2017年12月12日

◆本命の訪朝 ― 緊張緩和の糸口を期待!

                           浅野勝人 安保政策研究会理事長


世の中に無用の長物ふたつ有り
    国連安保理と教育委員会  詠み人知らず

 北朝鮮が弾道ミサイルを発射するたびに、国連安全保障理事会は緊急会議を招集する。そして、アメリカが「北朝鮮に対する圧力をさらに強化しよう。中ロは石油の全面禁輸に踏み切るべきだ」と主要各国の協調を求め、日本は全面協力と賛成し、中ロは「協力はするが、話し合い路線を放棄すべきでない」とやんわり身をかわす。お題目の繰り返しで、北朝鮮が初めてアメリカ本土に届くICBMの発射実験(11/29)をした折にもアメリカ代表の演説のトーンが一段と高まっただけです。

ちょうど、小学生、中学生がいじめを苦に自殺した事件が発生すると、当該市町村の教育委員会は、当初、「いじめとは無関係」と学校を擁護し、かばい切れなくなると「二度とこのようなことが起きないよう注意を喚起したい」と他人事のようなセリフを繰り返すだけで、まるっきり役に立ちません。

口先だけで役に立たない代名詞と思っていた国連が、北朝鮮へ事務次長(政治局長)を派遣しました。
ジェフリー・フェルトマン国連事務次長は12月5日〜8日まで平壌を訪れ、北朝鮮政府幹部と核・ミサイル開発・発射実験によって緊迫している朝鮮半島情勢について協議しています。

6日には朴明国(パクミョングク)外務次官と会談しました。
会談の冒頭、朴次官は「このようにせっかくお迎えしたので、真摯に話し合おう」と述べ、朝鮮中央通信は「互いが関心を持つ問題について意見交換した」とだけ伝えました。
フェルトマン事務次長と李容浩(リヨンホ)外相との会談は決まっていますが、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との会見が今日、帰国するまでに実現するかどうか、今の時点(8日、午前0時)では不明です。

核・ミサイル開発を禁じる国連安保理の決議を履行するよう求める国連の立場とアメリカを中心とする国連の北朝鮮制裁決議に反発する「北」の主張とは真っ向から対立しています。

従って、緊張緩和のきっかけが簡単につかめる情況ではありませんが、今回のフェルトマン平壌訪問は、今年の9月、北朝鮮から「政策対話」の要請を受けて、国連が派遣して実現した経緯(いきさつ)を重視する必要があると考えます。国連事務総長報道官が「訪問は北朝鮮による以前からの要請に応じたもの」と舞台裏を明かしているのは意味があるとみるべきです。
中国やロシア、もちろんアメリカに対してわずかな弱みも見せられない北朝鮮としては、自らの言い分を主張する相手に国連を選んだと推測すれば、緊張緩和に向けた話し合いの糸口になるのではないかと期待されます。今回の出会いが、国連をいわば仲介役にするきっかけとなれば大成功です。

同時に「米・北」軍事衝突の懸念も無視できない情況にあります。
仮に軍事衝突に至った場合、米軍の軍用機は1万3,700機余り、空母10隻に対し、「北」は1,000機にも満たず、空母は1隻もありません。戦力においては比較になりません。ところが、「北」は韓国、日本をカバーする中距離および準中距離ミサイルを200発余持っており、各地方に分散して地下に隠しています。開戦と同時に1基残らず破壊するのは軍事技術的に困難です。

アメリカの軍事専門家は「北朝鮮は開戦初日に弾道ミサイルに生物・化学兵器を搭載して撃ってくる。それで韓国、日本は大パニックになる」と指摘しています。

ハーバート大学調査チームの分析によると、
平壌の生物技術研究所、定州市、文川市に秘密研究所があって、炭疽菌、赤痢など13種類の生物兵器を製造している。政治犯を使って生物兵器の人体実験を行っている可能性を否定できないといいます。
また、化学兵器は10か所余りの施設で製造されており、総量は2,500トンを超えるとみられています。
今年2月、異母兄・金正男氏を暗殺したのは化学兵器・VXガスで、「いつでも使える」と世界に誇示しました。

極めて危険な北朝鮮の核・ミサイルを警戒して、韓国では核武装を60%の人が支持しています。
日本政府も戦闘機に長距離巡航ミサイルを搭載する方針を固め、準備する手はずを決めました。もちろん朝鮮半島が射程に入ります。撃たれる直前に撃つ適地攻撃も可能です。
確かに専守防衛の基本方針との整合性が問われますが、生物化学兵器の脅威から国民の生命を守るには理屈ばかり言ってもおられません。

北朝鮮は、核・ミサイル軍事強化戦略が東アジアにおける核拡散と「北」包囲網戦力拡充に伴う軍事技術の更新を促し、自らの国家存立の基盤を危うくするブーメランであることに気付くべきです。

国連のグテレス事務総長は、13日に東京を訪れ、14日には安倍首相と北朝鮮対策を協議することになっています。
「北」に対するアメリカ式軍事および経済圧力一辺倒を支持する姿勢だけではなく、東アジアの安定に占める北朝鮮のポテンシャルと合わせて「北」の国民生活向上の方策を模索する国連の対応を真剣にバックアップするのが望ましいと考えます。
(元内閣官房副長官)
at 09:53 | Comment(0) | 浅野勝人

2017年12月08日

◆本命の訪朝 ― 緊張緩和の糸口を期待!

浅野 勝人 安保政策研究会理事長


世の中に無用の長物ふたつ有り
    国連安保理と教育委員会  詠み人知らず

 北朝鮮が弾道ミサイルを発射するたびに、国連安全保障理事会は緊急会議を招集する。そして、アメリカが「北朝鮮に対する圧力をさらに強化しよう。中ロは石油の全面禁輸に踏み切るべきだ」と主要各国の協調を求め、日本は全面協力と賛成し、中ロは「協力はするが、話し合い路線を放棄すべきでない」とやんわり身をかわす。お題目の繰り返しで、北朝鮮が初めてアメリカ本土に届くICBMの発射実験(11/29)をした折にもアメリカ代表の演説のトーンが一段と高まっただけです。

ちょうど、小学生、中学生がいじめを苦に自殺した事件が発生すると、当該市町村の教育委員会は、当初、「いじめとは無関係」と学校を擁護し、かばい切れなくなると「二度とこのようなことが起きないよう注意を喚起したい」と他人事のようなセリフを繰り返すだけで、まるっきり役に立ちません。

口先だけで役に立たない代名詞と思っていた国連が、北朝鮮へ事務次長(政治局長)を派遣しました。
ジェフリー・フェルトマン国連事務次長は12月5日〜8日まで平壌を訪れ、北朝鮮政府幹部と核・ミサイル開発・発射実験によって緊迫している朝鮮半島情勢について協議しています。

6日には朴明国(パクミョングク)外務次官と会談しました。

会談の冒頭、朴次官は「このようにせっかくお迎えしたので、真摯に話し合おう」と述べ、朝鮮中央通信は「互いが関心を持つ問題について意見交換した」とだけ伝えました。

フェルトマン事務次長と李容浩(リヨンホ)外相との会談は決まっていますが、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との会見が今日、帰国するまでに実現するかどうか、今の時点(8日、午前0時)では不明です。

核・ミサイル開発を禁じる国連安保理の決議を履行するよう求める国連の立場とアメリカを中心とする国連の北朝鮮制裁決議に反発する「北」の主張とは真っ向から対立しています。

従って、緊張緩和のきっかけが簡単につかめる情況ではありませんが、今回のフェルトマン平壌訪問は、今年の9月、北朝鮮から「政策対話」の要請を受けて、国連が派遣して実現した経緯(いきさつ)を重視する必要があると考えます。国連事務総長報道官が「訪問は北朝鮮による以前からの要請に応じたもの」と舞台裏を明かしているのは意味があるとみるべきです。

中国やロシア、もちろんアメリカに対してわずかな弱みも見せられない北朝鮮としては、自らの言い分を主張する相手に国連を選んだと推測すれば、緊張緩和に向けた話し合いの糸口になるのではないかと期待されます。今回の出会いが、国連をいわば仲介役にするきっかけとなれば大成功です。

