2017年06月07日

◆ドゥテルテ比大統領が

宮崎 正弘



<平成29年(2017)6月6日(火曜日)弐 通算第5317号 >

 〜ドゥテルテ比大統領が、テロリスト退治に大胆な二枚舌戦術
  中国にテロリスト殲滅作戦の支援を要請、中国海軍艦がダバオに寄港〜

 中国海軍の駆逐艦、フリゲート艦など三隻がフィリピン・ミンダナオ島
のダバオに寄港している。ダバオはドゥテルテ大統領の地盤である。

駆逐艦はPGM(精密誘導ミサイル)を多数搭載している最新鋭艦で、こ
の過程で明らかになった事実は、フィリピンが中国に対してPGM、高速
ボート、ドローンの供与を要請していることだ。

先月来、ミンダナオ島の中央部にあるマラウィ市に戒厳令が敷かれ、IS

の影響を受けた「マウテ集団」との戦闘が続いている。

すでに100人前後が戦死、そのなかにISに近いマレーシア、インドネシ
アからの応援武装戦闘員が含まれていることも判明した。

 同時にミンダナオ南西部にトビウオのように群島が南シナ海へむけて広
がっているが、バシラン島、スル島、タウィタウィ島をカバーする海域は
「アブサヤン」という過激な武装集団が抑え、付近の海域で海賊行為を展
開している。
この海域ではマレーシア、ベトナムの漁民が人質となっている。アブサヤ
ンとの戦闘は半永久的に継続されており、フィリピンの国内治安の頭痛の
種とされた。

ドゥテルテ大統領は、一方に於いて麻薬密売グループの一斉捜索、犯人を
射殺しても良いとして麻薬戦争を展開し、すでに800人ほどの密売人を刑
務所にぶち込んだ。

ゲリラ戦争が特異な「マウテ集団」との戦闘には正規軍を投入し、また戦
闘訓練の指導にはアメリカの特殊部隊が派遣されている。

このことはシンガポールの「シャングリラ対話」に出席したハリー・ハリ
ス太平洋司令官が示唆している(アジアタイムズ、6月6日)。

フィリピンは中国海軍との合同軍事訓練を催行するが、海賊退治に関して
は、すでにソマリア沖で豊富な実戦経験を積んできた中国海軍ゆえに、も
しフィリピンに協力するとなれば、アブサヤンの弱体化は必至の情勢だろう。

しかし、スカボロー礁をめぐってフィリピンは中国と対立しており、国際
仲裁裁判所はフィリピンの訴えを認め、中国が「あの判決は紙くず」と豪
語した。

この経緯を無視してリアリティを重視するドゥテルテ政権によって、不思
議な中比関係が露呈した。

矛盾をもろともしない複雑な環境下で、ドゥテルテ大統領は中国との領土
係争を棚上げし、「中国と戦争になれば、われわれは国をなくす」と釈明
しつつ、大胆に中国に近づき、ましてや軍事品の供給を要請し、あまつさ
え中国海軍とは共同軍事訓練と展開するという綱渡り。毒をもって毒を制
す、を地で往く。

「フィリピンのトランプ」という異名をとる老人、ドゥテルテ比大統領、
ただ者ではない。
       
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  ◆樋泉克夫のコラム 
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【知道中国 1580回】      
――「正邪の標準なくして、利害の打算あり」――(徳富19)
   徳富猪一郎『七十八日遊記』(民友社 明治39年)

             ▽
 無頓着とは、また後先を考えないことでもあろうか。
 
たとえば1958年に始まった大躍進である。毛沢東がブチ上げた鉄鋼大増産
の掛け声に煽られて人々は狂喜乱舞の態。素人手作りの土法炉と呼ばれる
小型の溶鉱炉による製鉄に励んだ。鍋釜や農機具、果は窓枠まで――凡そ身
の回りの鉄という鉄を土法炉に放り込み、近在の山々の木々を切り倒して
燃料とした。

その結果、たしかに鍋釜が溶解し大量のインゴットが“生産”されはした
が、マトモな鉄鋼であるわけがない。たんなるクズ鉄の塊にすぎなかっ
た。かくして鉄鋼大増産運動の熱狂が冷めた後、鍋釜も農機具を失った人
民、窓枠さえ消えた家屋、それに広大な禿山が残されてしまう。家庭生活
は崩壊し、木々を失い貯水機能を失ったゆえに禿山に降った雨が洪水を引
き起したことは言うまでもない。

ひたすら毛沢東の歓心を求めて、後先考えずに鉄鋼大増産に邁進した挙
句の果てに待っていたのは、泣くに泣けず、笑うに笑えない悲惨な日々。
後先を考えないということは、今を刹那的に生きるということ。無頓着が
過ぎる。

だから、過ぎたるは及ばざるが如し。

いまではあまり聞かれなくなったが、かつて中国人は大原則に生きる民族
であると論じられたことがある。

思い起こせば文革時代、自他共に現代中国研究“大権威”と認める著名なセ
ンセイまでが盛んに口にしていた。当時は、その説を信じてはいた。だが
今となっては、それが根拠なき“戯言”に過ぎなかったと確信する。たしか
に彼らは大原則に生きているといえるが、それは無原則で無頓着という大
原則に過ぎないのだ。

以上は徳富の見解とはまったく無関係。再び徳富に戻る。

(26)【新屋と舊屋】=彼らは「舊屋」が不具合になったからといっ
て、それを修築することも解体することもせず、隣に「新屋」を建てる。
「故に支那に於ては、半死の舊屋と、全盛の新屋と、並立するは、通常の
事」である。「萬一舊物を破壞するか如きあらは、そは改善の爲」ではな
く、やはり「慾得の爲め」だ。

この項に関しては徳富が何をいわんとしているのか判然としないが、敢え
て“忖度”するなら、目先の利得に奔るばかりで物事の本質を弁えない、と
の主張のようにも思える。いいかえるなら何が大切で、何が不要か。何が
本質で、何が枝葉末節か。その辺りが判らないということだろうか。

そこで考える。社会主義を「舊屋」で市場経済を「新屋」と見做すなら、
たしかに現在は「半死の舊屋と、全盛の新屋と、並立」させているといえ
る。その間の矛盾を「中国の特色」という“万能の特効薬”で糊塗しなが
ら、なし崩し的に「舊物を破壞する」ことになるだろう。「そは改善の
爲」ではなく、やはり「慾得の爲め」ということになりますか。

(27)【大切なる結婚と葬式】=「支那人の最も大切とするは、結婚
と、葬式とにして、隨て墓所の撰擇は、申すに及はす」。だから「彼等は
飽迄も之を保護し、之を保存し、之を大切に奉持す可き筈」にもかかわら
ず、じつはそれほどまでに大切な「其の墳墓さへも。荒廢、零落に一任」
するがままに捨て置く。ここから徳富は、彼らの本質は「冷淡、無頓着」
であり、「彼等は保守的人種」ではない。「保守の精神なき保守は、無頓
着と云ふこそ、寧ろ適當なれ」と断じた。

 (28)【彼等は沙魚の如し】=「彼等は存外に保守的にあらす」し
て、「案外氣輕く他の物を借用もし、應用もし、採用もする」。そこで
「彼等に見出すことの能はさるは、創造の天才と、向上の精神とに候」。
とどのつまり彼らは「古昔の型を、其儘襲用する」だけということにな
る。そこで「彼等は只た沙魚の如く、鼻の先に餌を與れは、之を食ふ丈
の、自動力を有する迄」だ。彼らは付和雷同でご都合主義の権化にすぎな
い、ということか。
《QED》

2017年06月06日

◆書 評 特 集

宮崎 正弘



<平成29年(2017)6月5日(月曜日)通算第5315号>   

 (( 書評特集 ))

中村彰彦『幕末遊撃隊長 人見勝太郎』(洋泉社)
渡部昇一『知の湧水』(ワック)
小峯隆生著、柿谷哲也撮影『蘇る翼 F2B ―津波被災からの復活』(並
木書房) 

       
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIE 
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 緊張し、殺戮の巷を駆け抜けた剣士たちは、しかしどこか牧歌的なのだ
  西郷を刺しに薩摩に赴いたのに、この物語の主人公は逆に感化された

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中村彰彦『幕末遊撃隊長 人見勝太郎』(洋泉社)
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人見勝太郎は「?川脱藩」組である。

写真を見ると爽やかな伊達男、政治哲学が身体から放出させているタイプ
ではなく、かと言って謀略を好む陰惨な策士という印象がない。

土佐脱藩の坂本龍馬、長州脱藩の吉田松陰など、脱藩者は数限りない
が、?川脱藩というのも珍しい。

人見勝太郎は豪快な剣士であった。幾多の戦闘に勝ち抜き、五稜郭の生き
証人となって、戦後は華麗な転身をとげた。

最初から奇々怪々、じつに不思議な人物で、幕府の遊撃隊に加わった剣士
が、官軍との戊辰戦争を戦いながら、甲府、箱根から江戸へ戻り、榎本武
楊らに合流して、奥州へ転戦し、「蝦夷共和国」宣言時には松前で守備に
就いた。

こうした過程で近藤勇はもちろん、幕府内で剣豪といわれた山岡鉄舟と互
角の勝負をした伊庭八郎らと人見は知り合い、共に死線をくぐりながら、
脱藩大名の林とも知り合う。

