2018年01月02日

◆健康百話 乳がんの治療

小川 佳成(医師)

乳癌の治療法は、病状や進行度、あなたの全身状態を考慮して決まります。治療には主として、手術、放射線治療、抗癌剤(抗ホルモン剤を含む)治療があります。

病状の進んでいる方には抗癌剤治療が優先されますが、通常は手術を行い、その後再発予防のための抗癌剤治療を行います。

【手術】
手術には主として、1.乳房切除、2.乳房温存手術があります。腫瘍の大きさや広がり具合などにより術式を選びます。当大阪市立総合医療センターでは、半数以上の方が乳房温存療法を受けられています。
 
乳癌の手術では転移の有無に関わらず、癌の根治・予防のためにわきの下のリンパ節を全部取り除くこと(リンパ節郭清といいます)が標準的に行われてきましたが、リンパ節郭清をすると術後に腕がむくみやすい等の症状が残ります。

そこでわきの下のリンパ節転移がないと予測される方を対象に術後の症状を軽減するために、センチネルリンパ節生検という方法を用いた、腋窩(わきの下)リンパ節郭清を省略する術式が行われるようになりつつあります。当センターでは6割の方がこの術式を受けられています。

【放射線治療】
乳房温存手術を行った場合には、残った乳腺での再発を抑えるために乳房に対する放射線治療を術後に行っています。治療期間は5〜6週間でこの治療により乳腺内での再発は2〜3%以下に抑えることができると考えられています。

【抗癌剤治療】
切除した癌の性格を詳しく調べて、術後の抗癌剤治療の必要性とその内容を決めます。これらの治療で再発の3〜4割を抑えることができるとされます。抗癌剤治療は充分な副作用対策をして外来にて行っています。

【乳房再建】
乳房切除後の乳房再建は形成外科にて行っています。当センターでは、術後1〜2年を過ぎ、治療が一段落してからの再建をお勧めしています。

乳癌の治療は5〜10年ごとに大きく進歩しています。当センターでは、“あなたがより良く生活していくために治療があるのだ”という想いのもとに、各分野の専門医が協力し合い乳癌の治療に当たっています。  
<大阪市立総合医療センター 外科>

2017年12月30日

◆リハビリって、再び生きること

向市 眞知 (ソーシャルワーカー)

「リハビリ」という用語は訳さなくてもよいくらい、日本語になってしまいました。しかし、この用語がとてもくせものです。皆がこの用語の前向きなところにごまかされ、便利に安易に使ってしまいます。


医師は最後の医療としてリハビリにのぞみをつなげる言い方をします。家族は家にもどるためにはリハビリを頑張ってほしいと期待をかけます。患者様もリハビリを頑張れば元どおりになれると思います。リハビリとは「再び生きる」という用語と聞きました。この概念で考えるととても幅広い概念です。


病院にはリハビリテーション科があり、そのスタッフには理学療法士、作業療法士、言語聴覚訓練士という、国家資格をもった専門技師がそろっています。身体機能回復訓練に携わるスタッフです。医師が「リハビリ」という用語を使う場合にはこのようなリハビリテーション科のスタッフによる訓練をさすだけではなく、「再び生きる」心構えをもちましょう、という意味を含んでいる場合が多いのです。


しかし、患者様、家族様のほうは、リハビリは療法士がするものと思い込んでいるケースが多いように思います。よく言われるのに「リハビリが少ない」、「リハビリをしてもらえない」というクレームがあります。療法士がするものだけがリハビリなら、診療報酬上点数がとれるのは一日20分から180分です。


「リハビリを受けさせたいから入院させてほしい」とよく言われますが、一日の何分の1かの時間のリハビリだけで「再び生きる」道のりを前に進むことはむずかしいものです。あとの時間をベッドに寝ているだけでは何の意味もありません。「リハビリのために入院している」というだけの安心感の意味しかありません。


いくら日本一の理学療法士の訓練をうけたといっても、患者本人が「リハビリをする(再び生きる)」心構えになっていなければ、空振りに終わってしまいます。マヒした身体に対して、拘縮してしまわないように理学療法士が外から力を加え訓練をすることはできます。でも、訓練が終わって身体を動かさなければもとのもくあみです。


しかし、言語訓練はそうはいきません。本人が声を出そう、話そうとしなければ訓練になりません。「絶対話すものか!」と口をつぐんでいる患者様に訓練は意味をなしません。まずは声を出してみよう、話してみようという気持ちになるように心理的にリラックスしてもらうことから訓練を始められると聞きました。


このことからわかるように、リハビリは本人次第なのです。そしてやはりリハビリも療法士と患者様の協同作業です。療法士さんの訓練の20分が終われば、患者様自らがもう一度リハビリのメニューをくりかえしてやってみることや、家族が面会時間に療法士に家族ができるリハビリを教えてもらい、リハビリの協力をしてみるなど、何倍にもふくらませていくことがリハビリの道のりなのです。


