2020年01月01日

◆靖国たきつけた元中国大使 令和元年

阿比留 瑠比


折しも安部晋三首相が中国を訪問し、習近平国家主席に続いて李克強首相
と会談した25日、外務省が日中関係に関する興味深い外交文書を公開し
た。昭和63年の竹下登首相の訪中をめぐり、外務省が竹下氏に靖国神社不
参拝を求めていたことを示す同省中国課作成の極秘資料である。

一読、ああやっぱりこんなことが慣例化していたのだなと感じた。外務省
としては、中国が参拝に反対する靖国に行けば、訪中自体も危うくなると 考え、そうした情報を首相官邸に伝えていたようである。

だが、そんな中国の意向を忖度(そんたく)し、過度に配慮してきた外務省
チャイナスクール(中国語研修組)の姿勢こそが、中国側を増長させてき
たのだろう。

行き過ぎた忖度

中国を専門とする外務官僚の立場では、中国当局の目を気にせざるを得な
い。ある程度、中国側の歓心を買わなければ情報も入手できないという事
情もあろう。

とはいえかつては往々にしてそれが行き過ぎ、日本の立場を弱くしてきた。

例えば平成12年4月の国会では、中江要介元中国大使が、昭和60年に中国
の胡耀邦総書記と靖国問題を協議した際のエピソードを証言している。同
年8月15日に中曽根康弘首相が靖国に公式参拝をしたのを受けてのやりと
りである。

胡氏「もう靖国神社の問題は両方とも言わないことにしよう。黙って85年
でも100年でも騒がずに静かにして、自然消滅を待つのが一番いいじゃ
ないか」

中江氏「もし今黙っちゃたら、日本では『ああ、もうあれでよかったん
だ』と思ってしまう人が出るかもしれない」

中江氏はまるで手柄話をしているかのようだが、冷静になろうと努めた中
国を逆に騒げとたたきつけた構図である。もし中江氏が胡氏に、靖国問題
は静感すべきだと同調していたら事態はどう推移しただろうか・



小渕氏は謝罪拒否



そして少なくない自民党議員も、そんなチャイナスクールと考え方を共有
する時代が長かった。

平成10年の小渕恵三政権時代には、韓国の金大中大統領と中国の江沢民国
家主席が相次いで訪日した。

このとき、小渕氏は、日韓共同宣言には「痛烈な反省と心からのおわび」
を書き込んだが、中国側の求めていた共同文書への歴史謝罪の盛り込みは 拒否した。その後、ある外務省幹部からこんな話を聞いた。

「小渕さんは相当、中国を疑っていた。江氏来日の前、外務省アジア局幹
部らが夜中に首相公邸を訪ねて謝罪を文書化できないか相談したが、小渕
さんは『謝罪はこれが最後か』と強く確認を求めた。幹部らは『これで最
後です』と言い切れず、謝罪の文書化はノーとなった」

ともあれ、今回公開された外交文書とも通底するように、外交の意思決定
のプロセスは単純ではないが、同時に関与した人次第で決まる。

そのときの国内外の情勢も慎重論もあろうが、安部首相にはぜひ任期中に
また靖国参拝してもらいたい。

(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)

産経ニュース【阿比留瑠比の極言御免】(2019)12月26日

松本市 久保田 康文さん採録 

2019年12月29日

◆靖国たきつけた元中国大使

阿比留瑠比



【阿比留瑠比の極言御免】靖国たきつけた元中国大使 令和元年
(2019)12月26日

折しも安部晋三首相が中国を訪問し、習近平国家主席に続いて李克強首相
と会談した25日、外務省が日中関係に関する興味深い外交文書を公開し
た。昭和63年の竹下登首相の訪中をめぐり、外務省が竹下氏に靖国神社不
参拝を求めていたことを示す同省中国課作成の極秘資料である。

一読、ああやっぱりこんなことが慣例化していたのだなと感じた。外務省
としては、中国が参拝に反対する靖国行けば、訪中自体も危うくなると考
え、そうした情報を首相官邸に伝えていたようである。

だが、そんな中国の意向を忖度(そんたく)し、過度に配慮してきた外務省
チャイナスクール(中国語研修組)の姿勢こそが、中国側を増長させてき
たのだろう。

行き過ぎた忖度

中国を専門とする外務官僚の立場では、中国当局の目を気にせざるを得な
い。ある程度、中国側の歓心を買わなければ情報も入手できないという事
情もあろう。

とはいえかつては往々にしてそれが行き過ぎ、日本の立場を弱くしてきた。

例えば平成12年4月の国会では、中江要介元中国大使が、昭和60年に中国
の胡耀邦総書記と靖国問題を協議した際のエピソードを証言している。同
年8月15日に中曽根康弘首相が靖国に公式参拝をしたのを受けてのやりと
りである。

胡氏「もう靖国神社の問題は両方とも言わないことにしよう。黙って85年
でも100年でも騒がずに静かにして、自然消滅を待つのが一番いいじゃな
いか」

中江氏「もし今黙っちゃたら、日本では『ああ、もうあれでよかったん
だ』と思ってしまう人が出るかもしれない」

中江氏はまるで手柄話をしているかのようだが、冷静になろうと努めた中
国を逆に騒げとたたきつけた構図である。もし中江氏が胡氏に、靖国問題
は静感すべきだと同調していたら事態はどう推移しただろうか・

小渕氏は謝罪拒否

そして少なくない自民党議員も、そんなチャイナスクールと考え方を共有
する時代が長かった。

平成10年の小渕恵三政権時代には、韓国の金大中大統領と中国の江沢民国
家主席が相次いで訪日した。

このとき、小渕氏は、日韓共同宣言には「痛烈な反省と心からのおわび」
を書き込んだが、中国側求めていた共同文書への歴史謝罪の盛り込みは拒
否した。その後、ある外務省幹部からこんな話を聞いた。

