2018年12月28日

◆世界各地で高まる緊張

加瀬 英明


日本は生まれ変わらなければならない。米国に一方的に頼る時代は、終
わった。

トランプ政権は、米国が世界を一手に守ってきた重荷を軽くして、ヨー
ロッパや、日本などの同盟諸国が分担することを求めている。

多くの米国民が、外国を防衛する重荷を担うのが、不公平だとしている。

米国は国防費にGDP(国内総生産)の3.1%を、支出している。

ところが、オバマ政権下でNATO(北大西洋条約機構)に加盟するヨー
ロッパ27ヶ国が、GDP2%を国防費にあてると約束したのにもかかわら
ず、約束を守っているのは、イギリスなど7ヶ国だけで、ヨーロッパ第一
の大国のドイツは、1.2%でしかない。

11月にワシントンを訪れた時に、トランプ政権の関係者と会食したが、な
かに国家安全会議(NSC)の幹部がいた。

「ドイツの国防費は、1%ちょっとにしかならない。ドイツ国民が自分の
国の価値が、それしかないと思っているなら、どうして米国の青年がそん
な国を守るために、血を流す必要があるだろうか」と、いった。

 日本はNATOの計算基準を当てはめると、防衛費として1.15%を支
出している。
 
ここで、私は「防衛費」という言葉を使っていることに、注目していただ
きたい。「国防費」ということが、許されないからだ。

 日本は現行の「日本国憲法」のもとで、「国防」は米国に委ねて、自衛
隊は米軍を補助して「防衛」に当たることになっている。米国が日本の国
防の主役であって、日本は傍役(わきやく)なのだ。

 日本国民は非常の場合には、アメリカが守ってくれると思い込んでいる
から、国防意識が低い。

 緊張がたかまっているのは、日本がある東アジアだけではない。ヨー
ロッパでは、いつ、ロシア軍がバルト3国や、北欧を奇襲するか、緊迫し
た情況が続いている。中東も予断を許さない。もし、イランがペルシア湾
の出入り口を封鎖すれば、米軍が出動する。

 米国はもはや同時に二正面で戦う能力を、持っていない。もし、米軍の
主力がアジア太平洋からヨーロッパか、中東に移動したら、日本の周辺が
手薄になる。

 日本が平和を享受し続けるためには、国防に真剣に取り組まねばならない。

 憲法を改正して、自衛隊を保有することを書き込むことを、急がなけれ
ばならない。



2018年12月27日

◆中華思想で視野狭窄

加瀬 英明


「中華思想」で視野狭窄 ソ連崩壊と似た道

米中対決は、どこへ向かうのだろうか?

習近平主席の中国龍は、トランプ大統領の米国鷲に襲われ
て、鱗(うろこ)が飛び散るようになっている。

トランプ政権が、中国という“悪の帝国”を倒す戦略を進めている。

かつてレーガン大統領が、“悪の帝国(イービル・エンパイア)”と極め付け
たソ連を追いつめたが、中国もソ連と同じ自壊への道を、進むようになっ
ている。

ソ連は、効率が悪い計画経済によって病んでいたのに、無人のシベリア沿
海州開発に国力を浪費し、東ヨーロッパの衛星諸国という重荷をかかえて
いたうえに、第3世界に進出するのに力を注いだために、米国との競争に
耐えられなくなって、1991年に倒れた。

ソ連の最高指導者は、非科学的なマルクス主義の予言に従って、ソ連が世
界を支配するという使命感にとらわれて、世界制覇を急いだために、墓穴
を掘った。

習主席も、「偉大な中華文明の復興」という、自らの掛け声に陶酔して、
見せかけだけが壮大な「一帯一路」計画と、大海軍の建設を強行してお
り、ソ連が第2次大戦後に歩んだ道程に、よく似ている。

中国は分離独立闘争を恐れて、新疆ウィグル自治区や、チベットをはじめ
とする西域や、中部や、北部に過大な投資を行っている。 「一帯一路」
計画によって、70ヶ国近くを“幻(まぼろし)の中華圏”である、仮想空間に
取り込もうとしているが、多くのアジア諸国で挫折するようになっている。

ソ連は1950年代から、日本についで経済成長率が高かった。ソ連は1957年
に米国に先駆けて人工衛星『スプートニク』を軌道に乗せ、4年後に世界
最初の有人衛星飛行を行って、米国を震駭させたものだった。

ソ連は1970年代に入ると、少子高齢化が進んで、旺盛な高度成長を支え
た、豊富な安い労働力が失われるようになった。中国で同じことが、起っ
ている。

中国の指導部は、何千年にわたって自分が世界の中心だという中華思想に
よる知的障害を患ってきたので、傲慢に振る舞ってきたために、まともに
対外戦略をたてられない。

私は中華思想を“中禍思想”と呼んできた。プーチン大統領のロシアは戦略
が巧みなのに、中国は中華主義による自家中毒におちいって、視野が狭窄
している。

日本は米中対決の狭(はざ)間にある。米国が勝つことになるから勝ち組
につくべきだ。

2018年12月22日

◆ハイテクの中国流出を遮断

加瀬 英明


トランプ政権 ハイテクの中国流出を遮断

私は11月後半に、ワシントンに戻った。

“米中対決”は、1991年にソ連を崩壊に導いた「東西冷戦」に続く、「米中
冷戦」と呼ばれるようになったが、これはトランプ政権だけによる決定で
はない。

上から音頭をとったのではなく、共和、民主両党の議会の総意であり、米
国の識者、主要シンクタンク、大手メディアによって、有機的に生まれた
コンセンサスである。

中国龍に跨(またが)る習近平主席が、中国の力を過信して、米国を見縊
(みくび)って、世界の覇権を握ろうとしているのに対して、米国鷲が立
ち塞(ふさ)がった。

習主席は、南シナ海に埋め立てた7つの人工島を、「軍事化しない」と、
オバマ大統領に固く約束したのに、ミサイルを配備して、世界の主要な通
商路である南シナ海を支配しようとしているのをはじめ、中国からアジア
を通ってヨーロッパまでの諸国を取り込む「一帯一路」戦略を露骨に進め
ているのに、米国が堪忍袋の緒を切らした。

米中はすでに関税戦争で火花を散らしているが、11月のアルゼンチンの
G20サミットにおいて、トランプ大統領が習主席と会談して、米国がさら
に対中関税を引きあげるのを、90日間猶予することを約束した。だが、
90日間で複雑な交渉が、決着するはずがない。鷲と龍の格闘劇の中休み
にしかすぎない。

