2017年11月18日

◆独裁37年のムガベついに倒れる

宮崎 正光

<K平成29年(2017)11月17日(金曜日)通巻第5506号 > 

 独裁37年のムガベ、子飼いの軍人が裏切り、ついに倒れる
  中国の保護領だったジンバブエの独裁が終わるのに中国は驚いていない?

ジンバブエの首都ハラレで軍事クーデタが成功した模様である。
 37年もの長きにわたってジンバブエを支配してきたムガベ大統領とその
一族は、中国の支援で延命できた。

通貨の大暴落によるハイパーインフレに悩み、物価は2、000 、000倍。
国民の不満は爆発して、前回の選挙でムガベは事実上敗北していたが、誤
魔化しと不正投票で「勝利」と宣伝した。

その選挙カー、揃いのTシャツからチラシの印刷まで、中国が丸抱えだった。

しかしジンバブエ通貨は市場では通用せず、なんと法定通貨は中国の人民
元。そして町では米ドルとユーロ、一部は南ア通貨のランドの取引となった。

93歳のムガベは老衰が激しく、昔の演説を何回も繰り返したりして、周辺
の呆れがちだったが、後妻のグレースが、大統領夫人の座を笠にして浪費
を重ね、国内ばかりかボツアナやナミビアなどに豪邸を建て、国民や野党
から「グッチ・グレース」と罵られてきた。周辺では次期後継が、この悪
名高き後妻となると、ジンバブエの政治腐敗はさらに進行すると懸念の声
があがっていた。

15日早朝に軍隊が出動し、ムガベ大統領を自宅に軟禁し、何台かの戦車と
ともに、政府機関、国会、放送局などの拠点を軍事制圧した。

ムガベと並ぶ独裁女、グレース夫人は所在不明。16日、南アに亡命してい
たエマーソン・マナンガグワが急遽、ハラレへ帰国した。マナンガグワは
ムガベ独裁の右腕だったが、ふたりは仲違いし、南アにさっと身を隠して
いた。国外から軍と連絡を取り合っていた。

11月16日になると、町には銃声が聞こえず、国民はこの静かなるクーデタ
を「歓迎している雰囲気」と英紙『ガーディアン』が伝えた。野党からも
非難声明はなく、次期選挙が公平に行われる旨の声明が出された。
ジンバブエ軍は「政権移行チームが発足し、五年以内に民政移管の選挙が
行われるだろう」と声明を発表した。

新しい事実が判った。

このクーデタの数日前に、マナンガグワはひそかに北京にいた。

しかもジンバブエ軍のグベヤ・チウェンガ国防大臣が前後して北京を訪問
し、中国中央軍事委員会の大幹部ふたりと面談していたことが判明した。

つまり、このクーデタ劇は、ムガベ側近と軍が事前に共謀し、北京の承認
を得てから決行した政変劇だった。ゴルバチョフ夫妻を監禁した政治劇と
プロセスは似ているが、旧ソ連最後の軍事クーデタは未遂だった。

                
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◆書評 しょひょう BOOKREVIEW 

翔んでる発想を華々しく列挙、嬉しくなるような変化球
 こういう地平から物事を愉快に考える人がいるんだ

  ♪
和田秀樹『私の保守宣言』(ワック)
@@@@@@@@@@@@@@

読後感は愉快千万、なるほどこういう柔軟な発想をする学者がいるのか、
という意外な側面を知ったことだった。

日本の核武装も、じつは簡単で原発がとまってしまってプルトニウムはた
くさん残っているからNPT条約を脱退すれば、すぐにも出来ると、和田
先生は核武装論者だ。

年功序列、終身雇用もたいへん良い制度であり、これが日本的経営の精髄
で世界に競争力を保てると言われ、ノーベル賞の中村某は世界標準でいう
と「売国奴」だと、批判の刃も鮮烈である。なぜなら日本の企業で開発し
た成果をアメリカに持って行ったわけで、これはアメリカの判例で言うと
産業スパイである。

とくに評者(宮崎)が新鮮と思ったのは超円高に賛成、1ドル=30円が理想
であるというくだりだった。

評者は政治経済評論をしているので、こういう実現不可能な話をすること
はないが、1ドル=70円でも日本経済は耐えた。円安にぶれると株がぽん
と上がり、日本の景気は良くなった。再びの円高はそれを逆転させる。

しかし和田氏の発想は同じ次元からではなく、「1ドルが360円から80円
になるまでに24年しかかかっていません。その95年から順調に成長してい
たら、今頃、80円から4分の1の20円になる流れだった(そうであれば、
日本のGDPは世界一です)のに、いまは120円まで下った」(中略)「一
ドルが30円になったら日本の富は四倍に増え、アメリカとGDPでは並び
ます。」(183p)

ということは中国のGDPは日本の半分になり、昔の状態に戻るだろう。
じつは、中国の経済実力はそれくらいしかないのだ。つまり為替のマジッ
クが日本の経済力を過小評価させ、中国のそれを過大評価させていること
になる。

もっとも1ドル=100円を超える円高状態になると、年間2500万人の 外国
人観光客は一斉に停まるし、日本の賃金が高まると、アジア諸国から
どっと出稼ぎが押し寄せるデメリットがある。

したがって氏の円高歓迎論は、現実離れしている。けれども、その柔軟な
発想の根底にある豊饒な想像力の愉快さには乾杯したくなったのである。
         
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◆樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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【知道中国 1657回】               
――「即ち支那國は滅びても支那人は滅びぬ」――(佐藤4)
  佐藤善治郎『南清紀行』(良明堂書店 明治44年)

  ▽
乞食が額を石に打ち付ける音は、「1町位聞え、泣く聲は2、3町きこえ
る」。「通常人があの眞似を半時間もやれば死んで仕舞ふであらう」。だ
が死ぬことはない。なにかカラクリがあるはずだ。

「そつと後に廻つて見れば、?布で鉢巻をして居つた。晝間見れば牛肉の
血など塗つてやつて居るさうである」。ということは、「?布で鉢巻」や
「牛肉の血」は乞食商売にとっての小道具と考えて間違いないだろう。

それにしてもバカバカしい限りだが、「支那人の如き利己的冷淡なる人民
の間に於て乞食をするは寔に骨の折れた事である」ことだけは確かだ。

「支那人は飲食の慾にきたない事」を見て取った佐藤は、「支那人に3
大慾がある」と口を極める。「3大慾」とは「色慾と飲食慾と金錢慾」で
ある。「彼等には美を愛するといふ思想も極めて幼稚劣等で」、「眞理を
愛するといふ思想も薄く」、「善を愛するといふ事も通常以上ではな
い」。そこで「人は食ふために生まれて來たと觀念して居るらしい」と考
えた。

汽車での旅行中に「2,3の支那新聞を買つて見」て、日本で洪水が発
生したことを知る。

そこで佐藤は「東洋の大洪水」と題された記事に興味を持った。「本年は
ハレー彗星が出たから、世界何れの國か其禍に罹るに相違ないと思つて居
つた處が、日本が其禍を受けた」と書き出され、日本各地の被害状況を詳
細に報じた後、「世界國多し。

而して日本獨り災害を受けしは何故ぞや。蓋し日本は奸邪の國である。嚮
には日俄協約を以て滿洲の利權を収め、今又韓國が合併すとの風説があ
る。天の日本に災する亦宜ならずや」と結ばれていた。かくて「清國人に
は左樣に感ぜらるゝかと考えた」のであった。

この記事によれば、日本が洪水に襲われた原因は「滿洲の利權を収め」、
日韓併合を強行するような「奸邪の國である」からであり、「天の日本に
災」するのは当然。つまり洪水は天罰であり自業自得ということになるら
しい。また日韓併合に関し、「韓國はもと支那の屬報たりと説き起して悲
憤慷慨の筆を振つて居」た記事も目にしている。

以上は、日韓併合が正式に実施された明治43年(1910)8月29日より10日
ほど前のことである。それにしても佐藤が示す「2,3の支那新聞」の記
事から判断する限り、本来は清国に属する満州や韓国を日本が収めたこと
に、彼は余ほど我慢がならなかったということだろう。

因みに佐藤が「2,3の支那新聞を買つて見」てから1年と1ヶ月ほどが過
ぎた1911年10月10日、辛亥革命の砲声が鳴り響き清国は崩壊している。

佐藤の南清の旅は、長江中流の漢口、漢陽、武昌で折り返し上海に戻った
後、蘇州、杭州など江南の景勝地に転じて終わった。

景勝地に関する故事来歴は詳細に綴られているが、旅行ガイド・ブック
の域を超えるものでもない。敢えて紹介するまでもないだろうから割愛し
て、巻末に置かれた「第17章 南清漫遊の感想」に進むことにする。それ
というのも、ここで佐藤は旅行を総括しているからだ。

先ず地勢について説き起こし、「支那と日本との地勢を比ぶれば、學校
の講堂と、數奇を凝らしたる住家の樣である」としたうえで、「支那は統
一的の地勢である。數國は併立せぬ。(中略)若し列強の分割となつて
も、地勢があまりにも統一的であるから、問題は頻繁に起こることであら
う」と、地勢のうえからも分割統治は成り立たちそうにないとする。

黄河と長江に挟まれた大陸の中心部には「著しき山脈はない」。「地勢の
平坦と、大河の通ずる事よりして、勢力の分立の出來ぬ事」は歴史的にみ
ても明らか。一時的には様々な勢力が「分立」することもあったが、やは
り「忽ち統一することになる」と説く。《QED》
        

