2017年09月08日

◆日本の誇りとすべき帝国軍人たちの「偉業」

加瀬 英明



このところ、国連の人権機関が、日本を誹謗する「特別報告書」を、つぎ
つぎと発表している。

今年に入ってから拷問禁止委員会が、一昨年の慰安婦に関する日韓合意を
見直して、元慰安婦にさらに補償するように勧告した。

その後、人権理事会が任命した「特別報告者」のJ・ケナタチ・マルタ大
学教授による、国会で審議中だった「テロ等準備罪法案」が「プライバ
シーと表現の自由を制約する」という報告書と、D・ケイ・カリフォルニ
ア大学教授による「日本で報道の自由が危機に瀕している」という報告書
が、発表された。

どれも内容は杜撰(ずさん)きわまるものだが、日本のテロ等準備罪法は、
国際組織犯罪防止条約に加盟している、1817の国々の国内法に較べたら、
ごく緩やかなものだ。

日本ほど、報道が野放しにされている国は、少ない。なぜ矛先を同じ国連
加盟国である、中国、北朝鮮、ロシアなど、表現の自由が存在しない国々
へ向けないのか。

1996(平成8)年に国連人権委員会によって「特別報告者」として任命さ
れた、スリランカのクマラスワミ女性弁護士が、『女性に対する暴力』と
題する特別報告書を発表して、旧軍の慰安婦が「明確な奴隷制度」で、
「組織的強姦」が行われたと、断定した。事実は、慰安婦は将兵を顧客に
した民間売春施設で働く売春婦だった。

日本は先の大戦の戦勝国が、日本が残忍で、非人道的な国だというイメー
ジをひろめたのに加えて、韓国、中国が日本を貶(おとし)める宣伝を精力
的に進めてきたために、世界の多くの人々が「南京大虐殺」や、慰安婦が
「性奴隷」だったと、信じるようになっている。

2月に、日本にも多くの読者を持つユダヤ教僧侶のラビ・マービン・トケ
イヤー師が、ニューヨークで日本政府から多年にわたって、日本の正しい
姿を世界に紹介した功績によって、旭日双光章を受勲した。

トケイヤー師が月刊『WiLL』8月号に、先の大戦前に、アメリカ、イ
ギリスをはじめとする諸国がナチス・ドイツの迫害から必死に逃れようと
するユダヤ人の受け入れを、反ユダヤ主義から拒んだために、多くのユダ
ヤ人がガス室へ送られたが、日本だけがユダヤ人を救った人道的国家だっ
たと寄稿している。

トケイヤー師は、今年80歳になった。とくに1938(昭和13)年に、関東
軍参謀長だった東條英機中将とハルビン特務機関長だった樋口季一郎少将
が、シベリア鉄道で満ソ国境まで到着した2万人のユダヤ人難民を、ソ連
がドイツへ送り帰すところを救ったことを、「偉業」「快挙」として賞讃
している。

これは、杉原千畝(ちうね)リトアニア領事代理が、数千人のユダヤ人難民
を「生命(いのち)のビザ」を発給して救った、2年前のことだ。

トケイヤー師は戦後の日本人は、日本がすべて悪かったと思い込まされ
て、東條、樋口両将軍が軍人だったために、大量のユダヤ人を救った業績
が無視されて、杉原ばかりに脚光が当たっているといって、嘆いている。

日本では杉原領事代理が本国政府の訓令に違反して、ビザを乱発した罪に
よって、外務省を追われたということが定説になっているが、それは嘘
で、リトアニア勤務後に昇進したうえ、昭和天皇から勲章も授けられてい
ると、指摘している。

トケイヤー師はアンネ・フランクの父親が、アメリカ大使館、領事館に日
参して、一家のビザの発給を哀願したのにもかかわらず、断られたが、も
し、ビザがおりていたら、今日、アンネは88歳で、アメリカで暮らして
いたはずだと、書いている。

トケイヤー師は「いま大きな夢を描いている」といって、両将軍がユダヤ
人難民を救った実話を中心にした、ユダヤ民族と日本の絆についてドキュ
メンタリーを製作して、アメリカのテレビに提供することを思い立って、
日米で募金を始めたいと、述べている。


2017年09月07日

◆日本は世界の現実から遊離している

加瀬 英明



憲法はいうまでもなく、世界の現実にそぐったものでなければならない。

稲田朋美防衛大臣が安倍内閣の支持率が急落するなかで、内戦によって混
乱する南スーダンへ国連平和維持活動(PKO)に派遣されていた陸上自
衛隊部隊の日報をめぐる問題の責任をとって、内閣改造を待たずに辞任に
追い込まれた。

部隊は比較的に安全な地域で、道路建設など民生支援の活動を行っていた。

ところが、部隊の付近で武力衝突が発生したのを、東京へ送った日報のな
かで「撃(う)ち合(あ)い」といえばよかったのに、「戦闘」と書いた。防
衛省が日報に使われていた「戦闘」という言葉が、使ってはならない言葉
だったので、非公開としたために、野党やマスコミが「隠蔽」したといっ
て大騒ぎした。

私は頭が悪いので、「撃ち合い」と「戦闘」のどこが違うのか、分からない。

稲田氏が防衛大臣になった直後に、うっかり「防衛費」を「軍事費」と
いったところ、国会で叩かれたことがあった。

一般の国民が「防衛費」のことを、「軍事費」といったら、誰一人咎(と
が)めないはずだ。

安倍改造内閣が発足したが、もし新閣僚の一人が自衛隊をうっかり「軍」
と呼んだら、きっと野党によって厳しく追求されるだろう。

私は自衛隊は軍隊だと思う。日本の外のすべての人々が、自衛隊を軍隊だ
と思っている。ところが、日本では自衛隊は軍隊ではないというのが、常
識だ。

私は世界の人々のほうが、正しいと思う。こんなことをいうと、私は気が
触れているのだろうか?

「あれは撃ち合いであって、戦闘ではありません」「防衛費と軍事費は、
違うものです」日本の国権の最高機関である国会や、良識の府といわれる
マスコミで、このような会話が当然のように行われているが、日本は世界
の現実から大きく遊離しているのだ。

医学では、このような症状を夢遊病(ソムナムブリズム)と呼ぶが、夢遊病
者は記憶や判断力を失って、夢遊状態で歩きまわるから、危険きわまりない。

日本国憲法が、この原因をつくっている。

日本国憲法の前文は、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、わ
れらの安全を保持しようと決意した」と、述べている。

世界のあらゆる国が平和を愛しているから、日本は自分を守るために、
いっさい武力を持つことなく、泰平の夢を楽しんで生きると、誓っている
のだ。

この誓いのもとで、憲法第9条が「陸海空軍その他の戦力は、これを保持
しない」と、定めている。

日本国憲法は、日本を夢遊病者にしている。

東京からだと1000キロ、九州からだと500キロしか離れていない北朝鮮
が、核兵器の開発に狂奔し、日常のようにミサイルを試射して、秋田県の
沖合に撃ち込んでいる。

やはり隣国である中国は、隙さえあれば尖閣諸島を奪おうと、毎日、武装
公船によって尖閣諸島を取り囲んでいる。

ロシアは北方領土を軍事基地化して、ミサイル部隊を送り込んでいる。

いまのところアメリカが日本を守ってくれているから、よいかもしれない
が、いつまでアメリカが日本を守ってくれるのだろうか?

