2017年07月27日

◆パキスタンのデフォルトが近い

宮崎 正弘



<平成29年(2017)7月26日(水曜日)通算第5368号>

 〜ベネズエラに続いてパキスタンのデフォルトが近い
  最大の債権国はいわずとしれた軍事同盟国のチャイナです〜

既報の通り、ベネズエラは外貨の借入金が期日を迎えても支払えず、デ
フォルトが近いのではないかと観測されている。

そのデフォルトを回避させるために中国は返済繰り延べに応じている模様
だ。そうしないと、中国の推進する「一帯一路」が挫折するからd。

ベネズエラ国債の格付けはCCC(ジャンク債)。最大の債権国は中国、国
内は猛烈インフレ(なにしろインフレ率1600%)、各地で反政府暴動が頻
発している。ベネズエラの石油鉱区を買いあさり、巨額を注ぎ込んできた
のは中国だった。

 パキスタン。

中国と密接な軍事同盟国。南西部グアダールから新彊ウィグル自治区への
900キロに及ぶ鉄道、ハイウェイ、パイプライン、そして光ファイバー網
と四つの大プロジェクトが進んでいる。

これこそは習近平の「一帯一路」構想の目玉であり、「中国パキスタン経
済回廊(CPEC)」と呼ばれる世紀のプロジェクトである。

ところがパキスタンの財政事情が悪化していることが明らかになった。
 2016年の会計年度(2016年7月1日から17年6月30日まで)のパキスタン
の経常収支は記録破りの赤字となった。

単年度だけの財政赤字121億ドル。主因は輸入の増大と反比例して海外で
かせぎ組からの送金が激減したこと。パキスタンの輸出はちなみにコット
ン、アパレル、食品、医薬品(後者ふたつは米英の合弁企業による)。

パキスタンの2017年度、貿易赤字は325億ドルに達した。

これによる累積対外債務は790億ドル。人口ならびに国の規模はベネズエ
ラよりはるかに大きいとは言え、この収入と支出のバランスを失した赤字
体質は、これからも縮小ではなく、拡大方向になるという。

 
 ▲中国の経済成長がまだ続いていると報道している日本のメディアは事
実を直視しているのか、どうか激しく疑わしくないのか

輸入が急拡大しているのはCPECの所為である。

中国から建設機械、建機、セメントなどの建料の輸入が拡大しているわけ
で、しかも返済が滞るのは眼に見えているから、通貨のパキスタン・ル
ピーはますます急落し、必然的に猛烈なインフレを招来する。

 ちなみにパキスタンの借入先は次の通り
17億ドル    中国開発銀行
  7億ドル    英国スタンダードチャーター銀行(パキスタンは旧
英国領)
  3億ドル    中国商業銀行(複数)
  2億5000万ドル 米シティバンク
    6500万ドル スイス銀行ソンソーシアム
  4450万ドル  UAE

この一例をあげただけでも中国の吠えているAIIB、ならびに一帯一路
がすでに挫折に向かっていることは明らか。

ニカラグア運河の工事中断は、明日のすべてを象徴する。つまり、海外プ
ロジェクトの多くが、中国国内の鬼城(ゴーストタウン)のように、幽霊
都市と化けるのは時間の問題なのである。

英米の戦略は、そうやって中国を経済的にぶっつぶすことにあるのだろ
う、と推測できる。
「中国の経済成長がまだ続いている」

「その証拠に鉄鋼生産は伸び、不動産価格が上がっている」

などと中国当局の発表をそのまま検証もしないで、報道している日本のメ
ディアは事実を直視しているのか、どうか激しく疑わしくないのだろうか?

「中国経済が崩壊すると予言してきた人は、現在の中国経済の成長ぶりに
対して反論できないだろう」などとヘンてこな意見をよく耳にするが、
2013年から明らかに崩壊している中国経済の実態を見てみないふりをして
いるのか、そういう意見に出会うと、こういう分析をする人たちは中国の
代理人なのだろうかと疑いたくもなる。

       
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◆書評 しょひょう BOOKREVIEW 
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 鉢の木会、吉田健一、大岡昇平、三島由紀夫らとの交遊
  翻訳の裏話から劇団の分裂、運営の苦労、脳梗塞、そして父子の和解

  ♪
福田逸『父 福田恒存』(文藝春秋)
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次男の福田逸氏が没後20年にして、初めて、しかも思う存分、父親を赤
裸々に語った。

家族でしか分からない、あの時代の福田恒存氏のこころの葛藤、そして父
と息子の確執、嗚呼、こんなことがあったのか、これまで語られなかった
裏話から透けて見えてくる福田恒存の全貌である。

子供の頃、父は外遊先からハガキを書いた。「これがじゆうのめがみ」と
平かなで書かれていたり、家族で英国に滞在したときはストーンヘンジに
でかけ、岩をよじ登った想い出、当時は柵もなかったとか(現在柵が設け
られ、石にはさわれない。年間数百万の観光客がある)。

大岡昇平から久闊を叙す手紙が公開されている。

このなかに実に面白いくだりを見つけた。それは大岡昇平が江藤淳をイン
チキと決めつけている箇所で、

「江藤のインチキについては『小林秀雄』が出来上がった頃から油断して
なかったのですが、どうもみんなが変におとなしいので、(批判を)やって
みただけです。しかし心臓にさわるから、こんどはケンカの相手はしない
つもりです」

ところが福田逸氏によれば、福田と大岡は、この頃仲が悪かったそうだ。

三島由紀夫との対決、相互理解、芯からの友情に関しては、じつに多くの
ページが割かれている。

三島の諌死事件直後、福田恒存氏は「わからない、わからない、わたしに
は永久にわからない」とコメントし、それから一切見解を示さなかった。
 評者(宮崎)は小誌の2010年6月14日号(通巻2993号)で、次のように
書いているので、やや長文だが、まずここに再録する。

 ▲60年安保でのふたりの立場は対照的だった

 (引用開始)「福田恒存と三島由紀夫はよきライバルであり親友であり、
しかし演劇活動では仲違いもし、論争は喧嘩腰の侃々諤々、いまから思え
ば古き良き時代だった。2人が対談した雑誌はよく読んだ。

三島は福田を「暗渠で西洋と繋がっている」と揶揄した。福田は三島の暗
渠は日本と繋がっているなど丁々発止、虚々実々のやりとりの妙も興味
津々だが、とりわけ「文学座」分裂の前後、新しい演劇集団の交錯、俳優
らの取り合いなど外から見ていた分かりにくかったあの時代の状況を、絡
み合った糸を丁寧に解しながら(遠藤浩一の本は)真相に迫る。

本書(遠藤浩一『福田恒存と三島由紀夫』(麗澤大学出版会)の特徴のひ
とつは著者(遠藤氏のこと)が演劇人でもあり、微細にわたる演劇界の戦後
史も書き込んでいるところにある。演劇世界をしらない読者には初めての
事実の開陳に驚きを禁じ得ないだろう。

もっとも評者(宮崎)も演劇界の出来事はよく知らず断片的な情報しか当
時もいまも知らないが、福田氏が平河町、北野アームスのオフィスに陣取
り、さかんに演劇プロジュースをしていた頃、ときおり会ったことがある
ので、演劇世界における駆け引きが政治と似ていると思ったことがある。

 話を本題に戻す。

戦後の空白期、三島は寓話的表現を通じて主権不在の日本の状況を書いた
(たとえば『鍵のかかる部屋』)。

ところが福田はむしろ戦闘的に左翼文化人の虚妄と戦っていた。
 
60年安保のとき、三島は反対運動の外にいて「岸は小さな小さなニヒリス
ト」を評論し、安保騒動には冷ややかだった。しかし三島は「自分もニヒ
リストであると自己規定し、しかし『私は小説家であって政治家ではな
い』と(弁明的に)述べている」(同遠藤前掲書)。

日本がまだGHQによって占領されていた昭和26年に三島が書いた『禁
色』には檜俊輔という作家が登場し「愚行を思想から峻別した」などとし
て「思想についての思想」は、「俊輔の観念のやうでもあるし、作家独自
のもののやうでもある。要するに思想と行動を完全に切り離し、思想は付
け焼き刃のようにあとで生まれたものであって、とどのつまり、思想なん
て信ずるにたりないもの」というスタンスが示される。

だから当時の三島は「祖国の主権回復に対してはきはめて冷淡だった。そ
こに欺瞞を発見したからである。

当時の「三島にとっては、主権回復も安保も、『思想』から分別された
『愚行』でしかなかった。欺瞞に満ちた形で独立を回復した日本国の日々
は、あたかも檜俊輔の生活がさうであったように、蹉跌の連続、誤算と失
敗の連鎖としか、三島には映らなかった」という遠藤は、それらを三島は
正面にすえたテーマとはせず、「韜晦につぐ韜晦を重ねた」のだと(遠藤
は)する。
 
したがって60年安保騒動の時点で三島の立ち位置は曖昧だった。

深沢七郎の『風流夢譚』事件前後には、サヨクと誤解され自宅に警備陣が
張り込んだこともあった。

三島が思想を鮮明にだすのは東京五輪前後からだ。そして『憂国』『喜び
の琴』『文化防衛論』へと突っ走る。

さるにても晩年の二人)福田と三島)はなぜ対立したのか。

評者は学生時代に保守学生運動をしていたので三島由紀夫と福田恒在に、
それぞれ3回、講演に来てもらったことがある(拙著『三島由紀夫”以
後”』(並木書房参照)。

個人的つきあいは深くないが、楯の会結成前夜の三島の思想遍歴を時系列
にたどると、福田恒存との対談の内容においてさえ微細な変化がある。

とくに改憲をめぐって三島が法理論的に分析すると福田は「法学部さが
り」とからかう。そうした行間に大きな懸隔と変貌を嗅ぎ分けられるよう
に三島は徐々に神秘的な攘夷思想ともとれる考え方に走る。
 対比的にこんどは福田が冷静だった。

福田恒存と三島由紀夫が「戦った相手は進歩主義であり、破壊主義であ
り、機械主義であり、便宜主義であり、あるいはニヒリズムであった。軽
蔑したのは偽善であり知的怠惰であり、安易な現実肯定主義であった」
が、ふたりの「構えかたは『反戦後』などといふ陳腐なものではなく、戦
後という時代を、両手を広げて引きつけつつも、これを疑い、時代を歪め
ているものを暴き、矛盾を衝き、ゆがみや矛盾に恭順する安易な処世術を
嫌悪し、知的怠惰を叱り、日本人の本気の所在を問い、常識の復権を求
め、美意識の研錬を実践した」(遠藤浩一前掲書)。

 ▲「三島の自決はわからない、わからない」と表した福田の真意

三島の自決を聞いた福田は「わからない。わからない。私には永遠にわ
からない」と発言したと当時の東京新聞が報じ、週刊誌が「名言(迷言)
として伝えた。

評者は、その後、福田の真意を確かめたいと思っていたところ、おりから
の福田恒在全集の三島論が納められているのを発見した。

(直後にわからない、わからないと新聞に答えた氏は)「もし三島の死と
その周囲の実情を詳しく知っていたなら、かはいそうだとおもったであろ
う、自衛隊員を前にして自分の所信を披瀝しても、つひに誰一人立とうと
する者もいなかった。

もちろん、それも彼の予想のうちに入っていた、というより、彼の予定通
りといふべきであろう。あとは死ぬことだけだ、そうなったときの三島の
心中を思うと、いまでも目に涙を禁じ得ない。

が、そうかといって、彼の死を「憂国」と結びつける考えかたは、私は採
らない。なるほど私は「憂国忌」の、たしか「顧問」とかいう有名無実の
「役員」の中に名を連ねてはいるが、毎年「憂国忌」の来るたびにそれを
みて困ったことだと思っている(中略)。20年近くも(憂国忌を)続けて
行われるとなると必ずしも慰霊の意味だけとは言えなくなる」(中略)
「憂国忌の名はふさわしくない。おそらく主催者側も同じように悩み、そ
の継続を重荷に感じているのではなかろうか」 と言う。

(余談だが、個人的なことを言えば、憂国忌の発起人を頼んだのは、じつ
は評者(宮崎)であり、説得するのに30分ほど電話で会話した記憶がよみ
がえった)

▲事件から18年後に福田は三島自決の覚え書きを残した

福田氏の推論が正しいか、どうか。おそらく間違いであろう。三島は「自
分の行為は50年後、100年後でなければ分からない」と、その営為をむし
ろ後世の再評価に賭けた。

ともかく、この短い文章だけが、三島事件から18年後、昭和63年に初めて
かかれた「三島事件」への福田氏の感想である。

「福田恒存在全集」第六感の「覚え書き」として、つまり全集の購読者
用に書き下ろされた覚え書きにさりげなく挿入されたので、評者(宮崎)
もしばし気がつかなかった。

遠藤浩一氏も、やはりこの箇所を捉え直し、次のように総括している。
 「わからなかったがゆえに、冷静な福田の口から、感情的な言葉が迸っ
たのではなかっただろうか(中略)、三島という対象を突き放しているわ
けではない。三十数年来の知己を、わかりたい、嫌いたくないと思えばこ
そ、こうした言葉が思わず飛び出したのである。そこに福田恒在の三島由
紀夫に対する哀惜が滲み出ている」

「三島由紀夫はリアリズムを、フィクションをフィクションとして受け入
れるための消極的約束事をして、徹底して扱った。そこに比類のない存在
感を発揮する作家だった。そのことを逸速く見抜いたのが福田恒存だっ
た。三島の文壇へのデビュー作『仮面の告白」の解説で福田は、『三島由
紀夫は無から有を生む手品師』『比喩的なレトリックが軽快な一回転とと
もに、虚を真実にすり替える』と評価した」 (引用止め)