2017年11月17日

◆トランプ訪中で見えてきたのは

宮崎 正弘

<平成29年(2017)11月9日(木曜日)通巻第5502号> 



トランプ訪中で見えてきたのは「お互いが腹の探り合い」
  

北のレジューム・チェンジは中国の密かな野望でもあるが、カードを
見せない

訪韓、訪中を続けるトランプ大統領のもとに飛びこんできたのはヴァージ
ニア州知事選で共和党が惜敗したニュースだった。2018年中間選挙の前哨
戦として、トランプ人気が持続しているのかどうかのリトマス試験紙とも
言われたが、この手痛い敗北で、心理状態にすこし不安定要素が見られる。

韓国国会でのの演説では「アメリかを見くびるな、圧倒的力で解決するこ
とも出来るのだ」と北朝鮮への決意を表明しているが、韓国の反応は冷や
やか。場外では反米集会、トランプをヒトラーに模したプラカード。その
言い分は「韓国を戦争に巻き込むな」だ。

38度線の視察が濃霧で果たせず、トランプ大統領を乗せたヘリコプターは
板門店付近から引き返した。

ソウルでの米韓首脳会談の成果とは、26分間の文在寅大統領との「商
談」であり、FTA見直しを示唆したに過ぎない。

どう客観的に見ても訪韓の成果はない。韓国が米国の路線に立ちはだかっ
たことが鮮明になっただけで、トランプ大統領の不満が鬱積したに違いない。

北京に入ってもトランプの顔は冴えなかった。

京劇を観劇したものの、紫禁城で習近平夫妻の案内に浮かぬ表情を続けて
いる。明らかに面白くないのだ。

口をついて出てくるのは「素晴らしい」と褒め言葉ばかりだが、内心、
「中国は北朝鮮でアメリカとは協力する意思がないようだ」という習の秘
めた思惑を了解できたのではないのか。お互いの腹の探り合いは、何かの
解決策を見つけたのだろうか。

現時点で米中の一致点と推定できるのは金正恩体制のレジューム・チェン
ジである。この場合、最大のポイントは北朝鮮の核施設を米軍特殊部隊が
潜入して完全に破壊してしまうのか、それより先に中国軍が占拠し、北朝
鮮の核を中国の管理下に置くのか、ということだろう。

次に問題として浮かぶのは暗殺された金正男の子、金ハンソルを次期後継
として立てようとする中国と、それを容認するかどうかの米国の思惑との
突と考えられる。

肝腎の金ハンソルが何処にいるのか。どちらもその居場所を突き止めてい
るはずだが、このカードを明かすことはなさそうである。

先週、北の暗殺団が中国で拘束されたというニュースが報じられたが、こ
れは韓国製の陽動情報か、攪乱情報とされ、ハンソルはオランドかひょっ
として米国が保護しているかという情報がいまも乱れ飛んでいる。

いずれにせよ、トランプ訪中で劇的な成果は果たせそうになく、随行した
商業界代表等は、中国とのビジネス拡大に忙しく、貿易交渉での得点あげ
に関心を深めているのみのようだ。

           
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◆樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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【知道中国 1655回】         
――「即ち支那國は滅びても支那人は滅びぬ」――(佐藤2)
  佐藤善治郎『南清紀行』(良明堂書店 明治44年)

               ▽

佐藤は上海における日本居留民の実態を詳細に示したうえで、「以上説い
た處で分明なるが如く、上海の日本居留民は歐米人に比して甚だ資力が劣
つて居る」と結論づける。それでも「故近衞公、佐藤正氏等の發意に成り
たる對清?育の學校」である東亞同文書院については、「既に卒業して清
國各地の會社商店等に從事する者450人。頗る好評がある。現在生二 百數
十人。皆寄宿生活をなし、意氣軒高でやつて居る」と綴ることを忘れ て
はいない。

欧米人については、「本邦人に比して資本を携へ來つて、茲に活動し、
又永住する者が多い」。そのうえ彼らは事業の基礎を固めている。たとえ
ば「宣?師などは支那の貧民兒童を集めて慈善?育を施し、或は?會の醵
金によりて病院を起し、美名の下に自國の?化を擴げ、勢力を張るが如
き」である。さらに学校に隣接した印刷所では、「毎朝數十の支那職工に
先づ祈?し讃美歌を唱へしめて然る後仕事に取懸るなど、なかなか基礎の
ある仕事をなし」ている。やはり彼らの「勢力の侮るべからざるものがあ
る」というのだ。

そういえば我がジョン万次郎と同じ頃にアメリカに渡り、養子として育
てられ、印刷技術を身に着けて帰国し、やがて聖書の印刷で莫大な財産を
築きあげ、3人の娘を大財閥(孔祥熙)・革命家(孫文)・政治家(ショ
ウ介石)に嫁がせたのが宋嘉樹(チャールズ・ジョーンズ・宋、或は
チャーリー・宋)である。

彼は聖書印刷をテコに上海の欧米人社会に取り 入る一方で、印刷ビジネ
スが生み出した莫大な資産とその資産によって育 てられた3人の美貌の娘
を手に中国社会の最上層中枢に強固な人脈を築い た。上海の欧米特権階
層との人脈、3人の娘婿の影響力、そして莫大な資 産――ジョン万次郎と宋
嘉樹とを比較した時、そこに中国人と日本人の生き 方の違いを感じてし
まうのだが。

アメリカで受けた恩を生涯を通じて返そうと努めたジョン万次郎に対し、
アメリカで築いた人脈をテコに中国社会でのしあがっていったチャー
リー・宋。愚直なまでのジョン万次郎に対し、実利に敏(つまりはセコ)
いチャーリー・宋。ウエットな万次郎に対し、ドライな宋。

アメリカで学んだ英語に生涯を捧げたジョン万次郎に対し、アメリカで身
に着けた印刷技術で商売を広げたチャーリー・宋。ジョン万次郎の生涯に
おける日米関係に対し、チャーリー・宋とその一族を通して見えて来る中
米関係――ジョン万次郎こと中浜万次郎に対するにチャーリー・宋こと宋嘉
樹・・・アメリカというスクリーンに映し出された2人の生涯は、なにや
ら日米関係と米中関係の歴史を物語っているようにも思える。

佐藤は上海をぶらつく。

先ずは夜の散歩。「あまり物が見えぬから本國に居る樣に思はれる。生命
財産の保護も日本と同一の樣に思はれて、閑靜なる田舎道を散歩せんと
言」うと、上海在住者に止められる。

それというのも、「彼支那人は晝間はさんざん外國人のために抑壓せられ
て居るが、夜陰に乘して多人數徒黨を組んで外人の所持品を掠奪する等の
事がある」からだ。「外人の所持品を掠奪」した後、彼らは「租界外に逃
げる。租界外は租界の警察權は及ばぬ。支那の警察へ頼んでも何にもなら
ない。唯泣き寝入りとなるのみ」。

そういえば政治=権力に対する彼らの対処法は「上に政策あれば、下に対
策あり」だといわれるが、「晝間はさんざん外國人のために抑壓せられて
居る」ゆえに、夜陰に乗じて「外人の所持品を掠奪」して外国の領事警察
の警察権の及ばない租界外に逃げてしまうというのも、彼らなりの対策と
いうものだろう。

街では「丈の6尺もある印度巡査が昂然」と立つ。彼らに「睨まれると
支那勞働者は身を縮めて通る」。だが「體格はよいが、元氣が抜け、言動
は慥かに亡國人である」。《QED》
        

2017年11月15日

◆トランプ訪中で見えてきたのは

宮崎 正弘


<平成29年(2017)11月9日(木曜日)通巻第5502号>  

 トランプ訪中で見えてきたのは「お互いが腹の探り合い」
  北のレジューム・チェンジは中国の密かな野望でもあるが、カードを
見せない

訪韓、訪中を続けるトランプ大統領のもとに飛びこんできたのはヴァージ
ニア州知事選で共和党が惜敗したニュースだった。2018年中間選挙の前哨
戦として、トランプ人気が持続しているのかどうかのリトマス試験紙とも
言われたが、この手痛い敗北で、心理状態にすこし不安定要素が見られる。

韓国国会の演説では「アメリかを見くびるな、圧倒的力で解決することも
出来るのだ」と北朝鮮への決意を表明しているが、韓国の反応は冷やや
か。場外では反米集会、トランプをヒトラーに模したプラカード。その言
い分は「韓国を戦争に巻き込むな」だ。

38度線の視察が濃霧で果たせず、トランプ大統領を乗せたヘリコプターは
板門店付近から引き返した。

ソウルでの米韓首脳会談の成果とは、26分間の文在寅大統領との「商談」
であり、FTA見直しを示唆したに過ぎない。

どう客観的に見ても訪韓の成果はない。韓国が米国の路線に立ちはだかっ
たことが鮮明になっただけで、トランプ大統領の不満が鬱積したに違いない。

北京に入ってもトランプの顔は冴えなかった。

京劇を観劇したものの、紫禁城で習近平夫妻の案内に浮かぬ表情を続けて
いる。明らかに面白くないのだ。

口をついて出てくるのは「素晴らしい」と褒め言葉ばかりだが、内心、
「中国は北朝鮮でアメリカとは協力する意思がないようだ」という習の秘
めた思惑を了解できたのではないのか。お互いの腹の探り合いは、何かの
解決策を見つけたのだろうか。

現時点で米中の一致点と推定できるのは金正恩体制のレジューム・チェン
ジである。この場合、最大のポイントは北朝鮮の核施設を米軍特殊部隊が
潜入して完全に破壊してしまうのか、それより先に中国軍が占拠し、北朝
鮮の核を中国の管理下に置くのか、ということだろう。

