグランクラスがあるが、金持ちはグランクラスに座るから、すぐに満席、一等車は三3両連結だが、いつもガラガラである。

どれだけの迅速さで営業キロ数を伸ばしてきたかと言えば、2010年に8358キロだったが、2015年には19000キロに達し、2018年には29000キロも工事をやってのけた。現在の推計で35000キロだ。

当然ながら下請け、孫請け業者からの賄賂が横行し、はては納品の弁当屋から、車内雑誌の印刷屋まで「上納金」が必要となる。上層部は賄賂漬けになる。鉄道利権は軍と江沢民派が支配してきた。
 
つまり2008年から2018年までに新幹線工事に投入されたのは7兆6761億元で邦貨に換算して130兆円(一元を平均17円で計算)以上が累積赤字となっているが、誰も気にしている様子はない。思い出しませんか。国定民営化の折、累積赤字は24兆円。

親方日の丸ならぬ、官僚的体質だから、究極の赤字は中華人民共和国が負うことになる。それは国民一人一人の将来の負債として重くのしかかるだろうが、中国人エコノミストは殆どが体制翼賛会的は御用学者だから、危険性を指摘しないのだ。

予算財源は「鉄道債」を起債してきた。
 
手品の一種であり、明るい展望だけを投資家に提示すれば、ジャンク債と分かっていても買い手がいるのだ。購入は国有銀行とファンド、金利は相当高いが変動する。無理矢理のGDP拡充の一環として、突貫工事が強行され、人のいない砂漠、誰も行かない山岳地帯にも新駅が造られた。

手許資金不如意となって、今度は新幹線網を、日本の国鉄分割のように、いくつかにわけ、黒字の北京─上海間の企業は上場させて、回転資金をかき集めた。ほかの路線の財政健全化の目処はまったく立っていない。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評  
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜アメリカ宣教師が捏造した「史観」がまだ日本を呪縛している
  「反日」の宣教師史観はいかにして「創作」されたか

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池田悠『一次資料が明かす南京事件の真実』(展転社)
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南京事件とは、狭義の文脈では、国民党とアメリカがでっち上げ、いま中国共産党の政治プロパガンダに活用されている「南京大虐殺」のことを意味する、

真っ赤な嘘であることはすでに幾多の研究家、歴史家によって証明された。阿羅健一、北村稔、東中野修道、水間政憲、藤岡信勝、田中秀雄の各氏らの努力と地道な研究により、国民党に雇われたジャーナリストとかの扇動家たちの謀略放送であった。

ところがまだ資料が埋もれていた。

本書はアメリカ人宣教師たちの暗躍をしめす証拠書類を発見し、検証したのだ。

「彼らアメリカ宣教師団は、プロテスタントの中国布教という大きな目標を共有する結束ある集団であり、南京においては多くのメンバーが一つの屋根の下で生活し、一体となって活動していた」。

その名簿がある。南京に残留した外国人はラーベを筆頭とするドイツ人が5人、ロシア人が2人、オーストリア人がひとり、残りはアメリカ人で、大学教授、医者が隠れ蓑の宣教師軍団、14人だった。
 
なぜならもう一つの宣教師リストがあって、前掲リストのうちのアメリカ人14人の内、13人が宣教師だったことが判明している。トリマーという医者も、のちにラーベの記録から宣教師だったことが判明した。つまり、南京に残ったアメリカ人14人の全員が宣教師だったのだ。

彼らが東京裁判で証言したのである。

からくりはこれで了解できる。かれらは中国兵の犯罪を隠ぺいした。あるいは伝聞というかたちで日本軍が犯罪を犯したような逆の印象を作り出した。

彼らが嘘の情報の発信源であり、新聞記者らはアメリカ人の宣教師団の伝聞ということを明記しないで記事を送った。

フェイクは、こうした中国の支援によるアメリカ宣教師団のでっち上げによるものだったと本書は重厚に検証を繰り返す貴重な資料本である。 
           
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 読者の声 どくしゃのこ
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(読者の声1)貴誌前号に梅蘭芳の話が出ていましたので満州事変関連でご参考まで。(「黒幕はスターリンだった」落合道夫著 ハート出版から)

 「満洲事変の勃発」そこで、1931 年9月18 日石原莞爾rらの関東軍(在満日本軍)は張学良の兵営を榴弾砲で攻撃し張学良軍を万里の長城内に追放した。これが満洲事変である。この時北京で張学良を見かけた日本人の記録が残っている。

「劇場の張学良」9月18日私は北京の京劇の芝居小屋で名優梅蘭芳の宇宙鉾を見ていた。すると突然2階が慌ただしくなった。見ると第一ボックスに座ったのは、張学良と第一夫人の干鳳至だった。背後を一個小隊の護衛が囲んでいる。当時の張学良は事実上北京地域の王者であり、瀟洒な燕尾服を着用しワイシャツの胸が白く見えた。しかし彼は憂鬱そうで舞台を見入ることが無かった。舞台の梅蘭芳が仇っぽい目を投げたが、気づいたとも思えなかった。彼は檻の中に新しく入れられた豹のようにきょろきょろしていた。私は彼が芝居を見に来たとは思えなかった。11時頃、長身の男が駆け込んできて学良に何事か耳打ちした。とたんに彼はすっくと立ち上がった。侍者が彼に黒ラシャのマントを掛け与えた。その裏地の燃えるような真紅が何かの兆しのように見えた。バタバタと張学良の一行は慌ただしく劇場から立ち去った。翌日の北京の町では号外が売られ、奉天の張学良の北大営駐屯地が昨夜日本の関東軍によって突如砲撃されたと報道していた。(「北京十話」村上知行著から抜粋)。(落合道夫)
 
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(読者の声2) 26日放映された日本文化チャンネル桜のニュース解説番組【Front Japan 桜】は福島香織さんが「春節大移動直前に武漢コロナウイルス拡大」、そして宮崎正弘さんが「カジノが日本に? 澳門(マカオ)の教訓」です。

下記ユーチューブでご覧になれます。
https://www.youtube.com/watch?v=NtPlaLnhs6o
 宮崎正弘さんの「澳門の教訓」は45分頃から1時間5分くらいの箇所です。(日本文化チャンネル)

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(読者の声3)インターポールの総裁だった孟宏偉が、昨日(1月21日)の裁判で13年半という中途半端な禁錮刑。不思議ですね。中国代表の国際警察のトップが、汚職で裁かれるとは。家族はフランスに亡命できたのでしょうか?
  (DK子、世田谷)


(宮崎正弘のコメント)昨年「重大な党規違反」として孟宏偉(66歳)は、党籍剥奪、爾来、取り調べが長引いていましたが、天津の裁判所で結審でした。

容疑は公安副局長時代の賄賂が210万ドル。フランス時代の職権濫用による賄賂が29万ドルとか。

北京に呼び戻される直前から、警戒していたらしく夫人の携帯電話に、ナイフの絵を最後の通信に使っていたことが報じられました。

権力闘争の奥が深いでしょう。夫人は「夫は無実、政治的な思惑で嵌められた」とハーグの国際裁判所へ訴えて、その後、フランス政府は亡命を認めたようです。


2020年01月27日

◆中国新幹線、累積赤字が拡大しているのに

宮崎 正弘

 
令和弐年(2020)1月22日(水曜日)通巻6348号   
中国 新幹線、累積赤字が拡大しているのに、まだ新線を強気建設
  GDP拡大路線のツケが表面化しているゾ

 2008年北京五輪直前に、中国新幹線第一号「北京─天津」間が開通 した。爾来僅か12年、全国に網の目のように拡大された新幹線の営業キロ は35000キロ、とうに日本の10倍以上に達している。(中国では新幹 線を「高速鉄道」と言う)。

「三大無視路線」といわれるのは、環境破壊、安全性、財務バランス無視 という基本の発想があり、ひたすら拡大することにある。経済性は最初か らネグレクトされている。
測量しながら設計し、同時に着工するという3つ同時の離れ業!

事故は気にせず、手抜き工事は常識、安全性は保障されず、ひたすらレー スを敷いて、橋を架け、トンネルを掘り、高架の連続。基本的に土地の収 用は手間がかからず、立ち退かない場合は夜中にブルトーサーを投入、立 ち退き家屋の保障も、地元幹部によってちょろまかされている。

工費対収入バランスはどうかと言えば、黒字化したのは北京─上海、広州─ 香港くらいで、しかも運賃が安いため、元が取れるかどうか。たとえば北 京 ─ 張家口は運賃が僅か13ドル。一等車とグランクラスがあるが、 金持ちはグランクラスに座るから、すぐに満席、一等車は3両連結だが、 いつもガラガラである。

どれだけの迅速さで営業キロ数を伸ばしてきたかと言えば、2010年に 8358キロだったが、2015年には19000キロに達し、2018年には29000キロも工事をやってのけた。現在の推計で35000キ ロだ。

当然ながら下請け、孫請け業者からの賄賂が横行し、はては納品の弁当屋 から、車内雑誌の印刷屋まで「上納金」が必要となる。上層部は賄賂漬け になる。鉄道利権は軍と江沢民派が支配してきた。
 


つまり2008年から2年まで2018に新幹線工事に投入されたのは7兆 6761億元で邦貨に換算して130兆円(一元を平均17円で計算)以 上が累積赤字となっているが、誰も気にしている様子はない。思い出しま せんか。国定民営化の折、累積赤字は24兆円。

親方日の丸ならぬ、官僚的体質だから、究極の赤字は中華人民共和国が負 うことになる。それは国民一人一人の将来の負債として重く乗りかかるだ ろうが、中国人エコノミストは殆どが体制翼賛会的は御用学者だから、危 険性を指摘しないのだ。

予算財源は「鉄道債」を起債してきた。

手品の一種であり、明るい展望だけを投資家に提示すれば、ジャンク債と 分かっていても買い手がいるのだ。購入は国有銀行とファンド、金利は相 当高いが変動する。無理矢理のGDP拡充の一環として、突貫工事が強行 され、人のいない砂漠、誰も行かない山岳地帯にも新駅が造られた。

手元資金不如意となって、今度は新幹線網を、日本の国鉄分割のように、 いくつかにわけ、黒字の北京─上海間の企業は上場させて、回転資金をか き集めた。ほかの路線の財政健全化の目処はまったく立っていない。


2020年01月26日

◆イラン国民の怨嗟の的は

宮崎 正弘
 

令和弐年(2020)1月19日(日曜日)通巻6344号   <前日発行>

イラン国民の怨嗟の的はアメリカではなく革命防衛隊は?
  猛烈インフレ、家計の赤字。雇用なし、反政府感情が爆発している

 スレイマニ・イラン革命防衛隊の司令官殺害に激怒したイランは報復を誓った。
だが、「アメリカに平手打ちを食わせた」とするハメネイ師の揚言をよそに、イラクの米軍基地における被害は軽傷者のみだった。殺害事件の直後には百万人の反米抗議デモが展開されたが、急速に萎み、いまイラン政府、というより革命防衛隊が憂慮するのは自分たちを標的とする民衆の抗議行動の爆発である。

「平手打ち」と言うだけで次の行動がとれないのはある意味、限界を示しているのではないのか。2019年11月に起きた反政府デモは、軍が出動して発砲、1400名から1500名が殺害された。天安門事件の中東版?
 
 宗教指導者の守衛だった筈の革命防衛隊は、いまや「国家」である。ボディガードが主役になったのだ。革命防衛隊はいつしかイランの利権を寡占し、特権階級を形成し、宗教指導者は飾りにちかくなって、宗教のドグマとは無縁の暴走を始めた。
肝腎要の国内経済を顧みずに、イラク、シリア、レバノンなどのシーア派武装組織を支援し、はてはオマーンからイエーメンにも武装組織支援のネットワークを拡大してきた

イラン国民は「(革命防衛隊は)そんな無謀な企みに巨額を使うな。われわれの生活向上に予算を使うべきではないか」と怒りの声をあげ、各地で反政府行動、抗議集会、デモ(反米デモではない)が連鎖的に起きている。

 イランの平均賃金は毎月318・53ドルだが、家計の支出は345・22ドルに達し、物価は平均で28%の高騰、イラン人の食卓に欠かせない米、卵の値上がりが顕著になり、交通費、光熱費、家賃が一緒にあがってしまった(数字はアジアタイムズ、1月13日)。

 革命防衛隊は武装、武闘、武器の使い方にはなれていても、経済政策は理解不能。やることなすこと誤謬に満ちている。
かといってエリートには直言できる逸材もおらず、日々、一直線に経済低迷、破綻への道を突っ走っているのが実情だろう。

 出生率は2015年から19年の四年間で25%の激減ぶり。
医薬、医療品の不足、とくにインシュリンが欠乏しており、薬局に行ってもろくな薬品がないという。
 つまり現在のイランは「反米」どころではないのである。「反米」は革命防衛隊のすり替え宣伝の手段と言えるのである。

 トランプはツィッタ─で書いた。
 「(ハメネイ師よ)言葉使いに気を付けよう」。

△□◇み◎○△□や○△□◇ざ◎○△□き△□◇◎ 
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(休刊のお知らせ)小誌は1月24日─30日が海外取材のため休刊となります。 
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 読者の声 どくしゃのこえ READERS‘OPINIONS 読者之声
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(読者の声1)貴誌前号の関岡英之さんの訃報には愕然です。以前から名前を知っていた彼と初めてゆっくり話したのは、共に国際理解促進図書優秀賞を受賞した2010年の秋、日比谷公園そばの授賞式会場でした。
 彼の作品は『帝国陸軍 見果てぬ防共回廊』、私のは『朝鮮で聖者と呼ばれた日本人』でした。奥様にもそのときお会いしました。しかし2年後に奥様はたしか癌で亡くなられて、その後一人で子供さんを育てられていると仄聞しました。
 大変だろうなと思っていましたが、色々と心労も重なっていたのかもしれません。
 潔癖な人でした。「竹中平蔵が慶應教授でいる限り、決して慶應の校舎内には足を踏み入れない!」と宣言していました。彼は慶應出身で、むろん母校への愛はありました。もっと本を書いて欲しかったです。合掌…。
  (田中秀雄)


(宮崎正弘のコメント)前号小生のコメントに追加しますが、関岡さんの映画の鑑賞眼も確かなものがあって、小生のように一年に一回か二回しか封切館に行かない人間も、氏が『シン・ゴジラ』と『帰ってきたヒトラー』を推薦するので、見に行きました。両作品とも秀作ですね。
逆に小生が推めているのは3月20日に公開の『FUKUSHIMA 50』で、福島原発の爆発を抑えるために戦った50人のサムライを、反原発などというイデオロギーを抜いて描いています。


2020年01月25日

◆西側中央銀行六ヶ国が提携

宮崎 正弘

 
令和弐年(2020)1月23日(木曜日)通巻6349号   

西側中央銀行6ヶ国が提携し、デジタル通貨を前向きに検討
中国の「デジタル人民元」実証実験を前にドル基軸通貨崩壊を懸念

 フェイスブックが「協議会」結成を呼びかけ、スイスに拠点を置いて発行するとした仮想通貨「リブラ」が座礁している。

米国を中心に欧州、そして日本などが、明確に反対しているため、ヴィザカード、マスターカード、ペイペイ、ヴォーダフォンなど有力企業が加盟を見送ったことが決定的となって挫折、もしくは延期を呼びなくされた。

西側がリブラに反対する理由は、中央銀行や政府が関与しないところで別の通貨が出回れば、通貨管理、通貨供給の調整が不能となる懼れがあり、それこそ「悪貨は良貨を駆逐する」ことになりかねない。

根底にあるのはグローバリズムへの懐疑である。
通貨は国家が管理する、経済運営の大動脈であり、責任の所在がはっきりしない通貨とは、国家、国境を否定する無政府主義に陥落しやすく、自由経済、放任主義の枠を軽々と超える悪状況を産み出しかねない。

いまひとつの懸念は英・米、ならびEU諸国に共通する認識だが、基軸通貨体制の崩壊、とりわけドル基軸通貨が脅かされることは世界の経済秩序を掻き乱すと怖れるからだろう。