トランプ政権は、中国龍を躾けようとしているだけではない。真意は、中
国共産党体制を打倒することを、はかっている。

米中関税戦争は、序の口でしかないのだ。中国のファーウェイなどの通信
企業に対する締めつけも、軍拡競争も、傍役でしかない。

米中対決の主役は、中国にハイテクノロジー――先端技術が流れ込むのを絶
ち切って、枯渇させることだ。暴れ龍の血液の循環を、停めるのだ。

 ホワイトハウスに向かって、左側に「オールド・エキュゼキュティブ・
オフィス」と呼ばれる、煉瓦造りの古色蒼然とした建物がある。ここに歴
代の副大統領の執務室も、置かれている。

先端技術の発達の速度は、いっそう加速化している。トランプ政権が2年
前に船出した時には、ハイテクノロジーの担当者は1人しかいなかった
が、今では100人以上がワン・フロアを埋めて働いている。

日本は先端技術競争に、遅れをとってはならない。


2018年12月21日

◆中国の世界制覇を断固阻止

加瀬 英明


世界のありかたが新しいリーダーを生むのか、あるいは新しいリーダーが
現われて、世界のありかたを、つくり変えるのだろうか?

 トランプ大統領が突然のように、世界の桧(ひのき)舞台に登場した
が、いったい、どちらに当たるのだろうか?

トランプ大統領は、粗野乱暴で、衝動的に行動する。それだけにトランプ
政権が発足してから2年間、世界のかたちが激変している。

トランプ大統領が北朝鮮の金正恩委員長とサシで会談した結果、北朝鮮が
ミサイル発射と核実験を行わないでいるが、大きな功績だ。この状況が、
今後、少なくとも2年は続こう。

米国経済はオバマ政権まで、多くの規制が活力を損ねていたのを撤廃し、
失業率が50年振りに低いという、好況に転じた。

しかし、何といっても、トランプ政権の2年間の最大の出来事といえば、
中国が世界を制覇しようと野望を進めているのを挫(くじ)くことを、決
定したことだ。

トランプ鷲と習近平龍による、死闘の幕が切って降ろされた。

トランプ大統領が米国の舵(かじ)を握ってから、世界の潮流が逆流し始
めた。

世界を牛耳ってきたグローバリズムの時代が終わった。それぞれの国が、
国益を中心として行動する、古い世界に戻るのだ。

グローバリズムは、米大企業が金儲けのために自国の民衆を犠牲にして、
製造業を中国を主とする低賃金の国々へ放り投げて、所得格差を拡大する
ことによって、伝統的な社会生活や、習慣を破壊してきた。人と人との絆
(きずな)が粉々に砕かれて、個が尊重されるあまり、男女を区別するこ
とをはじめ、あらゆる差別が悪だとされるようになった。

民主党、大手メディア、高所得・高学歴者、主要研究所は、大企業によっ
て養われてきたから、グローバリストとして、“トランプ非難”の必死の大
合唱を行っている。

だが、トランプ大統領が米社会を分断しているのではない。米社会が分断
されていたから、“トランプ現象”が起って、共和党にとっても部外者だっ
た、トランプ大統領が誕生したのだ。

民主党は2年後の大統領選挙へ向けて、看板になるリーダーも、政策も欠
いて、息絶え絶えだ。

トランプ大統領が、今後、よほどのヘマをしないかぎり、トランプ時代が
続こう。

トランプ現象を正視しなければ、ならない。


2018年12月12日

◆兇獣が跋扈する国際社会の闇

加瀬 英明


トルコのサウジアラビア総領事館を訪れたアメリカに亡命中だったサウジ
アラビアの反体制ジャーナリストのジャミル・カショギ氏が、本国から派
遣された情報機関のチームによって、館内で惨殺された。

日本のテレビのワイドショーによって、連日、大きく取りあげられた。

トルコの新聞によって、カショギ氏が総領事館内で殺害されたと報じられ
てから、アメリカのポンペイオ国務長官が、カショギ氏殺害の疑いをめ
ぐって、サウジアラビアに急いで飛んで、実権を握っている33歳のモハ
マド・ビン・サルマン皇太子と会見した。

この時のポンペイオ長官とサルマン皇太子の写真を見ると、2人とも微笑
んでいる。

トランプ政権は、カショギ氏惨殺が事実であっても、サウジアラビアが中
東外交の重要な駒であり、武器輸出の大切な顧客であることから、大事
(おおごと)にしたくないと望んでいた。

サウジアラビア政府は殺害を隠蔽できず認めたが、政府や、皇太子の指示
によるものでなく、情報機関が勝手に行ったと言い逃れている。

読者の多くが、サウジアラビアに対してだけでなく、ポンペイオ長官が満
面の笑顔をつくって、サルマン皇太子と握手を交したのを見て、不快感を
いだかれただろう。

それなら、トランプ大統領が笑顔を浮べて、北朝鮮の金正恩書記長を抱擁
したのは、どうなのか。金書記長は異母兄の金正男(キムジョンナム)氏を
マレーシアで、白昼、暗殺したではないか。

トランプ大統領は、中国の習近平主席とも抱きあった。中国は新疆ウイグ
ル自治区で100万人以上を「集団訓練所」に拘置して、多くのウイグル人
を虐殺している。チベット、内モンゴルでも、戦慄(せんりつ)すべきこと
が起っている。

ところが、トランプ大統領が金書記長や、習主席と親密に振る舞っている
映像を見ても、強い嫌悪感に覚えることがないだろう。

ロシアのプーチン大統領も、国外に亡命した多くの反体制派を、暗殺して
いる。

私たちの日常生活の感覚で、諸外国を判断してはならない。サウジアラビ
アは、中国、北朝鮮や、ロシアと体質が変わらない国家だ。

世界は日本国憲法の前文で、たからかに謳(うた)っている、「公正と信
義」を重んじる「平和を愛好する諸国民」によって、構成されているわけ
ではない。国際社会は兇獣が横行するジャングルと、変わらないのだ。

私はこれまで、今年に入ってから2回にわたって、サウジアラビアが安定
を保てない可能性が高いと、警告してきた。

サルマン皇太子は、サウジアラビアの“脱石油化”をはかって、きらめく近
代国家に造り変えようとする、壮大な計画を進めてきたが、私は皇太子の
改革が成功するはずがないと、予想してきた。

カショギ氏はメディアが伝えているような、自由主義のジャーナリストで
はない。アル・カイーダや、ムスリム同胞団が信奉するイスラム原理主義
に加担して、サウジ王家が民意を踏み躙(にじ)っていることを、亡命先の
アメリカから激しく非難してきた。

