2021年01月30日

◆中国「海警法」成立で尖閣危機

小川 和久


毎日以外が報じない日本の突破口

国際2021.01.28 8 by 小川 和久『NEWSを疑え!』


1月22日、中国が「海警法」を成立させ、国内法を盾に尖閣諸島周辺海域
での活動を活発化させる可能性が高まったと、マスコミ各社が伝えていま
す。しかし、毎日新聞を除けば踏み込みの足りない報道ばかりと嘆くの
は、軍事アナリストでメルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する小川和久さん
です。小川さんは過去にも「なぜ日本は尖閣領海に侵入する中国公船を取
り締れないのか?」などで領海法改正を訴えていますが、今回の海警法成
立は、日本が対抗するための突破口になりうると指摘。マスコミの正しい
認識と世論形成への尽力を求めています。

海警法に滲み出た中国の本音

中国が尖閣諸島にも影響の及ぶ海警法を成立させました。


「中国の全国人民代表大会常務委員会会議は22日、中国海警局に武器の使
用を認める海警法草案を可決、同法は成立した。中国メディアが報じた。
海洋権益維持を目的に発足した海警の法整備が完了し、体制や装備も強化
される。中国が領有権を主張する沖縄県・尖閣諸島の周辺海域や南シナ海
で海警の活動が活発化し、緊張が高まる恐れがある。施行は2月1日」(1
月22日付共同通信)

この動きは早くから報じられていましたから、これまで述べてきたとお
り、海上保安庁の増強、陸海空自衛隊の即応態勢の強化、日米同盟の深化
によって手出しを躊躇わせる抑止力を一層高めるとともに、領海法の改正
と日中漁業協定の決着を図り、鉄壁の領域防衛を実現しなければならない
のは言うまでもありません。

そのためには、政府と与野党が危機意識を持ち、コロナ対策があろうと何
があろうと、迅速に行動する必要があります。しかし、世論を形成し、政
治を動かしていく役割を担っているはずのマスコミの認識が気になるのです。


日本の新聞で今回の海警法問題の内容に踏み込んで報道したのは1月23日
付の毎日新聞だけでした。毎日新聞は見出しに「海洋進出に独自解釈中国
海警法、『管轄海域』あいまい」と掲げているように、中国の本音が滲み
出た「管轄海域」という表現に着目し、次のように伝えています。


「中国海警局の船は機関砲を備えるなど既に重装備化が進み、軍とも一体
的に活動する。22日に成立した『海警法』は、これまでブラックボックス
状態だった武器使用規定や具体的な権限の法的な根拠を明らかにしたと言
える。そこから透けて見えるのは、独自の基準を国内外に示し、新たな国
際秩序を生み出そうとする戦略だ。



中国は近年、他国との権益争いで『法律を武器』とする姿勢を鮮明にす
る。習近平国家主席は2020年11月の演説で『対外問題に関わる法整備を加
速し、立法、法執行、司法の手段で闘争し、国家主権や核心的利益を守
る』と述べた(中略)


権限の範囲を『管轄海域』と特異な表現にしたのも、南シナ海での一方的
な主張を正当化するためとみられる。中国は南シナ海の大半を占める『九
段線』内の権益を主張するが、オランダ・ハーグ仲裁裁判所は16年に『法
的根拠がない』とこれを否定した。もし海警法が権限の範囲を『領海』な
どと国際ルールに則して明記すれば、九段線の範囲で活動できなくなる。
そこで『管轄海域』という言葉を持ち出したとみられる。(後略)」


実を言えば、この部分にこそ日本が中国と渡り合い ...


2020年12月22日

◆現役自衛官からの悲痛な叫び

小川 和久


「自衛隊はドラえもんのポケットじゃない」現役自衛官からの悲痛な叫び

新型コロナウイルス「第3波」による感染拡大の影響で医療崩壊が懸念さ
れるとして、大阪市と旭川市が自衛隊の看護官を派遣するよう要請し、政
府も動き始めました。しかし、日本に現在16箇所ある自衛隊病院は一般市
民にも開放し、コロナ患者の受け入れもおこなっているため、自衛隊側に
も余裕がないのが現状です。メルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する軍事ア
ナリストの小川和久さんは、現役自衛官からの「自衛隊はドラえもんのポ
ケットじゃない」という生の声を紹介。さらに、これを機会に陸上自衛隊
を適正規模の25万人を目指して組織改編ふくめて国民に提起してはどう
か、と菅政権へ提案しています。

自衛隊はドラえもんのポケットじゃないぞ!