言葉は現実と一致していなければならないのに、国家にとってもっとも重
要な言葉である日本国憲法は、現実に大きく背いている。




2017年09月02日

◆小池都知事は流行神か

加瀬 英明



都議選で、小池百合子都知事の「都民ファーストの会」が圧勝し、自民党
が惨敗した。

私は「日本は千数百年以上も、変わっていないのだ」と思って、溜息をつ
いた。

日本だけに独特な流行神(はやりがみ)現象が、間断なく起った。江戸時代
には「時花神」と呼ばれて、「はやりがみ」という訓(ルビ)がふられた。
「時花仏(はやりぶつ)」もあったが、花が咲いて、ぱっと散るのに、喩え
たものだった。

ある時、ある神社か、ある仏閣、祠に詣でると、大きな御利益がえられる
という噂がひろまり、参詣者が殺到するが、半年か1、2年しか続かず、
忘れられてしまうことから、「祀(まつ)り上げ祀(まつ)り棄て」といわれた。

流行神について『日本書紀』の皇極紀に、不思議な力をもつ蚕(かいこ)ほ
どの虫が現われ、拝むと富や長寿がえられるといって、民衆がどっと押し
寄せたと、記されている。「都鄙(とひ)(都と田舎)の人、常世(とこよ)
の虫を」と語られているが、もっとも古い記述だろう。

流行(はやり)神仏は常世神とか、志多羅神(しだらがみ)、鍬神とか、時代
によってさまざまな名で、知られた。

 小池百合子一座の役者たちは大部分が、選挙直前に公募によって集まっ
た、新人によって占められていた。

 「日本人とは何か」

私は高校生のころから、「日本人とは何か」ということに関心をもって、
日本の民俗学の草分けである柳田國男(1875年〜1968年)の著作を、読み
漁るようになった。今日なら、文化人類学に当たる。そんなことから、ア
メリカの文化人類学者(アンソロポロジスト)で、コロンビア大学社会学部
長をつとめたハバード・パッシン教授(1916年〜2003年)と親友になった。

私はパッシン教授を、「どうして先進国の人々の社会行動を研究するのを
社会学といい、後進国になると文化人類学というのか」といって、から
かったものだった。

柳田は流行神について、「男女老幼狂奔して之(これ)を迎へ候者都鄙(と
ひ)(都会と田舎)に満ちたるやうに候か、過ぎての後は夢のやうに候は
んも、其(その)折に際して渇仰の情極めて強烈にして、他意左右を顧みる
の暇なかりしなるべく、(略)、此時(このとき)涌きかへりたる熱中血潮
は即今我々の身の内を環(めぐ)るものにして(略)愚痴と云ひ迷信と云は
ばそれ迄(まで)」と、述べている。

そして「近世の流行神鍬神の如きは、其蔓延の極盛時に当たりては、鉦鼓
雑揉(しようこざつじゅう)(乱れ混じり)正(まさ)に一千年前の修多羅
(しだら)神福徳仏の流行、さては大昔の常世の神の狂態に伯仲せしやうに
候」と、評している。

 ぎぼしが流行神仏

何であれ、神体となった。しばしば仏像の宝玉に似ていることから、全国
の橋の欄干の柱頭につける葱(ねぎ)の花に似た擬宝珠(ぎぼし)が、流行
(はやり)神仏となって群衆を集めた。

私は東京の文京区小日向で生まれたが、数日前のテレビのバラエティ
ショーをみていたら、全国にある“びっくり地蔵”の一つとして、林泉寺の
「縛られ地蔵」が取り上げられた。享保年間だったが、この石仏を縛ると
願が叶うといって、大賑わいとなったという。

江戸時代の享和3年の記録を読むと、浅草の寺の裏に、狐が4、5匹棲む
穴があって、御利益がえられるという噂がひろまり、「いかなる故有しに
や諸人参詣群集し、近辺酒食の肆(し)(店)夥(いちぢる)しく出来、賑や
かにありしか、半年も過けれは、参詣人まれにてもとの田舎のことし、俄
(にわか)に盛(さか)る者久しからすという理なり」と、嘆じている。

流行神仏ははやりすたりが、激しいのだ。民衆は熱しやすく、さめやすい
のだ。

季節の花である時花(じか)のように、すぐに萎れてしまう。これらの一過
性の流行(はやり)神仏に対して、既成の仏教教団が「淫祠」とか、「淫
神」と呼んで蔑んだ。

 男女老若も町中さわぎ

小池都知事はもっとも新しい、流行神である。私は淫神とは呼ぶまい。流
行神仏はしばしば熱狂的な踊りをともなったが、都知事選と都議選中に、
小池氏の街頭演説を見ようと群集した人々を見ていると、流行神の参詣者
を思わせた。

江戸時代にはほぼ60年周期で、大規模な「お蔭参り」現象が発生した。伊
勢神宮のお札が空から降ってきたという噂が、全国にひろまって、大群衆
が日常の生活から飛び出して、道中歌い踊りながら奔流のようになって、
伊勢神宮へ向かった。「抜け参り」とも呼ばれた。

最後の「お蔭参り」は、明治元年の前年の慶応3年に起った。庶民ばかり
300万人が参加したといわれるが、明治に入ってすぐに  行われた国勢
調査によれば、日本の人口が30万人だったから、10人に1人が加わっ
たことになる。

 当時の記録によれば、「昼夜鳴物秤(ばかり)を打たゝき、男女老若も町
中さわぎ、其時のはやり歌にも、おめこへ紙はれ、はげたら又(また)は
れ、なんでもえじゃないか、おかげで目出度、という斗(ばか)りにて大さ
わき、又は面におしろい杯を附け、男が女になり女が男になり、又顔に墨
をぬり老女が娘になり、いろくと化物にて大踊、只(ただ)欲も徳もわす
れ、えじゃないかとおとる」と踊り練り歩く、狂態を演じた。  

 流行神の現象がなぜ頻発するか

 なぜ、日本にだけ流行神という現象が頻発したのだろうか。

 日本には仏教が入ってくるまで、神々が群生しており、どこにでも神が
いるという信仰だけあって、教典、戒律がある教派宗教が存在しなかっ
た。絶対的な神格が存在しないために、人々が神仏を自由奔放につくりだ
すことが、できたからだったと思う。

 今日でも、日本には絶対的に正しいという聖が、欠けている。私は在来
信仰である神道は、おおらかなものであって、宗教ではないと思う。

 日本人は森羅万象を崇める信仰心が強いものの、教典や戒律によって縛
られないから、宗教性が薄い。「宗教」という言葉は、明治になってから
寛容を欠くキリスト教が入ってきたために、新しく造られた明治翻訳語で
あって、それまで日本には宗門、宗旨、宗派という言葉しか、存在してい
なかった。

 世界文化遺産に指定されると、そこに人々が大急ぎで殺到するのは、世
界のなかで日本だけにみられることだ。

 上野動物園でパンダに子が生まれると群集して、『上野精養軒』の株価
が急騰する。利に聡い新聞社や、テレビ局が流行神をつくるために、噂を
ひろめる。
 
 都議選に惨敗して以後、それまで「安倍一強」と囃されたのに、安倍内
閣の支持率が急落した。大手新聞やテレビが、“安倍叩き”に熱中してい
る。これも、江戸時代に庶民の大きな娯楽だった歌舞伎の演目に、権力者
が没落するというテーマが、もっとも多かったことを思わせる。武士とそ
の家族は歌舞伎を観劇することを、禁じられていた。

 日本では江戸時代を通じて、政治が世界のどこの国よりも安定して、治
安がよく、庶民が豊かで、自由な生活を享受していた。支配階級であった
武士だけが、政治に責任を負って、庶民は政治に参加することがなく、政
治の傍観者だった。

 大正14年はじめての普通選挙

 大正14年の普通選挙によって、庶民がはじめて政治に参加したが、こ
こ90年あまりのことでしかない。そのために庶民にとって政治という
と、流行神に現世利益とか、世直しの願望を託すような次元で、とらえら
れている。

 小池都知事はいつも洋装に気を砕いて、「ファースト」とか、「ワイ
ズ・スペンディング」とか、舌足らずの英語を乱発している。国枠主義者
のなかに眉を顰める向きがあるが、私には日本原人のように泥臭いから、
好感がもてる。

 日本では古代から常世の国といって、遠い海原の果てから幸がもたらさ
れるという、信仰があった。日本は海の文化だから、陸の文化である中国
にない「宝船」という発想がある。そのために、日本語のなかに夥しい数
にのぼる英語から借りてきた、生ま半可な言葉が氾濫している。     