五稜郭で降伏後、剛毅にも西郷の暗殺を企て、薩摩入りするさいには奇兵
隊の残党が荒らし回る瀬戸内海の海賊と一戦を交え、かと思えば、つぎは
西郷、大久保と知遇を得て新政府に仕え、西南戦争では駿河藩から志願兵
を募集する役目を与えられた。

そういう風に矛盾を矛盾とせずに、勝海舟とも深く交わった。
 
ついには誰もが治められないと言われた茨城県県令(県知事)。そして80
歳、波瀾万丈の生涯を閉じた。

歴史に埋もれた人物を捜し当てて、闇の部分に光を当てる貴重な作品を連
綿と発表してきた中村彰彦は、幕末に藩主自らが脱藩するという林忠崇
(たったひとりだけの脱藩大名)。遊撃隊を率いて爽やかに豪快に闘って
果てた伊庭八郎を過去に書いたが、こんかいはノンフィクションとして、
人見勝太郎を世に問うのだ。

同時代を生きた人々に、ペリー来航以来の疾風怒濤、狂乱の政局は運命を
大きく変えさせた。

本書には印象的な場面がある。
 
明治3年5月、勝海舟が書いた村田新八への紹介状を懐に、人見勝太郎は
勇躍鹿児島へ向かった。ところが勝の書状には、「この男、足下を刺すら
しいが、ともかく会ってやってくれ」トとぼけた内容だった。(『氷川清
話』にその一節がある)

殺気を帯びた人見の鹿児島入りを、歴戦の強者が気付かないはずがないの
だが、薩摩隼人というのも変人そろい。村田新八、桐野利秋らは勝太郎を
歓待したのだ。

西郷暗殺を胸に秘めて、人見は実際に西郷邸を訪ねた。

「西郷はちょうど玄関で横臥していたが、その声(人見の来訪)を聞くと
ゆうゆう起き直って『わたしが吉之助だが、わたしは天下の大勢などとい
う難しいことは知らない。まあ、お聞きなさい。わたしは先日大隅へ旅行
した。その途中で腹が減ってたまらぬから、十六文で芋を買って食った
が、たかが十文文で腹を養うような吉之助に天下の形勢などわかるはずが
ないではないか』と言って大口をあけて笑った。血気の人見もこの出し抜
けのはなしに気を呑まれて、殺すどころの段ではなく、挨拶も録にせず
返ってきて、『西郷さんは、実に豪傑だ』と感服して話したことがあっ
た」(227p)
この逸話、おそらく本当だろう。

その後、人見勝太郎は西郷ら薩摩隼人から大歓待を受けて百日も鹿児島に
留まり、教育の大切を身に染みて学ぶこととなった。

殺戮の戦場を生き抜いたあの時代の男たちは、どこか牧歌的なのである。

         
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 書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評  
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 日本が文化的先進国である一つの象徴は『神学大全』の翻訳である
   英国、仏蘭西、伊太利亜などでしか全訳は出版されていない現実

  ♪
渡部昇一『知の湧水』(ワック)
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 「稀代の碩学、珠玉のエッセイ」とあって「知の巨人、ラストメッセー
ジ」という文字が本書の帯を飾っている。

それにしても湧き水のごとく、次々と英知が現れてくるという碩学が世の
中にはいるのである。知の湧水とは、じつに適切なタイトルだと思った。
 先日、イグナチオ教会で行われた氏の追悼ミサの入り口に看板があっ
て、仏教でいう氏の戒名は「聖トーマス・アキナス」とあった。

本書を読んで、その聖名の理由がよくよく理解できた。

渡部氏は、このなかでドーマス・アキナスに幾多のページを割かれ、とり
わけ『神学大全』について詳述されているからである。
 
なにしろ、この世界一難解とまでいわれる書物の原書を氏は3回も精読さ
れた。「神学大全邦訳完成記念」セレモニーでは、氏がスピーチもされた。

さて本書を通読したあと、印象的な既述が2ケ所あった。これは個人的な
感想であるが、まずはアリストテレスとプラトンの差違である。
 
「この2人の大哲人の切り口は全く違った方向に向いていたと言える。つ
まりプラトンの切り口は『東』に開かれており、アリストテレスの切り口
は『西』に開かれていた。プラトンの思想は東洋にも偏在したいたが、ア
リストテレスは西欧の中世に花開き、実を結び、西洋と特徴付ける哲学と
なった」(162p)。

プラトンは「不滅の霊魂とその転生について語っている」のである。『プ
ラトン全集 第1巻』(岩波書店)には次の言葉がある。
 「たしかに、よみがえるという過程があることも、死んでいる者から生
きている者が生じるということも、そして死者たちの魂が存在すること
も、本当なのである」

なぜこの箇所に評者が惹かれたかといえば、生前の氏との会話(下段追悼
文『附録』を参照)に三島由紀夫の転生が話題となったことがあるから
だった。

もう一つは渡部昇一氏が子供3人、孫5人に囲まれた金婚式での感激をさ
らりと綴ったなかでの、次の文章である。
そのまま引用すると、

「子供を育てるということは大変なことである。しかしわれわれはそれ
をーー当時の大部分の日本人のようにーー当たり前のことと受け止めてい
た。しいて言えば子供で苦労することは当たり前の人間にとって『人生の
手ごたえ』と感じたとでも表現できようか。子供の教育費がなかったら
もっと贅沢な生活ができただろうになどとは考えなかったし、子どもがい
るので生きる張り合い、働く張り合いができたというべきであろう」(引
用止め) 
こんにちの少子高齢化社会への警告的な譬喩である。

 (附録)
「渡部昇一氏を悼む/宮崎正弘」(拙メルマガ4月19日号より再録)
(引用開始)
「渡部昇一氏が4月17日に亡くなった。振り返れば、氏との初対面は四半
世紀以上前、竹村健一氏のラジオ番組の控え室だった。文化放送で「竹村
健一『世相を斬る』ハロー」とかいう30分番組があって、竹村さんは一ヶ
月分まとめて収録するので、スタジオには30分ごとに4人のゲストが待機
するシステム、いかにも超多忙、「電波怪獣」といわれた竹村さんらしい
遣り方だった。

ある日、久しぶりに呼ばれて行くと、控え室で渡部氏と会った。何を喋っ
たか記憶はないが、英語の原書を読んでいた。僅か10分とかの待機時間
を、原書と向き合って過ごす人は、この人の他に村松剛氏しか知らない。
学問への取り組みが違うのである。

そういえば、氏のメインは英語学で、『諸君!』誌上で英語教育論争を展
開されていた頃だったか。

その後、いろいろな場所でお目にかかり、世間話をしたが、つねに鋭角的
な問題意識を携え、話題の広がりは世界的であり、歴史的であり現代から
中世に、あるいは古代に遡及する、その話術はしかも山形弁訛りなので愛
嬌を感じたものだった。

近年は桜チャンネルの渡部昇一コーナー「大道無門」という番組があっ
て、数回ゲスト出演したが、これも1日で2回分を収録する。休憩時に、
氏はネクタイを交換した。意外に、そういうことにも気を遣う人だった。
そして石平氏との結婚披露宴では、主賓挨拶、ゲストの祝辞の後、歌合戦
に移るや、渡部さんは自ら登壇すると言いだし、ドイツ語の歌を(きっと
お祝いの歌だったのだろう)を朗々と歌われた。芸達者という側面を知っ
た。情の深い人だった。

政治にも深い興味を抱かれて、稲田朋美さんを叱咤激励する「ともみ会」
の会長を務められ、ここでも毎年1回お目にかかった。稲田代議士がまだ
一年生議員のときからの会合で年々、参加人員が増えたことを喜んでいた。
最後にお目にかかったのは、ことしの山本七平授賞式のパーティだった
が、氏は審査委員長で、無理をおして車椅子での出席だった。「おや、具
体でも悪いのですか」と、愚かな質問を発してしまった。

訃報に接して、じつは最も印象的に思い出した氏との会話は、三島由紀夫
に関してなのである。

三島事件のとき、渡部さんはアメリカに滞在中だった。驚天動地の驚きと
ともに、三島さんがじつに偉大な日本人であったことを自覚した瞬間でも
あった、と語り出したのだった。渡部さんが三島に関しての文章を書かれ
たのを見たことがなかったので、意外な感想に、ちょっと驚いた記憶が
ふっと蘇った。

三島論に夢中となって、「憂国忌」への登壇を依頼することを忘れてい
た。合掌」(引用止め)。
          
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 あの巨大津波で松島基地に係留されていた戦闘機は塩漬けになった
  奇跡の修復プロジェクトによって13機が前線に復帰した

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小峯隆生著、柿谷哲也撮影『蘇る翼 F2B津波被災からの復活』(並木
書房)
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こういう物語があったこと、知らなかった。

東日本大震災直後の2011年4月、松島基地を取材で訪れた筆者は、津波で
大きく損傷したF2Bを見た。

塩漬けの無惨な姿で、最新鋭機が転がっていたのだ。

評者(宮崎)と言えば、あの日、福建省福州にいた。滞在したホテルで胸
騒ぎがして、東京に国際電話を申し込んだが1時間通じなかった。災害発
生を知り、部屋のテレビを入れると、生々しい被害状況が刻々と映し出さ
れて驚愕した。
東京も交通が痲痺しており、評者は上海で2日間待機し、帰国したことを
思い出した。

さて被災した戦闘機である。精密機器の塊である戦闘機を完全修復するこ
とは不可能だろうと予測された。世界中でも、そんな例はなかった。
航空自衛隊にとって複座型のF‐2Bは、戦闘機パイロット育成のため
に、なくてはならない機体だ。しかもF‐2の生産は終了しており、新た
に製造することはできない。このままでは日本の国防に大きな空白が生ま
れてしまう。

安全保障上、由々しき問題であり、かと言って制約された防衛予算をみれ
ば代替機の購入など夢の物語である。

塩漬けとなったF‐2Bを復活させることはできないだろうか?

