2020年07月11日

◆「他意はない」の不誠実

阿比留瑠比
 
          
 魔が差すという言葉があるように、人は一瞬、判断や行動を誤ることがある。だが、そうだとしても、立憲民主党の枝野幸男代表の今回のツイッターへの書き込みとその後の言動は、軽率かつ不誠実ではないか。

 公選法ギリギリ投稿

 枝野氏は東京都知事選に際し、公職選挙法129条の規定でもう選挙運動ができない投票当日の5日、唐突に自身の出身地である宇都宮市名物の宇都宮餃子(ギョウザ)の思い出をつづり、「#宇都宮」とハッシュタグをつけて投稿した。

 立憲民主党は、都知事選で元日弁連会長の宇都宮健児氏を支援しており、これが無関係で通るはずがない。案の定、枝野氏のツイッターは脱法的だとの指摘が相次ぎ、「公選法違反ギリギリをついてくるなんて」「姑息(コソク)すぎ」「熊本の(豪雨)災害より❝餃子❞ですか」・・・などと批判のコメントが並んだ。

 宇都宮氏のサポートチームにもツイッターで「まさかそんな子供(に)言い聞かせるようなこと、法の専門家(枝野氏は弁護士出身)に事前にご注意申し上げられるわけもなく・・・」とあきれられる始末だった。

 ここで反省を示したならばまだいいが、枝野氏は6日の記者会見で「公選法の趣旨に照らし合わせて特定候補を連想させる投稿は避けるべきではなかったか」と問われ、こう強弁した。

 「誤解とご心配をおかけしていること、恐縮に思っているが、他意はない」

 何が誤解なのだろう。他意とは「心中に隠し持つ考え」を表すが、宇都宮氏を応援する考えしかなかったという意味なのか。

 記者が、重ねて「他意はないという説明は無理がある」「公選法に抵触しないとの認識か」などとただしても、枝野氏は「ツイートの通りだ」と繰り返した。

 この問題にかんしては、立憲民主党の福山哲郎幹事長も7日の記者会見でこう言い放った。

 「本人が他意はないと言っているので、それ以上でもそれ以下でもない。何をどう説明すればいいんでしょうか」


 身内には甘く


 毎度のことだが、政府・与党には厳しく説明責任を問うにもかかわらず、自分自身や身内に甘い。

 枝野氏はこれまでも、党所属議員をめぐる疑惑について記者会見で問われた際も「知見がない」を連発してまともに答えず、福山氏も同じ件に関して「私が質問に答えるのは適切ではない」で済ませた。

 産経新聞が平成22年6月に、枝野氏が左翼過激派、日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派(革マル派)の活動家が「影響力を行使し得る立場に相当浸透している」(政府答弁書)という労組から、数百万円単位の献金やパーティー券購入を受けていたことを報じた際もそうだった。

 産経新聞が事務所を通じてコメントを求めたのに対し、回答は木で鼻をくくったようなものだった。

 「政治資金規正法にのっとり適正に処理している」

 枝野氏はかねて「野党第一党の党首である私が『ポスト安倍』だ」と訴え、安倍晋三首相の次は自分だと主張している。

 確かに、自民党に何かとんでもないスキャンダルが発覚したり、国民を深く失望させる失政があったりで政権交代が起きれば、枝野氏が首相の座に就くこともあり得ない話ではない。

 そうなれば国民は、何が起きても「他意はない」「知見がない」「適正に処理している」と繰り返す首相をいただくことになる。

 一見バカバカしいギョウザ話から、政治家の本質が見えてくる場合もある。

(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)

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松本市 久保田 康文 
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2020年07月05日

◆ポスト安倍 どんどん出馬を

  【阿比留瑠比の極言御免】
令和弐年7月2日

本紙も「動く 『ポスト安倍』の夏」を連載中だが、安部晋三首相の次の首相(自民党総裁)は誰かをめぐって、政界の動きが露骨に活発化してきた。はたからみると普段はあまり目立たない存在であっても、内心では「われこそが」と自負しているのが国会議員という生き物である。



 戦いが生む求心力



 一般的にポスト安倍候補として広く認知されていずとも、本人は意欲を示していることも珍しくない。

 ポスト安倍候補本人や各派閥の活動の活発化は、当たり前だが国民の関心を呼ぶ。筆者も政治部記者の端くれだから、あちこちで「この人はどうか」「あの人がいいと思うが」などと意見を求められる。

 人によって重視する点は異なるが、改革者のイメージ、清新な装い、発信力、堂々としてみえる物言い、安定感、面白み・・・などが判断基準になるようである。

 実際に自民党総裁を選ぶのは党所属国会議員と党員であるが、こうした国民の評価や人気、知名度も、国会議員や党員の投票行為に影響するのは間違いない。次の選挙の「顔」は、国民にウケがいい人の方が好ましいからである。

 そこで往々にして総裁選が始まる前に候補は絞られていき、最終的には少人数での戦いか一騎打ちになることが多い。だが今度は、そうなるのではなくて、できるだけ多くの候補に出馬してもらいたい。その方が自民党にとっては人材のお披露目におなるし、厳しい戦いに勝ち残って総裁に就く者も、より求心力と正当性を高められるからである。



 総主流派の弊害



 平成18年の総裁選で安倍首相が初めて総裁となった際には、麻生太郎副総理兼財務相と谷垣禎一元財務相との三つどもえの争いという形だった。だが実際は、党内の大多数が国民の人気の高い安部支持へと雪崩を打ち、勝ち馬に乗って総主流派となっていった。

 安倍首相自身は福田康夫元官房長官や山崎拓元副総裁らの出馬も想定し、厳しい戦いを勝ち抜く考えだったが、政治信条や方向性の違う相手からも支援を受け、不必要なしがらみを引きずっての出発となった。