2017年08月31日

◆これで日本を守れるのか

加瀬 英明



安倍内閣が大手新聞、テレビ、週刊誌がおもしろおかしく煽った加計・森
友学園騒動のなかで都議会選挙が行われ、「都民ファーストの会」に惨敗
して支持率が急落したために、4年8ヶ月で3回目の内閣改造による起死
回生をはかった。

マスコミが、こぞって「人心一新」という言葉を使った。

日本国民は気付いていないだろうが、世界の主要国の中で、こんなに頻繁
に内閣改造が行われる国はない。

満洲事変の昭和6(1931)年から、真珠湾を攻撃して、大戦争に飛び込ん
だ昭和16(1941)年までの10年間は、日本にとってもっとも重要な10年
だった。

このあいだ、若槻礼次郎内閣から、東條英機内閣まで13人の首相と、近衛
内閣が3次にわたったから、15もの内閣が登場した。

これでは一貫した政策も、国家意志もあったものでない。目隠しをして、
無謀な戦争に突入したようなものだった。

戦前から新内閣が登場するたびに、新聞(当時はテレビが無かった)が、
「人心一新」と書き立てた。なぜ今日も、マスコミが「人心一新」という
言葉を、鸚鵡(おうむ)の一つ覚えのように、繰り返すのだろうか。

先の太平洋戦争は3年8ヶ月にわたったが、日本では3人の首相が登場し
た。スターリンのソ連、ヒトラーのドイツ、ムソリーニのイタリアは独裁
国家だったから、当然だとしても、日本と同じ自由主義国だったイギリス
ではチャーチル、アメリカではルーズベルトが戦争終結の3ヶ月前に急死
したが、政権を一貫して預かった。

日本では古来から、「畳と女房は新しいほどよい」といわれてきたよう
に、新しいものを好むのだ。その証拠に、今回、内閣改造が行われると、
世論調査によって差があるが、安倍内閣の支持率が2%から9%あがった。

東京から1000キロ、九州から500キロしか離れていない北朝鮮が、核開発
に狂奔し、日常のようにミサイルを試射して、秋田県沖に撃ち込んでい
る。中国は武装公船によって尖閣諸島を囲んで、隙あれば奪おうとしてい
る。ロシアが北方領土を、軍事基地化している。

こんな時に、加計学園とか森友学園とか、枝葉末節に構っている場合なの
か。戦前から開戦に至るまでの死活がかかった10年間に、15回も内閣が交
替するたびに、「人心一新」といったのを思い出すべきだ。

今度の内閣改造について、政治通が岸田文雄外相を党の中枢に据えた「安
倍岸田連立体制」とか、石破茂氏の孤立をはかって、野田聖子氏を閣内に
取り込んだとか論評しているから、屋上屋を重ねまい。

日本では、なぜしばしば内閣改造が行われるのか。他国にはみられないこ
とだ。

これは、日本の文化に根ざしている。諸外国の政治も2000年変わっていな
いし、日本も同じことだ。

日本で132年前に近代内閣制度がはじまったが、伊藤博文が初代首相と
なった。

96代目の安倍首相も、指導者ではない。以前の首相も、全員が指導者では
なかった。ところが、西洋や中国をはじめとする諸国では、指導者が政府
を率いている。

「指導者」という言葉は、江戸時代が終わるまで、日本語の中に存在しな
かった。明治の開国とともに、英語の「リーダー」などの外国語が入って
きたので、先人たちが訳するために「指導者」という新語を造った。

日本では歴史を通じて、リーダーがいなかった。日本神話の最高神の天照
大御神は、中国、ギリシア、ローマ、北欧、ユダヤ・キリスト・イスラム
神の最高神がみな男性で、絶対権力を握っているのと違って、権力がない。

日本では八百万(やおろず)の神々はみな平等で、いつも協議している。

リーダーは誰よりも優れていると認められて、その地位につくが、聖徳太
子の『十七条憲法』は人が「共に是(こ)れ凡夫のみ」――「人間はみな同じ
だ」と定めている。

アメリカを例にとれば、大統領がリーダーであり、閣僚の長官、副長官、
次官、次官補などの政治任命職は、全員が「大統領の人格の延長」であっ
て、大統領の代理人である。

日本では、麻生副総理や河野外相、江崎鉄磨沖縄・北方担当相たちは、安
倍首相の「延長」ではない。上に立つ者は御輿(みこし)のように、わいわ
い担がれている。

御輿を担ぐ衆は、アメリカのように政策だけを尺度にして選ばれるわけで
はない。日本では、政治は「人事」なのだ。

だから、江崎氏のような“凡夫中の凡夫”も入閣する。

日本は森喜朗元首相がいったように、「神々の国」なのだ。日本列島は元
寇を除けば、外敵に侵されることがなく、平和だったから、合議制でもよ
かったが、今日のように周辺の脅威が募り、アメリカへの信頼が揺らぐ時
には、リーダーシップが必要だ。

私は安倍首相に何よりも、今日の日本語の乱れを正すことを、期待したい。

稲田朋美防衛大臣が内閣改造を待たずに、直前に辞任に追い込まれたが、
南スーダンに国連平和維持活動(PKO)のために派遣されていた陸上自
衛隊部隊が、東京へ送った日報の中で、駐屯地の近くで「戦闘」が発生し
たと、報告したためだった。

南スーダンでは内戦が戦われているが、自衛隊部隊は比較的、安全な地域
で、道路建設などの民生支援活動を行っていた。

日報のなかで「撃ち合い」といえばよかったのに、防衛省が日報に使われ
ていた「戦闘」という言葉が、使ってならない言葉だったために非公開と
したのを、野党やマスコミが「隠蔽」したといって、大騒ぎした。

私は頭が悪いので「撃ち合い」と、「戦闘」のどこが違うのか分からない。

稲田氏が防衛相になった直後に、うっかり「防衛費」を「軍事費」といっ
たところ、国会で叩かれた。一般の国民が「防衛費」のことを「軍事費」
といったら、誰も咎(とが)めないはずだ。もし、安倍内閣の新閣僚が、
うっかり自衛隊を「軍」と呼んだら、野党に吊し上げられよう。

日本の外のすべての人々が自衛隊を軍隊だと思っているが、日本では自衛
隊が軍隊でないのが常識だ。私は世界の人々のほうが正しいと思うが、気
が触れているのだろうか。

「あれは撃ち合いであって、戦闘ではありません」「防衛費と軍事費は、
違うものです」

日本の国権の最高機関である国会や、良識の府といわれるマスコミで、こ
のような会話が当然のように行われているが、日本は世界の現実から大き
く遊離しているのだ。

医学ではこのような症状を、夢遊病(ソムナムブリズム)と呼ぶが、夢遊
病者は夢遊状態で歩きまわるから、危険きわまりない。

憲法が、この原因をつくっている。日本国憲法は前文で、「平和を愛する
諸国民の公正と信義に信頼して」「安全を保持」すると述べ、憲法第9条
が「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と、定めている。

北朝鮮や、中国や、ロシアが「平和を愛する諸国」だろうか。

日本国憲法は、日本を夢遊病者にしている。

いつまで、アメリカが日本を守ってくれるだろうか?

