2020年01月17日

◆ほのあかりの美 粋が日本女性の美

加瀬 英明


私は昭和11年生まれだが、明治生まれの2人の女性をよく知っていた。

父方の祖母のか津と、母方の祖母の鶴だ。2人はそれぞれ9人と、8人の子を産んで育てた。2人とも小柄で気丈だった。

先の戦時中、私は外務省の少壮幹部だった父を東京に残して、母と長野県に疎開したが、空襲下で、か津が父の面倒をみた。

戦争が敗戦に終わって、9月2日に東京湾に浮ぶ敵戦艦ミズーリ号艦上で、降伏調印式が行われた。父は全権団の随員として、甲板を踏んだ。敵将マッカーサーが傲然と立つ前で、重光葵全権が万涙を呑んで調印するわきに立っているのが、42歳だった父だ。

父はその前の晩に、か津に降伏調印に随行することを告げた。か津は父を正座させると、「私はあなたを恥しい降伏の使節として、育てたつもりはありません。行かないで下さい」と、凛としていった。

父はこの手続きを経ないと、日本が立ち行かなくなると、恂々(じゅんじゅん)と説明した。しかし、か津は承知しなかった。「わたしは許しません」といって立つと、隣室へ行って父のために翌朝の下着や、服を整えはじめた。衾(ふすま)ごしに泣きじゃくる声が、低く高く聞えた。

私は10月に父の借家に戻った。か津は私を正座させると、「英明さん、この仇はかならず討って下さい。約束して下さい」といった。私はいまでも、この教えを大切にしている。

鶴も焼け出されたので、戦後、鎌倉の私たちの家で暮した。鶴の父は薩摩兵を率いて、会津若松の攻城戦を指揮して、落城した時に自害した家老夫妻の娘を娶って、鶴が生まれた。会津若松城の別名の鶴ヶ城からとって、名づけられた。

私はか津と鶴の洋装姿を、一度も見たことがない。もっとも、あのころは服といえば和服であって、洋服はまだ洋服と呼ばれていた。

鶴はいつも毅然としていた。私がある時、時間を守らなかったところ、「時間も太陽や、人や草木と同じ生き物です。あなたの親しい友達です」と諭された。凛としているところが、美しかった。

私は幼いころから、母が着物を着るのを手伝わされたことから、着付けの免許も持っている。私は多年、公益社団法人『全日本きものコンサルタント協会』の役員をつとめているが、着物は心で着るものだ。諸外国のようにただ衣が美しく、正しく着ているだけではならない。立ち居振る舞いが、何よりも問われる。

私は空手道の有段者として武道に携わっているが、武道は心の道とされている。剣道、弓道、杖道、茶道、書道、華道、香道も、すべて内面の心のありかたが、基本となっている。日本だけにみられることだ。

日本の心を一言でいえば、何だろうか。和の心である。
和のために控え目であること、偽らないこと、周囲を思い遣ることが求められている。日本は美しい心の国であってきた。

武道をはじめ、何ごとについても感情を露わにすることがあってはならなかった。和の心は自制心によって成り立ってきた。

私が40代のころまでは、農村や漁村に皺だらけの老女がいた。

白いほつれ髪とともに、皺の数だけひたむきに生きてきた美しさがあった。いまでは高齢の女性が増えたものの、このような美しい女性を見ることがない。

日本女性の美しさを一口でいえば、粋(いき)であろう。粋は控え目であって、表に現われない心意気、心ばえ、気合がこもっている。

というものの、粋は異性なしに成り立たないから、巧みに媚態を秘めながら、暗示して男心をくすぐる。苦労があるとしても、凛としているから感じさせない。

ほのあかりの美というのだろうか。つい3、40年前までは、粋をはじめとして日常生活のなかに、気というリズムがあった。

人生は誰にとっても、苦の連続だと考えられていた。苦楽といって、まず苦があった。今日では大多数の人々にとって、楽の連続でなければならない。。

そのために、すぐに不満を露わにして、耐えることができなくなった。挫折しやすい。

今日では屋内まで、LEDなどの剥き出しの照明によって陰影が消され、凹凸がなくなって、空間がつかみどころがない無性格なものとなっている。

とくに、若い女性たちは口を開くと、美しい音楽を聴いた、よい景色を見て「癒されました」という。私は「え? どこか病いを患っているのですか」と、たずねることにしている。癒されるというのは、病んでいることを前提にしている。

 今日の女性は化粧が上手になったのと引き替えに、表情が険しい。外面を飾ることに熱中するあまり、内面を疎かにしている。

 だが、女性は男性の鏡の存在だ。男性が劣化したために、女性を道連れにしたにちがいない。

 いまでは「ブス」というと、容貌を指す言葉となっている。だが明治時代までは身のこなしかたが醜悪なことを、「不粋(ぶす)」といった。いつの間にブスが容貌についてのみ、いうようになったのだろうか。

 江戸時代から明治までは、派手なことが嫌われた。けばけばしい身装をした田舎者の女性を、「葉(は)出(で)」と書いて嘲笑した。余計な葉がはみだしていることを、意味していた。

 この30年ほどだろうか、羞(はじら)いや、ちょっとした女らしい仕草をみせたり、目もとがすずしい女性がいなくなった。

 もっとも、まだ日本には美しい女性がいる。11月に兵庫県に講演に招かれた時に、受け付けの20代のお嬢さんの物腰が、魅力に溢れていた。祖父が陸軍落下傘部隊の勇士だったということだった。

 日本の女性に、絶望することはない。

2020年01月14日

◆世界の将来を決めるインド太平洋圏の行方

加瀬英明


2020年の世界を予想することは、これまでになく難しい。年を追うごとに、世界の変化が加速している。

 3年前の11月に、アメリカで異色のトランプ候補が大統領選挙に当選して、ホワイトハウスの主人公になるとは、その年の春には誰も予想できなかった。

 今後、インド太平洋圏の行方が世界の将来をきめることになる。

米中、ロシア、インド、日本の5ヶ国が、インド太平洋圏の未来をつくる主要な役者だ。5つの国家が「五角形(ペンタゴン)」と呼ばれているが、アメリカと中国が主役だ

 アメリカでは11月に大統領選挙が行われるが、トランプ大統領の再選は間違いないと思う。連邦議会で大統領弾劾の審議が進んでいるが、共和党が過半数を占める上院で3分の2の賛成票を必要とするから、大統領選挙へ向けて共和党のイメージを傷つけようとする嫌がらせだ。

 アメリカの景気は着実に上向いている。トランプ大統領の支持率は、弾劾審議前よりあがっている。国民は弾劾にほとんど関心を示していない。

 中国はどうなるだろうか? はっきりいって、中国の習近平主席は愚か者だ。

 習近平氏が7年前に最高権力を握ってから、黒星続きだ。超大国であったアメリカの力が衰えつつあると誤算して、「偉大なる中華文明の復興」「中国の夢」を呼号して、本格的な外洋海軍の建設など軍拡を進めるかたわら、金にまかせてヨーロッパにいたる「一帯一路」計画に耽ってきた。