空幕内に「チーム松島」が結成され、前代未聞の「海水漬け」戦闘機の修
復プロジェクトがスタートした。

男たちの挑戦が始まった。ついに18機のF‐2Bのうち13機が修復され、
再建された松島基地に続々と帰還したのだ。

壮大な戦闘機修復プロジェクトは、いかに実行され、成功したのか?
筆者は数か月かけて、航空幕僚監部、松島基地、三菱重工業小牧南工場、
IHI瑞穂工場、国会議員など、多くの関係者にインタビューを重ね、こ
のプロジェクトが関係者の熱意や努力ばかりではなく、深い洞察力に裏付
けられた判断力と実行力によって成し遂げられたことを知った。

損傷した航空機や施設、すなわち戦力をどうやって回復させるか、そのた
めには何をなすべきかを計画・立案した空幕の強力なリーダーシップ、予
算措置など政治・財務面のサポート、そして何より損傷機の修復に取り組
んだメーカーの熱い「ものづくり魂」がひしひしと伝わる感動のドキュメ
ントが出現した。
 
         

2017年06月04日

◆習近平の夢「一帯一路」

宮崎 正弘



<平成29年(2017)6月3日(土曜日)通算第5314号>   

 〜習近平の夢「一帯一路」、スリランカでまた挫折。前途多難
  現地では反中国暴動が頻発、「反中」の筈のシリセナ政権も困惑〜

 スリランカ南部のハンバントタ港には既に中国の潜水艦が寄港してい
る。中国の意図は明らかにインド洋を扼するスリランカの戦略的要衝の活
用にある。

インド洋を横断し、アフリカ大陸へのシーレーン確保が中国の世紀の野心
であり、習近平の夢というわけだ。

2017年1月におきた反中国暴動は、中国主導の「工業団地」の建設に反対
する現地民がデモを組織し、警官隊と衝突、大暴動に発展した。
なにしろ6000ヘクタールの広大な土地を中国に提供することは、農地をと
られる農民にとって死活問題。しかも、現場労働者は中国からつれてきた
囚人だから、「付近には犬も猫もいなくなった」(スリランカのガイド)。

以来、スリランカ中国の「ウィンウィン関係」は急速冷凍のように冷たく
なった。中国企業のハンバントタ港のシェアは80%から20%に減らさ れた。

二転三転のプロジェクトはコロンボ沖合に人口島を造成し、ニューシティ
(コロンボ・シティ)を創るという壮大な夢である。

ラジャパスカ前政権が前のめりに承認し、その中国との度を過ぎた癒着が
問題化して落選してしまった。2015年1月の大統領選挙での番狂わ せ。
安泰といわれたラジャパスカが落選したことは、中国の「想定外」の 出
来事だった。

中国とのプロジェクト中止を謳うシリセナ大統領はコロンボシティを一度
キャンセルしたが、その後、中国側の強硬な訴訟に発展し、工事中断がま
た復活して埋立工事が再開されている。なぜならスリランカの対外債務は
60億ドル、このうち10%が中国であり、プロジェクトの中断はかえって
利子がかさむことになるからである。

とはいえ、タイでラオスでミャンマーで、中国主導の強引なプロジェクト
は挫折しており、この連鎖がスリランカに及んでいる。
 
日本のメディアが明るく報道しているような「一帯一路」(陸と海のシル
クロード)プロジェクトは随所で挫折しているのが、現状である。
        

2017年06月02日

◆中国国家統計局前局長の王保安に無期徒刑

宮崎 正弘



<平成29年(2017)6月1日(木曜日)通算第5311号 >  

 〜中国国家統計局前局長の王保安に無期徒刑
  河北省張家口地方裁判所に70人の記者が押しかけ、判決をまった〜

5月31日、河北省張家口の地方裁判所傍聴席は70人の記者で埋まった。 
中国国家統計局前局長の王保安に対する判決は無期徒刑。全財産没収だっ
た。彼が不正に得た賄賂は1億5428万元(25億円弱)だった。王保
安の「邯鄲の夢」は無惨な結末となった。

王保安は国家統計局長という立場を利用して、地方政府からあがってくる
「経済データ」の誤魔化しに協力し、その見返りを得ていた。

なにしろ中央政府が「ことしのGDP成長は6・5%」と言えば、地方政
府幹部はその二倍の数字を報告するのは常識であり、その数字を統計局が
認めるには、賄賂が必要というのが中国のシステムである。

王保安は身の危険を察知し、北京空港からパリかフランクフルトへ脱出す
る計画を練り、実際に偽名のパスポートを用意した上、その偽名でファー
ストクラスの航空券を買い(それも愛人と2人分)、飛行場へ向かおうと
していたときに、当局によって逮捕された。愛人は空港待合室で逮捕された。

この事件は何を意味するのか。

筆者は近刊『米国混迷の隙に覇権を狙う中国は必ず滅ぼされる』(徳間
店)のなかで、次の指摘をしている。

 (引用開始)
「2011年に中国のGDPは日本を抜いて世界第2位となったと発表
された。庶民の感情と期待も高揚していた。大きな夢を語ったのも、北京
五輪の成功があり、つづけての上海万博、広州アジア大会と連続的なイベ
ントの成功が手伝って「大国意識」が急速に拡大していた。「日本は相手
にしない。これからは米国をしのぐのだ」と稀有壮大な幻想を信じた人も
多かった。しかし同時にガンが進行していたのだ。

GDP世界第2位さえ誇大な宣伝であり、数字の信憑性はほとんどないの
である。例によって中国では歴史が政治プロパガンダであるように外国か
らの直接投資を維持するために大嘘を吐き続ける必要があった。

中国経済がゾンビ化しているのに、なお延命しているのは壮大な嘘にだま
されて外国企業が投資を続けたからである。

ソ連の経済統計が革命から70年間、まったくのデタラメだったことは広
く知られる。ノルマ達成だけが目的の数字をそのまま経済統計に用い、あ
とは作文と辻褄合わせだった。たとえば或る製鉄所では原材料の鉄鉱石の
割り当てが100トンなのに、生産が200トンと報告される。

アルミが原材料から50トン精製されるとすれば100トンと平気で報告され
る。在庫を確認しにくる係官は賄賂を貰って口をつぐむ。そもそも炭鉱事
故があると現場に飛ぶ新聞記者が会社幹部に「書かない原稿料」を請求す
るのが中国のジャーナリストの特徴であるように。

人気作家の余華が比喩している。

「ありゃあ売春しながら、忠孝貞節の札をかかげてるってもんじゃねえか?」

「良心は犬にかじられ、狼に食われ、虎にかみ砕かれ、ライオンの糞に
なってしまった」(余華『兄弟』文藝春秋)

システム全体は腐敗によって悪性の腐蝕が進み、制度が疲労を音を軋ませ
る。嘘を繰り返すうちに、嘘が一人歩きをはじめ、収拾がつかないばかり
か、誰も本当のことを把握できなくなってソ連は突然死のような終末を迎
えた」(引用止め)

もっと詳しくは前掲拙著を参照されたし。
『米国混迷の隙に覇権を狙う中国は必ず滅ぼされる』(徳間書店。1080円)
https://www.amazon.co.jp/dp/4198643660/
      
 
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIE 

 〜西郷隆盛はときに陰謀をめぐらすダークサイドもあったが
   革命家が策略を用いるのは古今東西、歴史の鉄則である〜

  ♪
渡部昇一『南洲翁遺訓を読む  わが西郷隆盛論』(到知出版社)
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渡部さんに西郷を論じた本があるのは納得できる。

なぜなら氏は山形県鶴岡出身。幕末、庄内藩は?川に忠実で、三田の薩摩
屋敷を襲撃し、焼き討ちにした。

官軍と戦った「東北列藩同盟」では、会津落城後も闘いつづけ、ついに降
伏したときは、苛烈な処分を覚悟していたところ、「寛大な措置を」とい
う西郷の決断のもと、会津がやられたような非道い処分がなかった。

感激した藩士らが明治になってから、鹿児島へ何回も通い、西郷の訓話を
集めて編纂されたのが『大西郷遺訓』(南洲翁遺訓)の初版の由来であ
る。この旧庄内藩士の本は千部印刷されて、その後、いろいろな解釈本も
出回り、どれほどの影響力を後世にもたらしたか計り知れず、平成の御代
においても、岩波文庫版のほか、数種類が上梓されているほどである。

