2018年12月05日

◆銀座の酒場の扉は真如の門

加瀬英明


この夏は世界的な気象変動のせいだろうが、ことのほかに暑かった。

暑き日を海に入れたり最上川という、芭蕉の句がふと浮んだが、現代のよ
うに冷房がどこへいっても普及していたら、蕉門でいう風雅な詩興が涌く
はずがないと思って落肝した。

だが、空に神鳴(かみなり)が轟くと、時がまた秋を運んできてくれる。

秋が到来して、たおやめが新米を噛む醸成月(かみなしづき)が巡ってくる
たびに、男たちを釣る漁火(ネオン)に誘(いざな)われて、彷徨(ほうこう)
することになる。

今年は、秋が待たれた。「いとど心づくしの秋風」という一節が、『源氏
物語』(須磨)にあるが、身に沁みる。到来というと到来物のように、贈
られてきたいただきものを意味している。「いとど」は、いよいよだ。

私は20代から、同(おな)い年の文芸春秋社の堤堯氏、講談社の川鍋孝文氏
と3人で、銀座の『眉』『エスポァール』『ラモール』『姫』など一流の
酒場(クラブ)に、よく通ったものだった。

しばらく前に、ナベちゃんは私たちに断ることなく途中下車して、故人に
なってしまった。

あのころは、雑誌社や物書きには“学割”があった。

私が月刊『文芸春秋』に、評論家の肩書をはじめて貰って書くようになっ
たのは、26歳の時で、堤氏が担当してくれた。

堤氏とは2年前まで、DHCテレビで対談番組を持っていた。高嗤(たか
わら)いするのがトレードマークだが、もし、悪事を働いて手配されたと
したら、もっとも大きな特徴としてあげられることだろう。

月日がたつのは早く、堤氏も私もいつの間にか、八十路(やそじ)に迷い込
んでしまった。

12月に、82歳の誕生日がまわってくるが、万年少年なのか、成育不全なの
か、実感がともなわない。

古人が、自分はまだ若いと思っていても、少年老い易くといって、すぐに
齢(よわい)を重ねてしまうから、一寸の光陰を軽んずことなく、寸刻を惜
しんで遊ばなければならないと戒めているのを、もっと心に刻んで生きる
べきだったと悔いてみても、もう遅いのだろうか。

それでも酒量とともに、体力が落ちていることを、認めなければならない。

若い時には、若さを乗り越えようと努めたが、老いると老いに克とうとす
るから、生きているかぎり、克己の戦いが続いてゆくのだろう。

もっとも、舌耕(ぜっこう)や筆耕(ひっこう)によって、乞食者(ほがいび
と)のように生計を立てているから、猫がじゃらされているように、刻々
と目先が忙(せわ)しく変わってゆくために、俗世を離れて、年金生活を享
受しながら、欲するままに心静かに、悠悠自適の境涯を楽しむ暇(いとま)
がない。

昨年、北海道のいまでは町になっている寒村にある、由緒ある神社の創建
120年の式典に招かれて、神道について短い講話を行った。周辺の都市
や、町村から、モーニングか、黒の上下の背広に、白、銀ネクタイ姿の地
元の名士たちが集っていた。

式典のあとの直会(なおらい)で、私から1人おいて座った80代なかばとい
う来賓の1人が、「倅(せがれ)に会社を譲って、“飲む、打つ、買う”の
日々ですよ」と自慢するので、「へえ、お元気ですねえ」と驚いたら、
「3食ごとに薬を飲みます。病院へ行って注射を打ちます。テレビのCM
でサプリの広告に釣られて、女房か、私が買います」と、答えた。

今年は、3冊の著書が上梓(じょうし)された。といっても、1冊は以前の
著書が文庫版に化けたのと、2冊は対談本だ。年末までに、もう1冊加わ
ることになっている。もっとも、昨年は七冊続けてでたが、ほとんどが古
い本の復刻版だった。

銀座の酒肆(しゅし)に戻ろう。友人と何年か振りで、馴染みの店を覗いた。

こんな時には、仏教の唯識派(ゆいしきは)の用語で阿頼耶識(あらやしき)
というが、忘れたはずの過去の行いが潜在意識として、体のなかにしっか
りと刻まれていることを、あらためて覚らされる。

脂粉の香が漂ってくると小さな店が、雄花と雌花が咲き乱れる花園に変わる。

いや、雄蕊(おしべ)と雌蕊(めしべ)というべきだろう。植物学によると、
雌蕊のほうが受精器官だ。まさに、愛染曼荼羅(あいぜんまんだら)の立体
版だ。

愛染明王は愛欲煩悩がそのまま、悟りになるという、釈尊の有難い教えだ
から、酒肆(クラブ)の扉は、これから伽藍に入る、真如(しんにょ)の門な
のだろう。

唯識派によれば、あらゆる存在は識、すなわち心にすぎない。眼識、耳
識、鼻識、舌識、身識の五感は、心そのものだ。

真如も仏教語であって、真理をいうが、阿頼耶識も、愛染明王も、唯識
も、修業、伽藍も、もとはすべて、インドのヒンズー古語の梵語(サンス
クリット)だ。

 もう一つ刹那(せつな)も、サンスクリットからきた言葉だが、人生は刹
那――指でひと弾(はじ)きする短い時間――刹那を大切にして、充実させなけ
ればならない。

 店を久し振りに訪れたから、私にとって新顔だった20代だという、ホ
ステスが隣に座った。もう銀座の濁流か、清水に馴染んでいようが、サ
ン・ローランか、グッチの法衣(ドレス)に身を包んでいた。

 軽口をたたいていたら、「おいくつですか?」とたずねるので、私が一
瞬怯んだら、「男女は恋人になったら、同じ歳です」と、切り返された。
励ましてくれる、利発な娘(こ)もいるものだと、感心した。

 男女関係は、異文化交流だから難しい。山本有三先生が、「結婚は雪げ
しきのようなもので、はじめはきれいだが、やがて雪解けして泥濘(ぬか
るみ)になる」と、告白されている。

 そこへゆくと、中島兄貴(あにい)はいつだって姐さんと睦まじい。きっ
と、姐さんを神々が降りてこられて宿られる依代(よりしろ)のように、大
切にされているにちがいない。
(中島繁治氏は日大OB誌『熟年ニュース』主宰者)


2018年12月02日

◆ペリー浦賀来寇から僅か15年で

加瀬 英明


ペリー浦賀来寇から僅か15年で明治元年となった

アメリカ、ヨーロッパにおいて、かつて日本文化への関心がこれほど高
まったことはない。

私は昭和40(1965)年に、東京放送(TBS)が出資して、『エンサイク
ロペディア・ブリタニカ』(大英百科事典)の最初の外国語版の『ブリタ
ニカ国際大百科事典』(全21巻)を編集して出版した時に、初代の編集長
をつとめた。29歳だった。

編集の最盛期には、翻訳、縮訳と、新しい項目をつくるために、200人以
上が携わった。当時、もとのブリタニカ百科事典といえば、欧米を世界の
中心としていたから、額田王(ぬかたのおおきみ)、和泉式部も、義経も、
二宮尊徳も、平田篤胤も、日本で自動車をつくっていることも、載ってい
なかった。そこで、日本とアジアの新しい項目を、加えなければならな
かった。

“日本の時代”が目前にある

今日の世界をあの時と較べると、隔世という言葉が当て嵌まる。私はアメ
リカの大学に留学したが、アメリカ国民の日本への関心は低いものだっ
た。大多数のアメリカ人にとって、日本と中国と朝鮮の区別がつかなかった。

この半世紀あまりに、日本国民の営々たる努力によって、世界における日
本の存在が、あのころには想像できなかったほど、大きなものに変わっ
た。当時を振り返えると、感慨深い。

今年は、明治維新150周年に当たる。年表をみると、ペリー提督が率いる
黒船艦隊が浦賀に来寇したのが、嘉永6(1853)年だった。日本は僅かそ
の15年後に、「御一新」と呼ばれる明治維新を行うことによって、明治
元年を迎えた。

『オランダ風説書』は世界への窓だった

イギリスが中国に阿片戦争を仕掛けたのが、天保10(1840)年だったが、
ペリーが来冠する13年前のことだった。

幕府も諸藩も、長崎に入港するオランダ船から入手した、海外の最新の情
報をまとめた『オランダ風説書』によって、詳細な情報を手に入れていた。

ペリー艦隊が搭載していた砲の射程が、3500メートルもあるのに対して、
わが砲は家康の時代から変わっておらず、射程が4、500メートルしかな
く、日本の古い砲が火玉しか発射することができないのに、ペリーの砲身
のなかに螺旋が施されて、威力がある炸裂弾を撃つことも知っていた。

