2018年12月25日

◆ 恐怖の男 (ボブ・ウッドワード著)は、

守銭奴か、それとも勇者か?
                              安保政策研究会理事長  浅野勝人



待望の「 FEAR  TRUMP IN THE WHITE HOUSE 」の
翻訳本が出版されました。タイトルは「恐怖の男」。単行本532頁。
著者のボブ・ウッドワードは、「ウォーターゲイト事件」の調査報道でニクソン大統領を辞任に追いやった伝説の記者。現在ワシントン・ポスト副編集長です。

近頃、読書量(読書能力?)が落ちて、1冊読むのに従来の2倍時間がかかります。それでも、この著書に限って、わかりづらい箇所は遡(さかのぼ)って読み返しながら一気に読了しました。

事前に報道されたトランプ大統領の暴言と無知蒙昧ぶりを語る側近
の言動から暴露本と思い込んでいました。確かに大統領をめぐる赤裸々なやり取りは数え切れなくありますが、トランプ政治を事実に基づいて正確に評価しようとする“むき出しの”外交青書、防衛白書。経済・財政・通商白書を思わせる生々しいレポートと私は思いました。
著述は政策全般に及んでいますが、的を安保政策に限って目を通してみます。


「撤退する方法を考えなければならない。腐り果てている。アフガニスタンのやつらのために戦う甲斐はない」トランプ大統領のことばにマティス国防長官(人望厚い元海兵隊大将)はあきれて目を剥いた。
マクマスター安保担当大統領補佐官(陸軍中将)は、トランプ大統領に米軍のアフガン駐留の必要性を理解させるための会議を招集して、(2017/7月19日)目標を明らかにし、論点の大枠を説明した。トランプは退屈そうで、ろくに聞いていなかった。5分ほどたってから、急に口を挟んだ。
「アフガニスタンについてこうゆう馬鹿馬鹿しいことを17年聞かされてきたが、なんの実りもないじゃないか。同盟国は役に立たない。給料をもらうだけで戦わない幽霊兵士に金をむしり取られている。アメリカは年間13億ドルも出しているのに最悪だ。彼らはアメリカの金を使って遊んでいる。今後いっさい金は出さない」

軍最高幹部の将軍と上級顧問たちは25分間にわたって叱責された。
「アフガニスタンが闇の世界に戻り、第2の9 ・11事件が最初と同じ根幹から発生したと指摘されるような事態を招くことは放置できません」
マティスの説得に「われわれの本土や安全保障を護るために、あれをしろ、これをしろと金のかかる話を聞くのはうんざりした。あそこはめちゃくちゃだ。ぜんぶ嘘っぱちだ。機能する民主主義にはならない。完全に引き揚げた方がいい」とトランプが言った。
会議の後、「あの男はすごく知能が低い」ディラーソン(国務長官<日本の外務大臣> 2018/3月13日、解任)は、一同に聞こえるようにいった。大統領補佐官は、トランプと全面対決するしかないと悟った。(マクマスター、2018/3月22日 解任)

ジョン・ダウト大統領顧問弁護士は妻のキャロルに、「辞める」といった。トランプに電話して、辞めると告げた。(日頃、トランプが言っていることを言い返したかったが)それを面と向かっていうことはできなかった。“ あんたはクソったれの嘘つきだ ”(499頁)


2018/1月19日、マクマスターが、シチュエーション・ルームで国家安全保障会議を開いた。大統領と上層部 ― ディラーソン、マティス、ケリー(大統領首席補佐官)、ダンフォード大将(統合参謀本部議長)、ゲーリー・コーン国家経済会議委員長(2018/3月8日、辞任)― が韓国に関連する問題を話し合った。

トランプはすぐに要点を衝(つ)いた。「朝鮮半島に大軍を駐留させることで、われわれは何を得ているのか? 台湾を護ることでなにを得ているのか?」駐留費用と米軍部隊についての執念をまた持ち出した。
「アメリカは、アジア、中東、NATOで他国の防衛に金を注ぎ込んでいる。韓国がどうして友好国だといえるのか?」
マティスとダンフォードは、安定した民主主義を必要とする地域で、それが得られている。韓国は最強の防御拠点であり、利益はきわめて大きいと説明した。

特別アクセス・プログラム(SAP)の情報活動によって、アメリカは北朝鮮のミサイルの発射を7秒で探知できる。それが韓国にないと、アラスカの施設で探知できるのは発射から15分後になると改めて説いた。
マティスは、軍とインテリジェンスの能力を軽視されるのにうんざりして、「私たちは第3次世界大戦を防ぐために、こういったことをやっています」
落ち着いた声だったが、にべもない言い方だった。そこにいた何人もが、時間が止まったような心地を味わった。
トランプは、貿易赤字180億ドルと在韓米軍2万8,500人の駐留経費35億ドルの問題をけっして取り下げようとはしなかった。
「こんなバカげたことをしていなかったら、アメリカはもっと金持ちになれたはずだ。アメリカはいいカモになっている。集団防衛は、カモのいい例だ」
「国内インフラ向けに1兆ドル捻出することもできないのに、中東では、支出が7兆ドルにおよんでいる。だれかを護ることばかりに、私たちは金を払っている。ビジネスのことがまったくわかっていない。クソったれ揃いだ」
マティスには、NATOや中東の友好国や日本 ―ことに韓国― に、アメリカが喧嘩を仕掛ける理由が理解できなかった。
マティスは親しい補佐官に「大統領はまるで“小学校5、6年生のように振舞い、理解力もその程度しかない」と言った。


この時から11か月後、マティス国務長官は、今月20日(2018/12月)トランプ大統領に辞表を提出し、来年2月に退任することが決まりました。
辞任のきっかけは、トランプ大統領が、19日、シリアで過激派組織「イスラム国」と戦っている米軍2,000人の完全撤収を発表したことによります。同時にトランプ大統領は、アフガニスタン駐留米軍の半数にあたる7,000人を撤収するよう軍に指示したという報道もあって、ホワイトハウスと軍との方針が混迷しています。このためマティス長官は、同盟国の防衛や国際秩序を維持するアメリカの責任を強調して、最後の説得を試みましたが、入れられず、「抗議の辞任」をしました。12月は、ジョン・ケリー大統領首席補佐官(元海兵隊大将)の辞任に次いで2人目です。これで、マクマスター、ケリー、マティスと同盟重視・国際協調派の軍首脳はトランプ政権から姿を消しました。

「恐怖の男」を読み終えて、これではドナルド・ジョン・トランプを支持する人は一人もいなくなってしまうのではないかと思いました。
ところが、ベストセラーになった後のアメリカ、多くの人が「FEAR」を読んだ後のアメリカで、40%の人がトランプを支持しています。日本における安倍晋三と同じレベルの支持率です。

アメリカの人々は、歯に衣を着せない露骨な表現で、安保政策の転換をもとめ、移民の受け入れを拒否し、中国による知的財産の盗用をののしる大統領の政治姿勢に共感している人が少なくないからです。とりわけ、自由社会の平和と繁栄のために、自らの犠牲を顧みず、同盟国との友好関係を重視する国際協調を優先してきた歴代の大統領の政治にNOを突き付けるトランプの孤立主義、アメリカ第1主義に納得する人が少なくないからです。これまでの大統領は、エスブリシュメントに寄り添って内外の政策を決定、運営してきたと思い込んで反発し、庶民の味方と映るトランプに期待する人々。アメリカの人々は国際協調主義と孤立主義の狭間の中でどこへ向かう選択をするのでしょうか。
いったい、トランプは不動産王の守銭奴か、それともタブーに挑戦する勇者なのか。見極めに苦しむ私にあなたの存念を聞かせて下さい。(2018/12月23日、元内閣官房副長官)
at 07:48 | Comment(0) | 浅野勝人

2018年11月24日

◆諸行無常の鐘が鳴る − 『 ゴーン 』

(社)安保政策研究会理事長 浅野勝人


秋、恒例―北京の名門大学3校の講義を終えて戻ったら、日がな一日、TVから「ゴーン」「ゴーン」と鐘の音が聞こえます。
何事かと思いきや、日産のゴーン会長が逮捕されたそうな!
急いで、自動車業界を半世紀ウォッチングしてきた老朋友に電話して「日産 よくやった。アッパレ!」と申しましたら「あいつは日本人をバカにしていた。思い知ったか!」と彼は言いました。

東京地検特捜部、久しぶりの金星です。
実際に受け取った報酬を80億円過少に申告したことを捜査の端緒にして、特別背任・業務上横領を徹底的に洗い出して、全額返済させる。応じなかったら実刑重罪。日産は、回収したお金を日本在住の株主に限定して配当金に当てたらいい。株価上昇、大ヒットになります。
ルノーは実力を蓄えた日産との連携を反故にされたくない。冷静な話し合いによって、対等且つ相互尊重のアライアンスをまとめるチャンスです。日産・ルノー双方の代表団による協議は、ゴーンがいない方が過去にとらわれず、将来に向けた建設的な結論を得やすいはずです。

