2018年01月28日

◆アメリカがTPPに復帰の可能性

宮崎 正弘

平成30年(2018)1月27日(土曜日)弐 通巻第5597号  

ダボスでの椿事はアメリカがTPPに復帰の可能性だが
  トランプは対中軍事的脅威に史上空前の国防予算を提示した

日本のメディアがほとんど軽視するか無視した。
 
マティス国防長官が先週、講演で語った内容の真髄は「対テロ戦争」では
なく、これからは中国とロシアの軍事的脅威への対応である、という軸足
の移動である。

ダボス会議でのトランプ発言の、もっとも重要な箇所は、TPPへの復帰
をほのめかしたことだろうが、同時にペンタゴンとホワイトハウスが用意
しているのは2019年度予算で、7160億ドルという、史上空前の国防予算を
提示し、しかも中国の軍事的脅威に対応するためとしたことではないのだ
ろうか。

これは2018年度国防予算より7%増加となる。
          

2018年01月27日

◆リチュウム電池原料確保だ

宮崎 正弘

平成30年(2018)1月26日(金曜日)弐 通巻第5595 号   
  
 コバルトの次はリチュウム電池原料(リシア鉱石)確保だ
   中国、EV市場の急拡大を予想し豪企業などへ連続的に出資

中国が血相を変えて狂乱的な投資を展開している。目標はEV(電気自動
車)の開発だ。エンジンならびに電池に必要なコバルトとリチュウムの、
あわよくば「独占」も狙って動いていることは周知の事実だろう。

コバルトはコンゴ民主共和国の山奥にある鉱山。これを経営する米国企業
から株式を購入し、26億ドルをぽんと支払ったことは小誌でも伝えた。

 コンゴは大航海時代前まで現在のアンゴラ、コンゴ人民共和国、コンゴ
民主共和国のみっつに跨る王国があった。植民地として乗り出してきたの
はポルトガル、仏蘭西、そしてベルギーだった。80年代初頭のコバルト危
機のときはフランスとベルギーが空挺団をおくり、パラシュート部隊が反
乱軍を制圧した。

当時、日本鉱業はコバルト鉱山の山奥に技師を派遣していたが、「よもや
自衛隊が救援にくることはないだろう」と諦めていた。救援にやって来た
のはベルギーの特殊部隊だった。

中国はそうした教訓を知ってか知らずか、リスクの高い国に投資するのは
平気である。典型がリビアだった。

豪への投資も、中国人はもっぱら個人の不動産買いに熱中してきたが、国
有企業は鉄鉱石鉱山、レアメタル鉱区に投資してきた。最近はリチュウム
電池原料を産出する鉱区、精製する企業への投資が際立ってきた。2015年
に豪は世界需要の36%を供給し、このシェアは2021年に48%まで伸びると
される。

リチュウムを含む鉱石は「リシア輝石」である。輝石というのは宝石の一
種、世界でもメキシコ、パキスタン、マダガスカル、アフガニスタンなど
ややこしい国々に埋蔵が確認されてきた。

これまでの需要といえば、宝石だけだから、コストが引き合わず、チリの
SQM社や南米の塩湖などが、供給元とされた。しかしEVの本格開発を
決めた中国では2017年に需要が強大化し価格が30%も高騰した。

こうなると目の色を変えるのが華僑の投機筋である。早速、豪の供給先へ
唾をつけ、ボリビアの塩湖にも開発資金を投じる。

就中、西オーストラリアに位置する鉱区開発に中国の大手「天済鉱業」
(ティアンチ・リチュウム社)は6億ドルを投資し、またパース郊外のグ
リーンブッシュ鉱山にも米社タリソ社と協同で精製プラントを建設中、す
でに2億5000万ドルを投じた。年間4800トンの原籍採掘能力に高めるとい
う計画だ。

このほか江西省のリチュウム電池企業は西オーストラリアのマウント・マ
リソン社株の25%を取得した。


▼先行きの需要を目先の計算だけでみると投機心が生まれる

こうした先乗り行為にかけては日本企業、韓国企業を中国企業が出し抜い
ている。

ただしトヨタはアルゼンチンでリチュウム鉱山を経営する豪企業オロコブ
ロ社に2億2400万ドルを投資した。 

 数年前、スマホに欠かせないレアアースをめぐって中国は対日輸出を制
限し、コストが三倍四倍となっても供給しなかった事例がある。けっきょ
く日本勢はカザフスタンなどに供給元を多元化し、昭和電工などは中国国
内に生産拠点を移し、また日本ではリサイクル運動がさかんとなった。

このため中国の寡占によるコスト操作は泡と消えた。いまでは日本企業に
買ってくれと泣きついている始末。
 ということはEVブームが見込めても、すでに世界各地のリチュウム電
池原料鉱山が増産に踏み切っており、需給関係が落ち着くと価格も底をう
つだろう。
 先行きの需要を目先の計算だけでみると投機心が生まれるものらしい。
          

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知道中国 1694回】            
――「支那人に代わって支那のために考えた・・・」――内藤(1)
  内藤湖南『支那論』(文藝春秋 2013年)

                ▽
すでに取り上げた『支那漫遊 燕山楚水』(博文館 明治33年)(1642
回〜1507回)を著した当時、内藤は『萬朝報』の記者だった。その後、さ
らに研究を積み、明治40(1907)年には狩野享吉の推薦によって京都帝国
大学講師となる。

以後、記者時代の経験を背景に学問研究の成果に基づいた時局的評論を積
極的に展開した。京都帝国大学から現在に連なる「京都の支那学」の系譜
に大きな影響を与えているだけに、大正期を考える上では彼の『支那論』
は、北一輝の『支那革命外史』や橘樸の一連の論考と同じように、やはり
避けては通れない。これに加えたいのが辻聴花、中江丑吉、鈴江言一、さ
らには吉野作造か。

大正期の最初に取り上げるのは、内藤の『支那論』(文春学藝ライブラ
リー 2013年)である。同書は付録を含む「支那論」と「新支那論」で構
成されている。前者は大正3(1913)年、後者は大正13(1924)年の発表
だが、「新支那論」については後日に廻すとして、先ずは「支那論」から
取り掛かりたい。

付録に納められた論考は明治期、つまり辛亥革命に先立つ数年の清末混乱
期を扱っている。発表時を考え、先ず付録の部分(表題は以下)を読んだ
うえで、本論の「支那論」に進むことにする。

1)明治44年5月:「清国の立憲政治」
2)明治44年10月:「革命軍の将来」
3)明治44年11月:「支那時局の発展」
4)明治45年3月:「中華民国承認について」
5)大正元年8月:「支那の時局について」
6)大正2年7月:「支那現勢論」
7)大正2年7月:「革命の第二争乱」

それにしても、である。書店の店頭で文春学藝ライブラリー版『支那論』
を手にして先ず驚いたのは、表紙帯封に記された「100年前の大ベストセ
ラー 近代日本最高の中国論」の惹句だった。

些か大袈裟に過ぎはしないか。「100年前の大ベストセラー」はともか
く、「近代日本最高の中国論」は、はたして正鵠をえた評価なのか。そん
なわけで「近代日本最高の中国論」の最高ぶりをジックリと“堪能”してみ
たいと考えた。

先ず明治44(1911)年5月というから辛亥革命勃発の5ヶ月ほど前の大阪
での講演を基に「大阪朝日新聞」(同年6月25日)に発表された「清国の
立憲政治」だが、「近頃支那では立憲政治というものは大変に評判の好い
語になっておる」と説き起こす。

「支那のような守旧国が立憲政治に対して興味をもつのは誠に不思議のよ
う」だが、じつは「守旧国であるが、また時としては非常に急進の国であ
る」。では、なぜ「守旧国」が最近になって一気に「急進の方に大分傾い
ておる」のか。それというのも「殊に支那では立憲政治を一つの護符、大
層結構なお守りのように考え、何でも立憲政治をやれば国が盛んになるよ
うに考えておる」。

日本は明治維新を経て立憲政治を進めたゆえに興隆し、朝鮮は立憲政治を
受け入れなかったため日本に併合され国が滅びたと、「非常に簡単に一刀
両断に判断し」ている。そこで、「立憲政治さえやったら、支那の分割も
なく、また決して滅びない、段々えらくなると信じておる傾きがある」と
いうのだ。

「何でも立憲政治をやれば国が盛んになる」という短絡的実利主義こそ、
林語堂が「勧善懲悪の基本原則に基づき至高の法典を制定する力量を持つ
と同時に、自己の制定した法律や法廷を信じぬこともでき」ると説く「民
族としての中国人の偉大さ」に通ずるように思う(『中国=文化と思想』
講談社学術文庫 1999年)。目の前の実利のためなら、さっきまでの原理
原則など擲ってしまっても平気の平左・・・無原則の大原則であります。
《QED》

2018年01月26日

◆トランプ、ダボス会議に乗り込む

宮崎 正弘

平成30年(2018)1月25日(木曜日)通巻第5593号   

トランプ、「グローバリズムの巣窟」=ダボス会議に乗り込む
  中国は劉?が「中国の新モデルが世界経済の牽引車に」と演説

 今年のダボスはグローバリスムとナショナリズムの対決、火花が散る。
スイスの雪深いリゾートに、それも真冬に集まろうという酔狂な試みに、
政治家が出席するようになったのは、ダボス会議がそれなりの影響力を保
持するからである。