療法士さんまかせにしないこと、繰り返しやっていくこと、退院しても療法士さんがいなくてもリハビリ、再び生きる道のりは続いていること、それを実行するのは自分であることを忘れないでいてほしいと願っています。


2006年4月の診療報酬改定で更にこの認識が重要になってきています。療法士による機能回復訓練が継続してうけられる回数の上限が疾病により90日〜180日と定められました。これ以上の日数の訓練を続けても保険点数がつかないことになりました。医療機関は保険がきかなくなればリハビリを打ち切らざるをえません。

患者様も10割自費で料金を支払ってまでリハビリを続けることはできないでしょう。リハビリは入院の中でしかできないものではなく、退院しても自宅でもリハビリを続けていくいきごみが大切です。

2017年12月25日

◆健康百話 乳がんの治療

小川 佳成(医師)

乳癌の治療法は、病状や進行度、あなたの全身状態を考慮して決まります。治療には主として、手術、放射線治療、抗癌剤(抗ホルモン剤を含む)治療があります。

病状の進んでいる方には抗癌剤治療が優先されますが、通常は手術を行い、その後再発予防のための抗癌剤治療を行います。

【手術】
手術には主として、1.乳房切除、2.乳房温存手術があります。腫瘍の大きさや広がり具合などにより術式を選びます。当大阪市立総合医療センターでは、半数以上の方が乳房温存療法を受けられています。
 
乳癌の手術では転移の有無に関わらず、癌の根治・予防のためにわきの下のリンパ節を全部取り除くこと(リンパ節郭清といいます)が標準的に行われてきましたが、リンパ節郭清をすると術後に腕がむくみやすい等の症状が残ります。

そこでわきの下のリンパ節転移がないと予測される方を対象に術後の症状を軽減するために、センチネルリンパ節生検という方法を用いた、腋窩(わきの下)リンパ節郭清を省略する術式が行われるようになりつつあります。当センターでは6割の方がこの術式を受けられています。

【放射線治療】
乳房温存手術を行った場合には、残った乳腺での再発を抑えるために乳房に対する放射線治療を術後に行っています。治療期間は5〜6週間でこの治療により乳腺内での再発は2〜3%以下に抑えることができると考えられています。

【抗癌剤治療】
切除した癌の性格を詳しく調べて、術後の抗癌剤治療の必要性とその内容を決めます。これらの治療で再発の3〜4割を抑えることができるとされます。抗癌剤治療は充分な副作用対策をして外来にて行っています。

【乳房再建】
乳房切除後の乳房再建は形成外科にて行っています。当センターでは、術後1〜2年を過ぎ、治療が一段落してからの再建をお勧めしています。

乳癌の治療は5〜10年ごとに大きく進歩しています。当センターでは、“あなたがより良く生活していくために治療があるのだ”という想いのもとに、各分野の専門医が協力し合い乳癌の治療に当たっています。  

2017年12月22日

◆中性脂肪が気になる人の食事療法

庄司 哲雄  (医者)


<中性脂肪とは>

血液中の中性脂肪(トリグリセリドともいう)には二つの由来があり、食事で摂取した脂肪が小腸から吸収され血液中に現われたものと、肝臓で炭水化物から脂肪に作り変えられて血液中に放出されたものがあります。

いずれも、体の組織でエネルギーとして利用されるのですが、血液中の濃度が極端に(1000mg/dL以上)増えすぎますと、急性膵炎を引き起こすことがありますし、それほどでない場合でも(150mg/dL以上)動脈硬化の原因のひとつになります。

<中性脂肪を下げる食事の第一歩>

食事療法の基本は、摂取エネルギーの適正化です。脂肪の摂りすぎのみならず、炭水化物の過剰も中性脂肪を増やしてしまいますので、全てのトータルを適正にする必要があります。

身体活動度にもよりますが、標準体重1Kgあたり25〜30kcal/日程度が適切です。肥満気味の方は少なめにし、減量を目指します。アルコール多飲や運動不足は中性脂肪の大敵です。

<炭水化物と脂肪のどちらをひかえるか>
各人の食習慣により異なる場合がありえますが、炭水化物1グラムで4kcal、脂肪1グラムで9kcalですから、脂肪摂取を控えることが大変効果的です。

<ジアシルグリセロールとは>

少し難しくなりますが、中性脂肪とはグリセロールという物質に脂肪酸が3つ結合した構造(TAG)をしており、いわゆる「油」です。これに対して、脂肪酸が2つだけ結合した油もあり、これをジアシルグリセロール(DAG)といいます。同じような油であっても、小腸で吸収されてからの代謝が異なるため、中性脂肪の値や体脂肪への影響の程度に差があります。

通常の油TAGは、小腸で膵リパーゼという酸素のはたらきで、脂肪酸が2つはずれ、脂肪酸ひとつだけが結合したモノアシルグリセロール(MAG)に分解されます。それぞれは吸収された後、小腸でまた中性脂肪に再合成され、血液中に放出されます。