「小渕さんは相当、中国を疑っていた。江氏来日の前、外務省アジア局幹
部らが夜中に首相公邸を訪ねて謝罪を文書化できないか相談したが、小渕
さんは『謝罪はこれが最後か』と強く確認を求めた。幹部らは『これで最
後です』と言い切れず、謝罪の文書化はノーとなった」

ともあれ、今回公開された外交文書とも通底するように、外交の意思決定
のプロセスは単純ではないが、同時に関与した人次第で決まる。

そのときの国内外の情勢も慎重論もあろうが、安部首相にはぜひ任期中に
また靖国参拝してもらいたい。

(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
松本市 久保田 康文 
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


2019年12月22日

◆安倍政権 国の在り方変えた

阿比留瑠比

令和元年(2019)12月19日

連載300回

政治に関わるよしなし事を好き放題に記してきた拙コラム「極言御免」
は、今回で通算300回を迎えた。第二次安部晋三政権の発足からちょうど
100日となる平成25年4月4日にスタートしてほぼ週1回、6年8カ月以上も連
載が続いてきたのは、すべて読者諸兄のおかげです。

そこで今回は、憲政史上最長となった安倍政権のこれまでの仕事を、独断
と偏見で振り返りたい。安倍政権といえば、民主党政権時から株価を約3
倍に上げた経済政策アベノミクスや、2度にわたる消費税増税などに目が
向けられがちだ。

だが、むしろそれ以外の面、特に日本が生き残るための国際関係と安全保
障分野で、国の在り方を大きく変えてきたのではないか。

外交課題に次々対処


24年12月に発足した第2次安倍内閣は、25年12月に国家安全保障会議
(NSC)を設置した。省庁の縦割りを排し関係閣僚が「重要事項および
重大緊急事態への対処を審議する」もので、これにより日本の戦略的な意
思決定は迅速化した。

26年7月には集団的自衛権に関する「権利はあるが行使はできない」とい
うそれまでの倒錯した政治解釈を見直す閣議決定をし、27年9月に集団的
自衛権の限定行使を認めた安全保障関連法を成立させる。これにより、米
国に頼るばかりの片務的な日米同盟関係は、より対等に近づいた。今日の
緊張高まる北朝鮮情勢からみて、政府高官は「対米関係を思うとぎりぎり
間に合った」と胸をなで下ろす。

内閣支持率の下落を覚悟してつくった機密を漏らした公務員らへの罰則を
強める特定秘密保護法(25年12月成立)にしても、各国との情報共有の深
化と円滑化を進めるための法律で、日本の安全保障に直結する。

一方、日本と諸外国との軋轢(アツレキ)の種となっていた歴史問題にも手を
打った。

26年6月には、慰安婦募集の強制性を認め、世界に「性奴隷の国」だとの
イメージを広めた5年6月の河野洋平官房長官談話の作成過程の検証結果
を公表した。河野談話がいいかげんな根拠で、韓国に迎合して合作で作ら
れたことを白日の下にさらしたのである。

これが26年8月に、朝日新聞が自社の慰安婦報道の誤りを一部認める結果
にもつながる。安倍政権は、日本政府が公式に発信した河野談話自体の破
棄はしなかったが、少なくとも国内で河野談話は無力化した。

27年4月の米上下両院合同会議での日米の和解をテーマにした演説で、そ
れまで間欠泉のように提起されていた日米間の歴史問題もほとんで決着する。

第2次政権発足時には安部首相のことを当初、まるで危険な歴史修正主義
者であるかのように扱っていたオバマ米大統領(当時)も、28年5月には
米大統領として初めて被爆地・広島を訪れるなど、同盟関係はより強固に
なった。

また、27年8月の戦後70年の「安倍談話」は、「植民地支配と侵略」を謝
罪しながらも中身が曖昧な7年7月の村山富一首相談話を上書きした。安
倍談話の評価は分かれるが、欧米諸国によるアジアの植民地化の過程を描
いた上で、日露戦争が多くの非西洋の植民地の人々を勇気づけたことを指
摘するなど、それまでの政府文書にはない記述がちりばめられた。

慰安婦合意は失敗?

27年12月の韓国との間で慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」をう
たった慰安婦合意も、韓国に事実上ほごにされたことをもって、失敗だと
見る向きがあるがそうだろうか。

安倍政権は当時から、韓国のことだからまた約束を破るかも知れないこと
も想定した上で、米国を「立会人」にしてテレビカメラの日韓両国の外相
が並んで合意を発表した。そしてさっさと10億円の拠出を済ませ、後はど
うなろうと韓国の国内問題であり責任だとの立場をとった。

こうした経緯があるからこそ現在、韓国側が問題の蒸し返しを謀ろうと、
韓国人が好む表現を使えば「道徳的優位」に立って韓国に強く対処できる
のである。

まだまだ書くことがあるが、紙幅が尽きた。もとろん安倍政権の施策に納
得できないものもあるが、少しずつ日本は正常化してきたように思う。あ
とは何としても憲法改正を実現してもらいたい。

(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)

2019年12月16日

◆麻生副総理のマスコミ論

【阿比留瑠比の極言御免】麻生副総理のマスコミ論


発売中の月刊誌『文藝春秋』(令和2年1月号)に掲載された麻生太郎副
総理兼財務相のインタビュー記事が、とにかく面白い。麻生氏らしい歯に
きぬ着せぬ物言いで、政策課題や世相を斬りまくっている。例えばこんな
ふうにである。

「韓国側が(いわゆる)徴用工判決で差し押さえしている民間企業の資産
の現金化などを実行したら(中略)韓国との貿易を見直ししたり、金融制
裁に踏み切ったり、やり方はいろいろあります」