 その結果、第1次安倍内閣は主流各派の「論功行賞内閣」といわれたほか、年長の閣僚らの安倍首相に対する敬意の不足が指摘され、閣僚の不規則発言や足並みの乱れも相次いだ。

 一方、党側も長老らは若い安倍首相のお手並み拝見とばかりに高みの見物を決め込んでいた。

 総裁選で安倍首相を支持しておきながら、かっての後輩・仲間意識が抜けず、助言と称して足を引っ張る者が少なくかった。



 「情熱が大事だ」



 その点、24年の総裁選では、安倍首相は同じ派閥の先輩である町村信孝元官房長官を含め、4人の候補を下して2度目の総裁の座を勝ち取った。当時は本命どころか、3番手がいいところだとされていたにもかかわらずである。

 またその過程で、当初は一度は退陣した安倍首相に冷ややかだった世間の目も変わっていた。

 「政治は、人を動かすかなりの要素である情熱が大事だ」

 安倍首相は総裁選について最近、周囲にこう語っている。ポスト安倍の地位を担いうると自負する候補はどんどん情熱を持って立候補を願いたい。

 もっとも、本人は否定的であるものの、世界情勢その他何らかの事情次第で、安倍首相の4選または任期の特例延長も可能性は残っている。いずれにしろ総裁選から目が離せない。

(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)

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松本市 久保田 康文 
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2020年07月03日

◆支持者の利益損ねた立民

阿比留 瑠比

  
なるほど確かにそうだと膝を打った。検察官の定年を65歳に引き上げる検察庁法改正案の今国会での成立が見送られたことに対して、自民党の世耕弘成参院幹事長は19日の記者会見でこう述べた。

「逆に立ち止まって考え直すいい時間ができた。これだけ(新型コロナウイルス感染拡大によって)経済が苦しく、雇用環境が厳しくなっている中で、国家公務員や地方公務員だけが給料も下がらないまま5年も定年延長されていいのか」

検察庁法改正案は、国家公務員法改正案と一体化した「束ね法案」である。野党はこの2つの切り離しや、検察幹部の定年特例延長部分の廃止を主張したが、これらは混然一体となっており、「いったん撤回して組み直さないと無理」(法務省幹部)なのが実態だった。

地方公務員定年も

そして国家公務員法改正案が成立しなければ、国に準拠して定める地方公務員の定年引上げも据え置かれる。政府・与党にとっては痛くもかゆくもない話だが、公務員労組である自治労を支持基盤とする立憲民主党にとっては、支持者から得られたはずの利益を損ねる結果となる。

 世耕氏は次のように指摘したが、うなずける。

「そもそも国家公務員、地方公務員の定年延長という話は、人手不足の経済環境、雇用環境を前提に議論されてきた。今その前提状況が大きく変わった」

改正案は継続審議扱いとなり、ふつうは秋の臨時国会で再審議されることになるが、世耕氏はこうも語った。

「臨時国会で議論といわれているが、秋には雇用環境が厳しくなってくる。そういった時期に公務員の定年延長という議論が本当に成り立つかどうか」

安倍晋三首相も、これ以上、法務省・検察側の求めに応じて提出した改正案によって痛くもない腹を探られ続けるのはうんざりだろう。首相は以前から、一連の騒動に関して「大体、検察の人事をこっちで決めているわけではないし、はなから私は熱心ではない」とあきれており、安倍政権下ではもう改正案は日の目を見ないとの観測もある。

自治労に「言い訳」

立憲民主党は、改正案の成立見送りについて「日本の民主主義の大きな前進」(18日、枝野幸男代表)などと勝ち誇っていたが、実は政府・与党が成立の意欲を失っていくことに慌てていたのではないか。枝野氏は同日のツイッターでこんなことも訴えていた。

「私たちが異議を唱えていたのは、幹部検察官の恣意的(しいてき)な職務延長。一般の公務員などの、一律の定年年齢引き上げは与野党一致して賛成です」

大切な自治労に対し、自分たちの反対による失策ではないと言い訳しているように聞こえる。

また、産経新聞が改正案審議について「もうやらなくていい」と首相が漏らしていると報じた20日には、立民の安住淳国対委員長が記者団に対し、八つ当たり気味に世耕氏を批判した。

「コロナのときに、こんなに衆院でエネルギを費やして国民世論を巻き込んでやっているのに、今になってこの改正案で65歳の定年がおかしいとか、自民党の責任者がそんなことを言い出したら、与党をやめた方がいい」

何を言っているのかよく分からない。コロナ禍で国民が大変な思いをしているときに、コロナ対応で忙しい首相や閣僚を拘束し消耗させ、「火事場泥棒」と罵倒してまで改正案成立の足を引っ張った党はさてどこっだったろうか。

(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)

産経ニュース【阿比留瑠比の極言御免】 令和弐年5月21日
松本市 久保田 康文さん採録 

2020年06月30日

◆拉致で何もしなかった人たち

阿比留瑠比


ボルトン前米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が、トランプ政権の内幕を描いた著書『それが起きた部屋』が話題となっている。報道では、トランプ大統領の不規則な言動に焦点を当てているところが多いが、筆者は拉致問題に関する部分が気になった。

トランプ氏の要求

著書によると、トランプ氏は安部晋三首相の求めに従い、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との全ての会談で、日本人拉致問題について提起した。

また、米国が2018年6月、シンガポールでの初の米朝首脳会談文書を作成する交渉で、米側は拉致問題の記述を北朝鮮側に要求したという。最終的には書き込まれなかったものの、トランプ氏政権が日本のためにきちんと動いてきたことを改めて確認し、感謝の念を覚えた。

と同時に、拉致被害者の横田めぐみさんの弟、哲也さんが今月9日の記者会見で、次のように述べていたことを連想した。

「安倍政権が問題なのではなく、40年以上も何もしてこなかった政治家や『北朝鮮が拉致なんかしているはずがない』と言ってきたジャーナリストやメディアがあったからから安倍首相、安倍政権が苦しんでいる」