ところが状況が変わった。

中国がビットコインを規制する傍らで、中国人民銀行が管理する「デジタル人民元」の発行を宣言し、深センか、蘇州で実証実験に踏み切るとしたことだ。これは経済史における「大事件」である。

西側諸国が想定する仮想通貨は暗号通貨だが、ブロックチェーンと呼ばれるもので、中国のデジタル人民元も、この基本概念は同じである。

日銀、ECB(欧州中央銀行)、英国イングランド銀行、スウェーデンの中央銀行(リクスバンク)、カナダ銀行、そしてスイス国民銀行の六つの中央銀行団は将来のデジタル通貨(CBDC)発行に向けての共同研究を開始することで合意した。

米国FRBとシンガポールが加わらないため、先行きの不透明感がぬぐえないものの、米国はムニューチン財務長官が「五年間は発行しない」と宣言していることが影響している。

曖昧な機関、組織が責任の所在を不明確のまま発行しようとしているリブラ等に比べると、CBDCは中央銀行が管理し運営するので、倒産の心配がないというメリットがある。

さらに共通するメリットは、現金を扱うコストの大幅な削減につながるからだ。ATMの維持管理、防犯カメラの設置や巡回など警備に加えて、膨大な輸送コストがかかる。特殊車両にふたりのガードマンがATMを巡回し、現金を運んでいるが、このコスト、日本だけでも年間8兆円となり、防衛費より多いのだ。


▲悪貨は良貨を駆逐する、ばかりではない

しかし最大の難題、それはハッカーの攻撃を如何に防御出来るかにある。

すでにビットコインで世界各地に詐欺が確認されており、中国ばかりか、北朝鮮、露西亜のハッカー軍団が、発明者の上を往く技術を忽ちにして取得し、仮想通貨から巨額を詐取している実態。あるいは身代金をビットコインで支払えと要求したり。

米国の議会聴聞会に喚問されたザッカーバーグ(グーグルCEO)は、このハッカー攻撃への対応を執拗に問いただされ、前向きの回答に窮した。

米国が慎重な姿勢を崩さないのは、もう一つ重大事項が加わる。

原油取引、商品相場、金銀などほぼすべての市場ではドル基軸体制で世界の経済活動が稼働している。

もしデジタル米ドルがハッカー攻撃を受けて、市場が大混乱に陥った場合の危機管理体制が未整備であり、ウォール街がある日、攻撃を受けて電子取引栖ステムが崩壊した場合の危険性という未曽有の危機感は通底している。

機密事項の管理、プライバシー、データ処理など解決しなければならない技術はまだまだ山積み。

そもそもアマゾンCEOのジェフ・ペゾスがサウジアラビア皇太子と会見して(2018年4月4日、ロスアンジェルス)以後、ペゾスの携帯電話は同年11月と2019年2月にハッカー攻撃を受けて会話内容から過去の写真データまで瞬時に抜け取られていた。

デジタルビジネスのトップですらが、この手抜かり。将来の危惧を示唆してあまりある。

そのうえ、英紙ガーディアンのすっぱ抜き(1月21日電子版)によれば、二人の会見から数ヶ月後にサウジ王室批判で著名だったジャーナリストのカショギ暗殺がトルコのサウジ領事館で行われた。

カショギはワシントンポストの寄稿者であり、しかも、ペゾスはワシントンポストのオーナーである。

この偶然の関係に何かあるのではと英米のメディアは注目している。

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樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

【知道中国 2020回】              
 ――「彼等の中心は正義でもなく、皇室でもない、只自己本位でゐる」服部(2/16)
服部源次郎『一商人の支那の旅』(東光會 大正14年)

              ▽
当時は軍閥抗争の時代であり、奉天派の張作霖と直隷派の呉佩孚の間で奉直戦争が繰り広げられていた。

第一次奉直戦争(1922年)では直隷派が勝利したが、2年後の第二次奉直戦争(1924年)では奉天派が圧倒し、張作霖の影響力が強大化した。服部が訪ねたのは、まさに張作霖絶頂の時期に当たる。


奉直戰ですが、門外漢で委しくは判りませぬが、日本の參謀が軍事顧問ですから、勝敗は日本政府の自由らしいです、張作霖を操つて居るは、確かに日本が巧なのでしよう」。 

奉天から北行するために奉天駅へ。すると「天津方面からの列車が夜奉天に着く、蜘蛛の子を散らした樣に汚れた服装の苦力隊がプラツト一杯になる。女らしいものは見當らぬ、彼等は生活の爲めに、故山を後に遠國に出稼ぎに行くのである。〔中略〕この無妻の勞働者が數十萬人も御得意の滿洲へ年々歳々入込むのである。〔中略〕滿洲の地が如何に廣漠で人口が稀薄であるかを物語つて居る」。


やがて漢族が「廣漠で人口が稀薄」な満州の地を埋め尽くす。それが問題なのだ。

奉天から北上し長春で「午後5時40分發の吉林列車に乘る」。車中で話した現地事情に通じた日本人によれば、「滿洲の農夫は夏は農業を働き、冬は馬車運搬業を營む、甚麼な者でも馬の五六頭は居りますから、冬だとて決して閑居で居ませぬ。墓碑を樹てると盗まれるから建てぬ、其代り棺は六七寸もある厚板の堅固なものを使ひ土を覆ふ、然るに小兒の死骸は山に棄て犬に喰わせる、犬も喰はぬとは是から出た言葉である等と聞かされた」と。


ここで少し服部から離れ、かつての中国各地における嬰児死体の「処理方法」について記しておきたい。
 

たとえば子供の死体と祟りについてだが、2、3歳の幼児の死体を火葬にした後、野や山に散骨し、風の吹くままに任せていた地方もあった。そうすることが子供に憑りついてしまった禍を取り去ることであり、そこには次に生まれてくる時には絶対に祟りを背負ってくるなという両親の哀しくも素朴な願いがこめられていたというのだ。


嬰児が死ぬのは妊娠中に悪鬼が憑りつくからであり、その味を知った悪鬼は母親の体内に巣くって次から次へと悪さをし、次に生まれる子供も夭逝することになる。

これを「回胎」と呼んだ。ところが、回胎を防ぐ最も効果的な方法があるというからオソロシイ。

戦前の満州を中心に中国各地で民間風俗を調査した永尾龍造は、惜しくも未完に終わった浩瀚な『支那民族誌』の第6巻(但し、国書刊行会 昭和48年復刻)に、回胎防止方法について、「その鬼に憑かれて死んだ嬰兒の死體に、出來る丈け殘虐な處置を施し、子供の屍體に憑いてゐる鬼を威嚇して、二度と來たり憑かうとする氣持ちを起こし得ないように、強度の恐怖心を抱かせること」と書き留めている。やや長い引用になるが、続けて永尾の現地調査報告を記しておきたい。

「滿洲でも支那でも、到る處に幼兒の死體が土中に葬られもせずして野外に放棄され、野犬のあさるが儘に曝されてあり、或いは河岸海岸などに打捨てられてあるのを見られるのである。/尤も近來警察制度が發達して、都會の近郊ではこの種の屍體を餘り見なくなつたが、一歩市街を踏み出して田舎に行けば、舊態依然としてこれを見得るのである。しかし屍體を野外に放棄する位はまだ結構な方で、甚だしいのになると、刃物の類を以て切り苛なみ、或いは四肢を斷ち、或いは頭から顔面に掛けて、一寸刻みに刻んだものもある。また焼火箸や焼鏝を以て身體中を焼き、顔面の如き真つ?焦げになってゐるものさへもある」。 

残酷極まりないと思うが、どうもそうでもないらしいから、じつに不思議だ。
      
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 読者の声 どくしゃのこえ READERS‘
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(読者の声1)イチローが「日本の野党とメディアは酷い。桜を見る会よりももっと 大事な問題があるでしょう。海外から見てると本当にバカらしい」と発言し、称賛の声が拡がっています。安部首相も「イチロウは分かっている」と感想を述べたとか。
 日本のメディアは本当に本当にマスゴミですね。
   (TY生、中野)


(宮崎正弘のコメント)海外から見なくても分かっているんじゃありませんか。逆に日本から見るとアメリカのメディアも狂っていますね。何が何でもトランプを引きずり下ろせとばかり、フェイクの事件をでっち上げて大統領弾劾という茶番劇です。

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(読者の声2)「台湾2・28時局講演会」と「台湾青年社創立60周年記念会」
台湾の総統選挙・立法委員選挙では蔡英文総統が再選を果たし、立法委員も台湾派が過半数を取りました。今後は中国からの圧力をかわしながら、ますます主権独立国家としての地位を確固たるものとしていけるよう、我々も協力していきたいと思います。

台湾独立建国聯盟の前身〈台湾青年社〉が創立されてから、今年の2月28日で60周年を迎えます。

今年の「台湾2・28時局講演会」は、これまでの台湾独立運動の歩みを振り返ると共に、台湾から人望の厚い呉叡人先生をお迎えしてお話を伺います。 

第1部からテーブル着席式で行いますので、早目にお申し込み下さいますようお願い致します。                                    
          記
とき   3月1日(日) (14:00開場・途中休憩有り)
第1部 14:30〜17:30  講演会及び動画上映と盟員挨拶
第2部 17:30〜19:30  懇親会
ところ  京王プラザホテル 南館4階 錦の間
     東京都新宿区西新宿2-2-1 TEL :03-3344-0111
講師   呉叡人先生「台湾青年社と台湾独立運動が台湾の民主化に果たした役割」
【使用言語:日本語】

呉叡人氏:1961年生まれ。台湾大学卒。シカゴ大学大学院修士・博士。政治学博士。早稲田大学政経学部講師、台湾大学助教授を務め、現在、台湾中央研究院台湾史研究所副研究員。専門は比較政治、比較政治思想。ナショナリズム研究の古典『Imagined Communities』(想像の共同体)中文版翻訳者。
上映   台湾独立運動の歩み
挨拶   許世楷 金美齢 黄文雄 連根藤 宗像隆幸 小林正成 清河雅孝ほか
参加費  10,000円 (学生5,000円)
申込み  E-mail:wufijapan77@gmail.com
   FAX:03-6869-5059(締切:2月25日)
主催   台湾独立建国聯盟日本本部
TEL:03-6869-3239  FAX:03-6869-5059
E-mail:wufijapan77@gmail.com
後援  全日本台湾連合会 、「台湾の声」、日本李登輝友の会、日本文化チャンネル桜
日本政策研究センター、台湾研究フォーラム、アジア自由民主連帯協議会
民主維新、基進党



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(読者の声3)宮崎さんの『神武天皇「以前」 ―─縄文中期に天皇制の原型が誕生した』(育鵬社)に強く啓発されて、国立博物館で開催中の「出雲と大和」展覧会を見に行きました。早朝の冷雨をついて数千の行列があり、え、この展示会って、そんな大人気なのと思いきや、大嘗祭に使われた高御座(たかみくら)公開の行列でした。

さて出雲と大和展覧会で感じたのは、「これは百済の影響をうけたらしい」とか「これは中国の影響」とか、婉曲ながらも日本独自の文化を否定するかのような説明が随所でなされており、たいへん気になりました。
 この大がかりな展示の監修者ら日本の歴史学者、考古学者にまだ自虐史観が濃厚に残っていると思います。
   (UI生、千葉)


(宮崎正弘のコメント)小生も見学しました。貴重な文献や彫刻、とくに青銅剣、銅鐸、太古の神社の主柱など、こういう機会でないとまとめて見ることは出来ませんから。
 後世の鎧や馬具、蒔絵などは出雲、大和の文化と直截な関係は薄いと思いました。 
 史観に関しては、所々、とくに絵画、仏像、彫刻に、ご指摘のような、怪しい説明がなされているなぁいう印象を抱きました。

2020年01月24日

◆イラン国民の怨嗟の的は

宮崎 正弘

 
令和弐年(2020)1月19日(日曜日)通巻6344号   <前日発行>

イラン国民の怨嗟の的はアメリカではなく革命防衛隊では?
  猛烈インフレ、家計の赤字。雇用なし、反政府感情が爆発している

 スレイマニ・イラン革命防衛隊の司令官殺害に激怒したイランは報復を誓った。

だが、「アメリカに平手打ちを食わせた」とするハメネイ師の揚言をよそに、イラクの米軍基地における被害は軽傷者のみだった。殺害事件の直後には百万人の反米抗議デモが展開されたが、急速に萎み、いまイラン政府、というより革命防衛隊が憂慮するのは自分たちを標的とする民衆の抗議行動の爆発である。

「平手打ち」と言うだけで次の行動がとれないのはある意味、限界を示しているのではないのか。2019年11月に起きた反政府デモは、軍が出動して発砲、1400人」から1500人が殺害された。天安門事件の中東版?
 
宗教指導者の守衛だった筈の革命防衛隊は、いまや「国家」である。ボディガードが主役になったのだ。革命防衛隊はいつしかイランの利権を寡占し、特権階級を形成し、宗教指導者は飾りにちかくなって、宗教のドグマとは無縁の暴走を始めた。

肝腎要の国内経済を顧みずに、イラク、シリア、レバノンなどのシーア派武装組織を支援し、はてはオマーンからイエーメンにも武装組織支援のネットワークを拡大してきた。

イラン国民は「(革命防衛隊は)そんな無謀な企みに巨額を使うな。われわれの生活向上に予算を使うべきではないか」と怒りの声をあげ、各地で反政府行動、抗議集会、デモ(反米デモではない)が連鎖的に起きている。

イランの平均賃金は毎月318・53ドルだが、家計の支出は345・22ドルに達し、物価は平均で28%の高騰、イラン人の食卓に欠かせない米、卵の値上がりが顕著になり、交通費、光熱費、家賃が一緒にあがってしまった(数字はアジアタイムズ、1月13日)。

革命防衛隊は武装、武闘、武器の使い方にはなれていても、経済政策は理解不能。やることなすこと誤謬に満ちている。

かといってエリートには直言できる逸材もおらず、日々、一直線に経済低迷、破綻への道を突っ走っているのが実情だろう。

出生率は2015年から19年の4年間で25%の激減ぶり。

医薬、医療品の不足、とくにインシュリンが欠乏しており、薬局に行ってもろくな薬品がないという。

つまり現在のイランは「反米」どころではないのである。「反米」は革命防衛隊のすり替え宣伝の手段と言えるのである。

トランプはツィッタ─で書いた。

 「(ハメネイ師よ)言葉使いに気を付けよう」。

 
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読者の声 どくしゃのこえ READERS
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(読者の声1)貴誌前号の関岡英之さんの訃報には愕然です。以前から名前を知っていた彼と初めてゆっくり話したのは、共に国際理解促進図書優秀賞を受賞した2010年の秋、日比谷公園そばの授賞式会場でした。
 彼の作品は『帝国陸軍 見果てぬ防共回廊』、私のは『朝鮮で聖者と呼ばれた日本人』でした。奥様にもそのときお会いしました。しかし2年後に奥様はたしか癌で亡くなられて、その後一人で子供さんを育てられていると仄聞しました。

大変だろうなと思っていましたが、色々と心労も重なっていたのかもしれません。
 
潔癖な人でした。「竹中平蔵が慶應教授でいる限り、決して慶應の校舎内には足を踏み入れない!」と宣言していました。彼は慶應出身で、むろん母校への愛はありました。もっと本を書いて欲しかったです。合掌…。(田中秀雄)


(宮崎正弘のコメント)前号小生のコメントに追加しますが、関岡さんの映画の鑑賞眼も確かなものがあって、小生のように一年に一回か二回しか封切館に行かない人間も、氏が『シン・ゴジラ』と『帰ってきたヒトラー』を推薦するので、見に行きました。両作品とも秀作ですね。

逆に小生が推めているのは3月20日に公開の『FUKUSHIMA 50』で、福島原発の爆発を抑えるために戦った50人のサムライを、反原発などというイデオロギーを抜いて描いています。
          


