2020年02月09日

◆国守る覚悟 「憲法改正」で示せ

加瀬英明


12月に、私はいくつかの集会で、次のように挨拶した。
 「いま、日本はこの国が誕生してから、もっとも深刻な危機に見舞われています。

元寇はもちろん、幕末に西洋の帝国主義勢力によって独立が脅かされた時よりも、はるかに切実な危機に直面しています」

幕末の危機といえば、ペリー艦隊の来寇によって泰平の夢を破られてから、すでにアジア諸民族を支配していた西洋列強の脅威に対して、誰の助けも借りずに立ち向かわねばならなかった。

だが、幕末の日本は屈しなかった。国難を乗り切ったのは、日本国民が高い誇りをいだいていたからだった。

どうして日本だけが、圧倒的な力を持っていた西洋の植民地勢力に呑み込まれることなく、明治元年から40年あまりで、西洋列強の仲間入りをたちまちうちに、果すことができたのだろうか?

国民が国の行方をひたすら想っていたからだった。そして西洋諸国と並ぶことによって、暗黒にあったアジア・アフリカ諸民族の光となったのだった。

日本は大東亜戦争を戦うことによって、数世紀にわたって有色人種を奴隷のように支配していた西洋の帝国主義勢力から、アジア・アフリカ諸民族を解放して、人類史ではじめて人種平等の理想の世界を、創りだした。先人の偉業を、大いに誇りたい。

日本こそ世界史でもっとも誇るべき歴史を、織りなしてきた国だ。

日本国民は令和元年に絵巻物のような「即位の礼」と、太古の昔から伝わる大嘗祭を目(ま)の当たりにして、日本が世界最古の皇室を戴いている国だと、覚ったにちがいない。

それにもかかわらず、今日の日本国民の多くが、日本の歴史と文化に誇りをいだくことなく、根を失った国になってしまっている。

根を失ったために、未曽有の危機に見舞われている。
だから、私は今日の日本が幕末や、先の大戦末における敗戦よりも、はるかに大きな危機に瀕していると警告している。

敵は日本の外にはない。外の敵よりも、内の敵を恐れなければならない。中から、日本を蝕んでいる。
日本国民の多くが、現行の日本国憲法のおかげで、日本が世界に誇るべき“平和国家”だと、いまだに信じている。

先の臨時国会では、議員諸君にとって日本が直面する最大の問題が、「中国、北朝鮮の切実な脅威」でも、牙を剥く中国と並ぶ「少子化の危機」でも、「アメリカがいつまで日本を守るか」ということでもなく、首相主催の「桜を見る会」だった。

洪水避難命令が発せられたというのをよそに、子供のパーティの縺(もつ)れごとで、大人たちが口論に耽っているようなものだ。これこそ平和国家であるというのなら、国民全員が認知症にかかっている。

朝鮮半島は日本の隣にある巨大な時限爆弾だ。北朝鮮は米中核交渉によって、トランプ大統領を、金正恩委員長の飼い猫のようにじゃらしてきたが、この間に、核弾頭、ミサイルともに性能が大きく向上した。

私はトランプ大統領と金委員長による米朝核交渉が始まった時から、「北朝鮮が核兵器を手離すことはあり得ない」と、書いてきた。

北朝鮮はアメリカが経済制裁を緩和しない限り、トランプ大統領との首脳会談はもちろん、米朝交渉に応じないと恫喝している。アメリカを揺さぶるために、日本の頭上を再び越してミサイルを撃つことがあろう。

トランプ大統領も12月3日に、「金委員長は親友だが、アメリカが軍事力を行使することもありうる」と、脅している。

トランプ大統領はさらに12月8日に、「金正恩委員長が非核化するという約束を破った場合には、全てを失うことになろう」と、ツイッターに書いて威嚇している。北朝鮮を廃墟にするといっているのだ。朝鮮半島に火の手があがりうる。

韓国では、「親北派」の文在寅(ムンジェイン)政権が暴走している。もし万一、南北が一緒になれば8000万人の核武装国家が出現する。日本の平和憲法に、敬意を払ってくれるだろうか?

中東が混乱を、いっそう深めている。日本のエネルギーの80%以上を供給しているアラビア半島の安定が、いつまで続くものだろうか?そのかたわら、ヨーロッパ諸国は「ロシア軍に襲われるのではないか」と怯えている。

アメリカ、カナダとヨーロッパ諸国が、ロシアの脅威に対して結成してきた軍事同盟のNATO(北大西洋条約機構)諸国はポーランドと、バルト海に面するラトビア、エストニア、リトアニアに混成部隊を派遣している。

アラビア半島か、ヨーロッパが危機に陥った場合、米国は東アジアに置いている兵力を転用することとなる。日本は米軍という甲羅(こうら)を失ってしまう。

芥川龍之介の小説『蜘蛛(くも)の糸』のように、日本をはじめとする多くの諸国が、アメリカの軍事力というクモの糸を命綱として、ぶら下がっている。下は地獄だ。

来年11月に、アメリカで大統領選挙が行われる。アメリカの景気が着実に上向いており、議会における弾劾騒ぎは、民主党による厭がらせにすぎない。私はトランプ大統領がこのままゆけば、再選されると信じている。
だが、万一、トランプ大統領が敗れて、国防より福祉を優先する政権に替わるかもしれない。

大統領選挙では、ニューヨーク州、フロリダ州が最大の選挙人数を擁している。ニューヨーク、カリフォルニア州はリベラルの民主党の牙城だが、フロリダ州がどうなるか、アメリカも民主国家だから、日本の“小池百合子現象”のようなことが、起りうる。

現行の日本国憲法は、中国、北朝鮮、韓国を喜ばせるだけのものだ。護憲派は、中国、北朝鮮、韓国を手助けしている根といえば、植物の地下器官であって、地中にある滋養分を吸収することによって、茎や、葉の生命を支えている

国家にとって、根とは何だろうか? 地中に隠された根と同じように、目で見ることができないが、歴史と伝統文化によって培われた、国民精神が根に当たる。

国家が独立を保ち、国民の平和と安全を守るためには、前人に感謝し、先人の偉業を誇ることが必要だ。それでなければ、根腐れした老木のように、立ち枯れてしまう。
国家は地中に逞しい根を、しっかりと張っていなければならない。