 ところが、アメリカを見縊って背伸びしたために、アメリカの怒りを買って、アメリカと関税戦争をはじめとして、対決する事態を招いた。その結果、中国経済が大きく減速して、打ち出の小槌を失いつつある。

 習主席は優柔不断だ。香港の一国二制度を踏み躙って、「逃亡犯条例」を施行しようとしたところ、香港市民が立ち上がって、収拾がつかない情況を招いている。といって、香港に軍を投入して、抑えつけることができない。

 台湾で1月11日に総統選挙が行われるが、台湾国民は香港の惨状を見て、反中国派の蔡英文総統が再選されることとなろう。

 もし、習氏が企業経営者であったとしたら、失格だ。
中国のイメージが悪化している。習主席は日本を国賓として訪れ、天皇を中国に招くことによって、イメージを回復しようと狙っている。

 インド太平洋圏を舞台として、米中が覇権を争っている。大陸勢力と海洋勢力の対決だ。テクノロジー、軍事力、資力より以上に、戦略を構築する力が軍配をあげることとなる。

 中国は戦略的な発想を行う能力がない。2000年以上にわたる唯我独尊の中華思想によって蝕まれており、外国と対等な関係を結ぶ能力を欠いて、同盟国を持つことができない。

 中国は海洋勢力になろうとして、本格的な外洋海軍の建設を急いでいるが、海軍力だけで海洋勢力となることはできない。

大陸勢力であったロシア、ドイツ帝国も大海軍を誇ったが海洋勢力に敵わなかった。中国はその轍を踏みつつある。

 それに対して、アメリカは海洋諸国と結んで、中国を孤立させている。

 アメリカが中国を経済から、高度技術移転まで締めつけており、中国がよろめいている。

 日本はインド太平洋圏の平和を切り拓く、歴史的な使命を担っているというのに、インド太平洋圏の五ヶ国のプレイヤーの鎖のなかで、もっとも弱い輪となっている。

 アメリカが占領下で日本を抑えつけるために強要した日本国憲法は、いまでは中国、北朝鮮と韓国だけを喜ばせるものとなっている。

 一刻も早く、独立国にふさわしい憲法に改正すべきだ。


2020年01月13日

◆心を一つにできる唯一の国、台湾

加瀬英明


私が台湾をはじめて訪れたのは、1960年代のことだった。

 台湾は国共内戦に敗れて、大陸から逃げ込んできた蒋介石政権のもとにあった。

 台湾の知人に案内されて、台北の街の屋台である夜市(イエス)で、「青蛙下蛋(チンファシャタン)」(青蛙の卵)と呼ばれたタピオカを、はじめて味わった。

 いま、タピオカが日本の若者のあいだで異常なブームとなっている。

 もっとも、台湾の夜市では、もう「蛙の卵」ではなく、「珍沫奶茶(ソンチュクイチャ)」(真珠のお茶)と呼ばれるようになっている。

 この“タピオカ・ブーム”は、大企業や、大手メディアによる宣伝や、広告によってもたらされたのではない。

 若者のあいだのSNS(ネット)によって、生まれたものだ。私の栄養士の友人によれば、多くの若者が1日2食しかとらない食生活の変化によって、助けられたという。

 若者のあいだで「タピる」(タピオカを飲む)、「タピカツ」(就活、婚活と同じ)という新語が流行っていると、教えてくれた。

 産経新聞によれば、「2019年新語流行語大賞」候補の30語のなかに、「タピる」がノミネートされたという。

 私はタピオカ・ブームから、若い世代がもはやメディアや、大人(おとな)たちの既存のコンセンサスによって縛られていないことに、関心をいだいた。

 日本から台湾を訪れる観光客は、2018年に197万人を数えたが、この10年間でほぼ2倍となっている。台湾に対する好意が増している。

 私は台湾へ通って、李登輝総統(当時)の知遇をえたほか、多くの親しい友人をつくった。2014年に、私の著書『日本と台湾』(祥伝社、2013年)が台湾で訳出されて、『日本與台灣』(大都會文化)として出版され、重版を重ねている。

 2019年の10月19日は、土曜日だった。

 天皇陛下がご即位を世界へ宣明された、『即位礼正殿の儀』の3日前に当たった。

 この日に、私は拓殖大学におけるシンポジウムで、渡辺利夫前拓大学長と講師をつとめることになっていた。ところが、その10日前に已むをえない事情によって、シンポジウムを欠席しなければならなくなった。

 主催者に説明したところ、シンポジウムよりも重要だと理解してくれた。そのかわりに、メッセージを寄せるように求められた。

 「今週火曜日の産経新聞によって報道されましたが、台湾の政界、経済界の有志が『台湾・桜里帰りの会』を立ち上げられ、日本において令和の御代が明けたのを祝って、1923年に昭和天皇が摂政宮・皇太子殿下であられた時に、台湾を12日にわたって行啓され、お手植えになられた、桜、ガジュマル、瑞竹の苗木を、日本へ里帰りさせることとなり、今日の同じ時刻にその目録の贈呈式を、明治記念館において行うことになりました。

 台湾側では『台湾・桜里帰りの会』の名誉会長に李登輝元総統の曽文恵夫人、日本側は安倍首相の母堂の安倍洋子夫人が就任され、私が会長をひき受けることを求められました。

 今日の式典には、『台湾・桜里帰りの会』会長で、台湾政界の重鎮の黄石城先生をはじめ、多くの要路の方々が来京されます。

 昭和天皇ゆかりの桜、ガジュマル、瑞竹が、日本へ里帰りすることは、日本と台湾の精神的な強い絆を象徴するものです。

 台湾の独立と自由を守ることが、そのまま、日本の独立と自由を守ることになります。

 香港では自由を渇望する青年男女や、老壮市民が、邪しまな北京の共産政権に対して、もう半年近くにわたって、連日、街頭を埋めて果敢な抗議集会を続けています。

 香港の自由と民主主義を求める市民たちの人波のなかに、民主主義と人権の象徴として、米国の星条旗、英国のユニオン・ジャック、カナダ、オーストラリアなどの国旗や、台湾の緑の独立旗が掲げられていますが、日の丸がまったくみられないのは淋しいだけではなく、恥しい思いに駆られます。

 かつてアジアの解放を理想として、日の丸を高く掲げ、『アジアの盟主』をもって任じた日本国民の気概は、どこへいってしまったのでしようか。

 専制中国の虐政のもとで苦しんでいる、チベット、ウィグル、南モンゴルの人々が、天与の権利である自由を回復しないかぎり、アジアに平和が訪れることはありません。」

 明治記念館における贈呈式典では、台湾の駐日大使に相当する謝長廷・台北駐日経済文化代表処代表をはじめ、日台の関係者が見守るなかで、黄会長から安倍夫人に苗木の目録が贈られた。

