2017年07月18日

◆戦後出版界と歴史学界を画期する一大事件

宮崎 正弘



<平成29年(2017)7月17日(月曜日。祝日)通算第5358号>  

 〜これは戦後出版界と歴史学界を画期する一大事件である
  フーバー大統領回想録『裏切られた自由』、ついに邦訳が刊行〜

待望のフーバー大統領回想録『裏切られた自由』(草思社)の邦訳板刊行
が始まった。

同時にこの本を詳細に解説する渡邊惣樹『誰が第2次世界大戦を起こした
のか』(同)も出版され、戦後の歴史解釈が根底的にひっくりかえる。

ガリレオが、コペルニクスが、あるいはダーウィンがそうであったよう
に、世の中の通説を転覆させ、真実をのべることは勇気を必要とする。
アメリカ人が単純に信じ込む「米国=正義」に対して、そのタブーに正面
から挑戦したのが、フーバー大統領の回想録だからである。

真珠湾攻撃は事前に暗合が解読されていて、むしろ日本をけしかけていた
ルーズベルト大統領の陰謀だったことは、いまや周知の事実である。しか
し、日本の攻撃で一気にアメリカの厭戦ムードは吹き飛んだ。ルーズベル
トの狙いは当たった。
 
アメリカは孤立主義から大きく逸脱し、まずはヨーロッパ戦線に大軍をさ
しむけ、ナチス・ドイツ、ムッソリーニのイタリアと戦闘。西側を勝利に
導いた。いや、勝った筈だった。

ところが敵であるはずのロシアを支援し、あろうことか、戦後秩序はソ連
のスターリンが最大の裨益者となった。死力を尽くしたポーランドが共産
化され、チェコ、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリアばかりか、バルカ
ン半島に到るまでソ連が手に入れた。

極東では南樺太、全千島を手に入れても足りず、アジアは中国共産党の手
に落ち、朝鮮半島は南北に分断され、とどのつまりルーズベルトはソ連の
領土拡大に協力したことになる。

結果論の皮肉は、近年でもたとえば米軍がイラクに介入した結果、ISと
いうテロリストを産み、イラクはイランの影響下に入り、アフガニスタン
はタリバニスタンに変貌しつつあり、朝鮮半島では南が自ら赤化を望み、
いそいそと中国圏に戻ろうとしている。

フーバー大統領(任期1929−1933)はルーズベルト大統領に騙されてい
た。何かを仕掛けたなとは本能的に直感したが、当時、すべての密約は密
封され、フーバーにさえ「ハルノート」という最後通牒を日本に突きつけ
ていたことは知らされていなかった。

フーバーは書類、議会議事録、外交文書そのほかを緻密に検証し、20年の
歳月をかけて本書を書き残していた。

フーバーの言い分とは簡単に言えば「ルーズベルト外交は自由への裏切り
であった」ということである。

 
 ▲マルタで東西冷戦は終わった

東西冷戦は、ルーズベルトの失策がもたらした。そもそもルーズベルトの
失敗は、ソ連を国家承認した(1933年11月)ときから始まった。大統領就
任直後である。

それが世界に厄災を運び、ルーズベルト政権の周りはソ連のスパイと共産
主義者に囲まれて国策を次々とあやまった。

大胆にソ連に挑戦したのは1981年のレーガンの登場だった。

スターウォーズ計画、ミサイル防衛網を前面に出して、ソ連と対峙姿勢を
しめし、対抗策としてソ連は大軍拡にはしるのだが、経済力がついてこら
れず、あえなく頓挫。ペレストロイカ、グラスノスチを謳ったゴルバチョ
フが登場した。

1989年師走、ブッシュ大統領とゴルバショフはマルタの沖合のヨットで会
談し、東西冷戦が終結した。

共産主義者は思想的敗北から逃れるために環境保護、人権運動、フェミニ
ズム、少数性差別、反原発に流れ込み、日本でもその亜流がいまもメディ
アが牛耳っている。

さて、1938年3月8日に、フーバーはヒトラーと会見している。

「この会見でフーバーは、ヒトラーを狂信者であり、お飾りだけの愚か者
だとする欧米の報道が間違っていることを確信した。ヒトラーは自身の言
葉で国家社会主義思想に基づく経済再建を語った。情報の豊かさは彼の優
れた記憶力を感じさせるものだった」(渡邊解説本、64p)。

その前年、1937年にルーズベルト政権はシカゴで演説した。有名な『隔離
演説』である。しかも、この演説で、ルーズベルトは「国内の経済問題を
話題にしなかった。具体的な名指しは避けたものの、日独伊3国によって
世界の平和が乱されている、これを是正するためにはアメリカは積極的に
国際政治に関与しなけれはならないと訴えた」(同72p)。

1939年1月15」日、ナチスはチェコに侵入した。
 
「少なくとも軍事侵攻ではない。ハーハ(チェコ)大統領との合意によるも
のだった。さらに、フーバーが考える独ソ戦では、ドイツはソビエト侵攻
のハイウエイとなるチェコスロバキアを通らざるを得ないことは自明であ
る」(同83p)。

次はポーランドだった。

ここで英国のチャンバレンはポーランドの独立を保障する宣言を行った。
英米は、ドイツはスターリンとの対決に向かうと考えていたから、ポーラ
ンド回廊を通過するのは自然であり、このポーランド独立を英国が保障す
るということは、フーバーからみれば愚かな選択であった。


▲ルーズベルトがスターリンに譲歩したのはアメリカを不幸にした

ヒトラーは独ソ不可侵条約を結び、しかもソ連もポーランド侵攻に踏み切る。

「犬猿の仲であった独ソ両国の唯一の共通点。それが第1次大戦期に失っ
た領土回復を希求する強い思いであった」(同99p)

舞台裏では何回も複雑に執拗に交渉が続いたが、ポーランドの誤断も手
伝って、ついにナチスはポーランドへ侵攻する。

「この戦いがなければ日米戦争がおこるはずもなかった」が、ポーランド
の稚拙な対独外交が原因で、戦線が広がり、日米開戦への道が準備される。

その後の戦争の展開は周知の事実とはいえ、問題は「カイロ宣言」、「テ
ヘラン会談」から「ヤルタ」会談の密約、ポツダムへと米英ソの『密約』
が次々と進み、アメリカ国民は何も知らされないままルーズベルトとス
ターリンの謀議は進展し、途中からチャーチルはのけ者にされ、やがて病
魔に冒されたルーズベルトは正常な判断も出来なくなった。

トルーマンはルーズベルトから殆ど何も聞かされていなかった。原爆を保
有したことさえ、トルーマンは知らなかったのだ。

こうしてフーバー回想録は、アメリカの歴史学主流に投げつけられた爆弾
である。

彼らが『歴史修正主義』とレッテルを貼り付け非難してきたが、どちらが
正しいかは明らかであり、ルーズベルトの評価が地獄に堕ちているのだ
が、これを認めようとしない一群の学者とメディアが、真実をいまも覆い
隠しているのである。

渡邊氏は、解説書の最後を次のように結んでいる。

「中国と韓国は、日本を『極悪国』として捉え、歴史認識では日本の主張
を一切受け付けず、21世紀になっても非難を続けている。歴史の捏造が明
らかな南京事件についても、いわゆる慰安婦問題についても、アメリカは
プロパガンダであることを知っている。それにもかかわらず、アメリカが
日本を擁護しようとしないのはなぜなのか。それは、ルーズベルトと
チャーチルの戦争指導があまりに愚かであったからであり、その愚かさ
は、日本が(そしてナチス・ドイツが)問答無用に『悪の国』であったこ
とにしないかぎり隠しようがないからである。

歴史修正主義は、戦後築きあげられた『偉大な政治家神話』に擁護されて
いる二人の政治家(ルーズベルトとチャーチル)の外交に疑いの目を向け
る。ナチス・ドイツや戦前の日本が、胸を張れるほど素晴らしい国であっ
たと声高に主張しているのではない。極悪国とされている国を『歪んだプ
リズム』を通して見ることは止めるべきだと主張しているに過ぎない。

それにもかかわらず、歴史修正主義は枢軸国を擁護する歴史観だとのレッ
テルが貼られている。それは、ルーズベルトとチャーチルが引き起こした
戦後世界の混乱の真因から目を逸らさせたい歴史家や政治家がいるからで
ある)(同220p)。

 歴史の偽造やフェイクをまだ信じているガクシャは、本書を読むと顔が
引きつるだろうし、日本の論壇にまだ跋扈している左翼は卒倒するかも知
れない。

2017年07月15日

◆郭文貴の暗殺、強制送還は無理と分かって

宮崎 正弘



<平成29年(2017)7月14日(金曜日)弐 通算第5355号>  

 〜郭文貴の暗殺、強制送還は無理と分かって
   中国は法廷戦、宣伝戦をアメリカで仕掛けた〜

ノーベル賞受賞の劉暁波が病死して、世界は悲しみに沈んでいるが、中国
国内ではネットでの意見が削除され、胡耀邦死去直後に起きた民主化運動
の組織化はおきそうにない。未然にそれを防ぐために、劉暁波を刑務所か
ら出して一流病院に入院させ、病室をメディアに公開したりして、世論工
作を巧妙に展開した。

独裁者にとって次なる頭痛の種は米国へ逃亡して次々とメディアに登場
し、共産党高官の悪事をばらしている男、郭文貴である。

「暗殺するには有名すぎる」

「強制送還には米国は応じないだろう

となれば、郭の名声を地に落とすには、法廷を利用することだ。

中国は法廷闘争を命じた。パシフィック・アライアンス・ファンドは郭に
騙されて損害を出したとして8800万ドルの訴訟をニューヨーク地裁におこ
した。おなじく大手HNAも郭を提訴した。いまNY地裁だけでも15億ド
ルの損害賠償訴訟を起こされている。

つぎに高官の愛人、情婦などと書かれた有名女優等が名誉棄損で郭文貴を
訴えた。なかにはハリウッド女優人気7位という氾氷氷(Xmen 主
演)やベテラン女優の許晴らが含まれている。

薄煕来、周永康事件のおりに自家用機で女優を運んだなかにチャンツォ
イーが含まれたとして、彼女はそれを報じた在米メディアを名誉棄損、虚
偽報道で訴え勝訴したことがある。

郭文貴はニューヨークのど真ん中にペントハウスを構えるが、手元不如意
のため7800万ドルに売りに出している。買い手がつかない様子である。
 
(註 氾氷氷の「氾」には草冠。「氷」は「にすい」)

2017年07月14日

◆タイの新幹線、結局は「中国に発注へ

宮崎 正弘



<平成29年(2017)7月12日(水曜日)弐 通算第5351号>  

〜 タイの新幹線、結局は中国に発注へ
  ノンカイ ―― バンコク850キロのうち、最初の250キロ〜

 タイの軍人政権はながく保留してきた新幹線プロジェクトを、中国方式
で遂行すると決定した(サウスチャイナ・モーニングポスト、7月11日)。

バンコックから北北東へ850キロ、ラオスとの国境の町がノンカイ。ここ
から橋を渡り検問所を通るとラオスのビエンチャン郊外に達する。かなり
のトラックが物資を運んでいる。

タイ政府は中国との交渉で、ファイナンス、返済期間、利息のほか、労働
条件で2年間にわたって交渉を続けてきた。「一帯一路」の目玉にしたい
中国は、ファイナンス条件を呑んでいたが、問題は労働者である。

例によって囚人を投入し、現地労働者を雇わない。建設機材からセメント
を中国から持ち込む。いったい現地の利益とは何か。騒音と、中国人労働
者の輩出するゴミ、排便、食材の異質さ等。

あまつさえ囚人労働者は、プロジェクト終了と共に現地解散となる。この
人たちが住み着いてチャイナタウンを形成することは近未来の暗黒となら
ないのか。

この難問に中国側が折れたのは、すでに雲南省からラオスへの鉄道建設が
始まっており、この延長線でタイのノンカイへ繋ぎ、バンコクに達する
と、それから更に南へマレーシア、シンガポールまでつなげようという構
想を重視しているからだ。

まさに習近平の推進する「一帯一路」の目玉として大いなるプロパガンダ
としても使えるだろう。というわけで総額52億ドルという巨額の鉄道建設
が近く開始される。
         
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◆書評 しょひょう BOOKREVIEW 
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 習近平時代の現代中国を活写した記録ドキュメント
   一極支配を進める習政権は多くの障害を乗り切ることが可能か?