サルマン皇太子がカショギ氏を目障わりだとして、計画的に殺害したの
は、人口2400万人あまりのサウジアラビアの安定がきわめて脆いことを、
示している。

皇太子が82歳で、病んでいるサルマン父王によって、罷免される可能性も
あろう。これまでサルマン国王は2人の皇太子を、解任してきた。

サウジアラビアをめぐる報道を、対岸の火災として見てはならない。日本
はサウジアラビアを中心とするアラビア半島の産油諸国から、日本経済を
支える石油天然ガスの80%を輸入している。アラビア半島が混乱に陥った
ら、日本が大きく蹌踉(よろめ)くことになろう。

日本のテレビの「ワイドショー」は「ショー」(英語で見世物)の言葉通
り、視聴者の好奇心だけみたす娯楽番組でしかない。


2018年12月07日

◆国を想う心を学ぼう

加瀬 英明


明治を創った英傑に、国を想う心を学ぼう

今年は、明治維新150周年に当たるが、『日本の偉人物語 伊能忠敬 西
郷隆盛 小村寿太郎』(光明思想社)という、幕末から日本を創った3人
を取りあげた、良書が出版された。各家庭に1冊、常備したい本だ。

伊能忠敬(いのうただたか)(1745年〜1818年)は農家の子で、和算(数
学)、天文学、測量を学び、55歳から17年かけて全国の沿岸を測量して、
精密な日本全図をのこした。

今年は、忠敬の没200年に当たる。私は忠敬の次女しのが、千葉の銚子の
隣の旭村(現旭日市)の農民・加瀬佐兵衛に嫁いだことから、忠敬の孫の
孫の子である玄孫(やしゃご)に当たる。

この春に、忠敬の没200年を記念して、都内のホールにおいて、忠敬の測
量に協力した人々の子孫が七十数人上京して、私たち忠敬の子孫から、感
謝状を贈る式典が催された。

忠敬は日本の近海を脅かすようになっていた、西洋諸国から日本を守るた
めに、精密な沿岸図をつくるのに、余世を捧げた。私の父方の祖父は、私
の生前に他界した。祖母のか津は、忠敬が養子となって酒造りをしていた
佐原の庄屋の近くの、醤油造り家の娘だったが、私に忠敬の国を想う心を
伝えた。

忠敬の直弟子であった間宮林蔵(まみやりんぞう)も、烈々たる愛国者だっ
た。忠敬の没後に、北方の千島列島と樺太の測量を行ない、幕末の安政
2(1855)年に結ばれた露和新条約によって、国後(くなしり)、択捉
(えとろふ)、歯舞(はぼまい)、色丹(しこたん)の北方四島を、日本領とし
て認めさせた。

今日でも、樺太とシベリアの間の海峡が、間宮海峡と呼ばれるが、林蔵の
業蹟である。日ロ間で明治5(1875)年に、千島樺太交換条約が結ばれ、
千島列島がすべて日本領となったが、林蔵の力によるものである。

西郷隆盛は、私の母方の郷里の鹿児島が生んだ明治維新の英雄だ。西郷の
大活躍はよく知られているが、西郷の右腕として尽力したのが、山岡鉄舟
だった。鉄舟なしには、西郷と勝海舟による江戸無血開城はなかった。

鉄舟は旗本の五男で、剣道の達人だったが、生涯、無私無欲で、日本の行
く末だけをひたすら想った。西郷に鉄舟を評して、「命もいらぬ、名もい
らぬ、金もいらぬといったような、始末に困まる人です」といわせてい
る。西郷だからこそ、鉄舟を見込むことができたのだった。

小村寿太郎(こむらじゅたろう)(1855年〜1911年)は、今日の宮崎県に
あった、飫肥藩(おびはん)の藩士の子として生まれた、明治を代表する外
交官である。

寿太郎は小柄だったが、日本男子の気魄(きはく)に満ちていた。寿太郎が
育った日南市にある『小村寿太郎記念館』に、寿太郎が日露戦争の講和条
約であるポーツマス条約を調印した時に着た、フロックコートが展示され
ているが、七五三の少年の衣装のように小さい。

私の自宅の近くに『振徳館』という、飫肥藩の藩校の名をとった、武道の
道場があるが、毎年、新年の道場開きに招かれて、乾杯の発声を行うこと
になっている。居合、警視庁師範による逮捕術、陸上自衛隊員による銃剣
術、空手道の演武などが、繰り広げられる。

日本が明治維新という、世界の奇蹟を行うことができたのは、国民が国を
想う燃えるような心と、武を磨いたからだった。

日本国憲法は前文から、自虐精神によって始まっており、日本が自立する
ことを否定している。

幕末から明治にかけた先人たちが、この憲法を読んだら、いったい、どう
思うだろうか。

2018年12月06日

◆国を想う心を学ぼう

加瀬 英明


明治を創った英傑に、国を想う心を学ぼう

今年は、明治維新150周年に当たるが、『日本の偉人物語 伊能忠敬 西
郷隆盛 小村寿太郎』(光明思想社)という、幕末から日本を創った3人
を取りあげた、良書が出版された。各家庭に1冊、常備したい本だ。

伊能忠敬(いのうただたか)(1745年〜1818年)は農家の子で、和算(数
学)、天文学、測量を学び、55歳から17年かけて全国の沿岸を測量して、
精密な日本全図をのこした。

今年は、忠敬の没200年に当たる。私は忠敬の次女しのが、千葉の銚子の
隣の旭村(現旭日市)の農民・加瀬佐兵衛に嫁いだことから、忠敬の孫の
孫の子である玄孫(やしゃご)に当たる。

この春に、忠敬の没200年を記念して、都内のホールにおいて、忠敬の測
量に協力した人々の子孫が七十数人上京して、私たち忠敬の子孫から、感
謝状を贈る式典が催された。

忠敬は日本の近海を脅かすようになっていた、西洋諸国から日本を守るた
めに、精密な沿岸図をつくるのに、余世を捧げた。私の父方の祖父は、私
の生前に他界した。祖母のか津は、忠敬が養子となって酒造りをしていた
佐原の庄屋の近くの、醤油造り家の娘だったが、私に忠敬の国を想う心を
伝えた。

忠敬の直弟子であった間宮林蔵(まみやりんぞう)も、烈々たる愛国者だっ
た。忠敬の没後に、北方の千島列島と樺太の測量を行ない、幕末の安政
2(1855)年に結ばれた露和新条約によって、国後(くなしり)、択捉(え
とろふ)、歯舞(はぼまい)、色丹(しこたん)の北方四島を、日本領として
認めさせた。

