2018年04月27日

◆朝鮮半島非核化と東アジア情勢その情勢A

                          浅野 勝人



東北福祉大学客員教授 シンクタンク安保研理事長


もともと国家間で見解が根本的に異なり、折り合いがつかない場合、解決方法は二つしかありません。戦争で結着をつけるか、話し合いで妥協するか。この道理から今回のケースを考察すると、アメリカと北朝鮮、双方とも本心は戦闘は避けたいと思っているのですから、交渉のテーブルに着くのは必然の結果です。

アメリカ・ミドルベリー大学教授のジェフリー・ルイス東アジア研究主幹も「交渉が事態打開の唯一の方策」と述べて、私と同様、早い段階から「米・朝対話」を予測していました。

経済制裁、特に石油禁輸の締め付けに、内心、根を挙げている北朝鮮が話し合いを選択して「金日成(キムイルソン)金正日(ジョンイル)、金正恩(ジョンウン)、金(キム)3代王朝の維持」を首脳会談開催の前提条件に、朝鮮半島の非核化に応じる用意があるというポーズを示したのは、ひとまずうなづけます。

ただ、交渉の先行きについては、北はこれ見よがしの実験を中止すだけで、すでに保有している核は放棄しないどころか、秘かにプルトニュウムを増産したり、秘密裡に地下で核実験をするのではないかという指摘があって、「相互不信の溝」がたいへん深く、楽観できる情況にありません。一方は核こそ生きのびる唯一の手段と考えていますから、容易に手放すはずがありません。もう一方はそれだけは許さない。今回は騙されないと警戒していますから、足して2で割るのは極めて難しい状況にあります。
特に厄介なのは、「朝鮮半島非核化」という言葉の定義です。

トランプ政権はもとより、私たち日本は、「朝鮮半島の非核化」とは、北朝鮮が核・ミサイルを当面凍結し、期限を区切って放棄することと理解しています。

ところが、金正恩は「朝鮮半島全域を非核化することだ」と主張する腹づもりではないかと推測されています。つまり、自分たちが裸にな前に、在韓米軍も核とミサイルを放棄するのは当然である。朝鮮半島の危険が無くなれば、米軍は韓国に駐在する意義がなくなるのだから撤退すべきだ。それを見届けない限り非核化には応じられないという論理の組み立てをする懸念があります。

北朝鮮が、先に全ての核を放棄し、核の製造施設を廃棄しない限り、わたしたちは承服できません。アメリカ以上に日本にとっては死活問題だからです。見せかけかもしれない北朝鮮の言い分を真に受けて日本を見殺しにするような選択をアメリカに許すわけにはまいりません。卵が先か、鶏が先は、こりゃ誠に厄介です。話し合いがこじれて、真っ向から対立したら、何が起きるか予測困難な事態になり、今より悪化します。

☆このように、米朝交渉に根本的な食い違いが見えて、話し合いがこじれる可能性が出てくると、極東における核の分散という深刻な問題が惹起されます。これは、東アジアの平和と繁栄にとって最大の脅威となります。

金正恩は、今回の宣言の中で「核の不拡散」を約束していますが、これから始まる一連の交渉が長引いて、北朝鮮に非核化を承服させられそうにないという情況になった場合、韓国国内で台頭している核武装論がさらに助長される懸念があります。韓国ではすでに核武装すべきだが60%を占めており、極めて敏感に反応しています。それに刺激されて、台湾でも核武装を検討するという機運が出てくる懸念があります。

日本では、幸い、作らず、持たず、持ち込ませずの非核3原則を変更すべきだという議論は起きていませんが、「北」からのミサイルが日本列島の上空をたびたび通過する事態が続くと、放置できないという世論が台頭しかねません。極東における核の分散は、「核の均衡」を崩して、東アジア情勢を一気に不安定にします。
この情況だけは回避させなければなりません。

従って、事態を解決するポイントは、北朝鮮が求めている「金正恩体制の維持」を保障する確かな担保です。「北」がアメリカは信頼できないと主張した場合、「北」の安全を保障できる第三勢力は中国しかありません。

中国は、北朝鮮を国家として存続させたいと考えています。そして、朝鮮半島の非核化には賛成の立場を表明していますから、中国こそうってつけの存在です。中国が「朝鮮半島の非核化」とは北朝鮮の核の放棄というアメリカ、日本と同じ立場を鮮明にしてくれると、双方の条件を満たす仲介役となって問題解決へ一歩近づきます。

3月下旬、25日〜28日、金正恩本人が北京を訪れ、韓国、アメリカとの首脳会談の趣旨を報告すると共にアメリカとの交渉に臨み、いわば「後ろ盾」になってほしいと習近平国家主席に要請した点に、この間の事情がうかがえます。
そして、中国がその重要な役割を果たすためには、北朝鮮との信頼関係の再構築と共にアメリカ、日本、韓国との安全保障政策上の共通認識を深める必要があります。

その方策として、世界のGDP1位、2位、3位のアメリカ、中国、日本、3国相互間の安保体制を構築することが何より重要です。

そんなことができるわけがないと言わずに、まず安保政策上の相互の信頼関係を醸成する努力をしてほしいと念願します。
来月(5月)9日、東京で行われる安倍首相と李克強首相の首脳会談で信頼醸成をはぐくむ合意が成立すると聞いています。

両国の艦艇や航空機による偶発的な軍事衝突を避けるため、「海空連絡メカニズム」の運用を開始することになるものとみられます。これが実現しますと、海上自衛隊、航空自衛隊と人民解放軍の海軍、空軍との間に専用連絡回線、ホットラインが設置されます。

このように信頼が深まれば、次に「協商関係」の確立に発展させることができます。「協商」という概念は、なんらかの軍事的な偶発事故が発生した場合、直ちに双方で協議して、合意に基づいて事態に対処することを意味します。軍事的援助義務を伴わないという点では、日米安保条約のような軍事同盟とは異なりますが、協商関係の絆が強まれば、その中から同盟関係が生れる素地が出てくるにちがいありません。

ですから、私は、日本、中国、アメリカ3国の二等辺三角形を、日米安保条約が存在する日米同盟を底辺に、日中協商、中米協商によって構築することを提唱しています。そして、いずれ二等辺三角形が正三角形の同盟関係に発展して、アジア・太平洋地域の平和と安全を確かなものにする軍事安全保障の要となることを期待しています。
そこで、二等辺三角形構築の最大の障害になっている南シナ海をめぐる米中の軍事的睨み合いに触れておきます。

中国は南シナ海の南沙諸島(スプラトリー諸島)周辺の岩礁を埋め立てて人工島を造成し、軍事基地にして地対空ミサイルを装備しています。さらに西沙諸島(パラセル諸島)にも人工島を造ってミサイルを配備しています。
こうした中国の南シナ海の軍事拠点化にアメリカは神経を尖らせており、戦艦を派遣して中国をけん制しています。

確かに南シナ海と西太平洋を繋ぐ地点に造られたミサイルを装備した軍事基地はアジア各国の脅威ですが、冷静に考えてみると、米軍は東シナ海を望む沖縄、太平洋のグアム島、インド洋のディゴガルシア島に圧倒的な物量を誇る空軍を中心に海兵隊も駐留する巨大な基地を所有して、地球を北から南までタテの線で抑えています。ですから、南シナ海の中国の基地は米軍独占軍事ラインに打ち込まれたくさびの構図です。まあ、いわばどっちもどっちです。

そこで、米中両大国が、軍事力とは戦争をするためのものではなくて、戦争をさせないためのものという理解の上に立って、相手の実力を認め合い、お互いに安全を保障し合う関係を築けば、二等辺三角形の構築は不可能ではありません。それがアジア・太平洋地域の平和と繁栄を担保する大国の責任だと考えます。

at 09:00 | Comment(0) | 浅野勝人

◆朝鮮半島非核化と東アジア情勢

                                                    浅野 勝人


東北福祉大学客員教授  シンクタンク安保研理事長 

現在(今)、世界中がかたずを呑んで見守っているのはアメリカのトランプ大統領と金正恩(キム ジョンウン)朝鮮労働党委員長の米朝首脳会談です。5月下旬なしは6月初旬、ストックホルムと言われていますが、まだ日取りも場所も決まっていません。
4月〜5月にかけて、世界主要国の首脳が目まぐるしく動きます。

まず17日、フロリダで安倍・トランプの日米首脳会談。明後日(4/27)、朝鮮半島中央の南北境界線の韓国側「平和の家」で韓国の文在寅大統領(ムンジェイン)と金正恩委員長の南北首脳会談。そして、来月9日、東京で行われる安倍・李克強の日中首脳会談を経て、米朝首脳会談へと連なっていきます。