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濱本良一『世界を翻弄し続ける中国の狙いは何か』(ミネルヴァ書房)
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このシリーズは貴重な資料にもなる年代記的ドキュメント。いずれ歴史的
資料として存分な価値をもたらすであろう、中国研究家必携のシリーズ第
3弾である。

著者の濱本氏は読売新聞香港支局のころからの知り合い。中嶋嶺雄門下。
いまは秋田の国際教養大学教授として八面六臂の活躍をされている。北京
総局長時代にも北京で何回かお目にかかったが、その問題意識の鋭さにい
つも敬服した。

このシリーズの第1弾において濱本氏は中国が養光韜晦路線を修正したこ
とを明示した。多くのチャイナウォッチャーのなかで、初めての指摘だっ
たと記憶する。

すなわち、胡錦涛は北京五輪直前の経済的大発展に自信をつけて、「韜光
養晦、有所作為」とあったトウ小平路線を「積極有所作為」として、『積
極』を加味したのだ。

これを氏は、「必要とあれば強く自己主張する立場に変化した」のであ
り、最大の理由は「経済力と軍事力が備わってきたからである」

したがって「『中国は未来永劫に覇権をとなえない』など道徳的な美辞麗
句が得意な中国から聞こえる発言を鵜呑みにはできない。言行不一致が大
胆かつ平然と貫かれる一方で、仮面の下から次々と現れる中国を思い知る」

それが3万3390社も中国に進出した日本企業の認識にあるのか、どうかは
大いに疑問とするところだろう。

さて現代史資料として、記録を残す作業に没頭する氏の努力を称賛したい
が、本書のなかで評者(宮崎)がオヤッと思ったことが2点。これは個人
的な感想。

王岐山が、北京で会見した青木昌彦氏らの日本人にこういった。
 
「歴史研究に携わったことのある王氏が歴史学者の岡田英弘氏の著作を14
年に読んだことを披瀝する場面があった。中国の指導者が日本の中国歴史
研究者の著作を採り上げたのは異例だった」(312p)

王岐山は政治局常務委員に就任草々、周囲にトクヴィルを読めとさかんに
言っていたことは、世界のメディアが伝えた。

ところが、岡田氏の著作は少数しか知らなかったことで、じつは評者は生
前の岡田氏から聞いていたが、どの本なのか、特定ができなかった。濱本
氏は、おそらく、それは岡田氏の『世界史の誕生』(ちくまライブラ
リー)だと推定する。

もう一つ奇想天外な逸話。

ハリウッド映画買収に失敗し、本丸のホテル、テーマパークの売却に踏み
切った中国の大富豪、王健林にまつわることだ。
彼が率いる集団は「万達」である。

「習近平総書記の実姉で実業家の齋橋橋氏と夫のトウ家貴氏が、国内外で
不動産・小売り・ホテル開発など幅広く手がける王健林氏の率いる「万達
集団」(本社・大連、資産総額350億ドル)の非上場の株式を多数保有
し、13年10月に永年の知り合いの実業家に転売していたことが米紙
『ニューヨークタイムズ』(4月28日)の報道で判明した。

保有した09年当時の時価は2860万ドルだったが、4年後に売却した 際に
は8・4倍の2億4000万ドルに上った」(263p)。

同様に温家宝・首相(当時)の娘も相当量の万達株を保有していた。
「王健林氏の事業拡大の過程を取材し、王氏が党中枢に接近するために、
高官一族とその周辺に自社株を有利な価格で売却したか、贈与した可能性
を(ニューヨークタイムズが)強く示唆した」のだった。(264p)

 現代中国のダークサイドにも光を当てている。
       

2017年07月13日

◆中国の軍略、つぎの目標は・・

宮崎 正弘



<平成29年(2017)7月12日(水曜日)通算第5350号>  

〜中国の軍略、つぎの目標は「無人、無形、無声」の兵器開発
    ドローン、ミサイル、兵士ロボット開発が欧米レベルに迫っている〜

想像より早いテンポで中国の軍事ロボット開発が進んでいる。

飛行機の無人化、ミサイル技術、とりわけAI開発とあいまった命中精度
の向上、実戦に投入される軍事ロボットの研究開発である。

米国のシンクタンク「ジェイムズタウン財団」が発行する「チャイナ・ブ
リーフ」(7月6日号)に専門家のエルサ・カニア女史が次の報告してい
る。(エルサは国防省出身、カーネギー・清華大学シンクタンクをへて中
国に精通する)。

技術確信の基軸になるのはAI(人工知能)開発で、多くの理科系の中国
人学生は米国へ留学し、とくにシリコンバレーで起業し、あるいは市民権
を得て米国のハイテク企業に就労している。

米国はいまごろになってこの実態に驚き、規制を検討し始めた。

すでに無人機の分野で、中国が商業用ドローンでは、品質はともかく、生
産量で世界一。その廉価には日本のメーカーも歯が立たず、日本企業や個
人の多くが中国製ドローンを利用している。

つぎの中国の軍略目標は「無人、無形、無声」の兵器開発であり、関連す
るAIに焦点が当てられている。

第1に中国軍が想定している次世代戦争とは「無人兵器」が主力となるこ
とである。

第3に中国はお得意の「人海戦術」の未来板として想定しているのが「飽
和攻撃」と言われる中国独特の戦術の拡大になる。つまり無数の無人機
を、大量に送り込む遣り方。具体的には数百、数千の無人機が米空母を攻
撃に向かわせるというシナリオである。

米国の専門筋はこれを「ミツバチ攻撃」と命名しているが、すでに中国人
民解放軍系の新聞・雑誌・研究誌、論文などで多くの成果が報告されている。

「集中攻撃」ばかりか、大量の無人機は偵察、電波妨害にも転用可能であ
り、その方面の研究も「軍民融合」(軍産協同)路線で進んでいる。どこ
かの国のように「軍学協同ハンタイ」という声はない。
 
         
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 ◆樋泉克夫のコラム 
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【知道中国 1597回】         
――「正邪の標準なくして、利害の打算あり」――(徳富36)
  徳富猪一郎『七十八日遊記』(民友社 明治39年)

              ▽

 徳富(とくとみ)の旅を閉じるに当たり、改めて「皮相の見」に綴られ
た全63項の表題のみを記す。

【支那に國家なし】【寂寞たる除外例】【共通性】【文弱】【文弱的國
民】【女らしき男の國民】【附景氣の戰爭】【防禦に專らにして進攻に拙
なり】【斷念哲學】【利害の打算】【便宜主義】【殉國の馬鹿者】【參者
の辛抱】【利の一字】【支那人の生命】【論語逆讀の法】【才取主義(コ
ンミツシヨン)】【我利我利】【支那の道路】【病的の利己心】【?僞的
方便の禮儀】【形式の世の中】【無頓着】【無頓着のみ】【無頓着の證
據】【新屋と舊屋】【大切なる結婚と葬式】【彼等は沙魚の如し】【眞底
から保守人種にあらす】【平民政治】【先天的階級なし】【役人の表と
裏】【政府は本來の害物】【征服者と被征服者】【帝力于我何有哉】【極
端なる干渉嫌ひ】【支那に誂向きの道教】【一切平等の宗教界】【宣教師
問題】【寫實以上に出てす】【文學と藝術】【趣味の幼穉と野鄙】【假我
と眞我】【受身の強身】【時間を無視して、時間を利用す】【外交的辭
令】【應接間の英雄】【偉大なる蕃殖力】【廉價なる人力と人命】【時て
こなし、數てこなす】【苦力大明神】【支那人の好物】【受負と手數料】
【立憲政治と受負主義】【英人と支那人(一)】【英人と支那人(二�

K![!Z1Q?M$H;YFa?M!J;0!K![!Z1Q?M$H;YFa?M!J;M!K![!Z@$3&$K1w$1$kBg@*NO![!Z@/<#E*$N;YFa![!Z@6T"$N@/<#E*FfBj![!Z@6T"$N73Bb![!Z@6T"$N0lBg2rC&![�

以上の63項目によって徳富は清国人の性格を解き明かそうとしたわけだ
が、それが正鵠を得ているかどうかは別にして、日本において一時代を築
いた第一級のジャーナリスト・知識人の見解であり、当時の日本における
中国と中国人に対する最大公約数的な認識と見做して間違いないだろう。

ここで、時に正面から時に側面から時に裏面から日本の対中政策に影響を
与えたアメリカにおける中国と中国人に関する認識の一例を参照する必要
があろうかと、「二十二年間支那に布教せしアーサー、エチ、スミス氏
(Arther.H.Smith)」が著した『支那人の特性』(Chinese
Characteristics)と題する書中に列擧」(村木正憲『清韓紀行』出版
地・出版年不明 明治33年序)された24項目を、村木の記述のままに記し
ておきたい。

なお「アーサー、エチ、スミス氏(Arther.H.Smith)」はアメリカ最古の
海外伝道組織として知られるアメリカン・ボードによって1872(明治5)
年に清国に派遣され、主に山東省一帯で布教・慈善活動・医療・教育など
に携わる一方、中国で発刊されていた英字新聞に頻繁に寄稿し、1905年の
退職後は通州に居を置いて執筆活動を行い、1926年に帰国したアーサー・
ヘンダーソン・スミス(Arthur Henderson Smith)である。