阿片戦争から明治元年までの28年間を振り返ると、戦後の日本の目覚まし
い経済復興をもたらした、驚嘆に価いするエネルギーをみる思いがする。

島崎藤村の『夜明け前』といえば、幕末の木曽路の宿場町の生活を、克明
に描いた長編小説だ。

山深い木曽路にある宿場が舞台となっており、庄屋の青年である青山半蔵
が主人公である。半蔵は家業に励しむかたわら、賀茂真淵(かものまぶ
ち)、本居宣長(もとおりのりなが)、平田篤胤(ひらたあつたね)をはじめ
とする江戸時代の国学者の著作を学んで、日本の行く末を真剣に憂いていた。

『夜明け前』を読むと、幕末の日本をよく理解することができる。あの時
の日本には、半蔵のような青年が、全国のどこにでも存在していた。江戸
時代に入って生まれた国学と、半蔵のような国民が、未曽有の国難に見舞
われた日本を救ったのだった。

天皇家が日本を守った

だが、あの時の日本を護ったのは、天皇の存在だった。

もし、幕末に天皇家が存在しておらず、徳川家しかなかったとしたら、日
本は洋夷に対してまとまって団結することがなく、独立を全うできなかっ
たはずだ。

来年4月に、平成が31年で終わる。このあいだに、中国、北朝鮮からの脅
威が募るなど、日本を取り巻く国際環境が、いやおうなしに緊迫するよう
になった。平成のこれまでの30年は、阿片戦争から明治元年までの28年
より長い。

それにもかかわらず、日本はこの30年のあいだ、泰平の深い眠りから醒
めずに、72年前にアメリカの占領軍が、銃剣を突きつけることによって強
要した『日本国憲法』を改めることができずに、眠り続けてきた。いまだ
に護憲派が強い力を持っている。

幕末には、どこにでも青山半蔵のような国民がいたというのに、どうして
国を守る気概気力を失って、腑甲斐ない国になってしまったのだろうか。

アメリカの軍事保護による一国平和主義

アメリカによって与えられた「新憲法」のもとで、日本は徳川期の一国平
和主義――鎖国の繭(まゆ)のなかに、ふたたび閉じ籠ってしまった。

国際環境がいっそう厳しさを増してゆくなかで、一国平和主義の繭(まゆ)
を一日も早く破って、成虫になって羽搏(はばた)かなければ、この国が亡
びてしまおう。

明治維新150周年を、ただ祝うだけであってはならない。

日本は150年前に世界の現実に適応することによって、独立を守ることが
できたのだった。

いま、安倍政権がようやく現行憲法のごく一部を改正しようと、眦(まな
じり)を決して乗り出した。  

アメリカは日本占領が始めた翌年に、日本を未来永劫にわたって自立でき
ない国に変えるために、『日本国憲法』を強要したのだった。

現憲法の改正ではなく、修正を

憲法第95条で、「改正」という言葉を用いているから仕方がないが、私は
親しい国会議員に、改正を呼び掛ける時に「改正」ではなく、「修正」と
いう言葉を使ってほしいと訴えている。「改正」というと、現行憲法を全
面的に書き改めようとしている、誤解を与える。

いま、日本が直面する国際環境が、きわめて困難なものとなっているため
に、憲法のごく一部だけを修正することが、求められている。「修正」と
いったほうが、多くの国民の理解をえられると思う。

このかたわら、このところ日本文化への共感が全世界にわたって、ひろま
るようになっている。

幕末から明治にかけて、ジャポニズムと呼ばれたが、浮世絵を中心にして
日本の美術がヨーロッパ、アメリカの芸術に大きな影響をおよぼした。日
本文化に関心が集まるのは、それ以来のことだ。

だが、かつてのジャポニズムが、視覚に限られていたのに対して、今回の
日本文化の高波は、食文化から精神のありかたにまでわたっており、はる
かに深いものがある。

和食の流行は、和食が自然と一体になっていることから、健康志向によっ
て支えられているが、日本が発明したスマートフォンのエモジや、ポケモ
ンなどのアニメが世界を風靡しているのは、万物に霊(アニマ)が宿ってい
るという、日本の八百万千万(やおろずちょろず)の神々信仰にもとずいて
いる。いま、西洋では独善的な一神教が、揺らぐようになっている。

この3、40年あまり、西洋においても自然と共生するエコロジーが、人類
を守り、救うと信じられるようになっているが、エコロジーこそ神道の心
である。

 在日外交団長と対談「神道が世界を救う」

 マンリオ・カデロ・サンマリノ共和国駐日大使は、在日外交団長をつと
めているが、神道に魅せられて、これまで全国にわたって100近い神社
を参拝してきた。大使は和を重んじ、自然を敬う神道の心こそが、抗争と
流血が絶えることがない世界を救うことになると、信じている。

 私はカデロ大使と、『神道が世界を救う』(勉誠出版新書)という対談
本を、9月に刊行した。

 日本には150ヶ国以上の外国大使が駐箚(ちゅうさつ)しているが、
20人あまりの大使が日本語に堪能だ。日本語ができる大使や、日本に在
住する外国人からこの対談本によって、日本人をつくっている文化と、日
本の生きかたや、心をはじめてよく理解できるようになったと、感謝され
ている。

2018年11月24日

◆中国を兵糧攻めにする? 

加瀬 英明


中国を兵糧攻めにする? 先端技術の中国流出を阻む米国の戦略

米中貿易戦争――あるいは関税戦争をめぐって世論がかまびすしいが、米中
関係のごく一部しか見ていない。

マスコミは木を見て、森を見ないのだ。

トランプ大統領は中国の共産体制を崩壊させることを決意して、中国と対
決してゆく方針を固めた。

習主席は面子にこだわって、関税戦争を受けて立っているが、中国経済が
アメリカ市場に依存しているために、すでに蹌踉(よろめ)いている。

いまではワシントンで、ついこの間まで親中派だった国務省、主要シンク
タンクも、中国と対決することを支持している。アメリカの中国観の地殻
大変動だ。

トランプ大統領が中国という“悪の帝国”を倒す戦略の中核にあるのが、テ
クノロジーだ。

同盟諸国とともに、先端技術の中国への流出を阻む、兵糧攻めにするの
だ。関税戦争や、軍拡競争は脇役になる。

かつてレーガン大統領が、“悪の帝国(イービル・エンパイア)”と極め付け
たソ連を追いつめたのも、アメリカを中心とする、自由世界のテクノロ
ジーの力によるものだった。

中国はテクノロジー後進国だ。宇宙ロケットを打ち上げられても、ジェッ
ト機のエンジンをつくれないので、ロシアから買っている。

中国の指導部は何千年にもわたって、中華思想による知的障害を患ってき
たために、弱い相手は呑み込むものの、まともな対外戦略をたてられない。

力を持つようになると、慢心して、外国を見下すために、傲慢に振る舞う。

中華思想は、中禍思想と書くべきだ。ロシアは戦略が巧妙だが、中国は中
華主義の自家中毒によって、視野が狭窄している。

習主席は中国悠久の歴史から、学べないのだろうか。

オバマ政権は中国に対して宥和政策をとっていたが、中国はアメリカの弱
さだと見縊(みくび)った。

 習主席は3年前に訪米して、オバマ大統領と米中サミットを行い、ホワ
イトハウスで行った共同記者会見で、中国が南シナ海で不法に埋め立てて
造成した7つの人工島を、軍事化することはないと、明言した。

 しかし、その後中国は7つの島に、ミサイルや、爆撃機を配備するよう
になった。

 中国人は平然と嘘をつくが、アメリカ人は嘘をもっとも嫌っている。

 私はかねてから、中国人は昔から「吃(ツー)(食事)」「喝(フー)(飲
酒)」「嫖(ピャオ)(淫らな遊女)」「賭(トウ)(博打(ばくち))」「大
聴戯(チーティンシ)(京劇)」の五つを、生き甲斐にしていると、説いて
きた。

 清朝の歴代の皇帝も、毛沢東、周恩来、江青夫人も、江沢民元主席も、
みな京劇マニアだった。

 京劇は甲高い声に、耳を聾するけたたましい音曲と、大袈裟な所作に
よって、誇大妄想を煽る舞台劇だ。

 習主席が好む大規模な軍事パレードや、急拵(こしら)えの航空母艦を中
心とする大海軍や、絵に描いた餅のような「一帯一路」は、京劇の舞台装
置を思わせる。清朝を崩壊させた西太后も、京劇マニアだった。

 現在、中国海軍は艦艇数が317隻で、アメリカ海軍の283隻を上回
る。西太后が日清戦争前夜に、北京西郊の頤和園の湖岸に、巨額の国費を
投じて建造した、大理石の巨船の“21世紀版”だ。