本書(福田逸『父 福田恒存』)にもどる。

そこで次男の逸氏は、この経緯をいかように記憶し、またどのようなコメ
ントをされるのか、興味が湧くところである。

暗渠論についてかなりの紙幅がさかれているが、その箇所は本書にあたっ
ていただくとして、重要なことは、ふたりのあいだに激しい論争はあって
も、福田氏と三島との仲はたいそう良かったという事実であり、逸氏は、
さりげなく、次の文章を挿入されている。

「ただ、父は三島の自決のことはさておき、三島に一種の親愛の情を持っ
ていたのではないかと、これは具体的証拠があるわけではないが、日頃の
我が家の雰囲気からそう感じている、それに何の根拠もない。空気といっ
たものである。弟のように可愛がると言ったら完全にずれるだろうが、何
らかの親近感があったはずである」。

あ、そうか。この文章を読んでいやに納得がいった。

「弟のように可愛がる」のが、福田家の当時の三島由紀夫に対しての「空
気」だったという、家族でしか分からない感覚、まさしく評者が当時の林
房雄家でかぎとって「空気」と酷似しているのである。

以下、60年安保時代に敢然として左翼と戦っていた福田氏が家庭では死を
覚悟するほど深刻な状況にあったことを逸氏は少年時代の記憶を辿りなが
ら綴っている。

このことも具体的に論じようと考えていたが、紙幅がつきた。別の機会に
譲りたい。
           
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◆樋泉克夫のコラム  
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【知道中国 1604回】       
――「支那の官吏は賄賂を取る・・・金なくば訴訟するな」――(廣島6)
  廣島高等師範學校『滿韓修學旅行記念録』(非賣品 明治40年)

              △
朝河の主張の当否は暫く措くとして、やはり日露戦争を戦い抜いた日本に
とって満州は「20億の國帑と十萬の英靈が眠る聖域」だった。であればこ
そ満州問題は日本の国益が最優先され、日清(=日中)関係の範疇で捉え
て当然であり、欧米列強が口を差し挟む問題ではない。

満州の取り扱いに関し、日本が敢えて欧米列強に説明し、彼らの考えを忖
度するまでもないという立場に立つ。これに対し欧米列強は日露戦争は日
本とロシアの間のではあるが、満州に関わる問題は飽くまでも門戸開放・
機会均等の立場から議論されるべきであり、日本による独占的処理は断固
として容認できないという姿勢を崩さない。

朝河が記した欧米列強の日本に対する態度を敷衍するなら、清国(=中
国)に関わる問題は国際政治、いわば欧米列強に日本を加えた各国の利害
を調整したうえで捉えるべきであり、長い交流史という特殊事情を勘案し
たところで、日本一国の思惑や日清(=日中)の両国関係の枠組みで独占
的に処理すべきではない、ということになろうか。

21世紀初頭の現在、中国をめぐる問題は過去に較べ飛躍的に複雑になって
いる。それというのも、かつて発言権なく列強に処理されるが儘であった
中国が国際政治の主要プレーヤーとして自己主張しているからだ。日中問
題を飽くまでも既往の日中関係の枠内で捉えようとする限り、我が国の国
益を実現させることは容易ではなく、費用対効果の面からも得策ではない。

偶然に引用した朝河の主張は、考えるなら後に登場することになる植民
地全廃論に基づく石橋湛山の満州放棄論にも関連するように思う。日中問
題は日中関係という小状況の枠内で捉えるべきか。はたまた国際政治の大
状況に落とし込んで考えるべきか――この問題は、その後の日本が辿った道
を振り返った時(いや現在も、そして将来も)、やはり詳細に論ずる必要
があろうが、後日に譲るとして、いまは広島高師の学生の旅を急ぎたい。

それにしても、読む進むほどに解き明かすべき難題は目の前に堆く積もる
ばかり・・・どこまで続く泥濘ぞ、である。

一行は奉天を経て清朝開祖を祀る昭陵へ。「支那人は一般に本邦人に對し
ては好意を表しいかなる要求も之に應ずるを常とす」るが、日本人を見た
ら昭陵の「門を閉ぢて入るを拒む」。それというのも「邦人の此に遊ぶも
の動もすれば宗廟を穢す動作をな」し、「殊に甚だしきに至りては落書き
するもの」があるとのことだ。

事実、日本人の記した落書きが残っているのだから弁解の余地もない。落
書きもまた日本人が「沈黙せば自然に消滅すべし」というわけではないの
だから、やはり恥ずかしい限り。そこで未来の教師たらんとする広島高等
師範学校生徒である。「落書は本邦人の惡習にてそれ?育者たるもの力を
盡してこれが矯正を試みずして可ならんや」との決意を記した。

奉天の街を歩き、「道路の惡しきは一に車馬の性質によるべく、その不潔
なるは排水の不良と青厠の設備無きによる、されど日本人の入るに及び道
路の傍に共同便所設けられ、又巡捕の派出所も見らるゝに至れり。商業は
頗る繁昌せるものゝ如し」と綴り、法廷と監獄を見学しては「一般に町の
秩序弛み、法廷の如き、監獄の如き唯名あるに止まる、しかも法廷の門を
潜るや?々たる額には『民之父母』を金字にて表せども、此樣にてはと思
はるゝのみ、番人あれどもなきが如し」との感想も残す。

遼陽の関帝廟の傍らの浄土宗教会所で「清國人の爲めに小規模の學校を開
き普通?育を授け居れる」福田闡正から聞いた話を書き留めているが、な
んとも凄まじい。関帝廟といったところで、いまや貧民・苦力の塒となり
果てた。ある時、1人の苦力が病気になり回復の見込みがなし。そこで
「同輩は遂に起つ能はざるを見て其衣服を剥ぎ所有品を奪ひ遂に其屍を野
外に放置し犬猫の餌食となしたりと」のこと。クワバラ・・・クワバラ。
《QED》

2017年07月26日

◆中国海軍、ロシアとバルト海でも軍事演習

宮崎 正弘



<平成29年(2017)7月25日(火曜日)弐 通算第5367号

 〜中国海軍、ロシアとバルト海でも軍事演習
  ミサイル駆逐艦、コルベット艦などを投入、ドイツの不快感〜

北欧諸国はバルト海の安全保障が、いよいよ脅かされてきたと脅威を感じ
ている。不安が増しているのだ。他方で、北欧諸国は中国の一帯一路構想
に魅力を感じて、中国に接近するという矛盾をさらけ出している。

 ロシアと国境を接するフィンランド、かつてはフィンランドを支配した
スエーデンがとくに顕著に対ロシア軍事脅威観を抱くが、すこし距離のあ
るデンマークとノルウエイは、どちらかといえばロシアよりドイツへの不
快感が濃厚だった。

 ところが、2017年7月24日からバルト海で開始されたロシアと中
国との合同海軍演習はドイツを含めて周辺海域にとって直面する軍事的脅
威の拡大となった。NATO全加盟国にとっても、このロシアと中国がお
こなう初めての共同演習には強い関心を寄せる。

 この両国が地中海での訓練をすませ、いよいよバルト海に進出してきた
のだから、NATOにとっては新しい頭痛の種。現在もアメリカの関与へ
の共鳴と反撥という加盟国の間での温度差、軋轢にくわえ、一部にはトル
コがNATOから脱退するのではないかという疑心暗鬼が広がり、その一
方でドイツ財界のなかには中国のシルクロード構想への参加は間違いでは
ないかという議論も広がり始めている。

中国海軍はミサイル駆逐艦、フリゲート艦、輸送船などを投入し、ロシア
も最新鋭コルベット艦など両国で12隻の軍艦に航空機、武装ヘリなどをく
わえての本格演習となった。演習は28日まで続けられる。

演習の主な目的は中国海軍とロシア海軍の共通練度向上、相互理解にもあ
るが、対空、対地ミサイル発射訓練に対潜水艦戦闘訓練も加わるというの
だから、本格的である。
         
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◆書評 しょひょう BOOKREVIEW 
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 「鹿島立ち」とは、いかなる意味が裏に籠められていたのか
   「天孫降臨」は関東から九州への遠征。高天原は関東にあった

 田中英道『高天原は関東にあった』(勉誠出版)
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田中英道氏は美術史が出発点であり、考古学、古代史への分野へは美術の
観点から興味を高められた。そのうえでイタリア、フランス、スペインの
美術の造詣から、歴史の議論は国際的なパースペクティブに広がる。

独自の歴史解釈、そのアプローチが学閥や通説に拘束されない、斯界のタ
ブーを撃破していく。通説を完膚無きまでに論破するのは、そうした学問
的背景がある。

おそらく、本書で展開されている高天原が関東にあり、邪馬台国は実在し
ないという挑戦的な、革命的な書籍は既存の歴史学会や大学教授らは間違
いなく無視するだろう。ちょうどアメリカの歴史学界が、真実を言う学
者、ジャーナリストを「歴史修正主義」と言って排斥するように。

「目から鱗が落ちる」などという表現は陳腐である。目から何十枚、何百
枚も厚い鱗がぼとぼと落ちていくほどに本書に描かれた歴史解釈は従来の
歴史通念をひっくり返すのだ。戦後の左翼が取り憑かれた愚昧な歴史観を
ひっくり反すコペルニクス的な、画期的な書物が本書なのである。

というわけで、読了に3日かかった。かかりっきりで読んだわけでもない
が、1行1行をかみ砕きながら読むと想定外に時間がかかるのである。

冒頭に縄文土器の解釈がある。

土器、土偶、とりわけ縄文の意味。田中氏はひろく諸外国の類似土器、土
偶を美術史的な観点から比較考察する。その探求眼は国際比較文明学者の
それであり、土偶の造型の多くがデフォルメされ、水蛭子がモデルになっ
ていることに着目し、日本の古代史の常識を覆る衝撃の歴史考察がつづく。

「先史時代のヴィーナス」のようであっても、日本の長野県棚畑遺跡から
でた「縄文のヴィーナスがもっもも美しい」とされる氏は、「写実性から
離れ、抽象性、芸術性をもっている」とするのだが、その源泉は不明であ
る。だが、氏は考古学的解釈や時系列に拘らず、フォルモロジーから真実
に迫ろうとする。

評者(宮崎)は土偶の変形とりわけ女性の腹部がふくよかすぎるほど出っ
張った土偶をギリシアやキプロスでもみたが、当時は肥満女性が美しかっ
たから等という解説は聞き飽きた。

そういう陳腐な解釈が歴史を誤断させるのではないのか。

青森の三内丸山遺跡には黒曜石が発見されている。近くの秋田県の山奥に
なるストーンサークルは、世界の果てにも類似があり、また巨石神殿は英
国のストーンヘンジ、マルタの巨石神殿を連想するのは評者だけではある
まい。

ともあれ日本の縄文時代は一万六千年以上まえからあって中国大陸や朝鮮
半島とは無縁の独自の文化を形成していたことがわかる。

ついで高天原が関東にあった理由に鹿島、香取神宮の存在と日高見国の位
置の考証に移り、鹿島から鹿児島への船の移動を推論する。

「鹿島立ち」が古来より意味したのは関東からの防人が九州の防衛に行く
ことだった。鹿島、香取神宮の付近には日高見という地名が多い。

田中氏はこう言う。

「ニニギノミヤは、鹿島から立って九州の鹿児島に船団で向かって到着
し、『天下った』ことを意味し、『天孫降臨』の随伴する七柱の神とは、
天児屋根命、天鳥船神、天津日高日子などで、まさに東国三社の神々であ
り、『日高見国』の人々がニニギノミヤを守り、従う随神たちであったこ
とを示している」(174p)。

さて評者も、神話の故郷、高千穂には3回出かけている。

高千穂で「天の岩戸」なる場所を遠望し、高千穂神社での恒例の神楽見学
のあと、土産屋に寄ると、「天孫降臨」という焼酎を売っていた。名前が
気に入ったので思わず買ってしまった。
 高千穂から延岡へ山稜をたどるとニニギノミヤが降り立ったと言い伝え
のある山がある。じつはこの山稜のなかに可愛岳がある。ご記憶だろう、
この峻険は?山を越えて、西南戦争に敗れた西郷隆盛軍が薩摩への帰還の
旅にでたことを。官軍はニニギノミコトの神話を思い出して、可愛岳を登
攀した西郷軍を深追いしなかった。


 ▲「邪馬台国」も「卑弥呼」もシナの捏造なのだ

白眉は「邪馬台国」。「卑弥呼」論争への決定打だ。

田中氏は次のように言う。「魏志の倭人伝は倭国のことを具体的に描い
たものではなく、若干の同一性を除くと、すべてフィクションであり、検
討に値しない」。

そう、魏志の倭人伝など、ずばり検討すること自体が徒労なのである。
 卑弥呼は倭国のひとつの邪馬台国の巫女に過ぎない。「つまり天皇のよ
うに倭国すべてを統一した上の、『権威的存在』ではない」のである
(235p)。

したがってどちらも実在しなかった。戦後歴史学は、邪馬台国の場所論
争、卑弥呼は誰か、女王はどの地区を納めたのかと百花繚乱、侃々諤々、
牽強付会の議論に明け暮れた。

