2018年03月29日

◆慰安婦像を韓国のキャンペーン・レベルを超えて

宮崎 正弘


平成30年(2018年)3月27日(火曜日)弐 通巻第5547号 

 慰安婦像を韓国のキャンペーン・レベルを超えて
  中国が情報戦の効果的武器として活用、「超限戦」の道具に

先月、マニラの幹線道路ロハス・ブルーバードの海岸沿いの遊歩道に、突
如建立された「慰安婦像」を撮影してきた。付近の散歩者や釣り人は誰一
人、その像が何を意味するかを知らなかった。

フィリピンは米軍によって四十万人が虐殺され、さらには韓国人がフィリ
ピン女性を騙して生ませた子供を放置し、大きな社会問題となっている。
 そのフィリピンとほとんど関係のない「慰安婦像」を建てたのは華人グ
ループだが、かれらが北京とつながって国際的規模で謀略を展開している
と、アジアタイムズ(3月24日)に鋭い分析を寄稿したのはジェイソン・
モーガン麗澤大学準教授である。

モーガン準教授は早稲田大学に留学、日本史で博士号を持つ学究だが、次
の分析を続ける。

「中国の情報戦略の一環として、韓国がはじめた慰安婦像キャンペーン
を、韓国の思惑を超えて中国が国際的に展開する謀略に着手した。韓国の
動機は短絡的な『反日』で国民を糾合する手段でしかないが、中国はこれ
を在外華僑の政治集団に指令し、カナダで、米国で反日キャンペーンを展
開し、従来の国連での反日工作や東南アジアでの反日キャンペーンから、
さらに北米、とりわけリベラルの多い西海岸、反意地メディアが集中する
被害海岸で、南京問題の展示やら慰安婦問題でのキャンペーンを急増させ
た」という。

目的は明らかである。」

「中国がアメリカで慰安婦キャンペーンを展開するのは日米離間が戦略的
目的である」。

そうした背景を軽視して、徒らに、或いは感情的に中国を批判しても始ま
らない。謀略には謀略をもって対応するという戦略性が日本に求められて
いるのではないか。

2018年03月28日

◆中国人民銀行は誰が一番の実力者なのか

宮崎 正弘

平成30年(2018年)3月27日(火曜日)通巻第5646号 

中国人民銀行は誰が一番の実力者なのか
  周小川総裁15年君臨のあと、どうやら郭樹清が総裁より実力派

周小川は中国の人民銀行(中央銀行)総裁ポストに15年、国際金融に通
じ、世界的な顔でもあり、中国の金融財政政策に辣腕と振るってきた。

周小川は朱容基の弟子にして、国際経済に明るく、胡錦涛、習近平という
2つの政権を乗り切った。

 周小川の引退に伴い、中国共産党はさきに、易剛を新総裁に任命した
が、同銀行の党書記ポストは空白だった。周小川は、総裁と党書記を兼ねた。

さらに「改革」と称して中国は「銀行監査委員会」と「証券監査委員会」
を統合し、「銀行証券監査委員会」とし、その長にベテランの郭樹清を充
てた。郭は周小川のもとで、副総裁を務めてきた。

他方、経済政策を所管する国務院から政策決定権を取り上げた習近平は
「金融安定発展小委員会」なる新組織を設立し、その長には劉?を充てる。

ややこしいが、整理すると、組織の輻湊と権限の分散は混乱状態にみえ、
じつは全ての最終決定権は、習の信頼が厚い劉?に収斂される構造がみえ
てくる。

チャイナマネーがいま世界を覆い尽くし、ウォール街もシティも、中国の
中央銀行の政策決定に多大な関心を抱く時代となって、ちょっとした機構
改革さえも、西側メディアの関心事となった。
     
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「独裁皇帝」は中国人の歴史的体質に染みこんだ「必然」なのだ
  暴力革命、国土の荒廃より独裁政治による社会の安泰が大事という考え方

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石平『なぜ中国は民主化したくてもできないのか』(KADOKAWA)
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石平氏の前作『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』(PHP新
書)と併せ、本書によって『石平・歴史学』の双璧がなった。
 本書を読了し、長年の謎が2つ解けた。

第一は中国における徳川家康ブームというミステリアスな現象の根幹にあ
る、中国人の深層心理の不可思議さがなかなか理解できなかった。

上海でも北京でも広州でも空港の書店には山岡荘八の長編小説『徳川家
康』の中国語版が積み上げてある。昆明空港で、ある時、樋泉克夫教授と
書店に入ると、目の前で中国人のビジネスマンが『徳川家康』を購入し
た。ロビィでは別のビジネスマンが他の巻を小脇に抱えている。日本では
『三国志演義』が広く人口に膾炙されているが、中国は逆だ。

「この現象は何でしょう?」

「長期安定政権の秘訣を知りたいのでは」とかの会話が弾んだ記憶がある。

第二は、ちょっと飛躍するかも知れないが、過去十年の欧米の動き、とく
に対仲外交への姿勢の変化だった。

すなわち「人権」にあれほど五月蝿かったフランスもドイツも、そして米
国も英国も、習近平に対して「人権」問題をほとんど口にしなくなった。
このことが不思議でならなかった。いったい西洋民主主義政治のレゾン
デートルを軽視してまで中国に歩みよる欧米人の頭の中で、カシャカシャ
と金銭計算機の音が鳴るような、あからさまな打算の源泉はなにか、彼ら
が欲しいのはチャイナマネーだけではない筈だろう。

石平氏は、この謎に挑むかのように、中国人の体質をわかりやすく解きほ
ぐし、「皇帝政治」の復活、すなわち習近平の「任期無期限」「新しい皇
帝の誕生」というのが「終身主席体制」であり、これが中国史に連続する
「歴史の必然だった」と結論するのである。

具体的にみていこう。

「皇帝独裁の中央集権制」では「官僚への任命権と意思決定権を握る皇帝
が絶対的な権力者」であり、他方、「皇帝には最高権威としての地位も付
与された。それは、皇帝が持つ『天子』という別の称号」(中略)「中国
の伝統思想において、森羅万象・宇宙全体の主はすなわち『天』というも
のだが、皇帝はまさに『天の子』として『天からの任命=天命』を受け、
この地上を治める」のである(57p)

かくして中国の皇帝は天命を受けた天子であり、唯一の主権者ゆえに、
「皇帝は自らのやりたいことが何でもできる絶対権力になるが、(中略)
この絶対的権威と権力こそが、皇帝とその王朝を破滅へと導く深い罠に
なっている」(58p)

万世一系の天皇伝統と、中国とはまさにシステムが異なり、「皇帝」とは
諸外国の歴史にあった「ツアー」であり、「キング」、「ディクテイ
ター」であっても、決して天皇ではない。日本の天皇は「祭祀王」であっ
て権威があるが、権力はない。
 
石平歴史学は次に習近平独裁皇帝がなぜ現代中国に、それこそ自由陣営か
らみれば、歴史に逆行する時代錯誤でしかない、近代的摩天楼とハイテク
産業が林立し、世界貿易に輸出王として傲慢に君臨し、大学生が毎年
800万名も卒業してゆく、この現代中国に、独裁政治がなにゆえに必要
なのかを説く。

「長い歴史のなかで、『聖君と仁政さえあれば嬉しい』というような『聖
君』と『仁政』に対する待望論が、いつの間にか『聖君と仁政がなければ
困る』という『聖君と仁政の不可欠論』と化し、『聖君・仁政』の思想は
『皇帝独裁の中央集権制度』を正当化するための最大の理論となった」
(89p)

なんというアイロニーだろう

易姓革命の中国では、絶対的権力は絶対的に腐敗し、絶対的に破綻する。
その度に、王朝と眷属は九類に至まで粛清され、大量の殺戮が全土に展開
され、すなわち魯迅が言ったように「革命 革革命 革革革命」となって
きた。

石平氏はつぎのように演繹する。

「皇帝政治によって天下大乱が招かれた結果、この天下大乱の悲惨さを知
り尽くした中国人は逆に、天下の安定を維持して天下大乱を避けるための
役割を皇帝政治に期待し、皇帝政治を天下大乱と万民の生活安定の要とし
て守ろうとしているのである」(93p)

ナルホド、14億の民を統治する一種の逆説的智恵だが、さて習近平は明ら
かに「天子」ではないことも、同時に全国民が知っている。となると『習
近平独裁皇帝』の破滅は、国民が自ら大乱を望む危機が来れば、すなわち
経済的破滅がやってくれば、忽ち倒壊するリスクを同時に背負っていると
いうことになる。
       

2018年03月27日

◆中国の顔面認識ソフトはすさまじい技術進歩

宮崎 正弘

平成30年(2018年)3月26日(月曜日)通巻第5645号 

 中国の顔面認識ソフトはすさまじい技術進歩を遂げている
  「デジタル・レーニン主義国家」は国民をハイテクで管理しはじめた

日本のマイナンバーのデータが中国に流れた。下請け業者が孫請けに中
国人の会社に発注したからだ。

全米の連邦職員の名簿やデータは2年前に中国のハッカーに盗まれた。
 北朝鮮のハッカー部隊は、中国遼寧省の丹東と瀋陽のホテルを陣取っ
て、世界中にランサムウエアを仕掛け、身代金をビットコインで要求する。

よく考えてみると、北朝鮮の部隊にハイテクを教えたのは、おそらく中
国軍だろう。なぜなら2つの都市は北部戦争区(旧「瀋陽軍区」)の拠点
である。5年前に、この丹東から瀋陽まで列車に乗ったことがあるが、す
れ違った列車のことごとくが軍用で、なかには戦車を積んでいた貨物車が
あった。

10年前まで北京、上海などで特派員と会うときは、尾行を気にした。電
話も、たとえば江沢民をさすときは「黒メガネの叔父さん」とかの暗喩的
な記号で会話を交わしたが、盗聴されていたからである。

