2017年08月15日

◆ご主人にやさしくしてください

加瀬 英明



5月にkしか鹿島県の喜界島に講師として、招かれた。

人口が7000、車で1周して38キロ、砂糖黍が主な産業の南の島だ。

ここで、奄美群島市町村議会議員大会が開かれて、300人あまりの議員が
集まった。

舞台の脇の垂れ幕に、「激動する国際情勢と日本の進路」という演題が書
かれていた。

私は開口一番、「もう40年以上も、今日いただいた演題でお話してきまし
たが、これから世界だけでなく、日本が激動することになります」と、警
告した。

アメリカが世界秩序を守ることに疲れて、日本を守る意志を萎えさせてい
ると説明したうえで、日本を守るために日本国憲法を改めたいと、訴えた。

質疑応答に移ったところ、50代の女性が手を挙げた。マイクを握ると、
「現行憲法はアメリカが強要したものではありません。日本国憲法は世界
に平和憲法として、知られています。この憲法を守ることによって、私た
ちの平和が守られます」と、述べた。

私は「たいへん、よい質問をいただきました」と感謝してから、「まこと
に残念ですが、古(いにしえ)の昔から国際社会は悪の社会でした。自国を
守る意志がない国は、例外なく滅ぼされてきました。ところで、テレビの
ニュースを見ると、このところ、DV――家庭内暴力によって、家族を危
(あや)める事件が頻発しています。まず日本国憲法の精神を、家庭のなか
で実現しましよう」と答えて、「今晩、お帰りになったら、ご主人にやさ
しくしてあげて下さい」と、お願いした。

すると、質問した女性が「わたくしは、独身です!」と叫んだので、会場
が拍手と爆笑によって包まれた。

休憩ののちに、会場に机が並べられて、懇親会になった。

議員の先生がたが列をつくって、コップに黒糖焼酎を注いでくれた。先の
質問した女性が、徳之島の日本共産党の議員だと、教えてくれた。

私は瓶を持つと、女性議員のところまでいって、お酌した。容姿が美しい
人だった。よい質問をもらった礼を述べて、「この国を守るために、ご一
緒に頑張りましよう」といって、握手を交わした。

全国で憲法改正について講演することが多いが、しばしば、聴衆から「安
倍内閣が中国を刺激しているのが悪い」とか、「日本の安全を外交努力で
守れるはずだ」と、反論される。

幕末に、日本はアメリカをはじめとする西洋列強から、不平等条約を強
いられた。日本の独立を守るために、何としてでも不平等条約を改正しな
ければならなかった。先人たちは歯を食いしばって、血が滲む努力を重ねた。

 現行憲法はアメリカが占領下で、日本が再び自立することができないよ
うに押し付けた、憲法を装った不平等条約である。

 現行憲法を一日も早く改正しなければ、私たちは幕末から明治までの
歴 史を語る資格がない。



2017年08月11日

◆世界レベルには程遠い

加瀬 英明



世界レベルには程遠い 豊田真由子議員の罵詈雑言

私はテレビで豊田真由子衆議院議員が、運転中の秘書に対して、罵詈雑言
をあらんかぎりの声で絶叫しているのを聴いて、「日本はよい国なのだ」
と、安心した。

きっと、読者の方々は意外だと思われることだろう。

だが、私は日本の国民性がよく顕れていると、思った。日本語の特徴と、
日本の民族性が、中国、韓国、ヨーロッパの諸国民と異なっていること
が、浮き彫りになっていた。

豊田議員は言葉を盡して、自分よりも年長の男性秘書を罵倒しているの
に、「このハゲ!」とか、「こいつ豊田真由子様へ向かって、ふざけや
がって!」というように、相手を罵しる語彙(ごい)(言葉の表現)が、実
に乏しい。

中国や、韓国語になると、「お前の母親の××(女性性器)は腐ってい
る!」とか、「犬の糞を食ったばかりの顔(つら)をしやがって!」とか、
相手を罵しる言葉が、数百もある。

これは、言語学で「罵倒語」(英語ではcurse words 呪いの言葉)と呼ば
れるが、キリスト教の旧約聖書を読むと、「いったい、これが宗教書なの
か」と疑わされるほど、罵倒語に溢れている。

私はケネディ大統領が暗殺された直後に、当時のアメリカの流行伝記作家
のウィリアム・マンチェスターが、『ある大統領の死』をアメリカの週刊
誌に連載したのを、『週刊新潮』が版権を買った時に、訳者をつとめたこ
とがあった。

ところが、ケネディ大統領とジャクリーン夫人が会話のなかで、英語国民
が気に入らないことに対していう、「シット!」(糞尿)とか、「ファッ
ク!」(性交のさま)とか、人を罵っていう「アスホール」(尻の穴)な
ど罵倒語を連発するので、翻訳しようがなく、頭を抱えたことがあった。

英語だけではない。フランス語、ドイツ語などのヨーロッパ諸語にも、数
限りない罵倒語がある。荒々しい人たちなのだ。

それに対して、日本語では罵倒語になると、「クソ!」とか、「アホ!」
とか、貧弱である。おそらく7つか、8つぐらいしかないのではないか。

豊田真由子議員のような女性は、古代から日本では珍しくなかった。

『源氏物語』と同時代に著された、藤原道網母による『蜻蛉(かげろう)日
記』は、19歳に嫁いでから20年あまりにのぼる結婚生活について、不平鬱
憤(うっぷん)を綴った日記文学である。著者が癇性(かんしょう)を爆発す
るたびに、夫の兼家が「おお、こわや、こわや」といって、怯えている。

日本は、中国、韓国、西洋と違って、古代から男女が和歌を詠んで、対等
に相問歌(そうもんか)を交換したように、女性が強い国であってきた。

豊田議員の秘書の証言を読むと、豊田議員は癇性が強いだけで、絶叫した
後に痙攣して意識を失っていないから、先天的な癲癇(てんかん)症ではない。

日本語にほとんど罵倒語が存在しないのは、日本人が互に思い遣って、人
と人との和を重んじるからである。それに対して他国では、人々が「俺
が」「わたしが」といって、自己中心で、つねに相手に勝たなければなら
ない対立関係にあるからだ。

日本の古来信仰である神道のもっとも基本的な教えは、「言挙(ことあ)
げ」をしてはならないことである。言葉はもっぱら自己主張と、自己弁解
のために用いられるから、心を用いてできるかぎり言葉を慎んだほうがよい。

日本では「よい言葉を発すれば、現実がよくなる」という、言霊(ことだ
ま)信仰が力をもってきた。そのために、罵倒語が存在しなかった。日本
は言葉と論理を重んじる他の諸国と違って、心の国であってきた。いまで
も日本は、「言霊の幸(さきは)ふ国」なのだ。

そう思いながら、豊田議員の罵声を聞いていると、可愛らしい。配偶者が
いられるようだが、夫君は1000年前の『蜻蛉日記』の兼家のように、苦労
されているのだろうか。



2017年08月06日

◆史上最初の29連勝 14歳の快挙

加瀬 英明



中学3年生の藤井聡太4段が、将棋公式戦で史上最初の29連勝を果したこ
とが、日本全国を涌かせた。藤井君の快挙に喝采したい。

ふと、私は藤井君を少年扱いにするのは、日本社会が幼児化しているから
ではないのだろうかと、訝った。

藤井4段は満14歳になる。将棋だけではなく、いろいろな分野で、第2、
第3、第4の藤井君が現われてほしい。

今年は明治元年から数えて、150年目に当たる。徳川時代が終わるまで、
地方によって異なったが、武家、庶民ともに、男子は12歳から16歳(満11
歳から15歳)で、前髪を剃り落して元服し、成人の仲間入りをした。