中国での講義は、いつもの北京外国語大学(東京外語大に相当)、首都師範大学(筑波大に当たる)、ことしは外交官を養成する大学、「外交学院」から初めて招かれました。外交学院は、周恩来総理の肝入りで創設された大学で、初代学長は、周恩来の右腕だった陳毅でした。正門の「外交学院」の文字は、自らの署名を添えた周恩来の直筆です。正面玄関には陳毅の銅像があります。外相というよりは人民解放軍創設者のひとり、誉れ高き武人の佇(たたず)まいでした。
どの大学も生徒は日本語学科の学部4年生と大学院生。外大と外院のテーマは「朝鮮半島非核化と日中の役割」 師範大は「日中協調の課題―環境と人口問題」です。3大学とも通訳無しでOK。驚きです。

トランプ大統領の批判をすると、喜ばない人はいないというのが今の中国だと私は感じていました。教養あるインテリ経済人と話していた折、話題がことトランプに及んだ途端「あいつは気違いだ」とわめきました。出口の見えない米中貿易戦争のあおりだと思います。
今回の大学の講義で、事実に基づいてドランプ大統領の政治姿勢、政策、思想信条、人物像について分析した後、「ドナルド・トランプは、世論を煽(あお)るデマゴーグの天才に過ぎない、現実主義者の不動産王なのか。歴代の大統領が誰もなしえなかったタブーに次々と挑む勇気ある指導者なのか。どちらだと思いますか」と10人の学生に質してみました。一人くらいは、へそ曲がりがいて「勇気ある指導者」と答えるかもしれないと予測していました。
結果は、不動産王6人、勇気ある指導者4人でした。
他に挙手をして、「両方兼ね備えているのでわからない」と答えた学生がいました。
若者の冷静且つ間口の広い判断に、私は予想をひっ繰り返されて一瞬言葉を失いました。
そして中国の未来は明るいと思いました。

それなのに、帰りの空港の通関のせいで、今回も「中国へ行く気が失せた」と失望させられました。
自宅へ帰ってトランクを開けたら、携帯電話の蓄電池が無くなっていました。没収したという用紙が入っていました。縦横4センチ、高さ2センチの10年以上も前の物で、没収しても役には立たない代物です。もちろん危険性は皆無。何のための没収か理解に苦しみます。もうひとつ、航空運賃は、区間ごと、クラスごとに定額料金を決めるべきです。国交省航空局に航空会社を指導するよう要請します。
今回、ANA・全日空、羽田〜北京往復料金、18万6730円。これまで数十回の経験によれば、これはビジネスクラスの料金です。だから私はビジネスクラスのつもり。ところが行きも帰りもぎゅうぎゅう詰めのエコノミー。エコノミーなら往復8万円位が相場です。ANAに酷いと苦情言ったら、料金は便ごとに乗客の混み具合によって決まる、その時、その時の相場だから仕方ないという。
これチョットぼったくり!
(2018/11月24日、元内閣官房副長官)
at 15:27 | Comment(0) | 浅野勝人

2018年09月25日

◆国民投票をクリアする唯一の9条改正

安保政策研究会理事長 浅野勝人


戦い終えて日は暮れて、憲法改正をめぐる齟齬(そご)だけが残りました。
なんとも収穫の乏しい戦でした。
安倍3選首相としては、9条を改正する発議をしないわけにはまいらないでしょう。国会は数の力でパスしても、国民投票で敗れたら退陣するのが憲政の常道です。

現行9条、1項、2項を手づかずにして、新たに3項を設けて自衛隊を加憲する「安倍案」は、無難だが安逸に過ぎます。

☆自衛隊が違憲だと思っている人は、1割もいません。従って、自衛隊の存在を憲法に明記することに反対する世論は10%以下と推定されます。公明党の加憲方式を尊重して3項を追加する手法は、確かに妙案のひとつです。1項、2項を残して平和主義を貫き、その上で自衛隊の存在を明記するのですから、国民投票で圧倒的に支持されるはずです。ところが、なんとも予測困難で、際どい結果になりそうだというのが私の見立てです。

☆2項に「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」とあります。
これをそのままにして、3項で「自衛隊を明記」したら、自衛隊は戦力ではないという自己撞着を憲法で表明することになります。自衛隊は、核武装、他国を攻撃する足の長い兵器を所有していないだけで、アメリカ、ロシア、中国に伍して世界有数の戦力を保有している軍隊です。どのような詭弁を弄しても「陸海空軍は保持しない」と矛盾します。後項優位の原則を振りかざしても、整合性の説明はつきません。あなた、孫に何と言って取り繕いますか。お爺ちゃんの信用を失うだけです。

こんな幼稚な事柄を先刻承知の上で「3項、自衛隊、加憲」を提議したと国民は容易に判断します。悪くすると愚弄していると受け取られかねません。小学生でもわかる矛盾に目を瞑(つむ)って自衛隊の必要性を優先してくれるかどうか。これが過半数の支持に疑問を抱く私の素朴な疑念です。


『 浅野試案 』は、改正を機に、理屈をこねないで、あっさりと簡単明瞭に、この根幹的矛盾の解消を試みています。
第2章 戦争の放棄
1項 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2項 前項の目的を達するため、国の交戦権はこれを認めない。
但し、わが国の存立を危うくする明白な事態に対処するため、必要最小限度の戦力は保持する。

☆1項は現状のまま残して、平和主義の根幹を堅持する。
1項の担保として、ことさら2項の「国の交戦権は認めない」を残す。その上で、「国を防衛するための戦力は保持する」と述べて、自衛隊の存在、維持、継続を明記する。
☆「戦力不所持」を削除して、実存する自衛隊との整合性をはかる。
☆必要最小限度の戦力とは、存亡危急に面したわが国の領域を守るに足る戦力を指し、他国を攻撃する目的の戦力は含まない。
これは集団的自衛権を一部認めた安保法制と矛盾しない。

素直に、国情および現下の国際情勢に合致する、わかり易い表現と組み立てが望ましいと考えた試案です。

― 幼児のいがみ合い
「なにが善戦だ」「党員の45%が私に投票したことをどう考えるかだ」 これは麻生太郎財務相と石破茂候補のいがみ合いです。
勝負が決まっている八百長相撲を見る気がしないのと同じで、まるで興味の湧かない総裁選挙でした。相も変らぬ派閥の合従連合による談合試合だからです。

6つある派閥のうち、頭数の多い順に1位から5位まで組めば勝つに決まっています。自民党国会議員(有権者)402人のうち安倍晋三を支持する出陣式に出席した332人にカツカレーをふるまったところ、得票数は329票だったから、3人食い逃げしたヤツがいる勘定になります。3人漏れたとみるか、3人しか漏れなかったとみるか、派閥の締め付けは中選挙区時代より、むしろ厳しくなっているように私には映ります。そうだとしたら小選挙区制のせいでしょう。あとは地方票がどんな配分に割れるか、わずかに興味を残すだけでした。

こんな政治環境の中ですから、総数807票のうち250票取ったら石破の目標達成。200票に届かなかったら石破の政治生命は危ういと見ていました。下限の200票は、国会議員の票は50そこそこ、安倍批判の多い地方票が150前後と踏んだ最低ラインです。
結果は、国会議員票73(18%)、地方票181(45%)= 254票(31%)


石破は「ひとり旅の合格点に達した。よくやった」と慰労できますが、個人的評価はポスト安倍に待つしかありません。緊急な課題は地方票の結果を自民党がどのように受け止めるかが肝要です。

はっきり言えることは、自民党員でさえ真っ二つに割れている政治意識を引きずったまま、来年の参議院選挙を迎える現実を直視して、なににどう対応するが真剣に分析、対処する必要を感じます。

それでも、戦後政治史の中で野党不在の稀有な政治情勢が続く限り、安倍自民党は勝利します。しかし、32ある1人区で野党が1本にまとまって統一候補を立てたら、情況は一変します。野党勢力が「オリーブの木」に結集して勝利した例がイタリアにあります。

政府・自民党は今回の総裁選挙の教訓を生かす努力を 即刻 始めることが肝要です。いがみ合っている暇などありません。(元内閣官房副長官)



at 06:58 | Comment(0) | 浅野勝人

2018年05月28日

◆復旦大学講義録(2018/5月23日) ーそのA

朝鮮半島非核化と東アジア情勢

浅野勝人   安保政策研究会理事長 

もともと国家間で見解が根本的に異なり、折り合いがつかない場合、解決方法は二つしかありません。戦争で結着をつけるか、話し合いで妥協するか。どちらかです。この道理から今回のケースを考察すると、アメリカと北朝鮮が交渉のテーブルに着くのは必然の結果といえます。

ただ、交渉の先行きについては、楽観できる情況にありません。
一方は、核・ミサイルの凍結・廃棄について段階的に小出しにして、その都度、有利な条件を引き出す条件闘争をするものと予測されます。もう一方は、今回こそ一挙に完全廃棄を実現すること以外は認めません。双方の思惑に溝があって、足して2で割ることが難しい困難な交渉になります。

