2019年07月20日

◆「権現様はまだ生きていらっしゃるの?」

加瀬英明


令和の御代が明けた。

平成の最後の統一地方選挙中に広島に応援に行った帰りの航空便で、ス
チュワーデスに読むものを頼んだら、『週刊朝日』をくれた。

すると、新しい元号の『令和』は、命令、指令、令状の令であって、“安
倍一強”の傲りを示していると腐(くさ)していた。

私は令和から、令日、令人、令節とか、美徳や、善行を意味する令徳、ほ
まれの令聞、よい評判の令望などを連想していたので、きっと版元の新聞
社の雑誌担当者の令夫人が、夫を四六時中、小突き回すので、令の字に恨
みがあるのだろうと思って、身につまされた。

結婚は1国2制度だから、難しい。イギリスの大詩人のバイロンが、長編
風刺詩『ドン・ジュアン』のなかで、「人生という芝居の第1幕は恋愛と
いう喜劇、第2幕は結婚という悲劇」と指摘しているが、きっと人生は悲
喜劇なのだろう。だから人生は面白い。

機窓の外には、どこまでも青い空がひろがっていた。

私は鳥を飼ったことがないが、小鳥は美しくみえる黄金の籠のなかに住み
たいと願い、籠のなかに閉じ込められてしまった鳥は、大空をまた自由に
飛びまわりたいと、絶望に駆られるにちがいない。

フランスの諺に、「結婚の鎖は重い」というものがある。「だから3人で
運ばなければならない」と続いている。女房に秘密で恋人をもたねばなら
ないという、勧めだ。

平成が終わった。私は平成の30年間を、日本の周辺が風雲急を告げている
のに、アメリカによって押し付けられた欠陥憲法を、1行すら改められな
かったことによって、記憶しよう。

最高法規であるべき憲法の前文は、日本語として文法が目茶苦茶だ。どう
して国語審議会が目を瞑(つむ)ってきたのか。

この不真面目(ちゃらんぽらん)な憲法を真面目に解釈する法律学者たち
が、「専守防衛」とか、「必要最小限度の防衛力」とか、泥酔して錯乱し
たとしか思えないが、意味不明に解釈して国民の目を覆っている。

戦後の日本の金科玉条となっている「専守防衛」という言葉は、意味が
まったくないので、英語や、ヨーロッパ諸語に訳することができない。

そこで諸外国民を理解させるためには、来年、野球が東京オリンピックの
種目入りしたのを好機として、日本の選手がバッターボックスに立つ時に
は、バットを持たせないことにしよう。「専守」だから、日本チームに攻
撃となる打球を禁じる。

きっと、全世界が日本国憲法の崇高な精神に打たれて、感動しよう。

妻か夫が重い病いにかかったら、病院に「必要最小限度」の医療を施すよ
うに、頼もう。だが、いったい「必要最小限度」の医療なぞ、あるものだ
ろうか? それなら「必要最小限度」の国防も、あるはずがない。

妻か愛人に「これからは、必要最小限度の愛情を濯ごう」といったら、
「あほ! ふざけるな!」と一喝されて、たちまち張り飛ばされてしまおう。

こんなことを、毎日のように口角沫(あわ)を飛ばして議論している国会
は、精神科重症患者病棟という看板を掛けるべきだ。

日本国憲法の精神は、互いに「公正と信義」に委ねるべき夫婦のあいだ
か、愛人関係のなかに留めたい。

現行憲法は「平和憲法」の愛称によって罷り通っているが、「アメリカの
平和」のために強要したもので、占領軍総司令部が日本政府に「これを呑
まないと、天皇の一身の安全を保障できない」といって、英文の原案を手
渡してから、1年3ヶ月後に公布された。

大日本帝国憲法を全面的に書き改めたものだから、もし日本国民の手で改
正したのだったら、まさか、1年3ヶ月で公布できなかったろう。

アメリカ軍の施政下で現行憲法が施行されてから、今年で72年の歳月が流
れている。

いったい、どうして日本が独立国であることを頭から否定している、憲法
ととうてい呼べない憲法を、こんなに長いあいだ崇めてきたのだろうか。

占領軍が日本国民を洗脳して、東京裁判史観を植えつけたからだと説明さ
れるが、日本国民はそんなに愚かなのだろうか。

平成3年は、江戸開府400年に当たった。

日光東照宮が「江戸研究学会」を記念事業として立ちあげたが、私は江戸
時代は庶民が世界のなかでもっとも恵まれていた時代だったと書いたり、
講演してきたので、求められて会長を引き受けた。

江戸時代は平和がずっと続いて、庶民が豊かな生活を営み、絢爛たる文化
を創り出した。

だが、300年近く続いた平和は、明治以後の日本にとって呪いともなった。

徳川時代の日本は徳川家による支配を持続することが目的だったために、
新しい政治思想や、能力主義をいっさい斥けて、血筋と年功序列による硬
直した体制を墨守した。明治維新は徳川体制を根底からつくり直したか
ら、才気ある人々が国を導いたが、日清、日露戦争に勝つと、過剰な自信
の自家中毒を患うようになって、江戸時代へ戻ってしまった。

先の対米戦争で、日本はボロ負けした。政界から陸海軍まで、年功序列に
よった。帝国の興亡がかった真珠湾攻撃、ミッドウェー作戦の司令官は南
雲中将で、砲術の権威だったが、航空戦について無知だった。

江戸時代の武士は儒教漬けにされたのに、孫子の心髄の「兵は詭道也」
(敵を騙すこと)は、学ばなかった。武士道は精神修養の哲学に退化して
しまい、勝つことではなく、「死ぬ」ことに価値が与えられた。

高度経済成長による経済大国化は、日露戦争の勝利に似ていた。日本国憲
法がいつの間にか、権現様の祖法になってしまった。


2019年07月12日

◆欠陥憲法を墨守しつづける愚

加瀬 英明


令和の御代が明けたが、平成の30年、日本の周辺が風雲急を告げている
のに、なぜなのか、欠陥憲法を改めることができなかった。

最高法規であるはずの憲法の前文は、日本語として文法が目茶苦茶だ。ど
うして国語審議会が、目を瞑(つむ)ってきたのか。

このちゃらんぽらんな憲法を真面目(きまじめ)に解釈する法律学者たちが
「専守防衛」とか、「必要最小限度の防衛力」とか解釈しているが、泥酔
して錯乱したとしか思えない。

金科玉条となっている「専守防衛」という言葉は、まったく意味が不明
だ。英語や、外国語に訳することができない。

外国人に理解させるために、来年、野球が東京オリンピックの種目入りし
たのを好機として、日本の選手がバッターボックスに立つ時には、バット
を持たせなかったらどうか。「専守」だから、攻撃である打球を禁じる。

家族が重病を患ったら、病院に「必要最小限度」の医療を施すように頼も
う。だが、「必要最小限度」の医療なぞあるだろうか? 「必要最小限
度」の国防も、あるはずがない。