2020年01月23日

◆テクノ・ナショナリズムは

宮崎 正弘

 
令和弐年(2020)1月20日(月曜日)弐 通巻6346号   

 テクノ・ナショナリズムは次世代技術の開発速度を鈍らせる
  米中貿易戦争の妥協は、技術戦争とは別世界のはなし

米英に漲るテクノ・ナショナリズムは次世代テクノロジーの開発速度を遅らせるだろう。しかしトランプは5Gを飛び越えて、6Gを目指すとし、日本もおおがかりに協力する方向にあり、2030年を目処とする。

一方、中国は「2025チャイナ(中国製造2025)」を政策的目標として、第一に半導体の自製化。第二に宇宙、航空、新素材、医薬、化学、輸送機械、AIなど10の分野を開発強化目標とした。当面の目標値は2020年に40%、2025年に75%の自製か目的達成をメルクマールだという。

しかしテクノ・ナショナリズムが燃える米国は中国資本の米企業買収を阻止し、技術スパイを摘発し、ファーウェイ、ZTEなど84社をELリストにあげて排除したばかりか、とくに英国に圧力をかけ、通信インフラからも中国勢の排除を迫った。このために英国はインフラ再整備のために12億5000万ドルを必要とする。

またベンチャー・ファンドの中国への投資にも警告ランプを灯したため、2018年に174億ドルだった欧米ファンドの中国ベンチャーへの投資は、2019年度に40億ドルに激減した。

米国企業はサプライチェーンの改編を急ぐが、世界の半導体の45%が米国、24%が韓国というシェアであり、米クオルコムは売り上げの60%を中国に依存している。
 同マイクロンが50%、ブロードコムが45%である。
 いきなりのチェーン改編作業と言っても、時間を要することになるだろう。

 
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  日本人の伝統的な武士道精神、独特激甚なる心情で称賛
 とりわけ家康、秀吉、信長を『統一』ではなく、「武士道」の見地から評価した

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石平『日本の心をつくった12人』(PHP新書)
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日本に帰化した石平氏の活躍はいまさら述べる必要はないが、いまや「日本人以上の日本人」だ。

多くが忘れかけた、日本人の伝統的な武士道精神を、その美学を、氏独特の激甚なる心情で、称賛している。

とくに特徴的なのは儒学、朱子学、陽明学を総合比較の材料として多角的な視点から論じているあたり、「石平史学」の真骨頂と言うべきだろう。

「わが子に教えたい武士道精神」という副題が示すように、武士道にただずむ普遍的価値観を唱え、西洋化して物質文明につかり切って精神を堕落させてしまった現代日本人に、魂の奥底から呼びかけるのだ。武士道精神に還れ、と。

本書が取り扱う12人とは、源義経をはじめに北条時頼、時宗、楠木正成、徳川家康、吉宗、松平定信、大塩平八郎、武智半平太、大久保利通、東郷平八郎、西郷隆盛、そして個々に付随して同世代人への評価があり、とくに家康の項目には信長、秀吉、明智光秀が登場するなど芸の細かさがある。

 東郷平八郎の箇所では乃木希典に熱烈な筆が及ぶ。「番外編」に三島由紀夫と一色正春への評価が加わる。初版は2012年度で、本書は多少の編成替えと加筆が施されたため、全体が引き締まっている。

ひとりひとりの紹介は短いが、細かな史伝を渉猟した形跡が行間に埋まっており、なぜ彼らには武士道がよみがえったかを重点的に捉えなおしている。

さて、全員を紹介する紙幅がないので、ニ、三をピックアップする。

あるとき、楠木正成が後醍醐天皇に諫言し、新田貞義を遠ざけよとし、朝廷側の戦略のなさを指摘したが退けられた。

最期には死を覚悟しても死にもの狂いで戦いに臨み湊川に逝く。なぜ楠木が、持久戦の勧告をしたのかと言えば、足利尊氏について九州へ逃げ去った武士が多かったこと、つまり尊氏への信頼のほうが厚かった事実を知ったからだった。まして尊氏も、戦後の評価において正成を高く評価した事実がある。

そういえば10年以上前に石氏とふたりして河内長野へ赴き、赤坂城、千早城などを巡ったことを思い出した。

家康をめぐっては先人の信長を異端として切り捨て、また政権を簒奪した秀吉を「戦国のシナ人」とするあたり、日本の歴史を読みこなして特質を掴んだうえでの正当な考えが滲み出てくる。

ならば日本を滅亡させようとして信長を誅した明智光秀への評価はどうかと言えば、次のようだ。

「信長が日本人のなかの『西洋人』だとすれば、秀吉はまさに日本人のなかの『シナ人』なのである」

信長は自身をご神体として一神教的世界の構築を夢想していた。つまり多神教ではないゆえに、いずれ天皇制廃絶の危機が迫っていたとみたのが光秀だったのである。

「光秀はまさに日本人のひとりとして『天魔』信長を消したわけである。そういう意味では、本能寺の変の歴史的意義はすなわち『西洋人』の信長が目指した日本の『西洋化』が、日本的伝統によって阻まれた」(129p)
とする評価に落ち着く。
商人の発想しかない、合理主義の現代人には理解しがたいだろうが、正統の歴史家の目を持つ「石平史学」が随所に披瀝されている。

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読者の声 どくしゃのこえ READERS‘OPINIONS 読者之声
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(読者の声1)NHKドラマの明智光秀が主人公の『麒麟が来る』が始まりました。

女優のスキャンダルとかで、開始が2週間遅れたのですが、期待しておりました。

とくに明智の青春時代の空白を、この大河ドラムは、まったくのフィクションで埋めるわけですから想像力豊かといえば、豊か。

しかし実際に起きた歴史的事実とは関係がない話ですね。
これから真実に近付くストーリーの展開になるのでしょうか。宮崎正弘先生の『明智光秀 五百年の孤独』の愛読者としては、後半の描き方が大問題だろうと、いまから予想しておりますが。。。(TT生、仙台)


(宮崎正弘のコメント)明智城を、光秀の誕生地は曖昧のまま、可児市にある明智城としていましたね。父親も判明しないのですが、特定しておりました。斎藤道三や松永弾正に堺で会ったことになっていて、ハナから大胆なフィクション、しかしながら多数の武将群像を描いているという文脈で解釈しました。鉄砲に早くから着眼した点を強調したところは良かったと思います。


2020年01月22日

◆中国企業の債務不履行が「ブーム」に

宮崎 正弘

 
令和弐年(2020)1月21日(火曜日)通巻6347号   

 「社債は償還できなくなりました」。
  中国企業の債務不履行(デフォルト)が「ブーム」に

山東省といえば軍人出身者が多い土地柄であり、孔子の生まれ故郷だ。

軍港も多く、安全保障上の要衝である。渤海湾沿岸の諸都市は一時期、韓国からの投資が目立ったが、不景気と共に多くが夜逃げ、マンションは歯が抜けたようになって済南、青島、威海衛など、経済的にぱっとしなかった。

三洋電機と提携したハイエール(海爾)も電化製品の売れ行きが横ばいからマイナス。つまり山東省を牽引する主力産業がなくなった。

アルミ産業はやたら電気を使う。コーン油の大手「西王集団」が社債デフォルト(150億円)をやらかし、中国の社債市場に警鐘が乱打された。

ドル不足に陥った当局の政策変更で与信枠が縮小した(デレバレッジ=過剰債務の圧縮)ばかりか、共通するのは銀行が「借りろ、借りろ」と薦めたため、具体的な拡大計画も青写真もなく、無造作に巨額を借りた。

土地投機、株式、FX相場への投機にあて、海外における企業買収(たとえば山東省の山東如意集団は英国の老舗テキスタイルを買収した)や無謀な設備投資(中国宏橋集団など)、ブームに乗り遅れた不動産投機などで焦げ付きが生じ、つぎに銀行が「貸しはがし」に転じたため、社債パンクが連鎖した。

内蒙古省の地方政府直轄企業とも言える「フフホト経済技術開発区投資開発集団」が発行した債券は昨師走に償還が出来なかった。デフォルトは准公的機関でも起こり、株式なら下落だが、安心といわれた債券の償還不履行となったのだ。

省都フフホトの包商銀行は破産し、公的機関の管理に置かれた。地方銀行の破産が併行して起きた。

もっとも衝撃的なデフォルトは中信国安集団である。この中信は、CITIC傘下であり、信用があるとされた。67億円の預金が凍結された。

引き続きカリウム肥料大手の「青海塩湖工業」、ゼネコンの「南京建工産業集団」。また海航集団関連の大新華航空、東旭光電科技、永泰能源などの債務不履行が連続した。

中国の債権市場の規模はおよそ500兆円、2020年1月からは「ジャンク債市場」を整備する。ジャンク債というのは投資危険というグレードの債券である。

それでなくとも中国民間企業の社債デフォルトは4・9%に達し、異様な状況に陥っている。

武漢の肺炎のように、またたくまに債務不履行の蔓延だ。

2019年12月、天津物産集団がデフォルト(330億ドルのドル建て債券)、ついで北大方正集団が310億円の社債償還が出来ず、政府の継続的援助の展望が望めないことが判明した。

北大方正集団のデフォルトはまだ確定してはいないが、ベンチャーの嚆矢として華やかなビジネス展開をしてきた有名な大学ベンチャーゆえに、去就が世界から注目されるのも無理はない。
 
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樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【知道中国 2019回】               
 ──「彼等の中心は正義でもなく、皇室でもない、只自己本位でゐる」服部(1)
服部源次郎『一商人の支那の旅』(東光會 大正14年)

           ▽


服部源次郎は大正14(1925)年の「3月2日朝鮮統營を振出しに、滿洲安東を經て北はハルピンより南は廣東に至り、揚子江を上海より漢口まで往復し、上海の大動亂を最後の觀光とし六月十四日に歸鮮を以て(旅を)終」わる。朝鮮総督府より依頼された「露支水産貿易調査」が目的であった。

ここでいう「上海の大動亂」は、同年5月に上海にある日系資本の内外綿株式会社における待遇改善要求運動を機に、誕生間もない共産党指導によって全国大都市に飛び火した反帝国闘争で、上海では5月30日には全市を巻き込んだゼネスト(「五・三〇事件」)に発展している。

ところで著者の服部だが、生没年も出身地も定かではない。ただ『一商人の支那の旅』の冒頭に掲げられている「釜山日報社長芥川正」の「序文」によれば、明治末年に朝鮮に渡り、孤軍奮闘の末に「合名會社の社長として、精米業、海産商及び農事經營もやり、統營の幾多代表事業會社の牛耳をとり、公人としては道評議員、道水産會議員をやり、極めて多忙な人である」とのこと。

本書は「露支水産貿易調査」の道すがらに「毎日の見聞を其の儘我社に通信し回を重ぬること實に88回に及」び、それを纏めたものである。

結氷する鴨緑江を渡って安東へ。「日は西に落んとし、薄暮沈々、鴨緑江を走る橇の音淋しく聽ゆ、零下5度の寒氣は凛として身に迫る」。

やがて満洲へ。「窓外は一面の雪である。滿目白皓々たる銀世界となつた。風はヒユーヒユーと窓を掠めて音凄しい」。やはり「滿洲の人は常に自然界に征服せられ人力の弱さを體驗して居るから呑氣なのだ、天惠薄い國民は幸かなと思ふた」そうだ。

いよいよ張作霖の本拠である奉天へ。たまたま彼の誕生日に出くわす。当時は「張氏の全盛時代なものだから、〔中略〕支那各省の代表者約300人程、思ひ思ひ貴重の贈物を携へて祝賀に來た、賓客は千百餘人で代理は許さぬ」ということで、服部も参加した。幸運なことに、北京から駆け付けた天下の名優の梅蘭芳による祝賀公演を間近で観劇している。「容貌は全く女と變はらぬ、口と眼が非常に良かつた」と感嘆の声をあげる。
服部の記した文章を素直に読むと、舞台が跳ねた後で梅蘭芳と親しく会話したようだが、返答内容からして、どうも梅の公式的な家族構成に合致しない。ということは、ニセの梅蘭芳(たとえば「奉天・梅蘭芳」とか)か。はたまた別の役者だったとも思える。だが、当時の張作霖の権勢からするなら、ホンモノと考えられるから、やはり梅蘭芳の公式的年譜は時に眉にツバして読む必要があるだろう。

じつは梅蘭芳は前(1924)年秋に2回目の日本公演を東京(帝国劇場)、大阪(宝塚歌劇場)なで行い、7代目尾上梅幸、7代目松本幸四郎、13代目盛田勘彌、7代目澤村宗十郎、4代目尾上松助などの歌舞伎大看板のみならず、芥川龍之介、久保田万太郎、山本有三、菊池寛、有島武郎などの文人をも唸らせる芸を披露し、大好評を博していた。

「天下の名優の梅蘭芳」だろうが、当時の張作霖の権勢からすれば奉天まで呼び付けることは簡単だったはず。また役者からすれば日本公演からの帰国直後とはいえ、強大な権力者をパトロンとして弄することが出来るわけだから、奉天までの遠路を馳せ参じたとしても「損」はない。

だが、当然だとは思うが、梅蘭芳の公式的年譜ともいえる『梅蘭芳年譜』(河海大學出版社 1994年)の「1925年(民國十四年、乙丑)32歳」の項には張作霖誕生宴での記述は一切ない。また『京劇泰斗伝記書叢 梅蘭芳伝』(劉彦君 河北教育出版社 1996年)、『梅蘭芳全伝』(李伶伶 中国青年出版社 2001年)、『百年家族 梅蘭芳』(李仲明・譚秀英 立緒文化 民國90年)にも張作霖との関係は記されてはいない。《QED》
     
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読者の声 どくしゃのこえ READERS‘OPINIONS 読者之声
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(読者の声1)「関岡英之氏を偲ぶ」

貴誌通巻6343号の宮崎先生の「関岡英之氏追悼文」で関岡さんが東京銀行の北京駐在員事務所に勤務されていたことに触れておられました。

じつは、私はそのとき所長で、関岡さんと職場を共にしていたのです。

北京事務所は日本からの派遣社員4人で現地中国人スタッフも4人の合計8人でした。私を除く3人の派遣社員は皆、中国語をマスターしていた優秀な人材であり、中国、中国語とは無縁であった私は関岡さんはじめこの専門家集団の助けで何とか仕事をさばいていたわけです。

関岡さんとの思いでの一つは天津への2ヶ月に1度の出張でした。目的は、天安門事件のあとの中国情勢について在天津日経企業の方々にお話しすることと、中国企業への訪問でした。

当時、北京、天津間は列車で3時間もかかるほどでしたので、記憶は鮮明に残っています。関岡さんは資本市場関係の仕事のあと北京に赴任してこられましたので、天津の往復列車の中で最新のデリバティブ金融商品について教えていただくことがいつものこととなっていました。

話は変わります。中国語がはじめての私は赴任当初から中国人のA先生の個人レッスンを受けていました。テキストは語源学員の初級教科書でした。他の所員は中国語レッスンは受ける必要がないので、実務で中国語を鍛えていたようです。

私の1年3ヶ月あとに赴任してきた関岡さんは、何故かA先生の個人レッスンを受け始めました。目的は人民日報の内容について深く掘り下げようとするものでした。

 A先生は終戦までは満州映画に勤務されておられた経歴のある70歳台の方でした。関岡さんは初めての休暇帰国から北京に戻ってきたとき、「これを手に入れました」と古いが立派な写真集を見せてくれました。

『満州映画』の編集した記帳な写真集だったのです。その集合写真には若き日のA先生が写っていました。

この写真集を送られたA先生は大変喜ばれ、懐かしがられていました。

ポツポツと思い出話をなさいましたが、「甘粕さん(関東大震災の時に、無政府主義者 大杉栄を暗殺したとされる憲兵隊大尉。満州映画創立者で社長)は大変立派な方だった」とのご発言が鮮明に思い出されます。

関岡さんのご尊父は石油・エネルギーの専門家で東洋大学の教授をなさっておられました。関岡さん赴任の際にご尊父の著書を何冊かいただきました。

その一つが「大恐慌の謎の経済学」で、1929年のウオール街の株式大暴落とそれ以降の大恐慌を分析したもので、この本を上梓されたとき、日本の株式は上がり続けていたころでしたが、「これはバブルであり、いずれ暴落する」と結論を下されていました。

