2020年01月21日

◆断崖の民主党

高山 正之


習近平が国家主席になって間もなくの2013 年11月、中共は尖閣諸島の上空一帯に防空識別圏(ADIZ)を設定した。

ここはオレおれの空だ、よそ者が来たら撃ち落とすという意味で、支那印の戦闘機がパトロールを始めた。

尖閣は日本領だ。ふざけたことを言うなと安倍政権が物申した。習近平は鼻で笑った。

ただそんな押し問答で済む問題じゃなかった。ADIZは民間機の飛行情報区(FIR)も兼ねてきた。

そこを飛ぶ民間機はADIZ設定国にどこの国の飛行機でどこに飛んでいくか通告する義務がある。

尖閣上空はずっと日本の領空で日本のFIRだった。でも日本政府の面子を立てて支那に通告しなかったら撃墜されるかも知れない。

事実、習近平は無通告機を撃てという「防御的緊急措置」も発令していた。

日航を含む各国民間航空機はしょうがない、支那のごり押しに従った。

でもそんな横暴を許していいわけもない。

オバマ政権の副大統領バイデンが北京に飛び、習近平に談判した。会談にはなぜか息子で投資会社経営のハンターも同行した。

しかし結果は習近平の主張そのまま。「民間機は支那に通告して飛べ」だった。

日本にすれば、尖閣はとっくに支那領だと米国に言われたようなものだった。

オバマ政権もまたクリントンと同じく日本はナッシング、支那重視だった。

なぜ米民主党は支那をそこまで立てるのか。そのからくりを渡辺惣樹『アメリカ民主党の崩壊』がつぶさに紹介している。

実はバイデンが習近平と会って「10日後、息子ハンターの投資会社に国有支那銀行が15億ドルを預託した」というのだ。

バイデンはカネで支那の言い分を呑んだ。つまり外交で一儲けしていた。

米国の外交と言えばモンロー主義、つまり国外不干渉を国是としてきた。

ところが民主党は往々それを無視した。第一次大戦にも参戦し、満州国建国にも干渉してきた。結果、欧州にも支那にも恩を売ってカネ儲けに結びつけた。

ピーター・シュワイザー『クリントン・キャッシュ』ではクリントン以降の民主党政権が露骨に外交でカネ儲けしてきた姿が描かれる。

バイデンもその路線を踏襲したわけだ。

尖閣と同じころ起きたウクライナ問題もそう。

オバマはロシア封じ込めのためNATOの東方拡大を進めていた。

東欧諸国を一つずつ取り込んで、ついにはロシアの軒先ウクライナまで懐柔に乗り出した。

ウクライナは名だたる汚職国家だ。西側に靡(ナビ)く代わりにそれなりの軍事援助その他をせがんだ。

このときもバイデンは息子ハンターとキエフに飛んで、軍事援助を約束した。

それから間もなく、ハンターがウクライナの大手天然ガス会社ブリスマの終身役員に就いた。報酬は年1億円。尖閣のときと同じ落とし方だった。

こうも露骨だとウクライナ検察も捜査に動く。そうしたら「バイデンは軍事援助打ち切りを仄めかせて検事総長を解任させた」とロイター電は報じた。

こんな大事件を民主党支持の米主要メディアは全く糾弾しなかった。

今、民主党のトランプ弾劾が始まった。トランプがウクライナの新大統領に「“蔓延(ハビ゙コ)る汚職に”手を打ってほしい」と言った。

それは民主党は「きっとバイデンの汚職を捜査させようとしたに違いない」と読んだ。外交を私的な意図で使ったとすれば「弾劾するに相応しい」と。

汚いバイデンを庇い妙な疑惑を言い立てる。

米メディアはその矛盾に目をつぶり、ニューヨーク・タイムズをただ直訳するだけの朝日新聞も、だから「トランプを弾劾せよ」と大々的に報じる。

詐欺師と組んで疑惑をでっち上げた朝日のモリカケ騒ぎを思い出させる。

渡辺惣樹は「トランプは地滑り的大勝で再選を果たし、米民主党は日本の民主党と同じに崩壊する」と予言する。彼の予言は当たる。



出典:『週刊新潮』令和2年(2020)1月16日迎春増大号

    【変見自在】断崖の民主党

著者:高山 正之

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

松本市 久保田 康文 

2020年01月02日

◆【変見自在】例外的日本人

高山 正之


日本人は賢い。モノの本質を見通す力がある。

例えばキリスト教だ。欧州では不潔と抑圧と迷信に苦しむ人たちに心の安
らぎを与え、大いに繁盛していた。マルクスが後に言った阿片の効き目が
抜群の宗教だった。

でも日本は清潔で、抑圧もそう酷くなかった。迷信もミミズにおしっこを
ひっかけるくらいだった。

むしろ日本人は奴隷を鞭打ちながら慈悲を説く伴天連に鼻白んだ。

だから世界で唯(ただ)一国、この宗教を見限った。それが正しい選択だっ
たことは世界の歴史が証明している。

同じころ鉄砲も伝わった。日本人はこっちには目を輝かせた。領主、種子
島時堯は刀鍛冶の八板金兵衛に同じものを作れと言った。

金兵衛は心血を注ぎ、本物に勝るものを作った。銃身のお尻、尾栓には日
本初の着脱自在の螺子(ねじ)を取り付けた。一説には娘と引き換えに毛唐
からそのメカニズムを習得したという。