今日でも、樺太とシベリアの間の海峡が、間宮海峡と呼ばれるが、林蔵の
業蹟である。日ロ間で明治5(1875)年に、千島樺太交換条約が結ば
れ、千島列島がすべて日本領となったが、林蔵の力によるものである。

西郷隆盛は、私の母方の郷里の鹿児島が生んだ、明治維新の英雄だ。西郷
の大活躍はよく知られているが、西郷の右腕として尽力したのが、山岡鉄
舟だった。鉄舟なしには、西郷と勝海舟による江戸無血開城はなかった。

鉄舟は旗本の五男で、剣道の達人だったが、生涯、無私無欲で、日本の行
く末だけをひたすら想った。西郷に鉄舟を評して、「命もいらぬ、名もい
らぬ、金もいらぬといったような、始末に困まる人です」といわせてい
る。西郷だからこそ、鉄舟を見込むことができたのだった。

小村寿太郎(こむらじゅたろう)(1855年〜1911年)は、今日の宮崎県に
あった、飫肥藩(おびはん)の藩士の子として生まれた、明治を代表する外
交官である。

 寿太郎は小柄だったが、日本男子の気魄(きはく)にみちていた。寿太郎
が育った、日南市にある『小村寿太郎記念館』に、寿太郎が日露戦争の講
和条約であるポーツマス条約を調印した時に着た、フロックコートが展示
されているが、七五三の少年の衣装のように小さい。

私の自宅の近くに『振徳館』という、飫肥藩の藩校の名をとった、武道
の道場があるが、毎年、新年の道場開きに招かれて、乾杯の発声を行うこ
とになっている。居合、警視庁師範による逮捕術、陸上自衛隊員による銃
剣術、空手道の演武などが、繰り広げられる。

日本が明治維新という、世界の奇蹟を行うことができたのは、国民が国
を想う燃えるような心と、武を磨いたからだった。

日本国憲法は前文から、自虐精神によって始まっており、日本が自立す
ることを否定している。

幕末から明治にかけた先人たちが、この憲法を読んだら、いったい、ど
う思うだろうか。

2018年12月05日

◆銀座の酒場の扉は真如の門

加瀬英明


この夏は世界的な気象変動のせいだろうが、ことのほかに暑かった。

暑き日を海に入れたり最上川という、芭蕉の句がふと浮んだが、現代のよ
うに冷房がどこへいっても普及していたら、蕉門でいう風雅な詩興が涌く
はずがないと思って落肝した。

だが、空に神鳴(かみなり)が轟くと、時がまた秋を運んできてくれる。

秋が到来して、たおやめが新米を噛む醸成月(かみなしづき)が巡ってくる
たびに、男たちを釣る漁火(ネオン)に誘(いざな)われて、彷徨(ほうこう)
することになる。

今年は、秋が待たれた。「いとど心づくしの秋風」という一節が、『源氏
物語』(須磨)にあるが、身に沁みる。到来というと到来物のように、贈
られてきたいただきものを意味している。「いとど」は、いよいよだ。

私は20代から、同(おな)い年の文芸春秋社の堤堯氏、講談社の川鍋孝文氏
と3人で、銀座の『眉』『エスポァール』『ラモール』『姫』など一流の
酒場(クラブ)に、よく通ったものだった。

しばらく前に、ナベちゃんは私たちに断ることなく途中下車して、故人に
なってしまった。

あのころは、雑誌社や物書きには“学割”があった。

私が月刊『文芸春秋』に、評論家の肩書をはじめて貰って書くようになっ
たのは、26歳の時で、堤氏が担当してくれた。

堤氏とは2年前まで、DHCテレビで対談番組を持っていた。高嗤(たか
わら)いするのがトレードマークだが、もし、悪事を働いて手配されたと
したら、もっとも大きな特徴としてあげられることだろう。

月日がたつのは早く、堤氏も私もいつの間にか、八十路(やそじ)に迷い込
んでしまった。

12月に、82歳の誕生日がまわってくるが、万年少年なのか、成育不全なの
か、実感がともなわない。

古人が、自分はまだ若いと思っていても、少年老い易くといって、すぐに
齢(よわい)を重ねてしまうから、一寸の光陰を軽んずことなく、寸刻を惜
しんで遊ばなければならないと戒めているのを、もっと心に刻んで生きる
べきだったと悔いてみても、もう遅いのだろうか。

それでも酒量とともに、体力が落ちていることを、認めなければならない。

若い時には、若さを乗り越えようと努めたが、老いると老いに克とうとす
るから、生きているかぎり、克己の戦いが続いてゆくのだろう。

もっとも、舌耕(ぜっこう)や筆耕(ひっこう)によって、乞食者(ほがいび
と)のように生計を立てているから、猫がじゃらされているように、刻々
と目先が忙(せわ)しく変わってゆくために、俗世を離れて、年金生活を享
受しながら、欲するままに心静かに、悠悠自適の境涯を楽しむ暇(いとま)
がない。

昨年、北海道のいまでは町になっている寒村にある、由緒ある神社の創建
120年の式典に招かれて、神道について短い講話を行った。周辺の都市
や、町村から、モーニングか、黒の上下の背広に、白、銀ネクタイ姿の地
元の名士たちが集っていた。

式典のあとの直会(なおらい)で、私から1人おいて座った80代なかばとい
う来賓の1人が、「倅(せがれ)に会社を譲って、“飲む、打つ、買う”の
日々ですよ」と自慢するので、「へえ、お元気ですねえ」と驚いたら、
「3食ごとに薬を飲みます。病院へ行って注射を打ちます。テレビのCM
でサプリの広告に釣られて、女房か、私が買います」と、答えた。

今年は、3冊の著書が上梓(じょうし)された。といっても、1冊は以前の
著書が文庫版に化けたのと、2冊は対談本だ。年末までに、もう1冊加わ
ることになっている。もっとも、昨年は七冊続けてでたが、ほとんどが古
い本の復刻版だった。

銀座の酒肆(しゅし)に戻ろう。友人と何年か振りで、馴染みの店を覗いた。

こんな時には、仏教の唯識派(ゆいしきは)の用語で阿頼耶識(あらやしき)
というが、忘れたはずの過去の行いが潜在意識として、体のなかにしっか
りと刻まれていることを、あらためて覚らされる。