同時に「米・北」軍事衝突の懸念も無視できない情況にあります。

仮に軍事衝突に至った場合、米軍の軍用機は1万3,700機余り、空母10隻に対し、「北」は1,000機にも満たず、空母は1隻もありません。戦力においては比較になりません。ところが、「北」は韓国、日本をカバーする中距離および準中距離ミサイルを200発余持っており、各地方に分散して地下に隠しています。開戦と同時に1基残らず破壊するのは軍事技術的に困難です。

アメリカの軍事専門家は「北朝鮮は開戦初日に弾道ミサイルに生物・化学兵器を搭載して撃ってくる。それで韓国、日本は大パニックになる」と指摘しています。

ハーバート大学調査チームの分析によると、
平壌の生物技術研究所、定州市、文川市に秘密研究所があって、炭疽菌、赤痢など13種類の生物兵器を製造している。政治犯を使って生物兵器の人体実験を行っている可能性を否定できないといいます。
また、化学兵器は10か所余りの施設で製造されており、総量は2,500トンを超えるとみられています。

今年2月、異母兄・金正男氏を暗殺したのは化学兵器・VXガスで、「いつでも使える」と世界に誇示しました。

極めて危険な北朝鮮の核・ミサイルを警戒して、韓国では核武装を60%の人が支持しています。
日本政府も戦闘機に長距離巡航ミサイルを搭載する方針を固め、準備する手はずを決めました。もちろん朝鮮半島が射程に入ります。撃たれる直前に撃つ適地攻撃も可能です。
確かに専守防衛の基本方針との整合性が問われますが、生物化学兵器の脅威から国民の生命を守るには理屈ばかり言ってもおられません。

北朝鮮は、核・ミサイル軍事強化戦略が東アジアにおける核拡散と「北」包囲網戦力拡充に伴う軍事技術の更新を促し、自らの国家存立の基盤を危うくするブーメランであることに気付くべきです。

国連のグテレス事務総長は、13日に東京を訪れ、14日には安倍首相と北朝鮮対策を協議することになっています。

「北」に対するアメリカ式軍事および経済圧力一辺倒を支持する姿勢だけではなく、東アジアの安定に占める北朝鮮のポテンシャルと合わせて「北」の国民生活向上の方策を模索する国連の対応を真剣にバックアップするのが望ましいと考えます。
(元内閣官房副長官)
at 08:14 | Comment(0) | 浅野勝人

2017年12月03日

◆「相撲協会、横審 有って、力士無し」でいいのか

浅野 勝人

大相撲九州場所(2017/11月12日〜26日)

初日、白鵬上手出し投げで琴奨菊 転倒。

「まったく不安なし。このまま平常心で前進! 前進! 浅野勝人」

「メールありがとうございます。心が落ち着きます。白鵬翔」

場所前の10月25日、夜、巡業先の鳥取市内で行われたモンゴル出身力士の懇親会の席上、横綱・日馬富士が幕内貴ノ岩をビール瓶で殴打して怪我を負わせる事件が起きました。
被害届を受理した鳥取県警が捜査に着手しました。
同席していたモンゴル・グループの「長」の立場にある白鵬の対応はどうであったか、問われます。

「和田さん、警察の捜査で事実が明らかになりますから、“ 警察から事情を聴きたいという要請があれば、ありのままを話します ”という態度がよろしいのではないでしょうか。それ以外、場所中でもあり、白鵬は事件についてしゃべらない方がいいと思います。浅野勝人」(11月16日)

「ビール瓶では殴っていないとマスコミに話したようですが、今後は沈黙を守ると思います。
報道が先行して事態を複雑にしています。事実関係が肝心な点で報道とは異なるようです。
ビール瓶を握ったけれども滑り落としてしまったようです。ビール瓶で殴っていたら、血だらけになって頭蓋骨を骨折しかねない。カラオケのリモコンと平手で何発も殴ったが、馬乗りになったということもないらしい。白鵬は暴行を止めて、日馬富士を別の部屋に連れ出して事態を収めたようです。どうであれ、暴力は許されません。和田友良」(註:和田友良は白鵬の義父、浅野の友人)

白鵬翔に

「各種の取材に対しては、“ 警察から事情を聴きたいという要請があれば、ありのままを話します ” これ以外のことは何も言わない。もっぱら取組、勝負に集中する。この対応がよいのではないでしょうか。浅野勝人」(11月17日)

「正(まさ)しくその通りです。そう思います。白鵬翔」

14日目、40回目の優勝決める。自らを信じていっさい動ぜず。不動の取り口。

「おめでとう!今場所の優勝はことのほか意義が深い。
☆力士としての限界(再起をかけた場所でした)を無限にしました。
☆力士からの“ 物言い ”(嘉風との一戦)の正当性を、優勝することで示しました。浅野勝人」

ところで、日馬富士暴行事件で影が薄くなってしまいましたが、11日目、< 関脇 嘉風 寄り切り 横綱 白鵬 > 奇妙な取り組みがありました。
組んだ直後、嘉風の突きに白鵬が客席のど真ん中まですっ飛ばされました。その直前、土俵上の白鵬は右手で「待った」の合図をして、相撲を取るのを止めていました。嘉風自身「横綱は力を抜いていた」と述べています。そうでなければ、今の白鵬が小柄な嘉風のひと突きで突き飛ばされることはあり得ません。

白鵬は、土俵下で立ち合い不成立を主張して、物言いのしぐさをし、得心のいかない取組を行司と検査役に「相撲が成立していない」とアピ―ルしました。
相撲協会は、物言いを付ける権利の無い力士が自分の勝手な判断で抗議をして、負けを認めない態度は潔くないと審判部から横綱に厳重注意をさせました。

競技選手がゲーム中、審判の判定や相手選手のプレーに誤審ないしは強い不信を抱いて抗議し、プレーの見直しをアピールするのを一切禁止しているスポーツがあるでしょうか。どのスポーツでも、審判が抗議を採択するか、拒否するか、その場で明示して選手の納得を得る努力をしています。ボクシングでも重大な誤審の疑義があれば、再試合を指示しています。

あの場合、白鵬に対して、立ち合いは成立しており、物言いは不成立と検査役の判断を会場で説明すれば済むだけのことです。もし、判定に従わなかったら、退場を命じ、厳しい処分の対象にすればいい。そのくらいの選手(力士)の気持ちに沿う制度改革をしてもよろしいのではないかと思います。力士は命がけで勝負しているのですから「力士重視」は当然の配慮ではないでしょうか。
相撲協会は、何事、旧態依然のままと見受けられます。

優勝力士インタビューで、白鵬が暴力事件に関連して「膿(うみ)を出し切って、日馬富士にも貴ノ岩にも土俵に戻ってきてもらいたい」と胸の内を述べ、合わせて連日の満員御礼の盛況に感謝して、大相撲の一層の発展を願って観客と一緒に万歳をしました。この行為について、横綱審議委員会は力士ごときの出過ぎた言動と決めつけて、理事会に処罰するよう求めました。これでは暴力を振るった日馬富士を厳罰に処するよう諮問したのと同じではないですか。横綱審議委員会は何を考えているのか、横審は大相撲の旧(ふる)き良き伝統を守る一方、時代にそぐわなくなった相撲協会のシステムを改革するのが使命のはずです。これでは「無用の長物」だ。

白鵬の言動は、優勝力士としての個人の思いに過ぎず、警察の捜査や理事会の判断とは異なります。白鵬が何を言おうが、日馬富士は引退したし、それに関係なく警察は厳正な捜査を徹底します。
大相撲を背負っていると内心自負しているアスリートの慈しみの表現を汲んでやるわずかばかりの思いやりが、協会にも横審にもまるでないのは誠に残念なことです。

肝心のマスコミも、
「負けた後に取組をした力士には権利のない“物言い”を付けるしぐさをし、なかなか負けを認めず土俵から下がらなかった。他の力士は横綱の行為をまねるものだ。反省を求める」(朝日新聞)
まったく真意を理解していないコメントです。

勝負に命を懸けている選手が、誤審や納得しがたいプレーについて質すスポーツ選手としての「力士の権利」を主張したかったことがまったくわかっていない。負けたのを認めない潔さに欠ける行為としか理解していない。これでは相撲協会の旧い体質を外から改革するオピニオン・リーダーとしての期待はもてません。

白鵬は、また一人横綱で大相撲を背負い、自分との果てしない戦いの旅を続けることになるのでしょうか。
私一人くらい「心の理解者」がいてもいいでのではないかと淋しく思っています。
(2017/12月1日、元内閣官房副長官)


at 07:45 | Comment(0) | 浅野勝人

2017年11月07日

◆事実上の 殺人罪 を処罰せよ!

