2017年09月05日

◆砂漠にも無意味な幽霊都市

宮崎 正弘



<平成29年(2017)9月4日(月曜日)弐 通巻第5418号>  

 〜タクラマカン砂漠にも無意味な幽霊都市、誰が責任をとるのか?
  新彊ウィグル自治区の安定化が目的だったが、実態は住民が不在〜

カシュガル郊外。緑のすくないタクラマカン砂漠。ここに新都心を建設し
「地上の楽園」と宣伝した。2009年のウルムチ暴動ではウィグル人およそ
200名が殺害され、数万がとなりのカザフスタンへ逃げ込んだと言われる。

イスラム住民をなだめるために中国は何を思いついたか、砂漠の真ん中に
新都心建設を始めた。総費用は85億ドルと謳われた。

「2万人の新雇用、新都心、繁栄する未来」が描かれた。
これは2010年から開始されたウィグル安定化5
ケ年計画である。

もともと西部開発は胡錦涛政権以来のスローガンだった。しかもシルク
ロード構想の国内版としても政治宣伝に転用でき、砂漠地帯も「第2の深
セン」が実現するなどと喧しいプロパガンダが鳴り響いた。

沿岸部は港湾設備が充実し、交通のインフラがあり、大学も多く、優秀な
人材を得やすいが、交通のアクセスは貧弱このうえなく、工業団地を建て
ても、進出企業はないだろうに、当局はそういう計算ができないのだろうか。

新彊ウィグル自治区の最西端カシュガルでは古いモスクが破壊され、追い
立てられた住民の住まいにと、およそ8万人の住居、ツィンの摩天楼、三
本の大通り、商店街をつくり、有利な条件を提示して入居者を募集した。
8万人というのはカシュガルの総人口の15%にあたる。
20万平方メートルの砂漠は緑に化ける筈だった。

ツィンビルは途中で建設が止まり、道路は冠水したまま、付近は荒れ放
題、宣伝に騙されてやってきた商店主は客が殆どおらず、閉店状態となった。
「移住歓迎のネオンサインは、まるでSOSに見える」と現地を取材した
『サウスチャイナ・モーニングポスト』(2017面9月4日)の記者は書いた。
     

2017年09月04日

◆「ジョージ・ソロスはテロリストだ」

宮崎 正弘



<平成29年(2017)9月3日(日曜日)通巻第5416号>  

 〜「ジョージ・ソロスはテロリストだ」。署名嘆願に11万人がサイン
   制度上、司法省が介入すればソロスの資産は凍結される〜

世界一の投機家として著名なジョージ・ソロスには、もう1つの顔がある。

「民主化」運動を支援し、東欧諸国には大学を寄付し、反政府運動の影の
指導者として暗躍した。

ウクライナの反ロシア暴動でも、資金を提供したといわれ、プーチンのロ
シアからの敵視されてきた。

2016年の大統領選挙中は、トランプを「詐欺の天才。インチキの独裁者」
と批判し、ヒラリー・クリントンを熱心に応援し、全米のリベラル、左
翼、人権活動家からは人気を集めた。

ソロスはテロリストだ、というのは彼のリベラルな政治運動への資金提供
などによる支援が、まわりまわって世界のテロリストを助長し、結局はア
メリカ社会の安定をそこなったとするもので、ホワイトハウスのネットに
ある署名欄で、「ジョージ・ソロスはテロリストだ」とする嘆願要求キャ
ンペーンは8月20日に開始された。

9月1日までにその署名が11万人を超えた(ワシントンタイムズ、9月
2日)。英語版プラウドでも「7万人を超えた」(同紙、9月1日)として
いる。

制度上、署名が1ヶ月以内に3万人を超えるとハワイとハウスは調査には
いる建言があり、司法省がこの嘆願を認めるとなると、ソロスならびに彼
の設立した政治寄金、諸団体の資金が凍結される。

はたして、そのような状態にまでなるか、どうか。
      

2017年09月03日

◆中国の不思議なマネーがブラックホール

宮崎 正弘



<平成29年(2017)9月2日(土曜日)通巻第5414号>  

 〜あのリバプールが中国の不思議なマネーのブラックホールと化した
  「チャイナタウン」建設プロジェクトに群がり、そして消えた巨額の謎〜

リバプールと言えば、まずはビートルズ。彼らがデビューしたマシュー・
ストリートには世界中から観光客が集まり、ポスターやら帽子やらマス
コット人形など所謂「ビートルズグッズ」が売れる。一昔前は、船員が肩
で風を切って歩く港町。やくざの街としても知られた。

港へ横付けされる貨物船から中国人船員が降り立ち、やがてリバプールに
住み着き、小規模なチャイナタウンができた。

第2次世界大戦の空襲で焼け野原となって、チャイナタウンは場所を移
し、いまではショッピング・モール、食堂、カラオケバー、食材店で殷賑
を見せるようになる。リバプールの街の中心部である。

カテドラル教会を挟んだ隣接地にニュー・チャイナタウン計画が持ち上
がった。

マクイン市長が主導し、市議会あげてこのプロジェクトに賛成した。「リ
バプール再生プロジェクト」の目玉と騒がれ、習近平が訪英したときに
も、この計画に極めて前向きで、キャメロン首相と前進を約束したのだった。
 
赤い竜が突然真っ赤な火を吹きあげながら巨額の投資資金を持って猛進し
てきた。主力は香港の投資集団とされた。はじめに提示された計画では摩
天楼が建ち並び、NYのソーホー地区のようなアーテスト村も誕生し、英
国繁栄のモデルとなるような夢が語られた。

遣り方は高層マンションや近代的でモダーンな商業ビルが建ち並び、ホテ
ルという総合的多角的な新都心建設の青写真に基づき、その分譲というか
たちで投資資金を募るという形式だった。

この遣り方は香港、広州などで顕著はスタイルだが、日本のマンション分
譲方式とは異なり、頭金が徐々に上がり、そのかわり、投資資金比は高利
がともなうという、一種トトカルチョ的な博打の方式に似ている。つまり
マンションを購入する人は別に住むわけではないのである。

英国でもこの方式にはなじみがなかったが、市議会主導のプロジェクトで
もあり、とりたてての反対はなかった。

また同様なチャイナタウン建設計画は、リバプールに限らず、ロンドン、
バーミンガム、マンチェスター、ノッテンガムなどでも進行していた。

雲行きが怪しくなった。

建設が遅れに遅れ、請負企業体のひとつだった建設会社が倒産した。

PHD社は負債1470万ドルを抱えて破産を申請し、訴訟の過程で明らかに
なったのはマクイン市長とその一族にヤクザが絡んで、集めた資金がプロ
ジェクトに投資されていなかった。

巨額の投資資金はブラックホールに吸い込まれて蒸発していた。

屋上に中華庭園、140室の豪華ホテルをもつ総合施設、マンション併設
という夢のような計画は建設中断を余儀なくされ、投資家から集団訴訟を
起こされ、喧しかった中国の銅鑼は突如鳴りやんだ。破局を迎えたのだった。