次に問題として浮かぶのは暗殺された金正男の子、金ハンソルを次期後継
として立てようとする中国と、それを容認するかどうかの米国の思惑との
衝突と考えられる。

肝腎の金ハンソルが何処にいるのか。どちらもその居場所を突き止めてい
るはずだが、このカードを明かすことはなさそうである。

先週、北の暗殺団が中国で拘束されたというニュースが報じられたが、こ
れは韓国製の陽動情報か、攪乱情報とされ、ハンソルはオランドか、
ひょっとして米国が保護しているかという情報がいまも乱れ飛んでいる。

 いずれにせよ、トランプ訪中で劇的な成果は果たせそうになく、随行し
た商業界代表等は、中国とのビジネス拡大に忙しく、貿易交渉での得点あ
げに関心を深めているのみのようだ。

          
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◆樋泉克夫のコラム 
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【知道中国 1655回】         
――「即ち支那國は滅びても支那人は滅びぬ」――(佐藤2)
  佐藤善治郎『南清紀行』(良明堂書店 明治44年)

              ▽

佐藤は上海における日本居留民の実態を詳細に示したうえで、「以上説い
た處で分明なるが如く、上海の日本居留民は歐米人に比して甚だ資力が劣
つて居る」と結論づける。それでも「故近衞公、佐藤正氏等の發意に成り
たる對清?育の學校」である東亞同文書院については、「既に卒業して清
國各地の會社商店等に從事する者450人。頗る好評がある。現在生二百數
十にn。皆寄宿生活をなし、意氣軒高でやつて居る」と綴ることを忘れて
はいない。

欧米人については、「本邦人に比して資本を携へ來つて、茲に活動し、
又永住する者が多い」。そのうえ彼らは事業の基礎を固めている。たとえ
ば「宣?師などは支那の貧民兒童を集めて慈善?育を施し、或は?會の醵
金によりて病院を起し、美名の下に自國の?化を擴げ、勢力を張るが如
き」である。さらに学校に隣接した印刷所では、「毎朝數十の支那職工に
先づ祈?し讃美歌を唱へしめて然る後仕事に取懸るなど、なかなか基礎の
ある仕事をなし」ている。やはり彼らの「勢力の侮るべからざるものがあ
る」というのだ。

 そういえば我がジョン万次郎と同じ頃にアメリカに渡り、養子として
育てられ、印刷技術を身に着けて帰国し、やがて聖書の印刷で莫大な財産
を築きあげ、3人の娘を大財閥(孔祥熙)・革命家(孫文)・政治家
(ショウ介 石)に嫁がせたのが宋嘉樹(チャールズ・ジョーンズ・宋、
或はチャー リー・宋)である。彼は聖書印刷をテコに上海の欧米人社会
に取り入る一 方で、印刷ビジネスが生み出した莫大な資産とその資産に
よって育てられ た3人の美貌の娘を手に中国社会の最上層中枢に強固な人
脈を築いた。上 海の欧米特権階層との人脈、3人の娘婿の影響力、そして
莫大な資産―― ジョン万次郎と宋嘉樹とを比較した時、そこに中国人と日
本人の生き方の 違いを感じてしまうのだが。

アメリカで受けた恩を生涯を通じて返そうと努めたジョン万次郎に対し、
アメリカで築いた人脈をテコに中国社会でのしあがっていったチャー
リー・宋。愚直なまでのジョン万次郎に対し、実利に敏(つまりはセコ)
いチャーリー・宋。ウエットな万次郎に対し、ドライな宋。アメリカで学
んだ英語に生涯を捧げたジョン万次郎に対し、アメリカで身に着けた印刷
技術で商売を広げたチャーリー・宋。ジョン万次郎の生涯における日米関
係に対し、チャーリー・宋とその一族を通して見えて来る中米関係――ジョ
ン万次郎こと中浜万次郎に対するにチャーリー・宋こと宋嘉樹・・・アメ
リカというスクリーンに映し出された2人の生涯は、なにやら日米関係と
米中関係の歴史を物語っているようにも思える。

佐藤は上海をぶらつく。

先ずは夜の散歩。「あまり物が見えぬから本國に居る樣に思はれる。生命
財産の保護も日本と同一の樣に思はれて、閑靜なる田舎道を散歩せんと
言」うと、上海在住者に止められる。それというのも、「彼支那人は晝間
はさんざん外國人のために抑壓せられて居るが、夜陰に乘して多人數徒黨
を組んで外人の所持品を掠奪する等の事がある」からだ。「外人の所持品
を掠奪」した後、彼らは「租界外に逃げる。租界外は租界の警察權は及ば
ぬ。支那の警察へ頼んでも何にもならない。唯泣き寝入りとなるのみ」。

 そういえば政治=権力に対する彼らの対処法は「上に政策あれば、下
に対策あり」だといわれるが、「晝間はさんざん外國人のために抑壓せら
れて居る」ゆえに、夜陰に乗じて「外人の所持品を掠奪」して外国の領事
警察の警察権の及ばない租界外に逃げてしまうというのも、彼らなりの対
策というものだろう。

 街では「丈の六尺もある印度巡査が昂然」と立つ。彼らに「睨まれる
と支那勞働者は身を縮めて通る」。だが「體格はよいが、元氣が抜け、言
動は慥かに亡國人である」。
《QED》

2017年11月14日

◆自由で開かれたインド太平洋

宮崎 正弘

<平成29年(2017)11月12日(日曜日)通巻第5505号>  

 「自由で開かれたインド太平洋」(トランプ)と「自由と繁栄の弧」(安
倍首相)
   「自由、民主、人権、法治」を脅かす敵は中国しかいないではないか

 ダナンで開催されていたAPECでトランプ大統領は米国の戦略を打ち
上げた。

「自由で開かれたインド太平洋」というのは、「アジア太平洋」という従
来の米国の戦略タームの拡大であり、前々から安倍首相が唱えてきた「自
由と繁栄の弧」とほぼ同意義である。

 しかも従前の日本の外交防衛は「極東」に限定してきたのだから、広域
に対象が拡大したことになる。

PEWの世論調査によれば、アジア各国で「アメリカへの信頼」は下がり
続けてきた。オバマ前政権でアメリカの威信は地に落ちていた。
トランプの登場によって相当信頼回復はみられるものの、「世界の警察
官」とした頼りにされた面影はなく、この間隙を巧妙について台頭してき
た中国の影響力拡大が顕著である。

さて「インド太平洋」の安全保障となるとマラッカ海峡防衛からアンダマ
ン海、インド洋へと防衛協力の範囲はひろがる。

日本の協力の度合いが今後、大いに深まることにもなるが、本格的な防衛
協力は、日本の改憲がなくては達成困難である。

マラッカは16世紀にポルトガルが領有し、砦をつくり軍事拠点とした。も
ともとはムラカ(それがなまってマラッカ)となる。マレーシアのペナン
島、ジョージタウン(旧市内は世界遺産)が、いま、その最前線である。し
かもマレーシアは中国寄りであり、米国との協力度は弱い。

インド洋防衛となると米海軍拠点はディエゴガルシア、そして中央軍の司
令部は中東とアフリカに分担され、それぞれに空母が配置される。

いま、その拠点防衛の空母が3隻同時に日本海を遊弋しているということ
は異常事態でもあり、北朝鮮は縮こまり、中国は異様な警戒心を研ぐ。

ダナンAPECで米国戦略を打ち上げたトランプはダナンからハノイへ飛
んで米越首脳会談を済ませ、マニラに向かう。


 ▼フィリピンのダーティ・ハリーことドゥテルテ大統領は対米戦略をど
うするのか

麻薬密売組織、末端の売人にいたるまで7000人を殺害し、一躍「保安官」
の勇名を轟かせたドゥテルテ大統領は、イスラム過激派が拠点とするマラ
ウィを攻撃し、IS系の過激派を退治した。ミンダナオ諸島は治安の悪さ
で有名だったが、ドゥテルテの拠点はダバオであり、近年は劇的に治安が
回復した。

フィリピンは中国にスカボロー岩礁を盗まれたが、正面からの抗議を控
え、たびたび訪中して商談に熱中した。だがドゥテルテ・ハリーのホンネ
は反中国だが、ビジネス優先、経済の回復である。

前アキノ政権では緩やかだが景気の回復が見られた。ドゥテルテ大統領に
なってからフィリピン経済は低空飛行のまま、むしろ海外への出稼ぎが推
奨され、その仕送りで経済の20%程度を成り立たせている。

貧困層は相変わらず社会の末端に拡がっている。

ここへ乗り込むのがトランプ。ギクシャクしてきた米比関係の改善に向か
うことは明らかであるが、スビック湾とクラーク基地の再利用が議題にな
るか、どうかは不明。

マニラではトランプ大統領とドゥテルテ大統領との対決が見られる。  

2017年11月13日

◆嘗ての敵はきょうの友

                 宮崎  正弘

<平成29年(2017)11月11日(土曜日)通巻第5504号 >         

 APEC会場のダナン、トランプ大統領演説は『アメリカンファースト』
   嘗ての敵はきょうの友、米越関係は劇的に改善された

高級リゾートが立ち並ぶダナンの海岸、南へ20分も車を飛ばすと隠れた避
暑地といわれるホイアンに着く。長期滞在の外国人はダナンより、此のホ
イアンが好きである。瀟洒た小規模なブティック・ホテルが好きなようだ。

ダナン空港は、ベトナム戦争中、米空軍の基地だった。大型輸送機、爆撃
機、戦闘機がひっきりなしに発着し、この空港ではダイオキシンが混ぜ合
わされて空中に散布された。この結果、およそ200万人が後遺症になや
み、癌の発生率が高く、近年になって米国はダナンの清浄作業を本格化さ
せ、ようやく2年前に土壌から毒性がなくなった。