哲也さんは「何もしてこなかった」と指摘するのにとどめていたが、実際は何もしないどころか足を引っ張った政治家やメディアも少なくなかった。

例えば朝日新聞は平成11年8月31日付社説で、その1年前に弾道ミサイル「テポドン」を発射した北朝鮮への食糧支援再開を唱えるとともに、拉致問題についてこう書いた。

日朝国交正常化には、日本人拉致疑惑をはじめ、障害がいくつもある」

拉致問題を「じゃま」や「妨げ」を意味する障害と断じたのである。

北に迎合し続け

この年12月、北朝鮮で行われた村山富市元首相を団長とする超党派訪朝団と金容淳(キムヨンスン)朝鮮労働党書記との会談もひどいものだった。会談議事録によると、金容淳氏に「拉致という言葉は使わない約束だ」「本人の意思で行ったり来たりし行方不明ということはあり得る」と言われた村山氏は、唯々諾々と受け入れてこう述べた。

「人道上の行方不明者などについて意見交換する中で良い結果が出る方向で話し合う必要がある」

また、改革クラブの小沢辰夫元建設相は、めぐみさんと両親を会わせたいと求めつつもへりくだった。

「拉致とは言わない、船に乗ってきた人たちと仲良くなってこの国に来たと思う。おそらくこちらで立派に成長し、結婚し、お国(北朝鮮)のために働いているものと考える。(中略)十分立派にお国の公民として働いていると思うのでよろしくお願いしたい」

小沢氏は産経新聞の取材に「『船に乗ってきた人と仲良くなって』とは正式な会談では言っていない」と説明したが、なぜめぐみさんが北朝鮮の公民として働かねばならないのか。

拉致被害者を返せと強く迫るべきところで、どうして平身低頭する必要があるのだろうか」

ちなみに、朝日新聞は平成14年9月17日の小泉純一郎首相による初訪朝当日の紙面でも、次のように北朝鮮が好む行方不明者という曖昧な言葉を使っていた。

 「拉致問題解決を訴える行方不明者の家族たち」

 ¥拉致問題で何もしてこなかっただけでなく、北朝鮮のデタラメな主張に迎合し続けてきた日本の政治家やメディアより、トランプ政権のほうがはるかに役に立つし、有益だといえる。

(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)
松本市 久保田 康文さん採録 

2020年06月13日

◆横田家がメディアに求めた猛省

                       阿比留瑠比


拉致被害者、横田めぐみさんの父で5日に亡くなった拉致被害者家族会初代代表、横田滋さんの妻、早紀江さんら遺族が9日に行った記者会見は、心を揺さぶるものだった。その毅然(きぜん)としたたたずまいと心底から発する言葉に、このまま拉致問題の傍観者でいていいのかと、改めて自問した人も少なくないことだろう。

なかんづく、平成14年9月の小泉純一郎首相(当時)との初会談で、北朝鮮の金正日総書記が拉致の事実を認めるまで、拉致問題に関心が薄いか冷たかったメディアやジャーナリストらは、改めて猛省を迫られたと言える。

政治利用は侮辱

「マスコミも、イデオロギーに関係なく、この問題をわがこととしてもっと取り上げてほしい」

めぐみさんの弟、拓也さんはこう訴えた。何の罪もない少女が外国に無理やり拉致され、そのまま帰ってこないという悲劇、北朝鮮による国家犯罪を、主義主張という色眼鏡で見るなという当然の話だが、それがそうなってこなかった。

同じくめぐみさんの弟である哲也さんは、父の死を安倍晋三首相やその政権批判に利用するのはやめてほしいとと主張した。

「(安倍首相は)北朝鮮問題が一丁目一番地と考えていたのに、何も動いていないじゃないかというような発言を耳にする」

哲也さんは名指しは避けていたが、これは7日のTBS番組でジャーナリストの青木理氏の発言と符合する。青木氏はこう述べて安倍政権の外交政策を批判・揶揄(やゆ)していた。

「拉致問題が、今の安倍政権のある意味、一丁目一番地。(中略)安倍さんが一気に政界の階段を駆け上がるきっかけになった」

「『何の結果も残せないんじゃないか』というようなことを言う人もいる」

哲也さんは記者会見で「拉致問題にさまざまな角度で協力して動いてきた人が言うならまだわかるが」とも語っていた。あくまで冷静な口調ながら、何もしてこなかった人たちの無責任な罵声に、憤懣(ふんまん)やるかたないのがにじんでいた。

 このほか、毎日新聞専門編集委員の牧太郎氏もブログに「安倍晋三は『横田めぐみ一家』を騙(だま)し、徹底的に『政治利用』しただけ。『拉致』を利用して総理大臣になっただけだった」などと、一切根拠は示さず書いていた。

 めぐみさんが拉致されてから40年以上も、力の限り戦ってきた横田家に対する侮辱でもあると感じる。

秘書官時代から

そもそも安倍首相は父の安部晋太郎元外相の秘書官時代から拉致問題に取り組んできたが、当時はメディアも政治家も、ほとんど誰も拉致を信じず、相手にしないような時代だった。

「当時は拉致問題は全く誰からも顧みられなかったし、私もずいぶん批判を受けた」

安倍首相自身、国会でこう振り返ったことがあるが、金総書記が拉致を認めるまで、拉致問題にかかわることは政治家にとって、リスクはあってもメリットなどはまずなかった。

筆者は小渕恵三内閣の平成10年秋ごろ、当時の野中広務官房長官と鈴木宗男官房副長官が「(拉致問題などで)北朝鮮を批判して跳びはねている安倍みたいなやつはけしからん」と話しているのを目撃している。