2017年09月02日

◆中国共産党、第19回党大会は10月18日から

宮崎 正弘



<平成29年(2017)9月1日(金曜日)通巻第5413号> 

(速報)
  〜中国共産党、第19回党大会は10月18日から
    18期「7中全会」は10月11日。最終人事が決まる〜

 中国は10月18日から北京で「第19回党大会」を開催すると発表した。
 「習思想」の確定と新執行部人事が焦点だが、みどころは王岐山の留任
があるか、習子飼いの陳敏爾が政治局常務委員に3段跳びするか、どうか。

習が「党主席」という毛沢東以来のポストを獲得できるか、否か。

いずれにしても、第15回大会以来、党大会の日程は8月末に発表されてお
り、前回の第18回大会だけが9月末に発表がずれこみ、実際の大会は11月
にもつれ込んだ。

       
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 読書特集  BOOKREVIEWS
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  ♪
小川榮太郎『天皇の平和 九条の平和(安倍時代の論点)』(産経新聞出
版) 
水間 政憲『完結「南京事件」』(ビジネス社) 
高橋 洋一『日本を救う最強の経済論』(育鵬社)
    
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◆書評 しょひょう BOOKREVIEW  
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「歴史によって鍛えられた思想であり、日本精神の中核にあるもの」が
「平和」
「憲法9条」なるものは、精神ではなく法律の条文でしかない。

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小川榮太郎『天皇の平和 九条の平和(安倍時代の論点)』(産経新聞出版)
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リベラルなメディアがひたすら安倍降ろしのために日夜、浅智恵、悪智恵
を絞って量産しているフェイクニュースの洪水。

「平和憲法を守れ」などとがなり立てながら、実際にかれらほど平和を守
ろうという意思は薄弱である。とどのつまり「日本固有の平和精神と憲法
九条の平和主義と何の関係もない」のである。

左翼の言う平和は欺瞞に満ちた世紀の大嘘である。

 「日本固有の平和」とは、小川榮太郎氏の定義では「歴史によって鍛え
られた思想であり、日本精神の中核にあるもの」であって、「平和主義
者」などと嘯く手合いが喧しくいう「憲法九条」なるものは、精神ではな
く法律の条文でしかない。

にもかかわらず現代日本では、平和という言葉が、日本人の美しい「歴史
的在り方への回路」ではなく、「思考停止の呪文」になりさがり、日本つ
ぶしに狂奔する左翼の便利な道具と化けてしまった。

ということは、平和の精神を第九条から救出しなければならず、国柄のな
かに正しく位置づけしなおし、一方で正当な安全保障を9条から救い出す
必要がある、と説く。

2017年09月01日

◆インドがベトナムへ「ブラモス・ミサイル」を

宮崎 正弘



<平成29年(2017)8月31日(木曜日)弐 通巻第5412号> 

 〜インドがベトナムへ「ブラモス・ミサイル」を供与へ
  マッハ2・8,射程290キロのスグレモノ、南シナ海へ投入か〜

ブラモスはもともと旧ソ連とインドの共同開発。スカッドミサイルの改良
から進化した。

2001年から実験に成功しており、その後、格段に改良されて、戦闘機、巡
洋艦ばかりか、潜水艦発射型もある。

インドは頭脳のコンピュータ部門を担当した。つまり命中精度の高い巡航
ミサイルの短距離型であり、局地戦に威力を発揮する。

具体的にいえばパラセル諸島(西沙諸島)の幾つかを中国に盗まれて、い
ざ海戦となるとろくな軍艦をもたないベトナムとしては敗退を重ねたわけ
だが、このミサイル導入により、ベトナム空軍の主力戦闘機スホイ30に
搭載すれば、中国が不法占拠をつづけるウッディ島などの軍事施設を攻撃
できる。

中国としては嫌な事態である。したがって反対の声明を出し、インドを牽
制することに余念がない。

中印国境紛争では、弐ヶ月の対峙をつづけたダグラム高原からインドは軍
を撤退させ、しかもモディは9月に訪中し、習近平と会談する運びとなっ
ている。

その裏側でベトナムへの兵器供与だから、インドの戦略も腹が据わっている。

なお、このブラモス供与をインドは否定しており、ベトナムのメディアが
報じているに過ぎず、中国は反撥を強めている。しかし一方でインドはベ
トナムに対して5億ドルの軍事援助の信用供与を約束している。
 
したたかな二枚舌外交は、さすがに英国に学んだインドだけに堂に入って
いると言えるかもしれない。
       
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◆書評 しょひょう 
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  西側は中国軍の実力を過大評価していないか
   本当は何が目的で、実際にはどのような成果をあげたのか?

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阿南友亮『中国はなぜ軍拡を続けるのか』(新潮撰書)
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 冷徹な分析で一貫した最新の中国軍の分析である。ともすればセンセー
ショナリズムに流れがちな日本のチャイナウォッチャーの中国の国防力の
分析に比べると、本書は徹底的に冷静なのである。

なにしろ下品で醜悪な対象を、これほど上品な文章で評価すること自体、
希な才能ではないかと思った。

それは語彙の選び方にあって、威嚇的な、或いは扇情的で情緒的な言い回
しを抑制し、主観を加味しない。共産主義独裁をイデオロギー的に裁断し
ない。つまり、本書は平明に説かれているが、アカデミズムの書である。
 たとえば暴力沙汰に発展する労働争議や抗議デモの暴徒など一連の暴動
も「群体性事件」と譬喩するのである。

さて中国の軍拡の第一目的は海外進出より、「国内平定」であり、「内戦
の延長線」が続いているからである。それは国防予算より治安対策費が大
きいという現実をみれば納得がいくだろう。

日本のメディアは、やれ中国軍はアメリカを超えるパワーになるとか、日
中衝突あれば、五日間で日本が負けるとか楽観悲観こもごものシミュレー
ションがあるが、中国軍の過大評価、もしくはためにする予測という側面
がある。

卑近な例でもシリアがある。

アサド政権は自国民に「容赦ない暴力行使は、周知の通り、シリア国内に
地獄絵を出現させ、膨大な数のシリア人が難民となっ」たが、現在の中国
は「そこまで逼迫していない」ものの、「天安門事件でも、民衆の鎮圧に
(人民解放軍が)多数の戦車、装甲車、自動小銃が用いられた」。

つまり「独裁国家の軍隊というものは、外国に対抗するという役割ととも
に『国内平定』という役割を果たすことを政権側から期待されており、国
内情勢の不安定性が増せば、必然的に後者の比重が増すことになる」(27p)

チベット、ウィグル、南モンゴルへの軍の布陣をみても、国内平定が中国
政治の主題である事実が浮かぶ 

ところが「一部のチャイナウォッチャーは、共産党がその手駒である解放
軍や武装警察の増強に邁進している姿から、『中国台頭』、すなわち中国
が経済発展とともに軍事力を強化し、やがて米国の地位を脅かす超大国に
成長するというシナリオを連想する」わけだが、「こうした類の未来予測
には違和感を禁じ得ない」とするのが筆者の立場である。