「安倍(晋三)総理が本気で憲法改正をやるなら、もう一期、つまり(自
民党)総裁四選も辞さない覚悟が求められるでしょう」

「(父方の系統に天皇を持たない)女系天皇などありえません」

いくら攻撃しても・・・

詳しくは同誌を読んでもらいたいが、筆者は麻生氏が安倍政権とマスコミ
の関係について述べている部分が特に興味深かった。麻生氏は朝日新聞が
平成17年1月、13年1月に放映された慰安婦をテーマにしたNHKの番組
に、当時の安倍官房副長官が圧力をかけたと報じた事例を挙げ、こう語っ
ていた。

「まったく事実無根でした。あの頃からでしょう。朝日は安部晋三という
政治家についてことごとくバツ印をつけるようになりました」

「しかし、朝日がいくら安倍さんを攻撃しても、若い人はもう新聞を読ん
でいませんよ」

新聞をはじめとするマスコミの社会への影響力が年々衰えていることは、
筆者も身にしみて感じている。弊紙にとっても対岸の火事ではない厳しい
現実だが、政府首脳にここまではっきり言われると、時の移り変わりを思
わざるを得ない。

ともあれ朝日の圧力報道当時、安部首相の周囲には「マスコミを敵に回す
とよくない。朝日は何十人の記者を使ってあなたの身辺を探り、何でもい
いから不祥事を探そうとするだろう」と懸念し、何らかの手打ちを勧める
人もいた。インターネットがまだ十分普及しておらず、政治家が自ら発信
する手段は限られていた時代だった。

だが、安部首相はひるまず月刊誌『諸君!』などを通じて徹底的に反論を
続け、記事を批判した。以下のような激烈なものである。

「こうした報道姿勢がいかに薄っぺらな、欺瞞(ギマン)に満ちたものであ
るかということを、国民は見抜いている」(同誌17年3月号)

「朝日報道に底に流れる邪な意図は、次第に白日の下にさらされようとし
ている。多くの国民はそれをじっと見守っている」(同誌17年4月号)

見透かされる逆恨み

朝日にしてみれば、一人の若手政治家にここまで真っ向から反撃されるの
は初めてだったろう。結局、圧力の存在に関しては当のNHKも否定し、
朝日は、当時の社長が「不確実な情報が含まれてしまった」と釈明するハ
メになった。

麻生氏はこうした経緯から、朝日が安部首相を逆恨みするようになったと
やんわり指摘したといえる。筆者は、この頃からもともと疑念が持たれて
いたマスコミの政治報道に対する国民の信頼が、いよいよ薄まっていった
と考える。

そして現在、野党は安倍政権打倒のため、「桜を見る会」問題などでマス
コミと「共闘」し、現地視察の場面などの映像をマスコミに撮らせること
で国民へのアピールを狙っている。

だが、影響力と信頼感が弱まったマスコミと連動してパフォーマンスばか
りに走っても、低意を国民に見透かされ、「もう見ていませんよ」と言わ
れるのがオチなのではないか。

(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)

2019年12月02日

◆改憲 待ちぼうけでいいのか

阿比留瑠比

【阿比留瑠比の極言御免】改憲 待ちぼうけでいいのか 令和元年
(2019)11月29日

憲法改正を待ち望み自民党に期待した人々の率直な心境を、代弁してい
るかのようだった。憲法改正論議の促進を求める有識者による「憲法を国
民の手に! 言論人フォーラム」が27日に開いた記者会見で、百地章・国
士舘大特任教授が述べた次の言葉である。

「与党の態度に対しては非常に不満がある。与野党の合意が一つの慣行
だったかもしれないが、憲法審査会にも参加せず、審査会開催そのものに
反対する人たちがいる。そういう人たちとどうやって合意を作るのか。作
れるはずがない」

また、ジャーナリストの櫻井よし子氏も訴えた。

「(立憲民主党などは)国民投票法改正になぜ反対するのか。国会議員と
して(国民投票の権利を有する)国民主権を阻害するものだろう」

同感である。今国会も、憲法改正手続きを公職選挙法に合わせる国民投票
法改正案の成立は極めて困難となった。安部晋三首相が周囲に語るように
「来年の通常国会では必ずやる」つもりかもしれない。国会運営上、今回
は無理する必要はないとの判断もあったのだろう。

時間切れを狙う野党

だが、現在、これまで憲法改正に向けた取り組みを行ってきた諸団体や
保守系の各層から、「自民党は本気でやる気があるのか」との疑問が出て
いるのも事実である。筆者自身は、安倍首相の改憲に対する覚悟を感じて
いるが、少なくない改憲派から「待ち疲れた」との声も聞かされている。

百地氏が指摘する通り、野党の多くは憲法を改正すること自体したくない
ので遅滞戦術による時間切れを狙っている。この点については、いわゆる
改憲派とは言い難い毎日新聞も28日付朝刊で「時間稼ぎ」と明確に書いて
いた。誰の目にも明らかなことではないか。

「国民からみても、何をしているんだこの国会はと(映る)。今国会で国
民投票法改正案が仕上がらなければ、衆院解散を打ってでも国民に信を問
う必要があるのではないか」

日本維新の会の遠藤敬国対委員長は22日、記者団にこう述べた。

一方、日本の将来像に直結する憲法論議より、「桜を見る会」の招待者名
簿の破棄に使われた大型シュレッダーを視察する「シュレッダーを見る
会」の方が国会やメディアをにぎわすような現状では、日本のお先は真っ
暗だとすら思える。