一方、DAGは中性脂肪へ再合成されにくいため、食後の中性脂肪の上昇が小さく、また体脂肪の蓄積も少ないといわれています。最近、DAGを利用した機能性食品が開発されています。しかし、DAGの取りすぎもカロリー 過剰につながりますので、通常の油TAGとの置き換え程度にすべきでしょう。

<脂質低下作用のある機能性食品>

動物に含まれるステロールという脂質の代表はコレステロールですが、
植物には植物ステロールという脂質が含まれます。これは小腸でのコレステロール吸収を抑制する働きがあります。

<専門医に相談すべき病気>

中性脂肪の増加する病態には、糖尿病やある種のホルモン異常、稀には先天的な代謝障害もありますので、一度は専門の先生にご相談いただくのも大切だと思います。


2017年12月19日

◆「ディスチャージナース」ってご存知?

             寺内孝子

皆さんは「ディスチャージナース」、あるいは「ディスチャージコーディネータ」という名前を聞いた事があるでしょうか?「ディスチャージナース」は、日本語では「退院調整看護師」と言われています。


「退院調整」とは、入院初期から患者様が生活する最適な場所を見当し、退院後に起こりうるであろう問題を予測しながら、それをおこさないように予防的にアセスメントし、専門家とタイアップしながら協働して問題を解決することです。その仕事を担っているのが「退院調整看護師」です。
 

では、何故そのような役目を担う看護師が必要なのでしょうか?
日本の医療環境はここ数年のうちに急激に変化しています。2000年から病院は急性期医療・長期療養・回復期リハビリテーションというように機能分化されています。

今までは、よくなるまで同じ病院でみていくという姿勢でしたが、機能分化されてからは、一般病院で治療が終わり、自宅での療養ができないなら療養病院へ、リハビリが必要なら回復期病院へ転院するという形に機能分化しています。本年4月から介護保険もさらに改定され在宅療養に重点をおくようになりました。
 

しかし、少子高齢化や核家族化が進み、高齢者が高齢者を介護する老老介護や1人暮らしの方も増えています。また、生活保護の人も増加しているのが現状です。このように在宅で療養するにも継続医療や継続看護が必要など多くの問題が残されています。
 

そこで、そのような問題を抱えてらっしゃる患者様やご家族の方の問題を解決し、療養の場が変わっても良質なケアを患者様に継続して提供でき、退院後に必要な社会資源が受けられるようにその調整をするのが、「退院調整看護師」の役割という訳です。

 昨年、その仕事を担う看護師の研修会に参加しましたが、私が従事する病院のように、「退院調整看護師」が専任で仕事をしている病院は少ないようです。退院調整看護師がおらず、その調整を病棟の看護師長や事務の方が行っていたり、居ても他の仕事と兼任しているところが多いようでした。
 

私の病院には退院調整看護師が2名おり、同じ部署にソーシャルワーカー2名と精神保健福祉士1名と相互に相談しながらより安心して患者様・ご家族の方に退院後の生活が送れるよう支援しています。

前述のように、療養の場が変わっても良質なケアを患者様に継続して提供できることを中心に調整をするのが、「退院調整看護師」の役割です。医療の現場は今、大きく変ろうとしています。
           (大阪厚生年金病院 看護師)

2017年12月11日

◆脳梗塞「 2時間59分だとOK!」

安井 敏裕 (脳神経外科医師) 


脳卒中とは、脳に酸素やブドウ糖などの栄養を送る血管が「詰まったり、切れたり、破裂して」、にわかに倒れる病気の総称である。脳卒中には、脳梗塞(詰まる)、脳出血(切れる)、くも膜下出血(破裂)の三種類ある。

 この病気の歴史は古く、「医学の父」と言われているヒポクラテスは既に今から2400年前の紀元前400年頃に、この脳卒中の存在を認識し「急に起こる麻痺」という表現で記載している。脳卒中による死亡率は日本では癌、心臓病に次ぎ、第三位で、毎年15万人程度の人が亡くなっている。

 しかし、本当に問題となるのは、脳卒中が原因で障害を持ち入院あるいは通院している人たちが、その約10倍の150万人もいることである。現在、脳卒中の中では、脳梗塞の発生頻度が突出して多い。2分20秒に一人が脳梗塞になっていると言うデータもあり、全脳卒中の70%程度を占めている。

 この最も多い脳卒中である「脳梗塞」について、大きな治療上の進歩があったので紹介する。

脳梗塞は、脳の動脈が血栓や塞栓という血の固まりのために詰まることで起こる。この血の固まりで閉塞さえた血管から血流を受けていた部分の脳は、いきなり脳梗塞という不可逆的な状態になってしまうのではなく、数時間の猶予があり、徐々に脳梗塞になる。

 この数時間の間に血流を再開してやれば、再度、機能を回復できることになる。いわば、「眠れる森の美女」のような状態で、医学的には、このような状態の部分の脳を「ペナンブラ」と言う。見方を変えると、この部分は、血流が再開しないと数時間後には脳梗塞という不可逆的な状態となってしまう訳である。