こんなことを議論している国会は、重症精神患者病棟という看板を掛ける
べきだ。

現行憲法は「平和憲法」だというが、「アメリカの平和」のために強要し
たもので、占領軍総司令部が日本政府に「これを呑まないと、天皇の一身
の安全を保障できない」といって、英文の原案を手渡してから、1年3ヶ
月後に公布された。帝国憲法を全面的に書き改めたのだから、もし日本国
民が改正したのなら、1年3ヶ月で公布できなかったろう。

アメリカ軍の施政下で現行憲法が施行されてから、今年で72年もの歳月
(さいげつ)が流れた。

どうして日本が独立国であることを否定して、とうてい憲法と呼べないの
に、改められないのか。占領軍が日本国民を洗脳して反日思想を植えつけ
たというが、国民はそれほど愚かであるはずがない。

平成3年は、江戸開府400年に当たった。

日光東照宮が「江戸研究学会」を記念事業として立ちあげたが、私は江戸
時代は庶民が世界のなかでもっとも恵まれていた時代だったと書いたり、
講演してきたので、求められて会長を引き受けた。

江戸時代は平和が300」年近く続いて、庶民が豊かな生活を営み、絢爛た
る文化を創り出した。だが、平和だった江戸時代は、明治以後の日本に
とって呪いともなった。

江戸時代は徳川家の支配を持続することを目的としたために、新しい政治
思想や能力主義を斥けて、血筋と年功序列による硬直した体制を墨守し
た。明治維新は徳川体制をつくり直して、才気ある人々が国を導いたが、
日清、日露戦争に勝つと、過剰な自信をいだくようになって、江戸時代へ
戻ってしまった。

先の対米戦争で、日本はボロ負けした。政界から陸海軍まで年功序列に
よった。帝国の興亡を賭けた真珠湾攻撃、ミッドウェー作戦の司令官は南
雲中将で、砲術の権威だったが、航空戦について無知だった。

江戸時代に入ると、戦国時代の戦略思想が消し去られた。武士は儒教漬け
にされたが、孫子の心髄の「兵は詭道也」(敵を騙すこと)は学ばなかっ
た。武士道は精神修養の哲学に退化してしまい、勝つことではなく、「死
ぬ」ことに価値が与えられた。

高度経済成長による経済大国化は、日露戦争の勝利に似ていた。日本国憲
法が家康公の権現様の祖法と同じものに、なってしまったのだ。


2019年07月11日

◆欠陥憲法を墨守しつづける愚

加瀬 英明


令和の御代が明けたが、平成の30年、日本の周辺が風雲急を告げている
のに、なぜなのか、欠陥憲法を改めることができなかった。

最高法規であるはずの憲法の前文は、日本語として文法が目茶苦茶だ。ど
うして国語審議会が、目を瞑(つむ)ってきたのか。

このちゃらんぽらんな憲法を真面目(きまじめ)に解釈する法律学者たちが
「専守防衛」とか、「必要最小限度の防衛力」とか解釈しているが、泥酔
して錯乱したとしか思えない。

金科玉条となっている「専守防衛」という言葉は、まったく意味が不明
だ。英語や、外国語に訳することができない。

外国人に理解させるために、来年、野球が東京オリンピックの種目入りし
たのを好機として、日本の選手がバッターボックスに立つ時には、バット
を持たせなかったらどうか。「専守」だから、攻撃である打球を禁じる。

家族が重病を患ったら、病院に「必要最小限度」の医療を施すように頼も
う。だが、「必要最小限度」の医療なぞあるだろうか? 「必要最小限
度」の国防も、あるはずがない。

こんなことを議論している国会は、重症精神患者病棟という看板を掛ける
べきだ。

現行憲法は「平和憲法」だというが、「アメリカの平和」のために強要し
たもので、占領軍総司令部が日本政府に「これを呑まないと、天皇の一身
の安全を保障できない」といって、英文の原案を手渡してから、1年3ヶ
月後に公布された。帝国憲法を全面的に書き改めたのだから、もし日本国
民が改正したのなら、1年3ヶ月で公布できなかったろう。

アメリカ軍の施政下で現行憲法が施行されてから、今年で72年もの歳月
(さいげつ)が流れた。

どうして日本が独立国であることを否定して、とうてい憲法と呼べないの
に、改められないのか。占領軍が日本国民を洗脳して反日思想を植えつけ
たというが、国民はそれほど愚かであるはずがない。

平成3年は、江戸開府400年に当たった。

日光東照宮が「江戸研究学会」を記念事業として立ちあげたが、私は江戸
時代は庶民が世界のなかでもっとも恵まれていた時代だったと書いたり、
講演してきたので、求められて会長を引き受けた。

江戸時代は平和が300」年近く続いて、庶民が豊かな生活を営み、絢爛た
る文化を創り出した。だが、平和だった江戸時代は、明治以後の日本に
とって呪いともなった。

江戸時代は徳川家の支配を持続することを目的としたために、新しい政治
思想や能力主義を斥けて、血筋と年功序列による硬直した体制を墨守し
た。明治維新は徳川体制をつくり直して、才気ある人々が国を導いたが、
日清、日露戦争に勝つと、過剰な自信をいだくようになって、江戸時代へ
戻ってしまった。

先の対米戦争で、日本はボロ負けした。政界から陸海軍まで年功序列に
よった。帝国の興亡を賭けた真珠湾攻撃、ミッドウェー作戦の司令官は南
雲中将で、砲術の権威だったが、航空戦について無知だった。

江戸時代に入ると、戦国時代の戦略思想が消し去られた。武士は儒教漬け
にされたが、孫子の心髄の「兵は詭道也」(敵を騙すこと)は学ばなかっ
た。武士道は精神修養の哲学に退化してしまい、勝つことではなく、「死
ぬ」ことに価値が与えられた。

高度経済成長による経済大国化は、日露戦争の勝利に似ていた。日本国憲
法が家康公の権現様の祖法と同じものに、なってしまったのだ。

2019年07月03日

◆パリのノートルダム聖堂が炎上した

加瀬 英明


4月15日にパリのノートルダム聖堂が、キリスト教の最大の祝日とされる
復活祭のさなかに、炎上した。

イエス・キリストが十字架に磔(はりつけ)られ、3日後に復活したと伝え
られるのを祝う祭である。

私はテレビのニュースで尖塔が燃え落ちるのを観ながら、セーヌ川の中洲
のシテ島に建つ大伽藍といえば、エッフェル塔と並ぶパリの観光名所だ
が、もはや信仰の対象でなくなっていることを思った。

 ノートルダム聖堂は歴史の博物館だ

ヨーロッパでは、キリスト教というより宗教離れが進んでいる。フランス
も例外ではない。最近、フランスで行われた調査によれば、フランスの若
者の7%しか教会に通わない。