大恐慌については以前から興味を持っておりましたが、これほどクリアに書かれたものが当時は皆無でしたので今でも大切に保存しています。関岡さんには、この本について私なりに素晴らしいとの感想を伝え、いつかご尊父にお目にかかりたい旨お伝えしましたが、それは3年後に実現します。

北京のあとジャカルタに勤務したあと帰国し、本店で石油・エネルギーの担当部長になり、早速、関岡さんとご尊父のおはなしをいただく機会ができました。

その後、最後の海外勤務から帰国し、1997年に東京三菱銀行を退職し、カナダの移民権を取得し、カナダで生活することにしました。

出発まえに関岡さん父子が六本木のレストランで豪華な送別会を催して下さいました。そのとき、関岡さんも銀行を辞めて早稲田で建築学を学び、新しい道にすすまれるとのことをうかがいました。

その後、日米構造協議、年次改革要望書を厳しく批判した『拒否できない日本』を上梓され、自らの道を果敢にすすまれているご様子に胸うたれました。

15年ほどまえに日本に一時帰国した折、関岡さん父子を食事にご招待し、大いに意気投合のひと時を過ごすことができました。

私自身は13年前、妻を失い、自らも失明し、カナダを引き払い、日本で独居生活の構築に専心せざるをえなくなりました。失明のため目から本をよむことができなくなりましたが、音声読み上げソフトを入れたパソコンで読書に努め、関岡さんの書かれた本は必ず読む(聞く)こととしていました。

『帝国陸軍、知られざる地政学戦略──見果てぬ「防共回廊」』(祥伝社新書)がその最後になってしまいました。
本書最後の部分は涙なしには読むことができませんでした。関岡さん、奥様、心よりご冥福をお祈りもうしあげます。(SSA,千葉)


(宮崎正弘のコメント)しみじみと哀惜と友情に満ちた追悼文をいただき、感謝します。それにしても奇遇ですね。(小生もよく存知あげている)SSAさんが関岡さんの北京時代の上司だったとは! 世間は狭いのですね。



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(読者の声2)かなり以前ですが、貴誌で北極海ルートに大型砕氷船を投入した中国の動きを欧米ばかりか、足下のロシアが異常な警戒をしているとありましたが、一方で、中国人のロシア北極圏ツアーが大人気とか。
 北極海も中国の一帯一路構想に入っている筈ですが、そのご、劇的な進展はあったのでしょうか?
                  (GH生、福生)


(宮崎正弘のコメント)ロシアの北極圏に近い場所はムルマンスク。海軍基地でもありますが、年間の観光客が45万人! このうちの四割が中国人ツアーです。つまり18万人もの中国人観光客が厳寒の土地に押し寄せ、目玉はオーロラ観光とか。

日本のオーロラツアーはアイスランドが主ですから、やっぱり桁違いですかね。

中国の砕氷船は「雪龍」。2号まで就航しており、3号は原子力駆動にする計画です。



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(読者の声3)13日にアメリカ政府は中国を「為替操作国」から解除しました。あれ、と思いました。言うこととやることは違って、突如、トランプ政権は強硬姿勢を軟化させた。
背景に何かあるように思いますが、如何でしょうか?
  (JJセブン)


(宮崎正弘のコメント)為替相場の決め手は経常収支(貿易黒字)と金利です。つぎに政治相場、これを市場は事前に読み込めませんから、狼狽えます。

ところが米国の基準でいう「為替操作国」とは、(1)対米貿易黒字が年間2000億ドル以上、(2)為替介入による外貨購入が一年に半年以上続き、且つGDPの2%以上の国、(3)特大な貿易不均衡や通貨安誘導を促進してきた歴史がある国など、一方的にアメリカが決めているルールで、相手国がみとめたわけでもない。

したがって日本も監視リストから解除されていない。ちなみに米財務省の監視リストには中国、日本、マレーシア、スイス、韓国、ドイツ、イタリアなど10ケ国。
 中国の解除理由は単純明快です。為替安ならともかく、人民元を中国は高めに誘導しているので、つまりこれは自暴自棄か、自らが自分の首を絞めているに等しく、米側からみれば輸出競争力を奪うので、放置したほうが国益に叶うと計算しているからでしょう。

2020年01月21日

◆ハイテク兵器の汎用部品となる製品

宮崎 正弘

 
令和弐年(2020)1月20日(月曜日)通巻6345号   

ハイテク兵器の汎用部品となる製品を中国へ輸出するな
  米国、台湾やオランドに最強の圧力、ハイテク流出へ

半導体製造装置を創れるのは日本と米国、オランダである。韓国と台湾も部分的な製造装置は作っているが、大局的技術として影響が薄い。

狙われたのはオランダだった。リソグラフィ(露光装置)に優れる蘭ASML社。なにしろ中国は半導体を自製できないため、インテル、クアルコム、サムソン、そして最大の供給源は台湾のTSMCに依存してきた。中枢部品は日本依存だった。

2019年11月、オランダ政府は対中輸出ライセンスを与え、出荷直前だったASLM社のリソグラフィ装置の中国企業(SMIC社と言われる)への船積みを保留した。

契約金額は1億5000万ドル、SMICの中国名は「中芯国際集成電路製造」、いまのところ中国最大の半導体メーカーである。

世界最大の半導体メーカーは米インテル。同社はZTEへの半導体供給をやめたため、ZTEは倒産しかけた。習近平がトランプに緊急に電話し、14億ドルの罰金(イランへの不正輸出)を支払って供給を条件付きで再開してもらった。

インテルは主力工場をイスラエルへ移管する。

中国企業はクアルコム買収にも迅速に動き、M&A成立寸前にトランプ政権が割って入った。クアルコムが中国籍になる寸前だった。

さて半導体の設計は英国のアーム社である。

これを3兆円の巨費を投じて買収したのは孫正義だった。アーム社は設計図の中国への提供を規制した。このためチャイナアームという怪しげな合弁子会社が中国に誕生し、気が付けば孫正義は、保有した株式を、前者中国合弁のファンド筋に売り払っていた。

TMSC(台湾積体電路製造)には「軍事用半導体を米国で生産するように」とトランプ政権が圧力をかけている。

TMSCは次世代ジェット戦闘機F35仕様の半導体を製造しており、このハイテク兵器部品が中国に流れる可能性が高いため、トランプ政権は執拗な圧力を継続している。

TMSCは二股をかけて、制裁を回避するため、中国に合弁企業をあたらしく作り、この面妖な合弁企業に、なんとエンジニア3000名の台湾人が移籍した。表向きの理由は給料が2倍なので、大挙してスカウトされたとした。


 ▼焦りだした中国は国有企業にメス

中国でのIT産業、スマホなど一連に新時代のハイテクは「民間」企業が立ち上げた。とは言えアリババもテンセントもトップが共産党員、ファーウェイは軍部との密接な関係があることは天下周知の事実である。

中国はデジタル監視技術や公安データ、防犯システム、送電管理、リチウム電池製造メーカーなど40社以上を昨年末までに国有化した。国有化されたのは美亜柏科、連光軟件、英飛拓、東方網力など。

「ハイテク企業のテコ入れ」を表向きの理由としているが、本質的にはハイテク企業の統括と軍事技術との整合性の深化にある。

同時に中国は国有企業の人事を次々と入れ替え、しがらみのない、汚職に染まりそうにないエリートと交代させている。しがらみがなければ透明性が高まるだろうが、その分、経営的なマネジメントに遅れがでるだろう。

シノペック(中国石油化工業集団)、CNPC(中国石油天然気集団)、それに送電大手の「国家電網」などだ。

総合的な見地からいえば、米国の中国排斥戦略への対応であり、国家安全保障の発想から組織的再編を急ぐわけだが、ファイナンスの面から考えると、首をかしげたくなる。

アリババは香港に上場した。5億株の新株で、およそ1兆2000億円をかき集めた。アリババは既に2014年にウォール街に上場しており(時価総額54兆円。このうちの14兆円がソフトバンク保有)、香港でも上場となると重複になるが、問題は「なぜ、資金が必要なのか?」ということだろう。なぜなら新株発行というのは、新しい借金を意味するからである。

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樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

【知道中国 2019回】        
 ──「支那を亡すものは鴉片の害毒である」──上塚(37)
上塚司『揚子江を中心として』(織田書店 大正14年)

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冷静・客観的に判断すれば、欧米列強は日本を依然として「支那の執達吏、番犬たらしめん」とする下心を隠さない。日本に「無智驕慢なる番犬」の役割を与え続ける。だが、何時までも、そんな役回りに甘んじているわけにはいかないだろう。

かくて上塚は、「日本は最早此の如き愚直と、追隨の痴呆を止めねばならぬ。資本的侵略主義の下に、支那を分割せんとする白哲人と相携へて、此等諸國の傭兵となり、我が親しむべき同胞を侵犯する事は、日本國民の主義として許さざる所である」と決意を披歴する。

だが彼らを、はたして「我が親しむべき同胞」と無条件に信頼していいものだろうか。


上塚は「日支兩國は經濟的競爭の立場に置かれるべきではない。相共助して生存し得べきものである。隣國を束縛し、其の死命を制する事は歐米人の喜ぶ所ならんも、我が日本にとりては、何等の利益をも齎らさない」と続けた後、『揚子江を中心として』の長かった旅を、次の一文で閉じている。

「我が愛す可き隣人に對して温き友愛の誠を注げよ。彼をして蘇生せしめ、健康ならしめる事こそ、我が日本の前途に光明あらしむる唯一の方法である。(完)」

だが「温き友愛の誠」など、利害打算が無限に絡み合う国際政治の場では通用しない。

上塚が筆を擱いた大正14(1925)年10月から1年ほど遡った1924年11月、孫文は上海を出発し日本への最後の旅に発つ。神戸で約10年ぶりに再会を果たした頭山満に対し、「此の際特に二つの問題を支那の爲に御盡力を御願ひしたい。第一は治外法權の撤廢と第二は税權の獨立である」(藤本尚則『巨人頭山滿翁』頭山翁傳頒布會)と懇願したという。

それから程ない11月末、県立神戸女学校で講堂を埋め尽くした約2000人の聴衆を前にした孫文は、あの余りにも有名な「大亞細亞問題」を説いた。

「日本が(列強との間で結ばれた)不平等条約を撤廃した日が、我々全アジア民族の復興の日だった」

「日本がロシアに勝利した日から、アジアの全民族がヨーロッパを打ち破ろうとして、独立運動が発生した」(『孫文革命文集』岩波文庫 2011年)

こう日本を『賞賛』する一方で、孫文は次のように“注文”することを忘れてはいない。

「日本民族は、欧米の覇道文化を取り入れた上に、アジアの王道文化の本質をも持っていますが、今後は世界文化の前途に対して、結局のところ西方覇道の手先となるのか、それとも東方王道の防壁となるのか、それはあなたがた日本国民の、詳細な検討と慎重な選択に懸かっているのです」(同上『孫文革命文集』)。


「日本は世界の三大強國と誇ってゐるけれども思想その他の方面において儘く後塵を拝しつつあるのではないか、これは日本人が脚下の亞細亞を忘れてゐるためであつて日本はこの際速やかに亞細亞に歸らねばならぬ、而して第一着手に先づ露國を承認すべきだと思ふ」(『大阪毎日新聞』大正13年12月9日)とも付け加えた。


やがて帰国の途に就いた孫文は船中で体調を崩し、日本を離れて3か月後の1925年3月12日、北京で「革命未だ成らず」の一言を遺して不帰の客となる。


以上を要するに、日本は「西方覇道の手先」から脱し、「速やかに亞細亞に歸」り、本来の「アジアの王道文化の本質」に目覚め、「東方王道の防壁となる」べきだ。その第一歩として「露國を承認すべきだと思ふ」というのが孫文の趣旨だろう。

だが、ソ連が新しい形の「覇道国家」であり、孫文の期待したような「王道国家」でなかったことは、その後の歴史が明らかにしている。


はたして中国は「我が愛す可き隣人」なのか。日本は西欧列強がアジアに据えた「無智驕慢なる番犬」に過ぎなかったのか。

またまた大難問に突き当たってしまった。


2020年01月20日

◆ロシア内閣、唐突な総辞職

宮崎 正弘

 
令和弐年(2020)1月17日(金曜日)通巻6342号  

 マトリョーシカもビックリ、ロシア内閣、唐突な総辞職。
  新首相のミハエル・ミシュースチンって誰?

15日、セルビアを訪問する直前のプーチンが、突如、メドベージェフ首 相を更迭し、内閣総辞職を断行させた。そのうえで、まったく無名のミハ エル・ミシュースチンを新首相に指名、ロシア議会はただちに承認した。
 
セルビアの首都ベオグラードでは治安悪化にそなえて警備態勢を敷いてい たが、プーチン暗殺計画のテロリストを拘束したと発表した。

メドベージェフ内閣の総辞職というサプライズに動揺したのは株式と為替 相場。ルーブルは対米ドルレートを61・81から68・86に下落させ た(1ルーブル=1円77銭から1円62銭に)。ちなみに現在の新ルー ブルがソ連帝国崩壊後に発行されたおりは1ルーブルが6円ほどだったか ら、通貨は徐々に旧ルーブルのような紙くず化を演じていることが歴然と なる。

原油相場の暴落がロシア経済低迷の主因である。だが、新興財閥のロシア 特権階級が破天荒な汚職を展開し、その資産を英国、米国に分散して蓄財 していた。

ところがロシア経済制裁を課している米国が在米資産凍結としたため、ロ シア経済低迷を加速させ、とどのつまり、ロシアが経済的に依存するのは 中国ということになる。せめて心理的状況の改善をとばかり、プーチンが 命じたのは、サンクトペテルブルグに宏大なプーシキン記念館を設立した ことくらいだ。

原油・ガスのほか、ロシアが輸出して稼げるのは武器しかない。ロシア製 の自動車は西側で買う人がいない。ウォッカ? メチル入りの偽ウォッカ が出回っているため、ロシア人は自国ウォッカを飲まず、米国産かス ウェーデン産を呑んでいる。そのうえ、近年のロシア人の志向はスコッ チ、アイリッシュ・ウィスキー、そしてニッカへ変化した。

それはともかく、「ノルド・ストリーム1」は、対独向け輸出が継続され ているが、「ノルド・ストリーム2」(バルト海海底をパイプラインで繋 ぎ、欧州へ輸出)は米国が制裁中のため、工事がストップしている。

プーチンはこのためサウザンルート(南方油送管)、すなわちトルコ経由 ギリシア、ブルガリアルへの開拓に着手し、長年敵対したトルコのエルド アン政権とにこにこ人工的な笑いを浮かべながら握手したのだった。


▲新首相は税務署あがりなのに、なぜか資産家

さて、突然のメドベージェフ首相辞任、内閣総辞職だが、メドベージェフ は新たに国家公安委員会副議長の職に就くとされる(モスクワニュ−ス、 1月16日)。

ならば税務署あがりの新首相ミハエル・ミシュースチンって何ものなの か? 無名ながらもプーチンの親しい間柄でホッケー仲間とされる。

地味な経歴、その仕事のわりに豪邸を構えていることで知られる。

モスクワ郊外ルブリヨブカに敷地面積5500平方メートル、建物が 700平米というから相当な豪邸だが、ミシュースチンは2001年から 05年まで、この不動産のオーナーとして登記されている。

以後は「ロシア財団」が持ち主となっている。ところが前掲モスクワ ニュースによれば、ロシア財団の事実上のオーナーはミシュースチンの息 子二人。資産価値は950万ドル。(10億5000万円弱)。またミ シュースチン夫人は同財団から八年間に1250万ドルの報酬を受け取っ ていた事実も浮かんでいる。