拉致問題に熱心だと、かえって政権幹部らににらまれたのである。実際、安倍首相は当選同期の中で政府のポストに就くのは最も遅かった。いい加減で薄っぺらな批判は、拉致被害者家族にとっても迷惑である。

(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)
産経ニュース【阿比留瑠比の極言御免】 令和弐年6月11日

松本市 久保田 康文さん採録 

2020年06月08日

◆コロナ禍で見えた中国の正体

阿比留瑠比


【阿比留瑠比の極言御免】 令和弐年6月5日

「今日は6月4日、私にとっては終生、忘れ難い日である。今から31年前のこの日、中国共産党が軍を出動させ、自由と民主を叫ぶ丸腰の学生たちに対する血の鎮圧を断行した。多くの純粋な青年が凶弾(きょうだん)に斃(たお)れ、私たちの夢と理想は共産党の戦車によって押しつぶされた。中国近代史上、最も暗黒な日であった!」


 専制国家のまま

 中国から日本に帰化した評論家の石平氏は、中国が民主化を求める学生らを武力弾圧した天安門事件から31年となる4日、ツイッターにこう記した。魂の叫びのような言葉である。

 そして、今回の中国発の新型コロナウイルス禍とそれへの対応は、中国があの日から本質的に何も変わっておらず、情報隠蔽(いんぺい)も弾圧も辞さない専制国家のままであるという事実を改めて世界に見せつけた。

 この現実に、真正面から向き合おうとしているのが米国だといえる。トランプ米政権による対中批判について、日本のマスコミには次のようなお気楽な論調が少なくないが、率直に言って間違いか偏見である。

 「いまの『中国たたき』からは、冷戦期から米歴代政権が培ったはずの長期的戦略はうかがえない。11月に迫る大統領選挙へ向け、コロナ対応での自らの失策を覆い隠す思惑が透ける中国脅威論である」(2日付朝日新聞社説)

 もちろん、トランプ大統領が選挙を意識している部分はあるだろうが、それよりも、もっと純然たる米国の怒りの表れだろう。トランプ氏の5月29日の記者会見で次の言葉が、端的にそのことを示している。

 「中国がウイルスを隠蔽したせいで感染が世界に拡大し、米国でも10万人以上が死亡した」

 中国・武漢市政府は今年1月5日の時点でも、「人から人への感染は確認していない」などと虚偽の発表をしていた。こうした中国の情報隠しもあって、ベトナム戦争の死者(約5万8千人)の倍に迫る被害者が出た米国の憤りを、単なる選挙目当ての中国たたきで片づけていいはずがない。

 トランプ氏は記者会見でこのほか、中国が@香港での反体制運動を取り締まる国家安全法の導入を決めたことは、「一国二制度を定めた」中英共同宣言に違反A太平洋で違法に領有権を主張し、航行の自由や国際貿易を脅威にさらしているB長年にわたり多数の産業機密を盗むために違法なスパイ活動を行ってきた−などと指摘した。

 香港では、毎年行われてきた天安門事件の犠牲者追悼集会が、開催不許可とされる始末である。


 「新冷戦」の様相


 米国をはじめとする西側諸国がかって価値観を共有しないソ連(現ロシア)と対峙(たいじ)したように、現在、米中による新たな冷戦が始まろうとしている。

 日本が「自由や民主主義や基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有する同盟国として、米国と協力しながらさまざまな国際的課題に取り組んでいきたい」(5月25日、安倍晋三首相の記者会見)と米側に立つのは当然だろう。

 日本の政界は長年、「親中派だらけで、親米派はいない」(米軍高官)といわれ、日中友好至上主義にとらわれてきたが、最近はさすが変わってきた。

 「コロナ禍でも、沖縄県の尖閣諸島沖で領海侵入を繰り返し、日本の漁業者を追尾し威嚇する暴挙に出ている中国のどこが国際協調なのか、日中友好なのか」

 2日の参院財政金融委員会では、自民党の有村治子氏がこう問いかけていた。こうした当たり前の議論が、さらに活発化することを期待したい。

(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)

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  松本市 久保田 康文 
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2020年05月29日