渡部氏は、このなかで幾つかの重要なポイントを指摘され、原文と現代語
訳のあとに、独自の解釈を付け加えているのだが、ここでは二つのことを
採り上げたい。
 
第一は革命家としての西郷の陰謀である。

およそ戦時において軍事行動に謀略はつきものであり、これを冷徹に行え
る者が勝利を導く。つまり英雄にはつねにダークサイドがある。

西郷の陰謀、じつは沢山あってきりがない。薩摩藩邸焼き討ちにしても、
背後で庄内藩士を焚きつけたし、公武合体から倒幕に急変するや、坂本龍
馬が邪魔になったため、隠れ家を内通させたのも、西郷と考えられている。

渡部昇一氏はこういう。

「若き日の西郷は策略軍略に長けた大軍師、大参謀でした」。(中略)そ
の典型が「薩摩屋敷を根城にした関東攪乱です。西郷は相楽総三、伊牟田
尚平などを使って、江戸中に火をつけたり強盗をしたりして、不安に陥
れ」、「江戸取り締まりの庄内藩まで攻撃したので、(報復として)庄内
藩は薩摩屋敷を焼き、それが鳥羽伏見の戦いに結びついた」

相楽ら「赤報隊」の残虐非道も、用済みとなるや、「官軍にあるまじき非
道」といって処刑している。

その良心の呵責と反省から、西郷は「遺訓」のなかに、「一事の詐謀を用
うべからず」という表現を披瀝していると渡部氏は解釈している。
 もう一点が税金である。

『租税を薄くして、民を豊かにする』というのが西郷の基本信条である。
 それは「南洲は若い頃、取りたてられて郡方書役助(こおりかたかきや
くすけ)という農村を見回って村役人を指導する役目でありました。給料
は四石です。(中略)十年間、この仕事をしました。

すなわち薩摩藩の一番底辺の世界に直接ふれたわけです。当時、日本中ど
こでも百姓が過酷な年貢で苦しめられていたと思いますが、薩摩藩はとく
にひどくて、元来、同情心の強い」西郷は税金問題に鋭敏で、減税をなし
国力を富ますという、政治テーゼが産まれた、とする。
全体に、やさしい解説がなされ、西郷の人となりを学ぶ本となっている。

2017年05月28日

◆高官の腐敗暴露続ける

宮崎 正弘



<平成29年(2017)5月26日(金曜日)参 通算第5307号>   

 〜中国当局の神経を逆なでする郭文貴、高官の腐敗暴露続ける
  米国メディアに突出する暴露男は、共産党高層部を震撼させ始めた〜

 (承前)江沢民派の腐敗と豪遊と海外不正蓄財を次々と暴き、米国のメ
ディアに神出鬼没の郭文貴だが、前号でも書いたようにトニー・ブレア首
相との昵懇な関係から、世界の投資家との間にコネクションを築き上げ、
スイスの銀行を手玉にとった「蛮勇」ぶりも徐々に表面化した。

とくにブレア夫人の著作(2009年出版。『私自身を語る』)の原書を500
冊、中国語訳本を5000冊も買い上げて、その政治ロビィスト的な、金銭の
配り方も、中国人の伝統的な遣り方である。

「高官らの淫行現場のヴィデオを持っている」と発言したかと思うと、王
岐山の豪邸を暴き、ヴォイス・オブ・アメリカ(VOA)などに突如出演
し、また中国語メディアやユーチューブなど西側のメディアを駆使して、
中国共産党の腐敗を暴くのだから、中国にとっては「除去」すべき対象で
もある。

郭文貴は中国の庶民にとっては人気者となっており、VOAの番組など
は、すぐさま「微博」や「WECHAT」に転載されたが、削除されている。

ヴォイス・オブ・アメリカの番組(4月19日)では3時間にわたって、共
産党幹部等の腐敗を暴き続け、北京の神経を逆なでした。同番組は生中継
だったため、放送は一時間で終わったが、中国共産党幹部等を震え上がら
せた。

翌日から中国は公式メディアばかりかインターネットなどを通じて「法螺
吹き、嘘つき」と郭文貴を避難する宣伝合戦に乗り出した。

すでに中国はインターポールを通じて、郭を指名手配していると発言して
いるが、にもかかわらず郭文貴が米国内のどこかに隠れ住んでいると推定
され、米国FBIの保護のもとにあるのでは、とする疑心暗鬼も渦巻いて
いる。

ただし、郭文貴の暴露した高官等の腐敗など、すでに多くのチャイナ
ウォッチャーにとっては既知の事実でしかなく、「博訊新聞網」などは、
「郭の最終的なターゲットは習近平ではないか」としている(同紙、
22017年5月23日)。

       

2017年05月27日

◆天才詐欺師の郭文貴

宮崎 正弘



<平成29年(2017)5月26日(金曜日)弐 通算第5306号>   

〜天才詐欺師の郭文貴、アブダビ王室とベンチャー・キャピタル?
自家用ジェット機にブレア英首相(当時)を乗せてアブダビへ乗り込んだ〜


北京が[WANTTED]として国際手配している天才的詐欺師、郭文貴
は中国から忽然といなくなったが、その後も欧米メディアに頻繁に登場
し、「共産党幹部等の秘密を握っているが、ばらしても良いぞ」とでも言
いたげに、爆弾発言を続けている。

そればかりか、最近はダライラマ法王とも面会したことがわかった。

郭文貴は江沢民、曽慶紅ら上海派人脈に深く食い込み、かれらの資産形
成、とくに外国への資産隠匿の走狗として世界を走り回った。

いま中国に拉致拘束されている肖建華の兄貴分とも言える。権力者の金庫
番である。

5月25日にサウスチャイナ・モ−ニングポストが伝えた。

郭文貴族は英国のブレア元首相を仲介に自家用飛行機でアブダビへ飛ん
で、モハメド・ビン・ザイード・アル・ナーヤン皇太子ら王室のメンバー
と会見し、共同のファンドを設立したという。アブダビ訪問の時期は不明。

郭文貴は中国の株式インサイダー取引に絡み、秘密口座などを駆使して、
太子党や共産党幹部のカネを運用していたため、秘密を握る人物とされた
が、馬健(当時公安部副部長)の失脚直前に海外へ逃亡した。

この逃亡は令計画の実弟、令完成の米国亡命と時期が重なったため、世界
のマスコミも騒いだ。

郭文貴は上海に設立した「海通国際証券」(Haiton 
Security)を通じて世界のプロジェクトに派手は投資を繰り返
し、とくに2014年には385億ドルを7つのプロジェクトに投下した。

資金繰りが苦しくなると、2015年にはUBSから7億7500万ドルを借りて
焦げ付かせ、UBSが訴追した。

スイス銀行の大手UBSも、彼の手口に引っかかった。

ブレア元首相は「郭文貴とは10年来の友人である」と語ったこともあるの
だが、今回の報道には一切口をつぐんでいる。
       
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  ◆樋泉克夫のコラム 

【知道中国 1576回】        
――「正邪の標準なくして、利害の打算あり」――(徳富15)
   徳富猪一郎『七十八日遊記』(民友社 明治39年)

                ▽

これまで秦檜の石像への放尿は、岳飛を讃え、秦檜を怨み蔑みを募らせ
る、いわば復仇への執念の発露だと迂闊にも思いこんできた。宋朝が危機
に陥ったのは千年余も昔だ。そんな遠い過去の話をいつまでも引きずって
いるとは、なんとも執念深い民族だと半ば呆れ果てていたものだ。

だが、放尿すれば養蚕の出来がいいとの徳富の説に接するに及んで、ここ
は考えを“劇的”に転換する必要がありそうだ。底なしに功利的な行為であ
ることか。

はたして養蚕の出来がよくなるとのデマを撒き散らして無智な農民を騙
し、秦檜を侮辱し、漢奸(民族を売り渡した犯罪者)の罪の重さを未来永
劫に民族の歴史に刻み付けようとしたのか。それとも偶々秦檜の石像に放
尿したら、その年の養蚕のデキが佳かったから、バカの一つ覚え然と、そ
れ以後も季節になれば放尿を続けてきたのか。どちらにしたとろでマトモ
ではない。

バカバカしい話だが、そんなバカバカしく不謹慎な放尿をバカバカしくも
続けているバカバカしさが、じつにバカバカしい限りだ。

 孔子の「巧言令色、鮮なし仁」に倣うなら、「放尿大量、豊なる哉、
収穫」ということになりそうだが、放尿の狙いが養蚕の豊作にあると考え
た方が、よりリアルにも思える。それにしても人前で放尿とは不衛生で風
紀紊乱の極み。子供の放尿でも問題だが、大人ならなお問題だろうに。

(13)【降參者の辛抱】=古来、「支那人か、征服せられたる經驗に致さ
れて」、常に「被征服者」やら「弱者」の立場から振る舞う。

いわば「降参者の心得にして、唯た無理非道の目に遭ふても、其の辛抱す
る心得を示」す。陶淵明にしても、その文学を「詮し來れは、此れの消極
的作用」に基づいているわけだ。
 
度重なる引用になるが、林語堂の『中国=文化と思想』(講談社学術文庫
 1999年)は、「成功したときは中国人はすべて儒家になり、失敗したと
きはすべて道家になる。儒家は我々の中にあって建設し、努力する。道家
は傍観し、微笑しているのである。