朝鮮半島の非核化をめぐるダイナミックな動きが世界の耳目を集めていますが、こうした世界の世論の先手を打って、金正恩が爆弾宣言をしました。
20日、朝鮮労働党委員会総会で「核実験や弾道ミサイルを試験発射する必要が無くなった。核は凍結する」と述べて、核実験とICBM(火星15号。アメリカまで届く大陸間弾道ミサイル)の試験発射を中止し、有名な豊渓里(プンゲリ)の核実験場を廃棄すると宣言しました。

アメリカに対して核攻撃はしないと明言した発言によって、アメリカはひとます安心して満足かもしれませんが、日本の安全が保障されたことにはなりません。凍結とは、所有しているものを使わないという意味ですから、当面、核を使うつもりはないので実験はしないと言っているだけです。すでに保有している核兵器と弾道ミサイルを放棄するとは匂わせてもいません。特に韓国、日本、グアム向けの短距離および中距離弾道ミサイルの扱いにはひと言も触れていません。

廃棄すると宣言した豊(プン)渓里(ゲリ)の核実験場は、過去6回の核実験でガタが来て、山崩れがおきた模様でもう使い物にならなくなっています。

極東情勢をどこまで深く認識しているか疑わしいトランプは、「北朝鮮は非核化に応ずると宣言した。世界にとって喜ばしいことだ」とブログに書いて、非核化の意味が分かっていない、凍結と放棄の区別さえ理解していない困った大統領と揶揄されました。

思慮の深い軍事プロのマテイス国防長官がいますから、うかつな対応はしないと思いますが、金正恩が核弾頭を搭載したICBMは打たないと約束するだけで「これでアメリカに届く核兵器はない」と安心して、トランプに手を打たれたら大変です。日本にとっては最悪なシナリオになります。なぜなら、沖縄をはじめとする日本国内の米軍基地や日本の主要都市を狙う中距離弾道ミサイル「ノドン」が温存されるからです。仙台も例外ではありません。攻撃の対象になります。

この中距離弾道ミサイルが今のまま放置されたら、日本は絶えず北朝鮮の恫喝に晒されます。私たちは既に東北と北海道の上空を北の弾道ミサイルが通過したのを経験しています。

主要国首脳間の交渉によって、北朝鮮から核が取り除かれて朝鮮半島の非核化が実現して、東アジアが安定した政治環境になって繁栄するか。見せかけの核放棄が結局はバレて話し合いが行き詰り、アメリカが北朝鮮を攻撃しかねない物騒な情況の下で東アジア情勢がいっそう不安定になるか。
これが今日の講義のテーマです。

☆ 今日の情況に至った経緯を、まず、トレースしてみます。
角突き合わせて、一触即発だった米朝関係は、平(ぴょん)昌(ちゃん)の冬季オリンピックをきっかけに一挙に雪どけムードになりました。

北朝鮮の招きで平壌(ぴょんやん)を訪れ、金(キム)正恩(ジョンウン)と会った韓国政府代表が、ホワイトハウスにトランプ大統領を訪(たず)ねて「問題解決のため、首脳会談をしたい」という金正恩の伝言を伝えたところ、トランプは即座にOKと回答しました。

「愚かなロケット・ボーイ」「老いぼれのたわごと」とののしり合っていた両首脳の従来の関係から想定して、世界中びっくりしました。
アメリカと日本の国内には、「北朝鮮と話し合ったところで騙されるだけ。もうこれまでしばしば体験してきた北の時間稼ぎ」という世論が多いのが実情ですが、私は、やってみなければわからない。やる前からダメと決めつけるのは正しい判断とはいえないと思っています。案外、常識外れの変わり者同士、気が合うかもしれません。

実は、去年から今年にかけて、「米朝軍事衝突の可能性高まる」「米軍、4月に北朝鮮爆撃」と報道するメディアが少なくありませんでした。この予測が当たっていたら、今頃はもう戦闘が始まっていたことになります。

そんな剣呑な状況が、なぜ、急転直下話し合い路線に転換したのでしょうか。
私はこれまで一貫して、早い段階から「米朝軍事衝突・戦闘はない」とたびたびブログをネットで明らかにし、さまざまな専門誌にも書いてきましたので、なぜ戦闘はないと判断したのか、その理由を述べたいと存じます。
能力 × 意図 = 戦争 という方程式で、米朝両国の関係を
分析してみます。

まず、北朝鮮は、いずれアメリカが攻めて来ると思い込んでいるので、ミサイルと核を開発・保持することによって国を守ろうとしています。イラクとリビアは、弾道ミサイルと核を持っていなかったから戦闘に負けて崩壊したと考えています。

つまり、北朝鮮はミサイルと核を装備して、アメリカの攻撃に備えている「専守防衛」の国です。口先では、ICBM(大陸間弾道弾)でアメリカ本土を火の海にすると言っていますが、そんな能力は必ずしもまだ完成していないことを彼らは分かっています。ですから、アメリカまで戦争に行く意図も能力もありません。

もっと具体的に核以外の能力についていうと、軍用機は米軍1万3,700機、北朝鮮1,000機弱、空母に至っては米軍10隻に対して北はゼロ。大人と子どもの戦さになりますから、自ら撃って出てアメリカと闘い自滅するつもりは北にはありません。
かつて、無謀にも、己の能力をわきまえず、相手の力量の研究も十分ではないまま、真珠湾を奇襲攻撃してアメリカとの戦闘に突入して、国中焼け野原になってやっと目が覚めたあの当時の日本とは違います。

北朝鮮は、もっぱら、核とミサイルで防備してアメリカの攻撃から国を守ろうとしている「専守防衛体制」の国です。
但し、やるならやってみろ。同盟国の韓国と日本を道ずれにするぞとすごんでいます。そして、困ったことにその能力は持ち合わせています。

一方、アメリカは力に任せて北朝鮮を殲滅しても、その結果、中国、ロシアとの関係を決定的に悪化させるだけで何もメリットはありません。アメリカ本土の保全と同盟国の韓国、日本への脅威を排除するのが目的です。北がICBMを開発して「ワシントンを攻撃する」と大それたことを言うものですから放置できないだけで、「北」が東アジアの平和を乱す核とミサイルを当面凍結・いずれ放棄しさえすれば、目的を達したことになります。ですからアメリカも戦闘能力はあるけれども、あえて何の得もない戦を自ら進んでする意図はありません。ですから好き好んで戦争はしません。

特に、北朝鮮は、日本と韓国、グアムを攻撃する中距離弾道ミサイルを500ないし600基、国内あちこちに分散して地下に隠し持っています。アメリカは、北の主な核・ミサイル基地や製造・貯蔵庫は掌握していますが、スパイ衛星に見つからないように、国内あちこちの地下にバラバラに隠しているものを一挙に全て破壊することは到底不可能です。

破壊を免れた中距離ミサイルが、開発済みと言われる小型核爆弾を搭載して、同盟国の韓国や日本を攻撃してきたら、大打撃を被る恐れがあります。だから、アメリカは「北」との戦闘には極めて慎重です。

それにもっと嫌なものを、北はミサイルにのせることができます。
生物化学兵器です。平壌(ピョンヤン)生物化学研究所。定州(チョンジュ)市と文川(ムンチョン)市に秘密研究所があり、炭疽菌(その恐ろしさはオーム真理票で経験済み)、赤痢菌など13種類の生物化学兵器を製造しています。政治犯を使って人体実験をしているそうですし、未確認情報によると総量は2,500トンを超えるとみられています。
「同胞の住む韓国に使用するのは躊躇するが、日本にはためらわない」と金正恩が言っているという情報が伝わっていますからアメリカも北には軽々に手を出しません。

以上の分析に従えば、能力 × 意図 = 戦争という方程式は、米朝とも成り立ちません。ですから、アメリカと北朝鮮との戦争はないと私は判断した理由です。

しかし、20日の金正恩発言は、まだ開発が十分とは言えないICBMの試験発射を中止し、核の実験はもうしないと明言しただけで、すでに保有している核爆弾と近隣諸国を攻撃できる中距離弾道ミサイルについては保有し続けるつもりと見受けられます。アメリカに対して核攻撃はしないと言っているだけで、非核化つまり核の放棄は約束していません。

将来、度重なる交渉の結果、結局、非核化の合意に至らなかったり、仮に、北朝鮮が核・弾道ミサイルの凍結・放棄に合意したとしても、それが見せかけのポーズで、約束を破るようなことがあった場合は、方程式自体が崩壊しますから、私の理論は吹き飛びます。
at 09:00 | Comment(0) | 浅野勝人