浅野 勝人 (安保政策研究会理事長 )


「子どもを教える立場にありながら、自らが犯した、重大な責任に気付かず、悪いとも思わず、反省もしない。あの時の担任、副担任の教諭が一人でも違う先生だったならわが子は死なずに済んだ」


これは今年(2017年)3月、福井県池田町立池田中学校で自殺した2年・男子生徒(当時14才)の母親の手記です。息子を失った悔しさや学校への怒りが11枚にわたって綴られており、癒えない悲しみが滲んでいます。


3月14日、午前8時頃、男子生徒が校舎3階の窓から飛び降りて自殺した。池田町教育委員会は「担任と副担任から繰り返し強い叱責を受け、追い詰められた末の自殺」と発表した。担任は30代男性、副担任は30代女性という。



担任、副担任から大声で叱責されているところを目撃した同級生は、調査委員会に「(聞いている者が)身震いするぐらい怒鳴っていた」と証言している。しかもたびたびである。報告書が「度重なる厳しい叱責による精神的ストレスと孤独感が自殺の原因」と断定している背景だ。

更に許しがたいのは、母親が「自殺した日に自宅に来た校長は頭を下げることもなく、『家族が悪い』といわれているような言動だった」と堀口修一校長に対する不信感を語っている点である。


この男の子は、草むしりをする祖母のために椅子を手作りするような家族にやさしい少年で、生徒会役員としても申し分なかったという。
堀口校長は、自殺直後の記者会見で「そんな事態は把握していなかった」と述べ、保護者説明会で「問題はなかった」と説明していた。ところが、検証が進むにつれて校長、教頭とも叱責の現場を何回も目撃していることが判明している。責任感の欠片もない。


もっと情けないのは、生徒が自殺した後、原因を振り返るための職員会議で、担任、副担任の行き過ぎた叱責を指摘し、諫めた教員は一人もいなかった。こんな人たちが大切な子どもを教育しているかと思うと寒気がします。ここだけの例外であってほしいと念じますが、どんなものでしょうか。


事実を知れば知るほど、これでは事実上の殺人罪ではないかと思われてしまいます。担任、副担任は獄門、校長は殺人幇助で遠島、教頭は閉門蟄居です。わたしの孫が同じような扱いをうけて自殺したら、担任、副担任を刺し殺して、自首します。


その上、事もあろうに、有識者らによる調査委員会が作成した調査報告書から、「管理職(校長と教頭)としての職責を果たしたとは言えない」という文言を町教育委員会が削除して発表した。まさに学校と教育委員会がグルになって隠ぺい工作をしている醜態を見るにおよんで、怒りを通り越して情けなくなる。


町教育委員会・内藤徳博教育長は「管理職の責任に関する内容が省かれた理由は分からない」と取材に答えている。自分たちで削除しておいて「なぜ削除されたかわからない」とは盗っ人猛々しい。あなたは、その椅子に座っている価値は爪の垢ほどもない。即刻、引責辞任してはいかがでしょう。


マスコミ各社、とりわけ新聞各社には、1面トップで徹底的に追及する問題意識が求められる課題と考えるがいかがだろう。徹底した事実の解明と当事者の責任の明確化、厳しい処分が何よりも再発防止につながると考えるからです。マスコミの社会的使命です。


むかし噺になりますが、現職の時、自民党政策審議委員だった折、いじめによる少年の自殺問題を取り上げ「知りませんでした。遺憾ですというだけの教育委員会は、屁のツッパリにもならない。小・中学校の校長が委員会の長になり、委員も教職員が多い。


いわば学校の先生の再就職口に過ぎない。だから教育行政を監視、注意すべき機関が学校の不始末をかばうことしか考えない堕落した存在になる。地方自治体の教育委員も公選制にして選出し、その中から委員長を互選したらいい」と指摘したことがあります。


「屁のツッパリにもならない」という発言がゲラゲラと笑われただけで、それっきりでした。


明後日投票の総選挙が終わったら、遅まきながら、政府・与党は立法措置も視野に真剣に取り組んでみたらどうだろう。 (2017/10月20日、元内閣官房副長官)



at 05:00 | Comment(0) | 浅野勝人

2017年10月21日

◆事実上の“ 殺人罪 ”を処罰せよ!

浅野 勝人  (安保政策研究会理事長 )

「子どもを教える立場にありながら、自らが犯した、重大な責任に気付かず、悪いとも思わず、反省もしない。あの時の担任、副担任の教諭が一人でも違う先生だったならわが子は死なずに済んだ」
これは今年(2017年)3月、福井県池田町立池田中学校で自殺した2年・男子生徒(当時14才)の母親の手記です。息子を失った悔しさや学校への怒りが11枚にわたって綴られており、癒えない悲しみが滲んでいます。

3月14日、午前8時頃、男子生徒が校舎3階の窓から飛び降りて自殺した。池田町教育委員会は「担任と副担任から繰り返し強い叱責を受け、追い詰められた末の自殺」と発表した。担任は30代男性、副担任は30代女性という。

担任、副担任から大声で叱責されているところを目撃した同級生は、調査委員会に「(聞いている者が)身震いするぐらい怒鳴っていた」と証言している。しかもたびたびである。報告書が「度重なる厳しい叱責による精神的ストレスと孤独感が自殺の原因」と断定している背景だ。

更に許しがたいのは、母親が「自殺した日に自宅に来た校長は頭を下げることもなく、『家族が悪い』といわれているような言動だった」と堀口修一校長に対する不信感を語っている点である。
この男の子は、草むしりをする祖母のために椅子を手作りするような家族にやさしい少年で、生徒会役員としても申し分なかったという。

堀口校長は、自殺直後の記者会見で「そんな事態は把握していなかった」と述べ、保護者説明会で「問題はなかった」と説明していた。ところが、検証が進むにつれて校長、教頭とも叱責の現場を何回も目撃していることが判明している。責任感の欠片もない。

もっと情けないのは、生徒が自殺した後、原因を振り返るための職員会議で、担任、副担任の行き過ぎた叱責を指摘し、諫めた教員は一人もいなかった。こんな人たちが大切な子どもを教育しているかと思うと寒気がします。ここだけの例外であってほしいと念じますが、どんなものでしょうか。

事実を知れば知るほど、これでは事実上の殺人罪ではないかと思われてしまいます。担任、副担任は獄門、校長は殺人幇助で遠島、教頭は閉門蟄居です。わたしの孫が同じような扱いをうけて自殺したら、担任、副担任を刺し殺して、自首します。

その上、事もあろうに、有識者らによる調査委員会が作成した調査報告書から、「管理職(校長と教頭)としての職責を果たしたとは言えない」という文言を町教育委員会が削除して発表した。まさに学校と教育委員会がグルになって隠ぺい工作をしている醜態を見るにおよんで、怒りを通り越して情けなくなる。

町教育委員会・内藤徳博教育長は「管理職の責任に関する内容が省かれた理由は分からない」と取材に答えている。自分たちで削除しておいて「なぜ削除されたかわからない」とは盗っ人猛々しい。あなたは、その椅子に座っている価値は爪の垢ほどもない。即刻、引責辞任してはいかがでしょう。

マスコミ各社、とりわけ新聞各社には、1面トップで徹底的に追及する問題意識が求められる課題と考えるがいかがだろう。徹底した事実の解明と当事者の責任の明確化、厳しい処分が何よりも再発防止につながると考えるからです。マスコミの社会的使命です。

むかし噺になりますが、現職の時、自民党政策審議委員だった折、いじめによる少年の自殺問題を取り上げ「知りませんでした。遺憾ですというだけの教育委員会は、屁のツッパリにもならない。小・中学校の校長が委員会の長になり、委員も教職員が多い。いわば学校の先生の再就職口に過ぎない。だから教育行政を監視、注意すべき機関が学校の不始末をかばうことしか考えない堕落した存在になる。地方自治体の教育委員も公選制にして選出し、その中から委員長を互選したらいい」と指摘したことがあります。

「屁のツッパリにもならない」という発言がゲラゲラと笑われただけで、それっきりでした。
明後日投票の総選挙が終わったら、遅まきながら、政府・与党は立法措置も視野に真剣に取り組んでみたらどうだろう。(2017/10月20日、元内閣官房副長官)



at 18:37 | Comment(0) | 浅野勝人

2017年08月14日

◆近頃 出あった佳作2題!