そう、中国の軍事力の脅威を言いつのるキャンペーン、じつは米国が仕掛
け人である。

共産党の人事が均衡を欠くのは歴史的体質であり、おどろくことはない
が、最近の傾向はGDP神話が絡み合って、新型の趣がある。

「『改革・開放』路線下の共産党は、GDPをどれだけ上昇させたかとい
う指標を地方幹部の人事査定の際に重視してきた。このため、不動産開発
は、GDPを押し上げ、幹部を出世させるための道具という側面を持つよ
うになった」(153p)

次々と中国全土に幽霊屋敷、ゴーストタウンをつくっても平然としている
のは、このためである。

改革開放は解放軍にサイドビジネスも解放した。江沢民時代にはむしろ奨
励された。

ホテル経営から武器輸出まで、最大の軍需産業商社の「保利集団」はトウ
小平一族の利権の巣ともなった。

『開発』という名の下に大プロジェクトが幾つも組まれた。一例が喧しく
言われた『西部開発』だった。

「資金の多くは三峡ダム建設、重慶などの大都市再開発、チベット鉄道な
どに象徴される大型開発プロジェクトに投入され、それらによって日雇い
労働者に一時的な現金収入の機会を提供しつつも、もっぱらプロジェクト
に関与した国有企業と内陸部の地方党委員会の懐を潤したとみるべきであ
り、中国社会における富の偏在の是正に貢献したとは言えない」(192p)。

かくして改革開放は一部階級の富の肥大を産んだが、多くの中国人は貧困
のまま捨て置かれ、胡錦涛のいった「小康社会」『和偕社会』は実現でき
なかった。

それどころか、さらに醜悪な独裁体制が拡大し、GDP拡大のため「一帯
一路」「AIIB」「BRICS」の登場となり、「愛国主義による中華
民族の復興」が「中国の夢」という虚言を習近平が弄するのである。
 本書は最後に中国人民解放軍の「実力」を客観的に評価していて、読み
応えがあった。

2017年08月31日

◆あの令完成が米国でゴルフ三昧

宮崎 正弘



<平成29年(2017)8月31日(木曜日)通巻第5411号 >

 〜あの令完成が米国でゴルフ三昧
  ユーチューブに流れた映像は本物か?〜

http://news.dwnews.com/china/news/2017-08-29/60009492.html
令完成らしき人物がゴルフの興じている映像がユーチューブに流れ出した。

しかし、日時も場所も特定されておらず、「それらしき人物」はサングラ
スをしている。女性が臨席にいると報じられているが、誰なのか。単に
キャディなのか。

しかし2015年3月の米国逃亡以来、もし、この写真が本物であるとすれ
ば、2年半ぶりに消息が判明したことになる。

胡錦涛の番頭として辣腕をふるい「西山幇」(石炭利権の山西省閥)を率
いた実兄の令計画失脚前に、令完成は兄から託された中国高層部ならびに
国防体制の最高機密2700件のファイルを持ち出して、アメリカに亡命した。

直後、中国はばらばらに100人の暗殺団を派遣したとされるが、激怒した
オバマ大統領がFBIに保護を命令したといわれてきた。
       

2017年08月30日

◆地政学的要衝にある東チモール

宮崎 正弘



<平成29年(2017)8月29日(火曜日)通巻第5409号>

 〜小さな島嶼国家なれども地政学的要衝にある東チモール
  インドネシア、豪と不仲の間隙を衝いて中国が靜かに浸透開始〜

もともとは王国だった。13世紀ごろから中国人、つまり客家の入植が 始
まり、現地人との混血もあったため、中国人の血筋をもつチモール人が
かなりいる。

現在、東チモールの人口は60万人強だが、中国人が推定7000人弱。 1970
年の人口調査では6120人だった。

ポルトガル、オランドに占領され、戦争中は日本軍が占領し、独立の気運
が燃え広がったときにインドネシアが軍を進めて、併合した。独立から
15年、政情はなんとか落ち着いたかに見える。

しかし大統領派vs首相派、独立反対派vsナショナリストの対立に加
え、軍隊のなかにも主流派と反主流派が対立しており、小さな国なのに少
数政党が乱立。単独過半の政党はない。

首都ディリに日本の大使館を開設し、経済援助のためJICAを中心に
在留邦人は116人(外務省史料)という。

産業といえば、ガスと石油しかない。しかも沖合の油田の共同プロジェ
クトは豪と揉め続けており、「チモール海条約」は破棄された。

またインドネシアとは根が深いがあり独立直後の西側の支援もほぼ息切れ。

当然、こういうチャンスを活かす国がある。中国はさっと東チモールに
接近し、まずは住宅建設のお手伝いと称して、6000万ドルを投下し た。
ディリにはビル建設が始まった。このため北京、上海、深セン、義 鳥、
広州、香港を経由する貨物便(チャーター便)がディリと中国との間 に
開設され、労働者も入った。昨年には中国軍の艦艇が東チモールに寄港
したため、インドネシア、豪が警戒している。
      

2017年08月29日

◆万達集団の王健林にも大きなリスク

宮崎 正弘



<平成29年(2017)8月28日(月曜日)通巻第5407号>

 〜中国最大富豪、万達集団の王健林にも大きなリスクが浮上
  太子党の裏金をささえたインサイダー取引集団の全貌が暴露されるか?〜

中国富豪トップの王健林が出国制限を受けたことが分かった。

すでに肖建華(明天集団を率いたインサイダー取引の黒幕、郭文貴の子分
とされる)、呉小暉(安邦保険集団のボスだった)らが拘束されており、
王健林率いる「万達集団」へは、銀行が新しい貸し付けができないばかり
か、海外送金をストップされ、幾つかの海外企業買収案件が座礁に乗り上
げた。

とくに肖建華は香港の豪華ホテルに滞在中、ボディガードに囲まれていな
がらも拉致され、北京で拘束取り調べをうけている。この関連からインサ
イダー取引の実態、とくに王健林との関連で追及材料がでてきたのではな
いかとされる。

8月25日、王健林は家族とともに天津空港からプライベート・ジェットで
ロンドンへ飛び立とうとしていた。突然、出国をとめられ数時間にわたっ
て拘束された。高飛びが疑われたらしく、ようやく許可がおりて機上の人
となったという(博訊新聞、8月27日)。

中国共産党にとって頭痛の種は、米国へ亡命した令完成(胡錦涛の番頭
だった令計画の実弟)が持ち出した秘密ファイル。そしてVOA(ヴォイ
ス・オブ・アメリカ)などで高官の不正送金や隠匿預金口座などを暴き立
てる郭文貴の存在であり、とりわけ富裕層の海外渡航に出国禁止命令を通
達している模様だ。