いや、ノートルダム聖堂は観光施設になっているというよりも、貴重な歴
史博物館といったほうがよい。

ノートルダム聖堂はいまから800年前に着工され、200年かけて完成した。
「ノートル・ダムNotre Dame」は「わが婦人」を意味するが、聖母マリア
のことだ。

フランスといえば、すぐにフランス革命を連想させられる。

フランス革命は、国王、王妃をはじめ、5万人以上の貴族、地主など富裕
階層、僧侶、尼、政敵などを大量処刑した蛮行だったのに、いまでも「パ
リ祭」として盛大に祝われている。

情――心よりも、理を優先するヨーロッパ人や、中国人は恐ろしい。日本に
生まれて幸せだったと安堵する。

5年以内に再建するというが

フランス革命は1789年に始まったとされているが、革命派はキリスト教を
敵視して、徹底的に弾圧した。

1793年に、ノートルダム聖堂から十字架や聖像をいっさい取り払って、か
わりに祭壇に革命の象徴とされた、裸身に腰巻きをまいた猥雑な女性像が
安置され、“自由、平等、博愛”の殿堂となった。

ナポレオンが1804年に皇帝として戴冠式を行うために、再び教会とした。

ノートルダム聖堂が炎上すると、マクロン大統領がただちに「5年以内に
聖堂を再建する」と述べた。2024年にパリ・オリンピック大会が、開催さ
れる。

私はフランスだけでなく、西ヨーロッパ諸国でキリスト教が力を失ってい
るが、いったいノートルダム聖堂が再建されたとしても、ヨーロッパでキ
リスト教が力を復活できるのか、疑った。

フランスでは、イスラム移民が人口の10パーセントに当たることから、
再建したノートルダム聖堂は多文化を尊重して、イスラム教の礼拝も合わ
せて行うべきだという議論がある。

それにしても、ノートルダム聖堂の火災が、宗教や人種対立のテロによる
ものではなく、失火だったと知って、胸を撫でおろした。宗教・人種間の
テロのグローバリゼーションの恐怖が、世界を覆うようになっている。

ニュージーランドのクリスチャン・チャーチにおける、白人至上主義者に
よる大量殺戮が起ったばかりだ。もし、スリランカのようなイスラム過激
派による放火だったとしたら、ヨーロッパにおける宗教・人種間のテロが
激化した。

 西洋の信仰心の行方は

ヨーロッパにおいてキリスト教の信仰心が衰えたといっても、ヨーロッパ
の人々はヨーロッパをキリスト教文明圏だとみなしており、イスラム住民
に対する嫌悪を強めたことになったろう。

宗教・人種対立の根は深い。ユダヤ教から分かれたキリスト教が、ユダヤ
教の唯一つの聖書を、神の古い約束である『旧約聖書』と呼んでいるが、
『旧約聖書』と、ユダヤ・キリスト教から派生したイスラム教の聖典
『コーラン』を読むと、宗派や、部族間の憎悪を煽っていることに、呆然
(ぼうぜん)とさせられる。

神武天皇が即位された時に発せられた詔(みことのり)に、世界の全ての
人々が一つの家族として睦みえという、「八紘一宇(はっこういちう)」の
教えがあるのと比較すると、地球と別の惑星が存在しているようにすら思
える。
 
神道が森羅万象の和を説く、心の信仰であるのに対して、宗教は信じるこ
と――理のうえに、成り立っている。

紀元1世紀頃に生きたローマの大学者だったケルススが、キリスト教を論
じた著作がある。

「キリスト教徒は十字架を力の象徴として仰いでいるが、もし、キリスト
が絶壁から投げ下ろされて死んだとしたら、壁を拝むのだろうか」「な
ぜ、全知全能の神が人の姿をして、地上に降りる必要があったのか」「ど
うして完全無欠の神が、欠陥だらけの人を装うことができたのか」「な
ぜ、この時になって人を救おうとしたのか。世界のなかでたった一つの地
域だけ、選んだのか」「神とイエスの2人の神がいるのなら、その上に最
高神がいるはずだ」と、辛辣に批判している。

ケルススはセルサスとしても、知られている。百科事典を編纂したといわ
れるが、このなかの薬科全書だけが遺っており、ヒポクラテスと並ぶ碩学
として称えられてきた。

 キリスト教離れが進んでいる

キリスト教の教義のなかで、もっとも難解なのが、神とその子のイエスと
精霊の3つが1つの存在であるという三位一体であり、教義の基本となっ
ている。

私が親しくしているフランス人のジャーナリストは、もはやキリスト教を
信じていないが、「三位一体はスーパーマーケットで、1つの値段で3つ
買えるというものだ」といって、笑っている。

 フランシス教皇が来日する

この11月に、カトリック教会のフランシス教皇が来日して、長崎、広島を
訪れることになっているが、このところカトリック教会は崩壊の危機に瀕
している。

今世紀に入ってから、カトリック教会では全世界にわたって、枢機卿、大
司教、司教、神父をはじめとして、多くの聖職者が、青少年、女性や、尼
僧に性暴行を加えたかどで告発され、教会の土台が大きく揺ぐようになっ
ている。

教会は性的な紊乱によって蝕まれてきたのを、長いあいだにわたって隠蔽
してきた。

イエス・キリストが「人を獲る漁師」と呼ばれたことから、魚がカトリッ
ク教会のシンボルの1つとなってきたが、在京のイタリアの外交官と教会
の性スキャンダルについて話していたら、「イタリアには『ロ・ソホ・コ
メ・ウンペチェ・ノン・ポソ・パルラーレ』(魚は口をきかない)という
諺(ことわざ)がありますよ」と、教えてくれた。

 エコロジーが新しい信仰だ

フランシス教皇は2013年から“神の代理人”として、カトリック教会の頂点
に立ってきたが、カトリック史上、離婚者の再婚をはじめて容認し、聖書
で固く禁じている同性愛者を祝福するなど、物議をかもしている。フラン
シス教皇はバチカン法王庁教皇補佐役のクリストフ・カラムサ神父と、同
性愛のパートナーとして同棲してきたことを認めたと、欧米で報じられて
いる。

アメリカの大都市部でも、キリスト教離れが進んでおり、人々が自然に神
性を感じるようになっている。宗教にかわって、エコロジーが人々の新し
い信仰となりつつある。

 日本は自国の文化を大切にしよう

宗教、人種間のテロがグローバル化しているかたわら、人が八百万千万
(やおろずちよろず)の森羅万象によって生かされており、自然を敬う日本
の心に当たる、エコロジーが力をえるようになっている。

幕末から明治にかけて、浮世絵を中心としたジャポニズムが、西洋の絵画
芸術、ファッション、庭園、建築などに、深奥な影響を与えた。だが、こ
の時代のジャポニズムは、視覚的なものだった。