いなすばかりの与党

憲法だけではない。貿易問題のみならず人権問題も重要な課題として浮
上した米中問題、核・ミサイル開発を継続する北朝鮮情勢、日米貿易交渉
の今後の行方・・・と、国会で議論を深めるべき課題は数多い。にもかか
わらず、野党は醜聞探しだけに躍起で、与党もそれを適当にいなすことに
安住しているように見える。

産経新聞は38年前の昭和56年元日の「主張」(社説)で、すでにこう訴え
ていた。

「まず日本国民の国防意識を高めることである。そのためにいまわれわれ
がなすべきことは何か。(中略)9条を改正し、自衛隊を憲法の条文上、
明確に認知することである。このことこそ、現下の緊急にして最重要の政
治案件である」

「憲法改正なくして日本の戦後は終わらない。(中略)国際情勢の変転の
中で、私はいまこの言葉を改めてかみしめている」

三歩進んで二歩さがることは政治手法としてあり得るが、同じところでい
くら足踏みを続けても、前進することはあり得ない。

(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

松本市 久保田 康文 
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

2019年11月17日

◆しらじらしい桜を見る会騒ぎ

阿比留瑠比


昭和27年以来、歴代政府がほぼ毎年実施してきた首相主催の行事「桜を
見る会」がにわかに注目を集めている。立憲民主党、共産党などの野党は
活気づいて追及チームを発足させたほか、メディアでも13日付の朝日、毎
日両紙の社説が次のような見出しで、安部晋三政権を批判していた。

「首相の私物化許されぬ」(朝日新聞)

「公金私物化の疑問が募る」(毎日新聞)

また、これに呼応して13日午前の菅義偉(スガヨシヒデ)官房長官の記者会見で
は、朝日の記者が矢継ぎ早にこんな質問をしていた。

「首相に近い人たちが特別な便宜を受けたことにならないか」「各界の功
績者に該当しないように見える特定政治家の支援者が参加しているが、適
切な運営と言えるのか」

断っておくが、筆者自身は「桜を見る会」が開催されようが中止されよう
があまり関心はない。運営に適当でない部分があれば、改めるのも当然だ
ろう。ただ、野党やメディアが、以前からこの会に関心を示し、問題点が
あると指摘してきたとは到底思えないため、また難癖をつけていると受け
止めてしまうのである。

記念撮影に28分

ある年の「首相動静」記事をみると、産経新聞はこう報じている。

【午前】8時18分、公邸発。30分、東京・内藤町の新宿御苑着。31分から
59分まで、地元の後援会関係者らと記念撮影。9時、夫人とともに「桜を
見る会」に出席。10時21分、同所発。

桜を見る会の会場で、実に28分間にわたり後援会関係者と写真を撮ってい
る。いったい何人いたら、こんなに時間がかかるのだろうか。ちなみにこ
れは平成22年4月17日の民主党の鳩山由紀夫首相の動静である。

おそらく各界の功績者や功労者ではない地元の後援会関係者を明らかに優
遇していることが分かるが、この時民主党内やメディアから批判の声が上
がったとは寡黙にして知らない。

同日付朝日の夕刊はこの「桜を見る会」について写真付きで、「『雨天の
友・・・』首相、自らを鼓舞?」という見出しを付けて次のように書いて
いる。

「首相は『雨の時に集まってくれる友こそ真の友。みなさんは鳩山政権の
雨天の友だ』と呼びかけた」

もちろん、朝日が鳩山氏が「真の友」である後援会関係者と記念撮影をし
たことに気づいていなかったわけではない。

便宜感じたのか

18日付朝日朝刊の首相動静蘭にはちゃんと「地元の後援会関係者らと記
念撮影」と記録されている。毎日も同様だが、両紙はこのとき、首相によ
る私物化だなどと一切書いていない。

鳩山政権時には民主党に所属していた自民党の長尾敬前内閣府政務官は、
こう証言する。「民主党本部から、せっかくの機会だから地元後援者に上
京してもらい、後援会固めに使うよう指示があり、後援会名簿を出した。
このことは、今野党で安倍政権の私物化だと批判している旧民主党出身の
人たちも、みんな知っているはずだ。しらじらしいし、不思議な光景だと
思う」

「桜を見る会」では、メディア各社の上層部や、首相官邸キャップにも招
待状が来るため、出席経験者は少なくないはずである。彼らは、この会に
参加したことで、時の首相に特別な便宜を図ってもらったと感じたり、首
相による会の私物化に協力したと思ったりしているだろうか。

一連の騒動で来年度の「桜を見る会」は中止されることになった。長尾氏
ではないが、本当に「しらじらしい」「ばかばかしい」とむなしくなる。

(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)
産経ニュース【阿比留瑠比の極言御免】しらじらしい桜を見る会騒ぎ  
令和元年(2019)11月14日

2019年10月26日

◆社民党と朝日は双生児か

阿比留瑠比


天皇陛下が即位を国内外に宣明される「即位の礼」の中心儀式「即位礼正
殿の儀」が22日に挙行されたことについて、マスコミや各政党がどんな見
解を発表するかに注目していた。その中で、予想通りよく似ていたのが次
の2つである。

「天孫降臨神話に由来する高御座(タカミクラ)に陛下が立ち、国民の代表であ
る三権の長を見おろす形をとることや、いわゆる三種の神器のうち剣と璽
(勾玉マガタマ)が脇に置かれることに、以前から『国民主権や政教分離原
則にそぐわない』との指摘があった」

「『三種の神器』の剣と璽(勾玉)を伴い、国民の代表を見おろす『高御
座』に登壇することや、神々しい登場を演出する『宸儀所見(シンギショケン)』
の復活は、君主制や神道の色彩を強く反映し、憲法上の疑義が残ります」