それが近年、尾行がなくなった。特派員たちの持っている携帯電話で、
移動先がGPSで把握できるからだ。いまではビッグデータで国民の生活
を監視し、たとえばクレジットカードの記録から、当該人物が何を買っ
て、どういう趣味があり、いつもの常連レストランまで把握する。

そして近年、顔面認識の精密な防犯カメラが全土津々浦々に設営され、
人権活動家や民主弁護士、外国要人の行き先、会った相手の特定まで行っ
ている。

つい3日前、筆者は乗り換えのためビエンチャンから北京空港に着いた。
驚かされたのは、乗り換えだけの旅行者にも顔面カメラを当てて、デジタ
ルで記録していたことである。通常、どの国でも荷物のセキュリティ
チャックはするが、乗り換え客の写真まで取るのは米国とイスラエルくら
いだろう。

『ザ・タイムズ・オブ・インディア』(2018年3月21日)が報じた。
「中国は『ハイテク全体主義時代』に突入した。公安がするサングラスに
は手配中の被疑者データと合致する人物と出くわすと、職務尋問、逮捕拘
束がすぐさま可能なテクノジーが内部に仕掛けられている」。

SNSへの監視もさらに厳重になった。

2015年以来すでに13000のウェッブサイトが閉鎖された。「民主主義」
「法治」「習近平」「自由」などと打ち込むだけで、通信記録が残り、公
安にマークされるシステムがすでに完了している。 

さすが国防費より国内治安対策費のほうが巨額という全体主義国家=中国
だけに、国民を監視下に置くことは統治に欠かせない必須絶対の条件とい
うわけである。

     
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将来の国家像を模索し、長期的な国家戦略を欠落させた日本
嘗ては孫氏以来の地政学、謀略を学んだ山鹿素行、吉田松陰らが輩出した

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ジョン・J・ミアシャイマー、奥山真司訳『なぜリーダーはウソをつくの
か』(中公文庫)
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戦後の日本は明治政府の指導者が燃えるように抱いていた将来の国家像。
その理想を模索し、しっかりと学問を磨き、試行錯誤を続けつつも構築し
た長期的な国家戦略を戦後日本はいつの間にか欠落させてしまった。

国家安全保障という思考レベルを理解できない、国際水準にとても達して
いない政治家、学者、ジャーナリストらが国家の政策を論じるのだから、
あらゆることが嘘めいている。

戦略がない政治家が国会の議席を占めると地方議会が問題とするべきモリ
カケとかの枝葉の議論に口角泡を飛ばし、ますます戦略的発想から遠の
く。バカを量産するシステムが、いまの日本の国政の現場で目撃できる。

しかし世界を見渡せば、かつてフランスにレイモン・アロン、ガロア将軍
らに代表される戦略家がいたように、欧米の政治現場では政策立案に際し
て。海洋戦略のマハン、地政学の大家マッキンダー。大本のクラウゼウィ
ツを学んだ。

これらは必須の軍学である。

日本にも孫氏以来の地政学、謀略を学んだ山鹿素行、その弟子筋にあたる
吉田松陰がいた。門下生が高杉晋作、伊藤博文、乃木希典、山縣有朋ら
だった。

戦後、アメリカの軍事的保護下で平和のぬるま湯に73年も漬かっている
と、ボケの程度は激甚なほどに劣化した。

いま米国には核戦略を解くコーリン・グレー、政治戦略を講じるミアシャ
イマー、日本に理解があるエドワード・ルトワックらがいる。国際政治で
は著名なこれらの戦略研究家らの名前が我が日本で読書人の間にも、さっ
ぱり知られないのは、知的怠慢というより知的頽廃ではないのだろうか。
 米国には浅はかな自称「戦略家」にブレジンスキーがいたが、かれは
「中国を取り込んでしまえば怖くない」などと主張していた。

本書の著者である国際政治の泰斗=ミアシャイマーは「危険な国際政治で
は国家はかわいいバンビになるよりゴジラになった方が良い」として、
「中国が東アジアの覇権を目ざしている」と『大国政治の悲劇』のなかで
対中脅威論を展開した。かれは同時に無批判にイスラエルを擁護するネオ
コンに対しても警鐘を鳴らした。

国家を統治し、国政をけん引する指導者は「嘘をつく」ものである。
 「ウソは国を動かすための有益なツールであり、しかもさまざまな状況
で使えるし、使うべきだ」という。しかも「リーダーたちは他国だけでな
く、自国民にたいしてもウソを使うのであり、彼らがそうするのは、それ
が最も自国の国益にかなうものであると考える」(文庫版163p)から
なのであり、それは正しい場合もある、と説く

 日本の国会議員は本書を噛み砕くように読んで、お茶に混ぜてでも服用
せよ!

             
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1709回】             
――「支那人に代わって支那のために考えた・・・」――内藤(16)
  内藤湖南『支那論』(文藝春秋 2013年)

              △

「支那現勢論」が『太陽』に掲載された同じ7月の29日から月を跨いだ8
月5日までの間、内藤は「大阪朝日新聞」にやや長文の「革命の第二争
乱」を発表し、北京を軸に北方を押さえる袁世凱の打倒を掲げて、南方を
基盤とする反袁勢力が武力に訴えて決起した第2革命を論じている。

およそ第一革命が「敵味方の間に憎悪心が割合に緩やかで」あることか
ら、戦乱の局面の大きさの割合に戦禍は惨烈というわけではない。だが第
二革命「個人的憎悪心が非常に激しくなった結果」として発生するだけ
に、「戦乱の禍は、どうしても非常に惨烈になるわけである」。

以上を基本に南方と北方の両勢力が置かれた客観情況を比較して見る
と、「南方の人心が既に戦乱に懲りておって、前回のごとく革命というも
のに対して興味を持っておらぬ、各地の商務総会などが戦乱に反対の意見
を発表しておるのでも分る、それで前回のごとくそういう財源になる人々
から援助を得ることが難しくなっておる」。


つまり袁世凱打倒の旗印を掲げたのはいいが、肝心の軍資金を厭戦気味の
企業家が拠出したがらなくなったわけだ。これに対し北方は「支那中部の
大都会を占領しておる」ことに加え列強からの借款を受け、「各国の代表
者などもとにかく現在の袁世凱をして統一せしむるということを希望する
点」などからして、「袁世凱の今日はむしろ清朝の末路に優っておると云
うことが出来る」。

以上を根拠に、内藤は南方の反袁勢力より袁世凱を擁する「北方の方が
幾らか有利である」と判断した。ここで勝敗のカギを握る海軍の動向に注
目し、「支那の海軍というのは格別有力なものではないけれども、とにか
く長江の連絡を取るぐらいの力はあるので、今日もその挙動は南北の勢力
を支配するものになる」とした後、軍備・戦術・戦略の3点から中国の特
殊性を考えた。

「支那のように軍備の発達しない国」においては軍備・戦術・戦略は「密
接に関係しない」。「大局」こそが重要になるというのだ。「それで支那
でも昔から天下を統一した英雄などは、皆この大局を第一に重んじ、いよ
いよ戦争となれば戦略を最も重んじ、そうして戦術はそれほどなる値打ち
をもっておらぬ」のである。

たとえば1946年から3年続いた国共内戦にしても、軍備・戦術・戦略の
どれをとっても?介石が毛沢東に勝っていたに違いない。文化大革命にし
ても、党でも政府でも実権を握っていたのは劉少奇であり、毛沢東は権力
中枢から外されていた。

蒋介石にしても劉少奇にしても、毛沢東を叩き潰せる客観条件は十分に
整っていたはず。にもかかわらず勝者は毛沢東だった。ということは、や
はり「昔から天下を統一した英雄などは、皆この大局を第一に重んじ、い
よいよ戦争となれば戦略を最も重んじ、そうして戦術はそれほど大なる値
打ちをもっておらぬ」との内藤の指摘は、現代にも通じるようだ。

ホラでも妄想でも「大局」に立った大戦略を前にしては、巧妙精緻な戦
術なんぞは役には立たないということか。たとえば目下焦眉の急である一
帯一路である。ユーラシア大陸の東西を結び、これをアフリカにまで広
げ、あわよくば南北アメリカ大陸まで包み込んでしまおうという「大局」
――この場合は、大風呂敷というべきだろうが――を前にしては、やはり個々
の戦術では如何にもヒ弱だ。

確かに「海洋における自由航行」という主張は正しい。だが、それだけで
は脆弱が過ぎる。力のない正義なんて屁の役にも立たないんです。

閑話休題。第二革命を押さえつつある袁世凱陣営だが、列強からの借款
にも限度あり。戦乱で徴税もままならず。財政基盤が弱いことは「支那の
ために由々しき大事」といえそうだ。《QED》
          

2018年03月26日

◆新大統領補佐官は「タカ派のなかのタカ派」

宮崎 正弘

平成30年(2018年)3月25日(日曜日)弐 通巻第5644号 

 ジョン・ボルトン新大統領補佐官は「タカ派のなかのタカ派」
  この人事は米国の「対中貿易戦争」への宣戦布告に等しいのか

 トランプ大統領は、マクマスター安全保障担当補佐官を更迭し、新しく
ジョン・ボルトン元国連大使(その前は国務次官)を指名した。この大統
領安全保障担当補佐官というポストは、議会承認が不要なため、これで確
定である。

かつてボルトンはイランの核武装疑惑に立ち向かい、とりわけロシアと交
渉して、国連での制裁決議の裏工作をなした。そのとき、ボルトンがロシ
アの国連大使に言ったことは「イランの核武装という悪夢は、アメリカへ
の脅威というより(距離的にも近い)ロシアへの脅威のほうが強いのです
よ」。