◆国民を見ない立民と菅内閣 

阿比留瑠比


世界中が現在、新型コロナウイルスとの戦争状態に突入しているが、わが国の国会は浮世離れしている。1日の参院決算委員会では、立憲民主党の野田国義氏が森友学園問題をめぐって財務省近畿財務局職員が自殺したことを取り上げ、安部晋三首相に辞職の考えがないかと問うていた。>
>
 そして安倍首相の祖父の岸信介元首相が日米安全保障条約の改定に取り組んだ際、反対デモに加わった東大生、樺美智子さんが死去したことをめぐり、以下のようなやりとりがあった。>
>
 *野田氏*「亡くなったその後に首相の岸信介首相が辞職をした。おそらく岸首相は、この1人の命の大切さ、重みをお感じになったんじゃないか」>
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 *安倍首相*「事実誤認をしておられる。岸首相が辞職を決意をしたのは、(訪日予定の)米国のアイゼンハワー大統領が沖縄まで来ていたが、(安保闘争で)国内で大統領を迎えられる状況を確保できなかったことの責任を取ったというのが実態、真実だ」>
> *貴重な時間奪う質問***
>
>
 この非常時に、不要不急の質問で安倍首相や閣僚の貴重な時間を奪っている。同党では、新型ウイルス対応に関して首相が記者会見した3月28日には、川内博史衆院議員がツイッターでこうつぶやいていた。>
>
 「こんな時に、私は森友問題再検証チーム座長として活動。でもこんな時だからこそだ」>
>
 国民の生命・財産がまさに脅かされている事態をどう考えているのだろうか。毎日死者が、感染経路が特定できない感染者が増え続けていることに、深刻な危機感は覚えていないのか>
>
 かと思うと、同党最高顧問である菅直人元首相は30日のツイッターで、安部首相の新型ウイルス対策をこき下ろしていた。>
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 「全ての対応が鈍い。記者会見も原稿を読むだけで本気度が伝わらない」>
>
 菅氏は「自信をもって国民に方針を」とも記していた。だが、平成23年3月の東日本大震災の際、涙ぐみながら首相記者会見をして国民に不安を与えたことはお忘れのようである。>
>
 安部晋三総理が全国の小中高校などに休校要請をした際には、ツイッターで「対応の遅さを批判されて、それを気にして急遽(きゅうきょ)準備もなく対策を発表しているように見えます。リーダーとして最悪」と批判していたが、今も休校要請は稚拙で最悪と言い切れるだろうか。>
> *「俺が頭下げるのか」***
>
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 ともあれ震災後間もない時期にはこんなことがあった。当時の亀井静香・国民新党代表と村上正邦・自民党元参議院議員会長、小沢一郎元民主党代表の側近である平野貞夫・元参院議員の3人が集まり、与野党の首脳級が党派を超え菅首相に助言する構想が生まれた。>
>
 構想は仙谷由人官房副長官を通じて菅氏に伝えられたが、菅氏が「早期退陣を恐れ」(平野氏)首を縦に振らず頓挫した。筆者は村上氏から後に、「仙谷氏が話していた」としてこんなエピソードを聞いた。>
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 それによると、仙谷氏が菅氏に「挙党一致で復興に当たるため歴代首相経験者を回り、知恵を乞い協力を仰ぐべきだ」と進言したところ、菅氏は即座に拒否した。その理由は、こんなくだらないものだった。>
>
 「今さら俺が頭を下げるのか。小泉純一郎、安倍晋三、福田康夫、麻生太郎(各元首相)なんかに『知恵を借りたい』と言わなきゃならないのか」>
>
 立憲民主党は幹部の構成が重なるため菅内閣そっくりだともいわれる。実際、国民の方を向いていないように見えるところは、菅内閣と似通っている。>
> (産経新聞論説委員兼政治部編集委員)
> 産経ニュース【阿比留瑠比の極言御免】

> 松本市 久保田 康文さん採録 

2020年05月24日

◆支持者の利益損ねた立民

【阿比留瑠比の極言御免】
 

なるほど確かにそうだと膝を打った。検察官の定年を65歳に引き上げる検察庁法改正案の今国会での成立が見送られたことに対して、自民党の世耕弘成参院幹事長は19日の記者会見でこう述べた。

 「逆に立ち止まって考え直すいい時間ができた。これだけ(新型コロナウイルス感染拡大によって)経済が苦しく、雇用環境が厳しくなっている中で、国家公務員や地方公務員だけが給料も下がらないまま5年も定年延長されていいのか」

 検察庁法改正案は、国家公務員法改正案と一体化した「束ね法案」である。野党はこの2つの切り離しや、検察幹部の定年特例延長部分の廃止を主張したが、これらは混然一体となっており、「いったん撤回して組み直さないと無理」(法務省幹部)なのが実態だった。

地方公務員定年も

 そして国家公務員法改正案が成立しなければ、国に準拠して定める地方公務員の定年引上げも据え置かれる。政府・与党にとっては痛くもかゆくもない話だが、公務員労組である自治労を支持基盤とする立憲民主党にとっては、支持者から得られたはずの利益を損ねる結果となる。

 世耕氏は次のように指摘したが、うなずける。

 「そもそも国家公務員、地方公務員の定年延長という話は、人手不足の経済環境、雇用環境を前提に議論されてきた。今その前提状況が大きく変わった」

改正案は継続審議扱いとなり、ふつうは秋の臨時国会で再審議されることになるが、世耕氏はこうも語った。

 「臨時国会で議論といわれているが、秋には雇用環境が厳しくなってくる。そういった時期に公務員の定年延長という議論が本当に成り立つかどうか」

 安部晋三首相も、これ以上、法務省・検察側の求めに応じて提出した改正案によって痛くもない腹を探られ続けるのはうんざりだろう。首相は以前から、一連の騒動に関して「大体、検察の人事をこっちで決めているわけではないし、はなから私は熱心ではない」とあきれており、安倍政権下ではもう改正案は日の目を見ないとの観測もある。

自治労に「言い訳」

立憲民主党は、改正案の成立見送りについて「日本の民主主義の大きな前進」(18日、枝野幸男代表)などと勝ち誇っていたが、実は政府・与党が成立の意欲を失っていくことに慌てていたのではないか。枝野氏は同日のツイッターでこんなことも訴えていた。

 「私たちが異議を唱えていたのは、幹部検察官の恣意的(しいてき)な職務延長。一般の公務員などの、一律の定年年齢引き上げは与野党一致して賛成です」

 大切な自治労に対し、自分たちの反対による失策ではないと言い訳しているように聞こえる。

 また、産経新聞が改正案審議について「もうやらなくていい」と首相が漏らしていると報じた20日には、立民の安住淳国対委員長が記者団に対し、八つ当たり気味に世耕氏を批判した。

 「コロナのときに、こんなに衆院でエネルギを費やして国民世論を巻き込んでやっているのに、今になってこの改正案で65歳の定年がおかしいとか、自民党の責任者がそんなことを言い出したら、与党をやめた方がいい」

 何を言っているのかよく分からない。コロナ禍で国民が大変な思いをしているときに、コロナ対応で忙しい首相や閣僚を拘束し消耗させ、「火事場泥棒」と罵倒してまで改正案成立の足を引っ張った党はさてどこっだったろうか。

(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)

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松本市 久保田 康文 
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2020年05月21日

◆皇族と旧宮家 垣根なく

阿比留瑠比


産経新聞の16日付朝刊は、政府が安定的な皇位継承策の検討に向けての有識者へ聴取で、選後に連合国総司令部(GHQ)の意向で皇籍離脱した旧宮家の復帰に関しても見解を尋ねていると報じている。また、政府が過去に皇位継承について、どのような議論をしたかを検証する企画記事「皇位継承論議を振り返る」も始まった。