従来の名士の集合、ビル・ゲーツやジョージ・ソロスが主賓格だった時代
とは異なって、政治の意議がむしろ高まってきた。

すでに開会セレモニーでは、インドのモディ首相が演壇にたって「世界貿
易は開かれた秩序」云々と力説し、昨年の習近平「グローバリズムが世界
貿易を躍進させる」の基調を継いだ。

だが、ダボスで語られるのは「綺麗事、大言壮語、実践されたためしは薄
い」(『プラウダ』英語版、1月24日)と酷評し、ロシアのプーチン大統
領は参加しない。日本の安倍首相も平昌五輪には出かけるが、ダボス出席
は見送った。

 前後してフランスのミクロンは「欧米日は、中国の台頭に目を光らせる
べきだ」と述べ、また独首相のメルケルは逆に「グローバリズムに敵対す
る勢力の台頭は危険」などと、真っ赤さかなことを述べている。

こうした間隙をするりとぬって、美辞麗句の限りを尽くした演説をしたの
は、中国から来た劉?(習近平の経済顧問格。政治局員)だった。

「量より質にもとづいて中国は経済の新モデルを構築し、世界第二位の
GDP大国となった。この状況下、中国は諸外国から新しい投資への絶好
のチャンスを創出する」などと薔薇色のシナリオを語った。

また劉?は「中国は改革開放以来40年の実績がある。ことしはもっと大
胆に金融市場を開放する」とも述べて、聴衆の耳目を集めた。

グローバルエコノミーで裨益した、主として金融関係者が多く集まる国際
会議ゆえに、ここでナショナリズムを述べるのは環境に適合しないと見ら
れる。


▼価値紊乱者の闖入

今年の真打ちはトランプ大統領だろう。

まさに雰囲気をぶちこわすかもしれない価値紊乱者が闖入するのだ。

ウィルバー・ロス商務長官、ムニューチン財務長官、ティラーソン国務長
官らを引き連れてダボスに乗り込んだトランプ大統領は、25日(日本時間
26日早朝)に演壇に立つ。何を喋るかはお楽しみ。

しかし、ダボス会議に出席した米国大統領は過去に2000年のビル・クリン
トンだけで、ほかの歴代大統領はダボス会議を軽視してきた。

しかもグローバルエコノミーの信奉者の集まりであり、同時に世界の名士
の社交場でもあり、「アメリカンファースト」を唱えるトランプの登場は
場違い、雰囲気を壊す可能性が高い。だからこそ、面白いイベントともな
るだろう。
         
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
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 アメリカ人学究にも、こういう正しい歴史を知っている若者がいた
   歴史学界はいまもルーズベルトが正しかった史観に支配されてはい
るが。。。

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ジェイソン・モーガン『日本国憲法は日本人の恥である』(悟空出版)
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アメリカ人政治学者の新人が日本で登場した。

GHQの押しつけた国家の基本法を後生大事に墨守する日本人は、おめで
たいのか、よほどの莫迦か、それにしても『日本人の恥だ』と押しつけた
国の人からは言われたくないよね。

いまさら指摘するまでもないが、憲法を自主的に制定することなくして日
本は救われない。こうした主張はいまや日本全国津々浦々に蔓延ってい
て、アメリカの学者が同調したからといって、新しく耳をそばだてる必要
はないだろう。

それより、評者(宮崎)が気になったのは、なぜ、この著者が日本を理解
し、日本の保守論客が言っていることと同じ発想をするに到ったかの思想
遍歴である。

スコット・ストークス氏の場合、評者も知り合ってすでに47年。最大のイ
ンスピレーションは三島由紀夫である。そしてストークス氏はクエーカー
教の英国紳士であるがうえにアメリカの徒らなリベラルに被れなかった。
だから勇気を持って「大東亜戦争は日本が正しかった」と堂々と言えるの
である。

ケント・ギルバート氏とも評者は30年の知り合いだが、最初は「南京大虐
殺はあった」、「日本人は戦前ひどいことをした」とアメリカの学校で教
わった世代であり、ようやくこの数年で「変身」した。

伏線としてあった動機は、卒論が三島であったこと、ケント氏はモルモン
教徒だという二つのことを知っておく必要がある。キリスト教徒の異端
は、アメリカにおいて非知性の代弁でもあり、歴史修正主義を頭から否定
するリベラル派の勝利史観を鵜呑みにしない体質があるからだろう。

さて、この本の著者ジェイソン・モーガン氏の場合、その思想転換はいか
にして起きたのか。そこにこそ興味がある。

幼少の頃より、親の押しつけるカソリックの価値観に馴染めなかったとい
う出発があるのだが、アメリカでは「日本が悪い、南京大虐殺はあった」
と単細胞的に信じてきた。

直接の転換点はアイリス・チャンの「レイプ・オブ・ナンキン」を読ん
で、そのあまりの嘘に立腹したこと、「なにかおかしい」と気がつき、大
学で徹底的に、猛烈に近代史を勉強した。アメリカの歴史学界を牛耳る教
授等が『反米』でありながらも同時に『反日』だという錯綜した思想状況
がある事実を認識するに到った。

つまりアメリカの大学教授に象徴される、所謂『インテリ』とかの人たち
が、アメリカの弱体化を称賛する一方で、日本をやっつけたことも同時に
称賛するという矛盾を犯していた。基底にあるのはキリスト教の傲慢さで
ある。

それらを発見した著者は、ルーズベルト大統領の惹きおこした陰謀的な振
る舞いにはたと気がつき、自らを修正主義者と攻撃されようとも真実を追
究する言論活動をはじめる決意を抱くに到ったのである。
そうした意味で、本書は新しい世代への問題提議となっている。

2018年01月25日

◆AIをマスターした者が

宮崎 正弘

平成30年(2018)1月24日(水曜日)通巻第5592号   

「AIをマスターした者が誰であれ、世界の支配者になる」(プーチン)
  中国共産党御用達、「中国のグーグル」と言われる「百度」のロビ
ン・リー

ロビン・リーはクリスチャンネーム。なぜ中華世界の若者が、こういう英
語名が好きなのか、ともかくリーは世界的な著名人である。本名は李彦
宏。49歳。

アリババのジャック・馬(馬雲)。テンセントのポニー馬(馬化騰)と並
んで中国IT業界の三羽烏。中国人の若者があこがれる大金持ち。3人の
いずれもが貧困の零細企業を立ち上げネット革命の波に乗って瞬く間に
チャイナドリームを実現した。

なかでも注目がロビン・リーこと李彦宏である。山西省陽泉出身で北京大
学へ首席合格。ニューヨーク州立大学へ留学し、むろん英語は流暢だが、
米国ではウォールストリードジャーナルのソフトエンジニアとして働いた。 

アメリカ人の同僚は「ところで中国にはコンピュータはあるのかい?」と
聞いた。

2000年、北京へ帰国して創業。グーグルの中国版を創設し、あたりに当
たって、「百度」は2017年度経常利益が170億ドル。李個人の資産は
130億ドルとも言われる。株価を時価総額で換算しているから、毎年中
国の長者番付は入れ替わるが、ジャック馬、ポニー馬と並んで、ロビン李
の三傑はつねにトップファイヴにいる。

さて問題はかれらの狙いである。

中国共産党が狙うのはビッグデータで国民を監視し、ネットによる支配
だ。つまり中国共産党がビッグブラザー、そのためにIT革命の成功者を
くわえ込み、共産党に協力させ、つぎにAI革命を先行させて、世界の覇
権を握る野心を燃やす。
  
まさにプーチンが言ったように「AIをマスターした者が誰である、世界
の支配者になる」のである。

すでにソフトの暗号公開を義務づけられ、データの提供が求められ、グー
グルなどは中国市場を去った。中国の強引な遣り方に欧米勢はいきり立っ
たのだ。

百度は経常利益の2・3%をR&D(研究開発)に注ぎ込んで次世代の
AI開発に余念がない。すでに自動運転自動車の試作品は公開している。


▼買い物の記録も、検索履歴もすべてがビッグブラザーという支配者に握
られた

アリババで買い物をすれば、忽ちにして個人情報は管理される。ビットコ
インもすべて記録される。百度の検索エンジンを利用すれば、その検索の
傾向、系列など個人データは記録され、権力に掌握される。

顔面記憶データは、中国全土どこにでも張り巡らされた監視カメラによっ
て、手配された被疑者は、およそ六、七分で拘束されるシステムがすでに
完成した(これはBBCの貴社が実際に試して分かった)。

失敗したと見られたバイクシェア、自転車シェアという「ウーバー」類型
のビジネスも競合段階をすぎて淘汰が進んだ。

数社が倒産した段階で、「いまさら何を?」と業界が首を傾げるのだが、
ひょっこりと新参社が現れた。つまり中国共産党系の企業がデータを蓄積
するために、倒産企業買収などで一気に市場を制圧しようと目論んでいる
のである。

こうした観点から中国のAI開発、ビッグデータの開発をみておく必要が
あり、日本の財界や経済界のようなAI未来楽観論は、平和ぼけの最たる
ものということである。

          
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【知道中国 1693回】      
――「脱亜入欧」から「脱漢入亜」へ
  田中克彦『言語学者が語る漢字文明論』(講談社学術文庫 2017年)

   ▽

漢族社会の周辺に在って「漢字を拒否して独自の文字を発明した民族
は」、「漢字のおそろしい力、漢字を使ったら最後、自らの言語が?み込
まれ、失われてしまうかもしれないということを直感的に知って」いた。