現在、中国の富裕層で資産が10億ドル(1100億円)以上と見積もられてい
る財閥は430人。王健林の個人資産は350億ドル(3兆8500億円)と言われ
る。彼が率いる「万達集団」(大連が本社)は全米の映画館チェーンの買
収、ハイウッド映画製作会社の買収などで世界に勇名を馳せた。

ところが万達集団(王健林の本丸)は、有利子負債が10兆円以上あり、債
務超過と算定されて、貸しだしならびに海外送金が禁止され、王健林は窮
余の一策として本丸のホテル、テーマパークのあらかたをライバル企業に
売却した。

孫正義の有利子負債は15兆円。しかし保有する株式の時価総額が16兆円あ
ると言われ、債務超過とは算定されておらず、第2のダイエー化が懸念さ
れているものの、現在のところ、投資家は、リスクを見出していないようだ。

王健林が当局からマークされたのは、ハーバード大学に招かれて講演した
際に、上場前の自社株を習近平の姉一族にも供与したという特殊な関係を
自慢したため、習近平の怒りを買ったらしい。
       
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◆樋泉克夫のコラム 
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【知道中国 1621】            
――「獨乙・・・將來・・・無限の勢力を大陸に敷けるものと謂ふべきなり」(山
川11)
   山川早水『巴蜀』(成文堂 明治42年)

              △

山川は成都の将来と日本の関係について考える。

在留邦人は「有期契約の上に在る?習のみなるを以て、現在のところ未だ
一個の根柢的定着を見ず、唯だ或期間内、其標跡を托せるに過ぎ」ない
し、「商業に至りては、未だ今日まで何の計劃も無かりき」。

こんな状態なら、将来、鉄道が引かれ開港場になるなど、成都での商機が
開かれたとしても、「既往の事實に徴すれば、恐くは本邦商人の發展を見
る可からざらん」。甚だ心許ない上に、イザとなった時に「獨米の妨害あ
れば、(中略)成都の地には、邦人の影を留めざるに至らんも亦た知る可
からざるなり」と、じつに悲観的だ。

ここで、20世紀、いや21世紀の現在まで続く日中関係の紆余曲折を考え
た時、やはり「獨米の妨害」との指摘が気になるところ。ドイツがしょう
介石政権に加担すればこそ、ある時期の日中戦争は形を変えた日独の戦い
だった。アメリカは日本の満州・大陸政策が自らの利権を侵害すると見做
したからこそ、日本に猛反発したのである。

大陸西南の奥深い重慶に逃げ込んだショウ介石が命脈を保てたのもアメリ
カによる大量の支援物資であり、軍事指導だった。親ショウ介石・反毛沢
東を基軸とする佐藤政権の対中外交方針をコケにしたのは、ニクソンと
キッシンジャーによる電撃訪中だった。

いま中国の自動車市場で、ドイツは電気自動車を駆って、トヨタのハイブ
リッド車に揺さぶりを掛ける。

時代は変わろうとも、日本の対中関係を考えるうえで注意の上にも注意す
べきは、やはり「獨米の妨害」ではないか。

明治39年12月末の重慶の日本領事館調査では80人(内、女性9人)だが、
「西人に比較する時は、僅に第3位」。四川省全体をみても、「各地方に
散在せる者は、悉く?習に屬す」わけであり、やはり「大柢一時の鴻爪を
留むるものに過ぎ」ない。かくて四川を中心とする大陸西南部における
「本邦人の根柢的發展は頗る寂寞の感無くんばあらず」。とはいえ僅かな
数ではあるが、彼らは「直接支那人を對手と」し、上海や天津で見られる
ように「多數の商人が共喰的」状態にあるのとは違い、「聊か人意を強う
するを得べし」とした。

日本での生活に較べれば不便ではあるが、それでも重慶や成都在住者は
一致協力し工夫して生活している。これに対し地方の場合は家族揃っての
赴任とはいえ、「同僚にてもなき限り、全く塊然たる獨居處なり、交通機
關不自由」であり、「群を離れて孤客となれるからは、いざといふ塲合に
臨めば、何彼にかけ、一方ならざる不便と困難とに遭遇せざる」をえない。

「諸種の科學思想を蓄へ、勤勉にして且つ觀察の深刻なるや、本業の旁、
必ず何等かの研究をなし居るものゝ如」き欧米からの宣教師とは対照的
に、不便極まりない地方で暮らす個々の日本人教習は、「一方ならざる不
便と困難」に耐えながらも誠心誠意で教育に当たる。たしかに生真面目で
誠実であることは大切な徳目であり、それこそが最大の武器であることは
確かだ。だが、それだけで終わらせてしまってはいけない。

たとえば日露戦争前、軍籍を離れハルピンに渡り洗濯屋や写真館を経営
し、遂にはロシア軍の御用写真師となって軍事情勢を中心に極東ロシア情
勢の把握に努めた石光真清(1868年〜1942年)のような成功例もある。だ
が、石光の“個人技”で終わってしまっていることも事実だろう。

個々人の貴重な体験・経験・知見を、個々人の冒険譚や思い出のままに終
わらせることはない。対中政策を策定・遂行し、あるいはビジネスを展開
するために、それらを蓄積し、体系化し情報インフラとして再構築すると
いう“発想”が、なぜ起こらないのか。それこそが日本と日本人の抱える根
本的な弱点であり、克服すべき永遠の課題だと思う。

2017年08月28日

◆高官人事が進まないのは何故か?

宮崎 正弘



<平成29年(2017)8月27日(日曜日)通巻第5406号>

 〜トランプ政権、高官人事が進まないのは何故か?
  行政に支障がでても、構わないという態度の根本的理由〜

発足から7ヶ月。トランプ政権が指名して上院の承認をえた高官人事はま
だ124人。とくに15省のうち、10省で副長官が決まらない。農務省、エネ
ルギー省、労働省ではトップ人事は10%も決まらず、逆に85%に達したの
は厚生省だ。

2017年8月25日現在、ワシントンポストの累計によれば歴代政権との比較
で、その遅れは歴然としているという。

ちなみにオバマ政権は就任7が月で高官433人中、310人が決まっていた。
同じように4414人中294人がブッシュジュニア政権。345人中、252人がビ
ルクリントン政権の人事だった。

例えば国務省を例にとると、長官、副長官、次官、副次官、次官補、その
下にアジア政策を統括する部長クラスが並ぶ。主要な高官は200人強である。

高官が決まらなければアメリカのようなトップダウンの国家では、何事も
決まらない。なぜ遅れているか、それが謎である。

メディアがあげている理由は従来的な要素が原因としているばかりである。

とくにトランプ政権には非協力的な人材が多いため、恒例の議員推薦、仕
事のやりやすい部下の推奨、ロビイスト、シンクタンクの自薦組他薦組が
列をなし、本来ならば履歴書の山ができている筈なのだ。