脂粉の香が漂ってくると小さな店が、雄花と雌花が咲き乱れる花園に変わる。

いや、雄蕊(おしべ)と雌蕊(めしべ)というべきだろう。植物学によると、
雌蕊のほうが受精器官だ。まさに、愛染曼荼羅(あいぜんまんだら)の立体
版だ。

愛染明王は愛欲煩悩がそのまま、悟りになるという、釈尊の有難い教えだ
から、酒肆(クラブ)の扉は、これから伽藍に入る、真如(しんにょ)の門な
のだろう。

唯識派によれば、あらゆる存在は識、すなわち心にすぎない。眼識、耳
識、鼻識、舌識、身識の五感は、心そのものだ。

真如も仏教語であって、真理をいうが、阿頼耶識も、愛染明王も、唯識
も、修業、伽藍も、もとはすべて、インドのヒンズー古語の梵語(サンス
クリット)だ。

 もう一つ刹那(せつな)も、サンスクリットからきた言葉だが、人生は刹
那――指でひと弾(はじ)きする短い時間――刹那を大切にして、充実させなけ
ればならない。

 店を久し振りに訪れたから、私にとって新顔だった20代だという、ホ
ステスが隣に座った。もう銀座の濁流か、清水に馴染んでいようが、サ
ン・ローランか、グッチの法衣(ドレス)に身を包んでいた。

 軽口をたたいていたら、「おいくつですか?」とたずねるので、私が一
瞬怯んだら、「男女は恋人になったら、同じ歳です」と、切り返された。
励ましてくれる、利発な娘(こ)もいるものだと、感心した。

 男女関係は、異文化交流だから難しい。山本有三先生が、「結婚は雪げ
しきのようなもので、はじめはきれいだが、やがて雪解けして泥濘(ぬか
るみ)になる」と、告白されている。

 そこへゆくと、中島兄貴(あにい)はいつだって姐さんと睦まじい。きっ
と、姐さんを神々が降りてこられて宿られる依代(よりしろ)のように、大
切にされているにちがいない。
(中島繁治氏は日大OB誌『熟年ニュース』主宰者)


2018年12月02日

◆ペリー浦賀来寇から僅か15年で

加瀬 英明


ペリー浦賀来寇から僅か15年で明治元年となった

アメリカ、ヨーロッパにおいて、かつて日本文化への関心がこれほど高
まったことはない。

私は昭和40(1965)年に、東京放送(TBS)が出資して、『エンサイク
ロペディア・ブリタニカ』(大英百科事典)の最初の外国語版の『ブリタ
ニカ国際大百科事典』(全21巻)を編集して出版した時に、初代の編集長
をつとめた。29歳だった。

編集の最盛期には、翻訳、縮訳と、新しい項目をつくるために、200人以
上が携わった。当時、もとのブリタニカ百科事典といえば、欧米を世界の
中心としていたから、額田王(ぬかたのおおきみ)、和泉式部も、義経も、
二宮尊徳も、平田篤胤も、日本で自動車をつくっていることも、載ってい
なかった。そこで、日本とアジアの新しい項目を、加えなければならな
かった。

“日本の時代”が目前にある

今日の世界をあの時と較べると、隔世という言葉が当て嵌まる。私はアメ
リカの大学に留学したが、アメリカ国民の日本への関心は低いものだっ
た。大多数のアメリカ人にとって、日本と中国と朝鮮の区別がつかなかった。

この半世紀あまりに、日本国民の営々たる努力によって、世界における日
本の存在が、あのころには想像できなかったほど、大きなものに変わっ
た。当時を振り返えると、感慨深い。

今年は、明治維新150周年に当たる。年表をみると、ペリー提督が率いる
黒船艦隊が浦賀に来寇したのが、嘉永6(1853)年だった。日本は僅かそ
の15年後に、「御一新」と呼ばれる明治維新を行うことによって、明治
元年を迎えた。

『オランダ風説書』は世界への窓だった

イギリスが中国に阿片戦争を仕掛けたのが、天保10(1840)年だったが、
ペリーが来冠する13年前のことだった。

幕府も諸藩も、長崎に入港するオランダ船から入手した、海外の最新の情
報をまとめた『オランダ風説書』によって、詳細な情報を手に入れていた。

ペリー艦隊が搭載していた砲の射程が、3500メートルもあるのに対して、
わが砲は家康の時代から変わっておらず、射程が4、500メートルしかな
く、日本の古い砲が火玉しか発射することができないのに、ペリーの砲身
のなかに螺旋が施されて、威力がある炸裂弾を撃つことも知っていた。

阿片戦争から明治元年までの28年間を振り返ると、戦後の日本の目覚まし
い経済復興をもたらした、驚嘆に価いするエネルギーをみる思いがする。

島崎藤村の『夜明け前』といえば、幕末の木曽路の宿場町の生活を、克明
に描いた長編小説だ。

山深い木曽路にある宿場が舞台となっており、庄屋の青年である青山半蔵
が主人公である。半蔵は家業に励しむかたわら、賀茂真淵(かものまぶ
ち)、本居宣長(もとおりのりなが)、平田篤胤(ひらたあつたね)をはじめ
とする江戸時代の国学者の著作を学んで、日本の行く末を真剣に憂いていた。

『夜明け前』を読むと、幕末の日本をよく理解することができる。あの時
の日本には、半蔵のような青年が、全国のどこにでも存在していた。江戸
時代に入って生まれた国学と、半蔵のような国民が、未曽有の国難に見舞
われた日本を救ったのだった。

天皇家が日本を守った

だが、あの時の日本を護ったのは、天皇の存在だった。

もし、幕末に天皇家が存在しておらず、徳川家しかなかったとしたら、日
本は洋夷に対してまとまって団結することがなく、独立を全うできなかっ
たはずだ。

来年4月に、平成が31年で終わる。このあいだに、中国、北朝鮮からの脅
威が募るなど、日本を取り巻く国際環境が、いやおうなしに緊迫するよう
になった。平成のこれまでの30年は、阿片戦争から明治元年までの28年
より長い。

それにもかかわらず、日本はこの30年のあいだ、泰平の深い眠りから醒
めずに、72年前にアメリカの占領軍が、銃剣を突きつけることによって強
要した『日本国憲法』を改めることができずに、眠り続けてきた。いまだ
に護憲派が強い力を持っている。