だが、いまや万物に霊(アニマ)が宿っている日本のアニメから、自然を食
する和食、武道、茶道、おもてなしの心まで、精神的なジャポニズムが新
たな高波となって、西洋を洗いつつある。

日本国民として、いまこそ自国の文化を大切にしたい。


2019年06月25日

◆昭和天皇 そのご動静と苦悩

加瀬 英明


私は先の大戦の最後の年の昭和20年の元日の夜明けから、対日占領が終
わった1年前にマッカーサー元帥が罷免され離日するまで、昭和天皇のご
動静を、『週刊新潮』に昭和49年5月から50週にわたって連載した。
  
天皇を囲んでいた皇族、政府・軍幹部、侍従、身のまわりをお世話する内
舎人(うどねり)、祭祀を介添えする掌典(しょうてん)、巫女の内掌典など
160人以上に、克明なインタビューを行ったものだった。

空襲が激しくなるなか、天皇が皇居でどのように過されていたのか、徹底
抗戦を叫ぶ軍と、現実との和戦の狭(はざ)間(ま)に立たれて、どのように
苦悩されたか、知られなかった真実があきらかにされたために、大きな反
響を呼んだ。

連載が始まると、海軍軍令部に勤務されていた高松宮殿下が、開戦翌年に
海軍がミッドウェー海戦で主力の機動艦隊を失った直後に、「兄宮」(天
皇)に宛てて、「この戦争に勝てない」と私信を届けられた秘話を伺って
書いたが、殿下がそれまで語られることがなかったので、大きな話題を呼
んだ。

昭和天皇は弟宮と会われても、その職責に無い者の意見を、取り上げられ
なかった。

昭和天皇は私たちとまったく違う時間の尺度を持っておられた。日本を
2000年以上にわたる物差しで、考えておられた。

昭和20年に戻ろう。天皇は軍がまだ勝利を収めることができると、信じら
れていた。

2月に近衛文麿公が拝謁して、「日本は戦争に敗れた。今降伏しないと共
産革命が起る」と上奏すると、「もう一度戦果を挙げたうえでないと難し
いと思う」と、仰言せられた。

天皇は幼少時から、乃木希典大将、東郷平八郎元帥らの薫陶を受けられ
て、軍を信頼されていた。梅津治美郎参謀総長が皇居内の防空舎に連日参
内して、フィリピンにおける戦況を地図をひろげて上奏すると、「それで
大丈夫か。兵站(へいたん)はどうなっておるか」と鋭く指摘されたが、命
令されることはなかった。

硫黄島が失陥し、4月に米軍が沖縄本島に上陸した6日後に、鈴木貫太郎
海軍大将に組閣を命じられた。鈴木は木戸幸一宮内相から陛下が「終戦を
考慮あそばしておられるように拝察する」ときかされた。

天皇皇后は御住まいを兼ねた防空舎の御文庫で、しばしば夜、侍従、侍従
武官、女官などを招かれて、かるたを楽しまれた。侍従武官が「夜ハ謡か
るたノ御相手ニ興ズ。賑ヤカニ遊バサル」と、日記に記している。

天皇は懊悩されていた。「あのあの」とか、「どうもどうも」とよく独り
言をいわれ、朝晩歯ブラシをくわえられたまま、注意申し上げるまで呆然
とされておられた。

5月に木戸と連合国の和平条件について相談され、「和平は早いほうがよ
い。だが、鈴木は講和の条件についてどうも弱い。軍の完全武装解除につ
いて、何とか3000人か5000人残せないか」と仰言られた。木戸が「5000人
残しても、有名無実です」とお答えした。

7月に入ると、天皇は伊勢神宮にある八咫鏡(やたのかがみ)と、熱田神宮
にある草薙剣(くさなぎのつるぎ)が米軍に奪われることを、憂慮された。
三種の神器のもう一つである勾瓊(まがたま)は、皇居にあった。天皇は木
戸に、「万一の場合は、自分がお守りして運命を共にするつもりだ」と、
いわれた。

昭和天皇は、いつ終戦を決意されたのだろうか? 

天皇は前年10月に靖国神社の例大祭に御幸されたのを最後に、東京空襲が
始まったので、皇居から出られなかったが、3月10日に東京大空襲によっ
て10万人が死亡したと推計されると、被災地を視察されたいといわれた。

軍は「一億玉砕」の本土決戦を決めていたから強く反対したが、3月18日
に皇居を出られて、1時間以内に往復できる深川の富岡八幡宮に御幸された。

天皇は神社の境内から四囲の焼け野原を見入られて、「こんなに焼けた
か‥‥」と絶句され、御料車へ促されるようにして戻られた。私は天皇がこ
の時に、終戦を決意されたにちがいないと確信した。だが、私の推測でし
かなかったので、そう書くことができなかった。

富岡八幡宮の大鳥居を潜ると、伊能忠敬の銅像がある。忠敬はここで成功
祈願を行ってから、全国測量の第一歩を踏み出した。

私は忠敬の玄孫(やしゃご)に当たるので、“江戸の三大祭”といわれた富岡
八幡宮の例大祭が江戸時代を通じて、8月15日であることを知っていた。
天皇が終戦を決意され、例大祭の日に大戦が終わったのは、御祭神の神威
によるものだったと考えたが、これもオカルトのようだったので書けな
かった。

天皇はこの後空襲を恐れて、終戦まで皇居の外にお出になられなかった。

8月に終戦を決定した御前会議が開かれ、天皇は「ほかに意見がないよう
だから、わたしの意見を述べる。わたしは国内の事情と世界の情勢を考え
合せたうえで、これ以上、戦争を続けるのは無理だと思う」と仰言せられ
て、御聖断を下された。天皇は白手袋の指先で、頬を伝わる涙をしきりに
拭われた。

天皇は阿南惟幾陸相が号泣しているのを見られて、「阿南、阿南! わた
しには国体を護る自信がある」と叫ばれた。

軍人は天皇と軍が一体だと、信じていた。「特攻隊の父」といわれた大西
滝治郎軍令部次長をはじめ、「天皇は先頭に立たれず、皇居で女官と遊ん
でおられる」と批判する高級軍人がいたが、天皇は日本の最高祭司であら
れて、武家の棟梁ではなかった。

貞明皇太后は御前会議の決定を知られると、かえって「皇室が明治維新の
前に戻るだけのことです」と、毅然としていわれた。

歴史によって蓄えられた天皇の大きな力なしに、昭和20年夏の未曽有の
危機に当たって、大戦を終えることができなかったろう。

(本書は3月に『昭和天皇の苦悩』『昭和天皇の苦闘』に分けて、勉誠出
版新書として復刻された。)