「一、支那人は顔にかヽる、顔か立たす、顔を汚されて残念なり等の思想
案外に強し」「二、支那人は節儉的なり」「三、支那人は勤勉なり」
「四、支那人は?禮に富む」「五、支那人は時是金の思想に乏し」「六、
支那人は明確の観念を欠く」「七、支那人は事を曖昧模糊に葬るの癖あり」

「八、支那人は婉曲を尊ひ空言を弄す」「九、支那人は變通なるか如くに
して而かも頑固なり」「十、支那人は無神経なり」「十一、支那人は尊大
にして外人を侮蔑す」「十二、支那人は公共心に乏し」「十三、支那人は
保守的なり」「十四、支那人は諸事習慣に拘泥し随て便利愉快を目的とし
て改良せんとするの念少なし」

「十五、支那人は天性強健なり」「十六、支那人は忍耐力に富む」「十
七、支那人は楽天的なり」「十八、支那人は祖先崇拝の念強し」「十九、
支那人は同情の念に乏し」「二十、支那人は忿怒の結果忽ち常識を失ひ狂
態を演す」「二十一、支那人は責任を重んし法令を遵守するの精神に富
む」「二十二、支那人は互に相猜忌す」「二十三、支那人は不正直なり」
「二十四、支那人は多神教又は宇宙教を奉し真神を信せす」(「一」が説
く「顔」は面子と解しておく)。
 徳富とスミスの見解に、中国人の自己認識を比較検討しておくのも一興
だろう。

2017年07月11日

◆疑いは晴れたとトランプ

宮崎 正弘



<平成29年(2017)7月10日(月曜日)通算第5347号>  

〜「ロシアのハッカー選挙妨害の疑いは晴れた」とトランプ
  「ロシアと協同する時がきた」とプーチン会談後、前向きな路線表明〜

 トランプ大統領はG20でいくつもの会談をこなしたが、ハイライトはロ
シアのプーチン大統領との初会談だった。本会議に長女のイヴァンカを代
理出席させ、30分の予定を2時間に延長した。

イヴァンカの出席は「おかしい」とメイ英首相はツィッターに書いたが、
メルケル独首相は「代理出席はよくあること」と取り合わなかった。

プーチンとの首脳会談に同席を許されたのはティラーソン国務長官だけ
で、会談の半分は昨年の米国大統領選挙へのハッカー攻撃についてだった
という。

プーチンのほうが記者会見で米露首脳会談の内容に触れ、「トランプ大統
領から夥しい質問を浴びせられたが、逐一回答し、信頼を得られたと確信
している」とした。
 
会談後、本会議にもどったトランプはG20の閉会後も予定になかったエル
ドアン(トルコ大統領)と30分話し込んだ。言ってみればG20はトランプ
がひとりで掻き荒らしたとも言える。

TPPは米国抜きの11ヶ国で再スタートしており、パリ協定は米国離脱も
世界各国の合意が崩れず、ましてやハンブルグG20はグローバリズム推進
を確認している。米国が孤立主義を突っ走る格好である。

「トランプのロシア理解は甘すぎる」とジョン・ブレナンCIA前長官が
批判に転じた。また下院情報委員会の民主党のトップであるアダム・シフ
下院議員も、「ロシアとの協同なんて出来るわけがない」と議会の反対姿
勢を剥き出しにした。

とりわけCIA前長官は「トランプ大統領は米国のインテリジェンス世界
の努力を踏みにじるのか」と強い非難をテレビ番組に出演して展開した。

だがブレナン前CIA長官は2013年から2017年、オバマ政権下での任期で
ある。トランプのCIA攻撃は言ってみればオバマ攻撃なのだから、身を
守るためにもトランプに強い非難を展開する理由はよく理解できる。

「オバマ前大統領は昨年8月にロシアの選挙介入を知っていながら11月8
日まで何もしなかった」とトランプはポーランドでの記者会見で語ってい
るのである。

 
さるにても、ロシア重視、中国とは共に北朝鮮にあたるという方針は、だ
れが背後で助言しているのか。副長官、次官、次官補人事が滞っていて外
交の執行部不在というアメリカの異常事態をトランプは平然としてやり過
ごし、いやそればかりか、どんどん、前へ進めている。

さきにサウジアラビア、イスラエル、バチカン訪問を段取りしたのは女婿
のクシュナーである。

トランプはクシュナーを基軸にティラーソン国務長官、ムチューニン財務
長官、バノン上級顧問らが束になっていると推定される。

そして誰あろう、このクシュナーが最も信頼する外交顧問がキッシン
ジャーであり、ティラーソン国務長官の推薦もキッシンジャーであった。
 
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▼読者の声 ▼どくしゃのこえ ■READERS‘ OPINIONS
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  ♪
(読者の声1) 「小池百合子「グリーン保守戦略」の次の一手 −石破や
麻生と組めば国を亡ぼす」

●都議選で自民党は、スキャンダル噴出の逆風で大敗した。安倍首相は、
森友、加計問題に関し、周囲の忖度に対して脇が甘過ぎた。

●小池都知事の都民ファーストの会は、「グリーン保守戦略」で保守側か
ら左翼へ翼を拡げ、広く曖昧な投網を打ったマーケティングが奏功し、自
民党批判票の受け皿となった。

●小池氏は、いずれ国政に転じ首相への成り上がりを狙うが、その過程で
石破氏や麻生氏との連携を図れば、内憂外患を招き、国を滅ぼしかねない。

◆自民党の失態◆

7月2日投開票の都議選で、自民党が大敗し、小池都知事率いる都民
ファーストの会が躍進して、提携する公明党と合わせ都議会の過半数を制
した。

自民の敗因は、直前の豊田真由子議員の秘書への暴言暴行等のスキャンダ
ル、稲田防衛大臣の「自衛隊として候補者を応援」の失言等が響いたが、
根本には前国会での共謀罪の出来の悪さと強引な国会運営、森友学園、加
計学園を巡る周囲の忖度に対して脇が甘過ぎた事がある。

共謀罪については、パレルモ条約の加盟条件であるか否かの議論を離れ、
北朝鮮危機やテロの脅威が迫る中、筆者は速やかな法制化は必要だったと
いう立場だが、テロと無関係な内容が多数入っているほか、適用要件が曖
昧過ぎ時の政権、検察、警察の権力の拡大乱用に繋がる危険性が高過ぎた
と考える。

官僚は、放って置けば自省のあるいは官僚組織全体の権限と権益の増大を
図る生き物である。

安倍政権は、法務省が作った原案を精査し、削り込み、曖昧性を極力省い
て、加えて野党とマスコミへのお土産にする糊代の部分を作り国会に臨む
べきだった。

加計学園の問題については、そもそも先端的なライフサイエンス等は、特
区でやらず東大等既存の大学の関連学部を拡充して行う方が教員その他の
面で実際的だったのではないか。

一方、口蹄疫対策等に関する家畜を診る獣医不足問題には、それとは切り
離して都会のペット医に流れてしまっている獣医を戻すために、都道府県
の技術専門職獣医の待遇改善と共に、ある程度の市場の飽和化を図るため
の獣医学部の増員と新設を特区等用いずに、官邸主導で農水省に受給シ
ミュレーションをさせて行うべきだった。

ここに来て安倍首相は全国各地への獣医学部の新設を唱えたが時遅しであ
り、既得権と票田を持つ獣医師会の顔色を伺いながら、特区で行おうとし
た事で文科省も巻き込んだ複雑な構図となり、周囲の忖度が生じる隙を
作ってしまい脇が甘過ぎたと言える。

◆「グリーン保守戦略」◆

さて、都議選に於ける都民ファーストの躍進だが、築地市場の豊洲移転問
題については、小池知事は環境問題で豊洲移転決定を引き延ばし、都議選
直前になって「築地は守る、豊洲は生かす」と曖昧な方針を打ち出した
が、元々市場が移転しても築地の場外店舗等は残るのだから、観光資源と
して築地のブランドを守る何らかのものは必要だった。

市場が豊洲に移転し、築地を解体後、食のテーマパークとして再整備する
というが具体的には今後の議論に任せるとの事だ。

築地派と豊洲派の両方顔を立てた訳だが、その打ち出すタイミングと、具
体策を言わば都民に丸投げした手法は、良し悪しは別として選挙戦術とし
て巧妙だった。

市場機能の分散で非効率との批判が多いが、恐らく「見世物機能」として
の小規模な特定の市場機能だけを築地に帰すのか、それが無理なら「すし
ざんまい」の社長に頼んでマグロの解体ショーを入れて何となく雰囲気を
醸し出す等の形が落とし所になるだろう。


これを含め小池都知事の「グリーン保守戦略」は、保守側から左翼へ翼を
拡げ広く曖昧な投網を打つというものだ。

このマーケティングが奏功し、自民党批判票の受け皿となった。

この保守側から左翼へ翼を拡げるという戦略は、何も真新しいものではない。

古くは小沢一郎氏が民主党政権樹立に用いたが、小沢氏は今ではさながら
地上の欲望に淫したルシファーが天上界に戻れなくなったが如く左翼側の
住人と化している。

亀井静香氏も同様に左翼の取り込みを図ったが、安倍首相へコンタクトを
図っており綿貫元幹事長に続き自民党へ戻るのは時間の問題と見られる。

なお、保守と左翼を広く曖昧に取り込むという戦略は、エンターテインメ
ントの世界でも拡がっている。

宮崎駿監督のアニメ映画「風立ちぬ」は、零戦の設計者堀越二郎と小説風
立ちぬの作者堀辰雄を足して2で割った主人公を登場させた。

保守側からは、百田尚樹氏が「永遠の0」で、特攻を報国よりも家族愛、
郷土愛を強調して描き、若干反戦の要素も入れ左翼へも翼を拡げたマーケ
ティングをして、映画を興行的に成功させている。

◆財務省の影と国防の危機◆

中央政界では、麻生太郎副総理は大宏池会を纏め上げ、石破茂自民党元幹
事長は安倍首相批判を高め来秋の自民党総裁選へ名乗りを上げる構えだ。
 小池氏は石破氏とは新進党在籍、2012年9月の自民党総裁選応援等で関
係が近く、連携が噂されている。

小池氏は、2020年7月からの東京五輪の直前に行われるであろう任期切れ
に伴う都知事選で再選されてしまうと国政選挙へ出馬するタイミングを失
うから、首相になるためにはそれ以前に辞任し後継に都政を託したいと考
えているだろう。

国政政党設立のタイミング、都知事辞任のタイミング、自民党との間合
い、公明党との協力関係、後継都知事候補者選定等については、様々な組
み合わせが考えられるが、現時点では頭の体操以上のものではない。

石破氏も麻生氏も、消費税増税を図りたい財務省の意中の政治家であり、
その代弁者の様な言動を繰り返している。

また石破氏については、 後に否定しているものの、韓国紙の東亜日報
(電子版)が5月23日、慰安婦問題をめぐる平成27年の日韓合意に関し
「納得を得るまで謝罪するしかない」と述べたとするインタビュー記事を
掲載する等、過度な親韓、新北、親中の傾向が強い。