 ホワイトハウスからバノン、フリーバスが去って、事実上この権力の館
を采配しているのはクシュナーであり、これにジョン・ケリー、イバン
カ、マクマスターが加わる。
 
バノンが言ったように「ホワイトハウスは身内と軍人と、そしてウォール
街の代理人の3派連合だ」。

人事に当たって、かれらが重視しているのは「忠誠度」であり、とくに選
挙本場で、「ネバートランプ」の署名した共和党主流派系の150人には絶
対に指名は回らない。そればかりか、彼らが政権の協力をしようとする保
守主義的な人材に圧力を駆けていると言われている。

もっと穿った見方は、コミー前FBI長官の会員やマクファーランド安全
保障担当副補佐官のシンガポール大使転出に見られるように、トランプは
忠誠度のリトマス試験紙ばかりか、政権の高官層に蔓延る「内部の敵」を
見つけ出し、はやめにその芽を摘もうとしており、人事が遅れていること
はあまり気にかけていない様子だという。

2017年08月27日

◆バノンは政権を去ったが

宮崎 正弘



<平成29年(2017)8月26日(土曜日)通巻第5404号>

 〜バノンは政権を去ったが、トランプ大統領とは接着剤がある
  「ルネッサンス・テクノロジー」が俄に注目されているのは何故か〜

ヘッジファンドは数々あれども、収益の実積平均70%というのは、ジョー
ジ・ソロスもジム・ロジャーズも及ばない。まして民主党贔屓のウォーレ
ン・バフェットにしても、そこまで卓越した成績を上げたことがない。

全米のファンドの中で、「ルネッサンス・テクノロジー」は過去10年のパ
フォーマンス平均値が38%、中でも「メダリオン」ファンドは収益率がな
んと2478%。ここに資産を預けた投資家は財産がおよそ25倍になった。

このルネッサンス・テクノロジーは、マサチューセッツ工科大学数学教授
だったジェイムズ・シモンズが創設した。彼の引退後、このファンドの
CEOはロバート・マーサーが受け継いだ。

彼は娘のレベッカとともに共和党贔屓。予備選では茶会系のテッド・ク
ルーズにも献金していたが、途中からトランプを支援した。

ロバート・マーサーは、合計1350万ドルをトランプ選対に寄付した。同時
期にバノンの主宰するネットニュースにも、1000万ドルを寄付している。

バノンは長女イバンカ、クシュナーの中国経済との深い関係を憂慮し、ま
たマティス、マクマスター、ジョンケリーらの軍人連合とのアフガニスタ
ン増派問題での衝突から、ホワイトハウスを不協和音に導いたとして辞任
したが、その後もトランプ大統領との個人的繋がりは継続されており、い
つでもホワイトハウスに出入りできている。

この両者の接着剤が、前述ロバート・マーサーの娘レベッカ・マーサーと
いうわけである。

ホワイトハウスが分裂状態にあるのは、結局グローバリズムvsナショナ
リズムの対決構造に帰結するのではないか。

クシュナーは中国とのビジネスに意欲的であり、中国制裁には消極的であ
る。もっと中国から資本を導入すればよいと考えているうえ、九月にはイ
バンカと訪中予定という。

クシュナーの妹はジャージーシティの分譲をEB5ヴィザに有利と言って
中国の富裕層に売り込み、問題となった。

イバンカは自らのブランドが中国で爆発的に売れていることにすっかり気
をよくしている。

クシュナーは大統領選挙前にも安邦保険の呉小暉と会見し、ニュージャー
ジーに建設しているトランプタワーの分譲をめぐって妹の会社が中国人富
裕層への投資を呼びかけたと釈明した。

呉は米国逃亡直前に拘束された。かれの在米資産はいずれ叩き売りに出さ
れるだろう。

さてステーブ・バノンは『五年以内に米中戦争が起きる』とし、「北朝鮮
の核など問題ではない。あれが前座である。本当の敵は中国である」と発
言してきただけに、一貫して、このクシュナーとは対立してきた。

辞任直後には「ホワイトハウスは軍人と身内と、そしてウォール街に乗っ
取られてしまった」と発言している。


 ▲中国を制裁より罰金を課したらどうだ 

トランプ政権は中国企業ならびにロシア企業と個人16を制裁リストに挙げ
た。財務長官のムニューチンが発表したが、もっと疑惑の強い中国の銀行
はリストに入っていなかった。財務省は「中国が為替操作国」にも指定し
なかった。

元財務省高官でテロリスト資金送金調査チームを率いたアンソニー。・ル
ジエロは、「制裁ではなく、罰金を課すのだ。さすれば北朝鮮に核物質な
どを送ってきた中国の企業も銀行も実質的被害がでるから止めるだろう」
という(サウスチャイナモーニングポスト、8月25日)。

トランプ政権の内部ばかりではない。実業界、それもIT産業がこぞって
トランプに反対するのは、中国市場を巨大と思いこみ、まだまだ中国から
稼げると考えている先端的な多国籍企業ばかりだ。
 
現にマイクロソフトはウィンドーズの秘密コードを中国に公開した。フェ
イスブックは、中国向け検閲ソフトを完成させて中国のネット監視に協力
した。

これらの多国籍企業は、利益をタックスヘブンで運用し、米国に納税しな
い。つまりグローバリストとは、売国奴のことではないのか。かれらがリ
ベラルはメディアと組んで、トランプ批判を展開しているのである。 

       
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆書評 しょひょう BOOKREVIEW 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 在米中国資産は3兆ドルとアメリカは調査済みである
  米中経済戦争となると、この中国の資産が凍結され、人民元は大暴落
に到る

  ♪
藤井厳喜『希望の日米新同盟と絶望の中朝同盟』(徳間書店)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

藤井さんは俳句もおやりになるので、題名の付け方もうまい。

好対照の対句のようで、国際情勢、とりわけ日本を囲む軍事情勢の現行シ
チュアーションがいきなり把握できる。

本書はアメリカのMSM(マイン・ストリーム・メディア)がいかに嘘放送を
毎日垂れ流し、アメリカの政治をよこしまに誤導しようとしているかを、
フェイクの実例や、嘘ニュースの実績グラフなどを駆使して具体的に検証
する一方で、これからの世界がどう変わるか、過去のパターンなども例証
しながら、大胆な予測を展開する。
 
トランプ贔屓のフォックスニュースとて、トランプに肯定的なニュースは
52%しかないという実態も初めて知った。因みにトランプに対する偏向
報道態度調査(41p)に拠れば、CNNのネガティブ報道が93%、
NBC.同じ。CBSが91%、ニューヨークタイムズが87%、ワシント
ンポストが83%、保守派のウォールストリートジャーナルですら70%
がトランプに否定的なのである。

だからと言ってトランプは負けていない。

リベラルメディアがでっち上げた「ロシアゲート」は、架空の物語であ
り、報道した記者が「上からの命令だった」と告白している。コミー
FBI長官を更迭したのは当然なのである。