2018年11月21日

◆大坂なおみ選手と人種平等を実現 

加瀬 英明


大坂なおみ選手と人種平等を実現した日本

イギリス王室の結婚式典

私はテレビを観て泣いたことは、めったにない。

今年5月に、イギリスのヘンリー王子とアメリカ人女優のメーガン・マー
クルさんの結婚式典が、ウィンザー城教会において挙げられた。

イギリス王室はウィンザー家と呼ばれ、ウィンザー城は王家の居城である。

王子とメーガンさんが、荘重なイギリス国歌が吹奏されるなかを、お伽噺
のような馬車に乗って、輝く銀の胸冑をつけた龍騎兵の一隊によって守ら
れて、教会へ向かった。

この光景を見て深く感動した。不用意に、目頭が熱くなった。

華燭の式典では、アメリカ聖公会の黒人主教が、説教壇から黒人訛りの英
語で、愛について熱弁を振った。

私はアメリカ黒人女性の聖歌隊が、黒人霊歌(ゴスペル)の『イエスととも
に歩め(スタンド・バイ・ミー)』を合唱した時に、涙を拭った。

メーガン妃は、黒人の母と白人のあいだに生まれた。

いまでも、白人社会では、黒人の血が少しでも混じっていれば、「黒人
(ブラック)」と呼ばれる。オバマ大統領も母が白人であるのに、黒人の大
統領とされた。

ウィンザー城の教会で、エリザベス女王、フィリップ殿下、チャールズ皇
太子をはじめ、盛装した王族を前にして、アメリカから招かれた黒人の聖
歌隊が、黒人霊歌を合唱した。

黒人霊歌は、数百万人の黒人がアメリカに連れてこられて、鎖に繋がれた
奴隷として生きることを強いられた時に、救いを求めてうたった歌だ。

日本の戦いがもたらした人種平等の世界

イギリスの王子が黒人と結婚するのは、王室の長い歴史で、はじめてのこ
とだった。

3、40年前でも、まったく考えられなかったことだった。

これも、日本が先の大戦において国をあげて戦い、大きな犠牲を払って、
アジアを欧米の過酷な植民地支配から解放し、その高波がアフリカ大陸を
洗って、次々と独立していった結果、人種平等の世界が人類の長い歴史
で、はじめて招き寄せられたためだった。

きっと、アジア・太平洋の広大な戦場に散華された英霊が、天上からこの
光景を眺められて、嘉納されたにちがいないと思った。

来年2月は、第1次大戦のベルサイユ会議とも呼ばれるパリ講和会議で、
国連の前身である国際連盟を創設するのに当たって、日本全権団が連盟規
約に「人種平等条項」を入れることを提案して、11対5の票決によって可
決されようとした時に、議長だったウッドロー・ウィルソン・アメリカ大
統領が、「このような重要な事項は、全会一致によって決定しなければな
らない」といって葬った、100周年に当たる。

ヨーロッパの小国が賛成票を投じたものの、国内で黒人を差別していたア
メリカをはじめ、白人の植民地諸国が反対したのだった。

アメリカでは第2次大戦後も、国内で黒人に対するいわれない差別が続い
たが、アフリカの外交官が黒人が入れなかったホテルや、レストランなど
に自由に出入りするのを見て、黒人が立ち上って公民権運動が起った。

 1960年代に、マーチン・ルーサー・キング師が率いる公民権運動が
ついに実を結び、黒人に対する法的な差別が撤廃されて、今日に至っている。

 私は1959年にアメリカに留学したが、ゴルフコースに黒人といえ
ば、キャディしかいなかったし、テニスコートでも、清掃員か、球拾いし
か、見ることがなかった。野球のメジャーリーグで、黒人選手がプレイで
きるようになったのは、第2次大戦後のことだ。

 ゴルフ界でタイガー・ウッズや、テニス界でウィリアム姉妹が活躍して
いるが、公民権運動が実った以後のことだ。
大坂なおみ選手が健闘して、脚光を浴びている。

 なおみさん、英霊が応援していますよ!

2018年11月16日

◆中国は前車ソ連の轍を踏むことになるのか

加瀬 英明


米中貿易戦争――あるいは関税戦争をめぐって世論がかまびすしいが、米中
関係のごく一部しか見ていない。

トランプ大統領は中国の共産体制を崩壊させることを決意して、中国と対
決してゆく方針を固めた。

習主席は面子にこだわって、関税戦争を受けて立っているが、中国経済が
アメリカ市場に依存しているために、すでに蹌踉(よろめ)いている。

いまではワシントンで、この間まで親中派だった国務省、主要シンクタン
クも、中国と対決することを支持している。アメリカの中国観の地殻変動だ。

トランプ大統領が中国という“悪の帝国”を倒す戦略の中核にあるのが、テ
クノロジーだ。同盟諸国とともに、先端技術の中国への流出を阻む、兵糧
攻めにするのだ。関税戦争や、軍拡競争は脇役になる。

かつてレーガン大統領が、“悪の帝国(イービル・エンパイア)”と極め付け
たソ連を追いつめたのも、アメリカを中心とする、自由世界のテクノロ
ジーの力によるものだった。

中国はテクノロジー後進国だ。宇宙ロケットを打ち上げられても、
ジェット機のエンジンをつくれないので、ロシアから買っている。

中国の指導部は何千年にもわたって、中華思想による知的障害を患って
きたために、弱い相手は呑み込むものの、まともな対外戦略をたてられな
い。力を持つようになると慢心して、外国を見下すために、傲慢に振る舞う。

中華思想は、中禍思想と書くべきだ。ロシアは戦略が巧妙だが、中国は
中華主義の自家中毒によって、視野が狭窄している。

中国は今世紀に入ってから、かつてのソ連と同じように、自壊への道を
進むようになっている。ソ連は1991年に崩壊した。

効率が悪い計画経済によって病んでいたのに、無人のシベリア沿海州の
開発に国力を浪費し、東ヨーロッパの衛星諸国という重荷をかかえたうえ
に、第3世界に進出するのに力を注いだために、アメリカとの競争に耐え
られなくなって、倒壊した。

クレムリンの最高指導者は、非科学的なマルクス主義の予言に従って、
ソ連が世界を支配するという使命感にとらわれて世界制覇を急いだため
に、墓穴を掘った。

習主席も「偉大なる5000年の中華文明の復興」という、自らの掛け 声に
陶酔して、見せかけだけが壮大な「一帯一路」計画と、大海軍の建設 を
強行しているが、第2次大戦後にソ連が歩んだ道程によく似ている。

中国は分離独立闘争を恐れて、新疆ウィグル自治区や、チベットをはじ
めとする西域や、中部や、北部に過大な投資を行っている。

「一帯一路」計画は、アジアからヨーロッパまで70ヶ国近くを、“幻 (ま
ぼろし)の中華圏”に取り込もうとする杜撰(ずさん)きわまる大計画だ
が、マレーシア、ミャンマー、パキスタンなど多くの諸国で、すでに挫折
するようになっている。

ソ連は1950年代から60年代にかけて、日本についで経済成長率 が高かっ
た。私はソ連が1957年にアメリカに先駆けて、人工衛星『ス プートニ
ク』を軌道に乗せた時に20歳だったが、よく覚えている。その 4年後に
世界最初の有人衛星飛行を行って、アメリカの朝野を震駭させた もの
だった。

ソ連では1970年代に入ると、少子高齢化が進むようになって、旺盛 な高
度成長を支えた、豊富な安い労働力が失われるようになった。中国で も
同じことが、起っている。

私はかねてから、中国人は昔から「吃(ツー)(食事)」「喝(フー)(飲
酒)」「嫖(ピャオ)(淫らな遊女)」「賭(トウ)(博打(ばくち))」「大
聴戯(チーティンシ)(京劇)」の5つを、生き甲斐にしていると、説いて
きた。

清朝の歴代の皇帝も、毛沢東、周恩来、江青夫人も、江沢民元主席も、
みな京劇マニアだった。

京劇は甲高い声に、耳を聾するけたたましい音曲と、大袈裟な所作に
よって、誇大妄想を煽る舞台劇だ。

習主席が好む大規模な軍事パレードや、急拵(こしら)えの航空母艦を中
心とする大海軍や、絵に描いた餅のような「一帯一路」は、京劇の舞台装
置を思わせる。清朝を崩壊させた西太后も、京劇マニアだった。

現在、中国海軍は艦艇数が317隻で、アメリカ海軍の283隻を上回 る。
西太后が日清戦争前夜に、北京西郊の頤和園の湖岸に、巨額の国費を 投
じて建造した、大理石の巨船の“21世紀版”だ。


2018年11月10日

◆悪意に満ちた国連委員会の対日非難

加瀬 英明

 
8月に、スイス・ジュネーブで国連人種差別撤廃委員会が「対日審査会」
を行い、慰安婦、韓国人・朝鮮人に対するヘイトスピーチ、委員会が先住
民とみなすアイヌ・沖縄県民、朝鮮学校問題などを取りあげて、3日にわ
たって日本を嬲(なぶ)りものにした。