火縄銃は世に広まり、金兵衛の孫の時代には日本の銃保有数は世界一の50
万丁に達した。

下地はあった。まず鉄も鉛も産した。高度の製鉄技術も持っていた。細か
いことを言えば火縄には日本の檜皮(ひわだ)が最適と分かった。

ただ問題はあった。火薬の原料のうち木炭と硫黄は余るほどあったが肝心
の硝石がなかった。

で、日本は隣の明に哨石の有無を尋ねた。明は日本から大量の硫黄を買っ
ていた。琉球も硫黄を朝貢して好待遇を受けていた。

もしかして硫黄は火薬用ではと思ったからだ。

答えはイエス。山東や四川で山ほど採れた。

でも売らない。なぜなら200年前に太祖の朱元璋が「日本は敵だから硝
石を売るな」と遺言したからだ。

明の持つ鋼製銃も日本人に見せたり、構造を漏洩したりすることを厳しく
禁じた。これは属領の高句麗にも厳命していた。

福沢諭吉は支那朝鮮を友達だが「悪友」と言った。

が、彼らは千年前から日本を敵と見ていた。ゆえに硝石は売らない。

ではイエズス会はというと硝石一樽と日本の女性50人を交換すると言った。

日本人は自力で硝石作りする道を選んだ。ヒントは臭くて埃の舞う産地の
山東省の景色だ。

五箇山では囲炉裏の床下に穴を掘ってヨモギや麻の干し草を敷き、蚕の糞
と藁灰を入れ、尿をかけて埋めた。山東省を再現した。

数年寝かせると、あら不思議、穴の底に硝酸カリウムつまり硝石ができて
いた。

元素も化学式も知らない時代に日本は硝石を手作りし、世界最高の鉄砲部
隊を作り上げた。

秀吉の軍勢はその鉄砲隊を先頭に朝鮮に出兵して明の軍隊と対決した。

火縄銃の威力は明の青銅銃を凌駕した。鉛弾は100メートル離れた明兵の鎧
を貫通し、今のマグナム弾と同じに体に大穴を開けた。

青銅の火器にしがみつき、改良を怠った明は日本に敗れて以後、種子島を
真似た火器を作るようになった。

ルイス・フロイスもその威力を知り、日本征服を断念するように本国に伝
えた。因みにナポレオンは後に日本の知恵を借りて同じ方式で硝石を国産
化した。

明治に来た英宣教師ヘンリー・フォールズは日本人がIDとして拇印を押
しているのを見た。

調べたら誰の指紋も違い、成長しても不変と知った。日本人の知恵を英科
学誌に発表したら「指紋の発見者」の称号を貰えた。

昭和に来たマッカーサーは天皇家が直系男子で皇統を紡いできたことを
知った。彼は日本を壊すのが使命だった。意味も分からないまま皇室断絶
の意図で宮家をほぼ廃した。

今世紀に入り、男のY染色体が不変で継がれることが解明された。日本人
はそれを神武の御代から知っていた。皇統が世界の奇跡と言われる所以だ。

今、例えば園部逸夫や朝日新聞が男女同権だからと女性天皇を立てようと
言う。それで神武以来紡がれてきたY染色体が絶たれることも知らない。

日本人の中にこんな蒙昧がまだいたんだ。



出典:『週刊新潮』令和2年(2020)1月2・9日新年特大号

    【変見自在】例外的日本人

