2017年04月08日

◆韓国大統領選、流れが変わっている

宮崎 正弘
 


<平成29年(2017)4月7日(金曜日)弐 通算第5258号>  

 〜韓国大統領選、流れが変わっている
  猛追する安哲秀が、優位だった文在寅との支持率を逆転〜

やはり「何がおこっても不思議でない」韓国のことだから、新聞報道通り
に事態は進まないと考えて、これまで韓国大統領選挙の予測は控えてきた。

風向きは変わりつつある。絶対優位と見られた文在寅の勢いに衰えが見え
てきたのだ。

2017年3月31日、朴権恵前大統領が逮捕され、拘置所送りとなった。狭い
拘置所は僅か3・2坪の独房で、ここに収監され、1日の食事は145円とか。

これは文在寅・野党候補におおいに有利な「追い風」となった。

同日のギャロップ調査では文在寅が所属する「共に民主党」の政党支持率
が45%で、第2野党や、保守党を圧倒していた。大統領候補の支持率でも
文在寅が31%と、ほかの候補を大きく引き離していたことが分かった。

文在寅は学生時代から左翼活動家としてならし、逮捕歴がある。卒業後、
人権派弁護士として活躍し、釜山に盧武鉉元大統領と一緒に共同法律事務
所を開設した関係もあり、盧武鉉時代は、大統領秘書長を歴任した。64
歳、カトリック信者。12年の大統領選挙では僅差で朴権恵に敗れた。

 盧武鉉の自殺後、政界に復帰し韓国を「公正な国家」に変質させるには
財政改革、メディア改革、検察改革などを掲げ、とくに財閥の改革が韓国
経済には必要であり、財閥は非民主的などと底辺の国民の不満を吸収する
作戦にでた。

財閥の横暴を恨む庶民には受けるスローガンである。

北朝鮮には甘く、太陽政策の2番煎じのような言辞を吐き、「金正恩と、
いつでも対話をなし、核問題を解決する」とした。

一方で、日本への姿勢は病的なほど厳しく、戦後の反日教育に洗脳された
ままである。すでに両国間では解決している従軍慰安婦、補償などをまた
持ち出し、日本の謝罪と賠償金を求めるという。THAAD配備は見直
し、日韓合意は再交渉するなどと時代錯誤的な暴言を吐くあたり、発言は
国際法を無視しているから、本当にこの人、弁護士かという声もある。

ともかく朴大統領が逮捕されたことで野党への政権交代待望論がくっきり
と世論にでた。保守系は分裂し、支持率は僅か4−5%台に低迷、はっき
りと次の政権は野党へ移行する傾向がでた。

頼りなくなった保守党は「セヌリ党」から分裂した「自由韓国党」と「正
しい政党」があるが、有力候補が不在、選挙対策としては第二野党の安哲
秀候補への合流が想定された。


 ▼保守も野党も分裂している混沌状況のなかで

4月3日、勢いに乗る野党「共に民主党」は大統領選の公認候補に文在寅
を正式に選出した。

選出後、文候補は「不公正や腐敗など、国民を失望させた旧弊を精算す
る」として、明確に「アンチ朴」を掲げ、調査会社リアルメーターの世論
調査は支持率43%とでた。2位につける第2野党「国民の党」の安哲秀は
23%と2位に付けていた。

対決構図としては、安哲秀が保守系の票を合従連衡でまとめあげるか、ど
うかにかかっていた。

とはいうものの北朝鮮の度重なるミサイル、核実験に関して、韓国民の鈍
感さは、いったいどこから来るのだろうか?

「同族だから攻めてくるはずがない。核兵器を同胞に使うはずがない」と
いうのは根拠のない未来論を説く新興宗教の信仰に近い。

通常なら北の軍事的脅威は与党有利となって、これを「北風現象」と譬喩
したのだが、殆どの韓国国民が反応せず、保守党はどん底の人気に低迷し
ている。

4月4日、風向きがすこし変わった。

第2野党「国民の党」が正式候補で安哲秀を決めると、「もし2人が決戦
となれば」という世論調査が行われ、トップを走る文在寅が41・7%に対
して、安哲秀は39・3%、その差が僅差の2・7%でしかないことが判明
したのだ(東亜日報の調査)

米国の大統領選挙でも顕在化したように2・7%の差は誤差の範囲内であ
り、逆転の可能性も否定できない状況がうまれた。

安哲秀は、とくにTHAAD配備に関して「合意を護るべきである」と現
実路線が鮮明である。国連事務総長だった播基文支援グループも、この安
支持に回った。

つまり4月4日の時点で「文在寅・一強論」が潰れたのである。


 ▼逆転の可能性が高まった

4月6日、流れが勢いよく変わった。

文在寅と安哲秀の支持率が「逆転」したのである。まるで昨年のトランプ
vsヒラリーの熾烈な選挙戦のようだ。
 
同日の世論調査では「2人の対決なら」という設問で、中央日報は安哲秀
が50・7%、文在寅が42・7%、YTNテレビのそれでも安哲秀が47・
0%、文在寅が40・8%.両方ともに逆転である。

しかし安哲秀も、国防問題、外交ではリアリストだが、対日認識では反日
姿勢が濃厚である。

安哲秀は時事通信(4月4日)のインタビューで「慰安婦問題をめぐる日
韓政府間合意について、当事者たちが生存しており、当事者たちとの合意
を基に直さなければならない」とし、「慰安婦を象徴する少女像が釜山の
日本総領事館前に設置された問題」でも、「日本政府が撤去を要求し、移
転を条件に大使の帰任を拒否してきたことは理解できない」などと妄言を
吐いている。

これらは韓国のメディアが流していることの受け売りで、独自性がない。

安哲英は「日韓関係は歴史問題で国民感情が悪化している。歴史問題を解
決しない状態で、安全保障問題などを分離し、アプローチするのは極めて
難しいのが現実だ」とし、余白を残した発言に終始している。

同時期、米韓合同演習は続き、また北朝鮮のミサイル発射が繰り返され、
北朝鮮問題の解決は韓国を蚊帳の外において米中首脳会談で論議される。
 
ところが、韓国軍の内部ネットワークが北朝鮮にハッキングされ、米韓の
軍事作戦の機密「5027」流出したらしいと韓国KBSテレビが伝えた。
しかもハッキングは2016年9月であり、発覚したのが同年12月、3ヶ月も
機密漏洩が分からなかったのだ。

この「5020」作戦は米韓軍が北朝鮮の進撃をとどめ、北上し、日本海と黄
海には海兵隊を上陸させ、平壌を制圧するという軍事作戦の機密が多く含
まれているとされ、国防部の必死の否定にも拘わらず、不安が拡がった。

また済州島沖では、日米間の初めての対北朝鮮潜水艦訓練が実施された。
 日本の海上自衛隊からは護衛官「さわぎり」とP3C対戦哨戒機、ヘリ
が参加した。米軍はイージス駆逐艦、哨戒機が参加し、とりわけ北朝鮮の
潜水艦発射ミサイルSLBMに対応する訓練だった。
 
4月6日、韓国軍も射程800キロのミサイル実験を胡なった。これで韓国
南部から平壌を射程にいれることが出来るため、年内配備が急がれている。      

2017年04月05日

◆中国の対外「新幹線輸出」

宮崎 正弘 



<平成29年(2017)4月4日(火曜日)通算第5253号>   

 〜中国の対外「新幹線輸出」はなぜ挫折しているのか?
  唯一の成功例はアンカラ ー イスタンブールだが、初日から遅延だった〜

 過剰設備投資、過剰在庫。鉄鋼、板ガラス、アルミニウム。。。。
 次は新幹線プロジェクトの余剰エネルギーを「一帯一路」(シルクロー
ド)に引っかけて、世界に輸出することだった。

 すでに中国国内の所謂「新幹線」(中国語は「高速鉄道」)は、22、
000キロを突破し、2020年に総延長が30、000キロに達すると豪語している。

日本の新幹線をイメージしがちだが、250キロのスピードがでるのは、北
京―上海と北京―天津、広州―武漢など主要幹線だけで、あとは200キロ前後
である。試験的には370キロを出したこともあったが、北京―上海の幹線で
途中の温洲で事故があった。その後、自粛規制をなしており、沿海部の橋
梁部では150キロ前後に速度を落としている。

中国国内は長距離バスもあるが、新幹線に乗る人が増え、ことしの春節
(旧正月)を挟む40日間に16億人を運んだと運輸省統計は伝えている。高
速鉄道を含めて、中国の鉄道営キロは220、000キロである。

しかし海外プロジェクトは連続して挫折しており、唯一の成功はトルコの
首都アンカラとイスタンブールを結ぶ高速鉄道だけが開通した。その開通
式にはエルドアン大統領も試乗したが、30分間、列車は動かなかった。 

頓挫第1号はメキシコだった。
 
メキシコ大統領は訪中する前日に、中国の新幹線導入を中止するとした。

挫折第2号はラスベガス ー ロスアンジェルスだった。車両ならびに部
品はアメリカ製品を使うという規制をクリアできないと理由付けがなされた。
 
とくに米国の場合、工事費がキロあたり5600万ドルと見積もられ、欧州の
3900万ドルよりも高い(中国国内でも工事費はキロあたり1700−2500万ド
ルの間と世界銀行は分析している)。