 その後に、台湾の駐日代表をつとめられた許世楷元大使と、私が昭和天皇ゆかりの苗木の里帰りに至った経緯と、苗木をどこに植えることになるのかなどについて、説明した。

 私は「3日後に迫った即位大礼を祝って、多くの諸国、地域などの代表が来京されますが、台湾だけが即位大礼の前に、このような素晴しい、心がこもった“前夜祭”を催して下さり、多くの国民が台湾に深く感謝するでしよう」と、述べた。

 そして、「台湾は同じ隣国である韓国が、国をあげて『反日』に熱中して、日本時代に全土に開設した小中高校の校庭の日本原産の樹木を伐採しているのと対照的に、日本に世界のどの国にもみられない、深い親近感を寄せてくれています」と、つけ加えた。

 昭和天皇は、大正天皇が重い病にかかられたために、訪台される2年前に20歳で摂政宮に就任されていた。

 台湾では、摂政宮・東宮殿下を島民をあげて歓迎申し上げ、台北市民が今日、見事な桜並木となっている苗木を植え、台南ではガジュマル、屏東では植物のご研究によって知られた殿下が竹の新種を発見され、「瑞竹」と命名されて、お手植えになられた。

 私は10年ほど前に、台湾を訪れた時に、台北の副市長が案内してくれたが、「昭和天皇陛下ゆかりの桜並木を誇りにして、市民が大切にしています」と、教えられた。

 台南のガジュマルの樹は、いまでは枝を広々とひろげた大樹となって、屏東の瑞竹林とともに、昭和天皇がお植えになった由緒から、観光の名勝となっている。

 私は台湾と日本が一蓮托生の関係によって結ばれていると、信じてきた。

 台湾はインドネシアから日本に至る列島の日本のすぐ隣に位置しており、もし、台湾が敵性国家によって奪われることがあったら、日本が独立を維持できなくなる。

 台湾は日本にとって、“第二の九州”といえる。偶然だが、台湾と九州の面積はほぼ均しい。

 日本を訪れる観光客数では、台湾は2018年に476万人で、中国、韓国についで第3位となっている。台湾の人口が2350万人だから、台湾国民の4人か、5人に1人が日本を訪れている。当然、リピート客が多い。  

 台湾で行われている世論調査では、毎年、日本が「もっとも好きな国」として第1位を占め、アメリカが次いでいる。

 だが、私たちは台湾国民が日本へ寄せている、友情に応えているだろうか?

 私は昭和47(1972)年に、田中角栄内閣のもとで日中国交正常化が行われ、台湾を切り捨てた時に、月刊『文藝春秋』などの誌上で、この暴挙に強く反対した。中国共産党政権が歴代皇帝といささかも変わらず、権力を私して覇権のみ求めるから、信頼できないと論じた。

 あの時の中国はソ連の侵攻に脅えて、日本と結ぶことを焦っていた。当時、日中貿易は世界最大のものであり、日本が中国と急いで国交を結ぶ必要はなかった。

 中国は日台が領事関係を維持することを、認めたはずだった。日本はアメリカが中国を承認するまで待つべきだった。日中国交正常化は、戦後の日本外交の最大の汚点となった。

 私は1979年に防衛庁(当時)がつくった、最初の民間の安全保障研究所の理事長をつとめた。中国にはじめて招かれた時に、毛沢東の大長征の戦友といわれた、李達人民解放軍副参謀長が人民大会堂において、私の歓迎晩餐会を催した。

 宴席で李副参謀長が挨拶して、「日本は防衛費を、GNPの2%にすべきだ」と促した。

 中国の国防部と人民解放軍によって、頻繁に招かれたが、ある時、「先生はどうして、台湾に肩入れされるのですか?」と質問された。私は「50年間も日本国民だった台湾国民を守るのは、日本人としての義務です」と答えた。

 目録の贈呈式典に戻ると、以前お目にかかった台湾の黄石城先生が「20年ぶりですね」といわれて、私を憶えていて下さった。

 黄先生は、自伝『権力無私・私の参政への建言』の日本語訳(海苑社、呉本信一訳、2010年)のなかで、「日本が台湾に対して行った植民地統治は基本的な建設が相当よく、その時代は皇民教育があったといえども、教育上においてヒューマニズム教育の修身を重視していました。したがって、これまでに日本の教育を受けた人たちは、やはり心にふれて感動しています」と、述べておられる。

 黄先生は自伝で、現代社会が「是非の区別をしない」ために、「価値観をもっている人が少なく」なって、「ただ利害関係の価格ばかり考えて、価格観によって行動している」と、警告しておられる。

 戦後の日本は、算盤勘定による経済を何よりも優先して、物事の是非を問うことなく、価値観を失った品位のない国家となってしまった。

 是非――善悪を弁えていないと、一時的には物的に潤うことになるが、結局は大火傷してしまう。

 今日の日中・日台関係が、黄先生の「価値観」と「価格観」の戒めが正しいことを、証している。

 安全保障は、可能性が数パーセントであっても、最悪の場合を想定しなければならない。

 “従北派”の文在寅政権のもとで、韓国が米日韓同盟から脱落して、在韓米軍が撤収することもありえよう。

 もっとも、仮に韓国が敵性国家となったとしても、日本に対する脅威が大きく増すものの、日本が滅びることはない。

 ところが、台湾を敵性勢力が支配することになれば、日本はその瞬間から独立を維持することができない。

 それにもかかわらず、日台間には公的な関係が存在せず、両国間の軍事協議も行えないでいる。国会がアメリカに倣って台湾関係法を制定して、日本が台湾有事の場合に何をなすべきか、日台米の協議を行うべきだ。

 若い世代は既存のコンセンサスによって、縛られていない。いま、日本に求められるのは、時代に適った日台関係をつくることだ。

 台湾では4年前に、『日本皇族的台湾行旅 蓬莱仙島菊花香』(日本の皇族の台湾訪問 台湾が菊花に香った時、陳煒翰著)という単行本が発行され、重版を続けている。

 明治34(1901)年に、北白川宮が訪台されてから、昭和16(1941)年に閑院宮、同妃まで、26人にのぼる皇族が台湾を訪問された日程や活動が、写真入りで260ページにわたって紹介されている。