中国の文人は朝にあれば道を説き、徳を論ずるが、いったん野に下ると詩
を賦し、詞を作る。その詩は道家思想に溢れたものばかりである。これ
が、中国の文人のほとんど全部が詩を作る理由であり、彼らの著作の中、
詩歌がその大部分を占めている理由である」「道家の思想はモルヒネのよ
うな麻痺作用があり、人の心を鎮めてくれる。

それが中国人の頭痛や心痛を軽減しているのである」「道家のロマン主
義、道家の詩、道家の自然崇拝は、(中略)乱世の時代に中国人の苦しみ
や憂いを解き放っている」などと、道家思想が中国人の本性に根差してい
るものであると説く。

一方、大正期に京都帝国大学で「支那学」を修めた粋人学者の青木正児
は、『江南春』(平凡社 昭和47年)で「上古北から南へ発展してきた漢
族が、自衛のため自然の威力に対抗して持続して来た努力、即ち生の執着
は現実的実効的の儒教思想となり、その抗すべからざるを知って服従した
生の諦めは、虚無恬淡の老荘的思想となったのであろう。彼らの慾ぼけた
かけ引き、ゆすり、それらはすべて『儒』禍である。諦めの良い恬淡さは
『道』福である」と綴る。

有史以来の度重なる王朝交代、異民族支配を受けた経験から、徳富は中国
人の行動原理は「被征服者」「弱者」の立場から導かれる、と説く。

一方、林語堂の見解に従えば、中国人は「失敗したときはすべて道家に
な」り、自らをも「傍観し、微笑している」。

さらに青木は、「『儒』禍」と「『道』福」の間で揺れ動く中国人だが、
とどのつまり「生の諦めは、虚無恬淡の老荘的思想となった」とする。

徳富、林、それに青木・・・判り易く言えば、泣き寝入りの恨み言とい
うことか。《QED》
     

2017年05月26日

◆英国テロ、欧州は厳戒態勢

宮崎 正弘



<平成29年(2017)5月25日(木曜日)通算第5304号> 

 〜英国テロ、欧州は厳戒態勢、渡航注意勧告。フィリピンに戒厳令
   テロ大国パキスタンでは、また中国人2人誘拐〜

パキスタンのバロチスタン地方は、民族も言語も異なり、独立運動が燃え
さかる。北隣はアフガニスタンで、タリバンが往々にして逃げ込む先が、
このバロチスタン地方でもある。

州都はクエッタ。中国がパキスタンと推進する世紀のプロジェクト(パキ
スタンにとって)、一帯一路のパキスタン版「CPEC」の中心拠点である。

CPECとは中国パキスタン経済回廊の略。

5月24日、真昼。クエッタの語学センターからでてきた中国人教師ふたり
が武装グループに車で誘拐された。

もう1人もセンター付近で誘拐されそうになった。身代金を狙う中国人誘
拐事件としてCCTV(中国中央電視台)が大々的に報じた。

CPECは総額550億ドルという天文学的巨額を投下してグアダール港か
ら、パキスタンを斜めに横切り、中国の新彊ウィグル自治区カシュガルま
で、鉄道、ハイウエィ、パイプラインの3つを同時に敷設し、付随して光
ファイバー網を建設するという習近平の政治生命をかけた取り組みであ
り、北京で一帯一路国際フォーラムを開催して2週間後の事件だから、
すっかり習近平の顔に泥を塗られた形となった。

巨額の商談に群がるパキスタン政府は中国と協力関係にあるため、語学セ
ンターに通って中国語を学ぼうとする人が増えた。

クエッタでは中国語熱が盛んだといわれてきた。その象徴が語学教師であ
り、これを誘拐するという行為は、中国に対しての挑戦である。

すでに中国人に対するテロ事件はバロチスタンで頻発しており、2004年に
は中国人エンジニアふたりが誘拐され、1人は殺害された。

2015年には中国人観光客が誘拐され、タリバンと交渉の結果、1年後に身
代金を支払った釈放された。

こうした治安環境の悪化のため、中国人労働者は現場でも隔離された場所
に収容され、その周辺ならびに工事現場の沿線をパキスタン軍兵士が警護
するというへんてこな構造になっている。


 ▼バロチスタンはもともと独立国家だった

さてパロチスタンは何故治安が悪いのかと言えば、パキスタンへの帰属に
不満があるからだ。

歴史的に見れば、この地方は「カラート藩国」である。カラート藩国は
1639年に成立し、1876年に英国の支配を受けた。英国の密約によりパキス
タン軍が1948年に侵攻し、併呑した経緯がある。

バローチ人が関与しないところで勝手に決められた領土策定の密約は、中
東地図を一方的に線引きしてイラク、ヨルダン、シリア国境などを策定
し、パレスチナにユダヤ人国家の建設も示唆し、密約した「マクマホン書
簡」、バルフォア宣言」、そして「サイクスピコ協定」のようなものだった。

サイクスピコ協定は1916年に英国、仏蘭西、露西亜が結んだ密約で、オス
マン・トルコ帝国の解体以後の地図の策定だった。
 これは英国お得意の2枚舌、3枚舌外交の典型であり、結局は力のある
勢力が勝つのだ。

バロチスタンは、「バローチ人の国」という意味であり、ハザラ人、ペル
シャ人、パシュトン族が混在しており、言語も独自の言葉のほか、ウルド
ウ語、ペルシア語が通じる地域が点在する。

ソ連がアフガニスタン侵攻のおり、背後を突く地勢を利用して、バロチス
タンを支援した。

パキスタン軍の情報部やタリバン、アルカィーダの裏の結び付きは、この
クエッタが中心とも言われる。

近年は、国際力学から、中国に対応し、パキスタンに敵対するインドの陰
謀という説も広く流布している。実際にクエッタではモディ(印度首相)
の人形とインド国家を焼く、反インド暴動が起きている。

これもまた、パキスタンの反中感情をすり替えるため中国が背後でやらせ
たという説もあるから、陰謀論の拡大ドミノだ。

パキスタンは、このバロチスタンで1998年に核実験を強行し、米軍の偵察
機が上空のサンプルを収集した結果、北朝鮮と同様なミサイルや核施設が
使われ、プルトニウムを検出するに至った。

2017年05月25日

◆英国の自爆テロ

宮崎 正弘



<平成29年(2017)5月24日(水曜日)通算第5303号> 

 〜英国の自爆テロ、ISの無差別殺戮テロが世界を覆っているが
  フィリピン政府、ミンダナオ島に60日の戒厳令を発令〜


北京の一帯一路フォーラム出席の後、モスクワを訪問中のドウテルテ・
フィリピン大統領は5月23日、ミンダナオ島に60日の戒厳令発令を決めた
と発表した。

ダバオ市長と永年つとめ、麻薬密売など凶悪犯を片っ端から逮捕、殺害に
踏み切っているドウテルテ政権は、その強硬手段を国際社会から批判され
てはいるが、フィリピン国内では絶大な人気を誇る。

フィリピン外交筋によれば、北京で一帯一路フォーラムのあと、習近平と
の個別会談に臨み、ドウテルテは「スカボロー礁は我が国の領海であり、
われわれは海底油田の掘削を始める権利を有する」と言ったところ、習は
慌てて「われわれは友人ではないか」と空気を和ませようとした。

ところがドウテルテ大統領はなおも引き下がらず、さらばと習近平は「力
を用いるなら、つぎは戦争だ」と恐喝的な言辞を吐いたという。

米国に対しても「人権批判などと偉そうなことをいうな。米国はフィリピ
ン人を40万人も殺したではないか。2年以内に米軍は出て行って欲し
い」と暴言をエスカレート、手をつけられない狂犬と一部米国のメディア
が皮肉った。

しかし、ドウテルテのアキレス腱は、出身地のミンダナオの治安悪化であ
る。ISに繋がる過激派の跋扈に武力鎮圧でのぞんできたが、武装集団は
なかなか壊滅出来ない。

とくに同島内ラナオ・デル・スール県のマラウィ市(人口20万人)に潜伏
しているISのテロリスト殲滅作戦を展開中に、フィリピンン国軍兵士、
警察官ら3人が殺害された。

これはFBIから50万ドルの懸賞金付きで手配されている国際テロリスト
のイスニロン・ハピロン(51歳)が、ことし1月の空爆で負傷し、マラ
ウィ市内に逃げ込んだからだ。

イスニロンは、2014年にアメリカ人など外国人目標のテロ、誘拐などに関
連し、また彼はアブ・サヤン(武装テロリスト集団)の副司令官を務め、
現在もミンダナオ独立などと主張してISに繋がる過激武装組織「マウテ
集団」(50名の武装過激派)を指導している。

フィリピンはIS殲滅のため、戒厳令を施行したうえ、マラウィ市を封
鎖、電気を止めて軍隊を突入させる構えという。

        
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
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 楠木正成が歴史教科書から消され、若い人が知らない武将となった
  「建武の中興」は、いまや「建武の新政」などと教えている