頓挫第3号はインドネシアのジャカルト ー バンドン150キロのプロ
ジェクトだった。

小誌既報のとおり、日本から横取りしたプロジェクトだが「土地の買収が
進まない」ことを理由に挙げて、工事を中断した。

真実は中国開発銀行が、低金利融資を渋ったからだ。対外資本流失を中国
は、昨秋から資本規制をかけ、5000万ドル以上の海外投資は当分見合わせ
る決定をしたことに絡んでいる。インドネシア新幹線の総工費は51億ドル。

というわけで「アルゼンチンからアンデス山脈をトンネルで繋ぎ、チリと
の間に新幹線を」などと李克強首相が昨年の南米訪問時に打ち上げたが、
大風呂敷だった。

チベットのラサからネパールのカトマンズへ、エベレスト山脈にトンネル
を掘って繋げるなどという風呂敷は幻想か、蜃気楼で終わる。

なせ、こうした海外への新幹線プロジェクトが連続して蹉跌しているか
は、中国の技術的未成熟とファイナンス体制の未整備にある。

相手国も政権担当者が汚職容疑に巻き込まれるのを厭がって中国からのオ
ファーに尻込みし始めたことも大きい。

2017年04月04日

◆もし中国が同意しなければ

宮崎 正弘
 


<平成29年(2017)4月3日(月曜日)通算第5252号>  

(速報)
 「もし中国が同意しなければ、米国は単独行動を取る」
   トランプ大統領、英紙フィナンシャルタイムズに語る

世界の多くのメディアが6日からの米中首脳会談に焦点を充てているが、
多くは貿易戦争、通貨操作をトランプが攻撃し、引き替えに中国の大型投
資を引き出すと、勝手な予想をしている。

2人は同じ性格だからうまく合意できるという希望的な観測記事も華字紙
では活発に報じられている。

ところが英紙フィナンシャルタイムズの単独インタビューに応じたトラン
プ大統領は、「米中首脳会談で、もし中国の同意が得られなければ、米国
は単独で(北朝鮮問題で)行動を取る」と答えた(FT紙、電子版。4月
3日)。

2017年04月03日

◆まずは北朝鮮のエージェントに制裁

宮崎 正弘 



<平成29年(2017)4月2日(日曜日)通算第5251号   <前日発行>>

 〜トランプ政権、まずは北朝鮮のエージェントに制裁
  ロシア、中国、キューバ。加えてベトナムの商社など名指し〜

3月31日、米国財務省ムニューチン長官が記者会見し、北朝鮮に核ミサイ
ル部品などを代理調達し、そのネットワークに協力した11の企業、団体、
人物を特定し、制裁を加えるとした。

この会見にはトランプ大統領、ペンス副大統領も同席した。

これらにはロシア、中国、キューバのほか、ベトナムの代理店も対象と
なっている。またロシアとベトナムの闇商社として人物も特定されている
が、多くが以前から制裁対象とされて、マークされてきた。

「これらの代理人等は北朝鮮の核兵器技術や部品、ミサイル部品の調達並
びに資金ネットワークに協力したところであり、米国の同盟国もすみやか
に同様の措置を講ずることを期待したい」とムニューチン財務長官は続けた。

米国が北朝鮮を「ならず者国家」のリストからはずして以来、むしろこう
した闇取引が活発化しており、トランプ政権の次の手段は、米国に於ける
中国の銀行への処分で、その次に控えるのが「ならず者国家」再指定である。

米国内には北朝鮮への先制攻撃を期待する声もあるが、現段階では中国の
出方をまっている情勢だ。
 4月6日、7日に開催予定の米中首脳会談で、トランプと習近平の話し
合いがどこまで進むか、とりわけ北朝鮮をめぐる丁々発止が中心となると
予測されており、在米華字紙などは、はやくも「決裂」を予測している。
          

2017年04月02日

◆中国市場の代替にベトナムとの関係強化

宮崎 正弘 



<平成29年(2017)4月1日(土曜日)弐 通算第5250号> 

 〜韓国、失われる中国市場の代替にベトナムとの関係強化
  290億ドルの投資を2020年に700億ドルへ〜

韓国はベトナムとの修好25b周年をひかえ、THAAD配備で失いつつ
ある中国市場の代替としてベトナムへの大々的な投資、経済関係の強化を
めざす。

すでに両国の間にはFTAが締結されており、2015年第3四半期だけでも
韓国とベトナムの貿易は56億ドル、ベトナムのあちこちにはロッテデ
パート、ロッテマートが建ち、現代ホテルも盛業中だ。

2009年に韓国とベトナムは「戦略的パートナー」を宣言しており、共同軍
事演習、軍事的な協力も視野に入れているという(亜細亜タイムズ、3月
31日)。すでにベトナムに駐在している韓国人は10万人を超えている。ハ
ノイやホーチミンにはコリアンタウンがある。

韓国のベトナムへの急傾斜は中国の苛めにより、有望と思いこんだ中国市
場を縮小せざるを得なくなったことで、便宜的にも輸出を伸ばすにはベト
ナムとの関係強化が都合が良いという計算がある。

ベトナムは南シナ海、パラセル諸島で中国とは政治軍事的に対立が続いて
おり、パートナーを増やしたい。

しかしベトナム国民は共産党独裁の政権が一方的に韓国の投資を歓迎して
も、あの戦争中の猛虎部隊といわれた韓国軍のベトナムでの蛮行は決して
忘れてはいない。韓国軍の民間人虐殺を追悼する記念碑も、ベトナム各地
に建てられている。韓国は謝罪も補償もしておらず、対日賠償要求とは
うってかわって知らぬ半兵衛を決め込んだ。

韓国軍人等がベトナム女性との間にできた混血児(ライタイハン)は最大
五万人とも言われているが、社会的に差別されたまま。韓国からの保障は
ないまま。

この国民感情を抑制してきたのがベトナム共産党である。
      

2017年04月01日

◆チベットの現状と今後の運動展開(1)

宮崎 正弘 



<平成29年(2017)3月23日(木曜日)弐 通算第5233号>   

   ♪
「チベットの現状と今後の運動展開」(その1)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

アジア自由民主連帯協議会 会長 ペマ・ギャルポ氏

   ▽
五十数年間、私たちは毎年この時期に、来年、ラサで乾杯しようと言い続
けてきました。きょうの題は「現状と今後の活動展開」ということです
が、まず何よりも言わなければならないのは、これから話すことはすべて
私個人の責任であるということです。

もちろん、かつては政府の一員としてやってきましたが、特に政府、また
は活動している人たちを代表して話しているのではないことを前置きした
いと思います。

日本で50年間生活をして、本来であればそろそろきょうの演説あたりで独
立に向けてとか、あるいはこういう国をつくりたいというようなビジョン
があれば一番いいのではないかと思いますが、残念ながら60年近くなって
も、チベット問題は悪化することがあってもあまりよくなってはいないと
思います。

もし、何か評価できるものがあるとすれば、チベット問題が世界的に一応
分かるようになった。これは評価できることだと思います。

ただ残念ながら、なぜそもそもチベット問題なのかということを考える
と、やや喜べない部分もあります。

なぜかというと、いまチベット問題で一生懸命にやってくださっている
方々は、環境問題や人権問題を一生懸命にやっています。もちろん、これ
も大切な問題です。しかし、そもそもチベット問題とは何かというと、一
国の独立国家が他の国に侵略された。そして、その独立をもう一回取り戻
そうというのが本来のチベットの目的であり、またそれが目標であるべき
だと思います。

そういう意味では今もう1度、われわれも考えなければならない時期に来
ているのではないか。

幸いにしてというか、今の北京政府、一見、非常に強く見えますが、総合
的に見ると、そろそろ自らのさまざまな矛盾から崩壊する可能性もないわ
けではない。かつて私の恩師の倉前先生が、ソビエトが崩壊することを
おっしゃってご本にも書きました。そのときに周りから、そんなことはあ
なたの推測にすぎない、小説だと言われ、いろいろと批判を受けました。

しかし、先生はもう1度ご本の中で、中華人民共和国という帝国も滅び
る、そういう日が必ず来るとおっしゃっていましたが、残念ながら先生が
健在のときにはそういうことが起きなかった。しかし、私はその予測が当
たるだろうと信じています。

 ▼チベットは決して非文明国家ではなかった

今のダライ・ラマ法王の時代になり、初めて私たちはある意味で統一した
国家になりました。それまでは中央政界がありましたが、世界中同じよう
に、私たちも中世から近代に入るのに少し出遅れました。

中華人民共和国という国がチベットを侵略したときは、まだチベット自身
が本当に近代国家としての形があったかというと、必ずしもあったとは言
い切れない部分があります。

それから、日本が1860年代に明治維新を行いましたが、それまではたぶ
ん、文化の面において、歴史の面において、あるいは民族の特有性におい
て、どう考えても日本に負けないぐらいの国家としてチベットは存在した
と思います。

中国は、野蛮で非文明国家のチベットに文明の光を照らした。そのために
チベットを封建社会から解放したと言っていましたが、たとえ封建制が
あったとしても、文明の面においては、ポタラ宮殿をご覧になっていただ
いても、あれだけの技術があの時代にあった。

チベット医学、あるいはチベットの占星術。あるいはチベットの歴史、特
にチベットの歴史の場合には宗教を中心とした歴史ではあるけれども、す
ばらしい書物がたくさんありました。インドの仏教の教えも、世界で一番
多く翻訳されているのがチベットです。普通、私たちはお釈迦様の教えは
8万4000あると言いますが、少なくともチベットで約4000が翻訳されてい
ます。