浅野 勝人 (安保政策研究会理事長


☆ <川柳>
国会は 真実隠しの尻隠さず  詠み人知らず

添え書き:中庸思考の“異端児”に期待。(河野太郎外相のことか)


☆ <書評>
アマゾン・カスタマーレビュー五つ星
書き込み本 : 浅野勝人著「 宿命ある人々 = 孫悟空 ― 追っかけ“西域”ひとり旅」

地図帳を片手に!
投稿者:kaze  2017年8月12日
強い好奇心と目的をもとに実行した、中国西域へのひとり旅の物語。
単なる体験談と思うことなかれ。 『宿命』を追いかけ、謎が謎を呼び、縁が縁を結び、専門的な解説を聞きながら、ぐいぐい引き込まれていきます。

孫悟空の話かと思ったら延暦寺から始まるため、とっつきにくい感があるかもしれませんが、それすらも、次第に、ともにのどの渇きを覚えるほど。
飛ばないフライト、門前払いに、はらはらし、市井の民との自然な対話になごみ、専門家との対談にはっとさせられます。

著者はジャーナリスト出身のプロであり、恐れ多い経歴をお持ちですが、それが邪魔にはなりません。隣国への邪心のない探求心にはきっと誰もが魅かれることでしょう。他の著作も併せて読むと、「こうゆう人が日本の良き時代をリードしてきたんだ。そしてあっさりと引退したんだ」としみじみ思わされます。
序文の中で読者に「あなた」と書いている姿勢が好きです。


kazeさん有り難う! ことばの言い回しから、あなたはきっと女性ですね。スタッフが書いても、こんな素晴らしい書評は書けません。感謝です。(著者:浅野勝人)





at 05:00 | Comment(0) | 浅野勝人

2017年07月24日

◆白鵬翔とのショートメール!

〜「続 大相撲ちょっと聞けない、ないしょの噺(はなし)噺(はなし)」〜 

 浅野 勝人(安保政策研究会理事長)



夏場所  両国国技館 (2017/5月14日〜28日)
休場明けの白鵬、再起をかける試練の場所が開幕。
世の中「稀勢の里」一色。稀勢の里人気で連日満員御礼。
横綱・稀勢の里、怪我を押して出場。今場所は休んで完治してから復帰が望ましいが、3場所連続優勝を運命図けられた横綱の面目にかけて土俵に上がる。切ない思いがするが、白鵬が何度となく体験しながら潜り抜けてきた横綱の宿命(さだめ)宿命(さだめ)。

・初日前夜(5月13日)
「初心に返って、初土俵を想い出して、力を出し切ってください。
浅野勝人」
・初日(5月14日)
「ケガは日に日によくなってきています。もう大丈夫です。
欲を出さずに黙々と頑張ります。白鵬翔」

・5日目(5月18日)
白鵬 上手投げ 御嶽海
「今日の取組(御嶽海)が前半の“山”と思っていた。完璧でした。一気にいける。但し油断大敵! 浅野勝人」

白鵬、全勝で中日折り返し。日馬富士も全勝。大関昇進確実の関脇・高安1敗。手負いの稀勢の里2敗。良く踏ん張っている。いよいよ後半戦。

・5月22日 
「取組は日に日に充実一途。全盛期のレベルに達してきました。
再起をかけた今場所はゆずれない。優勝しかない。加油!浅野勝人」
・5月22日
「もとよりその覚悟です。白鵬翔」

・ 10日目(5月23日)
白鵬 寄り倒し 高安
・5月23日
「中盤のヤマ(高安)に完勝。安堵。終盤の要注意は照ノ富士。
浅野勝人」

・・・支度部屋で息を整えると、「(高安との一戦で)久しぶりに頭を付けたんじゃないか」と、笑った。春場所前には自ら田子ノ浦部屋に出向き、稀勢の里ではなく、「高安めあて」と公言してぶつかった。一門の違う二所ノ関の連合稽古にまで足を運び、高安を指名した。

 もちろん、その実力を認めているからこそ、この日の取組後、大関昇進前の照ノ富士、豪栄道と比較した上で、「(高安は)その中でも
一番(大関に)近いのは間違いない。また出直してこい・・・」と発破をかけた。
 上の番付をめざす力士の「壁になる」ことが横綱の役目だという。
一年ぶりの賜杯へ充実の内容で終盤戦を迎える。(朝日新聞、岩佐友)

よく書けている解説記事です。かねて、実力を備えた若い日本人
力士の台頭を待ち望んでいた白鵬は、やっと現れた高安に「大関になって、さらに厳しい稽古を積んで出直してこい。そして、オレに勝て」と心の中で叫んだのです。

・14日目 (5月27日)
白鵬 寄り切り 照ノ富士
白鵬翔、早々と38回目の優勝。
・5月27日
「初優勝の時よりうれしいでしょう。見事な再起の場所でした。
おめでとう! 何度でも言いたい。浅野勝人」

夏場所、千秋楽。(5月28日)
白鵬 寄り切り 日馬富士
白鵬翔、全勝優勝13回を記録。
型をもって、型にこだわらない奥義を一歩深める。
前人未踏の努力に感服!

・5月29日
「改めて存在の大きさを世間に示したのは爽快!
大相撲は白鵬翔なしには成り立たないことを再認識させて痛快!
浅野勝人」
・6月6日
「おはようございます。昨日、里帰り。
場所中、的確な励ましと勇気づけのメールをありがとうござい
ました。
1年ぶりに優勝して本当に良かったです。また名古屋を頑張ります。白鵬翔」

「メール有り難う。絶対に負けられない場所を全勝優勝するには心技一体の並はずれた能力が求められます。それを見事に示しました。
次の名古屋場所では“型をもって、型にこだわらない白鵬流奥義”をさらに進化させるよう期待しています。
モンゴルの大地で英気を養ってください。浅野勝人」

名古屋場所 (2017/7月9日 〜 3日)
・初日、前夜(7月8日) 
「一日、一日、全力で取り組めば、おのずと結果はついてくる。
浅野勝人」
「その心づもりでがんばります。白鵬翔」

・7日目(7月15日)
「連日、勝つにはどうしたらいいか、頭を使った変幻自在の取り口。“ 頭の相撲 ”を安心して観ています。
ところで、著書『宿命ある人々』― 第3章:大相撲、ちょっと聞けない、ないしょの噺 ― の反響がすこぶる良好。多くの人が白鵬翔の思慮深い人柄に触れて、相撲が強いだけではない、思いやりのあるやさしい人間性に感動しています。浅野勝人」

「宿命ある人々」の読後感余話。
かつて、偶然知り合って何度か食事を共にすることになったモンゴルの女性三人との雑談は、どこか不思議な話が多かった。
草原でオオカミと眼が合うと出世する。一族に幸運がもたらされる。実際そういう体験はままあるのだそうです。

白鵬が連勝した時、随分前のインタビューで、「この前、帰国した折にオオカミと道で出会って目が合ったから」と優勝の理由についてオオカミの話をしたのを覚えています。なんだかとてもいい話です。(中曽根康弘事務所、井出廉子)

・中日(7月16日) 白鵬 ただ一人、全勝で折り返し。
白鵬 すくい投げ 宇良(横転)
横綱と初顔合わせの宇良:土俵の横綱はオーラが凄かった。
自分は力を出し切ったが、やはり横綱は強かった。
横綱:宇良をウラ返したね。壁になれてよかった。