 日本の社会の幼児化が進んでいる

この30年ほどだろうか、日本の社会が幼児化しているために、活力を衰え
させているのではないか、不安に駆られる。

政府が高等教育の無償化を実現しようとしているが、今日の日本には大学
の数が多すぎる。3分の1か、4分の1で良いのではないか。

高校の数も、多すぎる。大学や、高校の数が多すぎるために、国民の教育
水準を低いものにしている。

何よりも日本の活力を奪っている元凶は、受験戦争だ。

学校や企業の場におけるいじめが、大きな社会問題となっているが、受験
戦争は国家が主宰している壮大ないじめだ。

 少年の心を歪めてはならない

私は敗戦の年に、国民学校(昭和16年4月から小学校がそう呼ばれた)3
年生だった。長野県に疎開したが、戦争最後の1年間は授業がほとんど無
かった。鎌を片手に軍馬の秣(まぐさ)刈りに動員されたが、戦争に勝つた
めだと信じて、小さな胸を誇りでいっぱいにして、励んだ。

占領下の小学校では、上級生が使った教科書で学んだが、ところどころ墨
が塗られて消されていたうえ、満足な授業が行われなかった。封建的だと
いうので、習字も無かった。

大学に進むまで、いまわしい受験戦争も無かった。私は鎌倉で育ったが、
仲間の子供たちとのびのびと時間が経つのも忘れて、自然のなかで遊ん
だ。二宮尊徳の歌に「音もなく香もなく、常に天地(あまつち)は書かざる
経をくりかえしつつ」という句があるが、人との絆(きずな)や、生きる悦
びを身につけた。

人が育つためには、少年期に過度に束縛されず、友達たちと好きな時間を
送ることが、必要だと思う。少年時代はいってみれば、人生の幅広い土台
をつくる正3角形の底辺のようなものだろう。底辺が大きいほど、3角形
が大きくなる。

 和泉式部と樋口なつの教養の深さ

学校教育を、盲信してはならない。大隈重信は佐賀藩の藩士の子として藩
校に通ったが、晩年に遺した自伝のなかで「頑固窮屈な朱子学のみ奉じ
て、一藩の子弟をことごとく鋳型のなかに封じ込めようとした」と、非難
している。重信は満14歳で騒動を起こして、退校処分となった。

武家の男子は全員が藩校で学んだが、庶民の子は男女とも寺子屋に通っ
た。寺子屋は江戸期に全国で2万以上を数えたが、4年制が多く、どれも
が地域住民による手造りだった。

私は和泉式部をはじめとして、多くの歴史上の女性に恋している。その1
人に、5000円札に肖像を飾っている、樋口一葉がいる。本名を樋口奈津、
あるいはなつといった。

なつの父親は今日の山梨県にあった、甲斐の国の貧農の息子だった。村の
庄屋の娘と道ならぬ恋をして、2人は幕末の江戸に駆け落ちした。

父親は暦が明治に変わると、東京府の最下級の役人として就職して、なつ
は明治5年に鍛冶橋にあった、長屋の官舎で生まれた。なつの最終学歴と
いえば、尋常学校4年である。当時の小学校は、4年制だった。

父親はなつが幼いころから、万葉集や、『源氏物語』などの古文学を教え
た。今日の日本では想像できないだろうが、貧農の子だった父親に、それ
だけの教養があったのだった。

なつが17歳の時に、父親が死んだ。なつは母と妹の生活を支えるために、
洗い張りや針仕事をしながら、小説を執筆した。25歳で極貧のなかで病死
したが、明治最大の女性の文豪となった。

 教育は受けるものではない。求めるものだ

伊能忠敬をとろう。私の父方の祖母は千葉県八日市場の醤油造り農家の娘
だったが、忠敬の曾孫(ひまご)に当たった。そこで、私も忠敬の血を引い
ている。祖母は15歳で銚子の隣にある、旭の祖父に嫁いだ。祖父は17歳
だった。当然のことに、祖父も祖母もその年齢で責任感に溢れていた。

忠敬は幼名を三治郎といい、九十九里浜の農家に生まれた。幼時に漁具を
しまった納屋の番をしながら、親から、また寺子屋で読み書きや、算盤を
習った。寺子屋では師匠が子供たちを、厳しく躾けた。17歳で佐原の庄
屋だった伊能家に婿入りして、忠敬と名乗った。

50歳で隠居したが、それまで独学で天文学や暦学や、和算を学んでいた。
隠居すると江戸に出て、幕府の天文方だった高橋至時に弟子入りして、天
体観測や、測量を修めた。

忠敬は55歳で、深川の富岡八幡宮から全国測量の第1歩を踏み出した。忠
敬が作製した日本地図は、今日、海岸線が埋め立てなどによって、大きく
変わってしまっているが、驚くほど正確なものだ。

江戸期の日本は庶民のなかから、無数の優れた学者を生んでいる。これは
世界でも珍しい。二宮尊徳は後に士分に取り立てられたが、農家の出である。

どうして150年前に、アジアのなかで日本だけが明治維新を成し遂げて、
近代化することに成功して、たちまちうちに世界を支配していた白人国家
のなかで、対等の地位を獲得することができたのだろうか。

明治維新を招き寄せた志士や、明治の日本の発展を支えた先人たちは、ま
ず自分をつくり、新しい日本をつくった。

ところが、今日の日本の青少年は、受験戦争といういじめを加えられて、
健やかな人格を形成する少年期を奪われている。子供たちは幼稚園や小学
校のころから、“合わせる人生”を送ることを強制されて、自立心を培うこ
とができない。

 “つくる人生”と“合わせる人生”

幕末の志士や明治の先人たちは、1人ひとりが“つくる人生”に挑んだ。も
し、今日の日本の若者のように、ひたすら“合わせる”ことに努めていたと
したら、近代日本はなかった。

もし、高等教育を無償化したら、日本からすでに死語に近くなっている
が、苦学という言葉がなくなってしまおう。国民の多くが、人生が楽の連
続でなければならないと、信じるようになっているが、日本を偽りの楽園
にしてはなるまい。

15年ほど前までは、今、マスコミを賑わせている「就活」という言葉は、
存在しなかった。青年の大多数が自分を官庁や、できるだけ安定した企業
に合わせて、身を委ねたい。

「終活」といって、人生の終わりを準備する言葉まで、流行っている。本
来、活動という言葉は、いきいきと行動することを意味しているが、就活
や、終活というと、生気が感じられない。

 なぜ、中国と李氏朝鮮は無為無力で亡びたか

19世紀に西洋の帝国主義勢力が、津波のようにアジアに押し寄せた時に、
中国も、李氏朝鮮も、日本と異なって、新しい挑戦に対応することができ
ず、立ちすくむだけだったために、亡国を強いられた。