前者は23日付朝日新聞の社説「即位の礼 前例踏襲が残した課題」であ
り、後者は社民党の又市征治党首のコメントである。

一方、同日付読売新聞の社説「即位の礼 伝統儀式の挙行を祝いたい」は
対照的だった。陛下が高御座に昇られたことにも言及しているが、問題視
はしていない。もちろん産経新聞の社説にあたる「主張」も同様である。

権威弱める論理構成

朝日と社民党は、宗教と厳格に分離できようはずもない皇室儀式に、無理
やり憲法の政教分離の原則を当てはめ、天皇の権威を弱めようとする論理
構成がそっくりだといえる。

外交・安全保障、教育、憲法改正、そして皇室への視点・・・と朝日と社
民党の主張はいつも似ている。そんなことを考えていて以前、評論家の片
岡正巳氏の著書『朝日新聞の「戦後」責任』を読んだことを思い出し、改
めて手に取った。

平成10年2月発行の同書には「社会党と朝日新聞は双生児」という章があ
り、朝日と社民党の前身である社会党の主張とその中身、言い回しがぴっ
たりと息の合ったものであることが検証されている。

例えば湾岸戦争が勃発した1991年1月の朝日と社会党の機関紙「社会
新報」の社説はこうである。

「米軍を主力とする多国籍軍が、バグダットなどイラクの戦略拠点への大
規模な集中爆撃に踏み切った。国連安保理決議がイラクに求めたクウェー
トからの撤退期限から二十四時間もたたない時点で、米軍の軍事技術を生
かせる夜間を選んでの実力行使である」(18日付朝日)

「米軍を中心とする多国籍軍のバグダットなどイラクへの大規模な集中爆
撃が繰り返された。国連安保理決議が、イラク軍のクウェートからの撤退
期限とした十五日からほんの一日も経たない時点での戦闘開始である」
(22日付社会新報)

「共闘するかのよう」

社会党の声明が朝日の論説にそっくりな場合もあれば、朝日に社会党政治
家の発言の焼き直しのような社説が載ることも多かったという。

片岡氏は同書に「考え方、主張が同じであれば、文章表現も酷似するとい
うことであろうか。そして両者は、政府が避難民移送に自衛隊の輸送機を
派遣する方針を立てたことにも、まるで共闘するかのように反対した」と
記している。

朝日と社会党の末裔(マツエイ)である社民党の主張は現在も近い。一方の社民
党は教条的で空想平和主義的な主張で支持を失っていき、政党要件を失う
寸前まで追い詰められた。にもかかわらず、双生児である朝日は健在で大
部数を維持しているのは、国民が政党と新聞に求めることが違うからか。

(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)

産経ニュース【阿比留瑠比の極言御免】  令和元年(2019)10月24日

松本市 久保田 康文さん採録」 
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

2019年08月10日

◆変わらない「角度」

【阿比留瑠比の極言御免】 令和元年(2019)8月2日


 朝日新聞の記事を読むと時折、どこか別の世界のことを報じているかの
ような錯覚にとらわれる。7月31日付夕刊のトップ記事は、「トランプ政
権 強める介入」と白抜きの横見出しを取った上で、こんな縦見出しをつ
けて」いた。

 「米軍駐留費『日本は5倍負担を』」

 「日韓仲裁へ『ホワイト国継続を』」

 記事の中身はとみると、次のように書いていた。

 「トランプ米政権のボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)が先
週、日本を訪問した際に、在日米軍の日本側負担について、現状の5倍と
なる巨額の支払いを求める可能性があることを伝えていたことがわかった」

 「日本による対韓輸出規制や、元徴用工訴訟の判決をめぐって対立が激
化している日本と韓国に対し、トランプ米政権が事態の悪化を避けるた
め、自制案を示したことが朝日新聞の取材でわかった。



菅長官あっさり否定

事実であれば重大事であるが、菅義偉(スガヨシヒデ)官房長官は31日午後の
記者会見で「そのような事実はない」とあっさり否定した。筆者がこの日
夜に取材した政府高官も「フェイクニュースだ」と述べ、こう指摘した。

 「日本の米軍駐留経費の負担割合は各国で一番高い74%なんだから、そ
れを5倍にしたら米国がただ大儲けとなってしまう。5倍などと書くの
は、事実関係を根本的に知らず、分かっていないということだ」

 菅氏は31日午前の記者会見では、米国による仲介案提案があったかにつ
いても「ご指摘のような事実はない」とやはり否定した。

 朝日は31日付夕刊でポンペオ米国務長官が「日韓が前進する道を見つけ
られるよう後押しする」と語ったことに言及し、「仲介役を果たす考えを
明らかにした」と記したが、これに関しても政府高官はにべもなかった。

 「別に実態はない話だ。ポンペオ氏の発言は関係ない。韓国を(貿易上
の優遇措置を適用する)ホワイト国から除外する政令改正の閣議決定を、
2日に行う方針に変わりはない」

 外務省幹部も「この問題は簡単に仲介できるものではないし、そんなこ
とは米国も分かっている。米国が日本に何か言ってくるとは思っていな
い」と話す。

 それでも朝日は、1日付朝刊でも1面で「米軍駐留費負担『大幅増
を』」「日本に『5倍』要求も」「日韓仲裁へ 米が自制案」との見出し
を掲げ、攻勢をかけていた。あまりに筆者が取材して得た実感と異なり、
戸惑うばかりである。



事実関係よりも社論

筆者は6月27日付当コラムでも、トランプ米大統領が日米安全保障条約
破棄に言及したとの米通信社記事が事実だとの前提に立ち、朝日が安部晋
三政権が「衝撃と不安を隠しきれない」との記事を掲載したことに疑問を
呈した。同僚によるものを含め、取材対象の政府高官にそんな動揺は皆無
だったからである。

