2011年12月27日

◆年の瀬に思うこと(その一)

眞鍋 峰松


12月も中頃を過ぎると、ほとんどの会社では冬のボーナスの支給が終了する時期。
4,5日前の民放テレビを見ていたら、番組で街行く老若男女のサラリーマン・ウーマンを対象に、今年のボーナスはどうでしたか、とインタービューしていた。

ひと昔前までは、同じサラリーマンとして、夏・冬のボーナスが如何に有難いものであったことか、百も承知のこと。 とりわけ若年の頃には月給が安いぶん、あたかもボーナスは会社による強制的な貯金、給料として月々頂くと淡雪のように溶けて無くなってしまう、有難い制度だ、とまで思っていた。
 

ただ、現役の当時であれば、同じようなテレビの街頭インタービューであっても、その質問内容は、貴方(女)は貰ったボーナスはどのように使いますか、という使い途に関することが多かった。
 

今回のように、お宅の会社のボーナスはどれ位、というような類のボーナスの金額の多寡の質問では無かった気がする。 


つまり、今時のボーナスの話題と言えば、会社によって相当な格差が有ることが当然の前提として在って、その格差実態の方へ視聴者の関心が向いていることの表れなのだろう。
 

さて、そのインタビュー。 10人程度の男女が回答に応じていたが、現在の不況風の下でさぞ厳しいのだろうという想像に反し意外と、昨年に比べ増えましたという答えが多かった。 

それも面白いことに、年配者はパーセント増と答え、若者は1〜3万円増えましたと金額で表現していたこと。年配者のそれは、経済好調時の大らかな時代の名残りだと思うのは考え過ぎだろう、か。 

番組では、調査対象全体では、やはり現下の不況と先行き不安などを反映し、対前年では減少したとの回答の方が若干多かったとの解説であった。
 
また、インタービュー回答者の中で、3,4人がボーナスの増加要因として、前年に比べ会社の財務状況が改善したので、と答えていた。 つまり、収入面の販売促進や売上増加というより、経理内容つまり支出面の諸経費の削減によるもの、という意味なのであろう。

さらに、番組の中、最も印象深く記憶に残ったのは、30才半ばの男性の答え。 昨年より5倍に増えました、というのである。視聴者も驚いただろうが、さすがに、そのテレビのインタービュアーも驚いて、もう一度聞き返すと、件の男性の答えは、昨年が悪過ぎたのでその分増加幅が多くなった、リストラにより会社の財務内容が改善されたので、というのである。

この前二者の回答の中で、共通するのは、“会社の財務状況の改善で増えました”という理由。 財務改善の内容を明快に答えていたのは後者の男性のみだが、多分、いずれの会社の内容も似たり寄ったりの要因 〜リストラなどによる人件費の圧縮が大きいのだろうと推察できる。

何故なら、我が国の最近の給与所得者の平均所得額が、ほぼ横ばい乃至やや減少傾向にあること、依然として企業の被雇用者中に占める非正規労働者比率が増加しつつあること、特に中高年齢者のリストラが依然として高水準で続いていることなど、からも明らかだ。

また、件の男性の回答の中で、リストラという発言をする際、自己のボーナス増加は他者のリストラという犠牲のお陰だと、やや自嘲気味に言ったようにも聞こえたのは、私だけの錯覚だったのだろうか。 

しかし、一緒に視聴していた家人の反応からしても、あながち私の独断だとばかりには思えない。

江戸時代の儒者 伊藤仁斎には「貧しきことを患(うれ)えず、均(ひと)しからざるを患う」という言葉がある。この言葉には件の男性の心根に相通じるものがあると思うのだが、為政者や企業経営者たちにこそよくよく心して頂きたい言葉だと思う。

現在、非正規労働者を中心に、国民の間に蔓延する将来への不安や現在の生活への不満・不平を齎し、社会全体の安定を乱す要因となっている格差社会への警鐘と受け止めるべきではなかろうか。

それにしても、この番組の中で、上記回答の内容の深刻さに一言も触れることが無かったのはどうしたことだろうか。 社会の木鐸たるジャーナリズムを標榜するマスコミとしてはどうなのだろうか、思う次第である。 
     
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