企画記事の中では、平成8〜10年に政権を担った橋下龍太郎内閣時代に、古川貞二郎官房副長官を中心に非公式な研究会が開かれていたことが記されている。このときの検討が17年、小泉純一郎内閣時の古川氏も委員を務めた有識者会議がまとめた女性・女系天皇を容認する報告書につながっていった。

「皇籍復帰議論せず」

筆者は当時、この件を取材していたので、いくつか補足を試みたい。

古川氏は今回、産経新聞のインタビューに有識者会議が、皇室の男系(父系)継承という大伝統を守るための旧宮家の皇籍復帰を排除した理由について、こう説明している。

「旧宮家は今の天皇家と縁が600年以上前にさかのぼり、戦後に皇籍から離れて長期間経過しており、国民が納得するかという懸念があった」

だが、古川氏らの研究会に参加した大学教授の一人も18年に、筆者の取材にこう答えていた。「『女系天皇に対する国民感情がどうなるかが最大の問題だ。その場合天皇のありがたみはどうなるか』というところで議論は終わった。旧皇族の皇籍復帰は議論しなかった」

 別のメンバーも同時期、筆者に「女性・女系天皇にどういう問題があるか、認める上で妨げはあるかという観点から研究した」と語っており、実際は皇籍復帰案はじめから検討されなかったのではないか。

また古川氏の言いぶりも誤解を招きかねない。実際には旧皇族のうち竹田、北白川、朝香、東久邇(ひがしくに)の4宮家には明治天皇の皇女が嫁ぎ、東久邇家には昭和天皇の皇女も嫁いでおり、血縁は近く「縁」は近い。

 
「事あるごとに親睦」


上皇様のいとこに当たり、「ヒゲの殿下」として親しまれた故・ェ仁(ともひと)さまが月刊『Voice』の19年4月号で語られた次の言葉が、すべてを言い表しているのではないか。少し長いが引用したい。

「十一宮家が皇籍離脱させられてとき、ときの宮内府次長が、『宮さま方がいつの日かまた復帰なさることがあるやもしれません。身をお慎みください』といっているのです。

「実際に旧皇族の方とは、いまも年間を通して至るところでお付き合いがあります。有識者会議は、60年間も一般人として生きてきた人々が皇族に戻るのは違和感があるといいましたが、2667年の中の60年など一瞬にすぎません。

陛下も皇族と旧皇族からなる菊栄親睦会を大切になさり、お正月や天長節など、事あるごとにメンバーをお集めになられています。私のなかには現職皇族と元皇族の垣根などありません」

ちなみに橋本元首相は18年、筆者のインタビューに対し、有識者会議への不満をこう表明している。

「古川君に皇族方の意見を聴くよう勧めたが、答えは『ノー』だった。『(皇室の)全員から聴けなんて言っていない。しかし、せめて皇室の最長老の三笠宮さまからぐらいは聴くべきではないか』と勧めたが、聞き入れられなかった」

故・三笠宮さまは女性・女系天皇には否定的な考えを示している。

(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)
産経ニュース【阿比留瑠比の極言御免】 令和弐年4月17日

松本市 久保田 康文さん採録 

2020年05月18日

◆朝日 政権批判にネット利用 令和弐年5月14日

阿比留瑠比


ああ、また物量作戦を繰り返しているよとあきれたものの、存外、安倍晋三政権攻撃のやり方も変えてきたのかもしれないと考え直した。朝日新聞の12日付朝刊を読んでのことである。

新たなパターン

この日の朝比の紙面は、1面トップ記事「検察庁法改正案 抗議ツイート急拡大」「首相 今国会成立の構え」をはじめ、2面トップも3面トップも4面トップも25面トップも、一面コラム「天声人語」も社説もすべて検察庁法改正案に関する批判だった。

 まるで、改正案が成立したら天地がひっくり返り、日本が滅ぶかのような大騒ぎっぷりである。

 思えば朝日は、安全保障関連法や特定秘密保護法の審議の際も、森友・加計学園問題のときも、紙面を同じテーマで埋め尽くすようにして政権批判を展開してきた。そのたびに、憲法が踏みにじられただの民主主義の破壊だの戦前回帰だのと叫び、世論を誘導しようとしたが、いつのまにか沈静化してきた。

 12付社説の題名「国民を愚弄する暴挙だ」も朝日の読者にとっては、特別珍しくもないよく目にする表現にすぎないだろう。

 それだけならいつもの話で終わる。だが、今回新たなパターンだと感じたのは、日頃はインターネット上の情報には真偽不明のものやデマが多いと指摘している朝日が、ツイッターを政権攻撃の材料・根拠として使っていたことである。

 「ツイッター上では9日夜以降、俳優や歌手ら著名人から『#検察庁法改正案に抗議します』という投稿が相次いだ。リツイートも繰り返され、投稿の数は、11日午後8時過ぎで680万件を超えた」

 1面記事ではこう投稿数の多さを強調したほか、2面記事でも4面記事でも25面記事でも天声人語でもこのツイートを取り上げていた。いつもは、自分たちへの批判や抗議で満ちあふれているネット空間を敵視しているかのように思える朝日だが、安倍政権批判に利用できるとなれば、なりふり構わないのだなと改めて感心させられる。

 さらに13日付26面記事「抗議の声 背を向ける自民」では、政府・与党がSNSへの投稿=国民の声の信用度に疑いを向けることを批判する念の入れようである。一方で、その国民の声の発信者が、本当に検察庁法改正案の目的や理由を理解し、自分の考えで世に問うているかは度外視している。

 現在発売中の『月刊正論』6月号では、ITジャーナリストの宮脇睦氏が次のように指摘している。

「近頃のマスコミ報道には情報の出元を『ネット』とすることで『不確かな情報』とレッテルを貼り、論証責任から逃げを打ち、さらには『ニュースを作り出せる』と『悪用』しているかの事例を確認します」