何ごとも心のなかで願うことから、始まる。
願いは祈りだ。今日、私たちが生きる日本は、先人たちが遺してくれた贈り物である。先人たちの精神を受け継いで、日本の独立を護り抜かねばならない。

願いも、祈りも、先人への感謝の気持ちから発しなければ、虚ろなものでしかない。

だが、現行の日本国憲法の前文は、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し」と、うたっている。日本だけに、先の戦争を招いた責任を負わせることによって、日本が犯罪国家であると決めつけている。

現行憲法はアメリカが占領下で、「この憲法案を呑まなければ、天皇の一身の安全を保障しない」といって、強要したものだ。憲法の前文は、アメリカが戦争に敗れた日本に押しつけた、日本に「悪う御座いました」といわせている詫び状だ。

日本が先の対米戦争を、アメリカの不当な圧迫を蒙って戦ったのには、十分な理由があった。平和を愛しておられた昭和天皇が、開戦の詔勅のなかで、「自存自衛ノ為蹶然(けつぜん)起ッテ」と宣明されている。

詳しくは、拙著『大東亜戦争で日本はいかに世界を変えたか』(ベスト新著、KKベストセラーズ)を、お読みいただきたい。憲法の前文は、先人を辱(はずかし)めるものだ。このような憲法を、今日まで戴いてきた私たちは、罰当りだといわねばならない。

11月3日が巡ってくるたびに、いまだにこの日は「文化の日」と、呼ばれている。明治天皇の御誕生日を記念する「明治節」だったのを、占領下で日本から誇りを奪うために、「文化の日」に改めさせられた。

4月29日の昭和天皇の御誕生日は、意味が不明な「みどりの日」と呼ばれていたが、「昭和の日」に正されたのに、「文化の日」はそのままだ。良識ある国民によって、「文化の日」を「明治の日」に改める運動が行われている。

ところが、朝日新聞がこの運動をもたらした「八紘一宇」の軍国主義時代を呼び戻すことを企んでいるから、「文化の日」のままにすべきだと述べて、反対している。

私は天皇御即位を、皇居前広場において祝った『国民式典』の組織委員をつとめたが、両陛下が二重橋に出御された時に、期せずして万歳三唱の声が皇居の杜に轟(とどろ)いた。

すると、翌日の朝日新聞が「戦前を思い出させた」と、非難した。日本が明治に入って、国家政策として富国強兵を行ったのは、正しかった。

清、ロシア帝国が、日本を呑み込もうとするのに対して、国民が一致団結して、日清、日露戦争に勝つことがなかったら、清国か、ロシアに隷属することを強いられて、今日の日本がなかった。明治はいうまでもなく、輝かしい時代だった。

「八紘一宇」は、初代神武天皇が詔(みことの)りによって、人種平等を説いた誇るべき言葉だ。憲法を改正しないかぎり、日本という大樹が根腐れして立ち枯れてしまおう


2019年12月05日

◆国民の国家意識の欠落こそが

加瀬英明


国民の国家意識の欠落こそがわが国の危機である

皇居で行われた『即位礼正殿の儀』の式典は、平安時代の絵巻が再現され
たように、美しかった。

全国民が天皇を戴く日本の歴史を目(ま)の当たりにして、日本の古い国柄
にあらためて誇りをいだいたと思う。

即位礼の前日に、私は数土文夫前東京電力会長と、月刊誌『致知』の求め
によって「日本は何をなすべきか」というテーマで、新年号の対談を行った。

数土前会長は、福島原発事故後に東電会長に就任される前は、日本を代表
する製鉄会社であるJFEの社長、会長をつとめられたが、漢籍と日本の
精神史に造詣が深い経営者として、多くの心ある人々から慕われている。

対談が始まると、国民が国家意識を欠いていることが、いま、日本が直面
しているもっとも大きな危機だと、意見が一致した。

今日の日本は、日本を取り巻く国際環境が厳しさを増しているというの
に、国家としての自立心が希薄なために、日本の平和と繁栄を持続できる
か、深い不安に駆られる。

憲法を急いで改めねばならないが、多くの国民が「憲法改正よりも台風被
害からの復興が先だ」とか、「福祉を優先すべきだ」「保育所をつくるほ
うが先きだ」と思っている。

まったく次元が違った、筋違いな議論だ。

現行の日本国憲法は日本の安全と生存を、一方的にアメリカに依存してい
るが、外国であるアメリカがどのような状態のもとでも、日本を守ってく
れる保障はない。

現行憲法は日本の自立を妨げており、国家の存亡をアメリカに委ねている
から、アメリカへの「甘えの憲法」でしかない。

だが、いつまでアメリカに甘えていられるものだろうか。日本が自立しな
ければ、日本が危ふい。

甘えは、幼な児が行うことだ。日本は揺り籠から一刻も早く出て、おとな
の国にならなければならない。

護憲派は保育所で無心な時を過している幼児の集まりのようだ。

護憲派やマスコミが、現行憲法を「平和憲法」と呼んでいるが、日本を幼
な児にとどめようとする玩具(おもちゃ)なのだ。

現行憲法は独立国の憲法とは、とうてい、いえない。

占領下で、この憲法を書いたアメリカ人のなかに、日本語を自由に読み書
きできる者が、一人もいなかった。

古代から育まれてきた日本の国柄を、理解していた者が、一人もいなかった。

このような外国人が集まって書いたのだから、日本の大黒柱である憲法を
起草することが、できたはずがない。
このような憲法では、国民の愛国心が涌くはずがない。

国家意識が希薄になっているのは、日本にふさわしくない憲法を戴いてき
たためだ。

国家意識が欠落しているから、憲法を大切にすることがない。

そのために、戦後今日に至るまで、憲法を改めることができないでいる。

国民に日本が国家であるという覚悟がないから、国民が憲法に真剣な関心
をいだくことがない。

もし、国民に健全な国家意識があるとすれば、日本が講和条約によって独
立を回復してから、国家の基本法である憲法を、当然、改めていたことだ
ろう。


2019年06月04日

◆憲法改正が実現する日こそ、主権回復の日となる

加瀬 英明


4月日に28、都内で「主権回復記念日国民集会」が行われて、私も弁士の
1人として登壇した。

この日は、日本がサンフランシスコ講和条約によって、昭和27(1952)年
に独立――主権を回復した日に当たる。

これまで、私はこの日の集会に参加したことがなかった。というのは、ア
メリカ軍による占領下で強要された憲法があるかぎり、日本が独立国とし
て主権を回復したと思えないからである。