このように東アジア情勢が流動化している重要な時に、中国の李克強首相が8年ぶりに日本を訪れました。そして安倍首相と首脳会談を行い、
☆日本と中国が一致して「板門店宣言」を支持し、朝鮮半島の非核化が実現するよう連携する。
☆中国のインフラ整備に日本企業が協力するプロジェクトを協議するため「日中官民フォーラム」を設立する。
☆また、日中二国間の安全保障体制について、東シナ海における両国の艦艇や航空機による偶発的な軍事衝突を避けるため、「海空連絡メカニズム」の運用を開始することに合意しました。これが実現しますと、日本の海上自衛隊、航空自衛隊と人民解放軍の海軍、空軍との間に専用連絡回線、ホットラインが設置され、両国の安全が確保されます。
☆その上、11年ぶりに中国から“トキのつがい”が贈られることになり、日中平和友好条約締結40周年の節目に、日中両国の関係改善を内外にアピールするふさわしい機会となりました。
日中両国が相互信頼をいっそう深め、協調して、朝鮮半島の非核化に寄与し、アジア・太平洋地域の平和と繁栄に貢献することは、日本と中国に課せられた共通の責任だと思います。

私は、一昨年の秋、子どもの頃からあこがれていた孫悟空を探しに
西域を旅しました。
西安で三蔵法師には たっぷり会えましたが、孫悟空は見つかりませんでした。それで敦煌に足を延ばしました。そして、タクラマカン砂漠東端に連なるクムタグ砂漠を越えて、楡林窟にたどり着き、遂に念願の孫悟空に会うことができました。

第3窟西壁全面を占める「普(ふ)賢(げん)菩薩図」の右端中ごろに、天竺(インド)からの帰り、白馬を連れた三蔵法師と供の孫悟空が五台山の方角に向かって合掌している「玄奘(げんじょう)取経図」が描かれています。
“遂に孫悟空に会えた”という感動が伝わってきました。
西域ひとり旅の帰途、チンギス・ハーンに会うために蘭州に立ち寄りました。モンゴルにはチンギス・ハーンの遺跡はありません。墓探しも禁じられています。ところが、タングート族の侵略から中国を守ったチンギス・ハーンの功績を讃えて、蘭州郊外の興隆山に慰霊の大雄寶殿が建てられており、大ハーンの大きな座像が祀られています。
登山口山門付近で掃除をしていた70才そこそこと見受ける男の人から、突然、話しかけられました。

「あんた、どこの人だね。中国人ではないみたいだ」
「東京から来ました。日本人です」
「やっぱりそうか。本物の日本人を見るのは初めてだが、こんな
ところまで何しに来たのかね?」
「ここにお祀りしてあるチンギス・ハーンをお参りに来ました」
「私のおじいさんや親の兄弟は、あらかた『9・18』か、『抗日戦争』で日本人に殺された。母親から日本人は鬼より怖い畜生だとさんざん聞かされて育ってきた。あんたを見て、ひょっとしたら日本人ではないかと思ったのだが、普通の人に見たので頭が混乱して、つい確かめたくなって声をかけてしまった」
「よく声をかけてくれました。とてもうれしいです。おっしゃる通り、かつて日本軍が中国を侵略して、多くの人を殺したり、傷つけたりしました。あれは当時の軍隊のやったことで、現在の日本人には関係のない昔の出来事だったとは申せません。日本民族の仕出かした過ちですから、当然、私たちに責任があり、懺悔(ざんげ)しています。

ただ、45年前、毛沢東、周恩来と日本政府代表との間で、これからはお互いに仲良くしていこうと誓い合いました。日本人は、その約束を守ってきたし、今後も守ります。
日本人は、ただ、ただ平和を願っている人ばかりです。二度と戦争はしないと誓っています」
「日本人でも、あんたみたいな“いい人”もいるんだ」

会話はそこで途切れました。
オマエはいい人のようだが、あとの日本人は悪いヤツばかりに違いないという余韻を引きずっていました。
長い間の怨念を払しょくするには、並大抵の努力では足りないと改めて教えられました。

中国に対する日本の寛容と忍耐の精神は、必ずしも十分とは申せません。ですが、私は日中国交正常化以来、46年間、ひたすら日中間の厚い氷を融かす「融冰之旅」を続けて参りました。私のような日本人は幾らもいます。
皆さんも、今日の出会いをきっかけに、私のあとに続いて、日中相互理解の深化に目を向けるよう期待いたします。(元内閣官房副長官)
at 13:31 | Comment(0) | 浅野勝人

◆復旦大学 講義録(2018/5月23日)− その @

「朝鮮半島非核化と東アジア情勢」
 浅野勝人  安保政策研究会 理事長

中国の名門3大学(精華大学、北京大学)のひとつ「復旦大学」から特別講義の要請をいただき、先日、上海を訪れました。
演題の「朝鮮半島非核化と東アジア情勢」は、大学側からの要望によります。2回に分けて、以下、皆様に報告いたします。


いま、世界がかたずを呑んで見守っているのは、6月12日、シンガポールで行われる予定のアメリカのトランプ大統領と金正恩朝鮮労働党委員長との米朝首脳会談の成りゆきです。
角突き合わせて、一触即発だった米朝関係は、平(ぴょん)昌(ちゃん)の冬のオリンピックをきっかけに一転して雪どけムードになりました。
これをきっかけに、日・中・米・韓・朝 5ヵ国の首脳が、目まぐるしく動きました。
3月26日、北京で行われた習近平・金正恩による中朝首脳会談から始まって、フロリダの日米首脳会談、「板門店宣言」を発表した南北トップ会談、さらに今月9日、東京を訪れた李克強首相を交えた日・中・韓 3か国首脳会談、引き続き行われた安倍晋三・李克強の日中首脳会談を経て、歴史的なトランプ・金正恩米朝首脳会談に収れんされていきます。

ただ、冒頭「行われる予定の米朝首脳会談」と申したのは、トランプ・金正恩両氏の独特のパーソナリティから何が起きるか予測困難だからです。すでに、金正恩は米韓軍事演習に不快感を示して、会談延期をほのめかしています。これを逆手に取りかねないのがトランプです。(案の定、講演後、やるやらないのゴタゴタが起きているのはご承知の通りです)

予定通り米朝首脳会談が行われた場合、この交渉では、先の「板門店宣言」で ☆核実験とICBM(大陸間弾道ミサイル)の試験発射は止める。☆核のない朝鮮半島の実現を目標とする。と表明した北朝鮮の非核化をめぐって、そのための条件と核廃棄へのロードマップの詰めが焦点となります。
北朝鮮は「金正恩体制の国家の安全保証」を核廃棄の前提条件にしています。一方、アメリカは、北朝鮮が核とミサイルの査察を認め、期限を区切って核を廃棄する完全非核化を譲れない条件としています。
特に、日本にとっては、北朝鮮は日本を攻撃目標とする中距離弾道ミサイルを500ないし600弾 所有していますから、従来のようなあいまいな結着は許容できません。金正恩が最高指導者に就任してから、ミサイル実験を86回、核実験をインドと同じ6回実施しています。もう必要のない試験発射をしないことを隠れ蓑にして、核保有国となることは絶対に看過できません。

幸い、中国は北朝鮮を国家として存続させたいと考えていますし、同時に朝鮮半島の非核化にも賛成の立場を明らかにしています。
中国は、まさに米朝双方の条件を満たす仲介役としてうってつけの存在です。中国の動向に世界の期待が集まるのは当然です。

実は、去年から今年にかけて、「米朝軍事衝突の可能性高まる」「米軍、4月に北朝鮮攻撃の観測強まる」と報道するメディアが少なくありませんでした。つい先日、書店の書棚に「米軍、6月に北朝鮮爆撃」というタイトルの新刊書を見つけ、いささか呆れましたが、これほど米朝関係は最近まで緊迫していたという証しだと思います。

ところが、私はこれまで一貫して「アメリカと北朝鮮の軍事衝突・戦闘はない」と早い段階からネットやさまざまな新聞、雑誌に明言してきました。
なぜそう判断したのか、理由を述べたいと存じます。

能力 × 意図 = 戦闘 という方程式で、米朝両国の関係を
分析してみます。
北朝鮮は、いずれアメリカが攻めて来ると思い込んでいるので、ミサイルと核を開発・所持することによって国を守ろうとしています。イラクやリビアは、弾道ミサイルと核兵器を持っていなかったから戦闘に負けて崩壊したと考えています。
つまり、北朝鮮はミサイルと核を装備して、アメリカの攻撃に備えている「専守防衛」の国です。口先では、ICBM(大陸間弾道弾)でアメリカ本土を火の海にすると言っていますが、そんな能力はないことを彼ら自身、分かっています。ですから、アメリカまで行って戦闘をする意図も能力もありません。

一方、アメリカは北朝鮮を殲滅しても、中国、ロシアとの関係を決定的に悪化させるだけで何のメリットはありません。同盟国の韓国、日本への脅威を排除するのが狙いですから、北朝鮮が東アジアの平和を乱す核とミサイルを凍結・廃棄すれば、目的を達したことになります。従って、アメリカも能力はあるけれども、進んで北朝鮮と戦う意図はありません。

以上の分析に従えば、北朝鮮が「国家の安全保障」を首脳会談開催の前提条件にして、アメリカとの交渉を選択したのは理にかなっています。
(元内閣官房副長官)
at 07:42 | Comment(0) | 浅野勝人