そこで独自の「突厥文字、契丹文字、女真文字、西夏文字など」を生みだ
した。だがジワリジワリと浸透する「漢字のおそろしい力」によって、突
厥、契丹、女真、西夏などの民族は「その後姿を消してしまい、おそらく
かなりの部分が、漢族の中に吸収されてしまったのであろう」。

じつは「漢字を使ったら最後、徹底的な訓読みを維持しつづけでもしない
かぎり、自らの言語は消えてしまい」、やがては「民族の消失につなが
る」と、著者は主張する。誠に言葉は文化――《生き方》《生きる形》だ。

ならば漢字を放棄した朝鮮半島におけるハングルは、鴨緑江の対岸からの
覇権圧力を防ぐための防波堤とも考えられる。

西方の大陸に対してはハングルが、東方の日本,太平洋を越えたアメリカ
に向っては核爆弾とICBMが防衛上の最終兵器ということか。韓国において
も“北へ倣え”に違いない――ならば朝鮮半島から漢字を一掃した人物の“先
見性”は称賛されてしかるべきだろう。だが、反面では儒教文化を骨絡み
に受け入れ現在でも励行しているわけだから、喩えようもなく間の抜けた
夜郎自大的民族と言っておきたい。

著者は「古今の教養に通じ、経験深い政治指導者は、片時も言語問題の重
さを忘れてはいない」と記し、その一例としてトウ」小平の発言を紹介する。

「1974年のことだと言われる。日本の訪問団が中国を訪れた際、一行の代
表西園寺公一氏が、中国側に、かつて日本が中国に加えた蛮行をわびたと
ころ、トウ」小平氏は、「中国もまた日本に迷惑をかけた。一つは『孔孟
の道』を伝えたことであり、二つ目は『漢字の幣』を与えたことだ」と応
じたという」。

ここに記された「幣」は「弊」の誤植だろう。「漢字という障害物」を糾
弾する前に、やはり誤用・誤植はイケマセン。訂正願う。

西園寺を筆頭とする訪問団の面々は、このトウ小平の発言を外交辞令と聞
き流してしまったかもしれない。だが歴史を顧みるなら日本人を眩惑し、
日本人をして中国と中国人に対する過度の拝跪・重視、その裏返しの侮
蔑・軽視――共に見当違い――という心情を抱かしめた主因は、トウ小平が詫
びるまでもなく「孔孟の道」と「漢字の弊」だったと確信する。

その辺りの事情は川田鐵彌が『支那風韻記』(大倉書房 大正元年)で、
「論語の眞髓は、全く日本に傳はつて、支那には、其の實が洵に乏し
い」。「書物など讀むにも、用心して之を見ないと」「支那人の書いた書
物に、讀まれて仕舞ふようになる」。

「元來正直な日本人など」が「日本化された漢學で、直に支那を早合點」
してしまう。「四書を始めとして、何れの書も、意味をアベコベにとる
と、支那人の性情が、自ら分る」と説いている通りである。

どうやら表意文字である漢字――言葉が本来的に持つオトという最重要の働
きを抜きにしてイミのみが容易に伝わってしまう――が玄界灘を越えてもた
らされたことで『論語』『孟子』『中庸』などが日本に持ち込まれ、やが
て「日本化された漢學」が生まれ、それによって「直に支那を早合點」し
てしまい修正されないままに現在に立ち至っているようだ。

また著者は「漢字は日本人のあたまから聴覚映像を消し去ってしまっ
た」という罪深い文字でもあるとも説く。オトを伴わないから、頭の中に
像を描けないのだ。

著者の考えに賛意を表しつつ、半世紀余の中国語との付き合いから2,3
の感想を示してみると、

だから、自己省察には著しく不?弁解とヘリクツには最適であるゆえに、
政治的言語として絶対的。?大袈裟な表現が多用されるゆえに、大言壮語
が日常的。?脳内に聴覚映像を結ぶことが困難であるゆえに、瑞々しく細
やかな感情の表現は絶望的。向き。やはり日本語は日本の根幹であり、日
本人の大本・・・言葉は社稷である。
《QED》

(宮崎正弘のコメント)、ここにある「?弁解とヘリクツには最適である
ゆえに、政治的言語として絶対的。大袈裟な表現が多用されるゆえに、大
言壮語が日常的。?脳内に聴覚映像を結ぶことが困難であるゆえに、瑞々
しく細やかな感情の表現は絶望的」という箇所は、まさに如実に中国語の
特質ですね。

2018年01月24日

◆ペンス副大統領がイスラエル国会で演説

宮崎 正弘

平成30年(2018)1月23日(火曜日)弐 通巻第5591号   

 ペンス副大統領がイスラエル国会で演説。議場騒然。
  「エルサレムへの米国大使館移転は2019年末までに終える」

2018年1月21日、ペンス副大統領はエジプトとヨルダン訪問を終え、イス
ラエルのベングリオン空港に到着した。

翌日(1月22日)、イスラエルの国会(クネセト)で演説したペンス副大
統領は「トランプ大統領が鮮明にしたように米国大使館の東エルサレムへ
の移転は、2019年末までに終える」と明言した。

ペンスは共和党保守穏健派を代表するが、宗教的にはエバンジュリカルで
あり、聖書を尊ぶ政治家である。

イスラエルは870万人口のうち、4分の3がユダヤ人。残り25%がアラブ
系や、黒人、その他、エチオピア、ロシア系も目立つが、宗教的には17%
のイスラム教徒がいる。

だから磐石に見えるネタニヤフ政権は絶対多数ではない。

アラブ人議員は「エルサレムはパレスチナの聖都、将来のパレスチナ国家
の首都だ」と国会議事堂内でプラカードを掲げたため議場は騒然となる一
幕があり、議場から退席した。

イスラエル国会は定員120人だが、少数政党が乱立、アラブ系議員のほか
ユダヤ教原理主義宗教政党などがあって、与党「リクード」といえども過
半数は取れず、つねに少数政党との連立を組む。

「全員一致ならやめてしまえ」というのがユダヤ人の基本の掟であり、あ
らゆる言論は自由であり、したがって数のゲームなら、そのルールにした
がうというのがイスラエルの建国以来の取り決めである。
ことし5月、イスラエルは建国70周年を迎える。
          

2018年01月23日

◆トランプ政権、発足から1年

宮崎 正弘

平成30年(2018)1月22日(月曜日)弐 通巻第5588号  

 トランプ政権、発足から1年。マティスが国防方針を発表
  「対テロ戦争」から「中国ロシアは競合する軍事的脅威」に基軸修正

2018年1月19日、トランプ政権誕生から1年目にあたる日に、マティス国
防長官はワシントンのジョン・ホプキンス大学で演説し、国防の基本戦略
を、その基軸を変更した内容の方針を発表した。

この演説は、イミシンである。

 要点をまとめると、これまでの「対テロ戦争」のために闘ってきたアメ
リカの基本姿勢を後方に下げ、中国とロシアの軍事的脅威に言及し、秩序
を一方的に変えようとしているという認識を示した。

オバマ政権末期に、「ロシアは軍事大国」とする報告に修正されてきた
が、この基調を踏襲し、プーチンの軍事的冒険、その秩序への挑戦を正面
に捉えた。

中国の軍事力は、南シナ海における軍事行動を念頭に「経済力を用いなが
ら地域の秩序を脅かしている」と長期的な対決姿勢のために「アメリカの
軍事的優位」の維持と拡大を謳っている。

北朝鮮とイランは同列に「ならず者政権」と定義し、中国、露西亜に次ぐ
脅威と認識していることを示した。

いずれにしても、従来のテロリスト壊滅のための中国とロシアへの協力姿
勢は雲散霧消したと捉えるべきで、同盟国への分担強化など、日本への防
衛圧力も相当強くなると予測される。
         
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1691回】            
――「全く支那人程油斷のならぬ者はない」――(中野11)
  中野孤山『支那大陸横斷遊蜀雜俎』(松村文海堂 大正2年)

               ▽
 「?育は、近年長夜の夢を破ったばかりで之れぞと、見るべき點は何も
ない」としたうえで、「清國?育の宗旨、即ち本旨目的」は「忠君、尊
孔、尚公、尚貴、尚武此の五つ」であるが、実際には「第一尊孔」であ
り、「忠君」と「尊孔」とが逆転している。

それというのも、「易世革命の國であるから、人民が氣にくはぬ奴だと思
へば、何時にての腕力に訴へて、君主を易置するを得るので、君主專制國
とは謂ひながら、君權は實際極めて輕いのである」。

これに対してして「孔子は無冠の帝王で」あり、「恰も支那の孔子にあら
ずして、孔子の支那たるの感がある」からだ。

実際に四川で教壇に立った中野は、「授業中でもお搆ひなしに、矢鱈に唾
を吐き、手鼻をカミ散らすので、神聖なる?室は、嘔吐の巷となる、驚く
なかれ、支那では、如何なる大官と雖ども、紙やハンカチーフで鼻をカム
ものはない、皆な片鼻を壓さへて、フウーンとやるのである」。

では、「フウーンとや」って飛び出したブツは如何に処理されるのか。
「偶々手につくときは、壁や柱になすりつけ、果ては着物になすつて仕舞
ふ」。「作法といふものは八釜しくないので、人樣の前で、放屁すること
などは失禮とも、何とも、思うては居らぬ、先生の面前でも、平氣でやつ
ている。欠伸や脊延び、居眠等は常のことで、咎むるには足らぬ」。