麻生氏とその後継の岸田文雄外務大臣は、宮沢喜一元首相の流れを汲む大
宏池会なのでその傾向は更に顕著だ。

筆者は、将来的な消費税増税を完全否定する者ではないが、社会の仕組み
を変えて少子高齢化社会を緩和させて行く事無しに増税によりその経費を
賄おうとする財務省の考えは安易なソロバン勘定であり、日本破滅への行
進曲であると考える。

なお、余談だが最高のコミュニケーション能力を持つ政治家であり内閣改
造で入閣も噂される小泉進次郎氏は、最近「子供保険」という財務省に振
付された詐欺紛いの形を変えた増税案を打ち出し、最低の政策立案能力を
持つ政治家でもある事を露呈した。

また、北朝鮮危機、それに続く中国の侵略意図が迫る中、石破氏や宏池会
に見られる事実に基づかない、または曖昧にした上での過度な謝罪意識
は、国防の発動を誤る事に繋がりかねない。

安倍首相は、不十分ながらも安易な消費税増税と自虐史観に抵抗し、かつ
潰されずに来た稀有な政治家である。周囲の忖度に対する脇の甘さは、意
固地にならずに真摯に反省した方が良い。

その上でなら、ここ暫くは国政を司る事を任せ得る唯一の政治家と言える。

小池氏は、「自分ファースト」によって組む相手を間違えれば、亡国に加
担する事になるだろう。(佐藤鴻全)


2017年07月10日

◆中国のロボット開発技術が

宮崎 正弘


<平成29年(2017)7月9日(日曜日) 通算第5346号>  

 〜中国のロボット開発技術がアメリカを超えたというのは本当か
  かれらが究極的に倣うのは産業、介護ロボットではない〜

 知的財産権に関してアメリカから盗む一方だった中国には創造性がな
い、独想力なくして画期的な発明は無理と言われた。WTO加盟国であり
ながら知的財産権をひとつも重視しないのが、中国であり、アメリカばか
りか日本からドイツから、片っ端から技術を盗み出し、軍の兵器開発に活
用し、ハッカー技術ではおそらくアメリカと並んだ。
 それが心配の種だった。

2010年に中国の特許出願は38万件で、アメリカは47万件だった。これが近
年、逆転し、中国企業の特許宇出願件数は100万件を超えた。

過去40年間に、アメリカ企業の研究開発費、ならびに連邦政府のR&D予
算は45%もの減少を示してきた。

アメリカのトップ企業CEO1268人中、その91%が、米国連邦政府の研究
開発は劣勢に陥ったと認識していることが2017年5月の調査で判明した。
それまでに中国企業はアメリカのAI開発の先端企業51社に大株主として
出資したり、買収したりして、総額7億ドルの投資をしていた。

同年6月15日、連邦政府の海外企業調査委員会は、AI、ロボットなどに
関して、中国企業との合弁事業は、これを許可しないとした。

しかし時すでに遅し、である。

「百度」やテンセントはすでにシリコンバレーにAI研究センターを設立
して、米国内の優秀なエンジニアを雇傭し、AIのイノベーションに取り
組んでいるばかりか中国政府のAI研究開発予算は過去5年2桁の伸びを
示している。

「アメリカの優位は5年以内に中国の追い上げに合うだろう」とシリコン
バレーの関係者の多くが見ている(アジアタイムズ、7月8日)

しかも中国が究極的に倣うのは産業、介護ロボットではない。軍事ロボッ
トである。

トランプ政権はしかしながら連邦政府のR&D関連予算を10%カットする
と公言し、その分を軍事費に注ぎ込むとしているが、これは矛盾である。

 もっとも特許申請件数が多いとはいえ、特許雨声率件数はまだまだ日米
の下位にあり、だぼ鯊特許ならびにロゴなど意匠登録の類似、有名ブラン
ドに告示する商標登録などを合わせた数が中国の発表数字である。

         
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 大化の改新で仏教を国教にした日本が明治維新では逆のことを行った
   廃仏毀釈の歴史解釈など新鮮な歴史論争が基軸の日本文化比較論

  ♪
加瀬英明 v 石平『明治維新から見た日本の奇跡、中韓の悲劇』(ビジ
ネス社)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

繁栄する日本と衰亡する中韓両国の運命は、すでに150年前に決まってい
た。なぜなら日本は明治維新を成し遂げ近代化したが、中国も韓国もまだ
近代化が出来ていないからである。

中国はアヘン漬け、韓国は中国の属国。他方、日本は独立した主権国家に
なった。この差違を理解できないのが両国であり、したがって未来永劫理
解し合えることはないのだが、この歴史の本質を、長期的な歴史の視座に
立脚し、大局的な見地にたって、ふたりは丁々発止と語りあった。
じつに面白い歴史読本になっている。

日本人の特質は相手を忖度し、つねに謙虚であるがゆえに自分が悪いと思
いこむ。

「中国人と韓国人はいかなる場合でも、相手が悪いと思います。考えてみ
れば、易姓革命とは、クーデターのライセンスですね。中国では、思想も
権力に奉仕する。権力者が自分にとって都合のよい思想をつくる」(加瀬)

「中国の皇帝は天下万民を自分の私有物にするので、結局、憎まれる存在
です。有徳でも何でもなく、ただ力があるときは、恐怖で天下万民をおさ
える。いったん力を失うと、ほかの強者が必ずでて」、国家を私物化する
(石平)

仏教は大化の改新前に日本に渡来した。

「朝廷は仏教徒になりました。それまでは豪族が、ちょうど徳川時代のよ
うに、日本を分けて、それぞれの地域を支配していた。それを唐と新羅の
力が増すので、日本の国防を近代化しなければならず、今度は唐の制度を
真似て中央集権にする必要があった」(加瀬)。

したがって、神道は抑えられ、それが明治維新の時までは神仏が混交して
いたが、「神道と仏教を無理に分ける、神仏分離を行った。それは仏教
が?川幕府と結びついていたから」だと加瀬氏は分析する。
つまり「廃仏毀釈」は「大化の改新」と逆のことをおこなったと加瀬氏は
続けるが、一方、石平氏は、「大化の改新のころ、仏教を国教にしてし
まったもう一つの思惑は、中国と対抗することです。中華世界と対抗する
ならば、やっぱり中華世界を圧倒するようなイデオロギーを持たなければ
いけない。仏教がそれ」だったという。
 この丁々発止、延々とつづく。
      
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 誇りある日本文明の源泉は縄文文明に謎がある
  古代から朝鮮半島との交流があったが、日本は独自な文明を生み出した

  ♪
高田純『誇りある日本文明』(青林堂)
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 副題に本書の狙いが簡潔明瞭に示されている。すなわち「中韓が絶対に
超えられない、先進と継続の理由」である。

高田純氏は札幌医科大学教授で核放射線防護が専門。この専門域から、北
朝鮮、中国の核兵器など安全保障問題でも発言も多く、カザフやチェルノ
ブイリ、フクシマなど被災地の調査に取り組んできた。原発問題でも発言
がおおく、保守の論客として知られるが、本書では古代文明、縄文式土器
から言語、発明など幅広い分野に挑まれて、世界に独特な日本文明の謎に
挑戦した知的刺戟に富む本である。

縄文土器から新幹線、ウォッシュレット。これらは高度な技術であるばか
りか、日本文明が産んだ独自の発明。というより技術であり、職人芸の巧
みさである。この匠の謎は、日本文明の独自的な形成、その歴史的な経
緯、海洋国家としての和の精神などにもとめられるとする。

日本の清潔さは水が綺麗であること。水道水が飲めるのは世界ひろしと雖
も、おそらく日本だけだろう。中国の水は世界一汚染され、毒素を含み、
ミネラルウォーターですら、中国製は飲めない。金持ち連中はわざわざ日
本のミネラルウォーターを買っている。

高田氏はこう言う。

「日本は大陸社会のように食用の牧畜をしない文明となった。宏大な牧草
地を必要とする大陸の文明では森林がなくなり砂漠化した。一方、日本列
島は天武天皇時代に始まる方針のおかげで、21世紀の今も美しい森林が守
られている。この智恵をわすれてはいけない。これが治水にもなり、農業
と漁業につながっている。日本は森林大国で、水が美味しい」。

先般、評者(宮崎)は北欧を回ったがフィヨルドが豊かなノウウェイでは
水道水も飲めた。
 
閑話休題。旧石器時代の3万年前に、ガラスのような黒曜石を発見し、之
を活用しはじめる。青森県の三内丸山遺跡では、北海道線と思われる黒曜
石石器が発掘されている。

そして1万6千年前に縄文様の土器がつくられ食器として用いられた。
「食料とする獣を追って放浪した他の民族と(日本人と)は、そこが完全
に異なる」 

縄文への再評価は近年高まりを見せているが、「縄のしるしは、神道では
特別な意味を持つ。しめ縄のように神聖や清さを意味する。土器の中に食
べ物を入れて煮炊きするので、そうした願いを込めた」

食中毒から身を守り、煮炊きによって腐敗を防止し、賞味期限を長くし、
縄文土器が命をまもった「画期的発明であった」と高田氏は言うのだ。
つまり日本文明は通説より遙かに古いのである。

「現在の理解は、少数の発掘された骨のデータだけからの推測に過ぎな
い」のであり、「天下り式に西洋仮説を引用」する考古学や文化人類学主
流の学問に強い疑義を呈するのである。

日本が農耕民族としてひとくくりにするのも間違いで、それは「海洋に囲
まれた日本列島にある文明の一面」でしかないという視点を強調する。

          
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  樋泉克夫のコラム 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 【知道中国 1596回】      
  ――「正邪の標準なくして、利害の打算あり」――(徳富35)
   徳富猪一郎『七十八日遊記』(民友社 明治39年)

             ▽
 やはり日露戦争勝利という「日本帝國の先例は、總ての有色人種、特に
黄人種の自覺の動機たるの事實を抹殺す可らす、果して然らは、吾人は寧
ろ男らしく此の一大渦中に飛ひ込み、此の大勢を利導するに若かんや」。
やや大時代風に表現するなら、これこそが「白色人種」の専横に反対し、
「黄人種」の自立を目指す戦いの庭に立つという徳富の決意宣言ともいえ
そうだ。まさに男子の本懐である。

「平均を求むる」ということは、「人類にせよ、物體にせよ、宇宙經濟の
也」。ここで徳富が記す「經濟」は現に使われている経済(エコノミー)
ではなく、やはり儒教が為政者の心すべき道とした経世済民(貧しからざ
るを憂えず、等しからざるを憂う)と捉えるなら、「宇宙經濟」は人倫で
あり、まことのヒトの道とでも読み替えるべきだろうか。

