2008年08月19日

◆東京、ドクターヘリ導入せず


石岡 荘十

東京都にはドクターヘリを導入する考えのないことが、明らかになった。

8/5(火)、本メルマガで「5千フライトの検証」と題して、2007年度ドクターヘリの運用実績を分析したリポートをお届けした。
http://www.melma.com/backnumber_108241_4184663/

これについて、8/9(土)、「頂門の一針」の常連執筆者、毛馬一三氏から「石岡の原稿は、実績検証にかこつけて、東京都のケツを叩く狙いがあるのでは?」とその意図を見通した的確なご指摘を頂いた。
http://www.melma.com/backnumber_108241_4188847/

じつはその通りで、都民の1人として海外先進国並のヘリ運用を期待していたのだが、その後、関係方面に確認したところ、都はその考えを事実上、まったく持っていないことが分かった。

その根拠は---。

まず、都・福祉保険局・救急災害課の室井豊課長。「・東京には救急車の数も多く、病院も多いので都心部でドクターヘリの必要はない。

島嶼部(離れ島など)や三多摩地域については、江東区・新木場にある消防庁へリポートから医師を乗せて飛ぶので問題ない」と素っ気無い。

これに対して、元警察庁長官で、ドクターヘリの普及に努めているNPO「Hem-Net」(救急ヘリ病院ネットワーク)の国松孝次理事長は、筆者へのメールでこう答えている。

「東京消防庁はドクターヘリを導入する気は、持っていません。東京は、たしかに、救急施設も救急車も、他の道府県と比べれば、圧倒的に多く、交通網もよく整備されていますから、へり救急の必要度は、比較的低いとは言えます。

ただ、三多摩地域など、島嶼部以外でも、ヘリを使った方がよいところは、無いないわけではありません。東京消防庁は、7機も消防ヘリを持っていますから、需要はまかなっていると言っています。

ただ、問題は、消防庁のヘリは、すべてへリポート常駐で、病院に置かれているわけではありませんし、常に救急仕様でスタンバイしているわけでもありませんから、ドクターリと比べて、医師を搭乗した迅速な現場出動には難点があります。

この点を改善し、手持ちの消防へりをもっとドクターヘリ的に運用するのが、課題だと思います」。

前にも書いたが、ヘリの利点は「過疎」だけでなく「過密」をも軽々と飛び越える機能を持っていることだ。したがって、ロンドンやベルリンの状況にみられるように、欧米の先進国では「都市部だからヘリが不必要で、田園部だからヘリが必要といった議論はあまり聞かれず、必要なら、どこでもヘリを使う、その用意をしておく」という考えだ。

ドイツには、「15分ルール」というのがあり、都市部(過密地域)、田園部(過疎地域)にかかわらず、全国どこでも15分でドクターヘリが患者の元に着き、直ちに治療を開始する体制になっている。

東京ではどう見たって、江東区新木場のヘリポートに医師が駆けつけるだけで15分はかかるだろう。それから現場に飛ぶわけだから、先進国のドクターヘリに較べ、間違いなく治療着手の時間は遅くなる。その分、救命率は下がる。

なるほど、人や車が過密な都市部にヘリを降ろすためには、安全に、地上にスペースを確保しにくいという困難な問題はある。しかし、ロンドンではピカデリーサーカスにだってふわりとドクターヘリは降りる。

銀座4丁目の交差点に降ろせないはずは無い。が、こんな芸当を実現するためには、警察や消防など地上の防災・救急関係機関との緊急の際のコミュニケーションが欠かせない。

東京都の担当者は、「そんな海外のケースなど研究したことも無い」と恬として自らの無知を恥ずる気配もない。「都市部でも効果があるか、大阪の実績を見守りたい」と他人事だ。

となると、「私どもは、いまのところ、置き去りにされている『地方』を重点に、そこに見られる救急医療の『格差』を解消するための有効な手段にドクターヘリがあるではないかということを専ら主張しており、その意味では、東京は、あまり眼中にありません。

決して、東京が完璧というわけではありませんが、それより先に地方だよね、というところです」という。国松理事長にも見捨てられたようなのだ。

霞ヶ関に巣食うで日本最高の頭脳集団(?)が、鉛筆なめなめ省益を描き、政治を振り回すのも困ったものだが、消防ヘリとドクターヘリの違いも分からない地方官僚に救命救急を託している都民も、気の毒だ。

大地震の懸念も指摘されている。数十万人と予想される被災者の搬送を、地上をのろのろ走る“お猿の駕籠屋”に、東京都はお任せするつもりらしい。                     (ジャーナリスト)
        20080813


2008年08月09日

◆これからが「フライト本番」

<本稿は、メルマガ全国版「頂門の一針」8月9日号に掲載されました。「頂門の一針」へのご拝読をお勧めします。末尾記載をご参照の程を>          
                     
                        毛馬一三

本欄の常連執筆者の石岡荘十氏が、先般全国版電子雑誌「頂門の一針」に、ドクターヘリ「5千件フライトの検証」を寄稿された。

同氏は、国松孝次氏(救急ヘリ病院ネットワーク理事長)と、大阪府議会の光澤忍議員を通じて大阪府前知事に要請、「大阪ドクターヘリ就航」に貢献したキーマンの一人だ。

さて同氏は、同稿の中で、次のように記述している。

<怪我や病気で一刻も早い救急救命処置が必要な患者のもとに医師と看護師がヘリコプターで駆けつけ、その場で救急治療を開始しながら病院に患者を搬送するドクターヘリシステムが本格的な運用を開始したのは2001年4月。