その大きな原因が、科挙制度にあった。科挙が、両国から活力を奪った。
隋代から行われたが、2000年前の四書五経の暗記力を試すものだった。

受験戦争は科挙によく似ている。日本を滅ぼすことになるのではないか。


2017年08月05日

◆歴史を通じて天皇は日本の統治者

加瀬 英明



 天皇は日本の統治者であられる。

そう言うと、今日の多くの日本国民が「あなたは日本国憲法を知らないの
か。憲法は国民が日本の主権者だと、規定している。国民が日本の統治者
だ」といって、反論するはずだ。

だが、統は「統(す)べる」「ばらばらなものを1つにまとめる」ことであ
り、治は「治(おさ)まる」ことを意味する。

もし、日本に天皇がおいでにならなかったとしたら、日本は1つに纏まる
ことがなく、治まることがないだろう。お隣の韓国のような不安定な国に
なる。

たしかに、現行の日本国憲法では、国民が国家の主権者であって、天皇の
地位は「国民の総意に基く」と定められており、国民が天皇の上にある。

だが、日本では歴史を通じて、どの時代をとっても、国民が天皇を戴(い
ただ)いてきた。日本国憲法は天皇の地位を国民の下に置いているが、日
本にそぐわない。

もちろん、天皇は日本の政治の統治者ではない。天皇は日本の歴史を通じ
て、精神的な統治者であられてきた。

しかし、政治が安定するためには、国民の精神が1つに纏っていること
が、前提となる。

6月に『天皇の退位等に関する皇室典範特例法』が国会で成立したが、今
日の日本には、2人の天皇が存在している。1人が現行憲法のもとの天皇
であり、もうお1人が日本の歴史のうえでの天皇でいらっしゃる。

2000年の日本の歴史の重さと較べたら、敗戦と外国軍による占領という異
常な事態のもとで強要された、日本国憲法は軽い。現行憲法は「日本国憲
法」と呼ばれているものの、とても「日本国」の名に価しない。

6月に国会で可決されて成立した『皇室典範特例法』は、日本国憲法のも
との天皇を対象としている。

私はこの特例法について、不満がある。1つは「天皇の退位等に関する」
といって、「退位」という言葉が用いられていることだ。なぜ、「譲位」
としなかったのか。

退位は100年前のロシア革命によって、ニコライ皇帝が退位を強いられ
て、ロシアのロマノフ王朝が滅びたとか、第1次世界大戦に敗れたドイツ
のウィルヘルム皇帝が退位したことによって、ドイツが共和国に変わった
ように、皇位が皇嗣(こうし)(嗣は世継ぎ)によって継がれない場合に、
しばしば用いられてきた。

特例法が譲位後の天皇の称号を「上皇」と定めているのに異議はないが、
皇后をこれまで日本語になかった新語を造って、「上皇后」とお呼びする
というのに、目を疑った。なぜ、「皇太后」とお呼びしないのか。

皇室は古い、長い伝統から力をえてきた。それまで存在しなかった新語を
造るたびに、皇室の力が弱められることになる。

選挙によって選ばれる国会は、一過性のものでしかない。天皇の譲位をは
じめとする、天皇家のありかたは、国会ではなく、天皇家にお任せするべ
きだ。皇室典範を天皇家の家法として、憲法と対等なものとするべきだと
思う。

陛下は昨年8月のお言葉の冒頭で、天皇のもっとも重要な役割として、宮
中祭祀をあげられた。新しい憲法では、天皇が「祈る存在」であること
を、明記してほしい。

古来から日本は、祈る国家であってきた。日本を無神論の国家としてはな
らない。



2017年07月26日

◆144年も変わらぬ日韓関係

加瀬 英明



144年も変わらぬ日韓関係 文政権が韓国崩壊を招く?

韓国で、親北朝鮮の文在寅(ムンジェイン)政権が登場した。

それでも、わが大使館とプサンの総領事館の前に設置された慰安婦像が、
撤去されることはない。
 
やれやれ、日韓関係は144年も全く変わっていないのだ。

明治6年に、朝鮮政府が日本の唯一つの外交公館として、釜山(プサン)に
あった倭館の前に、日本を「罵詈譫謗(ばりせんぼう)」(罵る言葉)を連
ねた、漢文で数千字にのぼる告示文を掲示した。

内容は、日本の明治の改革を頭から否定して、日本が儒教の礼を踏み躙
り、服装を西洋式に変えたことを痛罵し、日本が禽獣以下の国だとなじる
ものだった。

日本側の抗議に対して、告示文を撤去することを拒んだ。日本政府はこの
無法な告示文に激昂し、西郷隆盛をはじめとする太政官が、征韓論を唱え
る切っ掛けとなった。

今日、この告示文の写しが、外務省外交史料館に保管されている。

日本で嫌韓論が募っている。いったい韓国にどう対応したら、よいのだろ
うか?

私は韓国は変わらないから、あるがままの韓国を受け容れて、経済、安全
保障、文化に限って、互恵関係を結ぶべきだと思う。

アメリカにキリスト教の一派のアーミッシュの共同体があるが、電気も、
電話も、自動車も、いっさいの機械の使用だけでなく、聖書以外の読書、
讃美歌以外の音楽を禁じている。敬虔な愛すべき人々だ。

イスラエルに「オーソドックス・ジュー」と呼ばれる、ユダヤ教の厳格な
戒律を頑なに守る人々がいる。聖書が肌に刃を当てることを禁じているか
ら、髭を剃らない。シャバット(安息日)――金曜日の日没から土曜日の日
没まで乗り物に乗らないし、火を点じることがない。信仰心が篤い人々だ。

アーミッシュ教徒や、オーソドックス・ジューに、生きかたを変えるよう
に求めるものだろうか?

反日(パンイル)が韓国民の愛国心を支えて、元気の素となっている。韓国
はかつて自国を小中華(ソチュンファ)と呼んで、中国の藩属国であること
を誇って、日本を蔑(さげす)んできた。その日本が韓国を追い越したの
が、誇りを傷つける。

そのかたわら、韓国民は日本の発展が羨ましい。反日の裏では、日本に憧
れている。韓国には「荘(ソジュン)」という、日本語にない言葉がある。

韓国民の心情を理解して、日本が韓国の活力の源となっていることを喜び
たいものの、明治初年の日本を苦しませたのが、朝鮮半島だった。日本は
朝鮮半島をめぐって、清国とロシアと死活を賭けて戦うことを強いられた。 

いま、北朝鮮から発する脅威が、日本を戦(おのの)かせている。それだけ
ではない。文政権によって、韓国が崩壊する可能性がある。

私は6月にワシントンに滞在していたが、政権内部の友人が「もし文政権
が北朝鮮に1ドルでも渡したら、われわれは黙っていない」といった。

「どうするつもりなのか」と尋ねたが、笑って答えなかった。おそらく韓
国の国軍を動かして、クーデターで文政権を倒そうということなのだろう。

トランプ政権は民主的に成立した政権を倒したくないだろうが、オバマ政
権がエジプトで民主的選挙によって登場したムスリム同胞団政権を軍が倒
したのを黙認したのと、同じことになろう。


2017年07月22日

◆アメリカを見縊る北朝鮮 気になる中国

加瀬 英明



気になるロシアの動向

5月21日に、金正恩委員長の北朝鮮がアメリカを嘲笑うように、2発の中
距離弾道ミサイルを続けて試射した。

ピョンヤンでは数万人以上の市民が、目抜き通りを埋めて動員されて、ミ
サイル試射の成功を手に手に小旗を振って、万歳を叫んで祝った。

5月9日に、韓国で大統領選挙が行われて、北朝鮮に対する融和政策を公
約として掲げた文在寅候補が、当選した直後の5月14日にグアム島、アラ
スカまで射程に収める長距離ミサイル1発を撃ちあげてから、僅か2週間
以内に3発試射したことになる。