国家にとってもっとも重要な言葉である日本国憲法は、世界の現実に大き
く背いている。

安倍自民一座の脇役や端役の質が、悪い。

3人とも離党を強いられたが、中川俊直議員や今井絵理子議員など、武田
信玄の『風林火山』ならぬ、『不倫火山』の幟(のぼり)を背負った一団
や、実生活で狂女を演じる豊田真由子議員をはじめとして、舞台に立てな
い役者が多すぎる。

安倍座長が人がよくて、厳しさを欠いているからだろう。

これは自民一座に限らないが、ほとんどの女性議員がパーティに出掛ける
か、クラブの年増ホステス気取りか、国会で仕事をするとは思えない化粧
や、派手なドレスを着ている。

稲田朋美前防衛相だけを責めたくないが、場違いなファッションで知られ
たために、同僚の男性議員から「チーママ」と呼ばれた。

日本の女性の美しさは、粋(いき)にある。派手な装(な)りや、厚化粧は不
粋で醜い。

化粧は暗示にとどめるべきだ。異性が好きでも、厚化粧して露骨に出して
はならない。ブスは漢字で「不粋(ぶす)」と書いた。派手の語源は「葉
出」であって、余計にはみだした葉を刈り取ることからきている。派手造
りをした女性議員たちは、異常な自己顕示欲の持ち主なのだろう。

女性議員が日本国民の美意識を破壊しているのは、由々しいことだ。

私は安倍首相を応援しているが、いくら票になるといっても、「女性の活
躍社会」とか、女をおだてるのはやめてほしい。

高校以上の高等教育を無償化することによって、高等教育を重視して、受
験戦争を激化させるのもやめてほしい。心身ともに不健康な受験戦争よ
り、スポーツを奨励して、大いに振興するべきだ。

青年男女の体力を向上させれば、精力があり余って、異性がひかれあい、
少子化がもたらす危機を解決できる。

政府や公共放送が、英語から借りてきた舌足らずな言葉を乱用するのも、
やめてほしい。

NHKは「開店した」といわずに、「オープンした」「イベント」
「ショッピング・モール」とか、不消化な英語を乱発している。

小池百合子都知事も、ひどい。「ワイズ・スペンディング」とか、
「ファースト」とか、生半可な英語を振り回す。

日本語が危い! 国語のなかに溢れている、おびただしい怪しげな英語を
使うごとに課税して、アメリカに支払えば、トランプ政権が不満を鳴らし
ている日米貿易不均衡を、たちどころに是正できよう。

経済産業省の特定サービス産業統計調査によれば、平成28(2016)年度の
パチンコ業界の売り上げは、3兆7269億円だった。

同年度の女性化粧品の売り上げは、2兆円を超えている。同じ年度のサプ
リ(健康食品)79社の売り上げが、5457億円(日本流通産業新聞調査)
だったが、全国に1000社以上あるサプリ業界全体なら、この3倍以上にな
ろう。

平成29(2017)年度の陸上自衛隊の予算が1兆7706億円、海上自衛隊が1
兆1548億、航空自衛隊が1兆1578億円だが、陸自は人件費が大部を占める。

朝鮮半島が一触即発だ。いま、私たちは日本有事と隣り合わせて生きてい
る。日本を守る盾は、自衛隊しかない。

3自衛隊のいずれの予算をとっても、パチンコ業界、化粧品、サプリ業界
の売り上げよりも少ない。

いつ、日本列島が北朝鮮のミサイルを浴びるか、わからない。

北朝鮮のミサイルを、日本海に浮かぶイージス艦と、陸上のPAC3ミサ
イルで迎撃することになるが、数が足りない。イージス艦とPAC3の射
程範囲内に飛んできたミサイルを迎撃しても、半分以上は撃ち洩らそう。

自衛隊はPAC3を17セットしか、持っていない。1セットが防衛省の構
内に据えられているが、局地防衛用のもので、東京都全域を守ることはで
きない。千歳から那覇まで配備されているが、たった17セットでは、とう
てい日本全国の盾とはなれない。

防衛予算を大胆に増やして、アメリカからすでにグアム島などに配備され
ている、PAC3より高性能のイージス・システムを、急いで導入するべ
きだ。

いくら女性が厚化粧をしても、ミサイルから身を守ることはできない。地
上配備型イージス・システムのほうが、頻尿症に効くというノコギリヤシ
より、夜、安らかに眠れる。パチンコ屋へ行く回数を減らせば、行きつけ
の店が被弾しないで済む。

憲法を改正して、憲法に自衛隊を書き込む時間的余裕はない。だったら、
首相から天皇陛下に奏上して、自衛隊をお励まし賜りたい。

自衛隊創設以来、天皇陛下が自衛隊を賜閲されたことも、自衛隊の駐屯
地、基地に御幸されたことも、1度もない。

有事に当たって、生命を犠牲とする青年たちに、国民を代表して、名誉を
お与えいただきたい。自衛隊全員が感激して奮い立とう。
(2017年8月)



2017年08月30日

◆核なしでは体制が守れぬ北朝鮮

加瀬 英明



核なしでは体制が守れぬ北朝鮮 アメリカはどう交渉に入るべきか

私は昨秋からこの欄で、北朝鮮の核開発問題について、アメリカの安全保
障問題を専門とする友人たちに、北朝鮮はどのようなことがあっても、核
保有国となる決意を捨てることがないから、「北朝鮮を核保有国家として
認めたうえで、北朝鮮と交渉するべきだ」と説いてきたことを、取り上げた。

もし、トランプ政権が北朝鮮に外科的(サージカル)な(目標を限定し
た)攻撃であっても、攻撃した場合、北朝鮮は体制の威信を賭けて、韓
国、日本に対して反撃を加えよう。韓国の総人口の3分の1以上が、南北
軍事境界線から100キロ以内に住んでおり、北朝鮮の火砲・ロケットの 射
程内にある。日本も北のミサイルを迎撃しても、かなりの被害を蒙るこ
ととなる。

もっとも、北朝鮮は国家的自殺をはかるつもりはないから、全面戦争は
戦いたくない。国際世論が「即時停戦」を求めて、5、6日後に停戦に持
ち込むことを期待しよう。

私は昨年10月と今年6月に、ワシントンを訪れた時に、北朝鮮と交渉 す
べきだと促した。

北朝鮮は核なしで体制を守れないと、確信している。

リビアはアメリカの甘言に騙されて、核開発を放棄した後に、オバマ政
権によって軍事攻撃を加えられて、崩壊した。

ソ連解体後にウクライナが独立し、国内にあった核兵器をロシアへ渡すか
わりに、ウクライナが侵略を蒙ったら、ロシア、アメリカ、イギリスが共
同して守ることを約束した。

ロシアがクリミア地方を奪った時に、アメリカとイギリスは傍観した。北
朝鮮はこのような例を、肝に銘じていよう。

トランプ政権は北朝鮮を核保有国として認めることを、拒んでいる。中
国に北朝鮮に圧力を加えることを求めているが、中国はよそ見をしている。

といって、トランプ政権は宝刀を抜いて、北朝鮮を斬りつけることはで
きまい。戦闘が始まって数十万人が死ぬことになったら、耐えられまい。

アメリカはインド、パキスタンの核保有に強く反対してきたが、いまで
は両国の核を認めている。北朝鮮も、同じことではないか。

6月に入って、クリントン政権のパネッタ国防長官、レーガン政権の
シュルツ国務長官などが大統領に書簡を送って、北朝鮮を核保有国として
認めて交渉すべきだと、進言した。

この1ヶ月あまり、アメリカのマスコミでも、同じような意見が多数を
占めるようになっている。

ワシントンの安保問題専門家から、私に「あなたの言った通りの方向に
動いている」という、メールがあった。

私はアメリカが北を核保有国として認めて交渉するのに合わせて、日本
も北と交渉して、北が核弾頭数とミサイルの射程に制限を受け入れるのと
引き替えに、日朝間で国交を結ぶことを提言してきた。

1964年の日韓国交正常化の時に、韓国に6億ドルを供与したが、今 日の
貨幣価値にして1兆円以上を、10年あまりに分けて北に提供する。

交渉がまとまれば、拉致被害者が全員帰国して、朝鮮半島に平和秩序が
確立される。

韓国は日本からの6億ドルによって、“漢江(ハンガン)の奇蹟”を行った
が、北も“大同江(デドンガン)の奇蹟”を行うことになる。このあいだ北朝
鮮は、親日国家にならざるをえない。そうなれば、韓国も反日を叫び続け
るわけにゆくまい。