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家村和幸『真説 楠木正成の生涯』(宝島社新書)
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 題名から類推すれば楠木の伝記と誤解しがちだが、かれの勤王の生涯
を、物語風ではありながら、むしろ戦略と戦術を緻密に検証しつつ、一貫
したかれのテーマは何であったか、究極的に彼が率先し、後世に残した指
導者像、その指揮力、指導力、管理力を描く。

孫子を応用した経営学は多いが、楠木の経営学的視点からの考察は珍しい。

世に楠木正成物語は多いが、勤王の熱き心を強調するあまり、情緒的に過
剰な表現が多く、また左翼の批判は勤王一途とは時代錯誤的だと単純に説
いておしまいという表現や、小説が目立った。

著者の家村氏が採り上げるのは、こんにち誰も顧みない『太平記秘伝理
尽?』(「?」は「金」編)という書物である。いわゆる「『太平記』読
み」は多いけれども、この書物は注目されることが少なかった。しかし平
凡社東洋文庫には収録されている。

この書物の中で、楠木正成がいかに優れた戦略家であったかと同時に、人
間洞察に鋭く、人物の評価、配置。そして信賞必罰の掟の重要性を、正成
が闘った全ての戦闘を教訓化し、そのたぐいまれな統率力とリーダーシッ
プの妙を説いている。

楠木正成は赤坂城に挙兵し、天王寺迎撃戦を戦い、千早城での奇襲、謀
略。そして飯森城攻略、京洛の戦いから湊川まで、それぞれの戦場、陣の
取り方、戦闘員の配置などを具体的に語る。

この統率力、組織の有効活用は、優にこんにちの企業経営のマネジメント
に活用できるが、そのことは措く。

楠木正成は歴史許教科書から消され、若い人が知らない英雄となった。
「建武の中興」は、いまや「建武の新政」などと教えている 

楠木正成は『太平記』にあらわされ、人口に膾炙したが、桃山時代に京都
の僧が、名和正三から伝授された『太平記秘伝理尽?』を研究した。その
後、加賀前田藩に伝わり、「江戸時代に入ると、版を重ねるようになっ
て」、広く日本でも流布され、「兵法の流派を超えて大いに普及した」。
山鹿素行は、この書を最も愛読した。

山鹿流軍事学は赤穂浪士ばかりか、長州にあって吉田松陰に受け継がれ、
当然だが、西郷隆盛も読んでいただろう。

余談だが、評者(宮崎)は、僅か2回だが、河内長野から千早城、赤坂城
を回ったことがある。

2回目は時間がなかたtので、タクシーで石平氏と一緒だった。千早城で
はたと考えたのは、この山城、持久戦には弱かったのではないか、飲料水
をどうやっていたのかという誰もが考える疑問だった。

本書ではやはり敵将が千早城攻略を前に、山城なら「渓流のわき水を組ん
でいると考え、水攻めにしようと図った。そこで、千早城北東の谷川の水
源地を見はらせた」(88p)とある。

ところが千早城は籠城戦を長期間耐えた。じつは「楠木正成は城内に湧き
水や雨水などで用水を確保していたほか、山伏等が秘密の湧き水場所を
知っていた」からであった。
 
          
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIE 
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 ユーゴの中国大使館はアメリカの秘密兵器F117のエンジンを回収していた
 
海南島では米軍偵察機が体当たりされ、機体の秘密が盗まれるところだった

  ♪
藤井厳喜 vs 飯柴智亮『米中激戦!』(KKベストセラーズ)
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副題は「いまの自衛隊で日本を守れるか」とあるように、目の前の軍事的
危機をいかに回避するか、いや回避できなくなった場合、日本はどうやっ
て生き残ることが出来るかを縦横無尽に語り合った独特の防衛論である。
 藤井さんは国際政治学者だが、対談相手の飯柴智亮氏とはいったい何者か。

彼は自ら志願して豪から米軍に入隊し、アフガニスタン、イラク戦争を
戦った歴戦の勇士、元米軍大尉である。

自ら外人部隊へ志願して闘った先人には柘植久慶氏もいるが、戦場をしっ
ている数少ない日本人だ。

じつは評者も、2度ほど飯柴氏に会ったことがあるが、アフガニスタン戦
争の時、キルギスのマナス空港に待機したこともあると言うので、アフガ
ニスタンの実際の戦闘について話を聞いたことがある。

それはさておき、本書の議論は朝鮮半島有事、台湾、南シナ海へと広が
り、具体的には地政学、政治学、軍事作戦。とりわけ米軍が用意している
シナリオで、米国軍人しか知らないプランがあることなど、はじめて訊く
ような内容が沢山盛り込まれている。

2001年、米軍機が海南島で中国軍機に接触され、強制着陸させられた事件
は記憶に新しいところだが、飯柴氏がいうには、『ラムスフェルド国防長
官は、決定的に中国が大嫌いになった。自分はそのとき現役でしたから雰
囲気をよく知っていますが、あんなことをする中国は完全に敵。アメリカ
は一気に反中に染まり』対決姿勢を鮮明にしようとした矢先、9:11テロ事
件が起きた。このため、アメリカは中国敵視政策を曖昧として中断した。
幸運だったのは中国である。

しかし199年、ユーゴスラビアの中国大使館『誤爆』について、飯柴氏の
分析はこうである

「アメリカはF117という最新鋭ステルス機を投入していた。ソ連製のミ
サイルでユーゴが撃墜したときに、中国は、「エンジンを回収したらし
い」うえに、それを「中国に運び出されるというときにアメリカは(中国)
大使館を爆撃しました」(62p)。

奇々怪々の軍事的駆け引きは政治の舞台裏でつきものだが、評者が訊いて
いたのは、ユーゴの中国大使館が情報工作の拠点であったため『意図的』
な誤爆に踏み切ったというもので、直後、北京のアメリカ大使館は火炎瓶
の襲撃を受け、米国大使は命からがら逃げだしたものだった。

反米暴動になったため、アメリカは中国との対決姿勢をまたも緩め、クリ
ントン政権は「戦略的パートナー」「G2」などと中国に対しておべん
ちゃらを言い出したのである。

今回も状況は酷似する。

トランプは中国との対決を辞さずと姿勢を改めたとき、北朝鮮ミサイル危
機がおこり、当面、中国を制裁共同作戦の相手とする。またもや中国は幸
運であり、勘ぐれば北のミサイル実験は中国のやらせという陰謀説も成り
立つ可能性がある。もちろん、本書ではそこまで言っていないが。。。。
         
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  ◆樋泉克夫のコラム 
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【知道中国 1575回】        
――「正邪の標準なくして、利害の打算あり」――(徳富14)
   徳富猪一郎『七十八日遊記』(民友社 明治39年)

              ▽
 かねがね思っていたことだが、「道を憂へて貧を憂へすとか、身を殺し
て仁を成すとか、其他種々」の孔孟の“尊い教え”は、誰にも否定できな
い。いわば人倫上の正義であり真理でもあろう。かくも気高い志は誰もが
否定はできないが、同時に実現できるわけではない。たとえ逆立ちしたと
ころで。

たとえば孔子は「克己復礼」を掲げ己を克服して「礼(=天が示した人
倫・本源的秩序)」を地上に実現することを、毛沢東は「為人民服務」を
言い募り己を棄て「人民」の「為」に「服務(つくすこと)」を求めた。
「克己復礼」であれ「為人民服務」であれ、そのこと自体、誰にも否定で
きない崇高な行為ではある。

だが、艱難辛苦の学問的研鑽を重ねたとしても、「克己復礼」は努力目標
にとどまりこそすれ、実現は不可能だ。政治の力を以てしたところで「人
民」から強制的に私利私欲を剥ぎ取ることができない以上、「為人民服
務」は人々の行動を雁字搦めに縛り付ける強制的行動基準でしかなかろう
に。そんな所謂カッコつきの正義を実際に政治の場で実現させようなど
と、ウソに決まっている。

ということは、便宜主義の塊ともいえる毛沢東の「為人民服務」から?
小平の「先富論」「白猫黒猫論」「韜光養晦」、江沢民の「三個代表
論」、胡錦濤の「和諧社会建設」、習近平の「中華文明の偉大な復興」
「中国の夢」まで、極論するならば、その場凌ぎのウソの塊。そのウソの
塊を信じ、実現すべく努力するフリをする。

そういえば文革時、誰もが毛沢東バッチを胸に留め、かの『毛主席語録』
を狂気のように打ち振っていたものだが、あれも、ヒョッとすると毛沢東
を崇め奉っているフリだったと考えれば納得もいく。

あの時代、毛沢東の胸に毛沢東バッチは見られず、その手に『毛主席語
録』は握られてはいなかった。毛沢東は毛沢東を崇め奉るフリをする必要
などないからだ。ところで北王朝では金日成は金日成バッチを、金正日は
金正日バッチをしていなかったはず。そこで金正恩はどうだろうか。その
うち『金委員長語録』なんてシロモノが出回ることになるのだろうかスミダ。

(12)【殉國の馬鹿者】=宋代に宰相の秦檜が宋を侵略した異民族の金
と和親条約を、李鴻章が満州をロシアに譲り渡す秘密条約を結んだのも、
とどのつまりは「孔孟の?旨を、遵奉したるものと見るの外はなかる可く
候」。だが、徳富の見立てに依れば「國に殉し君に殉するか如きは、寧ろ
支那に於ては、調子外れの無法者の所爲」であり、それゆえに「國に殉し
君に殉する」といった行為は「陽には奨美せられつゝも、陰に馬鹿にせら
れつゝあるは、殆んと怪しむに及はす」であったそうな。