中野が記した授業中での手鼻、放屁、欠伸、脊延び、居眠などだが、そ
れから60有余年が過ぎた香港中文大学大学院でも日常化していたことを思
い起こせば、このような振る舞いは彼らのDNAに組み込まれていると考え
たくもなる。

そうそう、「壁や柱になすりつけ、果ては着物になすつて仕舞ふ」と中野
が記したブツだが、当時の香港ではテラテラと光り輝く電柱やら立木を見
受けたものだ。先生1人に学生2人――1人が小生で、1人が美形の才女――のゼ
ミで、彼女が「片鼻を壓さへて、フウーンとや」ったのにはビックリ。し
かも先生も彼女も何事もなかったように講義を続けていたっけ。

四川では学校当局も学生も授業時間の長いことを歓迎する傾向が強い。
「之は知識に渇しているからでもあらう」。

そこで「根氣のよいには日本學生などの迚も及びつかぬ所である」。だか
ら「毎日七時間づゝ、授業されても、平氣でゐる、その代り尻から抜けて
仕舞うて多く覺えて居らぬ」。だから結局は「損である」。彼らの心は全
く以てウワノ空、である。

中野によれば、加えて学生は「呑氣、優長で、迫らず、焦らず、日本學生
の活?燃ゆるが如きに、比すれば、お爺さんの樣である」。彼らは「總じ
て、氣力に乏しく、一見した所にて、其粘液質たるを知ることが出來る。
これが大國を負うて立つ、将來の中華國民と思へば、聊か情けなき心地せ
ざるを得ぬのである」。

かくして中野は教室における自らの経験に基づき、設備は不完全、学習
態度のデタラメから、「一日開花に、後れてすら、文明國民の、堪ゆる所
でないのに、支那は、少なくとも百年の後に、居るであらう、昔の夢ばか
り、見て居る國民は、大抵こんなものであらう」と切り捨てた。「昔の夢
ばかり、見て居る國民は、大抵こんなものであらう」とは、けだし名言だ
といっておこう。

『支那大陸横斷遊蜀雜俎』を読み進んできて不思議に思えるのは、1911
年10月10日に起った武昌での武装蜂起をキッカケとする辛亥革命によって
満州族皇帝が支配する清朝からアジア初の立憲共和政体の中華民国に変
わったものの、革命によって激動したはずの社会の姿が明確には記されて
いないことだ。

はたして中野が社会の激変に鈍感だったのか。関心がなかったのか。ある
いは辛亥革命が内陸の四川までを揺り動かすには、まだ暫くの時間が必要
だったのか。我が大正に彼の中華民国・・・時代は確実に複雑さを増す。
《QED》

2018年01月21日

◆ドゥテルテ大統領が「目指すのは…

宮崎 正弘

平成30年(2018)1月19日(金曜日)弐 通巻第5586号  

 ドゥテルテ大統領は「プーチン」を目指すのか、「第2のマルコス」か
   それにしてもフィリピン国民の支持率は圧倒的に高いダーティハリーをもじって「ドゥテルテ・ハリー」。

麻薬ギャングを次々と銃撃し、仲買人も含めて7000人を銃殺した。刑務所
は自首してきた麻薬仲買、密売人で満員になった。

イスラム過激派をミンダナオのマラウィに閉じこめ、空爆を含む戦闘状態
にはいって、ついに街は廃墟となったがIS系の過激な武装集団を殲滅し
た。地域には戒厳令が布告されたままである。

国民の人気はあがる。やはりロシアのように「プーチンは強い指導者」、
ドゥテルテにも同じことを期待しているのだろう。

ドゥテルテ政権は憲法改正の検討に入った。大統領の権限を強め、戒厳令
も、複雑な手続きを簡素化し、大統領の決断で出せるようにするなど、政
治力を大統領に一本化しようという内容といわれるが、詳細はまだ外部に
は漏れてこない。

息子がダバオの副市長を突如辞任したのも、娘がマラカニヤン宮殿で、イ
メルダ夫人よろしく女帝のふりで写真を撮らせていたことが、リークされ
たからだが、そんな悪戯に対しても潔癖を演出するのは、どうだろうかと
西側の人々なら考えるだろう。

ところがイメルダ時代を思い出すフィリピン国民は、そうした些細な演出
にもしびれるのだ。

大統領の任期延長を巧妙な手段でやってのけたプーチンのような、強権政
治が、当面のドゥテルテ大統領の目標かもしれない。
                  

◆ドゥテルテ大統領は

宮崎 正弘

平成30年(2018)1月19日(金曜日)弐 通巻第5586号  

 ドゥテルテ大統領は「プーチン」を目指すのか、「第2のマルコス」か
   それにしてもフィリピン国民の支持率は圧倒的に高い

ーティハリーをもじって「ドゥテルテ・ハリー」。

麻薬ギャングを次々と銃撃し、仲買人も含めて7000人を銃殺した。刑務所
は自首してきた麻薬仲買、密売人で満員になった。

イスラム過激派をミンダナオのマラウィに閉じこめ、空爆を含む戦闘状態
にはいって、ついに街は廃墟となったがIS系の過激な武装集団を殲滅し
た。地域には戒厳令が布告されたままである。

国民の人気はあがる。やはりロシアのように「プーチンは強い指導者」、
ドゥテルテにも同じことを期待しているのだろう。

ドゥテルテ政権は憲法改正の検討に入った。大統領の権限を強め、戒厳令
も、複雑な手続きを簡素化し、大統領の決断で出せるようにするなど、政
治力を大統領に一本化しようという内容といわれるが、詳細はまだ外部に
は漏れてこない。

息子がダバオの副市長を突如辞任したのも、娘がマラカニヤン宮殿で、イ
メルダ夫人よろしく女帝のふりで写真を撮らせていたことが、リークされ
たからだが、そんな悪戯に対しても潔癖を演出するのは、どうだろうかと
西側の人々なら考えるだろう。

ところがイメルダ時代を思い出すフィリピン国民は、そうした些細な演出
にもしびれるのだ。

大統領の任期延長を巧妙な手段でやってのけたプーチンのような、強権政
治が、当面のドゥテルテ大統領の目標かもしれない。
      

2018年01月20日

◆岩波の本性を暴露したが

                      宮崎正弘

平成30年(2018)1月13日(土曜日)通巻第5578号   

 『広辞苑』こと『嘘辞苑』は開き直り、岩波の本性を暴露したが
  デルタもマリオットも「台湾は独立国」ばかりか、チベットも主権国
家だ、と

「台湾は中国の主権が及ぶ不可分の領土」などと嘘の記述を書いて、厳重
な抗議を無視した岩波書店は『広辞苑』の新盤にも、記述をそのままとし
て開き直った。

各地で猛烈な抗議運動が展開されてきたが、「印刷のやり直しは間に合わ
ない」とへんな理由をつけて釈明、しかし、旧版の10年前から、この誤記
の訂正は求められていたのである。

つまり最初から訂正する気持ちはなかったのであり、今後、活動家らは、
広辞苑不買運動へ切り替える姿勢を見せている。

他方、中国に乗り入れている米国のデルタ航空はウェブサイトにおいて
「台湾、チベット、マカオ、香港」を独立国家として扱ってきた。

同様に最大のホテルチャーン「マリオット」、服飾の「ZARA」、そし
て医療メーカーの「エドロニクス」などは自社のウェッブサイトにおける
表現で「台湾、チベット」は独立国家と記述してきた。

ZARAも中国全土、地方都市にも店舗を出しており、逆に不買運動に遭
遇する恐れが強い。

中国は岩波に開き直りに勇気づけられたのか、一斉にデルタ、ZARAな
どを名指して攻撃し始めており、「こうようなミステークは中国の主権に
関しての誤記であり、中国人の感情を著しく傷つけた」と訂正を求めている。
      
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 中国の風俗産業は増大しており、GDPの6%を稼ぎ出す
   統計に出ない闇の売り上げは、およそ17兆円と推定
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数年前の国連の調査では、中国における売春婦は400−600万人と言われた。

しかし専門家で中国の性産業の著作もあるエレイヌ・ジェフレイ(『中国
におけるセックスと売春』の著者)は、「少なくとも1000万人はいるで
しょう」という(サウスチャイナ・モーニングポスト、2018年1月12日)。

 それでも少ない見積もりで、たぶん2000万人の中国人女性は売春をして
食いつないでいると推定されている(同紙)。

昔のようなヤクザに売られたという悲哀な話ではなく、生活苦、レイオ
フ、離婚などの事由によって他に職場はなく、この稼業にいそしむしかな
いという環境が原因である。中国はいまでも男尊女卑の気風が残り、女性
の時間給は男性の65%しかないという統計もある。

「女子大生で美人ならば平気で『愛人稼業』に精を出すが、売春産業に身
を落とす女性は、殆どが地方出身者。学歴なし、手に職がなく、工場をレ
イオフされたり、離婚が直接の原因」と前出のエレイヌは語っている。

なるほど、習近平が売春撲滅を謳って「性都」と言われた広東省の東莞を
手入れしたため、30万人いた売春婦は全土に散った。

ところが東莞からは性産業はなくなっても、他の都市では、変わらずの営
業を続けており、いまではGDPの6%、総売上が17兆円にも達する一大
産業となっているようである。
        