 このペナンブラの部分に血流を再開する方法として、古くは開頭手術をして、目的の血管を切開し、中に詰まっている血の固まりを取り除く方法を行っていたこともあるが、それでは、多くの場合に時間がかかりすぎ、再開通させた時には、ペナンブラの部分は既に脳梗塞になっている。また、間に合わないばかりか、出血性梗塞というさらに悪い状況になってしまうことさえある。

 開頭術の次に登場した再開通法は、カテーテルという長い管を血管の中に通し、その先端を詰まった部分にまで誘導して、血栓を溶かす薬を注入する方法である。

この方法では開頭手術よりも早く、血管を再開通させることができるが、この方法であっても、血管が閉塞してから6時間以内に再開通させないとペナンブラが脳梗塞になってしまうことが防げないし、間に合わずに血流を再開させた場合には、やはり脳出血が起こってしまう。

 このようなことから、一時、我々脳卒中に関わる医師は、口には出さないが、最も理屈にあった治療法である「急性期に閉塞血管を再開通させて脳梗塞になることを防ぐ」と言う治療を諦め、虚無的になっていた時期がある。再開通させることを諦め、梗塞に陥ってしまった脳自体の治療として、脳保護薬や低体温療法へと興味が移行していた時期もあった。

 しかし、米国で1996年から特別な手技や道具が不要で、ただ静脈内注射するだけで詰まった血管の血栓を溶かしてくれるアルテプラーゼと言う薬の使用が始まり、2002年にはヨーロッパ連合(EU)でもこの薬剤による血栓溶解療法が認可された。

わが国でも日本脳卒中学会を中心にこの薬の早期承認を厚生労働省に求めたが、「日本人を対象とした治験で良い結果が出ない限り承認できない」という厚生労働省の方針に答える準備のために時間がかかり(drug lag)、米国から遅れること約10年の2005年10月11日に漸く承認された。

 この薬は血管に詰まった血栓を溶かしてくれる血栓溶解剤で、発症後3時間以内に静脈内注射するだけで良好な予後が得られる。

しかし、この薬剤は両刃の剣で、39項目に渡る使用基準を尊守しないと、脳出血の危険性が著しく増大することが分かっている。従って、厚生労働省も非常に厳しく市販後調査(2.5年間に3000例以上の全例調査)を課している。現在は、言わば試運転ないしは仮免状態と心得て、慎重に使用する必要がある。

 そして、この薬剤を用いるためには、一定の講習を受ける必要があり、全国で130回以上行われ、8000人以上が受講した。実際に、この薬剤を発症後3時間以内に注射するには、患者さんには、遅くとも発症後2時間以内に病院へ到着してもらう必要がある。

 すなわち、病院へ到着しても、患者の診察、一般検査、脳のCT検査、家族への説明など、最低1時間は必要であるためである。そのために、最初にこの薬剤の使用を始めた米国では、脳梗塞を“ブレインアタック(brain attack)”と言い直し、社会全体に向かって、その緊急性を啓発した。

すなわち、“Time is brain. Time loss is brain loss.”などの標語で注意を喚起した。日本においても脳梗塞を“ブレインアタック”という緊急を要する疾患として一般の方々に認識していただくために、学会や医師会などの啓発運動も行なわれるようになっている。

 さらに、平成9年3月に創設された日本脳卒中協会においても、毎年5月25日〜5月31日までの一週間を脳卒中週間と定め啓発運動に努めるようになっている。脳卒中週間をこの時期にしたのは、とかく脳卒中は冬に多いと思われがちであるが、脳卒中の中で最も多い脳梗塞は、最近の研究では6−8月に増えだすため、脳卒中予防は夏から気をつけなければならないことを啓発するためである。

 この週間で使用される標語も、昨年(2006年)はアルテプラーゼの使用が認められたことを念頭において「一分が分ける運命、脳卒中」であった。2001年の日本での脳梗塞急性期来院時間調査の結果では36.8%の患者が3時間

以内に来院している。この中の一部の方がアルテプラーゼ治療を受けることになるが、この割合をさらに増やして、本薬剤の恩恵を受ける人を増やす必要がある。

 この治療では10年の経験を持つ米国では、この治療を受けるためには、@患者の知識、A救急車要請、B救急隊システム、C救急外来、D脳卒中専門チーム、E脳卒中専門病棟、とういう六つの連鎖の充実と潤滑な流れを推奨している。
 
一般市民への啓発や行政への働きかけなどが必要である。一方で、来院から治療までの時間も1時間以内にする努力が病院側に求められている。いつでも、3人程度の医師が対応できなければならないし、他職種(レントゲン部門、検査部門、看護部門)の協力も不可欠である。(了)

2017年11月22日

◆「切らずに治せるがん治療」

田中 正博(医師)