私はこの討議の一部を動画で見たが、どの委員も日本が性悪な国として、
こき下ろした。

戦前の国際連盟が本拠だった「パレ・ウィルソン」(パレは宮殿)で開か
れ、会合での対日非難は悪意にみちたものだった。

韓国の委員の鄭鎮星(チョンジュソン)女史は「性奴隷(セックス・スレイ
ブ)」といって、「慰安婦の残酷な状況は、当時の文書、映像、証言など
多くの証言によって、裏付けられている」と、日本政府代表団に迫った。

アメリカの黒人女性のマクドゥガル委員は、日本政府代表団が反論したの
に対して、慰安所を「強姦所」と呼び、「事実を議論すべきではない。こ
れは女性の尊厳の問題だ。慰安婦の大多数が韓国人だった」と、詰め寄っ
た。事実は、大多数が日本女性だった。

ベルギーのポッソート委員は、日本において韓国・朝鮮人が迫害されてお
り、「日本に住む40万人の韓国・朝鮮人の大多数が、植民地時代に強制的
に日本に連行された」と、攻撃した。事実は同じ国だったから、自由に往
来できたために、より豊かだった日本本土に、仕事を求めて移ってきたの
が、正しい。

コンゴ民主共和国をはじめ、諸国の委員がつぎつぎと日本を誹謗した。

このような国連委員会が世界の世論をつくって、日本の名誉を大きく損ね
てきた。

委員会の会合は、荒唐無稽としかいえないにもかかわらず、日本政府代表
団が一つ一つ、丁寧に答えていた。私は代表団を率いた大鷹正人外務審議
官や、法務省員の苦労を心からねぎらいたいと思った。

私も英語屋だが、大鷹審議官の英語は流暢で、素晴しかった。ところが、
日本政府の代表が「お詫びし、償い金を支払っている」といって、委曲を
つくして答えるほど、弁解しているように見えた。

私だったら弁明に終止せずに、相手を積極的に攻撃して、その歪んだ根性
を叩きなおそうとするだろう。

韓国の委員には、「韓国が独立を回復してから、貴国の国軍は日本の旧軍
の制度を受け継ぎましたが、国軍の将兵の性処理のために、『慰安婦
(ウィアンプ)』と呼ぶ女性たちが働く売春施設を、つくっていました。

『慰安婦(いあんふ)』は旧日本軍とともに姿を消したはずなのに、韓国軍
に長いあいだにわたって存在しました。慰安婦がそんなにおぞましいもの
だったら、どうしてこの日本語を韓国語として発音をして、使っていたの
ですか?」と、たずねたかった。

アメリカの委員には、「アメリカでは1960年代に入るまで、黒人は選挙権
を認められず、白人と黒人の性関係が犯罪とされ、水飲み場、便所から、
食堂まで区別されて、ひどい差別を蒙っていたし、今でも苦しんでいま
す。日本が先の大戦を戦って有色人種を解放したおかげで、黒人が白人と
同等の公民権を勝ち取ったのではないですか?」と、質問する。

委員会が国際連盟を創設することを提唱した、アメリカ大統領の名を冠し
た「パレ・ウィルソン」で開かれたのも、皮肉だった。

ウィルソン大統領はアメリカ南部のジョージア州とサウスカロライナ州で
育ち、有色人種が優生学的に劣っていると説いた、人種差別主義者だった
ために、ウィルソンが創学者のプリンストン大学では、学生たちがその銅
像の撤去を求め、アメリカ議会が創立したシンクタンク「ウィルソン・セ
ンター」を改名すべきだという運動が、行われている。

私だったら、委員たちに「パレ・ウィルソン」の名を改めることを、提案
しただろう。

このように愚かしい委員会で、日本政府の代表が暴れれば、世界のマスコ
ミが取り上げて、日本の主張が理解されることだろう。

2018年11月07日

◆麦の穂青し、空は一片の雲も留めず

加瀬 英明


来年5月に全国民が慶祝に涌きかえるなかで、126代の天皇陛下が即位さ
れる。

天皇は日本を統べて下さる要(かなめ)であり、民を安ずる使命を授かった
御存在である。

皇室の無い日本を想像することが、できるだろうか。

天皇は他国の君主と違って覇者ではなく、敵対する者が存在しない。古
代・中世の一時期さえ除けば、武力を用いたことがなかった。

天皇は日本でもっとも謙虚な人であり、日本の国柄が結晶した方であられ
る。日本の祭り主として2000年余にわたって皇祖を祀り、つねに国民の幸
せと平和を祈ってこられた。

御代替りが、来年5月に迫っている。そのために、私はあらためて天皇の
存在について考えた。

昭和20(1945)年のアメリカは「天皇を処刑せよ」という世論で沸騰して
いた。

だが、日本は惨憺たる敗戦を蒙ったにもかかわらず、どうして天皇を戴く
国のかたちを、守ることができたのだろうか。

大西瀧次郎中将を偲ぶ

私は9月に同志とともに、靖国神社の靖国会館において、『大西瀧治郎中
将を偲ぶ会』を催した。

大西海軍中将といえば、昭和19年10月にフィリピンにおいて、最初の神風
特攻隊を編成して送り出したことから、「特攻隊の父」といわれてきた。

当日、200人あまりが「偕行の間」に集まったが、その前に昇殿参拝した。

私は代表して、次の祭文を捧読した。

「謹んで大西瀧次郎海軍中将の御魂と、先の大戦中に散華された英霊に申
し上げます。

わが国は先の大戦を自存自衛のために、国を挙げて戦ったのにもかかわら
ず、連合国に『ポツダム宣言』を受諾することによって敗れましたが、世
界史にまったく類例がない特攻作戦を空に海に敢行することによって、連
合国の心肝を寒からしめ、名誉ある条件付き降伏を行うことができました。

『ポツダム宣言』は、『われらの条件は左の如し。われらは左の条件から
逸脱することなし』と述べて、『日本国軍隊の無条件降伏』のみを要求し
ています。

特攻作戦こそは、高貴な日本精神を発露したものでありました。特攻隊員
と、アッツ島から沖縄まで戦場において玉砕した英霊の尊い犠牲によっ
て、わが国の2600年以上にわたる美しい国体が護られて、今日に至ってい
ます。

日本国民は特攻に散った英霊が悲惨な亡国から、日本を救って下さったこ
とを忘れません。御遺志を継いで日本を守ってゆきますことを、お誓い申
し上げます」

日本が国民を挙げてよく戦ったために、連合国が昭和20(1945)年7月26
日に『ポツダム宣言』を発することによって、連合国側から和平を申し出
た。トルーマン大統領はこの4日前に、アメリカ陸海軍(まだ空軍はな
かった)に、「オリンピック作戦(オペレーション・オリンピック)」と名
づけた九州上陸作戦を、11月に実施するように命じていた。

アメリカ統合参謀本部は、7月はじめに「対日計画案」を大統領に提出し
て、日本本土侵攻作戦に500万人の兵力を必要とするが、日本は1947(昭
和22)年まで戦い続け、アメリカ軍死傷者が100万人を超えようと見積っ
ていた。

そのためにトルーマン政権は、前政権が日本に「無条件降伏」を強いる方
針をとっていたのを改めて、条件付降伏を求めることを決定した。

今日では多くの国民が特攻隊や、最後まで戦った将兵が徒死(むだじ)に
だったというが、日本の悠久の国のかたちが、この尊い犠牲によって守ら
れたのだった。

先の対米戦争はアメリカの不当な圧迫を蒙って、已(や)むに已(や)まれず
に戦ったものだった。

和平派だった東郷茂徳外相と、戦後、『カレント』を創刊された賀屋興宣
蔵相は、『ハル・ノート』に接して、もはや已むなしとして、開戦の詔勅
に副署した。

 『海ゆかば』の合唱

偲ぶ会は、東映の協力によって、バリトン歌手・斎藤忠生氏の先導によっ
て、『海ゆかば』の合唱から始まった。

特攻隊員が整列をして水盃を戴くと、次々と離陸して、敵艦に命中する
か、対空砲火によって、海面に激突する実写が上映された後に、東映若手
男優3人が特攻隊の飛行服に、日の丸の鉢巻を締めて登壇して、1人1
人、特攻隊員の遺書を朗読した。