2007年度にはドクターヘリ全国配備のため新法案も出来た。今年3月までに全国13道府県(14ヶ所)で運用されている。現在、ドクターヘリの運用が行なわれている道府県の実績は次の通り(数字は2007年度の出動回数)

・北海道    433
・福島県     27
・埼玉県     30
・千葉県    686
・神奈川県   345
・静岡県東部  611
・静岡県西部  702
・長野県    330
・愛知県    470
・大阪府     12
・和歌山県   379
・岡山県    475
・福岡県    369
・長崎県    394

このうち、埼玉県は2007年10月、大阪府と福島県は2008年1月、運航を開始したばかりなので、実績はまだ少ない>。

同氏は、大阪の出動回数が12件と少ないのは、就航開始から3ヶ月しか経っていないためだと説明している。しかし察するに石岡氏の本当の心境は、大阪が大都市のモデルとして先行就航した実績を基に、首都圏東京のケツを叩く材料にしたかったのではないだろうかと思えてならない。

果たして同氏は、このあとこう続けている。

<首都東京都はどうなっているのか。

昨年11月から、「東京型」ドクターヘリを運用しているという。ところが、これは離れ島などで病人が出たとき、消防庁の防災ヘリがどこかで医者を拾って乗せ、患者の搬送に向かうという方式で、都心部での患者にドクターヘリは必要ないという判断だ。

救急車で十分間に合うというのだが、これでは世界の先進国で常識となっている救急体制に較べ、交通渋滞の中を駕籠で病人を運ぶようなものだ。(略)東京都民がかわいそうだ。

1970年にドクターヘリを導入した、いわば草分け的国家であり、面積にして日本より小さいドイツでは、80ヶ所に拠点がある。「全土どこへでも15分以内に現場到着」を謳っている。これと較べると、日本人はかわいそうだ>と。

光澤府議を通じ大阪府知事へ橋渡しを依頼した筆者も、石岡氏の秘めた「大阪の稼動実態」への心境が気になったので、大阪府医療対策課の責任者に「低迷?」のわけを尋ねた。

すると、大阪ドクターヘリの出動件数は、2007年度(2008年3月迄)12件だったのを既に超え、実は2008年7月末までに前記の3倍の36件に達している、と明らかにした。

ただこの出動件数は、救急救命病院の少ない僻地を抱える他府県の出動とは根本的に違い、大阪ドクターヘリは、救急車が出動する都心部とは異なる、府下郡部の重症患者の救急救命出動に限られるため、出動回数はある程度制限されるのは止むを得ないと説明する。

では、「このままの状態で推移するのか」と重ねて訊いてみた。

大阪府としては、さらに出動回数が増えるように、今ある府北部の阪大付属病院の唯一の基地局に加えて9月から、府東部の八尾空港に新基地局を設けることで、府東・南部を短時間で網羅するシステムを作り上げ、府郡部地区の救急救命出動件数を増やして行きたいという。

しかも、9月1日大阪湾周辺で行われる「防災の日」には、近畿南部の激震災害を想定した救助活動訓練に同ドクターヘリを参加させ、災害被害に遭った重症患者を海上自衛艦の甲板に搬送して救急救命医療に当るなどの訓練も行い、緊急大震災災にも対応するという。

いずれにしても、大阪府では、各地の消防本部や救急救命専門協議会等と緊密に連絡を取りながら、重症患者の適切な搬送出動に当り、実積向上に繋げたいとしているのだ。

橋下知事も、大阪ドクターヘリには共感と理解を見せている、と関係者はいう。

確かに出動回数の「数」より、助けた「質」の数を優先という説もある。しかし府民・近隣府民を医師・看護師付きのヘリに収容して短時間で搬送し、いかに多数の「重篤患者の命」を救うのか、その「数」も大きなキーワードになるのではないだろうか。(了)2008.08.08

 ★メイル・マガジン「頂門の一針」 1276号 平成20年8月9日(土)

<掲載目次>
・中共独裁は続くのか?(上):平井修一
・外貨流入規制に姿勢を変更:宮崎正弘
・これからが「フライト本番」:毛馬一三
・海で泳ぐということ:馬場伯明
・『e‐pros通信』8月7日号 :大釜茂璋

 話 の 福 袋
 反     響
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2008年07月17日

◆コード・ブルー

石岡 荘十

元警察庁長官・スイス大使を歴任し、退官後はドクターヘリの普及を目指すNPO「救急ヘリ病院ネットワーク(HEM-Net)」の理事長を勤めている国松孝次さんからこんなメールが届いた。