2018年04月06日

◆考察 ― 憲法9条改正試案

          安保政策研究会理事長 浅野勝人
   

一般社団法人「安保政策研究会」を、アジア・太平洋地域の平和と繁栄を調査・分析するシンクタンクとして立ち上げたのは、平成23年6月2日のことです。ですから、7年が経過したことになり、この間、61回の研究会を重ねてまいりました。

研究会は、もっぱら自由闊達な討論を楽しむサロンとして運営され、なんらかのテーマについて見解を取りまとめてアピールするような 宣伝目的は持ち合わせておりません。

ただ、外交・安保政策を語り合っていますと、時に触れ、折に触れて、憲法9条と関連する言及が少なくありません。憲法9条は内外の政策と直接、間接に深く関わっていますから当然のことです。従って、そのあり様について議論することは極めて重要です。

自民党内の改憲論議もそれなりに進捗している模様なので、早晩、国会の舞台に登場することと思われます。
そこで、安保研としても「9条改正試案」をまとめてみたいと思い立ち、集中討議をしましたが、十人十色、まとまるどころか、バラバラでした。このテーマについてもメンバー各自の理念を尊重する安保研の良さが現れました。いつもの報告書(安保研リポート)通り、投稿をそのまま掲載いたしますので、楽しみに待ってください。


「9条改正―安保研理事長試案」

第2章 戦争の放棄

第9条1項 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
(現状のまま)

2項 前項の目的を達するため、国の交戦権はこれを認めない。
但し、わが国の存立を危うくする明白な事態に対処するため、必要最小限度の戦力は保持する。

<註>
☆平和主義の根幹は堅持する。そのため、後項優位の原則を踏まえて、2項に「国の交戦権は認めない」をことさら残す。
☆国家の存立を担保するため、必要最小限の戦力の保持(自衛隊)を明記する。
☆集団的自衛権の行使は、厳しく制限し、我が国領域の安全が脅かされる明白な緊急事態に限定する。従って、交戦権とは、他国への侵略等日本周辺以外への武力侵攻を意味する。
☆改正を機に「戦力不保持」を削除して、実存する自衛隊との整合性を担保する。

特に、憲法が実態を無視して、虚偽を表記していると児童、生徒に受け取られかねない表現を削除。―「陸海空軍、その他の戦力はこれを保持しない」といっても現実に保持している。義務教育で「自衛隊は戦力(軍隊)ではない」と詭弁を弄するのは好ましくない。

☆手直しは最小限に留め、自民党案のように理屈をこね回すのは感心しない。内閣総理大臣が自衛隊の最高指揮監督権を持つことは改めて憲法に書かなくても自衛隊法(第7条)で決まっている。妥当な憲法解釈と関連法案の補充で対応する方がいい。

☆素直に、国情および現下の国際情勢に合致する、わかり易い表現と組み立てが望ましい。

問題点:国民投票で否決された場合、自衛隊の存在をどのように
位置づけるか。集団的自衛権の行使を一部認めた安保法制をどう扱うかにつては、
☆憲法への明記が否定されるだけで、自衛隊は合憲と認めている現状を堅持する。従って、改正憲法が否決されても、法的存在に変わりはない。
☆現行安保法制該当部分は白紙とする。

以上(元内閣官房副長官、元NHK解説委員)
at 08:38 | Comment(0) | 浅野勝人

2017年12月12日

◆本命の訪朝 ― 緊張緩和の糸口を期待!

                           浅野勝人 安保政策研究会理事長


世の中に無用の長物ふたつ有り
    国連安保理と教育委員会  詠み人知らず

 北朝鮮が弾道ミサイルを発射するたびに、国連安全保障理事会は緊急会議を招集する。そして、アメリカが「北朝鮮に対する圧力をさらに強化しよう。中ロは石油の全面禁輸に踏み切るべきだ」と主要各国の協調を求め、日本は全面協力と賛成し、中ロは「協力はするが、話し合い路線を放棄すべきでない」とやんわり身をかわす。お題目の繰り返しで、北朝鮮が初めてアメリカ本土に届くICBMの発射実験(11/29)をした折にもアメリカ代表の演説のトーンが一段と高まっただけです。

ちょうど、小学生、中学生がいじめを苦に自殺した事件が発生すると、当該市町村の教育委員会は、当初、「いじめとは無関係」と学校を擁護し、かばい切れなくなると「二度とこのようなことが起きないよう注意を喚起したい」と他人事のようなセリフを繰り返すだけで、まるっきり役に立ちません。

口先だけで役に立たない代名詞と思っていた国連が、北朝鮮へ事務次長(政治局長)を派遣しました。
ジェフリー・フェルトマン国連事務次長は12月5日〜8日まで平壌を訪れ、北朝鮮政府幹部と核・ミサイル開発・発射実験によって緊迫している朝鮮半島情勢について協議しています。

6日には朴明国(パクミョングク)外務次官と会談しました。
会談の冒頭、朴次官は「このようにせっかくお迎えしたので、真摯に話し合おう」と述べ、朝鮮中央通信は「互いが関心を持つ問題について意見交換した」とだけ伝えました。
フェルトマン事務次長と李容浩(リヨンホ)外相との会談は決まっていますが、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との会見が今日、帰国するまでに実現するかどうか、今の時点(8日、午前0時)では不明です。

核・ミサイル開発を禁じる国連安保理の決議を履行するよう求める国連の立場とアメリカを中心とする国連の北朝鮮制裁決議に反発する「北」の主張とは真っ向から対立しています。

従って、緊張緩和のきっかけが簡単につかめる情況ではありませんが、今回のフェルトマン平壌訪問は、今年の9月、北朝鮮から「政策対話」の要請を受けて、国連が派遣して実現した経緯(いきさつ)を重視する必要があると考えます。国連事務総長報道官が「訪問は北朝鮮による以前からの要請に応じたもの」と舞台裏を明かしているのは意味があるとみるべきです。
中国やロシア、もちろんアメリカに対してわずかな弱みも見せられない北朝鮮としては、自らの言い分を主張する相手に国連を選んだと推測すれば、緊張緩和に向けた話し合いの糸口になるのではないかと期待されます。今回の出会いが、国連をいわば仲介役にするきっかけとなれば大成功です。

同時に「米・北」軍事衝突の懸念も無視できない情況にあります。
仮に軍事衝突に至った場合、米軍の軍用機は1万3,700機余り、空母10隻に対し、「北」は1,000機にも満たず、空母は1隻もありません。戦力においては比較になりません。ところが、「北」は韓国、日本をカバーする中距離および準中距離ミサイルを200発余持っており、各地方に分散して地下に隠しています。開戦と同時に1基残らず破壊するのは軍事技術的に困難です。

アメリカの軍事専門家は「北朝鮮は開戦初日に弾道ミサイルに生物・化学兵器を搭載して撃ってくる。それで韓国、日本は大パニックになる」と指摘しています。

ハーバート大学調査チームの分析によると、
平壌の生物技術研究所、定州市、文川市に秘密研究所があって、炭疽菌、赤痢など13種類の生物兵器を製造している。政治犯を使って生物兵器の人体実験を行っている可能性を否定できないといいます。
また、化学兵器は10か所余りの施設で製造されており、総量は2,500トンを超えるとみられています。
今年2月、異母兄・金正男氏を暗殺したのは化学兵器・VXガスで、「いつでも使える」と世界に誇示しました。

極めて危険な北朝鮮の核・ミサイルを警戒して、韓国では核武装を60%の人が支持しています。
日本政府も戦闘機に長距離巡航ミサイルを搭載する方針を固め、準備する手はずを決めました。もちろん朝鮮半島が射程に入ります。撃たれる直前に撃つ適地攻撃も可能です。
確かに専守防衛の基本方針との整合性が問われますが、生物化学兵器の脅威から国民の生命を守るには理屈ばかり言ってもおられません。

北朝鮮は、核・ミサイル軍事強化戦略が東アジアにおける核拡散と「北」包囲網戦力拡充に伴う軍事技術の更新を促し、自らの国家存立の基盤を危うくするブーメランであることに気付くべきです。

国連のグテレス事務総長は、13日に東京を訪れ、14日には安倍首相と北朝鮮対策を協議することになっています。
「北」に対するアメリカ式軍事および経済圧力一辺倒を支持する姿勢だけではなく、東アジアの安定に占める北朝鮮のポテンシャルと合わせて「北」の国民生活向上の方策を模索する国連の対応を真剣にバックアップするのが望ましいと考えます。
(元内閣官房副長官)
at 09:53 | Comment(0) | 浅野勝人

2017年12月08日

◆本命の訪朝 ― 緊張緩和の糸口を期待!