「実在しなかった」といきなり結論をいわれても、戸惑う読者も多いこ
とだろう、と推察する。

そもそも日本の歴史書に登場しない架空の国と女王。中国の三国志の附
録にあたる魏志の倭人伝が言い出しているだけ。この一点をみても、奇怪
である。

思い出されたい。中国にとって歴史はプロパガンダであり、韓国のそれ
はフィクションであることを。

魏志の倭人伝は風説、伝聞を纏めて仕上げた怪しい歴史書であり、そこ
にはシナの政治的打算、思惑が秘められている筈である。

評者は昔から魏志の倭人伝は信用するに値せず、創作だろうと考えてき
た。まず「倭人」という差別的軽蔑語、「卑弥呼」などとおおよそ女王に
似合わない命名ぶりからも作者の政治的意図が推定できるのではないか。

すなわち邪馬台国なるものは、あたかも南京大虐殺などというプロパガ
ンダをまともに追求して、いや実際の犠牲は2万人だったとか、数千では
なかったかという不毛の反論に陥る。

相手の陥穽にみごとに嵌っているの ではないか。最初から偽書だと断定
すれば、邪馬台国がどこにあったか、 等という「誇大妄想」的で、レベ
ルの低さを代弁するような愚劣な議論は うまれまい。

「邪馬台国とか卑弥呼とかいう蔑称がいつの間にか歴史用語になり、教
科書にまで載せられるようになったこと自体が、日本の歴史かのレベルの
低さを示している」(228p)。

田中氏は日本中どこを捜しても「卑弥呼神社」がないという冷厳なる現
実から論を進める。
          

2017年07月25日

◆ホワイトハウス・スポークスマンが突如辞任

宮崎 正弘




<平成29年(2017)7月22日(土曜日)通算第5365号> 

 〜スパイサー(ホワイトハウス・スポークスマン)が突如辞任
  トランプが指名した新しい広報部長は適切な人事ではないと抗議〜

まだ政権の中枢人事が決まらないうちに、次々と幹部が辞めるというの
も、トランプ大統領の人事があまりに個人的で依怙贔屓があるからと見ら
れる。

フリン大統領補佐官、そして今回は「ホワイトハウスの顔」とも言える
スポークスマンの辞任だ。

スパイサーは5月に個人的理由として辞任したマイク・ダブケ広報部長
の後釜に、トランプがアンソニー・スカラムッチを指名しようとしていた
ことに猛烈に反対してきた。

いざ、指名となると、スパイサーは直ちに辞任した。「こんな上司に仕
えられるか」というわけだ。

 新任のアンソニー・スカラムッチはウォール街の雄、ゴールドマンサッ
クスから、「ウォール街の予言者」としてテレビの番組に頻繁に出演し、
投資家の一部に人気があった。独立し、2005年に自分で投機ファンド
「スカイブリッジ・キャピタル」を設立した。

 トランプへの支持は同じNYっ子として一貫しており、トランプの番組
にも出演した。また大統領選挙中は経済顧問をつとめていた。

 広報部長(コミュニケーションディレクター)就任にあたって、スカラ
ムッチは経営してきた「スカイブリッジ・キャピタル」を売却したのだ
が、そのバイヤーは中国系ファンドであり、またロシアとのコネクション
が深いことでも知られる。

スパイサーは、こうした怪しげな人物の登用に我慢がならないといった
風情。しかし記者会見での話しぶりなどから、人気がでていただけに保守
系メディアの一部は惜しいという声も聞かれる。ただしトランプ自身はス
パイサーの記者会見での発言に不満だった。

いずれにせよ、トランプはウォール街からは距離をおくとするイメージ
だったが、政権中枢にはムニューチン財務長官、ロス商務長官などウォー
ル街出身者が顔を並べ、また「キッチン・キャビネット」は隠れた政府で
あるべきなのに、身内のイバンカ、クシュナーが表の舞台に突出してきた
ため、今後も閣内のごたごたが尾を引きそうである。

         

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◆書評 しょひょう BOOKREVIEW 
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 丁寧に淡々と中台関係の歴史をふりかえり
   習近平と蔡英文の意外な素顔、その個性を描いた意欲的レポート

  ♪
近藤伸二『米中台 現代三国志』(勉誠出版)
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 淡々と、主観を挟まず冷静に客観的に、中国と台湾の関係。両国に対す
るアメリカの戦略の変遷を歴史叙述として描く。

冒頭にちょっと顔を出すのは中国と対立的なトランプ大統領だ。

トランプは「中国は一つという原則に拘らない」と言ってみたり、撤回
してみたり。しかれども、歴代大統領の中ではブッシュ親子もクリントン
も最初は中国にキツイ態度で臨み、途中から中国となぁなぁと関係になる
というパターンを繰り返し、おそらくトランプは、この歴史の法則に従う
かも知れない。

例外的に台湾が大好きだったのはレーガンで、舞台裏で台湾への配慮は
行き届いていたが、オバマは逆で、最初から最後まで台湾を軽視し、中国
に最初はやさしく当たった。

ところがオバマ政権後期には「新しい大国関係」を言いつのって揉み手の
習近平を相手にしなかった。さんざん騙されたからである。
 
さて中台関係である。

本書の随所で近藤氏が台湾の政治家から財界人、ジャーナリストまで広
く取材されている経験とその裏付けから話は展開するので、意外感はない
が、記録的な叙述は検証が行き届いている。

近藤氏は、概括的に両国関係の歴史を振り返りながら、おりおりの激
突、衝突、駆け引きをめぐる現代史を活写しつつ、そこには多くの取材の
成果が挿入されている。
 
習近平は合計17年間、福建省にいた。この履歴は重要である。
この間に台湾の財界人、実業家の多くと交わり、台湾企業の中国進出の手
助けもし、結構多くの台湾人と、いまも個人的な繋がりを持つ。中国共産
党指導部のなかで、異例なほどに台湾人脈が豊富である。

しかし、台湾総統の蔡英文とは、火花を散らしあって対決の威勢を崩さ
ず、外交的には国際舞台から台湾を締め出す姿勢を崩さない。

台湾独立を言わなければ、台湾侵攻はないと読む蔡英文はさっさと台湾
独立色を希釈させてしまったので、独立派からの人気は減退した。

蔡英文総統とは、評者も彼女の国会議員時代、野党時代に台北や日本で
何回かお目にかかり、また質問もしている。まさに学者ゆえ、流れるよう
な流暢な言葉はアカデミズムそのもの、直截な語彙を撰ばないので、大衆
には分かりづらいだろうと思った。

1999年の李登輝の「台湾と中国は特殊な国と国との関係」という2国 論
の起草者であることは知っていたが、1992年の中台交渉のとき辜振 甫の
通訳を務めていたことは、本書ではじめて知った。

彼女の才能を早くから見いだし、要所に配置したのが李登輝さんだった
ことも、合点がいく説明がなされている。

ところで昨年の台湾総統選挙のとき、評者(宮崎)はいつもの定宿が取
れず、民権東路のビジネスホテルに泊まっていた。

偶然、同じフロアに近藤さんも泊まったいたのだ。ある朝、エレベータ
ホールで久しぶりに偶会したのだが、そのとき、毎日新聞を退社されて大
学教授にトラバーユされたことを初めて知ったのだった。
            
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◆樋泉克夫のコラム 
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【知道中国 1602回】     
――「支那の官吏は賄賂を取る・・・金なくば訴訟するな」――(廣島4)
   廣島高等師範學校『滿韓修學旅行記念録』(非賣品 明治40年)

 ▽
 もう少し宗教事情についての記述が続く。

仏教と道教は混交一体化しているが、僧侶にしても道士にしても共に
「多くは無識にして僅かに讀經禮拝の式を諳んじ」ているだけで、それ以
外は「悠々何の爲す所なし」。イスラム教をみると「雛僧の時より亞刺比
亞語を?へ嚴重に宗規を守り」、信徒も戒律を守り互いに親睦に努めるが
「宗外の人を惡むが如し」。「外人は基督?の傳播に盡力」するが、なに
せ「人民の無知なると排外思想に富たるとによりて」、信徒拡大は困難を
極めているようだ。

次いで教育事情に転じ、「滿洲の教育は概して普及せず」とする。近代
的な学校はあるが振わない。「?師に多く日本人を招聘し或は日本に留學
した支那人を用ふ」。だが「支那語を解するも?育の何たるかを知ら」
ず。「?育に通ずるも支那語を解」せず。「頗る滑稽に類することあり」

大連に設置された公学堂では「支那人を集めて普通?育を授け」、「營
口には本邦人の私設に係れる商業學校あり」、「又本願寺又は淨土宗の
布?師にして支那人の?育に盡力せるものあり」。かくて「滿洲の?育事
業は大に本邦人の盡力を待つものなりと謂ふべし」となる。

やがて観察は満州在住の日本人へと移った。

先ずは今回の旅行の結果、「我戦勝軍隊の勞苦に對する感謝の念と國威
自覺の心とは長く記念すべ」きであり、「滿洲至る所に國力を認識せざる
なし」と胸を張る。

それに反して「吾人の杞憂に堪へざらしむるものは我 醜業婦と冒険的商
人多きこと」であった。現時点では彼らは「軍隊の威 力」を背景に商売
を続けているが、「将來の満洲經營」を考えるなら「着 實の目的を有し
確實の資本を有する紳商の手を煩はすこと切なりと謂ふべ し」。「醜業
婦に至りては無懶漢の好餌となりたるは頗る憫むべきも其國 辱たるや疑
うべからず」

戦後の混乱期である。しかも戦勝国の国民だから「軍隊の威力」を背景
に、先ずは一旗上げようと「醜業婦と冒険的商人」が乗り込むことは当然
だろう。これは日露戦争後の満州にかぎられたことではなく、洋の東西を
問わずに自然の成り行きだ。やがて混乱期を過ぎ社会が安定してくると、
「着實の目的を有し確實の資本を有する紳商」が乗り込んでくる。

かくて 「醜業婦と冒険的商人」は不必要な存在として冷遇され排除され
るわけだ が、「我民政署にて巳むを得ず醜業婦の爲めに驅黴院を置き我
在留壮丁も 亦其餘澤を蒙るものあるに至りては我國民健康の将來に就き
て深く戒めざ る可からざるなり」との記述に接すると、当時の在満州日
本当局は「醜業 婦」と「壮丁」、つまりは流れ者や裸一貫組の処遇に、
それなりの配慮を していたことが窺える。

それにしても彼女らの厚生・支援施設が「黴」の 駆除を意味する「驅黴
院」とはスゴイ。「醜業婦」を社会の「黴」と見做 すとは、表現が余り
にも露骨で直截にすぎないだろうか。“ジンケン万能” の現在なら、絶対
に許されない表記と思うのだが。

大連の街を歩き、「一として我國力の發展を證せざるものなし」と感じ
た高校生は、「從軍兵士の勞苦を追想し感謝の涙を」流したのであった。

発展しているとはいえ、「殊に露人は退却に際して主要なる官衙に火を
放ちたるを以て」、日露戦争において日本軍が「占領したるときは大部は
荒野の觀」がしたとのことだ。

大連を後に旅順戦役激戦の地を巡り、「露國の東洋に於ける行動は、
天、人共に惡みし所、我軍が天祐を受けしは自然の事といひながら、十年
の準備と完備せる組織と、日本人獨特の愛國心となかりせば天祐は决して
受け得ざりならしむ」と綴ることを忘れない。《QED》

2017年07月21日

◆ロシアからも資金流失が続いている

宮崎 正弘



<平成29年(2017)7月19日(水曜日)弐 通算第5362号> 

 〜ロシアからも資金流失が続いている
  中国に次いでロシア経済を絶望と判断したのか?〜

2017年3月から4ヶ月連続で、ロシアから資金流出がつづき16億ドルが逃
げた。原油価格の回復がままならない上、年初に希望された米露関係の改
善が遅れ、投資家が嫌気したと分析されている。

しかしBRICS諸国にあってはインドに26億ドル、ブラジルには10億ド
ルの資金が新たに流入しているのだ。BRICS全体の傾向と判断するに
は無理がある。中国と南アから資金流出が続いているのは個別原因である。

ところが奇妙なことにユーロ建てのロシア債は85%を外国人投資家が購入
した。

30年債に到っては95%がアメリカのファンド筋と判定され、首を傾げるア
ナリストが多い。なぜ、落ち目のロシア国債を買うのか? たぶんユーロ
建てであり、通貨価値が上がり、金利が上がると踏んでいるからだ。

ロシア通貨ルーブルは原油価格が上昇気味となり、ロシアへの直接投資が
増えると為替レートがあがり、反対のケースでは通貨価値が下がる。つま
り、投資家にとって、ルーブルもまた金融商品として扱われ西側の投資家
にとっては格好の投機材料化しているのである。

中国の通貨が管理相場制をとって人民元暴落を防止しているが、ロシアの
中央銀行は、そうした真似をせず自由市場に委ねた。

ということは金融市場に関して言えば、ロシアのほうが西側資本主義に中
国より近いという結論となるが、はたしてそうか?
         