著者:高山 正之


松本市 久保田 康文さん採録

2019年12月23日

◆【変見自在】豪州人の癖 

             高山 正之
 

日本人嫌いの九州大准教授ショーン・オドワイアが「シンガポールのシン
ドラー篠崎護」を英字紙で紹介していた。

篠崎某とは明治生まれの九州人で、結構けったいな人生を歩んでいる。

流行りの社会主義に染まって高校を追われ、大学も中退して同盟通信の記
者になった。あの頃の記者は安っぽかったらしい。

支那で記事を書いていたら外務省嘱託に任用されてベルリンに赴任した。
外交官も安っぽかった。

彼は任地で鴎外みたいに女性問題を起こしシンガポールに左遷される。

オドワイアによれば、そこでも外人女に言い寄って歩き、それで英軍の機
密を探っていたと疑われて3年半の実刑を食いチャンギー刑務所に入れら
れた。

たまたまその時期、日本は英米に宣戦布告し、間もなく監獄の中にも砲声
が聞こえてきた。

昭和17年2月シンガポールは落ち、スパイ篠崎は刑期半ばで出所できた。

彼は警備隊司令部付きになるが、ここであの敵性華人狩りが始まる。

マレー半島の華人は悪者ぞろいだった。彼らは英国人の手先になってプラ
ンテーションを仕切り、マレー人に阿片を売ってぼろ儲けしていた。

戦争が始まると彼らは当然のように英国側につく。抗日ゲリラ部隊を組織
して日本軍の背後から襲ってきたと朝日新聞従軍記者酒井寅吉が書いている。

シンガポールでも、ジョン・ダレー中佐がお尋ね者扱いだった共産系華人
4000人を集めて部隊を編成した。女性や服役中の共産ゲリラも含まれ
ていた。

それが「ダレーのならず者部隊」あるいは「ダルフォース」と呼ばれるゲ
リラ部隊だった。

武装は銃と手榴弾。軍服を着ない、いわゆる便衣隊で目印は首に巻いた黄
色いバンダナだった。

旅団規模のゲリラ部隊は上陸日本軍の周辺に出没し、134人が戦死し
160人余が捕まっている。

残りはバンダナを捨てて街のどこかに隠れた。

阿片を商い蒋介石を援助してきた華僑や、半島でテロを仕掛けた抗日ゲリ
ラの残党も、同様に善良な華人の仮面をかぶって市民の海に紛れ込んで
いった。

日本軍はこうした敵性華人や卑劣なゲリラ兵の割り出しにかかった。

ダルフォースの残党ら数百人が捕えられて国際法規に従って処理された。
女ゲリラの存在は知りながら目こぼしされた。

篠崎はこのとき華人の分別を担当した。蒋介石と通じていた怪しげな華僑
もいたが、日本側に協力する条件で善良な市民であることを示す「安居
証」を出してやった。

華人の知り合いに頼まれれば憲兵隊本部にまで出向いて拘束中の若者を釈
放させたこともあった。

この限りではまだ篠崎はまだまともだった。

ただオドワイアが篠崎をシンドラーに擬したのは彼が無記名の「安居証」
を千単位で乱発していたことを指している。それが卑劣なゲリラたちに
渡っていた可能性は限りなく高い。