・7月16日
「 たのしく相撲を取っています。白鵬翔 」
・7月16日
「なによりです。どんな相手にも手加減は禁物。
横綱には、常に力を出し切った姿が求められます。浅野勝人」

・11日目(7月19日)
今日の一番に勝てば、魁皇の通算最多勝利1047勝(700敗)に並びます。
御嶽海 寄り切り 白鵬
白鵬、敗北に館内に座布団が舞う。
御嶽海:横綱はいつもと違う感じがした。緊張していたから隙ができたのかな。

・7月20日
「(緊張して思うように動けずに負けたのは)人間らしくていい。平常心、平常心! 浅野勝人」

・13日目(7月21日)
白鵬 押し倒し 高安
通算勝利1048勝(219敗)新記録達成。魁皇より42場所早い。
NHKのインタビューに白鵬:稽古で身体(からだ)身体(からだ)をいじめ抜いたのがこの
結果。相撲は奥が深い。

・7月21日
「大相撲の記録をことごとく塗り替えました。
努力の積み重ねの結晶に頭が下がります。
明日からは、果てしない自分との闘いが待っています。己(おのれ)己(おのれ)との
対決ほど険しい道はありません。心の安穏を祈ります。浅野勝人」

          (2017/7月21日  元内閣官房副長官)

◆浅野勝人著 「宿命ある人々」(時評社)
3章 白鵬翔とチンギス・ハカーン「ちょっと聞けない、ないしょの噺」の続編。


2017年07月15日

◆「宿命ある人々」―――第2弾!

〜赤松正雄の 忙中本あり 〜

(2017年7月13日 ・ 浅野 勝人)



Skip to content
🔗 ホーム
🔗 赤松正雄のプロフィール


<孫悟空を追い続ける西域ひとり旅ー浅野勝人『宿命ある人々』を読む>


『宿命ある人々』ー耳慣なれない言い回しのタイトルの本に出会った。宿命とは何か。辞書によると、その環境から逃れようとしても逃れることができない、決定的な(生まれつきの)巡りあわせを指したり、立場上そうならざるを得ない泣き所を意味するという。運命と同義で、一般的には厳しい経緯を経て、暗い結末へと至る身の上を意味する。ここでは「人智では動かしえない定めある人たち」と云いたいのだと思われる。


この本の著者・浅野勝人は、元NHK解説委員にして、元内閣官房副長官、元外務副大臣(衆・参両議院議員)を経験したジャーナリスト出身の政治家。7年前に勇退してから、自ら立ち上げたシンクタンク、一般社団法人「安保政策研究会」の理事長を務めるかたわら、日中友好に深く貢献していることでも知られる。


著書も数多く、この読書録でも『日中秘話ー融氷の旅』『北京大学講義録』などを取り上げてきた。私には仰ぎ見る先輩のひとりだ。しかも現在、私も「安保政策研」のメンバーとなっており、宿縁浅からぬ人でもある。


▼この本は三部形式。一つは、比叡山延暦寺大阿闍梨・酒井雄哉師の生の講話集。二つは、「孫悟空」を追いかけて一人旅をした西域記。三つは、横綱・白鵬との交友録。全体を通じて「宿命ある人を追っての西域ひとり旅日記」の趣きだが、味わい深い話が満載されており、読み応えたっぷり。


最初の酒井雄哉師の講話は、序文に「ことばに尽くせない鬼気迫る貴重な人生訓」とある。7年かけて延べ1000日修行する千日回峰行。話には聞いていたが中身は知らなかった。


まず最初の4年間は毎日32キロほど、堂塔、霊蹟、野仏、草木を礼拝する行をしながら、嵐だろうが病気や怪我だろうが休むことなく歩き続ける。もし「行」に失敗すれば、山を去るか、自害するかが掟だ。決死の難行。


5年目に入って700日終わると、「お堂入り」をする。これは無動寺谷明王堂に籠り、9日間、断食、断水、不眠、不臥で不動真言と法華経全巻を唱える荒行のこと。このあと、赤山苦行、京都の大廻り(毎日84キロ歩く)などと続く。この修行、病に倒れず、死にもせずにやり通すことは至難の業という他ない。口の渇きのために、舌の上の一滴の水の処し方など、克明に記された体験記は是非直接読んでほしい。


酒井師はこの千日回峰を二回やった人だが、淡々と語る姿は筆舌に尽くしがたい。こうした修行を経たうえでの「『生きている』とは何なのか」のくだりなど、読むものはただただ息を吞むだけ。「今日の自分は今日でお終い。明日はまた新しい自分が生まれて、明日の新しい生活が生まれてくる」という。『一日一生』というこの人の代表作の題名が浮かぶ。さてさて、これほどの超人的な修行をしないと悟りの極意には到達できないものなのか。ただただ溜息が出てくる。


▼浅野は少年時代「西遊記」の孫悟空に憧れた。如意棒と筋斗雲を持ったスーパースターに、79歳の今も魅力に取りつかれている。孫悟空に関心を強く抱いた浅野は「三蔵法師、西域、インドの旅」に関する中国古典や資料、著書を読み漁るうちに、「孫悟空ってほんとは誰なのか」との謎解きに嵌っていく。


そのきっかけが慈覚大師・円仁が著した『入唐求法巡礼行記』。それをベースにやはり巡礼行をした酒井師の後を追いながら、「悟空」に迫ろうというのだから凄い。西安では、薦福寺、興福寺、大雁塔などを訪れ「悟空」との接点を探すが得られず、敦煌へ。


そこでは「敦煌研究院」の特別の計らいを得て、有名な「莫高窟」で、非公開の「第17窟」に入り貴重な壁画の数々を目にする。写真撮影が禁止されているために、悪戦苦闘したいきさつがなんともハラハラどきどきさせられる。さらに敦煌から東に広大なクムダク砂漠を越えて「楡林窟」へ。そこで、遂に「玄獎取経図」と出逢う。


そして現地での学者、研究員らとの白熱の討議。念願の孫悟空に逢ったのだが、そこからがまた難行苦行の連続。「ホントのところは孫悟空とは誰なのか」を追うことはとてもスリリングだが少々難しい。答はあえて秘しておこう。読んでいて酒井師の千日回峰を思い起こさせられるほど。かの肉体的修行に比してこちらは精神的苦行になぞらえられよう。


▼白鵬関と深い付き合いのある浅野は「横綱はチンギスハーンの生まれ変わり」というほどの入れ込みよう。「強い人が大関になる。宿命ある人が横綱になる」との白鵬関の発言。この言いぶりはいかにも日本的だという感じを抱く。


実は私は鶴竜関の姫路後援会の一員だったことがあり、現役時代には毎年春の大阪場所前に、彼や井筒親方(元逆鉾)らと一緒のテーブルを囲んだものだ。白鵬関とは違ってカリスマ性には乏しいものの、折り目正しいその佇まいは日本人そのものに思われ、私にはとても好ましい人だ。横綱だから、この人もまた宿命ある人と思いたい。尤もこのところ休場続きなのが心配される。


ところで、私は71歳の今日まで、宿命はあるとかないとかの次元ではなく、元々誰しもにあるものと捉えてきた。
つまり、人間はすべて宿命ある人々だ。ここでいう宿命とは、人間の持つ最高の能力という意味、つまり仏の命を指す。ただ、人としてその仏の命の現れ方(宿命の在り様)が千差万別なのである。ということから、己自身が自覚した宿命が、仮に弱くボロボロのものだったら、これを力強く颯爽としたものに変えねばならない。


「宿命転換」の原理なのだが、これは、今の仮の姿から、本来の姿としての仏の命に立ち戻らせねばならない。その立ち戻らせ方を教えてくれるのが「日蓮仏法」だと確信している。この辺り、一般的な「宿命論」を覆す新たな座標ではある。

(元厚生労働副大臣、元公明党安保調査会長)


2017年07月12日

◆新刊書「宿命ある人々」上梓

〜孫悟空―追っかけ“西域”ひとり旅〜

著者: 浅野勝人(安保政策研究会理事長)