多くのロシアウォッチャーは、プーチンが近日中に改憲を提議し、 2024年以後も権力の座を維持するための「院政」の準備段階に入った のだろうと分析している。

あるいは憲政にしたがって3度、首相の座について、大統領をコントロー ルするか、というのも、新首相に指名されてミシュースチンが、次期大統 領に就くというシナリオがあり、その場合、憲法改正をおこなって、また もや大統領は飾り(メドベージェフが「大統領」時代、まさにプーチンの 操り人形だったように)として振る舞うのか、いずれにしても憲法改正が 政治日程にのぼってくる。

 
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樋泉克夫のコラム 
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【知道中国 2018回】                 
 ──「支那を亡すものは鴉片の害毒である」──上塚(36)
上塚司『揚子江を中心として』(織田書店 大正14年)

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アメリカに煽られた排日旋風が「燎原の火の如く全國に廣がつた」こと で、「支那全權は遂に巴里會議の調印を拒まざるを得なくなつた」。そし て「支那の驕慢は遂に低止する所を知らざるに至つた」だけではなく、 「此の勢に更に油を注いだものは華盛頓會議であつた」。

「支那の驕慢」も度が過ぎると堪忍袋の緒が切れて、暴支膺懲に繋がっ てしまったのか。

「華盛頓會議の目的」は、アメリカ代表が説くように「海軍々備の縮 少、日英同盟の廢棄、極東問題の解決に存した事は疑を容れない」。だが 「極東問題に關する米國の意圖が、支那の主權擁護、領土保全、極東平和 の美名の下に、列國の既得經營せる特權を放棄せしめ、自ら之に代らんと するの覇心」にあることは明らか。

そこで「米國は頻りに支那に迎合して、支那の驕心を益々増長せしめる事 を忘れなかつた」。

かくして「支那の主張通りに會議を通過したので、支那人の意氣は益々 昇るのみであつた」。

つまり「歐州戰爭に依つて、支那は有形無形に勞せずして非常なる利益を 受けた」ことによって、「多年支那の上に加へられたる壓力は一時に輕減 せられ、國民は自己の準備如何をも顧みず、列國に向つて自主平等の地位 を要望して彈ね上つた」。かくして「激烈なる排外運動が至る所に蜂起」 したわけだが、「蓋し其背後に此の如き思想の流れが先導を爲して居る事 を忘れてはならぬ」。

これを要するに、第1次世界大戦で世界最強の力を手にするに至ったアメ リカが、戦争の後遺症に苦しむ欧州列強を尻目に中国利権に手を突っ込も うとしたことから中国に迎合し、やがては中国をツケ上がらせてしまった。

中国における「激烈なる排外運動」の背後にアメリカの「覇心」──今から 1世紀ほど昔の『アメリカン・ファースト』といったところだろう──が あったことになる。“共同正犯”は、どうやらアメリカらしい。

「不平等條約廢止、關税自主權の撤廢等」を軸とする「激烈なる排外運 動」は、激烈な排日運動となって日本に牙を向ける。排外運動の主唱者で ある孫文は「革命成就後、一貫して之を主張し〔中略〕死に至る迄變わら なかつた」。「我が頭山滿翁内田良平氏等」は、その孫文を心底から支援 した。ということは孫文への支援は、皮肉にも回り回り、予期せぬ形で排 日運動に行き着いてしまったということだろうか。

「支那の民心は、革命及歐州大戰の洗禮を受けて非常に變化し、進歩して 來た。彼等は今や自己の周圍を顧みて、治外法權、關税監督權、租借地、 公使館區域、其の他自主獨立の國家として、有り得べからざる幾多の屈 辱、不名譽を回復し、其國家の古の盛時に還さんと熱望し、努力して居 る」。それだけではない、「其の運動は熱火の如く、其の前途に遮る何物 をも焼き盡さずんば止まざる慨がある」。だからこそ「我が日本は、宜し く此の苦衷に同情し、誠意と公正とを以て之を援助し、協力して支那保全 の公義を完からしめねばならぬ」と、上塚は高らかに宣言する。

その心意気は尊い。だが、この考えを貫こうとするなら、明らかに「列國 の既得經營せる特權を放棄せしめ、自ら之に代らんとするの(アメリカ の)覇心」と真っ向からの対立を覚悟しなければならない。上塚の鋭い先 見性には敬服するしかないが、はたして当時の日本は、その覚悟と実力に 加え、他の列強を説得するだけの理論を持ち合わせていたのか。

「從來、我が日本は、常に英米諸國に追隨して、支那に對する彼らの番犬 となり、執達吏となり、鬼面して支那を嚇し、却て其の怨恨を一身に集 め、排日の二字によつて報復せらるゝの愚を學んで居る」。

現に列国間で議論されている「支那鐵道を如何にすべきか」の国際的課 題についても、欧米列強の提案では日本には「幾何の權限」も与えられて はいない。
これが実態だ。《QED》
    
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■読者の声 ●どくしゃのこえ READERS‘ 
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(読者の声1)東京新風倶楽部 映画上映会のお知らせ。上映作品は「上 海陸戦隊」(昭和14年)です。

昭和12年に起きた上海事変における当時の大日本帝国海軍陸戦隊の活躍が テーマ。

この昭和12(1937)年と言えば、盧溝橋事件、通州事件(ともに7月)が 起きた年でもあり、8月の上海事変、そして12月の南京陥落と激動の時代 が続いていきます。監督は熊谷久虎、主演は大日方傳、原節子が何と中国 人女性の役で出演。

「あの原節子がこんな役を‥‥」と驚くこと確実の作品でもあります。興味 のある方はぜひご参加ください。
          記
とき   2月9日(日)午後3時開場 3時半上映開始
ところ  TKPスター貸会議室飯田橋
     東京都千代田区飯田橋3-4-3エレガンス飯田橋2階
     http://www.kaigishitsu.jp/gmap/gmap-iidabashi.html
参加費  無料(カンパを頂ければ幸いです)  
     事前申し込みは不要です、直接会場にお越しください。
    (三浦小太郎)



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(読者の声2)貴誌前号に掲載された加瀬英明氏の日本女性論について。

なくなったのは過去の女、祖母祖父、近所の長老、などによる歴史・価値 観・仕草・などの伝達だけではなく、家族・会社家族・国家を含めての崩 壊現象である。それを物理的に表すのが「少子化問題」。その根本は男が いなくなった、中性的な可愛いだけの弱い頼りにならないオトコノコばか りでは女は靡かない。危なくてとても子供どころでは無い。

国民が税金を払う義務を否定する者は少ない。税金を取り立てる最大の理 由は、国を守るため、国民の生命、文化歴史、財産を守るためである。故 に、国民が金だけではなく、直接国防の義務をおう、と考える国は多い。 形は「徴兵制度」ではあるが「文化歴史の防衛のための教育機関」として 創造され運用される。

かつて故三島由紀夫氏が肉体を速成し、仕上げの意味で自衛隊に一月ほど 入隊したが、幼少の頃は女の子として、ママゴトを女の子と遊んでいた三 島氏、青瓢箪と言われていた青年が、嬉々として即座に男に生まれ変わる 記録を書いておられる。

運動会で横に一列に並んで全員一等という嘘を教える文科省指導の学校と は別次元の本当の役に立つ体験になる。巨大な兵器タンク、ヘリからの降 下、機関銃などを自己の全体験的に受けるだけで、お子さん方は即座に男 に生まれ代わる。

徴兵制とは、国を守る義務、権利がある者のみが参政権を持つ。バカでも 幼児でも外人でも帰化人でも日本に住んでいれば誰でも国政に参加でき る、という現在の仕組みでは国は必ず崩壊する。

文科省を今、廃止して現在の全ての学校を完璧に改善したとしても何世代 もの時間がかかる。

NHKをぶっ壊し、かつ民放放送をまともにしても、その劣悪な影響力はあ まり減らないだろう。「援助交際」を可能にしたSNSによる子供同士によ る生活・文化・指導もテレビ以上に危険である。

保守論者がいくら支那や朝鮮の悪口をぶちまけても何も変わらない。 「ゴーンが悪い、特捜は正義の味方」という大合唱。朝鮮でさえ最近では 内部に反・反日論者が出ているのに、日本では反論を許さない「空気」に 支配されている。批判、評論ばかりではなく、具体的な解決法を指導者は 提示すべきである。トランプ氏は目標「アメリカ再建・MAGA」を設定し、 具体的に公示していた解決策をどんどん実行している。

「徴兵制度党」は少い予算で、GDP10%の軍事予算に匹敵する防衛力をつ ける、おまけに少子化も止まる。ついでに原爆もイスラエル並みに秘密裏 に400発用意します。という政治家は居ないのだろうか。三島氏が生きて おられたらそんな激を東大安田講堂で飛ばし、あっという間に総理になっ て、彼の「文化防衛論」を実現する(新年の初夢)。
   (KM生)



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(読者の声3)加瀬さんのエッセイ(貴誌前号)で、
「わたしは許しません」といって立つと、隣室へ行って父のために翌朝の 下着や、服を整えはじめた。

ここを読んで、
あぁ、重光葵さんのお母様も、「私は、そのような事をさせる為に貴方を 育てたのではありません」と、怒ったとか、当時の女性は、懍としている し粋ですよね。また鶴お祖母様ゆかりの会津若松と言えば、中野竹子 

武士の猛き心にくらぶれば数にも入らぬ我が身ながらも

竹子らが命がけで守った照姫は 

梅もねやのふせごにかをりあへぬ君待よはの心しりきや
 
容保への「逢いて逢わざる恋」王朝の世からつづくこのような美意識を身 につけて忍ぶ恋に生きた女性。
こう見て来ると、現代女性との違いが歴然とします。加瀬さんは、日本女 性に絶望することはない。と締め括っておられますが、はてさて?(深澤 文子)

2020年01月19日

◆13億ドルの「手土産」(?)

宮崎 正弘

 
令和弐年(2020)1月16日(木曜日)通巻6341号   

習近平がミャンマー訪問、13億ドルの「手土産」(?)
  チャウピューの港湾プロジェクト、最終決着か。スーチーと会見へ。

 2020年1月17日、習近平主席はミャンマーを訪問する。
 目的はシルクロード構想(一帯一路)の目玉プロジェクトのひとつ、チャウピュー港湾整備事業(免税工業特区建設など)で、スリランカのハンバントタ港、パキスタンのグアダル港、そしてバングラデシュのチッタゴンの浚渫工事請負、モルディブの無人島開発など、「借金の罠」作戦の一環と考えられ、とりわけインドが警戒を強める。

 チャウピュー港は中国へ向かうガスパイプラインがすでに敷設されており、雲南省の昆明と結んでいるが、地中にパイプラインが埋められているので、現場へ行っても運転手の指摘があるまでわからなかった。

 チャウピュー郊外に広がる広大な土地(台地のような農業地帯と山林)はすでに中国が買い占めており、大きな看板と事務所のビルが建っていた。
しかし工業団地や港湾などの工事を始めた様子もなかった(2018年初夏の頃)。けたたましくも勇ましい掛け声だけで、実態がないことを筆者は当時レポートした(拙著『日本が危ない!  一帯一路の罠』、ハート出版を照)

 工事の遅れはラカイン州の地政学的要衝において、チャウピューが適切か、それとも北のシットウェイ港のほうが適切かを判断しかねたこと、スーチー政権が最終的な態度を示さなかったことなどだった。
 
 ラカイン州は、ロヒンギャが集中して住んだ地域であり、仏教過激派がイスラムのロビンギャを追い出し、かれらはバングラデシュに逃れた。その数最低でも70万人、国連の援助でテント生活が続いている。

 このロヒンギャの難民問題で世界のメディアが騒ぎ、ミャンマーは国際的孤立を深めていたうえ、当初示された中国のプロジェクト予算があまりにも膨大で、総額70億ドルをミャンマーが最終的に支払えないことが明瞭、したがって13億ドルへの減額という決定がでるまでに時間を要したのだ。

中国は、ミャンマーが国際的孤立に追い込まれた隙間に、忍び込むようにしてスーチー政権に近づき、昨年は王毅外相がネピドー(首都)入りして、最終案を煮詰めていたのである。ミッソンンダム建設中止で冷却化していた中国とミャンマーの緊張関係は、突如、友好関係に変貌した。
1月17日からの習近平訪問は、段取りがついたからとみるべきで、手土産は13億ドルの港湾開発である。


▼赤い資金と軍事支援はアジア諸国にとっては魅力なのだ

バングラデシュ(昨師走)とスリランカ(2019年6月)へプロジェクトの決定前に中国はフリゲート艦を寄贈している。
ならばミャンマーへは? 同国の政治実権はスーチーにはなく、軍が握る。軍が賛同する背景に何らかの軍事的な装備の贈り物があるはずだろう。

地政学的に見れば、南シナ海からマラッカ海峡を抜けてカンボジアのシアヌークビル港はすでに中国の「領土」然としており、ミャンマー(チャウピュー)からバングラデシュのチッタゴン、スリランカのハンバントタ港はすでに99年間の租借が認められ、中国の軍港に化けている。
つまりアンダマン海からベンガル湾を扼する軍事態勢が中国基軸に変貌した。

さらにインドの南端を北西に舵をきればモルディブ、そしてパキスタンのグアダル港。その先がホルムズ海峡、紅海ルートでは入り口がジブチ(すでに中国の軍事基地)と、いまや歴然と中国の軍事力突出地帯となってしまったではないか。

そして、このシーレーン防衛を表看板に、中国は一日800万バーレルの石油輸入と、マラッカを経由しないでもパイプラインで近道ができるミャンマーのパイプラインが完成、パキスタンとも新橿ウィグル自治区のカシュガルへと至るガスパイプライン、石油パイプラインの二本のルートがまもなく完成する。
○△□◇み◎○△□や○△□◇ざ◎○△□き△□◇◎ 
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■読者の声 ●どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS ★読者之声▲
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(読者の声1)貴誌前号の読者の声「椿本祐弘」様のご意見にある、山本五十六がドゥーリットル空襲にあわてたのではないかという意見ですが、山本の最後の書簡(城戸忠彦宛 昭和18年2月)には、ドゥーリットル空襲は「オモチャの空襲」だと述べられています。
これから本物の空襲が始まるのだよと。『山本元帥前線よりの書簡集』より。
まあ、ドゥーリットル空襲からはだいぶ経った後での所信で、当時は驚いたかもしれませんが。
ついでながら貴誌6338号の樋泉克夫先生『知道中国』のコラムに出てくる、「シームス・カレー商会」が獲得した支那五鉄道の利権(1915年)ですが、裏話があります。
その利権はその他の列強の利権が複雑に入り組んでいたところだったそうで、北京政府の役人はわざとそれを知った上で契約を結んだそうです。
間に立ったアメリカ公使は、反日で有名だったポール・ラインシュ公使。21か条問題(1915年)をアメリカに焚きつけた人物です。日本が利権を拡大しようとしているとして反対したんですが、自分もそうしようとしていたんですね。
シームス・カレーの利権には内乱の危険があるとして孫文も反対。彼は反北京政府だから当然でしょうが。
詳しいことは拙訳書『満洲国建国の正当性を弁護する』(ジョージ・ブロンソン・リー著)112〜118ページをお読みください。ジョージ・ブロンソン・リーは支那鉄道問題の専門家で、満洲国の顧問となりました。
(田中秀雄)

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(読者の声2)旧正月元旦は1月26日です。香港では恒例の花火大会が中止となりました。大群衆と混乱、治安維持のためとかが花火大会中止の理由ですが、爆弾を準備していた過激派のアジトが手入れされ、学生さん三名が逮捕されたとか。公安のやらせの観なきいにしもあらずですが。。
  (JJセブン)

(宮崎正弘のコメント)旧正月は春節。官製の情報は操作されており、気を付けないといけませんが、武闘派、過激派がもっと過激になるのも、こうした運動にはつきもの。香港が次に爆弾テロを警戒するのも、警備側の論理としては当然でしょう。26日の春節、小生はニューヨークのチャイナタウンで見学する予定です。
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  ■「加瀬英明のコラム」メールマガジン
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ほのあかりの美 粋が日本女性の美
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 私は昭和11年生まれだが、明治生まれの2人の女性をよく知っていた。
 父方の祖母のか津と、母方の祖母の鶴だ。2人はそれぞれ9人と、8人の子を産んで育てた。2人とも小柄で気丈だった。
 先の戦時中、私は外務省の少壮幹部だった父を東京に残して、母と長野県に疎開したが、空襲下で、か津が父の面倒をみた。
 戦争が敗戦に終わって、9月2日に東京湾に浮ぶ敵戦艦ミズーリ号艦上で、降伏調印式が行われた。父は全権団の随員として、甲板を踏んだ。敵将マッカーサーが傲然と立つ前で、重光葵全権が万涙を呑んで調印するわきに立っているのが、42歳だった父だ。