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 ◆ 樋泉克夫のコラム  
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【知道中国 1601回】  
 ――「支那の官吏は賄賂を取る・・・金なくば訴訟するな」――(廣島3)
  廣島高等師範學校『滿韓修學旅行記念録』(非賣品 明治40年)

              ▽

道路に草が生えても、誰も抜かない。「汚穢堆積するも」放置したまま。
かくて道路は糞尿まみれで「不潔を極めざらん」。そのうえに「汚穢を極
めたる豚群に前後左右」を挟まれたら、目も当てられない。

「一般の農民は多く無智文盲」で「生計の程度極めて低く」、「日々の生
活の外何も知らざるものゝ如し」。「市街の人民に至りても蓄財利巳の念
に急にして文藝を尚び優雅を解するなきが如し」。かくして「滿洲に於て
は到底我國に於けるが如き高尚優雅精巧麗妙の趣味の痕跡だに認識するこ
と能はず」である。

アヘンは「貴賤を問うはず危險を冒して劇好する所にして市街村落を問は
ず煙舘あり」

次いで「多くは山東直隷より蓄財の目的を以て來れる出稼人」である「苦
力」につて、やや詳しく記している。

彼らの多くは独身者で妻帯のための資金稼ぎが目的か、あるいは家族を故
郷に残しての単身者で、「強健の體格を有し如何なる賤業も」、「如何な
る勞苦も辭せず」。「弊衣粗食に甘んじ拮据黽勉孜々として怠らず」

「一見して乞食の如く甚しきは野生の獸類に近きもの」さえ見受けられ
る。だがシッカリとカネを貯め込んでいる。「其勤儉貯蓄の美風は我等労
働者の企て及ばざる所」であり、やはり学ぶべきこところだ。だから、
「彼等の外貌を見て之を輕蔑するが如きは皮相の見と稱すべし」。彼らの
賃金は極めて低廉だが、生活をギリギリに切り詰め貯蓄に励む。雇用主と
しては至極便利であることが、「滿洲に於て苦力が一大勢力を存し年々數
萬の渡來者ある所以」だ。

ロシアによる満州侵食に伴って、彼らは大量に進出するようになった。日
露戦争においても両軍が使役したことで「不時の利得を占めたるは顯著な
る事實」だ。「戰後尚ほ我軍隊鐵道又は商人に使役せらるゝもの甚多
し」。やはり彼らの労働力は必要だった。

彼らの目的は唯に「勞役貯蓄」だから、「衣食は固より意とする所にあら
ず、入浴せず、洗濯せう、一枚の弊衣は塵垢に汚れ又自然に破損するに任
せて之を補綴することなし。故に之に近けば一種言ふ可からざる臭氣を放
つ」。だが不思議なもので「久しく我邦人に使役せらるゝものは漸く我俗
に化せられ、日本語を解するのみならず、自から不潔を厭ふべきことを悟
り、夏時水中に浴し又は衣服を洗濯すべきを知るに至れるものあり」である。

苦力の特徴、生活実態を細かに記した後、「彼等は吾人が容易に學び難き
克己主義を實行せるものなり」と綴るが、はたして彼らの生態が「克己主
義」といえるほどに自覚的であるのか。むしろ成り行き、出任せ、出たと
こ勝負といった方が実態に即しているように思えるのだが。

満州では仏教、ラマ教、道教、イスラム教、キリスト教などが見られる
が、「概して之を言へば、支那は宗?に冷淡なるものゝ如く、多くは迷信
の境を脱せざるものゝ如し」。だから「寺院廟觀多く頽廢に委し甚しきは
賤民苦力輩の午睡塲とな」っている。宗教施設というよりは「公共の用に
供せ」られているから、一面では社会的に役に立ってもいるようだ。

僧侶は布教に努めるわけでもなく賽銭頼みの生活を送る。我が国の寺院の
ように檀家がないので、「多く寺田又は附屬家屋の収入によりて僅に」生
活を維持している。また「微妙甚深の?理を渇仰して向上の一路を修業」
するような信者は見当たらず、とどのつまりは「唯葬祭に讀經を煩はすの
み」であった。

一般には迷信の類を信仰するが、それは病を治すやら金儲けを願うやらの
現世利益を得ようとするためのもの。つまりは彼らの信仰は徹頭徹尾に
「利己主義の發現に外ならず」であり、「故に宗?は既に生命を失へるも
のと謂ふも大過なかるべし」となる。
《QED》

2017年07月20日

◆『裏切られた自由』、ついに邦訳が刊行

宮崎 正弘



<平成29年(2017)7月17日(月曜日。祝日)通算第5358号>  

〜これは戦後出版界と歴史学界を画期する一大事件である
  フーバー大統領回想録『裏切られた自由』、ついに邦訳が刊行〜

待望のフーバー大統領回想録『裏切られた自由』(草思社)の邦訳板刊行
が始まった。
 
同時にこの本を詳細に解説する渡邊惣樹『誰が第2次世界大戦を起こした
のか』(同)も出版され、戦後の歴史解釈が根底的にひっくりかえる。

ガリレオが、コペルニクスが、あるいはダーウィンがそうであったよう
に、世の中の通説を転覆させ、真実をのべることは勇気を必要とする。
アメリカ人が単純に信じ込む「米国=正義」に対して、そのタブーに正面
から挑戦したのが、フーバー大統領の回想録だからである。

真珠湾攻撃は事前に暗合が解読されていて、むしろ日本をけしかけていた
ルーズベルト大統領の陰謀だったことは、いまや周知の事実である。しか
し、日本の攻撃で一気にアメリカの厭戦ムードは吹き飛んだ。ルーズベル
トの狙いは当たった。
 
アメリカは孤立主義から大きく逸脱し、まずはヨーロッパ戦線に大軍をさ
しむけ、ナチス・ドイツ、ムッソリーニのイタリアと戦闘。西側を勝利に
導いた。いや、勝った筈だった。

ところが敵であるはずのロシアを支援し、あろうことか、戦後秩序はソ連
のスターリンが最大の裨益者となった。死力を尽くしたポーランドが共産
化され、チェコ、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリアばかりか、バルカ
ン半島に到るまでソ連が手に入れた。

極東では南樺太、全千島を手に入れても足りず、アジアは中国共産党の手
に落ち、朝鮮半島は南北に分断され、とどのつまりルーズベルトはソ連の
領土拡大に協力したことになる。

結果論の皮肉は、近年でもたとえば米軍がイラクに介入した結果、ISと
いうテロリストを産み、イラクはイランの影響下に入り、アフガニスタン
はタリバニスタンに変貌しつつあり、朝鮮半島では南が自ら赤化を望み、
いそいそと中国圏に戻ろうとしている。

フーバー大統領(任期1929−1933)はルーズベルト大統領に騙されてい
た。何かを仕掛けたなとは本能的に直感したが、当時、すべての密約は密
封され、フーバーにさえ「ハルノート」という最後通牒を日本に突きつけ
ていたことは知らされていなかった。

フーバーは書類、議会議事録、外交文書そのほかを緻密に検証し、20年の
歳月をかけて本書を書き残していた。

フーバーの言い分とは簡単に言えば「ルーズベルト外交は自由への裏切り
であった」ということである。

 
 ▲マルタで東西冷戦は終わった

東西冷戦は、ルーズベルトの失策がもたらした。そもそもルーズベルトの
失敗は、ソ連を国家承認した(1933年11月)ときから始まった。大統領就
任直後である。

それが世界に厄災を運び、ルーズベルト政権の周りはソ連のスパイと共産
主義者に囲まれて国策を次々とあやまった。

大胆にソ連に挑戦したのは1981年のレーガンの登場だった。

スターウォーズ計画、ミサイル防衛網を前面に出して、ソ連と対峙姿勢を
しめし、対抗策としてソ連は大軍拡にはしるのだが、経済力がついてこら
れず、あえなく頓挫。ペレストロイカ、グラスノスチを謳ったゴルバチョ
フが登場した。

1989年師走、ブッシュ大統領とゴルバショフはマルタの沖合のヨットで会
談し、東西冷戦が終結した。

共産主義者は思想的敗北から逃れるために環境保護、人権運動、フェミニ
ズム、少数性差別、反原発に流れ込み、日本でもその亜流がいまもメディ
アが牛耳っている。

さて、1938年3月8日に、フーバーはヒトラーと会見している。

「この会見でフーバーは、ヒトラーを狂信者であり、お飾りだけの愚か者
だとする欧米の報道が間違っていることを確信した。ヒトラーは自身の言
葉で国家社会主義思想に基づく経済再建を語った。情報の豊かさは彼の優
れた記憶力を感じさせるものだった」(渡邊解説本、64p)。

その前年、1937年にルーズベルト政権はシカゴで演説した。有名な『隔離
演説』である。しかも、この演説で、ルーズベルトは「国内の経済問題を
話題にしなかった。具体的な名指しは避けたものの、日独伊三国によって
世界の平和が乱されている、これを是正するためにはアメリカは積極的に
国際政治に関与しなけれはならないと訴えた」(同72p)。

1939年、ナチスはチェコに侵入した。
 
「少なくとも軍事侵攻ではない。ハーハ(チェコ)大統領との合意によるも
のだった。さらに、フーバーが考える独ソ戦では、ドイツはソビエト侵攻
のハイウエイとなるチェコスロバキアを通らざるを得ないことは自明であ
る」(同88p)。

次はポーランドだった。

ここで英国のチャンバレンはポーランドの独立を保障する宣言を行った。
英米は、ドイツはスターリンとの対決に向かうと考えていたから、ポーラ
ンド回廊を通過するのは自然であり、このポーランド独立を英国が保障す
るということは、フーバーからみれば愚かな選択であった。


▲ルーズベルトがスターリンに譲歩したのはアメリカを不幸にした

ヒトラーは独ソ不可侵条約を結び、しかもソ連もポーランド侵攻に踏み切る。

「犬猿の仲であった独ソ両国の唯一の共通点。それが第1次大戦期に失っ
た領土回復を希求する強い思いであった」(同99p)

舞台裏では何回も複雑に執拗に交渉が続いたが、ポーランドの誤断も手
伝って、ついにナチスはポーランドへ侵攻する。

「この戦いがなければ日米戦争がおこるはずもなかった」が、ポーランド
の稚拙な対独外交が原因で、戦線が広がり、日米開戦への道が準備される。

その後の戦争の展開は周知の事実とはいえ、問題は「カイロ宣言」、「テ
ヘラン会談」から「ヤルタ」会談の密約、そしてポツダムへと米英ソの
『密約』が次々と進み、アメリカ国民は何も知らされないままルーズベル
トとスターリンの謀議は進展し、途中からチャーチルはのけ者にされ、や
がて病魔に冒されたルーズベルトは正常な判断も出来なくなった。

トルーマンはルーズベルトから殆ど何も聞かされていなかった。原爆を保
有したことさえ、トルーマンは知らなかったのだ。
こうしてフーバー回想録は、アメリカの歴史学主流に投げつけられた爆弾
である。
かれらが『歴史修正主義』とレッテルを貼り付け非難してきたが、どちら
が正しいかは明らかであり、ルーズベルトの評価が地獄に堕ちているのだ
が、これを認めようとしない一群の学者とメディアが、真実をいまも覆い
隠しているのである。

渡邊氏は、解説書の最後を次のように結んでいる。

「中国と韓国は、日本を『極悪国』として捉え、歴史認識では日本の主
張を一切受け付けず、21世紀になっても非難を続けている。歴史の捏 造
が明らかな南京事件についても、いわゆる慰安婦問題についても、アメ
リカはプロパガンダであることを知っている。それにもかかわらず、アメ
リカが日本を擁護しようとしないのはなぜなのか。

それは、ルーズベルト とチャーチルの戦争指導があまりに愚かであった
からであり、その愚かさ は、日本が(そしてナチス・ドイツが)問答無
用に『悪の国』であったこ とにしないかぎり隠しようがないからである。

歴史修正主義は、戦後築きあげられた『偉大な政治家神話』に擁護され
ている二人の政治家(ルーズベルトとチャーチル)の外交に疑いの目を向け
る。ナチス・ドイツや戦前の日本が、胸を張れるほど素晴らしい国であっ
たと声高に主張しているのではない。

極悪国とされている国を『歪んだプ リズム』を通して見ることは止める
べきだと主張しているに過ぎない。そ れにもかかわらず、歴史修正主義
は枢軸国を擁護する歴史観だとのレッテ ルが貼られている。それは、
ルーズベルトとチャーチルが引き起こした戦 後世界の混乱の真因から目
を逸らさせたい歴史家や政治家がいるからであ る)(同220p)。

歴史の偽造やフェイクをまだ信じているガクシャは、本書を読むと顔が
引きつるだろうし、日本の論壇にまだ跋扈している左翼は卒倒するかも知
れない。

2017年07月18日

◆戦後出版界と歴史学界を画期する一大事件

宮崎 正弘



<平成29年(2017)7月17日(月曜日。祝日)通算第5358号>  

 〜これは戦後出版界と歴史学界を画期する一大事件である
  フーバー大統領回想録『裏切られた自由』、ついに邦訳が刊行〜

待望のフーバー大統領回想録『裏切られた自由』(草思社)の邦訳板刊行
が始まった。

同時にこの本を詳細に解説する渡邊惣樹『誰が第2次世界大戦を起こした
のか』(同)も出版され、戦後の歴史解釈が根底的にひっくりかえる。

ガリレオが、コペルニクスが、あるいはダーウィンがそうであったよう
に、世の中の通説を転覆させ、真実をのべることは勇気を必要とする。
アメリカ人が単純に信じ込む「米国=正義」に対して、そのタブーに正面
から挑戦したのが、フーバー大統領の回想録だからである。

真珠湾攻撃は事前に暗合が解読されていて、むしろ日本をけしかけていた
ルーズベルト大統領の陰謀だったことは、いまや周知の事実である。しか
し、日本の攻撃で一気にアメリカの厭戦ムードは吹き飛んだ。ルーズベル
トの狙いは当たった。
 