幕末には、どこにでも青山半蔵のような国民がいたというのに、どうして
国を守る気概気力を失って、腑甲斐ない国になってしまったのだろうか。

アメリカの軍事保護による一国平和主義

アメリカによって与えられた「新憲法」のもとで、日本は徳川期の一国平
和主義――鎖国の繭(まゆ)のなかに、ふたたび閉じ籠ってしまった。

国際環境がいっそう厳しさを増してゆくなかで、一国平和主義の繭(まゆ)
を一日も早く破って、成虫になって羽搏(はばた)かなければ、この国が亡
びてしまおう。

明治維新150周年を、ただ祝うだけであってはならない。

日本は150年前に世界の現実に適応することによって、独立を守ることが
できたのだった。

いま、安倍政権がようやく現行憲法のごく一部を改正しようと、眦(まな
じり)を決して乗り出した。  

アメリカは日本占領が始めた翌年に、日本を未来永劫にわたって自立でき
ない国に変えるために、『日本国憲法』を強要したのだった。

現憲法の改正ではなく、修正を

憲法第95条で、「改正」という言葉を用いているから仕方がないが、私は
親しい国会議員に、改正を呼び掛ける時に「改正」ではなく、「修正」と
いう言葉を使ってほしいと訴えている。「改正」というと、現行憲法を全
面的に書き改めようとしている、誤解を与える。

いま、日本が直面する国際環境が、きわめて困難なものとなっているため
に、憲法のごく一部だけを修正することが、求められている。「修正」と
いったほうが、多くの国民の理解をえられると思う。

このかたわら、このところ日本文化への共感が全世界にわたって、ひろま
るようになっている。

幕末から明治にかけて、ジャポニズムと呼ばれたが、浮世絵を中心にして
日本の美術がヨーロッパ、アメリカの芸術に大きな影響をおよぼした。日
本文化に関心が集まるのは、それ以来のことだ。

だが、かつてのジャポニズムが、視覚に限られていたのに対して、今回の
日本文化の高波は、食文化から精神のありかたにまでわたっており、はる
かに深いものがある。

和食の流行は、和食が自然と一体になっていることから、健康志向によっ
て支えられているが、日本が発明したスマートフォンのエモジや、ポケモ
ンなどのアニメが世界を風靡しているのは、万物に霊(アニマ)が宿ってい
るという、日本の八百万千万(やおろずちょろず)の神々信仰にもとずいて
いる。いま、西洋では独善的な一神教が、揺らぐようになっている。

この3、40年あまり、西洋においても自然と共生するエコロジーが、人類
を守り、救うと信じられるようになっているが、エコロジーこそ神道の心
である。

 在日外交団長と対談「神道が世界を救う」

 マンリオ・カデロ・サンマリノ共和国駐日大使は、在日外交団長をつと
めているが、神道に魅せられて、これまで全国にわたって100近い神社
を参拝してきた。大使は和を重んじ、自然を敬う神道の心こそが、抗争と
流血が絶えることがない世界を救うことになると、信じている。

 私はカデロ大使と、『神道が世界を救う』(勉誠出版新書)という対談
本を、9月に刊行した。

 日本には150ヶ国以上の外国大使が駐箚(ちゅうさつ)しているが、
20人あまりの大使が日本語に堪能だ。日本語ができる大使や、日本に在
住する外国人からこの対談本によって、日本人をつくっている文化と、日
本の生きかたや、心をはじめてよく理解できるようになったと、感謝され
ている。

2018年11月24日

◆中国を兵糧攻めにする? 

加瀬 英明


中国を兵糧攻めにする? 先端技術の中国流出を阻む米国の戦略

米中貿易戦争――あるいは関税戦争をめぐって世論がかまびすしいが、米中
関係のごく一部しか見ていない。

マスコミは木を見て、森を見ないのだ。

トランプ大統領は中国の共産体制を崩壊させることを決意して、中国と対
決してゆく方針を固めた。

習主席は面子にこだわって、関税戦争を受けて立っているが、中国経済が
アメリカ市場に依存しているために、すでに蹌踉(よろめ)いている。

いまではワシントンで、ついこの間まで親中派だった国務省、主要シンク
タンクも、中国と対決することを支持している。アメリカの中国観の地殻
大変動だ。

トランプ大統領が中国という“悪の帝国”を倒す戦略の中核にあるのが、テ
クノロジーだ。

同盟諸国とともに、先端技術の中国への流出を阻む、兵糧攻めにするの
だ。関税戦争や、軍拡競争は脇役になる。

かつてレーガン大統領が、“悪の帝国(イービル・エンパイア)”と極め付け
たソ連を追いつめたのも、アメリカを中心とする、自由世界のテクノロ
ジーの力によるものだった。

中国はテクノロジー後進国だ。宇宙ロケットを打ち上げられても、ジェッ
ト機のエンジンをつくれないので、ロシアから買っている。

中国の指導部は何千年にもわたって、中華思想による知的障害を患ってき
たために、弱い相手は呑み込むものの、まともな対外戦略をたてられない。

力を持つようになると、慢心して、外国を見下すために、傲慢に振る舞う。

中華思想は、中禍思想と書くべきだ。ロシアは戦略が巧妙だが、中国は中
華主義の自家中毒によって、視野が狭窄している。

習主席は中国悠久の歴史から、学べないのだろうか。

オバマ政権は中国に対して宥和政策をとっていたが、中国はアメリカの弱
さだと見縊(みくび)った。

 習主席は3年前に訪米して、オバマ大統領と米中サミットを行い、ホワ
イトハウスで行った共同記者会見で、中国が南シナ海で不法に埋め立てて
造成した7つの人工島を、軍事化することはないと、明言した。

 しかし、その後中国は7つの島に、ミサイルや、爆撃機を配備するよう
になった。

 中国人は平然と嘘をつくが、アメリカ人は嘘をもっとも嫌っている。

 私はかねてから、中国人は昔から「吃(ツー)(食事)」「喝(フー)(飲
酒)」「嫖(ピャオ)(淫らな遊女)」「賭(トウ)(博打(ばくち))」「大
聴戯(チーティンシ)(京劇)」の五つを、生き甲斐にしていると、説いて
きた。

 清朝の歴代の皇帝も、毛沢東、周恩来、江青夫人も、江沢民元主席も、
みな京劇マニアだった。

 京劇は甲高い声に、耳を聾するけたたましい音曲と、大袈裟な所作に
よって、誇大妄想を煽る舞台劇だ。

 習主席が好む大規模な軍事パレードや、急拵(こしら)えの航空母艦を中
心とする大海軍や、絵に描いた餅のような「一帯一路」は、京劇の舞台装
置を思わせる。清朝を崩壊させた西太后も、京劇マニアだった。