がん治療の3本柱といえば、手術、化学療法(抗がん剤)と放射線療法です。副作用なく完治する治療法が理想ですが、現実にはどの治療法も多かれ少なかれ副作用があります。

がんの発生した部位と広がりにより手術が得意(第一選択)であったり、化学療法がよかったりします。
 
また病気が小さければ、負担の少ない内視鏡手術で治ることもあります。 放射線療法は手術と化学療法の中間の治療法と考えられています。 手術よりも広い範囲を治療できますし、化学療法よりも強力です。

昔から放射線療法は耳鼻咽喉科のがん(手術すると声が出なくなったり、食事が飲み込みにくくなる、など後遺症が強い。)や子宮頚がん(手術と同じ程度の治療成績)は得意でした。 最近は抗がん剤と放射線療法を同時に併用することで、副作用は少し強くなりますが、治療成績が随分と向上しています。

食道がんでは手術と同程度の生存率といわれるようになってきました。手術不可能な進行したがんでも治癒する症例がでてきました。

また、手術と放射線療法を組み合わせることもしばしば行われています。 最新鋭の高精度放射線療法装置や粒子線治療装置を用いれば、副作用が少なく、T期の肺がん、肝臓がん、前立腺がんなどは本当に切らずに治るようになってきました。

また、残念ながら病気が進行していたり、手術後の再発や転移のため、今の医学では完治が難しいがんでも、放射線療法を受けることで、延命効果が期待できたり、痛みや呼吸困難などの症状が楽になることが知られています。

放射線療法以外の治療が一番いいがんも沢山ありますので、この短い文章だけで放射線療法がよいと判断することは危険ですが、がん治療=手術と決めつけずに、主治医の先生とよく相談されて、必要に応じてセカンドオピニオン(他病院での専門医の意見)を受けられて、納得できる治療を受けられることをお勧めします。 (完)      

         大阪市立総合医療センター 中央放射線部

2017年08月08日

◆最近の泌尿器科腹腔鏡手術

坂本 亘(医師)



泌尿器科領域の腹腔鏡手術をご説明します。

腹腔鏡手術とは、1cmぐらいの小さな穴をお腹に数箇所あけて、ガスで膨らませたお腹のなかを、小さな穴から挿入した内視鏡を使ってテレビ画面に写し、テレビ画面を見ながら、別の小さな穴から挿入した鉗子やはさみを使って行われる手術です。
 
最大のメリットは、小さな傷で手術が行われるため、術後の痛みが少ないこと、早期離床や早期退院が可能です。 問題は、手術は難しく一定の技術が必ず要求されることです。
 
泌尿器科で初めて主な腹腔鏡手術がなされたのは1991年の腹腔鏡下の腎摘出術ですが、その後、十数年の間に瞬く間に世界中に広まり、現在では、多くの施設で、さまざまな泌尿器科手術が、腹腔鏡で行われるようになっています。

 例を挙げますと、悪性腎腫瘍に対する腎全摘出術、腎部分切除術、腎尿管全摘除術、副腎腫瘍摘除術、睾丸腫瘍に対する後腹膜リンパ節郭清術、前立腺癌に対する前立腺全摘除、小児領域では腹腔内停留睾丸、水腎症に対する腎盂形成術、膀胱尿管新吻合術などがあります。

前立腺全摘除、腎部分切除、腎盂形成術など、腹腔鏡では特に難しいとされてきた縫合操作を必要とする手術も、普及してきています。

 2004年に泌尿器科腹腔鏡手術の技術認定制度が発足したことがあげられます。 この制度は、認定を希望するものは、自ら執刀した腹腔鏡手術をビデオに撮影し、そのビデオを数名の審査員が全行程を審査し、この手術技術が妥当か否かを判定するというものです。 一定基準をクリアーしなければ、技術認定を受けることはできません。

 技術認定者は、日本内視鏡外科学会のインターネット上で公開されています。泌尿器科では、初年度は約160人が応募し、約60%が技術認定を授与されています。

 このように、腹腔鏡手術が持つ多くのメリットを損なうことなく、安全かつ確実で患者さんの体に優しい負担の少ない腹腔鏡手術が多くの施設で行われるようになってきているのが最近の泌尿器科手術の傾向です。
     
(大阪市立総合医療センター  泌尿器科・小児泌尿器科)

2017年07月03日

◆リハビリって、再び生きること

 向市 眞知 (ソーシャルワーカー)




「リハビリ」という用語は訳さなくてもよいくらい、日本語になってしまいました。しかし、この用語がとてもくせものです。皆がこの用語の前向きなところにごまかされ、便利に安易に使ってしまいます。


医師は最後の医療としてリハビリにのぞみをつなげる言い方をします。家族は家にもどるためにはリハビリを頑張ってほしいと期待をかけます。患者様もリハビリを頑張れば元どおりになれると思います。リハビリとは「再び生きる」という用語と聞きました。この概念で考えるととても幅広い概念です。