理解できぬ論理

朝日は26面記事で、首相周辺が「日本人の20人に1人(がツイートした)とかおよそありえない数字」と批判的に引用しているが、自分たち自身も本当に20人に1人がツイートしたと信じていまい。

記事は、東京大大学院工学系研究科の鳥海不二夫准教授による473万件のツイート(リツイートを含む)の分析結果として「実際に関わったアカウントは約58万8千だった」「このうち2%に当たる1万2千のアカウントがリツイートを繰り返したことによる拡散が、全体の約半数を占めていた」とも紹介しているのである。朝日の論理が理解できない。

産経ニュース【阿比留瑠比の極言御免】

(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)

松本市 久保田 康文さん採録 

2020年04月30日

◆一部野党 国会登院自粛しては

阿比留瑠比



 新型コロナウイルスの感染拡大は、有事を想定していない憲法をはじめとするわが国の法的・社会制度的な脆弱(ぜいじゃく)さを可視化した。国会は国民の生命と財産を守るため、与野党がその垣根を越えて一致協力するところを見せてほしい。それでこそ政治は、国民の信頼を勝ち得るだろう−。

 そんな淡い期待を込めてここ2カ月ほど国会の様子を眺めてきたが、やはり現在の主流派野党にそれを望むのは八百屋で魚を求めるのに等しいらしい。

ためにする批判

 安部晋三首相は7日の衆院議院運営委員会で、日本維新の会の遠藤敬国対委員長が「現行憲法はこのウイルスのような国難を想定していなかった。憲法改正による緊急事態条項の創設が不可欠だ」と質問したのに対し、こう答弁した。

 「緊急時に国民の安全を守るため、国家や国民がどのような役割を果たしていくべきか憲法をどのように位置づけるかは、極めて重く大切な課題だ。新型コロナウイルス感染症への対応も踏まえつつ、国会の憲法調査会で、与野党の枠を超えた活発な議論が展開されることを期待したい」

 受けた質問に応じ、今後の課題についてごく当然のことを述べている。ところが、立憲民主党の蓮舫副代表は早速、ツイッターでこれにかみついていた。

 「今最大の目的はコロナウイルス感染症の収束に向けたあらゆる手段です。国民の命を守ることです。改憲議論への期待を口にするリーダーに、それは違うとなぜ、自民党から声が出ないのでしょう」

 どう読んでも難癖としか思えない。今回の緊急事態宣言を含め、現下の諸課題に全力で取り組むことと、その経験も取り入れて将来の在り方に関して答えることは何も矛盾しない。

 蓮舫氏は、自民党の憲法審幹事が3日、立憲民主党に「緊急事態における国会機能の確保」をテーマにした審査会開催を提案した際にもこう批判していた。

 「黙れ、と言いたくなった。今やるべきことは、国会の全ての審査をコロナウイルス感染症対策に特化し、与野党協議を徹底すること。国民のために、世界のために出来ることをすべき時でしょ」

 中国湖北省武漢市から政府のチャーター機で邦人第1陣が帰国した直後の1月29日の参院予算委員会で、持ち時間のほぼ全てを桜を見る会の追及に費やしたのは、はて誰だったか。

 蓮舫氏は安倍首相が2月末、全国の小中高校などに一斉休校を求めたときには「こんなめちゃめちゃなリーダーシップはない。すぐ撤回すべきだ」と主張していたが、今も休校要請は間違いだったと考えているのだろうか。


現場から「黙って」

 今回は蓮舫氏の言動を例に挙げたが、彼女に限らず主流派野党の政権批判には感情的で脊髄(せきずい)反射的なためにするものが多い。食傷気味でうんざりしていたところ、大阪維新の会代表の松井一郎大阪市長が現場の首長の立場から次のようにばっさり斬っていた。

 「無責任の立憲民主党や国民民主党、共産党は今年の1〜2月、新型コロナウイルスの危機が迫る中で桜を見る会や森友学園問題ばかりやっていた。もう、とにかく黙っていてもらいたい。行政はコロナの被害に遭っている人をサポートしていく実務の世界にいる。選挙目当てのパフォーマンスをしている人たちは閉じ籠もって、出てこないで」

 多くの国民もそう実感していることだろう。主流派野党は一昨年も国会審議に応じず17連休を享受したのだし、今年は国会に来るのを自粛したらよい。

(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)
産経ニュース【阿比留瑠比の極言御免】 令和弐年4月9日
松本市 久保田 康文さん採録 
 

2020年04月27日

◆立民支持率下落の虚実

阿比留瑠比


まるで分かっていない。あるいは、これまで固執してきた政治手法を今さら否定できず、現実から目をそらしているのか・・・。立憲民主党の福山哲郎幹事長が、21日の記者会見で述べた言葉を聞いて、思わず「ダメだこりゃ」と声が出た。

福山氏は記者に、報道機関各社の世論調査で立憲民主党の政党支持率が下落傾向にある理由について問われ、こう分析してみせたのだった。

「この局面で支持率が落ちたのは、高井議員の不祥事が原因だと考えている。早く支持率が戻り、上昇機運になるように、心を引き締めてやっていきたい」

立憲民主党に所属していた高井崇志衆院議員(除籍)が、新型コロナウイルス対策で改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき緊急事態宣言が発令された後も、繁華街の風俗店で遊びほうけていたと、週刊文春が報じたことがきっかけだというのである。

だが、この福山氏の言い分は筋が通らない。第一、文春報道は16日発売の4月23日号での話だが、立憲民主党の支持率低下はそれ以前から顕著だった。

結党以来最低

産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査(11、12両日実施)では、立憲民主党の支持率は3・7%と前回の7・7%から急落し、結党以来過去最低となっていた。一方、日本維新の会の支持率は前回の3・8%から5・2%へと伸び、野党トップに躍り出た。