5月14日は、中国にとって今年の最大の国際行事だった「一帯一路会議」
が、北京で開幕した日だったから、習近平国家主席の顔に、泥を塗ったこ
とになった。

トランプ政権は1月に発足してから、もし北朝鮮が6回目の核実験を強行
するか、アメリカ本土まで届く大陸間弾道弾(ICBM)の試射を行う場
合には、北朝鮮に軍事攻撃を加えるといって、威嚇してきた。

朝鮮戦争が1953年に終わってから、北朝鮮は金日成主席、金正日第一書記
のもとで、米軍を攻撃するか、韓国に対してテロ事件をしばしば行ってき
たが、一度として米韓から軍事攻撃を加えられることがなかった。

大きな事件をあげれば、1968年に米情報収集艦プエブロ号を公海上で攻撃
して、拿捕した。この時に、プエブロ号の乗組員1名が被弾して死んだ。
その3年後に、公海上を飛行する米電子偵察機を撃墜した。

そのつど、第2次朝鮮戦争が起るのではないか心配されたが、アメリカが
自制した。

プエブロ号事件直前に、北朝鮮の特殊部隊が越境し、ソウルの大統領官邸
の青瓦台襲撃未遂事件が発生し、83年にラングーン事件、87年に大韓航
空機爆破事件が起こった。韓国も北朝鮮に攻撃を加えることがなかった。

そこで、金正恩委員長はアメリカを見縊(みくび)っているのではないか。

クリントン政権が、北朝鮮が94年に黒鉛型原子炉からプルトニュウムを
抽出すると、北朝鮮が核開発を凍結するかわりに、軽水炉を提供すること
で合意して、食糧援助を行った。その4年後に、北朝鮮がはじめて弾道ミ
サイルを実験したが、ミサイル試射を停止するのと引き替えに、再び食糧
援助を実施した。

2006年に、北朝鮮ははじめて核実験を行った。ブッシュ(息子)政権はイ
ラク戦争に忙殺されていたこともあって、北朝鮮が6ヶ国協議に戻ること
と交換して、金融制裁を解除するとともに、食糧援助を提供した。

北朝鮮が5月21日に弾道ミサイルを連射すると、中国、ロシアも加わっ
て、国連安保理事会が北朝鮮を非難する決議を行った。

だが、中国はアメリカの顔色を窺っているものの、北朝鮮に対して厳しい
経済制裁を加えるのを躊躇しているし、ロシアは北朝鮮に新たに石油を供
給するなど援けている。

中国にとって、アメリカが北朝鮮の核・ミサイル開発を放棄させるため
に、中国を頼りにしていることから、北朝鮮がアメリカを挑発するほど、
中国の値打ちがあがることになる。もっとも、その塩加減が難しい。

ロシアはアメリカが北朝鮮を威嚇することに反対して、対話によって平和
的に解決することを主張している。ロシアはイラン、シリアなどの反米諸
国を支援しているが、北朝鮮はそのなかの駒の一国として役に立つのだ。

2017年07月09日

◆“自衛隊の保持“を明記すべき火急の時

加瀬 英明



5月3日の憲法記念日に、安倍晋三首相が2020年までに憲法を改正して、
改正憲法を施行したいと述べて、第9条1項と2項をそのままにして、3
項として自衛隊を保持することを加えることを、提言した。

9条1項は「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、
国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」、2項は「陸
海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めな
い」と定めている。

私は『美しい日本の憲法をつくる東京都民の会』の共同代表を、下村博文
先生、長谷川美千代先生とつとめているから、これから述べることは、私
見であることを前置きしたい。

私は第9条1、2項を改めずに、自衛隊の存在を3項として新しく加える
という、安倍首相の提言に双手をあげて賛成したい。

北朝鮮危機が募るなかで、5月にヘリコプター搭載護衛艦『いずも』が、
安保関連法のもとで米艦を護衛する任務を与えられて、横須賀を出港し
た。テレビのニュースで映像が放映されたが、艦尾の旭日旗が目に染みた。

新聞、テレビがすでに4月に入ってから、海上自衛隊と航空自衛隊が、米
艦や、米空軍の爆撃機を護衛する共同訓練を実施してきたことを報道して
いた。

日本の若者が生命(いのち)を賭けて、任務についているのだ。

現行の日本国憲法は、誰もが知っているように、アメリカが占領下で自由
意志を奪われていた日本に、押し付けたものだ。

マッカーサー元帥が、占領下にあった日本について、「日本は12歳の少
年だ」と公言したことは、有名だ。この発言は、占領下の日本の新聞各紙
に大きく載っている。
 
現行憲法は日本が自前の軍隊を持つことを禁じているが、アメリカは未来
永劫、日本という“少年の国”を半独立国化して、アメリカが守るつもりで
いた。

護憲派の人々は、気づいていないのだろうが、恥しいことにアメリカに対
する属国根性を丸出しにして、アメリカに甘えている。

多くの現行憲法を護りたいと願っている純朴な善男善女が、現行憲法は平
和を願う真摯な祈りであると、信じているのだろう。

ところが、現実は厳しい。国民の生命と安全をただ祈るだけでは、守るこ
とはできない。

核実験と弾道ミサイルの試射を繰り返している北朝鮮も、隙あれば尖閣諸
島を奪おうと狙っている中国も、自国民の自由を力によって抑えつけてい
る、一党独裁政権のもとにあって、自国民を武力を用いて従わせている政
権は、外に対して武力を使うことを躊躇しない。

今年は日本が対日講和条約によって、独立を回復してから、65年目に当た
る。もちろん、アメリカはもはや今日の日本が12歳の少年だと、みなして
いない。

今日のアメリカは、日本が攻撃を蒙った時には、アメリカだけではなく、
日本もアメリカ軍と一体になって、日本を守るために戦うことを期待して
いる。もし、日本がそうしなければ、アメリカは日本を放棄しよう。

日本国民は日本が危機に陥った場合に、自衛隊員が戦うことを期待してい
る。それなのに、憲法に自衛隊の存在が書かれていないのは、自衛隊員に
対して残酷なことだ。

9条2項と矛盾しようが、火急な場合だ。自衛隊を保有することを、3項
で規定しよう。


2017年07月08日

◆機能不全に陥る国連の体たらく

加瀬 英明



いったい、国連は世界平和の役に立っているのだろうか? まったく立っ
ていない。

いったい、国連は日本の役に立っているのだろうか? 答は、国連自体が
役に立たない国際機構だ。それなのに、どうして日本国民は国連を後生大
事にするのだろうか?

なぜ、国連加盟国の分担金は、それぞれ加盟国の経済規模によってきめら
れているのに、日本はアメリカについで2番目に大きな分担金を収めてい
るのだろうか? 