中国では2000ぐらい翻訳され、日本には200ぐらいしか来ていないわけで
す。そういう意味で、チベットは決して非文明国家ではなかったというこ
とです。

しかし、残念ながらチベットは、世界中が近代化して近代国家として中央
集権国家をつくったときに、私たちはヒマラヤの奥地で自分たちだけの平
和な生活をし、そして鎖国政治を約400年取りました。

この鎖国政治により、私たちは自分たちの文化文明を発達させるには大い
に役に立ったと思います。しかし、近代国家としては出遅れました。これ
がたぶん、私たちがいま直面している運命の原因です。

1949年に中華人民共和国ができ、すぐ毛沢東は、この革命は本来わが祖
国、これは中国的なわが祖国ですが、わが祖国の領土を全部開放するまで
はこの革命は終わらない。そして、それはもちろん、チベット、東パキス
タン、南モンゴル、あるいは日本の尖閣諸島、琉球、沖縄も含めてのこと
です。彼らが直接的、間接的に一度でも影響力を及ぼしたり、あるいはか
つて朝貢を受けた国はすべて中国の一部であるという考え方に基づいてい
ます。

1950年、一番近く、一番武装していない、お坊さんが27万から30万人ぐら
いいても軍隊は2万人しかいない国、まさにどうぞ侵してくださいという
ような環境にあったチベットに入ってきました。

1951年に17条条約を結びました。

17条条約を結んでから約8年間、1959年3月まで、残念ながらチベットは中
国の一部でした。これは認めざるを得ません。なぜならば1954年、中国は
憲法をつくりました。1949年に独立したけれども、中国は憲法ができたの
は1954年です。

このときにはダライ・ラマ法王もパンチェン・ラマ尊師も、あるいはその
ほかチベットのそうそうたる方々が人民大会に参加して1票を投じていま
す。給料ももらっています。しかし1959年、ダライ・ラマ法王がインドに
亡命してから、テスブというところで3月に、もうあの条約は無効である
ことを発表しました。

 ▼チベット分裂を企図したパンチェン・ラマという仕組み

私の考えでは、あの瞬間からチベットは占領下の国家です。私たちはまだ
国家であるはずです。

なぜならばチベット人の自発的な、あるいはチベット人の同意を得て、い
ま中国がチベットを支配しているのではありません。彼らは約束をことご
とく破りました。あの条約の中では少なくともチベットの外交、防衛以外
のことに対しては尊重することを書いています。

それまで、本来であればダライ・ラマ法王は私たちの宗教、政治でも最高
の地位ですが、パンチェン・ラマ尊師はダライ・ラマ法王の先生であり、
決して副大統領みたいではないです。

副王様でもない。中国はわざとチベットの中で分裂をつくるために意図的
に法王、そしてパンチェン・ラマというような仕組みをつくり、そして中
国はダライ・ラマ法王を中国とチベットが一つになるための準備委員会、
つまり自治区の準備委員会の主席、副主席に任命しました。

この状況においては、残念ながらまだ東チベット、そして今の青海省、ア
ムド地方、この辺に関してもあまり明確なチベットとしての立場を明記し
ていません。むしろ多くの東チベットの人たち、あるいはアムド地方の人
たちも、長い間、中央集権に対し権威として存在したけれども、近代国家
としての権力ではなかったと思います。ですから、東チベットで1957年、
最初の決起が起きても、中国政府はこれという手を打つことができなかった。

しかし、インドに来て1963年、チベットの各種族、各宗派のトップ、みん
なが初めてダライ・ラマ法王を頂点とする、自分たちの、日本で言ったら
藩の権限を当時、中央に返上したような形でインドのブッダガヤで誓いを
立てました。そして、その誓いとは、最後の1滴の血まで祖国の独立のた
めに使うということでした。

さらにその後、1972年までゲリラ活動をしていました。

ゲリラ活動に関してはアメリカの支援もありました。インドは当初、あま
り積極的ではなかった。インドとしては、特にネルー首相としては、でき
ればチベットを不干渉地帯として中華人民共和国と直接ぶつからないため
に残したほうがいい。

そこにアメリカとか、あるいはヨーロッパの国々が、もう一回、チベット
を助けるような意味で入ってきたら、せっかく日本の先の戦争の結果、独
立したアジアの国々、アジアにもう1回、西洋の勢力が帰ってくる。その
ようなことは、ネルーは望まなかった。したがって、インドも最初はゲリ
ラ活動、あるいはアメリカが関わることについては必ずしも積極的ではな
かったのです。

▼インドはチベット支援に最初は積極的ではなかった

インド自身が中国と友好条約がありました。インドと中国は1960年代まで
はインド人の売買、バンドン会議においてネルー首相と周恩来、特にネ
ルー首相の発想で平和五原則、パンチャシラを。

パンチャシラはサンスクリット語で、中国語ではありません。日本の学者
によっては、これは周恩来の哲学だと言っているが、周恩来の哲学ではな
いことは名前から言っても分かります。つまり、平和五原則の最も大切な
ことは、お互いの内政を干渉しない。他の国を侵略しない。主権を尊重する。

ネルーは非常に理想主義的な要素がありました。

例えば1957年、法王がインドをいったん訪問してそのまま残ろうとしたと
きも、周恩来が来てネルーを説得し、帰ってください、あとはわれわれが
仲介して、チベット問題は平和裏に何とかしましょうというようなことを
言っていました。

しかし、1962年、インドそのものが突然中国に侵略されました。ネルーは
ショックを受けました。サッダ・パティルはじめ当時のインドの国民会議
派の世間で言う右派、この人たちからも、「言ったじゃないか!」。

なぜかというと、サッダ・パティルは1951年にもう既に武力を使ってもチ
ベットを支援したほうがいいということを提言しています。しかしネルー
は、いや、これは平和的に解決できる、周恩来と私の人間関係がある、な
どと言い、パティルさんとか、そういう人たちの意見は聞かなかった。

ですから当然、インドは第1回の中国との戦争では負けました。

なぜ負けたかというと、インドは戦争するつもりがなかった。中国はチャ
ンスがあればという準備をしていました。しかし、その中国の準備も当時
はまだ不十分です。一つは、まだ道路がない。軍は簡単に入れない。

それから、高山病にかかる。中国人自身はチベットへ戦いに来ても、高山
病にかかる。だからモンゴル人とか、高地で戦える人たちを使って来まし
たが、その人たちは積極的に喜んで兄弟たちを殺すようなことはしませ
ん。彼らはインドのアルナーチャル州から、2〜3週間ぐらいで結局撤退し
ました。

一昨年、僕はアルナーチャルへ行きました。

そのとき、アルナーチャルの人たちが言うのは、決してその後もインド政
府が力ずくで中国と戦い、あるいはインド政府が政治力で中国を説得して
撤退したわけではない。何かというと、中国人が来て現地の人たちに、あ
なたたちは私たちと同じ顔だ、兄弟だ。あなたたちを助けに来たと言って
も、彼らは兄弟ではない。

中国は今のようにロジスティクスがないです。彼らは協力しなかった。食
べ物でさえ協力しなかった。そして、冬になりました。そうすると中国は
撤退せざるを得なかったのです。その後、ネルーの娘のインディラ・ガン
ジーは2度も中国と戦争したけど、勝った。それはインドも学ぶことが
あった。

1962、63年になり、インドは初めてダライ・ラマ法王をインド国内にお
いて国家元首並みの扱いをするようになりました。

ネルーは法王に対し、長期戦になるかもしれない。だから私たちインド政
府はあなたの国の人たちをいろいろな学校に入れたり、インド社会に受け
入れるのは簡単だけれども、そうではなく、自分たちの学校をつくりなさ
い。

チベットの学校をつくると、そこは私立の学校ですから、インドのカ リ
キュラムをやらなくてもいい。そこでチベット語を教える。チベットの
歴史を教える。チベットの文化を維持する。チベットの音楽を教える。そ
して、チベットの坊さんが一人、必ず学校に精神指導としていました。そ
ういう配慮をするようになったのです。

そのおかげで今日も、僕はときどき人民解放軍のカーキ色の軍人と、私た
ちの赤い色のお坊さんの軍人、どちらが勝っているというけど、世界的に
は私たちが勝っているだろう。なぜかというと、幸いにして1960年代、ベ
トナム戦争などもあり、アメリカを中心として、世界中のある意味で精神
的な空白がありました。

そこでビートルズやインドの聖者、聖マヘーシュ・ヨーギーとか、そうい
う人たちが出てきて、それと一緒にチベットの聖者ミラレパが最初に注目
されました。それがきっかけで『チベットの死者の書』が外国の資料にな
りました。

それから、チベットのお坊さん、最初に外に出て活躍したのは、スコット
ランドにいらした先生2人、それからのちに1人が交通事故に遭い、アメ
リカへ行ったのです。あれも偶然ではなく、本人が帰ろうと思ったときに
車の事故に遭ったのです。

たまたま運転していたのがアメリカの金持ちの女の人で、その人がアメリ
カに招待した。その人を通してアメリカで教えるようになりました。

その次がカルマパ。カルマパに対しては中国人の香港にいる人が協力しま
した。それから、日本人でアメリカ人と結婚した龍村さんの妹さん。そう
いう人たちが少しずつチベットのお坊さんたちを西側に呼ぶようになった。

最初はどちらかといえばカル・リンポチェやチベットの学者よりも行者の
人たち、それからアメリカにおいてはアメリカンインディアン、特にホビ
の人たち。彼らの伝説の中に、いずれ東から赤い衣を着ているお坊さんが
来る、聖者が来るというようなことがあった。そういうことで、最初はそ
ういう人たちが私たちに関心を持ちました。