病院にはリハビリテーション科があり、そのスタッフには理学療法士、作業療法士、言語聴覚訓練士という、国家資格をもった専門技師がそろっています。身体機能回復訓練に携わるスタッフです。医師が「リハビリ」という用語を使う場合にはこのようなリハビリテーション科のスタッフによる訓練をさすだけではなく、「再び生きる」心構えをもちましょう、という意味を含んでいる場合が多いのです。


しかし、患者様、家族様のほうは、リハビリは療法士がするものと思い込んでいるケースが多いように思います。よく言われるのに「リハビリが少ない」、「リハビリをしてもらえない」というクレームがあります。療法士がするものだけがリハビリなら、診療報酬上点数がとれるのは一日20分から180分です。


「リハビリを受けさせたいから入院させてほしい」とよく言われますが、一日の何分の1かの時間のリハビリだけで「再び生きる」道のりを前に進むことはむずかしいものです。あとの時間をベッドに寝ているだけでは何の意味もありません。「リハビリのために入院している」というだけの安心感の意味しかありません。


いくら日本一の理学療法士の訓練をうけたといっても、患者本人が「リハビリをする(再び生きる)」心構えになっていなければ、空振りに終わってしまいます。マヒした身体に対して、拘縮してしまわないように理学療法士が外から力を加え訓練をすることはできます。でも、訓練が終わって身体を動かさなければもとのもくあみです。


しかし、言語訓練はそうはいきません。本人が声を出そう、話そうとしなければ訓練になりません。「絶対話すものか!」と口をつぐんでいる患者様に訓練は意味をなしません。まずは声を出してみよう、話してみようという気持ちになるように心理的にリラックスしてもらうことから訓練を始められると聞きました。


このことからわかるように、リハビリは本人次第なのです。そしてやはりリハビリも療法士と患者様の協同作業です。療法士さんの訓練の20分が終われば、患者様自らがもう一度リハビリのメニューをくりかえしてやってみることや、家族が面会時間に療法士に家族ができるリハビリを教えてもらい、リハビリの協力をしてみるなど、何倍にもふくらませていくことがリハビリの道のりなのです。


療法士さんまかせにしないこと、繰り返しやっていくこと、退院しても療法士さんがいなくてもリハビリ、再び生きる道のりは続いていること、それを実行するのは自分であることを忘れないでいてほしいと願っています。


2006年4月の診療報酬改定で更にこの認識が重要になってきています。療法士による機能回復訓練が継続してうけられる回数の上限が疾病により90日〜180日と定められました。これ以上の日数の訓練を続けても保険点数がつかないことになりました。医療機関は保険がきかなくなればリハビリを打ち切らざるをえません。

患者様も10割自費で料金を支払ってまでリハビリを続けることはできないでしょう。リハビリは入院の中でしかできないものではなく、退院しても自宅でもリハビリを続けていくいきごみが大切です。

2017年06月24日

◆健康百話 乳がんの治療

小川 佳成(医師)



乳癌の治療法は、病状や進行度、あなたの全身状態を考慮して決まります。治療には主として、手術、放射線治療、抗癌剤(抗ホルモン剤を含む)治療があります。

病状の進んでいる方には抗癌剤治療が優先されますが、通常は手術を行い、その後再発予防のための抗癌剤治療を行います。

【手術】
手術には主として、1.乳房切除、2.乳房温存手術があります。腫瘍の大きさや広がり具合などにより術式を選びます。当大阪市立総合医療センターでは、半数以上の方が乳房温存療法を受けられています。
 
乳癌の手術では転移の有無に関わらず、癌の根治・予防のためにわきの下のリンパ節を全部取り除くこと(リンパ節郭清といいます)が標準的に行われてきましたが、リンパ節郭清をすると術後に腕がむくみやすい等の症状が残ります。

そこでわきの下のリンパ節転移がないと予測される方を対象に術後の症状を軽減するために、センチネルリンパ節生検という方法を用いた、腋窩(わきの下)リンパ節郭清を省略する術式が行われるようになりつつあります。当センターでは6割の方がこの術式を受けられています。

【放射線治療】
乳房温存手術を行った場合には、残った乳腺での再発を抑えるために乳房に対する放射線治療を術後に行っています。治療期間は5〜6週間でこの治療により乳腺内での再発は2〜3%以下に抑えることができると考えられています。

【抗癌剤治療】
切除した癌の性格を詳しく調べて、術後の抗癌剤治療の必要性とその内容を決めます。これらの治療で再発の3〜4割を抑えることができるとされます。抗癌剤治療は充分な副作用対策をして外来にて行っています。

【乳房再建】
乳房切除後の乳房再建は形成外科にて行っています。当センターでは、術後1〜2年を過ぎ、治療が一段落してからの再建をお勧めしています。

乳癌の治療は5〜10年ごとに大きく進歩しています。当センターでは、“あなたがより良く生活していくために治療があるのだ”という想いのもとに、各分野の専門医が協力し合い乳癌の治療に当たっています。  
<大阪市立総合医療センター 外科>
               

2017年06月13日

◆健康百話・「肝臓をいたわっていますか?」

片山 和宏(医師)