 私はこの本を手に取って、もしこの本がはじめ日本で出版されたとしても、重版されないだろうと思った。台湾国民のほうが、日本の皇室に対して崇敬心が篤いのだ。

 台湾国民の心情を知るために、この本の日本語版をぜひ出版したいと思う。

 台湾は世界のなかで、日本と心を分かち合っている、唯一つの国なのだ。

 世界で日本と心を一つにしている国が、他に、どこにあるだろうか。

 桜、ガジュマル、端竹を植える先については、『日本・桜里帰りの会』に一任されている。すでに全国から問い合わせが、私のもとに寄せられている。

 苗木を皇室ゆかりの場所に植えたいと、願っている。苗木が到着してから、検疫のために植物園に1年間預けることになるので、そのあいだに慎重に検討したい。

2020年01月08日

◆国家としての“根”を腐らせてはならない

加瀬 英明


根は植物の地下器官であって、地中にある滋養分を吸収することによっ て、茎や、葉の生命を支えている。

国家にとって、根は何だろうか。地中に隠れた根と同じように、目で見る ことができないが、歴史と伝統文化によって培われた国民精神が、根に当 たる。

国家が独立を保ち、国民の平和と安全を守るためには、前人に感謝し、先 人の偉業を誇ることが必要だ。

それでなければ、根腐れした老木のように、立ち枯れてしまう。

国家は地中に逞しい根を、しっかりと張っていなければならない。

何ごとも、心のなかで願うことから、始まる。

願いは祈りだ。今日、私たちが生きる日本は、先人たちが遺してくれた贈 り物である。

願いも、祈りも、感謝の気持ちから発しなければ、虚ろなものでしかない。

だが、現行の日本国憲法の前文は、「政府の行為によって再び戦争の惨禍 が起こることのないやうにすることを決意し」と、うたっている。日本だ けに、先の戦争を引き起こした責任を負わせることによって、日本が犯罪 国家だと、決めつけている。

現行憲法はアメリカが占領下で、「この憲法案を呑まなければ、天皇の一 身の安全を保障しない」といって、強要したものだ。

憲法の前文は、アメリカが戦争に敗れた日本に押しつけた、日本に「悪う 御座居ました」といわせている詫び状だ。

日本が先の対米戦争を、アメリカの不当な圧迫を蒙って戦ったのには、十 分な理由があった。

平和を愛されておられた昭和天皇が、開戦の詔勅のなかで、「自存自衛の ため」と宣明されている。

詳しくは、拙著『大東亜戦争で日本はいかに世界を変えたか』(ベスト新 著、KKベストセラーズ)を、お読みいただきたい。

憲法の前文は、先祖を冒涜するものだ。

このような憲法を、今日まで戴いてきた私たちは、罰当りだといわねばな らない。

11月3日が巡ってきた。この日はいまだに「文化の日」と、呼ばれてい る。明治天皇の御誕生日を記念する「明治節」だったのを、占領下で「文 化の日」に改めさせられた。

4月29日の昭和天皇の御誕生日は、意味が不明な「みどりの日」と呼ば れていたが、「昭和の日」に正されたのに、「文化の日」はそのままだ。

良識ある国民によって、「文化の日」を「明治の日」に改める運動が行わ れている。

ところが、朝日新聞がこの運動を「狙いは戦前回帰だ」といって、侵略戦 争をもたらした「八紘一宇」の軍国主義時代を呼び戻すことを企んでいる から、「文化の日」のままにすべきだと、反対している。

日本が明治に入って、国家政策として富国強兵を行ったのは、正しかった はずだ。

清、ロシア帝国が、日本を呑み込もうとするのに対して、国民が一致団結 して、日清、日露戦争に勝つことがなかったら、清国か、ロシアに隷属す ることを強いられて、今日の日本がなかった。明治は輝かしい時代だった。

「八紘一宇」は、初代神武天皇が詔(みことの)りによって、人種平等を説 いた誇るべき言葉だ。

憲法を改正しないかぎり、日本という大樹が根腐れして、立ち枯れてしま おう。



2019年12月28日

◆令和の御代が世界のために明けた

加瀬 英明


11月14日深夜に、皇居の杜(もり)で「大嘗祭の儀」が行われた。

大嘗宮では、天皇陛下が降臨された天照大御神と、米、粟(あわ)、栗など
の新穀や、海産物を神人共食される。

この時に用いられる箸は、箸の原型といわれる、竹を削いで焙(あぶ)った
ピンセット状のものであり、皿は柏(かしわ)の葉を重ねたものだ。

大嘗宮は主基殿、悠紀殿の2棟から構成され、黒木とよばれる木肌を剥い
ていない松の木を組み、床下に藁(わら)を敷いている。

超近代都市の東京の中心で、太古の昔に発祥した祭祀が催されたのだ。

皇居で天皇陛下が親しく田植えされ、稲刈りをされることはよく知られて
いるが、栗も栽培されている。縄文時代の集落の遺跡は、栗が栽培されて
いたことを教えている。

私は比較宗教の研究者でもあるが、全国で神道について講演している。

そのような時に、私は「神道という言葉が、日本語に仲間入りをしたの
は、ごく最近のことですから、あまり気になさらないで下さい」という。
7世紀に仏教が伝来すると、それまで自然を崇める民俗信仰に名がなかっ
た。仏教と区別するために、神道、あるいは古道とよばれた。

大陸様式の仏寺が造られるまで、神道には神殿がなかった。山や、木、巨
岩、海などを神体としていた。

私はほどなく世界に、日本の時代が訪れることを、確信している。

いま、先進諸国では、一神教が急速に力を失うようになっている。

2019年に、パリのノートルダム大聖堂が炎上した。フランスの世論調
査によれば20代、30代で教会に定期的に通っている者は、7%しかな
い。アメリカのリベラル勢力が支配しているカリフォルニア州、ニュー
ヨークの州でも、キリスト教離れが進んでいる。

かわって、人々が自然と共存するエコロジーを信仰するようになっている。

日本のアニメが世界を制しているが、万物に霊(アニマ)が宿っているとい
う、エコロジーから発している。全世界を席捲している「エモジ」も、同
じことだ。自然を味わう和食が融け込みつつある。抗争に疲れはてた人類
に、八百万(やおろず)(無限)の存在と共生しようという、日本の“和の
心”が理解されつつある。

キリスト教の大伽藍は、民衆の大部分が文盲だったヨーロッパで、目で見
て分かる聖書(バイブル)の役割を果した。だが、山や、木や、巨岩のほう
が、どれだけ荘厳だろうか。

神道は“和”というと、“心の信仰”であり、それに対して人類が文字を知っ
てから生まれた、一神教をはじめとする諸宗派は、論理にもとづいてい
る。心は分かち合えるが、論理は対立を招く。

日本が中国という八岐大蛇(やまたのおろち)に呑み込まれないかぎり、世
界は日本の時代を迎えることとなろう。

2019年12月27日

◆習主席 日本への作り笑いは一時的

加瀬 英明


日本を守る? 