秦檜に敵対し断固として宋朝を守ろうとした「岳飛の墳墓は、堂々とし
て、忠臣の標本となり、秦檜の石像は、其の墳前に、囚人の姿に据へ置か
れ、如何にも忠奸の區別、百世の下、凛善たるか如」きだが、それは表向
きのこと。「支那人の胸中には、岳飛を憐み、秦檜を羨む者のみと申して
も」、強ち間違いはないだろう。


古来、岳飛廟の参詣客は、先ずは「囚人の姿に据へ置かれ」た秦檜の石像
に向って放尿する。異民族に対し敢然と戦いを挑んだ岳飛を讃え、漢族を
蛮族に売った秦檜に対する軽蔑の意を表す。いわば石像とはいえ小便塗れ
の屈辱を味わせ、民族を売るという許しがたい罪の重さと、その反対の民
族守護の気高さを満天下に示そうというのだろう。だが小便には別の意味
があるようだ。

「秦檜の石像に向て、放尿すれは、養蠶か當るとの呪いに外ならす。何
時も養蠶の季節には、近傍の農民共、出掛けて一齊放尿するの由にて候。
果して眞なりとせは、扨も興の醒めたる話に候はすや」。いや「果して眞
なりとせは」、興の募る話にて候デ、ゴザル。
《QED》

2017年05月24日

◆どこへ消えたのか320兆円(20兆元)

宮崎 正弘

<平成29年(2017)5月23日(火曜日)通算第5302号 >

 〜「中国金融界の核弾頭」。どこへ消えたのか320兆円(20兆元)
    共産党の内部機密文書が3月に危機を報告していた〜

 3月の全人代に幹部だけに報告されていた機密文書がある。
 それによれば、「2000年から2015年までに国有企業、金融、証券、保険
業界で極秘に処分された不良債権は20兆元(邦貨換算で320兆円)に達す
る」とされていた。

これは香港の『動向』5月号がすっぱ抜いた記事で、中国社会科学院と国
務院発展研究センターが調査した結果に基づく報告とされた。20兆元とい
う数字は、2007年の中国のGDP総額に匹敵する。

 香港の『東方日報』は、四月に「上海株暴落以後、影の銀行による貸し
出しで表面的に穏健にみえる中国金融界は、巨額が海外へ流出した事実か
らも判別できるように空前の危機に直面している。これは『経済政変』で
ある」としたうえで、「中国の金融界の腐敗はいずれ国家安全保障ならび
に社会の安定に対して極めて剣呑な爆弾となる」と書いた。
 中国金融界が抱える『核弾頭』だというのだ。

 香港の豪華ホテルにボディガードに囲まれて滞在していた肖建華が中国
に拉致され、取り調べをうけているが、以後も保険監督委員会主任、中国
輸出入銀行北京支店長などが落馬し、芋づる式に黒幕への捜査に迫っている。

 すでに国務院、中央銀行、証券、銀行、保険の監査委員会は「未曾有の
金融危機が近い」という認識で共通しており、いずれ黒幕とされる劉雲山
の息子、江沢民の孫ら、香港で妖しげなファンドとの結び付きが深い、こ
れまで「アンタッチャブル」とされた高官一族への捜査が、もし、行われ
ると、市場は一挙に爆発するだろう。
         

2017年05月23日

◆中国で18〜20人以上のCIAスパイが

宮崎 正弘



<平成29年(2017) 5月22日(月曜日)通算第5300号 <5300号記念特大号>>

 〜中国で18〜20人以上のCIAスパイが殺害、拘束されていた
  オバマ政権下で、CIAの不手際がつづき、米国に「もぐら」がいた〜

CIAの士気の低下はオバマ政権下で顕著だった。
 殆ど機密情報が取れず、また重要な亡命希望者(王立軍)らをオバマは
放置した。

2010年から2012年にかけて、18人から20人のCIA協力者(中国人)が逮
捕され、殺害もしくは刑務所に送られていた。

かつてCIA、FBIの内部にロシアのスパイが紛れ込んでいた。オルド
リッチ・アーメス(CIA)とロバート・ハンセンン(FBI)事件は米
国のインテリジェンス機能に大きなマイナスとなった

CIAが、米国の情報漏洩と中国の工作員ネットワークの消滅に気付いた
のは、協力者の北京における中枢からの情報が途絶え、工作員らが消えて
しまったことだった。そのうえ、類似の機密が中国のハッカーと推定でき
るルートからウィキリークスに漏洩していた。


CIAの高層部の内部にモグラが潜んでいたのだ。

「その男」(The man)は永年にわたってトップの機密、暗合のマ
トリックス、スパイの落ち合う場所や方法などCIAテクニックを、中国
に漏らしていた。CIAが、その男を疑い始めたことに気付くと、かれは
さっとCIAを退職し、アジアに移住して企業経営を始めた。その資金は
おそらく中国が用意したのだろう。

以上の衝撃的なニュースは『ニューヨークタイムズ』(電子版、5月21
日)のトップ記事。BBCなどが後追いで報道し始めており、在米中国語
新聞も大きく採り上げている。「中国逮捕殺害20名美国間諜」(博訊新聞
網、5月21日)。

CIA、FBIはともに、この情報に関して一切のコメントを出していな
い。中国もこのニュースをまったく伝えていない。

       
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◆樋泉克夫のコラム 
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【知道中国 1573回】       
――「正邪の標準なくして、利害の打算あり」――(徳富12)
   徳富猪一郎『七十八日遊記』(民友社 明治39年)

            ▽

さて「觸目偶感」の冒頭を「清國の将來抔と申す問題は、餘りに面倒にし
て、且つ重大なれは、氣輕く思ひ切りて、愚存開陳致す程の勇氣も、出兼
申候」と切り出したうえで、「通り掛かに觀察し、若しくは感得したる一
二を、略述可致候」と執筆の意図を記す。但し、通りすがりの観察にすぎ
ないゆえに「自から慚認する所に候」とも。

やはり外国を理解するのは「其の國民に化する位に深入り」すべきだ
が、そうできない以上は「寧ろ其の觸目したる一刹那の印象と感興とを、
其儘に複生せしむるを以て、却て其眞實を得るに庶幾かる可しと存候」。
だから以下の記述は「皮相は則ち皮相に候得共、皮相の見、亦た取るべき
ものなきにあらす」とする。

自分は清国の「國民に化する位に深入り」しているわけではないから、
これから開陳する意見は「皮相の見」に過ぎないかもしれない。だが、
「却て其眞實」を抉っているに違いない――こんな徳富一流の“自負の念”が
行間に垣間見える。そこで、以下、記述順に従って徳富の「皮相の見」を
考えてみたい。なお、表題は【 】で示し、番号を付しておく。

 (01)【支那に國家なし】=「支那には家ありて、國なく、支那人に
は、孝ありて忠なし」。過去を振り返っても現在をみても、「國家的觀念
らしきものは、殆と見出兼候」。その背景を探れば、「幾多の獨立國を爲
すには地理的に、餘りに便宜多く。統一の國家を爲すには、地理的に餘り
に廣大なりしか爲めには非さりし乎」。つまり地理的条件からして、近代
的な国家の枠組みでは捉えきれない、ということだろう。

 (02)【寂寞たる除外例】=「支那人とても、絶對に愛國心か、無き筈
も無之候」。古来、史書や文学には復仇やら「故土の恢復を絶叫」する文
字が残されてはいるが、「別段何等の反響を見出し不申候」。彼らの意識
は一族内の外に出るものではなく、であればこそ抽象的な国家を想定する
ことはできそうにない。

(03)【共通性】=「一言に支那人と云ふ」が、「其の4億の人種は、必
すしも同一模型より、打ち出たるものにはあらす」。人種にも異同があ
り、「或は滿洲國、或は北支那國、或は長江國、或は廣東國」といえるほ
どに、「幾多の地理的分野」もある。

だが「此の多き人と、廣き土地とを、通して、其の一貫したる特色も、多
少可有之候」。そこで、これから説くところは、彼らの「共通性に候。共
通性らしく見ゆる點」である。

(04)【文弱】=「支那の古今を通して、最も著明なるは文弱の一事に
候」。「支那の通患」は「積弱不振」である。

(05)【文弱的國民】=「支那人は、平和的人民なりと申せとも、如何
に平和的なれはとも、力を以て防禦する位の事は、做しても差支え」ない
だろう。

だが、彼らはそうしない。「議論は、立派に聞へ」はすうるが、とどのつ
まりは「平和さへ購ひ得れは、足れりとの了見に外なら」ない。彼らは決
して「平和的人民」ではなく、「寧ろ文弱的人民と云ふを、精當となす所
以に候」。

(06)【女らしき男の國民】=古来、英雄豪傑の類には事欠かないが、
「其の國柄か、元來文弱國に候、其の人柄か、元來文弱人に候」。だから
「今日に於ても、其の容貌、風采」において男らしい男を見い出すことは
できそうにない。「個人にも此の如く候。國家にも此の如く候」。