篠崎は戦争という現実を理解できずに、その場その場でいい顔をしたがる
無責任男に見えてくる。

それは措いて、オドワイアは先の戦争を語りながらダルフォースや華人ゲ
リラは一切触れようとしない。

華人はみな無辜のユダヤ人風に描いて、日本軍をナチス同然と断じる。

彼は太地町のイルカ漁でも白人動物保護団体にくっついて日本を誹謗した。

日本で教鞭をとりながら偽りと偏見に満ちた侮日をずっと語り続ける。

で、出自を調べたら豪州の出身だった。不思議なことに彼らは人種偏見が
強く日本嫌いで嘘つきが多い。

南京大虐殺を創作したティンパーリ、売春婦を「性奴隷」と訳したG・
ヒックス、英文毎日で日本人を腐したライアン・コネル。

古くは日本の人種平等案をウッドロー・ウイルソンと組んで葬り去ったビ
リー・ヒューズもそうだ。

そんな国からわざわざいかがわしい先生を呼ぶこともあるまいに。

出典:『週刊新潮』令和元年(2019)12月26日号

    【変見自在】豪州人の癖 著者:高山 正之

2019年12月19日

◆よそ者の善意

     高山 正之
 

パシュトゥン人はパキスタンとアフガンにまたがって分布する。

勇猛で、18世紀には思い立って栄華を誇るサフャビ朝の首都イスファハン
を襲い、金銀財宝を奪った。

彼らはその金でアフガンに初めて王朝を建てた。根っからの盗賊民族とよ
く言われる。

悪さをしていないときは羊を追い、畑を耕す。

長閑に暮らしていても金持ちそうな旅人を見かければ即座に鍬を放り出し
て盗賊に変身する。

19世紀半ば、英軍がカブールを放棄して家族や娼婦など総勢1万5000
人で南に引き揚げ始めたときも彼らは見逃さなかった。

英軍の長い隊列のどこかを襲って殺し、奪った。1週間で隊列は消滅し、
ジャララバードの砦に辿り着けたのは医師のウイリアム・ブライドンただ
一人だった。ホームズの相方ワトソン君のモデルになった人物だ。

彼らはインダス川をカヌーで下っていた早大生すら見落とさず、人質にし
て莫大な身代金を取っている。
彼らは秋の収穫を終えると南のパキスタン側に戻る。

あるとき戻ったら国連難民高等弁務官事務所の職員が待っていた。「大変
だったでしょう」と難民キャンプに案内された。

ソ連が武力でアフガンに侵攻し、多くのアフガン人が難民化した、と西側
人権派が大騒ぎをして国連も救済に出た。パシュトゥンはそんなやわじゃ
ないのに。
でも彼らは黙ってキャンプに入り、日本などから贈られた毛布や衣料、電
気冷蔵庫まで心づくしの救援物資をいっぱい貰った。

満足しきった国連職員が去っていくと彼らは貰ったものを叩き売って我が
家のある村に戻っていった。
実は戻ってからも忙しい。持って帰った一袋7キロ詰めの生阿片を精製せ
ねばならない。

まず不純物を取り除いて消石灰を入れて煮立てる。ドロッとしてきたら今
度は塩化アンモニウムを混ぜる。最後に無水酢酸を加えてヘロインを抽出
する。
この工程が臭い。現役の記者だったころ、あの辺を歩いた。クエッタから
アフガンにいく途中には高い土塀で囲まれた家があって、そこからこの悪
臭が漂っていた。彼らは麻薬業者という顔も持っている。

降ってアフガン国境を越えるとすぐスピンバルダックという街に出る。訪
れて3年後にあのタリバンがここで生まれた。
初仕事は数人の少女を誘拐した無法者を襲い、少女を助け出し、犯人をイ
スラムの教えに従って処刑した。

正直、アフガンの民がいいことをするのはあまり見かけたことがない。こ
れはこちらが承知しているただ一つの善行だった。
だからと言ってタリバンはまともさを広めはしなかった。むしろ彼らの持
つよそ者嫌いを徹底させていったように思う。

特にモンゴル系のハザラ人を嫌い、見つけては生皮を剥いで殺した。
ハザラが根城にしたバーミアンも徹底的に破壊した。巻き添えであの巨大
な磨崖仏まで破壊されたのはよく知られる。

そういう人種偏見をこちらもスピルバルダックで体験した。通訳に雇った
タジク人が彼らの話すダリ語に通じていて、連中が襲ってくるという。
その場は何とか逃げ出せたが、そのあと同じルートで来た尾道市の学校教
諭二人が射殺体となって見つかった。座らせて後頭部に一発ずつ銃弾を撃
ち込む処刑スタイルだった。

そんなパシュトゥン人の世界で中村哲は彼らに寄り添って医療を施し、
1600本の井戸を掘ってきた。
ただ、掘った井戸で潤う人たちはにっこりするが、そうでない人は冷やや
かだった。脅しもあったという。

彼の活動に共鳴する日本人は多い。応援に行く人たちが多くなると彼らの
目はハザラを見る目に変わっていったとも聞く。
08年には手伝いに行った日本人青年が殺された。

彼らのよそ者嫌い昂じて今年は米国人NGO5人が殺された。
善意を煩わしく思う世界があることを中村医師は生涯をかけて教えてくれた。

出典:『週刊新潮』令和元年(2019)12月19日号

 【変見自在】よそ者の善意 著者:高山 正之

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
松本市 久保田 康文 
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