2018年01月19日

◆現代中国のマタハリ

宮崎 正弘

平成30年(2018)1月17日(水曜日)通巻第5583号   

 現代中国のマタハリ、米国の首都でまたも暗躍
  米国の有力筋「ウェンディ・デン(マードックの前妻)は中国のスパ
イだ」

ウェンディ・デンは、現代中国の「マタハリ」である。稀な成功を収めた
女スパイだ。

彼女は山東省済南の貧困家庭に生まれ、苦学して江蘇省に移住した。努力
が認められ、保証人となる外国人老人が現れ、海外留学が適った。

凄まじいほどの野心家である。

その保護者の老人とできて、夫人を押し出して正妻に収まるや、すぐさま
当該国籍を取得した。そのための打算的な結婚だったのであり、国籍を取
得するや、さっさと夫を捨て、香港に出た。

香港のスター・テレビでインターだった彼女は、当時の社長ルパート・
マードックに近付いて、夫人の座を射止めた。

まずしき中国人女性が世界のマスコミ王の夫人として、セレブ人生。1999
年から2013年まで世界を歩いた。

 マードックは途中でデンの不誠実さに気がついた。

離婚を思い立ったのは、彼女の浮気癖というより、ウェンディ・デンは紛
れもなく中国のスパイだということだった。デンは英国のブレア首相と浮
き名を流し(これは英紙テレグラフがすっぱ抜いた)、マードックと離婚
後は、次にロシアのプーチン大統領に近付いて、意図的なゴシップ作りに
も精を出した。しかしKGB出身のプーチンが女性に甘いとは考えられな
いが。。。。

米国のメディアが一斉にウェンディ・デンなる女史のスパイ説を流し始め
る。ウォールストリートジャーナルなどの一流紙である。
 
これらの情報を整理すると、ウェンディはトランプ大統領の女婿ジャレッ
ト・クシュナーに巧妙に近づき、ロビィ活動を展開。ワシントンの連邦議
会のすぐ側に「「中国庭園」をつくるという未曾有のプロジェクトを推進
した。
 
ところが同敷地内に総工費1億ドル、高さ21メートルのタワーを建設す
ることが判明し、ウォールストリートジャーナルは「中国のスパイ基地
だ」と疑念を呈した。

この報道をうけて米国連邦議会は、「これは中国の偵察基地に転用され
る」と反対を唱える。中国は「トンデモナイ誤解だ。両国の友好のシンボ
ルである」と強弁を繰り返す。
 
たった一人の中国人女性スパイが米国政治をがたがたに揺らしている。

         
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1689回】          
――「全く支那人程油斷のならぬ者はない」――(中野9)
  中野孤山『支那大陸横斷遊蜀雜俎』(松村文海堂 大正2年)


             ▽
部屋に残された前夜の客の糞尿の片づけを命ずると、ボーイなんぞが「爐
邊から一掬の灰を持つて來て、之を覆せて行く」。だが、これでは何もし
てないと同じ。「まるで地雷火を布設した樣だ、却つて危險だ」。たしか
に間違って踏んだら、ヌルヌルとブツが絞り出されるだけではなく、まる
でバナナの皮を踏んだように滑って転んでしまう。

そこで中野は「早く地雷火を取除けよ」と命ずるが、彼らは「竹箒を持つ
て來て、パラパラを拂ひ散らす」のみ。だから「時ならぬに庭中?金の花
となつて、香氣はプンプン」である。それでなくても乾燥しているから鼻
が敏感になっていて、「香氣」は強烈。「ハンカチーフを以て鼻孔を覆
ふ」ことになるのだが、それでも「香氣はプンプン」。

「室内は大概土間」という悲惨さ。「客室の周圍の角々には大概小便が霜
を置いたやうに顯はれてゐる。柱と壁は鼻汁の餘剩で光澤を放つて居て、
容易に近寄ることはならず、天井は竹のアジロ、多くは破れ半ば客室の中
央に斜めに垂れ其には煤が堆たかく、宛然箕に煤を盛りて、斜めにした樣だ。

お負に蜘蛛の網は縱?に小蜘蛛大蜘蛛得意に遊んで居る、蜘蛛の養育所の
樣な觀がある」。かくて中野は、蜘蛛の巣の張る室内を「蜘蛛類研究には
大いに價値がある」と泣き笑うしかなかった。

次は「臭蟲(南京蟲)の?窟となつてゐる」という寝台となる。

「先づ巾3尺長さ5尺78寸、高さ1尺5寸位が通常で、中に?木3本若
くは5本、其上に割竹を竪に列べ、其所へ藁が薄く敷きてある、それも何
時敷いたものだかわからない」。どこの旅館であろうが寝台は例外なく
「古びてゐる」。かくて「此所は臭蟲(南京蟲)の?窟となつてゐる」

そこで泊まり先では、先ず「臭蟲(南京蟲)」への備えだ。「必ず此寝臺
を覆ふに、大なる油布を以てし、其上に藺蓆を敷き、更にふとんを敷き、
毛布を被りて寝たのであるが、それでも南京蟲は何所からドウして侵入す
るが、侵撃を受けて、眞夜中南京蟲と對戰したことは?々だ」
 かくて中野は「早く免疫となつて、彼れの襲?を意としなかつた」となる。

それにしても臭く辛い旅だが、まだまだ序の口といっておこう。

料理番だが、「衣袴は垢膩み、面は煤脂に染み、指爪は甚だ長く、禮讓謙
遜の美少なく、不潔無作法茶碗を拭ふに衣袴を以てする、鼻は手ばなに極
つて居るが、手につくときは衣袴になする、(中略)やがてそれで飯椀も
ふく、尤も布巾もあるけれども雜巾を兼ねて居るのだから同じことだ。鼻
をさすつた寝臺も柱も卓も靴臺も茶碗も箸も飯盤も拭ふのだ。之を麻布と
言うて居る。(中略)此の麻布を洗ひ出す桶が矢張同一だ、我國の樣に布
巾と雜巾の區別はないのである」。

客室だが土間ではなく、稀には床板式のものに出くわす。そこで「日本式
と喜んだのは、豈計らんや、床下でやがて異樣な聞きなれぬ聲がする」。
「四方を閉鎖し寝床に入れば、四方は寂として靜である、月光は皎々とし
て破窓の罅隙より入つて、燈火と光を爭」うのだが、床下の異音はいよい
よ高くなってくる。

「やがて臭氣は室内に滿ちて鼻を突き、旅疲れの體を起こし、床板の隙間
より燭をとつて見るに、數多の子豚親豚の?窟である」。「コレハたまら
ん」のである。

防臭対策応急措置を採ろうにも対応不可。「終夜臭氣の刺激で、安眠の出
來ぬ」。加えて旅館では「大抵客室の隣に、豚や牛が養はれてあ」り、
「矢張り臭氣は進入して來る」。便所では「豚と相對して用をたすかさも
なくば尻を豚に向けるか」。

そこで「君子危きに近よらずといふ孔子の言に背かず、廣濶の庭或は安全
の室の角に放置するのだ」。嗚呼、目に沁みるアンモニア臭・・・それで
も「東洋啓發を以て天職とする」のでしょうか。
            

2018年01月04日

◆トランプがイラン国民を鼓舞

宮崎 正弘

平成30年(2018)1月3日(水曜日)通巻第5564号   

「残酷で腐敗した政権に民衆が立ち上がった」とトランプがイラン国民を鼓舞
  「食料欠乏、猛烈インフレ、人権無視」が「外国の陰謀」だって?

 2017年暮れからイラン各地で反政府暴動が拡大し、2018年1月2日まで
に死者が22人、拘束されたイラン人は700人に達した。ハメネイ師は、急
遽記者会見し、「これはイランを敵視する外国勢力が背後で扇動してい
る」と呼びかけた。

ロウハニ政権下で猛烈なインフレは40%台から10%台に低下したが、食料の
値上がりが相次いでおり「クリスチャン・サイエンス・モニター」(1月
2日)によれば、1200万人のイランは空腹のままベットに入る貧困の日々
を送り、3300万人が食料不足を深刻に訴えているという。

 それなのにイラン政府は、シリアのアサド政権支援のために革命防衛軍
を送り、イラクにも軍を送り、イェーメンに軍事支援をなし、挙句はガザ
のハマス、レバノンの『ヒズボラ』を大々的に支援してきた。国民が飢え
に直面しているときに、外国へ軍隊を送るなど言語道断であると反政府デ
モは叫び、ついに立ち上がった。

すかさずイランを敵視するトランプ大統領はツィッターに、「残酷で腐敗
した政権」に抗議した民衆にエールを送り、「食料欠乏、猛烈インフレ、
人権無視」が、いまのイランの政治の貧しさだと批判した。

ハメネイ師が、こうした反政府運動を「外国の陰謀」とするあたり、周辺
の茶坊主に囲まれて正確な情報が入っていないうえ、一神教の傲慢さが
漂っている。
         
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
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半島は火の海となる怖れ、第三次世界大戦につながりかねない
朝鮮半島事情、ロシアの不気味な介入、中国という鵺、米国の関心の低さ

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柏原竜一『北朝鮮発 第三次世界大戦』(祥伝社新書)
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本書の題名はそのものずばり。たしかに刺激的であり、分かりやすい。間
もなく北朝鮮をめぐって半島は火の海となる怖れが強まり、それが第三次
世界大戦につながりかねないという危機状況を多角的に解説し、われわれ
の直面している未曽有の危険度を伝える。