「社會主義」「民權論」「同盟罷業」「憲法政治」が唱道されてはいる
が、どれもが「或る部分の平均を求むるの作用に外なら」ない。「平均を
求める」ことにおいて「此の黄白二大人種の間の平均を恢復せんとする」
ことこそが、「實に大の大なるものと謂はさるを得」ない。じつは平均を
求めるということは、「挑戰せんか爲」でも、「對抗せんか爲」でもな
い。「眞に人類同胞、四海兄弟の實を擧けんか爲め」だけだ。
かくして徳富は「黄人の重荷は、我が大和民族の双肩に在り。吾人豈に
小成に安す可けん哉。日本國民の事業此れよりして遠し」と、『七十八日
遊記』を結んだ。

結論を急ぐなら、どうやら徳富が示した「黄人の重荷は、我が大和民族の
双肩に在り。吾人豈に小成に安す可けん哉。日本國民の事業此れよりして
遠し」との主張を分水嶺に、以後の日本は「黄人の重荷」を背負うことを
念頭に置いて昭和20年8月15日を迎えたようにも思える。だからといっ
て、「黄人の重荷」を引き受けたことを否定する積りは全くない。むし
ろ、あの時期に敢えて「黄人の重荷」を背負おうとした先人の志は限りな
く尊い。だが、おそらく「黄人の重荷」を隠れ蓑に悪行がみられたのも否
定しがたい事実だろう。

辛亥革命からはじまり、第1次世界大戦、シベリア出兵、満州事変、上
海事変、満州国建国、盧溝橋事件、南洋進出、暴支膺懲、大東亜戦争を経
て一億総懺悔まで、20世紀前半の日本を象徴するであろう出来事やスロー
ガンを思いつくままに拾ってみるなら、濃淡の差こそあれ「黄人の重荷」
を背負おうとした先人――たとえば岸田吟香、根津一、荒尾精、頭山満、宮
崎滔天、北一輝、橘樸、辻聽花、鈴江言一、中江丑吉などの素志を認める
ことができる。その尊い志を無視することも、ましてや否定することなど
できはしない。

だが同時に、「黄人の重荷」を背負うことに急なあまり、時に周囲への目
配りを欠き、時に目を晦まし独善に流れ、結果として誤解を招いたことも
また素直に認めざるを得ないはずだ。加えるに、「黄人の重荷」を口実に
しながら自らの野望を逞しうしようとした輩がいたことも。

徳富は『七十八日遊記』の末尾の、さらに末に、次の小文を付している。
「支那は眠れり、今や醒覺し來れりとは、20年前、曾侯紀澤の、斷言した
る所」だ。日清戦争は「一大暁鐘」だった。20世紀目前に起った義和団の
排外運動である「團匪事件は更らに「一大暁鐘」であり、日露戦争も「亦
更らに一大暁鐘」であった。にもかかわらず彼らにとっては「一大暁鐘」
とはならなかった。いや、「一大暁鐘」とは受け取らなかったに違いな
い。「今や如何。醒覺乎、醒覺乎。其の前途は如何。吾人は醒覺の時節、
到來したるを疑はす。但た到來後の形勢如何を卜せんと欲するのみ。明治
39年10月」

徳富が筆を擱いた明治39年10月から5年が過ぎた1911年10月、武昌での新
軍による武装蜂起を引き金に清朝は崩壊に向かう。だが、「醒覺」は、ま
だ先の先・・・。
《QED》
  

2017年07月09日

◆大荒れのハンブルグ

宮崎 正弘



<平成29年(2017)7月8日(土曜日)通算第5345号>  

 〜大荒れのハンブルグ、場外乱闘で警官160人が負傷
  トランプ大統領、プーチン、安部、文らとの会談を次々とこなす〜

 7月7日、G20(主要20か国・地域首脳会議)がドイツ・ハンブルクで
開催され、初のトランプvsプーチン会談が行われるなど、話題は豊富
だった。

トランプは大統領選挙中のロシアのハッカー部隊の妨害を追求したとされ
るが、同席したティラーソン国務長官の記者会見ではプーチンが否定した
という。

日米韓の3ヶ国首脳会談が同時に行われ安部首相、米国のトランプ大統
領、韓国の文在寅が夕食を挟んで会談した。

この3ヶ国首脳会議では大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射を繰り返
す北朝鮮に対し、「圧力を強めること」で一致したものの具体的な制裁措
置など合意は得られなかった。

この会談はトランプ大統領が夕食会を提案しておこなわれたもので、実に
三時間に及んだ(トランプvsプーチン会談は2時間だった)。

また別途に行われた日韓首脳会談は僅か35分だった。

最終決着ができている慰安婦問題を文在寅が「韓国の情緒的な国民感情が
許さない」としてこりもせずに持ち出したため、「意見は折り合わず」
(コリアヘラルド)、「北への圧力では一致したが、意見の食い違いは慰
安婦問題で見られた」(コリアタイムズ)となった。

日韓両国のシャトル外交は、六年の空白があり、今後は1年に1回のシャ
トルの復活が謳われただけにとどまった。
 ひきつづき日中首脳会談は8日に開かれる。

         
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 沖縄反基地闘争に蔓延る左翼ペテン師たちの正体
  テレビも新聞もフェイクニュースの発信源。嘘ばかりだ

  長谷川幸洋 vs ケント・ギルバート『大放言!』(ビジネス社)

テレビで評判をとった番組の発言当事者が左翼偏向マスコミの本質をばっ
さりと斬り合う趣向が凝らされ、激論、激辛なトーンでフェイクニュース
の本質に潜む左翼の陰謀を俎上に載せる。
 快刀乱麻だ。

発端はある番組で「正論」を述べたところ、長谷川氏が東京新聞で降格人
事となり、社会問題化した。このような事件を見ていると「日本にはたし
て言論の自由はあるのか?」と誰もが疑うだろう。

評者(宮崎)はテレビを見る習慣がないので、この事件を本書を読むま
で、まったく知らなかった。

ケントさんとは4半世紀を超える付き合いだが、長谷川氏のことはまるで
知らない。東京新聞の論説副主幹だったことを初めて知ったほど。あの朝
日より左のバカ新聞に、こういう真面目な人がいるんだというのが評者の
初印象である。
 東京新聞は評者が学生時代はまともな新聞だった。文化欄は充実してい
たし、梅原一雄、漆原成美らの論客、「こちら特報部」には上之郷某ら花
形記者がいた。
それがおかしくなったのは中日新聞が買収し、名古屋から進駐軍がやって
きたあたり。ならば中日新聞が左傾したのは、革命勢力が強いからかと言
えば、そうではなく、伝統的に尾張?川家の中央への怨念から来る反権力
の宿痾的な体質である。尾張?川は戊辰戦争のおり真っ先に裏切って薩長
軍に投降した経緯を思い出すのである。

 さて「事件」とは1月2日放送の「ニュース女子」という番組の討論の
中味にあった。
 「日本の公安調査庁がまとめた『内外情勢の回顧と展望』と題する
2017年の年次報告書を井上和彦さんが持ってこられました。その報告
書には『反対運動には中国の影が感じられる』というような既述がありま
した」(長谷川)
 「翁長知事が沖縄のリーダーになって以来、辺野古への基地移転反対闘
争は一気にヒートアップしています。移設反対を訴える急進的左翼や暴力
的過激派による、基地容認派への脅迫や、米兵とその家族への攻撃も行わ
れています」(ケント)

このような実態がすこしも報じられないのは沖縄世論を牛耳る二つの新聞
が、正論を吐かず、でたらめな反米記事を書いて煽るからである。
 問題は沖縄に於ける反米運動の報道にある。
反対するデモ隊には日当が支払われ、その資金は中国から迂回経由。動員
されたなかには外国人がいるということは昔から知られたことで、二月に
も或るシンポジウムでケントさんと隣り合ったときも、ケントさんは堂々
と公衆の面前でそう語っている。つまり証拠があるのだ。
 ところが、そのことをテレビで喋ると猛烈な抗議が組織的になされ、左
翼ジャーナリズムが一斉に共闘して批判するという、左翼メディアの、と
いうより「フェイクニュース業界」の体質である。

 この人たちは日本を破壊しようとして動いているのであって、説得して
も分かるわけがないし、不都合な事実を提示されても「忙しい、わたしは
読んでいない」という。完全に頭がおかしい人たちだが、左翼メディア
は、こういうバカ言論人を多用するのである。
 本書では実名があがって、その「罪状」が縷々述べられているが、青木
理、辛某女史、山口二郎ほか。評者にとっては初めて聞く名前の人ばかり
だった。

 また朝日新聞OBが朝日を批判するのだが、現役記者がなぜ朝日を批判
しないかといえば「ローンを抱えている」「首になる」などと言い訳があ
る。つまり左翼主流の執行部体制に刃向かえば何が待っているかという官
僚主義、その悪弊が朝日以下の新聞社にも蔓延っているわけである。
 ともかく本書では、治癒の見込みのない沖縄左翼の実態、メディアの
フェイクの作り方、その許し難い陰謀を暴いている。

       

2017年07月06日

◆北朝鮮がICBM発射に成功

宮崎 正弘



<平成29年(2017)7月5日(水曜日)弐 通算第5341号>  

 〜北朝鮮がICBM発射に成功。G20で米中首脳会談の優先議題に
  トランプ「北朝鮮へ圧力をかけるという中国への期待は幻覚だった」〜

7月4日、日本は台風騒ぎに明け暮れ、北朝鮮のICBM発射実験成功
はトップニュースではなかった。軍事脅威不感症の所為だろう。
 
トランプ大統領は「中国が行動を取らないなら、米国は単独で行動を取
る」としたうえ、7月6日ドイツのハンブルグで行われるG20の最中に、
日本と韓国の首脳を招いて米日韓の首脳会議を行うとした。翌日7月7日
には安倍、文在寅会談が予定されているが、その前夜に三者会談が行われ
る段取りとなった。

ところが文在寅は北のICBM成功に関して記者会見し、「まだ引き返せ
ない地点ではない」と幻想的な見通しを語っている。

トランプは中国への幻覚を捨てた。中国が北朝鮮へ経済制裁など具体的で
効果的圧力を架ければ事態は解決するという、根拠の薄い期待を抱いてい
たため、4月の米中首脳会談でトランプは習近平に百日の猶予を与えたと
される。

しかし中国はまったくやる気がないばかりか、ぶつぶつと米国に文句を言
い出した。

北朝鮮のICBM事件は、米海軍の空母2隻(カールビンソンとロナルド
レーガン)が日本海から撤退したことを見計らい、韓国の油断、中国の事
情などを勘案した上で、発射した。慎重にタイミングを計算しているので
ある。

7月2日、トランプは習近平に電話をかけている。その内容は、大統領が
休暇先からワシントンへ戻った3日夜(日本時間7月4日)に、ホワイト
ハウス筋からリークされた。習近平は、トランプに対して北を制裁しない
理由付けに多くの苦情を述べたという。