(07)【附景氣の戰爭】=「支那流の戰爭は、唯た景氣を附けて、人を
畏すのみに候」。「支那の戰爭は、支那の芝居」と同じで、「唯た騒騒敷
迄に候」。個人の喧嘩も同じで、騒ぐだけ。
「彼は容易に劍を抜かす、然も一たひ抜けは、打たすんは已ますとの要語
は、到底個人にも、國家にも、支那には實踐覺束なく候」。
とどのつまりは見掛け倒し…ヤレヤレ。
《QED》

      
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 ★グローバル・イッシュー・フォーラムから宮崎正弘先生の特別講演会
のお知らせ
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ペマ・ギャルポ先生が主催のフォーラムです。5月26日に宮崎正弘先生を
お招きしての特別講演会があります。
定員になり次第、締め切りますので、お早めに御予約下さい。あと少し余
席があります。

              記

とき    5月26日(金曜) 18:30−20:30
ところ   市ヶ谷「アルカディア市ヶ谷」
講師    宮崎正弘先生
演題    「国際情勢の読み方」(北朝鮮問題と米中の角逐、ロシアの
介入。韓国の赤化)
討議    講演終了後、ペマ先生がコーディネータとなって質疑応答、
意見交換。
会費    一般3000円(学生2000円)
申し込み  FAX(042)679−3636
      メール globalissues_gift@yahoo.co.jp
定員になり次第、申し込みを締め切ります
◎お申し込みの方は(1)お名前(2)御住所(3)電話番号(4)メー
ルアドレス(5)「宮崎メルマガで知った」(6)懇親会(下記)の出
欠。などを書かれて申し込んで下さい。
◎終了後、同会館二階のラウンジで、講師を囲んでの懇親会があります。
これは、別途会費3千円です。
             以上
          

2017年05月20日

◆ワナクライ(ハッカー集団の世界同時襲撃)

宮崎 正弘



<平成29年(2017)5月19日(金曜日)弐 通算第5298号> 

 〜ワナクライ(ハッカー集団の世界同時襲撃)、中国の被害も甚大だった
  大学、ガソリンスタンドなど被害は3万件〜

 ワナクライの被害実態は中国でも甚大だったことが判明した。

政府機関、企業、大学など3万件の被害が報告され、とくに430の教育機
関にPCにランサムウエア感染が確認された。政府の情報機関関連、行政
府、鉄道駅などでも760台のPCが被害を受けていた。

 CNPC(チャイナペトロ)本社が被害にあったため、全土2万のガソ
リンスタンドもガソリン供給に支障が生じた。

 香港でも行政府の機関、システムのPCにランサムウエア感染が確認さ
れ、被害は1700台だった模様。
 世界同時奇襲というハッカーの犯罪は、これから凄まじいほど深刻は危
機をもたらすと欧米のインテリジェンス機関は警告している。

        

2017年05月19日

◆トランプにプーチン大統領から応援歌

宮崎 正弘



<平成29年(2017)5月18日(木曜日)弐 通算第5296号> 

 〜窮地のトランプにプーチン大統領から応援歌  「ラブロフ外相との会
話報告を読んだが、機密はなにもなかった」〜

5月17日、ソチで記者会見に臨んだプーチン大統領は、記者団の質問に答
えるかたちで、さきのトランプ大統領とラブロフ外相との会談内容の翻訳
報告書に触れ、「機密に値するような内容はなかった」とした。

「アメリカの政局は精神分裂症に冒されている」とも発言したとクレムリ
ンに近いRTレポートが報じた(ワシントンタイムズ、5月17日)。

 「もし米国連邦議会が、会談内容を知りたいのであれば、ロシアはそれ
を提供する容易がある」とプーチンはさらに踏み込んで発言しており、窮
地に陥ったかにみえるトランプ政権への助け船。

明らかに米国に貸しを作って、ロシアは外交上の得点を稼ごうとする作戦
だが、これではまるで応援団。

「トランプ大統領が会話した内容に機密があったとしても、大統領は情報
源を知らない」(マクマスター大統領安全保障担当補佐官)。

したがって大統領が機密情報を漏洩したということにはならない、という
のがホワイトハウスの立場である。

むしろ、過剰な報道を続ける米国のリベラル・メディアの体質(まったく
日本の左翼新聞と野党のつまらない駆け引きや、些末な事件を針小棒大に
騒ぐのは同じ穴の狢だが)が深刻な問題であることには間違いがないだろう。

       

2017年05月18日

◆トランプ大統領がロシアの機密情報を漏洩した?

宮崎 正弘



<平成29年(2017)5月17日(水曜日)弐 通算第5294号>

 〜トランプ大統領がロシアの機密情報を漏洩した?
  政権内の機密をメディアに漏らした「内部の敵」がいることが、もっ
と深刻では?〜


左翼メディアの暴走ぶりは相も変わらずだが、いま議論の焦点は、5月
10日にトランプがロシア大使ならびにロシアの外務大臣と会談したおり
に、ISに関しての情報を与えことに絞られている。

実査しには、IS撲滅の共同作戦に情報の共有を企図したからで、むろ
ん、大統領にその権限はある。

メディアの過剰な批判はあたらない。

情報を供与した「同盟国」に失礼という解説も、国名を上げての証拠がな
く、たぶんイスラエルだろうが、それならイスラエルから抗議があがって
いるかといえば、それもない。それより問題はトランプ政権の内部に
「敵」が潜んでいることである。

そのほうが国家安全保障問題の文脈では、もっと深刻な問題である。
トランプ大統領が国務省、国防相の副長官クラスの人事を遅らせている最
大の要素は、まず「内部の敵」を炙り出すことに置かれているからだ。

そもそも米国のリベラルなメディアは大統領と一緒に国家の命運を真剣に
考え、ともに国益のために共同歩調をとって歩むという気持はさらさらな
い。トランプを追い詰め、可能なら大統領弾劾に持って行きたい。気に入
らない人物だから、国家の命運より、かれらが気に入らない指導者の排斥
が最大の目的となっているのである。

この点は、日本の大手メディアとまったく同じである。

安倍首相の些細な問題を、針小棒大にスキャンダラスに報道し、なんとし
てでも安部首相の足を引っ張りたい某新聞、某テレビの論調を見よ。

大統領弾劾に関して言えば、ニクソンのウォーターゲートと完全に異な
り、証拠がないうえ、上院は共和党が多数派、最高裁判所判事も保守派が
多数派である。

弾劾を報じているメディアやジャーナリズムは、かれらの希望を一方的に
がなり立てているだけである。

安全保障上、北朝鮮の核ミサイルと同様な危機が迫った。

5月12日に起きた「ワナクライ」事件は、ロシアへの機密情報云々より、
遙かに危険な事態の出来と言える。

北朝鮮にもハッカーの天才がいるという恐るべき現実が浮上したからだ。

これまでにもハリウッド映画製作会社にハッカー攻撃を仕掛け、あるいは
バングラデシュの中央銀行から91億円を不正に送金させたりの「実績」が
ある。

従来、北朝鮮はインターネットに遅れ、コンピュータ技術は後進国とされ
たが、猛烈なシステムの改革によってコンピュータ教育を拡充し、学校で
もデルのコンピュータで授業をしている。


 ▼北朝鮮のハッカー部隊は先進国レベルに達している

なにしろ核開発、大陸間弾道弾をつくってのけた独裁体制。アメリカ本土
をねらうICBMの完成は秒読みに入った。付随するコンピュータ技術、
エンジンや合金技術が躍進した背景がなければ出来ないことである。

北のハッカー部隊はいまや7000名規模に膨れあがり、しかも、この部隊は
通信事情の悪い北朝鮮からではなく、中国遼寧省の丹東や瀋陽のホテルに
陣取って、世界にウィルスをばらまく作戦を展開している。

「ワナクライ」では英国の医療機関やロシア内務省、フランスのルノー、
在英日産などに被害がでた。時差で遅れたが、日本でもJR東日本、東急
電鉄、川崎市水道局、日立製作所に被害が出た。

ところが金融機関が被害を免れている。これはバングラデシュの中央銀行
事件以後、北朝鮮制裁で、世界の銀行のシステムから排斥したこと。銀行
など金融機関がセキュリティ強化を行ったことなどにより、また被害が多
かった国々はマイクロソフトの最新バージョンを使っていなかったことが
主因とされる。

だが、ワナクライ事件など、これから起こるであろう大規模なハッカー犯
罪の嚆矢でしかなく、世界同時に金融システムが奇襲され、あるいは原発
が襲われるなどコンピュータのテロが惹起される可能性が日々高くなって
いる。

こんなおりに内政的危機を回避し、世界のリーダーと連続的に面会して大
胆なメッセージを用意しているのがトランプの戦略である。

トランプは就任後初の外遊に出発する。それも9日間である。

サウジアラビア、イスラエル、バチカン、ブラッセルとイタリアである。

サウジとはオバマ前政権が冷却化させた2国間関係の劇的な改善をなし、
イスラエルとは、パレスチナ問題でおそらく大胆な提案をするだろう。

ブラッセルはNATO首脳会議であり、従来の米欧関係の要であり、同盟
関係の再確認と強化が唱われるだろう。
そして、バチカンとの関係修繕のあと、トランプはイタリアでG7に望む。