 平成26年、虚偽の強制連行証言など吉田清治氏について18回にわたり取
り上げた朝日の慰安婦報道を検証した第三者委員会委員、外交評論家の岡
本行夫氏は、何人もの朝日社員から、「角度をつける」という耳慣れない
言葉を聞いた。角度の意味はこんなものだった。

 「事実を伝えるだけでは報道にならない。朝日新聞としての方向性をつ
けて、初めて見出しがつく」

 事実関係より社論、イデオロギー優先ということである。あれから5年
近くたつが、朝日の角度をつけたがる傾向は、今も変わっていないように
思える。

(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)

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松本市 久保田 康文 

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2019年07月14日

◆韓国、困ったときの米頼り

阿比留 瑠比


日本が韓国向けの半導体材料の輸出管理を適正化した件をめぐり、韓国の
康京和(カンギョンファ)外相が10日、米国のポンペオ国務長官と電話会談して日
本への措置への懸念を表明した。韓国外務省は、ポンペオ氏はこれに理解
を示したとするが、韓国政府の発表はあまりあてにならないので真偽は不
明である。

ただ、少なくとも韓国が米国による日韓仲裁に望みを託していることは伝
わる。実際、韓国大手紙・朝鮮日報の最近の記事をたどると、困ったとき
の米国頼みぶりがよく分かる。

 事態動かず焦り

 例えば8日付の「韓国が米国にSOS、日本が事前に遮断か」との記事
は、こう書いている。

「日本が『韓国は北朝鮮制裁に違反している』と言い出したのは、『制裁
の維持』を強く叫ぶ米国を仲裁に乗り出しにくくさせるのが目的との見方だ」

米国が仲立ちしてこないことに焦っていることがうかがえる。9日付のコ
ラム「米当局者『なぜ我々が韓国の仲裁をしなければならないのか』」は
断じる。

「韓日関係が悪化しているのにもかかわらず、米政府が積極的に動かない
状況は例外的と言っていい」

米国が、韓国の都合で動いているかのような思い込みが読み取れる。同日
付の記事「韓国高官ら支援求め訪米も、米は依然消極的」は悲鳴をあげて
いた。

「『エッチングガスが韓国を経て北朝鮮に流れている可能性がある』とい
う日本側の主張にも米国は沈黙している」「米国の態度について、日本が
今回の経済報復措置の前に米国に説明を行ったか、米国が一定部分で共感
したためではないかとの観測がでている」

10日付の記事「米国の沈黙は『計算ずく』か」は、さらに憶測を重ねる。

「仲裁の鍵を握る米国の沈黙が長引いている。日本との事前のコンセンサ
ス、自国の半導体産業への反射利益などを計算した『戦略的沈黙』ではな
いかと分析されている」

米国はそんなに韓国の動向を気にしていないと思うが、韓国側はあくまで
米国が仲裁して当然と考えているようである。11日付の記事「韓国大統領
府高官が訪米 日本の輸出規制・北核問題を協議」は指摘する。

「日本の輸出規制措置に対する不当性も積極的に訴えるとみられ、米国側
に仲裁を要請するかどうか注目される」

同日付の記事「米ワシントンで火ぶたを切った韓日ロビー合戦」も同様の
視点を示している。

「米国が今回の事態に関して本格的な仲裁に乗り出すのかが注目される」

米国が介入したら韓国に有利に働くと信じているらしいのが不思議であ
る。その逆の事態もあるとなぜ考えないのか。米国が立会人となり、賞賛
した慰安婦問題をめぐる日韓合意を一方的に破り、米国の顔をつぶしたこ
とをはしっかりお忘れらしい。

日本たたきも

同紙は8日付社説「『韓国は北に毒ガスの材料を渡した』という日本、根
拠を示せ」では日本をこう厳しく批判していた。

「日本は韓国に対する経済報復を合理化しようと、フェイクニュースまで
動員する国になったのか」

だが、5月17日付の記事「大量破壊兵器に転用可能な戦略物資、韓国から
の違法輸出が急増」では、ミサイルの弾頭加工やウラン濃縮などに転用で
きる戦略物資が、大量に違法輸出されていると自ら報じていた。

安易な日本たたきと米国頼みに走る前に、もう少し客観的に自国を見る習
慣を身につけたらどうか

(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)
産経ニュース【阿比留瑠比の極言御免】 7月12日

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松本市 久保田 康文 採取
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2019年06月30日

◆怪しい日米安保破棄報道

阿比留 瑠比


トランプ米大統領が最近の私的会話で、日米安全保障条約破棄に言及した
との米ブルムバーグ通信の報道が話題となっている。朝日新聞は26日付朝
刊で「トランプ氏 透ける本音」と見出しをつけ「『日米関係は最強』と
蜜月をアピールする安倍(晋三)政権だが、衝撃と不安を隠しきれない」と
書くなどはしゃいでいるが、政府にそんな動揺はみられない。

むしろ筆者は、元の報道の中身やトランプ氏が会話した時期に眉に唾をつ
けて眺めている。これを前提とした論理を展開するのは、無理があると考
える。

両政府とも否定

報道にあるような話は全くない。米国からも米政府の立場と相いれないも
のだという確認を受けた」

菅義偉官房長官は25日の記者会見でこう述べた。米政府も報道を否定して
いるが、何を言い出すか分からないトランプ氏のことだから、案外あり得
る話だとの見方もあるのもわかる。

確かにトランプ氏は2016年の米大統領選の最中には、日米同盟の片務性を
批判し、在日米軍の駐留経費大幅増を求めるなど、日米安保条約の在り方
に不満を表明していた。大統領選の直後、安倍首相はトランプ氏がこうし
た主張をぶつけてきた場合について、周囲にこう話していた。