日本でも、東大をはじめとしてインド哲学の延長線でチベット仏教があ
りましたが、残念ながら、それはあくまでもインド哲学の延長線でしかな
かった。チベット仏教について研究している人はなかった。むしろ最初に
関心を持ってくださったのが、いまホビット村にいる当時の日本のヒッ
ピーたちでした。この人たちがチベットに関心を持ってくれました。世界
全体が似たようなことだったと思います。

正直言って、最近はチベットの支援者は外国でも金持ちがたくさんいま
すが、最初にチベットに関心を持ってくれたのは、どちらかというとヒッ
ピーでした。何となくインドへ行き、そこで麻薬でもやり、そして人生を
考える余裕のある人というか、そういう人たちがチベット仏教に関心を
持ってくれたのです。そのおかげでチベットは知られるようになりました。

 ▼アメリカ人富豪らの支援はチベット仏教への関心からだった

そうこうしているうちに、1972年、中華人民共和国はアメリカと関係がで
き、アメリカは私たちに対し、あと6カ月でゲリラに対する援助を打ち切
ると言いました。そのとき、ネパール政府に対し中国、アメリカ、両方か
ら圧力がかかりました。

ネパールのマヘンドラ国王は最後の最後までチ ベットの人たちに対し、
非常に親切でした。ムスタンを基地にして、われ われが中国と戦ってい
ます。

そこで最後にゲリラの人たちは結局、ネパールからも追い出さなければな
らない。中国は向こうから追ってくる。法王は、少なくとも他の民族の地
を私たちのために犠牲にしてはならない、ネパールと戦ってはならない。
ですから、ネパール軍に降伏するということをおっしゃいました。最初何
名かいて法王のそういう言葉を伝えていたけど、ゲリラの人たちはみんな
あまり信じません。

中には友達と。独立のために最後まで戦うと誓い、その友達が死んでし
まっている。だから、その友達のためにも自分は戦わなければならないと
いう人もいました。

最後に法王の義理のお兄さんが法王のテープを持っていき、そのテープ
をゲリラに聞かせたのです。それでも一部の人たちは中国、あるいはネ
パール軍に降伏するのだったら自殺したほうがいいと言い、自分自身に鉄
砲の銃口を付けて死んだ人もいます。

もしかしたら僕の代わりに来る予定の人もいました。学校にいるときは何
となく競争相手ですから、僕はその人のことを尊敬もしていなかったし好
きでもなかった。しかし、僕が日本に来て数週間後に彼はゲリラに入っ
た。そして、数年後に彼は死にました。

そのとき、僕は彼に負けたような気がしました。

それまで憎たらしいと思った人が急に恋しくなり、そして偉いと思うよう
になったのです。だから、その後の僕の日本での活動は、常に彼のことが
頭の中にあります。もし私の代わりに彼が来ていたら、彼は何をやっただ
ろうか。確かに、彼は生きているとき、命を懸けていたことに対し報われ
ることはなかった。

しかし、その尊い命を大きな目的のために捧げることができた。それを私
はいまできていない。だから永遠に彼は、少なくとも私にとってはヒー
ローです。

どこの国でも、最後においしいときはヒーローがたくさん出てきますが、
歴史の中で名前も残らないヒーローが本当はたくさんいます。

私たちと一緒になって戦ってくれた、アムドキャシという中国人もいま
す。彼はもともと中国の人民解放軍でした。しかし、途中から、中国の
やっていることはよくないということで、われわれと仲間になってくれ
た。そして、一緒に戦ってくれました。恐らく彼のことも、チベットの歴
史にも、中国の歴史にも載らないかもしれない。いずれにしても、この
1970年代は私たちにとっては非常に大きな転換期でした。
   (つづく、3回連載です)

       
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
★宮崎正弘の新刊   ★宮崎正弘の新刊
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
♪♪
宮崎正弘新刊 緊急書き下ろし
『米国混迷の隙に覇権を狙う中国は必ず潰される』(徳間書店)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
https://www.amazon.co.jp/dp/4198643660/
 定価1080円(税込み)。 


2017年03月30日

◆「斬首作戦」がおこなわれた場合

宮崎 正弘 



<平成29年(2017)3月28日(火曜日)通算第5240号>   

〜「斬首作戦」がおこなわれた場合、シールズ部隊が北に潜入するだろうが
  報復手段にサリン、VXなど化学・生物兵器を北は大量に抱えている〜

3月7日、朝鮮中央通信は「在日米軍攻撃用の弾道ミサイルの4発同時発
射訓練に成功した。金正恩朝鮮労働党委員長が立ち会った」と報道した。
もし在日米軍を攻撃対象とすれば、米国は「北はレッド・レインを越え
た」と判断することになるが、金正恩の強気の姿勢は変わらない。
 
トランプ政権は「戦略的忍耐」という前オバマ政権が採用していた、意味
不明、曖昧模糊の作戦は終わったと宣言し、「あらゆる選択肢を考慮す
る」と方針を転換させた。

3月17日にソウルを訪問したティラーソン国務長官は「オバマ政権がとっ
てきた『戦略的忍耐』をやめる」と記者会見したが、その足で最前線の板
門店を視察しているのである。

米国の言う「あらゆる選択肢」に含まれる「斬首作戦」に関しては別に新
基軸というわけではなく、2016年の米韓合同演習でも行われている。その
うえ、特殊部隊シールズの「チーム5」は韓国に常駐している。

sealsとはse(海)a(空)l(陸)から取られた複合組織だが、
SEAL(アザラシ)に引っかけられている。

米海軍最強を誇り、2つの特殊線部隊、8チームからなる。歴史は古く第
2次大戦中の水中破壊工作班が前身で1962年のベトナム戦争対ゲリラ特殊
線に備えて正式に発足した。

▼北のドン斬首作戦は実施されるか?

2011年5月、パキスタンのなかに潜伏していた国際テロ組織「アルカィー
ダ」の首魁オサマ・ビン・ラディンを特殊ヘリコプターを飛ばして殺害し
た「実績」が有名だが、ほかに数十の特殊作戦に従事し、何回もハリウッ
ド映画のモデルとなった。

ラディン殺害ではタリバンから報復を受けてアフガニスタン渓谷を飛んで
いたシールズの武装ヘリが撃墜され31名のシールズ隊員が犠牲となる事件
もあった。
 この米軍特別チームが次に北朝鮮に潜入し、金正恩ひとりを殺害すると
いう軍事作戦が視野に入った。
 
問題は隠れ家を転々と移って常に居場所を秘密にしている金正恩だ。地下
150メートルの要塞に潜むという金正恩をいかに見つけ出し、特殊部隊が
地下へ潜り込んで始末するか。現実に米韓合同軍事演習に特殊部隊が投入
されており、そのシナリオに沿っての訓練を行っていることは周知の事実
である。

「斬首作戦」によって独裁体制のトップが不在となれば北朝鮮の指揮系統
は乱れ、誰も命令を下せなくなって、中国の介入を待たざるを得なくなる
とするシナリオに基づく。

独裁国家においては指揮系統がなくなれば混乱と無秩序になり、国家崩壊
へ雪崩を打つことは過去にもサダム・フセイン、あるいはカダフィ大佐の
実例がある。

イラクはサダム・フセインが不在となった直後から中核のバース党が行政
も兼ねていたため国家は自動的に崩壊した。

サダムは部隊同士の横の連絡を取らせず、つねに一人で命令系統を掌握し
たため、軍事的に効率の悪い軍隊だった。北朝鮮軍隊のシステムもそう
なっている。

しかし北朝鮮を想定した場合、もし斬首作戦に成功しても、それ以後、軍
の指令系統が生き残り、北朝鮮の一部の軍高官が報復を宣言して軍事的行
動にでた場合、非武装地帯(DMZ)から僅か40キロしか離れていないソ
ウルは猛攻撃を受けて「火の海」となり、およそ100万人の犠牲がでると
するシミュレーションが存在するため、いざ実行という決断がなされるの
はよほどの場合であろう。北はDMZに総兵力102万人のうち、3分の1
を配備している。

米軍のピンポイント爆撃は引き続かなければならず、北朝鮮のおよそ700
の攻撃目標への空爆は、在韓米軍に加えて在日米軍基地、日本海洋上の艦
船ならびに在日米軍所属の潜水艦などから行われる。

空爆のあと精密な戦果の測定が偵察衛星やドローンを駆使して行われ、繰
り返しの空爆が続行されるため、最長で2ヶ月の時間を覚悟しなければな
らない。


 ▼北の化学兵器の貯蔵地は秘密のままである

その事態に遭遇したとき最悪のシナリオとは、北朝鮮が化学・生物兵器を
平然と使用し、世界中どこへでも出向いて化学兵器による報復テロを惹起
する危険性が高い。

米軍は北の核施設や軍事基地は偵察衛星で把握しているが、化学兵器の貯
蔵庫を発見していない。幾重ものトンネルが重なった、まるでベトコンの
地下基地のような迷路の果てに化学兵器は貯蔵されているとされ、VXの
ほかにサリン、タブン、ソマンなど匂いの無い、透明な液体やガスがたっ
ぷりと貯蔵されている。

マレーシアにおける金正男暗殺はvxガスが使われた。
どうやって持ち込まれたのか?