中国は経済規模を示す国際尺度であるGDPで、日本の2.3倍もある
が、国連分担金では第3位であって、日本の80%だ。

第1問から答えよう。今世紀に入って起った、大きな戦争と危機をとろう。

2001年にイスラム過激組織『アル・カイーダ』が、ニューヨークの世界貿
易センタービルを攻撃して破壊した。アメリカは『アル・カイーダ』の根
拠地だった、アフガニスタンのタリバン政権を倒し、イラクと戦った。

11年にオバマ政権が、カダフィ政権のリビアに軍事攻撃を加え、2年後に
シリアの反体制勢力に武器と資金を供給して、リビアとシリアを収拾がつ
かない混乱に陥れた。

翌年、プチン大統領のロシアがウクライナに軍を侵攻させて、クリミア地
方を奪い取って、ウクライナ東部を切り取りつつある。

国連はこの大きな危機に当たって、蚊帳の外に置かれていた。アメリカ
も、ロシアも、国連が邪魔になるから、介入させなかった。

いま、日本は北朝鮮が核実験・ミサイル試射を繰り返しているために、深
刻な危機に直面しているが、そのつど国連安保理事会は北朝鮮を非難し
て、経済制裁決議を行ってきた。

だが、中国は北朝鮮に経済制裁を加えることを躊躇している。それどころ
か、中国政府の発表によっても、今年1月から4月まで中鮮貿易額は、か
えって増加している。そのわきで、ロシアは北朝鮮を援けるために石油を
供給するなど、金正恩体制を支えている。

中国が尖閣諸島に武力を行使した場合に、国連は援けてくれるだろうか?
 米ロ英仏とともに、国連の最高意志を決定する安保理事国で拒否権を
持っているから、国連は動けない。

国連は“平和の殿堂”ではない。加盟国が自国のエゴを剥き出しにして闘争
する、古代ローマの剣闘士のコロシアムのようなものだ。

国連憲章からして、欠陥文書だ。「平和愛好国」を加盟資格としている
が、北朝鮮や、中国や、ロシアが「平和愛好国」だろうか?

国連が人権を援護するはずがない。北朝鮮、ミャンマー、トルコとあげて
も、人権を蹂躙している加盟国がほとんどだ。中国はチベット、新疆ウィ
グルで過酷な弾圧を行っている。

国連は傘下に、世界保健機関(WHO)、食糧農業機関(FAO)、国際
労働機関(ILO)、世界貿易機関(WTO)など、数多くの専門機関
や、委員会や、研究所を抱えている。これらの機関の予算は、国連本体と
は別勘定で、日本はWHOをはじめとして、アメリカにつぐ分担金を収め
ている。

国連は職員全員が、1946年の「国連の特権免除に関する条約」によって、
治外法権とされている。日本では報道されないが、そのために巨額の着
服、横領、浪費が行われていることが、長年にわたって問題となってき
た。国連は自浄能力を欠いている。

加盟国が193ヶ国にのぼるが、多くの加盟国だけでなく、国連職員の質が
悪い。5月にアメリカのAP通信社が、国連内部の機密文書を暴露した
が、WHOは毎年職員の旅費だけで、何と2億ドル(約222億円)以上
も、支出している。

国連は教育科学文化機関(ユネスコ)が、中国が申請した“南京大虐殺”の
記録を、「世界文化記憶遺産」として認定し、拷問禁止委員会が一昨年の
慰安婦に関する日韓合意を見直すように勧告するなど、頻繁に日本に害を
及ぼしている。国連は穀潰(ごくつぶ)し機関だ。


2017年07月07日

◆私は韓国贔屓だ

加瀬 英明



私にとって韓国は、もっとも親しい国だ。

韓国で政権が交替した。それでも、わが大使館とプサンの総領事館の前に
設置された慰安婦像が、撤去されることはないだろう。

やれやれ、日韓関係は144年も全く変わっていない。

明治6年に、朝鮮政府が日本の唯一つの外交公館として、釜山(プサン)に
あった倭館の前に、日本を「罵詈譫謗(ばりせんぼう)」(罵る言葉)を連
ねた、漢文で数千字にのぼる告示文を掲示した。

内容は、日本の明治の改革を頭から否定して、日本が儒教の礼を踏み躙
り、服装を西洋式に変えたことを痛罵し、和船でなければ入港を認めない
のに、洋夷を模倣した蒸気船を用いることなど、日本が禽獣以下の国だと
なじるものだった。

日本側の抗議に対して、告示文を撤去することを拒んだ。日本政府はこの
無法な告示文に激昂し、西郷隆盛をはじめとする太政官が、征韓論を唱え
る切っ掛けとなった。

今日、この告示文の写しが、外務省外交史料館に保管されている。

日本で嫌韓論が募っている。だったら、いったい韓国とどう交際したらよ
いのだろうか?

私は韓国は変わらないから、あるがままの韓国を受け容れて、経済、安全
保障、文化に限って、互恵関係を結ぶべきだと思う。

アメリカにキリスト教の一派のアーミッシュの共同体があるが、電気も、
電話も、自動車も、いっさいの機械の使用だけでなく、聖書以外の読書、
讃美歌以外の音楽を禁じている。敬虔な愛すべき人々だ。

イスラエルに「オーソドックス・ジュー」と呼ばれる、ユダヤ教の厳格な
戒律を頑なに守る人々がいる。聖書が肌に刃を当てることを禁じているか
ら、髭を剃らない。シャバット(安息日)――金曜日の日没から土曜日の日
没まで乗り物に乗らないし、火を点じることがない。信仰心が篤い人々だ。

アーミッシュ教徒や、オーソドックス・ジューに、生きかたを変えるよう
に求めるものだろうか?

反日(パンイル)が韓国民の愛国心を支えて、元気の素となっている。韓国
はかつて自国を小中華(ソチュンファ)と呼んで、中国の藩属国であること
を誇って、日本を蔑(さげす)んできた。その日本が韓国を追い越したの
が、誇りを傷つける。

韓国民の心情を理解して、日本が韓国の活力の源となっていることを、喜
びたい。


2017年06月25日

◆アメリカを見縊る北朝鮮

加瀬 英明



アメリカを見縊る北朝鮮 気になる中国、ロシアの動向

5月21日に、金正恩委員長の北朝鮮がアメリカを嘲笑うように、2発の中
距離弾道ミサイルを続けて試射した。

ピョンヤンでは数万人以上の市民が、目抜き通りを埋めて動員されて、ミ
サイル試射の成功を手に手に小旗を振って、万歳を叫んで祝った。

5月9日に、韓国で大統領選挙が行われて、北朝鮮に対する融和政策を公
約として掲げた文在寅候補が、当選した直後の5月14日にグアム島、アラ
スカまで射程に収める長距離ミサイル1発を撃ちあげてから、僅か2週間
以内に3発試射したことになる。

月14日は、中国にとって今年の最大の国際行事だった「一帯一路会議」
が、北京で開幕した日だったから、習近平国家主席の顔に、泥を塗ったこ
とになった。

トランプ政権は1月に発足してから、もし北朝鮮が6回目の核実験を強行
するか、アメリカ本土まで届く大陸間弾道弾(ICBM)の試射を行う場
合には、北朝鮮に軍事攻撃を加えるといって、威嚇してきた。

朝鮮戦争が1953年に終わってから、北朝鮮は金日成主席、金正日第一書記
のもとで、米軍を攻撃するか、韓国に対してテロ事件をしばしば行ってき
たが、一度として米韓から軍事攻撃を加えられることがなかった。