<ヘリ救急活動のほうは、経済財政諮問会議のいわゆる「骨太の方針2008」に「ドクターヘリを含む救急医療の整備を行う」と、初めて、「ドクターヘリ」という文言が明記されたほか、フジテレビ系列で「コード・ブルー」という、ドクターヘリで活躍するフライトドクターを主人公にした帯ドラマ(毎週木曜22時から)の放映が始まり、20%を越える視聴率を稼ぐなど、いいニュースが続き、気をよくしているところです>

「骨太の方針2008」を確認するとちゃんとあった。6月27日閣議決定された“骨太方針”第5章「安心できる社会保障制度、質の高い国民生活の構築」の中の重要課題の第1番に、「ドクターヘリを含む救急医療の整備を行う」と明記してある。

その後に、「産科、小児科をはじめとする医師不足---」と、いろいろな医療問題が続いており、ドクターヘリ普及が民間NPOの運動にとどまらず、政策レベルの重要な課題として晴れて公に認知されたことになる。

よく知られている通り、オウム事件捜査のさなか、1995年3月30の早朝、警察庁長官だった国松さんは出勤のため東京・荒川区の自宅マンションを出たところで何者かに拳銃で狙撃された。

銃弾4発のうち3発が胸部や背中などに命中。

瀕死の長官は救急車で東京・文京区の日本医科大付属病院高度救命救急センター(東京・文京区)に搬送され、6時間半にわたる手術が行われた。

奇跡的に一命を取りとめた国松さんは長官退官後の1999年、スイス大使に任命される。そこで遭遇したのがドクターヘリだった。

在スイス3年半、2002年11月に帰任した国松氏は自らの体験とスイス在任中見聞きした経験から、日本での救急体制の立ち遅れを痛感、ドクターヘリの普及に精力的に動き出す。

ドクターヘリの運用主体は基本的には地方自治体だが、2001年岡山県の川崎医大大村付属病院で本格運用が始まって、現在は13道府県で14機が稼動中だ。NPOは10年以内の全都府県配備を目指している。

ハードルはカネだ。ドクターヘリの運用経費は1機当たり年間2億円ほど。国と地方自治体が折半して負担しているが、全国配備をしても200億円、国民1人200円足らず負担で実現するというのに、道路や新幹線建設には熱心だが、ヘリの1億円を捻出できないという自治体がほとんどだ。
要するに、分かっていない。

そんな中、フジテレビ系列で、ドクターヘリで活躍するフライトドクター・ナースを主人公にした帯ドラマ(毎週木曜22時から)の放映が先週から始まった。

一般にはまだよく知られていない職業に賭ける若者たちの青春ドラマという点では、4年前、海上保安官の海難救助の最前線を描いた映画(後に同じフジテレビ系でドラマ化)「海猿」と似た発想のドラマだが、今ひとつ地味な普及活動をしている国松さんら関係者としては、20パーセントを超える高い視聴率は歓迎するところなのである。

ドラマのタイトル「コード・ブルー」は救命救急センター(ER)で使用される隠語のひとつで、患者の容態が急変したことを知らせる、 緊急事態発生・至急全員集合を意味する言葉だ。

出演の人気イケメンや女優陣たちの若者の友情、愛、生命の尊さを訴えるストリーはともかく、ドクターヘリ運用が抱えるいくつかの問題点も描き出されているところは評価していい。

例えば、基地となる病院が満杯のため、1分1秒を争う現場で隊員がほかの搬送先を電話で捜す場面、夜間飛行が不可能なため日没を気にしながら現場救急に取り組む場面などだ。

いま、どこのどの病院で患者受け入れが可能か、リアルタイムで情報を現場に伝えるシステムの構築なくしてドクターヘリの機能をフルに発揮することは出来ないし、ドイツのように昼夜を問わず24時間フライトできる機体・地上設備・関係法令の整備もまた急務である。

国松さんを、まさに奇跡的に救命した日本医大高度救命救急センターはドクター40人、ナース120人が交代で24時間体制で待機し、「絶対に患者を断らないこと」をモットーにしている。しかしこんな病院は例外的な存在だ。

患者受け入れの地上の体制、つまり中小病院の統廃合もまた重い課題だ。開業医の年収は病院勤務医の1・8倍だという。ある医事評論家は、開業医の3分の1は「欲張り村の村長」だと喝破している。

こんな個人開業医が乱立している中で、とりわけ妊婦のたらいまわしが問題となっている産科、小児科の統廃合は最も困難な課題といえるだろう。

骨太方針”のお題目がどれほどの威力を持つものか知らないが、現場救急で3分の1の人が命を取りとめ、半数が後遺症から免れたという実績をみれば、例としてあげた課題の解決こそが、ドクターヘリの運用、人命救助のコード・ブルーといえるだろう。(ジャーナリスト)

2008年01月16日

◆大都市圏で遂にテイクオフ!