2018年04月27日

◆朝鮮半島非核化と東アジア情勢その情勢A

                          浅野 勝人



東北福祉大学客員教授 シンクタンク安保研理事長


もともと国家間で見解が根本的に異なり、折り合いがつかない場合、解決方法は二つしかありません。戦争で結着をつけるか、話し合いで妥協するか。この道理から今回のケースを考察すると、アメリカと北朝鮮、双方とも本心は戦闘は避けたいと思っているのですから、交渉のテーブルに着くのは必然の結果です。

アメリカ・ミドルベリー大学教授のジェフリー・ルイス東アジア研究主幹も「交渉が事態打開の唯一の方策」と述べて、私と同様、早い段階から「米・朝対話」を予測していました。

経済制裁、特に石油禁輸の締め付けに、内心、根を挙げている北朝鮮が話し合いを選択して「金日成(キムイルソン)金正日(ジョンイル)、金正恩(ジョンウン)、金(キム)3代王朝の維持」を首脳会談開催の前提条件に、朝鮮半島の非核化に応じる用意があるというポーズを示したのは、ひとまずうなづけます。

ただ、交渉の先行きについては、北はこれ見よがしの実験を中止すだけで、すでに保有している核は放棄しないどころか、秘かにプルトニュウムを増産したり、秘密裡に地下で核実験をするのではないかという指摘があって、「相互不信の溝」がたいへん深く、楽観できる情況にありません。一方は核こそ生きのびる唯一の手段と考えていますから、容易に手放すはずがありません。もう一方はそれだけは許さない。今回は騙されないと警戒していますから、足して2で割るのは極めて難しい状況にあります。
特に厄介なのは、「朝鮮半島非核化」という言葉の定義です。

トランプ政権はもとより、私たち日本は、「朝鮮半島の非核化」とは、北朝鮮が核・ミサイルを当面凍結し、期限を区切って放棄することと理解しています。

ところが、金正恩は「朝鮮半島全域を非核化することだ」と主張する腹づもりではないかと推測されています。つまり、自分たちが裸にな前に、在韓米軍も核とミサイルを放棄するのは当然である。朝鮮半島の危険が無くなれば、米軍は韓国に駐在する意義がなくなるのだから撤退すべきだ。それを見届けない限り非核化には応じられないという論理の組み立てをする懸念があります。

北朝鮮が、先に全ての核を放棄し、核の製造施設を廃棄しない限り、わたしたちは承服できません。アメリカ以上に日本にとっては死活問題だからです。見せかけかもしれない北朝鮮の言い分を真に受けて日本を見殺しにするような選択をアメリカに許すわけにはまいりません。卵が先か、鶏が先は、こりゃ誠に厄介です。話し合いがこじれて、真っ向から対立したら、何が起きるか予測困難な事態になり、今より悪化します。

☆このように、米朝交渉に根本的な食い違いが見えて、話し合いがこじれる可能性が出てくると、極東における核の分散という深刻な問題が惹起されます。これは、東アジアの平和と繁栄にとって最大の脅威となります。

金正恩は、今回の宣言の中で「核の不拡散」を約束していますが、これから始まる一連の交渉が長引いて、北朝鮮に非核化を承服させられそうにないという情況になった場合、韓国国内で台頭している核武装論がさらに助長される懸念があります。韓国ではすでに核武装すべきだが60%を占めており、極めて敏感に反応しています。それに刺激されて、台湾でも核武装を検討するという機運が出てくる懸念があります。

日本では、幸い、作らず、持たず、持ち込ませずの非核3原則を変更すべきだという議論は起きていませんが、「北」からのミサイルが日本列島の上空をたびたび通過する事態が続くと、放置できないという世論が台頭しかねません。極東における核の分散は、「核の均衡」を崩して、東アジア情勢を一気に不安定にします。
この情況だけは回避させなければなりません。

従って、事態を解決するポイントは、北朝鮮が求めている「金正恩体制の維持」を保障する確かな担保です。「北」がアメリカは信頼できないと主張した場合、「北」の安全を保障できる第三勢力は中国しかありません。

中国は、北朝鮮を国家として存続させたいと考えています。そして、朝鮮半島の非核化には賛成の立場を表明していますから、中国こそうってつけの存在です。中国が「朝鮮半島の非核化」とは北朝鮮の核の放棄というアメリカ、日本と同じ立場を鮮明にしてくれると、双方の条件を満たす仲介役となって問題解決へ一歩近づきます。

3月下旬、25日〜28日、金正恩本人が北京を訪れ、韓国、アメリカとの首脳会談の趣旨を報告すると共にアメリカとの交渉に臨み、いわば「後ろ盾」になってほしいと習近平国家主席に要請した点に、この間の事情がうかがえます。
そして、中国がその重要な役割を果たすためには、北朝鮮との信頼関係の再構築と共にアメリカ、日本、韓国との安全保障政策上の共通認識を深める必要があります。

その方策として、世界のGDP1位、2位、3位のアメリカ、中国、日本、3国相互間の安保体制を構築することが何より重要です。

そんなことができるわけがないと言わずに、まず安保政策上の相互の信頼関係を醸成する努力をしてほしいと念願します。
来月(5月)9日、東京で行われる安倍首相と李克強首相の首脳会談で信頼醸成をはぐくむ合意が成立すると聞いています。

両国の艦艇や航空機による偶発的な軍事衝突を避けるため、「海空連絡メカニズム」の運用を開始することになるものとみられます。これが実現しますと、海上自衛隊、航空自衛隊と人民解放軍の海軍、空軍との間に専用連絡回線、ホットラインが設置されます。

このように信頼が深まれば、次に「協商関係」の確立に発展させることができます。「協商」という概念は、なんらかの軍事的な偶発事故が発生した場合、直ちに双方で協議して、合意に基づいて事態に対処することを意味します。軍事的援助義務を伴わないという点では、日米安保条約のような軍事同盟とは異なりますが、協商関係の絆が強まれば、その中から同盟関係が生れる素地が出てくるにちがいありません。

ですから、私は、日本、中国、アメリカ3国の二等辺三角形を、日米安保条約が存在する日米同盟を底辺に、日中協商、中米協商によって構築することを提唱しています。そして、いずれ二等辺三角形が正三角形の同盟関係に発展して、アジア・太平洋地域の平和と安全を確かなものにする軍事安全保障の要となることを期待しています。
そこで、二等辺三角形構築の最大の障害になっている南シナ海をめぐる米中の軍事的睨み合いに触れておきます。

中国は南シナ海の南沙諸島(スプラトリー諸島)周辺の岩礁を埋め立てて人工島を造成し、軍事基地にして地対空ミサイルを装備しています。さらに西沙諸島(パラセル諸島)にも人工島を造ってミサイルを配備しています。
こうした中国の南シナ海の軍事拠点化にアメリカは神経を尖らせており、戦艦を派遣して中国をけん制しています。

確かに南シナ海と西太平洋を繋ぐ地点に造られたミサイルを装備した軍事基地はアジア各国の脅威ですが、冷静に考えてみると、米軍は東シナ海を望む沖縄、太平洋のグアム島、インド洋のディゴガルシア島に圧倒的な物量を誇る空軍を中心に海兵隊も駐留する巨大な基地を所有して、地球を北から南までタテの線で抑えています。ですから、南シナ海の中国の基地は米軍独占軍事ラインに打ち込まれたくさびの構図です。まあ、いわばどっちもどっちです。

そこで、米中両大国が、軍事力とは戦争をするためのものではなくて、戦争をさせないためのものという理解の上に立って、相手の実力を認め合い、お互いに安全を保障し合う関係を築けば、二等辺三角形の構築は不可能ではありません。それがアジア・太平洋地域の平和と繁栄を担保する大国の責任だと考えます。

at 09:00 | Comment(0) | 浅野勝人

◆朝鮮半島非核化と東アジア情勢

                                                    浅野 勝人


東北福祉大学客員教授  シンクタンク安保研理事長 

現在(今)、世界中がかたずを呑んで見守っているのはアメリカのトランプ大統領と金正恩(キム ジョンウン)朝鮮労働党委員長の米朝首脳会談です。5月下旬なしは6月初旬、ストックホルムと言われていますが、まだ日取りも場所も決まっていません。
4月〜5月にかけて、世界主要国の首脳が目まぐるしく動きます。

まず17日、フロリダで安倍・トランプの日米首脳会談。明後日(4/27)、朝鮮半島中央の南北境界線の韓国側「平和の家」で韓国の文在寅大統領(ムンジェイン)と金正恩委員長の南北首脳会談。そして、来月9日、東京で行われる安倍・李克強の日中首脳会談を経て、米朝首脳会談へと連なっていきます。

朝鮮半島の非核化をめぐるダイナミックな動きが世界の耳目を集めていますが、こうした世界の世論の先手を打って、金正恩が爆弾宣言をしました。
20日、朝鮮労働党委員会総会で「核実験や弾道ミサイルを試験発射する必要が無くなった。核は凍結する」と述べて、核実験とICBM(火星15号。アメリカまで届く大陸間弾道ミサイル)の試験発射を中止し、有名な豊渓里(プンゲリ)の核実験場を廃棄すると宣言しました。