その後、イランのナタンズにあった核施設はコンピュータウィルスをイス
ラエルの防諜機関が仕掛け、開発を数年遅らせた。

ボルトンの持論は北朝鮮の絶対的な非核化である。「平壌が応じないので
あれば、先制攻撃をなすべきだ」とトランプに進言してきた。
日本にとって、これほど強い味方があろうか。

ジョン・ボルトンは中国を明確に敵視する論客であり、グローバリストの
巣窟である国務省や、NYタイムズなどリベラルなメディアからは嫌われ
てきた。

なぜならボルトンは自由・法治を信奉し、祖国の国益を優先させ、自由世
界を守るためには台湾を防衛せよと主張し、ウォール街のように国益より
も自分の利益のためなら、自由世界の一員であろうとも、台湾など切り捨
てても構わないというグローバリズムと激しく敵対してきたからである。

ところが日本のメディアは米国のリベラル新聞が敵視するボルトンを鸚鵡
返しに「危険人物だ」と酷評しているのだから、始末に負えない。

ジョン・ボルトンは中国の軍事的脅威をつねに警告してきた米国の保守陣
営を代表する論客でもある。それほどボルトンは北京から畏怖され、恐れ
られているようで、同時にボルトンは北朝鮮に対して「非核化が絶対の条
件」と発言してきた。

また在沖縄海兵隊を「台湾へ移転」を唱えた。元国連大使として辣腕を振
るったボルトンは、アメリカの言論界でも「タカ派のなかのタカ派」と言
われた。

おりしもトランプは中国に対して鉄鋼、アルミに高関税を課したばかり
か、ほかの1500品目を対象として、総額600億ドル相当の高関税を付与
し、中国が「収奪」した不当な利益を回収するとした。

中国へのスーパー301条適用に対して、中国の猛反発は凄まじく、報復と
して30億ドルの米国からの輸入品に高関税を課すとして息巻いている。と
ころが対象は農作物、ワインなど。

こういう報復、あるいは中国の経済発展を効果的合法的に食い止める手段
は、嘗て日本のハイテク産業を弱体化させた「スーバー301条」の適用で
あり、それを進言した対中タカ派のなかにジョン・ボルトンも加わってい
るようである。

ボルトンの噂がワシントンに流れ始めたとき、中国は対米特使として劉?
を派遣していたが、冷遇された。劉?は習近平に尊重されるエコノミスト
で、國際金融に明るく、昨年度から政治局員のメンバーとなり、全人代で
副首相兼任になった。 


▲トランプは考えたのは超弩級の発想の転換だ。

じつはトランプは最初からボルトンを国務長官に宛てようとしていたフシ
が濃厚なのである。

初代安全保障担当大統領補佐官はフリンになったが、その組閣中にもボル
トンはトランプタワーに出入りし、またティラーソン国務長官の解任の噂
が流れていた過去数ヶ月間にも、ホワイトハウスに頻繁に出入りしてきた。

しかし国務長官はハト派の多い議会承認が必要なポストであるため、共和
党内のバランスを顧慮し、大統領選挙を戦ったミット・ロムニーなどに政
治劇演出を兼ねた打診を行うというジェスチャーにトランプは興じた。

そのあとに、キッシンジャーを呼んで懇談し、ロシアとの交渉術に長けた
ティラーソンを国務長官に指名した。その時点での最大の理由は、ロシア
との宥和、雪解け。最終目的は中国を封じ込めるための「逆ニクソン・
ショック」を狙っていたからである。

つまりロシアを陣営内に取り込み、中国を孤立化させる梃子にプーチンを
利用する。そのためにはプーチンと個人的にも親しいティラーソンが適役
というわけだった。

奇想天外と思うなかれ、過去の歴史は予想外の同盟がいくども組まれてき
たではないか。日英同盟、日独伊三国同盟、日英同盟の破綻。独ソ不可侵
条約、日ソ不可侵条約。。。。。。。。。。


 ▲次なる外交目標はプーチンとの蜜月演出ではないか

トランプは選挙中からプーチンへ秋波を送り続け、政権発足当時も、ロシ
アとの関係改善におおいなる熱意と意欲を示した。

この外交方針の転換を不快とする国務省、共和党主流派、そしてメディア
が、一斉にトランプの「ロシアゲート」なる架空の物語をでっち上げ、ト
ランプとプーチンの間を裂いた。しばし米露関係は冷却期間が必要となった。
つまり、トランプが企図しているのは「オバマ前政権の政治全否定」である。

北への「戦略的忍耐」が金正恩をつけあがらせた。貿易交渉、WTO、
TPPなどは、アメリカの工業力を一段と弱体化させるではないか。
 中国へ「エンゲージメント」(関与)で積極的に近付いたのはブッ
シュ・シニア時代からで、クリントン政権は中国の大甘だった。
つぎのブッシュ・ジュニアはせっかくの中国封じ込めを対テロ戦争のため
に、逆戻りさせ、「戦略的パートナー」に格上げした。

オバマはニコニコと中国にやさしい顔をしていたら、南シナ海の七つの当
初が中国軍に乗っ取られていた。後期にようやく「アジアピボット」を口
先で言ったが、とき既に遅かった。

そこでトランプは考え出したのは、超弩級の発想の転換だった。

北朝鮮を、中国封じ込めの先兵に利用できないだろうか。習近平と金正恩
の仲は最悪、平壌が豪語する「全米を射程に入れた核ミサイル」とは、
「全中国をカバーできる」という逆の意味がある。

トランプの対中敵視政策は本物である。

その第一弾が米中貿易戦争、つぎは人民元の為替操作非難ではないだろう
か。そして中国の次なる報復手段は保有する米国国債の売却、ウォール街
へのパニック・ミサイル発射をほのめかすことになるのではないか?
 
   
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【知道中国 1707回】      
――「支那人に代わって支那のために考えた・・・」――内藤(14)
  内藤湖南『支那論』(文藝春秋 2013年)

           △

結局のところ「袁の腰がさだまらないために」、諸外国の銀行団も借款の
出しようがない。

いわば「支那の統一」は袁世凱の覚悟次第ということになりそうだが、
「つまるところ金を以て統一するか、金無しに人物の出るのを待ちて統一
するか、列国はその統一に達する道行きを見物するのにどこまで辛抱が出
来るのであろうか、これが今日支那の将来について注意すべき事柄であ
る」とする。

ところで内藤は統一問題を超えて中国の将来の可能性について、次のよう
に説く。

「一体、支那みたような国は、自ら自分の位地を真正に知悉したならば、
政治も経済も世界各国に開放する方が、却って自分の独立を確保する所以
であるので、些々たる体面論などを喧しく言うのは、全く日本などのやり
かたにかぶれた最も愚な政策である」

「日本などのやりかたにかぶれた最も愚な政策である」との指摘について
はともかくも、「自ら自分の位地を真正に知悉し」て「政治も経済も世界
各国に開放する」ことによってこそ「自分の独立を確保する」ことができ
るとの指摘は、やはり傾聴に値するだろう。

いまから30年前の1978年末、トウ小平は、建国から30年余りに亘って対外
閉鎖を続けていた毛沢東路線を捨て「世界各国に開放する」方向に大きく
舵を切った。だが、経済のみでしかなく、政治は共産党独裁のままだっ
た。それはそうだろう。?小平の開放は共産党独裁堅持が大前提にあった
からだ。いわば政治不自由・経済自由――いわば共産党を批判しない限り、
経済活動の自由を許す――というものだからである。

強力な中央集権独裁政権によって社会を安定させ外資の呼び込みを狙う。
社会の長期的安定が確保されているからこそ、日本やら欧米などの外国企
業は安価な労働力を求めて資本と先進技術を持ち込む。かくして中国は世
界の工場に大変身し、やがて世界の大消費市場に転換し、経済大国へと大
変身した。これを経済発展の中国モデルとするなら、現在の東南アジアを
振り返った時、中国モデルの「優等生」がカンボジアになろうか。

フン・セン首相は総選挙という「民主的手段」によって30年余りに亘って
カンボジアに君臨している。司法は政権の走狗となり果てたようだ。
野党の解散処分は飽くまでも「合法的」に行われ、批判がましい政治家は
次々に事実上の国外追放の憂き目に遭わせる。かくて社会が「安定」すれ
ばこそ、中国を筆頭とする外資が次々に導入され、経済成長が続く。

カンボジアの隣国であるタイにしても、2005年から10年余に亘って続い
た国王支持を掲げる反タクシン派対タクシン支持派――これを言い換えるな
ら既得権擁護派対新興勢力、国王のシンボルカラーである黄シャツ派対タ
クシン支持派の赤シャツ――の対立でエンドレス状況の国内混乱を2014年に
国軍がクーデターに決起することで鎮静化させ、黄シャツ派の指導者を刑
務所に送り込み、赤シャツ派のシンボルであるタクシン実妹のインラック
元首相を国外に送り出し、プラユット暫定政権は「右と左を切り捨て」た
うえで国内不満を押さえ込んでいる。

総選挙の実施時期は次々に先送りされ、2018年6月予定が11月に。先月の
国会では2019年初めの実施となった。

プラユット暫定政権の一連の振る舞いは、どう考えても民主的とは言い
難い。だが、クーデター前の10年に較べ抜群の安定状況にあることは確か
だ。それが2月19日に発表された2017年暦年の実質GDPは4%超。タイの
GDPが2年連続で4%超は10年振り――という結果に現れているといえる。

最近10年程のASEAN諸国の経済成長率をみても、最高値を示すヴェトナム
を筆頭に各国が軒並みに好調を維持しているようだ。独裁権力による政権
の長期安定化が経済成長を呼ぶという中国モデルがASEAN諸国に感染する
ことを防ぐ手立てはないものか。


【知道中国 1708回】 (内藤15)