毛馬 一三

医師・看護師が搭乗し救急医療機器を装備した「ドクターヘリ」が、いよいよ16日から大阪で運行を開始する。全国都道府県では12番目だが、大都市圏でのテイクオフはこれが初めて。1年間に300余人を超す重篤患者の命を救えると見込まれるだけに、この挑戦には意義がある。

16日の本番運行に先立ち、15日午後2時過ぎから基地病院となる大阪大学医学部付属病院で、「ヘリ運行開始式」が行われ、関係者に同病院14階屋上90平方bの広場で「大阪ドクターヘリ」が初めて公開された。

冬場には珍しい西日を一杯受けて待機していたユーロコプター式EC135型のスマートな同機は、白色機体中央の両側にデザインされた青色の「DoctorHeLi」の文字を鮮やかに浮き立たせ、後部翼に描かれた「大阪府のマーク」を一段と輝かせていた。

大阪府の女性担当幹部が、「ドクターヘリ」に搭乗する医師、看護婦、操縦士らの機内搭乗状況などを説明したあと、運行管理室の職員の指示で飛行デモンストレーションが行われた。周辺の大阪万国博覧会会場上空を3分ほど飛行して帰還したが、飛行音も低く機体のぶれもすくなく、重篤患者の搬送にはスムーズな運行が出来そうに映った。

16日の運行開始の初日は、大阪府南河内で午前8時30分から行われる「府地震災害対策訓練」へ初出動した。そして17日から、いよいよ朝8時半から日没まで、年内無休で、府下18ヶ所の医療機関と連携しながら、重篤患者の本格的な搬送に当る。

因みにこの「大阪ドクターヘリ」は、全国で初めての大都市圏の運行だけに「府の運行要領」には、救急車を補完し、重篤患者の救命率向上のために多様な試みが盛り込まれている。

i)119番を受け付けた消防機関が、同機使用の必要性を判断し、基地病院のドクターヘリ運行管理室に出動要請、同運行管理室は医師・看護師を搭乗させた同機を5分以内に発進、20分以内で現場に急行させる。
i)現場で救急医療を行った医師の判断を運行管理室に通報し、離着陸可能で適切な救命救急医療が可能な搬送医療機関を決定する。
i)ドクターヘリ機長は、離着陸場所の接近した時点で、最終的な離着陸に関する安全を確認し、機長判断で着陸する。
i)大規模な地震、事件、事故等の災害が起きた場合は、この救急救命に専念し、通常の「ドクターヘリ」の運行は、その間一時停止する。

ところで、過去の実際のデータを検証した結果、この搬送出動によって、府下では1年間に300余症例の命を救うことが可能だとの見方を、専門家や警察等で構成する「府ドクターヘリ運行調整委員会」は出しており、これをもって救急救命に対する大阪府の画期的なチャレンジだと評価する関係者は多い。

序でながら、このドクターヘリの就航がこの大都市圏大阪で実現したことに陰ながら感激している人たちを筆者は、この際追記しておきたい。

まずNPO法人「救急ヘリ病院ネットワーク」の理事長の国松孝次氏(元警察庁長官)、府議会議員の光澤忍氏、それにまもなく任期が切れる大阪府知事の大田房江氏である。

05年の夏、元NHK記者の石岡荘十氏が、同期記者の筆者に国松孝次氏を会わせたいといってきたのがきっかけだった。筆者はこれには政治決断しかないと判断、余人をもって代えがたい光澤府議と同4者会談をする。その光澤府議が事務当局の反対を抑えて、太田知事にこのテークオフに政治決断させたものだった。

その時、国松氏が「ドクターヘリ1機の費用は年間2億円。全都道府県では年間100億円かかりますが、国民1人あたり80円です。これで助からなかった人
が助かるんですから安いものです」といわれたこと今でも思い出す。

国松氏から年賀状を、筆者は頂いた。これに尽きる感激はない。
<いよいよ大阪にも、ドクターヘリが飛ぶことになりますが、最初に井戸を掘った方々の貢献は、たとえ、それが表立ったものではなかったとしても、忘れられてはならないものと思います。私どもは、忘れません。国松孝次>。

大都市圏における「大阪ドクターヘリ」の運行開始は画期的なことに間違いない。だがこれから控える問題も大きい。このあと前記「井戸掘り人」の石岡氏の考えをご高覧願いたい。(了)   08.01.15


◆同上記事は、1月17日発信全国版メルマガ「頂門の一針」1060号に掲載されました。(ネットメディアおおさか編集部)


  <平成20(2008)年1月17日(木)「頂門の一針」1060号>
 ★目次

・大阪で遂にテイクオフ!:毛馬一三

・ドクターヘリの運用に課題:石岡荘十

・笑わない愛子さま:馬場伯明

・さすらうタバコ難民:平井修一

・私の英語勉強法(18):前田正晶

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◆ドクターヘリの運用に課題

                     石岡荘十

大阪でドクターヘリがテイクオフするが、「よかった、よかった」と手放しで喜んでばかりはいられない。じつは効率的な運用をするために解決しなければならないいくつかの課題がある。

最大の問題は、地上での患者の受け入れ体制である。現場にドクターヘリが到着した。同乗した医師が直ちに初期治療に当たる。ドクターはここで病状に応じて患者をどこへ搬送するかを判断することになる。

もともとドクターヘリは事故対応が目的だったのだが、2006年東京で開かれたシンポジュームで、示されたドクターヘリの先進国ドイツのデータによると、2005年の出動目的実績は交通事故が15%、産業事故とスポーツ事故が合わせて16%、心筋梗塞や脳梗塞を含む内因性疾患の患者が48%を占めていた。