肝臓は、右のわき腹からみぞおちのあたりにある、重さが約1kgちょっとの臓器です。

心臓のように「どきどき」したり、お腹が空いた時の胃や腸のように「グーグー」鳴ることもありませんが、ただひたすら黙って体の他の臓器に栄養を送ったり、いらなくなったごみを捨てたりしていますので、家族で言えばまさに最近の若いお母さん達にはとても少なくなった昔の良妻賢母型のお母さんの役割を果たしています。

だからといって、あまり無理ばかりをさせていると、ご主人を見捨てて家出してしまうかもしれません。ですから、ご主人であるあなたが普段からちゃんといたわってあげる必要があるわけです。
 
基本的に肝臓は、少しくらい弱っていても自覚症状が出にくい臓器です。しかし、血液検査をすると、実はとても早くから「SOS」のサインを出していることが多いのが特徴です。

 「沈黙の臓器」として有名な、自覚症状の出にくい肝臓も、血液にはちゃんと気持ちを伝えているわけで、血液検査は肝臓の気持ちを察して上げられる重要な検査です。

 これから、どのようにいたわってあげればいいかとか、文句を言いたそうだけど、どのようにすれば早めに察してあげられるかなどについて、シリーズでご紹介していきたいと思います。

            大阪厚生年金病院 消化器担当部長 

2017年06月05日

◆脳梗塞「2時間59分だとOK!」

安井 敏裕 (脳外科医・産業医) 



脳卒中とは、脳に酸素やブドウ糖などの栄養を送る血管が「詰まったり、切れたり、破裂して」、にわかに倒れる病気の総称である。脳卒中には、脳梗塞(詰まる)、脳出血(切れる)、くも膜下出血(破裂)の三種類ある。

この病気の歴史は古く、「医学の父」と言われているヒポクラテスは既に今から2400年前の紀元前400年頃に、この脳卒中の存在を認識し「急に起こる麻痺」という表現で記載している。脳卒中による死亡率は日本では癌、心臓病に次ぎ、第三位で、毎年15万人程度の人が亡くなっている。

しかし、本当に問題となるのは、脳卒中が原因で障害を持ち入院あるいは通院している人たちが、その約10倍の150万人もいることである。現在、脳卒中の中では、脳梗塞の発生頻度が突出して多い。2分20秒に一人が脳梗塞になっていると言うデータもあり、全脳卒中の70%程度を占めている。

この最も多い脳卒中である「脳梗塞」について、大きな治療上の進歩があったので紹介する。

脳梗塞は、脳の動脈が血栓や塞栓という血の固まりのために詰まることで起こる。この血の固まりで閉塞さえた血管から血流を受けていた部分の脳は、いきなり脳梗塞という不可逆的な状態になってしまうのではなく、数時間の猶予があり、徐々に脳梗塞になる。

この数時間の間に血流を再開してやれば、再度、機能を回復できることになる。いわば、「眠れる森の美女」のような状態で、医学的には、このような状態の部分の脳を「ペナンブラ」と言う。見方を変えると、この部分は、血流が再開しないと数時間後には脳梗塞という不可逆的な状態となってしまう訳である。

このペナンブラの部分に血流を再開する方法として、古くは開頭手術をして、目的の血管を切開し、中に詰まっている血の固まりを取り除く方法を行っていたこともあるが、それでは、多くの場合に時間がかかりすぎ、再開通させた時には、ペナンブラの部分は既に脳梗塞になっている。また、間に合わないばかりか、出血性梗塞というさらに悪い状況になってしまうことさえある。

開頭術の次に登場した再開通法は、カテーテルという長い管を血管の中に通し、その先端を詰まった部分にまで誘導して、血栓を溶かす薬を注入する方法である。

この方法では開頭手術よりも早く、血管を再開通させることができるが、この方法であっても、血管が閉塞してから6時間以内に再開通させないとペナンブラが脳梗塞になってしまうことが防げないし、間に合わずに血流を再開させた場合には、やはり脳出血が起こってしまう。

このようなことから、一時、我々脳卒中に関わる医師は、口には出さないが、最も理屈にあった治療法である「急性期に閉塞血管を再開通させて脳梗塞になることを防ぐ」と言う治療を諦め、虚無的になっていた時期がある。再開通させることを諦め、梗塞に陥ってしまった脳自体の治療として、脳保護薬や低体温療法へと興味が移行していた時期もあった。

しかし、米国で1996年から特別な手技や道具が不要で、ただ静脈内注射するだけで詰まった血管の血栓を溶かしてくれるアルテプラーゼと言う薬の使用が始まり、2002年にはヨーロッパ連合(EU)でもこの薬剤による血栓溶解療法が認可された。

わが国でも日本脳卒中学会を中心にこの薬の早期承認を厚生労働省に求めたが、「日本人を対象とした治験で良い結果が出ない限り承認できない」という厚生労働省の方針に答える準備のために時間がかかり(drug lag)、米国から遅れること約10年の2005年10月11日に漸く承認された。