公職引退後、5冊目を上梓しました。
「宿命ある人々」 孫悟空―追っかけ“西域”ひとり旅(時評社)
今回の著作は、政治に無関係の作品で、いわば新人作家の処女作です。

1章 生(い)生(い)き仏 ― 生(なま)生(なま)の講話 無の境地に達した『極限の行』
比叡山延暦寺の行者・酒井雄哉師の鬼気迫る話し。
2章 “孫悟空”って誰だ! 軍事戦略に抽(ぬ)抽(ぬ)かれた三蔵法師の地誌
孫悟空を追っかけ、タクラマカン砂漠を彷徨(さまよ)彷徨(さまよ)う。
3章 白鵬翔とチンギス・ハーン
ちょっと聞けない、大相撲 ないしょのいい噺(はなし)噺(はなし)。

今回の著書は、読者の評価が真っ二つに割れています。

★従来の外交・安保を軸にした政治がらみの著書は、いずれも内外の知られざるエピソードを満載。訓練された分析に説得力があり、貴重な内容が盛り込まれていた。今回は日中古代交流史や宗教に関心のある限られた人しか興味を持ちにくい無味乾燥の感が否めない。馴染(なじ)馴染(なじ)めない著書。(政治記者OB)
★専門外のテーマに挑んだ門外漢の力作。短期間に到達した深遠な真理は現場主義を貫いた成果だけではなく、真摯に生きてきた著者の全人格が反映された証(あかし)証(あかし)。人の生き方に少なからぬ感化を与える。79才作家の新人賞。(官僚OB)

あなたは、どちらの感想を抱かれるでしょうか。

著者としては、登場する親鸞、円仁、酒井雄哉、三蔵法師、孫悟空、チンギス・ハーン、文天祥、白鵬翔の一貫してぶれない壮絶な“生き様”を物語の軸に据え、
☆真剣に生きることの尊さ。
☆あきらめない性根。
☆慈しみ、愛する心の至福。を追い求めました。
だからタイトルを「宿命ある人々」としました。

発売から3週間。駄作と思った方々は、よほど親しい人以外、わざわざ嫌なことを言ってはおいでになりません。
メールや手紙を寄せて、褒めて下さる人の方がおのずと多くなります。一遍だけ全文を紹介させていただきます。

 「宿命ある人々」たいへん面白く2日間で読了しました。
特に感心したのは、間もなく80才の君が“少年の心”を失っていないことです。
永年、永田町の政治の世界にもまれていると、いつの間にか初々しい少年の心、素直な真心を失ってしまいがちです。

政治にとって、一番大切なのは“初々しさ”ではないでしょうか。
人生とは何か、生きるとはどうゆうことか、人との絆とは何か、それを忘れて政治は成り立ちません。

とりわけ、近頃の政治現状を散見すると、その肝心な点をすっかり忘れた数々の言動に愕然とします。心がカサカサに乾いていて、政治家であることよりも人間失格を思わせます。
その意味で、君には敬意あるのみです。

特に、酒井雄哉大阿闍梨の生の講話を集録していただいたのは、たいへん有り難いものでした。それにしても、一人の人間がこんな“行”をできるのですね。人間の肉体や精神の限界などという単純なものではありません。尊敬の念を超越した凄(すご)凄(すご)み、おそろしさを感じます。

孫悟空を訪ねての“ひとり旅”は、さすがに取材の訓練を重ねた元ジャーナリストの現場主義に引き込まれ、読みごたえがありました。
この本のハイライトです。
 
私は故平山郁夫画伯と親交があり、西域の古都・トルファンの粗描画をご本人からもらっています。井上靖先生のご息女とも縁(えん)縁(えん)があって、井上先生のシルクロードの紀行は全て読んでいます。
そんな縁(えにし)縁(えにし)から、君の労作は一層興味深く拝読しました。

大学で机を並べたのかきっかけとなって、半世紀をこえる付き合いにおよぶ「友」の所感です。日本を代表する超一流企業の首脳の一として、産業の充実進展に貢献した実力派でした。
(2017/7月11日、元内閣官房副長官)

2017年06月21日

◆『一隅を照らす』― 理性と良識を守る

浅野勝人 (安保政策研究会理事長)




ここに「一隅を照らす」 理性と良識を守って――河野謙三 著
“ 浅野大兄 恵友 謙三 ”と筆の署名があります。
参議院議長・河野謙三 書き下ろしの42年前の著書です。

参議院改革を旗印に議長になった河野謙三は、与野党伯仲の困難な国会運営に臨み、「七 三 の構え」を宣言して政府・自民党をけん制しました。

河野謙三は、著書の中で、
「法案審議に野党七、与党三の比重をかけていこうという“七三の構え”の提唱に対して、与党側からそれでは不公平だという声が出ている。“七三の構え”をとる私が第1党を軽視している、との非難である。
政府・与党は寛容と忍耐の精神で議場にのぞみ、野党に法案を質す機会と時間を十分与え、“親切にお答えしましょう”という態度が望ましい。そして、審議の過程で聞くべき意見があれば、思い切って原案の修正に応じる。野党には、ただ絶対反対だけではなくて、具体的、建設的な意見・創意を出す責任がある。そうゆう腹の太さが必要だろう。この平凡なルールが守られるようになったら与野党対決法案は、もっと容易に、しかもよりよい解決の道が見いだせるものと思う。“七三の構え”とはそうゆう意味に過ぎない。
私は議長就任の際、『野党と結託した』とずいぶん非難された。そのとき私はあえて『オレは世論と結託したんだ』と反論した。
このことは今でも変わりはない」

フランスの総選挙でマクロン大統領(39)の新党「共和国前進」が議席を6割獲得して圧勝。既存の二大政党、中道右派(共和党など)と中道左派(社会党など)は惨敗しました。

日本に当てはめてみると、「新党・前進」が2/3近い議席を獲って、自民党と民進党が惨敗して図です。

細かい分析結果は、パリ特派員に任せますが、マクロンの発言は「潔い」(いさぎよい)。アメリカのトランプ大統領に対しても、イギリスのメイ首相に対しても、異なるフランスの立場を自らのことばではっきり主張して引かない。しかも物言いが悪印象を与えない。「野党との対話」を重視して、世論と結託している政治姿勢がすがすがしく映っています。
河野謙三が生きていたら、合格点、しかも高得点の採点をしたに相違ありません。

通常国会が終わって、6月17日、18日に実施された世論調査が一斉に発表されました。厳しい数字を選んでみますと(これが世論の本音とみられますが・・・)
毎日新聞:内閣支持率―36%(5月調査から10ポイント下落)、不支持率―44%(9ポイント上昇)

共同通信:内閣支持率―44・9%(10・5ポイント急落)、不支持率―43・9%(8・8ポイント上昇)

朝日新聞:内閣支持率―41%(6ポイント下落)、不支持率―37%(6ポイント上昇)
特に気になるのは、調査対象全体の半数を占める無党派層の支持率が2割を割って、不支持率が49%に達している点です。支持・不支持がダブルスコア―です。さらに、予想されたこととはいえ、「加計学園」をめぐる安倍首相の説明に「納得できない」66%、内閣不支持層に限ると93%に達していることです。


私は、内閣支持率は一定の目安ではありますが、最重視はしていません。政局を展望するうえで重要な分岐点は、支持率と不支持率が明確に逆転する政治情況を判断のポイントと考えています。その意味では、「1強」のターニングポイントが危険水域にさしかかっているように見受けます。特に、大型選挙の帰趨を左右する無党派層の過半数が不支持というデータは、明らかに危険信号です。この数字は東京都議会議員選挙に「マクロン現象」となって端的に表れると私は予測しています。

但し、国政に関しては、従来と全く見解を異にするのは、「野党不在」の稀有な時代が続いている背景の存在です。だから内閣支持率の急変が自民党の支持率にさして影響していません。

現役の官僚が「役人の命に係わる人事を人質にするシステムをつくって脅すやり方には恐怖で身が縮(ちぢ)む。だからと言ってアレ(民主党政権)に戻るのだけはごめんだ。悩ましいんです!」と本音を語っています。
官邸の主たちが、野党不在に“安住”していると、市井の地盤に溜まっているマグマが破裂しないとも限りません。

9月の閣僚改造人事が立て直しのキィです。
今なら間に合う終列車!
(2017/6月20日 元内閣官房副長官)


2017年05月19日

◆トランプの資質 ― 案の定:懸念が次々と噴出!