つまりほぼ半数は、高齢者に多い心臓や脳疾患の患者なのである。ドクターは患者の状態によってどこの病院に搬送すべき病院の選択をしなければならないが、現場であちこちに電話をして病院を探す余裕はないから、救急車との連携を含めて調整を行なう「救急コントロールセンター」の設置がどうしても必要になる。

次の問題は、24時間救急患者を受け入れる病院、スタッフを含めた受け入れ体制である。ドイツには「15分ルール」というのがあって、国内どこでも15分以内に患者を病院に搬送できる体制が整っている。

せめて日本でもヘリコプターが30分以内で患者を搬送でき、いつでも対応できる基幹病院の整備は出来ているのか。

続きを読む≫≫

2007年12月10日

◆1月16日にテイクオフへ

                  毛馬 一三 

大都市圏で全国初の大阪ドクターヘリが、2008年1月16日に就航することが内定した。この日は、13年目を迎える阪神淡路大震災が起きた日の前日に当り、震災で亡くなった被災者の慰霊を兼ねると共に、重篤な患者や震災被害者を救済する今後の使命遂行を祈願して、この日が設定されたという。

皮肉にも、この日は任期満了に伴う大阪府知事選挙の真っ只中で、このドクターヘリ導入に多大の貢献した太田房江知事は、同選挙への出馬を断念したため、複雑な胸中で同機のテイクオフを見守ることになる。

大阪府ドクターヘリは、11道県につぐ13番機となるが、首都圏東京に先んじ、キッカケからわずか2年と3ヶ月でテイクオフに漕ぎ着けた。その背景には、先述の太田知事のほかに、大阪府議会の光澤忍府議(公明会派)や救急救命専門医らの功績は見逃せない。

府のドクターヘリは、大阪大学医学部付属病院高度救命救急センターを基地局と定め、同病院の屋上で常時待機中の「ユーロコプター式EC135型」のドクターヘリ1機(予備1機も待機)が、消防本部通信指令室のホットラインによる要請を受けて出動する。

同機には、操縦士、整備士、医師、看護師が同乗し、患者を運ぶストレッチャー1台も搭載。飛来するヘリは、患者を乗せた救急車の近くに着陸、そこでまず患者に対して、ヘリ搭乗の医師と看護師による救命処置が行われる。

それが終わると同医師、看護師が付き添って患者をヘリ搭乗させ、大阪府が指定する基地病院や近隣の医療機関に搬送するという仕組みだ。

運行時間は年中無休、午前8時半から日没までフル稼働する。既に府下で150箇所の離着陸場所が確保されており、近畿各府県との間でも具体的な離着陸場所の確保などについて調整が進められている。

気懸かりは、基地局から現場までの飛行所要時間が計画通りに進むかどうかだが、府の就航シュミレーションに基づき、ホットラインによる要請を受けて出動し、指定現場に着くまでの所要時間をこれまで10日間・10コースで、医師、看護師を同乗させて検証している。

その結果飛立つまでが5分、府下の指定現場までは15分と計画通り運行出来ることが確認された。また近畿各府県の指定現場にも、概ね30分で到着出来ることが実証されたという。

専門学識経験者などによる「大阪府ドクターヘリ運行調整委員会」によると、17年度の救急搬送症例の分析で、「搬送に30分以上を要した患者のうち、重度外傷、急性心筋梗塞、急性脳卒中などの症例で、ヘリ飛行が可能な昼間の搬送98例」など、312例がヘリ輸送が適応だった症例との指摘をうけている。

つまり、テイクオフする08年からからは、大阪府下だけで何と年間300人以上もの重篤患者の命を救うことが可能だと、実例を根拠にドクターヘリ効果を上申しているのだ。

だから産科医不足で妊婦を死亡させた奈良県が、大阪府ドクターヘリ運行との連携に積極的であるなど、山間部や僻地を多く擁する近畿府県では、今回の大阪府への参加を強く求めているのが実情だ。

ところで、この大阪ドクターヘリ導入のキッカケが、NPO法人「救急ヘリ病院ネットワーク」の国松孝次理事長とメルマガ「頂門の一針」の常連執筆者の石岡荘十氏(友人)が、光澤府議と接触したことからだったことは、何度か触れている。

その国松理事長はこう言っている。「ドクターヘリを1機飛ばすのにかかるお金は、年間で4億円弱(内国庫8、790万円)です。大変な額のお金だと思うかもしれませんが、実は、国民1人当たりの負担として見ると160円で済みますから、これで助かる命が増えるのなら、安いものです」。

ドクターヘリ運行で掛かった患者の運送費用は、保険が適用されるという。その分患者の負担は軽くて済むし、それよりも何よりも毎年300人以上の命が助かるということ自体が拍手そのものだ。大都市圏は全国初の大阪ドクターヘリは、これから1ヶ月余にはついに稼動する。(了)    2007.12.09

◆上記原稿は、全国版メイル・マガジン「頂門の一針」1023号
    平成19(2007)年12月10日(月)に掲載されました。

(1023号 目次)