また米国は数隻の沿岸警備艇をベトナムに寄付し、カムラン湾には空母が
寄港し、最新鋭の武器供与も計画している。

中国が掠め取った西砂諸島はベトナムの領海にあり、中国の軍事力を恐れ
ないベトナムは、しかしながら兵器の旧石器時代化を嘆いている。

 ナンは100万都市であり、古都のユエとは四時間のドライブで結ばれ
る。途中の山脈をくぐる長いトンネルは日本の無償援助で造られ、出入り
口には翩翻と日本国旗が翻っている。

このダナンにトランプ大統領は降りたって、大歓迎を受けた。あれほどの
戦争をやった相手国であるにも関わらずベトナム国民の過半数は「トラン
プが好き」と答えるのである。驚くほかはないが、それが歳月の流れ、新
世代の誕生ということであろうか。

その上、街辻では若者が「中国は法律に従え」「中国は侵略者」というプ
ラカードを掲げての抗議行動が散発しており、当局はAPECの警備を理
由に活動家百名を拘束した。
 
このダナンで展開された4大強国の貿易をめぐる方向性議論だから、不思
議である。

APECの正式メンバーではないが、環太平洋諸国すべてが参加するよう
になって、ロシアからプーチンが、米国はトランプ、日本から安倍、中国
から習近平もやってきた。

ベトナムががっかりしたのはトランプがTPPを脱退すると決めたこと
だった。
 
ダナンでトランプは講演をしたが「いかなる国も自国が大事であり、われ
われのスタンスは『アメリカンファースト』である」と挑発的発言で
TPPに真っ向から対決姿勢をしめした。

つづく習近平はダボス会議と同じくグローバリスムを推賞し、米国と鋭角
的対立の印象を作りだしたが、中国こそが不公平貿易に先兵であり、演説
に迫力がなかった。

ダナンAPECは貿易議論で火花が散ったという結果になりそうである。
    
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆樋泉克夫のコラム 

【知道中国 1656回】                
――「即ち支那國は滅びても支那人は滅びぬ」――(佐藤3)
  佐藤善治郎『南清紀行』(良明堂書店 明治44年)

香港留学時の1970年代前半、銀行や貴金属店の店頭には「丈の6
尺もある」インド人の警備員が「昂然」と立っていた。

初めて目にした時には、目を合わせないようにして彼らの前を「身を縮め
て通」ったもの。だが暫く目が慣れてくると、「體格はよいが、元氣が抜
け、言動は慥かに亡國人」と思えるようになったから不思議だ。

たしかに佐藤の「亡国人」という指摘は肯ける。ことインド人に関するな
ら、佐藤の時代の上海の租界おける状況は1970年代の植民地香港に通じて
いたということなのか。

佐藤に戻る。これから長江を遡っての内地旅行に備え両替した。そこで
「支那にて通用する貨幣は、我國の如く價格の基礎になるのではなくて、
品物の如く貨幣自身に相場の高低がある」だけではなく、「それが時々
刻々に變化する」ことに驚く。なぜ、そんなことが起きるのか。

それは「自國政府の信用がないから」である。しかも「貨幣は各省で鑄
造」し、それゆえに「省によつて貨幣が異るから、省より省に移るには兩
替をせねばならぬ」。両替するごとに両替屋に手数料を支払うことになる
から、「四五省も旅行すれば二三割は兩替屋に取られて仕舞ふ」。だから
両替を重ねる毎に、手持ちの額は目減りするという寸法だ。

やがて長江を遡る旅に立つ。
 
乗り込んだ「小蒸気船は支那の勞働者を滿載して居る。(中略)過半は上
體は裸で、脂が流れ惡臭鼻をつく。その體で相推し合つてベタベタと接す
るのであるからたまつたものではない」。そのうえ彼らは船内の廊下で
「半裸體の儘犬の兒の樣に寝て居る」。だから「斯る風俗習慣の異れる支
那人を取扱ふ事は、日本人ではとても出來ぬ」のである。

南京の街を歩く。

街中の処刑場に出くわす。「支那ではろくに裁判といふ事はしない。故に
外人と面倒なる事を引起したる者や、多くの物を盗みし者(例へば主人の
金を百二十兩以上を盗めは斬罪)を生存させて置くのは面倒だから、チヨ
キリとやつて仕舞ふ。誠に手輕な處置である。

群衆は平氣で之を見、饅頭を持ち行きてその血に濕し、藥とするといふ事
である」。

まさに魯迅が『藥』で描き出した世界が、そのまま見られたわけだ。

次いで喧嘩である。日本人の「男は街路に出て、支那人と痛く罵り合つ
て居つた。やがて横面をピシャンとや」って「躍りかかれば支那人の仲裁
者が出來て之を遮る」。数百人が周りを取り巻く。

日本人は「仲裁者に組み附きながら『なんだチャンコロの200 匹や300 匹
やつて來たつて日本男兒だぞ。腕には鋼がはいつて居るぞ』なんてやつて
居る。支那人も罵つているが何だかわからない」。「本邦ならば袋叩きに
されて仕舞ふべきを、本邦人は支那では斯る氣?でやつて居る」。

後にことの次第を事情通の日本人に尋ねると、「決して支那人は日本人に
手向ひはせぬ。又利?のない事には手出しする樣な彌次馬はない。彼仲裁
者も後には錢を貰ひに來る。日本人も斯る際には幾らか與へるから、喧嘩
をしても結局はもうけられて仕舞ふ」と説明している。

「決して日本人に手向ひはせぬ」「利?のない事には手出しする樣な彌
次馬はない」「仲裁者も後には錢を貰ひに來る」。とどのつまりは「喧嘩
をしても結局はもうけられて仕舞ふ」。かくて佐藤は「國民性の差は恐ろ
しいものである」と結んだ。

たしかに「なんだチャンコロの200 匹や300 匹やつて來たつて日本男兒だ
ぞ。腕には鋼がはいつて居るぞ」などと腕まくりしてイキがってみたとこ
ろで、「喧嘩をしても結局はもうけられて仕舞ふ」わけだから、矢張り骨
折り損の草臥れ儲けが関の山ということだ。

次いで訪れた漢口で深夜の街で「大聲を擧げて泣きつゝ物乞ひせる若者を
見た」。敷石の上に坐し、「米を搗く樣に額をしたたか石に打ちつけて
泣」いていたのである。《QED》
       

2017年11月12日

◆米越関係は劇的に改善された

                      宮崎 正弘


<成29年(2017)11月11日(土曜日)通巻第5504号 >
          
APEC会場のダナン、トランプ大統領演説は『アメリカンファースト』
   嘗ての敵はきょうの友、米越関係は劇的に改善された

高級リゾートが建ち並ぶダナンの海岸、南へ20分も車を飛ばすと隠れた避
暑地といわれるホイアンに着く。長期滞在の外国人はダナンより、此のホ
イアンが好きである。瀟洒た小規模なブティック・ホテルが好きなようだ。

ダナン空港は、ベトナム戦争中、米空軍の基地だった。大型輸送機、爆撃
機、戦闘機がひっきりなしに発着し、この空港ではダイオキシンが混ぜ合
わされて空中に散布された。この結果、およそ200万人が後遺症になや
み、癌の発生率が高く、近年になって米国はダナンの清浄作業を本格化さ
せ、ようやく2年前に土壌から毒性がなくなった。

また米国は数隻の沿岸警備艇をベトナムに寄付し、カムラン湾には空母が
寄港し、最新鋭の武器供与も計画している。

中国が掠め取った西砂諸島はベトナムの領海にあり、中国の軍事力を恐れ
ないベトナムは、しかしながら兵器の旧石器時代化を嘆いている。

ダナンは100万都市であり、古都のユエとは4時間のドライブで結ばれ
る。途中の山脈をくぐる長いトンネルは日本の無償援助で造られ、出入り
口には翩翻と日本国旗が翻っている。

このダナンにトランプ大統領は降りたって、大歓迎を受けた。あれほどの
戦争をやった相手国であるにも拘わらずベトナム国民の過半数は「トラン
プが好き」と答えるのである。驚くほかはないが、それが歳月の流れ、新
世代の誕生ということであろうか。

そのうえ、街辻では若者が「中国は法律に従え」「中国は侵略者」という
プラカードを掲げての抗議行動が散発しており、当局はAPECの警備を
理由に活動家百名を拘束した。
 
このダナンで展開された四大強国の貿易をめぐる方向性議論だから、不思
議である。

APECの正式メンバーではないが、環太平洋諸国すべてが参加するよう
になって、ロシアからプーチンが、米国はトランプ、日本から安倍、中国
から習近平もやってきた。

ベトナムががっかりしたのはトランプがTPPを脱退すると決めたこと
だった。

ダナンでトランプは講演をしたが「いかなる国も自国が大事であり、われ
われのスタンスは『アメリカンファースト』である」と挑発的発言で
TPPに真っ向から対決姿勢を示した。

つづく習近平はダボス会議と同じくグローバリスムを推賞し、米国と鋭角
的対立の印象を作りだしたが、中国こそが不公平貿易に先兵であり、演説
に迫力がなかった。

ダナンAPECは貿易議論で火花が散ったという結果になりそうである。

            
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◆樋泉克夫のコラム 
【知道中国 1656回】                
――「即ち支那國は滅びても支那人は滅びぬ」――(佐藤3)
  佐藤善治郎『南清紀行』(良明堂書店 明治44年)

             ▽

香港留学時の1970年代前半、銀行や貴金属店の店頭には「丈の6尺もあ
る」インド人の警備員が「昂然」と立っていた。

初めて目にした時には、目を合わせないようにして彼らの前を「身を縮め
て通」ったもの。だが暫く目が慣れてくると、「體格は良いが、元氣が抜
け、言動は慥かに亡國人」と思えるようになったから不思議だ。