この連載を執筆しているあいだに、朝鮮半島をめぐる情勢が緊張するよう になっている。

12月11日に、米国は国連安保理事会において北朝鮮が挑発を続けれ ば、経済制裁をさらに強化すべきだと、主張した。米国内で、米国が北朝 鮮の核・ミサイル施設に限定的な攻撃を加えることによって、“第二次朝 鮮戦争”が起るという声があがっている。

だが、来年、朝鮮半島に火の手があがることはないと私は思う。金正恩委 員長は、もし米国と全面戦争を戦ったら、北朝鮮が壊滅することを知って いるから、見せかけの譲歩を行って、米国をあやすこととなろう。

トランプ政権も口で凄んでも、戦いたくないのが本音だ。そこで、米朝の 騙し合いが続いてゆこう。

中国こそが、脅威だ。

習近平主席の中国は、足に深い傷を負って跛行(はこう)している。

習主席の頼みの綱である経済が、米国を怒らせたために、畏縮するように なっている。

香港で若者や一般市民が、中国の横車に対して街路を埋めて立ち上がっ て、果敢な抗議運動を、6月から休みなく続けている。

習主席は1月11日に台湾で行われる総統選挙で、親中国の国民党候補が 勝つことを、強く願ってきたのに、香港に対する一国二制度の約束を踏み 躙ることによって、台湾を中国におびき寄せる芽を、自らつんでしまっ た。頭が錯乱しているのではないか。

台湾国民は香港の惨状を見て、台湾独立派の民進党の蔡英文総統を再選さ せることになろう。

習主席は愚かで、優柔不断なのだ。香港市民を怒らせた「逃亡犯引き渡し 条例」を、もっと早い段階で撤回すればよかったのに、面子にこだわっ て、状況を絶望的にした。

といって、米欧、日本などの先進国が中国に厳しい経済制裁を加えること になるのを恐れて、人民武装警察軍を投入して、いっきょに解決する勇気 もない。

イスラム教徒の新疆ウィグル自治区で、100万人以上を強制収容所に送 り込んで、「再教育」を行っているのも、中国のイメージを暗いものにし て、国際的な除け者にしている。

習主席は、来春、日本に国賓として迎えられた時に、天皇を答礼として中 国に招くことによって、中国の国際イメージを回復することを狙ってい る。日本に対して作り笑いをしているが、一時的なものだ。


2019年12月23日

◆「日米韓」を「日米台」同盟に

          加瀬 英明


 日本を守る4 
 
中国と米国を中心とする海洋諸国同盟が、アフリカの岸を洗うインド洋か
ら日本まで、インド太平洋圏の覇権をめぐって、激しい鍔迫(つばぜ)り
合いを演じている。

 どっちが、勝つことになるのだろうか。テクノロジー、軍事力、資力よ
り以上に、戦略を構築する力が軍配をあげることとなろう。

 ここでも、習近平主席は重大なハンデキャップを負っている。

 習主席は中華人民共和国の玉座について以来、大海軍の建設に取り組ん
できた。いまではアフリカ大陸とアラビア半島に挟まれた、紅海の出入り
口のジプチにまで海軍基地を持つようになった。

 秦の始皇帝が紀元前2世紀に中国大陸を統一して、中華帝国が地上に現
われてから、中国が大海軍を持つのははじめてだ。

 中国は戦略的な発想を行う能力がない。2000年以上にわたって、地
上で自分だけが優れているという中華思想によって触まれているために、
他国と対等な関係を結ぶ能力を欠いており、同盟国を持つことができない。

 手前勝手な華夷思想によって、中国と野蛮な夷(えびす)に、世界を2
つに分けてきた。中国は海に背を向けた文明だ。

 習主席のもとで、中国は海洋勢力となろうとして、大海軍の建設を急い
でいるが、海軍力によって、海洋勢力となることはできない。

 それに対して、米国は海洋諸国と結んで、中国を孤立させている。

 かつて大陸勢力であったロシア、ドイツ帝国が大海軍を誇ったが、海洋
勢力に敵わなかった。中国はその轍(てつ)を踏みつつある。

 中国は中華思想という歴史の檻(おり)から、抜け出せない。

 中国は来年11月の大統領選挙で、トランプ大統領が再選に失敗するの
を願っている。

 米国は経済が快調だ。民主党は議会でトランプ大統領を弾劾している
が、共和党が多数を占める上院で否決されるから、嫌がらせにすぎない。

 だが、米国は民主国家だ。民主党のリベラルな牙城であるニューヨーク
州、カリフォルニア州と、フロリダ州が最大の選挙人数を持っているか
ら、万一、一過性の人気によって“小池百合子現象”が起こって、オバマ政
権のような民主党政権が誕生するかもしれない。

 海洋同盟諸国の弱い鎖が、日本、韓国、台湾だ。韓国は信頼できない。
日米韓同盟を、日米台同盟にかえるべきだ。

2019年12月22日

◆先端技術こそ米中攻防のカギ

加瀬 英明


日本を守る3 先端技術こそ米中攻防のカギ

 いま、世界の将来を賭けて、中国対米国を中心とする海洋同盟諸国が、
インド太平洋圏の争奪戦を繰りひろげている。

 陸の神と海の神々による、壮大な戦いだ。

いったい、どちらに勝ち目があるのだろうか?日本はその最前線にある。

 トランプ政権は、ハイテクノロジーの供給を絶つことによって、中国を
締めあげようとしている。

 米国は1991年に、ソ連を解体に追い込んで、ノックアウトした。こ
れは、ソ連への先端技術を遮断したココム(対共産圏輸出統制委員会)に
よるものだった。

 トランプ政権にとって、米中関税貿易戦争は入り口でしかない。米国の
中国による南シナ海の7つの人工島や、ヨーロッパまで至る「一帯一路」
戦略に対するカウンターブローも、軍拡競争も、決定打とはならない。先
端技術こそ、勝敗の鍵を握っている。

 習主席は北京の天安門広場や、モンゴルの草原で大軍事パレードを閲兵
して、自己満足に浸っている。兵士や、戦車や、ミサイルは、作り物の京
劇の舞台装置のようだ。

 習近平主席に、まったく勝ち目がない。

 中国経済は米国に寄生してきた。習主席が米国が超大国として力を衰え
させたと誤算したのは、大失策だった。威勢よく「五千年の偉大な中華文
明の復興」「中国の夢」を呼号していたのに、ドル収入が筋力となってい
たから、足腰がふらつくようになった。

 習主席は巨額を投じて、本格的な外洋海軍の建設を強行してきた。昨年
11月に、中国にとって最初の国産空母が、台湾海峡を抜けた。ロシアが
廃棄した空母を、スクラップと偽って購入して空母にしたから、2隻保有
しているが、金繰りが苦しくなったために、国産2号艦の建造を延期して
いる。

 習主席は2013年に、中国の最高権力者となった。もし習主席がその
時、私にアドバイスを求めていたら、こういっただろう。

「大海軍を建設するのは、核ミサイルの大部隊と同じように、まったくの
無駄遣いです。太平洋諸国に嫌われるだけのことです。そのカネを、日本
や太平洋諸国に気前よく投資して、バラまきなさい。日本も太平洋諸国が
みな『中国大好き! ニーハオ!』と合唱して、中華圏に取り込まれてゆ
くはずです」

 習主席は狡智に長けているから、国内の権力闘争の勝者となった。だ
が、対外的には愚かだ。無謀だから、何をするか分からない。



2019年12月21日

◆米VS中「インド太平洋圏の争奪戦」

加瀬英明


日本を守るA 米VS中「インド太平洋圏の争奪戦」


これからの世界の行方は、米中によるインド太平洋圏の争奪戦によって決
まる。

オバマ政権までは、米国は売り上げを何よりも優先するウォール街の多国
籍・無国籍企業が操るグローバリズムが牛耳って、あざとい金儲けのほか
に、世界の将来について焦点が定まらなかった。