          ・1月16日テイクオフ:毛馬一三

  ・民 主 党:前田正晶

  ・拝啓 渡辺行革大臣閣下:平井修一

  ・ハノイ喜怒哀楽(55):渡邉由喜

  ・参謀本部「機密戦争日誌」:平井修一

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2007年10月04日

◆煮詰まったテイクオフ・プラン

                    毛馬 一三

08年1月にテイクオフする大阪ドクターヘリの運行プランがほぼ固まり、具体化へ大きく前進する見通しとなった。「妊婦たらい回し死産問題」で揺れる隣県奈良県が、大阪ドクターヘリ事業に連携していく意向を示すなど、大都市圏では全国初の同機運行開始だけに大きな期待が集まっている。

大阪ドクターヘリは、大阪府が2007年度2月定例府議会で「ドクターヘリ1機」導入の予算額9500万円を提案し、翌2008年1月の就航を目指す方針を明らかにしたことから、同機の本格テイクオフに向けての動きが軌道に乗った。

全国では12番機となる同機導入だが、大阪導入に向けた最初のキッカケからわずか2年と3ヶ月でテイクオフに漕ぎ着けられたのは、異例のスピードといっていい。まして過密都市部での導入に対する府庁内外の消極論を抑え、首都圏東京に先んじて実施に踏み切ることは、大いに評価される所であろう。

そんな中、今開かれている9月定例府議会で、同機テイクオフに向けた具体的な事業プランが大きく浮かび上がってきた。

大阪府議会の光澤忍議員(公明)が4日の代表質問で、「ドクターヘリの運用の準備はどこまで進んでいるのか。府下の救急医療体制の強化を図るだけではなく、近畿各府県と連携し相互に活用する事業とするべきではないか」と質したのに対し、太田房江知事がこう答えた。

<現在、消防本部や災害拠点病院等で作っている「大阪府ドクターヘリ運行調整委員会」で詰の協議をしており、焦点の着陸地は150箇所を確保することで協議している。また15分で府内全域、約30分でほぼ近畿全域をカバーできるため、この機動力とアクセスの良さを生かした広域活用のシステムづくりによって、近畿各府県との連携をも進めている。>

この知事答弁は、この3ヶ月後に迫ってきたテイクオフを前に準備が着々進んでいることを述べたものだが、府関係者の話によると、それに向けた体制は更に進んでいることが分かってきた。

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2007年02月20日

◆医療費削減するかドクターヘリ


                 石岡 荘十

「ドクターヘリの普及は結果的に、医療費の削減にも貢献するのではな
いか」
 
現役記者時代、知遇を得た元警察庁長官、スイス大使を歴任した国松孝
次さんがドクターヘリ普及のNPO「HEM−Net」をスタートさせ
たころのことだ。彼にそう聞いたら、「はっきりした研究データが無い
んです」と否定的な答えだった。

ところが、その可能性があることを示す研究結果がこのほどまとまった。国松さんが有料会員制月刊誌「エルネオス」1・2月号でその概要を連載して紹介している。

ドクターヘリについては、本メルマ前号(711号)でも主宰者から紹介されているので、ここでは省略し、以下、国松さんが書いた記事を“盗用”しながら、概要を紹介する。

<ドクターヘリを活用すれば、救急車だけで救急活動を行なうより、医
療費負担は少なくて済む可能性が高い。

この点に関する実証的な研究はこれまで皆無に等しかったが、最近、わ
がNPO法人の委託を受けて、東大医科研の山口洋博士(生物統計学専
攻)が画期的な研究を行なった。

研究は、日本医大千葉北総病院が2003年1月から06年3月までに扱った交通事故患者のうち、救急車とドクターヘリが競合して利用される地域内で発生した事故の患者をから、救急車搬送44人、ドクターヘリ搬送26人を抽出。これらの患者を年齢、性別、現場血圧、外傷重傷度、現場呼吸数などで分類・標準化をした上で入院日数、入院保険点数の比較を行な
った。

その結果、ドクターヘリで搬送した患者の方が、救急車で搬送した患者
の入院日数(38.5日)より16.7日短く、入院保険点数で(救急車の患者
245.554点)より、112,959点少なかったのである>

保険点数は1点10円だから、患者1人当たり110万円以上の削減が可能になるという結論である。

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2007年02月17日

◆大阪に超された東京

       <「頂門の一針」713号掲際(2月17日)>                      
                       

渡部亮次郎

ドクターヘリとは、重篤な患者が発生した場所に医師と看護師をいち早
く派遣し、初期治療を開始するためのものである。

日本では 2001年に導入促進事業が始まって以来、理解が進んで来ているが、まだ1道8県10病院での運用にとどまっているのが実情である。

最大の問題は、年間2億円近い運航費用の負担であり、昨今の地方自治体の財政事情で導入を躊躇しているところが多い。

また基地病院内や病院間の横の連携、十分な数の医師の確保、乗員の養
成システム、ヘリポートの不足、運用時間が日中に限られ、夜間離発着
が出来ない事などといった、解決しなければならない課題が多い。

しかし自動車より速度の速いヘリコプターによる救急活動は、コストは
高いものの非常に有効な救急活動である。従来だと助からない患者が助
かっている。今のところ日本では北海道、千葉、神奈川、長野、静岡、
愛知、和歌山、岡山、福岡、長崎の10道県11病院で運行されているに過
ぎない。