2017年08月15日

◆ご主人にやさしくしてください

加瀬 英明



5月にkしか鹿島県の喜界島に講師として、招かれた。

人口が7000、車で1周して38キロ、砂糖黍が主な産業の南の島だ。

ここで、奄美群島市町村議会議員大会が開かれて、300人あまりの議員が
集まった。

舞台の脇の垂れ幕に、「激動する国際情勢と日本の進路」という演題が書
かれていた。

私は開口一番、「もう40年以上も、今日いただいた演題でお話してきまし
たが、これから世界だけでなく、日本が激動することになります」と、警
告した。

アメリカが世界秩序を守ることに疲れて、日本を守る意志を萎えさせてい
ると説明したうえで、日本を守るために日本国憲法を改めたいと、訴えた。

質疑応答に移ったところ、50代の女性が手を挙げた。マイクを握ると、
「現行憲法はアメリカが強要したものではありません。日本国憲法は世界
に平和憲法として、知られています。この憲法を守ることによって、私た
ちの平和が守られます」と、述べた。

私は「たいへん、よい質問をいただきました」と感謝してから、「まこと
に残念ですが、古(いにしえ)の昔から国際社会は悪の社会でした。自国を
守る意志がない国は、例外なく滅ぼされてきました。ところで、テレビの
ニュースを見ると、このところ、DV――家庭内暴力によって、家族を危
(あや)める事件が頻発しています。まず日本国憲法の精神を、家庭のなか
で実現しましよう」と答えて、「今晩、お帰りになったら、ご主人にやさ
しくしてあげて下さい」と、お願いした。

すると、質問した女性が「わたくしは、独身です!」と叫んだので、会場
が拍手と爆笑によって包まれた。

休憩ののちに、会場に机が並べられて、懇親会になった。

議員の先生がたが列をつくって、コップに黒糖焼酎を注いでくれた。先の
質問した女性が、徳之島の日本共産党の議員だと、教えてくれた。

私は瓶を持つと、女性議員のところまでいって、お酌した。容姿が美しい
人だった。よい質問をもらった礼を述べて、「この国を守るために、ご一
緒に頑張りましよう」といって、握手を交わした。

全国で憲法改正について講演することが多いが、しばしば、聴衆から「安
倍内閣が中国を刺激しているのが悪い」とか、「日本の安全を外交努力で
守れるはずだ」と、反論される。

幕末に、日本はアメリカをはじめとする西洋列強から、不平等条約を強
いられた。日本の独立を守るために、何としてでも不平等条約を改正しな
ければならなかった。先人たちは歯を食いしばって、血が滲む努力を重ねた。

 現行憲法はアメリカが占領下で、日本が再び自立することができないよ
うに押し付けた、憲法を装った不平等条約である。

 現行憲法を一日も早く改正しなければ、私たちは幕末から明治までの
歴 史を語る資格がない。



2017年08月11日

◆世界レベルには程遠い

加瀬 英明



世界レベルには程遠い 豊田真由子議員の罵詈雑言

私はテレビで豊田真由子衆議院議員が、運転中の秘書に対して、罵詈雑言
をあらんかぎりの声で絶叫しているのを聴いて、「日本はよい国なのだ」
と、安心した。

きっと、読者の方々は意外だと思われることだろう。

だが、私は日本の国民性がよく顕れていると、思った。日本語の特徴と、
日本の民族性が、中国、韓国、ヨーロッパの諸国民と異なっていること
が、浮き彫りになっていた。

豊田議員は言葉を盡して、自分よりも年長の男性秘書を罵倒しているの
に、「このハゲ!」とか、「こいつ豊田真由子様へ向かって、ふざけや
がって!」というように、相手を罵しる語彙(ごい)(言葉の表現)が、実
に乏しい。

中国や、韓国語になると、「お前の母親の××(女性性器)は腐ってい
る!」とか、「犬の糞を食ったばかりの顔(つら)をしやがって!」とか、
相手を罵しる言葉が、数百もある。

これは、言語学で「罵倒語」(英語ではcurse words 呪いの言葉)と呼ば
れるが、キリスト教の旧約聖書を読むと、「いったい、これが宗教書なの
か」と疑わされるほど、罵倒語に溢れている。

私はケネディ大統領が暗殺された直後に、当時のアメリカの流行伝記作家
のウィリアム・マンチェスターが、『ある大統領の死』をアメリカの週刊
誌に連載したのを、『週刊新潮』が版権を買った時に、訳者をつとめたこ
とがあった。

ところが、ケネディ大統領とジャクリーン夫人が会話のなかで、英語国民
が気に入らないことに対していう、「シット!」(糞尿)とか、「ファッ
ク!」(性交のさま)とか、人を罵っていう「アスホール」(尻の穴)な
ど罵倒語を連発するので、翻訳しようがなく、頭を抱えたことがあった。

英語だけではない。フランス語、ドイツ語などのヨーロッパ諸語にも、数
限りない罵倒語がある。荒々しい人たちなのだ。

それに対して、日本語では罵倒語になると、「クソ!」とか、「アホ!」
とか、貧弱である。おそらく7つか、8つぐらいしかないのではないか。

豊田真由子議員のような女性は、古代から日本では珍しくなかった。

『源氏物語』と同時代に著された、藤原道網母による『蜻蛉(かげろう)日
記』は、19歳に嫁いでから20年あまりにのぼる結婚生活について、不平鬱
憤(うっぷん)を綴った日記文学である。著者が癇性(かんしょう)を爆発す
るたびに、夫の兼家が「おお、こわや、こわや」といって、怯えている。

日本は、中国、韓国、西洋と違って、古代から男女が和歌を詠んで、対等
に相問歌(そうもんか)を交換したように、女性が強い国であってきた。

豊田議員の秘書の証言を読むと、豊田議員は癇性が強いだけで、絶叫した
後に痙攣して意識を失っていないから、先天的な癲癇(てんかん)症ではない。

日本語にほとんど罵倒語が存在しないのは、日本人が互に思い遣って、人
と人との和を重んじるからである。それに対して他国では、人々が「俺
が」「わたしが」といって、自己中心で、つねに相手に勝たなければなら
ない対立関係にあるからだ。

日本の古来信仰である神道のもっとも基本的な教えは、「言挙(ことあ)
げ」をしてはならないことである。言葉はもっぱら自己主張と、自己弁解
のために用いられるから、心を用いてできるかぎり言葉を慎んだほうがよい。

日本では「よい言葉を発すれば、現実がよくなる」という、言霊(ことだ
ま)信仰が力をもってきた。そのために、罵倒語が存在しなかった。日本
は言葉と論理を重んじる他の諸国と違って、心の国であってきた。いまで
も日本は、「言霊の幸(さきは)ふ国」なのだ。

そう思いながら、豊田議員の罵声を聞いていると、可愛らしい。配偶者が
いられるようだが、夫君は1000年前の『蜻蛉日記』の兼家のように、苦労
されているのだろうか。



2017年08月06日

◆史上最初の29連勝 14歳の快挙

加瀬 英明



中学3年生の藤井聡太4段が、将棋公式戦で史上最初の29連勝を果したこ
とが、日本全国を涌かせた。藤井君の快挙に喝采したい。

ふと、私は藤井君を少年扱いにするのは、日本社会が幼児化しているから
ではないのだろうかと、訝った。

藤井4段は満14歳になる。将棋だけではなく、いろいろな分野で、第2、
第3、第4の藤井君が現われてほしい。

今年は明治元年から数えて、150年目に当たる。徳川時代が終わるまで、
地方によって異なったが、武家、庶民ともに、男子は12歳から16歳(満11
歳から15歳)で、前髪を剃り落して元服し、成人の仲間入りをした。

 日本の社会の幼児化が進んでいる

この30年ほどだろうか、日本の社会が幼児化しているために、活力を衰え
させているのではないか、不安に駆られる。

政府が高等教育の無償化を実現しようとしているが、今日の日本には大学
の数が多すぎる。3分の1か、4分の1で良いのではないか。

高校の数も、多すぎる。大学や、高校の数が多すぎるために、国民の教育
水準を低いものにしている。

何よりも日本の活力を奪っている元凶は、受験戦争だ。

学校や企業の場におけるいじめが、大きな社会問題となっているが、受験
戦争は国家が主宰している壮大ないじめだ。

 少年の心を歪めてはならない

私は敗戦の年に、国民学校(昭和16年4月から小学校がそう呼ばれた)3
年生だった。長野県に疎開したが、戦争最後の1年間は授業がほとんど無
かった。鎌を片手に軍馬の秣(まぐさ)刈りに動員されたが、戦争に勝つた
めだと信じて、小さな胸を誇りでいっぱいにして、励んだ。