 父はその前の晩に、か津に降伏調印に随行することを告げた。か津は父を正座させると、「私はあなたを恥しい降伏の使節として、育てたつもりはありません。行かないで下さい」と、凛としていった。
 父はこの手続きを経ないと、日本が立ち行かなくなると、恂々(じゅんじゅん)と説明した。しかし、か津は承知しなかった。「わたしは許しません」といって立つと、隣室へ行って父のために翌朝の下着や、服を整えはじめた。衾(ふすま)ごしに泣きじゃくる声が、低く高く聞えた。

 私は10月に父の借家に戻った。か津は私を正座させると、「英明さん、この仇はかならず討って下さい。約束して下さい」といった。私はいまでも、この教えを大切にしている。
 鶴も焼け出されたので、戦後、鎌倉の私たちの家で暮した。鶴の父は薩摩兵を率いて、会津若松の攻城戦を指揮して、落城した時に自害した家老夫妻の娘を娶って、鶴が生まれた。会津若松城の別名の鶴ヶ城からとって、名づけられた。
 私はか津と鶴の洋装姿を、一度も見たことがない。もっとも、あのころは服といえば和服であって、洋服はまだ洋服と呼ばれていた。

 鶴はいつも毅然としていた。私がある時、時間を守らなかったところ、「時間も太陽や、人や草木と同じ生き物です。あなたの親しい友達です」と諭された。凛としているところが、美しかった。

 私は幼いころから、母が着物を着るのを手伝わされたことから、着付けの免許も持っている。私は多年、公益社団法人『全日本きものコンサルタント協会』の役員をつとめているが、着物は心で着るものだ。諸外国のようにただ衣が美しく、正しく着ているだけではならない。立ち居振る舞いが、何よりも問われる。

 私は空手道の有段者として武道に携わっているが、武道は心の道とされている。剣道、弓道、杖道、茶道、書道、華道、香道も、すべて内面の心のありかたが、基本となっている。日本だけにみられることだ。

 日本の心を一言でいえば、何だろうか。和の心である。
和のために控え目であること、偽らないこと、周囲を思い遣ることが求められている。日本は美しい心の国であってきた。
 武道をはじめ、何ごとについても感情を露わにすることがあってはならなかった。和の心は自制心によって成り立ってきた。
 私が40代のころまでは、農村や漁村に皺だらけの老女がいた。
 白いほつれ髪とともに、皺の数だけひたむきに生きてきた美しさがあった。いまでは高齢の女性が増えたものの、このような美しい女性を見ることがない。
 日本女性の美しさを一口でいえば、粋(いき)であろう。粋は控え目であって、表に現われない心意気、心ばえ、気合がこもっている。
 というものの、粋は異性なしに成り立たないから、巧みに媚態を秘めながら、暗示して男心をくすぐる。苦労があるとしても、凛としているから感じさせない。

 ほのあかりの美というのだろうか。つい3、40年前までは、粋をはじめとして日常生活のなかに、気というリズムがあった。
 人生は誰にとっても、苦の連続だと考えられていた。苦楽といって、まず苦があった。今日では大多数の人々にとって、楽の連続でなければならない。。
 そのために、すぐに不満を露わにして、耐えることができなくなった。挫折しやすい。
 今日では屋内まで、LEDなどの剥き出しの照明によって陰影が消され、凹凸がなくなって、空間がつかみどころがない無性格なものとなっている。
 とくに、若い女性たちは口を開くと、美しい音楽を聴いた、よい景色を見て「癒されました」という。私は「え? どこか病いを患っているのですか」と、たずねることにしている。癒されるというのは、病んでいることを前提にしている。
 今日の女性は化粧が上手になったのと引き替えに、表情が険しい。外面を飾ることに熱中するあまり、内面を疎かにしている。
 だが、女性は男性の鏡の存在だ。男性が劣化したために、女性を道連れにしたにちがいない。

 いまでは「ブス」というと、容貌を指す言葉となっている。だが明治時代までは身のこなしかたが醜悪なことを、「不粋(ぶす)」といった。いつの間にブスが容貌についてのみ、いうようになったのだろうか。
 江戸時代から明治までは、派手なことが嫌われた。けばけばしい身装をした田舎者の女性を、「葉(は)出(で)」と書いて嘲笑した。余計な葉がはみだしていることを、意味していた。
 この30年ほどだろうか、羞(はじら)いや、ちょっとした女らしい仕草をみせたり、目もとがすずしい女性がいなくなった。
 もっとも、まだ日本には美しい女性がいる。11月に兵庫県に講演に招かれた時に、受け付けの20代のお嬢さんの物腰が、魅力に溢れていた。祖父が陸軍落下傘部隊の勇士だったということだった。
 日本の女性に、絶望することはない。
         (かせ・ひであき氏は外交評論家)

2020年01月18日

◆台湾総統選に勝った民進党、戦い済んで

                                    宮崎 正弘
 

令和弐年(2020)1月15日(水曜日)弐 通巻6340号   

台湾総統選に勝った民進党、戦い済んで、「勝利の美酒」も醒めて
次の目標は2024年、頼清徳(副総統)政権の実現ではないのか?

1月11日、結果は以前から小誌も予想した通り、台湾総統は蔡英文が再認された。

上初の810万票という「勝利の美酒」に酔うのは1夜限り。結果を分析すれば、投票率が75%で若者の参加が目立ったのに、この新有権者は民進党ではなく、新党へ流れていた。

何を言っているのか、よく分からないがニューモードの「台湾民衆党」(何文哲台北市長が率いる)がいきなりの五議席。この犠牲となって宋楚諭の「親民党」は4・6%の得票があったにもかかわらず(5%ルールに従って)五議席からゼロへ。まさに壊党の危機に陥った。つまり新旧交代がはっきりと出たのだ。新世代からすれば、民進党も古いのだ。

同時に民進党は立法委員選挙では7階席減、国民党は3議席増となり、支持率は国民党が6%増だった。具体的な数次をみると、これでは「大勝利」とは言えないのである。

この事実は重要である。台湾の有権者は満腔の賛意を示したのではない。それもこれも蔡英文への「消極的」な支持であることを証明しており、他方で国民党は「中国共産党の番犬」でしかないが、いまだに39%の台湾有権者が、この政党を支持しているという奇妙な乖離をいかに説明できるのか。

今後4年、台湾政治が前途多難なことは指摘するまでもない。

当面、一国両制度をきっぱりと拒否し「現状維持」を継続しつつ、アメリカの支援を拡大し、2024年に備えることになるだろう。

極言すれば、蔡英文政権は次の独立を主張する政権への「つなぎ」であり、2024年に頼清徳政権実現へ向けて、党内結束を強固な態勢とする必要に迫られる。

民進党支持者の多くが頼清徳を信任するのは、かれが台湾独立を明確に志向しているからだ。

アメリカで言えばペンス副大統領のように、安定を堅持しつつも、着実に実績を積み上げる。頼清徳にとって次期総統への道は険しいが、難関はむしろ党内の4つの派閥をうまくまとめる指導力が発揮できるのかどうかにかかっている。

五月の正式就任まで、頼清徳(副総統に就任する)はフリーの立場にある。

ということは、訪米、訪日のチャンスであり、日本にきて人脈を増やし、或いは安部首相と懇談の機会も設営が可能、靖国神社への参拝も、現時点では自由は立場だから北京としては歯ぎしりしつつ、見ている他はないだろう。
 
ともかく台湾総統選挙、大勝という印象と実態とはかくも隔たりがある。


 
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樋泉克夫のコラム 
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【知道中国 2017回】                
 ──「支那を亡すものは鴉片の害毒である」──上塚(35)
 上塚司『揚子江を中心として』(織田書店 大正14年)

               ▽

1896年にフランスとの間で契約が締結された?越(昆明=老開)鉄道を皮切りとして、1916年までの間に、イギリス(7路線)、白耳義シンヂケート(3路線)、フランス(2路線)、四国財団(2路線)、アメリカ(5路線)、日本(1路線)と、「揚子江流域の鐵道は、悉く列強の手に委せられ、列強は此の利權を基礎として牢乎たる勢力を扶植し、若し此の情勢を以て推移したならば、支那は分割乎、然らずとも、鐵道の共同管理は是れ當然の運命であつた」。

鉄道建設に関する借款問題が「辛亥革命の導火線とも稱すべき」動きを誘い、やがて革命が勃発し清朝が崩壊し、中華民国が生まれる。だが、全国混乱は続く。この機を逃すまいと、「邊境の疆域至る所に蜂起した。就中蒙古及西蔵の兩域は率先して自主獨立を宣言する」。この動きを見透かしたかのように、「露、英の巨腕が一は蒙古に向つて、他は西蔵に對して振るはれたのは言ふまでもない」。

辛亥革命を達成し中華民国を打ち立てたとはいえ、財政危機という現実は避けようもない。そこで革命のキッカケとなったはずであった「鐵道利權は、續々として革命政府によつて列強に濫與さらるゝに至つた」。そのまま第1次世界大戦が勃発しなかったなら、鉄道利権をテコに列強による搾取・支配構造は定着化しただろう。


だが、戦争によって、ヨーロッパ列強は中国利権どころではなくなってしまった。その間隙を衝いて「支那に於て其の勢力を伸張しめたものは、日本と米國とである」。


日本は「日英同盟の誼によつて聯合國に参加し」、東洋におけるドイツの権益を押さえた。その一方で「工業は振興し、商圏は擴張せられた。一躍して債權國となり」、「盛んに支那の借款に應じ」、「此の勢に乘じ對支21ケ條を提出した」。その結果、「猛烈なる反對が四方から起つた、排日を叫び、不賣同盟が至る處に勃發した」。


そんな「日本より以上に其の勢力を支那の上に植付けたものは米國」である。じつは第1次世界大戦参戦によって莫大な富を得たことから、アメリカが進める「資本主義的侵略政策は、其の有効な投下地を求むるに汲々であつた」。であればこそ、「彼の眼が、特に廣莫たる老大支那の上に注がれた事は、之れ當然の成行と云わねばならぬ」。そこで後発国としては、先行していた「各國に向つて、其の勢力範圍を撤廢させ、門戸を開放せしむるより外に途は無」かった。

戦争の結果、「歐州の列強は疲弊困憊」の極にあり、アメリカの敵ではない。「東洋に於ける障害は一日本あるのみ」となったところで、「果然1917年11月、彼は日本に向つて、支那の門戸開放、機會均等を誓約せしめた」。この石井ランシング協定をキッカケにして「米國の弗費は、自由に支那を闊歩するの見込みがついたのである」。また「聯合國側に組して獨墺に宣戰」したことで、「支那の得たる収穫は非常に大なるものがあつた」。

「(辛亥)革命後、洪水の如く全國に?流せる思想上の變化は、歐州大戰の結果更に徹底し、讀書生は勿論、店頭の小僧さへ、自由を論じ、民主、共和を議するに至つた。婦人の間には參政權の要求が叫ばるゝに至つた。就中米大統領『ウ井ルソン』の提唱せる民族自決主義は、束縛、侵犯、凌辱、四面梗塞の支那に取り天來の福音だつた」のである。

 このような状況下で始まったゆえに、「支那は此の機(ヴェルサイユ講和会議)に於て、あらゆる利權を回収せんと猛烈なる活動を開始し」、「遂に支那は、我が日本が多大なる犠牲を以て攻略したる山東一帶の利權を無代償を以て還附せよと暴言を吐くに至つた」。

「之れに對する日本の拒否は米國の煽動と相俟つて果然支那の排日熱を激發し、其の勢は燎原の火の如く全國に廣がつた」のである。
やはり排日の背後にアメリカあり、なのか。《QED》
    
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読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
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(読者の声1)革命前のイラン。40年前といえば一昔前で、憶えている人が減ると「洗脳」は簡単に出来る様になる。いや違う、という年寄りがいなくなる。大正時代の「モボ・モガ現象」あるいはGHQ支配下における3S(スポーツ、セックス、スクリーン(米国の映画)による極端な西欧文化礼賛、があった事も忘れられる。

1970年代には西欧ではビートルズなどによる体制の文化全否定が世界同時に起こり、若者のファッションは劇的に変化した。

イランもその影響を受け、当時の画像を見ると街には大きなアメ車があふれ、女はミニスカートを、男は長髪のビートルズの様で、まるで当時の米国の大学と見分けがつかない。つまり当時のイランは米国の一部の様な文化、自由と富を享受していた。彼らはまだその記憶があるから、現在宗教政権の抑圧に強く抗議している。

問題は日本の国内情報統制である。

マスゴミ、NHK、朝日など支那の「国立公共放送」の様な役割を嬉々として受け入れ、政府からはその謝礼をいただく、という共謀・癒着が現在も進行している。その例がこの「イラン革命前」の情報遮断である。

日本政府は、石油のためなら何でもとりあえず主義主張道徳同義宗教など関与せずと「アメリカの顔色を窺いながら、可能な範囲でイランとの関係を維持、強化する」方針を決め今日に至る。故に厳格なイスラム教政権を批判せぬ様マスゴミに通達し、日本国民はその様に洗脳される。

この様な情報操作は現在の対支那外交にも当てはまれ、支那占領軍共産党に阿ってチベット、ウイグル、臓器移植、人民弾圧などなど、GHQも感心するほど見事に「自主規制」されている。台湾も簡単に裏切って、今頃になって少し反省する様になった。

もちろん、国家運営は臨機応変にしかも短期・長期の国益の最適な解を求めて行う、べきではあるが、全国民の知識まで完璧にとりあえず操作してしまうと、その人工的に作った認識・情緒・価値観が国の政策にいずれ影響し、狂った方向に行く、行った、という日本の歴史がある。

山本七平氏の「空気の力学」であり、今回のゴーン氏の国内情報・有識者の特捜礼賛的な異様なまでの99%の「団結した意見」に国家の危険な脆弱さを見る。

特捜の99%有罪獲得率とは、99%危険な国の運営のフラクタルな仕組みの一例でもある。クワバラ、クワバラ。
   (KM生)
  
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(読者の声2)貴誌1月9日付通巻6337号で(アポトーシス)氏が「山本長官の脳裏には、日露戦争中、日本海で常陸丸・佐渡丸がロシア=ウラジオ艦隊に撃沈されると、民衆が第2艦隊長官の上村彦之亟の自宅に投石した、という生々しい、民衆不信の記憶があり、海軍は開戦劈頭に打ち上げ花火というか、華々しい戦果を挙げねば、民衆は米英との戦争にとても耐えられないと考えたと。「実際、その通りになった」というか、山本長官の思考のベクトルは、椿本氏の思考のベクトルとは逆向きだった、という事なのでは?」

と述べられている点ですが、
 
一般的には、山本案に基づくミッドウェー作戦(山本はもともとミッドウェー政略作戦には反対しており、それを強引に認めさせたのは首席参謀黒島亀人大佐である

という説もあるが)に対して、軍令部では反対論が強かった中で、ドーリトル空襲が発生したことから、軍令部の雰囲気も変わったと言われています。しかし、ドーリトル空襲など、どう見ても単発的で、反復継続的な作戦ではない、いわば米国内世論向けのショー的なものに過ぎず、山本五十六は過剰に反応し過ぎたのではないか、と私は考えます。生出寿氏は「真珠湾攻撃という大ブラフ(こけおどし)でアメリカをひっかけようとした山本が、逆手をとられてアメリカの小ブラフにひっかけられた感がある」と述べておられますが、同感です。