しかし世界では、特にアメリカやヨーロッパで活発である。それをつぶ
さに実感してきたのが元警察庁長官にしてスイス大使を務めた国松孝次
さんである。

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2007年02月14日

◆組織風土で蠢く「裏金問題」

                     毛馬一三

   (日本一メルマガ「頂門の一針」710号・07.02.14掲載)


「大阪ドクターヘリ」の実現で、久しぶりに地方自治体からの朗報として話題を呼んだ大阪府だが、ここに来て批判轟々の「裏金問題」で揺れている。

地方自治体の最近の話題と言えば、福島、和歌山、宮崎3県知事による相次ぐ官製談合事件で、これを機に地方自治のイメージは地に堕ちた。地方分権の風潮の中で、過度に集中する権力を逆手に取り、県政運営を悪に染めてしまったといわれる同事件だけに、地方自治体の権威や信用を失墜させた印象は拭うことはできない。

だが大阪府の「裏金問題」は、これとは質を異にする。早い話、お役所の思い上がりによって培われてきた「組織ぐるみ不祥事」そのものであり、それ故に知事個人から発した前述の「3知事事件」とはまるきり次元が違う。庁内多部局関与の事実から見ても、悪質極まりない「組織犯罪行為」と言っても言い過ぎではあるまい。

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2007年02月09日

◆大阪ドクターヘリ 実現

                    毛馬一三 
   (日本一メルマガ「頂門の一針」705号 07.02.09に掲載)


大阪ドクターヘリが、2008年1月から就航することが事実上決まった。これは大阪府が、新年度予算案を審議する2月定例府議会に同ドクターヘリ1機導入の予算額9500万円を提案することにしたためで、府議会全会派がこれに賛意を見せていることから文句なしのテイクオフとなる。

全国ではまだ12番機となる導入だが、キッカケからわずか2年と3ヶ月後にテイクオフに漕ぎ着けられたのは、異例のスピードだといってよい。

まして過密都市部での導入に対する難色論を抑え、首都圏東京に先んじて実施に踏み切ることは、まだ様子見の他大都市の関心を集めるだけではなく、導入への機運に弾みを付けることは必至であろう。

救命医療を目的とするドクターヘリのシステム大阪府計画そのものは、既導入10機と大筋では変わりが無いが、異色なのは過密都市で特に活躍する「救急車」と、ヘリポートに着陸して待機する「ドクターヘリ」とを巧みにドッキングさせる「ランデブー・ポイント(合流・救命処置)」を特別に設けたことだ。

この「ランデブー・ポイント」とは、119番通報を受けた通信司令室(市町村消防本部)からの同時指示で、「ドクターヘリ」と患者を搬送する「救急車」が無線連絡を取りながら合流する地点のことで、そこに患者が運ばれれば、ヘリ搭乗の医師と看護師による救命処置がまず行われる。

それが終わると患者をヘリに移乗させ、大阪府が指定するドクターヘリ基地病院「大阪大学医学部付属病院」に搬送するというものだ。

たしかにこの「ランデブー・ポイント」構想に行き着くまでには、曲折があった。

早い話、救急病院の数が完備し、道路網も発達して過密都心部では「救急車」の方が遥かに効率的だという意見が、知事の委嘱する専門検討委員会や事務当局で支配的で、むしろ市街地での着陸場所特定に手間隙かかる「ドクターヘリ」導入には否定的な雲行きだった。

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2006年10月15日

◆和歌山官製談合の行方


                 城北 幹朗

福島県発注工事をめぐる談合事件で、実弟が逮捕され「同義的責任を取る」として佐藤栄佐久知事が辞職した問題が起きている最中に、今度は和歌山県で県の出納長らが逮捕される「官製談合」が摘発された。ここでも木村良樹知事の関与の有無が俄に問われる事態となってきた。

この和歌山県発注のトンネル工事入札をめぐる官製談合では、大阪地検特捜部が12日、県出納長の水谷聡明容疑者(60)と大阪府河内長野市のゴルフ場元社長の井山義一容疑者(55)、準大手ゼネコンの3幹部の併せて5人を競争入札妨害(談合)容疑で逮捕した。

関係者によると、この「官製談合」の仕組みの大筋が、徐々に浮かび上がってきた。それとは、水谷出納長の県のサイドからと、知事と親交の深いゴルフ場の井山元社長との両方向から、ゼネコン側の仕切り役だった大林組(本社・大阪市)に工事発注先の業者を具体的に名を挙げて依頼、それに沿って大林組が共同企業体(JV)の構成つくりを行ったというもので、逆三角形の相関関係図式になっている。

ところが捜査が進むにつれ驚くべき事実が、関係者から明らかになってきた。というのは、和歌山県が平成16年11月に発注した同トンネル工事入札4件のうち2件について、井山元社長が県側への口利きの見返りとして、JVの準大手ゼネコン「ハザマ」と「東急建設」からそれぞれ5900万円と6000万円。さらには大林組と準大手ゼネコン奥村組からそれぞれ9000万円を「謝礼」として渡ったというのだ。入札価格の5%に相当するものといわれ、総額約3億円にのぼるとされる。