 現在、中国海軍は艦艇数が317隻で、アメリカ海軍の283隻を上回
る。西太后が日清戦争前夜に、北京西郊の頤和園の湖岸に、巨額の国費を
投じて建造した、大理石の巨船の“21世紀版”だ。

2018年11月21日

◆大坂なおみ選手と人種平等を実現 

加瀬 英明


大坂なおみ選手と人種平等を実現した日本

イギリス王室の結婚式典

私はテレビを観て泣いたことは、めったにない。

今年5月に、イギリスのヘンリー王子とアメリカ人女優のメーガン・マー
クルさんの結婚式典が、ウィンザー城教会において挙げられた。

イギリス王室はウィンザー家と呼ばれ、ウィンザー城は王家の居城である。

王子とメーガンさんが、荘重なイギリス国歌が吹奏されるなかを、お伽噺
のような馬車に乗って、輝く銀の胸冑をつけた龍騎兵の一隊によって守ら
れて、教会へ向かった。

この光景を見て深く感動した。不用意に、目頭が熱くなった。

華燭の式典では、アメリカ聖公会の黒人主教が、説教壇から黒人訛りの英
語で、愛について熱弁を振った。

私はアメリカ黒人女性の聖歌隊が、黒人霊歌(ゴスペル)の『イエスととも
に歩め(スタンド・バイ・ミー)』を合唱した時に、涙を拭った。

メーガン妃は、黒人の母と白人のあいだに生まれた。

いまでも、白人社会では、黒人の血が少しでも混じっていれば、「黒人
(ブラック)」と呼ばれる。オバマ大統領も母が白人であるのに、黒人の大
統領とされた。

ウィンザー城の教会で、エリザベス女王、フィリップ殿下、チャールズ皇
太子をはじめ、盛装した王族を前にして、アメリカから招かれた黒人の聖
歌隊が、黒人霊歌を合唱した。

黒人霊歌は、数百万人の黒人がアメリカに連れてこられて、鎖に繋がれた
奴隷として生きることを強いられた時に、救いを求めてうたった歌だ。

日本の戦いがもたらした人種平等の世界

イギリスの王子が黒人と結婚するのは、王室の長い歴史で、はじめてのこ
とだった。

3、40年前でも、まったく考えられなかったことだった。

これも、日本が先の大戦において国をあげて戦い、大きな犠牲を払って、
アジアを欧米の過酷な植民地支配から解放し、その高波がアフリカ大陸を
洗って、次々と独立していった結果、人種平等の世界が人類の長い歴史
で、はじめて招き寄せられたためだった。

きっと、アジア・太平洋の広大な戦場に散華された英霊が、天上からこの
光景を眺められて、嘉納されたにちがいないと思った。

来年2月は、第1次大戦のベルサイユ会議とも呼ばれるパリ講和会議で、
国連の前身である国際連盟を創設するのに当たって、日本全権団が連盟規
約に「人種平等条項」を入れることを提案して、11対5の票決によって可
決されようとした時に、議長だったウッドロー・ウィルソン・アメリカ大
統領が、「このような重要な事項は、全会一致によって決定しなければな
らない」といって葬った、100周年に当たる。

ヨーロッパの小国が賛成票を投じたものの、国内で黒人を差別していたア
メリカをはじめ、白人の植民地諸国が反対したのだった。

アメリカでは第2次大戦後も、国内で黒人に対するいわれない差別が続い
たが、アフリカの外交官が黒人が入れなかったホテルや、レストランなど
に自由に出入りするのを見て、黒人が立ち上って公民権運動が起った。

 1960年代に、マーチン・ルーサー・キング師が率いる公民権運動が
ついに実を結び、黒人に対する法的な差別が撤廃されて、今日に至っている。

 私は1959年にアメリカに留学したが、ゴルフコースに黒人といえ
ば、キャディしかいなかったし、テニスコートでも、清掃員か、球拾いし
か、見ることがなかった。野球のメジャーリーグで、黒人選手がプレイで
きるようになったのは、第2次大戦後のことだ。

 ゴルフ界でタイガー・ウッズや、テニス界でウィリアム姉妹が活躍して
いるが、公民権運動が実った以後のことだ。
大坂なおみ選手が健闘して、脚光を浴びている。

 なおみさん、英霊が応援していますよ!

2018年11月16日

◆中国は前車ソ連の轍を踏むことになるのか

加瀬 英明


米中貿易戦争――あるいは関税戦争をめぐって世論がかまびすしいが、米中
関係のごく一部しか見ていない。

トランプ大統領は中国の共産体制を崩壊させることを決意して、中国と対
決してゆく方針を固めた。

習主席は面子にこだわって、関税戦争を受けて立っているが、中国経済が
アメリカ市場に依存しているために、すでに蹌踉(よろめ)いている。

いまではワシントンで、この間まで親中派だった国務省、主要シンクタン
クも、中国と対決することを支持している。アメリカの中国観の地殻変動だ。

トランプ大統領が中国という“悪の帝国”を倒す戦略の中核にあるのが、テ
クノロジーだ。同盟諸国とともに、先端技術の中国への流出を阻む、兵糧
攻めにするのだ。関税戦争や、軍拡競争は脇役になる。

かつてレーガン大統領が、“悪の帝国(イービル・エンパイア)”と極め付け
たソ連を追いつめたのも、アメリカを中心とする、自由世界のテクノロ
ジーの力によるものだった。

中国はテクノロジー後進国だ。宇宙ロケットを打ち上げられても、
ジェット機のエンジンをつくれないので、ロシアから買っている。

中国の指導部は何千年にもわたって、中華思想による知的障害を患って
きたために、弱い相手は呑み込むものの、まともな対外戦略をたてられな
い。力を持つようになると慢心して、外国を見下すために、傲慢に振る舞う。

中華思想は、中禍思想と書くべきだ。ロシアは戦略が巧妙だが、中国は
中華主義の自家中毒によって、視野が狭窄している。

中国は今世紀に入ってから、かつてのソ連と同じように、自壊への道を
進むようになっている。ソ連は1991年に崩壊した。

効率が悪い計画経済によって病んでいたのに、無人のシベリア沿海州の
開発に国力を浪費し、東ヨーロッパの衛星諸国という重荷をかかえたうえ
に、第3世界に進出するのに力を注いだために、アメリカとの競争に耐え
られなくなって、倒壊した。

クレムリンの最高指導者は、非科学的なマルクス主義の予言に従って、
ソ連が世界を支配するという使命感にとらわれて世界制覇を急いだため
に、墓穴を掘った。

習主席も「偉大なる5000年の中華文明の復興」という、自らの掛け 声に
陶酔して、見せかけだけが壮大な「一帯一路」計画と、大海軍の建設 を
強行しているが、第2次大戦後にソ連が歩んだ道程によく似ている。