浅野 勝人 安保政策研究会理事長


世の中に無用の長物ふたつ有り
    国連安保理と教育委員会  詠み人知らず

 北朝鮮が弾道ミサイルを発射するたびに、国連安全保障理事会は緊急会議を招集する。そして、アメリカが「北朝鮮に対する圧力をさらに強化しよう。中ロは石油の全面禁輸に踏み切るべきだ」と主要各国の協調を求め、日本は全面協力と賛成し、中ロは「協力はするが、話し合い路線を放棄すべきでない」とやんわり身をかわす。お題目の繰り返しで、北朝鮮が初めてアメリカ本土に届くICBMの発射実験(11/29)をした折にもアメリカ代表の演説のトーンが一段と高まっただけです。

ちょうど、小学生、中学生がいじめを苦に自殺した事件が発生すると、当該市町村の教育委員会は、当初、「いじめとは無関係」と学校を擁護し、かばい切れなくなると「二度とこのようなことが起きないよう注意を喚起したい」と他人事のようなセリフを繰り返すだけで、まるっきり役に立ちません。

口先だけで役に立たない代名詞と思っていた国連が、北朝鮮へ事務次長(政治局長)を派遣しました。
ジェフリー・フェルトマン国連事務次長は12月5日〜8日まで平壌を訪れ、北朝鮮政府幹部と核・ミサイル開発・発射実験によって緊迫している朝鮮半島情勢について協議しています。

6日には朴明国(パクミョングク)外務次官と会談しました。

会談の冒頭、朴次官は「このようにせっかくお迎えしたので、真摯に話し合おう」と述べ、朝鮮中央通信は「互いが関心を持つ問題について意見交換した」とだけ伝えました。

フェルトマン事務次長と李容浩(リヨンホ)外相との会談は決まっていますが、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との会見が今日、帰国するまでに実現するかどうか、今の時点(8日、午前0時)では不明です。

核・ミサイル開発を禁じる国連安保理の決議を履行するよう求める国連の立場とアメリカを中心とする国連の北朝鮮制裁決議に反発する「北」の主張とは真っ向から対立しています。

従って、緊張緩和のきっかけが簡単につかめる情況ではありませんが、今回のフェルトマン平壌訪問は、今年の9月、北朝鮮から「政策対話」の要請を受けて、国連が派遣して実現した経緯(いきさつ)を重視する必要があると考えます。国連事務総長報道官が「訪問は北朝鮮による以前からの要請に応じたもの」と舞台裏を明かしているのは意味があるとみるべきです。

中国やロシア、もちろんアメリカに対してわずかな弱みも見せられない北朝鮮としては、自らの言い分を主張する相手に国連を選んだと推測すれば、緊張緩和に向けた話し合いの糸口になるのではないかと期待されます。今回の出会いが、国連をいわば仲介役にするきっかけとなれば大成功です。

同時に「米・北」軍事衝突の懸念も無視できない情況にあります。

仮に軍事衝突に至った場合、米軍の軍用機は1万3,700機余り、空母10隻に対し、「北」は1,000機にも満たず、空母は1隻もありません。戦力においては比較になりません。ところが、「北」は韓国、日本をカバーする中距離および準中距離ミサイルを200発余持っており、各地方に分散して地下に隠しています。開戦と同時に1基残らず破壊するのは軍事技術的に困難です。

アメリカの軍事専門家は「北朝鮮は開戦初日に弾道ミサイルに生物・化学兵器を搭載して撃ってくる。それで韓国、日本は大パニックになる」と指摘しています。

ハーバート大学調査チームの分析によると、
平壌の生物技術研究所、定州市、文川市に秘密研究所があって、炭疽菌、赤痢など13種類の生物兵器を製造している。政治犯を使って生物兵器の人体実験を行っている可能性を否定できないといいます。
また、化学兵器は10か所余りの施設で製造されており、総量は2,500トンを超えるとみられています。

今年2月、異母兄・金正男氏を暗殺したのは化学兵器・VXガスで、「いつでも使える」と世界に誇示しました。

極めて危険な北朝鮮の核・ミサイルを警戒して、韓国では核武装を60%の人が支持しています。
日本政府も戦闘機に長距離巡航ミサイルを搭載する方針を固め、準備する手はずを決めました。もちろん朝鮮半島が射程に入ります。撃たれる直前に撃つ適地攻撃も可能です。
確かに専守防衛の基本方針との整合性が問われますが、生物化学兵器の脅威から国民の生命を守るには理屈ばかり言ってもおられません。

北朝鮮は、核・ミサイル軍事強化戦略が東アジアにおける核拡散と「北」包囲網戦力拡充に伴う軍事技術の更新を促し、自らの国家存立の基盤を危うくするブーメランであることに気付くべきです。

国連のグテレス事務総長は、13日に東京を訪れ、14日には安倍首相と北朝鮮対策を協議することになっています。

「北」に対するアメリカ式軍事および経済圧力一辺倒を支持する姿勢だけではなく、東アジアの安定に占める北朝鮮のポテンシャルと合わせて「北」の国民生活向上の方策を模索する国連の対応を真剣にバックアップするのが望ましいと考えます。
(元内閣官房副長官)
at 08:14 | Comment(0) | 浅野勝人

2017年12月03日

◆「相撲協会、横審 有って、力士無し」でいいのか

浅野 勝人

大相撲九州場所(2017/11月12日〜26日)

初日、白鵬上手出し投げで琴奨菊 転倒。

「まったく不安なし。このまま平常心で前進! 前進! 浅野勝人」

「メールありがとうございます。心が落ち着きます。白鵬翔」

場所前の10月25日、夜、巡業先の鳥取市内で行われたモンゴル出身力士の懇親会の席上、横綱・日馬富士が幕内貴ノ岩をビール瓶で殴打して怪我を負わせる事件が起きました。
被害届を受理した鳥取県警が捜査に着手しました。
同席していたモンゴル・グループの「長」の立場にある白鵬の対応はどうであったか、問われます。

「和田さん、警察の捜査で事実が明らかになりますから、“ 警察から事情を聴きたいという要請があれば、ありのままを話します ”という態度がよろしいのではないでしょうか。それ以外、場所中でもあり、白鵬は事件についてしゃべらない方がいいと思います。浅野勝人」(11月16日)

「ビール瓶では殴っていないとマスコミに話したようですが、今後は沈黙を守ると思います。
報道が先行して事態を複雑にしています。事実関係が肝心な点で報道とは異なるようです。
ビール瓶を握ったけれども滑り落としてしまったようです。ビール瓶で殴っていたら、血だらけになって頭蓋骨を骨折しかねない。カラオケのリモコンと平手で何発も殴ったが、馬乗りになったということもないらしい。白鵬は暴行を止めて、日馬富士を別の部屋に連れ出して事態を収めたようです。どうであれ、暴力は許されません。和田友良」(註:和田友良は白鵬の義父、浅野の友人)

白鵬翔に

「各種の取材に対しては、“ 警察から事情を聴きたいという要請があれば、ありのままを話します ” これ以外のことは何も言わない。もっぱら取組、勝負に集中する。この対応がよいのではないでしょうか。浅野勝人」(11月17日)

「正(まさ)しくその通りです。そう思います。白鵬翔」

14日目、40回目の優勝決める。自らを信じていっさい動ぜず。不動の取り口。

「おめでとう!今場所の優勝はことのほか意義が深い。
☆力士としての限界(再起をかけた場所でした)を無限にしました。
☆力士からの“ 物言い ”(嘉風との一戦)の正当性を、優勝することで示しました。浅野勝人」

ところで、日馬富士暴行事件で影が薄くなってしまいましたが、11日目、< 関脇 嘉風 寄り切り 横綱 白鵬 > 奇妙な取り組みがありました。
組んだ直後、嘉風の突きに白鵬が客席のど真ん中まですっ飛ばされました。その直前、土俵上の白鵬は右手で「待った」の合図をして、相撲を取るのを止めていました。嘉風自身「横綱は力を抜いていた」と述べています。そうでなければ、今の白鵬が小柄な嘉風のひと突きで突き飛ばされることはあり得ません。

白鵬は、土俵下で立ち合い不成立を主張して、物言いのしぐさをし、得心のいかない取組を行司と検査役に「相撲が成立していない」とアピ―ルしました。
相撲協会は、物言いを付ける権利の無い力士が自分の勝手な判断で抗議をして、負けを認めない態度は潔くないと審判部から横綱に厳重注意をさせました。

競技選手がゲーム中、審判の判定や相手選手のプレーに誤審ないしは強い不信を抱いて抗議し、プレーの見直しをアピールするのを一切禁止しているスポーツがあるでしょうか。どのスポーツでも、審判が抗議を採択するか、拒否するか、その場で明示して選手の納得を得る努力をしています。ボクシングでも重大な誤審の疑義があれば、再試合を指示しています。