大きな事件をあげれば、1968年に米情報収集艦プエブロ号を公海上で攻撃
して、拿捕した。この時に、プエブロ号の乗組員1名が被弾して死んだ。
その3年後に、公海上を飛行する米電子偵察機を撃墜した。

そのつど、第2次朝鮮戦争が起るのではないか心配されたが、アメリカが
自制した。

プエブロ号事件直前に、北朝鮮の特殊部隊が越境し、ソウルの大統領官邸
の青瓦台襲撃未遂事件が発生し、83年にラングーン事件、87年に大韓航
空機爆破事件が起こった。韓国も北朝鮮に攻撃を加えることがなかった。

そこで、金正恩委員長はアメリカを見縊(みくび)っているのではないか。

クリントン政権が、北朝鮮が94年に黒鉛型原子炉からプルトニュウムを
抽出すると、北朝鮮が核開発を凍結するかわりに、軽水炉を提供すること
で合意して、食糧援助を行った。その4年後に、北朝鮮がはじめて弾道ミ
サイルを実験したが、ミサイル試射を停止するのと引き替えに、再び食糧
援助を実施した。

2006年に、北朝鮮ははじめて核実験を行った。ブッシュ(息子)政権はイ
ラク戦争に忙殺されていたこともあって、北朝鮮が6ヶ国協議に戻ること
と交換して、金融制裁を解除するとともに、食糧援助を提供した。

北朝鮮が5月21日に弾道ミサイルを連射すると、中国、ロシアも加わっ
て、国連安保理事会が北朝鮮を非難する決議を行った。

だが、中国はアメリカの顔色を窺っているものの、北朝鮮に対して厳しい
経済制裁を加えるのを躊躇しているし、ロシアは北朝鮮に新たに石油を供
給するなど援けている。

中国にとって、アメリカが北朝鮮の核・ミサイル開発を放棄させるため
に、中国を頼りにしていることから、北朝鮮がアメリカを挑発するほど、
中国の値打ちがあがることになる。もっとも、その塩加減が難しい。

ロシアはアメリカが北朝鮮を威嚇することに反対して、対話によって平和
的に解決することを主張している。ロシアはイラン、シリアなどの反米諸
国を支援しているが、北朝鮮はそのなかの駒の一国として役に立つのだ。



2017年06月24日

◆鰻なんて食い物はな・・・

加瀬 英明



柴又の寅さん、男はつらいよ  鰻なんて食い物はな・・・

4月なかばに春寒(はるざむ)も終わって、新緑が眩しくなると、旬の葉菜
を味わうのが楽しい。

中島兄哥(あにい)と姐さんを、赤坂の小料理屋のTに誘って、一献傾けた。

兄貴に会うたびに、千軍万馬(せんぐんばんば)――あまたの戦場に臨む――の
半生を送ってこられただけに、学ぶことが多い。知恵は経験から涌くこと
を、教えられる。

兄貴と姐さんはいつも睦み合って、理想の夫婦(めおと)、いや婦夫(めお
と)だ。

古文では、夫婦(めおと)は女男(めおと)、妻夫(めおと)と書かれたもの
だった。今でも和船に使われる、両端が尖って打ち合わせる釘は、女男
(めおと)釘(くぎ)と書かれる。

夫が妻に向って、妻が良人(おっと)に向って心の礼を重んじる。男女のあ
いだでは、形の礼よりも、心の礼が大切である。

兄貴と姐さんは、日の本のよき妻夫(めおと)だ。伊(い)奘(ざな)諾(ぎ)と
伊邪冉(いざなみ)の風(なぎ)と波(なみ)の男女の二神が、戯れあっている
うちに、恋におちて、麗しい日本が生まれた神話を、目の当たりにするよ
うだ。

それにしても、某省政務官のように、道義をまったく心得ない政治屋がい
るが、不徳の輩が絶えないのは、残念なことだ。

明治の新聞小説の第一人者だった村井弦斎が、「結婚した後は酒道楽や女
道楽勝手次第、自分の妻や子に対して一片の温情がない人も沢山いる。自
分の一家を斉(ととの)える事も出来ない人が、一国の政治を論議するなん
ぞ大(おおき)な顔をしているし、自分の家庭を神聖にする事も出来ない
で、青年を教育すると威張る先生もある」と、慨嘆している。

私は母方の祖母と母親から「男は台所に入ってはならない」「何でも感謝
して食べて、美味しい不味いといってはならない」と厳しく躾けられたの
で、美食を蔑むように育った。

祖母は会津の武家の血を、ひいていた。それに戦時中、占領下で、食糧事
情が悪かった時代の子供だったので、食事といえば腹を充たせばよく、舌
で味わうよりも、口で味わうのが、いまだに癖となっている。

柴又の寅次郎『男はつらいよ』シリーズのなかで、おいちゃんが宇野重吉
が扮する男に、「鰻(うなぎ)なんて食い物はな、額に汗して働く人間に
は、1年に2度かそこらか、何かよほど芽出度(めでた)いことがあった時
に、今日は蒲焼でも食べようかって、大騒ぎして食うもんだ」と、意見す
る場があったのに、大いに共感したものだった。

幕末生れの祖母と、明治生れの父親の影響なのだろうか。

それでも、仕事で料亭で御馳走になるうちに、和食を好むようになった。
Tには40年も馴染みの客となっているが、酒道楽はしたことがあっても、
女道楽をしたことがないから、赤坂の艶(えん)として鳴らした名妓だった
女将に、岡惚れしたからではない。

私たち日本の精神文化の最大の特徴を、ひとことでいうと、清浄感だ。

和食は淡白で、できるかぎり自然をそのまま取り入れている。素材の味を
損なわずに、山や森や、川や海の霊気が宿っており、季節と自然の恵みを
楽しむ。

和食では何よりも季節を大切にするが、Tでも座敷に季節ごとに合う掛け
軸がかけられている。

欧米で高級レストランに招かれると、壁にいつも同じ高価な油絵が掛けら
れていて、季節によって替えないから、興がそがれる。

中華や、フランス料理はさまざまな素材を用いて、もとの素材にない味を
つくりだす。化学の実験のようだから、なじまない。

日本人の美意識は、雅(みやび)にある。派手なものや、金銀のように光る
ものを嫌ってきた。雅(みやび)の語源は、平安朝の「宮び」からきている
が、そこはかとない、ほのかな美しさや、香りを尊んだ。

『源氏物語』は雅(みやび)の文学だが、「風涼しくてそこはかとない虫の
声が聞こえ」(帚木)というように、抑えられた美である。和食も、そこ
はかとない隠し味を、楽しむ。

自然は自分をそのまま、見せる。誇張することがない。

兄貴の姐さんが匂(にほ)やかに微笑むたびに、座が和(なご)む。兄貴夫婦
は明るさを春の空と、分かち合っているようで、気風(きっぷ)がよい。

始終愚痴をぶつけ合っている夫婦が多いのに、お2人は毎日、天上で生活
しているような、心持ちでおられるのだろう。

Tの女将も、姐さんも、深水の絵から抜け出たように美しい。床の間に美
女の精が宿ったような、一茎の花が飾られていたが、3輪の花が競ってい
た。小生にとって、まさに一生一夢だった。