たしかに佐藤の「亡国人」という指摘は肯ける。ことインド人に関するな
ら、佐藤の時代の上海の租界おける状況は1970年代の植民地香港に通じて
いたということなのか。

佐藤に戻る。これから長江を遡っての内地旅行に備え両替した。そこで
「支那にて通用する貨幣は、我國の如く價格の基礎になるのではなくて、
品物の如く貨幣自身に相場の高低がある」だけではなく、「それが時々
刻々に變化する」ことに驚く。なぜ、そんなことが起きるのか。

それは「自國政府の信用がないから」である。しかも「貨幣は各省で鑄
造」し、それゆえに「省によつて貨幣が異るから、省より省に移るには兩
替をせねばならぬ」。両替するごとに両替屋に手数料を支払うことになる
から、「四五省も旅行すれば2,3割は兩替屋に取られて仕舞ふ」。だか
ら両替を重ねる毎に、手持ちの額は目減りするという寸法だ。

やがて長江を遡る旅に立つ。

乗り込んだ「小蒸気船は支那の勞働者を滿載して居る。(中略)過半は上
體は裸で、脂が流れ惡臭鼻をつく。その體で相推し合つてベタベタと接す
るのであるからたまつたものではない」。そのうえ彼らは船内の廊下で
「半裸體の儘犬の兒の樣に寝て居る」。だから「斯る風俗習慣の異れる支
那人を取扱ふ事は、日本人ではとても出來ぬ」のである。

南京の街を歩く。

街中の処刑場に出くわす。「支那ではろくに裁判といふ事はしない。故に
外人と面倒なる事を引起したる者や、多くの物を盗みし者(例へば主人の
金を百二十兩以上を盗めは斬罪)を生存させて置くのは面倒だから、チヨ
キリとやつて仕舞ふ。誠に手輕な處置である。

群衆は平氣で之を見、饅頭を持ち行きてその血に濕し、藥とするといふ事
である」。

まさに魯迅が『藥』で描き出した世界が、そのまま見られたわけだ。

次いで喧嘩である。日本人の「男は街路に出て、支那人と痛く罵り合つて
居つた。やがて横面をピシャンとや」って「躍りかかれば支那人の仲裁者
が出來て之を遮る」。数百人が周りを取り巻く。

日本人は「仲裁者に組み附きながら『なんだチャンコロの200匹や300匹や
つて來たつて日本男兒だぞ。腕には鋼がはいつて居るぞ』なんてやつて居
る。支那人も罵つているが何だかわからない」。「本邦ならば袋叩きにさ
れて仕舞ふべきを、本邦人は支那では斯る氣?でやつて居る」。

後にことの次第を事情通の日本人に尋ねると、「決して支那人は日本人に
手向ひはせぬ。又利?のない事には手出しする樣な彌次馬はない。彼仲裁
者も後には錢を貰ひに來る。日本人も斯る際には幾らか與へるから、喧嘩
をしても結局はもうけられて仕舞ふ」と説明している。

「決して日本人に手向ひはせぬ」「利?のない事には手出しする樣な彌
次馬はない」「仲裁者も後には錢を貰ひに來る」。とどのつまりは「喧嘩
をしても結局はもうけられて仕舞ふ」。かくて佐藤は「國民性の差は恐ろ
しいものである」と結んだ。

たしかに「なんだチャンコロの200匹や300匹やつて來たつて日本男兒だ
ぞ。腕には鋼がはいつて居るぞ」などと腕まくりしてイキがってみたとこ
ろで、「喧嘩をしても結局はもうけられて仕舞ふ」わけだから、矢張り骨
折り損の草臥れ儲けが関の山ということだ。

次いで訪れた漢口で深夜の街で「大聲を擧げて泣きつゝ物乞ひせる若者を
見た」。敷石の上に坐し、「米を搗く樣に額をしたたか石に打ちつけて
泣」いていたのである。《QED》

2017年11月11日

◆梯子を外された「クルド独立」

宮崎 正弘


<平成29年(2017)11月10日(金曜日)通巻第5503号>  

2階にあがったら、梯子を外された「クルド独立」
  イラク政府が経済制裁、キルクーク油田は奪回されてしまった

クルド族自治区はイラク北方、トルコとイランにもクルド族は広く分散し
ている。2017年9月25日の住民投票で、クルド独立は93%の賛成票を得た。

この地区の大半を統治するのはKRG(クルド地域政府)で、主体は
KDP(クルド民主党)。議長のバルザニが12年間「大統領」を努め、石
油権益も抑えてきた。

「首都」のエルビルは経済的に繁栄し、国際線もかなり乗り入れている。

もう一つのクルド族の組織は前大統領だったタラバニが率いたPUK(ク
ルディスタン愛国同盟)である。

もともとKDPからの分派で、バルザニと対立してきたため、独立を急ぐ
ことには熱心ではなく、寧ろイラク政府に協力してきた。サダムフセイン
打倒のために戦い、その功績でタラバニは4代目のイラク大統領となって
いたが、2017年10月にドイツの病院で死去した。暫定的にPUKの代表を
アリが務めているが事実上はタラバニの息子が統治している。

さて、クルド独立という悲願。イラクのクルド族は2派に分裂したとはい
え、独立を目指す目標は同じ。諸外国の援助を悲壮に呼びかけてきた。局
面が変わったのはISとの戦いである。米国はIS退治のためクルド族の
武装組織「ペシャメルガ」に武器を援助し、またイラク政府軍には軍事訓
練を施してきた。

クルド族の諸派も、米軍に協力した。米国は武器支援を継続し、ISが抑
えた地域を奪回するためにペシャメルガが大いに貢献した。これらの過程
で米国の支援を確信したクルド族は、長年暖めてきた「独立」を、まずは
「住民投票」というかたちで意思表示し、さらに国際社会の支援を得よう
とする戦略を行使した。

これが裏目に出たのだ。
 
2階に上がったら梯子を外されたかたちとなった。

第一にイラク政府軍がキルクーク一帯に軍事侵攻し、せっかく権益として
クルド族の油田(キルクークなど五つ)をあっけなく奪回されてしまった
(10月21日)。

この軍事作戦に協力して、闘わないで撤退したのがPUK,つまりクルド
族内部の主導権争いでバルザニ派から、石油利権を取り上げる結果となった。

KDP主体の「クルド族地域政府」は大いなる失望に陥り、イラク政府の
経済政策ならびに法的手続きで「住民投票は無効」追い込まれ、独立は棚
上げ状態となった。まるでスペインのカタルーニャ独立と類型の挫折パ
ターンを味あわされてしまった。


 ▼大国の不条理

東チモールやコソボの独立では欧米が支援し、実力もないのに独立したの
は、大国の強い支援、つまりパワーゲームが派生させたハプニングである。

ところがカタルーニャ独立も、クルド族独立も、大国の論理からいえば、
迷惑千万であり、「民族自決」という大原則は無視され、沈黙を余儀なく
されるのである。

ところが、ところが。

第2幕は、もっと凄まじい裏切り劇だった。

キルクークをあっさり明け渡したタラバニ一派は、この石油利権でバルザ
ニの主導権を奪えるとほくそえんだのも束の間、「イラク政府軍」を名
乗って進駐してきたのはイランの革命防衛隊だった。

イランが事実上、イラク政府の背後で権力を握っているのではないかとす
る推測は、このことからも証明されるかたちとなった。

そのうえ、イラクの分裂状態が続けば、クルド独立は店ざらしとなり、そ
の状況の継続を望むのがじつは国際石油資本などだ。

複雑怪奇な中東状況はますますややこしい。エクソンモービルもBPも、
これらキルキーク油田にビジネスが絡んでおり、かのティラーソン(当時
エクソンの会長)も、此の地を訪問して鉱区を確保している
(その後、売却)。

2017年11月08日

◆ペンタゴンの上院への報告

宮崎 正弘

<平成29年(2017)11月7日(火曜日)
     通巻第5500号(5500号記念特大号) > 

 ペンタゴンの上院への報告には「地上軍投入の選択もあり」とした
 民主党ならびに共和党内左翼はトランプの北攻撃に足枷を嵌めようと
している

ペンタゴンは上院議員の2人から要請のあった北朝鮮問題解決のための軍
事行動の選択肢シナリオについて、マティス国防長官に替わって部下のデ
ユモント少将(統幕副議長)が報告を出した。

「核兵器ならびに核設備の完全破壊には地上軍の投入が必要となる」と率
直の述べた報告書の存在はフロリダ州の「タンパ・ベイ・タイムズ」が報
じた。

地上戦となれば米軍の死傷は数千、韓国内の市民の死傷は百万人前後とい
う最悪のシナリオもあり、犠牲を最小限に抑えての作戦が可能なのか、ど
うか。この報告書は機密扱いとなっているようだ。

米国の世論は「大きな犠牲が予測される戦争は、議会の同意を必要とす
る」としてトランプ大統領に攻撃命令の前段階での議会承認を求めるに好
都合の資料というわけで、議会内の反トランプ陣営に活用される可能性が
高い。

専門家によらず左翼ジャーナリストの一方的な予測では在韓米軍2万
9000名が生命の危険に晒され、双方に30万人の犠牲がでる(だから話し合
いによって解決せよ)。だから攻撃を選択肢から外せと言う政治的キャン
ペーンの一環と見られるが、こういう動きをロシアのスプートニクは嬉々
として伝えている。

米軍の作戦本部はそれほど単細胞ではなく、孫子が「闘わずして勝つ」を
最良の策としたように、米軍はミサイル攻撃を受け持ち、核設備、核兵器
確保と管理は中国にやらせる。つまり米軍の地上軍出動は二の次としてい
るのではないか。もっとも作戦シナリオを事前に公表する軍人はいない
が。。。。

