2008年08月14日
◆これこそ歴史的快挙!
石岡 荘十
先日、北京五輪でフェンシング・女子フルーレで菅原智恵子(31=宮城ク=)が、7位に入賞、歴史的快挙だとお伝えしたが、“番狂わせ”はこれで終わらなかった。
8/13、今度は男子フルーレで、太田雄貴(22=京都クラブ=)がメダルをもぎ取ったのだ。しかも、銀。
日本のフェンシングでは団体・個人を通じてこれまでの最高は、東京五輪での男子フルーれの4位。それが今回は、決勝でドイツのクライブリンクを追い上げながら9-15で惜敗したものの、メダルを獲得したのは、昭和11年、日本フェンシング協会発足(戦時中の昭和18年一時解散、戦後22年再発足)以来、初。文句なしの、歴史的快挙だ。その模様は、8/13夜、9:55から放送された。
それに先立つ準決勝の雄姿は下記。準々決勝でもドイツ選手を破って4強にコマを進めた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080813-00000048-kyt-l26
太田選手は、大津市生まれで、平安(現龍谷大付属平安)高、同志社大出身のまだ22歳、アテネ大会で9位、ロンドンでもまだいける年頃だ。
ところで、フェンシングはオリンピック競技としては第1回大会からある歴史と伝統のある種目で、ヨーロッパではもっとも一般的なスポーツだ。現在フランスの国技となっており、競技はフランス語で行なわれる。
アンガ(構え)、アレ(始め!)、アルト(止め)というのが、基本的な用語だ。
筆者がやっていた40年前は、いまのような電気審判器はなく、選手2人の競技に副審4人、主審1人が目で判断する。つまり、競技者2人に審判5人という変なスポーツだったが、最近ではメタルジャケットに剣先を一定以上の強さで押し付ける(ポイントという)と、ランプが点灯する仕掛けになっていて、これにより誤審が少なくなった。
快挙を成し遂げた菅原、太田はフルーレだが、男女で有効面が異なる。基本的には腕と顔を除く上半身だが、男子は臍下のデルタも有効なのに対し、女性は無効である。
さて、競技種目としてのフェンシングにはフルーレのほかに「エペ」と「サーブル」があるが、フルーレとエペは「突く」のが基本だ。
エペは遡れば決闘用の剣で、切っ先がチューリップのように割れており、全身を有効面とする。映画でしか観ることが無い本物の決闘は、相手を刺殺するのではなく、流血が確認できた時点で勝ち負けが決まる。
ユニフォームが白いのは、血流をわかりやすくするための名残だといわれる。
対して、サーブルは振り回して切る、突く、「何でもあり」だ。
「怪傑ゾロ」「三銃士」など派手な立ち回りを売り物にした映画に見る剣がこれである。
予断だが、怪傑ゾロにはタイロン・パワー、アラン・ドロンなどが扮しているし、エロール・フリンらも勧善懲悪、活劇映画では無敵の名剣士を何度も演じているが、本当に実力があり、強かったのは誰か。喜劇役者、ダニー・ケイだったという話を昔聞いたことがある。
それはともかく、五輪では、この後、エペもサーブルもあるが、ハリウッド映画のようにはいかない。スポーツとしてのフェンシングは、ルールをよく分かった上で、よほど目を凝らして観ないと、面白みは無いスポーツだ。
瞬きをしてはいけない。決定的な瞬間を見逃す。
柔道もそうだが、特に格闘技を国際化しようとすると碌なことはない。「有効」だの「技あり」だの細かいルールに縛られると、面白くなくなる。柔道は「一本勝負、無制限」でないといけない。谷本歩実が「これぞ柔道」と他の選手にはない歓喜をもたらしたのは、「オール一本」だったことが大きい。ボクシングでいえば、KOだろう。
フェンシングも、アタックを剣で払うと、例え同時ポイントでも、払った方に攻撃権が移るというややこしいルールがあったりして、観客を混乱させ、格闘技の醍醐味を削いでいる。
ともあれ、目出度いことに変わりはない。老剣士としては、この後も若者の健闘を祈りたい。 20080814
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