「支那の時局について」の発表から1年弱が過ぎた大正2(1913)年7月1日
の『太陽』に、内藤の「支那現勢論」が収められている。

建国からこの時点まで、中華民国の政治は袁世凱専制に向って進んだ。12
年末の選挙で革命組織の同盟会を改組した国民党が圧勝し、袁世凱の政権
基盤が動揺を来し、年が明けた13年3月には国民党の実質的指導者であっ
た宋教仁が暗殺される。

孫文を中心とする元同盟会メンバーなどが袁政権打倒を掲げ、13年7月に
「第二革命」と呼ぶ武装蜂起を敢行した。

ちょうど混乱のさなかに、内藤は「支那現勢論」を世に問うたわけだ。ち
なみに、宋教仁の盟友で知られる北一輝は、宋暗殺の黒幕は袁世凱ではな
く孫文だと主張している。

この問題については、北の『支那革命外史』を読む際に改めて考えること
にしたい。

いわば大混乱の最中に綴られた「支那現勢論」で、「袁に対する国民党の
反対が激しく成って来て、否応無しに、威力を以て圧迫せねば、袁自身の
地位さえ危険に瀕するところから」、「いずれの邦にも革命後には必然起
るところの暗殺時代を生」ぜしめ宋教仁暗殺を決断した。それも「袁のご
とき真の度胸なき政治家の取る方法としては、余儀無きことであ」る。

「支那がとうてい統一せらるべきものとして考うる以上は、袁の態度は必
然来たるべきものと見るより外に致し方は無いのである」が、「反対党と
いうのも、意気地がないが、袁の政策も依然として無方針である」から混
乱は続くと見る。

そこで幕末の混乱を収拾し明治政府発足へと向かった我が国の動きと比較
して、「気が早いだけに、日本は早く纏まったが、支那はも少し纏まりが
遅いものと見ねばならぬ」として、日本的尺度で相手を捉えるべきではな
いことを説く。この点は、21世紀が18年過ぎた現在にも通じる警句だろう。

とどのつまり「統一も出来ず破裂もせぬ結果として、暗殺時代がさらに継
続することは、毫も疑われない」。「支那人のごとく、元来、臆病な人間
には、暗殺の利き目が一段と烈しいから、今後も随分と爆裂弾で以て、大
勢を変化せしむるかも知らぬ」と予測した後、「不愉快に、不活発に、統
一事業が進歩して行くというのが支那の将来である」と予測する。

また明治維新を例に、革命成功の暁には必然的に「外国の勢力に対する屈
従時代」がやって来ると説き、中華民国においては「第一に借款条約で屈
従し、第二には蒙古問題で屈従しかけており、いずれ、次には、西蔵問題
で屈従するであろう」と、まさに「屈従時代に這入りつつある」としたう
えで、日本政府は袁世凱派と孫文を軸とする反袁派の政争に深入りするこ
となく、「最も平穏に日本の東洋平和の政策を決定し、尤も安全にこれを
実行するということは、甚だ必要であろう」。

だからこそ、「屈従時代を利用する」というようなリアルな考えを持つ必
要があろうと説く。だが「今の日本政府には、こういう考えのありそうに
も思われない」。

「日本では、朝野ともに支那の政争を野次馬的に眺めて、わいわいと騒ぎ
まわるものの、自分の国でも、そのために政府と民間と互いに理窟を言い
合うて、自分の国で大いになすべきことのあることを遺却しておるかと思
う」とし、「これくらい外事について気楽でなければ、近頃の大問題であ
る財政行政の整理は出来ないのであろう」と皮肉る。

中国問題のみならず「外事」は万事他人事なのだ。そう、昔も今も。

中華民国の混乱に関する見解は一先ず措き、「日本では・・・自分の国で
大いになすべきことのあることを遺却しておるかと思う」とは、我が国で
現在まで繰り返されてきた非生産的な中国論議の非生産性の原因を指摘し
た警句だと思う。

たとえば最近の習近平による一強体制構築の動きに関しても、「自分の国
で大いになすべきことのあることを遺却しておる」ゆえに、国会はモリカ
ケ問題で空転を続け、働き方改革も頓挫寸前。メディアではハデに報道が
飛び交う。
情報は大量に生産され、大量に消費され・・・て、オシマイ。     
    
《QED》

2018年03月21日

◆中国の経済侵略はアジアばかりではなかった

宮崎 正弘


平成30年(2018年)3月17日(土曜日)通巻第5632号  

 中国の経済侵略はアジアばかりではなかった

  すでにアフリカに10000社が進出、ジブチ軍事基地も拡張へ

 マッキンゼーの最新の調査では、アフリカ大陸に進出した中国企業
(はっきりと中国人がオーナーと登録されている企業だけで)は1万社。
なかには1500人の現地人を雇用する建設会社もある。

これらの多くは中国人の「移民」である。系列にアフリカ現地子会社を抱
えているところも目立つため、こうした「中国系」を含めると2万社を超
えるのではないかと米国のアフリカ研究者らも見積もる。

米国が神経を尖らせるのはジブチである。米軍基地の隣に中国は軍事基地
を建設し、すでに数千名が駐屯、近い将来に1万人規模になって、以後、
アフリカ東海岸進出の拠点とするのではないか、と疑心暗鬼だ。

米海兵隊のトーマス・ウォルドハイザー提督は「明らかに中国はアフリカ
沿岸諸国への軍事的プレゼンスを強めようとしている。西側にとって脅威
となりかねない」と警告しており、またティラーソン国務長官は「中国か
らの負債と引き換えに、アフリカ諸国は主権を喪失している」と述べた。

そのためにティラーソン国務長官はアフリカを歴訪中だった。旅の途中で
トランプ大統領の「解任」を知らされ、一度はワシントンに戻ったもの
の、3月31日までは職にとどまるとしており、残りの訪問予定国である
ジブチ、エチオピア、ケニア、チャド、ナイジェリアを訪問しなおすので
はないかとする観測もある。

2018年03月20日

◆中国の経済侵略はアジアばかりではなかった

宮崎 正弘


平成30年(2018年)3月17日(土曜日)通巻第5642号  

 中国の経済侵略はアジアばかりではなかった
  すでにアフリカに1万社が進出、ジブチ軍事基地も拡張へ

マッキンゼーの最新の調査では、アフリカ大陸に進出した中国企業(はっ
きりと中国人がオーナーと登録されている企業だけで)は1万社。なかに
は1500人の現地人を雇用する建設会社もある。

これら多くは中国人の「移民」である。系列にアフリカ現地子会社を抱え
ているところも目立つため、こうした「中国系」を含めると2万社を超え
るのではないかと米国のアフリカ研究者らも見積もる。

米国が神経を尖らせるのはジブチである。米軍基地の隣に中国は軍事基地
を建設し、すでに数千名が駐屯、近い将来に1万人規模になって、以後、
アフリカ東海岸進出の拠点とするのではないか、と疑心暗鬼だ。

米海兵隊のトーマス・ウォルドハイザー提督は「明らかに中国はアフリカ
沿岸諸国への軍事的プレゼンスを強めようとしている。西側にとって脅威
となりかねない」と警告しており、またティラーソン国務長官は「中国か
らの負債と引き換えに、アフリカ諸国は主権を喪失している」と述べた。

 そのためにティラーソン国務長官はアフリカを歴訪中だった。旅の途中
でトランプ大統領の「解任」を知らされ、一度はワシントンに戻ったもの
の、3月31日までは職にとどまるとしており、残りの訪問予定国である
ジブチ、エチオピア、ケニア、チャド、ナイジェリアを訪問しなおすので
はないかとする観測もある。

2018年03月19日

◆米中貿易戦争は「破局」

宮崎 正弘



平成30年(2018年)3月16日(金曜日)弐 通巻第5641号  

 米中貿易戦争は「破局」。中国は対米交渉陣を立て直しへ
  明日、王岐山(火消し請負人)を国家副主席へ選出。対米交渉のトップへ

 トランプが発動した中国製鉄鋼、アルミ製品への25%、10%課税に引き続
き、知的財産権の侵害による損失を見積もり、IT製品などへ報復関税を
かける旨を発表した。これはトランプの対中貿易戦争宣言に等しい。

慌てた中国は「米中貿易戦争は破局でしかない」として、急遽、劉鶴と楊
潔チを米国に派遣したが、冷遇された。

 いまの米国内の雰囲気は中国敵視である。

中国は虎の子の米国輸出急減を恐れ、対米交渉陣の立て直しを意図して、
開催中の全人代で17日、「待望の」王岐山(「火消し請負人」という異名
をとる)を国家副主席へ選出し、以後。対米交渉のトップに据える。現国
家副主席の李源潮は引退へ追い込まれる。李源潮は江蘇省書記を経て、政
治局員だったが、第十九回党大会で外され、団派としては胡春華に託する
しか選択肢はなくなった。王洋は政治協商会議主席という閑職に回された。

数年前から米国は連邦政府職員ならびに連邦政府の施設での華為技術
(ファウエイ)製品使用を禁止してきた。さらに先週、この華為技術を取
引関係が深く、「中国の代理人」の疑いの濃いブロードコムの米社クアル
コム買収を「国家安全保障」を理由に拒否した。


米中貿易戦争を予測するウォール街では連日株価下落に見舞われている
が、トランプは反ウォール街の騎手ラリー・クロドーを大統領国家経済会
議委員長に選出し、ティラーソン国務長官も解任して対中対決の姿勢を鮮
明にしたばかりである。
          
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1704回】                   
――「支那人に代わって支那のために考えた・・・」――内藤(11)
  内藤湖南『支那論』(文藝春秋 2013年)