2019年12月10日

◆【変見自在】法王と献金

           高山 正之
 
ローマ皇帝コンスタンチヌスはネロ以来ずっと邪教扱いしてきた基督(キリス
ト)教の布教を初めて許した。

当時のローマ帝国ではギリシャ神話の神々の他、中東のミトラ神、エジプ
トのイシス神、ユダヤ人が目の敵にしたバアル神などが自由に信仰されて
いた。

それに基督教も晴れて付け加えられたわけだ。

しかし信徒はそれで満足しなかった。彼らは皇帝テオドシウスを焚き付け
て基督教を国教にし、他の宗教をみな禁教とさせた。

信徒はギリシャの神々を祀る聖地デルフォイを徹底的に破壊し、バアル神
殿も旧約聖書でギデオンがやったようにぶち壊した。

信徒が声高に「難病を治し、死人を蘇らせた奇跡」を語りだすと、アレク
サンドリアの美貌の哲学者ヒュバティアが「迷信を真実と教えるべきでは
ない」と批判した。

信徒は怒り、彼女を襲って牡蠣の殻で体中の肉を削り取って惨殺した。

基督教は他の宗教を許さない偏狭さと残忍さを特徴とした。

教会が街の中心に建てられ、人々は毎週ミサに参列し、赤ん坊が生まれれ
ば洗礼の儀式をそこで執り行った。そのたびに高額の献金を教会は要求した。

カトリックはとくに罪を強調し、高値で免罪符を売り出して儲けた。

異端審判や魔女狩りも熱心に行った。金持ちのユダヤ人が狙われ、親指を
潰し、焼けた鉄の靴を履かせる審問で、魔女であることを自白させると火
炙りにしてその財産を没収した。

教会の総本山バチカンはアーミッシュを嫌った。

彼らは聖書に生き、教会に行かなかった。教会に来なければ献金も洗礼代
も取れなかった。だから彼らを見つけるとすぐ殺した。

無教会主義を唱えた内村鑑三も時代が違えば殺される運命にあった。

16世紀の日本にも狭量で残忍な基督教を伝道するイエズス会がきた。

織田信長は「七宗が八宗になっただけ」とコンスタンチヌスのように認め
てやったが、彼らはすぐ本性を現した。高槻城に入った切支丹大名、高山
右近は城下の神社仏閣をぶち壊して坊主たちを殺した。

その狭量を秀吉がたしなめ、それでもあらためないので家光が禁教にした。

おかげで日本だけが不毛で残忍な宗教戦争の埒外にいられた。

欧米がそれに気づくのは今世紀に入ってからだ。

ボストン・グローブ紙が130人の少年を犯した神父を告発し、それをきっ
かけに英仏独などで神父の性虐待がぞろぞろ明るみに出た。基督教は狭量
で残忍なだけでなく淫乱だった。教会離れが急速に広がった。

結果、教会への献金が減りバチカンの財政も傾いた。

法王が訪日したのは献金に繋がる新しい信徒の獲得にあった。特に日本の
信徒数は人口比でたった0.03%でしかない。

実はマッカーサーも日本の基督教化を図り1500人の伝道師を呼んだほどだ。

しかしサレジオ会の神父が痴情の果てに日本女性を殺害。バチカンが彼を
国外に逃がしたこともあって信徒は減っていった。

そんな過去がある。法王はもっと慎重に事を運ぶべきだったが、来日前に
大きな失敗をやった。隠れ切支丹への対応だ。

明治維新を前に隠れ切支丹が大浦天主堂に現れた。いわゆる「信徒発見」だ。

ただ、隠れ信徒は教会に帰る派と、ひっそり信仰を続ける派に分かれていた。

法王は献金に繋がる教会派を「潜伏切支丹」と呼んで愛で、世界文化遺産
にもなったが、そうでない「隠れ」は切り捨てられた。

日本カトリック司教団の入れ知恵らしいが、この差別でバチカンのさもし
さも透けて見えてしまった。

法王は長崎、広島を訪れて核兵器廃絶を訴えたのは良かったが、なぜか東
電福島の避難民にも会って原発反対を語った。

9条の会や支那韓国とも通じる司教団。恐らくは献金を山と積んで法王を
政治利用したのだろう。

そんな謀(タバカ)りをやるから基督教は嫌われる。法王も後味が悪かっただ
ろう。



2019年12月02日

◆【変見自在】忠実な犬

高山 正之
 

先日の朝日新聞に「核」取材班記者の田井中某がローマ法王の来日につ
いての解説を書いていた。

ちょっと惹かれた。

ずいぶん前に「百円ラーメンが消える」という朝日の広島県版のトップ記
事が話題になった。

広島大学近くに老夫婦が経営する百円ラーメン屋があった。繁盛していた。

ところが3%の消費税が決まって材料費が値上がりし、もう百円では無理
になった。値上げしたら贔屓にしている学生さんに申し訳ないから店を閉
めることにしたというお話。