おそらく外交行李で運ばれ、税関をフリーパスしたに違いなく、今後も意
思さえあれば、欧州や国交のある国々に持ち込める。そこを経由地として
米国での報復戦争に打って出るという悪夢のシナリオも米軍は想定している。

そもそも化学兵器は1950年代に英国において開発され、米国が化学兵器の
生産を始めたのは196年である。

しかし人道上の配慮から、化学兵器は使えない手段とされ、備蓄の削減、
全廃が開始され、2009年には米国も化学兵器を保有しないこととなった。

 もっか、トランプ政権にとって軍事行動の優先はIS退治にあり、マ
ティス国防長官もマクマスター大統領補佐官も、北朝鮮は後回しとするこ
とで合意している。

であるとすれば、米国がいきなりの軍事行動を採るという事態はしばら
く考えにくい。 「戦略的忍耐」から「あらゆる選択肢」に切り替えた、
その中味のなかの他の選択肢である。 

2017年03月28日

◆キャリエ・ラム(林鄭月峨)が当選

宮崎 正弘
 


<平成29年(2017)3月27日(月曜日)通算第5239号>   

 〜キャリエ・ラム(林鄭月峨)がライバルのジョン・ツァン(曽俊華)を破る
  香港の行政長官、また北京政府がテコ入れの候補が当選〜

香港の行政長官選挙が26日に行われたが、北京がテコ入れしたキャリエ・
ラム女史が有力だったジョン・ツァン候補を破り、当選した。

投票日直前の土壇場に張徳江(中国共産党政治局常務委員)が、深センへ
飛んで北京支持派委員を集め、投票を指示した。香港に直に乗り込んで投
票者を説得するのはあまりに露骨な介入となるので、となりの深センに集
めるというスタイルである。

キャリエ・ラム(林鄭月峨)とジョン・ツァン(曽俊華)の世論調査での
人気は後者がはるかに上だった。

この中国の「間接介入」という選挙パターンは、現在の行政長官・梁振英
のときとまったく同じで、前回も土壇場で深センへ飛んだ中国共産党中央
政治局員の劉延東女史が投票の一本化を指示した。

得票はキャリエ・ラム女史が777票で、選挙人は1194人だった。したがっ
て彼女の得票率は65%である。圧勝と言って良いだろう。

世間の世論調査では対立したジョン・ツァンが59%、彼女は僅か29%。北
京政府のテコ入れがなければ、とうてい当選できなかった。土壇場で北京
の空気を読んだ香港の財界、経済界がどっとキャリエ・ラム女史に流れた
のだ。
 
ところが、キャリエ女史もジョン氏も、ともに親中派なのである。「中央
政府の支持がなければ香港は発展しない。誰が長官になろうとも、分裂を
避け、香港の全体の宥和を謀って行くべきである」とする姿勢も同じ。
 
したがって北京政府は2人の親中派が伯仲すれば、反北京の、もう1人の
候補に票が流れかねないと不安視し、ジョンに立候補を取りやめれば
AIIBの副総裁のポストを約束できるなどと水面下の動きがあったとい
う(アジアタイムズ、3月27日)。

いずれにしても、直接投票ができない香港市民の意見を代弁できるわけで
はなく、言論の自由を保障するなどと新長官が主張しても、民主派はそっ
ぽを向いている。

 (註 キャリエ・ラム女史(林鄭月峨)の「峨」は女偏です。香港の中
国人はクリスチャンネームを名乗るのが一般的です)

     
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIE
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  

 国鉄民営化の立役者、新幹線の営業活発化
  日本経済の大動脈「新幹線」の苦労物語と今後の展望

  ♪
葛西敬之『飛躍への挑戦 東海道新幹線から超伝導リニアへ』(ワック)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

20年ほど前、葛西さんの講演を聴いたことがある。経済人には稀有な人と
みた。なぜなら経済人特有の、こもったような、それでいて無内容の講演
ではなく、ずけずけとものを言い、主張がはっきりしている上に、物言い
が正しいのだ。

だから稀な経済人として、爾来、注目してきた。言うまでもなく葛西氏は
「JR東海」の名誉会長。

日本の誇る新幹線は、評者(宮崎)がまだ高校生だったころ、上空にヘリ
を飛ばしたテレビ中継で、その開通の様をみて興奮したことを昨日のよう
に思い出す。画面はまだ白黒だった。

新幹線開業をきっかけに日本経済の高度成長が達成された。

まさに「日本の夢」があった。経済発展の象徴が、あの「ひかり」と「こ
だま」だった。少年時代に鉄道に乗ることがむやみと好きだったから、夢
の超特急の出現に興奮したのだが、あれから半世紀以上を経て、新幹線は
日常生活のなかに溶け込み、福岡も日帰り出張の範囲となって、大阪日帰
りは常識化した。故郷の金沢もすっかり近くなって飛行機より便利であ
る。講演を頼まれても最近は日帰りである。

次の日本の夢はリアア新幹線に移っている。
 
本書は国鉄の民営化から30年の回想秘録であり、経営の哲学を語った葛西
経営哲学の骨格をなす。

JR東海が発足したのは昭和62年、新幹線開業は昭和39年だった。

JR東海となった直後の一日平均列車本数は231本だった。平成28年には
臨時列車も入れて一日432本の列車が運行された。一時間に片道15本、そ
のうち「のぞみ」が10本、ひかり2本、こだま3本。一列車には1323席も
あり、一日平均45万人を運ぶ。航空機との競合時代になっても、東京―大
阪馬で85%、広島との間でもシェアは65%であるというから驚異的である。

そのうえ新幹線は台湾へ進出し、いずれアメリカを走る。

「東海道新幹線システムの完成度が高まった今、日本の高速鉄道システム
を国際標準化することが今後の課題となった。平成26年4月に、米国、
英国、カナダ、オーストラリア、シンガポール、マレーシア、インド、台
湾にJR東海、東日本、西日本、九州をメンバーとして『国際高速鉄道協
会』(IHRA)が設立された」

長い長い苦労話の基軸は国鉄時代の借金の清算、そして台湾新幹線のとき
の教訓などがあるが、それらは本書にも詳述されている。

大事なのは経営への取り組み姿勢であるとして葛西氏は次の五つを述べて
いる。

「第一には『すべての制度は変更可能』だという信念である」

与件に最大の努力をはらうことも重要だが、慣例というくびきからの脱出
も重要だ。
 
「第二には、『合理性と正当性』を指針に『登るべき山頂』を見定めたこ
とである」
 
「第三には、足下の現実を直視」し、「第四には、着想は自由でリラック
スした意見交換の化合物として浮かび上がる」ものであり、そのために
も、第五は「人との信頼関係が何よりも大切」という信条だと、その哲学
を語っている。
 読み応えがあった。

        
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  

 いま最も旬のエコノミストふたりが次の世の中を見透かす
  TPP議論も、農協ファンド議論も根本が間違っている

  ♪
三橋貴明、渡邊哲也『世界同時 非常事態宣言』(ビジネス社)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

EUは英国の離脱で解体が始まり、ユーロはギリシアの債務不履行は時間
の問題、となればイタリア、スペインが続き、いずれ解体に向かうだろう
が、EUに加盟させてもらえないトルコがNATOに留まるか、どうか。
 三橋貴明氏が興味深い歴史の視点を提示する。

グローバリズムを最初に言い出したのは大英帝国。やめたのも一番は英国
だった。

「1816年にイギリスが貨幣法を成立させ、ソブリン金貨を唯一の無制限法
貨として認め、1ポンドとして流通させることで(グローバリズム)が始
まった」。

ところが「1931年、そのイギリスが世界に先駆け、金本位制から離脱、前
回のグローバリズムが終わった」

2回目の言い出しっぺも英国だった。

「1945年、イギリスのアトリー内閣が社会保障制度の充実に取り組み、世
界初の本格的な福祉国家が誕生した。現代の日本国民も恩恵を受けている
『国民保険』にしても、アトリー政権がはじめた」(中略)その制度を「世
界で最初に破壊しはじめたのも、イギリスだ。1979年にサッチャー政権が
成立し、新自由主義に基づく構造改革が始まった」。

「最も完成されたグローバリズムの国際協定、すなわちEUから、2016年
6月23日に国民投票で離脱を決定した」(187p)

言い出して、実践し、行き詰まると、世界に先駆けてやめる常習犯がイギ
リスというわけで、つまりEU解体へのプロセスが事実上始まっていると
いうことなのであると三橋氏が言う。

渡邊哲也氏もまたユニークな分析をしている。

視点はカジノ経済の行く末である。評者(宮崎)もたびたびマカオのカジ
ノが賄賂の合法的受け渡しに利用され、共産党幹部らの悪のマネーロンダ
リングに使われていることを指摘してきのだが、もっとグローバルで巧妙
な手法があると、渡邊氏は次のことを指摘している。

「カジノのチップというのは、カジノ管理委員会という公の機関が管理し
ます。アメリカだったら州が管理する形で、銀行口座に預託金を積んで、
預託金に該当する額のチップを発行する。現金と一緒です」(中略) そ
のチップには一枚1000万円という高価なものまで含まれ、これがマネーロ
ンダリングに使われる。

嘗て3億円をすったハマコー事件もあった。マカオで30億円すった製紙会
社の御曹司がいた。

典型例がマカオだった。
 
バンコデルタアジアは、「北朝鮮が貿易決済は外貨取引で利用してきたの
ですが、2005年にアメリカからマネーロンダリングを疑われ、金融制裁を
食らって破綻」した。

偽札、麻薬、武器、外国タバコの偽造品などの決済が「チップに両替し
て、そのチップを渡して、商品を貰う。チップを受け取った側は、『カジ
ノで勝った』と行って銀行に持って行けば現金が手に入る」(51p)とい
うシステムが機能したし、いまも機能している。