              ▽
ものはついで、である。内藤を離れ、もう少し中国人と領土という問題に
ついて考えてみたい。

1840年のアヘン戦争敗北を機に、富強こそが中国を救う唯一の道だと思
い到る。辛亥革命によって満州族の清朝を追い払い漢族の中華民国を建国
したのも、毛沢東が北京に共産党政権を立ち上げたのも、さらには大躍進
も文化大革命も、よくよく考えて見ると富強を求めての試みだといえよ
う。「外国からバカにされてなるものか」の一心に突き動かされた彼らで
はあったが、富強に向けた“壮大な実験”は失敗の連続でしかなく悲劇を重
ねただけ。依然として外国から侮られるままだった。

だが70年代末のトウ小平登場によって、事態は一変する。彼が決断した対
外開放によって、アヘン戦争敗北から1世紀半ほどの時を越え、初めて、
やっと富強への道を歩き始めたのである。

たしかに国内に格差、独裁権力の横暴、汚職、環境破壊、水不足、道徳
的退廃、社会秩序の崩壊など大難問が山積してはいるが、やや大袈裟に表
現するなら、そんなことは長い中華帝国の歴史においては日常茶飯事と
いったところ。アヘン戦争を起点とする混乱・頽廃・苦悩に較べたら大騒
ぎするほどのこともなかろう。いまや習近平政権という超強権政権が掲げ
る「中華文化の偉大な復興」「中国の夢」の旗印の下、世界を足下に睥睨
した栄光の中華帝国への道を邁進しているのだ。

1958年の大躍進において毛沢東が持ち出した「超英?美」――世界第2位の
経済大国のイギリスを追い越し、アメリアに追い付け――の宿願は果たされ
つつある。アメリカを凌駕する超大国を目指せ。

アヘン戦争以来の屈辱を晴らせ。我らを侮ったヤツラに復讐せよ。栄光の
中華帝国の再興だ。かつての中華帝国が占めていた最大限の版図こそ、
「ずっと昔から我われのもの」であり、本来の持ち主が所有を主張しただ
け・・・経済力という白日夢に、彼らは酔い痴れるばかり。

だから、彼らが持つ古代の数々の史書が指し示す広大無辺な版図は古代
の人々の妄想の産物でしかなく、近代国際社会では受け入れられないこと
を断固として知らしめるしかない。だが、残念なことに異常なまでに熱く
のぼせ上がってしまった彼らのアタマを冷やす効果的な方法は見つかりそ
うにない。

かつて毛沢東は、「99回説得しても判らなかったら、100回目には叩きの
めせ」と言ったというが、いまや世界は「99回説得」することすらできそ
うにない状況なわけだから、「100回目」など不可能に近い。「頼みの
綱」のアメリカにしたところで北朝鮮に手古摺っている始末なわけだか
ら、多くを望むことはムリだろう。ならば他力本願だが、ニュートンの古
典力学に頼るしかない。つまり上ったモノは必ず下がる、である。

一帯一路にしたところで、習近平政権が掲げる構想がすべて実現したと
したら、世界の物流は確実に北京にコントロールされ、世界の秩序を差配
する力は北京の掌中に納まってしまいかねない。そうなったら最後、最悪
の事態を想定するなら、自由も民主も人権も吹き飛んでしまう。

そこで最近なって日・米・豪・印の4カ国で反一帯一路構想が急浮上して
いるようだが、ここで考えるべきは、中国人の行動パターンである。彼ら
はクチでは勇猛果敢でハデに100をブチ上げるが、ハラの中では50から30
で手を打つ傾向があるようだ。

いわば彼らは高飛車に出て交渉相手に「満額回答」を突き付けるが、実際
は「条件闘争」に持ち込むことを狙う。おそらく習近平自身、一帯一路の
完全達成など考えていないはず。現に掲げる構想の3割達成であっても、
シメシメ。オンの字というところだ。《QED》

2018年03月18日

◆中国は対米交渉陣を立て直しへ

宮崎 正弘


平成30年(2018年)3月26 日(金曜日)弐 通巻第5541号  


米中貿易戦争は「破局」。中国は対米交渉陣を立て直しへ
  明日、王岐山(火消し請負人)を国家副主席へ選出。対米交渉のトップへ

トランプが発動した中国製鉄鋼、アルミ製品への25 %、10 %課税に引き続
き、知的財産権の侵害による損失を見積もり、IT製品などへ報復関税を
かける旨を発表した。これはトランプの対中貿易戦争宣言に等しい。

慌てた中国は「米中貿易戦争は破局でしかない」として、急遽、劉鶴と楊
潔チを米国に派遣したが、冷遇された。

いまの米国内の雰囲気は中国敵視である。

中国は虎の子の米国輸出急減を恐れ、対米交渉陣の立て直しを意図して、
開催中の全人代で明日17日、「待望の」王岐山(「火消し請負人」とい
う異名をとる)を国家副主席へ選出し、以後。対米交渉のトップに据え
る。現国家副主席の李源潮は引退へ追い込まれる。李源潮は江蘇省書記を
経て、政治局員だったが、第十九回党大会で外され、団派としては胡春華
に託するしか選択肢はなくなった。王洋は政治協商会議主席という閑職に
回された。

数年前から米国は連邦政府職員ならびに連邦政府の施設での華為技術
(ファウエイ)製品使用を禁止してきた。さらに先週、この華為技術を取
引関係が深く、「中国の代理人」の疑いの濃いブロードコムの米社クアル
コム買収を「国家安全保障」を理由に拒否した。

米中貿易戦争を予測するウォール街では連日株価下落に見舞われている
が、トランプは反ウォール街の騎手ラリー・クロドーを大統領国家経済会
議委員長に選出し、ティラーソン国務長官も解任して対中対決の姿勢を鮮
明にしたばかりである。
         
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1704回】                   
――「支那人に代わって支那のために考えた・・・」――内藤(11)
  内藤湖南『支那論』(文藝春秋 2013年)

          ▽

ものはついで、である。内藤を離れ、もう少し中国人と領土という問題に
ついて考えてみたい。

840年のアヘン戦争敗北を機に、富強こそが中国を救う唯一の道だと 思い
到る。辛亥革命によって満州族の清朝を追い払い漢族の中華民国を建 国
したのも、毛沢東が北京に共産党政権を立ち上げたのも、さらには大躍
進も文化大革命も、よくよく考えて見ると富強を求めての試みだといえよう。

「外国からバカにされてなるものか」の一心に突き動かされた彼らでは
あったが、富強に向けた“壮大な実験”は失敗の連続でしかなく悲劇を重ね
ただけ。依然として外国から侮られるままだった。

だが70年代末の?小平登場によって、事態は一変する。彼が決断した対
外開放によって、アヘン戦争敗北から1世紀半ほどの時を越え、初めて、
やっと富強への道を歩き始めたのである。


たしかに国内に格差、独裁権力の横暴、汚職、環境破壊、水不足、道徳
的退廃、社会秩序の崩壊など大難問が山積してはいるが、やや大袈裟に表
現するなら、そんなことは長い中華帝国の歴史においては日常茶飯事と
いったところ。

アヘン戦争を起点とする混乱・頽廃・苦悩に較べたら大騒ぎするほどのこ
ともなかろう。いまや習近平政権という超強権政権が掲げる「中華文化の
偉大な復興」「中国の夢」の旗印の下、世界を足下に睥睨した栄光の中華
帝国への道を邁進しているのだ。

1958年の大躍進において毛沢東が持ち出した「超英?美」――世界第2位の
経済大国のイギリスを追い越し、アメリアに追い付け――の宿願は果たされ
つつある。アメリカを凌駕する超大国を目指せ。アヘン戦争以来の屈辱を
晴らせ。我らを侮ったヤツラに復讐せよ。栄光の中華帝国の再興だ。かつ
ての中華帝国が占めていた最大限の版図こそ、「ずっと昔から我われのも
の」であり、本来の持ち主が所有を主張しただけ・・・経済力という白日
夢に、彼らは酔い痴れるばかり。


だから、彼らが持つ古代の数々の史書が指し示す宏大無辺な版図は古代
の人々の妄想の産物でしかなく、近代国際社会では受け入れられないこと
を断固として知らしめるしかない。だが、残念なことに異常なまでに熱く
のぼせ上がってしまった彼らのアタマを冷やす効果的な方法は見つかりそ
うにない。

かつて毛沢東は、「99回説得しても判らなかったら、100回目には叩き
のめせ」と言ったというが、いまや世界は「99回説得」することすらでき
そうにない状況なわけだから、「100回目」など不可能に近い。「頼みの
綱」のアメリカにしたところで北朝鮮に手古摺っている始末なわけだか
ら、多くを望むことはムリだろう。ならば他力本願だが、ニュートンの古
典力学に頼るしかない。つまり上ったモノは必ず下がる、である。

一帯一路にしたところで、習近平政権が掲げる構想がすべて実現したと
したら、世界の物流は確実に北京にコントロールされ、世界の秩序を差配
する力は北京の掌中に納まってしまいかねない。そうなったら最後、最悪
の事態を想定するなら、自由も民主も人権も吹き飛んでしまう。

そこで最近なって日・米・豪・印の4カ国で反一帯一路構想が急浮上して
いるようだが、ここで考えるべきは、中国人の行動パターンである。彼ら
はクチでは勇猛果敢でハデに100をブチ上げるが、ハラの中では50から30
で手を打つ傾向があるようだ。

いわば彼らは高飛車に出て交渉相手に「満額回答」を突き付けるが、実際
は「条件闘争」に持ち込むことを狙う。おそらく習近平自身、一帯一路の
完全達成など考えていないはず。現に掲げる構想の3割達成であっても、
シメシメ。オンの字というところだ。《QED》

2018年03月17日

◆アンチ・グローバリストが勢揃い

宮崎 正弘


平成30年(2018年)3月16日(金曜日)通巻第5640号  

 トランプ政権、これで対中国強硬派、アンチ・グローバリストが勢揃い
  ティラーソン国務長官解任劇に隠れたが、コーン経済諮問委員長も去った

 トランプ大統領に経済政策を進言する大統領国家経済諮問委員会のゲ
リー・コーン委員長は、対中国製品課税強化に抗議する意味を込めて、政
権を去った。トランプは中国の鉄鋼、アルミ製品に25%、10%の関税をか
けると発表した直後だった。コーンはウォール街偏重のきらいがあった。

新しく大統領国家経済諮問委員長に指名されたのはラリー・クドロオ(70
歳)である。

クドロオ? あのアンチ・チャイナの代表的論客?