現行の日本国憲法は前文の冒頭で、「日本国民は(略)政府の行為によつ
て再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権
が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」とうたっているが、
「政府」というのは、日本の政府のことである。

私は日米近代史の研究者として、先の大戦はアメリカ政府の行為によって
起ったと信じているが、この前文は不当なことに戦争の咎を、日本だけに
負わせている。

憲法第9条『戦争の放棄、戦力及び交戦権の否認』では、「国権の発動た
る戦争と、武力による威嚇または武力の行使は」「永久にこれを放棄す
る」「陸海軍とその他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権はこれを
認めない」と述べて、日本の主権を否定している。

猛禽猛獣がうろつくジャングルである国際社会で、日本を赤子の生け贄の
ように放置しておくと述べているのだ。ここの「武力による威嚇」は、
「武力による抑止力」と読むべきである。

私は集会で登壇して、「残念だが、この憲法があるかぎり、日本が主権を
回復したとはいえない」と、訴えた。憲法を改正した日を主権を回復した
日として、祝いたい。

現行憲法は日本国民に、国家権力が悪であり、戦うことがどのような場合
においても、悪であると思い込ませてきた。だが、どのような国家も、国
民の負託に応えて権力を行使するし、国民の生命財産と独立を守る必要に
迫られた場合に、戦うものだ。

いうまでもなく、権力は悪ではない。自国を守るために戦うことが、悪で
あるはずがない。日本は国旗、政府があっても、国家としての要件を満た
していない。

それなのに、いったいどうして日本の主権を否定する、憲法の名に価しな
い憲法を、今日まで戴いてきたのだろうか。

私は現行憲法を“偽憲法”と呼んできたが、どうしてこのような重大な欠陥
がある憲法を、今日に至るまで改めることがなかったのか、理解できない。

多くの国民にとって先の敗戦は、男であれば戦勝国によって睾丸を抜き取
られたか、女であれば強姦されて、処女を失ったような強い衝撃を受け
て、なすことを知らず、自暴自棄になってしまった。

そのために、自己を社会からはずされたアウトキャスト――除(の)け者とみ
なして、はずされた者だから何をしてもよい、何も責任がないという自虐
的な態度をとるようになってしまったとしか、思えない。

日本はまるで不良少年か、不良少女のような国になってしまったのだ。自
棄(やけ)になって、自分に対する責任を負うことも拒んでいるのが、護憲
派の本性なのだろう。

護憲派を更生させなければ、日本が亡びてしまおう。

2018年08月23日

◆トランプには緻密な頭脳と胆力あり

加瀬 英明


“トランプ旋風”という、異常気象が吹き荒れて、全世界を翻弄している。

トランプ大統領は、一挙に、中国、イランの経済を締めあげる、勝負に出
た。中国、北朝鮮、イランは秘策を練っているにちがいない。

日本の頭上に重くのしかかる暗雲は、少しも晴れていない。

いったい、日本にこの荒波に耐える秘策が、あるのだろうか。それとも、
国民はこれまでの行きかたを改めずに、ひたすら平和を念じていさえすれ
ばよいと、信じているのだろうか。

トランプ大統領のやり口は、この人の育ちによって、説明される。

父親がニューヨークの成功した不動産業者だったから、青少年時代から地
元のマフィア(暴力団)と交際があった。トランプ青年はハーバード大学
のビズネス・スクールより格が高い、フィラデルフィアの名門校ペンシル
バニア大学大学院のワートン・スクールで、MBA(経営学修士号)を取
得したから、緻密な頭脳の持ち主だ。

私はフィラデルフィア大学に、講師として招かれたことがある。

トランプ大統領は、ただのボンボンのセレブではない。マフィアと付き
合ったことから、肚にドスを呑んで、微笑を浮べておだてながら、相手を
脅すことを身につけている。

欧米のマスコミは、トランプ大統領が奇矯、衝動的で、国際秩序を破壊し
ているといって、足蹴にするのに熱中して、快感に浸っている。だが、中
国を甘やかしてきたことが、中国を増長させ、イランに対して手を抜いて
いたことが、中東を危ふくしてきた。

欧米の“ぶりっ子”の大手マスコミも、良識ぶって、ことなかれ主義なのだ。

しかし、トランプ大統領をいくら罵ってみても、米国民のあいだで、トラ
ンプ大統領の人気は高い。トランプ大統領の世論調査の支持率が41%に
あがって、米国のどの政治家よりも高いし、米国の景気は“規制マニア”
だったオバマ大統領が行った規制を、次々と撤廃したために、上向く一方だ。

11月の中間選挙は、州による候補者の人本位だから、共和党が下院で僅差
で敗れるかもしれないが、いまのところ、次の大統領選挙におけるトラン
プ優位は、揺るぎがない。

対する民主党は、政策を打ち出す能力がなく、トランプ大統領をけなすこ
とだけに、血道をあげている。どこかの国のようではないか。


2018年08月22日

◆非核化 成果なければ米国「海上封鎖」断行か

加瀬英明


日本を守るA 非核化 成果なければ米国「海上封鎖」断行か

米中間で、“関税合戦”による死闘が始まった。

その脇で、いま、中東が爆発しそうだ。米中間のデスマッチの幕があがる
わきで、北朝鮮危機がどこかへ行ってしまったように、みえる。米朝はこ
こ当分のあいだは、交渉を続けてゆくのだろうか。

8月初めに、シンガポールで東南アジア諸国連合(ASEAN)サミット
が催された。

北朝鮮の李容浩(リヨンホ)外相が、「米国が同時並行する措置をとらな
ければ、わが国だけが非核化を進めることはありえない」と演説したのに
もかかわらず、ポンペイオ国務長官は北朝鮮の非核化について、「北の決
意は固く楽観している」と述べて、李外相と固い握手を交わした。