 ▲中国が北朝鮮を制裁するなどという米国の期待は幻想だった

習近平が米国への不満は次の5つではなかったかと消息筋は推測している。
 
第1にトランプ政権は「一つの中国」の原則を守るとしながらも台湾へ14
億ドルもの武器供与を決めたではないか。
 
第2に米国が中国大使などを通じて「人権問題」に言及し、劉暁波の米国
亡命受け入れなどを示唆するのは内政干渉である。

第3に米国は中国の丹東銀行に対して北朝鮮のマネーロンダリングや不正
送金に手を貸したとして制裁した。
 
第4に中国の鉄鋼製品をダンピングなどと言いがかりをつけて400%前
後の報復関税を課している。

第5に南シナ海における「航行の自由作戦」という米国の軍事行動は中国
の主権を侵害する深刻な、由々しき挑発行為である等等。

トランプは習近平の発した小言を聞いた上で、これまでの中国幻想を捨てた。

不誠実な、約束を守る気が初めからなかったことに気がついたのでは
と、ニューヨークタイムズ‘7月4日付け)が珍しくまともな分析をして
いる。

2017年07月05日

◆習近平が7月3日、モスクワ入り

宮崎 正弘



<平成29年(2017)7月5日(水曜日)通算第5340号>  

 〜習近平が7月3日、モスクワ入り
  プーチンと100億ドルの「一帯一路」契約へ〜

香港視察から帰ったばかりの習近平は7月3日、モスクワ入りする。
 プーチン大統領と会談し、総額100億ドルの一帯一路プロジェクトの露
西亜版に署名すると言われる。

中露間の目玉のプロジェクトはロシア極東と中国を結ぶ既存の鉄道の拡充
で、ほかに2つの大型プロジェクトが主として黒竜江省とロシア極東との
アクセスの拡充に使われる。

鉄道貨物は中露間の実積が2014年に780トンだった。

これが2016年には1120トンに激増しており、2020年には4500トンに及ぶだ
ろうと予測されている。

ロシアからは原油が積み込まれ、中国からは加工食品、日用品、雑貨が積
載されて、満州里から運ばれている。この鉄道の拡充はロシアにとっても
願ってもないプロジェクトなのである。

かくして、本来なら深く憎しみ合う両国が偽装の同盟を続ける理由は何
か。まるで仮面夫婦の関係ではないか。

中国にとっては軍事的冒険で世界に孤立する立場を少しでも和らげ、軍事
強国の立場を示威する目的がある。さらにハイテク軍事技術と武装を維持
するにはロシアからの武器輸入が欠かせず、エネルギー依存も高い。

ロシアから見れば、中国の不法移民の極東シベリアの乱入は悩みのためで
あり、6000キロのおよぶ中国との国境線を抱えているため、つねに中国と
は軍事緊張を緩和しておく必要がある。
 
なにしろソ連時代世界最強といわれたソ連軍は550万兵士をかかえてい
た。いまロシア軍は90万人、極東の警備にさける兵力の余裕はないうえ、
2015年あたりから、GDP成長はマイナスに陥没している模様だ。

だが何よりもロシアが中国に依存するのはカネである。

ウクライナとシリアという二つの戦線をかかえているプーチンは、原油価
格下落で国内景気が劇的に落ち込み、通貨ルーブルは半値、しかしシリア
の戦費は一日2億ドル。ロシアのGDPは日本の4分の1で、世界ランキ
ングでは韓国より下の12位である。

このロシアの経済的脆弱性をついて、習近平は経済的風呂敷を大きく拡
げ、条件を有利な方向へ導こうとするだろう。

狐と狸の化かし合いがモスクワで演じられる。

   

2017年07月04日

◆韓国経済、目の前に迫った危機の本質は何か

宮崎 正弘



<平成29年(2017)7月3日(月曜日)通算第5338号>

 〜韓国経済、目の前に迫った危機の本質は何か
  若者にとって就労機会の死。「ヘル・コリア」という怒り〜

 1997年のアジア通貨危機で韓国経済は沈没しかけ、IMFに救済を求め
た。同様な経済危機が、昨今の韓国を襲っている。

韓国経済を独占的に牽引してきた財閥への若者の怒りと就職難。つまり大
手財閥に入れなければ人生は地獄とかす偏執的な社会構造。これを「就労
機会の死」をいう。

「日本、死ね」という落書きがあったが、韓国の若者の絶望感は、それに
似ている。

「ヘル・コリア」感情の蔓延、そのムードが、自暴自棄となったかのよう
に、「赤い韓国」を目指す文剤寅政権を産んだ。

文大統領は勇んでワシントンへ出かけたが、トランプ大統領との首脳会談
は不首尾となって、宣伝とは裏腹に一つの成果もあがられず、また貿易
パートナーとして中国重視が裏目にでてきた。

かといって日本とは「通貨スワップ」の再交渉を迫っても、固く約束した
最終合意は反古にしようとしており、慰安婦像の撤去にも応じない韓国に
対して、日本の国民感情が許さないだろう。

韓国の家計赤字は1兆2000億ドル規模に達しており、クレジットカード破
産が激増、いずれ大問題となって韓国経済をガタガタに揺らすことは目に
見えている。

ウィリアム・ペサク(経済ジャーナリスト)はアジアタイムズ(6月30
日)に寄稿して、文政権は「独禁法」の徹底を軸として法治を韓国に実現
しないかぎり、経済繁栄の持続は難しいだろうと警告している。

   
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◆書評 しょひょう BOOKREVIEW 
   

 〜張作霖爆殺は関東軍ではなくソ連の謀略だった
  なぜ日本関東軍の謀略だと歴史は片付けてきたのか〜

  福井義高『日本人が知らない最先端の世界史2』(祥伝社)

シリーズ第2弾。目から鱗が落ちる世界史解釈である。
 今回は副題に「覆される14の定説」とあるように従来的で通俗的な十四
の歴史解釈を根底からひっくり返す試論、反定説のオンパレードである。

すでに第1弾によって多くの読者を得た福井教授、こんどは張作霖爆殺事
件の真相、ゲルニカ神話、とりわけスペイン内戦の実態、ヒトラーへの誤
解などを精密に検証し、それも海外の第一級史料を見つけ出して、従来の
解釈に挑戦する知的冒険である。

最も新鮮な驚きは、国内の歴史論争や賛否議論のドメスティック過ぎる視
点からは発想できなかった、歴史のパースペクティブの広がりである。
 とくに本書で、評者にとって個人的にはスペイン内戦への、従来的視点
を打ち破ってのアプローチに新鮮な衝撃があった。

スペイン内戦は左翼や進歩派が、フランコを悪と決めつけて志願した。マ
ルロォも、ヘミングウエイも参戦しているのだから、どれほど当時のイン
テリが、状況を誤認したか、その原因が知りたかった。

また張作霖爆殺は、ながらく河本大佐の仕業とされたし、河本自身が、そ
う証言してきた。ところが、近年の研究で、ソ連の謀略だったことが実証
的に暴露され、とくにユン・チアンの『マオ(毛沢東)』(講談社)は、
ソ連時代の秘密文書を読みこなし、加藤康男氏は英国のアーカイブに通っ
て、秘密書類の束から、確定的な証拠書類を発見し『謎解き 張作霖爆発
事件』(PHP新書)を書かれた。

ここでソ連の謀略の過程は繰り返さないが、福井義高氏の次の指摘には思
わず膝を打ったのである。

「河本大佐がその計画や実行を『吹聴』していた背景には、ソ連の例と似
た戦前の日本の状況があった。当時は今日と違い、大陸での謀略活動にプ
ラスの価値が与えられていた。支援を受けながら関東軍の言いなりになら
ない張作霖を謀殺することは、非難に値するどころか称賛されるべき『快
挙』だった」(本書47p)からである。

もし、第3弾があるとすれば、是非つぎに伊藤博文暗殺の背景と真相(安
重根が真犯人でなかったことは、いまや常識だが)に挑んでいただきたい
と思った。
 
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 ちょうど1年前の小誌(2016年7月3日付け)に本書第1弾に関して、
下記の書評をしているので、合わせて参照されたい。(宮崎正弘)
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 多文化主義こそ共産主義運動破綻後の左翼の隠れ蓑なのである
  冷戦で自由陣営が勝ったのは一時的、またも左翼の陰謀は進む

  ♪
福井義高『日本人が知らない最先端の世界史』(祥伝社)
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本書のテーマは大きく四つあって、「歴史修正主義論争の正体」「コミ
ンテルンの陰謀説の真偽」「大衆と知識人」「中国共産党政権誕生の真
実」である。

いずれも過去に多くの論争があり、左右を問わず、論壇は侃々諤々、議論
は輻輳し、今日に至っても結論を得られないポレミックである。

著者の福井教授は青山学院大学で教鞭を執られる傍ら、静かに地道に近現
代史に挑んで来られ、寡作なので一般的にはあまり知られなかった。

本書はある意味で、論壇を画期する労作である。

なぜならグローバリズムの波が世界を覆い尽くそうとしているときにトラ
ンプが米国に出現し、英国はEUから離脱する。

言葉を換えて言えば、これは反グローバリズム、そして反「多文化主義」
の流れとは言えないか。

ドイツの場合、論壇にタブーがあると福井氏は指摘する。

「ホロコーストの唯一性を前提にすると、ドイツと比較して日本の謝罪が
不十分であるというような議論は、涜神行為とすらいえる。なぜなら、ホ
ロコーストと日本の通例の戦争犯罪を並べることは、比較を絶するはずの
絶対悪を相対化することを意味するからだ。

実際、連合軍の戦争犯罪や非人道的行為とナチスのユダヤ人迫害を比較
し、相対化することはホロコーストを『無害化』するとして、ドイツでは
厳しく批判される。他の欧州諸国や米国でも同様である」

どういうことか。

「法律に名を借りて国家権力で異なる歴史認識を圧殺しようという動きは
ホロコーストに限らない」

その例はフランスなどで拡大するトルコのアルメニア虐殺論争だが、
 「論点は虐殺の有無ではなく、(オスマントルコ)帝国政府による国
策としてのジェノサイドを主張するアルメニアに対して、戦時中の軍事的
必要性に基づく強制移住の過程にともなう不祥事というのがトルコの立場
である」

しかし、歴史論争として、これらは修正主義の名において国際主義者、左
翼ジャーナリズムから激しく糾弾されるのだ。

「冷戦後の共産主義『無力化』には冷戦期、ソ連共産主義に宥和的であっ
た多くの欧州知識人の自己保身という現実的動機」もある。だが、実態と
しては、その裏にもっと大きなすり替えの動きが起きている。

その典型が「多文化主義」なる面妖な、新時代の化粧を施した、共産主義
運動の隠れ蓑である。

福井氏は続ける。

米国では「多文化主義は、黒人の存在と密接に関連しており、奴隷の子孫
に対する白人の贖罪意識がその背景にある。一方、欧州では旧ユーゴスラ
ビアを除き、殆ど白人キリスト教徒しかいなかったのに、多文化共生を国
民に強制するかのように、欧州各区に政府は、冷戦終結直後から、第三世
界とくにイスラム圏からの大量移民受け入れを拡大し、その勢いは止まら
ないどころか、むしろ加速している。