2019年06月09日

◆令和は未曽有の危機の御代だ

加瀬 英明


令和の御代は、日本にとって未曽有の危機をはらんでいる。

トランプ政権はかつて東西冷戦下、レーガン政権がソ連を崩壊させたように
中国の共産体制を倒すことを決意している。米中関税戦争は、その入り口
でしかない。

中国が世界に対する脅威であって、中国を抑えつけようというのはトラン
プ政権だけではない。アメリカ連邦議会の強い意志だ。

中国経済が揺らいで、日本の景気も冷えきろう。10月の消費税増税は凍
結されよう。


令和の御代に、皇室の存続が問われている。日本国憲法が何をいおうと、
天皇こそが国民精神の要(かなめ)となって、日本を日本たらしめてきた。

 天皇なしには日本は、中国や、韓国のような乱れた国となる。天皇が日
本の美徳を代表してきたが、政治家は悪徳を代表してきた。  

 中国、朝鮮は覇者の政治文化だが、自由な選挙で選ばれた首相だって覇
者だ。

 いま、今上陛下を除けば、男性皇族が3人しかおられない。世論調査に
よれば、女性天皇を望む声が、80%を占めている。これまで8人の女性
天皇が10代おいでになられたが、全員が独身か、寡婦だった。

 女性天皇と、女系天皇は違う。女性天皇が配偶者を迎えれば、皇統が
2000年以上も男系で受け継がれてきたが、初代の女系天皇となる。遺
伝子学によれば、DNAは男系によってのみ、受け継ぐことができる。女
系は新しい血統になる。女系は亡国を招く。

 日本は天皇を頂点として戴く、家族国家であることを誇ってきた。日本
を日本たらしめてきた家族制度が、崩壊しつつある。子孫を残すことが家
の目的であったのに、「家」は住宅を意味するだけの言葉となってしまっ
ている。

 社会が物質的に豊かになると、地域共同体や、集団を形造っている固い
絆や、家族の結びつきが弱まって、個人が社会の主人公として、もっとも
大事にされる存在となる。

 私たちは個人が崇められている、まったく新しい社会に生きている。個
人の欲望をみたす金(かね)が、人と人を刹那的(せつなてき)に結んでいる。

 金(かね)には心も、情もない。伝統的な心の絆が力を失うと、家族愛
も、愛国心も失われる。

 かつて企業は、家族といわれた。会社を家族として見なくなったため
に、正社員に替って、使い捨ての不正規労働者が働く場となった。愛社心
も、愛国心も同じことだ。

2019年06月08日

◆皇位の安定的継承へ 皇室典範改正を

加瀬 英明


4月に都内で講演した時に、私は「天皇が日本の美徳を代表されているの
に対して、政治家が悪徳を代表している」といった時に、和田政宗参議院
議員が前列に座っていられるのに気づいて、「ごく少数の政治家を除い
て」と、慌てていい直した。

和田議員はNHKのアナウンサーとして知名度が高いが、皇室の崇敬者と
して、天皇を戴く日本の国柄を守るために、国政の場で先頭に立ってこら
れた。7月の参院選挙の改選に当たって、全国区から立候補されている。
和田先生にぜひ投票していただきたい。

天皇は2000年以上にわたって、日本の文化の原型を守ってくださってこら
れた。天皇は美徳を代表されてこられたからこそ、日本の民族意識のもっ
とも底にある要(かなめ)になってきた。

日本国憲法は、天皇の地位が「主権の存する国民の総意に基く」と規定し
ているが、まさか、いま生きている国民だけを意味していまい。日本が開
闢してから生きてきた、日本国民全員の総意に基くと、解釈すべきである。

世界に200あまりの国があるが、元首の家系が万世一系といわれて、226代
にわたって辿(たど)れる国は他にない。

令和という元号が示すように、日本は天皇のもとで、国民の和を保ってき
た。私たちは天皇がいない日本を想像することが、まったくできない。

外国の王朝の出自はみな、覇者である。自由な選挙によって選ばれた首相
も、覇者であることに変わりがない。天皇がいなければ、日本はまったく
違った国となってしまおう。

天皇、あるいは皇室のありかたが、その時代にあわせて変わってゆかねば
ならない、という声がある。

「開かれた皇室が望ましい」とか、「皇室は国民のあいだに融け込む努力
をするべきだ」という。そのなかで「庶民的なプリンス」とか、「庶民的
なプリンセス」が人気を博する。

だが、皇室を平民社会、大衆社会のなかに吸収させてしまって、よいもの
か。日本という国が現われてから、天皇家が変わることなく、文化の原型
を守ってこられたからこそ敬われ、今日まで続いているのではないか。

皇室の人気を芸能人の人気と、同じように考えてはなるまい。芸能人の人
気は上がったり、下ったりする。

天皇家は日本と世界の幸せを真摯に祈られる宮中祭祀を守られ、徳の手本
として存在してくださっているから有難い。

平成最後の年の4月に、天皇皇后両陛下が伊勢神宮に行幸啓された。テレ
ビで拝したが、沿道を埋めた群衆のなかの中年の女性が、記者の質問に答
えて、「もったいない」と語ったのが、国民感情を現わしていると思う。

私は皇嗣殿下となられた秋篠宮殿下が、平成元年に礼宮であられたが、昭
和天皇の諒闇(りょうあん)中に婚約された時に、皇室の将来について深い
不安をいだいた。まだ、兄宮の御婚約が決まっていなかった。一般の家庭
でも喪があけていないのに、急いで祝い事を決めないものだ。秋篠宮家の
お二人の内親王殿下の奔放なお振舞いや、「一個人として」というご発言
も、皇室のありかたにそぐわない。

秋篠宮家の悠仁親王殿下が、皇位継承者第2位となられた。このままゆく
と、悠仁親王がお一人だけになって、お世継が絶えて、皇統を維持するこ
とが危ふくなる。
 
先週、私の小学校の同級生のM君から、手紙を貰った。

「天皇家の将来を考えると、心配です。このままでは先細りになって、絶
滅危惧種です。皇統の男子を残り少ない宮家の養子とするよう、皇室典範
を改めるべきです。このままでは、全ての宮家が消滅してしまいます」

まったく同感である。占領下で臣籍降下を強いられた旧宮家の男子を、皇
籍に迎えるべきである。

どのような社会も、その国の伝統文化によって、支えられている。



2019年05月22日

◆自衛隊機事故で得た違和感

加瀬 英明



自衛隊機事故で得た違和感 憲法に自衛隊を書き込むべきだ

4月に、わが航空自衛隊の最新ステルス型F35戦闘機が、三沢基地から
訓練飛行中に、青森県の日本海沖合で墜落する事故があった。

はじめの報道では、パイロットが40代の2佐(国際的呼称では中佐)とい
うことだった。尾翼が発見され、殉職した隊員が41歳の操縦幹部で、姓名
が公表された。

最新鋭の戦闘機パイロットが40代だったのは、自衛隊員の高齢化が進んで
いるからだ。

高齢化が、陸海空3自衛隊を蝕んでいる。

列国のジェット戦闘機のパイロットは、30代で引退するものだ。

若者が自衛隊に応募しないために、自衛隊は定員に満たず、陸上自衛隊を
とれば15万人の定員に対して、13万人しかいない。中隊長は旧軍では20代
か、30代だったが、陸上自衛隊では定年直前の48、9歳が、珍しくない。