ともかくトランプは世界を変えようとしている。

米国主導の世界秩序を、がらりと変えて、アメリカンファースト路線に急
傾斜し、断固としてメキシコに壁をつくると獅子吼している。

したがって日米同盟も、表面的な外交のレトリックを別として、事実上
「新フェイズ」に突入している。だが、それを日本政府も外務省も認識で
きていない。左翼メディアは相変わらず、米国リベラル派のメディアのコ
ピペに過ぎない。だから日本の新聞、テレビ、そしていそいそとそうした
バカ番組に登場して悦にいるアホとが、まだ従来の日米同盟が機能すると
勘違いしている。

北朝鮮への攻撃は予測しにくい状況である。

つまり米国は北の核を容認する。だから「核の戦国時代」になる。日本
は、自立防衛の態勢を構築しなければならない。

しかし自民党にも政府には、この心構えが不足し、国際情勢の認識力を欠
落させており、そのうちトランプも苛立ってくるだろう。

藤井さんと評者(宮崎)は、今月早々に共著(宮崎正弘 v 藤井厳喜
『韓国は日米に見捨てられ、北朝鮮と中国はジリ貧』、海竜社)を出した
が、その中でも二人の予測が一致した。それは米国は北朝鮮を攻撃しな
い、空母三隻態勢でないと、作戦はうまく行かず、トランプが『軍人政
権』だから好戦的とする分析は間違いであり、軍人ほど本当は戦争を回避
したがるというポイントだった。

 「金正恩は挑発ではなく威嚇しているだけで、暴発することはない」
(204p)

おそらく米国は北朝鮮と話し合いに入り、核の凍結という合意が得られれ
ば、次のフェイズ、すなわち中国との長期的本格的戦略的な対決に外交の
基本を移行させるだろう。危ういのは日本で、日本に照準を合わせた金正
恩の核ミサイルはそのままにされるのだ。

藤井さんは米中経済戦争を次のように予測する

「まずアメリカ国内のチャイナの企業や国民の資産はすべて凍結すること
ができる。チャイナの銀行が発行したクレジットカードも国外で使えなく
なる。こういう事態になれば国有銀行が発行した人民元建ての債権は価格
が暴落するだろう。2014年12月の時点で、アメリカは既に自国内にある
チャイニーズの資産を調査している。最大に見積もった場合、その総額は
およそ3兆ドルに及ぶ」(118p)

となれば人民元のドルペック体制も崩壊する。

かねてから評物も予測しているように、人民元は暴落するほかにない。

2017年08月25日

◆中国の債務爆発は時限爆弾

宮崎 正弘



<平成29年(2017)8月20日(日曜日)通巻第5400号>

 〜中国の債務爆発はリーマンショックを超える時限爆弾
   英国の「オウトノマス・リサーチ」が早期警戒予報〜

中国のシャドー・クレジット(隠れた債務)はGDPの51%となった。巧
妙に不良債権を隠してきた悪知恵も、底が透けて見えてきた。

銀行の不良債権をいかにして隠ぺいしたか。具体的な方法が、このアウト
ノマスリサーチという英国の金融シンクタンクが暴露された(2017年8月
18日)。

第1がWMP(Wealth management Produst)
と呼ばれる『理財商品』の一種である。これが典型の不良債権隠し、およ
そ3兆7000億ドル。

償還期銀が短いわりに利息が良いので預金者や投資家に販売した。つまり
不良債権を表面化させないために、投資信託のたぐいの金融商品に化かし
たわけだ。

第2がAMP(Asset Management Plan)で、総計
1兆9000億ドル。債権を上記WMPとセットにして銀行に売却し、投資
(債権)にみせかけるのだ。

合計額は5兆6000億ドル内外となり、中国のGDPの51%、恐ろしい数字
となって表面化した。
 
この帳簿上の債権の実態は不良債権であり、ともに中国経済を根底的に揺
さぶる時限爆弾である。

おそらく中国共産党は党大会を控えているので、それまでは必死に不良債
権隠しを行うだろう。

しかしそれ以後は爆弾の破裂を待つのかもしれない。
     
IMFは中国経済の薔薇色の未来を描いて久しいが、それでも多少は客観
的であり、中国の負債をGDPの235%(ウォール街とシティはいずれお
300%を超えていると推計しているから、IMFの数字は低すぎるのだ
が)、負債がバランスシート上、かなり不均衡であると警告している。

     
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆樋泉克夫のコラム 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 
【知道中国 1617】           
  ――「獨乙・・・將來・・・無限の勢力を大陸に敷けるものと謂ふべきなり」
(山川7)
  山川早水『巴蜀』(成文堂 明治42年)

               △
本書によれば、山川が成都を離れたのは明治39(1904)年5月とのこと。
当時の成都在住外国人について「日本、英國、獨乙、佛蘭西、米國の五國
にして、日本を除き、男女合せて百人餘の有りたらんか」と推定してい
る。この時の成都在留邦人の数は不明だが、明治37(1902)年段階では14
人で、うち1人は幼児とのこと。

日本人を除く「男女合せて100人餘」の職種は領事、教員、商人、宣教師
などだが、「或る年限を以て在留するものゝ外は殆と永久移住の覺悟らし
く、妻子を携へ、廣大なる家屋を有し、彼輩が鋭意着實に企てたる或種計
畫は、着着歩を進め居るが如く見江たり」。これと全く対照的なのが日本
人で、「指を屈して歸期を數」えている。

そういえば時代を下った昭和初期、愛人と駆け落ち状態で東南アジアを
彷徨した詩人・金子光晴が記した『マレー蘭印紀行』(中公文庫)を見る
と、マレー山中の錫鉱山事務所を訪ねた彼の「現在の最大の望みは」との
質問に、同事務所の日本人職員が異口同音に「一日も早い本社復帰、貯
金、テニスの上達」の3つを挙げたとある。かりに現在、海外に派遣され
ている日本人ビジネスマンに金子と同じ質問をしたとして、おそらく同じ
ような反応がみられるに違いない。もちろんテニスがゴルフに代わってい
るだろうが。

山川が四川を踏査した20世紀初頭から現在までの1世紀余の時の流れを
考えた時、日中両国が踏み越えてきた歴史のみならず、現在の両国を取り
巻くが国際政治・経済上の環境の変化などからして、山川の主張をそのま
ま肯ずわけにはいかない。だが明治人が綴った当時の成都にみられたドイ
ツ・ビジネスの姿から、経済を軸とした現在のドイツと中国の間に見られ
る“蜜月関係”を想定することは、さほど難しいことではなさそうだ。
 
そういえば日中戦争時、日本人から考えるなら首を傾げざるを得ないよう
な形でドイツは?介石政権支援の態勢を崩そうとはしなかった。あれはナ
チスであるからか。それともドイツであるからか。

山川の指摘からするなら、やはり後者ということになろう。ならば現在の
両国の関係の根底に、20世紀初頭以来のドイツの中国市場に対する“営々
たる努力”が隠れていることを知るべきだ。「ローマは一日にして成ら
ず」の俚諺に倣うなら、やはり中国におけるドイツは一日にして成らず、
といっておきたい。

