2008年09月05日

◆救急医療に免責・責任軽減制度!

                      川原俊明(弁護士)

福島地方裁判所でなされた産婦人科医師に対する無罪判決に対し、福島地検が控訴を断念し、無罪が確定しました。
 
帝王切開手術で大量出血した患者の死亡事故について、産婦人科医師が逮捕され、業務上過失致死の疑いで刑事裁判にかけられていたのです。
 
亡くなられた遺族の気持ちもわかります。しかし、医療体制に、どこまで司直の手をのばすべきか、慎重に検討すべき事案となりました。
 
この事案に限らず、産科・小児科の医師のなり手が少ないのは、他の科目の医師よりも、多くの医療訴訟に巻き込まれる危険が大きいからです。民事事件ならまだしも刑事事件にまで追求されるとなれば、医師としてやる気を失うのも、わからないではありません。
さらには、マスコミを賑わすものに、救急病院での患者のたらい回し現象があります。
 
医療機関が、時間外での緊急医療受け入れ体制を取り、限られた医師の手配による暫定治療の結果に対し、大きな医療過誤訴訟に回ってくるのでは、医療機関側にとって、割に合うはずがありません。それなら、最初から緊急患者を受け入れない方が、医療訴訟で攻められることがなく、医師にとって安心だからです。

しかしながら、これも、最終的には、患者につけが回ってきます。

結果的には、目の前に救急病院があっても、救急患者を受け入れてくれないのですから。
救命は、時間との戦いです。
 
そこで、緊急医療の場面では、患者も、とりあえずの暫定処置を期待している、と割り切る必要があります。

医療過誤訴訟では、医師の過失を判断する基準として、当該時期における医療水準を満たした処置がなされたかどうか、これが医師の注意義務違反かどうかを認定します。

しかし、緊急医療において、この原則をそのまま当てはめるのは、果たして妥当なのでしょうか。酷に過ぎる場合が発生します。
 
緊急医療の場合、いままでの治療歴の有無に関係なく、当該症状を訴える初対面の患者に対し、医師が、限られた時間で処置をするのです。この場面で、医療水準を満たした適切な処置がなされたかどうかの判断基準を適用する方が無理を言っているのは明らかです。
 
そこで、救急医療においては、医師の注意義務を軽減するなどの処置を、立法的に明記して解決すべきです。

法律は、当該社会の実情に合わせたものでなればなりません。

限られた環境のもとでの適切な措置さえなされていれば、当該医師に対し、それ以上の民事・刑事の責任を追及すべきではありません。

そうすれば、救急医療機関も安心して救急患者を受け入れることができます。患者のたらい回しもなく、産科・小児科の医師不足も解消されるかもしれません。
 
現在の、医師責任追求型訴訟社会では、医師、とくに産科・小児科の医師がますます少なくなり、医療体制が整わないことによって、結果的に少子化現象を助長することになります。
 
これでは、決して、社会全体が、良くなりません。(完)


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