2017年にトランプ政権が登場すると、「アメリカ・ファースト」を旗
印として、米中対決が始まった。

それなのに、私はいまでも「米中の抗争の狭間(はざま)に立って、日本
はどうするべきか」というテーマで、講演を頼まれる。何とも、間が抜け
た依頼だ。

もし、日本が米中と並ぶ軍事力を持っているなら、洞ヶ峠をきめてもよか
ろう。

5つの国が、インド太平洋圏の将来を決定することになる。米中、ロシ
ア、日本、インドだ。明日の世界をつくる5ヶ国はペンタゴン(五角形)
と呼ばれるが、北朝鮮、韓国、台湾、東南アジア諸国、オーストラリアな
どが脇役だ。

大陸国家である中国と、米国を主軸とする海洋同盟諸国が、世界の中心と
なったインド太平洋圏の覇権を争っている。

インドから台湾を経て、日本まで連なる海洋・沿岸諸国が、中国という
“暴れ龍”を囲む柵(さく)をつくっている。韓国はどちらにつくか分から
ない、蝙蝠(こうもり)だ。

いまのところ、米国を扇(おおぎ)の要としている海洋同盟が有利だ。

中国の習近平国家主席が、インド太平洋圏の覇権争いをつくりだした。

だが、習主席は聡明(そうめい)な中華帝国の皇帝を気取っているが、
1949年に中華人民共和国が誕生して以来、もっとも愚かな最高指導者
だ。習主席は2013年に14億人の中国の最高指導者に就任して以来、
黒星続きで、何一つとして成果をあげていない。

習主席は米国がグローバリズム、リベラル、ドル呆けによって、国家観を
うしないつつあったところ、トランプ政権によって分断されたために力が
衰えさせていると、大きく誤算して、背伸びして、米国に真向うから挑ん
だ。それまでの中国の最高指導者が、中華思想による天下イズムの野望を
隠して、猫をかぶっていたのをかなぐり捨てた。

そのために、米国が「中国抑えるべし」で、一致団結した。中国がよろめ
いている。愚かな習主席が、何をするか分からない。


2019年12月20日

◆日本と心を分かち合う国があるだろうか?

加瀬 英明


10月19日は土曜日だったが、天皇陛下が世界へ向かってご即位を宣明
される、『即位礼正殿の儀』の3日前に当たった。

この日に、私は拓殖大学におけるシンポジウムで、渡辺利夫前拓大学長と
講師をつとめることになっていた。

ところが、その10日前に已むをえない事情によって、シンポジウムを欠
席しなければならなくなった。

『台湾・桜里帰りの会』

主催者に説明したところ、シンポジウムよりも重要だと理解してくれた。

そのかわりに、メッセージを寄せるように求められた。

「今週火曜日の産経新聞によって報道されましたが、台湾の政界、経済界
の有志が『台湾・桜里帰りの会』を立ち上げられ、日本において令和の御
代が明けたのを祝って、1923年に昭和天皇が摂政宮・皇太子殿下であ
られた時に、台湾を12日にわたって行啓され、お手植えになられた、
桜、ガジュマル、瑞竹の苗木を、日本へ里帰りさせることとなり、今日の
同じ時刻に、その目録の贈呈式を明治記念館において行うことになりました。

台湾側では、『桜里帰りの会』の名誉会長に李登輝元総統の曽文恵夫人、
日本側は安倍首相の御母堂の安倍洋子夫人が就任され、私が会長をひき受
けることを求められました。

今日の式典には、『台湾・桜里帰りの会』会長で、台湾政界の重鎮の黄石
城先生をはじめ、多くの要路の方々が来京されます。

昭和天皇ゆかりの桜、ガジュマル、瑞竹が、日本へ里帰りすることは、日
本と台湾の精神的な強い絆を象徴するものです。

台湾の独立と自由を守ることが、そのまま日本の独立と自由を守ることに
なります。

香港では自由を喉が渇いて、水をほしがるように――渇望する青年男女、老
壮市民が、邪しまな北京の共産政権に対して、もう半年近くにわたって、
連日、街頭を埋めて果敢な抗議集会を続けています。

 なぜ日章旗を見ることがないのか

香港の自由と民主主義を求める市民たちの人波のなかに、民主主義と人権
の象徴として、アメリカの星条旗、イギリスのユニオン・ジャック、カナ
ダ、オーストラリア、ニュージーランドなどの国旗や、台湾の緑の独立旗
が掲げられていますが、日の丸がまったくみられないのは、淋しいだけで
はなく、恥しい思いに駆られます。

かつてアジアの解放を理想として、日の丸を高く掲げ、『アジアの盟主』
をもって任じた日本国民の気概は、どこへいってしまったのでしようか。

専制中国の虐政のもとで苦しんでいる、チベット、ウィグル、南モンゴル
の人々が、天与の権利である自由を回復しないかぎり、アジアに平和が訪
れることはありません。」

明治記念館における贈呈式典では、台湾の駐日大使に相当する謝長廷・台
北経済文化代表処代表をはじめ、日台の関係者が見守るなかで、黄会長か
ら安倍夫人に、苗木の目録が贈られた。

その後、台湾の駐日代表をつとめられた許世楷元大使と私が登壇して、昭
和天皇ゆかりの苗木の里帰りに至った経緯、苗木をどこに植えることにな
るのかなどについて、説明した。

 即位大礼の“前夜祭”に感謝

私は「3日後に迫った即位大礼を祝って、180以上の諸国、地域、国際
機関の代表が来京されますが、台湾だけが即位大礼の前に、このように素
晴しい“前夜祭”を催して下さって、多くの日本国民が台湾に深く感謝する
ことになるでしよう」と、述べた。

昭和天皇は、大正天皇が重い病にかかられたために、訪台される2年前に
20歳で摂政宮に就任されていた。

台湾では、摂政宮・東宮殿下を島民をあげて歓迎申し上げ、台北では、今
日、見事な桜並木となっている苗木を植え、台南ではガジュマル、屏東で
は植物のご研究によって知られた殿下が竹の新種を発見され、「瑞竹」と
命名されて、お手植えになられた。

私は10年ほど前に台湾を訪れた時に、台北の副市長が案内してくれた
が、「昭和天皇陛下ゆかりの桜並木を誇りにして、市民が大切にしていま
す」と、教えられた。

台南のガジュマルの樹は、いまでは枝を鬱葱(うっそう)とひろげた大樹と
なって、屏東の瑞竹林とともに、昭和天皇がお植えになられた由緒から、
台湾国民の観光の目玉となっている。

台湾は、同じ隣国である韓国が国をあげて「反日」に熱中して、日本時代
に全国に開校した、小中高校の校歌をつくりなおさせ、校庭に植えた日本
原産の樹木をすべて伐採しているというのに、日本に世界でどの国にもみ
られない深い親近感を寄せてくれている。

 台湾の世論調査「もっとも好きな国」は日本

毎年、台湾で行われている世論調査では、日本が「もっとも好きな国」の
第1位を占め、アメリカが次いでいる。

日本を訪れる観光客数では、台湾が476万人で、中国、韓国についで第
3位となっているが、台湾の人口が2350万人だから、台湾国民の4、5人に
1人が日本を訪れている。当然、リピート客が多い。

だが、私たちは台湾国民の日本へ寄せている、熱い親しみの感情に応えて
いるだろうか?