竹下登の消費税が弱者の善意をもろに打ち砕いた。タイムリーな記事だっ
たから読者が閉じる前に行きたい、何か援助できればと反応の輪が広がった。

支局長も、いい話だ続編を書けと言った。記者はもじもじして「実はあの
記事は作りもの。ラーメン屋の幟も自分で作って写真を撮った」と自供した。

一部捏造どころか記事すべてがインチキだった。

朝日はどうしたか。頬被りしてお詫びも訂正もなし。「記者の処分もなし
で、彼は今、本社に上がって核問題取材班に入り、外国を飛び歩いてい
る」と烏賀陽弘道著『朝日ともあろうものが』にあった。

もしかして件のラーメン記者かと思いつつ読んだ。本人かどうかは分から
なかったが、核廃絶に取り組む法王の訪日の意義を語る記事は、ラーメン
屋報道に似たものを感じた。

例えば「浦上天主堂は原爆で大破した」とある。

天主堂が交通事故に遭った風に書く。

確かに被害は酷かったが、煉瓦造りの正面も外壁もほぼ残っていた。広島
の原爆ドームほどのしっかりした威容だった。

しかしキリスト教国の米国には刺激が強すぎた。米国の強い要求で天主堂
は取り壊された。「大破」はそれを隠す狡い書き方だ。

記事は天主堂ゆかりの永井隆博士の『長崎の鐘』にも触れる。被爆の実態
が克明に綴られていたが「GHQの厳重な検閲の許で出版された。ただ日
本軍のマニラ大虐殺の報告と抱き合わせだった」と書く。

それは嘘だ。GHQは2年も出版させなかった。それを伏せ寧ろ好意的に
出してくれた風に読ませる。

もっと問題なのは抱き合わせたマニラ大虐殺の方だ。

話の出所はGHQ。「昭和20年2月、日本軍がマニラで女を犯しまくり、
市民10万人を殺した」と新聞発表して掲載させた。

これは大嘘だ。日本軍は米軍の総攻撃を前に市内のサントトーマス大に収
容していた欧米民間人3500人を解放した。戦火に巻き込まれないよう
にという日本軍らしい配慮だった。

米軍はその翌日から非白人だけになったマニラ市に徹底した砲爆撃を加
え、多くの市民が死んだ。自分で殺しておいてそれを日本軍のせいにする。

それをはっきり指摘したのはまだまともだったころの朝日だった。GHQ
発表に対し「我が軍はそんなことをしない」「証人を募って検証すべき
だ」と書いた。

GHQは即座に朝日の幹部を呼びつけ廃刊を申し渡した。ここからは邪推
も入るが、GHQは「ただ今後、米国の犬になるなら今回は二日の発行停
止で許そう」と言った。田井中はそれを今も忠実に守っているつもりなの
だろう。

彼は長崎に原爆を落としたB29ボックスカーを訪ねてオハイオ州の米空軍
博物館に行く。そこに「戦争を終わらせた」いい原爆投下機だとあった。

まだ原爆投下を正当化する米国人がいることに驚いて見せるが、それは余
りにもナイーブだ。

米政府はボックスカーも広島原爆の投下機エノラゲイも終戦後すぐ軍から
除籍し、エノラゲイの方はスミソニアン博物館に譲渡している。

さらには原爆を作ったロスアラモスとハンフォド、オークリッジの施設を
国立公園に指定し、その栄誉を讃えたばかりだ。

法王がどう説教しようとその根性は治らない。

それも分からにで米国を庇う。まだラーメン屋の嘘の方がましに見える。



出典:『週刊新潮』令和元年(2019)12月5日号
【変見自在】忠実な犬者:高山 正之
松本市 久保田 康文さん採録 


   

2019年10月10日

◆【変見自在】雄大の殺意

  高山 正之  


「生(な)さぬ仲」とはお腹を痛めた子ではない、継母と継子という意味だ。

 大正期、柳川春葉(シュンヨウ)の同名のベストセラー小説がある。

 ハリウッド女優の珠江には日本に残した前夫との間に6歳の娘滋子がい
た。(成瀬監督映画版)