この薬は血管に詰まった血栓を溶かしてくれる血栓溶解剤で、発症後3時間以内に静脈内注射するだけで良好な予後が得られる。

しかし、この薬剤は両刃の剣で、39項目に渡る使用基準を尊守しないと、脳出血の危険性が著しく増大することが分かっている。従って、厚生労働省も非常に厳しく市販後調査(2.5年間に3000例以上の全例調査)を課している。現在は、言わば試運転ないしは仮免状態と心得て、慎重に使用する必要がある。

そして、この薬剤を用いるためには、一定の講習を受ける必要があり、全国で130回以上行われ、8000人以上が受講した。実際に、この薬剤を発症後3時間以内に注射するには、患者さんには、遅くとも発症後2時間以内に病院へ到着してもらう必要がある。

すなわち、病院へ到着しても、患者の診察、一般検査、脳のCT検査、家族への説明など、最低1時間は必要であるためである。そのために、最初にこの薬剤の使用を始めた米国では、脳梗塞を“ブレインアタック(brain attack)”と言い直し、社会全体に向かって、その緊急性を啓発した。

すなわち、“Time is brain. Time loss is brain loss.”などの標語で注意を喚起した。日本においても脳梗塞を“ブレインアタック”という緊急を要する疾患として一般の方々に認識していただくために、学会や医師会などの啓発運動も行なわれるようになっている。

さらに、平成9年3月に創設された日本脳卒中協会においても、毎年5月25日〜5月31日までの一週間を脳卒中週間と定め啓発運動に努めるようになっている。脳卒中週間をこの時期にしたのは、とかく脳卒中は冬に多いと思われがちであるが、脳卒中の中で最も多い脳梗塞は、最近の研究では6−8月に増えだすため、脳卒中予防は夏から気をつけなければならないことを啓発するためである。

この週間で使用される標語も、昨年(2006年)はアルテプラーゼの使用が認められたことを念頭において「一分が分ける運命、脳卒中」であった。2001年の日本での脳梗塞急性期来院時間調査の結果では36.8%の患者が3時間

以内に来院している。この中の一部の方がアルテプラーゼ治療を受けることになるが、この割合をさらに増やして、本薬剤の恩恵を受ける人を増やす必要がある。

この治療では10年の経験を持つ米国では、この治療を受けるためには、@患者の知識、A救急車要請、B救急隊システム、C救急外来、D脳卒中専門チーム、E脳卒中専門病棟、とういう六つの連鎖の充実と潤滑な流れを推奨している。
 
一般市民への啓発や行政への働きかけなどが必要である。一方で、来院から治療までの時間も1時間以内にする努力が病院側に求められている。いつでも、3人程度の医師が対応できなければならないし、他職種(レントゲン部門、検査部門、看護部門)の協力も不可欠である。(了) (再掲)

(元大阪市立総合医療センター・脳神経外科部長 ・現社会福祉法人「聖徳会」岩田記念診療所 勤務)

2017年05月23日

◆健康百話・「切らずに治せるがん治療」

田中 正博(医師)




 がん治療の3本柱といえば、手術、化学療法(抗がん剤)と放射線療法です。副作用なく完治する治療法が理想ですが、現実にはどの治療法も多かれ少なかれ副作用があります。

がんの発生した部位と広がりにより手術が得意(第一選択)であったり、化学療法がよかったりします。
 
また病気が小さければ、負担の少ない内視鏡手術で治ることもあります。 放射線療法は手術と化学療法の中間の治療法と考えられています。 手術よりも広い範囲を治療できますし、化学療法よりも強力です。

昔から放射線療法は耳鼻咽喉科のがん(手術すると声が出なくなったり、食事が飲み込みにくくなる、など後遺症が強い。)や子宮頚がん(手術と同じ程度の治療成績)は得意でした。 最近は抗がん剤と放射線療法を同時に併用することで、副作用は少し強くなりますが、治療成績が随分と向上しています。

食道がんでは手術と同程度の生存率といわれるようになってきました。手術不可能な進行したがんでも治癒する症例がでてきました。

また、手術と放射線療法を組み合わせることもしばしば行われています。 最新鋭の高精度放射線療法装置や粒子線治療装置を用いれば、副作用が少なく、T期の肺がん、肝臓がん、前立腺がんなどは本当に切らずに治るようになってきました。

また、残念ながら病気が進行していたり、手術後の再発や転移のため、今の医学では完治が難しいがんでも、放射線療法を受けることで、延命効果が期待できたり、痛みや呼吸困難などの症状が楽になることが知られています。

放射線療法以外の治療が一番いいがんも沢山ありますので、この短い文章だけで放射線療法がよいと判断することは危険ですが、がん治療=手術と決めつけずに、主治医の先生とよく相談されて、必要に応じてセカンドオピニオン(他病院での専門医の意見)を受けられて、納得できる治療を受けられることをお勧めします。(完)      

大阪市立総合医療センター 中央放射線部