私は昭和47(1072)年に、田中角栄内閣のもとで日中国交正常化が
行われ、台湾を切り捨てた時に、月刊『文藝春秋』などの誌上で、この暴
挙に強く反対した。

 台湾国民の日本へ寄せる心に思いをいたそう

あの時は、中国がソ連の侵攻に脅えて、日本と結ぶことを焦っていた。当
時、日中貿易は世界最大であり、日本として中国と急いで国交を結ぶ必要
はなかった。

中国は日台が領事関係を結ぶことを、認めたはずだった。日本はアメリカ
が中国を承認するまで、待つべきだった。日中国交正常化は、戦後の日本
外交の最大の汚点となった。

安全保障は可能性がたとえ数パーセントしかなくても、最悪の場合を想定
して備えなければならない。

このままゆけば、“従北派”の文在寅政権のもとで、韓国が米日韓同盟から
脱落して、在韓米軍が韓国から撤収することもありえよう。もっとも、仮
に韓国が敵性勢力と結ぶことになっても、日本に対する脅威が大きく増す
ものの、日本が滅びることはない。

私は1970年代末に、防衛庁(当時)がつくった、最初の民間の安全保
障研究所の理事長をつとめた。

そのために、中国の国防部と人民解放軍によって頻繁に招かれたが、ある
時、「先生はどうして、台湾に肩入れされるのですか?」と質問された。
私は「50年間、日本国民だった台湾国民を守るのは、日本人としての義
務です」と、答えた。

もし、台湾を敵性勢力が支配することになれば、日本はその瞬間から、独
立を維持することができない。

台湾では、4年前に『日本皇族的台湾行旅 蓬莱仙島菊花香』(日本の皇
族の台湾訪問 台湾が菊花に香った時、陳煒翰著)という単行本が
発行され、重版を続けている。

明治34(1901)年に、北白川宮が訪台されてから、昭和16(1941)年に閑
院宮同妃まで、26人にのぼる皇族が台湾を訪問された日程と活動が、260
ページにわたって、写真入りで紹介されている。

 台湾を応援しよう

私はこの本を手に取って、この本が日本で発刊されたとしても、重版され
ることがないだろうと思った。台湾国民のほうが、日本の皇室に対して崇
敬の心が強いのだ。

台湾は世界のなかで、日本と心を分かち合っている、唯一つの国なのだ。

桜、ガジュマル、端竹を植える先については、『日本桜里帰りの会』に一
任されている。

台湾国民の心情を知るために、『日本皇族的台湾行旅』の日本の訳本を、
ぜひ出版したい。


2019年11月09日

◆無防備でお人好しのままでは

加瀬英明


無防備でお人好しのままでは日本の独立と安全は守れない

「オレオレ詐欺」をはじめとして、電話を使って高齢者を騙す詐欺が、あ
とを絶たない。

あれほどテレビが注意を促しているというのに、詐欺犯から電話がかかる
と、警戒心をいだくことがなく、罠にはまってしまう。

これは日本が諸外国と異なって、人々が信用しあう“和の社会”であって、
人に対する性善説をとっているからだ。

日本は人口が1億2000万人もあるのに、国民が同質だと信じている国
は、他にない。

日本のように外国について、性善説をとっている国も、他にない。

私は外国を訪れるたびに、「子供を学校に送り出す時に、何といいます
か?」と、たずねることにしていた。日本では「みんなと仲良くしましょ
うね」という。

中国では「騙されないようにね!」といって送りだすという答えが、多
かった。

ちなみに韓国では「一番になれ!」「負けないで!」と、励ますという。
韓国は食うか食われるかの、熾烈(しれつ)な競争社会なのだ。

アメリカが日本に強要した日本国憲法は、日本国民によって“平和憲法”と
いまでも呼ばれているが、前文で「平和を愛好する諸国民の公正と信義に
信頼して」「安全と生存を保持」すると、うたっている。

護憲派の人々は、詐欺の犠牲となる無防備な高齢者に、よく似ている。

かかってくる電話がすべて善意によるのだと、疑うことがない。よい人た
ちだ。

日本は、中国、北朝鮮、ロシア、韓国のすぐ隣にあるから環境が厳しい。

残念なことだが、人食い虎、狼、ヒグマ、狐によって、囲まれているよう
なものだ。油断してはなるまい。

これらの国々に対して、お人好しの高齢者のような性善説をとっていて
も、よいものだろうか?

いったい、憲法は何のために存在しているのだろうか?

公益のためだ。日本の独立と安全を守るのが、公益である。

まさか、日本国民が憲法を守るために、存在しているのではあるまい。

日本が性悪な国々によって囲まれているとしたら、現行憲法によって日本
国民の独立と安全を守ることができないことを、覚るべきである。

それとも、“平和憲法”は気休めのためにあるのだろうか。

護憲派の人々が、どのような場合にも、アメリカが守ってくれるはずだか
ら、心配することがないと信じているとすれば、アメリカに甘えすぎている。

もちろん、アメリカは日本を自国だと思っていない。

アメリカには、その時その時のアメリカの都合があるはずだ。

外国であるアメリカに、すべてを預けてよいものだろうか?

“平和憲法”を守らなければならないという主張は、アメリカが日本をどの
ような場合にも、守ってくれることを前提にしている。

「平和憲法」というより、「甘えの憲法」ではないのだろうか? だが、
国際社会ではこのような甘えは通用しない。

 もし護憲派の人々が、国防が戦争を招くと信じているとすれば、消防車
が火事を招くことになるし、堤防があるから川が氾濫するというのとかわ
らない。

2019年10月12日

◆日本人の精神を破壊する憲法

加瀬英明


日本人の精神を破壊する憲法は改めなければならない

建設会社を経営されている赤塚高仁氏から、『日本よ、永遠なれ』(きれ
い・ねっと社、令和元年)という新著を贈られて、読み終わったが、強い
衝撃を受けた。

15歳になる令嬢がカリフォルニアに留学したところ、アメリカのクラス
メートから「日本という国は、いつできたの? 誰がつくったの?」と質
問されて、答えられなかったというのだ。アメリカはジョージ・ワシント
ンがつくったが、日本という国がいつ誰が建国したのか、わからなかった
のだ。

私は客員教授として大学で講義の後に、学生とコーヒーを飲むことがある
が、何人かの男女の学生にたずねたら全員が答えに窮した。

どうして日本の若者は、自国の歴史を知らないのだろうか?