さらに山川は西洋人宣教師に注目する。

西洋人のなかで最も現地に馴染んでいるのが、「成都に住する實に二十年
の久しきに亘り、今や巍然たる病院と廣大なる?會とを有する」キルボー
ンと、「同じく醫師兼宣?師にして、成都に居ること12年に及べ」るカン
ライトの2人。前者はカナダ人で、後者はアメリカ人。これに次ぐのがフ
ランス人で、彼らも「城内幾處に教會を有し、且つ其宣教師も概ね辮髪寛
服を着け、務めて内地人に同化せんと」している。

カンライトはアメリカから送られた大量の建設資材を使って各所に時計
台を敷設した病院を新築するなど、成都の近代化に務め、住民の支持を得
ている。じつは現地人は「下流」であるほどに「洋醫を喜ばざれど、其効
驗の顯著にして且つ療費の廉なる爲め、不知不識、之に歸依」することと
なる。

こうして彼ら宣教師が本国などの支援で建てた「壮大なる建築物は、やが
て布?上の資本となり、宣教師本來の目的は、漸を以て成就するものと
す」。「それにつけても、彼等宣?師等が種種の不便を忍び、不測の危難
を負擔し、深く内地に進入し、全然移住的態度を取れるは、嘆稱に値せず
ばあらず」なのである。

加えて重慶在住列強領事は、不法を承知の「高壓手段」で開港場ではな
い成都に常駐し、諸工作に奔る。

ならば、遵法精神に縛られる日本が後塵を拝すことは当たり前だ。
        
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 宮崎正弘の最新刊予告
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2017年08月24日

◆リーマンショックを超える時限爆弾

宮崎 正弘

<平成29年(2017)8月20日(日曜日)通巻第5400号>
 
〜中国の債務爆発はリーマンショックを超える時限爆弾
   英国の「オウトノマス・リサーチ」が早期警戒予報〜

中国のシャドー・クレジット(隠れた債務)はGDPの51%となった。巧
妙に不良債権を隠してきた悪知恵も、底が透けて見えてきた。

銀行の不良債権をいかにして隠蔽したか。具体的な方法が、このアウトノ
マスリサーチという英国の金融シンクタンクが暴露された(2017年8月
18日)。

第一がWMP(Wealth management Produst)
と呼ばれる『理財商品』の一種である。これが典型の不良債権隠し、およ
そ3兆7000億ドル。

償還期銀の短いわりに利息が良いので預金者や投資家に販売した。つまり
不良債権を表面化させないために、投資信託のたぐいの金融商品に化かし
たわけだ。

第二がAMP(Asset Management Plan)で、総計
1兆9000億ドル。債権を上記WMPとセットにして銀行に売却し、投資
(債権)にみせかけるのだ。
 
合計額は5兆6000億ドル内外となり、中国のGDPの51%、恐ろしい数字
となって表面化した。
 
この帳簿上の債権の実態は不良債権であり、ともに中国経済を根底的に揺
さぶる時限爆弾である。

おそらく中国共産党は党大会を控えているので、それまでは必死に不良債
権隠しを行うだろう。

しかしそれ以後は爆弾の破裂を待つのかもしれない。
     
IMFは中国経済の薔薇色の未来を描いて久しいが、それでも多少は客観
的であり、中国の負債をGDPの235%(ウォール街とシティはいずれお
300%を超えていると推計しているから、IMFの数字は低すぎるのだ
が)、負債がバランスシート上、かなり不均衡であると警告している。

    
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 ◆樋泉克夫のコラム  
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【知道中国 1617】           
  ――「獨乙・・・將來・・・無限の勢力を大陸に敷けるものと謂ふべきなり」
(山川7)
  山川早水『巴蜀』(成文堂 明治42年)

               △
本書によれば、山川が成都を離れたのは明治39(1904)年5月とのこと。
当時の成都在住外国人について「日本、英國、獨乙、佛蘭西、米國の五國
にして、日本を除き、男女合せて100人餘の有りたらんか」と推定してい
る。この時の成都在留邦人の数は不明だが、明治37(1902)年段階では14
人で、うち1人は幼児とのこと。

日本人を除く「男女合せて百人餘」の職種は領事、教員、商人、宣教師
などだが、「或る年限を以て在留するものゝ外は殆と永久移住の覺悟らし
く、妻子を携へ、廣大なる家屋を有し、彼輩が鋭意着實に企てたる或種計
畫は、着着歩を進め居るが如く見江たり」。これと全く対照的なのが日本
人で、「指を屈して歸期を數」えている。

そういえば時代を下った昭和初期、愛人と駆け落ち状態で東南アジアを
彷徨した詩人・金子光晴が記した『マレー蘭印紀行』(中公文庫)を見る
と、マレー山中の錫鉱山事務所を訪ねた彼の「現在の最大の望みは」との
質問に、同事務所の日本人職員が異口同音に「一日も早い本社復帰、貯
金、テニスの上達」の3つを挙げたとある。かりに現在、海外に派遣され
ている日本人ビジネスマンに金子と同じ質問をしたとして、おそらく同じ
ような反応がみられるに違いない。もちろんテニスがゴルフに代わってい
るだろうが。

山川が四川を踏査した20世紀初頭から現在までの1世紀余の時の流れを
考えた時、日中両国が踏み越えてきた歴史のみならず、現在の両国を取り
巻くが国際政治・経済上の環境の変化などからして、山川の主張をそのま
ま肯ずわけにはいかない。だが明治人が綴った当時の成都にみられたドイ
ツ・ビジネスの姿から、経済を軸とした現在のドイツと中国の間に見られ
る“蜜月関係”を想定することは、さほど難しいことではなさそうだ。
 
そういえば日中戦争時、日本人から考えるなら首を傾げざるを得ないよな
形でドイツは?介石政権支援の態勢を崩そうとはしなかった。あれはナチ
スであるからか。それともドイツであるからか。山川の指摘からするな
ら、やはり後者ということになろう。

ならば現在の両国の関係の根底に、20世紀初頭以来のドイツの中国市場に
対する“営々たる努力”が隠れていることを知るべきだ。「ローマは一日に
して成らず」の俚諺に倣うなら、やはり中国におけるドイツは一日にして
成らず、といっておきたい。

さらに山川は西洋人宣教師に注目する。

西洋人のなかで最も現地に馴染んでいるのが、「成都に住する實に20年の
久しきに亘り、今や巍然たる病院と廣大なる教會とを有する」キルボーン
と、「同じく醫師兼宣教師にして、成都に居ること12年に及べ」るカンラ
イトの2人。前者はカナダ人で、後者はアメリカ人。これに次ぐのがフラ
ンス人で、彼らも「城内幾處に?會を有し、且つ其宣?師も概ね辮髪寛服
を着け、務めて内地人に同化せんと」している。

カンライトはアメリカから送られた大量の建設資材を使って各所に時計
台を敷設した病院を新築するなど、成都の近代化に務め、住民の支持を得
ている。じつは現地人は「下流」であるほどに「洋醫を喜ばざれど、其効
驗の顯著にして且つ療費の廉なる爲め、不知不識、之に歸依」することと
なる。