 
浅野 勝人 安保政策研究会理事長 



ドナルド・トランプは、ロイター通信に大統領職について質問され、「もっと簡単だと思った」と答えました。本音だと思います。

大統領はオールマイティなので、思ったことは何でもやれると思い込んでいたに違いありません。予算は議会のOKがなくては執行できないことや人事が議会の承認を必要とすることを認識していたかどうか疑わしい。司法の壁が敢然と立ちはだかるとは思いもよらなかったはずです。

最高権力者の立場に立てば、ワシントン・ポストやニューヨーク・タイムスなどマスコミの記者など物の数ではないと高を括っている態度がありありと見えました。ニクソン大統領を弾劾、辞任に追いやったジャーナリストの使命感をまるで理解していない裸の王様の風情です。

1ヵ月余り前(4/10)のブログで次の指摘をしました。
イスラエル紙「イェディオト・アハロノト」は、テルアビブで開かれたアメリカとイスラエルの諜報機関の秘密会議の席上、(2017/1月)「トランプ大統領がロシアとの不適切な関係を結ばないことが立証されるまで」という条件付きではありますが、アメリカ側が「イスラエルの入手した機密情報をホワイトハウスと国家安全保障会議(NSC)に提供するのは中止してほしいと要請した」と報じました。

イスラエル側も「対ロシア政策の変更に伴う、ロシアやイランへの機密情報の漏洩」に懸念を示し、双方からトランプ大統領のホワイトハウスに対して異例ともいえる不信感が表明された模様とのことです。(月刊誌・選択)

「ウチの大統領に機密情報を知らせるとロシアに漏洩する恐れがあるのでホワイトハウスには提供しないでください」とアメリカ側がイスラエル側に要請した模様というニュースです。いくら何でもまさかそんなやり取りが両国に間であったとは考えられませんでした。

ところが、この懸念が的中したことを知らされて、唖然とするばかりです。
5月10日、ホワイトハウスで行われたロシアのラブロフ外相との会談で「私は凄い機密情報について、毎日報告を受けている」と得意げに「イスラム国(IS)は旅客機に持ち込むノートパソコンを使ったテロ攻撃を計画している」と述べ、さらにISの支配地域の地名を挙げて具体的な脅威を語ったとアメリカの主要メデイァが一斉に伝えました。

この機密情報は、イスラエルから極秘に伝えられた「最高機密レベル」のもので、特にイスラエル側から「慎重に扱うよう」求められていたという指摘もあります。この種の情報がロシアを通じて、シリアやイラン、さらにはISに漏れると情報部員の生命が危うくなって情報網の崩壊につながりかねないことが案じられています。なによりも長年にわたって築いてきた同盟国の信頼関係が失われ、安全保障の根幹に穴が開きます。

トランプ・ロシアンゲートは、大統領選挙の頃から疑惑が幾つも重なっています。特に機密漏洩騒ぎの前日、連邦捜査局(FBI)のコミー長官を一方的に解任しました。コミ―前長官は、大統領選挙の折にトランプ陣営とロシア要人との疑わしい接触疑惑、ロシアによるクリントン候補への選挙妨害行為の存否などについて捜査を指揮する最高責任者でした。

しかも、トランプ大統領自ら、執務室でコミ―長官にロシアの大統領選挙への介入疑惑の捜査を中止するよう求めたり、自分が捜査の対象になっているかどうか尋ねたりしたことがFBIのメモに残っていると報道されています。

議会からは、野党の民主党と与党の共和党を問わず、「一つの疑惑が解明されないうちに次の疑惑が指摘される」「コミ―長官の解任はロシア疑惑封じだ」「アメリカ国民の安全とアメリカのために情報収集している人々を危険に晒す」など大統領の資質を疑い、弾劾・辞任を求める声が公然と出て来ています。第2のウオーターゲイト事件になりかねません。

不動産業ただ一筋に巨万の富を築いてきたしたたかなビジネス手法の経験があるだけで、政治家ないしは組織、機構をコントロールする官僚、軍幹部の体験皆無の大統領ですから、もともと懸念されていた資質の欠陥が噴出してきただけのことかもしれません。しかし、それにしてはアメリカ大統領の強大な権限と影響力の大きさは計り知れません。しっかりしてもらわないと世界中が困ります。

そもそもトランプなる人材を大統領に選んだ政治的責任が問われかねない情況を、アメリカ国民はなんと受け止めているのか聞かせていただきたい。赤ちゃんに「ドナルド」という名前を付ける親がめっきり減ったなんていうニュースで誤魔化されたくありません。(元内閣官房副長官)



2017年04月11日

◆深読み = 電光石火のシリア・ミサイル攻撃

〜軍事戦略はトランプの手を離れた?〜

浅野勝人(安保政策研究会理事長)



アメリカの外交政策を陰で牛耳っているのは、国務省、国防省、各情報機関の首脳級経験者に極く一部の新旧国会議員を加えた数十人からなるエスタブリッシュメントとみられています。共和党主流派が中心ですが、民主党にまたがって構成されており、ソ連の怖さを知り尽くしている「反ロ路線」が共通項です。もちろん、今でも主要官庁に手足となる有能な現役を多数持っています。


大統領選挙では、反ロ強硬派のヒラリー劣勢が伝えられた折からトランプに対する警戒感を強め、とりわけトランプ側近のロシア接近情報に神経を尖らせていました。


イスラエル紙「イェディオト・アハロノト」は、テルアビブで開かれたアメリカとイスラエルの諜報機関の秘密会議の席上、(2017/1月)アメリカ側が「トランプ大統領がロシアとの不適切な関係を結ばないことが立証されるまで」という条件付きではありますが、「イスラエルの入手した機密情報をホワイトハウスと国家安全保障会議(NSC)に提供するのは中止してほしいと要請した」と報じました。

イスラエル側も「対ロシア政策の変更に伴う、ロシアやイランへの機密情報の漏洩」に懸念を示し、双方からトランプ大統領のホワイトハウスに対して異例ともいえる不信感が表明された模様とのことです。(月刊誌・選択)

まもなく大統領側近の国家安全保障問題担当マイケル・フリン大統領補佐官がロシア要人から金品を受け取った廉(かど)で更迭されました。後任には共和党主流派の信任の厚い、ハーバート・マクマスター陸軍中将が送り込まれました。


湾岸戦争の英雄、マクマスターはトランプとは一面識もない軍首脳の切れ者で、なんでも大統領執務室の隣室にオフィスが用意されたと伝えられています。まるでエスタブリッシュメントから送り込まれた外交・安保政策に関するトランプの監視役みたいです。


さらに4月5日、トランプ最側近のスティーブ・バノン首席戦略官兼上級顧問が外交・安保・軍事政策の最高決定機関、国家安全保障会議(NSC)の常任メンバーから外されました。


トランプは、1月、バノンをNSCの常任メンバーに加えた際、オバマ時代にはメンバーだった統合参謀本部議長(ジョセフ・ダンフォード前海兵隊総司令官)、国家情報長官を除外しましたが、右腕のバノン外しと入れ代わりにダンフォード議長とコーツ長官は復帰しました。


どうやら軍官僚の経験がなく、軍事戦略知識に乏しいトランプ大統領は、この流れに乗らざるを得なかったものとみられます。


この状況から判断すると、アメリカの安保・軍事政策は、軍最高の実力者だったマティス国防長官とマクマスター大統領補佐官を軸とする戦闘実戦を体験してきた軍首脳陣が仕切る体制になったものとみて間違いないでしょう。


従って、シリア政府軍の化学兵器空爆に対するシャイラット空軍基地へのミサイル攻撃の手際のいい、且つ、自制の効いた決断(4/4日、化学兵器空爆。6日、ミサイル報復攻撃)はプロの判断と推測されます。