医療崩壊の現実に直面して、北海道旭川市と大阪府に自衛隊の看護官(看
護師)が派遣されることになりました。


「政府は7日、新型コロナウイルスの感染拡大で医療提供体制の逼迫
(ひっぱく)が懸念されている北海道旭川市と大阪市に自衛隊の看護官を
派遣する調整に入った。知事の要請を受けて派遣する見通しで、派遣人数
を検討している。(後略)」(出典:12月8日付毎日新聞)

しかし、自衛隊側も余裕がないのは一般の医療現場と同じです。私も防衛
省・自衛隊のOB組織「隊友会」の理事を務めていますが、OBのみならず、
現役からも厳しい声が出ています。


「ドラえもんのポケットじゃあるまいし、自衛隊に頼めばなんでも出てく
ると思わないで欲しい。今回の事態を教訓に、病院の施設や装置はもとよ
り、一朝一夕に育成できない医療従事者の確保にただちに取り組んで欲しい」

自衛隊の医療従事者(医官、歯科医官、看護官など自衛官)は、医官約
1100人、歯科医官約253人、看護官など約1000人となっています

さらに16個所の自衛隊病院(2021年に10個所に統廃合)には自衛官ではな
い看護師も勤務しています。

一部の自衛隊病院は一般市民にも開放され、コロナ患者の受け入れも行っ
ています。

余裕のないことがおわかりでしょう。

今回は、その看護官のうち部隊など病院以外に配置されている人員から、
派遣することになります。

そこで思ってしまうのです。

これを機に、菅義偉首相は特に自衛隊の基盤をなす陸上自衛隊について適
正規模の25万人を目指し、組織改編を含めて国民に提起してはどうか、と。

25万人というのは、世界で6番目に長い日本列島の海岸線をもとに、大規
模災害の時の最後の砦である陸上自衛隊に必要なマンパワーを弾き出した
ものです。

組織改編は、どんどん進む高齢化社会を前提とし、定年延長や女性の進
出、ロボット化では対応できない限界を、発想を変えて乗り越えようとい
うものです。

例えば、戦闘任務には従事しないけれども、特技で自衛隊を支える制度が
あってもよいのではないか。

IT分野や医療分野だけで勤務する人材は、心身の条件などに合わせた自衛
官としての基本的な訓練は施しますが、あとの任務は災害派遣と有事にあ
たっての部隊などの警備に限定します。

このような条件であれば、人員の面から自衛隊の適正規模に近づけ、高齢
化社会に対応することもできますし、今回のような事態にあたっても医療
分野の人材の投入について、期待に応えられるのではないかと考えています。


きわめて大雑把な絵図面ですが、固定観念を棄てた発想の転換のもと、多
様化する任務に対応できる組織を生み出すことができるのではないかと思
います。

2020年12月21日

◆現役自衛官からの悲痛な叫び

小川 和久


「自衛隊はドラえもんのポケットじゃない」現役自衛官からの悲痛な叫び

新型コロナウイルス「第3波」による感染拡大の影響で医療崩壊が懸念さ
れるとして、大阪市と旭川市が自衛隊の看護官を派遣するよう要請し、政
府も動き始めました。しかし、日本に現在16箇所ある自衛隊病院は一般市
民にも開放し、コロナ患者の受け入れもおこなっているため、自衛隊側に
も余裕がないのが現状です。メルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する軍事ア
ナリストの小川和久さんは、現役自衛官からの「自衛隊はドラえもんのポ
ケットじゃない」という生の声を紹介。さらに、これを機会に陸上自衛隊
を適正規模の25万人を目指して組織改編ふくめて国民に提起してはどう
か、と菅政権へ提案しています。

自衛隊はドラえもんのポケットじゃないぞ!

医療崩壊の現実に直面して、北海道旭川市と大阪府に自衛隊の看護官(看
護師)が派遣されることになりました。


「政府は7日、新型コロナウイルスの感染拡大で医療提供体制の逼迫
(ひっぱく)が懸念されている北海道旭川市と大阪市に自衛隊の看護官を
派遣する調整に入った。知事の要請を受けて派遣する見通しで、派遣人数
を検討している。(後略)」(出典:12月8日付毎日新聞)

しかし、自衛隊側も余裕がないのは一般の医療現場と同じです。私も防衛
省・自衛隊のOB組織「隊友会」の理事を務めていますが、OBのみならず、
現役からも厳しい声が出ています。


「ドラえもんのポケットじゃあるまいし、自衛隊に頼めばなんでも出てく
ると思わないで欲しい。今回の事態を教訓に、病院の施設や装置はもとよ
り、一朝一夕に育成できない医療従事者の確保にただちに取り組んで欲しい」