ポストマルクス主義左翼の知的覇権下、欧州国民の大多数が反対する大量
移民受け入れを維持推進するためには、ヘイトスピーチ規制に名を借り
た、国家による言論の統制が不可避なことは容易に理解できる」。

つまり大衆を扇動する新しい道具であり、「反多文化主義=ファシズムと
いう分かりやすい図式を提供することになるのである」と本質を抉り出す。

ソルジェニーツィンを見よ、と福井氏は言う。

「ソ連圧政に抵抗する自由の闘士として、欧米で英雄視されたソルジェ
ニーツィンは、冷戦が終わると、多文化主義とは真っ向から対立する、そ
のロシア民族主義ゆえ、逆に欧米知識人の批判の対象となった」ではないか。

いま日本に輸入された、面妖なイズム「多文化主義」の本質をずばりと捉
え直した瞠目するべき著作の登場である。

2017年07月03日

◆米韓首脳会談、実質的な成果は何もなかった

宮崎 正弘



<平成29年(2017)7月2日(日曜日)弐 通算第6337号>

 〜米韓首脳会談、実質的な成果は何もなかった
  修辞は並んだが、実行力も拘束力もなく、握手はたったの4秒〜

トランプはツィッターで韓国大統領をほめあげた。
 「良い会談が出来た」。
6月29日から3日間に及んだ文在寅韓国大統領の訪米は、韓国のメディア
に従うと「異例の厚遇」で「大成功」との由である。

しかしトランプの握手はたったの4秒間。安部首相とは29秒だったことを
思い出した。

ならば共同声明を見よう。
 
ポイントは3つある。

(1)外務防衛担当閣僚級協議(2+2)、高官級戦略防衛協議の定例化
(2)北朝鮮の非核化への最大限の圧力をかけると同時に、適切な環境下
で対話に応じる立場を確認
(3)北朝鮮の核問題解決に向けた韓国政府の政策の方向性を米国は支持

どこをどう読んでも具体的政策はない。「最大限の圧力」、「適切な環境
下」とか「方向性」とか、抽象的な語彙で、誤魔化しているに過ぎない。
 この虚しい語彙に見え隠れするのは米国の韓国に対する不信感が払拭さ
れていないことではないのか。

米韓首脳会談では、トランプは米韓弐国間のFTAに大いなる不満をの
べ、また公平な防衛分担を要求したが、この二つは共同声明には盛り込ま
れず、年内の適切な時期にトランプ大統領の訪韓が行われるだろうとされた。

かくて米韓首脳会談は具体的成果はなにもなかった。
   
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◆書評 しょひょう BOOKREVIEW 
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文科省は聖徳太子を「厩戸王」とだけ記述させ、実在を葬ろうとしていた
  聖徳太子不在論の「三バカ」は津田左右吉、大山誠一、谷沢永一

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田中英道『聖徳太子 本当は何がすごいのか』(育鵬社)
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 日本の歴史学界には、まだ蒙昧な左翼思想に洗脳されたまま、おかしな
主張を展開している人々がいる。最近もまた「聖徳太子はいなかった」等
と頓珍漢な歴史論をのたまうガクシャがいる。

岩波や朝日を中心とするブンガジンが相場だったが、最近は保守層にも、
そうした傾向があると田中氏は指摘する。

聖徳太子不在論の「三バカ」とは津田左右吉、大山誠一、谷沢永一である。

あろうことか、聖徳太子不在論に顧慮して文科省が歴史教科書から「聖徳
太子」を消そうという動きがあったのだ。
 
たんに「厩戸王」と記述させようとしたのだが、猛烈な反対論の勢いに押
され、これを引っ込めた。

いったい文科省もまた左翼の跋扈する三流官庁に堕落していたのである。
死んだはずのマルクス主義の亡霊がよみがえったかのようだ。

すでに聖徳太子論を弐冊上梓されている田中英道氏は、あたらしく発見さ
れた科学的物証を網羅しつつ、平明に聖徳太子不在論の虚妄を衝き上げる。
「端的に言えば、実証主義を自称する戦後日本の歴史学は、権力を常に否
定するマルクス主義歴史観に支えられているのです。あるいは歴史学界が
無自覚マルクス主義とでもいうようなエセ実証主義者によって支配されて
いるといっても良いでしょう。学界内にとどまっているのならばまだし
も、その意見が義務教育の学校の歴史教科書にまで反映される」(20p)
この陰謀的な流れには棹を差さなければならない。
 
田中氏はまたこうも言われる。

「聖徳太子は、ある意味で、日本の信仰の祖であるといってもいいと思い
ます」(126p)

この日本人のアイデンティティを破壊しようとする勢力が、聖徳太子を否
定し、日本の文化的共同体、精神的な絆を断ち切れば、国家が分断され、
革命を起こしやすくなるという迂回的革命実践のステップ、その戦術の一
環として用いるわけである。

とはいえ、仏教を輸入した聖徳太子に批判的な流れは、じつは江戸時代か
らあった。水戸学は否定的であり、太宰春台、熊沢蕃山らだが、そうは
いっても彼らは聖徳太子を否定していたわけではなく批判していたのである。
聖徳太子不在論を猛烈に反駁されつつ、歴史の本質に迫る書物である。
  

2017年07月02日

◆中国軍 またもブータンの一部を侵略

宮崎 正弘



<平成29年(2017)7月1日(土曜日)通算第5335号> 
  
 〜中国軍、またもブータンの一部を侵略。インドが防衛に
  インド洋も南シナ海に続いて「中国洋」と化けるのか?〜

 インドは北京で開催されたAIIB(アジアインフラ投資銀行)フォー
ラムを正式にボイコットした。
モディ政権の中国外交は一貫して経済と分離し、強硬である。

インドの中国に対する不信は高まることはあっても鎮まることはない。
陸地に於いて中国軍はインドとの国境地帯を蚕食しつつ、こんどはインド
の事実上の保護国であるブータン王国のドクラム高原の一部に道路を建設
中だ。

ブータンの領土を掠め取ろうとして軍事行動を本格化させている。

インドはバングラデシュの北側を領有し、東インドを繋げる「シリグリ回
廊」(シッキム、ブータン、チベット三角地帯)の分断を図るのが中国の
長期的な軍事目的である。インドが激怒するのは当然だろう。

中国は「1962年戦争を思い出し、歴史の教訓に学べ」などと、傲慢で命令
口調の態度を変えず、インドとの境界線を前進させてきた。「サラミ戦
略」ならぬ「キャベツ戦略」である。中国はシリグリ回廊の495平方キロ
が「歴史的に中国領土だ」と根拠のない主張を平然と続けている。そのう
えで、「インドは軍隊を撤兵させよ」と言うのだ。

1962年のインド中国国境紛争は、シッキム高原の侵略を狙って中国が軍を
進め、アクサイチンを軍事占領し、インドからシッキムを奪った(そのと
きまでシッキム王国は存在していた)。ちょうどキューバ危機の最中、世
界は、この国境紛争を小さな出来事として注目しなかったが、インドはこ
のときの屈辱感から核武装への道を決断した経緯がある。

インド陸軍は第17」山岳師団をシッキム地方に駐屯させており、そのうち
の3千名は中国軍が展開する係争地で臨戦態勢にある。

中国軍はすでにチベット側に35トン戦車を待機させており、同時にブータ
ンの領土に建設中の道路は40トンの戦車が通行可能だという(アジアタイ
ムズ、6月29日)。もちろん、ブータン王国は中国に撤兵を要求している。

「世界一幸せな国家」(GHP)というブータンはまともな軍隊を保有し
ておらず、事実上、インドの保護下にある。


 ▲インド洋が「中国洋」となる日が近い?
 
海洋もまた中国海軍の野心的進出に脅かされている。

インドが警戒するのはインド洋における中国海軍の進出であり、すでに
ミャンマーの西沖に広がるアンダマン諸島には中国がレーダー基地を敷設
した。

バングラデシュにはチッタゴン港の浚渫を提言し、インド洋の南東に浮か
ぶスリランカにはハンバントタ港に既に中国海軍潜水艦が寄港し、南西の
モルディブには、中国が鳴り物入りのチャイナタウン。そしてインドを西
側に挟む敵対国家パキスタンのグアダール港の建設を加速している。

このためインドは米軍との軍事同盟を強化し、日本、オーストラリアを加
えた4ケ国で共同軍事演習を展開してきた。

南インド洋には豪のほか、フランスも幾つかの島々を領有しているため、
軍事的脅威を目の前に、日米豪印の四カ国の軍事協力体制に加わる用意が
あると言われる。

もっと驚くべきは中国の長期的な海軍突出野心である。

ジブチの米軍基地に隣接する場所に中国は一万人規模の軍事基地を建設中
で、これは中国が海外に駐屯させる最初の外国駐屯軍事基地となる。

この「海のシルクロート」とかいう経済プロジェクトの裏側が中国の地球
的規模の軍事突出プランであることは、世界の常識である。

インド軍事情報筋の分析では、ジブチを拠点化したあと、中国はマダガス
カル、モーリシャスの島嶼を狙い、最終的にはディエゴガルシアにある米
軍基地への牽制も伺うだろうとしている。
     
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◆書評 しょひょう BOOKREVIEW 
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 「戦争とはこんなもんです」と中国人兵士は記録を残した
  このような第一級史料がなぜ戦後の日本から消されていたのか

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陳登元著、別院一郎訳『敗走千里』(ハート出版)
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「南京大虐殺」なるものが政治宣伝戦争上で、でっち上げられた架空の事
件だったことは、120%証明されている。客観的科学的証拠がなく、反論
もなせず、しかし中国は政治的プロパガンダを続ける。フェイクの総合展
覧会が南京にある反日記念館である。

本書は、南京大虐殺の虚妄、フェイクを中国軍兵士として参戦した中国人
が自ら語った貴重な証言である。

じつは昭和13年に、この本は出版され、百万部を越えるベストセラーと
なっていた。それを消したのはGHQだった。焚書として、発禁図書とし
てGHQが没収し、廃棄したのだ。

「南京に山積みされた死体の山」とは、蒋介石軍の督戦部隊が、敗走しよ
うとした自国軍兵士を機関銃で撃ったものだった。

便衣隊とは、つねに軍人が一般市民に化ける服装を携帯していたという実
態があった。

実際に中国軍に強制徴募され強制的に戦闘地に駆り出された中国人青年・
陳登元が見たのは、中国軍人の腐敗、その略奪ぶりのおぞましさだった。
 陳登元は父親が重慶で親日家だった関係で10代で日本留学の経験があ
り、ちょっと祖国へ帰るといって日本を去って、そのまま運悪く徴兵され
てしまった。