アメリカは孤立主義から大きく逸脱し、まずはヨーロッパ戦線に大軍をさ
しむけ、ナチス・ドイツ、ムッソリーニのイタリアと戦闘。西側を勝利に
導いた。いや、勝った筈だった。

ところが敵であるはずのロシアを支援し、あろうことか、戦後秩序はソ連
のスターリンが最大の裨益者となった。死力を尽くしたポーランドが共産
化され、チェコ、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリアばかりか、バルカ
ン半島に到るまでソ連が手に入れた。

極東では南樺太、全千島を手に入れても足りず、アジアは中国共産党の手
に落ち、朝鮮半島は南北に分断され、とどのつまりルーズベルトはソ連の
領土拡大に協力したことになる。

結果論の皮肉は、近年でもたとえば米軍がイラクに介入した結果、ISと
いうテロリストを産み、イラクはイランの影響下に入り、アフガニスタン
はタリバニスタンに変貌しつつあり、朝鮮半島では南が自ら赤化を望み、
いそいそと中国圏に戻ろうとしている。

フーバー大統領(任期1929−1933)はルーズベルト大統領に騙されてい
た。何かを仕掛けたなとは本能的に直感したが、当時、すべての密約は密
封され、フーバーにさえ「ハルノート」という最後通牒を日本に突きつけ
ていたことは知らされていなかった。

フーバーは書類、議会議事録、外交文書そのほかを緻密に検証し、20年の
歳月をかけて本書を書き残していた。

フーバーの言い分とは簡単に言えば「ルーズベルト外交は自由への裏切り
であった」ということである。

 
 ▲マルタで東西冷戦は終わった

東西冷戦は、ルーズベルトの失策がもたらした。そもそもルーズベルトの
失敗は、ソ連を国家承認した(1933年11月)ときから始まった。大統領就
任直後である。

それが世界に厄災を運び、ルーズベルト政権の周りはソ連のスパイと共産
主義者に囲まれて国策を次々とあやまった。

大胆にソ連に挑戦したのは1981年のレーガンの登場だった。

スターウォーズ計画、ミサイル防衛網を前面に出して、ソ連と対峙姿勢を
しめし、対抗策としてソ連は大軍拡にはしるのだが、経済力がついてこら
れず、あえなく頓挫。ペレストロイカ、グラスノスチを謳ったゴルバチョ
フが登場した。

1989年師走、ブッシュ大統領とゴルバショフはマルタの沖合のヨットで会
談し、東西冷戦が終結した。

共産主義者は思想的敗北から逃れるために環境保護、人権運動、フェミニ
ズム、少数性差別、反原発に流れ込み、日本でもその亜流がいまもメディ
アが牛耳っている。

さて、1938年3月8日に、フーバーはヒトラーと会見している。

「この会見でフーバーは、ヒトラーを狂信者であり、お飾りだけの愚か者
だとする欧米の報道が間違っていることを確信した。ヒトラーは自身の言
葉で国家社会主義思想に基づく経済再建を語った。情報の豊かさは彼の優
れた記憶力を感じさせるものだった」(渡邊解説本、64p)。

その前年、1937年にルーズベルト政権はシカゴで演説した。有名な『隔離
演説』である。しかも、この演説で、ルーズベルトは「国内の経済問題を
話題にしなかった。具体的な名指しは避けたものの、日独伊3国によって
世界の平和が乱されている、これを是正するためにはアメリカは積極的に
国際政治に関与しなけれはならないと訴えた」(同72p)。

1939年1月15」日、ナチスはチェコに侵入した。
 
「少なくとも軍事侵攻ではない。ハーハ(チェコ)大統領との合意によるも
のだった。さらに、フーバーが考える独ソ戦では、ドイツはソビエト侵攻
のハイウエイとなるチェコスロバキアを通らざるを得ないことは自明であ
る」(同83p)。

次はポーランドだった。

ここで英国のチャンバレンはポーランドの独立を保障する宣言を行った。
英米は、ドイツはスターリンとの対決に向かうと考えていたから、ポーラ
ンド回廊を通過するのは自然であり、このポーランド独立を英国が保障す
るということは、フーバーからみれば愚かな選択であった。


▲ルーズベルトがスターリンに譲歩したのはアメリカを不幸にした

ヒトラーは独ソ不可侵条約を結び、しかもソ連もポーランド侵攻に踏み切る。

「犬猿の仲であった独ソ両国の唯一の共通点。それが第1次大戦期に失っ
た領土回復を希求する強い思いであった」(同99p)

舞台裏では何回も複雑に執拗に交渉が続いたが、ポーランドの誤断も手
伝って、ついにナチスはポーランドへ侵攻する。

「この戦いがなければ日米戦争がおこるはずもなかった」が、ポーランド
の稚拙な対独外交が原因で、戦線が広がり、日米開戦への道が準備される。

その後の戦争の展開は周知の事実とはいえ、問題は「カイロ宣言」、「テ
ヘラン会談」から「ヤルタ」会談の密約、ポツダムへと米英ソの『密約』
が次々と進み、アメリカ国民は何も知らされないままルーズベルトとス
ターリンの謀議は進展し、途中からチャーチルはのけ者にされ、やがて病
魔に冒されたルーズベルトは正常な判断も出来なくなった。

トルーマンはルーズベルトから殆ど何も聞かされていなかった。原爆を保
有したことさえ、トルーマンは知らなかったのだ。

こうしてフーバー回想録は、アメリカの歴史学主流に投げつけられた爆弾
である。

彼らが『歴史修正主義』とレッテルを貼り付け非難してきたが、どちらが
正しいかは明らかであり、ルーズベルトの評価が地獄に堕ちているのだ
が、これを認めようとしない一群の学者とメディアが、真実をいまも覆い
隠しているのである。

渡邊氏は、解説書の最後を次のように結んでいる。

「中国と韓国は、日本を『極悪国』として捉え、歴史認識では日本の主張
を一切受け付けず、21世紀になっても非難を続けている。歴史の捏造が明
らかな南京事件についても、いわゆる慰安婦問題についても、アメリカは
プロパガンダであることを知っている。それにもかかわらず、アメリカが
日本を擁護しようとしないのはなぜなのか。それは、ルーズベルトと
チャーチルの戦争指導があまりに愚かであったからであり、その愚かさ
は、日本が(そしてナチス・ドイツが)問答無用に『悪の国』であったこ
とにしないかぎり隠しようがないからである。

歴史修正主義は、戦後築きあげられた『偉大な政治家神話』に擁護されて
いる二人の政治家(ルーズベルトとチャーチル)の外交に疑いの目を向け
る。ナチス・ドイツや戦前の日本が、胸を張れるほど素晴らしい国であっ
たと声高に主張しているのではない。極悪国とされている国を『歪んだプ
リズム』を通して見ることは止めるべきだと主張しているに過ぎない。

それにもかかわらず、歴史修正主義は枢軸国を擁護する歴史観だとのレッ
テルが貼られている。それは、ルーズベルトとチャーチルが引き起こした
戦後世界の混乱の真因から目を逸らさせたい歴史家や政治家がいるからで
ある)(同220p)。

 歴史の偽造やフェイクをまだ信じているガクシャは、本書を読むと顔が
引きつるだろうし、日本の論壇にまだ跋扈している左翼は卒倒するかも知
れない。

2017年07月15日

◆郭文貴の暗殺、強制送還は無理と分かって

宮崎 正弘



<平成29年(2017)7月14日(金曜日)弐 通算第5355号>  

 〜郭文貴の暗殺、強制送還は無理と分かって
   中国は法廷戦、宣伝戦をアメリカで仕掛けた〜

ノーベル賞受賞の劉暁波が病死して、世界は悲しみに沈んでいるが、中国
国内ではネットでの意見が削除され、胡耀邦死去直後に起きた民主化運動
の組織化はおきそうにない。未然にそれを防ぐために、劉暁波を刑務所か
ら出して一流病院に入院させ、病室をメディアに公開したりして、世論工
作を巧妙に展開した。

独裁者にとって次なる頭痛の種は米国へ逃亡して次々とメディアに登場
し、共産党高官の悪事をばらしている男、郭文貴である。

「暗殺するには有名すぎる」

「強制送還には米国は応じないだろう

となれば、郭の名声を地に落とすには、法廷を利用することだ。

中国は法廷闘争を命じた。パシフィック・アライアンス・ファンドは郭に
騙されて損害を出したとして8800万ドルの訴訟をニューヨーク地裁におこ
した。おなじく大手HNAも郭を提訴した。いまNY地裁だけでも15億ド
ルの損害賠償訴訟を起こされている。

つぎに高官の愛人、情婦などと書かれた有名女優等が名誉棄損で郭文貴を
訴えた。なかにはハリウッド女優人気7位という氾氷氷(Xmen 主
演)やベテラン女優の許晴らが含まれている。

薄煕来、周永康事件のおりに自家用機で女優を運んだなかにチャンツォ
イーが含まれたとして、彼女はそれを報じた在米メディアを名誉棄損、虚
偽報道で訴え勝訴したことがある。

郭文貴はニューヨークのど真ん中にペントハウスを構えるが、手元不如意
のため7800万ドルに売りに出している。買い手がつかない様子である。
 
(註 氾氷氷の「氾」には草冠。「氷」は「にすい」)

2017年07月14日

◆タイの新幹線、結局は「中国に発注へ

宮崎 正弘



<平成29年(2017)7月12日(水曜日)弐 通算第5351号>  

〜 タイの新幹線、結局は中国に発注へ
  ノンカイ ―― バンコク850キロのうち、最初の250キロ〜

 タイの軍人政権はながく保留してきた新幹線プロジェクトを、中国方式
で遂行すると決定した(サウスチャイナ・モーニングポスト、7月11日)。

バンコックから北北東へ850キロ、ラオスとの国境の町がノンカイ。ここ
から橋を渡り検問所を通るとラオスのビエンチャン郊外に達する。かなり
のトラックが物資を運んでいる。

タイ政府は中国との交渉で、ファイナンス、返済期間、利息のほか、労働
条件で2年間にわたって交渉を続けてきた。「一帯一路」の目玉にしたい
中国は、ファイナンス条件を呑んでいたが、問題は労働者である。

例によって囚人を投入し、現地労働者を雇わない。建設機材からセメント
を中国から持ち込む。いったい現地の利益とは何か。騒音と、中国人労働
者の輩出するゴミ、排便、食材の異質さ等。

あまつさえ囚人労働者は、プロジェクト終了と共に現地解散となる。この
人たちが住み着いてチャイナタウンを形成することは近未来の暗黒となら
ないのか。

この難問に中国側が折れたのは、すでに雲南省からラオスへの鉄道建設が
始まっており、この延長線でタイのノンカイへ繋ぎ、バンコクに達する
と、それから更に南へマレーシア、シンガポールまでつなげようという構
想を重視しているからだ。

まさに習近平の推進する「一帯一路」の目玉として大いなるプロパガンダ
としても使えるだろう。というわけで総額52億ドルという巨額の鉄道建設
が近く開始される。
         
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◆書評 しょひょう BOOKREVIEW 
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 習近平時代の現代中国を活写した記録ドキュメント
   一極支配を進める習政権は多くの障害を乗り切ることが可能か?

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濱本良一『世界を翻弄し続ける中国の狙いは何か』(ミネルヴァ書房)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

このシリーズは貴重な資料にもなる年代記的ドキュメント。いずれ歴史的
資料として存分な価値をもたらすであろう、中国研究家必携のシリーズ第
3弾である。

著者の濱本氏は読売新聞香港支局のころからの知り合い。中嶋嶺雄門下。
いまは秋田の国際教養大学教授として八面六臂の活躍をされている。北京
総局長時代にも北京で何回かお目にかかったが、その問題意識の鋭さにい
つも敬服した。

このシリーズの第1弾において濱本氏は中国が養光韜晦路線を修正したこ
とを明示した。多くのチャイナウォッチャーのなかで、初めての指摘だっ
たと記憶する。

すなわち、胡錦涛は北京五輪直前の経済的大発展に自信をつけて、「韜光
養晦、有所作為」とあったトウ小平路線を「積極有所作為」として、『積
極』を加味したのだ。

これを氏は、「必要とあれば強く自己主張する立場に変化した」のであ
り、最大の理由は「経済力と軍事力が備わってきたからである」

したがって「『中国は未来永劫に覇権をとなえない』など道徳的な美辞麗
句が得意な中国から聞こえる発言を鵜呑みにはできない。言行不一致が大
胆かつ平然と貫かれる一方で、仮面の下から次々と現れる中国を思い知る」

それが3万3390社も中国に進出した日本企業の認識にあるのか、どうかは
大いに疑問とするところだろう。

さて現代史資料として、記録を残す作業に没頭する氏の努力を称賛したい
が、本書のなかで評者(宮崎)がオヤッと思ったことが2点。これは個人
的な感想。

王岐山が、北京で会見した青木昌彦氏らの日本人にこういった。
 
「歴史研究に携わったことのある王氏が歴史学者の岡田英弘氏の著作を14
年に読んだことを披瀝する場面があった。中国の指導者が日本の中国歴史
研究者の著作を採り上げたのは異例だった」(312p)

王岐山は政治局常務委員に就任草々、周囲にトクヴィルを読めとさかんに
言っていたことは、世界のメディアが伝えた。

ところが、岡田氏の著作は少数しか知らなかったことで、じつは評者は生
前の岡田氏から聞いていたが、どの本なのか、特定ができなかった。濱本
氏は、おそらく、それは岡田氏の『世界史の誕生』(ちくまライブラ
リー)だと推定する。