こういう仕組みを日本が導入するとは、いったい何事かというわけである。
 
もう1つ、ふたりが揃って批判するのは「国の借金」というプロパガンダ
である。
 

そもそも国の債務を対GDP比で巨額数字を提示するのは、トリックであ
る。債務とは、裏付けになる国民の金融資産が、誰もが安心するように担
保されているからで、国債を『赤字国債』と問題にするジャーナリズムの
勉強不足である。

だから、言うのだ。ガバメントデットを「国の借金」と翻訳するのは適切
ではなく、「政府の負債」とするべきである、と。
    

2017年03月27日

◆2隻目は国産空母、「山東」と命名

宮崎 正弘 



<平成29年(2017)3月26日(日曜日)通算第5238号>   

 〜中国海軍の2隻目は国産空母、「山東」と命名
 カタパルト技術も未整備、訓練パイロットは着艦に次々と失敗。多数が死亡〜

「中国はナショナリズムの青春期にある」(福島香織氏)。

だから過激な言動が目立つ。激烈なナショナリズムを鼓吹してばらばらな
国民を糾合しようというわけで、駅の新聞スタンドでも扇動的な『環球時
報』についで売れるのは軍事雑誌である。日本でも『週刊プレイボーイ』
など女性の裸体グラビアの隣は必ず軍事情報であるように。

中華ナショナリズムは軍事力の誇示が象徴する一面があるが、米国と対峙
し、いずれ凌駕するという中華思想の病的な錯覚、指導層の錯綜した心理
で、さらなる軍備強化に狂奔している。

大連で建造中の国産空母の現状はといえば、西側の衛星写真が捉えたとこ
ろでは、甲板の工事が完成間際の段階に来ていると想定できる。
中国の国産空母は「山東」と命名された。

しかしながら空母とは名ばかりだった第1号艦「遼寧」は、艦載機の離着
陸訓練がはかどらず、ミサイルを外し、燃料をちょっとだけ積んで、ス
キージャンプ形式で飛び立つものの、着艦ができていない模様である。

着艦に失敗した女性パイロットが死亡したが、中国は早速「英雄」「烈
士」と持ち上げた。ほかにも数機が着艦に失敗し、犠牲になっていると消
息筋はみている。カタパルト技術に欠陥があるからだ。

空母は米国の軍事技術の集大成でもあり、英国、仏蘭西が保有する空母は
軽空母、インドのそれは軽量級。ロシアの空母はシリア沖に投入された
が、二月には「修理」を理由に帰投している。


 ▼台湾防衛は日本の安全保障の生命線

他方、台湾は中国の軍拡に敏感に反応している。

3月21日には高雄の左営海軍基地で記念式典に出席した蔡英文総統は、台
湾軍が潜水艦の自主生産に踏み切ると表明した。この台湾の自主潜水艦は
設計に4年、建造に4年を掛け、米国などから最新鋭技術供与をうけなが
ら配備を目指すとしているが、はたして間に合うのか。

台湾の国防費は中国の15分の1、保有する潜水艦は僅か四隻で、このうち
の2隻は第2次大戦で使った老朽艦である。

あまつさえ嘗て蒋経国政権下で、自主生産でジェット戦闘機「経国号」を
作りかけ、巨額の予算を割いたものの、結局、自主開発に失敗した。 
 そのうえ台湾軍の士気が急速の衰えており、危機感を高めたトランプ政
権は新兵器供与に踏み切る。

台湾には民間人を装った米軍退役軍人等がすでに相当数はいっているとい
う情報もあるが、なにせボルトン元国連大使は「沖縄の米軍を台湾に移転
せよ」と場外で呼号しているほどに事態の発展は急激な流れを生んでいる。

2017年03月26日

◆フランスが中国に異様な警戒感

宮崎 正弘 



<平成29年(2017)3月24日(金曜日)弐 通算第5236号>   

 〜フランスが中国の南シナ海珊瑚礁埋立て軍事基地化に異様な警戒感
  次の軍事標的はは「南太平洋の島々」ではないのか、と疑心暗鬼〜

フランスはいまも南太平洋の3つの群島を支配している。

代表例はタヒチ。ペパーテはフランスからの観光客に加え、日本のカップ
ルも多くなった。

タヒチが属するソシエテ諸島、ムルロア環礁、そしてトゥブアイ諸島がい
まも仏蘭西領だ。


タヒチ観光は盛んだが、ペパーテのリゾートライフより、潜水を楽しむ向
きはボラボラ島まで遠征する。ハワイよりホテル、食事代が高い。

フランスは南太平洋の島で地下核実験を何回も繰り返し、日本からは抗議
団体が行ったりもしているが、通用するのは「フランス南太平洋通貨」
で、ユーロでも旧フランでもない。

つまりこの海域はフランスの利権である。
 
さて、この地政学的背景からフランスは南太平洋へ海軍の派遣を近く実施
に移すという。

いうまでもなく、隣の南シナ海が「中国の海」と化け、中国が主張する
「九段線」を越え、インドネシア、ソロモン諸島、フィジーなどを越えれ
ば、南太平洋であり、フランス、ニュージーランド、豪の利益圏である。

        
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 
 
 〜いま世界は『冬の時代』にはいったが、次に春が来る希望はある
  黙示録的な予言 大混乱のアメリカが次に打って出る手は?〜

  ♪
ウィリアム・ストラウス & ニール・ハウ共著
奥山真司監訳『フォース・ターニング(第四の節目)』(ビジネス社)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

本書に関して、やや長い前置きから書く。
 
評者(宮崎)はすでに小誌(2月27日号)の後節にトランプ大統領を操ると
言われる、「バノン(大統領上級顧問)に思想的影響を与えた書物」として
この本の原書を次のように書いている。

「スティーブ・バロンに甚大な思想的影力を与えた書物があるという。ワ
シントンポスト(2月24日号)の拠れば、ニエール・ハウとウィリアム・
ストラウスの共著3冊である。『世代(1584−2061 アメリカの歴史と未
来展望)』、『第四次転回点 威厳とのランデブーは次の歴史循環』、そ
して『千年の勃興 1982年以後の世代こそ次の偉大な世代』という本だ」

このうちの2番目に挙げた『第5次転回点』が、本書(邦訳は『第四の節
目』となっている)だ。

この本は、トランプ大統領の上級顧問であり、トランプをたぐる黒幕とい
われるバノンに強烈な影響を与え、バノンが製作した『ゼロ世代』は、著
者ふたりが書いた黙示録としての未来の歴史を下敷きにしているという。
 詳論をここで引用しておきたい。

「米国史という歴史からいえば、過去に3回、価値観の大変革があった。
いま迎えようとしているのは『第4次転換点』であり、それは国家、社会
の価値観、個人主義、国家の運営のあり方を根源から変革する衝動の波と
なって現れた」。

その過去のパターンとは、すなわち1945年、1865年、そして1794年の出来
事が参考になるという。

1945年はいうまでもないが、1年は南している。

経済成長と減退は変則的で失業の増大と労働、資本の投資対象が変わり、
デフレへの恐れを目撃しつつ、不平等の拡大、中央銀行への不信、消費の
衰えという状況の中で、孤立主義とナショナリズムと右翼思想の興隆を見
てきた。民主党リベラル思想は沈下した。トランプはまさに時代の流れを
掴んで出てきたのだ。まさに1930年代のような『ゼロ世代』の時代が来て
いるのだ」とする。

原著者のひとり、ウィリアム・ストラウスは2005年に急逝したが、いまも
健在のニール・ハウは『ワイントン・ポスト』(2017年2月24日)に次の
寄稿をしている。

「われわれは変動激しい時代に遭遇しており、歴史は加速し、リベラルは
退潮している。レーニンが『数十年間は何事もおこらなかったが、数週間
で数十年にあたりする出来事が起こる』と書いたように、いまアメリカが
遭遇しているのは、こういう変革の時期なのである」(拙訳)。

バノンは、こうした考え方におおきな影響を受けており、かれは「5年か
ら10年以内に中国と戦争が起きるだろう」と予測するに至った。

              ★

以上の前置きに繋げて、翻訳書の書評を書く。
 
著者らは「すでにわれわれは冬の時代にいる」としているが。景気循環説
のもじりか、政治の季節を春夏秋冬とわける。この基本パターンが、繰り
返すという基本認識に立つ。

最初は景気のサイクル論かと思えるほどに、循環が繰り返され、コンドラ
チョフやトインビーの歴史観なども牽強付会されている。

米国の未来は悲観的であり、「超大国が、内側から崩壊しはじめている」
のも、「第二次世界大戦後の共産主義への歴史的な勝利や、景気拡大の長
期化でさえ、われわれの気分を高揚させるには過去のものになりすぎている」

もの悲しいスタートである。
 
悲哀感は次のように続くのである。
 
「アメリカのどの町をみても、将来について明るい兆しが見いだせない。
人類はより文明的で高貴な人格の形成を目指しているはずだが、実際は自
分たちのリーダーたちにすら威厳を感じることができずにいる」

たしかに、オバマ、クリントン、ブッシュ、そしてトランプと、人間的威
厳を感じることはない。尊敬する感情が生まれてこないのである。

そのうえトランプ勝利となった今回の大統領選挙をみても、アメリカは東
海岸、中西部、南部、そして西海岸とハワイに分裂してしまったかのよう
に、地域によって、歴然と別の傾向が見て取れるような投票結果だった。