また、毎日新聞がその1週間後の18、19両日に行った世論調査でも、立憲民主党の支持率は5%(前回は9%)と下落し、日本維新の会の6%(同4%)に逆転された。毎日の調査で、立憲民主党の支持率が日本維新の会を下回ったのは初めてだった。

さらに朝日新聞の18、19日の調査でも立憲民主党は支持率を1ポイントながら減らし、5%にとどまった。

確かに毎日、朝日の調査は文春報道後ではあるが、高井氏は立憲民主党の主要ポストに就いていたわけではないし、知名度が高いともいえない。果たして支持率に大きな影響が出るだろうか。新聞、テレビも大きく取り上げてはおらず、支持率下落を高井氏のせいにするのは無理がある。

安部晋三内閣の支持率も数ポイント落ちているのに、立憲民主党には期待が集まらないどころか見放されている。



コロナより桜



 なぜか。それは立憲民主党が、コロナ危機が迫りくる今年1月末ごろから3月にかけ、国会でそれよりも首相主催の桜を見る会や森友学園問題の方が重要であるかのように振る舞ったためだろう。福山氏自身、3月4日の参院予算委員会でこう述べていた。

 「総理、嫌でしょうが桜を見る会について質問します。時間が余れば、コロナ対策もやります」

 実際は福山氏はコロナ対策に関する質問を行っているが、こんな言い方を聞いた国民はどう思うだろうか。どうせ何も出てこない不要不急の質問を、安倍首相に嫌がらせをするために優先させていると受け取られても無理はあるまい。

 一方で憲法への緊急事態条項盛り込みを主張するなど、早くから危機感を表明していた維新は評価を上げたのである。

 「立憲民主党は文句ばかりで全然ダメだと。保守じゃない人も言い始めた。国民への一律10万円給付についても、してもしなくても文句を言うのかと」

 自民党幹部はこうほくそ笑む。このまま変わらなければ、立憲民主党は皮肉にも安倍政権を誰よりも強力に支える「補完勢力」であり続けよう。
産経ニュース【阿比留瑠比の極言御免】 令和弐年4月23日

(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)

松本市 久保田 康文さん採録 

2020年04月18日

◆皇族と旧宮家 垣根なく

阿比留 瑠比


産経新聞の16日付朝刊は、政府が安定的な皇位継承策の検討に向けての有識者へ聴取で、選後に連合国総司令部(GHQ)の意向で皇籍離脱した旧宮家の復帰に関しても見解を尋ねていると報じている。また、政府が過去に皇位継承について、どのような議論をしたかを検証する企画記事「皇位継承論議を振り返る」も始まった。

企画記事の中では、平成8〜10年に政権を担った橋下龍太郎内閣時代に、古川貞二郎官房副長官を中心に非公式な研究会が開かれていたことが記されている。このときの検討が17年、小泉純一郎内閣時の古川氏も委員を務めた有識者会議がまとめた女性・女系天皇を容認する報告書につながっていった。

「皇籍復帰議論せず」

筆者は当時、この件を取材していたので、いくつか補足を試みたい。

古川氏は今回、産経新聞のインタビューに有識者会議が、皇室の男系(父系)継承という大伝統を守るための旧宮家の皇籍復帰を排除した理由について、こう説明している。

「旧宮家は今の天皇家と縁が600年以上前にさかのぼり、戦後に皇籍から離れて長期間経過しており、国民が納得するかという懸念があった」

 ¥だが、古川氏らの研究会に参加した大学教授の一人も18年に、筆者の取材にこう答えていた。「『女系天皇に対する国民感情がどうなるかが最大の問題だ。その場合天皇のありがたみはどうなるか』というところで議論は終わった。旧皇族の皇籍復帰は議論しなかった」

別のメンバーも同時期、筆者に「女性・女系天皇にどういう問題があるか、認める上で妨げはあるかという観点から研究した」と語っており、実際は皇籍復帰案ははじめから検討されなかったのではないか。

また古川氏の言いぶりも誤解を招きかねない。実際には旧皇族のうち竹田、北白川、朝香、東久邇(ひがしくに)の4宮家には明治天皇の皇女が嫁ぎ、東久邇家には昭和天皇の皇女も嫁いでおり、血縁は近く「縁」は近い。


「事あるごとに親睦」


上皇様のいとこに当たり、「ヒゲの殿下」として親しまれた故・ェ仁(ともひと)さまが月刊『Voice』の19年4月号で語られた次の言葉が、すべてを言い表しているのではないか。少し長いが引用したい。

「11宮家が皇籍離脱させられてとき、ときの宮内府次長が、『宮さま方がいつの日かまた復帰なさることがあるやもしれません。身をお慎みください』といっているのです。

「実際に旧皇族の方とは、いまも年間を通して至るところでお付き合いがあります。有識者会議は、60年間も一般人として生きてきた人々が皇族に戻るのは違和感があるといいましたが、2667年の中の60年など一瞬にすぎません。陛下も皇族と旧皇族からなる菊栄親睦会を大切になさり、お正月や天長節など、事あるごとにメンバーをお集めになられています。私のなかには現職皇族と元皇族の垣根などありません」

ちなみに橋本元首相は18年、筆者のインタビューに対し、有識者会議への不満をこう表明している。

「古川君に皇族方の意見を聴くよう勧めたが、答えは『ノー』だった。『(皇室の)全員から聴けなんて言っていない。しかし、せめて皇室の最長老の三笠宮さまからぐらいは聴くべきではないか』と勧めたが、聞き入れられなかった」

故・三笠宮さまは女性・女系天皇には否定的な考えを示している。

(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)
産経ニュース【阿比留瑠比の極言御免】 令和弐年4月17日

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松本市 久保田 康文さん採録