自衛隊の医療従事者(医官、歯科医官、看護官など自衛官)は、医官約
1100人、歯科医官約253人、看護官など約1000人となっています

さらに16個所の自衛隊病院(2021年に10個所に統廃合)には自衛官ではな
い看護師も勤務しています。

一部の自衛隊病院は一般市民にも開放され、コロナ患者の受け入れも行っ
ています。

余裕のないことがおわかりでしょう。

今回は、その看護官のうち部隊など病院以外に配置されている人員から、
派遣することになります。

そこで思ってしまうのです。

これを機に、菅義偉首相は特に自衛隊の基盤をなす陸上自衛隊について適
正規模の25万人を目指し、組織改編を含めて国民に提起してはどうか、と。

25万人というのは、世界で6番目に長い日本列島の海岸線をもとに、大規
模災害の時の最後の砦である陸上自衛隊に必要なマンパワーを弾き出した
ものです。

組織改編は、どんどん進む高齢化社会を前提とし、定年延長や女性の進
出、ロボット化では対応できない限界を、発想を変えて乗り越えようとい
うものです。

例えば、戦闘任務には従事しないけれども、特技で自衛隊を支える制度が
あってもよいのではないか。

IT分野や医療分野だけで勤務する人材は、心身の条件などに合わせた自衛
官としての基本的な訓練は施しますが、あとの任務は災害派遣と有事にあ
たっての部隊などの警備に限定します。

このような条件であれば、人員の面から自衛隊の適正規模に近づけ、高齢
化社会に対応することもできますし、今回のような事態にあたっても医療
分野の人材の投入について、期待に応えられるのではないかと考えています。


きわめて大雑把な絵図面ですが、固定観念を棄てた発想の転換のもと、多
様化する任務に対応できる組織を生み出すことができるのではないかと思
います。

2020年11月15日

◆プーチンへのSOSか?

           小川和久


トランプの「国家非常事態宣言」はプーチンへのSOSか?仮説の根拠

グローバリズムによる分断を世界に気づかせたトランプ大統領の功罪 噴
き出すバイデン醜聞。まさかのトランプ逆転で株式市場は逆回転か

異例ずくめのアメリカ大統領選は、敗者が負けを認めたのちに勝利宣言す
るという通例すら踏襲されぬまま、民主党のバイデン候補が一応の勝利を
収めたと世間では認識されています。しかし、決して敗北を認めようとし
ないトランプ大統領は日本時間13日、ついに非常事態を宣言。

この宣言は米国の投資家が中国軍の関連企業に投資することを禁じるもの
ですが、時期が時期だけに、なんとも言えないきな臭さが漂っています。
トランプのこの往生際の悪さは、いったい何が狙いなのでしょうか?

そこで気になるのが、泥沼化した大統領選決着のカギを握っていると思わ
れるロシアのプーチン大統領です。

メルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する軍事アナリストの小川和久さんは、
プーチン氏が米国に対し不気味に沈黙を守り続ける意味を解説。ウクライ
ナ疑惑というバイデン氏の弱みをどう利用するのか、そしてトランプの劇
的復活はあるのか、その動向に注目しています。


プーチンの沈黙は不気味だ

大接戦だった米国の大統領選挙ですが、マスコミは民主党のバイデン候補
の勝利がほぼ確定したと伝えています。初の女性副大統領にカマラ・ハリ
ス氏が就任することへの期待感も高まっています。

確かに、米国内での選挙に関する手続き上は、トランプ氏の逆転勝利はな
くなりました。しかし、気になるのはロシアのプーチン大統領の沈黙で
す。ご承知の通り、バイデン候補には次男ハンター氏に関する「ウクライ
ナ疑惑」が囁かれてきました。

2015年、オバマ政権の副大統領だったバイデン氏は検察の腐敗などが問題
になっていたウクライナについて、ポロシェンコ大統領にショーキン検事
総長の解任を求め、実現させます。親欧米路線のポロシェンコ政権を支援
していた米国として、腐敗を一掃する必要があるというのが名目でした。


一方、ハンター氏は当時、ウクライナのガス会社の役員を務めており、こ
の会社が検察の捜査の対象となっていたのに対して、バイデン氏は息子を
守るために検事総長を解任させたのではないかというのが、ウクライナ疑
惑です。

トランプ氏を支持するメディアの中には、バイデン氏も株式などの形で報
酬を受け取る約束になっていた疑いがあるとするものもあって、大統領選
でバイデン氏を攻撃する材料に使われました。

ウクライナ東部を事実上の併合状態に置き、ウクライナ全体に情報網を張
り巡らせているロシアです。ハンター氏の疑惑についても、何か掴んでい
る可能性はあると見たほうがよいでしょう。動かぬ証拠を握った場合、ロ
シアの選択肢は二つあります。

一つは、バイデン氏を大統領就任辞退に追い込み、トランプ氏を勝利者に
するというもの、いまひとつは、水面下で「ロシアを最大の脅威」とする
バイデン政権に証拠を突きつけ、米国との懸案事項(新戦略兵器削減条約
の延長など)で主導権を握り続けるというものです。