式部が『源氏物語』の「雨夜のさだめ」のなかで、美女が少ないことを嘆
いているが、もしこの場にいたら、筆運びが変わったはずだ。

それにしても、今の日本では、女らしくない女ほど悦ばれる世相なのか、
娘となっては淑女、嫁いだら良妻がいなくなった。惣菜1つ作ることがで
きず、衣服も縫えないのに、心掛けだけが生意気なのだから、煮ても焼い
ても、食えない。どこを見ても、偽造の女ばかりだ。

女は料理に長けていなければ、程(ほど)と加減を知らないから、夫婦関係
も、男女関係もすぐに破綻する。

そこへゆくと、愚妻は式部に「雨夜のさだめ」を書き直す労をとらせるこ
とがないが、夫の餌づけ――料理となると、得意だ。

兄貴が別れぎわに、京都のとれたての見事な筍を、贈ってくれた。

わが家に戻ってから、待っていた愚妻としばし見惚れた。一瞬、兄貴と姐
さんのように、夫婦は竹藪のように根がしっかりと繁っていることを教え
るために、筍を選んでくれたのだろうかと、思った。

藪医者にもなっていない、未熟な駆け出しの医者を筍医者という。まさ
か、私が筍評論家だというお叱りでは、なかっただろう。

(中島繁治氏は日大OB誌『熟年ニュース』主宰者)



2017年06月14日

◆日本射程の北朝鮮ミサイル、国家存亡の危機

加瀬 英明 




硫黄島は本土から1300キロ離れている。栗林忠道中将が率いる小笠原兵団
が、アメリカ軍に対して健闘して玉砕したが、アメリカ軍にわが軍の戦死
者よりも多い出血を強いた。

だが、日本は硫黄島を奪われた時に、命運が盡きた。硫黄島から飛来する
P51戦闘機が小学生にまで、機銃掃射を加えた。

東京から朝鮮半島の日本海側の南北軍事境界線(DMZ)まで1000キロ、
ピョンヤンまで1300キロ、九州から黄海側のDMZまで500キロしか、離
れていない。

このままゆけば、朝鮮半島で戦争が始まる可能性が、高まっている。日本
は戦後最大の窮地に、立っている。

アメリカ鷲と中国龍が、4月6、7日に、フロリダのトランプ別荘で対決
した。

初日の午後8時40分(フロリダ時間)に、地中海に浮ぶアメリカの2隻の
駆逐艦から、ミサイルがシリア空軍基地に撃ち込まれた。

私たちはテレビの映像で、夜闇のなかをアメリカの駆逐艦から巡航ミサイ
ルが閃光に包まれて、発射されるのを見た。

トランプ大統領が習主席に「いま、シリアへミサイル攻撃を加えた」と告
げて、支持するように求めた。習主席は一瞬、呆然としたが、「多くの赤
ん坊が殺されたから、仕方がない」と力なく答えた。習主席に随行した幹
部のうち何人か、唖然としたにちがいない。

この数時間後に、ロシアがアメリカのシリアに対するミサイル攻撃は侵略
行為だと、激しく非難した。
 
中国は2ヶ月前に国連安保理事会で、シリアのアサド政権が2013年から化
学兵器を用いたという化学兵器禁止機関(OPCW)の調査結果にもとづ
いて、シリアへ制裁を加える決議案が提出されたのを、ロシアとともに拒
否権を行使して、葬ったばかりだった。

習主席は自分とプチン大統領の顔に泥を塗ったのだった。

習主席は今秋の第19回共産党大会で、中国13億人の「核心」である最高指
導者として、もう1期5年選出されるために、アメリカとできるだけ波風
をたてたくなかったから、トランプ大統領にとっさに媚びたのだった。

トランプ大統領は習主席に北朝鮮の核ミサイル開発を阻むために、中国が
よそ見せずに、真剣に協力するように求めた。それでなければ、アメリカ
が「ゴー・イット・アローン」(単独で行動する)といって、凄んだ。

北朝鮮に龍をけしかけたのだが、ここしばらくは中国の出方を見守ろう。

アメリカは原子力空母『カール・ビンソン』を中核とする機動打撃群を、
朝鮮近海へ急行させた。北朝鮮は怯んで、予定していた6回目の核実験を
半年か1年か、延期したにちがいない。

アメリカはシリアへミサイル攻撃を加える2時間前に、ロシア軍要員を殺
傷することがないように、ロシアへ通告した。シリアへのミサイル攻撃
は、あきらかに北朝鮮に対する警告だった。

トランプ大統領は、オバマ政権が中国という暴れ龍を仕付けることを怠
り、北朝鮮の核・ミサイル開発を放置していたツケを、支払うことを強い
られている。

私はトランプが大統領選に勝ったのを、喜んだ。もしヒラリー夫人が勝っ
ていたら、オバマ政権の8年間の対外政策の無策が続くことになって、世
界がいっそう安定を失うことになったろう。

トランプは予測不能だ。それに選挙事務所にレーガン大統領とジョン・
ウェインの等身大の写真を飾って、「メイク・アメリカ・グレイト・アゲ
イン」と叫んでいたが、「メイク・アメリカ・タフ・アゲイン」と聞こえた。

トランプ大統領は、北朝鮮がアメリカまで届く核ミサイルを完成すること
を、「絶対に許さない」といって、北朝鮮が核実験を強行したら、核施設
を攻撃することになろう。

いったい、北朝鮮は何を求めているのだろうか?

北朝鮮は何よりもアメリカと交渉して、アメリカが北朝鮮を核保有国とし
て認めさせ、米朝間に国交関係を結ぶことによって、金王朝の存続を保証
することを、強く望んでいる。

ところが、トランプ政権は「北朝鮮が核開発を放棄しないかぎり、話し合
いに応じない」と、繰り返し言明している。

3月6日に、北朝鮮が4発のミサイルを発射して、3発が秋田県沖合に弾
着した直後に、北朝鮮は「在日米軍基地を狙った演習だった」と声明し
た。日本の沖合に4発とも落すつもりだったが、1発が外れたにちがいない。

4発のミサイル発射は、北朝鮮のアメリカへの熱烈な“ラブコール”だった。

その7日後にマレーシア空港で、異母兄の金正男氏を、VXガスを用いて
暗殺した。なぜ、他の毒物をいくらでも使うことができたのに、そうしな
かったのか。VXガスを大量に貯蔵していることを、示したかったのだ。

おそらく、安倍首相がアメリカの袖に縋って、北朝鮮と話し合うように哀
願することを、期待したにちがいない。

4月13日に米大手テレビが、「トランプ政権が北朝鮮が核実験を行う確証
をえたら、先制攻撃を加えることを決定した」と、報じた。北朝鮮は「最
高指導部が判断した時に、いつでも核実験を実施する」と反発した。

朝鮮半島は一触即発だ。トランプ大統領と、金正恩朝鮮労働党委員長の予
測不能の2人が、朝鮮半島と日本に戦火を招こうとしている。

ところが、日本の国会は朝鮮半島の危機が刻々と募っていたのをわきに、
米国に任せておけばよいと、与野党ともに属国根性を丸出しにして、4月
に入ってからもわずらわされることなく、森友学園問題におもしろおかし
く没頭していた。

5月3日には、日本国憲法が70周年を迎える。アメリカが70年前に日本を
属国とすることをはかって、押し付けたものだ。

私は「平和無抵抗憲法」と、呼んでいる。きっと護憲派が全国にわたっ
て、属国憲法の記念日を祝う集会を催すことだろう。属国根性で国民の生
命を守れない。私は日本国憲法や、森友学園の籠池夫妻と心中したくない。