占領下の小学校では、上級生が使った教科書で学んだが、ところどころ墨
が塗られて消されていたうえ、満足な授業が行われなかった。封建的だと
いうので、習字も無かった。

大学に進むまで、いまわしい受験戦争も無かった。私は鎌倉で育ったが、
仲間の子供たちとのびのびと時間が経つのも忘れて、自然のなかで遊ん
だ。二宮尊徳の歌に「音もなく香もなく、常に天地(あまつち)は書かざる
経をくりかえしつつ」という句があるが、人との絆(きずな)や、生きる悦
びを身につけた。

人が育つためには、少年期に過度に束縛されず、友達たちと好きな時間を
送ることが、必要だと思う。少年時代はいってみれば、人生の幅広い土台
をつくる正3角形の底辺のようなものだろう。底辺が大きいほど、3角形
が大きくなる。

 和泉式部と樋口なつの教養の深さ

学校教育を、盲信してはならない。大隈重信は佐賀藩の藩士の子として藩
校に通ったが、晩年に遺した自伝のなかで「頑固窮屈な朱子学のみ奉じ
て、一藩の子弟をことごとく鋳型のなかに封じ込めようとした」と、非難
している。重信は満14歳で騒動を起こして、退校処分となった。

武家の男子は全員が藩校で学んだが、庶民の子は男女とも寺子屋に通っ
た。寺子屋は江戸期に全国で2万以上を数えたが、4年制が多く、どれも
が地域住民による手造りだった。

私は和泉式部をはじめとして、多くの歴史上の女性に恋している。その1
人に、5000円札に肖像を飾っている、樋口一葉がいる。本名を樋口奈津、
あるいはなつといった。

なつの父親は今日の山梨県にあった、甲斐の国の貧農の息子だった。村の
庄屋の娘と道ならぬ恋をして、2人は幕末の江戸に駆け落ちした。

父親は暦が明治に変わると、東京府の最下級の役人として就職して、なつ
は明治5年に鍛冶橋にあった、長屋の官舎で生まれた。なつの最終学歴と
いえば、尋常学校4年である。当時の小学校は、4年制だった。

父親はなつが幼いころから、万葉集や、『源氏物語』などの古文学を教え
た。今日の日本では想像できないだろうが、貧農の子だった父親に、それ
だけの教養があったのだった。

なつが17歳の時に、父親が死んだ。なつは母と妹の生活を支えるために、
洗い張りや針仕事をしながら、小説を執筆した。25歳で極貧のなかで病死
したが、明治最大の女性の文豪となった。

 教育は受けるものではない。求めるものだ

伊能忠敬をとろう。私の父方の祖母は千葉県八日市場の醤油造り農家の娘
だったが、忠敬の曾孫(ひまご)に当たった。そこで、私も忠敬の血を引い
ている。祖母は15歳で銚子の隣にある、旭の祖父に嫁いだ。祖父は17歳
だった。当然のことに、祖父も祖母もその年齢で責任感に溢れていた。

忠敬は幼名を三治郎といい、九十九里浜の農家に生まれた。幼時に漁具を
しまった納屋の番をしながら、親から、また寺子屋で読み書きや、算盤を
習った。寺子屋では師匠が子供たちを、厳しく躾けた。17歳で佐原の庄
屋だった伊能家に婿入りして、忠敬と名乗った。

50歳で隠居したが、それまで独学で天文学や暦学や、和算を学んでいた。
隠居すると江戸に出て、幕府の天文方だった高橋至時に弟子入りして、天
体観測や、測量を修めた。

忠敬は55歳で、深川の富岡八幡宮から全国測量の第1歩を踏み出した。忠
敬が作製した日本地図は、今日、海岸線が埋め立てなどによって、大きく
変わってしまっているが、驚くほど正確なものだ。

江戸期の日本は庶民のなかから、無数の優れた学者を生んでいる。これは
世界でも珍しい。二宮尊徳は後に士分に取り立てられたが、農家の出である。

どうして150年前に、アジアのなかで日本だけが明治維新を成し遂げて、
近代化することに成功して、たちまちうちに世界を支配していた白人国家
のなかで、対等の地位を獲得することができたのだろうか。

明治維新を招き寄せた志士や、明治の日本の発展を支えた先人たちは、ま
ず自分をつくり、新しい日本をつくった。

ところが、今日の日本の青少年は、受験戦争といういじめを加えられて、
健やかな人格を形成する少年期を奪われている。子供たちは幼稚園や小学
校のころから、“合わせる人生”を送ることを強制されて、自立心を培うこ
とができない。

 “つくる人生”と“合わせる人生”

幕末の志士や明治の先人たちは、1人ひとりが“つくる人生”に挑んだ。も
し、今日の日本の若者のように、ひたすら“合わせる”ことに努めていたと
したら、近代日本はなかった。

もし、高等教育を無償化したら、日本からすでに死語に近くなっている
が、苦学という言葉がなくなってしまおう。国民の多くが、人生が楽の連
続でなければならないと、信じるようになっているが、日本を偽りの楽園
にしてはなるまい。

15年ほど前までは、今、マスコミを賑わせている「就活」という言葉は、
存在しなかった。青年の大多数が自分を官庁や、できるだけ安定した企業
に合わせて、身を委ねたい。

「終活」といって、人生の終わりを準備する言葉まで、流行っている。本
来、活動という言葉は、いきいきと行動することを意味しているが、就活
や、終活というと、生気が感じられない。

 なぜ、中国と李氏朝鮮は無為無力で亡びたか

19世紀に西洋の帝国主義勢力が、津波のようにアジアに押し寄せた時に、
中国も、李氏朝鮮も、日本と異なって、新しい挑戦に対応することができ
ず、立ちすくむだけだったために、亡国を強いられた。

その大きな原因が、科挙制度にあった。科挙が、両国から活力を奪った。
隋代から行われたが、2000年前の四書五経の暗記力を試すものだった。

受験戦争は科挙によく似ている。日本を滅ぼすことになるのではないか。


2017年08月05日

◆歴史を通じて天皇は日本の統治者

加瀬 英明



 天皇は日本の統治者であられる。

そう言うと、今日の多くの日本国民が「あなたは日本国憲法を知らないの
か。憲法は国民が日本の主権者だと、規定している。国民が日本の統治者
だ」といって、反論するはずだ。

だが、統は「統(す)べる」「ばらばらなものを1つにまとめる」ことであ
り、治は「治(おさ)まる」ことを意味する。

もし、日本に天皇がおいでにならなかったとしたら、日本は1つに纏まる
ことがなく、治まることがないだろう。お隣の韓国のような不安定な国に
なる。

たしかに、現行の日本国憲法では、国民が国家の主権者であって、天皇の
地位は「国民の総意に基く」と定められており、国民が天皇の上にある。

だが、日本では歴史を通じて、どの時代をとっても、国民が天皇を戴(い
ただ)いてきた。日本国憲法は天皇の地位を国民の下に置いているが、日
本にそぐわない。

もちろん、天皇は日本の政治の統治者ではない。天皇は日本の歴史を通じ
て、精神的な統治者であられてきた。

しかし、政治が安定するためには、国民の精神が1つに纏っていること
が、前提となる。

6月に『天皇の退位等に関する皇室典範特例法』が国会で成立したが、今
日の日本には、2人の天皇が存在している。1人が現行憲法のもとの天皇
であり、もうお1人が日本の歴史のうえでの天皇でいらっしゃる。

2000年の日本の歴史の重さと較べたら、敗戦と外国軍による占領という異
常な事態のもとで強要された、日本国憲法は軽い。現行憲法は「日本国憲
法」と呼ばれているものの、とても「日本国」の名に価しない。