アメリカに対して核攻撃はしないと明言した発言によって、アメリカはひとます安心して満足かもしれませんが、日本の安全が保障されたことにはなりません。凍結とは、所有しているものを使わないという意味ですから、当面、核を使うつもりはないので実験はしないと言っているだけです。すでに保有している核兵器と弾道ミサイルを放棄するとは匂わせてもいません。特に韓国、日本、グアム向けの短距離および中距離弾道ミサイルの扱いにはひと言も触れていません。

廃棄すると宣言した豊(プン)渓里(ゲリ)の核実験場は、過去6回の核実験でガタが来て、山崩れがおきた模様でもう使い物にならなくなっています。

極東情勢をどこまで深く認識しているか疑わしいトランプは、「北朝鮮は非核化に応ずると宣言した。世界にとって喜ばしいことだ」とブログに書いて、非核化の意味が分かっていない、凍結と放棄の区別さえ理解していない困った大統領と揶揄されました。

思慮の深い軍事プロのマテイス国防長官がいますから、うかつな対応はしないと思いますが、金正恩が核弾頭を搭載したICBMは打たないと約束するだけで「これでアメリカに届く核兵器はない」と安心して、トランプに手を打たれたら大変です。日本にとっては最悪なシナリオになります。なぜなら、沖縄をはじめとする日本国内の米軍基地や日本の主要都市を狙う中距離弾道ミサイル「ノドン」が温存されるからです。仙台も例外ではありません。攻撃の対象になります。

この中距離弾道ミサイルが今のまま放置されたら、日本は絶えず北朝鮮の恫喝に晒されます。私たちは既に東北と北海道の上空を北の弾道ミサイルが通過したのを経験しています。

主要国首脳間の交渉によって、北朝鮮から核が取り除かれて朝鮮半島の非核化が実現して、東アジアが安定した政治環境になって繁栄するか。見せかけの核放棄が結局はバレて話し合いが行き詰り、アメリカが北朝鮮を攻撃しかねない物騒な情況の下で東アジア情勢がいっそう不安定になるか。
これが今日の講義のテーマです。

☆ 今日の情況に至った経緯を、まず、トレースしてみます。
角突き合わせて、一触即発だった米朝関係は、平(ぴょん)昌(ちゃん)の冬季オリンピックをきっかけに一挙に雪どけムードになりました。

北朝鮮の招きで平壌(ぴょんやん)を訪れ、金(キム)正恩(ジョンウン)と会った韓国政府代表が、ホワイトハウスにトランプ大統領を訪(たず)ねて「問題解決のため、首脳会談をしたい」という金正恩の伝言を伝えたところ、トランプは即座にOKと回答しました。

「愚かなロケット・ボーイ」「老いぼれのたわごと」とののしり合っていた両首脳の従来の関係から想定して、世界中びっくりしました。
アメリカと日本の国内には、「北朝鮮と話し合ったところで騙されるだけ。もうこれまでしばしば体験してきた北の時間稼ぎ」という世論が多いのが実情ですが、私は、やってみなければわからない。やる前からダメと決めつけるのは正しい判断とはいえないと思っています。案外、常識外れの変わり者同士、気が合うかもしれません。

実は、去年から今年にかけて、「米朝軍事衝突の可能性高まる」「米軍、4月に北朝鮮爆撃」と報道するメディアが少なくありませんでした。この予測が当たっていたら、今頃はもう戦闘が始まっていたことになります。

そんな剣呑な状況が、なぜ、急転直下話し合い路線に転換したのでしょうか。
私はこれまで一貫して、早い段階から「米朝軍事衝突・戦闘はない」とたびたびブログをネットで明らかにし、さまざまな専門誌にも書いてきましたので、なぜ戦闘はないと判断したのか、その理由を述べたいと存じます。
能力 × 意図 = 戦争 という方程式で、米朝両国の関係を
分析してみます。

まず、北朝鮮は、いずれアメリカが攻めて来ると思い込んでいるので、ミサイルと核を開発・保持することによって国を守ろうとしています。イラクとリビアは、弾道ミサイルと核を持っていなかったから戦闘に負けて崩壊したと考えています。

つまり、北朝鮮はミサイルと核を装備して、アメリカの攻撃に備えている「専守防衛」の国です。口先では、ICBM(大陸間弾道弾)でアメリカ本土を火の海にすると言っていますが、そんな能力は必ずしもまだ完成していないことを彼らは分かっています。ですから、アメリカまで戦争に行く意図も能力もありません。

もっと具体的に核以外の能力についていうと、軍用機は米軍1万3,700機、北朝鮮1,000機弱、空母に至っては米軍10隻に対して北はゼロ。大人と子どもの戦さになりますから、自ら撃って出てアメリカと闘い自滅するつもりは北にはありません。
かつて、無謀にも、己の能力をわきまえず、相手の力量の研究も十分ではないまま、真珠湾を奇襲攻撃してアメリカとの戦闘に突入して、国中焼け野原になってやっと目が覚めたあの当時の日本とは違います。

北朝鮮は、もっぱら、核とミサイルで防備してアメリカの攻撃から国を守ろうとしている「専守防衛体制」の国です。
但し、やるならやってみろ。同盟国の韓国と日本を道ずれにするぞとすごんでいます。そして、困ったことにその能力は持ち合わせています。

一方、アメリカは力に任せて北朝鮮を殲滅しても、その結果、中国、ロシアとの関係を決定的に悪化させるだけで何もメリットはありません。アメリカ本土の保全と同盟国の韓国、日本への脅威を排除するのが目的です。北がICBMを開発して「ワシントンを攻撃する」と大それたことを言うものですから放置できないだけで、「北」が東アジアの平和を乱す核とミサイルを当面凍結・いずれ放棄しさえすれば、目的を達したことになります。ですからアメリカも戦闘能力はあるけれども、あえて何の得もない戦を自ら進んでする意図はありません。ですから好き好んで戦争はしません。

特に、北朝鮮は、日本と韓国、グアムを攻撃する中距離弾道ミサイルを500ないし600基、国内あちこちに分散して地下に隠し持っています。アメリカは、北の主な核・ミサイル基地や製造・貯蔵庫は掌握していますが、スパイ衛星に見つからないように、国内あちこちの地下にバラバラに隠しているものを一挙に全て破壊することは到底不可能です。

破壊を免れた中距離ミサイルが、開発済みと言われる小型核爆弾を搭載して、同盟国の韓国や日本を攻撃してきたら、大打撃を被る恐れがあります。だから、アメリカは「北」との戦闘には極めて慎重です。

それにもっと嫌なものを、北はミサイルにのせることができます。
生物化学兵器です。平壌(ピョンヤン)生物化学研究所。定州(チョンジュ)市と文川(ムンチョン)市に秘密研究所があり、炭疽菌(その恐ろしさはオーム真理票で経験済み)、赤痢菌など13種類の生物化学兵器を製造しています。政治犯を使って人体実験をしているそうですし、未確認情報によると総量は2,500トンを超えるとみられています。
「同胞の住む韓国に使用するのは躊躇するが、日本にはためらわない」と金正恩が言っているという情報が伝わっていますからアメリカも北には軽々に手を出しません。

以上の分析に従えば、能力 × 意図 = 戦争という方程式は、米朝とも成り立ちません。ですから、アメリカと北朝鮮との戦争はないと私は判断した理由です。

しかし、20日の金正恩発言は、まだ開発が十分とは言えないICBMの試験発射を中止し、核の実験はもうしないと明言しただけで、すでに保有している核爆弾と近隣諸国を攻撃できる中距離弾道ミサイルについては保有し続けるつもりと見受けられます。アメリカに対して核攻撃はしないと言っているだけで、非核化つまり核の放棄は約束していません。

将来、度重なる交渉の結果、結局、非核化の合意に至らなかったり、仮に、北朝鮮が核・弾道ミサイルの凍結・放棄に合意したとしても、それが見せかけのポーズで、約束を破るようなことがあった場合は、方程式自体が崩壊しますから、私の理論は吹き飛びます。
at 09:00 | Comment(0) | 浅野勝人

2018年04月06日

◆考察 ― 憲法9条改正試案

          安保政策研究会理事長 浅野勝人
   

一般社団法人「安保政策研究会」を、アジア・太平洋地域の平和と繁栄を調査・分析するシンクタンクとして立ち上げたのは、平成23年6月2日のことです。ですから、7年が経過したことになり、この間、61回の研究会を重ねてまいりました。

研究会は、もっぱら自由闊達な討論を楽しむサロンとして運営され、なんらかのテーマについて見解を取りまとめてアピールするような 宣伝目的は持ち合わせておりません。

ただ、外交・安保政策を語り合っていますと、時に触れ、折に触れて、憲法9条と関連する言及が少なくありません。憲法9条は内外の政策と直接、間接に深く関わっていますから当然のことです。従って、そのあり様について議論することは極めて重要です。

