2008年10月30日

◆大阪府知事の演出勝ち

                    毛馬一三

<本稿は、全国版メルマガ「頂門の一針」10月31日(金)号に掲載されました。同メルマガの目次は下段に掲載>


さて、橋下大阪府知事と日教組が応酬し合った「大阪の教育を考える府民討論会」の過激なやり取りが、テレビ番組等で取り上げられている。これらは、会場からのヤジへの橋下知事対応ぶりを中心に興味本位に伝えている。

ところが橋下知事が、日教組と激しく応酬し合えばその分、推進する府の教育改革の内容を府民に周知できるという、したたかな読みと思惑があったことには、些かも触れていない。、

この討論会は、大阪府教育委員会と大阪府が主催して開いたものだが、事前の抽選で決まった意見開陳15人の代表の中に、日教組の組合員が含まれていることを、知事は予め予知していたと知事周辺の関係者は言う。

知事は、自らが目指す府政運営に不合理を感じると即座にマスコミに「発言」を行い、府民の反応を探りながら施策方針を決めていく、いわば「橋下劇場」の政治手法を取り、それなりに実績を上げている。

早い話、「発言」が如何なる反響を呼ぼうとも、要は府民の台所で関心を巻き起こし、真の賛否が伺えれば願ったり叶ったりという訳だ。

だからこの討論会の冒頭から、知事が教育改革の実績と自負している「自治体別結果を学力テストの公表」などを巡って、参加する日教祖が猛反発するだろうことは、当然折り込み済みだった筈だ。

議論はハナから罵声と支援者の拍手とが交錯し、テンションが上がれば上がるほど府民の関心を惹く討論会になるに違いないと期していたことも、あながち外れていないと、関係者はいう。

その意味で橋下知事の予測は、的中した。

<最初に日教組の組合員という女性が、「中山成彬前国交相の(日教組の強いところは学力が低いという)発言について知事は『本質を突いている』と述べたが、どういうつもりか。大阪の場合、学力の問題の背景には離婚率の高さなどさまざまな背景があるはずだ」と質問した。

これに対し橋下知事は「どんな理由があろうとも、大阪の学力が全国からするとかなり低い。そのことから逃げてはならない」と切り出し、「私には子供たちの学力を上げる責任がある。そのために知事に立候補し、当選させてもらった」と訴えた。

しかし発言中はヤジが多く、たまりかねた橋下知事は「まず人の話を聞きなさい。いい大人なんだから」。続く言葉で「こういう先生に子供たちを任せておくことはできない。中山前国交相の発言こそ正しいじゃないですか」と持論を述べると、知事の発言を支持する他の参加者たちから大きな拍手がわいた>。

更に知事はこうも発言している。

<「学校の先生は(学力低迷の問題について)責任を取らなくても一生公務員としてぬくぬくとやっていける」。さらに「トップの方針に学校の先生が従わない。どこの会社に、社長の方針に従わない部下がいますか。そんな部下がいたらクビになる」と持論を展開、「9割の先生は一生懸命やっている。

地域や家庭の皆さんが学校運営にかかわり、1割のどうしようもない先生を排除してください」と呼びかけた>。(産経新聞))

案の定、メディアは過激なやり取りの討論会として取り上げ、コメンテーターは「知事発言は公人としての域を超えた行き過ぎ発言」とか「傲慢発言」と決め付けるのが目立った。

だが知事は、恐らくこの討論会がバトルと称されるに至ったことにニンマリしているのではないか。府民の理解を得るために敢えて、その光景を見てもらうために行った、知事演出のシナリオそのものだったに違いないと、周辺関係者は言う。

そうであれば、反対論とヤジを飛ばし続けた日教組の組合員らは、橋下知事の術中にそっくり嵌ったという見方も出来ないこともない。言い換えれば、日教組の“読み負け”ということにもなる。

「大阪の教育を考える府民討論会」は、2回目が近く開かれる。今度はどのような読みと展開が繰り広げられるだろうか。

■<全国版メルマガ「頂門の一針」10月31日(金)号の目次は、下記の通りです。どうぞご拝読ください>


◆メイル・マガジン「頂門の一針」 1365号平成20年10月31日(金)

<目次>
・麻生「したたか」消費税10%:渡部亮次郎
・大阪府知事の作戦勝ち:毛馬一三
・円高を武器としてなすべきこと:宮崎正弘
・キリンの杜撰さ:前田正晶
・「介護戦争」事始:平井修一

・話 の 福 袋
・反     響
・身 辺 雑 記
       
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