中国は分離独立闘争を恐れて、新疆ウィグル自治区や、チベットをはじ
めとする西域や、中部や、北部に過大な投資を行っている。

「一帯一路」計画は、アジアからヨーロッパまで70ヶ国近くを、“幻 (ま
ぼろし)の中華圏”に取り込もうとする杜撰(ずさん)きわまる大計画だ
が、マレーシア、ミャンマー、パキスタンなど多くの諸国で、すでに挫折
するようになっている。

ソ連は1950年代から60年代にかけて、日本についで経済成長率 が高かっ
た。私はソ連が1957年にアメリカに先駆けて、人工衛星『ス プートニ
ク』を軌道に乗せた時に20歳だったが、よく覚えている。その 4年後に
世界最初の有人衛星飛行を行って、アメリカの朝野を震駭させた もの
だった。

ソ連では1970年代に入ると、少子高齢化が進むようになって、旺盛 な高
度成長を支えた、豊富な安い労働力が失われるようになった。中国で も
同じことが、起っている。

私はかねてから、中国人は昔から「吃(ツー)(食事)」「喝(フー)(飲
酒)」「嫖(ピャオ)(淫らな遊女)」「賭(トウ)(博打(ばくち))」「大
聴戯(チーティンシ)(京劇)」の5つを、生き甲斐にしていると、説いて
きた。

清朝の歴代の皇帝も、毛沢東、周恩来、江青夫人も、江沢民元主席も、
みな京劇マニアだった。

京劇は甲高い声に、耳を聾するけたたましい音曲と、大袈裟な所作に
よって、誇大妄想を煽る舞台劇だ。

習主席が好む大規模な軍事パレードや、急拵(こしら)えの航空母艦を中
心とする大海軍や、絵に描いた餅のような「一帯一路」は、京劇の舞台装
置を思わせる。清朝を崩壊させた西太后も、京劇マニアだった。

現在、中国海軍は艦艇数が317隻で、アメリカ海軍の283隻を上回 る。
西太后が日清戦争前夜に、北京西郊の頤和園の湖岸に、巨額の国費を 投
じて建造した、大理石の巨船の“21世紀版”だ。


2018年11月10日

◆悪意に満ちた国連委員会の対日非難

加瀬 英明

 
8月に、スイス・ジュネーブで国連人種差別撤廃委員会が「対日審査会」
を行い、慰安婦、韓国人・朝鮮人に対するヘイトスピーチ、委員会が先住
民とみなすアイヌ・沖縄県民、朝鮮学校問題などを取りあげて、3日にわ
たって日本を嬲(なぶ)りものにした。

私はこの討議の一部を動画で見たが、どの委員も日本が性悪な国として、
こき下ろした。

戦前の国際連盟が本拠だった「パレ・ウィルソン」(パレは宮殿)で開か
れ、会合での対日非難は悪意にみちたものだった。

韓国の委員の鄭鎮星(チョンジュソン)女史は「性奴隷(セックス・スレイ
ブ)」といって、「慰安婦の残酷な状況は、当時の文書、映像、証言など
多くの証言によって、裏付けられている」と、日本政府代表団に迫った。

アメリカの黒人女性のマクドゥガル委員は、日本政府代表団が反論したの
に対して、慰安所を「強姦所」と呼び、「事実を議論すべきではない。こ
れは女性の尊厳の問題だ。慰安婦の大多数が韓国人だった」と、詰め寄っ
た。事実は、大多数が日本女性だった。

ベルギーのポッソート委員は、日本において韓国・朝鮮人が迫害されてお
り、「日本に住む40万人の韓国・朝鮮人の大多数が、植民地時代に強制的
に日本に連行された」と、攻撃した。事実は同じ国だったから、自由に往
来できたために、より豊かだった日本本土に、仕事を求めて移ってきたの
が、正しい。

コンゴ民主共和国をはじめ、諸国の委員がつぎつぎと日本を誹謗した。

このような国連委員会が世界の世論をつくって、日本の名誉を大きく損ね
てきた。

委員会の会合は、荒唐無稽としかいえないにもかかわらず、日本政府代表
団が一つ一つ、丁寧に答えていた。私は代表団を率いた大鷹正人外務審議
官や、法務省員の苦労を心からねぎらいたいと思った。

私も英語屋だが、大鷹審議官の英語は流暢で、素晴しかった。ところが、
日本政府の代表が「お詫びし、償い金を支払っている」といって、委曲を
つくして答えるほど、弁解しているように見えた。

私だったら弁明に終止せずに、相手を積極的に攻撃して、その歪んだ根性
を叩きなおそうとするだろう。

韓国の委員には、「韓国が独立を回復してから、貴国の国軍は日本の旧軍
の制度を受け継ぎましたが、国軍の将兵の性処理のために、『慰安婦
(ウィアンプ)』と呼ぶ女性たちが働く売春施設を、つくっていました。

『慰安婦(いあんふ)』は旧日本軍とともに姿を消したはずなのに、韓国軍
に長いあいだにわたって存在しました。慰安婦がそんなにおぞましいもの
だったら、どうしてこの日本語を韓国語として発音をして、使っていたの
ですか?」と、たずねたかった。

アメリカの委員には、「アメリカでは1960年代に入るまで、黒人は選挙権
を認められず、白人と黒人の性関係が犯罪とされ、水飲み場、便所から、
食堂まで区別されて、ひどい差別を蒙っていたし、今でも苦しんでいま
す。日本が先の大戦を戦って有色人種を解放したおかげで、黒人が白人と
同等の公民権を勝ち取ったのではないですか?」と、質問する。

委員会が国際連盟を創設することを提唱した、アメリカ大統領の名を冠し
た「パレ・ウィルソン」で開かれたのも、皮肉だった。

ウィルソン大統領はアメリカ南部のジョージア州とサウスカロライナ州で
育ち、有色人種が優生学的に劣っていると説いた、人種差別主義者だった
ために、ウィルソンが創学者のプリンストン大学では、学生たちがその銅
像の撤去を求め、アメリカ議会が創立したシンクタンク「ウィルソン・セ
ンター」を改名すべきだという運動が、行われている。

私だったら、委員たちに「パレ・ウィルソン」の名を改めることを、提案
しただろう。

このように愚かしい委員会で、日本政府の代表が暴れれば、世界のマスコ
ミが取り上げて、日本の主張が理解されることだろう。