むろん、中国は中国で、米軍に攻撃をやってもらい、隙を見て鴨緑江をわ
たる特殊部隊を入れ、核兵器を確保し、金正恩の斬首もしくは亡命後のレ
ジュームチェンジのために金正男の長男の身柄を保護していると見られる。

ロシアは米中主導の軍事行動を脇に見ながら、介入して漁夫の利をさらえ
そうになれば、横からさっと介入して来るであろう。
プーチンは、トランプとその話し合いをしたくて、のこのことベトナムと
フィリピンの国際会議に出てくるのだ。
             
◆書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIE 

やがてブームは去ることが確実に予測される仮想通貨
  米国の専門家は「ビットコインは詐欺のたぐい」と見ていた

  ♪
中島真志『アフター・ビットコイン』(新潮社)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@

最初から眉唾、疑問だらけだった。新しいマネーゲームはともかく国際的
規模で拡大し急膨張した。

初の仮想通貨であるビットコインへの熱狂的沸騰は一攫千金を狙う壮絶な
投機であり、しかも中国人が全体の九割を買い占めるという異常事態を目
撃すれば、評者(宮崎)などは、どうしてもオランドのチューリップ・バ
ブルと連想を繋げたのだった。

頃は17世紀、戦争を繰り返したヨーロッパでは変造通貨の流行が一方で起
こり、他方ではオスマン・トルコ帝国から輸入されてチューリップが珍し
がられて、その球根に異常な値がついた。

やがて熱狂的投機となって1つの球根の値段が植物業者の年収の10倍とい
うバブルとなって人々が熱中、やがてその熱狂はバブル崩壊となって破綻
した。

チューリップへの投機は終息したが、オランダ経済は大打撃を受けた。

仮想通貨ビットコインは、図式的にみても、このチューリップ投機に原型
が求められる。投棄の構造はポンジ・スキーム(ねずみ講)だ。

そのうえに博打大好きで、自国通貨の人民元をまったく信用していない国
民性から、中国人は誰も住んでいない砂漠でもマンションに投棄し、金の
インゴットを密かに買い集め、或いは箪笥預金にドル、ユーロ、日本円な
どを現金で貯め込む。昨今の中国における異様な不動産投機は、この博打
的人生を勘案すれば、納得がいくだろう。

遅ればせながら中国政府はビットコイン取引所の閉鎖という荒治療で対応
した。ビットコインはしかも中国国内で3分裂した。

本書は日銀出身の専門家が、ビットコインの終わりを明確に予測しつつ、
これからは「ブロックチェーン」が本格化するだろうと言う。
著者は4つの理由を挙げる。

第1に「通貨の未来を変えるもの」だとメディアが「非常に美しい姿ばか
りが喧伝されていることに懸念を覚える」からで、「光と影」のなかの
「光」の部分だけに焦点を当てたのは問題だと指摘する。

第2に次にやってくるのは「ブロックチェーン」であり、これは「ビット
コインを支える中核技術として開発された」。金融界の革新を担うもので
ある。

第3に金融界のメインストリームは、このブロックチェーンを駆使して
「世界の中央銀行が『デジタル通貨』を発行しようとする動きがある」こ
とに留意しなければならないとしている。

「ビットコインは、もともとは、どの国の当局(政府や中央銀行)からも
管理されない通貨を作りたいという「自由至上主義者」(リバタリアン)
のイデオロギーに基づいて開発されたものでした。そのまさに回避しよう
としていた中央銀行がビットコイン用に開発された技術を使ってデジタル
通貨を発行しようとしていることは、なかなか皮肉な成り行き」でもある
(193p)。 

昔からの格言に「永遠に上がり続ける資産は存在しない」のであり、「か
ならず終わりが来る」(ハーバートスタイン)「良い終わりかたはしない
だろう」(ジェイミー・ダイモン、JPモルガンCEO)。
 これまでモヤモヤしたままだったビットコインへの疑念と疑問は、この
一冊で綺麗に晴れた。
        
◆ 第47回 三島由紀夫追悼会「憂国忌」の概要です
                
第47回 三島由紀夫追悼会「憂国忌」の概要
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

記 

とき   1125日(土曜) 午後2時
ところ  星陵会館大ホール 資料代  おひとり2000円
     どなたでも予約不要、喪服の必要もありません。
<プログラム>
                 総合司会 佐波優子
第1部  開会の辞 鎌倉文学館館長 富岡幸一郎
奉納演奏 薩摩琵琶「城山」(島津義秀=加治木島津家第13代当主)

第2部 シンポジウム「西郷隆盛と三島由紀夫」
<パネラー(50音順、敬称略)>
桶谷秀昭(文藝評論家)
新保祐司(文藝評論家、都留文科大学教授)
松本 徹(文藝評論家、三島文学館前館長)
渡邊利夫(拓殖大学学事顧問。前総長)
司会兼  水島総(日本文化チャンネル桜代表)

追悼挨拶        女優 村松英子
最後に「海ゆかば」   全員で合唱
               ♪「社会意識」革命

2017年11月02日

◆中国の年金はすでに3170億ドル

宮崎 正弘


<平成29年(2017)10月30日(月曜日)弐 通巻第5495号 > 

 中国の年金はすでに3170億ドル(35兆8200億円)
  リスクの高い投資もおこなうと楼継偉・社会保障基金会理事長

中国の年金制度は2000年に確立され、年金の支払いより、現在は掛け金が
多いために蓄財が膨張し、2017年上半期推計で3170億ドル(35兆8200億
円)の基金を誇るようになった。

米国では年金が自らの方針を定めて独自の投資を行い、中には危険の高い
金融商品への投資も行ったために焦げ付いた基金がある。この場合、年金
そのものが「倒産」するため、年金生活者は塗炭の苦しみにあえぐことに
なる。

中国の全国社会保障基金は、国務院の管理下にあり、李克強首相が投資先
の選定などの責任を負う形式だが、実質的には理事長の楼継偉(前財務
相)がポートフォリオを決定する。しかも同基金は自由世界の年金のよう
にファンドに委託するという制度ではなく、やはり中国共産党が最終的な
決定をする。

このため上海株式暴落の時は、株買い命令を受け、1360億元(2兆2000億
円弱)、全体の6・7%の資金を失った(サウスチャイナモーニングポス
ト、10月23日)

年金は長期的安定的運営を基本として、しっかりした公社債投資が日本で
は義務づけられているが、中国の場合、国家の赤字国債を買うのは至上命
令、しかも将来紙くず化のリスクが高い地方政府債権も購入を強要されて
いるという。

その上で、「今後もリスクの高い投資もおこなう」と楼継偉・社会保障基
金会理事長は表明している。
            
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  ◆樋泉克夫のコラム 
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  【知道中国 1649回】                
――「支那の國はまだ夢を見て居る」(小林5)
  小林愛雄『支那印象記』(敬文堂 明治44年)

              ▽
やがて小林の乗った汽車は北京へ。早速、中心部の天安門の近くに位置す
る「公使舘街ともいふべき東交民巷」に向った。ここには「英国、?國
(獨逸)、荷蘭(和蘭)、美國(米國)、露國(俄國)、法國(佛國)、
奥國(澳國)、伊國、及び日本の各施署(即公使舘)が構を接して」いる。

各国が義和団制圧を機に「駐屯軍を置いて儼然と威風をなびかせて居
る」。このような東交民巷の姿を列強各国による中国制圧の象徴と捉える
小林は、「この小なる支那分割の一廓を見ても、各國勢力消長がうかゞは
れるが、斯うされるやうになつたのは」、清朝最後の独裁者でもある西太
后が徒に排外主義に走り、義和団の排外暴動に“お墨付き”を与えたから
だ。だから権力者の自己満足が列強の介入を招き、権力者が自己満足に奔
るごとに「支那の小人」は被害者となる、と結論づけた。

早速、日本公使館の手配で北京の街を廻る。

先ず、歴代皇帝が天を祈る天壇。ここは「清國に祭中の首位にあるもので
天子自ら天を祭るところ、40萬坪といふ大禁苑である。こゝも昔しは外國
人にも滅多に見せない處であつたが」、義和団事件後は綱紀が乱れ外国人
の出入りも不問になった。

「入口の門の處には鍵をもつた幾人かの番人が手を出して待つて居る。そ
れに錢をつかませると直ぐと門が開く」。かくて「綱紀も一たび弛むと呑
氣なもので、これでは天に祈つても餘り祈り効のない事であらう」と。

天壇の中心の神殿である祈年殿でも状況は同じ。「粗造ではあるが、堅固
で耐久的」な瓦が欲しくなった。そこで「一弗つかませると、直ぐと門番
は壞して持つて來るのは愛らしくもまた淺ましい限で、彼等の眼中には國
家も何も無い。

否自己以外を思ふ餘地が無いであらう」と記した後、門番の振る舞いに
「この國人が極端なる個人主義の實際的傾向」を見て取った。かくて「若
し數百の外人が來て、悉く瓦を所望したら一瞬の間に屋根は裸體となるで
あらう」と予想する。

我が財布のためなら祈年殿がどうなろうと構いはしない。「個人主義の
實際的傾向」とは、いわば後は野となれ山となれということだろう。最
近、日本でもやっとメディアが伝え問題視し始めた中国人観光客を相手に
して中国人による白タク行為だが、「個人主義の實際的傾向」と考えれ
ば、なにやら理解できそうだ。

日本の交通法規もタクシー業界事情・内規も関係なし。中国人の白タク業
者が儲かり、中国人観光客が日本業者の相場より安上がりの旅行が出来れ
ばそれでいい、というリクツか。身勝手も極まれり、である。