その通り。かれは中国へ高関税を課すのは「当然の罰」であり、「なぜな
ら中国は国際的貿易ルールをまもってこなかったからだ」とCNBCの番
組で堂々と強硬なコメントで言ってのける対中タカ派のチャンピオンである。

まして中国への貿易戦争では「ブッシュ政権が対イラク戦争で『多国籍
軍』を形成したように、対中貿易戦争の多国籍軍を形成するべし」と発言
してきた。ラリー・クドロオは自由貿易に懐疑的であり、一貫してトラン
プのアンチ・グローバリズムを支持してきた。大きな政府は不要という
レーガン流の思考回路の持ち主。このポストは上院の指名承認が要らない。

これで大統領貿易諮問委員会のピーター・ナヴァロとともに、国務省から
は対中宥和派のティラーソンが去り、ポンペオCIA長官が就任すること
に決まった。

正式にポンペオが指名承認されると、対中タカ派が政権に勢揃いすること
になる。USTR代表はやはり対中強硬派のロバート・ライトハイザー
だ。かれはNAFTAの再交渉に専念している。
 
ラリー・クロドオはフレッシャー大学で歴史学を専攻、プリンストン大学
では公共政策と国際関係を学んだが、経済学では博士号を取得していな
い。だがレーガン政権下で、予算局(当時はディビット・ストックマンが
局長だった)にポストを得た。

ユダヤ人だが、若き日に、神への信仰を失って一時はアルコールと薬漬け
になったことを本人も認めている。しかしカソリックの信仰に復帰し、ア
ルコールを経った。このプロセス、まるでブッシュ・ジュニア大統領と
そっくりである。

以後、FRBではボルカー議長の下でエコノミストを努め、ウォール街に
転身してからはベア・スターンズ、ペイン&ウェーバーなどの名門証券で
エコノミストを務めた。

近年はCNBCテレビで「ラリー・コーナー」を担当し、経済予測で名前
を売ってきた。

2018年03月15日

◆トランプの米朝首脳会談受諾の決断は

宮崎 正弘


平成30年(2018年)3月13日(火曜日)通巻第5633号

トランプの米朝首脳会談受諾の決断は45分で決まった
  マティス国防長官もマクマスター安全保障担当補佐官も「慎重に時間
をかけて」。

 素人ゆえに、決断は迅速だった。

大統領執務室での韓国の代表団との会談には、マティス国防長官、ケリー
首席補佐官もマクマスター安全保障担当補佐官も同席していた。

韓国の特使が、「ところで金正恩主席は米国大統領との直接会談も望んで
いる様子です」と遠慮気に米朝首脳会談の打診に話が及んだとき、「応じ
よう」とトランプは返答し、慌てた周囲は「慎重に。もっと時間をかける
べきだ」と大統領を説得した。

ところが、「おれは決めた。おれはもう決めたんだ」とし、外国にいた
ティラーソン国務長官にはすぐに知らされた。

一般的に外交のベテランだと、まず省内を説得し、閣内を統一し、周辺国
とりわけ同盟国に根回しをした上で決断にいたる。トランプ大統領は、こ
の外交回廊をバッサリとすっ飛ばした。
大事なことはすぐに決断するべきというディール感覚が、かれを走らせた。

さてここで米国の外交・防衛論壇で浮上してきたのは「イランの核開発凍
結」とセットという発想である。

イランは過去十五年、西側の北朝鮮との交渉、その遣り方をじっと観察し
分析してきた。イランは「西側の目的は北朝鮮の核廃棄だが、その交渉プ
ロセスをみる限り、誰もリスクをとろうとしない」と認識した。つまりイ
ランは「十五年という騙しの時間が必要である」と分析した気配が濃厚で
ある。

もちろん、北朝鮮とイランは決定的な差違がある。北はすでに20発の核兵
器を保有しており、しかもウラニウム型とプルトニウム型のふたつのタイ
プを保有している。

イランは濃縮されていないウラニウム原料の97%を廃棄している。

戦略研究家のルトワックが発言している。

「米国にとってはイランの核武装のほうが危険が高い。北朝鮮との交渉で
は核廃棄問題ばかりか化学兵器のシリアへの輸出を止めさせ、ミサイルの
中東などへの輸出を禁止し、非武装地帯における火砲の撤去など、多くの
議題がある」(NYタイムズ、3月11日)。

またジョン・ヒル(当時の北朝鮮との交渉責任者)は言う。

「現状で核ミサイル開発を凍結させ、将来の廃棄への工程を北朝鮮に迫る
ことになるのだろう」

はたして、その前にトランプ・金正恩会談はほんとに開催されるのか?
 
        
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1702回】            
――「支那人に代わって支那のために考えた・・・」――内藤(9)
  内藤湖南『支那論』(文藝春秋 2013年)

                  △

革命派の理論的支柱で当時における最高の古典学者だった章炳麟が説く中
華民国は「漢代の郡県であった所を境界として論究する」から、漢に含ま
れていた朝鮮や安南も中華民国の国土に組み込まれてしまう。

そこで「中華民国というものを承認するということは、幾らかこの中華民
国が理想であった時代の主張も承認するという傾きになる」。

つまり「中華民国が今日のままで承認を求めるとすれば、この章炳麟の議
論は、単に一個の学者の理想であって、今日の中華民国とは何の関係も無
いものであるということを明らかに宣言すべきである」。そうでないなら
中華民国承認は朝鮮や安南を中華民国領と認めることになる。

にもかかわらず、中華民国の側は「この章炳麟の議論は、単に一個の学者
の理想」でしかなく国家の方針とは異なるなどとは明言していない。

ということは、常識的に考えるなら中華民国の主張する領土は章炳麟の考
えの延長線上にあるということだろう。ならば日本としては、「つまり中
華民国というものの理想と言おうか、あるいは主義と言おうか、そういう
点から見て軽々しく承認を与えるということは慎まねばならぬ」。

それというのも相手が隣国であるだけに、国家承認という問題は我が国の
将来にも大きく関係してくる。やはり承認の時期と中華民国の主張とに十
二分に注意を払う必要があるということだろう。

ここで歴史を振り返ってみると、どうやら日本では政府も民間も一面では
堪え性がないという欠陥を持つように思える。

たとえば日韓慰安婦問題にしても、理不尽にも粘りに粘り、常套的に前言
を翻す相手に対し、これが「最後の最後だ」「不可逆的だ」などと公言し
ながら手を打つのはいい。だが、相手はまたまた「ちゃぶ台返し」である。

そこで「ゴールを動かすな」と抗議するが、最初から自分の都合でゴール
を動かすことを信条とする相手に対し、「まあ、仕方がないか」と応じて
しまう。北方領土をめぐる日ソ・日ロ交渉、東シナ海の海底資源に関する
日中交渉などなど。おそらく昭和16年12月8日に収斂して行く日米交渉に
しても、日本側の事情は似通ったものではなかったか。

話を内藤に戻す。

内藤は「日本の政府の方針の善悪はここに何も論じないけれど」と断
わった後に「どうかすると一方に極端に走っておるものが、またその反対
の方面に走ることがある」と疑義を示しながら、「初め支那の政体にまで
干渉しようというような考えをもっておったものが、一旦手を焼くとなる
とどこまでの無干渉であ」ると、半ば諦め気味な論調に転じた。

その一例として内藤は「日本の貿易上の利害に非常に大関係のある」満洲
に「革命党の軍隊が上陸して戦争をおっ始めても、それさえ懐ろ手して何
もしないという非干渉政策」を挙げ、「無干渉」な日本政府の振る舞いを
難詰する。

かくして中華民国という「新共和国の承認などに対しても、むやみに非干
渉政策に傾いたまま、注意すべき種々の重大なることを全く見遁してしま
うという虞れがないのでもない」と、注意を喚起した。

共産党政権――その典型として「中華民族の偉大な復興」を掲げる習近平
政権はなおのこと、チベットであれ、モンゴルであれ、はたまたウイグル
であれ17世紀末から18世紀末までの清朝盛時の最大版図を自らの本来の国
土とし、経済力と軍事力を背景に「失地回復」の動きを見せる。

こういった姿を、漢代の版図を中華民国の本来の領域と見做した章炳麟の
考えに重ね合わせると、国土に対する漢族の“信仰”は近代社会における国
土に対する世界の共通認識とは相容れないということだろう。

たまさかアブク銭を手にしたことから有頂天になり、国土に対する自ら
の「土俗信仰」を振り回すとは・・・恐れ入谷の鬼子母神。
だが、やはり恐れてばかりはいられない。《QED》
          

2018年03月14日

◆トランプの米朝首脳会談受諾の決断

宮崎 正弘


平成30年(2018年)3月13日(火曜日)通巻第5633号

トランプの米朝首脳会談受諾の決断は45分で決まった
  マティス国防長官もマクマスター安全保障担当補佐官も「慎重に時間
をかけて」。

 素人ゆえに、決断は迅速だった。
 大統領執務室での韓国の代表団との会談には、マティス国防長官、ケ
リー首席補佐官もマクマスター安全保障担当補佐官も同席していた。

韓国の特使が、「ところで金正恩主席は米国大統領との直接会談も望んで
いる様子です」と遠慮気に米朝首脳会談の打診に話が及んだとき、「応じ
よう」とトランプは返答し、慌てた周囲は「慎重に。もっと時間をかける
べきだ」と大統領を説得した。