 引き取りに帰国すると娘は生さぬ仲の育ての親、眞砂子と貧しいながら
幸せに暮らしていた。

 実の娘と暮らしたい珠江。しかし娘は育ての母を慕って泣き暮らす。実
母は最後に決断し、全ての財産を眞砂子と娘に与えて独りロサンゼルスに
戻っていく。

 少なくとも娘は優しく理解ある二人の母に見守られて幸せになりまし
た、で話は終わる。

 戦前戦後、何度も映画化されたいい話だが、ではこれが生さぬ仲の男版
はどうなるか。つまり実の母子の家庭に男が転がり込んできた継父と継子
のケースだ。

 例えば大阪・東住吉区の小学校6年生、めぐみちゃんの場合。31歳の母
が29歳の男と一緒になった。

 生さぬ仲の義父は借金まみれだったが工面して娘のために1500万円
の生命保険をかけてくれた。

 めぐみちゃんを可愛がり、体を抱きしめて、時に性的に犯すこともあった。

 彼女が汚れた体を洗うために風呂に入っていたら火が出た。父母はすぐ
逃げ出したが、11歳少女は逃げ口もないまま焼け死んだ。

 父母は一旦は保険金詐欺と殺人の罪で収監されたが、再審無罪となっ
た。保険金も支払われたと聞く。

 生さぬ仲の継父と娘という関係では、父は豊かで幸せになれても凄惨過
ぎる最期しかなかった。

 あるいは埼玉の小学校4年生、遼佑君9歳。42歳の高校教員の母が10歳
年下の進藤悠介と再婚した。

 遼佑君は頭がいい。対して義父は大学は出たというけれどまともな働き
口もない。家でぶらぶらだからヒモにも見える。実の父親はやはり教職に
身を置き剣道の達人だった。

 生さぬ仲の新しい父は十分に見劣りがした。それで小4児童の首を絞め
た。腕力だけは継子よりあった。

 生さぬ仲の父が取る行動は動物界ではもっとはっきりしていると動物行
動学の竹内久美子は言う。

 例えば猿の群れ。最強の雄ボスが君臨し、雌猿がそれを囲む。強い遺伝
子を残すことは種の繁栄に繋がるから正しいことだ。

 しかしボスも老いる。ある日、もっと強く若い猿が挑戦しボスを倒す。

 新ボスには就任の儀式がある。雌猿が抱いている旧ボスの子らの喉を鋭
い牙で切り裂き殺していく。

 旧ボスの血筋を絶つ。自分の組織を守るための当然の殺しだが、儀式に
は別の意味がある。

 抱いていた子が殺された瞬間、雌猿は激しく発情して新ボスを迎え入れる。

 新ボスによって遼佑君が殺されたのも、めぐみちゃんが性的に虐待され
不慮の死を遂げたのも猿の行動学で十分に説明がつく。人間としては少し
寂しい。

 で、結愛(ゆあ)ちゃん事件だ。5歳の幼女は夜明け前に父親の船戸雄
大(34歳)に「サッカーボールを蹴るように横腹を蹴られて」(27歳の母
親の供述)起こされ、冷水シャワーをかけられ、震えながらきれいな文字
を書かされた。