トランプ氏が負けを認めないでいるのは、プーチン氏が発する言葉を待っ
て態度を決めようとしている面があることも、視野に入れておく必要があ
ると思います。往生際の悪いトランプ氏の復権に首をかしげる向きもある
でしょうが、それでも7100万票以上を獲得するほどの支持者がいるトラン
プ氏は、ロシアにとって魅力的なはずです。プーチン氏が何を言うか、も
う少し待つ必要があるかもしれませんね。(小川和久)

2020年10月13日

◆日本のミサイル防衛代替案に欠陥

小川和久

軍事アナリストが呆れた平和ボケの実態


日本よ気づけ!5Gめぐる米中冷戦で得をする国と破滅に向かう中国共産党


防衛省が白紙撤回となったミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の代替案3案をようやく示し、自民党内でも議論が始まったと伝えられています。軍事アナリストの小川和久さんは、どの案を進めてもある程度の時間を要するのが「致命的」と問題視。主宰するメルマガ『NEWSを疑え!』で、私案を示しながら、ミサイル防衛の空白期間を可能な限り短くするという意識と議論の必要性を訴えています。


切迫感がないミサイル防衛

防衛省はこのほど、イージスアショアの白紙撤回を受けて次のようなミサイル防衛の代替案を自民党・公明党に提示しました。

(1)弾道ミサイル迎撃に特化した専用艦を含む護衛艦型、(2)石油を採掘するやぐらのような構造物(海上リグ)型、(3)民間船舶活用型─の3案です。

それぞれに長所もあれば短所もあります。これを叩き台に、適切なミサイル防衛能力を整備してもらいたいと思います

ただ、この防衛省の姿勢には致命的な欠陥があります。それは「戦っている」という意識に欠けていることです。どの代替案にせよ、決まるまでに一定の時間がかかります。違う提案が出てくる可能性もあります。それはよいとして、決まってから実戦配備までの時間は、これまでの例からして少なくとも5年は見なければならないでしょう。政治がらみの失敗によって、普天間基地移設問題のように暗礁に乗り上げることもあります。

しかし、弾道ミサイルの脅威は「いま、そこにある危機」なのです。北朝鮮や中国、ロシアと緊張状態にあろうと、緊張が緩和されていようと、いつ緊張状態が増すかもしれません。そこにおいては、世界に弾道ミサイルの脅威がある限りミサイル防衛態勢を進化させていくと同時に、空白期間をできるだけ短くする工夫が必要です。

戦場で弾薬が切れたとき、弾がなくなりました、補給があるまで掩体(塹壕)の中に避難して待ちます、なんて言わないでしょう。そんなときは、友軍に借りるのは当たり前のことです。ミサイル防衛でいえば、ともに弾道ミサイルの脅威と向き合っている米国の力を借りるのは、同盟国として当然のことですし、米国にとっても利益のあることです。

これまで私は、代替案の実戦配備完了までの「つなぎ」の位置づけで、米海軍のイージス艦を借りて配備するように提案してきました。米海軍は全体で89隻あるイージス艦のうち39隻をBMD対応艦として、中国、北朝鮮などの弾道ミサイルへの防衛に充てています。BMD艦は2021年9月までに48隻、25年9月までに65隻に増やされる予定です。

このうち4隻を借り、常時2隻を日本側の経費負担によって秋田県と山口県沖の日本海に展開するのです。あとの2隻は予備とします。この構想は、日米同盟強化の枠組みの中でスムーズに進めやすいでしょう。BMD艦とBMD艦ではないイージス艦2隻ずつを借り受け、旧型の2隻にBMD能力を備えるための改修を日本側が行うという考えも成り立ちます。

運用に当たる人員は、米海軍の現役に頼るのではなく、その目的のためのPMC(民間軍事会社)を米国政府の承認のもとに設立するか、既存のPMCにBMD艦運用のための部門を新設し、米海軍の経験者を募るのです。そして、艦長など指揮命令系統の要員以外はPMCで補います。このようにすれば、常時2隻を秋田県と山口県沖に展開することも可能になりますし、人員不足に頭を抱える米海軍と海上自衛隊へのしわ寄せも防げるのではないかと思います。

イージスアショアが装備するはずだった新型レーダーSPY-7については、イージス艦には米海軍の新型のSPY-6のほうが適しているという見方もあり、その話は代替案を決める中で決めていけばよいと思います。

とにかく、いまそこにある危機がテーマなのです。戦闘中に同盟軍と連携できないようでは、日本国と国民を守ることなどできるはずがありません。そう考えると、政府に切迫感が欠如しているのは隠しようがありません。せっかく政権を手にしたのですから、菅さん、手腕を見せてほしいものです。(小川和久)