日本では、6月にシンガポールにおいて「歴史的な」米朝首脳会談が行わ
れてから、しばらくは緊張が解けたものと判断して、北朝鮮からのミサイ
ル攻撃に備えて、東京(防衛省構内)、島根、広島、愛媛、高知各県、北
海道に展開していた、PAC3ミサイル迎撃ミサイルを撤収した。

北朝鮮は、米国から南北平和協定、制裁の緩和など段階的な見返りを求め
て、トランプ政権をじゃらしている。北はワシントンを甘くみているのだ。

だが、トランプ政権は北朝鮮をあやしながら、北朝鮮に鉈(なた)を振る
う瞬間を、待っている。

もし、11月初頭の米国中間選挙の前までに、北が非核化へ向けて、米選
挙民が納得できる成果を差し出さなければ、海軍艦艇を用いて、北朝鮮に
対する海上封鎖を実施することになろう。米国民は何よりも力を好むか
ら、喝采しよう。

 私は本紙の『日本を守る』連載(4月27日号)のなかで、米国が北朝
鮮に対して海上封鎖を断行する可能性が高いと予想している。

 海上封鎖という“トランプ砲”が発せられると、日本の政府と国会が激震
によって襲われよう。米海軍が日本のすぐわきにある北朝鮮に対して、海
上封鎖を実施しているというのに、自衛隊が燃料食糧の供給などの後方支
援に役割を限定するわけには、ゆくまい。

 中東は日本のエネルギーの80%以上を、供給している。
日本を揺るがしかねない危機が中東で進行しているのに、日本の世論は目
をそらしている。

2018年08月05日

◆日本は学ぶべきである

加瀬 英明


スウェーデンの国防の備えに日本は学ぶべきである

北ヨーロッパのスウェーデンといえば、読者諸賢の多くが「スモーガス
ボード」という、魚貝類が中心となったスウェーデン料理を、知っていら
れることだろう。さまざまな料理が並び、客が好むだけ取る、日本で「バ
イキング料理」の語源となっている。

スウェーデンはフィンランドとノルウェーと国境を接しており、親日国家
で、人口が1012万人、国土は日本の1.2倍ある。平和国家だ。

 今年5月21日に、スウェーデン政府は『戦争、あるいは危機において、
何をすべきか』と題する小冊子を、スウェーデン国民に配布した。

この小冊子は、「敵国による侵略を蒙った場合に、侵略者に対して、国民
全員があらゆる手段を講じて抵抗する」ことを、求めている。

 政府の民間防衛局によって発行されたものだが、「もし、わが国が侵略
された場合に、国民は最後まで戦い、絶対に降伏しない。抵抗をやめるよ
うにという、情報が流れたとしても、虚偽のものであるから、いっさい信
じてはならない」と、述べている。

ヨーロッパでは、4年前にプーチン大統領のロシアが、武力によってウク
ライナからクリミア半島を奪取し、ウクライナ東部の内戦に介入している
ために、ロシアがさらに侵攻するのではないか、緊張がたかまっている。

スウェーデン対岸のバルト海に面する、冷戦後にソ連から独立した3つの
小国のエストニア、ラトビア、リトアニアを守るために、米英独、カナダ
軍部隊が進駐している。

なぜ、スウェーデンが危機感に駆られているのだろうか?

スウェーデンとロシアの間には、フィンランドがある。

先のスウェーデン政府の小冊子は序文で、次のように述べている。

「わが国では長期間にわたって、戦争に対する備えが、限られたものでし
かなかった。

しかし、わが国を取り巻く世界情勢が大きく変化しつつあることから、政
府はわが国の防衛体制を強化すべきことを、決定した。

平時における防衛態勢を確固としたものとすることが、戦時において国防
を強靭化することになる」

政府は侵攻を蒙った場合に、若者、壮年の男子は銃を執って戦い、婦人、
高齢者は、負傷者の看護、補給などの後方支援に当たることを、期待して
いる。

もっとも、スウェーデンはロシアがすぐに侵攻してくることを、予想して
いない。10年後を、見据えているのだ。アメリカが「アメリカ・ファー
スト」の掛け声のもとで、米軍をヨーロッパから引き揚げてしまう可能性
に備えているのだ。

それに対して、日本はどうだろうか?

日本を取り巻く状況が、重大な危機を孕むようになっているというのに、
憲法に自衛隊の存在を書き込むべきか、不毛な論議に、国論を二分して熱
中している。

自衛隊は「憲法解釈」による、「専守防衛」の鎖によって縛られているた
めに、敵の基地を攻撃する能力がまったくなく、敵が本土を侵すまで、戦
うことを禁じられている。

中国が虎視眈眈(たんたん)と、尖閣諸島だけでなく沖縄全体を奪おうと
狙っているのに、現行憲法の呪いによって、日本独力で守ることができな
い。脆い国は、侵略を招く。

 一刻も早く、憲法改正が求められる。

2018年08月04日

◆歴史の流れを見誤ってはならない

加瀬 英明


トランプ大統領がEU(ヨーロッパ連合)、カナダ、メキシコ、日本、中
国などを対象として、鉄鋼や、アルミ製品に高関税を課することを発表し
てから、世界貿易体制を破壊するものだとか、奇矯な決定だという批判が
巻き起こっている。

私はこの決定は、妥当なものであるだけでなく、もっと深い意味があると
思う。

大手新聞が「トランプ劇場」の一つだと報じているが、先を見透せないの
だろうか。

今回のトランプ政権による措置は、とくに中国を狙い撃ちしている。

アメリカは7月6日から、340億ドル(約3兆7000億円)にのぼる中国製
品に高関税を適用したが、さらに議会公聴会によって、160億ドル相当の
中国製品の関税をあげる当否が、はかられている。

3月に、トランプ大統領はムニューシン財務長官に、アメリカの安全保障
にとって重要なテクノロジーの分野において、中国による投資を禁じるよ
うに命じている。

 中国が自由貿易体制の最大の利得者

習近平主席がたじろぎながら、アメリカに対して報復すると表明すると、
トランプ大統領はアメリカの特別通商代表に、その場合、2000億ドル
相当にのぼる中国製品に、1律10ドルの関税を課することを検討するよう
に、指示している。

中国は経済をアメリカ市場への輸出に依存しているために、アメリカとの
通商摩擦を何とか軽減しようと、努めている。そのうえ、中国国内にある
アメリカ企業が中国経済を支えていることから、活動を妨げることができ
ない。

今回のトランプ大統領の決定が、暴挙だといって非難する者は、通商が互
恵主義にもとづくとルールによるべきで、自由な交易をできるだけ妨げて
はならないと、主張している。自由貿易は参加国を潤すことによって、世
界秩序を安定させていると、唱えている。

その結果は、どうだったのだろうか?