三村文男氏(『米内光政と山本五十六は愚将だった』の著者)は「(ドーリットルによる)4月18日の東京発空襲の時も、私(三村)は東京にいて敵B25が飛ぶのを見たが、戦争だからこういう事もあるだろうと思っただけだった。ところが山本は余程のショックだったようで、その後の作戦に焦りと狂いが出て来るのだ」と述べておられます。

次に、1月14日付通巻6338号の「読者の声」意見について、簡単に私見を述べます。

まず、現下の問題を考えるにあたっては、「他人の経験(歴史)」に学ぶことは不可欠であり、ましてや「自分の経験(自国の歴史)」に学ばない、学べないのでは、大馬鹿というほかないということです。

次に、過去の歴史を見るに当たっては、政略面、戦略面、戦術面は、それぞれに別個の問題として論じるべきだということです。

すなわち、たとえ、日米戦争に自存自衛の側面があり、その勃発において、ルーズベルト、スターリンの謀略、挑発があったとしても(政略面)、そして、それが主観的には「やむを得ずにした行為」だと主張できたとしても、だからといって、英米に対する宣戦、先制的開戦が正当化、妥当視されるというわけではない、ということです(戦略面)。
 
開戦に踏み切った行為が、少なくとも主観的には、「やむを得ずにした行為」と主張し得たとしても、真珠湾奇襲というような作戦を実施したこと(宣戦通告が遅れたという点は決定的に重大な問題ではなく、いずれにしても米国の反応はそう変わらなかったのではないか)が賢明であったかというのは、さらに別の問題点だということです(戦術面)。

戦前の軍部についての評価ですが、負ける戦争をやったこと自体が愚かなことで、それに尽きるのではないか。孫子でも、「無謀な戦争はしない。戦争を決断する前に、戦争をするべきか避けるべきか、被害の大きさなどを考える」ことが肝要だと述べられています(始計篇)。

なお、守屋洋氏は、「大昔」に書かれた「孫子の兵法」を、以下の7つに集約されるとしています(Wiki)。
これらの諸点を総合的に精察して、東条英機や戦前の軍部が賢明であったか否かは明白だと私は考えます。
1. 彼を知り己を知れば百戦して殆うからず。
2. 主導権を握って変幻自在に戦え。
3. 事前に的確な見通しを立て、敵の無備を攻め、その不意を衝く。
4.
敵と対峙するときは正(正攻法)の作戦を採用し、戦いは奇(奇襲)によって勝つ。
5. 守勢のときはじっと鳴りをひそめ、攻勢のときは一気にたたみかける。
6. 勝算があれば戦い、なければ戦わない。
7. 兵力の分散と集中に注意し、たえず敵の状況に対応して変化する。
        (椿本祐弘)


(読者の声3)昨晩のフロントJAPAN番組「台湾総統選挙総括」(福島香織)「香港から見た台湾選挙と香港のこれから」(宮崎正弘)は下記でご覧になれます。
https://www.youtube.com/watch?v=fDsG5iK9cw8
 宮崎正弘の香港問題の解説は同番組の54分ごろから1時間12分までの部分です。(編集部)



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(読者の声4)ラジオ日本から番組のお知らせです。17日、金曜日)の「マット安川のずばり勝負」に宮崎正弘先生が生出演します。時局から国際情勢の分析を、マットさんとの対論のなかで、開陳します。

またリスナーの皆さんからのご意見、質問も受け付けています。番組中にメール送信先のメルアドも放送されます。
 宮崎先生の出番は17日午後1240頃から1357までの予定です。
  (ラジオ日本「マット安川のずばり勝負」番組担当)


2020年01月17日

◆フィリピンは中国と軍事演習の傍ら

宮崎 正弘

 
令和弐年(2020 )1月15日(水曜日)通巻6339号   

フィリピンは中国と軍事演習の傍ら、博徒、売春婦を摘発
 こなた小国へ台湾断交を迫り、他方で中国との市を破棄

フィリピンにおける中国ヤクザの浸透(これも「浸透作戦」?)は凄まじいことになっている。

就中、マカティではギャンブルに負けて、借金が払えるまで拉致される事件が相次いでいる。賭場に売春婦が屯しているのも、世界の常識に近いが(アムステルダムの飾り窓にも中国人がいるうえ、あの一帯はいまやチャイナタウンである)、中国のシンジケートのやり方は新手だった。

朝の通勤電車、一昔前は8割の人々が文庫か、日経新聞を読んでいた。いまはスマホ、それも新聞記事を読んでいるのは珍しく、大半が漫画か、ゲームである。そのスマホにおけるゲームも、複雑多岐で、画面も繊細、ゲームルールも高度化している。若者は、そのハイテク化にすぐになじむのだろう。

何を言いたいか。

いまアジア各地にはびこるオフショアギャンブルの実態が、このゲーム感覚の麻痺である。仮想空間でゲームに負けても、中国のヤクザシンジケートは追いかけてくるのだ。借金が支払えず、もし若い女性なら、売春組織に売られる。ヤクザが賭場と組んでいるケースが多いという。
 
マニラ首都圏マカティは、カジノが認められ、いま40万の中国人で溢れ、犯罪が横行し、ヤクザのシンジケートが浸透し、借金返済替わりに、若者らがゲームで客を釣るアルバイトを強要され、フィリピン国家警察が拘束した中国人売春婦だけでも数百の単位に登った。日本もIRが本格化すれば、いずれそうなる危険性が高い。いや札幌の歓楽街「すすきの」は事実上チャイナタウン化しているというではないか。
 
一方でドゥテルテ比大統領は親中路線を突っ走りつつ、スカボロー岩礁問題を棚上げし、中国海軍と比海軍とは合同演習を繰り広げた。

中国は南太平洋の島嶼国家に金をばらまきながら近づき、バヌアツ、フィジー、パプアニューギニア、トンガ、ソロモンなど次々と籠絡して台湾と断交させた。

国交は断絶したが、他方、中国のやりかたに反感を強める動きも顕在化し、ベトナムでフィリピンで、「中国は出て行け」の抗議デモが盛んである。

同時に、チェコのプラハは、上海との友好都市を破棄した。チェコと中国は外交的にうまくやっており、一帯一路に前向き。しかし首都は、中国人を嫌い友好都市はやめようと言い出した。

香港大乱、台湾における中国の浸透作戦の失敗と蔡英文大勝利の裏で、不思議なことが陸続と起きていた。

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【知道中国 2015回】                   
──「支那を亡すものは鴉片の害毒である」──上塚(33)
  上塚司『揚子江を中心として』(織田書店 大正14年)

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ドイツの権益が山東半島に集中していることは既に知られたところだが、「山東半島何ぞ獨逸野心の全部ならや」。じつは三国干渉に加わる以前、「(ドイツは)既に碩學『リヒトホーヘン』を派して、廣く支那内地を踏破せしめ其の後、各部專門家に命じて、支那全省悉く調査探究せしむる所があつた。即ち準備は成つて唯機會を待つのみとなつて居た」。


そこに降って涌いたのが辛亥革命であり、誕生直後の中華民国政府は財政難から、山東鉄道の延伸を条件として財政援助を求めた。得たり賢し、である。ドイツは借款要求に応じたのだ。それというのも「單に青島濟南間のみ」の山東鉄道では、「其の勢力の及ぶ所極めて限定せらるれる」がためであったからだ。その深謀遠慮な強欲さには頭が下がる。

かくして1913年12月31日に「獨支間の調印を見た」ことで、「一は山東鐵道と京漢鐵道を最短距離に結び、以て河南、直隷、山西、陝西等所謂支那中原の地の物資を吸収し、他は、漢荘(叙州)に於て、甘肅蘭州より、中部支那を?斷して揚子江に出でんとする、海蘭鐵道と交叉し、以て其の利益を青島に奪はんとするの宿望は達せられたのであつた」。

つまり「單に青島濟南間のみ」の山東鉄道では山東省の利権しか手に入らない。だから事前に「支那全省悉く調査探究せし」めた上で一気に勝負に打って出て、先行するイギリス、ロシアやフランスの鼻を明かそうとしたことになる。

これが国際政治というものだろう。


だが第1次世界大戦が勃発したことで、「日獨開戰の結果として、獨逸二十年の苦心なる根據地は一朝にして覆滅し」てしまう。以後、「巴里講和會議及華府會議等、前後三十數回の會議交渉を重ね」た結果、1921年1月、「日本が多大の犠牲を拂つ」てドイツから引き受けた「山東省の利權は、一擧手一投足をも勞せざる支那に對して還附せられたのである」。

ここで注目すべきが、三国干渉に加わる以前の段階で、既にドイツは中国全土の利権を標的に「支那全省悉く調査探究せし」めていたことだろう。


そう言えば今から20年ほど前だが、ミャンマー中部の大都市であるマンダレーを発ち中国との国境に東北部の要衝であるラシオ(漢字で「臘戍」と表記)まで歩いたことがある。マンダレーで調達したレンタカーで。運転手兼案内者と2人旅立った。途中、量り売りのガソリン・スタンドで給油していると、頑丈そうなランドクルーザーがやって来た。降りてきたのはドイツ人の男女に若いマッチョなミャンマー人。護衛兼運転手とのことだった。先方は「我われはドイツからやって来た地質学者だ」と自己紹介した後、「なぜ、こんな辺鄙な田舎を旅行しているのだ」と。
「中国国境に近い一帯の華人の調査を」と応えた後、「ところで、あんた方こそ」と訊ねると、「この一帯の地下に埋蔵されているとされる豊富な地下資源を調査するためだ」。


彼らがどの程度の調査をしていたのか。日本人の門外漢に分かるわけがない。だが、「(ドイツは)既に碩學『リヒトホーヘン』を派して、廣く支那内地を踏破せしめ其の後、各部專門家に命じて、支那全省悉く調査探究せしむる所があつた」との上塚の指摘に倣うなら、ミャンマー東北部で出会ったドイツ人地質学者の狙いが浮かんでくる。性急に結果を求める日本人には考え及ばないような息の長い行動であることは、やはり間違いない。
 
ここで漸く上塚の筆は「揚子江に於ける日本」に及ぶことになった。

「英、佛、獨、露、米の諸國が、恫喝、奸計あらゆる秘術を盡し、着々其の地歩を占めつゝある間に、我日本帝國は如何」。これが、実にイカンのである。上塚は「憐れむべし、其の國策は常に動揺して定まる所なく、就中揚子江流域に對する經營に至りては、退嬰自卑、常に英國の反感を慮つて、敢えて求むる所がなかつた」と結論づける。

「英國」を米国に置き換えるなら、現在の日本外交と大差なさそうだ・・・トホホ!《QED》
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【知道中国 2016回】               
 ──「支那を亡すものは鴉片の害毒である」──上塚(35)
  上塚司『揚子江を中心として』(織田書店 大正14年)

              ▽
 
「英、佛、獨、露、米の諸國が、恫喝、奸計あらゆる秘術を盡し、着々其の地歩を占めつゝある」の一文に「中」を加え、「憐れむべし、其の國策は常に動揺して定まる所なく、〔中略〕退嬰自卑、常に英國の反感を慮つて、敢えて求むる所がなかつた」の件に「英國」に代わって「関係諸国」の4文字を置いたら、あるいは現在の日本外交の実態を言い当てているようにも思える。

つまり「英、佛、獨、露、米、中の諸國が、恫喝、奸計あらゆる秘術を盡し、着々其の地歩を占めつゝある」にも拘わらず、「憐れむべし、其の國策は常に動揺して定まる所なく、〔中略〕退嬰自卑、常に関係諸国の反感を慮つて、敢えて求むる所がな」い。ということは、我が外交は安倍首相が「脱却」を掲げた「戦後レジューム」を遥かに越え、一気に一世紀ほど昔の大正末年に“先祖返り”したことになりかねない。じつに情けない限りだ。


それはさておき、「常に英國の反感を慮」りながらも手を拱いていたわけではない。僅かに一路線ではあるが、「江西省城南昌より、揚子江岸の一港九江即ち昔の潯陽江頭に至る」ところの南潯鉄道に関係していた。


だが、残念ながら「他國の如く、巧妙なる外交的壓力と、絶へざる野心の動きに依つて贏ち得たるものでは無い」。であればこそ、「此れには何等政治的意味を有せざる事は明かである」。いわばカスを掴まされたわけだ。これまたナサケナイこと甚だしい限りである。


さて日本が押さえた南潯鐡道だが、延伸に加え他路線との接続を果してこそ機能を発揮する。だが、それが日本にはできない。あるいは「英國の反感を慮つて」いたのか。この路線は「殆ど日本借款の下に經營され居るに當り、(関連する)南昌萍郷線は當然我勢力下に歸すべき十分の理由あるにも拘らず」、なんと「英國は窃に運動を進めて、一九一四年、突如」として日本の利権を掠め取ってしまった。盗人猛々しいのが国際政治というものだ。

振り返って見れば日英同盟は、ロシア帝国の極東進出に対抗すべく1902年に結ばれ、以後、第二次(1905年)、第三次(1911年)と継続更新され、1921年のワシントン海軍軍縮会議による四カ国条約成立に伴い1923年8月に失効している。

つまり1914年当時は、まさに日英同盟は有効だったはず。だから日本は「常に英國の反感を慮つて」いたに違いない。だが、当然のことながら、英国は端っから日本の「反感を慮つて」はいなかった。これが国際政治の現実と言うものだろう。

「我日本は(関連する)江西鐵道を政治的に利用せんとするものでは無い。唯其の開通の一日も速かならん事を冀ふものである。然るに、此の利權が英國の手に収められてより既に十年、鐵道建設に對して、果して幾何の努力が拂はれたのであるか。我等は其の誠意を疑はざるを得ない」。やはり「諸国民の公正と信義に信頼して」いるだけではダメなのだ。


たしかに「鐵道建設の急務は支那に於て最も深く感ぜらるゝのである」。それというのも鉄道が開通してこそ「資源の開發、文化の普及を期待し得」るからだ。

だが、「支那の鐵道が列國の借款に依つて縛られて居る間は到底之を望む事は出來ない」。だから日本は「政治的に利用せんとするものでは無い。唯其の開通の一日も速かならん事を冀ふ」しかない。ところが、である。この日本の姿勢は列強間に共通する“世界標準”ではない。だからこそ、列強は「日本はヨカラヌこと考えているのではないか。我われを出し抜くのではないのか」と訝しがる。そこで、訳も判らぬうちに“悪者”にされてしまうことになる。

歴史が物語っているように、日本人はこの辺の呼吸を呑み込めないし、駆け引きが不得手、いや出来そうにない。切った張ったが常態の国際政治の場は、日本人が示す誠心誠意なんぞは下世話に言う「屁の役にも立たない」。
そう、骨折り損のくたびれ儲け。
《QED》
   
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 AC論説 No.770 台湾の総選挙と将来 
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アンディチャンのアメリカ通信
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戦い済んで日が暮れて、幾家歓楽幾家愁。選挙には予想内と予想外の結果がつきものだ。予想外の結果が分析の資料となり、将来の予測となる。

蔡英文再選は想定内だったが817万票(投票総数の57%)を獲得したのは想定外だった。投票率が有権者の75%と高かったことも加え、今回の選挙は中国の台湾併呑に対する危機感が強く、「中台平和協議」を主張した韓国瑜と宋楚瑜に反対して蔡英文に投票した結果である。

2018年の中間選挙で民進党は惨敗したが今回は中国問題で蔡英文が187万票を獲得した。つまり2年前は国民が民進党にNoと言ったが、今回は中国にNoと言ったのである。中国問題が投票の主因だから宋楚瑜に票を入れた人はほとんどなくわずか60万票(4.2%)を獲得しただけだった。

投票率が高かった原因は多くの若者が投票したこと、若年層が中国の台湾統一に強く反対している証拠である。

台湾には中国の台湾統一に反対の高年層、中国に投資や中国と商売しているため態度が曖昧な30から60歳の中年層、そしてこれまであまり政治に関心のなかった若年層がある。今回は若者の反中国が蔡英文の得票になった。