高齢化は、深刻だ。3自衛隊を年齢の樹に見立てると、幹部(国際的呼称
では将校)、曹(下士官)、士(兵)のうち、曹ばかり異常に多いため
に、腹が突き出して、体を支えるべき脚が細い。

このために、自衛隊は応募の年限が28歳だったのを、昨年から32歳に引き
上げるかたわら、体重の制限も外した。

 それと並んで、防衛省は女性自衛官を増すことによって、補おうとして
いる。

 大手の保険会社が毎年行っている、青少年が憧れている職業の調査によ
ると、警察官は入っていても、自衛官が入ったことが一度もない。国民の
国防意識が弛緩しているのだ。

 私はF35戦闘機が洋上で遭難した直後に、三沢市の種市一正市長が搭
乗員の安否を気づかうことも、殉職に哀悼の意を表することもまったくな
く、陸地における墜落の危険のみを危惧して、飛行再開に反対したことに
唖然とした。

 これも、憲法に自衛隊が書き込まれていないからだ。

 もし、国軍であったとしたら、市長が国民の一人として、このような非
礼を働くことができただろうか。

 岩屋防衛大臣が、今回の訓練中の事故について陳謝したが、陳謝する必
要があったのだろうか。広報として必要であるならば、大臣ではなく、航
空幕僚長か、制服の幹部が行えばよいことだ。

 日本を取り巻く国際環境が厳しいものとなっている時に、自衛隊を鵺
(ぬえ)のような存在にしたままでいることは、許されない。鵺は伝説上の
正体不明の怪獣である。

 政府は「自衛隊は軍ではない」という詭弁を、いまだに改めないでいる
が、国民全員が自衛隊という呼称自体が欺瞞であることを、よく知ってい
よう。

 江戸時代に、禁酒を強いられていた僧侶が、般若場といって誤魔化し、
四つ足を食べてはならなかったので、猪を山鯨と呼んで、兎を鳥だという
ことにして、いまでも1羽2羽と数えるようなものだ。

 自衛隊の存在を認めたうえで、応援している国民の大多数が、「普通
科」(歩兵)「特科」(砲兵)「対地支援機」(攻撃機)「運用」(作
戦)をはじめとする、謎めいた“自衛隊特殊語”を、理解できないでいる。

 いうまでもないことだが、自衛隊と国民、軍と国民は一体でなければな
らない。

 一日も早く、継子(ままこ)となっている自衛隊を憲法に書き込み、国民
の実子にしなければならない。


2019年05月11日

◆「令和」の御代にこそ憲法改正を期する

                         加瀬 英明


早春に80代の親しい婦人の夫君が、長い闘病生活の後に亡くなった。医師
だったが、歌人でもあった。

私は悲嘆に暮れる夫人に、万葉集の一首の「行く方なき空の煙となりぬと
も 思ふあたりを立ちは離れじ」を手渡して、慰めた。私は万葉集に親し
んできた。皇子が恋した娘に先き立たれて、口ずさんだ歌である。

4月1日に、新しい元号が発表された。万葉集が出典だった。私は日本の
歴史ではじめて、元号を中国の漢籍ではなく、国書から採ったことを、何
よりも喜んだ。

明治は文明開化とともに、日本化の時代だった。天皇は江戸時代が終わる
まで、即位礼に真紅の大袖に龍の縫い取りがある中国服を、召されたもの
だった。

平成が20年ぶりの御譲位によって、終わる。私は平成を占領下で強いられ
た憲法を、改められなかったことによって記憶しよう。

私は今上陛下が3年前の8月8日に、テレビを通じてお言葉を読まれたの
を、謹聴した。

ご高齢によってお疲れになられたから、譲位したいと訴えられた。

私は月刊『WiLL』誌に、「これは天皇によるクーデターだった。明治
天皇によって定められ、現憲法下で継承されている皇室典範は、天皇の譲
位を認めていない。お言葉のなかで、皇室典範が定めている摂政制度を斥
けられたが、天皇が法を改めるよう要求されることは、あってはならな
い」と、寄稿した。

NHK社会部の記者がインタビューにきたが、私は「天皇のお言葉は憲法
違反だったのに、どうして護憲を日頃説くNHKが、憲法違反のお言葉を
放送したのか」とたずねたが、答がなかった。

私は現行憲法を国際法に違反した、正統性の無い「偽憲法」と呼んできた。

現憲法には、多くの重大な瑕疵(かし)がある。なかでも、天皇を「象徴」
として、国民より下に置いているのは、日本が歴史を通じて守ってきた伝
統を歪めている。

国会は一昨年6月に日本共産党を含む全会一致で、「天皇退位などに関す
る皇室典範特例法」を可決した。国会が天皇が現憲法の上にあることを、
認めたのだった。譲位を「退位」と呼んだのは、天皇の御意志によって譲
位されると、憲法に違反したからだった。

今上天皇は英邁であられる。8月8日のお言葉によって、「象徴天皇制」
を一撃で破壊されたのだった。

陛下は聡明であられるから、その後、お言葉のなかで護憲派の反発を招い
て、国論が割れないように、「象徴天皇としてのありかた」に、頻繁にお
触れになられている。

占領憲法に罅(ひび)が入ったのだった。令和の御代に憲法が改正すること
を、強く期待したい。

今日、天皇は身近なご相談相手を欠いておられる。天皇は日本の要(かな
め)であられるのに、皇居で孤立されている。

旧憲法下では、内大臣が宮内官として側近にあって、日常意見を求められ
たし、総理大臣以下閣僚や、軍幹部が頻繁に参内して拝謁した。

ところが、宮内庁長官と侍従長は、全員が皇室の伝統についてほとんど無
知である。

11月に皇居において、天皇を天皇たらしめる大嘗祭が、執り行われる。

古来から大嘗祭のために建てられ、すぐに撤去される大嘗宮の仮宮は、青
い茅(かや)で葺(ふ)かれてきた。ところが、皇族のお1人が経費を節減す
るために板張りすべきだと、意見を述べられた。伝統についてご勉強が足
りないと、お諫め申し上げねばならない。

積水ハウスか、タマホームの建て売り住宅風では、伝統の尊厳を損ねてし
まう。

会計検査院によれば、3兆円が来年の東京オリンピックに投じられる。皇
室あっての日本だが、オリンピックを催さなくても、日本は日本だ。


2019年04月26日

◆グラムシの予言に慄然 衰弱する愛国心

加瀬 英明


アメリカ鷲と中国龍が、アジア太平洋の未来を賭けて争っている。

かつての米ソ間の冷戦になぞらえて、「第2の冷戦」といわれている。

といって、自由主義対共産主義の抗争ではない。

今日の中国は毛沢東時代と違って、共産主義と呼べない。

中国共産党による専制下にあるが、習近平主席の中国は「5000年の偉大な
中華文明の復興」を呼号しており、独裁制とナショナリズムである中華主
義が結びついている。

習主席の中国は、春秋時代(紀元前722年〜前481年)に生きた孔子を称え
ているが、「5000年の中華文明」は19世紀に生まれた共産主義と、まった
く無縁なものだ。