自民党内の改憲論議もそれなりに進捗している模様なので、早晩、国会の舞台に登場することと思われます。
そこで、安保研としても「9条改正試案」をまとめてみたいと思い立ち、集中討議をしましたが、十人十色、まとまるどころか、バラバラでした。このテーマについてもメンバー各自の理念を尊重する安保研の良さが現れました。いつもの報告書(安保研リポート)通り、投稿をそのまま掲載いたしますので、楽しみに待ってください。


「9条改正―安保研理事長試案」

第2章 戦争の放棄

第9条1項 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
(現状のまま)

2項 前項の目的を達するため、国の交戦権はこれを認めない。
但し、わが国の存立を危うくする明白な事態に対処するため、必要最小限度の戦力は保持する。

<註>
☆平和主義の根幹は堅持する。そのため、後項優位の原則を踏まえて、2項に「国の交戦権は認めない」をことさら残す。
☆国家の存立を担保するため、必要最小限の戦力の保持(自衛隊)を明記する。
☆集団的自衛権の行使は、厳しく制限し、我が国領域の安全が脅かされる明白な緊急事態に限定する。従って、交戦権とは、他国への侵略等日本周辺以外への武力侵攻を意味する。
☆改正を機に「戦力不保持」を削除して、実存する自衛隊との整合性を担保する。

特に、憲法が実態を無視して、虚偽を表記していると児童、生徒に受け取られかねない表現を削除。―「陸海空軍、その他の戦力はこれを保持しない」といっても現実に保持している。義務教育で「自衛隊は戦力(軍隊)ではない」と詭弁を弄するのは好ましくない。

☆手直しは最小限に留め、自民党案のように理屈をこね回すのは感心しない。内閣総理大臣が自衛隊の最高指揮監督権を持つことは改めて憲法に書かなくても自衛隊法(第7条)で決まっている。妥当な憲法解釈と関連法案の補充で対応する方がいい。

☆素直に、国情および現下の国際情勢に合致する、わかり易い表現と組み立てが望ましい。

問題点:国民投票で否決された場合、自衛隊の存在をどのように
位置づけるか。集団的自衛権の行使を一部認めた安保法制をどう扱うかにつては、
☆憲法への明記が否定されるだけで、自衛隊は合憲と認めている現状を堅持する。従って、改正憲法が否決されても、法的存在に変わりはない。
☆現行安保法制該当部分は白紙とする。

以上(元内閣官房副長官、元NHK解説委員)
at 08:38 | Comment(0) | 浅野勝人

2017年12月12日

◆本命の訪朝 ― 緊張緩和の糸口を期待!

                           浅野勝人 安保政策研究会理事長


世の中に無用の長物ふたつ有り
    国連安保理と教育委員会  詠み人知らず

 北朝鮮が弾道ミサイルを発射するたびに、国連安全保障理事会は緊急会議を招集する。そして、アメリカが「北朝鮮に対する圧力をさらに強化しよう。中ロは石油の全面禁輸に踏み切るべきだ」と主要各国の協調を求め、日本は全面協力と賛成し、中ロは「協力はするが、話し合い路線を放棄すべきでない」とやんわり身をかわす。お題目の繰り返しで、北朝鮮が初めてアメリカ本土に届くICBMの発射実験(11/29)をした折にもアメリカ代表の演説のトーンが一段と高まっただけです。

ちょうど、小学生、中学生がいじめを苦に自殺した事件が発生すると、当該市町村の教育委員会は、当初、「いじめとは無関係」と学校を擁護し、かばい切れなくなると「二度とこのようなことが起きないよう注意を喚起したい」と他人事のようなセリフを繰り返すだけで、まるっきり役に立ちません。

口先だけで役に立たない代名詞と思っていた国連が、北朝鮮へ事務次長(政治局長)を派遣しました。
ジェフリー・フェルトマン国連事務次長は12月5日〜8日まで平壌を訪れ、北朝鮮政府幹部と核・ミサイル開発・発射実験によって緊迫している朝鮮半島情勢について協議しています。

6日には朴明国(パクミョングク)外務次官と会談しました。
会談の冒頭、朴次官は「このようにせっかくお迎えしたので、真摯に話し合おう」と述べ、朝鮮中央通信は「互いが関心を持つ問題について意見交換した」とだけ伝えました。
フェルトマン事務次長と李容浩(リヨンホ)外相との会談は決まっていますが、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との会見が今日、帰国するまでに実現するかどうか、今の時点(8日、午前0時)では不明です。

核・ミサイル開発を禁じる国連安保理の決議を履行するよう求める国連の立場とアメリカを中心とする国連の北朝鮮制裁決議に反発する「北」の主張とは真っ向から対立しています。

従って、緊張緩和のきっかけが簡単につかめる情況ではありませんが、今回のフェルトマン平壌訪問は、今年の9月、北朝鮮から「政策対話」の要請を受けて、国連が派遣して実現した経緯(いきさつ)を重視する必要があると考えます。国連事務総長報道官が「訪問は北朝鮮による以前からの要請に応じたもの」と舞台裏を明かしているのは意味があるとみるべきです。
中国やロシア、もちろんアメリカに対してわずかな弱みも見せられない北朝鮮としては、自らの言い分を主張する相手に国連を選んだと推測すれば、緊張緩和に向けた話し合いの糸口になるのではないかと期待されます。今回の出会いが、国連をいわば仲介役にするきっかけとなれば大成功です。

同時に「米・北」軍事衝突の懸念も無視できない情況にあります。
仮に軍事衝突に至った場合、米軍の軍用機は1万3,700機余り、空母10隻に対し、「北」は1,000機にも満たず、空母は1隻もありません。戦力においては比較になりません。ところが、「北」は韓国、日本をカバーする中距離および準中距離ミサイルを200発余持っており、各地方に分散して地下に隠しています。開戦と同時に1基残らず破壊するのは軍事技術的に困難です。

アメリカの軍事専門家は「北朝鮮は開戦初日に弾道ミサイルに生物・化学兵器を搭載して撃ってくる。それで韓国、日本は大パニックになる」と指摘しています。

ハーバート大学調査チームの分析によると、
平壌の生物技術研究所、定州市、文川市に秘密研究所があって、炭疽菌、赤痢など13種類の生物兵器を製造している。政治犯を使って生物兵器の人体実験を行っている可能性を否定できないといいます。
また、化学兵器は10か所余りの施設で製造されており、総量は2,500トンを超えるとみられています。
今年2月、異母兄・金正男氏を暗殺したのは化学兵器・VXガスで、「いつでも使える」と世界に誇示しました。

極めて危険な北朝鮮の核・ミサイルを警戒して、韓国では核武装を60%の人が支持しています。
日本政府も戦闘機に長距離巡航ミサイルを搭載する方針を固め、準備する手はずを決めました。もちろん朝鮮半島が射程に入ります。撃たれる直前に撃つ適地攻撃も可能です。
確かに専守防衛の基本方針との整合性が問われますが、生物化学兵器の脅威から国民の生命を守るには理屈ばかり言ってもおられません。

北朝鮮は、核・ミサイル軍事強化戦略が東アジアにおける核拡散と「北」包囲網戦力拡充に伴う軍事技術の更新を促し、自らの国家存立の基盤を危うくするブーメランであることに気付くべきです。

国連のグテレス事務総長は、13日に東京を訪れ、14日には安倍首相と北朝鮮対策を協議することになっています。
「北」に対するアメリカ式軍事および経済圧力一辺倒を支持する姿勢だけではなく、東アジアの安定に占める北朝鮮のポテンシャルと合わせて「北」の国民生活向上の方策を模索する国連の対応を真剣にバックアップするのが望ましいと考えます。
(元内閣官房副長官)
at 09:53 | Comment(0) | 浅野勝人

2017年12月08日

◆本命の訪朝 ― 緊張緩和の糸口を期待!

浅野 勝人 安保政策研究会理事長


世の中に無用の長物ふたつ有り
    国連安保理と教育委員会  詠み人知らず

 北朝鮮が弾道ミサイルを発射するたびに、国連安全保障理事会は緊急会議を招集する。そして、アメリカが「北朝鮮に対する圧力をさらに強化しよう。中ロは石油の全面禁輸に踏み切るべきだ」と主要各国の協調を求め、日本は全面協力と賛成し、中ロは「協力はするが、話し合い路線を放棄すべきでない」とやんわり身をかわす。お題目の繰り返しで、北朝鮮が初めてアメリカ本土に届くICBMの発射実験(11/29)をした折にもアメリカ代表の演説のトーンが一段と高まっただけです。

ちょうど、小学生、中学生がいじめを苦に自殺した事件が発生すると、当該市町村の教育委員会は、当初、「いじめとは無関係」と学校を擁護し、かばい切れなくなると「二度とこのようなことが起きないよう注意を喚起したい」と他人事のようなセリフを繰り返すだけで、まるっきり役に立ちません。

口先だけで役に立たない代名詞と思っていた国連が、北朝鮮へ事務次長(政治局長)を派遣しました。
ジェフリー・フェルトマン国連事務次長は12月5日〜8日まで平壌を訪れ、北朝鮮政府幹部と核・ミサイル開発・発射実験によって緊迫している朝鮮半島情勢について協議しています。