「そうなれば、それを日本の対米自立のきっかけにすればいいんだ」

同盟の重要性増大

この時期のトランプ氏であれば今回の報道のように語る可能性はあるが、
大統領就任後は日米同盟の重要性を理解をした発言を続けている。安部首
相との緊密な関係もあり、5月に米大統領として初めて、日本の海上自衛
隊艦船であるいずも型護衛艦「かが」に乗艦した際には、こう訓示した。

「日本が令和の時代を迎えたその歴史的瞬間に、われわれは米日同盟を祝う」

「米国の安全保障をも向上させる日本の防衛力向上に対する私の友人、安
部首相の尽力に感謝する」

その舌の根の乾かぬうちに、日米安保条約破棄を口にするどんな動機があ
ろうか。在韓米軍の撤退と米韓同盟の破棄ならば近い将来あり得るかもし
れないが、そうなればむしろ日米同盟の重要性は決定的に増すのである。
「韓国から撤退した米軍の半分は日本に来る」(外務省幹部)との観測す
らある。

まして米国が中国との対決姿勢を強めている中で、日本ほど戦略的・地政
学的に重要な国はない。そして米国の対中政策の「プロセスの始まりは、
安部首相の(16年11月の)訪米でした」(バノン前主席戦略官兼大統領上
級顧問、月刊『Hanada』5月号)とされる。この最初の会談で、安部首
相は話題の大半を中国の脅威に絞った。

今さら考えにくい

昨年9月の日米首脳会談では、日米同盟の現状をめぐって、安部首相とト
ランプ氏との間で次のようなやりとりがあった。

トランプ氏「米軍が日本を守るために、相当の費用を費やしていることも
忘れないでほしい」

安倍首相「だからこそ安全保障関連法を成立させ、今や米国と助け合うこ
とができるようになった。米軍の防護もやっている」

トランプ氏「それは素晴らしい。ただ、米国は駐留米軍のために相当の負
担をしている」

安倍首相「日本はどの国よりも駐留経費を負担しているし、基地も提供し
ている。駐留米軍の経費は、米国内にいるときよりも安くついている」

最後にトランプ氏が「あなたは、反論の天才だな」と笑って議論は終わった。

トランプ氏が、日米安保条約破棄を今さら言うなど考えにくい。ただ、緊
迫する中東情勢に関してのツイッターに投稿したこの言葉は重視すべきで
ある。

「(中国、日本などは)危険な旅をしている自国の船を自らで守るべきだ」

 トランプ氏にいわれるまでもなく、自分で努力してこそ、他者の協力や
支援を得られるものだろう。

産経ニュース【阿比留瑠比の極言御免】 平成元年(2019)6月27日
(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)

              ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
               松本市 久保田 康文氏採録 
              ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



2019年06月03日

◆自衛隊に甘えすぎではないか

阿比留 瑠比


太平の眠りを覚ます上喜撰 たった四杯で夜も眠れず------。幕末のペ
リー来航の際の蒸気船と、覚醒効果のある高級茶をかけたこの狂歌ではな
いが、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は枕を高くして寝られ
ただろうか。安部晋三首相とトランプ大統領が28日、いずも型護衛艦「か
が」を視察した件である。

米大統領が海上自衛隊艦艇に乗艦するのは初めてであり、これまでにない
強固な日米同盟の誇示は、北朝鮮だけでなく、中国に向けて強力なメッ
セージとなった。日米両首脳は「かが」船上で、それぞれ次のように訓示
を行った。

安部首相「強固な日米同盟は日米の隊員一人一人の努力によって支えられ
ている。自衛隊の諸君、昼夜を分かたず自由で平和な海を守り続ける諸君
を、私は誇りに思う」

トランプ氏「素晴らしい米国と日本の兵士たちに言いたい。あなたたち
が、われわれの国民を守るためにしているすべてのことに深い感謝を述べ
たい」

もはや、創設(昭和29年7月)まもない頃のように、自衛隊が「日蔭者」
(吉田元首相)であることを強いられ、甘んじる時代ではない。


9割「良い印象持つ」

内閣府の平成26年度の世論調査では、自衛隊に「良い印象を持っている」
と「どちらかというと良い印象を持っている」を合わせて92・2%に上
る。反対に「悪い」「どちらかというと悪い」との印象を持つ人は4・
8%に過ぎない。

29年度の調査でも、計89・8%が良い印象を持つと答えており、悪い印象
を持つ人は計5・6%にとどまる。過去2回の調査ともに9割前後が良い
印象を表明しているが、これほど高い組織はちょっとほかには考えにくい。

ところが、これほど国民の信頼が厚い組織が憲法で位置づけられていな
い。もちろん、現行憲法の施行時(昭和22年5月) には自衛隊は存在しな
かったのだから、当初書かれていなかったのは当然である。

だが自衛隊発足後それがそのまま放置されているというのは、政治の怠慢
であり、憲法を空文化させてきた。立憲主義にも反している。

憲法9条に自衛隊を明記するという具体案を、安部首相が提唱して2年以
上たつが、国会審議は遅々として進まない。この案は自民党だけでなく、
憲法に足らざるを加える「加憲」を唱える公明党も受け入れられるもの
だったはずである。

にもかかわらず、「憲法改正原案、憲法改正の発議」を審議できるはずの
衆参両院の憲法審査会が実質的に動かないのは、国会議員の怠慢だろう。

国会が、憲法で定められた国民投票の権利行使を妨げている。これまでの
自衛隊の労苦に報いるどころか、文句が言えない自衛隊に甘えすぎではな
いか。

憲法審の慣例がネック

「『自衛隊を憲法に明記する』ために」という冊子の配布やミニ集会、講
演活動などを通じて憲法改正を訴えている元熊本県議で通信制高校校長、
野田将晴氏は懸念を示す。

「全会一致を原則とする憲法審査会の慣例が、一番ネックになっている。
この慣例がある限り、たとえ参院選後に改憲勢力が発議に必要な3分の2
以上の議席を維持しても、野党が反対してまた同じことの繰り返しになり
かねない」