そのうえで、藤田幸生・特攻隊戦没者慰霊顕彰会理事長(元海幕長)、劇
映画で大西中将を演じた父・故鶴田浩二氏の令嬢で、女優の鶴田さやか氏
らが、短い挨拶をした。

講話が終わった後に、壇上に戻った3人の若手俳優と、参会者が『同期の
桜』を合唱したが、全員が頬を涙で濡らした。

参会者が、再び『海ゆかば』を合唱することによって、閉会した。

特攻作戦は、大西中将が発案したのではなかった。昭和19(1944)年7月
にサイパン島が失陥すると、少壮将校から海軍部内に敗勢を挽回するため
に、特攻を行いたいという声が、澎湃(ほうはい)として起った。特攻作戦
が採用され、特攻兵器の開発が始まっていた。

 私には特攻について、多くの関係者の話をきいてまとめた英文の著書が
あるが、特攻作戦は長い歴史によって培われた、日本国民の愛国心と熱誠
が表われたものだった。

会が始まる直前に、実行委員の一人のF君が、「冒頭で『君が代』を斉唱
しましよう」というので、私は反対した。特攻隊が出撃する時には、『海
ゆかば』が合唱されたが、『君が代』が歌われたという例は、きいたこと
がない。

『海ゆかば』は、防人(さきもり)を司る兵部少輔だった大伴家持(西暦
717年〜785年)の歌で、『万葉集』に収録されている。『万葉集』
は私たちの魂の故郷(ふるさと)である。『君が代』は平安朝初期の『古今
和歌集』にある祝歌(ほぎうた)で、悲壮な出撃にふさわしくなかったのだ
ろう。

閉会する前に、F君から「聖寿万歳によって、会を締め括りましよう」と
耳打ちされたので、私は「それはやめましよう」と答えた。

大西中将の自刃後に、淑恵夫人がインタビューで、中将が戦争末期に「天
皇は国民の前に立たれるべきなのに、女官に囲まれている」と憤ったと
語っており、部下に「この戦争は国民ではなく、天皇の側近たちが敗れた
のだ」と、切り捨てたという証言がある。

天皇家は京都の御一家であって、武家の棟梁ではない。私たちにとって、
天皇は文化的な存在である。

特攻について1冊だけ、本をあげるようにといわれたら、『麦の穂青し』
(勉誠出版)を勧めたい。特攻隊員の遺書が集録されている。全家庭に1
冊常備したい本だ。

題名は、昭和20年4月29日に九州から飛び立った23歳の特攻隊員が、出撃
寸前に書いた遺書からとっており、「1215搭乗員整列。進撃は1300より
1630の間ならん。空は一片の雲も留めず。麦の穂青し」という 短いもの
で、心の動揺なく出撃したことが証されている。進撃時間は沖縄 の上空
に着く時間を見積ったものだ。

 語らざる悲しみもてる人あらむ

天皇皇后両陛下が平成24年に、イギリスに行幸啓された。

その時に、前大戦中の元イギリス兵捕虜が、沿道に並んで、抗議行動を
行った。

 この時に、皇后は大戦後イギリス軍の捕虜となって、処刑された国人
(くにびと)を思いやられ、和歌をよまれた。

 「語らざる悲しみもてる人あらむ母国は青き梅実の頃」という御製を拝
して、私は「麦の穂青し」を思って、恐懼した。

 終戦の日ごとに、テレビで玉音放送の録音が流されるが、「朕は茲(こ
こ)に国体を護持しえて」と仰言せられるのを謹聴するたびに、特攻に、
玉砕に殉じた先人たちを誇りたいと思う。

2018年10月26日

◆国連は諸国の権力闘争の場

加瀬 英明


「国連」は諸国の権力闘争の場 「平和の殿堂」にあらず

自民党総裁選挙が終わったが、石破茂氏が立候補したことを、多としたい。

野田聖子氏でも、誰でもよかったが、もし、安倍首相が無競争で選出され
たら、安倍政権のイメージが損なわれたところだった。

安倍首相は憲法改正に取り組むことを鮮明にしてきたが、安倍首相が第9
条の「戦力は、これを保持しない」という二項をそのままにして、自衛隊
を書き加えようと主張しているのに対して、石破氏は2項を残して、自衛
隊を挿入するのは、論理に反すると反対した。

安倍首相は9月に自衛隊高級幹部会同で、「諸君の自衛隊員としての歩み
を振り返るとき、時には心ない批判にさらされたこともあったと思う。同
じ時代を生きた政治家として、忸怩(じくじ)たる思いだ。すべての自衛隊
員が強い誇りを持って、任務を全うできる環境を整えるのが、政治家の責
任だ」と、訓示している。

石破氏が憲法の整合性を云々するのなら、「平和を愛する諸国民の公正と
信義に信頼して、われらの安全を保持」するという、前文を削除すること
も、説くべきだった。

私は憲法第9章「改正」の第96条が「改正の手続」とうたっているが、
「改正」というと全面的に改めるような印象を与えるから、「憲法修正」
と呼ぶべきだと、親しい国会議員たちを促してきた。多くの国民が現実に
適うよう修正する必要があることを、感じているはずだ。

自衛隊は国際的に軍として認められているが、国内では軍でないという
が、日常生活でこのような詭弁は許されないだろう。

現行憲法は冒頭から、大嘘によって始まっている。日本国民は作り事の世
界に生きてきたために、現実を直視する力を失っている。

ニューヨークに「ジ・ユナイテッド・ネーションズ」と呼ばれる国際機関
がある。

もともと「ジ・ユナイテッド・ネーションズ」は、ルーズベルト大統領が
真珠湾攻撃直後の1942年1月1日に、日本と戦っていた26ヶ国の代表をワ
シントンに集めて、同盟諸国を「ジ・ユナイテッド・ネーションズ(連合
国)」と呼ぶことにしたものだ。

私たちが誤まって呼んでいる「国際連合」は、先の大戦中に日本が沖縄戦
を戦っている時に、連合国が戦後世界を経営するために、サンフランシス
コで創設され、軍事同盟の名をそのまま受け継いだ。国際連合という国際
機関は、どこにも存在していない。

今日の「ジ・ユナイテッド・ネーションズ」の5つの公用語の1つの中国
語では、「連合国(リエンホーグオ)」だし、韓国、北朝鮮でも「連合国
(ヨナブグク)」だ。

同じ敗戦国のドイツでは、国際連盟が「ディ・フルカーブンド」だったの
に対して、ドイツが戦った連合国と変わらない「ディ・フェアインテ・ナ
ツィオネン」(連合国)と呼んでいる。イタリア語でも「レ・ナツィオ
ニ・ウニテ(連合国)」だ。

憲法を「平和憲法」と呼んで現実を目隠してきたように、日本国民を骨抜
きにするために、「連合国」を戦前の国際連盟をもじって、「国際連合」
と誤訳したものだ。このために、日本国民は「国連」が諸国の権力闘争の
場なのに、憲法の前文が描いている「平和の殿堂」なのだと思って、ひた
すら崇めてきた。

今日の日本は嘘っぱちというと、無いものをあるように信じていること
が、多すぎる。

日本社会が、このようにモラルハザード漬けになっているために、健全で
あるべき国防意識が欠けてしまっているのだ。

2018年10月17日

◆大嘗祭は国事として行うべきである

加瀬 英明


1年以内に、新天皇が即位され、御代(みよ)が替わる。

前号で、私は天皇陛下が来年4月30日に退位され、皇太子殿下が翌日、第
126代の天皇として即位されるのに当たって、もっとも重要な祭祀である
大嘗祭(だいじょうさい)を寸描した。

120代も続いてきた天皇が、日本を日本たらしめてきた。

天皇は日本にとって、何ものによっても替えられない尊い存在であり、日
本国民にとって、もっとも重要な文化財である。

大嘗祭は来年11に、皇居において催される。大嘗祭は法律的にすでに皇位
につかれておられるが、天皇を天皇たらしめてきた民族信仰である惟神
(かむながら)の道――神道によれば、まだ、皇太子であられる皇嗣(こうし)
(お世継ぎ)が、それをもって天皇となられる。聖なる秘儀である。

私は前号で大嘗祭に当たって、皇太子が横たわれ、しばし、衾(ふすま)
(古語で、夜具)に、身をくるまられると、述べた。

これは、天照大御神の皇孫に当たる瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が、「豊葦
原(とよあしはら)の瑞穂(みずほ)の国(くに)を治めよ」という神勅に従っ
て、赤兒として夜具にくるまれて、天孫降臨されたことから、皇太子が身
を衾に包む所作を再演されることによって、瓊々杵尊に化身されるもので
ある。

今上天皇が今年の新年に宮中参賀のために二重橋を渡った、13万人をこえ
る善男善女に、皇后、皇太子、皇太子妃、皇族とともに会釈され、お言葉
を述べられたが、天皇はモーニングを召された瓊瓊杵尊であられた。