ここで翻って考えれば習近平政権が掲げる「中華民族の偉大な復興」も
「中国の夢」も、それを現実化した一帯一路にしても、とどのつまりは超
ド級の「個人主義の實際的傾向」といったところ。さて、今後の世界は彼
らが生活信条でもある「個人主義の實際的傾向」と如何に対応し、どう抑
え込むべきか。いやはや悩ましき限りの大問題だ。

一夕、小林は公使館の宴に列した。居並ぶのは伊集院公使、「支那通の聞
えある青木少将、岡田志田兩博士、小田切正金取締役その他」の北京に住
む日本の有力者たち。小林の隣席に座った「某氏と語つた對話の一節」か
ら、当時の北京在住日本人上層の考えを想像してみたい。

小林の「日本人は、よく支那人は抜けて居ると云ひますが、私は支那は悧
巧だと思うふのですが如何でせう」との質問に、「それは中々馬鹿どころ
ではないです。日本人の或者が支那人に對して、西洋人の或者がとるやう
な觀方をするのは大間違いなことです」と。どうやら日本人が西洋人のよ
うに振る舞うのは「大間違い」らしい。そこで小林は日本が朝鮮に力を注
ぐのも良いが、「日本の名士がもう少し支那へ來るといゝでせうね」と。
《QED》

2017年10月31日

◆パワフルな政治家が不在

宮崎 正弘


〜平成29年(2017)10月30日(月曜日)
        通巻第5494号 〜 

 こんどのトップセブン、パワフルな政治家が不在
  習近平ファシズム体制が顕現したのではないのか。

 10月25日、南アフリカの首都プレトリアに筆者は滞在していた。

ホテルの部屋でテレビを入れると、北京からの中継番組があり、中国共産
党政治局常務委員のメンバー、つまり新執行部7名が雛壇に並んでいた。
南アは午前六時、北京時間は正午。習近平をクローズアップした画面の次
は長々と記者席である。

何故? 記者団を映し出すのか? 知っている顔を捜すが、えっ。産経も
BBCもいない(帰国後、北京の気に入らないメディアは記者会見に出席
できなかったことを知った)。

それより、習のほかの6人のメンバーは誰々か、画面を五分ほど睨んでい
ると、七名全員の顔がようやく映りだされ、習の隣が李克強、ついで意外
にも三番手が栗戦書。四番目が実力者の王洋、そして趙楽際、韓正、王こ
寧とでてきた。

予想通りである。

小誌は10月22日の時点で下記のように書いている。

「サウスチャイナモーニングポスト、博訊新聞などが一斉に報じ始めた。
党大会開催中にもかかわらず、ほぼ次期執行部人事は「確定」したと分析
している。それらによれば期待の新星、胡春華、陳敏爾はそろって常務委
員会入りを果たせず、また王岐山の勇退はほぼ本決まりという。

習近平、李克強に加えての5人とは栗戦書、王洋、趙楽際、韓正、王コ寧
だという。となると栗、趙、王は習近平派。王洋だけが団派。韓正は上海
派。三派鼎立のバランスを維持したかに見せながらも、習派を確実に多数
派としていることに留意すべきだろう」。

この中で政治力があると思われるのは王洋くらいで、あとは一癖もふた癖
もありそうだが、政治的パワーは目立たない政治家ばかりではないか。

党大会で「習思想」を認めさせたように、これは習近平ファシズム体制の
構築に他ならず、政治局の新しい顔ぶれをみると、習近平派が10人。残り
8人が辛うじて共青団と上海派。注目は外務大臣経験の国務委員、楊潔
チ、女婿の孫春蘭が入ってくらいだろう。

むろん、後継者をトップに添えず、政治局員として留任の胡春華と、3段
跳びを噂された陳敏爾のふたりも、政治局常務委員会入りは見送りとなった。

習近平派圧勝の図式となった。
            
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
★樋泉克夫のコラム 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  【知道中国 1647回】      
――「支那の國はまだ夢を見て居る」(小林3)
  小林愛雄『支那印象記』(敬文堂 明治44年)

           ▽
  欧米人は「無限の勢力をこの荒野に張らうとして、切りに樣々の企畫
をめぐらす」。これに対し日本人は「100や200の金を後生大事に蓄へ、學
生と同じ月8圓の飯を食つて」日を過ごす。これでは、どちらが「支那人
の冷笑を買」うかは明らかだろう。

どうも日本人は「學生と同じ月8圓の飯を食」うこと、言い換えるなら現
地人と同じ目線に立つことを“是”とする傾向が強い。いわば上から目線の
欧米人に対するに同じ目線の日本人という構図である。圧倒的物量によっ
て相手をねじ伏せてしまう欧米とは対照的に、日本人は彼らと同列に振る
舞うことで仲間になりたがるが、それが却って相手に軽んじられるのである。

「冷笑を買」うとは相手に舐められることであり、「支那人の冷笑を買」
うとは彼らに軽んじられること。であればこそ、ここで考えるべきは「支
那人の冷笑を買」うのは日本人でこそあれ、決して欧米人ではないという
ことではないか。

かく考えると、清末以降の日本朝野の対応――亡国の清国にテコ入れし、
共に立って欧米の侵略からアジアを守ろうとしたアジア主義的行動の是非
を再検討すべきだと思う。これを敷衍するなら、頭山満に代表される大ア
ジア主義から石橋湛山が主張した小日本主義に至るまで、およそ20世紀前
半の日本に見られた日本の生き方、日本の世界に対する処し方を徹底して
再検討すべき時期に、いまは立ち至っていると痛感する。些か遅きに失し
た嫌いがなきにしもあらずではあるが。

小林の旅を急ぐ。

南京の街や名勝古跡を廻り管理のいい加減さを目にした小林は、「斯うい
ふ處を見ても凡ての調子が善く云へば大よう、惡く云へば間抜けである。
がせゝこましい島國から見ると何もかもが羨ましいほど大國の襟度があ
る」と綴る。たしかに「せゝこましい島國から見ると」「間抜けである」。

だが「大国」であるかどうか、さらには「襟度」があるかどうかは別とし
て、あれほどのだだっ広い国にあれほどの人口(それも抜け目なく一筋縄
ではいかない)である。「大よう」に構えない限りやってはいけないだろ
う。ここで付言するが、「大よう」とはテキトウ、あるいはイイカゲンの
別の表現だと理解願いたい。

阿片の香に包まれて過ごした7日間の南京滞在を切り上げて長江を遡る
旅に発つ朝、「朝飯は洋務局の食事で濟ませた」が、その朝食は洋務局
(外務省)の玄関で煮炊きしたものだった。「外務省の玄關が御料理の調
進、このやうな善い國が世界の何處にあらうか」と、小林は「をかし味を
禁ずることは出來なかった」。加えて前夜にボーイに与えておいたチップ
の「効果は忽ち現はれて」、「コニャック、葡萄酒が卓上に並ぶ」。だが
客に一杯薦めるだけで、「殘りは、客が去ると直ぐボーイが飲んで仕舞
ふ」。それも隠れて飲むのではなく、あたかも「個人の權利でもあるかの
やうに公然と」。

それだけではない。「最も面白く感じたのは」、昨夜の大宴会の後の大食
堂を覗いてみると、「數十人のボーイが主人と同じ食卓に、同じ食器で殘
のものを食つて居たことである」。ここから小林は考えた。実は「主從の
別」というものは「時の前後にあるばかり」ではなかろうか、と。

かくて「この一事を見ても支那學は、もう既に廢滅して用をなさない事を
知るのであ」った。そう、当時、既に我が「支那學」はバーチャルな中国
世界を語りこそすれ、現実の中国理解には用をなさなくなっていたのである。

これまた香港留学時。レストランの特等席でコックはじめ従業員が揃って
豪華な料理に箸を動かしていた。彼らの食事が終わらない限り開店とはな
らないのである。料理が食べ残されれば、チャーハンなどは客が箸をつけ
た部分のみを捨て、残りを別の皿に取り分けて従業員が食べていたっけ。
ケチではない。“中国の特色”を秘めた合理性・・・かな!
《QED》

2017年10月23日

◆中欧に「反EU、反移民」

宮崎 正弘

<平成29年(2017)10月22日(日曜日)弐 通巻第5492号>  
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 ¥中欧に「反EU、反移民」の政治風潮が席巻
  オーストリアに続き、チェコでも反EU、反移民、反イスラム政党が
第1党に

ドイツでメルケルの辛勝、メルケルに反旗を翻す「ドイツのための選択
肢」の大躍進が欧州政治の流れを大きく変えようとしている。

「反EU」「反イスラム」「反移民」が共通のスローガンであり、ブラッ
セル(EU本部)のエスタブリシュメントを囂々と非難している。

2017年10月21日、チェコ総選挙は「チェコのトランプ」といわれるアンド
レジ・バビシュ財務相が率いる「ANO」が第1党に躍進し、中欧の政治
風潮の流れが完全に変わっている事態を明らかにした。同党の得票率は
30%弱。
 
バビシュスは「大富豪」でもあり、2013年に総選挙でANOを第2党に躍
進させていたが、反EUを鮮明に掲げて、「ブラッセルに救うEUエスタ
ブリシュメントの亜流はチェコには要らない」と獅子吼し、多くのチェコ
国民の共感を得た。

第2党も保守系の「自由と直接民主」で10・7%と前回の2倍に躍進させ
た。この党首はオカムラ・トミオという日系人だ。オカムラは「反移民」
を全面に押しだしてきた。