いざ国民投票になっても、憲法に自衛隊を明記することにあくまでも反対
する人がそんなにいるとは思えない。いずれかのタイミングで、無意味で
弊害多き慣例は捨てる必要があろう。

(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)
産経ニュース【阿比留瑠比の極言御免】 


2019年05月24日

◆韓国外交は素人か子供か

阿比留 瑠偉


数年前、韓国の大統領が朴槿恵(パク・クネ)氏だった頃に、韓国の学者
らと会食して意見交換した際の話である。たまたま話題が、首相を議会で
選出する日本の議院内閣制と、国民が直接投票で大統領を選ぶ韓国の大統
領制の違いに及んだ。

 韓国の学者は双方には一長一短あると指摘しつつ、次のように語った。
「大統領制のいいところは何でも即決できること。韓国人の好むスピード
感があって気持ちがいい」
「反対に悪いところは、大統領も閣僚も素人がなるところだ。しかも日本
みたいに、何度もいろんな閣僚に就いて政治の経験を積むということもな
く、ほとんど一回しかやらない」

 韓国に限らず、米国やロシア、フランスなど大統領制を採用している国
は数多い。トランプ米大統領も政治経験のない実業家から、いきなり現在
の地位に就いた。国際政治や外交においては素人だと自覚していたからこ
そ、就任時から安倍晋三首相を相談役にしているのだろう。

 それが韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権の場合、国際社会の常識も
マナーもわきまえずに素人外交を展開し続けるのだから、目を覆わんばか
りの現状である。いわゆる徴用工訴訟で、韓国最高裁が日本企業に賠償を
命じる確定判決を出した件に対する無策ぶりは、見ていて恥ずかしい。


2019年05月05日

◆中国には譲歩しないことが肝腎

阿比留 瑠比


「日中外交というのはある意味、日本外交の(あり方の)一つの象徴でも
あったのだろう」

安倍晋三首相はかつて、こう語っていた。昭和47年の日中国交正常化以
来、日本外交は「日中友好至上主義」に自縄自縛(じじょうじばく)とな
り、友好に反することは全否定する空気に支配されてきた。首相は、国益
を確保する「手段」であるはずの友好が、いつの間にか「目的」となった
倒錯を指摘し、さらに付け加えた。

「友好に反することは何かを誰が決めるかというと、中国側が専ら決める」

首相がこれまでの対中外交で実行してきたことは、こんな旧弊を打ち切る
ことではなかったか。

振り返れば平成24年12月に第2次安倍政権が発足した当時、日本と中国の
関係は最悪となっていた。野田佳彦内閣による尖閣諸島(沖縄県石垣市)
の国有化がきっかけで、完全に膠着(こうちゃく)状態に陥っていた。

中国は日本を軽視する一方で、旧日本軍をナチス・ドイツに重ね、首相を
危険な軍国主義者だと喧伝(けんでん)する宣伝工作を続けていた。

首相との首脳会談も拒否し、会談に応じる条件として首相の靖国神社不参
拝の確約や、尖閣諸島の領有権問題の存在確認など無理筋な要求を突きつ
けていた。

挑発乗らず冷静対応

それが26年11月には、首相と習近平国家主席による日中首脳会談が実現す
る。この時の習氏は仏頂面で笑顔はなかったが、今年9月の会談では満面
の笑みを浮かべる豹変(ひょうへん)ぶりである。

この間、日本は中国の要求には一切応じず、友好を請うような言動も取ら
なかった。何ら譲歩しなかったにもかかわらず、である。

理由はいくつも挙げられる。首相自身が展開した自由や民主主義、法の支
配を訴える「価値観外交」が少しずつ中国を追い詰め、包囲網を築いて
いったことや、中国の軍事的膨張主義が国際社会で広く認知されたことも
一因だろう。

新疆(しんきょう)ウイグル自治区でのイスラム教徒弾圧が欧米から非難
を浴びたことや、米国との貿易戦争で打つ手がない中国が、活路を日本に
求め始めたという事情も、もちろん大きい。中国共産党にとって死活問題
である経済成長には、日本の協力が必要との判断もあろう。

ただ、何より重要なことは安倍政権が中国の揺さぶりに動じず妥協せず、
挑発にも冷静に対応したことではないか。習政権は日本と対決路線を取っ
ても得るものはなく、損をするだけだと思い知ったのである。

最近では逆に、安倍政権側も中国の巨大経済圏構想「一帯一路」への協力
など、中国との接近に前のめりになっているのではないかとの見方も出て
いる。だが、首相は周囲にこんな本音を漏らしている。

「別にこちらが前のめりということではない。一帯一路の件は、リップ
サービスをしているだけだ。中国にカネをやるわけでも出すわけでもない」

パンダ頼みたくない

首相が日中首脳会談で、新たなジャイアントパンダの貸与を求めるとの観
測についても突き放す。

 「パンダの件は地方自治体の要請で外務省が勝手に進めていることで、
私は知らなかった。そんなこと頼みたくもない」
首相は今回の訪中に合わせて対中政府開発援助(ODA)の終了を決める
など、姿勢は全くぶれていない。むしろ懸念されるのは政界、経済界の今
後だろう。中国の友好ムード演出に浮かれてこちらからもすり寄るようだ
と、利用されるだけされてはしごを外される。歴史の教訓である。(論説
委員兼政治部編集委員)

産経新聞阿比留瑠比の極言御免2018.10.25