 こうして彼ら宣教師が本国などの支援で建てた「壮大なる建築物は、
やがて布?上の資本となり、宣?師本來の目的は、漸を以て成就するもの
とす」。「それにつけても、彼等宣?師等が種種の不便を忍び、不測の危
難を負擔し、深く内地に進入し、全然移住的態度を取れるは、嘆稱に値せ
ずばあらず」なのである。

 加えて重慶在住列強領事は、不法を承知の「高壓手段」で開港場では
ない成都に常駐し、諸工作に奔る。
ならば、遵法精神に縛られる日本が後塵を拝すことは当たり前だ。


2017年08月23日

◆「新幹線技術を侵害された」と中国は逆提訴

宮崎 正弘



<平成29年(2017)8月18日(金曜日)弐
        通巻第5398号>

 〜「新幹線技術を侵害された」と中国は逆提訴
  アメリカは北と話し合いをしなさい、と高みからの説諭〜

中国人に論理を求めても仕方がないのではないか。論理ではなく、詭弁を
弄するのが大の得意芸であるからには、他人が提訴すれば、とんでもない
ことを逆提訴する癖がある。

トランプ政権は「知的財産権の侵害」について中国企業の調査を開始する
とした。

2日後、中国は「新幹線技術、中国の知的財産権が侵害されている」と言
い出した。中国の新幹線は日本、仏蘭西から技術導入したことまでは認め
るが、「以後は中国が独自に開発した」。だから特許侵害だという。侵害
した国名を名指ししてはいないが。。。

北朝鮮の核ミサイル問題についても、国連決議に賛成した以上は、遵守す
るのかといえば、石炭の輸入を制限しているだけ、しかもアメリカの怒り
を袖にして「もっと冷静に北朝鮮と話し合いをしなさい」と高みからの説
教風なのである。

日本の外相との初会合でも河野外務大臣に向かって王毅は「あなたには失
望した」などと上から目線の発言。偉そうに振る舞うのである。

ワシントンビーコン(8月17日)によれば、中国はハーバード大学に3億
6000万ドルの寄付をすると言っている。

嘗て中国の軍事技術企業の「JT・キャピタル」がハーバード大学に1000
万ドルを寄付した。

香港の不動産王のロニー・チャンは、3億5000万ドルを寄付した。いずれ
も「目的が定かではなく、調査の対象である」と専門家はペンス副大統領
に報告している。
 
全米一を謳われる同大学への寄付を通じて、オピニオンリーダーたちへ中
国の影響力を浸透させることが狙い、外交戦略の一環であることは明らか
だろう。
       
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 ◆樋泉克夫のコラム 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 
【知道中国 1616】      
――「獨乙・・・將來・・・無限の勢力を大陸に敷けるものと謂ふべきなり」(山
川6)
  山川早水『巴蜀』(成文堂 明治42年)
 
    △

ドイツ語の綴りが通じないのなら、取りあえずは英語式で済ませておこ
う、というのだろう。こうして消費者の動向に臨機応変に対応するドイ
ツ・ビジネス戦略を、山川は「其敏、稱すべきに非ずや」と称賛したうえ
で、「需要には廣狹多少の別あれども、既往に於て(現地消費者より)収
めたる愛着心と信用とは、将來に及ぼして、無限の勢力を大陸に敷けるも
のと謂ふべきなり」と見据えた。

なにはともあれドイツの成功は、「獨乙が眞面目なる研究の結果に外な
らず、歩を進めて考ふれば、善く詳に身を需要者の側に置」いているから
だ。ドイツがこういった行動・判断ができる背景には何があるのか。

どうやらドイツ人は「主として在留の官商間に於て油斷なく注意を払ひ居
るものと覺江らるなり」と推測してみた。これを現代風に言い換えるな
ら、成都在留のドイツ官民が共同し現地における消費動向を抜かりなく観
察し、ビジネスに生かしているということだろう。

ここで山川の視線は同胞商人の行動に転じた。

「本邦人の多くが物物しく視察とか研究とかに出懸け、上海、漢口、北
京、天津と紳士旅行の素通りしたとて、何の功か之有らん」。

モノモノしいばかりで通り一遍の「紳士旅行」なんぞは、やはり昔も無意
味だった。そのうえに「上海天津等に居留する本邦商人は、數字の上にて
は數百數千を以て計へんも、其中の少數を除けば、大抵共喰商人に屬」す
るばかり。一等地に大きな看板を掲げ表向きは派手な振る舞いをしている
が、ビジネスの内実は心許なく、同胞による陰湿な足の引っ張り合いが常
態化している。それは21世紀初頭の現在も大差はなかろう。

ここで山川は四川における日本ビジネス不振の原因に思い至る。

「余(山川)は商業に於て門外漢なり、然れども、旅行及び在留の間、こ
れは必ず當らん、これは必ず向かんと思ひたるもの十數目にして止ら
ず」。だから専門家が「仔細に觀察したらんには、無盡蔵の利源を發見せ
ん」。加えて地理的にも歴史的にも欧米より有利な立場にあるにもかかわ
らず、日本製品の販路が広がる気配がみられない。

やはり官民共々に日本側は努力が足りないのだ。かくて「余(山川)は資
本の缺乏を以て專ら之が辨解の辭となすを許さず、余を以て觀れば、我國
官民を通じて、之を思ふに精ならず、之を行ふに實ならざるに由るとなす
ものなり」となる。

「本邦品は從前曾て諸種の雜貨、成都に輸入せられしが、價格割合に低廉
なりし爲め一時は隨分捌けたるども、品質の脆弱は、直に彼等の排斥する
ところとなれり」。

それでも「名古屋製置時計、大阪洋傘」などは一定の販売量を保持してい
るが、単なる見てくれから売れているだけ。本格的に「品質堅牢」「耐久
力」を問われたら、将来的に「能く今日の聲價を維ぐ」ことはない。最悪
の場合、ドイツ製品に圧倒されてしまうということだろうか。

加えて日本商人は「支那向として、特に粗質品を擇べる」傾向がみられ
る。たとえば「四川の某縣なる一學堂が、東京より購入したる博物標本」
だ。日本から到着した梱包を解いてみたら、「支那行不良品と書せる附箋
を發見せり」というのだ。

この学校に務める日本人教師が発見したから「無事に濟みしが」、かりに
現地の教師や生徒の目に触れでもしたら必ずや「由由敷大事」となったはず。

じつは「此件は曾て在留人の某氏が日本新聞に掲けたるところなれども、
余は再びこゝに附記して、後來を戒めんと欲するなり」と念を押す。中華
ナショナリズムに火を点け、日貨排斥運動を招きかねない。無神経にもほ
どがある。]

かくして山川は「之を要するに、成都に於ける日本商品は當初に一頓挫を
招きてより、今日に至るまで回復する能はざる状態に在りといふべし」と
結ぶ。無反省なのか。《QED》