あの場合、白鵬に対して、立ち合いは成立しており、物言いは不成立と検査役の判断を会場で説明すれば済むだけのことです。もし、判定に従わなかったら、退場を命じ、厳しい処分の対象にすればいい。そのくらいの選手(力士)の気持ちに沿う制度改革をしてもよろしいのではないかと思います。力士は命がけで勝負しているのですから「力士重視」は当然の配慮ではないでしょうか。
相撲協会は、何事、旧態依然のままと見受けられます。

優勝力士インタビューで、白鵬が暴力事件に関連して「膿(うみ)を出し切って、日馬富士にも貴ノ岩にも土俵に戻ってきてもらいたい」と胸の内を述べ、合わせて連日の満員御礼の盛況に感謝して、大相撲の一層の発展を願って観客と一緒に万歳をしました。この行為について、横綱審議委員会は力士ごときの出過ぎた言動と決めつけて、理事会に処罰するよう求めました。これでは暴力を振るった日馬富士を厳罰に処するよう諮問したのと同じではないですか。横綱審議委員会は何を考えているのか、横審は大相撲の旧(ふる)き良き伝統を守る一方、時代にそぐわなくなった相撲協会のシステムを改革するのが使命のはずです。これでは「無用の長物」だ。

白鵬の言動は、優勝力士としての個人の思いに過ぎず、警察の捜査や理事会の判断とは異なります。白鵬が何を言おうが、日馬富士は引退したし、それに関係なく警察は厳正な捜査を徹底します。
大相撲を背負っていると内心自負しているアスリートの慈しみの表現を汲んでやるわずかばかりの思いやりが、協会にも横審にもまるでないのは誠に残念なことです。

肝心のマスコミも、
「負けた後に取組をした力士には権利のない“物言い”を付けるしぐさをし、なかなか負けを認めず土俵から下がらなかった。他の力士は横綱の行為をまねるものだ。反省を求める」(朝日新聞)
まったく真意を理解していないコメントです。

勝負に命を懸けている選手が、誤審や納得しがたいプレーについて質すスポーツ選手としての「力士の権利」を主張したかったことがまったくわかっていない。負けたのを認めない潔さに欠ける行為としか理解していない。これでは相撲協会の旧い体質を外から改革するオピニオン・リーダーとしての期待はもてません。

白鵬は、また一人横綱で大相撲を背負い、自分との果てしない戦いの旅を続けることになるのでしょうか。
私一人くらい「心の理解者」がいてもいいでのではないかと淋しく思っています。
(2017/12月1日、元内閣官房副長官)


at 07:45 | Comment(0) | 浅野勝人

2017年11月07日

◆事実上の 殺人罪 を処罰せよ!

浅野 勝人 (安保政策研究会理事長 )


「子どもを教える立場にありながら、自らが犯した、重大な責任に気付かず、悪いとも思わず、反省もしない。あの時の担任、副担任の教諭が一人でも違う先生だったならわが子は死なずに済んだ」


これは今年(2017年)3月、福井県池田町立池田中学校で自殺した2年・男子生徒(当時14才)の母親の手記です。息子を失った悔しさや学校への怒りが11枚にわたって綴られており、癒えない悲しみが滲んでいます。


3月14日、午前8時頃、男子生徒が校舎3階の窓から飛び降りて自殺した。池田町教育委員会は「担任と副担任から繰り返し強い叱責を受け、追い詰められた末の自殺」と発表した。担任は30代男性、副担任は30代女性という。



担任、副担任から大声で叱責されているところを目撃した同級生は、調査委員会に「(聞いている者が)身震いするぐらい怒鳴っていた」と証言している。しかもたびたびである。報告書が「度重なる厳しい叱責による精神的ストレスと孤独感が自殺の原因」と断定している背景だ。

更に許しがたいのは、母親が「自殺した日に自宅に来た校長は頭を下げることもなく、『家族が悪い』といわれているような言動だった」と堀口修一校長に対する不信感を語っている点である。


この男の子は、草むしりをする祖母のために椅子を手作りするような家族にやさしい少年で、生徒会役員としても申し分なかったという。
堀口校長は、自殺直後の記者会見で「そんな事態は把握していなかった」と述べ、保護者説明会で「問題はなかった」と説明していた。ところが、検証が進むにつれて校長、教頭とも叱責の現場を何回も目撃していることが判明している。責任感の欠片もない。


もっと情けないのは、生徒が自殺した後、原因を振り返るための職員会議で、担任、副担任の行き過ぎた叱責を指摘し、諫めた教員は一人もいなかった。こんな人たちが大切な子どもを教育しているかと思うと寒気がします。ここだけの例外であってほしいと念じますが、どんなものでしょうか。


事実を知れば知るほど、これでは事実上の殺人罪ではないかと思われてしまいます。担任、副担任は獄門、校長は殺人幇助で遠島、教頭は閉門蟄居です。わたしの孫が同じような扱いをうけて自殺したら、担任、副担任を刺し殺して、自首します。


その上、事もあろうに、有識者らによる調査委員会が作成した調査報告書から、「管理職(校長と教頭)としての職責を果たしたとは言えない」という文言を町教育委員会が削除して発表した。まさに学校と教育委員会がグルになって隠ぺい工作をしている醜態を見るにおよんで、怒りを通り越して情けなくなる。


町教育委員会・内藤徳博教育長は「管理職の責任に関する内容が省かれた理由は分からない」と取材に答えている。自分たちで削除しておいて「なぜ削除されたかわからない」とは盗っ人猛々しい。あなたは、その椅子に座っている価値は爪の垢ほどもない。即刻、引責辞任してはいかがでしょう。


マスコミ各社、とりわけ新聞各社には、1面トップで徹底的に追及する問題意識が求められる課題と考えるがいかがだろう。徹底した事実の解明と当事者の責任の明確化、厳しい処分が何よりも再発防止につながると考えるからです。マスコミの社会的使命です。


むかし噺になりますが、現職の時、自民党政策審議委員だった折、いじめによる少年の自殺問題を取り上げ「知りませんでした。遺憾ですというだけの教育委員会は、屁のツッパリにもならない。小・中学校の校長が委員会の長になり、委員も教職員が多い。


いわば学校の先生の再就職口に過ぎない。だから教育行政を監視、注意すべき機関が学校の不始末をかばうことしか考えない堕落した存在になる。地方自治体の教育委員も公選制にして選出し、その中から委員長を互選したらいい」と指摘したことがあります。


「屁のツッパリにもならない」という発言がゲラゲラと笑われただけで、それっきりでした。


明後日投票の総選挙が終わったら、遅まきながら、政府・与党は立法措置も視野に真剣に取り組んでみたらどうだろう。 (2017/10月20日、元内閣官房副長官)



at 05:00 | Comment(0) | 浅野勝人

2017年10月21日

◆事実上の“ 殺人罪 ”を処罰せよ!

浅野 勝人  (安保政策研究会理事長 )

「子どもを教える立場にありながら、自らが犯した、重大な責任に気付かず、悪いとも思わず、反省もしない。あの時の担任、副担任の教諭が一人でも違う先生だったならわが子は死なずに済んだ」
これは今年(2017年)3月、福井県池田町立池田中学校で自殺した2年・男子生徒(当時14才)の母親の手記です。息子を失った悔しさや学校への怒りが11枚にわたって綴られており、癒えない悲しみが滲んでいます。

3月14日、午前8時頃、男子生徒が校舎3階の窓から飛び降りて自殺した。池田町教育委員会は「担任と副担任から繰り返し強い叱責を受け、追い詰められた末の自殺」と発表した。担任は30代男性、副担任は30代女性という。

担任、副担任から大声で叱責されているところを目撃した同級生は、調査委員会に「(聞いている者が)身震いするぐらい怒鳴っていた」と証言している。しかもたびたびである。報告書が「度重なる厳しい叱責による精神的ストレスと孤独感が自殺の原因」と断定している背景だ。

更に許しがたいのは、母親が「自殺した日に自宅に来た校長は頭を下げることもなく、『家族が悪い』といわれているような言動だった」と堀口修一校長に対する不信感を語っている点である。
この男の子は、草むしりをする祖母のために椅子を手作りするような家族にやさしい少年で、生徒会役員としても申し分なかったという。

堀口校長は、自殺直後の記者会見で「そんな事態は把握していなかった」と述べ、保護者説明会で「問題はなかった」と説明していた。ところが、検証が進むにつれて校長、教頭とも叱責の現場を何回も目撃していることが判明している。責任感の欠片もない。