ところが、「おれは決めた。おれはもう決めたんだ」とし、外国にいた
ティラーソン国務長官にはすぐに知らされた。

一般的に外交のベテランだと、まず省内を説得し、閣内を統一し、周辺国
とりわけ同盟国に根回しをした上で決断にいたる。トランプ大統領は、こ
の外交回廊をバッサリとすっ飛ばした。

大事なことはすぐに決断するべきというディール感覚が、かれを走らせた。

さてここで米国の外交・防衛論壇で浮上してきたのは「イランの核開発凍
結」とセットという発想である。

イランは過去15年、西側の北朝鮮との交渉、その遣り方をじっと観察し分
析してきた。イランは「西側の目的は北朝鮮の核廃棄だが、その交渉プロ
セスをみる限り、誰もリスクをとろうとしない」と認識した。つまりイラ
ンは「十五年という騙しの時間が必要である」と分析した気配が濃厚である。

もちろん、北朝鮮とイランは決定的な差違がある。北はすでに20発の核兵
器を保有しており、しかもウラニウム型とプルトニウム型のふたつのタイ
プを保有している。

イランは濃縮されていないウラニウム原料の97%を廃棄している。

戦略研究家のルトワックが発言している。

「米国にとってはイランの核武装のほうが危険が高い。北朝鮮との交渉で
は核廃棄問題ばかりか化学兵器のシリアへの輸出を止めさせ、ミサイルの
中東などへの輸出を禁止し、非武装地帯における火砲の撤去など、多くの
議題がある」(NYタイムズ、3月11日)。

またジョン・ヒル(当時の北朝鮮との交渉責任者)は言う。
「現状で核ミサイル開発を凍結させ、将来の廃棄への工程を北朝鮮に迫る
ことになるのだろう」

はたして、その前にトランプ・金正恩会談はほんとに開催されるのか?
 
         
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1702回】            
――「支那人に代わって支那のために考えた・・・」――内藤(9)
  内藤湖南『支那論』(文藝春秋 2013年)

        △

革命派の理論的支柱で当時における最高の古典学者だった章炳麟が説く中
華民国は「漢代の郡県であった所を境界として論究する」から、漢に含ま
れていた朝鮮や安南も中華民国の国土に組み込まれてしまう。

そこで「中華民国というものを承認するということは、幾らかこの中華民
国が理想であった時代の主張も承認するという傾きになる」。

つまり「中華民国が今日のままで承認を求めるとすれば、この章炳麟の議
論は、単に一個の学者の理想であって、今日の中華民国とは何の関係も無
いものであるということを明らかに宣言すべきである」。そうでないなら
中華民国承認は朝鮮や安南を中華民国領と認めることになる。

にもかかわらず、中華民国の側は「この章炳麟の議論は、単に一個の学
者の理想」でしかなく国家の方針とは異なるなどとは明言していない。

ということは、常識的に考えるなら中華民国の主張する領土は章炳麟の考
えの延長線上にあるということだろう。ならば日本としては、「つまり中
華民国というものの理想と言おうか、あるいは主義と言おうか、そういう
点から見て軽々しく承認を与えるということは慎まねばならぬ」。

それというのも相手が隣国であるだけに、国家承認という問題は我が国の
将来にも大きく関係してくる。やはり承認の時期と中華民国の主張とに十
二分に注意を払う必要があるということだろう。

ここで歴史を振り返ってみると、どうやら日本では政府も民間も一面では
堪え性がないという欠陥を持つように思える。

たとえば日韓慰安婦問題にしても、理不尽にも粘りに粘り、常套的に前言
を翻す相手に対し、これが「最後の最後だ」「不可逆的だ」などと公言し
ながら手を打つのはいい。だが、相手はまたまた「ちゃぶ台返し」である。
そこで「ゴールを動かすな」と抗議するが、最初から自分の都合でゴール
を動かすことを信条とする相手に対し、「まあ、仕方がないか」と応じて
しまう。北方領土をめぐる日ソ・日ロ交渉、東シナ海の海底資源に関する
日中交渉などなど。おそらく昭和16年12月8日に収斂して行く日米交渉に
しても、日本側の事情は似通ったものではなかったか。

話を内藤に戻す。

内藤は「日本の政府の方針の善悪はここに何も論じないけれど」と断
わった後に「どうかすると一方に極端に走っておるものが、またその反対
の方面に走ることがある」と疑義を示しながら、「初め支那の政体にまで
干渉しようというような考えをもっておったものが、一旦手を焼くとなる
とどこまでの無干渉であ」ると、半ば諦め気味な論調に転じた。

その一例として内藤は「日本の貿易上の利害に非常に大関係のある」満
洲に「革命党の軍隊が上陸して戦争をおっ始めても、それさえ懐ろ手して
何もしないという非干渉政策」を挙げ、「無干渉」な日本政府の振る舞い
を難詰する。

かくして中華民国という「新共和国の承認などに対しても、むやみに非干
渉政策に傾いたまま、注意すべき種々の重大なることを全く見遁してしま
うという虞れがないのでもない」と、注意を喚起した。

共産党政権――その典型として「中華民族の偉大な復興」を掲げる習近平政
権はなおのこと、チベットであれ、モンゴルであれ、はたまたウイグルで
あれ17世紀末から18世紀末までの清朝盛時の最大版図を自らの本来の国土
とし、経済力と軍事力を背景に「失地回復」の動きを見せる。

こういった姿を、漢代の版図を中華民国の本来の領域と見做した章炳麟の
考えに重ね合わせると、国土に対する漢族の“信仰”は近代社会における国
土に対する世界の共通認識とは相容れないということだろう。

たまさかアブク銭を手にしたことから有頂天になり、国土に対する自らの
「土俗信仰を振り回すとは・・・恐れ入谷の鬼子母神。
だが、やはり恐れてばかりはいられない。《QED》
          

2018年03月13日

◆トランプが金正恩と直接交渉へ乗り出す?

宮崎 正弘


トランプが金正恩と直接交渉へ乗り出す?
  中国とは貿易戦争を覚悟の鉄鋼に高関税、その一方で「TPP11」
が成立

硬直状態に風穴が空いた。

金正恩とトランプが「中国を抜きに」博打に打って出た。平昌五輪に代表
団を送り込み、実妹を事実上の使節団長としてソウルに派遣した北朝鮮は
文在寅韓国大統領をして「4月末までに板門店における南北首脳会談」を
約束させ、唐突に「雪解け」を演出した。

突然の歩み寄りという変化に、トランプ大統領はこの状況の激変に対応す
るかのように、「5月までに北朝鮮の金正恩と直接の首脳会談を受け入れ
る」と発表した。

金正恩のメッセージを口頭で伝えに行った韓国使節団が仰天し、日本は梯
子を外されたのではないかとすぐに安倍首相はワシントンに電話をかけた。

「拙速だ」「金正恩に騙される」「素人外交ゆえに危なっかしい」と、ト
ランプ大統領の衝撃の決定に対して、一斉に批判が巻き起こった。

日本のメディアの一部には、このトランプの豹変ぶりに驚愕して、当時同
盟国だったドイツが、抜き打ち的にソ連と不可侵条約を締結するにいた
り、平沼騏一郎は「国際情勢は複雑怪奇」と迷言を吐いて辞任にしたよう
に、独ソ不可侵条約の衝撃に比したところがあった。

しかし、おそらく一番慌てたのは習近平だっただろう。

この伏線には「同盟」の組み替えを意図した戦略上の変更があるのではな
いのか。

6カ国協議で主導権をとって、日本を蚊帳の外に置いてきた中国は、米国
を再び三度騙して、北朝鮮の時間稼ぎに結果的に協力し、さらには国連制
裁に加わって、あたかも北朝鮮を締め上げる日米の強い政策圧力に協力的
であるかのようなポーズを作ってきた。

その不誠実に、トランプ大統領のアメリカは腹に据えかねた。

トランプの急変は、中国に一言の相談もなく、こんどは中国が蚊帳の外に
置かれたのだ。中国の外交部も楊潔チ国務委員も事前に、トランプの激変
ぶりを予測してはいなかった。

それはそうだろう。米国の国務省も国防相も大統領の発言に驚きを隠せ
ず、CIAもFBIも事前にトランプの方針転換を予測していなかったの
だから。

 直前にトランプは主として中国からの鉄鋼、アルミにそれぞれ25%、
0%の高関税をかけると宣言し、大統領命令に署名した。対中貿易戦争宣
言である。このため、中国は周章狼狽し、劉?をすぐに米国に派遣した
が、成果はなかった。
 
他方で、日豪加など11ヶ国は米国抜きのTPPを成立させたが、米国は音
無の構えだった。


 ▲トランプは北朝鮮の逆利用を考えたのではないか

1971年7月15日のことを筆者は昨日のように覚えている。

時の米国大統領リチャード・ニクソンはソ連を封じ込める効果的手段とし
て、同盟関係を組み替え、中国を梃子とすることを思いつき、突如敵対し
てきた中国と国交を再開し、世界にニクソンショックを与えた。

トランプは深くニクソンを尊敬する大統領であり、オバマの「戦略的忍
耐」を批判し、「あらゆる選択肢は卓上にある」として北朝鮮制裁を強化
してきた。

 世間は「経済制裁が効いた結果だ」とトランプとの直越対話に乗りださ
ざるを得なくなった北朝鮮の孤独を言ったが、同時に多くの分析は「中国
派の張成沢を処刑し、実兄をマレーシアで殺害した非常な人間が、まじめ
に非核化などを考えては居ない。時間稼ぎに騙されるな」という意見が圧
倒的である。