6月に国会で可決されて成立した『皇室典範特例法』は、日本国憲法のも
との天皇を対象としている。

私はこの特例法について、不満がある。1つは「天皇の退位等に関する」
といって、「退位」という言葉が用いられていることだ。なぜ、「譲位」
としなかったのか。

退位は100年前のロシア革命によって、ニコライ皇帝が退位を強いられ
て、ロシアのロマノフ王朝が滅びたとか、第1次世界大戦に敗れたドイツ
のウィルヘルム皇帝が退位したことによって、ドイツが共和国に変わった
ように、皇位が皇嗣(こうし)(嗣は世継ぎ)によって継がれない場合に、
しばしば用いられてきた。

特例法が譲位後の天皇の称号を「上皇」と定めているのに異議はないが、
皇后をこれまで日本語になかった新語を造って、「上皇后」とお呼びする
というのに、目を疑った。なぜ、「皇太后」とお呼びしないのか。

皇室は古い、長い伝統から力をえてきた。それまで存在しなかった新語を
造るたびに、皇室の力が弱められることになる。

選挙によって選ばれる国会は、一過性のものでしかない。天皇の譲位をは
じめとする、天皇家のありかたは、国会ではなく、天皇家にお任せするべ
きだ。皇室典範を天皇家の家法として、憲法と対等なものとするべきだと
思う。

陛下は昨年8月のお言葉の冒頭で、天皇のもっとも重要な役割として、宮
中祭祀をあげられた。新しい憲法では、天皇が「祈る存在」であること
を、明記してほしい。

古来から日本は、祈る国家であってきた。日本を無神論の国家としてはな
らない。



2017年07月26日

◆144年も変わらぬ日韓関係

加瀬 英明



144年も変わらぬ日韓関係 文政権が韓国崩壊を招く?

韓国で、親北朝鮮の文在寅(ムンジェイン)政権が登場した。

それでも、わが大使館とプサンの総領事館の前に設置された慰安婦像が、
撤去されることはない。
 
やれやれ、日韓関係は144年も全く変わっていないのだ。

明治6年に、朝鮮政府が日本の唯一つの外交公館として、釜山(プサン)に
あった倭館の前に、日本を「罵詈譫謗(ばりせんぼう)」(罵る言葉)を連
ねた、漢文で数千字にのぼる告示文を掲示した。

内容は、日本の明治の改革を頭から否定して、日本が儒教の礼を踏み躙
り、服装を西洋式に変えたことを痛罵し、日本が禽獣以下の国だとなじる
ものだった。

日本側の抗議に対して、告示文を撤去することを拒んだ。日本政府はこの
無法な告示文に激昂し、西郷隆盛をはじめとする太政官が、征韓論を唱え
る切っ掛けとなった。

今日、この告示文の写しが、外務省外交史料館に保管されている。

日本で嫌韓論が募っている。いったい韓国にどう対応したら、よいのだろ
うか?

私は韓国は変わらないから、あるがままの韓国を受け容れて、経済、安全
保障、文化に限って、互恵関係を結ぶべきだと思う。

アメリカにキリスト教の一派のアーミッシュの共同体があるが、電気も、
電話も、自動車も、いっさいの機械の使用だけでなく、聖書以外の読書、
讃美歌以外の音楽を禁じている。敬虔な愛すべき人々だ。

イスラエルに「オーソドックス・ジュー」と呼ばれる、ユダヤ教の厳格な
戒律を頑なに守る人々がいる。聖書が肌に刃を当てることを禁じているか
ら、髭を剃らない。シャバット(安息日)――金曜日の日没から土曜日の日
没まで乗り物に乗らないし、火を点じることがない。信仰心が篤い人々だ。

アーミッシュ教徒や、オーソドックス・ジューに、生きかたを変えるよう
に求めるものだろうか?

反日(パンイル)が韓国民の愛国心を支えて、元気の素となっている。韓国
はかつて自国を小中華(ソチュンファ)と呼んで、中国の藩属国であること
を誇って、日本を蔑(さげす)んできた。その日本が韓国を追い越したの
が、誇りを傷つける。

そのかたわら、韓国民は日本の発展が羨ましい。反日の裏では、日本に憧
れている。韓国には「荘(ソジュン)」という、日本語にない言葉がある。

韓国民の心情を理解して、日本が韓国の活力の源となっていることを喜び
たいものの、明治初年の日本を苦しませたのが、朝鮮半島だった。日本は
朝鮮半島をめぐって、清国とロシアと死活を賭けて戦うことを強いられた。 

いま、北朝鮮から発する脅威が、日本を戦(おのの)かせている。それだけ
ではない。文政権によって、韓国が崩壊する可能性がある。

私は6月にワシントンに滞在していたが、政権内部の友人が「もし文政権
が北朝鮮に1ドルでも渡したら、われわれは黙っていない」といった。

「どうするつもりなのか」と尋ねたが、笑って答えなかった。おそらく韓
国の国軍を動かして、クーデターで文政権を倒そうということなのだろう。

トランプ政権は民主的に成立した政権を倒したくないだろうが、オバマ政
権がエジプトで民主的選挙によって登場したムスリム同胞団政権を軍が倒
したのを黙認したのと、同じことになろう。


2017年07月22日

◆アメリカを見縊る北朝鮮 気になる中国

加瀬 英明



気になるロシアの動向

5月21日に、金正恩委員長の北朝鮮がアメリカを嘲笑うように、2発の中
距離弾道ミサイルを続けて試射した。

ピョンヤンでは数万人以上の市民が、目抜き通りを埋めて動員されて、ミ
サイル試射の成功を手に手に小旗を振って、万歳を叫んで祝った。

5月9日に、韓国で大統領選挙が行われて、北朝鮮に対する融和政策を公
約として掲げた文在寅候補が、当選した直後の5月14日にグアム島、アラ
スカまで射程に収める長距離ミサイル1発を撃ちあげてから、僅か2週間
以内に3発試射したことになる。

5月14日は、中国にとって今年の最大の国際行事だった「一帯一路会議」
が、北京で開幕した日だったから、習近平国家主席の顔に、泥を塗ったこ
とになった。

トランプ政権は1月に発足してから、もし北朝鮮が6回目の核実験を強行
するか、アメリカ本土まで届く大陸間弾道弾(ICBM)の試射を行う場
合には、北朝鮮に軍事攻撃を加えるといって、威嚇してきた。

朝鮮戦争が1953年に終わってから、北朝鮮は金日成主席、金正日第一書記
のもとで、米軍を攻撃するか、韓国に対してテロ事件をしばしば行ってき
たが、一度として米韓から軍事攻撃を加えられることがなかった。

大きな事件をあげれば、1968年に米情報収集艦プエブロ号を公海上で攻撃
して、拿捕した。この時に、プエブロ号の乗組員1名が被弾して死んだ。
その3年後に、公海上を飛行する米電子偵察機を撃墜した。

そのつど、第2次朝鮮戦争が起るのではないか心配されたが、アメリカが
自制した。

プエブロ号事件直前に、北朝鮮の特殊部隊が越境し、ソウルの大統領官邸
の青瓦台襲撃未遂事件が発生し、83年にラングーン事件、87年に大韓航
空機爆破事件が起こった。韓国も北朝鮮に攻撃を加えることがなかった。

そこで、金正恩委員長はアメリカを見縊(みくび)っているのではないか。

クリントン政権が、北朝鮮が94年に黒鉛型原子炉からプルトニュウムを
抽出すると、北朝鮮が核開発を凍結するかわりに、軽水炉を提供すること
で合意して、食糧援助を行った。その4年後に、北朝鮮がはじめて弾道ミ
サイルを実験したが、ミサイル試射を停止するのと引き替えに、再び食糧
援助を実施した。

2006年に、北朝鮮ははじめて核実験を行った。ブッシュ(息子)政権はイ
ラク戦争に忙殺されていたこともあって、北朝鮮が6ヶ国協議に戻ること
と交換して、金融制裁を解除するとともに、食糧援助を提供した。