もっと情けないのは、生徒が自殺した後、原因を振り返るための職員会議で、担任、副担任の行き過ぎた叱責を指摘し、諫めた教員は一人もいなかった。こんな人たちが大切な子どもを教育しているかと思うと寒気がします。ここだけの例外であってほしいと念じますが、どんなものでしょうか。

事実を知れば知るほど、これでは事実上の殺人罪ではないかと思われてしまいます。担任、副担任は獄門、校長は殺人幇助で遠島、教頭は閉門蟄居です。わたしの孫が同じような扱いをうけて自殺したら、担任、副担任を刺し殺して、自首します。

その上、事もあろうに、有識者らによる調査委員会が作成した調査報告書から、「管理職(校長と教頭)としての職責を果たしたとは言えない」という文言を町教育委員会が削除して発表した。まさに学校と教育委員会がグルになって隠ぺい工作をしている醜態を見るにおよんで、怒りを通り越して情けなくなる。

町教育委員会・内藤徳博教育長は「管理職の責任に関する内容が省かれた理由は分からない」と取材に答えている。自分たちで削除しておいて「なぜ削除されたかわからない」とは盗っ人猛々しい。あなたは、その椅子に座っている価値は爪の垢ほどもない。即刻、引責辞任してはいかがでしょう。

マスコミ各社、とりわけ新聞各社には、1面トップで徹底的に追及する問題意識が求められる課題と考えるがいかがだろう。徹底した事実の解明と当事者の責任の明確化、厳しい処分が何よりも再発防止につながると考えるからです。マスコミの社会的使命です。

むかし噺になりますが、現職の時、自民党政策審議委員だった折、いじめによる少年の自殺問題を取り上げ「知りませんでした。遺憾ですというだけの教育委員会は、屁のツッパリにもならない。小・中学校の校長が委員会の長になり、委員も教職員が多い。いわば学校の先生の再就職口に過ぎない。だから教育行政を監視、注意すべき機関が学校の不始末をかばうことしか考えない堕落した存在になる。地方自治体の教育委員も公選制にして選出し、その中から委員長を互選したらいい」と指摘したことがあります。

「屁のツッパリにもならない」という発言がゲラゲラと笑われただけで、それっきりでした。
明後日投票の総選挙が終わったら、遅まきながら、政府・与党は立法措置も視野に真剣に取り組んでみたらどうだろう。(2017/10月20日、元内閣官房副長官)



at 18:37 | Comment(0) | 浅野勝人

2017年08月14日

◆近頃 出あった佳作2題!

浅野 勝人 (安保政策研究会理事長


☆ <川柳>
国会は 真実隠しの尻隠さず  詠み人知らず

添え書き:中庸思考の“異端児”に期待。(河野太郎外相のことか)


☆ <書評>
アマゾン・カスタマーレビュー五つ星
書き込み本 : 浅野勝人著「 宿命ある人々 = 孫悟空 ― 追っかけ“西域”ひとり旅」

地図帳を片手に!
投稿者:kaze  2017年8月12日
強い好奇心と目的をもとに実行した、中国西域へのひとり旅の物語。
単なる体験談と思うことなかれ。 『宿命』を追いかけ、謎が謎を呼び、縁が縁を結び、専門的な解説を聞きながら、ぐいぐい引き込まれていきます。

孫悟空の話かと思ったら延暦寺から始まるため、とっつきにくい感があるかもしれませんが、それすらも、次第に、ともにのどの渇きを覚えるほど。
飛ばないフライト、門前払いに、はらはらし、市井の民との自然な対話になごみ、専門家との対談にはっとさせられます。

著者はジャーナリスト出身のプロであり、恐れ多い経歴をお持ちですが、それが邪魔にはなりません。隣国への邪心のない探求心にはきっと誰もが魅かれることでしょう。他の著作も併せて読むと、「こうゆう人が日本の良き時代をリードしてきたんだ。そしてあっさりと引退したんだ」としみじみ思わされます。
序文の中で読者に「あなた」と書いている姿勢が好きです。


kazeさん有り難う! ことばの言い回しから、あなたはきっと女性ですね。スタッフが書いても、こんな素晴らしい書評は書けません。感謝です。(著者:浅野勝人)





at 05:00 | Comment(0) | 浅野勝人

2017年07月24日

◆白鵬翔とのショートメール!

〜「続 大相撲ちょっと聞けない、ないしょの噺(はなし)噺(はなし)」〜 

 浅野 勝人(安保政策研究会理事長)



夏場所  両国国技館 (2017/5月14日〜28日)
休場明けの白鵬、再起をかける試練の場所が開幕。
世の中「稀勢の里」一色。稀勢の里人気で連日満員御礼。
横綱・稀勢の里、怪我を押して出場。今場所は休んで完治してから復帰が望ましいが、3場所連続優勝を運命図けられた横綱の面目にかけて土俵に上がる。切ない思いがするが、白鵬が何度となく体験しながら潜り抜けてきた横綱の宿命(さだめ)宿命(さだめ)。

・初日前夜(5月13日)
「初心に返って、初土俵を想い出して、力を出し切ってください。
浅野勝人」
・初日(5月14日)
「ケガは日に日によくなってきています。もう大丈夫です。
欲を出さずに黙々と頑張ります。白鵬翔」

・5日目(5月18日)
白鵬 上手投げ 御嶽海
「今日の取組(御嶽海)が前半の“山”と思っていた。完璧でした。一気にいける。但し油断大敵! 浅野勝人」

白鵬、全勝で中日折り返し。日馬富士も全勝。大関昇進確実の関脇・高安1敗。手負いの稀勢の里2敗。良く踏ん張っている。いよいよ後半戦。

・5月22日 
「取組は日に日に充実一途。全盛期のレベルに達してきました。
再起をかけた今場所はゆずれない。優勝しかない。加油!浅野勝人」
・5月22日
「もとよりその覚悟です。白鵬翔」

・ 10日目(5月23日)
白鵬 寄り倒し 高安
・5月23日
「中盤のヤマ(高安)に完勝。安堵。終盤の要注意は照ノ富士。
浅野勝人」

・・・支度部屋で息を整えると、「(高安との一戦で)久しぶりに頭を付けたんじゃないか」と、笑った。春場所前には自ら田子ノ浦部屋に出向き、稀勢の里ではなく、「高安めあて」と公言してぶつかった。一門の違う二所ノ関の連合稽古にまで足を運び、高安を指名した。

 もちろん、その実力を認めているからこそ、この日の取組後、大関昇進前の照ノ富士、豪栄道と比較した上で、「(高安は)その中でも
一番(大関に)近いのは間違いない。また出直してこい・・・」と発破をかけた。
 上の番付をめざす力士の「壁になる」ことが横綱の役目だという。
一年ぶりの賜杯へ充実の内容で終盤戦を迎える。(朝日新聞、岩佐友)

よく書けている解説記事です。かねて、実力を備えた若い日本人
力士の台頭を待ち望んでいた白鵬は、やっと現れた高安に「大関になって、さらに厳しい稽古を積んで出直してこい。そして、オレに勝て」と心の中で叫んだのです。

・14日目 (5月27日)
白鵬 寄り切り 照ノ富士
白鵬翔、早々と38回目の優勝。
・5月27日
「初優勝の時よりうれしいでしょう。見事な再起の場所でした。
おめでとう! 何度でも言いたい。浅野勝人」

夏場所、千秋楽。(5月28日)
白鵬 寄り切り 日馬富士
白鵬翔、全勝優勝13回を記録。
型をもって、型にこだわらない奥義を一歩深める。
前人未踏の努力に感服!