しかしトランプは最初から自国の国務省を相手にしていない。

リベラルの巣窟、米国の外交をこれほどまで低下させ、劣化させたのが国
務省と総括しているトランプにとって、国務省に相談しないのは基底の方
針とみると、国務省がいかに慌てようと、そのことで動揺したりはしない。

ましてやティラーソン国務長官は、歴代高官とはことなり外務経験ゼロ、
むしろ敵対国や政情不安な国々のトップと複雑な駆け引きをしてきたタフ
ネゴシエーターである。ティラーソン国務長官の一連の発言が、かならず
しも国務省を代弁してはいなかったように。

トランプは考えたのだ。

最終的な米国の敵は中国である。その中国のパワーを減殺させるために
は、徒らに直接的な貿易戦争、技術移転阻止、スパイの摘発、中国企業制
裁だけでは効果があがらない。げんに中国は南シナ海を支配し、戦後の世
界秩序を大きく変えてしまった。
 

 ▲「中国が支配するアジアを受け入れるのか」と『フォーリン・アフェ
アーズ』

「中国が支配するアジアを受け入れるのか」と『フォーリン・アフェアー
ズ』にジェニファー・リンド(ダートマス大学準教授)が衝撃的論文を寄
稿した。

この論文を執筆したジェニファー・リンド女史(ダートマス大学準教授)
とは何者かを先にみておく必要がある。

彼女はマサチューセッツ工科大学卒業、若手の国際政治専門家。とくに日
本研究で知られ、長期に日本に滞在した経験がある。

曰く。「外交上、謝罪は重要だが、日本の場合、中国や韓国へ謝罪を続け
ることは日本国内の政治的混乱を引き起こすだけ」であり、「もう謝罪は
不要だ」と発言する気鋭の政治学者だ。基調はリベラルである。

リンド教授の「「中国が支配するアジアを受け入れるのか」と題する所論
の『フォーリン・アフェアーズ』論文の原題は「地域ヘゲモニーはいかよ
うになりつつあるのか」(WHAT REGIONAL 
HEGEMONY WOULD LOOK LIKE)であり、日本語訳
の題名はいささかニュアンスが異なるきらいがある。

ともかくリンド女史が言う。

「米国は東アジアでいまなお圧倒的な力を持つとはいえ、中国はその
ギャップを急速に埋めてきた。もっとも経済的危機と国内政治の失敗が中
国の勢いを減退させる可能性は残るものの、いまの趨勢が持続すると仮定
すれば、中国はアジアにおいて軍事的、経済的、政治的ヘゲモニーを確立
するだろう。

となると米国の従来の同盟国であるオーストラリア、日本、フィリピン、
韓国などが独自の防衛力を増やしつつも、米国以外との協力関係の増強に
向かうか、あるいは中国の支配を受け入れるかの選択を迫られるだろう」
(同誌より要旨を拙訳)。

この論文の指摘を待つまでもなく、中国の脅威はアジア諸国に拡大し、ア
セアン諸国並びにインドは中国を極度に警戒する態度に変質している。

中国は「侵略など毛頭考えない」と外交のリップサービスで標榜しなが
ら、一方では軍事的プレゼンスをいやますばかりか、経済的にアジア諸国
を圧倒し、文化的浸透を強めてきた。

いずれにしても、トランプの米国は南シナ海の中国支配を転覆させるほど
の意思も実力もなく、結局北朝鮮の核施設は攻撃せず、中国に任せていた
らまったく進捗せず、韓国はぬけぬけと反米的行動を取り、頼りになる日
本には肝腎の軍事力がないときている。

リンド女史はこうも続ける。

「中国は植民地主義など企図しないし、中国は近隣諸国とは友好親善とい
う平和的アプローチを進めると公言しているが、ヘゲモニーを確立する国
とは、典型的に地域の安全を優先させるものである。なぜならヘゲモニー
国家はライバルの力の増大を決して望まないからである」。

したがって中国は、日本がインドなどと防衛協力体制の構築強化を進める
ことに並々ならぬ関心を示すとともに、日本の国内政治に対しても異様な
関心を抱くのである。

日本が他国との軍事演習をおこなうたびに言葉を極めて非難し、すこしで
も防衛予算を増やし、装備を近代化しようものなら「日本に軍国主義の復
活」などと、声高に批判し続けるのも、これによって日本政治に親中派の
輪を拡げ、日本政府の決定を内部から攪乱させる高等な外交戦術とみるべ
きである。

こうした中国の増長に対して、日米も欧州も、いやアジア諸国もロシア
も、決定打を欠いた。

ならば状況を変える突破口として、トランプは米朝会談という「トラン
プ」(切り札)カードを切ったのではないのか。

2018年03月11日

◆安保顧問(元将軍)が米国に勧告

宮崎 正弘


平成30年(2018年)3月8日(木曜日)弐 通巻第5629号 

 パキスタンの背信? 安保顧問(元将軍)が米国に勧告
  タリバンに勝ち目はない。米国はタリバンとも和平交渉を始めるべきだ

 「アフガニスタンの戦局において、米国の勝利はあり得ない。そこに
は、いかなる希望もない。タリバンと和平交渉をなす方向を探した方がよ
いだろう」

こう言ってのけたのはパキスタン国家安全保障会議顧問のナセル・カー
ン・ジャンジュア元陸軍大将である。

しかしトランプはペンタゴンの勧告にしたがってアフガニスタンへ4600名
の増派を決めた。ペンタゴンの方針は、過去17年戦ったタリバンと、どう
しても勝利の決着をつけたいことであり、トランプの目的はアフガニスタ
ンに潜伏し、タリバンと連携するテロリストISのせん滅にある。

トランプ大統領とペンタゴンとの思惑は、一枚岩ではないが、アメリカの
世論といえば、アフガニスタンには関心が薄く、西側の安全を脅かすテロ
リストの戦争である。

そのために米国はアフガニスタン政権に軍事的経済的人道的支援をなし、
傀儡と言われたカルザイと現ガニ政権を支えて、すくなくとも首都カブー
ルの治安を死守してきた。

しかし、そのガニ(アフガニスタン大統領)ですら、タリバンとの話し合
いに米国は応じるべきと言っている。ガニは、タリバンが政党を組織して
選挙に参加するのなら、和平への糸口になると提言している(ワシントン
タイムズ、3月7日)。

パキスタンは、そのアフガニスタン支援の兵たんであり、米軍の橋頭堡で
ある。言ってみれば、支援してきた国々がアメリカを批判している構図で
ある。

米国がアフガニスタン戦争に踏み切ったのは911テロへの報復であ、当
時の世論は「アルカィーダをやっつけろ」だった。その首魁だったビンラ
ディンは、パキスタンの軍情報部がかくまっていた。

このため米軍特殊部隊は、かれらの盗聴網を出し抜いて、密かにイスラマ
バード上空から潜入し、パラシュートで降下、奇襲攻撃をかけビンラディ
ンを殺害した。

しかしアフガニスタンは、外人部隊のアルカィーダがいなくなっても、新
しいテロ組織が誕生していた。ISがシリアから大量に流れ込んだのだ。

オバマは撤退する決断ができず、ずるずると泥沼に足を取られ、アメリカ
ンファーストを唱えるトランプと交代した。

悪夢のような泥沼から這い上がる決断、すなわちニクソンがベトナム戦争
終結のために撤退を決断したように、いよいよトランプ政権にも迫られて
いることになる。

        
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
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 影響力はなきに等しいまでに落?した朝日新聞の権威
  それでも尊大な朝日はいつまで経営が維持できるのだろうか?

  ♪
桜井よしこ x 花田紀凱『朝日リスク』(産経新聞出版)
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「アカが書き、やくざが売って、バカが読む」。最近は『朝日を読むとバ
カになる』という標語が国民の間に浸透してきた。

それほど朝日はバカの集まりになった。

元『週刊朝日』の編集長だった川村二郎氏も『学があっても、バカはバ
カ』(ワック)を上梓されたが、朝日新聞記者の救いようがない体質につ
いて糾弾している。ほかにも永栄潔氏、長谷川熙氏ら朝日OBが。。。。。

書店へ行くと朝日批判が目白押し、韓国批判本と並ぶほどに多い。
 世の中、確かに変わって朝日が恐れられ、裁判という強迫を前に泣き寝
入りしたケースもおびただしく報告された時代が嘘のようになってきた。

朝日がねつ造した記事は、自ら誤りを認めて謝罪した吉田清司の嘘証言以
下、枚挙にいとまがない。

最近は早期退職を募集したら、退職金が7000万円とかで、もはや退職した
方が有利と希望者が殺到したというニュースもある。えっ、7000万円? 
朝日が小川栄太郎氏を訴えた金額より多いじゃないか。

それなのに朝日読者がまだ推定で500万弱いるらしい。押し紙を含めての
数字だろうが、なに地方都市のビジネスホテルへ行くとロビィにうずたか
く積まれているのは朝日新聞で「無料でお持ちください」と表示してあ
る。ちなみにほかの新聞は有料である。

さて本書は、桜井よしこ女史と花田「月刊HANADA」編集長とが、ゲ
ストに門田隆将、堤堯氏らを招いての対談と鼎談、そして座談会からな
り、メディアの行使する「筆の暴力」がいかにすさまじく、またいかに戦
えばよいかについて縦横無尽の討論が展開されている。

なにしろ門田氏は元『週刊新潮』のデスク、朝日批判はお手の物、『朝日
の天敵』と呼ばれたのは堤堯・元『文藝春秋』編集長だ。

この20年ほど、評者(宮崎)は堤氏と酒席をともにする機会が多いが、絶
対に「アサヒビール」は頼まない人である。天敵といわれたからには新聞
と関係がなくとも、ほかの銘柄のビールを飲むほどに徹底的である。
 内容は一言。「面白き、やがて哀れなるかな 朝日新聞」。