第3党を争うのはいずれもナショナリストたちの「市民民主党」と「海賊
党」で、それぞれが10%台で鎬を削っている。

過去4半世紀チェコを主導した中道左派は7%に転落した。キリスト教民
主同盟は6%、共産党はそれ以下。

チェコにおける保守系ナショナリストの勝利は、同月15日に行われたオー
ストリアの総選挙結果の流れを受けている。

オーストリアはチェコの隣国であり、31歳のクルツ外相が率いた国民党が
31・4%を獲得し、2番手の民主社会党(中道左派)が26」・7%,右派の
自由党が26「%と、3党のバランスは近似していたものの、同じ保守思想
に立脚する国民党と自由党の連立がうまれると予測されている。 
   
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆桶樋泉克夫のコラム 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 【知道中国 1646回】            
――「支那の國はまだ夢を見て居る」(小林2)
  小林愛雄『支那印象記』(敬文堂 明治44年)

              △
神戸からの「海上の4日」を経て第一歩を記した上海で、小林は「商務大
臣の盛宣懷氏を訪れた。氏は實業家としても巨頭である」。盛と話をして
いる「間にも十餘人の家人は室に出入して一つ水を命ずれば、一人は石?
一人は手拭といふ風に大勢がかりで運ばれる」ものの、彼らの態度からは
「主人に對する畏敬の念」が少しも感じられないのが不思議だった。

食事になると、同席の中には「親切にもその食品を自分の箸で取つて呉れる
が、それが肺病の人かも知れぬので、客にとつては頗る有難迷惑と云わね
ばなら」ないし、「支那のこの風俗は氣味の惡さが先立」ったという。

1842年締結の南京条約による対外開放から60年余り。この間に上海の租
界は発展したものの、「支那街は舊態其儘で居る。そこに新舊の文明に對
する烈しい戰が現れている。やがて支那人が自覺して起つの秋に至らば新
舊思想の衝突は鋭く湧いて來る事であらう」と。

 租界に対するに「舊態其儘」の「支那街」。その対比の中に「新舊の
文明に對する烈しい戰」を捉え、さらには「支那人が自覺して起つの秋」
を思い描いたうえで「新舊思想の衝突は鋭く湧いて來る事であらう」とま
で思い到るとは、さすが詩人の直観は鋭い。

『魯迅』を引っ提げて論壇に登場して以来、現代中国論の世界で“権威”
として崇め奉られ、また本人もすっかりその気で振る舞っていた竹内好
は、近代化に対する日中の違いを論じ、いとも簡単に伝統を放棄して西欧
近代をそっくりそのまま取り入れた日本を軽んじ、封建社会を通じて自ら
を縛りつけてきた分厚い伝統の壁と壮絶に格闘し深く苦悶した中国の近代
を重んじた。
そこで思うが、彼が問い続けた中国の近代における中国知識人の苦悩とい
う命題も、詩人としての小林の直観の前では全く以てカタナシといっていい。
 
 ここで改めて冒頭に立ち戻って読み返すと、小林の神戸出立は明治
43(=1910)年も押し詰まった「暮の廿一日」。それから10カ月ほどが過
ぎた1911年10月10日、清朝崩壊の第一歩である長江中流域の武昌における
武装蜂起が勃発している。

辛亥革命と呼ばれる一連の動きを、はたして「支那人が自覺して起つの
秋」の一環と見做せるかどうかは議論の余地のあるところだが、「新舊の
文明に對する烈しい戰」との指摘は、さすがに鋭く新鮮だ。竹内に先立つ
こと半世紀ほどの昔のことである。

上海の一夜、歓楽街で知られる四馬路へ繰り出す。「試みに騒々しく 音
のする一亭へ上がる」。「卓を圍む若旦那に藝妓」、「無作法な態をし
て、阿片をのんだり、茶をのんだり」。嬌声・脂粉・紫煙・嬌態・狂
態・・・「支那人の公然と遊ぶ?氣か?僞かゞ現はれて興味深い」。かく
て「此に今宵一夜の天地を作つて居る」と捉え、「伊達の委は四馬路で見
やれ四馬路よいとこ伊達姿」「人の生命を四馬路に紅に溶いて流そか江の
水」と。やはり詩人。粋なもんですねえ。

やがて南京へ。ここでも「市街の方には米人が經營する南京大學、獨 逸
人の建てた病院などの大建築が眼に立つ。歐米人が無限の勢力をこの荒
野に張らうとして、切りに樣々の企畫をめぐらすのに、師範學堂あたりに
雇はれて百や二百の金を後生大事に蓄へ、學生と同じ月八圓の飯を食つ
て、支那人の冷笑を買つてい居る邦人のあはれさを思はざるを得ない」
と、鋭い。

日本的な常識・感覚・基準に立つならば、「學生と同じ月八圓の飯を食」
いながら「師範學堂あたり」で教育に励むことは素晴らしいことだ

ろう。
だが、その実は「支那人の冷笑を買」うのが関の山。これでは「無限の勢
力をこの荒野に張らうとして、切りに樣々の企畫をめぐらす」欧米勢力に
は敵わず、「支那人の冷笑を買」うばかり。《QED》
        

2017年09月26日

◆「躾」「度惻」「隠の情」わからない中国人の民度

宮崎 正弘

<平成29年(2017)9月25日(月曜日)号外>

 本日発売!

  ♪♪
宮崎正弘 v 河添恵子『中国、中国人の品性』(ワック、994円)

 〜「躾」「忖度」「惻隠の情」がわからない中国人の民度、文化の基底の
格差から、衝撃があまりにも夥しい日中文化比較。抱腹絶倒、やがて悲し
きシナの人々の哀れ!〜
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 「あとがき」より抜粋
                               宮崎正弘

 この小冊の対談相手は昨今、保守論壇で活躍めざましい河添恵子氏です。
 彼女と知り合ったのはもう四半世紀ほどの昔、共通の台湾の友人だった
故陳絢暉氏(「友愛」グループ初代会長)を通してでした。

 春先に『週刊現代』(2017年4月22日号)で「中国人は中国人が
いちばん嫌い」という緊急対談を依頼され、これを読んだ多くの読者から
「面白かった。是非、話題を拡大して単行本にしてほしい」との要望が寄
せられ本書上梓の運びとなりました。

 さて第十九回党大会を前にして中国の動きが急です。
 とくに米中関係が対北朝鮮への対応をめぐってトランプ政権の姿勢に大
きな変化が見られ、空気が不穏。緊張感が膨張しています。その間に挟ま
れた日本はいよいよ国家安全保障上の覚悟を決めなければなりません。

 本書でも述べたように米国は中国人の気質をわきまえているようで実は
まったく知らない。ですからその行動予測が出来なかったという点で、日
本外交の不作為と似ています。しかし情勢は激変しているのです。
 CIA分析官が「ロシアより中国が米国の敵ではないのか」と報じてい
ます。

 ところが米議会は寄り道です。7月下旬、米下院は圧倒的多数をもって
ロシア制裁案を可決してしまった。トランプ大統領がフィンランド訪問中
という留守を狙ってマケイン上院議員が議会に復帰し、共和党の空気を変
えたのです。

 しかしCIA分析官はこういいます。
 「中国が問題なのは民主主義国家ではなく、国内が不安定このうえない
ことであり、しかしながら彼らも地域の安定を望んでおり、対米関係を重
視している。したがって南シナ海のおける一連の軍事行動は周辺国家から
の反対、妨害、反中国感情の爆発など、過去数年において新しい経験、局
面に直面しており、その一方で中国は国際社会の反撥にも拘わらず南シナ
海で、かれらの望み通りの変化を遂げられれば世界のほかの地域でも同じ
結果を得られると過信しはじめている」。

 米国は自由航行作戦を展開する程度であり、中国は増長し、南シナ海に
おける中国主導の秩序構築(つまり地域覇権の確立)という軍事野心と戦
略目標はうまくいくと踏んでいるのです。

 中国は米国とその同盟国が北朝鮮の行動に神経をとがらせ、行動が制御
されると計測しており、中国にとって北朝鮮は利用価値の高い戦略的緩衝
地帯です。まさに本書で問題にして厚黒学を地でいっているわけです。
 こうした中国の動きを、トランプは苦々しくおもっていることは事実で
すが、ホワイトハウスが混乱し、メディアは毎日フェイクニュースを流し
てトランプ攻撃に余念がありません。

 さはさりながら、この未曾有の窮地を脱出する起死回生の秘策とは、い
うまでもなく米国が単独で北朝鮮へミサイル攻撃をかけることでしょう。
そのとき、北の保護国である中国どうでるのか。

東アジアにおいて危機は深化しています。本書が近未来予測の材料として
読者の一助となれば幸いです。
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2017年09月24日

◆バノン、北京で王岐山と秘密会談

宮崎 正弘

<平成29年(2017) 9月23日(土曜日)通巻第5443号  


(速報)
 バノン、北京で王岐山と秘密会談

 フィナンシャルタイムズ、サウスチャイナモーニングポストなどが報じ
ている。
 ステーブ・バノン(前米大統領上級顧問。主席戦略官)は香港で講演の
後、ひそかに北京入りし、中南海の共産党施設で、王岐山と会談した。
 会談は90分間で、中国のメディアは沈黙を守っている。

 観測筋によると、会談の内容は腐敗退治キャンペーンではなく、経済問
題だったという。王岐山は勇退説が有力だが、むしろ経済政策に辣腕をふ
るうために、李克強首相と全人代議長に横滑りさせ、王岐山が本来の
フィールドである経済再建のため、首相になると予測している。
     □◇□み△□◇や□▽◎ざ□◇□き◎□◇    
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しかしその最期から、維新者、改新家、陰謀家、詩人、軍人(陸軍大将)と
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