北朝鮮が5月21日に弾道ミサイルを連射すると、中国、ロシアも加わっ
て、国連安保理事会が北朝鮮を非難する決議を行った。

だが、中国はアメリカの顔色を窺っているものの、北朝鮮に対して厳しい
経済制裁を加えるのを躊躇しているし、ロシアは北朝鮮に新たに石油を供
給するなど援けている。

中国にとって、アメリカが北朝鮮の核・ミサイル開発を放棄させるため
に、中国を頼りにしていることから、北朝鮮がアメリカを挑発するほど、
中国の値打ちがあがることになる。もっとも、その塩加減が難しい。

ロシアはアメリカが北朝鮮を威嚇することに反対して、対話によって平和
的に解決することを主張している。ロシアはイラン、シリアなどの反米諸
国を支援しているが、北朝鮮はそのなかの駒の一国として役に立つのだ。

2017年07月09日

◆“自衛隊の保持“を明記すべき火急の時

加瀬 英明



5月3日の憲法記念日に、安倍晋三首相が2020年までに憲法を改正して、
改正憲法を施行したいと述べて、第9条1項と2項をそのままにして、3
項として自衛隊を保持することを加えることを、提言した。

9条1項は「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、
国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」、2項は「陸
海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めな
い」と定めている。

私は『美しい日本の憲法をつくる東京都民の会』の共同代表を、下村博文
先生、長谷川美千代先生とつとめているから、これから述べることは、私
見であることを前置きしたい。

私は第9条1、2項を改めずに、自衛隊の存在を3項として新しく加える
という、安倍首相の提言に双手をあげて賛成したい。

北朝鮮危機が募るなかで、5月にヘリコプター搭載護衛艦『いずも』が、
安保関連法のもとで米艦を護衛する任務を与えられて、横須賀を出港し
た。テレビのニュースで映像が放映されたが、艦尾の旭日旗が目に染みた。

新聞、テレビがすでに4月に入ってから、海上自衛隊と航空自衛隊が、米
艦や、米空軍の爆撃機を護衛する共同訓練を実施してきたことを報道して
いた。

日本の若者が生命(いのち)を賭けて、任務についているのだ。

現行の日本国憲法は、誰もが知っているように、アメリカが占領下で自由
意志を奪われていた日本に、押し付けたものだ。

マッカーサー元帥が、占領下にあった日本について、「日本は12歳の少
年だ」と公言したことは、有名だ。この発言は、占領下の日本の新聞各紙
に大きく載っている。
 
現行憲法は日本が自前の軍隊を持つことを禁じているが、アメリカは未来
永劫、日本という“少年の国”を半独立国化して、アメリカが守るつもりで
いた。

護憲派の人々は、気づいていないのだろうが、恥しいことにアメリカに対
する属国根性を丸出しにして、アメリカに甘えている。

多くの現行憲法を護りたいと願っている純朴な善男善女が、現行憲法は平
和を願う真摯な祈りであると、信じているのだろう。

ところが、現実は厳しい。国民の生命と安全をただ祈るだけでは、守るこ
とはできない。

核実験と弾道ミサイルの試射を繰り返している北朝鮮も、隙あれば尖閣諸
島を奪おうと狙っている中国も、自国民の自由を力によって抑えつけてい
る、一党独裁政権のもとにあって、自国民を武力を用いて従わせている政
権は、外に対して武力を使うことを躊躇しない。

今年は日本が対日講和条約によって、独立を回復してから、65年目に当た
る。もちろん、アメリカはもはや今日の日本が12歳の少年だと、みなして
いない。

今日のアメリカは、日本が攻撃を蒙った時には、アメリカだけではなく、
日本もアメリカ軍と一体になって、日本を守るために戦うことを期待して
いる。もし、日本がそうしなければ、アメリカは日本を放棄しよう。

日本国民は日本が危機に陥った場合に、自衛隊員が戦うことを期待してい
る。それなのに、憲法に自衛隊の存在が書かれていないのは、自衛隊員に
対して残酷なことだ。

9条2項と矛盾しようが、火急な場合だ。自衛隊を保有することを、3項
で規定しよう。


2017年07月08日

◆機能不全に陥る国連の体たらく

加瀬 英明



いったい、国連は世界平和の役に立っているのだろうか? まったく立っ
ていない。

いったい、国連は日本の役に立っているのだろうか? 答は、国連自体が
役に立たない国際機構だ。それなのに、どうして日本国民は国連を後生大
事にするのだろうか?

なぜ、国連加盟国の分担金は、それぞれ加盟国の経済規模によってきめら
れているのに、日本はアメリカについで2番目に大きな分担金を収めてい
るのだろうか? 

中国は経済規模を示す国際尺度であるGDPで、日本の2.3倍もある
が、国連分担金では第3位であって、日本の80%だ。

第1問から答えよう。今世紀に入って起った、大きな戦争と危機をとろう。

2001年にイスラム過激組織『アル・カイーダ』が、ニューヨークの世界貿
易センタービルを攻撃して破壊した。アメリカは『アル・カイーダ』の根
拠地だった、アフガニスタンのタリバン政権を倒し、イラクと戦った。

11年にオバマ政権が、カダフィ政権のリビアに軍事攻撃を加え、2年後に
シリアの反体制勢力に武器と資金を供給して、リビアとシリアを収拾がつ
かない混乱に陥れた。

翌年、プチン大統領のロシアがウクライナに軍を侵攻させて、クリミア地
方を奪い取って、ウクライナ東部を切り取りつつある。

国連はこの大きな危機に当たって、蚊帳の外に置かれていた。アメリカ
も、ロシアも、国連が邪魔になるから、介入させなかった。

いま、日本は北朝鮮が核実験・ミサイル試射を繰り返しているために、深
刻な危機に直面しているが、そのつど国連安保理事会は北朝鮮を非難し
て、経済制裁決議を行ってきた。

だが、中国は北朝鮮に経済制裁を加えることを躊躇している。それどころ
か、中国政府の発表によっても、今年1月から4月まで中鮮貿易額は、か
えって増加している。そのわきで、ロシアは北朝鮮を援けるために石油を
供給するなど、金正恩体制を支えている。

中国が尖閣諸島に武力を行使した場合に、国連は援けてくれるだろうか?
 米ロ英仏とともに、国連の最高意志を決定する安保理事国で拒否権を
持っているから、国連は動けない。

国連は“平和の殿堂”ではない。加盟国が自国のエゴを剥き出しにして闘争
する、古代ローマの剣闘士のコロシアムのようなものだ。

国連憲章からして、欠陥文書だ。「平和愛好国」を加盟資格としている
が、北朝鮮や、中国や、ロシアが「平和愛好国」だろうか?

国連が人権を援護するはずがない。北朝鮮、ミャンマー、トルコとあげて
も、人権を蹂躙している加盟国がほとんどだ。中国はチベット、新疆ウィ
グルで過酷な弾圧を行っている。

国連は傘下に、世界保健機関(WHO)、食糧農業機関(FAO)、国際
労働機関(ILO)、世界貿易機関(WTO)など、数多くの専門機関
や、委員会や、研究所を抱えている。これらの機関の予算は、国連本体と
は別勘定で、日本はWHOをはじめとして、アメリカにつぐ分担金を収め
ている。

国連は職員全員が、1946年の「国連の特権免除に関する条約」によって、
治外法権とされている。日本では報道されないが、そのために巨額の着
服、横領、浪費が行われていることが、長年にわたって問題となってき
た。国連は自浄能力を欠いている。

加盟国が193ヶ国にのぼるが、多くの加盟国だけでなく、国連職員の質が
悪い。5月にアメリカのAP通信社が、国連内部の機密文書を暴露した
が、WHOは毎年職員の旅費だけで、何と2億ドル(約222億円)以上
も、支出している。

国連は教育科学文化機関(ユネスコ)が、中国が申請した“南京大虐殺”の
記録を、「世界文化記憶遺産」として認定し、拷問禁止委員会が一昨年の
慰安婦に関する日韓合意を見直すように勧告するなど、頻繁に日本に害を
及ぼしている。国連は穀潰(ごくつぶ)し機関だ。