天皇は皇位をただ尊い血統によって、継がれるのではない。

日本では、日本神話が今日も生きている。神話は諸外国では、遠い昔の過
去のものであって、ただの物語でしかない。日本は時空を超えて、永遠に
新しい国なのだ。

歴代の天皇は、日本を代表して神々に謙虚に祈られることによって、徳の
源泉として、国民を統(す)べて、日本に時代を超えて安定(まとまり)をも
たらしてきた。

神道は、人知を超えた自然の力に、感謝する。世界のなかで、もっとも素
朴な信仰である。

教義も、教典ない。人がまだ文字を知らなかった時代に発しているから、
信仰というより、直感か、生活態度というべきだろう。

神道は、人が文字を用いるようになってから、生まれた宗教ではない。感
性による信仰だから、どの宗教とも競合しない。

宗教法人法によれば、宗教法人は教義を広め、信者を教化する団体とし
て、規定している。神道は布教しないし、もし宗教であれば、「信者」と
呼ばれる人々も、存在しない。

アメリカ占領軍は、自国では国家行事や、地方自治体の式典が、キリスト
教によって行なわれていたのにもかかわらず、まったくの無知から神道
を、キリスト教と相容れない宗教だと信じて敵視して、日本に「政教分
離」を強制した。当時のアメリカは、日本を野蛮国とみなしていたのだった。

政府は日本が独立を回復した後にも、現行憲法下で、天皇を天皇たらしめ
ている宮中祭祀を、皇室の「私事」として扱ってきた。

私はかねてから、宮中祭祀は国民の信仰の自由を浸すことがないし、日本
国民にとって何より重要な無形文化財であると、主張してきた。

大嘗祭は、国事として行うべきだ。現行憲法は皇室と日本の姿を、歪め
ている。

2018年10月12日

◆自壊へと誘う覇権主義の幻想

加瀬 英明


トランプ政権が発足してから、もうすぐ2年になる。

トランプ政権は異端だといわれる。このあいだに、アメリカと世界のあり
かたが、何と大きく変わったことだろうか。

日本をとれば、戦後、アメリカを日本を守ってくれる親鳥だと見做してき
たが、はじめて外国として見るようになった。

いったい国家が幻想によって、動かされるものだろうか?

アメリカは第2次大戦後、世界のためにアメリカが世界の覇権を握るべき
だという、幻想にとらわれてきた。アメリカはこの幻想から、世界に軍事
基地網を張りめぐらせ、アメリカに従う諸国の国防を肩代わりしてきた。

このもとで、グローバリズムという幻想が世界に撒き散らされたが、世界
をアメリカの経済的覇権のもとに置くという、身勝手な欲望と一体になっ
ていた。

アメリカの大企業はこの幻想に乗じて、製造部門を中国を頭とする人件費
が安い海外へ移すかたわら、安い製品を輸入して、国内の労働者の犠牲の
うえに、懐(ふところ)を富ませてきた。

トランプ大統領は「アメリカ・ファースト」(アメリカの国益を第一にす
る)を唱えて、この幻想を吹き払う世直し一揆の先頭に立っているため
に、グローバリズムの利得者であってきた民主党幹部、大企業、大手マス
コミ、著名シンクタンクから袋叩きにあっている。

トランプ大統領は共和党にとっても、部外者だった。そのために、異端者
の烙印を押されている。

トランプ大統領が習近平国家主席に関税戦争という、強烈な足払いをかけ
ている。 

習主席は中国経済がアメリカ市場という脚のうえに立っているために、大
きく蹌踉(よろめ)いている。

中国は今世紀に入ってから、かつてのソ連と同じように自壊への道を、ひ
たすら驀進するようになっている。

習主席は「偉大なる5000年の中華文明の復興」という幻想に酔って、身の
程を知らずに、見せかけが壮大な「一帯一路」計画と、大海軍の建設を中
心とする軍拡を強行している。

そのかたわら、分離独立闘争を恐れて、新疆ウィグル自治区や、チベット
の西域や、中部、北部に、巨額の投資を行っている。

「一帯一路」計画はアジアからヨーロッパまで、70ヶ国近くを“幻想の中
華圏”に取り込もうとする、野心的というより杜撰(ずさん)な大計画だ
が、すでに多くのアジア諸国で、破綻するようになっている。

ソ連は1991年に瓦解した。計画経済によって病んでいたのに、シベリア沿
海州の開発に浪費するかたわら、東ヨーロッパの衛星諸国という重荷をか
かえ、第3世界に進出するために力を注いだうえに、アメリカとの大規模
な軍備競争に耐えることができなくなって、無様(ぶざま)に崩壊してし
まった。

ソ連は1950年代から60年代にかけて、日本についで経済成長率が高かった。

私はソ連が1957年に、アメリカに先駆けて、人工衛星『スプートニク』を
軌道に乗せた時に、20歳だった。その4年後に、世界最初の有人衛星飛行
を行って、アメリカの朝野を狼狽させたことを、よく覚えている。

ソ連では1970年代に入ってから、少子高齢化が進むようになり、往年の旺
盛な高度成長を支えた、豊富だった労働力が失われた。いま、中国で同じ
ことが起こっている。

クレムリンの最高指導者も、マルクス主義の予言に従って、世界を支配す
るという使命を負っているという幻想にとらわれて、世界制覇を急いだた
めに、墓穴を掘った。

日本は占領下でアメリカによって下賜された「平和憲法」があるかぎり、
アメリカが日本を子々孫々に至るまで、守ってくれるという幻想に、安全
を託している。

護憲主義者は日本国憲法とともに、滅びる道を選びたいのだろうか。


2018年10月07日

◆国家自立の気概、憲法修正で示せ

加瀬 英明


北朝鮮危機が日本の上に重くのしかかるもとで、北朝鮮によって捕われて
いる拉致被害者を一刻も早く救い出すことが、悲願となっている。

それなのに、その糸口を掴むことさえ、まだできないでいる。

横田めぐみさんが北朝鮮の工作員によって攫われて、北朝鮮に拉致された
のは、1977年11月15日のことだった。すでに41年もの時が、流 れてい
る。同じ時期に、他の多くの日本国民が同じように日本国内から拉 致さ
れて、北朝鮮に捕われたままでいる。

いったい、拉致被害者は誰の被害を蒙っているのだろうか?

これは、テレビも新聞も、誰もいわないことだが、拉致被害者は“平和 憲
法”と呼ばれる日本国憲法の被害者である。なぜ、それをいう者がいな い
のか。

もし、日本が1952年に対日講和条約によって独立を回復してから、 数年
以内に現行憲法を改正して、それぞれ日本の人口、GDP(国内総生
産)が、ともに半分しかない、イギリスか、フランス程度の軍備を整えて
いたとすれば、みすぼらしい小国にしかすぎない北朝鮮によって、多くの
日本国民が日本の国土から、拉致されるようなことはありえなかった。

イギリスも、フランスも、国土と国民を守るために、核ミサイルを搭載
した潜水艦や、航空母艦を保有している。もちろん、イギリスもフランス
も全世界から、平和国家として認められている。

いったい、多くの自国民が隣国によって拉致されても、傍観するほかな
い国を、「平和国家」と呼ぶことができるものだろうか?

アメリカは日本が占領下で主権を奪われていた時に、アメリカの平和を
守るために、日本人の精神の非武装化と、日本の物理的な武装解除を企て
て、占領下にある国の基本法を変更することを禁じた国際法を踏み躙っ
て、現行憲法を押しつけたのだった。そのために、占領軍は日本国民が、
この憲法を自主的に制定したという嘘を強要して、体裁を繕(つくろ)った。

現行憲法は多くの日本国民によって、“平和憲法”と誤まって呼ばれてい
るが、日本の平和ではなく、“アメリカの平和”をはかったものである。

現行の「日本国憲法」は、アメリカが対日占領を始めた1年2ヶ月12
日後の翌年の1946年11月に公布され、その翌年5月に施行された。

ところが、その僅か4年1ヶ月後に、まだ日本は占領下にあったが、朝
鮮戦争が勃発したために、アメリカは日本を“丸腰”にしてしまったことを
悔いて、慌てて警察予備隊という、疑似的な“軍隊”を創設することを、命
じた。

自衛隊、疑似国家の疑似軍隊で良いのか

占領軍が強いた「日本国憲法」の耐用期限は、4年1ヶ月しかなかった
のだ。今日、私たちは耐用年数が、68年も前に切れている自転車か、自
動車に、毎日乗っているようなものであって、危険きわまりない。

この「日本国憲法」でさえ、第1條で「国民が主権者」であることを
謳って、規定している。

主権者ということは、日本国民が日本の所有主であることを意味してい
る。それなのに、「日本国憲法」が「戦力の保持」を禁じているために、
日本国民は今日に至るまで、自らの手で国を守ることを拒んでる。