☆禁じ手の化学兵器を使って、サリンを撒き散らしたアザト政権に巡航ミサイルを60発叩き込んでも、同盟国の支持は得られる。むしろ評価される。

☆ロシアとイランに対する絶妙な警告の機会になる。
☆北朝鮮への牽制と厳格な北朝鮮対策を中国に促す効果がある。


おそらくトランプは、プロの判断を即刻承認し、攻撃の時期について、習近平との米中首脳会談の最中にぶっ放す政治ショーを提案して、大統領主導による攻撃決定を演出したデモンストレーションだったはずです。


余談ですが、私は、2006年6月、外務副大臣の折、第一次安倍内閣の方針に従ってダマスカスを訪れ、アサド大統領と70分間会談した経験があります。


シリアの政権は、イランと同じシーア派の仲間のアラウィ派です。アサド大統領はイランと手を組んで中東における反米・親ロの強固な基盤を築いてきました。日本からゴミ収集車を60台無償援助する機会にアサドと会って、パイプ作りのきっかけにするのが目的でした。


バッシャール・アサドは、ロンドンで眼科医をしていましたが、後継者のお兄さんが交通事故でなくなったため、呼び戻されて大統領になった人です。話しながら絶えず笑みがもれ、反米一辺倒の路線修正に触れても聞き耳を立ててくれました。眼科医らしい温和な人柄に好感が持てました。


今日、TVインタビューで視たアサド大統領の顔つきは、目が吊り上がって、サリンを無差別爆撃に使った醜悪な人相に映り、私には別人のように見えました。アサド家2代、半世紀に及ぶ独裁支配のための強権体制の維持が人相を変えてしまったのでしょうか。


シリア・ミサイル攻撃に関連して、日本にとって重要な事柄はアメリカの北朝鮮に対するビヘイビアです。
私は、アメリカは北朝鮮には軽々な軍事行動はしない。むしろ極めて慎重に対応するとみています。


シロウト大統領と異なり、プロは戦闘の怖さと損傷の実態を熟知していますから、北朝鮮の中距離ミサイルを1基残らず瞬時に破壊できる情報管理と実戦体制が整わない限り、韓国、日本の安全確保が危ういことを承知しているからです。


その意味では、マティス〜ダンフォード〜マクマスター軍首脳ラインの見解で決まるSECは、総合的勝算を優先して無謀な行動は避け、安定的に機能すると私は安心感を持っています。


ただ「北」は、何をするかわからない無法者の坊ちゃんが相手です。
「シリアは核を持っていないからやられた。我々はシリアとは違う。さらに核攻撃能力を磨いて、アメリカを返り討ちにする」と談話を発表しています。


北朝鮮の狂気が収まるまでの期限付きで、造らず、持たずの非核2原則への転換が必要かもしれません。緊急事態の核の持ち込みに厳格に限定すれば、「日本の核武装警戒論」が根底に存在するアメリカ・エスタブリッシュメンの虎の尾を踏むことにはならないでしょう。        (元内閣官房副長官)



2017年04月04日

◆家系の血は争えぬ! 青森県に初の女性首長が誕生

浅野勝人(安保政策研究会理事長)



青森県の外ヶ浜町といっても見当がつかないでしょう。
石川さゆりのヒット曲「津軽海峡冬景色」に「ごらんあれが竜飛岬(たっぴみさき)北のはずれと、見知らぬ人が指をさす」と唄われた竜飛岬のある町といえばおおよそ土地勘とイメージが浮かぶでしょう。

人口6,600人、3,000世帯余りの半農半漁の町に県内現職首長最年少の女性町長が誕生しました。女性首長は青森県では初めての“春の珍事”だそうです。

何が起こったかといいますと、3月26日(2017年)投票、27日開票の東津軽郡外ヶ浜町長選挙で、35才、会社員、無所属新人の山崎結子(ゆいこ)候補が、4選をめざした79才の現職町長との一騎打ちに大差で勝利しました。
有権者  5,855人
投票率  78.91%
山崎結子 2891票
現職町長 1,700票
人口の90%近くが有権者の若者不在の町で1,100票の差ですから、
多くの年寄りが35才を支持した結果です。

山崎結子を支持したパート女性(70)が「このままではいけないという町民の危機感が票にあらわれた」と述べたと河北新報は伝えています。

選挙戦は、町議会議員11人のうち7人が現職町長支援議員団を結成し、建設業者の団体、町職員組合などを結集させた組織戦 vs 個人戦の争いでした。もっともシロウト集団の山崎選対に、町政刷新に共鳴した町長派の中心的存在だった地元選出県議会議員、自民党青森県連幹事長が加わり、選挙責任者となりました。

現職町長の側には、長男の県議会議員、自民党青森県連総務会長が陣取っていますから、保守分裂選挙の様相となりました。どこの地方にもしばしば見られる光景です。

町政の継続か、刷新かの争いは、山崎候補の「しがらみのない町民ファースト」の訴えが、ベテランによる長期政権を嫌った有権者に入れられて組織選挙体制を寄せ付けませんでした。

新町長は「覚悟と重責を感じ、身が引き締まる思い」と述べていますが、選挙中の公約、例えば、町の基幹産業である水産業の立て直し。養殖ホタテの貝殻の処分などに具体的な解決策を提示する責任を負っています。

実は、山崎結子は前参議院議員、元総務副大臣、山崎力の次女です。新町長の父親、山崎力は安保政策研究会の理事で、わたしたちの仲間でもあります。

私がNHK政治部記者の頃から懇意だったのは祖父に当たる山崎竜男参議院議員でした。環境庁長官(大臣)になったのですが、国会議員を振り切って青森県知事選挙に出馬し、落選して政治生命を失いました。

当時、私は電事連(電気事業連合会)を敵に回して勝ち目の薄い選挙に出るのを思い止まるよう懸命に説得したのですが、原子力発電の推進と核燃料サイクルの確立をめざす電事連が県政に癒着するのを許容できず、無所属で出馬して討ち死にしました。

知事選挙にこだわったのは、青森県知事だった父親の山崎岩男への強い思いがあったからでした。山崎岩男は、新町長の結子さんの曽(そう)祖父(そふ)(広辞苑:ひいじじ)に当たりますが、知事2期目の途中、志し半ばにして退陣のやむなきにいたった無念を晴らしたかったのではないかと察せられます。

教員あがりの曽祖父・山崎岩男は、34才で県議選に出て惜敗します。戦前のこととはいえ、リヤカーを選挙カーに仕立てて戦ったそうですが、お金がなくて法定はがきを有権者に配れなかったのが敗因でした。

2度目の挑戦で県議となり、戦後初の第1回衆議院議員選挙(1946/4月)に駒を進めて当選。5期連続当選しましたが6期目に落選。知事選挙の公認が得られず、県内8人の国会議員を敵に回して無所属で立候補。見事に当選して戦後2人目の青森県知事となりました。

医師だった祖父・山崎竜男は、参議院青森地方区に2度落選したものの諦めず、3度目の挑戦で当選し、末は大臣になりましたが、無謀な知事選挙に敗れて引退しました。

読売新聞の父・山崎力は、参議院青森地方区で2勝2敗。去年夏の選挙に惜敗しました。一族の負け数の多さは清廉ゆえですが、私の4勝3敗と似ています。

山崎力が落選して、もう選挙とは縁が切れたと思っていた矢先に4代目の登場です。

山崎力から「次女が竜飛岬から町長選挙に出る。準備の最中」と連絡をいただき、選挙に憑(つ)かれた山崎一家の伝統を継ぐ人材の存在を知ってビックリしました。

「家族に選挙やるような子がいるなんて知らなかった。何をしていた娘さん、お幾つ?」
「青森の水産会社の社員で、35才です」
「町長選挙の相手はどんな人」
「4選を目指す79才の現職町長。最初に選挙しただけであとは無競争。結子は、無風選挙はここで断つと決意して出馬を決めました」
「オヤジよりしっかりしている。そりゃ、お嬢が勝つ。山崎家伝統のクリーンな選挙手法を守れば、間違いなく圧勝する」

その通りになりました。
血は争えないとはよく言ったものです。脱帽!
(元内閣官房副長官)