一体、何故そんな巨額な金が、ゴルフ場の井山元社長にそう易々と渡るものなのか。なぜ和歌山県の公共工事に口利きが出来て、想像を超える「謝礼」が流入してくるものなのか。この辺りから、木村知事との親交の深さに関連があるのではないかという疑惑が浮上してくる。知事はこれに関与していないのか、である。

その木村知事は、自治省(現総務省)から大阪府の総務部長に就任、副知事に昇任して退職、平成12年に和歌山県知事選挙に出馬して当選し、現2期目。大阪府に着任する前には和歌山県の総務部長も経験している。

大阪府の幹部OBによると、木村知事は大のゴルフ好きで、大阪府庁総務部長・副知事当時に井山元社長の経営するゴルフ場のメンバーである同僚幹部に連れられて同ゴルフ場に行き始めて以来、井山元社長との親交がはじまったという。
南北朝時代、両天皇が同居されたという“女人高野宿坊”の遺跡の裏手高台にあるゆったりした玄人好みのゴルフ場だが、ここが両人の出会い場所だった。

その親密な付き合いから和歌山県知事選挙に木村知事が出馬する際は、井山元社長が実質的な裏選挙対策本部長を務め、資金面で全面支援をしても貰ったという。

木村知事は、就任直後から「談合を防ぐ入札制度の改革」にいち早く取り組むと共に、他県の改革を標榜する知事とも連動して「改革知事」のイメージを強烈に打ち出した。本メルマガにも「ドクターヘリ」の先駆的リーダーとしてしばしば登場している。

そういうアグレッシブな行動を示す一方で、就任直後の12月議会の際、同県田辺市の教育研究施設の工事計画を急遽変更。契約していた設計会社との契約を打ち切った上で、井山元社長の関係のある設計会社と契約をし直しており、この行為が知事選挙への見返りではないかと、今なお議会筋とくすぶっている。

さてその井山元社長のことだが、同元社長の縁戚が和歌山県にある超有名な宗教団体の幹部をしていることから、和歌山県にはよく精通しているといわれる。そして、知事選挙で現知事誕生に功績が多大であったことが広く知れ渡ると、県の主力基盤産業である建設業界にも不動の地位を築き、県首脳と通じる「強力パイプ役」としての権勢を振るい出したといわれる。

以来「井山詣で」が盛んとなり、公共工事の発注をめぐっては、地元3有力業者と同元社長を中心に業界調整が進められていたようだ。

その井山元社長を知事が水谷出納長と引き合わせ、以後建設業会の代表と県3の出納長とが直に連絡を取り合い、気脈を通じることになったようだと業界筋は説明する。だから今回JVの中に地元2業者を組み入れることが実現したのも、両者の合意に基づくものと見られている。

「官製談合」とは、主導役のゼネコンに対し、「官」側が「天の声」として受注者を割り振りを指示することである。<10月14日・産経新聞「主張」>

木村知事は、「そういった(官製談合の)事実は一切確認していません。地検の捜査には引き続き協力していきたい」というコメントを発表し、県の官製談合の存在を否定している。

だとすれば、水谷出納長は上司木村知事の意思に反する官製談合を勝手に起想し、自己判断で実行したのだろうか。「談合を防止したい」とする知事の意思に背いてまでも、腹心中の腹心が危険を冒してまでも遂げなければならない野望でもあったのだろうか。

地方自治体の職員は、上司の意向に反する業務の執行を忌避することをわきまえた人種であるが、悲しいかな、間違った下命でも、それが上司の意思なら従わざるを得ない宿命にあると、大阪府幹部OBがそう嘆いていたことがある。

井山元社長に流れた巨額な「謝礼金」のシステムとその迂回ルートも、だれが考え、誰の意思でそのルートを稼動させたのか。知事と親交の深い井山元社長が、知事に隠して自己利益獲得のために図った行為なのだろうか。

関係者の話によると、特捜部は裏付け捜査を慎重に進めると共に、「ハザマ」らが井山元社長に支払った金の流れを厳しく追及する方針だという。いづれにしても、木村知事に対する関与の有無が当面の大きな焦点となってきたようだ。(了)     2006・10・14

2006年09月03日

加速する大阪ドクターヘリ導入検討

              毛馬一三

      (東京発メルマガ「頂門の一針」557号に掲載)

大阪で「ドクターヘリ」の導入に向けた動きが、俄に活発になりだした。大阪でのドクターヘリ導入の動きは、05年の府議会から始まったものだが、曲折を経ながらようやくこの秋から本格的な展開を見せ始めてきた。

ドクターヘリは、消防が運用する救急ヘリとは違い、医師をはじめ医療スタッフが搭乗して事件・事故、急病患者の現場に駆けつけて救急処置を行った後、急病患者を「最寄」の病院ではなく、「最適」の医療施設へ空から搬送するというもの。

このオペレーションで、一分一秒を争う多くの患者が救われることは勿論、地上の救急車との連携で、事故・事件・急病患者、少なくとも三分の一の命が助かることが、先進諸外国のデータが示している。だが、わが国で同機を導入しているのは、9道県10施設に過ぎない。
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