一部の外省人は中国の金に買収されて韓国瑜に投票したとも言われている。韓国瑜が550万票を獲得したのは国民党の基盤の他に中国の金銭介入があったと言われている。しかし実際には中国問題と香港デモが台湾の選挙に大きく影響した。習近平の「2025年までに台湾統一を果たす」発言で起きた台湾人民の危機感(亡国感)と8ヶ月続いた香港の反中国運動が今回の選挙に最も大きな影響を与えた。

立法院議員(国会議員)の選挙では民進党が本来の68議席から7議席を失い、61議席を獲得したがそれでも過半数を維持した。国民党に投票したのでなく独立系の小政党に投票した結果である。

選挙には19政党が参加していた。独立系の小政党が増えた原因は国民が民進党と国民党に不満である証拠である。台北市長の柯文哲が1ヶ月前に創立した台湾民衆党でさえ155万票を獲得して第三政党になった。その代わり時代力量党は党内分裂で泡沫化した。

国民党の大変化は古参議員が七人も落選したことである。民進党も四人の古参議員が落選、時代力量党は一人を失い、宋楚瑜の親民党は一人しかいなかった議員を失った。古参議員の落選は国民が現状に不満である証拠と言える。新人議員の崛起が政治の若返りとなるかもしれない。国民党の呉敦義及び党首脳部は敗選の責任を負って総辞職した。

蔡英文政権の続投が決まって台湾の将来はどうなるだろうか。台湾の将来に最大の影響を与えるのは中国とアメリカである。台湾を守るのはアメリカだが台米関係はトランプ政権で大きく強固になったと言える。トランプが米国の大統領である限りこの状態は続くが、来年の選挙でトランプが落選すれば台米関係は大きく変わる可能性がある。

日台関係も要注意だ。安倍首相の四選はないから次の首相が誰になるかが大きく影響する。台湾側から見れば蔡英文の過去四年は現状維持と言う事実上の無為無策だったから今後の蔡英文が日台関係に積極的政策を取るとは思えない。

去年は香港人民の反中国デモが8ヶ月も続いたにも拘らず中国は30年前の天安門事件のような強い制圧を加えることが出来なかった。香港の反中国デモは世界が見ている、アメリカも注意しているから強硬手段が取れないのである。同じように中国は台湾に強い圧力を加えることはできない。

但し中国が金を使って台湾に浸透することはできるしアメリカも中国の金銭外交を防ぐことは難しい。台湾の政治家を買収するなら真先に国民党、外省人などが考えられるが、実際には民進党の政治家も買収されないとは言えない。

もう1つ注意すべきは台湾のヤクザ組織である。

台湾には竹聯幇、四海幇と呼ぶ外省人のヤクザ組織と天道盟と呼ぶ台湾人のヤクザ組織がある。これらのヤクザ組織は青幇(チンパン)、紅幇(ホンパン)と繋がっていて、青幇、紅幇は中国と繋がっている。ヤクザ組織が台湾の政治、軍事、経済、外交などに大きな影響を持っていることに注意すべきだ。(アンディチャン氏は在米評論家)
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読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ 
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(読者の声1)毎月行っている講演会です。

歴代天皇と奥の院歴史講座(第4回)明治天皇と奥の院 開国した日本。書契問題で半島とぶつかり、その後、日清・日露戦争を経てその前に待ち構えていたのは、奥の院という怪物でした。

今回より、歴代皇室歴史講座と奥の院研究会を同時に開催します。 
         記
日時 令和二年1月17日(金)受付 13:15〜    
開始13:30〜終了16:30>
場所 文京シビックセンター5階会議室C
講師 吉重丈夫(大阪竹田研究会幹事長、北浜法律事務所顧問。著作多数、講演実績多数)
受講料 千円
主 催 奥の院研究会
問合せ 大東:090−8209−4809            
メールdaito422@gmail.com



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(読者の声2)3月国防講座は下記の通り開催しますのでご承知願います。
         記
日時 3月26日(木)18時半より
会場 アルカディア市ヶ谷
演題 日本の海上防衛について(仮題)
講師 山下万喜(やました かずき)氏(元海自自衛艦隊司令官、海将)
講師経歴 58年防大卒(27期)、海自入隊。潜水艦隊幕僚長、海幕防衛部長、海自幹部学校長、佐世保地方総監を経て自衛艦隊司令官を歴任。昨年海自退官。



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(読者の声3)令和2年最初のGIFTのご案内です。今回は、安全保障、アメリカ政治外交の専門家である拓殖大学教授の佐藤丙午先生をお招きします。

今年はアメリカ大統領選もあり、最近のイランとの対峙、また対中関係などトランプ大統領のアメリカはどこに行くのか目が離せません。

ということで、またまた今回のGIFTはタイムリーな内容の勉強会となるでしょう。
ぜひ皆様のご参加をお待ちいたします。

            記

日時   2月7日金曜日 18:00〜20:30(20:50〜懇親会あり)
場所:  アルカディア市ヶ谷
参加費: 3000円(懇親会に出席の場合は5000円)
講師   佐藤丙午先生
演題   「アメリカ外交の行方〜トランプ再選の先にはなにがあるのか〜」(仮題)
主催   Global Issues Forum東京 
佐藤丙午先生の略歴と専門:国際関係論、安全保障、アメリカ政治外交、軍備管理、防衛産業。

【主な経歴】1966年、岡山県生まれ。博士(法学/一橋大学)。防衛庁防衛研究所主任研究官、拓殖大学海外事情研究所教授を経て現職。この間、経済産業省産業構造審議会貿易経済協力分科会安全保障貿易管理小委員会委員、外務省参与等も務める。

国際安全保障学会理事、日本安全保障貿易学会会長、一般社団法人日本戦略研究フォーラム政策提言委員。
お久しぶりにみなさんとお会いできますことを楽しみにしております。(ペマ・ギャルポ)
      
    

2020年01月16日

◆テヘラン異変。ソレイマニ司令官の追悼

宮崎 正弘

 
令和弐年(2020)1月14日(火曜日)通巻6338号   

テヘラン異変。ソレイマニ司令官の追悼ポスターを剥がす抗議デモ

宗教政権、インフレ対策に無能を露呈、「対米戦争」どころじゃないって
過日のイランでの抗議デモ、つまり狂信的宗教政権と、それを暴力 で守る革命防衛隊の「政府」を、イランの民衆がいかに思っているかを象 徴した。軍が抗議デモに発砲し、1500名が死んだと報じられた。死者1500名? 天安門事件ではないか。

イランのインフレ、じつはもの凄いことになっている。

賃金は上がらず、若者に職はなく、物価だけが暴騰をつづけ、ついに民 衆はテヘラン政権の無能に怒りを爆発させた。対米戦争? ソレイマニ司 令官が殺害された報復。そういう繰り言を言う前に、われわれの生活をナ ントカしろ、というわけだ。

これまで問題視されたことがないが、イランの人口動態の激変ぶりが露 骨だ。

少子化が急速に進んで僅か3年前の四分の一、5年前の五分の一、つまり イラン人が子供を産まなくなったのではなく、生活苦で子供を作れなく なったと見るべきなのだ。

庶民の台所を直撃した猛烈インフレは、つぎにベネズエラ型に移行する 可能性がある。ベネズエラは、生活困窮、無政府状態。450万の国民 がブラジル、コロンビアなどへ逃げた。米国の制裁で命綱の原油輸出が出 来ず、経済回復は到底望めない状況である。

イランから経済難民として外国へ逃げるといっても、西隣のイラクは治 安が悪い(悪化させたのはイランだが)、東隣のアフガニスタンもパキス タンも難民を受け入れる素地はない。両国はイランより遙か以前に経済が 破綻している。

結局、ホルムズ海峡を越えて対岸のオマーン、カタールへ?

過剰防衛の誤断でウクライナの旅客機を撃墜したことをイランは認め た。国民はデモを連日組織し、ついにはスレイマニ司令官の追悼ポスター をはがし始めた。
次に起きることは何か?

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樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


【知道中国 2014回】                 
──「支那を亡すものは鴉片の害毒である」──上塚(32)
上塚司『揚子江を中心として』(織田書店 大正14年)

             ▽」

ここで、「揚子江流域に於ける米國」に戻る。

やはりアメリカは「終始一貫、親和主義を標榜して又變る所が無かつ た」わけではない。第1次大戦前後を境に「その行動は極めて露骨になつ て來た」。「世人を最も驚かしたるものは、大正5年9月、『シー ムス、カレー』商會と支那政府との間に締結せられたる、支那各地に跨る 五鐵道の利權である」。

「五鐵道」は、「イ、湖南省衡陽より廣西省南寧に至るもの/ロ、山西 省豐鎭より甘肅省寧夏に至るもの/ハ、甘肅省寧夏より同省蘭州に至るも の/ニ、廣東省(海南島)瓊州より樂會に至るもの/ホ、浙江省杭州より 温州に至るもの」である。

後にロシアの強烈な抗議で一部路線変更を余儀 なくされたが、「五鐵道」を地図に落としてみると、「其の企圖の雄大に して傍若無人なる、實に人の意表に出づるものがある」。やはりアメリカ とて“お人好し”のままではいられないのだろう。

ここで上塚は、「五鐵道」に関わる「米國の新利權と列強との關係」に 言及する。

先ず「イ」だが、「英國の勢力圏に突入する事が出來る。又曩に英國の獲 得せる沙興鐵道とも併行して競爭線ともなるのである」。

「ロ」と「ハ」を合わせると、将来的には「實に支那中原の地は正しく 本鐵道によりて東西に?斷さるゝもの」となる。加えて「白耳義『シンヂ ケート』の海蘭鐵道と略相併行し然も其の通過地點は彼に優るとも又劣ら ざる豐沃の地であ」り、「陝西、湖北の沃野を?ぎるの點に於て甚しき有 利の地位にある」。また「直接には東して英國及獨逸の圏内に侵入し、西 して白耳義『シンヂケート』の歸成鐵道に迫り、間接には海蘭、粤漢川鐵 道を脅かすものである」。

「ニ」は「南に南洋群島、西に佛領安南、東に比律賓群島を控え」る 「支那南邊の寶島とも謂ひつべき」海南島を押さえることを意味し、「米 國の此の鐵道を獲得するに就ては蓋し一大計畫の存する事勿論である」。

最後に「ホ」を獲得したことは、「何時も乍ら米國の無遠慮なる外交政 策に驚嘆せざるを得ない」とのことだ。

以上を総括して上塚は、「米國の得たる鐵道利權は支那四百餘州の各 方面に亘り樞要の地點を占有し、其の進むに當りては自由奔放、縱横無 盡、連絡の如何も列國の意好も、何等意に介するなく猛然殺到し來れる」 ものであり、その点は「稍もすれば躊躇逡巡、徒らに機を逸し事を破る我 が帝國の外交政策に一大?訓を與ふるものと稱すべきものである」。

1972年の突然のニクソン訪中、昨今のトランプ大統領による米中貿易戦 争にしても、確かに「其の進むに當りては自由奔放、縱横無盡、連絡の如 何も列國の意嚮も、何等意に介するなく猛然殺到し來れる」と上塚が指摘 するアメリカの対中外交を踏襲したものと言える。

であればこそ、「稍もすれば躊躇逡巡、徒らに機を逸し事を破る我が帝國 の外交政策に一大?訓を與ふるものと稱すべきものである」との苦言も大 いに同意できる。

だが、それにしても、いったい、いつまで我が国の外交は「稍もすれば 躊躇逡巡、徒らに機を逸し事を破る」という陋習、つまり怯懦・卑怯・無 責任に囚われているのか。

アメリカの次は「揚子江に於ける獨逸」である。
 
先ず上塚は「揚子江の上游、四川雲南の地は古くより英佛競爭の舞臺」 であったが、辛亥革命後、「以外(注:「意外」の誤植か)なる分子が此 の間に割込み、英佛兩國の野心を抵制すべく、一箇の楔子を折込んだ。雲 南百色鐵道に據らんとする獨逸即ち是れである」と、イギリスとフランス を相手に意表を突くドイツの行動に驚嘆の声をあげた。

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読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ 
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(読者の声1)宮崎正弘独演会は1月15日です。「正論を聞く つどい」は午後六時半から。大手町「産経プラザ」です。

           記

とき      1月15日(水曜)午後6時半
ところ     大手町「産経プラザ」3階大会議室
講師      宮崎正弘
演題      「2020外交展望==米中、中東、そして日中」
資料代     1500円(学生千円)
主催      正論の会(代表・三輪和雄)
★どなたでも予約なしでご参加いただけます。
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(読者の声2)今晩(1月14日)の日本文化チャンネル桜のニュース番 組「フロント・JAPAN」は、福島香織さんが、「台湾総統選挙報告」。宮崎正弘さんは「香港から見た台湾選挙」をテーマに、現地から帰 国したばかりのふたりのチャイナウォッチャーが生々しい現地報告の予定 です。(日本文化チャンネル桜)
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(読者の声3)大東亜戦争や軍人について、いろいろな批判があるが、疑 問があるので挙げてみたい。
 
第一は危機感がない事である。内外の危機にあたり大昔の話をする余裕 があるのか、疑問である。それより再軍備であろう。

第二は情報である。

東亜戦争の元凶であるスターリン、ルーズベルトの対日戦略への言及が ない。いわゆる戦後の古い1人相撲歴史観の弊である。

第三は価値観である。日本の戦争が自存自衛であったことは東條首相が主 張しており、1951年にマッカーサーが米議会証言で認めている。日本の正 当防衛だったのだ。
第四は戦争の当否を勝敗で論じる誤りだ。

大東亜戦争は負けても正しい戦争だった。第二次大戦では人口350万の フィンランドは人口1億五千万のソ連の領土割譲の恫喝に抵抗して断固拒 否し戦った。有名な冬戦争では大戦果を上げたが結局敗戦した。

しかし指 導者マンネハイムは銅像になりヘルシンキ駅頭で国民の尊敬を集めてい る。これが正しい独立国家の国民の在り方だ。日本も東條首相の銅像を建 立すべきだ。敗戦ボケを脱しなければならない。

第五はイデオロギーである。

戦前の日本は反共で自由主義だった。それに対して米国は戦後転向した が、当時のルーズベルトは共産主義ソ連と手を組んで攻撃してきたのだ。 しかし戦後の冷戦の結果を見れば米国が誤りで戦前の日本が正しかった事 は明らかだ。

第六は、当時の戦略や国民軍である日本軍人への非難が結局日本国民への 非難になっていることだ。要するに日本が負けたのは日本人が愚かだった からと言うことに帰結する。そうではないだろう。日本の軍人は世界一で あった。そのため敵は日本軍人の忠誠心を狂信的、勇敢さを残酷性などと 言い換えて非難した。これは事実を報じると賞賛になってしまうからだ。 しかし国際政治の経過を見れば戦後の反日宣伝は終わっている。
日本人は惑わされずに現下の焦眉の問題である再軍備に取り組むべきであ る。以上
   (落合道夫)
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(読者の声4)南米のパリはご存じの通り、アルゼンチンのブエノス・ア イレス市。いつもながらの、群盲象を撫でる的な体験的印象記になるが、 確かに部分的にパリ的な雰囲気を残した大都市。1968年に初めて出張しそ れ以来6.7回訪問しているが、アルゼンチンタンゴも分厚いステーキも 大好き。意外な(?)側面を一言。

ひと昔前になるが、椎名外務大臣がアルゼンチンを訪問した折の現地マ スコミとの記者会見で意見・対応ぶりが立派であったのでQue tipo de tintorero ! との声が挙がったとか、聞いたことがある。当時、アルゼン チンに移民した日本人の代表的な職業がクリーニング業であった。

Que tipo de tintorero ! とは 「なんという洗濯屋、だ!」(洗濯屋 でも−日本人でもーこんなに立派な奴がいるのだネ!)

一般的にラテンアメリカでは人種差別なない、少ない国々と言われている が、今でもまだまだ社会の深層部分では差別はある。

スペイン人、イタリー人の移住者が多いアルゼンチンでは特に社会の上層 部になればなおさらのこと白人至上主義的な意識はあるようです。(木内信胤の信徒の一人)