もう一つ奇想天外な逸話。

ハリウッド映画買収に失敗し、本丸のホテル、テーマパークの売却に踏み
切った中国の大富豪、王健林にまつわることだ。
彼が率いる集団は「万達」である。

「習近平総書記の実姉で実業家の齋橋橋氏と夫のトウ家貴氏が、国内外で
不動産・小売り・ホテル開発など幅広く手がける王健林氏の率いる「万達
集団」(本社・大連、資産総額350億ドル)の非上場の株式を多数保有
し、13年10月に永年の知り合いの実業家に転売していたことが米紙
『ニューヨークタイムズ』(4月28日)の報道で判明した。

保有した09年当時の時価は2860万ドルだったが、4年後に売却した 際に
は8・4倍の2億4000万ドルに上った」(263p)。

同様に温家宝・首相(当時)の娘も相当量の万達株を保有していた。
「王健林氏の事業拡大の過程を取材し、王氏が党中枢に接近するために、
高官一族とその周辺に自社株を有利な価格で売却したか、贈与した可能性
を(ニューヨークタイムズが)強く示唆した」のだった。(264p)

 現代中国のダークサイドにも光を当てている。
       

2017年07月13日

◆中国の軍略、つぎの目標は・・

宮崎 正弘



<平成29年(2017)7月12日(水曜日)通算第5350号>  

〜中国の軍略、つぎの目標は「無人、無形、無声」の兵器開発
    ドローン、ミサイル、兵士ロボット開発が欧米レベルに迫っている〜

想像より早いテンポで中国の軍事ロボット開発が進んでいる。

飛行機の無人化、ミサイル技術、とりわけAI開発とあいまった命中精度
の向上、実戦に投入される軍事ロボットの研究開発である。

米国のシンクタンク「ジェイムズタウン財団」が発行する「チャイナ・ブ
リーフ」(7月6日号)に専門家のエルサ・カニア女史が次の報告してい
る。(エルサは国防省出身、カーネギー・清華大学シンクタンクをへて中
国に精通する)。

技術確信の基軸になるのはAI(人工知能)開発で、多くの理科系の中国
人学生は米国へ留学し、とくにシリコンバレーで起業し、あるいは市民権
を得て米国のハイテク企業に就労している。

米国はいまごろになってこの実態に驚き、規制を検討し始めた。

すでに無人機の分野で、中国が商業用ドローンでは、品質はともかく、生
産量で世界一。その廉価には日本のメーカーも歯が立たず、日本企業や個
人の多くが中国製ドローンを利用している。

つぎの中国の軍略目標は「無人、無形、無声」の兵器開発であり、関連す
るAIに焦点が当てられている。

第1に中国軍が想定している次世代戦争とは「無人兵器」が主力となるこ
とである。

第3に中国はお得意の「人海戦術」の未来板として想定しているのが「飽
和攻撃」と言われる中国独特の戦術の拡大になる。つまり無数の無人機
を、大量に送り込む遣り方。具体的には数百、数千の無人機が米空母を攻
撃に向かわせるというシナリオである。

米国の専門筋はこれを「ミツバチ攻撃」と命名しているが、すでに中国人
民解放軍系の新聞・雑誌・研究誌、論文などで多くの成果が報告されている。

「集中攻撃」ばかりか、大量の無人機は偵察、電波妨害にも転用可能であ
り、その方面の研究も「軍民融合」(軍産協同)路線で進んでいる。どこ
かの国のように「軍学協同ハンタイ」という声はない。
 
         
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 ◆樋泉克夫のコラム 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  
【知道中国 1597回】         
――「正邪の標準なくして、利害の打算あり」――(徳富36)
  徳富猪一郎『七十八日遊記』(民友社 明治39年)

              ▽

 徳富(とくとみ)の旅を閉じるに当たり、改めて「皮相の見」に綴られ
た全63項の表題のみを記す。

【支那に國家なし】【寂寞たる除外例】【共通性】【文弱】【文弱的國
民】【女らしき男の國民】【附景氣の戰爭】【防禦に專らにして進攻に拙
なり】【斷念哲學】【利害の打算】【便宜主義】【殉國の馬鹿者】【參者
の辛抱】【利の一字】【支那人の生命】【論語逆讀の法】【才取主義(コ
ンミツシヨン)】【我利我利】【支那の道路】【病的の利己心】【?僞的
方便の禮儀】【形式の世の中】【無頓着】【無頓着のみ】【無頓着の證
據】【新屋と舊屋】【大切なる結婚と葬式】【彼等は沙魚の如し】【眞底
から保守人種にあらす】【平民政治】【先天的階級なし】【役人の表と
裏】【政府は本來の害物】【征服者と被征服者】【帝力于我何有哉】【極
端なる干渉嫌ひ】【支那に誂向きの道教】【一切平等の宗教界】【宣教師
問題】【寫實以上に出てす】【文學と藝術】【趣味の幼穉と野鄙】【假我
と眞我】【受身の強身】【時間を無視して、時間を利用す】【外交的辭
令】【應接間の英雄】【偉大なる蕃殖力】【廉價なる人力と人命】【時て
こなし、數てこなす】【苦力大明神】【支那人の好物】【受負と手數料】
【立憲政治と受負主義】【英人と支那人(一)】【英人と支那人(二�

K![!Z1Q?M$H;YFa?M!J;0!K![!Z1Q?M$H;YFa?M!J;M!K![!Z@$3&$K1w$1$kBg@*NO![!Z@/<#E*$N;YFa![!Z@6T"$N@/<#E*FfBj![!Z@6T"$N73Bb![!Z@6T"$N0lBg2rC&![�

以上の63項目によって徳富は清国人の性格を解き明かそうとしたわけだ
が、それが正鵠を得ているかどうかは別にして、日本において一時代を築
いた第一級のジャーナリスト・知識人の見解であり、当時の日本における
中国と中国人に対する最大公約数的な認識と見做して間違いないだろう。

ここで、時に正面から時に側面から時に裏面から日本の対中政策に影響を
与えたアメリカにおける中国と中国人に関する認識の一例を参照する必要
があろうかと、「二十二年間支那に布教せしアーサー、エチ、スミス氏
(Arther.H.Smith)」が著した『支那人の特性』(Chinese
Characteristics)と題する書中に列擧」(村木正憲『清韓紀行』出版
地・出版年不明 明治33年序)された24項目を、村木の記述のままに記し
ておきたい。

なお「アーサー、エチ、スミス氏(Arther.H.Smith)」はアメリカ最古の
海外伝道組織として知られるアメリカン・ボードによって1872(明治5)
年に清国に派遣され、主に山東省一帯で布教・慈善活動・医療・教育など
に携わる一方、中国で発刊されていた英字新聞に頻繁に寄稿し、1905年の
退職後は通州に居を置いて執筆活動を行い、1926年に帰国したアーサー・
ヘンダーソン・スミス(Arthur Henderson Smith)である。

「一、支那人は顔にかヽる、顔か立たす、顔を汚されて残念なり等の思想
案外に強し」「二、支那人は節儉的なり」「三、支那人は勤勉なり」
「四、支那人は?禮に富む」「五、支那人は時是金の思想に乏し」「六、
支那人は明確の観念を欠く」「七、支那人は事を曖昧模糊に葬るの癖あり」

「八、支那人は婉曲を尊ひ空言を弄す」「九、支那人は變通なるか如くに
して而かも頑固なり」「十、支那人は無神経なり」「十一、支那人は尊大
にして外人を侮蔑す」「十二、支那人は公共心に乏し」「十三、支那人は
保守的なり」「十四、支那人は諸事習慣に拘泥し随て便利愉快を目的とし
て改良せんとするの念少なし」

「十五、支那人は天性強健なり」「十六、支那人は忍耐力に富む」「十
七、支那人は楽天的なり」「十八、支那人は祖先崇拝の念強し」「十九、
支那人は同情の念に乏し」「二十、支那人は忿怒の結果忽ち常識を失ひ狂
態を演す」「二十一、支那人は責任を重んし法令を遵守するの精神に富
む」「二十二、支那人は互に相猜忌す」「二十三、支那人は不正直なり」
「二十四、支那人は多神教又は宇宙教を奉し真神を信せす」(「一」が説
く「顔」は面子と解しておく)。
 徳富とスミスの見解に、中国人の自己認識を比較検討しておくのも一興
だろう。

2017年07月11日

◆疑いは晴れたとトランプ

宮崎 正弘



<平成29年(2017)7月10日(月曜日)通算第5347号>  

〜「ロシアのハッカー選挙妨害の疑いは晴れた」とトランプ
  「ロシアと協同する時がきた」とプーチン会談後、前向きな路線表明〜

 トランプ大統領はG20でいくつもの会談をこなしたが、ハイライトはロ
シアのプーチン大統領との初会談だった。本会議に長女のイヴァンカを代
理出席させ、30分の予定を2時間に延長した。

イヴァンカの出席は「おかしい」とメイ英首相はツィッターに書いたが、
メルケル独首相は「代理出席はよくあること」と取り合わなかった。

プーチンとの首脳会談に同席を許されたのはティラーソン国務長官だけ
で、会談の半分は昨年の米国大統領選挙へのハッカー攻撃についてだった
という。

プーチンのほうが記者会見で米露首脳会談の内容に触れ、「トランプ大統
領から夥しい質問を浴びせられたが、逐一回答し、信頼を得られたと確信
している」とした。
 
会談後、本会議にもどったトランプはG20の閉会後も予定になかったエル
ドアン(トルコ大統領)と30分話し込んだ。言ってみればG20はトランプ
がひとりで掻き荒らしたとも言える。

TPPは米国抜きの11ヶ国で再スタートしており、パリ協定は米国離脱も
世界各国の合意が崩れず、ましてやハンブルグG20はグローバリズム推進
を確認している。米国が孤立主義を突っ走る格好である。

「トランプのロシア理解は甘すぎる」とジョン・ブレナンCIA前長官が
批判に転じた。また下院情報委員会の民主党のトップであるアダム・シフ
下院議員も、「ロシアとの協同なんて出来るわけがない」と議会の反対姿
勢を剥き出しにした。

とりわけCIA前長官は「トランプ大統領は米国のインテリジェンス世界
の努力を踏みにじるのか」と強い非難をテレビ番組に出演して展開した。

だがブレナン前CIA長官は2013年から2017年、オバマ政権下での任期で
ある。トランプのCIA攻撃は言ってみればオバマ攻撃なのだから、身を
守るためにもトランプに強い非難を展開する理由はよく理解できる。

「オバマ前大統領は昨年8月にロシアの選挙介入を知っていながら11月8
日まで何もしなかった」とトランプはポーランドでの記者会見で語ってい
るのである。

 
さるにても、ロシア重視、中国とは共に北朝鮮にあたるという方針は、だ
れが背後で助言しているのか。副長官、次官、次官補人事が滞っていて外
交の執行部不在というアメリカの異常事態をトランプは平然としてやり過
ごし、いやそればかりか、どんどん、前へ進めている。

さきにサウジアラビア、イスラエル、バチカン訪問を段取りしたのは女婿
のクシュナーである。

トランプはクシュナーを基軸にティラーソン国務長官、ムチューニン財務
長官、バノン上級顧問らが束になっていると推定される。

そして誰あろう、このクシュナーが最も信頼する外交顧問がキッシン
ジャーであり、ティラーソン国務長官の推薦もキッシンジャーであった。
 
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▼読者の声 ▼どくしゃのこえ ■READERS‘ OPINIONS
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(読者の声1) 「小池百合子「グリーン保守戦略」の次の一手 −石破や
麻生と組めば国を亡ぼす」

●都議選で自民党は、スキャンダル噴出の逆風で大敗した。安倍首相は、
森友、加計問題に関し、周囲の忖度に対して脇が甘過ぎた。

●小池都知事の都民ファーストの会は、「グリーン保守戦略」で保守側か
ら左翼へ翼を拡げ、広く曖昧な投網を打ったマーケティングが奏功し、自
民党批判票の受け皿となった。

●小池氏は、いずれ国政に転じ首相への成り上がりを狙うが、その過程で
石破氏や麻生氏との連携を図れば、内憂外患を招き、国を滅ぼしかねない。

◆自民党の失態◆

7月2日投開票の都議選で、自民党が大敗し、小池都知事率いる都民
ファーストの会が躍進して、提携する公明党と合わせ都議会の過半数を制
した。

自民の敗因は、直前の豊田真由子議員の秘書への暴言暴行等のスキャンダ
ル、稲田防衛大臣の「自衛隊として候補者を応援」の失言等が響いたが、
根本には前国会での共謀罪の出来の悪さと強引な国会運営、森友学園、加
計学園を巡る周囲の忖度に対して脇が甘過ぎた事がある。

共謀罪については、パレルモ条約の加盟条件であるか否かの議論を離れ、
北朝鮮危機やテロの脅威が迫る中、筆者は速やかな法制化は必要だったと
いう立場だが、テロと無関係な内容が多数入っているほか、適用要件が曖
昧過ぎ時の政権、検察、警察の権力の拡大乱用に繋がる危険性が高過ぎた
と考える。

官僚は、放って置けば自省のあるいは官僚組織全体の権限と権益の増大を
図る生き物である。

安倍政権は、法務省が作った原案を精査し、削り込み、曖昧性を極力省い
て、加えて野党とマスコミへのお土産にする糊代の部分を作り国会に臨む
べきだった。

加計学園の問題については、そもそも先端的なライフサイエンス等は、特
区でやらず東大等既存の大学の関連学部を拡充して行う方が教員その他の
面で実際的だったのではないか。