6日には朴明国(パクミョングク)外務次官と会談しました。

会談の冒頭、朴次官は「このようにせっかくお迎えしたので、真摯に話し合おう」と述べ、朝鮮中央通信は「互いが関心を持つ問題について意見交換した」とだけ伝えました。

フェルトマン事務次長と李容浩(リヨンホ)外相との会談は決まっていますが、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との会見が今日、帰国するまでに実現するかどうか、今の時点(8日、午前0時)では不明です。

核・ミサイル開発を禁じる国連安保理の決議を履行するよう求める国連の立場とアメリカを中心とする国連の北朝鮮制裁決議に反発する「北」の主張とは真っ向から対立しています。

従って、緊張緩和のきっかけが簡単につかめる情況ではありませんが、今回のフェルトマン平壌訪問は、今年の9月、北朝鮮から「政策対話」の要請を受けて、国連が派遣して実現した経緯(いきさつ)を重視する必要があると考えます。国連事務総長報道官が「訪問は北朝鮮による以前からの要請に応じたもの」と舞台裏を明かしているのは意味があるとみるべきです。

中国やロシア、もちろんアメリカに対してわずかな弱みも見せられない北朝鮮としては、自らの言い分を主張する相手に国連を選んだと推測すれば、緊張緩和に向けた話し合いの糸口になるのではないかと期待されます。今回の出会いが、国連をいわば仲介役にするきっかけとなれば大成功です。

同時に「米・北」軍事衝突の懸念も無視できない情況にあります。

仮に軍事衝突に至った場合、米軍の軍用機は1万3,700機余り、空母10隻に対し、「北」は1,000機にも満たず、空母は1隻もありません。戦力においては比較になりません。ところが、「北」は韓国、日本をカバーする中距離および準中距離ミサイルを200発余持っており、各地方に分散して地下に隠しています。開戦と同時に1基残らず破壊するのは軍事技術的に困難です。

アメリカの軍事専門家は「北朝鮮は開戦初日に弾道ミサイルに生物・化学兵器を搭載して撃ってくる。それで韓国、日本は大パニックになる」と指摘しています。

ハーバート大学調査チームの分析によると、
平壌の生物技術研究所、定州市、文川市に秘密研究所があって、炭疽菌、赤痢など13種類の生物兵器を製造している。政治犯を使って生物兵器の人体実験を行っている可能性を否定できないといいます。
また、化学兵器は10か所余りの施設で製造されており、総量は2,500トンを超えるとみられています。

今年2月、異母兄・金正男氏を暗殺したのは化学兵器・VXガスで、「いつでも使える」と世界に誇示しました。

極めて危険な北朝鮮の核・ミサイルを警戒して、韓国では核武装を60%の人が支持しています。
日本政府も戦闘機に長距離巡航ミサイルを搭載する方針を固め、準備する手はずを決めました。もちろん朝鮮半島が射程に入ります。撃たれる直前に撃つ適地攻撃も可能です。
確かに専守防衛の基本方針との整合性が問われますが、生物化学兵器の脅威から国民の生命を守るには理屈ばかり言ってもおられません。

北朝鮮は、核・ミサイル軍事強化戦略が東アジアにおける核拡散と「北」包囲網戦力拡充に伴う軍事技術の更新を促し、自らの国家存立の基盤を危うくするブーメランであることに気付くべきです。

国連のグテレス事務総長は、13日に東京を訪れ、14日には安倍首相と北朝鮮対策を協議することになっています。

「北」に対するアメリカ式軍事および経済圧力一辺倒を支持する姿勢だけではなく、東アジアの安定に占める北朝鮮のポテンシャルと合わせて「北」の国民生活向上の方策を模索する国連の対応を真剣にバックアップするのが望ましいと考えます。
(元内閣官房副長官)
at 08:14 | Comment(0) | 浅野勝人

2017年12月03日

◆「相撲協会、横審 有って、力士無し」でいいのか

浅野 勝人

大相撲九州場所(2017/11月12日〜26日)

初日、白鵬上手出し投げで琴奨菊 転倒。

「まったく不安なし。このまま平常心で前進! 前進! 浅野勝人」

「メールありがとうございます。心が落ち着きます。白鵬翔」

場所前の10月25日、夜、巡業先の鳥取市内で行われたモンゴル出身力士の懇親会の席上、横綱・日馬富士が幕内貴ノ岩をビール瓶で殴打して怪我を負わせる事件が起きました。
被害届を受理した鳥取県警が捜査に着手しました。
同席していたモンゴル・グループの「長」の立場にある白鵬の対応はどうであったか、問われます。

「和田さん、警察の捜査で事実が明らかになりますから、“ 警察から事情を聴きたいという要請があれば、ありのままを話します ”という態度がよろしいのではないでしょうか。それ以外、場所中でもあり、白鵬は事件についてしゃべらない方がいいと思います。浅野勝人」(11月16日)

「ビール瓶では殴っていないとマスコミに話したようですが、今後は沈黙を守ると思います。
報道が先行して事態を複雑にしています。事実関係が肝心な点で報道とは異なるようです。
ビール瓶を握ったけれども滑り落としてしまったようです。ビール瓶で殴っていたら、血だらけになって頭蓋骨を骨折しかねない。カラオケのリモコンと平手で何発も殴ったが、馬乗りになったということもないらしい。白鵬は暴行を止めて、日馬富士を別の部屋に連れ出して事態を収めたようです。どうであれ、暴力は許されません。和田友良」(註:和田友良は白鵬の義父、浅野の友人)

白鵬翔に

「各種の取材に対しては、“ 警察から事情を聴きたいという要請があれば、ありのままを話します ” これ以外のことは何も言わない。もっぱら取組、勝負に集中する。この対応がよいのではないでしょうか。浅野勝人」(11月17日)

「正(まさ)しくその通りです。そう思います。白鵬翔」

14日目、40回目の優勝決める。自らを信じていっさい動ぜず。不動の取り口。

「おめでとう!今場所の優勝はことのほか意義が深い。
☆力士としての限界(再起をかけた場所でした)を無限にしました。
☆力士からの“ 物言い ”(嘉風との一戦)の正当性を、優勝することで示しました。浅野勝人」

ところで、日馬富士暴行事件で影が薄くなってしまいましたが、11日目、< 関脇 嘉風 寄り切り 横綱 白鵬 > 奇妙な取り組みがありました。
組んだ直後、嘉風の突きに白鵬が客席のど真ん中まですっ飛ばされました。その直前、土俵上の白鵬は右手で「待った」の合図をして、相撲を取るのを止めていました。嘉風自身「横綱は力を抜いていた」と述べています。そうでなければ、今の白鵬が小柄な嘉風のひと突きで突き飛ばされることはあり得ません。

白鵬は、土俵下で立ち合い不成立を主張して、物言いのしぐさをし、得心のいかない取組を行司と検査役に「相撲が成立していない」とアピ―ルしました。
相撲協会は、物言いを付ける権利の無い力士が自分の勝手な判断で抗議をして、負けを認めない態度は潔くないと審判部から横綱に厳重注意をさせました。

競技選手がゲーム中、審判の判定や相手選手のプレーに誤審ないしは強い不信を抱いて抗議し、プレーの見直しをアピールするのを一切禁止しているスポーツがあるでしょうか。どのスポーツでも、審判が抗議を採択するか、拒否するか、その場で明示して選手の納得を得る努力をしています。ボクシングでも重大な誤審の疑義があれば、再試合を指示しています。

あの場合、白鵬に対して、立ち合いは成立しており、物言いは不成立と検査役の判断を会場で説明すれば済むだけのことです。もし、判定に従わなかったら、退場を命じ、厳しい処分の対象にすればいい。そのくらいの選手(力士)の気持ちに沿う制度改革をしてもよろしいのではないかと思います。力士は命がけで勝負しているのですから「力士重視」は当然の配慮ではないでしょうか。
相撲協会は、何事、旧態依然のままと見受けられます。

優勝力士インタビューで、白鵬が暴力事件に関連して「膿(うみ)を出し切って、日馬富士にも貴ノ岩にも土俵に戻ってきてもらいたい」と胸の内を述べ、合わせて連日の満員御礼の盛況に感謝して、大相撲の一層の発展を願って観客と一緒に万歳をしました。この行為について、横綱審議委員会は力士ごときの出過ぎた言動と決めつけて、理事会に処罰するよう求めました。これでは暴力を振るった日馬富士を厳罰に処するよう諮問したのと同じではないですか。横綱審議委員会は何を考えているのか、横審は大相撲の旧(ふる)き良き伝統を守る一方、時代にそぐわなくなった相撲協会のシステムを改革するのが使命のはずです。これでは「無用の長物」だ。

白鵬の言動は、優勝力士としての個人の思いに過ぎず、警察の捜査や理事会の判断とは異なります。白鵬が何を言おうが、日馬富士は引退したし、それに関係なく警察は厳正な捜査を徹底します。
大相撲を背負っていると内心自負しているアスリートの慈しみの表現を汲んでやるわずかばかりの思いやりが、協会にも横審にもまるでないのは誠に残念なことです。

肝心のマスコミも、
「負けた後に取組をした力士には権利のない“物言い”を付けるしぐさをし、なかなか負けを認めず土俵から下がらなかった。他の力士は横綱の行為をまねるものだ。反省を求める」(朝日新聞)
まったく真意を理解していないコメントです。

勝負に命を懸けている選手が、誤審や納得しがたいプレーについて質すスポーツ選手としての「力士の権利」を主張したかったことがまったくわかっていない。負けたのを認めない潔さに欠ける行為としか理解していない。これでは相撲協会の旧い体質を外から改革するオピニオン・リーダーとしての期待はもてません。

白鵬は、また一人横綱で大相撲を背負い、自分との果てしない戦いの旅を続けることになるのでしょうか。
私一人くらい「心の理解者」がいてもいいでのではないかと淋しく思っています。
(2017/12月1日、元内閣官房副長官)


at 07:45 | Comment(0) | 浅野勝人

2017年11月07日

◆事実上の 殺人罪 を処罰せよ!