自分の所有物を守ろうとしないのでは、とうてい主権者といえない。主
権者のいない国家は、国家に価しない。

今日の日本は、疑似国家でしかない。このような国家のありかたは、軍
隊ではないとされている自衛隊に、双生児のようによく似ている。 

先の大戦が終わってから、多くの日本国民が現実を直視することを、避
けるようになった。敗戦までの日本が邪しまな国家であったという、ゆわ
ゆる東京裁判史観が、多くの国民によって信じられ、自虐史観にとらわれ
ている。

産経新聞のソウル駐在客員論説委員として、韓国における生活が長い、
黒田勝弘氏が今日の韓国について、「韓国民の反日感情というのは、日本
による朝鮮半島支配が終わった後、日本においては戦後、彼らにおいて
は、いわゆる解放後に形成されたものである」(『それでも私はあきらめ
ない』黒田福美著、あとがき、WAC株式会社)と、述べている。

日本の朝日新聞社をはじめとする、偏向左翼による自虐的な「反日」
も、敗戦後に形成されたものだから、韓国を笑うことができない。

また夏が巡ってきた。今年は異常な猛暑が続いたが、8月になると先の
大戦の敗戦を回顧することが、年中行事となっている。

だが、対米戦争と敗戦は、日本が自ら招いたものではなかった。

これは、歴史的事実である。日本政府と軍部は開戦の直前まで、戦争を
避けようとして、ひたむきな努力を傾けた。アメリカも日本と同じよう
に、真剣に平和を求めているはずだと誤って信じたために、ルーズベルト
政権が仕掛けた罠に嵌ったのだった。

もし、異論がある読者がおいでになったら、拙著『大東亜戦争で日本は
いかに世界を変えたか』(KKベストセラーズ)、私が編者となった『日
米戦争を起こしたのは誰か・フーバー大統領回顧録を論ず』(勉誠出版)
を、お読みいただきたい。

今年は、アメリカの対日占領が終わってから、66年以上が過ぎている。

日本の惨状、いつまで米国のせいにするのか

それなのに、多くの保守派の人々が、アメリカの占領政策のお蔭で、日
本国民が自立心を失なったといって、アメリカを批判する。

これらの人々は、これから10年、20年、いや、30年、40年たっ ても、ア
メリカの占領政策によって、日本の国民精神が歪められてしまっ たと、
アメリカのせいにし続けるのだろうか?

これでは、韓国が35年にわたった日韓併合時代が終わってから、すで
に73年もたったというのに、日本統治を非難することに没頭して、自立
することができずにいるのと、まったく変わりがないではないか。日本が
いつの間にか、“第2の韓国”となってしまったのだ。

8月に、防衛省が28年ぶりに、自衛官の採用年齢の上限を、今年10月から
6歳引き上げて、32歳にすることを発表した。少子化によって、 応募者
が減少しているからだというが、いま、はじまったことではない。 陸上
自衛隊の定員が15万人と定められているのに、2万人が欠員となっ てい
て、13万人しかいない。

少子化のために、全国で定員に届かない大学が多いが、このような大学
の学生の質は、当然低い。自衛隊員のなかには、優秀な隊員が少なくない
が、定員を満たすことができないために、全体の質と士気が低い。

海上自衛隊も護衛艦が、定員に満たない人数で、出航している。

東日本大震災では、予備自衛官に招集をかけたが、1パーセント以下し
か招集に応じなかった。即応予備自衛官も招集に応じた者は、半分以下
だった。

そのうえ、若者が自衛隊に応募しないために、自衛隊は世界のなかで、
もっとも高齢化した軍隊となっている。旧軍では陸軍の中隊長は20代
だったのに、陸上自衛隊では40代末か、50歳が珍しくない。

予算がないので、必要な装備も足りない。

これも、憲法に自衛隊の存在が書かれていないからだ。

 国防意識回復のため憲法に自衛隊明記を

国民が国防意識を回復するために、1日も早く憲法第9条に自衛隊を保
有することを、書き加えなければならない。

これは全面的に改定するのではないから、「憲法改正」というより、
「憲法修正」と呼ぶべきだ。

「親中」「媚中」が、戦後の日本の歩みを大きく狂わせた。

1972年に田中角栄内閣のもとで、日中国交正常化性急に行われた時 に、
私は『文藝春秋』『諸君』の誌上で、中国は信頼できないといって、 強
く反対した。日本が、日中国交正常化を煽り立てる新聞世論によって、
押し流されていた。

いま、もはや「日中友好」を唱える声がきかれなくなったというのに、
「子々孫々に至る日中友好」を叫んでいた大新聞から、反省の声がきかれ
ない。

そのかたわら、いまだに議憲派が国論を2分する力を持っている。

憲政民主党は“憲法解釈”による、「専守防衛」を堅持すべきことを主張
しているが、敵軍が日本国土に上陸するか、航空機、ミサイルが国土の上
に飛来するまで、迎え撃ってはならないと説いているから、大戦末期に
「一億総特攻」「本土決戦」を呼号した、狂信的な旧軍将官の再来でしか
ない。

だが、枝野幸男氏をはじめとする議憲派が、そこまで常規を逸している
はずがない。

議憲派は、どのような状況のもとでも、アメリカ軍が「子々孫々」に至
るまで、日本をしっかりと守ってくれると信じて、疑わないのだろう。

日本国憲法は、アメリカ軍の保護なしに、成り立たない。

議憲主義は自立心を捨てて、アメリカへの甘えを表わしたものでしかな
い。「日本国憲法」は独立国としての誇りと、自立心を捨てた国民でなけ
れば、憲法として戴くことができない欠陥法だ。

議憲派は、“媚米派”である。中国であれ、アメリカであれ、外国に媚び
るのは、恥しい。媚びるほど、卑しいことはない。

このままでは、国家の存在を危うくする。 

2018年09月30日

◆安倍首相は新たな国造りをしてほしい

加瀬 英明


安倍首相は日本のために新たな国造りをしてほしい

8月にテレビ番組で、「平成がすぐに終わりますが、平成をどのようなこ
とによって、記憶されますか?」と、たずねられた。

私はとっさに「平成の30年の間に、憲法を改められなかったことだ」と、
答えた。

現行の「日本国憲法」は、アメリカによる対日占領が始まってから、僅か
1年3ヶ月後に公布された。この「憲法」は、大日本帝国憲法を改正した
体裁をとっているが、大幅な改定であって、占領軍による強要がなけれ
ば、とうてい1年で行えるものではなかった。

私はついでに、戦後の73年を振り返ったら、どう思うだろうか、考えた。

「日本国憲法」が公布されてから、71年になる。日本が講和条約によって
独立を回復してから、66年の歳月が流れた。それなのに、なぜなのか、こ
の憲法がいまだに私たちの上に居座っている。

「日本国憲法」は冒頭から、大嘘で始まっている。「平和を愛する諸国民
の公正と信義に信頼して、われらの生存と安全を保持」(前文)すると述
べて、すべての国が平和を愛し、公正と信義を重んじていると説いてい
る。誰が読んでも、嘘偽りではないか。

今日でも、政府、大手新聞・テレビは、日本が連合国に「無条件降伏」し
たというが、これも大嘘だ。学校教科書も「無条件降伏」したと記さなけ
れば、検定に合格しない。

日本は『ポツダム宣言』を受諾して降伏した

日本は『ポツダム宣言』を受諾して降伏したのであって、「吾等ノ条件ハ
左ノ如シ。吾等ハ左條件ヨリ離脱スルコトナカルヘシ」と述べて、「日本
国軍隊ノ無條件降伏」のみを、求めている。事実は、名誉ある条件付降伏
を行ったのだった。

1950年6月に、占領下で朝鮮戦争が勃発すると、その2ヶ月後に占領軍は
「日本国憲法」によって「陸海空軍その他の戦力」の保持を禁じたはずな
のに、日本政府に警察予備隊という軍事組織の創設を命じた。

日本はその1年8ヶ月後に独立を回復し、3ヶ月後に警察予備隊を保安隊
と改称し、1954」年にさらに自衛隊に改めた。

今日、自衛隊は国際的には軍隊として認められているが、国内では政府、
国会が軍隊ではないと言い張っている。日常生活でこのような詭弁は、と
ても許されないだろう。

自衛隊には「普通科連隊」「特科連隊」という、一般の国民に理解できな
い部隊が存在しているが、歩兵と砲兵のことだ。自衛隊が軍、兵でないと
偽ってきたからだ。このために、自衛隊には意味不明な用語が多い。

占領下で連合国による、いわゆる「東京裁判」が行われ、敗戦までの日本
の指導者が「アジアを侵略した罪」によって裁かれた。

だが、連合国は敗戦翌年の5月から3年半にわたって“裁判”が行われてい
たあいだ、オランダ、イギリス、フランス軍が、日本が大戦中に解放した
アジアの民を再び植民地支配のもとに置こうとして、アメリカに援けられ
て、侵略戦争を戦っていた。

戦勝国こそアジアを侵略していた

この事実だけでも、「東京裁判」が勝者による不法な私刑(リンチ)でしか
なかったことが明白なのに、今日でも多くの国民が「東京裁判史観」とい
う嘘を、鵜呑(まるの)みにしている。

国民があからさまな嘘を信じて、よいのだろうか?