一方、口蹄疫対策等に関する家畜を診る獣医不足問題には、それとは切り
離して都会のペット医に流れてしまっている獣医を戻すために、都道府県
の技術専門職獣医の待遇改善と共に、ある程度の市場の飽和化を図るため
の獣医学部の増員と新設を特区等用いずに、官邸主導で農水省に受給シ
ミュレーションをさせて行うべきだった。

ここに来て安倍首相は全国各地への獣医学部の新設を唱えたが時遅しであ
り、既得権と票田を持つ獣医師会の顔色を伺いながら、特区で行おうとし
た事で文科省も巻き込んだ複雑な構図となり、周囲の忖度が生じる隙を
作ってしまい脇が甘過ぎたと言える。

◆「グリーン保守戦略」◆

さて、都議選に於ける都民ファーストの躍進だが、築地市場の豊洲移転問
題については、小池知事は環境問題で豊洲移転決定を引き延ばし、都議選
直前になって「築地は守る、豊洲は生かす」と曖昧な方針を打ち出した
が、元々市場が移転しても築地の場外店舗等は残るのだから、観光資源と
して築地のブランドを守る何らかのものは必要だった。

市場が豊洲に移転し、築地を解体後、食のテーマパークとして再整備する
というが具体的には今後の議論に任せるとの事だ。

築地派と豊洲派の両方顔を立てた訳だが、その打ち出すタイミングと、具
体策を言わば都民に丸投げした手法は、良し悪しは別として選挙戦術とし
て巧妙だった。

市場機能の分散で非効率との批判が多いが、恐らく「見世物機能」として
の小規模な特定の市場機能だけを築地に帰すのか、それが無理なら「すし
ざんまい」の社長に頼んでマグロの解体ショーを入れて何となく雰囲気を
醸し出す等の形が落とし所になるだろう。


これを含め小池都知事の「グリーン保守戦略」は、保守側から左翼へ翼を
拡げ広く曖昧な投網を打つというものだ。

このマーケティングが奏功し、自民党批判票の受け皿となった。

この保守側から左翼へ翼を拡げるという戦略は、何も真新しいものではない。

古くは小沢一郎氏が民主党政権樹立に用いたが、小沢氏は今ではさながら
地上の欲望に淫したルシファーが天上界に戻れなくなったが如く左翼側の
住人と化している。

亀井静香氏も同様に左翼の取り込みを図ったが、安倍首相へコンタクトを
図っており綿貫元幹事長に続き自民党へ戻るのは時間の問題と見られる。

なお、保守と左翼を広く曖昧に取り込むという戦略は、エンターテインメ
ントの世界でも拡がっている。

宮崎駿監督のアニメ映画「風立ちぬ」は、零戦の設計者堀越二郎と小説風
立ちぬの作者堀辰雄を足して2で割った主人公を登場させた。

保守側からは、百田尚樹氏が「永遠の0」で、特攻を報国よりも家族愛、
郷土愛を強調して描き、若干反戦の要素も入れ左翼へも翼を拡げたマーケ
ティングをして、映画を興行的に成功させている。

◆財務省の影と国防の危機◆

中央政界では、麻生太郎副総理は大宏池会を纏め上げ、石破茂自民党元幹
事長は安倍首相批判を高め来秋の自民党総裁選へ名乗りを上げる構えだ。
 小池氏は石破氏とは新進党在籍、2012年9月の自民党総裁選応援等で関
係が近く、連携が噂されている。

小池氏は、2020年7月からの東京五輪の直前に行われるであろう任期切れ
に伴う都知事選で再選されてしまうと国政選挙へ出馬するタイミングを失
うから、首相になるためにはそれ以前に辞任し後継に都政を託したいと考
えているだろう。

国政政党設立のタイミング、都知事辞任のタイミング、自民党との間合
い、公明党との協力関係、後継都知事候補者選定等については、様々な組
み合わせが考えられるが、現時点では頭の体操以上のものではない。

石破氏も麻生氏も、消費税増税を図りたい財務省の意中の政治家であり、
その代弁者の様な言動を繰り返している。

また石破氏については、 後に否定しているものの、韓国紙の東亜日報
(電子版)が5月23日、慰安婦問題をめぐる平成27年の日韓合意に関し
「納得を得るまで謝罪するしかない」と述べたとするインタビュー記事を
掲載する等、過度な親韓、新北、親中の傾向が強い。

麻生氏とその後継の岸田文雄外務大臣は、宮沢喜一元首相の流れを汲む大
宏池会なのでその傾向は更に顕著だ。

筆者は、将来的な消費税増税を完全否定する者ではないが、社会の仕組み
を変えて少子高齢化社会を緩和させて行く事無しに増税によりその経費を
賄おうとする財務省の考えは安易なソロバン勘定であり、日本破滅への行
進曲であると考える。

なお、余談だが最高のコミュニケーション能力を持つ政治家であり内閣改
造で入閣も噂される小泉進次郎氏は、最近「子供保険」という財務省に振
付された詐欺紛いの形を変えた増税案を打ち出し、最低の政策立案能力を
持つ政治家でもある事を露呈した。

また、北朝鮮危機、それに続く中国の侵略意図が迫る中、石破氏や宏池会
に見られる事実に基づかない、または曖昧にした上での過度な謝罪意識
は、国防の発動を誤る事に繋がりかねない。

安倍首相は、不十分ながらも安易な消費税増税と自虐史観に抵抗し、かつ
潰されずに来た稀有な政治家である。周囲の忖度に対する脇の甘さは、意
固地にならずに真摯に反省した方が良い。

その上でなら、ここ暫くは国政を司る事を任せ得る唯一の政治家と言える。

小池氏は、「自分ファースト」によって組む相手を間違えれば、亡国に加
担する事になるだろう。(佐藤鴻全)


2017年07月10日

◆中国のロボット開発技術が

宮崎 正弘


<平成29年(2017)7月9日(日曜日) 通算第5346号>  

 〜中国のロボット開発技術がアメリカを超えたというのは本当か
  かれらが究極的に倣うのは産業、介護ロボットではない〜

 知的財産権に関してアメリカから盗む一方だった中国には創造性がな
い、独想力なくして画期的な発明は無理と言われた。WTO加盟国であり
ながら知的財産権をひとつも重視しないのが、中国であり、アメリカばか
りか日本からドイツから、片っ端から技術を盗み出し、軍の兵器開発に活
用し、ハッカー技術ではおそらくアメリカと並んだ。
 それが心配の種だった。

2010年に中国の特許出願は38万件で、アメリカは47万件だった。これが近
年、逆転し、中国企業の特許宇出願件数は100万件を超えた。

過去40年間に、アメリカ企業の研究開発費、ならびに連邦政府のR&D予
算は45%もの減少を示してきた。

アメリカのトップ企業CEO1268人中、その91%が、米国連邦政府の研究
開発は劣勢に陥ったと認識していることが2017年5月の調査で判明した。
それまでに中国企業はアメリカのAI開発の先端企業51社に大株主として
出資したり、買収したりして、総額7億ドルの投資をしていた。

同年6月15日、連邦政府の海外企業調査委員会は、AI、ロボットなどに
関して、中国企業との合弁事業は、これを許可しないとした。

しかし時すでに遅し、である。

「百度」やテンセントはすでにシリコンバレーにAI研究センターを設立
して、米国内の優秀なエンジニアを雇傭し、AIのイノベーションに取り
組んでいるばかりか中国政府のAI研究開発予算は過去5年2桁の伸びを
示している。

「アメリカの優位は5年以内に中国の追い上げに合うだろう」とシリコン
バレーの関係者の多くが見ている(アジアタイムズ、7月8日)

しかも中国が究極的に倣うのは産業、介護ロボットではない。軍事ロボッ
トである。

トランプ政権はしかしながら連邦政府のR&D関連予算を10%カットする
と公言し、その分を軍事費に注ぎ込むとしているが、これは矛盾である。

 もっとも特許申請件数が多いとはいえ、特許雨声率件数はまだまだ日米
の下位にあり、だぼ鯊特許ならびにロゴなど意匠登録の類似、有名ブラン
ドに告示する商標登録などを合わせた数が中国の発表数字である。

         
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 大化の改新で仏教を国教にした日本が明治維新では逆のことを行った
   廃仏毀釈の歴史解釈など新鮮な歴史論争が基軸の日本文化比較論

  ♪
加瀬英明 v 石平『明治維新から見た日本の奇跡、中韓の悲劇』(ビジ
ネス社)
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繁栄する日本と衰亡する中韓両国の運命は、すでに150年前に決まってい
た。なぜなら日本は明治維新を成し遂げ近代化したが、中国も韓国もまだ
近代化が出来ていないからである。

中国はアヘン漬け、韓国は中国の属国。他方、日本は独立した主権国家に
なった。この差違を理解できないのが両国であり、したがって未来永劫理
解し合えることはないのだが、この歴史の本質を、長期的な歴史の視座に
立脚し、大局的な見地にたって、ふたりは丁々発止と語りあった。
じつに面白い歴史読本になっている。

日本人の特質は相手を忖度し、つねに謙虚であるがゆえに自分が悪いと思
いこむ。

「中国人と韓国人はいかなる場合でも、相手が悪いと思います。考えてみ
れば、易姓革命とは、クーデターのライセンスですね。中国では、思想も
権力に奉仕する。権力者が自分にとって都合のよい思想をつくる」(加瀬)

「中国の皇帝は天下万民を自分の私有物にするので、結局、憎まれる存在
です。有徳でも何でもなく、ただ力があるときは、恐怖で天下万民をおさ
える。いったん力を失うと、ほかの強者が必ずでて」、国家を私物化する
(石平)

仏教は大化の改新前に日本に渡来した。

「朝廷は仏教徒になりました。それまでは豪族が、ちょうど徳川時代のよ
うに、日本を分けて、それぞれの地域を支配していた。それを唐と新羅の
力が増すので、日本の国防を近代化しなければならず、今度は唐の制度を
真似て中央集権にする必要があった」(加瀬)。

したがって、神道は抑えられ、それが明治維新の時までは神仏が混交して
いたが、「神道と仏教を無理に分ける、神仏分離を行った。それは仏教
が?川幕府と結びついていたから」だと加瀬氏は分析する。
つまり「廃仏毀釈」は「大化の改新」と逆のことをおこなったと加瀬氏は
続けるが、一方、石平氏は、「大化の改新のころ、仏教を国教にしてし
まったもう一つの思惑は、中国と対抗することです。中華世界と対抗する
ならば、やっぱり中華世界を圧倒するようなイデオロギーを持たなければ
いけない。仏教がそれ」だったという。
 この丁々発止、延々とつづく。
      
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 誇りある日本文明の源泉は縄文文明に謎がある
  古代から朝鮮半島との交流があったが、日本は独自な文明を生み出した

  ♪
高田純『誇りある日本文明』(青林堂)
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 副題に本書の狙いが簡潔明瞭に示されている。すなわち「中韓が絶対に
超えられない、先進と継続の理由」である。

高田純氏は札幌医科大学教授で核放射線防護が専門。この専門域から、北
朝鮮、中国の核兵器など安全保障問題でも発言も多く、カザフやチェルノ
ブイリ、フクシマなど被災地の調査に取り組んできた。原発問題でも発言
がおおく、保守の論客として知られるが、本書では古代文明、縄文式土器
から言語、発明など幅広い分野に挑まれて、世界に独特な日本文明の謎に
挑戦した知的刺戟に富む本である。

縄文土器から新幹線、ウォッシュレット。これらは高度な技術であるばか
りか、日本文明が産んだ独自の発明。というより技術であり、職人芸の巧
みさである。この匠の謎は、日本文明の独自的な形成、その歴史的な経
緯、海洋国家としての和の精神などにもとめられるとする。

日本の清潔さは水が綺麗であること。水道水が飲めるのは世界ひろしと雖
も、おそらく日本だけだろう。中国の水は世界一汚染され、毒素を含み、
ミネラルウォーターですら、中国製は飲めない。金持ち連中はわざわざ日
本のミネラルウォーターを買っている。

高田氏はこう言う。

「日本は大陸社会のように食用の牧畜をしない文明となった。宏大な牧草
地を必要とする大陸の文明では森林がなくなり砂漠化した。一方、日本列
島は天武天皇時代に始まる方針のおかげで、21世紀の今も美しい森林が守
られている。この智恵をわすれてはいけない。これが治水にもなり、農業
と漁業につながっている。日本は森林大国で、水が美味しい」。

先般、評者(宮崎)は北欧を回ったがフィヨルドが豊かなノウウェイでは
水道水も飲めた。
 
閑話休題。旧石器時代の3万年前に、ガラスのような黒曜石を発見し、之
を活用しはじめる。青森県の三内丸山遺跡では、北海道線と思われる黒曜
石石器が発掘されている。

そして1万6千年前に縄文様の土器がつくられ食器として用いられた。
「食料とする獣を追って放浪した他の民族と(日本人と)は、そこが完全
に異なる」 

縄文への再評価は近年高まりを見せているが、「縄のしるしは、神道では
特別な意味を持つ。しめ縄のように神聖や清さを意味する。土器の中に食
べ物を入れて煮炊きするので、そうした願いを込めた」

食中毒から身を守り、煮炊きによって腐敗を防止し、賞味期限を長くし、
縄文土器が命をまもった「画期的発明であった」と高田氏は言うのだ。
つまり日本文明は通説より遙かに古いのである。