占領軍が定めた日本国憲法は、第20条で「国及びその機関は、宗教教育
その他いかなる宗教活動もしてはならない」と定めており、憲法の「政教
分離」原則に違反するからといって、歴史教科書に日本の建国の由来であ
る神話をのせることを禁じているためだ。

この結果、日本国民は根なし草になっている。

現行憲法を押しつけたアメリカの本家でも、憲法が政教分離を規定してい
るが、アメリカのドル札には「ウィ・トラスト・イン・ゴッド・われらは
(キリスト教の)神を信じる」と刷り込まれているし、大統領就任式では
聖書に手を置いて宣誓し、議会で本会議、委員会が開催される時に、議会
専属の牧師が祈りを捧げてから始まる。
 
アメリカでの政教分離はキリスト教の特定の教派を、国民に強いてはなら
ないものだ。

アメリカ占領軍が日本国憲法に特有の政教分離を強要したのは、日本をキ
リスト教国につくりかえたかったからだった。

もし、日本がフィリピンのようなキリスト教国だったとしたら、今日の日
本のような政教分離が行われることがなかった。

神仏を排除するために、政府や地方自治体の行事を、無宗教、無神論に
よって行うことを強いたのだった。

アメリカはいうまでもなく、旧ソ連や、中国や、北朝鮮のような無神論に
もとづく国ではない。アメリカではキリスト教が社会儀礼となっており、
習俗であるから、国や自治体の儀式にキリスト教を用いている。

日本で国や自治体が宗教を否定して、唯物論を宣伝するのは、由々(ゆゆ)
しいことだ。由々しいは忌忌(ゆゆ)しいとも書くが、忌(い)むべきことを
意味している。

日本では祖霊や神仏を崇めるのは、伝統的な社会儀礼であり、習俗に当た
るものであって、無宗教によって宗教を排斥するのは、日本人の精神を破
壊するものだ。

日本神話は時間・空間を超えて、日本という国をつくってきた。今日、私
たちが126代目の天皇をいただいているのは、この国が日本神話から発
しているからである。

もちろん、日本神話は科学によって立証できない。

唯物的な科学よりも、心が重要であることはいうまでもない。日本を心を
否定する、科学万能の社会にしてはなるまい。

人間にとってもっとも大切なのは、先祖から受け継いできた心ではないだ
ろうか。

やはり憲法を日本人の手で、日本の心にふさわしい基本法に改めなけれ
ば、この国が亡びてしまおう。

2019年09月22日

◆世界から見た皇室――令和の御大典を寿ぎて

加瀬 英明


私は昭和天皇が崩御されて、殯宮伺候(ひんきゅうしこう)の1人としてお
招きをうけたほかに、何回か新宮殿にあがったことがある。

私はそのたびに、ヨーロッパの絢襴豪華な宮殿や、歴代の中国の皇帝が住
んだ北京の故宮と較べて、日本の皇居は何と違うのかと痛感する。

新宮殿のなかには金銀に輝く装飾や、人々を威圧する財宝が一つもない。
神社の雰囲気が漂っている。

皇居の杜に囲まれた宮殿の建築様式は、日本に上代から伝わる高床式で、
屋根に千木が組まれている。

天皇陛下がおわされるところに、まことにふさわしい。日本の国柄が表れ
ている。天皇が権力者ではなく、千古を通じて日本を精神的に束ねてこら
れたことを、感じさせられる。

私が親しくしてきた外国の元首も大使たちも皇居を訪れると、異口同音に
諸外国の宮殿とまったく異った空間であることに驚いたと、語っている。

天皇に拝謁した外国人は口を揃えたように、陛下が世界でもっとも謙虚な
人であられると述べている。歴代の天皇は「私」をお持ちになることがな
く、日本だけでなく、全世界の平和を真撃に祈ってこられたからだ。

私はアメリカの未来予測の大御所といわれた、ハーマン・カーン博士
(1922年〜83年)と親しかった。ハドソン研究所の創設者だった
が、著書『超大国日本の挑戦』によって知られていた。博士が来日した時
に、高松宮宣仁親王殿下の高輪の御殿にお連れして、御紹介したことが
あった。

その時に、殿下が兄宮に当たられる昭和天皇について、「私たちはせいぜ
い百年前後しか考えないが、(昭和天皇は)つねに、これまでの2000
年と、これからの2000年の時間によって、お考えになられている」と
仰言ったので、饒舌な博士がしばらく黙ってしまった。

外国人識者による日本論といえば、イギリスの大記者だったヘッセル・
ティルトマン氏(1897年〜1976年)を忘れることができない。戦
前、イギリスの名門日刊紙『ザ・ガーディアン』東京特派員として来日
し、戦後、日本に戻って吉田茂首相の親友として知られたが、在京の外国
特派員協会会長もつとめた。

私は当時からアメリカの新聞に寄稿していたが、26歳の時にティルトマ
ン記者の知遇をえて、戦前と占領下の日本における体験をきくうちに、目
を開かれることが多かったので、新潮社に話して同氏の回想録を『週刊新
潮』に、昭和40年に36週にわたって連載した。

このなかで、ティルトマン氏は満州国を絶賛するなど、日本の行動を擁護
している。 

そして、日本が建国以来国柄を変えることなく守ってきたことを、「日本
は2600年古い国ではない。2600年も新しい国だ」(『日本報道三
十年』、平成28年に 祥伝社が復刊)と述べている。

ティルトマン氏は私に「日本は古い、古い国であるのに、外国と違って廃
墟となった遺跡が一つもないのは珍しい。皇室が万世一系で続いているの
を説明しています」といって、伊勢神宮など多くの神宮や神社が20年あ
まりの周期で、式年遷宮―昔の姿のまま忠実に造営されていることをあげた。

私はギリシアのアテネで古代アクロポリスの丘にたつパルテノン神殿を訪
れたことがあるが、今日のギリシアのありかたとまったく無縁である。

私は『源氏物語』や、川端康成文学の名訳者として知られた、エドワー
ド・サイデンステッカー教授(1921年〜2007年)とも親しく、上
野池の端で催されたお別れの会で献杯の言葉をのべたが、口癖のように
「わたしは明治翻訳語の『指導者』という言葉が、大嫌いです。日本は和
の国です。最高神の天照御大神も権威であっても、権力はなかった」と嘆
いていた。

日本では、神代のころから合議制の「和」の国だったから、英語のリー
ダー、ドイツ語のフューラーに当たる言葉が存在しなかった。

日本の浮世絵を中心としたジャポニズムが、幕末から明治にかけて、西洋
の絵画、庭園、建築、服飾などに深奥な影響を及ぼしたが、視覚的なもの
にとどまった。

いま、日本の万物に霊(アニマ)が宿っているアニメや、日本発のエモジ、
自然と一体の和食から、人と自然が平等だというエコロジーまで、かつて
のジャポニズムをはるかに大きく超える、日本の心の高波が世界を洗って
いる。

ヨーロッパ、アメリカでは、エコロジーが新しい信仰となって、一神教を
置き換えつつある。日本の和の心がひろまることによって、抗争に明け暮
れる人類を救うこととなろう。

日本文化への共感が増すなかで、天皇の御存在に対する理解が、いっそう
深まることとなってゆこう。