21世紀の華夷秩序を目指す中国

この25年を振り返ると、現行の自由貿易体制は、巨大な専制国家である中
国に、もっとも大きな恩恵をもたらしてきた。

自由貿易体制は、世界を21世紀の華夷秩序のもとに置こうとする野望をい
だく、中国を肥大化させてきた。

アメリカは北朝鮮の核よりも、中国が南シナ海を内海として支配しようと
していることを、深刻な脅威としてとらえている。

中国は南シナ海に、7つの人工島を造成したうえで、長距離爆撃機と対
艦・対空ミサイルを配備した。

習近平主席が2015年にワシントンを訪れて、オバマ大統領と会談した直後
に、ホワイトハウスで共同記者会見を行った時に、南シナ海の人工島を
「軍事化」しないことを、明言している。習氏は平気で嘘をついてきた。

 アメリカは北朝鮮より中国を脅威とみている

習主席は、5月に訪中したマティス国防長官と会談した際に、南シナ海の
人工島も含めて「祖先が残した領土は、一寸たりとも失うことができな
い」と、述べた。南シナ海の岩礁が、中国の歴史的な領土であるというの
も、ハーグの国際司法裁判所が裁定したように、作り話でしかない。

中国は新疆ウィグル自治区も、チベットも、中国の固有の領土だという
が、満族による王朝だった清の6代目皇帝に当たった、乾隆帝(1711
年〜99年)が征服した、外地である。今日の中国においても、乾隆帝は
「十全老人」(老は敬称)として、称えられている。それに、満族は漢民
族の祖先ではない。

世界交易の30%以上が、南シナ海を通っており、中国が占有することが
あってはならない。

アメリカはオバマ政権以来、中国が南シナ海の人工島周辺の領海だと主張
する海域に、海軍艦艇を通過させる「自由航行作戦」を行ってきたが、中
国側からみれば遊覧航海のようなもので、何の効果もない。そこで、中国
経済を締めつける方法しかない。

中国は、自由貿易体制に乗じることによって、手にした富を使って、軍の
ハイテク化と、大規模な軍拡を強行するとともに、「一帯一路」戦略を進
めて、スリランカや、紅海の出入り口のジプチなどに、軍事基地を建設す
るようになっている。

 EU(ヨーロッパ連合)もアメリカの覇権に甘えてきた

もし、中国に南シナ海を支配することを許せば、中国の膨張主義を黙認す
ることになってしまう。

それに、アメリカの恩恵を蒙ってきたのは、中国だけではない。

日本や、ヨーロッパの先進国をはじめとするアメリカの同盟諸国は、先の
大戦後、自由貿易体制を活用して、福祉国家をつくりあげてきた。そのわ
きで、アメリカに甘えて、国防負担を肩代わりさせてきたが、言い換えれ
ば、アメリカの施しによって潤ってきたのだ。

そのかたわら、アメリカの製造業は、日本や、ドイツなどの諸国と競争す
るのに疲れ果てて、すっかり怠惰になっていた。

 利に聡いアメリカの経営者たちは、自由貿易体制が世界の福祉を増進す
ると説きながら、懐を肥やすために、国内にあった製造部門を、中国をは
じめとする、人件費が安い発展途上国に移し、中国から大量に安価な製品
や、部品を輸入してきた。

 かつては、アメリカの大企業が世界の他の諸国を圧倒して、大きく引き
離していたというのに、アメリカの労働者たちが大量に切り捨てられ、レ
イオフされた。

 アメリカの企業経営者はなぜ自由貿易体制を称えるのか

 アメリカの利潤を追う企業経営者たちは、中国の興隆に手を貸してきた。

アメリカの大手マスコミや、シンクタンクや、大学は、大手企業によっ
て養われてきたために、アメリカが覇権を握っていた時代への強いノスタ
ルジアにとらわれて、自由貿易体制を守るべきだという声をあげている。

アメリカはGDPの4%を、国防費にあてている。ところが、27ヶ国
のNATO(北大西洋条約機構)ヨーロッパ諸国は、オバマ政権の時に、
GDPの2%を防衛費にあてると約束したのにもかかわらず、イギリス、
ギリシア、エストニアの3ヶ国だけが、防衛費として2%を支出してお
り、NATOヨーロッパ諸国のなかで、もっとも富裕なドイツの防衛費
は、1.2%でしかない。

ドイツのメルケル首相が、防衛費をGDPの1.5%まで増やすと約束
しているものの、トランプ大統領は「それでは、アメリカの納税者がとう
てい納得しない」と、強く反撥している。

2年前に、トランプ候補が「アメリカ・ファースト」の公約を掲げて、
大統領に当選したのは、今後、アメリカの覇権が未来永劫にわたって続い
てゆくという、神話を覆すものだった。

 アメリカの国勢調査から未来が見える

アメリカの政府国勢調査局は、白人の少子高齢化が急速に進んでゆくか
たわら、非白人の人口増加と移民によって、白人が2040年代に入る と、
人口の50%を割ることになると、予測している。すでに若年人口で は、
非白人が多数を占めるようになっている。

アメリカの人口は1980年に、2億2700万人だったのが、主とし て移民に
よって、いまでは3億2800人に達している。黒人 も多産だ。とくに、ヒ
スパニック系の人口の増加が著しい。

これまでアメリカは、白人が『メイフラワー号』から清教徒が神の国を
築くために上陸したことから、アメリカが神の使命を授かった国であり、
世界を導く責任を負っていると、驕ってきた。