4月15日は、金王朝の創始者の金日成主席の生誕105周年を祝う「太陽節
(テンチョル)」だった。ピョンヤンで新型のミサイルが次々と登場し、
“虎の子”の部隊が行進した。

雛壇から朝鮮労働党副委員長が、「核戦争には、核攻撃で応える!」と、
叫んだ。

大型のミサイルが登場すると、世界でもっとも若い、33歳の最高指導者
である金正恩委員長が、お気に入りのオモチャ箱の兵隊を見るように笑顔
となった。

この夕方、岸田文雄外相が記者団に、「いかなる事態にも対応できるよう
に、万全の態勢を整えている」と、語った。

トランプ大統領は北朝鮮が核実験の準備に取り組むか、アメリカまで届く
ICBM(大陸間弾道弾)の試射をはかる場合に、先制攻撃を加えると、
繰り返し警告している。

アメリカが北朝鮮の核施設とミサイル基地を摘出する、限定的なサージカ
ル・ストライク(外科的攻撃)を加えたら、北朝鮮は体制の威信を賭け
て、南北軍事境界線から45キロしか離れていないソウルを砲撃を開始
し、日本へ向けてミサイルを発射しよう。韓国にある多数の原発が被弾し
たら、偏西風に乗って、日本全国が放射能によって覆われる。

1950年から3年にわたった朝鮮戦争の再演には、ならない。北朝鮮は全面
戦争を戦ったら国家的自殺になるから、開戦5、6日以内に国際世論を背
景にして、国連、中国、ロシアが間に入って、停戦が成立することを見込
もう。

北朝鮮が日本へ多数のミサイルを、同時に撃ってきたら、日本は迎撃して
全て破壊する能力がないから、ひたすら耐えるほかない。

岸田外相が「万全の態勢を備えている」と述べたが、前大戦で米国が日本
全土を空襲する前に、軍部が「来るなら来い! 我に鉄壁の備えあり」
と、豪語したのと変わらない。

トランプ大統領は核実験を強行するか、アメリカまで届くICBMを試射
する確証をえたら、先制攻撃を加えると警告している。「アメリカ・
ファースト」――「アメリカの安全(アメリカン・セイフティ)ファースト」
なのだ。

日本が頭から火の粉をかぶることになるが、トランプ政権は、剣道でいえ
ば「肉を斬らせて、骨を斬る」ことになる。肉は日本だ。

いつ、朝鮮半島に火の手があがることになるのだろうか。私は時間的な余
裕が、まだ1年か、2年あまりあると思う。

中国の習近平主席は「偉大な5000年の中華文明の復興」、英訳すれば「メ
イク・チャイナ・グレイト・アゲイン」と叫んで、中国国民の人気を博し
てきたのに、北朝鮮のおかげでアメリカに対して威張れなくなった。

といって、米国のいうままになって、北朝鮮に核開発を放棄するように、
真剣になって迫ることはしまい。

北朝鮮が核開発を放棄することはありえない。核やミサイル実験を行わな
くても、性能を高めることができる。このまま進んでゆけば、アメリカは
いずれ北朝鮮を攻撃することとなろう。

国会は与野党が一致して、ミサイル迎撃システムを強化し、北朝鮮のミサ
イル基地を攻撃する能力を保有するために、防衛費を画期的に増額するこ
とを、集中審議すべきだ。

72年前に、朝日新聞と狂気に取り憑かれた軍人たちが、日本精神さえあれ
ば「神州不滅」だと叫んで、「一億総特攻」をあおった。護憲派が「平和
憲法」さえあれば、「日本は不滅」だと説いているが、72年前に「一億玉
砕」の道を突き進んでいた亡霊が、さまよっているとしか思えない。

 戦後の日本は弱いことがよいという風潮によって覆われてきたが、一刻
も早く改めよう。

2017年06月04日

◆「個人」や「幸福追求権」のおぞましさ

加瀬 英明


「日本国憲法」であれば、いうまでもないことだが、日本の2000年以 上
の歴史が培ってきた生活文化に適っていなければならない。

だが、外国人であるアメリカ人が書いて、占領下にあった日本に強要した
から、文化を全く異なっているし、翻訳臭がひどくて、私たちになじまない。

第13条【個人の尊重・幸福追求権・公共の福祉】すべて国民は、個人とし
て尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、
公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要
とする。

「個人」という言葉は明治に入ってから、西洋諸語を翻訳するために、新
しくつくられた「明治訳語」だから、いまでも日本人の心に根づかない。
江戸時代が終わるまで、日本人は人と人との絆(きずな)のなかで生きてい
たから、一人の孤立した人間として人を意識することがなかった。「個
人」ではなく、「人間の尊重」「人間として尊重」でよいではないか。

「幸福追求権」にいたっては、不平不満をあおって、かえって人を不仕合
せにするから、憲法のなかでうたうのは、おぞましい。

西洋で「幸福追求権」が、法律によって定められるようになったのは、日
本で江戸時代に当たったが、支配階級による庶民の収奪と搾取が酷かった
ために、近代に入って人権や平等が求められるようになってからだ。

イギリスの詩人ウイリアム・ブレーク(1年〜1757ー1827年)は、ロンド
ンを流れる「テームズ川のほとり、私の出会った顔にはどれも弱々しさ
と、呪いの烙印(らくいん)が刻まれていた」と嘆き、もう一人の著名な作
家オリバー・ゴールドスミス(1728年〜1774年)は、「富が積まれ、人は
衰えゆくところ、国の歩みは道をはずれ、ますます悪の餌食(えじき)とな
る」と、憤っている。

明治初年のお雇い外国人の一人だった、イギリスのウイリアム・ディクソ
ンは明治9年に来日したが、「日本では西洋の都会にみられる、心労に
よってひしがれた顔つきなど、まったく見られない。老婆から赤子にいた
るまで、誰もがにこやかで満ちたりている。まるで世の中に悲哀など存在
しないかのようだ」と、書いている。

世界のなかで江戸時代の日本ほど、庶民が物心ともに豊かで、自由を享受
していた社会はなかった。庶民は武士よりも恵まれた生活を営んでいた。
庶民はよく働き、よく遊んだ。

歌舞伎は世界でもっとも絢爛豪華(けんらんごうか)な舞台芸術だが、庶民
のもので、武家は観劇を禁じられていた。ゆとりがあったから、庶民は芝
居、見世物、辻相撲、落語、楊(よう)弓場(ゆみば)から、活花(いけば
な)、茶会、香道、書道、囲碁、将棋、園芸、花火、食べ歩き、団体旅行
などの多くの余暇を楽しんだ。

今日の日本はどうだろうか。このごろの人は身勝手な幸せを追うために、
かえって自分を傷けて、不平不満をかこつている。幸せはあくまでも努力
した結果として、ついてくるものだ。

ついこのあいだまで、日本人は無事息災(健康で生活に障りがないこと)
のありがたさに感謝し、損得で幸せを計ることがなかった。たしかに、幸
福を享受している時には、意識されない。幸せは心のなかにあるもので、
物のなかにはな
い。

今日の多くの日本人が、「人生は楽の連続でなければならない」と、誤解
している。これでは人生の真実から、ほど遠い。     

憲法から「幸福追求権」を、削除したい。