浅野 勝人 (安保政策研究会理事長 )


「子どもを教える立場にありながら、自らが犯した、重大な責任に気付かず、悪いとも思わず、反省もしない。あの時の担任、副担任の教諭が一人でも違う先生だったならわが子は死なずに済んだ」


これは今年(2017年)3月、福井県池田町立池田中学校で自殺した2年・男子生徒(当時14才)の母親の手記です。息子を失った悔しさや学校への怒りが11枚にわたって綴られており、癒えない悲しみが滲んでいます。


3月14日、午前8時頃、男子生徒が校舎3階の窓から飛び降りて自殺した。池田町教育委員会は「担任と副担任から繰り返し強い叱責を受け、追い詰められた末の自殺」と発表した。担任は30代男性、副担任は30代女性という。



担任、副担任から大声で叱責されているところを目撃した同級生は、調査委員会に「(聞いている者が)身震いするぐらい怒鳴っていた」と証言している。しかもたびたびである。報告書が「度重なる厳しい叱責による精神的ストレスと孤独感が自殺の原因」と断定している背景だ。

更に許しがたいのは、母親が「自殺した日に自宅に来た校長は頭を下げることもなく、『家族が悪い』といわれているような言動だった」と堀口修一校長に対する不信感を語っている点である。


この男の子は、草むしりをする祖母のために椅子を手作りするような家族にやさしい少年で、生徒会役員としても申し分なかったという。
堀口校長は、自殺直後の記者会見で「そんな事態は把握していなかった」と述べ、保護者説明会で「問題はなかった」と説明していた。ところが、検証が進むにつれて校長、教頭とも叱責の現場を何回も目撃していることが判明している。責任感の欠片もない。


もっと情けないのは、生徒が自殺した後、原因を振り返るための職員会議で、担任、副担任の行き過ぎた叱責を指摘し、諫めた教員は一人もいなかった。こんな人たちが大切な子どもを教育しているかと思うと寒気がします。ここだけの例外であってほしいと念じますが、どんなものでしょうか。


事実を知れば知るほど、これでは事実上の殺人罪ではないかと思われてしまいます。担任、副担任は獄門、校長は殺人幇助で遠島、教頭は閉門蟄居です。わたしの孫が同じような扱いをうけて自殺したら、担任、副担任を刺し殺して、自首します。


その上、事もあろうに、有識者らによる調査委員会が作成した調査報告書から、「管理職(校長と教頭)としての職責を果たしたとは言えない」という文言を町教育委員会が削除して発表した。まさに学校と教育委員会がグルになって隠ぺい工作をしている醜態を見るにおよんで、怒りを通り越して情けなくなる。


町教育委員会・内藤徳博教育長は「管理職の責任に関する内容が省かれた理由は分からない」と取材に答えている。自分たちで削除しておいて「なぜ削除されたかわからない」とは盗っ人猛々しい。あなたは、その椅子に座っている価値は爪の垢ほどもない。即刻、引責辞任してはいかがでしょう。


マスコミ各社、とりわけ新聞各社には、1面トップで徹底的に追及する問題意識が求められる課題と考えるがいかがだろう。徹底した事実の解明と当事者の責任の明確化、厳しい処分が何よりも再発防止につながると考えるからです。マスコミの社会的使命です。


むかし噺になりますが、現職の時、自民党政策審議委員だった折、いじめによる少年の自殺問題を取り上げ「知りませんでした。遺憾ですというだけの教育委員会は、屁のツッパリにもならない。小・中学校の校長が委員会の長になり、委員も教職員が多い。


いわば学校の先生の再就職口に過ぎない。だから教育行政を監視、注意すべき機関が学校の不始末をかばうことしか考えない堕落した存在になる。地方自治体の教育委員も公選制にして選出し、その中から委員長を互選したらいい」と指摘したことがあります。


「屁のツッパリにもならない」という発言がゲラゲラと笑われただけで、それっきりでした。


明後日投票の総選挙が終わったら、遅まきながら、政府・与党は立法措置も視野に真剣に取り組んでみたらどうだろう。 (2017/10月20日、元内閣官房副長官)



at 05:00 | Comment(0) | 浅野勝人

2017年10月21日

◆事実上の“ 殺人罪 ”を処罰せよ!

浅野 勝人  (安保政策研究会理事長 )

「子どもを教える立場にありながら、自らが犯した、重大な責任に気付かず、悪いとも思わず、反省もしない。あの時の担任、副担任の教諭が一人でも違う先生だったならわが子は死なずに済んだ」
これは今年(2017年)3月、福井県池田町立池田中学校で自殺した2年・男子生徒(当時14才)の母親の手記です。息子を失った悔しさや学校への怒りが11枚にわたって綴られており、癒えない悲しみが滲んでいます。

3月14日、午前8時頃、男子生徒が校舎3階の窓から飛び降りて自殺した。池田町教育委員会は「担任と副担任から繰り返し強い叱責を受け、追い詰められた末の自殺」と発表した。担任は30代男性、副担任は30代女性という。

担任、副担任から大声で叱責されているところを目撃した同級生は、調査委員会に「(聞いている者が)身震いするぐらい怒鳴っていた」と証言している。しかもたびたびである。報告書が「度重なる厳しい叱責による精神的ストレスと孤独感が自殺の原因」と断定している背景だ。

更に許しがたいのは、母親が「自殺した日に自宅に来た校長は頭を下げることもなく、『家族が悪い』といわれているような言動だった」と堀口修一校長に対する不信感を語っている点である。
この男の子は、草むしりをする祖母のために椅子を手作りするような家族にやさしい少年で、生徒会役員としても申し分なかったという。

堀口校長は、自殺直後の記者会見で「そんな事態は把握していなかった」と述べ、保護者説明会で「問題はなかった」と説明していた。ところが、検証が進むにつれて校長、教頭とも叱責の現場を何回も目撃していることが判明している。責任感の欠片もない。

もっと情けないのは、生徒が自殺した後、原因を振り返るための職員会議で、担任、副担任の行き過ぎた叱責を指摘し、諫めた教員は一人もいなかった。こんな人たちが大切な子どもを教育しているかと思うと寒気がします。ここだけの例外であってほしいと念じますが、どんなものでしょうか。

事実を知れば知るほど、これでは事実上の殺人罪ではないかと思われてしまいます。担任、副担任は獄門、校長は殺人幇助で遠島、教頭は閉門蟄居です。わたしの孫が同じような扱いをうけて自殺したら、担任、副担任を刺し殺して、自首します。

その上、事もあろうに、有識者らによる調査委員会が作成した調査報告書から、「管理職(校長と教頭)としての職責を果たしたとは言えない」という文言を町教育委員会が削除して発表した。まさに学校と教育委員会がグルになって隠ぺい工作をしている醜態を見るにおよんで、怒りを通り越して情けなくなる。

町教育委員会・内藤徳博教育長は「管理職の責任に関する内容が省かれた理由は分からない」と取材に答えている。自分たちで削除しておいて「なぜ削除されたかわからない」とは盗っ人猛々しい。あなたは、その椅子に座っている価値は爪の垢ほどもない。即刻、引責辞任してはいかがでしょう。

マスコミ各社、とりわけ新聞各社には、1面トップで徹底的に追及する問題意識が求められる課題と考えるがいかがだろう。徹底した事実の解明と当事者の責任の明確化、厳しい処分が何よりも再発防止につながると考えるからです。マスコミの社会的使命です。

むかし噺になりますが、現職の時、自民党政策審議委員だった折、いじめによる少年の自殺問題を取り上げ「知りませんでした。遺憾ですというだけの教育委員会は、屁のツッパリにもならない。小・中学校の校長が委員会の長になり、委員も教職員が多い。いわば学校の先生の再就職口に過ぎない。だから教育行政を監視、注意すべき機関が学校の不始末をかばうことしか考えない堕落した存在になる。地方自治体の教育委員も公選制にして選出し、その中から委員長を互選したらいい」と指摘したことがあります。

「屁のツッパリにもならない」という発言がゲラゲラと笑われただけで、それっきりでした。
明後日投票の総選挙が終わったら、遅まきながら、政府・与党は立法措置も視野に真剣に取り組んでみたらどうだろう。(2017/10月20日、元内閣官房副長官)



at 18:37 | Comment(0) | 浅野勝人