だが、非白人の人口が増して、人口の過半数を超えるようになれば、世
界を導く重荷を担う意識が失われてゆこう。

トランプ政権は、すでにアメリカが覇権国家であるという傲りを、捨て
ている。

アメリカが非白人の国となると、白人が世界の覇権を握った、大航海時
代によって16世紀に始まった長い時代が終わることになろう。


2018年07月25日

◆危機において、何をすべきか

加瀬 英明


危機において、何をすべきか スウェーデンが配布した小冊子

スウェーデンとロシアの間には、フィンランドの北部が、ひろがっている。

スウェーデンは、人口が1012万人で、フィンランドも平和国家だ。

今年5月21日に、スウェーデン政府は『戦争、あるいは危機において、何
をすべきか』と題する小冊子を、スウェーデン国民に配布した。

この小冊子は、国民に「敵国による侵略を蒙った場合に、全員が侵略者に
対して、あらゆる手段を講じて抵抗する」ように求め、「もし、わが国が
侵略された場合に、国民は最後まで戦い、絶対に降伏しない。抵抗をやめ
るという情報が流れても、虚偽のものだから、いっさい信じてはならな
い」と、述べている。

ヨーロッパでは、4年前にプーチン大統領のロシアが、ウクライナからク
リミア半島を奪い、東部の内戦に介入しており、ロシアがさらに侵攻する
のではないが、緊張がたかまっている。

スウェーデンのバルト海対岸の、冷戦後、ソ連から独立した小国のエスト
ニア、ラトビア、リトアニアを守るために、米英独、カナダ軍部隊が進駐
するようになっている。

なぜ、スウェーデンが危機感に駆られているのか、冊子の序文が説明して
いる。

「わが国では長期間にわたって、戦争に対する備えが、限られたものでし
かなかった。

しかし、わが国を取り巻く世界情勢が大きく変化しつつあることから、政
府は防衛体制を強化すべきことを、決定した。

平時における防衛態勢を確立することが、戦時において国防を強靭化する
ことになる」
 
もっとも、スウェーデンはロシアがすぐに侵攻してくることを、予想して
いない。近未来に、アメリカが「アメリカ・ファースト」の世論に動かさ
れて、米軍をヨーロッパから引き揚げてしまう可能性に、備えているのだ。

アメリカの政府国勢調査局は、白人の少子高齢化が進むかたわら、非白人
移民の流入によって、2040年代に入ると、白人が人口の50%を割ると予測
している。若年人口では、すでに非白人が多数を占めている。

アメリカは1980年に2億2000万人だった人口が、いまでは3億2000万人に
達している。とくにヒスパニック系の増加が著しい。

これまで白人が、アメリカが神の使命を授かった国であり、世界を導く責
任を負っていると、驕ってきた。非白人が増せば、このような重荷を担う
意識が失われてゆこう。

日本はどうだろうか? 米朝首脳会談のお蔭で、金正恩委員長がアメリカ
を挑発せず、米朝交渉が進められようから、向こう5年は朝鮮半島で戦争
が起こらないだろう。

日本は大急ぎで、憲法を修正するとともに、防衛力を画期的に増強する時
間を、手にすることができた。天の恵みだ。

日本にとって、北朝鮮は本当の脅威ではない。

万一、北朝鮮が日本を攻撃しても、通常弾頭のミサイルによって、1、2
万人の死者が生じるかもしれないが、アメリカが圧倒的な軍事力によっ
て、北朝鮮を壊滅させよう。

日本にとって深刻な脅威は、スウェーデンにとってのロシアに当たる中国だ。

いつまで、アメリカに縋れるだろうか?

福沢諭吉は、「今の禽(きん)獣世界に処して最後に訴うべき道は、必死の
獣力に在(あ)るのみ」と説いている。




2018年06月23日

◆米朝首脳会談中止 騒動

加瀬 英明


「米朝首脳会談中止」騒動、米の圧力は中国にも向いている

トランプ大統領が、6月12日にシンガポールで予定されていた、米朝首脳
会談を直前に中止することを発表して、北朝鮮の金正恩委員長を狼狽(う
ろた)えさせた。

私はかねてから、本誌のこの欄で、北朝鮮が核を棄てることはありえな
く、文在寅大統領と金正恩委員長による南北首脳会談は“安手の韓流ドラ
マ”にすぎなかったし、米朝首脳会談が実現しても、空ら騒ぎに終わろう
と、論じてきた。

トランプ大統領が“リトル・ロケット・ボーイ”と呼ぶ、金正恩委員長は米
朝首脳会談に執心している。北朝鮮にとって米朝首脳会談が行われれば、
国際的地位が大きくあがるが、それなしには、哀れな、みすぼらしい小国
でしかない。

南北首脳会談や、米朝首脳会談を行わず、中国も含めて北朝鮮に対する経
済制裁を、粛々と進めてゆけばよかった。

私は4月30日から、ワシントンを4泊で訪れて、トランプ政権を支える
人々と、朝鮮半島危機について話した。

着いた晩に、国防省の親しい友人と夕食をとったが、「世界は30年ぶり
に、“ベルリンの壁”が崩壊するところを見るだろう」といって、米朝首脳
会談によって北朝鮮が核を放棄することになると、自慢した。

私は「まさか。金正恩(キムジョンウン)がよほど愚かだったら、そうなる
だろう」と、答えた。

私はホワイトハウスの前の小さな公園をはさんだホテルを、常宿にしてい
る。バーで金正恩(キムジョンウン)の愛嬌ある似顔絵が描かれた、コース
ターが使われていた。ちょっとした、北朝鮮ブームだった。

だが、トランプ大統領も6月の会談を中止したものの、金委員長に一撃を
加えたうえで、米朝首脳会談を開くことを望んでいる。金委員長が懇願し
た結果、再調整されたが、本誌が発行されるころに実現しているかどうか。

別の政権の関係者は、もっと現実的だった。

「われわれは中国が北朝鮮に核放棄を迫らないかぎり、北朝鮮が核を手離
すことはない。米朝交渉を続けるあいだに、中国に強い圧力を掛けてゆく
ことになる」と、語った。

トランプ政権にとって、ほんとうの敵は、中国だ。

北朝鮮の核ミサイルは、まだ戦列に配備されていないし、成層圏から目標
へ向かって再突入する、終末段階(ファイナル・フェーズ)の摂氏7000度に
達する高熱に耐える技術を持っていない。