彼は手記を綴った。
 
それを日本で家庭教師だった別院氏が翻訳した。

「僕はこの2度と得難い戦争を記録しておく決心をしました。幸い、僕
の耳はまだ、砲弾にやられた断末魔の人間の叫喚が残っています。生臭い
血の臭いが鼻に残っています。

バラバラになった人間の腕や、旨や、首や、そんなものが目に残っていま
す。僕は書きました。僕の経験し、見聞せる範囲内においての殆ど残らず
書きました」

読んでみると、中国軍とは、こういう出鱈目な行為をする匪賊だったこと
が了解できる上、南京大虐殺は完全に否定されている。

2017年07月01日

◆資金洗浄に手を貸した中国の銀行を制裁

宮崎 正弘



<平成29年(2017)6月30日(金曜日)弐 通算第5334号> 
  
 〜米、北朝鮮の不正送金、資金洗浄に手を貸した中国の銀行を制裁
   米中「外交・安全保障」対話直後にムニューチン財務長官が発表〜

 北朝鮮に禁止されているミサイル部品、精密機械など制裁品目に該当す
る不正輸出に手を貸して、資金洗浄に協力してきた遼寧省の丹東銀行を、
米国は「取引停止」とする。

同時に密輸に関係した2人の中国人と海運会社1社(大連のグローバル・ユ
ニティ海運)も制裁対象に加えるとした。

これは6月29日にムニューチン財務長官がホワイトハウスの記者会見で明
らかにしたもので、制裁を名指しされたのは以前から噂のあった銀行だけ
に、それほどの意外感はないが、同銀行と迂回取引のある米国の銀行は当
惑している。迂回融資、迂回送金も含めての捜査がなされるとした。

制裁の内容はと言えば、丹東銀行が米国内の金融システムにアクセスが出
来ないことにするためであり、制裁効果は疑わしい。トランプ政権の対中
姿勢の象徴的な打ち上げ花火に過ぎないと捉えることも出来る。

しかしタイミング的にみると、米中の高官対話(米中外交・安全保障対
話。ただし会談は決裂し、共同声明は発表されなかった)が行われた直後
でもあり、まして同日にトランプ大統領が文在寅・韓国大統領と首脳会談
を行う直前だったのである。

効果的なタイミングを演出していることがわかる。

トランプ・文在寅会談は、韓国のメディアにしたがうと米側は異例の厚遇
を示していると積極的な前宣伝に余念がないが、北朝鮮の核開発凍結に非
協力的であり、そのうえ米軍が進めるTHAAD配備に意図的な遅延をな
す韓国の文政権への不信感は払拭しがたく、米韓首脳会談が成功する可能
性は薄いだろう。
     
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◆樋泉克夫のコラム 
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【知道中国 1590回】        
――「正邪の標準なくして、利害の打算あり」――(徳富29)
  徳富猪一郎『七十八日遊記』(民友社 明治39年)

                ▽

いま手許の『新潮国語辞典 現代語古語』(久松潜一監修 新潮社 昭和
40年)を開くと、「忖度」は「他人の心を推し測ること。推察。推測。」
とあり、「手数料」は「?手数の報酬。コミッション。?[法律]国家・地
方自治体が特に個人のためにするする行為の報酬」と記されているが、や
はり「忖度」には日本式のウエットな、「手數料」には中国式のビジネス
ライクでドライな響きが感じられる。同時に「忖度」にせよ「手數料」に
せよ、それぞれの社会の仕組みと人付き合いの文化から生まれた振る舞い
と考えるなら、兎にも角にも互いの違いをハッキリと知っておくべきだ。

だが、ここで些か戯画化して考えてみるに、はたして殿サマと越後屋の関
係は「忖度」によって支えられているのか。はたまた両者は「手數料」に
よって結ばれているのか。おそらく権力と財力をテコにしたアコギな間柄
が「忖度」と「手數料」の相乗効果によって暴利を生み出すカラクリは、
日本も中国も同じようなものだろう。だが、考えてみれば、どこかが違う
ように思う。

日本の場合、取り引きの場に「葵の御紋」を手にした越後のちりめん問屋
に扮した水戸黄門が登場し正体を明かせば、一切が問答無用。殿サマも越
後屋も転がるように庭に飛び出し、「水戸のご老公様」の前に土下座して
一件落着となる。だが中国の場合、おそらく水戸黄門役も、ましてや「葵
の御紋」に相当する権威も存在しないだろう。万に一つ水戸黄門役が登場
したとしても、おそらく中国版の殿サマと越後屋の2人が「忖度」を働か
せる一方、水戸黄門は殿サマと越後屋の2人に応分の「手數料」を要求す
るに違いない。

ここで半世紀程昔の香港での細やかな経験を。

ある時、歩道を歩いていると、後ろの方からサイレンが。振り返ってみる
と、猛スピードのバイクを白バイが猛追。50メートルほど前方で白バイが
追い付きバイクを強制停止させ、取り調べを始めた。物見高いが何とや
ら。早速、走っていって2人の脇に立って取り調べの見物と思いきや、ど
うも様子がおかしい。

どうやら交通違反を見逃す代わりの金額の交渉、つまり「手數料」の相談
らしい。話が長引くばかり。すると暫らくして後方からもう1台の白バイ
が。てっきり助っ人かと思いきや、どうもそうではないらしい。それとい
うのも後の白バイの接近を見届けるや、先の白バイの警官が違反者を急き
立て別の場所に行ってしまったのだ。2台目の白バイの警官は、ニヤニヤ
しながらUターンし、いま来た方向に走り去っていった。

もうお判りだろう。かりに後から来た白バイを取り調べ(「手數料」の
交渉)に加わらせたら、「手數料」は目減りしてしまう。違反者(正確に
は、違反容疑者)からの「手數料」は検挙した者が“徴収”する・・・今は
昔の香港での生活の知恵だった。

(54)【立憲政治と受負主義】=「才取主義(コンミツシヨン)」に骨
絡みであればこそ、「如何に政治上に於て、受負社會主義を改め、才取主
義(コンミツシヨン)を改めんとするも」、成功は覚束ない。じつは「受
負主義」と「才取主義(コンミツシヨン)」はコインの裏表の関係で、と
どのつまりは同じで社会の仕組みに組み込まれている。「受負ふ故に手數
料を取る。手數料を取る者と豫定し、豫定せらるゝか故に、受負となる次
第」である。だから政治面の改革だけで、この悪弊・病理を取り除くこと
はできない。

 当時、盛んに論じられていた立憲政治の行末を捉え、徳富は「立憲政
治は、受負政治とは、兩立致し難く候。如何に受負を廢止するも、「才取
主義(コンミツシヨン)」の流行する間は、先以てだめ」であり、それゆ
えに飽くまでも立憲政治を遂行しようとするなら「代議制度と、才取主義
(コンミツシヨン)との調和」を図るのが急務だろう、とした。


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【知道中国 1591回】      
 ――「正邪の標準なくして、利害の打算あり」――(徳富30)
      徳富猪一郎『七十八日遊記』(民友社 明治39年)

             ▽
 徳富の主張を現在に敷衍してみると、共産党の一党独裁を廃止し、立憲
政治を貫徹し民主化を目指そうとするなら、やはり社会全般の全域に根を
張っている「才取主義(コンミツシヨン)」の根絶が必要条件となるだろ
う。逆に独裁政権が「受負政治」を墨守・貫徹するだけでなく、より巧妙
な形で進める一方、国民の側が「受負政治」に利得を求めている限り、民
主化は夢のまた夢・・・春の日の街道の前方に現れる「逃げ水」のような
もの。近づいたと思うほどに、民主化=立憲政治は遠のくことになる。

 これを逆にいうなら、共産党政権は中国社会を“円滑”に動かしてきた
伝統的な「受負政治」と「才取主義(コンミツシヨン)」のカラクリを熟
知し、それを不断に“改良”しながら、より巧妙に延命を図っているとも考
えられる。

 30年に近い毛沢東の暴政によって政権基盤が動揺をきたすや、共産党
政権は国是を政治(革命)から経済(金儲け)に180度切り替えること
で、失われた国民的支持の再構築を目指した。なりふり構わずに社会主義
市場経済という野蛮資本主義の道を驀進することになり、経済活動におい
て「受負政治」と「才取主義(コンミツシヨン)」が大手を振って動き出
す。かくて共産党政権と国民――北京の最上層から最下層の庶民レベルまで
――の関係に「受負主義」と「才取主義(コンミツシヨン)」という伝統が
完全に息を吹き返した。

独裁政治が「受負主義」と「才取主義(コンミツシヨン)」によって成
り立っていることが顕著になったのは、やはり天安門事件後に起きた経済
の高度成長だった。それというのも混乱収束後、権力と財力の合体した
「権貴体制」の弊害が叫ばれるようになりはしたものの、一向に改まる気
配がみられないからだ。やはり民主化の大前提は「受負主義」と「才取主
義(コンミツシヨン)」の克服しかないだろう。であればこそ共産党独裁
打破ではなく、諸悪の根源ともいえる「受負主義」と「才取主義(コンミ
ツシヨン)」という悪しき伝統の打倒を掲げるようになってはじめて、中
国における民主化運動は本格化するのではないか。

だが、ここで考えるべきは、中国が中国であるゆえに受け入れざるをえ
ない広大な土地と膨大な人口という前提条件である。この条件を受け入れ
たうえで(いや、受け入れざるをえいないわけだが)、より効率的な統治
制度を考えるなら、おそらく「受負主義」と「才取主義(コンミツシヨ
ン)」の組み合わせを選択するしかなかったのではなかろうか。それとい
うのも強大な封建王朝といえども、末端の個々人までを管理することは事
実上不可能だからだ。いわば「受負主義」と「才取主義(コンミツシヨ
ン)」という統治のカラクリは、中国にとって必要悪だったということに
なる。

歴史的に振り返った場合、中国は連綿として続く王朝国家ではなく、中
国と名づけられた統治制度を受け入れた封建王朝の集合体だと考えられる
が、この問題は孰れ別の機会を設け詳細に論ずるとして、徳富に戻ること
とする。

(55)【英人と支那人(一)】=「日本人と支那人とは、同文同種と申
し候得共、其の一皮を?ひて」みると、「日清の距離よりも、清英の距離
は、寧ろ接近致し居り候」。それというのも、清英双方は「其の個人主義
の實行者たる點に於て」、「其の?禮を大切にし、儀式を重んずる點に於
て」、「不器用にして、重くるしき趣味を有する點に於て」、「酷肖致
し」ているからだ。

 たとえば「英國の日用品と、支那の日用品」を手に取ってみると、
「其の手鞏きと、頑丈なる擲ても、叩ても損はれぬ點に於て一致する」こ
とからも判るはずだ。

それにしても「日本人と支那人とは、同文同種」などという子々孫々にま
で害悪を流し続けるインチキを、いったい誰が、なぜ、いつ頃から口にし
はじめたのだ。
    《QED》