「現在の理解は、少数の発掘された骨のデータだけからの推測に過ぎな
い」のであり、「天下り式に西洋仮説を引用」する考古学や文化人類学主
流の学問に強い疑義を呈するのである。

日本が農耕民族としてひとくくりにするのも間違いで、それは「海洋に囲
まれた日本列島にある文明の一面」でしかないという視点を強調する。

          
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  樋泉克夫のコラム 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 【知道中国 1596回】      
  ――「正邪の標準なくして、利害の打算あり」――(徳富35)
   徳富猪一郎『七十八日遊記』(民友社 明治39年)

             ▽
 やはり日露戦争勝利という「日本帝國の先例は、總ての有色人種、特に
黄人種の自覺の動機たるの事實を抹殺す可らす、果して然らは、吾人は寧
ろ男らしく此の一大渦中に飛ひ込み、此の大勢を利導するに若かんや」。
やや大時代風に表現するなら、これこそが「白色人種」の専横に反対し、
「黄人種」の自立を目指す戦いの庭に立つという徳富の決意宣言ともいえ
そうだ。まさに男子の本懐である。

「平均を求むる」ということは、「人類にせよ、物體にせよ、宇宙經濟の
也」。ここで徳富が記す「經濟」は現に使われている経済(エコノミー)
ではなく、やはり儒教が為政者の心すべき道とした経世済民(貧しからざ
るを憂えず、等しからざるを憂う)と捉えるなら、「宇宙經濟」は人倫で
あり、まことのヒトの道とでも読み替えるべきだろうか。

「社會主義」「民權論」「同盟罷業」「憲法政治」が唱道されてはいる
が、どれもが「或る部分の平均を求むるの作用に外なら」ない。「平均を
求める」ことにおいて「此の黄白二大人種の間の平均を恢復せんとする」
ことこそが、「實に大の大なるものと謂はさるを得」ない。じつは平均を
求めるということは、「挑戰せんか爲」でも、「對抗せんか爲」でもな
い。「眞に人類同胞、四海兄弟の實を擧けんか爲め」だけだ。
かくして徳富は「黄人の重荷は、我が大和民族の双肩に在り。吾人豈に
小成に安す可けん哉。日本國民の事業此れよりして遠し」と、『七十八日
遊記』を結んだ。

結論を急ぐなら、どうやら徳富が示した「黄人の重荷は、我が大和民族の
双肩に在り。吾人豈に小成に安す可けん哉。日本國民の事業此れよりして
遠し」との主張を分水嶺に、以後の日本は「黄人の重荷」を背負うことを
念頭に置いて昭和20年8月15日を迎えたようにも思える。だからといっ
て、「黄人の重荷」を引き受けたことを否定する積りは全くない。むし
ろ、あの時期に敢えて「黄人の重荷」を背負おうとした先人の志は限りな
く尊い。だが、おそらく「黄人の重荷」を隠れ蓑に悪行がみられたのも否
定しがたい事実だろう。

辛亥革命からはじまり、第1次世界大戦、シベリア出兵、満州事変、上
海事変、満州国建国、盧溝橋事件、南洋進出、暴支膺懲、大東亜戦争を経
て一億総懺悔まで、20世紀前半の日本を象徴するであろう出来事やスロー
ガンを思いつくままに拾ってみるなら、濃淡の差こそあれ「黄人の重荷」
を背負おうとした先人――たとえば岸田吟香、根津一、荒尾精、頭山満、宮
崎滔天、北一輝、橘樸、辻聽花、鈴江言一、中江丑吉などの素志を認める
ことができる。その尊い志を無視することも、ましてや否定することなど
できはしない。

だが同時に、「黄人の重荷」を背負うことに急なあまり、時に周囲への目
配りを欠き、時に目を晦まし独善に流れ、結果として誤解を招いたことも
また素直に認めざるを得ないはずだ。加えるに、「黄人の重荷」を口実に
しながら自らの野望を逞しうしようとした輩がいたことも。

徳富は『七十八日遊記』の末尾の、さらに末に、次の小文を付している。
「支那は眠れり、今や醒覺し來れりとは、20年前、曾侯紀澤の、斷言した
る所」だ。日清戦争は「一大暁鐘」だった。20世紀目前に起った義和団の
排外運動である「團匪事件は更らに「一大暁鐘」であり、日露戦争も「亦
更らに一大暁鐘」であった。にもかかわらず彼らにとっては「一大暁鐘」
とはならなかった。いや、「一大暁鐘」とは受け取らなかったに違いな
い。「今や如何。醒覺乎、醒覺乎。其の前途は如何。吾人は醒覺の時節、
到來したるを疑はす。但た到來後の形勢如何を卜せんと欲するのみ。明治
39年10月」

徳富が筆を擱いた明治39年10月から5年が過ぎた1911年10月、武昌での新
軍による武装蜂起を引き金に清朝は崩壊に向かう。だが、「醒覺」は、ま
だ先の先・・・。
《QED》
  

2017年07月09日

◆大荒れのハンブルグ

宮崎 正弘



<平成29年(2017)7月8日(土曜日)通算第5345号>  

 〜大荒れのハンブルグ、場外乱闘で警官160人が負傷
  トランプ大統領、プーチン、安部、文らとの会談を次々とこなす〜

 7月7日、G20(主要20か国・地域首脳会議)がドイツ・ハンブルクで
開催され、初のトランプvsプーチン会談が行われるなど、話題は豊富
だった。

トランプは大統領選挙中のロシアのハッカー部隊の妨害を追求したとされ
るが、同席したティラーソン国務長官の記者会見ではプーチンが否定した
という。

日米韓の3ヶ国首脳会談が同時に行われ安部首相、米国のトランプ大統
領、韓国の文在寅が夕食を挟んで会談した。

この3ヶ国首脳会議では大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射を繰り返
す北朝鮮に対し、「圧力を強めること」で一致したものの具体的な制裁措
置など合意は得られなかった。

この会談はトランプ大統領が夕食会を提案しておこなわれたもので、実に
三時間に及んだ(トランプvsプーチン会談は2時間だった)。

また別途に行われた日韓首脳会談は僅か35分だった。

最終決着ができている慰安婦問題を文在寅が「韓国の情緒的な国民感情が
許さない」としてこりもせずに持ち出したため、「意見は折り合わず」
(コリアヘラルド)、「北への圧力では一致したが、意見の食い違いは慰
安婦問題で見られた」(コリアタイムズ)となった。

日韓両国のシャトル外交は、六年の空白があり、今後は1年に1回のシャ
トルの復活が謳われただけにとどまった。
 ひきつづき日中首脳会談は8日に開かれる。

         
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 沖縄反基地闘争に蔓延る左翼ペテン師たちの正体
  テレビも新聞もフェイクニュースの発信源。嘘ばかりだ

  長谷川幸洋 vs ケント・ギルバート『大放言!』(ビジネス社)

テレビで評判をとった番組の発言当事者が左翼偏向マスコミの本質をばっ
さりと斬り合う趣向が凝らされ、激論、激辛なトーンでフェイクニュース
の本質に潜む左翼の陰謀を俎上に載せる。
 快刀乱麻だ。

発端はある番組で「正論」を述べたところ、長谷川氏が東京新聞で降格人
事となり、社会問題化した。このような事件を見ていると「日本にはたし
て言論の自由はあるのか?」と誰もが疑うだろう。

評者(宮崎)はテレビを見る習慣がないので、この事件を本書を読むま
で、まったく知らなかった。

ケントさんとは4半世紀を超える付き合いだが、長谷川氏のことはまるで
知らない。東京新聞の論説副主幹だったことを初めて知ったほど。あの朝
日より左のバカ新聞に、こういう真面目な人がいるんだというのが評者の
初印象である。
 東京新聞は評者が学生時代はまともな新聞だった。文化欄は充実してい
たし、梅原一雄、漆原成美らの論客、「こちら特報部」には上之郷某ら花
形記者がいた。
それがおかしくなったのは中日新聞が買収し、名古屋から進駐軍がやって
きたあたり。ならば中日新聞が左傾したのは、革命勢力が強いからかと言
えば、そうではなく、伝統的に尾張?川家の中央への怨念から来る反権力
の宿痾的な体質である。尾張?川は戊辰戦争のおり真っ先に裏切って薩長
軍に投降した経緯を思い出すのである。

 さて「事件」とは1月2日放送の「ニュース女子」という番組の討論の
中味にあった。
 「日本の公安調査庁がまとめた『内外情勢の回顧と展望』と題する
2017年の年次報告書を井上和彦さんが持ってこられました。その報告
書には『反対運動には中国の影が感じられる』というような既述がありま
した」(長谷川)
 「翁長知事が沖縄のリーダーになって以来、辺野古への基地移転反対闘
争は一気にヒートアップしています。移設反対を訴える急進的左翼や暴力
的過激派による、基地容認派への脅迫や、米兵とその家族への攻撃も行わ
れています」(ケント)

このような実態がすこしも報じられないのは沖縄世論を牛耳る二つの新聞
が、正論を吐かず、でたらめな反米記事を書いて煽るからである。
 問題は沖縄に於ける反米運動の報道にある。
反対するデモ隊には日当が支払われ、その資金は中国から迂回経由。動員
されたなかには外国人がいるということは昔から知られたことで、二月に
も或るシンポジウムでケントさんと隣り合ったときも、ケントさんは堂々
と公衆の面前でそう語っている。つまり証拠があるのだ。
 ところが、そのことをテレビで喋ると猛烈な抗議が組織的になされ、左
翼ジャーナリズムが一斉に共闘して批判するという、左翼メディアの、と
いうより「フェイクニュース業界」の体質である。

 この人たちは日本を破壊しようとして動いているのであって、説得して
も分かるわけがないし、不都合な事実を提示されても「忙しい、わたしは
読んでいない」という。完全に頭がおかしい人たちだが、左翼メディア
は、こういうバカ言論人を多用するのである。
 本書では実名があがって、その「罪状」が縷々述べられているが、青木
理、辛某女史、山口二郎ほか。評者にとっては初めて聞く名前の人ばかり
だった。

 また朝日新聞OBが朝日を批判するのだが、現役記者がなぜ朝日を批判
しないかといえば「ローンを抱えている」「首になる」などと言い訳があ
る。つまり左翼主流の執行部体制に刃向かえば何が待っているかという官
僚主義、その悪弊が朝日以下の新聞社にも蔓延っているわけである。
 ともかく本書では、治癒の見込みのない沖縄左翼の実態、メディアの
フェイクの作り方、その許し難い陰謀を暴いている。

       

2017年07月06日

◆北朝鮮がICBM発射に成功

宮崎 正弘



<平成29年(2017)7月5日(水曜日)弐 通算第5341号>  

 〜北朝鮮がICBM発射に成功。G20で米中首脳会談の優先議題に
  トランプ「北朝鮮へ圧力をかけるという中国への期待は幻覚だった」〜

7月4日、日本は台風騒ぎに明け暮れ、北朝鮮のICBM発射実験成功
はトップニュースではなかった。軍事脅威不感症の所為だろう。
 
トランプ大統領は「中国が行動を取らないなら、米国は単独で行動を取
る」としたうえ、7月6日ドイツのハンブルグで行われるG20の最中に、
日本と韓国の首脳を招いて米日韓の首脳会議を行うとした。翌日7月7日
には安倍、文在寅会談が予定されているが、その前夜に三者会談が行われ
る段取りとなった。

ところが文在寅は北のICBM成功に関して記者会見し、「まだ引き返せ
ない地点ではない」と幻想的な見通しを語っている。

トランプは中国への幻覚を捨てた。中国が北朝鮮へ経済制裁など具体的で
効果的圧力を架ければ事態は解決するという、根拠の薄い期待を抱いてい
たため、4月の米中首脳会談でトランプは習近平に百日の猶予を与えたと
される。

しかし中国はまったくやる気がないばかりか、ぶつぶつと米国に文句を言
い出した。

北朝鮮のICBM事件は、米海軍の空母2隻(カールビンソンとロナルド
レーガン)が日本海から撤退したことを見計らい、韓国の油断、中国の事
情などを勘案した上で、発射した。慎重にタイミングを計算しているので
ある。

7月2日、トランプは習近平に電話をかけている。その内容は、大統領が
休暇先からワシントンへ戻った3日夜(日本時間7月4日)に、ホワイト
ハウス筋からリークされた。習近平は、トランプに対して北を制裁しない
理由付けに多くの苦情を述べたという。


 ▲中国が北朝鮮を制裁するなどという米国の期待は幻想だった

習近平が米国への不満は次の5つではなかったかと消息筋は推測している。
 
第1にトランプ政権は「一つの中国」の原則を守るとしながらも台湾へ14
億ドルもの武器供与を決めたではないか。
 
第2に米国が中国大使などを通じて「人権問題」に言及し、劉暁波の米国
亡命受け入れなどを示唆するのは内政干渉である。

第3に米国は中国の丹東銀行に対して北朝鮮のマネーロンダリングや不正
送金に手を貸したとして制裁した。
 
第4に中国の鉄鋼製品をダンピングなどと言いがかりをつけて400%前
後の報復関税を課している。

第5に南シナ海における「航行の自由作戦」という米国の軍事行動は中国
の主権を侵害する深刻な、由々しき挑発行為である等等。

トランプは習近平の発した小言を聞いた上で、これまでの中国幻想を捨てた。

不誠実な、約束を守る気が初めからなかったことに気がついたのでは
と、ニューヨークタイムズ‘7月4日付け)が珍しくまともな分析をして
いる。