・5月29日
「改めて存在の大きさを世間に示したのは爽快!
大相撲は白鵬翔なしには成り立たないことを再認識させて痛快!
浅野勝人」
・6月6日
「おはようございます。昨日、里帰り。
場所中、的確な励ましと勇気づけのメールをありがとうござい
ました。
1年ぶりに優勝して本当に良かったです。また名古屋を頑張ります。白鵬翔」

「メール有り難う。絶対に負けられない場所を全勝優勝するには心技一体の並はずれた能力が求められます。それを見事に示しました。
次の名古屋場所では“型をもって、型にこだわらない白鵬流奥義”をさらに進化させるよう期待しています。
モンゴルの大地で英気を養ってください。浅野勝人」

名古屋場所 (2017/7月9日 〜 3日)
・初日、前夜(7月8日) 
「一日、一日、全力で取り組めば、おのずと結果はついてくる。
浅野勝人」
「その心づもりでがんばります。白鵬翔」

・7日目(7月15日)
「連日、勝つにはどうしたらいいか、頭を使った変幻自在の取り口。“ 頭の相撲 ”を安心して観ています。
ところで、著書『宿命ある人々』― 第3章:大相撲、ちょっと聞けない、ないしょの噺 ― の反響がすこぶる良好。多くの人が白鵬翔の思慮深い人柄に触れて、相撲が強いだけではない、思いやりのあるやさしい人間性に感動しています。浅野勝人」

「宿命ある人々」の読後感余話。
かつて、偶然知り合って何度か食事を共にすることになったモンゴルの女性三人との雑談は、どこか不思議な話が多かった。
草原でオオカミと眼が合うと出世する。一族に幸運がもたらされる。実際そういう体験はままあるのだそうです。

白鵬が連勝した時、随分前のインタビューで、「この前、帰国した折にオオカミと道で出会って目が合ったから」と優勝の理由についてオオカミの話をしたのを覚えています。なんだかとてもいい話です。(中曽根康弘事務所、井出廉子)

・中日(7月16日) 白鵬 ただ一人、全勝で折り返し。
白鵬 すくい投げ 宇良(横転)
横綱と初顔合わせの宇良:土俵の横綱はオーラが凄かった。
自分は力を出し切ったが、やはり横綱は強かった。
横綱:宇良をウラ返したね。壁になれてよかった。

・7月16日
「 たのしく相撲を取っています。白鵬翔 」
・7月16日
「なによりです。どんな相手にも手加減は禁物。
横綱には、常に力を出し切った姿が求められます。浅野勝人」

・11日目(7月19日)
今日の一番に勝てば、魁皇の通算最多勝利1047勝(700敗)に並びます。
御嶽海 寄り切り 白鵬
白鵬、敗北に館内に座布団が舞う。
御嶽海:横綱はいつもと違う感じがした。緊張していたから隙ができたのかな。

・7月20日
「(緊張して思うように動けずに負けたのは)人間らしくていい。平常心、平常心! 浅野勝人」

・13日目(7月21日)
白鵬 押し倒し 高安
通算勝利1048勝(219敗)新記録達成。魁皇より42場所早い。
NHKのインタビューに白鵬:稽古で身体(からだ)身体(からだ)をいじめ抜いたのがこの
結果。相撲は奥が深い。

・7月21日
「大相撲の記録をことごとく塗り替えました。
努力の積み重ねの結晶に頭が下がります。
明日からは、果てしない自分との闘いが待っています。己(おのれ)己(おのれ)との
対決ほど険しい道はありません。心の安穏を祈ります。浅野勝人」

          (2017/7月21日  元内閣官房副長官)

◆浅野勝人著 「宿命ある人々」(時評社)
3章 白鵬翔とチンギス・ハカーン「ちょっと聞けない、ないしょの噺」の続編。


2017年07月15日

◆「宿命ある人々」―――第2弾!

〜赤松正雄の 忙中本あり 〜

(2017年7月13日 ・ 浅野 勝人)



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<孫悟空を追い続ける西域ひとり旅ー浅野勝人『宿命ある人々』を読む>


『宿命ある人々』ー耳慣なれない言い回しのタイトルの本に出会った。宿命とは何か。辞書によると、その環境から逃れようとしても逃れることができない、決定的な(生まれつきの)巡りあわせを指したり、立場上そうならざるを得ない泣き所を意味するという。運命と同義で、一般的には厳しい経緯を経て、暗い結末へと至る身の上を意味する。ここでは「人智では動かしえない定めある人たち」と云いたいのだと思われる。


この本の著者・浅野勝人は、元NHK解説委員にして、元内閣官房副長官、元外務副大臣(衆・参両議院議員)を経験したジャーナリスト出身の政治家。7年前に勇退してから、自ら立ち上げたシンクタンク、一般社団法人「安保政策研究会」の理事長を務めるかたわら、日中友好に深く貢献していることでも知られる。


著書も数多く、この読書録でも『日中秘話ー融氷の旅』『北京大学講義録』などを取り上げてきた。私には仰ぎ見る先輩のひとりだ。しかも現在、私も「安保政策研」のメンバーとなっており、宿縁浅からぬ人でもある。


▼この本は三部形式。一つは、比叡山延暦寺大阿闍梨・酒井雄哉師の生の講話集。二つは、「孫悟空」を追いかけて一人旅をした西域記。三つは、横綱・白鵬との交友録。全体を通じて「宿命ある人を追っての西域ひとり旅日記」の趣きだが、味わい深い話が満載されており、読み応えたっぷり。


最初の酒井雄哉師の講話は、序文に「ことばに尽くせない鬼気迫る貴重な人生訓」とある。7年かけて延べ1000日修行する千日回峰行。話には聞いていたが中身は知らなかった。


まず最初の4年間は毎日32キロほど、堂塔、霊蹟、野仏、草木を礼拝する行をしながら、嵐だろうが病気や怪我だろうが休むことなく歩き続ける。もし「行」に失敗すれば、山を去るか、自害するかが掟だ。決死の難行。


5年目に入って700日終わると、「お堂入り」をする。これは無動寺谷明王堂に籠り、9日間、断食、断水、不眠、不臥で不動真言と法華経全巻を唱える荒行のこと。このあと、赤山苦行、京都の大廻り(毎日84キロ歩く)などと続く。この修行、病に倒れず、死にもせずにやり通すことは至難の業という他ない。口の渇きのために、舌の上の一滴の水の処し方など、克明に記された体験記は是非直接読んでほしい。


酒井師はこの千日回峰を二回やった人だが、淡々と語る姿は筆舌に尽くしがたい。こうした修行を経たうえでの「『生きている』とは何なのか」のくだりなど、読むものはただただ息を吞むだけ。「今日の自分は今日でお終い。明日はまた新しい自分が生まれて、明日の新しい生活が生まれてくる」という。『一日一生』というこの人の代表作の題名が浮かぶ。さてさて、これほどの超人的な修行をしないと悟りの極意には到達できないものなのか。ただただ溜息が出てくる。


▼浅野は少年時代「西遊記」の孫悟空に憧れた。如意棒と筋斗雲を持ったスーパースターに、79歳の今も魅力に取りつかれている。孫悟空に関心を強く抱いた浅野は「三蔵法師、西域、インドの旅」に関する中国古典や資料、著書を読み漁るうちに、「孫悟空ってほんとは誰なのか」との謎解きに嵌っていく。


そのきっかけが慈覚大師・円仁が著した『入唐求法巡礼行記』。それをベースにやはり巡礼行をした酒井師の後を追いながら、「悟空」に迫ろうというのだから凄い。西安では、薦福寺、興福寺、大雁塔などを訪れ「悟空」との接点を探すが得られず、敦煌へ。


そこでは「敦煌研究院」の特別の計らいを得て、有名な「莫高窟」で、非公開の「第17窟」に入り貴重な壁画の数々を目にする。写真撮影が禁止されているために、悪戦苦闘したいきさつがなんともハラハラどきどきさせられる。さらに敦煌から東に広大なクムダク砂漠を越えて「楡林窟」へ。そこで、遂に「玄獎取経図」と出逢う。


そして現地での学者、研究員らとの白熱の討議。念願の孫悟空に逢ったのだが、そこからがまた難行苦行の連続。「ホントのところは孫悟空とは誰なのか」を追うことはとてもスリリングだが少々難しい。答はあえて秘しておこう。読んでいて酒井師の千日回峰を思い起こさせられるほど。かの肉体的修行に比してこちらは精神的苦行になぞらえられよう。


▼白鵬関と深い付き合いのある浅野は「横綱はチンギスハーンの生まれ変わり」というほどの入れ込みよう。「強い人が大関になる。宿命ある人が横綱になる」との白鵬関の発言。この言いぶりはいかにも日本的だという感じを抱く。


実は私は鶴竜関の姫路後援会の一員だったことがあり、現役時代には毎年春の大阪場所前に、彼や井筒親方(元逆鉾)らと一緒のテーブルを囲んだものだ。白鵬関とは違ってカリスマ性には乏しいものの、折り目正しいその佇まいは日本人そのものに思われ、私にはとても好ましい人だ。横綱だから、この人もまた宿命ある人と思いたい。尤もこのところ休場続きなのが心配される。


ところで、私は71歳の今日まで、宿命はあるとかないとかの次元ではなく、元々誰しもにあるものと捉えてきた。
つまり、人間はすべて宿命ある人々だ。ここでいう宿命とは、人間の持つ最高の能力という意味、つまり仏の命を指す。ただ、人としてその仏の命の現れ方(宿命の在り様)が千差万別なのである。ということから、己自身が自覚した宿命が、仮に弱くボロボロのものだったら、これを力強く颯爽としたものに変えねばならない。


「宿命転換」の原理なのだが、これは、今の仮の姿から、本来の姿としての仏の命に立ち戻らせねばならない。その立ち戻らせ方を教えてくれるのが「日蓮仏法」だと確信している。この辺り、一般的な「宿命論」を覆す新たな座標ではある。