そのかたわら、豊かな先進自由諸国ではグローバリズムによって愛国心が
蝕まれて、ナショナリズムが衰弱するようになっている。

共産主義の脅威はもはや暴力革命や、一党独裁によるものではなく、伝統
社会と国家を破壊しつつあるグローバリズムとなって、私たちを襲っている。

昨秋ワシントンを訪れた時に、アントニオ・グラムシ(1891年〜1937年)
の著作集を求めて、久し振りに読んだ。読みなおすと、この異端で鬼才
だった共産主義者による予言が当たっていることに、慄然とした。

グラムシといえば、日本で2960年代から70年代にかけて、新左翼の青年た
ちによってひろく読まれたものだった。

グラムシはイタリア共産党のイデオローグとしてグローバリストであり、
「ヘゲモニー(指導)装置」と呼ぶ「国家の消滅」を目標としたが、階級
闘争によって歴史の必然として革命が成就して、共産社会が実現するとい
うマルキシズムの理論を否定して、第2次大戦前に、粗暴で権威主義だと
みたロシア(ソ連、中国、北朝鮮など)モデルの社会主義体制が、瓦解す
ることを予見していた。

グラムシは先進国において科学技術が進み、豊かさが増した結果、上部構
造に従属してきた社会集団が分解して、ヘゲモニーが理論も、革命への自
覚も欠き、まったく組織されることがない一般の人々に移ることによっ
て、国家が消滅してゆくことを、見透した。

伝統が培った生活慣習を、「歴史的堆積物」と呼んで、滓(おり)とみなし
た。人々が在来文化の鎖に繋がれてきたが、古い鎖が溶解してゆくと説いた。

グラムシは個人に何よりも高い価値が与えられることによって、慣習に
よって束縛されてきた従属社会集団が、解体することを予見した。

私たちの身の回りでも、社会を統べてきた人と人のあいだの絆や、日常用
いられてきた言葉に託されてきた意味や、伝統的な儀礼などの慣習が、
人々を束ねてきた機能を急速に失うようになっている。

 年を追うごとに、新年が新年らしくなくなっている。一つの例にしかす
ぎない。日本が日本らしくなくなっているのだ。

 人も企業も、全世界に通用する金(かね)を崇めるようになっている。金
(かね)はグローバリズムそのものだ。

人々はつい昨日まで、先人から受け継いできた社会の伝統文化や、徳目を
尊んできたが、精神的に無国籍な若者や、LGBTなど、個人が聖なる存
在となったために、私たちのすぐ目の前に無政府状態がある。

2019年04月12日

◆「制裁継続」を決めたトランプの腹の内

加瀬 英明


2月末、8ヶ月ぶりにハノイで開かれた、鳴り物入りの米朝首脳会談が終
わった。

前日、私は都内の帝国ホテルで経営者団体に招かれて、講演を行った。

私は「もし予想が外れたとしたら、もう一度お招き下さって、なぜ予想が
外れたのか、詳しくお話したいと思います。北朝鮮が核兵器を手放すこと
はありえない。明日から始まる米朝サミットは、成果がなく終わるでしよ
う」と、述べた。

 米朝首脳会談の寸前まで、テレビにさまざまな専門家が登場して、アメ
リカのカードはこうだ、北朝鮮のカードは何だといって、米朝間で取り引
きが行われることを、まことしやかに論じていた。こういった番組は
ニュース番組ではなく、物見高い視聴者を満足させるエンタテインメント
なのだから、おもしろおかしくなるのは仕方がない。

 2日にわたった米朝首脳会談が終わった直後に、先の経営者団体の会長
が電話で「よく適中しましたね」といって、誉めてくれた。
 
 私は金正恩委員長がトランプ大統領と再会して握手する時には、掌(て
のひら)を垂直にださずに、水平に差し出すことになるはずだ、といっ
た。一刻も早く制裁を解除して、お金が欲しいと急(せ)いたあまり、トラ
ンプ大統領が呑めない要求を行うことになるだろうと考えた。

 米朝首脳会談が物別れだったのは、上首尾だった。トランプ大統領の技
が、1本決まった。

 トランプ大統領は会談後、金委員長を「よい友人だ」と誉めそやした
が、金委員長に何1つ土産を渡すことがなかった。今後、アメリカは北朝
鮮に対する経済制裁を、いささかも緩めることがないから、金委員長の苦
難が深まることになる。

 金委員長はハノイでしくじった。これには、親北・反日の文在寅韓国大
統領が南北融和を焦って、金委員長にアメリカが北朝鮮に譲ることになる
という、甘い期待をいだかせた責任が大きい。文大統領にとって大きな挫
折だ。

 それにしても、トランプ大統領はニューヨークのマンハッタンで不動産
業で財をなした父の子として、少年時代からマフィアや、建築業界の労働
組合の幹部たちとつきあっていたから、相手を微笑を浮べて、誉めながら
脅すのに長(た)けている。アメリカの建設業界の労働幹部は、マフィアに
よく似ていることで知られる。

 私はシンガポールにおいて第1回米朝首脳会談が行われた前から、北朝
鮮が核兵器を捨てることはありえないと、説いてきた。核兵器なしには北
朝鮮は経済が破綻した、みじめな小国にしかすぎない。アメリカの大統領
と会談できるのも、核兵器の効用である。

 仮に北朝鮮が「非核化」を受け入れたとしても、核弾頭の所在や、核施
設を「自己申告」することになっているから、隠すことができる。北朝鮮
が無条件降伏をしないかぎり、北朝鮮全土を隈なく捜すことはできない。

 北朝鮮はアメリカと話し合っているかぎり、核実験や、ミサイルの試射
を行うことができない。これはトランプ大統領の大きな功績だ。

 それにしても、金正恩委員長は、トランプ大統領が“ロシア疑惑”によっ
て追い詰められ、来年の大統領選挙へ向けて功名をたてることを焦ってい
るという、アメリカのマスコミの報道によって騙されたのではないか。

 アメリカの主要なマスコミはこの前の大統領選挙で、ヒラリー候補を支
持して惨敗したために、日本のマスコミが「反安倍」であるように、反ト
ランプ報道に血道をあげている。

 “ロシア疑惑”がトランプ政権の致命傷となることはありえないし、トラ
ンプ大統領の支持率はかえってあがっている。

 北朝鮮の金体制が崩壊しないかぎり、北朝鮮の脅威は去らない。日本
は、中国の脅威にも、備えなければならない。
日本として米朝の話合いが続くあいだ、防衛力の強化を急ぐべきである。