アメリカにとって、中国の南シナ海進出の方が、差し迫った脅威だ。

中国の脆い点は、中国経済が対米輸出に依存していることだ。

中国はアメリカに寄生している、パラサイトだ。トランプ政権は中国の弱
点をとらえて、揺さぶろうとしている。

これから、商務省が諸国による自動車、自動車部品の対米輸出がアメリカ
の工業ベースと、安全保障を脅かしていないか、調査を始めるが、もし、
“黒”となった場合には、天井知らずの関税をかけることができる。

帰京後に、トランプ大統領が自動車、自動車部品に20%から、25%の高関
税をかける方針を発表したが、これはEU(ヨーロッパ連合)、カナダ、
メキシコ日本との貿易交渉にあたってテコともなるが、中国へ向けたものだ。

中国は自動車部品の対米輸入で、巨額を稼ぎ出しているうえに、安価な
EV車をアメリカへ輸出することをはかっており、すでに売り込みが始
まっている。

2018年05月09日

◆米朝の偶発的軍事衝突

加瀬英明


米朝の偶発的軍事衝突 現憲法では国民を守れない

私は米朝首脳会談が行われないか、物別れに終わっても、アメリカが北朝
鮮に軍事攻撃を加えることは、まずないと思う。

すると、ここしばらく手に汗を握るような朝鮮半島危機が、続いてゆくこ
とになる。

日本としては、平和の惰眠を貪ることから目覚めて、ミサイル迎撃システ
ムを強化し、敵基地を攻撃する能力を整備して、鬼のいぬ間に大急ぎで洗
濯に励むべきである。

トランプ大統領は、北朝鮮が弾道ミサイルの発射実験しするか、核実験を
行ったら、軍事攻撃を加えると脅しながら、北朝鮮に対して海上封鎖を行
うことになろう。かつて、1962年のキューバ・ミサイル危機に当たって、
ケネディ政権がキューバに対して海上封鎖を断行して、成功した前例があ
るから、アメリカ国民は喝采しよう。

そうなると、アメリカと北朝鮮の間で、偶発的な軍事衝突が起こる可能性
が高まろう。

アメリカはその場合に、日本に相当な被害が生じても、北朝鮮に全面攻撃
を加えることになる。日本という肉を斬らせて、北朝鮮という骨を断つのだ。

1年ほど前に、ペンタゴン(国防省)のアドバイザーが来日した時に、私
の事務所を訪れて、「われわれが北朝鮮を攻撃すれば、金正恩政権は面子
にかけて、かならず韓国、日本に攻撃を加えよう。日本に飛来する第1波
のミサイルをすべて迎撃して破壊することはできないから、日本は耐えて
もらうほかない。しかし、2波はけつして撃たせないから、安心してほし
い」といった。

現状では、日本は北朝鮮が日本へ向いて発射してくる、多数の弾道弾に対
して、国民を守る能力はまったくない。PAC3ミサイル迎撃ミサイル・
システムが北海道から沖縄まで17ユニット配備されているだけだから、
国土の100分の1すら守ることができない。

日本を守るためには、アメリカに縋(すが)るほかないのだ。

日本国憲法は「平和憲法」と呼ばれているが、もともとアメリカが占領下
で、「アメリカの平和」のために、日本に押し付けたものだ。私たちは
「日本の平和」を守るためには、まったく役に立たないことを、覚らなけ
ればならない。

それにしても、どうして原水爆禁止協議会(原水協)の諸兄姉が立ち上
がって、ミサイル迎撃システムを増強することを、政府に強く要求しない
のだろうか。


2018年05月02日

◆米朝会談決裂なら海上封鎖か

加瀬英明


金正恩委員長は、偉大な祖父と父も手が届かなかった米朝首脳会談が、ほ
どなく自分の力によって実現することに、自己陶酔に浸っていよう。

6、7週間以内に、全世界のきらめく脚光を浴びるなかで、トランプ大統
領と膝を交えて、向い合うことができるのだ。

だが同時に、情緒不安定で、政治の初心者であるはずのトランプ大統領
を、もし操るのに失敗したら、アメリカから圧倒的な軍事力による攻撃を
蒙って、全てを失うことになるのに、戦(おのの)いていよう。

一方、トランプ大統領にとっても、大きな賭けだ。会談を行っても北朝鮮
を非核化する成算がないと判断した場合には、取りやめることにしている。

トランプ大統領は首脳会談を行って、目論見が大きく外れて会場を去る時
に、世界の物笑いにならないように、どのように振る舞えばよいものか、
頭を悩ませていよう。“リトル・ロケットマン”と名付けた金委員長に、位
負けするわけにゆかない。

トランプ大統領は米朝首脳会談が物別れに終わって、面子を潰された後
に、北朝鮮に対してただ経済制裁による締め付けを強めるだけでは、米朝
首脳会談が“笑い草の軽挙”にすぎなかったことになる。

だが、私はアメリカが北朝鮮に軍事攻撃を加えることは、ありえないと思う。

トランプ大統領は北朝鮮を攻撃した場合に、韓国、日本が蒙る被害が、あ
まりにも大きいために、攻撃する勇気を欠いていよう。

私はアメリカの友人に会うと、「アメリカの国章を白頭鷲から、チキンに
替えたほうがよいのではないか」と、からかっている。

それに、トランプ大統領はオバマ政権に至るまで、アフガニスタンから中
東まで、外征戦争に深入りしたのに終止符を打って、米軍を引き揚げた大
統領として、輝やかしいレガシーをのこすことを、夢見ている。

といって、トランプ大統領は手を拱(こまね)いているわけに、ゆかな
い。それでは、沽券(こけん)にかかわるから、何か“劇的なこと”を行わ
なければならない。

私は米海空軍を使って海上封鎖を実施することを、発表することになると
思う。その場合、海空自衛隊が現行の安保法制に従って、後方支援に留ま
るとしたら、日米同盟関係が崩壊してしまうこととなろう。