本書では朝鮮半島の危機のほかに、中東など多方面の動向をユニークな視
点で解説している。

意外性と列強の思惑の交錯が複雑に絡んでいることがわかる本である。

しかしながら、世界史のプレーヤーを自ら降板してしまった日本には、そ
れなりの情報も入らない。

外交というのは軍事力と情報力の背景が必要だが、この2つの死活的要素
を欠く日本には、まともなインテリジャンス機関さえない。したがって本
書のような情報満載の書籍からか、或いは欧米のシンクタンク筋や当該方
面に明るい個人の情報に依拠せざるを得ない。

柏原氏は世界のインテリジェンス戦争の研究で知られる学究である。
 「水と安全保障はタダ」(イザヤ・ベンダサン)と思っている日本人
は、くわえて情報もタダだと思っているから始末に負えない。

情報とは、謀略、諜報、調略、防諜などの工作活動の上になりたち、スパ
イが命がけで集めてくる。

データベース、ハッキングなどからも精度の高い情報は収集できるが、そ
れらにはタイミングの問題と、人間の血の通った判断力がないため、宝の
もち腐れになるケースも多多ある。

さて題名の北朝鮮と朝鮮半島事情、ロシアの不気味な介入、中国という
鵺、そしてアメリカの無関心、そのアメリカに安全保障を依拠する日本と
いう構図があるが、本書では、これらに加えて中東の情報分析にかなりの
ページを割かれている。

評者(宮崎)が注目したのは下記の経緯の指摘だった。
 それは2015年のことだった。

 「イラク南部で鷹狩りをしていたカタールの首長家メンバーを含む多数
のカタール人が、何者かに誘拐される事件が起きました。イラクでも大き
く報じられたこの事件が解決したのは2017年の4月でしたが、『フィナン
シャルタイムズ』によれば、10億ドルの身代金が支払われ、その相手がイ
ランであり、アルカイダの関連組織であったというのです」(220p)。

つまりサウジアラビアの対カタール断交の芽が胚胎したのは、この誘拐事
件だった。
 
ビン・ラディンのアルカィーダに多額の献金をしていたのはサウジであ
る。秘密協定でサウジには手を出さないことが決められたという。9・11
実行犯の多くが、しかもサウジアラビア人だったことは私たちの記憶に新
しいが、柏原氏は、これが原因でカタールがアラブ諸国に浮き上がったと
いうファイナンシャルタイムズの記事に賛同してはおらず、むしろ2017年
5月のリヤド会議ではないかという。

「この会議の場でトランプ大統領は、カタールを名指ししてヌスラ戦線
(スンニ派の過激組織)の後身組織である「ファター・アル・シャム」に
資金を提供していると非難しました」

カタールの沖合ガス田は、じつはイランとの共有である。カタールはイラ
ンとの関係を緊密にせざるを得ず、同時にカタールには米軍の大規模な軍
事基地がある。

そのうえでカタールはロシアに急接近し、ロフネフツの大株主となって米
国を刺激した。つまりサウジのカタール断行の裏にはアメリカの戦略的意
思がある、と本書の著者が分析している。

カタールの孤立を救ったのがモロッコ、トルコであり、割り込んで得点を
挙げたのがプーチンだった。つまり米国は外交的に躓きを演じたというの
がこれまで経過である、とする。

 このほか驚くような情勢分析が本書ではさりげなく述べられているの
で、どのページもおろそかにはできない。

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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1681回】           
――「全く支那人程油斷のならぬ者はない」――(中野1)
  中野孤山『支那大陸横斷遊蜀雜俎』(松村文海堂 大正2年)

               ▽

先ず冒頭に掲げられた「緒言」と「外遊の動機」から、本書執筆に至る経
緯を探ってみたい。

 「光輝ある四千年の?史を有し、而も廣大なる境土を以て世界に卓絶
し」、「五億の生民を有し、堂々たる一統國を形成し」、「天然の沃野壤
土を以て天下に目せられ、天然物の豐富なるを以て世に誇れる」中華民国
であればこそ「世界各国に羨望せらるる」。「支那4百餘州の死活を制
し、世界の運命を左右せんとするものは、中原貫流の揚子江」である。

「世界潮流の現況を達觀」すると、「英米佛獨諸強を始め、其の他の列國
が、此所の活動飛躍を競ふこと頗る熾」しい。それというのも「實に世界
的殖産興業の中樞は、此の流域に存す」からであり、それゆえに「世界の
大事業は、近き将來に於て此所に一大發展を見るべし」。世界経済の将来
を左右するは「此の流域」とは、なんとも示唆的で刺激的な主張だ。

そんな揚子江流域において「天富の豐饒なる點に於て其の最も優勢なる
ものは、往昔の巴蜀、現今の四川省なり」。だが、そこは天然の要害に囲
まれた「噫交通至艱!!! 噫交通至難!!!」の地であり、他地域との
交流が困難であることから、「充分の發達を見るに至」っていない。それ
ゆえに「中華民國が常に各國の侮りを受くる」のである。これこそ「噫豈
一大耻辱と謂ぶべ」きだ。

「東洋啓發を以て天職とする我が日本」は、「渠と土壤を接すること最も
近く」、「其の人種」「其の文字」を「同ふする」がゆえに、「之が啓發
の義務」を持ち、「東洋の平和を永久に保維し、相提携して倶に共に富強
を期せんとする」。「啓發の義務」を負う日本人であればこそ、「中央支
那の事情を知るは、現時の急務」といえよう。

中野は四川省総督・錫良が教育振興のために募集した「教育家の招聘撰
擇」に応じ、「奮然決起し身命を抛ちて、此の寶庫の一端を開き、聊か國
恩に報ひん」として、広島県立中学校の職を辞し、「家族は東都に遺し、
挺身行李を携ひ、生國を後にし」て、「崑崙の麓、長江の源、遠く成都
(蜀)の地に赴くこと」になった。

以上から、「東洋啓發を以て天職とする我が日本」の立場から「世界各
国に羨望せらるる」はずながら「常に各國の侮りを受くる」中華民国を眺
め、同文同種・一衣帯水の関係にあるゆえに中華民国を「啓發」すること
は日本に課せられた「義務」である。その「義務」を全うし、「東洋の平
和を永久に保維し、相提携して倶に共に富強を期せんとする」という中野
の決意を読み取ることができそうだ。

これは中野だけが抱いたというより、当時の日本における前途有為な若者
の間にみられた考え、敢えていうなら素朴極まりないアジア主義といえる
のではなかろうか。

さて中野は、「玄海の荒波を渡り、渺々、茫々たる大洋に浮んで、東洋の
パリーと目せらるゝ上海」に上陸するのだが、「客は上陸の準備に取亂
れ、實に雜踏を極める。此時が實に油斷のならぬ時で、少し注意を怠れば
重要な荷物の行衞を失ふといふのである」から、安閑としてはいられない。


四囲を見ると苦力、苦力、苦力である。彼らの「風習と來ては、一目して
ぞつとする。手も足も垢で特別の皮膚を作り、腫物が全身に滿ち、襤褸を
纏うて、ノソリノソリと、客室をのぞき廻り、或は客膳の殘肉をハキダメ
から探し出して、舌打鳴らしてゐる。其の不潔さを見ては誰しも一驚せぬ
ものはない」。「蓋し華人は、不潔を意とせず、大小便は所きらはず、鼻
汁を無暗に何所へでも摺りつけ、喀痰を無暗にするからであらう。其の不
潔さ推して知るべきである」。

そんな彼らと、どうやって「相提携して倶に共に富強を期せんとする」の
か。《QED》
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【知道中国 1682回】                    
――「全く支那人程油斷のならぬ者はない」――(中野2)
  中野孤山『支那大陸横斷遊蜀雜俎』(松村文海堂 大正2年)

                ▽

上海では「内地奥深く旅行するには、先ず支那式を經驗するが好都合であ
らう」と考え、わざわざ「支那式を選んで純粹の支那旅館に投宿」するも
のの、便所の「甚だ風違ひ」に驚く。

「起床して直に便所に行つた、所が支那人が1人最早先がけして、一つ
の壺に跨りて、眼を圓くして?を膨らし滿身に力を入れてやつてゐるので
退却して來た」。暫くして出かけると、「此度は2人並んでやつてゐる」
ので、また「退却して來た」。暫くしてまた行くと、「此度は四人も並ん
で煙草を吸ひながら、ゆつくりと平氣でやつている」。なにせ日本式に個
室ではないわけだから、さぞや困ったことだろう。

 以下、中野の綴る上海の街の風景をいくつか。
 「食器を拭く布巾も、靴臺や、腰掛を拭く雜布も、區別がない。手鼻を
かんだ手を着物になする。其の着物で食器を拭く、斯の如きは、支那人の
特徴で彼等は少しも氣にせぬが、我より見れば、不潔でたまらない」。一
切合切が「不潔千萬なのには、驚くの外はない」。

 「市街は晝夜雜沓してゐる」。茶館はひどく賑わっているが、「殊に
妙なのは、荒物屋、八百屋、呉服店、菓子店、其他雜貨店等の店先にも、
夜は娼妓が顔見せしてゐる。茶館には、階上階下、常に客と娼妓で滿ちて
ゐる」。