 ロシアの人口学者が、アメリカが6分裂する可能性を説いたのは、わず
か2年前である。

 それゆえ「個々に楽観主義があっても、それは家族や地域のコミュニ
ティの中にはすでに存在しない。殆どのアメリカ人は自分の将来について
は希望を語りたがるが、自分たちの子供、もしくは国家の未来に対しては
悲観的だ」とする。

 かくして「第四の節目は、21世紀に入ってすぐの時点から始まるが、
おそらくそれは2000年代の半ば頃になるだろう。つまり2005年の
前後に突然の変化が起こることによって、危機のムードが始まる。古い社
会秩序の残骸が消滅し、政治経済面での信頼が内部崩壊する。社会には困
難が蔓延ることになり、階級、人種、民族、そして帝国などに関する問題
を含む、深刻な苦難に直面するはずだ」。

この箇所を読んでバノンの選挙戦略を思い出した。まさに彼は選挙をマー
ケッティングによって、階級、人種、民族などの投票傾向を分析し、なに
を発言すれば、票に繋がるかを解析し、トランプの勝利に繋げた。

具体的には暴動や反乱が起こり「地理的に分裂したり、独裁的は支配体制
が敷かれたり」。いや「戦争がおこるとすれば、それは最大級のリスクと
困難を抱えるものであり、これをいいかえれば『総力戦』になる可能性も
高い」。

したがって、としてニール・ハウらは言うのである。

「第4の節目は、大災害か、輝かしい栄光のどちらかの形で終わることに
なる」

著者たちの独自の文明観が、春夏秋冬の季節型パターンにあるとすれば、
「危機」と「高揚」と「覚醒」と「分解」が交互に起こり、4つのパター
ンでは「予言者」「遊牧民」「英雄」「芸術家」が循環するとしている。

日本でも、本書は話題を呼ぶだろう。
      
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
■「加瀬英明のコラム」 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  ♪
 北朝鮮の脅威にどう対抗? 苦慮するトランプ政権
 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

北朝鮮が4発の弾道ミサイル弾を、日本海側の東倉生から発射して、3発
が日本の経済水域に着弾した。北朝鮮が弾道ミサイルの試射を行ったの
は、2月10日に日米首脳がフロリダで、会議を終えた直後以来だった。そ
の時に、トランプ大統領は「北朝鮮の脅威への対処に、きわめて(ベ
リー・)高い優先順位を与えねばならない(ベリー・ハイ・プライオリテ
イ)」と、述べた。

北朝鮮は今回のミサイル発射後に、「在日米軍を標的とした訓練」だった
と、発表している。北朝鮮が同時に多数のミサイルを日本へ向けて発射し
た場合に、日本に迎撃して撃破する能力がない。

トランプ政権にとって北朝鮮の脅威に対応することが、政権の信頼性がか
かる噄緊の課題となっている。

トランプ政権は北朝鮮の核施設を破壊する、外科的な軍事攻撃も辞さない
という姿勢をとって、政権発足直後に日本の岩国にF35新鋭ステルス戦闘
爆撃機を配備したが、どうするべきか苦慮している。

トランプ政権はクリントン政権からオバマ政権にいたるまで、北朝鮮の核
兵器開発を事実上放置してきたツケを、払わねばならない。

どうするか? といって、北朝鮮の核施設を除去するために、限定的な攻
撃を加えることはできまい。北朝鮮はソウルのすぐ北の軍事境界線に沿っ
て砲列を敷いており、停戦までにソウルを火の海にすることができる。数
十万人のソウル市民が死傷することがあれば、韓国はアメリカが戦争を挑
発したといって、アメリカを恨もう。

それに、トランプ政権は北朝鮮よりも、オバマ政権が深入りして、シリ
ア、リビア、イエメン、ソマリアなど中東アフリカ諸国にアメリカ軍が介
入してきたのを、引き揚げることを優先しているが、6ヶ月以上はかかろ
う。北朝鮮に限定的な攻撃を加えるとしても、朝鮮半島において全面戦争
に発展する可能性を、想定しなければならない。現状では、アジアに十分
な軍事力を割くことができない。

 だが、北朝鮮の金正恩委員長の危険な火遊びを、放置しておくことはで
きない。いくら北朝鮮の「暴挙」を非難して、経済制裁を強化しても、北
朝鮮は核兵器なしに体制を守ることができないと確信しているから、核を
捨てることはありえない。それに、中国が経済制裁の大きな抜け穴となっ
ている。

 トランプ大統領は、6ヶ国協議や、オバマ政権が北朝鮮を「核保有国
家」として認めないという愚かしい政策などに、まったく束縛される必要
がない。

そのようなしがらみがないから、北朝鮮の核弾頭や、ミサイルや、化学兵
器について、北朝鮮と交渉することができる。トランプ大統領自身、選挙
戦中に「金正恩委員長と会談してもよい」と、発言していた。

 私はアメリカが北朝鮮を核保有国として認め、核弾頭の数とミサイルの
射程について制限を受け入れることと引き替えに、米朝平和条約を結ぶこ
とを、主張してきた。金体制の至上の目的が、金体制の存続を保障するこ
とだから、喜んで交渉に応じよう。

 日本も北朝鮮と並行して交渉し、弾頭数と射程距離について合意すれ
ば、日朝国交正常化を行い、1964年の日韓条約と見合った経済協力
を、提供する。

 そうすれば、拉致被害者が全員帰国し、朝鮮半島に平和秩序が確立され
ることとなろう。 

2017年03月25日

◆中国、唐突にハルビンの安重根記念館を

宮崎 正弘 



<平成29年(2017)3月24日(金曜日)
        通算第5236号>   

 〜中国、唐突にハルビンの安重根記念館を「移転」させる
   韓国のテロリストを英雄として扱ったのだが。。。〜

中国黒竜江省の省都ハルビンの駅舎内に設置されていた「安重根記念館」
の移転決定がでて、突然、工事に入ったことがわかった。3月22日の決定
といわれる。

しかし「移転」なのか、「撤去」なのかはまだ判然としていない。これは
中国の「韓国いじめ」の一環だが、すでに中国内のロッテは20軒が閉店に
追い込まれた。

中国の一連の苛めは、韓国が防衛ミサイル(THAAD)配備を決定したこと
への報復措置である。

ところで筆者は何回か、ハルビン駅舎のプラットフォームにあった安重根
の記念碑をみている(新幹線が開通し、いまの近代的駅舎になる前の話)。

朴権恵前大統領が訪中したときに、習近平に設置を要請し、中国は2014年
に新しく大々的な記念館設置を認めた。

当該記念館は、中国の208ケ所にある「反日記念館」と展示内容がほぼ同じ
基調で、テロリストを英雄視した構図となっていた。

一方、数年前に公開された旅順の日本刑務所跡(これも公開直後に見に
行った)には、安重根が1910年に処刑された死刑台が展示されていたが、
これも改装を理由に2016年秋から閉館されたままとなっている。

 熱い熱い「蜜月」をいわれた中韓関係は突発的に急速冷凍状況となった。

となれば、韓国は次に誰を頼るつもりなのだろう?
            
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  ♪
〜外貨逼迫のタイミングを狙ってか
 AA(アメリカン航空)が中国南方航空の株式取得へ〜

世界最有力の航空会社アメリカンエアライン(AA)が水面下で、中国最
大の「中国南方航空」の株式取得へ向けて交渉していることがわかった
(サウスチャイナモーニングポスト、3月24日)。

中国南方航空の時価総額は100億ドル。AAの株式取得予定額は2億ドル
だから2%の株式保有を狙うわけだ。

中国南方航空は国有企業、最大株主は中国政府。ボーイング、エアバスな
ど648機を保有し、世界40ヶ国、208都市へ乗り入れており、いまもボーイ
ングに150億ドルの航空機を発注している。

一方、AA(アメリカン航空)は、世界50ヶ国、350都市に翼を拡げてい
るが、北米、カリブ海方面が主力で、アジア最大の中国へは乗り遅れてきた。

AAは日本航空などが加わる「ワンワールド」の旗艦メンバーであり、こ
れまでにも中国市場の開拓が叫ばれていた。

米国キャリアではすでにデルタ航空が中国東方航空と連携しており、株式
も保有している。デルタと東方航空はスカイチームのメンバーで、提携フ
ライトも実現している。業界では2045年に中国の航空機旅客が米国を凌ぐ
だろうと予測されている。

AAもデルタ航空も、日本へは相当数が乗り入れており、日本―米国路線
は稼ぎ頭の一つである。

さて、これは航空産業だけのはなしではない。

昨年から中国は外貨持ちだし制限にくわえて海外企業買収を事実上ストッ
プしており、海外送金は5000万ドルから、いきなり10分の1の500万ドル
に下げてきた。

昨年だけで、7300億ドルが海外へ流失したため、中国はドル規制に踏み
切った分けだが、こんどはドルの入金になるので、政府は持ち株を放出す
る方針に切り替えたのではないかと推測されている。

2017年03月24日

◆ロシア、中国のマネーロンダリングの手口

宮崎 正弘 

<平成29年(2017)3月23日(木曜日)通算第5232号>   

 〜英紙ガーディアンがすっぱ抜いたロシア、中国のマネーロンダリングの手口
  ロシアのマフィア、FSBと中国の銀行がグルになり、200億ドルを
資金洗浄〜

 中国の国有銀行の殆どが不正な資金洗浄に絡んでいた。

 世界的なマネーロンダリングの犯罪ルートが一部解明されたのだが、で
てくる、でてくる。中国銀行、中国工商銀行、中国農業銀行、中国建設銀
行という四大国有銀行ばかりか、交通銀行に加えてHSBCの香港支
店。。。。。