 日本の前途に、大きな試練が待っている。

2018年01月24日

◆日本国憲法の原文は英語」 

   加瀬 英明

日本国憲法の原文は英語 翻訳憲法が導いた東アジアの不安定さ

過ぎ去った歴史に「もし、そうだったら」(イフ)を問うことは、決して
無益ではないと思う。貴重な教訓を学ぶことができるはずだ。

今年は日本国憲法が制定されてから、71年目になる。

 現行憲法が占領下で強要されたことは、原文が英語であることから、明
らかだ。いったい、どこの国の憲法の原文が外国語によって、書かれてい
るものだろうか。

 異常なことだ。私は日本が独立を回復してから、今日まで後生大事に墨
守してきた現行憲法を、「翻訳憲法」と呼んできた。

 現行憲法はマスコミや日本国民の大多数によって、「平和憲法」と呼ば
れて親しまれてきた。

 だが、世界の歴史が記録されるようになってから、軍事的空白が生まれ
ると、かならず周辺の勢力によって埋められることを、教えている。原文
が占領者の国語である英語によって書かれた現行憲法は、日本に非武装を
強いたが、アメリカが軍事的空白を埋めてきた。

「平和憲法」と呼ぶのは、誤まっている。正しく呼べば、「“アメリカの
力による平和”憲法」なのだ。それを、“日本国民の精神がもたらす平和”
だと思い込んできたとしたら、何と愚かなことだろうか。

 新年に当たって、神社や寺を詣でて「家内安全」の護符を貰ったからと
いって、戸締りをいっさいしなくて、すむわけがない。「息災」は仏の力
によって、災害を消滅させることを意味するが、現行憲法の前文と第九条
は、一片のお札にしかすぎない。

 では、これまでの70年を振り返って、「イフ」を問うてみたい。

 まず、もし、アメリカが71年前に、日本を完全に非武装化した現行憲
法を強要するかわりに、第1次大戦に敗れたドイツに強いたベルサイユ条
約のように、軍備に制限を加えるのにとどめたとしたら、占領下にあった
日本政府が軍備を完全に放棄するという、突飛な発想を持つはずがなかった。

1947年5月に日本国憲法が施行されたが、朝鮮戦争がその僅か3年 1ヶ
月後に勃発したために、アメリカも、マッカーサー元帥も、日本に非 武
装を強いる憲法を与えるべきでなかったと悔いた。もっとも、占領軍は
絶対に正しいことを装っていたから、過ちを認めるはずがなかった。

 もう一つの「イフ」は、もし、日本がサンフランシスコ講和条約によっ
て独立を回復してから、「マッカーサー憲法」を改正して、イギリスか、
フランス並みの軍備を整えていたとしたら、今日のように北朝鮮や、韓
国、中国から侮られることが、なかったはずだ。

 イギリスと、フランスは経済規模を示すGDPで、それぞれ日本の半分
しかない。両国は航空母艦と、核ミサイルを搭載した原子力潜水艦を保有
している。両国が平和愛好国であることは、いうまでもない。

 日本がもしイギリス、フランス並みの軍備を整えていたとすれば、北朝
鮮が日本列島をミサイルの試射場がわりに使い、中国が傍若無人に尖閣諸
島を奪取しようとすることがなかった。

 日本がアメリカの軍事力にひたすら縋って、“専守防衛”を国是としてき
たことが、軍事的空白をつくりだして、今日、東アジアを不安定な状況に
陥れている。一日も早く“翻訳憲法”の妖夢から、醒めなければならない。

2017年12月27日

◆刻々と形を変える国際政治

加瀬 英明

刻々と形を変える国際政治 日本は“権威”の呪縛を解けるのか


11月に6ヶ月ぶりに、ワシントンへ戻った。

トランプ政権が発足してから、2年目を迎えた。

万事が保守的な日本と違って、とくにアメリカは新陳代謝が激しい社会だ。

トランプ政権のアメリカは、オバマ政権のアメリカから大きく脱皮してい
る。まさに御一新だ。

トランプ政権のアメリカは、自国を普通の国として位置づけて、アメリカ
が建国以来、特別な使命を授かっているといった、自国をエクセプショナ
ル(地上で特殊)な国として、見立てることがなくなった。

クリントン政権、ブッシュ政権、オバマ政権のアメリカも、ヒラリーの民
主党のアメリカも、アメリカが自由、平等、人権など、他国に備わってい
ないソフト・パワーを持っているといって、驕っていた。

トランプ政権には、このように他国を見降ろす、鼻持ちならない傲慢な態
度がない。だから、日本のいうことも聞いてくれる。

私は、トランプのアメリカに、好感がいだける。オバマ政権のもとのワシ
ントンまでは、日本よりも高い位置にたって、どうするべきか教える態度
をとってきた。

私の親しい人々だが、いまではマイケル・グリーン氏も、リチャード・
アーミテッジ氏も、ジョセフ・ナイ氏も、過去の人だ。ワシントンで、影
響力はまったくない。

それなのに、私がワシントンに滞在中に日本最大の経済新聞社が、日本に
招いていた。もちろん、古い友人を大切にするのは、賞讃すべきことだ。

キッシンジャー博士が、トランプ大統領のホワイトハウスによって重用さ
れているのは、習近平政権に対して“中国の代理人”として影響力を持って
いると、みなしているからだ。

日本ではひとたび権威として、受け容れられてしまうと、よほどの衝撃が
ないかぎり、その座から降ろされることがない。

日本は和――コンセンサスの国だ。そのために、大多数の人々が自分を独立
した存在として意識することがない。

日本では多くの人が、独りの人間として独立していない。そのために、コ
ンセンサスを探りあううちに、コンセンサスが生まれる。

こうして生まれたコンセンサスは、しばしば得体(えたい)が知れないもの
だが、いったん全員が倚(よ)り掛(かか)るようになると、権威となって、
強い拘束力を発揮する。

日本国憲法は、このようなコンセンサスだ。あきらかに世界の現実にそぐ
わないのに、私たちを70年にわたって、金縛りにしてきた。朝日新聞
も、発行部数が激減しているものの、その典型的なものの一つだ。

『日本国憲法』は、アンデルセンの童話のまさに「裸の王様」だ。

王様は素っ裸なのに、多くの日本国民が金襴(きんらん)の衣裳を、纏って
いると信じている。滑稽なことだ。

いま、“北朝鮮危機”という子供が、「王様は裸だよ!」と、さかんに声を
あげている。

今年は明治150年に当たるが、幕末の志士たちという子供が、明治維新を
もたらして、日本の独立を守ったのだった。

国際政治は砂丘のように、刻々と形を変える。

権威という蜃気楼によって、惑わされてはならない。