「舶來品は、總べて日本より價が安い」。「各國商品競爭實に盛に行はれ
てゐる。商業上何が勝を制するか、獨逸の如きは我を大敵と見て甚だ努め
てゐる。大いに心すべきことである」。どうやら上海に、いや中国におけ
る日本の敵は「我を大敵と見て甚だ努めてゐる」というドイツ・・・昔も
今も。

「市中一番に繁華の街は、(中略)すべて家屋は、宏大に煉瓦にて疊ま
れてゐる。街道は、廣?で蒲鉾形に作られてある。人出は多く、常に賑わ
うてゐる」。

「商人は、各國各省から蝟集してゐる、人情、風俗、混然錯綜して一樣
でない。然し土人は、勤勉で商業を重んじて、善く外人に接し、大利を計
つて小利に安んじない、專ら營利に汲々としてゐる、だから人情浮薄毫厘
の爭ひに情誼を顧みない、風俗奢侈?飾を貴ぶのである」。

「各商店は軒を連ね、朱塗、?塗の大看板を掲げ、美事に飾られて」はい
るが、「唯道路の狹隘と路上の修繕行屆かず、雨水常に溜りて、池をな
し、糞尿之に混じて、臭氣鼻を衝く、嗅官爲めに麻痺する。實に余輩外人
には久しく堪へられない」。

「居留地には、巡査が辻々にゐる。大概印度人を採用してゐる。其容貌、
魁偉頭髪を束ねて、赤い布を醤油樽の箍の如く纏頭して外觀甚だ異様なる
風態をしてゐる」。元を辿れば英国東インド会社の門番として連れてこら
れたインド人のターバンを「醤油樽の箍の如」しとは、言い得て妙。

さて、いよいよ長江を遡航する船旅に出発となる。「すると案内のもの
は、出帆の延期を申込んで來る」。すったもんだの挙句に強引に出帆の準
備を進めた。どうやら「支那人は、上海に歸り辮髪を垂れると本性を現は
して、仲々我々の言ふ事を取り用ひない」らしい。

かくて中野は彼らには彼らなりの計算があって出航延期を申し出たはずと
考えた末に、「抜け目のないのは支那人だ。支那人に欺かれて、隨分困難
をしたものが、あつたとのことであるが、全く支那人程油斷のならぬ者は
ない」と悟った次第である。

宿舎から船まで「荷物運搬を數多の苦力に託」すも「油斷をすれば、彼等
苦力に竊み去らるゝの恐れがあるので」、「嚴重に監督しつゝ波止場に行
つて、船の倉庫に積み込んでしまふ迄」は見張りをし、それから船に乗り
込んだ。さぞや骨が折れたことだろう。
《QED》

2018年01月03日

◆中国、さらに厳しい外貨持ち出し規制

宮崎 正弘

平成29年(2017)12月31日(日曜日)通巻第5562号   

中国、「旧正月」を前に、さらに厳しい外貨持ち出し規制
  ひとりの上限を5万ドルから1万5000ドルに

 旧正月を前にして、中国人の海外旅行はピークを迎える。
 
3年前まで、中国人の「爆買い」は世界に脅威の印象を与える一方で小売
業界は商機到来と捉えた。ホテルや、デパートばかりか、ドンキホーテな
ど、あらゆる店舗が改装し、中国語のできる店員を雇い、さらなるブーム
に備えた。欧米でも同じ対策をとった。

ところが、爆買いは「突然死」していた。銀座のブランド旗艦店を覗かれ
ると良い。店内がガラガラである。

外貨持ち出しが制限され、ATMから現地で引き出せる上限は一日に1万
元(約」16万円)、年間に5万元(80万円)となったのも束の間、2017
年12月30日に当局は、後者の上限を1万5000ドル(24万円)に制限すると
した(前者は据え置き)。

これっぽっちの上限枠では海外で食事をして、交通費などを考えると、土
産にまで予算は回らないだろう。1
年に1
回ていどしか海外旅行は楽しめなくなる。逆に言えば中国人の観光客が世
界的規模で激減するだろう。

日本でもすでにその兆候があり、かれらの食事場所は豪華レストランか
ら、吉野屋、回転寿司、立ち食い蕎麦、すき家などに移行している。

過去2年間の動向をみても、中国人ツアー客相手の免税店は閑古鳥、店員
は暇をもてあまし、地方都市(福岡、神戸、長崎など)でも、ホテルはが
らんとしている(クルーズ船が主流となったからだ)。カメラ店も、ブー
ムは去ったと嘆いている。

新しい外貨規制は、2018年1月1日から実施される。

中国政府の発表では、目的は(1)資金洗浄を防ぎ(2)テロリストへの
資金の迂回を止める。(3)脱税防止としている。

そんな表向きのことより(そもそもATMを使って利便性の高い現地通貨
を目的地で引き出す上限が1日16 万円ていどで、資金洗浄、テロ資金、脱
税などに転用される筈がないではないか)、本当の目的は底をついている
外貨を防衛することになる。

あれほどブームだったビットコインも中国では取引所が停止されたため、
突然ブームは去った。ビットコインは昨秋から日本に熱狂が移った(が、
そのうちの幾ばくかは在日華僑、日本人を代理人に立てた中国人投機筋だ
ろう)。


 ▼本当の目的は外貨流出防衛だ

拙著で度々指摘してきたことだが、中国の外貨準備、公式的には3兆ドル
と言っているが(このなかには1兆1000億ドルの米国債権を含む)、対外
債権の多くが「一帯一路」の頓挫が象徴するように、すでに不良債権化し
ており、あまつさえ共産党幹部が不正に持ち出した外貨が3兆ドルを超え
ている。つまり中国の外貨準備は事実上マイナスに転落していると推測で
きる。

かろうじて中国が外貨を取り繕えているのは、貿易によるドル収入と、海
外企業からの直接投資が続いているからだ。これでなんとかやりくりして
はいるが、予測を超えるペースで外貨準備が激減しており、今後も、この
動向は悪化してゆくだろう。

次なる対策として、おそらく中国は海外で購入した資産売却に走る。つま
り買収した企業、土地、不動産の売却である。

また同時に「上に政策あれば、下に対策あり」の中国人のことだから、別
の手口により新現象が併行して起こるだろう。

第1はヤミ金融、地下経済、偽札の横行が予測され、第2に外貨持ち出し
も、小切手や証券などの手口が使われ、詐欺的な新手口が見られるように
なるだろう。

第3にこれまで日本などで買ったローレックスなどを逆に日本に持ち込ん
で売却することも予測され、ダイヤモンドなど換金価値の高いものが逆流
することになるのではないだろうか。
          
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【知道中国 1680回】           
――「早合點の上、武勇を弄ぶは、先ず先ず禁物とせねばならぬ」――(川田5)
川田鐵彌『支那風韻記』(大倉書房 大正元年)

    ▽

これまでも「各省で鑛山其他の物件を擔保に入れ」、いままた「軍隊解散
費及行政費の充つる爲」に借款に頼る。これに対し「列國は競うてこの借
款に應ずる」。その結末がどうなるのか。貸す方も、借りる方も、よくよ
く考えるべきだ。

「其五」=「中華民国は、どのくらいつゞくであろうか」。中華民国とは
いうものの、「極端に中央政府の權力の乏し」く、「各省毎に多大の實權
を有する共和政體で進む」しかないだろうが、それでは「國一國の體面を
取り直し、經濟上の基礎を鞏固にする」ことは「骨の折れる話である」。
各政治勢力が「何時迄も、内輪喧嘩するようでは、國内疲弊するばかりだ」。

中華民国崩壊は、日本にとって「一衣帶水を隔てた一大障壁を無くす」よ
うなもの。だからこそ「この際、多大の同情を以て、支那を研究する必要
がある」。だが、「書物の上で調べた支那大陸と、實地踏査した支那大陸
とは、著しく相違の點がある」。

やはり「孔孟の立派な學問は、日本に於いて、其の實を見ることが出來る
も、支那大陸では寧ろ有名無實の嫌がある」。「支那大國は、隣國であり
ながら、日本人に其眞相が誤解されてゐる」。これは、これまでの学者が
「或る程度の迄は、其責任を負はねばなるまいかと思ふ」。なぜ、いまな
お「日本人に其眞相が誤解されてゐる」のか。川田は痛憤する。

「支那に對しては、列國とも、其前途に就き、多少疑問を抱いて居
る」。日本人と違って「歐米人士は、支那の内地に入り、殖産興業上に關
し多大の研究を重ね」ている。だから、残念ながら「支那の現状を詳に研
究せんには、外人の著作を手に入れるより他」に便法はない。

ビジネスという「所謂平和の戰爭に、勝利を占むることは、今日の急務で
ある」からして、愛国心に富む商工業家が一念発起して、「特に江西・江
蘇・浙江・福建方面に、然るべき研究隊を派遣し、靜に實地調査に意を用
ひて貰ひたい」ものだ。

日本は、軍事力を頼って「干渉の下、無理に植民政策を施さんとせる獨逸
の不自然を學」ぶべきではない。日清・日露の両戦争で列強の関心が薄れ
た揚子江一帯に多額の資本を投じ、確固とした基盤を築いた「英國の態度
を、腹に入れてかゝ」るべきだ。それというのもイギリスは「武力もあれ
ば金力もあり、ゆったりとした中、抜け目のない、植民政策經驗に富ん」
でいるからだ。やはり日本は「抜け目のない、植民政策經驗」に乏し過ぎた。