(元厚生労働副大臣、元公明党安保調査会長)


2017年07月12日

◆新刊書「宿命ある人々」上梓

〜孫悟空―追っかけ“西域”ひとり旅〜

著者: 浅野勝人(安保政策研究会理事長)



公職引退後、5冊目を上梓しました。
「宿命ある人々」 孫悟空―追っかけ“西域”ひとり旅(時評社)
今回の著作は、政治に無関係の作品で、いわば新人作家の処女作です。

1章 生(い)生(い)き仏 ― 生(なま)生(なま)の講話 無の境地に達した『極限の行』
比叡山延暦寺の行者・酒井雄哉師の鬼気迫る話し。
2章 “孫悟空”って誰だ! 軍事戦略に抽(ぬ)抽(ぬ)かれた三蔵法師の地誌
孫悟空を追っかけ、タクラマカン砂漠を彷徨(さまよ)彷徨(さまよ)う。
3章 白鵬翔とチンギス・ハーン
ちょっと聞けない、大相撲 ないしょのいい噺(はなし)噺(はなし)。

今回の著書は、読者の評価が真っ二つに割れています。

★従来の外交・安保を軸にした政治がらみの著書は、いずれも内外の知られざるエピソードを満載。訓練された分析に説得力があり、貴重な内容が盛り込まれていた。今回は日中古代交流史や宗教に関心のある限られた人しか興味を持ちにくい無味乾燥の感が否めない。馴染(なじ)馴染(なじ)めない著書。(政治記者OB)
★専門外のテーマに挑んだ門外漢の力作。短期間に到達した深遠な真理は現場主義を貫いた成果だけではなく、真摯に生きてきた著者の全人格が反映された証(あかし)証(あかし)。人の生き方に少なからぬ感化を与える。79才作家の新人賞。(官僚OB)

あなたは、どちらの感想を抱かれるでしょうか。

著者としては、登場する親鸞、円仁、酒井雄哉、三蔵法師、孫悟空、チンギス・ハーン、文天祥、白鵬翔の一貫してぶれない壮絶な“生き様”を物語の軸に据え、
☆真剣に生きることの尊さ。
☆あきらめない性根。
☆慈しみ、愛する心の至福。を追い求めました。
だからタイトルを「宿命ある人々」としました。

発売から3週間。駄作と思った方々は、よほど親しい人以外、わざわざ嫌なことを言ってはおいでになりません。
メールや手紙を寄せて、褒めて下さる人の方がおのずと多くなります。一遍だけ全文を紹介させていただきます。

 「宿命ある人々」たいへん面白く2日間で読了しました。
特に感心したのは、間もなく80才の君が“少年の心”を失っていないことです。
永年、永田町の政治の世界にもまれていると、いつの間にか初々しい少年の心、素直な真心を失ってしまいがちです。

政治にとって、一番大切なのは“初々しさ”ではないでしょうか。
人生とは何か、生きるとはどうゆうことか、人との絆とは何か、それを忘れて政治は成り立ちません。

とりわけ、近頃の政治現状を散見すると、その肝心な点をすっかり忘れた数々の言動に愕然とします。心がカサカサに乾いていて、政治家であることよりも人間失格を思わせます。
その意味で、君には敬意あるのみです。

特に、酒井雄哉大阿闍梨の生の講話を集録していただいたのは、たいへん有り難いものでした。それにしても、一人の人間がこんな“行”をできるのですね。人間の肉体や精神の限界などという単純なものではありません。尊敬の念を超越した凄(すご)凄(すご)み、おそろしさを感じます。

孫悟空を訪ねての“ひとり旅”は、さすがに取材の訓練を重ねた元ジャーナリストの現場主義に引き込まれ、読みごたえがありました。
この本のハイライトです。
 
私は故平山郁夫画伯と親交があり、西域の古都・トルファンの粗描画をご本人からもらっています。井上靖先生のご息女とも縁(えん)縁(えん)があって、井上先生のシルクロードの紀行は全て読んでいます。
そんな縁(えにし)縁(えにし)から、君の労作は一層興味深く拝読しました。

大学で机を並べたのかきっかけとなって、半世紀をこえる付き合いにおよぶ「友」の所感です。日本を代表する超一流企業の首脳の一として、産業の充実進展に貢献した実力派でした。
(2017/7月11日、元内閣官房副長官)

2017年06月21日

◆『一隅を照らす』― 理性と良識を守る

浅野勝人 (安保政策研究会理事長)




ここに「一隅を照らす」 理性と良識を守って――河野謙三 著
“ 浅野大兄 恵友 謙三 ”と筆の署名があります。
参議院議長・河野謙三 書き下ろしの42年前の著書です。

参議院改革を旗印に議長になった河野謙三は、与野党伯仲の困難な国会運営に臨み、「七 三 の構え」を宣言して政府・自民党をけん制しました。

河野謙三は、著書の中で、
「法案審議に野党七、与党三の比重をかけていこうという“七三の構え”の提唱に対して、与党側からそれでは不公平だという声が出ている。“七三の構え”をとる私が第1党を軽視している、との非難である。
政府・与党は寛容と忍耐の精神で議場にのぞみ、野党に法案を質す機会と時間を十分与え、“親切にお答えしましょう”という態度が望ましい。そして、審議の過程で聞くべき意見があれば、思い切って原案の修正に応じる。野党には、ただ絶対反対だけではなくて、具体的、建設的な意見・創意を出す責任がある。そうゆう腹の太さが必要だろう。この平凡なルールが守られるようになったら与野党対決法案は、もっと容易に、しかもよりよい解決の道が見いだせるものと思う。“七三の構え”とはそうゆう意味に過ぎない。
私は議長就任の際、『野党と結託した』とずいぶん非難された。そのとき私はあえて『オレは世論と結託したんだ』と反論した。
このことは今でも変わりはない」

フランスの総選挙でマクロン大統領(39)の新党「共和国前進」が議席を6割獲得して圧勝。既存の二大政党、中道右派(共和党など)と中道左派(社会党など)は惨敗しました。

日本に当てはめてみると、「新党・前進」が2/3近い議席を獲って、自民党と民進党が惨敗して図です。

細かい分析結果は、パリ特派員に任せますが、マクロンの発言は「潔い」(いさぎよい)。アメリカのトランプ大統領に対しても、イギリスのメイ首相に対しても、異なるフランスの立場を自らのことばではっきり主張して引かない。しかも物言いが悪印象を与えない。「野党との対話」を重視して、世論と結託している政治姿勢がすがすがしく映っています。
河野謙三が生きていたら、合格点、しかも高得点の採点をしたに相違ありません。

通常国会が終わって、6月17日、18日に実施された世論調査が一斉に発表されました。厳しい数字を選んでみますと(これが世論の本音とみられますが・・・)
毎日新聞:内閣支持率―36%(5月調査から10ポイント下落)、不支持率―44%(9ポイント上昇)

共同通信:内閣支持率―44・9%(10・5ポイント急落)、不支持率―43・9%(8・8ポイント上昇)

朝日新聞:内閣支持率―41%(6ポイント下落)、不支持率―37%(6ポイント上昇)
特に気になるのは、調査対象全体の半数を占める無党派層の支持率が2割を割って、不支持率が49%に達している点です。支持・不支持がダブルスコア―です。さらに、予想されたこととはいえ、「加計学園」をめぐる安倍首相の説明に「納得できない」66%、内閣不支持層に限ると93%に達していることです。


私は、内閣支持率は一定の目安ではありますが、最重視はしていません。政局を展望するうえで重要な分岐点は、支持率と不支持率が明確に逆転する政治情況を判断のポイントと考えています。その意味では、「1強」のターニングポイントが危険水域にさしかかっているように見受けます。特に、大型選挙の帰趨を左右する無党派層の過半数が不支持というデータは、明らかに危険信号です。この数字は東京都議会議員選挙に「マクロン現象」となって端的に表れると私は予測しています。

但し、国政に関しては、従来と全く見解を異にするのは、「野党不在」の稀有な時代が続いている背景の存在です。だから内閣支持率の急変が自民党の支持率にさして影響していません。

現役の官僚が「役人の命に係わる人事を人質にするシステムをつくって脅すやり方には恐怖で身が縮(ちぢ)む。だからと言ってアレ(民主党政権)に戻るのだけはごめんだ。悩ましいんです!」と本音を語っています。
官邸の主たちが、野党不在に“安住”していると、市井の地盤に溜まっているマグマが破裂しないとも限りません。

9月の閣僚改造人事が立て直しのキィです。
今なら間に合う終列車!
(2017/6月20日 元内閣官房副長官)