 食事は父が「女の子が太ってはいけない」(同)と言って与えられな
かった。「もうおねがい ゆるしてください」と書いたノートを残して昨
年3月に衰弱死した。

 事件報道で、こんな残忍な父もいるのかと呆れたものだが、先日の初公
判を伝える新聞を見て仰天した。

 雄大は実は結愛ちゃんとは生さぬ仲の継父だった。雄大は継子だからと
言われぬよう躾けたと言う。

 それは嘘だ。生さぬ仲のこの父に殺意があったのはその行動で明らか
だ。猿の行動に最も近い。

 ただ雄大は猿より狡賢い。殺意を躾の言葉で包み隠し、それを空涙でぼ
やかす。

 罪名は保護者責任遺棄致死だが、むしろ悪意ある殺人、謀殺とすべきだ。

 それにしてもなぜ新聞は「生さぬ仲」を大きく報じなかったのか。事件
の様相はそれで大きく変わる。



出典:『週刊新潮』 2019年10月17日菊見月増大号 【変見自在】雄大の殺意

著者:高山 正之


松本市 久保田 康文さん採録 


2019年09月27日

◆【変見自在】諭す宰相

高山 正之


朝日新聞はこと韓国となると目が潤んでくる。愛おしくて身悶えする。

 だから日本の雑誌如きが韓国に意見でもしようものならもう怒り狂って
「メディアが韓国への反感を煽る」と社説で騒ぎ立てる。

 先の戦争では「メディアが国策に沿い、英米敵視と支那朝鮮への蔑視を
植え付けた」と社説は続ける。

 鬼畜米英は知っているけれど後半は初耳だ。というか、もろ嘘だ。朝鮮
人は内鮮一体で同等の待遇にしてやり、徴兵免除、課税軽減の特典も与えた。

 米国が植民地フィリピン人を、英国がインド人を自国民の盾に使うよう
な非道はしなかった。

 支那では汪兆銘を支えて上海などでは終戦まで安寧の日々が続いた。民
は李香蘭の舞台に興じ、北京郊外の狼牙山の民は日本軍に共産ゲリラの略
奪から守ってもらった。

 社説はまた「半島から文明の伝播もあった」と書く。これも「文化は日
本から」が正しい。半島からは厄介だけが来た。その証拠に唐からきた辛
子は日本経由で朝鮮に入った。だから半島では「唐辛子を倭辛子という」
とモランボンの会長が言っていた。

 川の名前でも分かる。北の支那人は黄河、熱河のように「河」を使う。
日本が付き合った南の支那人は揚子江、黄浦江と「江」を使う。

 それが日本経由であっちに伝わり、彼らは洛東江と漢江とか書く。

 韓国を愛するのはいいが、論説主幹根本清樹はなぜこんな一片の真実も
ない社説を書かせたのか。

 この新聞社は外資系風に編集局長をゼネラルエディターと呼ぶ。新聞記
者だったらこんな名刺は恥ずかしくて出し難かろうに。

 そのGEも韓国への愛は論説に負けない。元ソウル特派員神谷毅に韓国
大統領特別補佐官の文正仁をインタビューさせたが、これもひどい。

 なんたら補佐官は驚くほど学がない。目下の日韓のいざこざ分析で「日
本も韓国も、相手を叩くと(政権の)人気が出る構造になっている」と語る。

 韓国は確かにその通りだ。あっちでは政権の求心力が落ちると反日政策
を打ち出すのが形だ。そうすると人気が盛り返す。

 日本人はあまり深刻に考えないが、あの国の民は骨の髄まで反日だとい
うことを知るべきだ。

 だから汚職で危なくなった李明博は竹島に登っただけですべて許された。

 金泳三が旧朝鮮総督府を爆破したら国民は大喜びした。韓国製なら風が
吹いても倒れるが日本の本格建築はなかなか崩れない。おかげで韓国民は
何週間も爆破作業を楽しんだ。

 対して日本は政権が韓国を叩いて人気を得たなどという事例は一つもな
い。甘すぎてもたかが韓国のことでは政局にもならない。

 例えば岸信介。李承晩が勝手に敷いた李ラインで4000人の日本人漁
船員が拿捕、あるいは殺害された。

 軍事手段を持たない岸は漁船員解放のため収監中の在日殺人犯や大村に
収監中の密航朝鮮人全員を釈放し在留も認める「抑留者相互釈放覚書」を
交わした。大甘だが、日本人はそれで彼らが真人間になればと思いやった。

1987年、大韓機爆破テロがあった。バーレンの日本大使館員が金賢姫の身
柄を確保したが、竹下登は慮泰愚に配慮して彼女を韓国に引き渡した。結
果、北朝鮮によるめぐみちゃんらの拉致被害の実態確認が大幅に遅れた。

 慮泰愚は嵩にかかって海部俊樹も脅し、在日の指紋押捺も廃止させ、入
国韓国人にもそれを適用させた。

 施行されてすぐ世田谷一家四人殺しが起きた。犯人の指紋は山とあるの
にまだ捕まっていない。

 宮澤喜一はサッカーW杯を韓国との共催にしてやった。小泉純一郎は韓
国にホワイト国待遇を与えた。

 他に経済援助もしてやった。そういう寛大さがあの国をまともにすると
歴代宰相は信じたが、みな見込み違いだった。

 韓国に理非を諭せる宰相が必要になった。

 今、やっとそうなってきたのかもしれない。