ニューヨークのマンハッタンに、「ジ・ユナイテッド・ネーションズThe
United Nations」と呼ばれる国際機関がある。UNの略称で知られている
が、先の大戦中に日本が沖縄戦を戦っている時に、連合国が戦後世界を経
営するために、サンフランシスコで誕生し、日本は1956年に加盟すること
を許された。

日本では「国際連合」と訳されて、「国連」と略されているが、このよう
な名称の国際機関は、世界のどこにも存在していない。

もともと「ジ・ユナイテッド・ネーションズ」という呼称は、ルーズベル
ト大統領が真珠湾攻撃直後の1942年1月1日に、日本と戦っていた26ヶ国
の代表をワシントンに集めて、「ジ・ユナイテッド・ネーションズ(連合
国)」と呼ぼうと、提案したことによった。

「ジ・ユナイテッド・ネーションズ」は、第2次大戦を戦っていた一方の
軍事同盟の呼び名である。サンフランシスコで国際機関の「ジ・ユナイ
テッド・ネーションズ」が結成された時に、日本と戦っていることが加盟
資格とされた。

加盟資格について「すべての平和愛好国」と規定されたが、日本、ドイツ
をはじめとする枢軸国と戦っていることが、「平和を愛好する国」の条件
とされた。そのために、多くの国が「平和を愛好する国」として資格をえ
るために、日本とドイツに急いで宣戦布告した。

 「国際連合(国連)」は「連合国」の偽名だ

マンハッタンにあるのは、連合国(ジ・ユナイテッド・ネーションズ)の本
部だ。

日本でも「ジ・ユナイテッド・ネーションズ」は、敗戦の11月までは
「聯合國」と正しく訳されていた。今日、日本で「国連憲章」と呼ばれる
連合国憲章を起草するために、連合国の代表がサンフランシスコに参集し
たが、当時、日本の外務省は当然のことに「ジ・ユナイテッド・ネーショ
ンズ」を、「聯合國」と訳している。

ところが、11月から「聯合國」が「國際聯合」と曲訳されるようになった。

連合国憲章を「国連憲章」と訳してきたが、外務省による正訳では、「国
連憲章」は「われら連合国の人民は‥‥」(原文は「ウィー・ザ・ピープル
ズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ネーションズ」)から始まっており、
「ジ・ユナイテッド・ネーションズ」を、「連合国」と正しく訳している。

 日本はうそ偽りを精神の拠り所としてきた

 冒頭で「連合国」と訳しているのに、「ザ・チャーター・オブ・ジ・ユ
ナイテッド・ネーションズ」は、「国際連合憲章」と誤訳している。翻訳
では同じ言葉を同じように訳さなければならないのに、おかしい。

 「ジ・ユナイテッド・ネーションズ」は誕生した時から、5つの公用語
の1つである中国語では、「連合国(リエンホーグオ)」である。韓国と北
朝鮮も「国連」を正しく、「連合国(ヨナブグク)」と呼んでいる。

 同じ敗戦国のドイツでは、ドイツ語で国際連盟が「ディ・フルカーブン
ド」であったのに対して、「国際連合」はドイツが戦った連合国と変わら
ない「ディ・フェアインテ・ナツィオネン」(連合国)と呼ばれている。
イタリア語でも「レ・ナツィオニ・ウニテ」であって、「連合国」だ。

 敗戦を「終戦」、占領軍を「進駐軍」と呼んで、現実を誤魔化したよう
に、「ジ・ユナイテッド・ネーションズ(連合国)」を、戦前あった国際
連盟をもじって、「国際連合」に擦り替えたのだった。

 この誤訳のために、日本国民は「国連」が諸国の権力闘争の場でしかな
いのに、「平和の殿堂」だと誤解して、崇めてきた。

 日本政府も、「国連」が中心をまったく欠いているのに、つい十数年前
まで「国連中心主義」を、外交の基本方針としていた。

 日本国民の精神の拠り所となってきた「日本国憲法」も、「国際連合」
も、うそ詐(いつわ)りでしかない。

 日本国憲法は日本を夢遊病にしている

 日本国民は作り事の世界に生きてきたために、現実を直視する力を失っ
てしまっている。

 占領下では自由を奪われていたために、無法に従わなければならなかっ
たから、仕方がなかったが、独立を回復した後も、嘘を崇める国となって
いるのは、なぜなのか。

 私は幼い時に祖母から嘘をつくと、閻魔様に舌を抜かれると教えられた
が、日本人はあのころより全員が、はるかに冗舌になっているから、祖母
の話は迷信だったにちがいない。

 安倍首相が自民党総裁選挙に出馬するのに当たって、「平成の先の時代
へ向けて、新たな国造りを進めていく、先頭に立つ決意だ」と述べている
のに、大いに期待したい。

2018年09月27日

◆旧ソ連と同じ道を歩むか

加瀬 英明


旧ソ連と同じ道を歩むか 中国の「一帯一路」計画の成否

トランプ大統領が、習近平国家主席に関税戦争という、強烈な足払いをか
けている。

習主席は中国経済がアメリカ市場という脚のうえに立っているために、大
きく蹌踉(よろめ)いている。

だが、それだけではない。中国は今世紀に入ってから、かつてのソ連と同
じように、自壊への道を、ひたすら驀進するようになっている。

ソ連は1991年に瓦解した。効率が悪い計画経済によって病んでいたという
のに、シベリア沿海州の開発に国力を浪費するかたわら、東ヨーロッパの
衛星諸国という重荷をかかえ、第3世界に進出するために力を注ぐうえ
に、アメリカとの大規模な軍備競争に耐えることができなくなって、無様
(ぶざま)に崩壊した。

クレムリンの最高指導者は、マルクス・レーニン主義の予言に従って、ソ
連が世界を支配するという使命感にとらわれて、身の程を知らずに世界制
覇を急いだために、墓穴を掘ってしまった。

習主席も、「偉大なる5000年の中華文明の復興」という掛け声に、自ら陶
酔して、身の程を知らない、見せかけが壮大な「一帯一路」計画と、大海
軍の建設を中心とした軍拡を強行しているのを見ると、第2次大戦後にソ
連が進んでいた道程に、何とよく似ているだろうかと、思わざるをえない。

中国は分離独立闘争を恐れて、新疆ウィグル自治区や、チベットをはじめ
とする西域や、中部、北部に、巨額の投資を行っている。

「一帯一路」計画は、アジアからヨーロッパまで、70ヶ国近くを“幻想
の中華圏”に取り込もうとする、野心的というよりも、ぞんざいきわまり
ない大計画だが、すでにマレーシア、ミャンマー、パキスタンなどの多く
の諸国で、破綻するようになっている。

ソ連は1950年代から、60年代にかけて、日本についで経済成長率が高かった。

私はソ連が1957年に、アメリカに先駆けて、人工衛星『スプートニ
ク』を軌道に乗せた時に20歳だった。その4年後に、世界最初の有人衛
星飛行を行って、アメリカの朝野を狼狽させたことを、よく覚えている。

中国では、少子高齢化が進むようになって、往年の旺盛な高度成長を支え
た、豊富だった安い労働力が、失われるようになっている。ソ連では1970
年代に入ってから、同じことが起こっている。

私はかねてから、中国人は昔から「ツー(吃――食事)」、「フー(喝――飲
酒)」、「ピャオ(嫖――淫らな遊女)」、「トゥ(賭――博打(ばく
ち))」、「チーティンシ(大聴戯――京劇)」の5つを、生き甲斐にして
いると、説いてきた。清朝の歴代の皇帝も、毛沢東、周恩来、江青夫人
も、江沢民元主席もみな京劇マニアだった。

京劇は甲高い声に、耳を聾するけたたましい音曲と、大袈裟な所作による
演劇で、誇大妄想を煽るものだ。習主席が好む軍事パレードや、急拵(こ
しら)えの航空母艦を中心とする大海軍や、絵に描いた餅のような「一帯
一路」は、京劇の舞台装置を思わせる。

現在、中国海軍は艦艇数だけなら317隻で、アメリカ海軍の283隻を上回る。

今春、中国最初の国産空母が進水して、艤装中だが、西太后が日清戦争の
前夜に、北京西郊の頤和園の湖水の岸に、巨額の国費を投じて建造した、
大理石の巨船の“21世紀版”だ。西太后もやはり、京劇マニアだった。