なぜイギリスに学ぶべきか。ドイツ方式では、「元來恩を仇に持つ癖のあ
る支那人に、惡感情を抱かしむるばかりでなく、意外に、列國の非難を蒙
ることに陷らないとも限ら」ないからだ。

世界における日本の立場からして、「これから先は、どこ迄も落付いて、
公明正大の方針を採らねばならぬ」。「武勇を示して、商工業家を輔佐す
る位は、別に差支もなかろう」。だが、「早合點の上、武勇を玩ぶは、先
ず先ず禁物とせねばならぬ」。やはり「聲を小に、實を大とするは、最も
肝要である」。

この時から日本の敗戦までの大陸における日本の動きを振り返るに、総
じて言えることは「聲を小に、實を大とする」方式とは程遠かったように
思う。長い歴史と豊富な経験に基づく「ゆったりとした中、抜け目のな
い、植民政策經驗に富ん」だイギリスを筆頭とする諸列強の思惑に翻弄さ
れ、やがて悪辣・巧妙なスターリンに眩惑され、『四捨五入』するまでも
なく、「聲を小に、實を大とする」とは真反対に、声を大に、実を小で終
わった。

それにしても川田が学ぶべきではないと主張した「干渉の下、無理に植
民政策を施さんとせる獨逸」が、日中戦争中も、現在も、『友好裡』に対
中関係を推移させているカラクリは、やはり突き詰めて考えたい。たんに
ドイツが騙されているわけでもなかろうに。

それにしても「元來恩を仇に持つ癖のある支那人」とは・・・言い得て妙
である。
                       《QED》

2018年01月02日

◆戌年は大波乱、平成30年(2018年)予測

                    宮崎 正弘

平成30年(2018)1月1日(月曜日)通巻第5563号   

 戌年は大波乱、平成30年(2018年)予測
  トランプ中間選挙勝利、安倍首相悠々3選。朝鮮戦争の危機高まる

新年は目出度くもあり、目出度くもなし。
 
戌年は歴史的にみても大変化が繰り返されてきました。とくに本年は戊
戌。国際情勢は大荒れになりそうです。

米国は利上げ観測が高まり、株価は低迷傾向が前半期から顕著となり、逆
に日本株は上昇機運、日経平均は2万6000円台をうかがう地合が形成され
ています。

「安倍一強」は変わらず、おそらく戦後歴代首相の長期記録を塗り替える
でしょう。

習近平は前半期までやや安泰かも知れませんが、後半、経済の直滑降大暴
落が始めれば、フルシチョク的解任へ向かって高層部の権力闘争が激化
し、暴走が始まる兆しも否定できず、したがって中国は対外矛盾に外交を
転回し、北朝鮮か、尖閣諸島を狙った「小さな戦争」をおっぱじめる危険
性があります。

米国トランプ政権は日本のメディアが予測することとは逆に地盤が固まっ
ており、共和党主流派も、彼を引きづり降ろそうとするより秋の中間選挙
勝利に向けて陣営の立て直しをやり始めるでしょう。

トランプの支持率は回復気味です。エルサレムへの米国大使館移転があた
らしい波紋を呼ぶとはいえ、すでにイスラエル・パレスチナ紛争は地域限
定、世界史の視点からは大きく外れており、焦点はシリアからトルコ、レ
バノン、イラク、そしてイランに移っています。

厄介なのはBREXIT以降のEU諸国の亀裂、その方向性が不明となり
ました。

ドイツがいまだに連立政権を組めず、ひょっとして総選挙やり直しとなれ
ばメルケル退陣が射程に入ってくる。

シリア難民は「ゲルマン民族の大移動」の如しであり、トルコが300万人
を引き受け、セルビア、ハンガリーなどが国境を封鎖したため下火とは
いえ、こんどはアフリカからの難民が南欧に押し寄せており、引き続き
EU諸国の難題であり続けるでしょう。
 

 ▼欧州の団結がささくれだってきた

住民投票で独立賛成が過半をしめたバルセロナ中心のカタロニアは、選挙
やり直しの結果、またも独立賛成が多数となり、スペイン政府はなす術も
なく悄然となって、フランスもオーストリアも、イタリアも保守系政党が
大躍進、EU統合への亀裂がますます鮮明化しています。

オーストリアとオランドには保守政権が誕生し、ポーランド、ハンガリー
は明確に移民政策でEU主要国と対決し、つぎにバルカン半島に目を転ず
れば、セルビアとボスニアヘツェゴビナとの国境付近で停戦以来の「地域
独立」、もしくはセルビアへの編入をめぐる戦争が勃発する可能性がある
とTIMEが予測しています。

ロシアはすでに有力な対立候補がなく、プーチンは大統領職にとどまるば
かりか、シリアで確立された世界史的プレイヤーの位置をさらに強靱なも
のとして、中東政治に介入してくるでしょう。

とりわけ、ロシアートルコーイラン枢軸の形成を政治的に留意すべきです
し、サウジが呼びかける対イラン包囲作戦にエジプトとUAEがどの程度
関与するか。

かようにして欧州の団結がささくれだってきました。
 
朝鮮半島問題は日本の核武装議論を覚醒し、アメリカは日本に核保有を促
す人が増えており、日米安保条約の改定にむけての基盤醸成がなされそう
です。

北朝鮮は挑発行為を止めない限り、いずれアメリカのミサイル攻撃を受け
ることになりそうで、ここにロシアが絡み、中国が別のシナリオで行動す
るとすれば、下手をすれば第二次朝鮮戦争への口火をきることになりかね
ません。

ことほど左様に戊戌の年は、国際情勢波瀾万丈です。
         
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 幕末維新から日清日露、日本のダイナミックな歴史を裁断しつつ
  自衛力のない日本外交は福沢諭吉の警告を忘れていないかを問う


渡邊利夫『決定版 脱亜論』(育鵬社)
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一年の計は元旦にあり、まさにそれを考えるにふさわしい書が、本書である。

題名から判断すると、一見、福沢の警告本『脱亜論』の現代訳と解題の本
かと誤解しそうである。

ところが本書はまったく異なっての戦略的思考書であり、福沢諭吉の思想
と、その執筆動機となった同時代の国際的状況を、現代日本の立ち位置を
対比されながら、渡邊氏は我が国の自立自尊の原則的なありかたを追求し
ている。

同時にこの本は渡邊氏の現代史解釈であり、そのスピード感覚、パノラマ
的叙述の展開におけるダイナミズムもさりながら、基礎に横たわる確乎た
る愛国心を読者は発見するだろう。

主眼は下記の訴えである。
 
「外交が重要であるのはいうまでもないが、弓を『引て放たず満を持する
の勢いを張る』(福沢諭吉『脱亜論』)、国民の気力と兵力を後ろ盾にも
たない政府が、交渉を通じて外交を決することなどできはしない、と福沢
はいう。極東アジアの地政学的リスクが、開国・維新期のそれに酷似する
極度の緊迫状況にあることに思いをいたし、往時の最高の知識人が、何を
もって国を護ろうと語ったのか、真剣な眼差しでこのことを振り返る必要
がある」。

しかし。

現代の状況を見渡せば、日本は国家安全保障を日米同盟に好むと好まざる
とに関わらず依拠し、しかも歴代自民党が、あまりに依存度を深くしすぎ
て独立の気概を忘却の彼方に置き去りにしたが、本質的な情勢把握ができ
ている中国は、この日本の脆弱性がどこにあるかを知悉している。

だからこそ、と渡邊氏は続ける。

「中国が、東アジアにおいて覇権を掌握するための障害が日米同盟であ
る。中国は、みずからの主導により東アジア秩序を形成し、日本の外交ベ
クトルを東アジアに向かわせ、そうして日米離間を謀るというのが中国の
戦略である。日本が大陸勢力と連携し海洋勢力との距離を遠くすれば、日
本の近代史の失敗を繰り返すことになる」(236p)。

たしかに外交の裏付けは軍事力、情報力だ。
 
この2つを欠如する日本が、アジアの暴力国家群と渡り合えることはあり
得ず、北朝鮮の挑発、韓国の暴発、中国の『アジア的暴力』に対抗するに
はどうしたらよいのか、自ずと結論は見えている。

渡邊氏はアジア全般の経済に関して造詣が深い学者であるが、いまの中国
を、次のように簡潔に概括されている箇所があり、大いに参考になった。

「古来、中国に存在したのは封建制ではなく、郡県制である。全土をいく
つもの郡にわけ、郡の下に県をおき、それぞれの郡と県を中央の直下にお
いて、その統治は中央から地方に派遣された官僚によって一元的になされ
るという、皇帝を頂点とする古代的な官僚政治体制が一貫して踏襲されて
きた。朝鮮の王朝は中国のコピーだといっていい。郡県制は、封建制とは
対照的な中央集権的で専制的な統治機構にほかならない」(12p)

まさに中国の政治体制は、いまもこの原則が機能しているばかりか、じつ
は中国の軍隊制度も同じなのである。すべての軍区が中央軍事委員会直轄
となって、習近平皇帝直属の軍隊と組織図的には編成替えされているので
ある。

とはいえ、地域的軍閥がなぜ危機になると生まれるかは、じつはその弊害
の反作用であり、中央の強圧的求心力が弱まると、自らが遠心力に便乗し
得独自的行動を開始する特徴がある。
 念頭に読んで、大いに参考となった。