ロシアの不正資金の洗浄は欧州の銀行ばかりか、中国の銀行群がマネー
ロンダリングに手を貸していた。

もちろん、中国だけではなく、英国に本店をおくHSBC、クレディスイ
ス、さらにはドイツ銀行もからみ、巨額の資金洗浄に手を貸した関係者は
およそ500名。発端は例の「パナマ文書」である。

ガーディアン(2017年3月21日)に拠れば、まずやり玉に挙げられたの は
ドイツ銀行で、バルト三国のラトビアを舞台にロシアの犯罪組織が絡ん
だ資金洗浄に協力し、およそ3億ドルが謎の企業「グローバル・ランドロ
マット(Global Laundaromat)」を通過した。ここに
はKGBの後身「FSB」も絡んでいるという。
この資金洗浄は2010年から2014年に行われた。

ロシアのマフィアが架空のローンを互いにでっちあげて資金移動を行っ
ていた。

ロシアの資金洗浄はキプロスやモルドバが舞台だったが、キプロスで不動
産バブルが破裂し、モルドバではいくつかの銀行が倒産した。
その後、ロシア資金は旧ユーロスラビア諸国や、ラトビアなどバルト三国
に拠点を移動させていたらしい。


米国系銀行は、同じ期間にバルト3国から撤退した。

このロシア絡みに資金洗浄に手を貸すと、米国司法省から課せられる罰金
は、銀行経営を逼迫するほどの巨額になる。

明らかに犯罪が絡んだ資金の取り扱いに慎重になったからだ。JPモルガ
ン銀行などが撤退後、バルト三国に進出したのがドイツ銀行、コメルツ銀
行(独第3位)だった。

 ラトビア当局は、金融犯罪の捜査を進め、「ロシアの不法資金が欧州金
融市場へ流れ込む中継の役目をしている」としてドイツ銀行に警告を発
し、ドイツ銀行はスタッフの入れ替えを行った。

この犯罪スキームに中国の富豪たちの海外不法送金が絡んだ。

アジアタイムズ(同日)に拠ると、ロシアの「グローバル・ランドロ
マット」に関連した不正送金は、最低に見積もっても200億ドルに達する
という。

資金洗浄の犯罪組織や協力した銀行は合計96ヶ国におよび、このうち中
国に流れこんだカネは9億1500万ドル、香港に流れ込んだのが9億2700万ド
ルという。

ロンドンが本店のHSBCは、トータルで5億4500万ドル。パナマ文書 に
拠れば、中国共産党政治局常務委員会の全員が関与する面妖な企業や
ファンドが、濃密に資金洗浄に絡んでいることが判明しており、今後、全
容の解明は国際的な捜査協力体制が構築されるか、どうかにかかっている。
         
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIE 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 西欧の社会主義政党はとうの昔に共産主義と訣別している
  ところが、日本では珍妙な主張がまかりとおり、共産党が残存している

  ♪
福富健一『共産主義の誤謬』(中欧公論新社)
@@@@@@@@@@@@@@@@@

 日本共産党というのは世界の自由主義先進国においては存在すること自
体が珍しい政党である。ところが、2017年3月18日時点で、日本共産党は
衆議院で21議席を占めている。

コミンテルンの日本支部として生まれ、数々の武装闘争、火焔瓶、戦後は
GHQの保護を受けて暗躍し続け、凶暴な事件を引き起こしたが、路線を
転換するや平和護憲運動とかの珍妙な論理をでっちあげて、左翼労働組
合、教員組合、マスコミ、そして司法界に浸透した。

昨今の『安保法制』、『共謀罪』反対運動も、表立たないが、運動の中核
にいるのは彼らだ。

なぜ、こんなことになったのか。戦後政治のトータルな誤謬の結果だが、
憲政上、合法的に存在している以上、このフランケンシュタイン的組織は
危険である。しかし、なにが彼らの思想の根底にあるのかを、ここで改め
て見極めておく必要があるだろう。

本書はオルテガの箴言から始まる。

「自分の観念の分限を守るようおのれを訓練することができないならば、
人間は自分のわがまま勝ってに身をまかし、自分を喪失していくであろう
(中略)。自分だけで存在していると信じているとすれば、(中略)自分
である以前に、妖怪じみた、幻影的な、想像上の存在物になってしまうで
あろう」(ホセ・オルデガ・イ・ガセット著、井上正訳『体系としての歴
史』、白水社)。

マルクスは人間の歴史が封建社会から資本主義社会を経て、プロレタリア
革命がおこり、共産主義社会に最終的に移行するなどとノストラダムスの
ような予言をした。
 
「ところが日本では、天皇制という封建社会が残っている。よって共産党
は、天皇制を転覆するブルジョア革命を行い、その後、社会主義革命に
よってプロレタリアートと農民の独裁を実現する」とした二段階革命論が
論壇の一翼をしめ、共産党も主張した。

講座派の『日本資本主義発達史講座』(岩波書店)には次のような文言が
並んでいる。

「明治維新は、直ちにブルジョア革命――有産者団の政権掌握――を意味し得
はしなかった。だが、それはその本質において旧封建的生産関係に対し
て、資本家的生産関係の支配的展開への、したがってまた、旧封建的支配
者に対して、資本家および『資本家的』地主の支配権確立への端緒を形成
したところの、画期的社会変革であった」

この文章は大江健三郎より下手な作文で、よほど頭の悪い人が書いたのだ
ろう、自分で何を言っているのか咀嚼さえされておらず、しかし、この程
度の作文でカクメイに走った一群の人たちがいたことは悲哀である。

安保条約の条文も読まないで60年安保反対を言っていた若者たちの時代
的熱狂に通底する心情はほのかに感じられるにせよ、消化不良をおこしそ
うだ。誰が書いたのか、調べると羽仁五郎だった。さもありなん。

さて、日本共産党は西側先進国において存在することさえ奇妙とされる。
 ドイツでは共産党は憲法違反として存在が認められていない。たとえ合
法的存在としてあっても、フランスや米国のように、誰も注目しないミニ
政党だからである。

自由主義諸国には結社の自由が認められているから、台湾にも「共産党」
がある。むろん、支持者は僅少、議席はない。

イタリア共産党は社会民主主義政党に変質したが、ソ連崩壊後に消滅し
た。英国では政治から排除され、フランス共産党は衰亡の危機にある。 
 なぜ欧米で共産党は消滅したのか、福富氏は言う。

「日本と違い共産主義政党が消滅した」(中略)大きな原因は「欧米の社
会主義政党は『フランクフルト宣言』や『オスロ宣言』で明確に共産主義
を拒否したからである」

日本のメディアが熱心には伝えなかった『フランクフルト宣言』(1951
年)には、「共産主義は、一党の独裁制を確立するだけの目的」しかな
く、また「国際共産主義は軍国的官僚制と恐怖警察制度に基盤をおいてい
る」と明言しているのである。

また社会主義インターの「オスロ宣言」(1962年)は、「共産主義は単な
る社会的、政治的、また経済的制度ではなく、自己の唱えるところが絶対
的に正しいと主張し、かつ全世界に拡大せんと懸命になっている一種の教
義である」と断言し、「共産主義諸国はもっとも激烈な反植民地主義のこ
とばを使っているが、数千万の人々を奴隷としてきている」とソ連、中国
を非難しているのである。

とどのつまり、福富氏が結論することは、「西欧の社会主義政党は、共産
主義の『思想』そのものを『教義』であり人間の『自由を否定』し」てい
るのであって、「人類社会と矛盾する思想を排除しようとしている点が日
本と異なっている」とする。

政治思想史の再学習となるので有益な書物である。

2017年03月23日

◆トランプ政権、過去最大の武器供与を台湾へ

宮崎 正弘
 


<平成29年(2017)3月22日(水曜日)通算第5231号>   

 〜トランプ政権、過去最大の武器供与を台湾へ
  総額18億ドル、対艦ミサイル、フリゲート艦など〜

トランプ政権は台湾の安全保障のため、要請のある武器供与を過去最大
の規模に拡大する模様である。

もっとも米国は「台湾関係法」により、台湾への武器供与を条約上も義務
付けているが、オバマ政権では北京からの抗議の少ない、「比較的穏やか
な武器」(ネッド・プライス前安全保障会議スポークスマン)に限定して
きた。

トランプ大統領は昨年12月3日に、蔡英文台湾総統からの祝賀電話を受
け、「ひとつの中国」という過去の歴代政権が取った原則には拘らないと
発言し、北京を慌てさせたが、その後、やや発言を修正し、浮上した北朝
鮮のミサイル実験以後は、中国との関係重視に傾いた。

4月6日には習近平主席をフロリダ州に招待し、北朝鮮問題を主議題に話
し合う予定が組まれている。

このため、事前の詰めの目的でティラーソン国務長官を北京に派遣した。

こうした情勢を踏まえ、台湾への武器供与は米中会談が終わるまで表面
化することはないが、ロイターは(3月18日)、政権内部で真剣に議論さ
れており、供与される武器は対艦ミサイル、フリゲート艦など、総額18億
ドルを超えるだろう、と報道した。

しかしながらトランプ政権は肝腎の政権高官人事が遅れに遅れており、
国務省、国防省ともに副長官、次官、次官補人事が難航している。

このため、実際に台湾への武器供与が決められるのは、2018年に持ち込む
ことになろうと観測筋はみている。