2019年03月06日

◆「専守防衛」ほど無意味なものはない

加瀬 英明


日本は世界のなかで、自国の憲法が安全保障の最大の脅威となっている、
唯一つの国だ。

憲法はその国の精神を、表わしている。

前文が、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにす
る」と述べて、日本だけに先の大戦の全責任を、一方的に負わせて、日本
が悪い国だときめつけている。

この憲法のもとで、日本は自虐的な態度をとってきたために、国外から軽
くみられ、虐げられる原因をつくってきた。

前文はさらに、一国の安全を世界の「諸国の公正と信頼して、われらの安
全と生存を保持」すると、宣言している。

日本国憲法が世界の現実を歪めてきたために、国民が危険な幻想に浸って
きた。

日本は人にたとえれば、幻視、幻聴を病んできたために、人格が崩壊し
て、正常な社会的関係を結ぶことができない統合失調症を患っている。

このところ、韓国が日本を好き放題に嬲(なぶ)っているために、日本で嫌
韓感情が沸騰している。 

書店に嫌韓本が並び、雑誌も韓国に呆れ果てて、韓国を憐れむ記事で埋
まっている。

慰安婦(ウイアンプ)など両国間の合意を踏み躙ったうえで、徴用工(ジン
ヨンゴン)、火器管制レーダーの照射問題など、常軌を逸した振舞いがと
まらない。

韓国は現実を無視して妄想にとらわれているから、とうてい国家と呼べな
い。日本中が韓国を疫病のように、みるようになっている。

韓国は国として体をなしていない。政府もどう対応したらよいか、途方に
暮れている。

だが、いったい日本に韓国を見下したり、嘲る資格があるものだろうか。

昨年、政府が3万トン級の“いずも型”ヘリコプター搭載護衛艦を空母に改
装して、F35Bステルス戦闘機を搭載すると発表すると、岩屋防衛相が
「状況に応じて戦闘機を載せるから、他国への脅威とはならない」と述
べ、自公与党が「専守防衛の枠内で運用する」という確認書を交換した。

だが、危機が迫ってから、艦載機を載せるのでは、訓練や運用に支障はな
いのだろうか。

テレビのワイドショーで、識者が真顔をして「攻撃空母を保有するのは、
憲法違反だ」と述べていたが、番組の他の出演者は誰も非常識な発言だ
と、思わなかった。多くの視聴者も同じことだったろう。

中国の国防支出は中国政府の発表によっても、1988年以後、毎年2桁で増
して、日本の10倍以上もあり、アメリカにつぐ軍事大国となっている。
 
私には“いずも級”護衛艦を、F35B戦闘機を8機か、10機搭載する小型空
母に改装しても、どうして中国に脅威を与えることになるのか、理解でき
ない。

「専守防衛」という言葉は、日本国憲法と同じように、日本の国内にだけ
通用して、外国語に訳することが、まったくできない。「専守」という概
念自体が、世界のどこにも存在していない、無意味な言葉だ。

日本語でも、具体的に何を意味しているのか、分からない。

いったい「専守に徹する」スポーツ競技が、あるものだろうか。読者諸賢
のなかで、説明できる方がいられるだろうか。「必要最小限の防衛力」
も、意味がない言葉だ。

日本の独立と国民の生命を、わけが分からない言葉に託して、よいはずが
ない。

 人体の健康と同じように、平和は努力して守らねばならない。平和を守
る努力をしないのでは、平和を大切にしているといえない。


2019年02月24日

◆安全保障の脅威は日本国憲法

加瀬 英明


安全保障の脅威は日本国憲法 「専守防衛」は日本だけが使う言葉

韓国の文在寅政権が日本を好きなように嬲(なぶ)っているのに対して、日
本で嫌韓感情が沸騰している。

書店に嫌韓本が並び、雑誌も韓国に呆れ果てて、韓国を憐れむ記事で埋
まっている。

慰安婦(ウイアンプ)をめぐる合意を踏み躙ったうえで、徴用工(ジンヨン
ゴン)、火器管制レーダーの照射問題に続いて、文大統領が日本に「反省
(パンソン)を求める」発言を行い、常軌を逸した振舞いがとまらない。

韓国は現実に目をつむって、妄想にとらわれている。とうてい国家と呼べ
ない。

日本中が韓国を疫病のようにみなすようになっている。政府もどう対応し
たらよいか、途方に暮れている。つける薬がないのだ。

韓国は頭痛の種だ。といっても、日韓関係を軋(きし)ませた責任は、慰安
婦問題をつくりだした朝日新聞と、故なく謝罪した河野洋平官房長官(当
時)など、韓国に対して毅然たる態度をとるべきところを、紙面を売るた
めにニュースを捏造したり、侮られるもとをつくった日本側にある。

日本は自虐的な態度をとってきたために、は国外から軽くみられて、虐げ
られる原因をつくってきた。

韓国は歴史を通じて中国の属国(ソグク)だったために、物事を自主的に決
める力がなく、強い者に諂うかたわら、弱い者に対して居丈高になって、
苛める習性がある。

韓国は国として体をなしていない。このままでは、国として成り立ってゆ
かないだろう。

憐れむべき国だ。だが、いったい日本に韓国を見下したり、嘲る資格があ
るものだろうかと思う。

昨年、政府が3万トン級の“いずも型”ヘリコプター搭載護衛艦を空母に改
装して、F35Bステルス戦闘機を搭載すると発表したが、自公与党が「専
守防衛の枠内で運用する」という確認書を交換した。

テレビで識者が真顔をして、「攻撃空母を保有するのは、憲法違反だ」と
述べていたが、番組の他の出演者は、誰も非常識な発言だと思わなかっ
た。多くの視聴者も、同じことだったにちがいない。

中国の国防支出は中国政府の発表によっても、1988年以後、毎年2桁で増
して、日本の10倍以上もあり、アメリカにつぐ軍事力を擁している。

私には、“いずも級”護衛艦を、F35B戦闘機を8機か、10機搭載する小
型空母に改装しても、どうして中国に脅威を与えることになるのか、理解
することができない。

「専守防衛」という言葉は、日本の国内だけで通用して、外国語に訳する
ことがまったくできない。「専守」という概念自体が、世界のどこにも存
在していない、意味がない言葉だ。

いったい、「専守する」スポーツ競技があるものだろうか。「必要最小限
の防衛力」といっても、武芸や、スポーツに適用できるだろうか。

一国の安全を「諸国の公正に信頼して、われらの安全と生存を保持」する
という日本国憲法からして、世界の現実を受けいれることを拒んで、妄想
に浸っている。

日本は人にたとえれば、幻視、幻聴を病んでいるために、人格が崩壊し
て、正常な社会的な関係を結べない、統合失調症を患っている。

日本は自国の憲法が安全保障の最大の脅威となっている、唯一つの国だ。