2006年08月02日

暗部だらけの「芦原病院問題」

  毛馬 一三
 <日本一のメルマガ「頂門の一針」520号に掲載>                            

大阪市の關淳一市長が一期目の任期途中で突如辞任したその主たる原因が、不明朗と批判を浴びた「芦原病院問題」処理だったことは記憶に新しい。しかし市民の禊を受けたと自ら称して再選された筈の同市長だったが、再選後も今もってその揺れ戻しに見舞われ、この8月には自らも含め処分を明らかにする事態に追い込まれるなど、今後どうなるのかまったく予断を許さない。

さて、大阪市の南部に位置する浪速・西成地区は、戦後、医療施設が無い状態が続いていた。
「地域に医療施設を」という被差別部落の住民の切実な願いに答える形で昭和38年、大阪府や市の援助を受け、「芦原病院」は開設された。

地域医療の拠点と位置づけられた「芦原病院」。しかし病院の経営は苦しく、開設からわずか数年で赤字に陥り、行政の支援無くしては、存続すら危うい状況が続いた。

昭和55年、大阪市は年間で億単位の「特別貸し付け」と「補助金」の支給を始める。特別貸し付けは無担保で実施されるもので、これまでに130億円以上が貸し付けられている。
補助金も、運営費の補助や施設の備品購入のための補助など多岐にわたり、総額は190億円に達する。中には当初の目的と違う使われ方をした金もあったという。

破格の支援は平成に入っても続き、芦原病院はまさに「同和行政のシンボル」と呼ばれた。
平成14年、芦原病院に最大の転機が訪れる。同和対策事業の推進を定めた国の法律が終了したのだ。
これを受け、大阪市会は、「芦原病院の抜本的な経営改善を断行せよ」と、病院の支援のありかたを見直すことを求めた付帯決議を出した。

「これまでのような支援を続けるわけには行かない」。大阪市は年間5億円前後あった特別貸付金を徐々に減らすことを決定。平成16年度末で融資は打ち切られた。また、補助金についても平成17年度末でストップさせることを決めた。

病院側は、採算が取れていない診療科目を廃止したり、職員を削減したりするなどして経営改善を一応試みてはみたが、資金繰りはすぐに行き詰まった。それまで大阪市の支援に頼り切りになり、経営改善に一向に手を付けなかったツケが一気に吹き出したのだ。

こうした状況の中で、激震の原因となった大阪市の「病院延命策」が実施されたのだ。

平成16年、それまで病院に毎年融資しつづけてきた「みずほ銀行」が、融資に難色を示した。病院が破たんし、融資が回収できなくなる恐れを危惧したからだ。大阪市は何とか銀行に融資してもらおうと、「迂回融資」という「奥の手」を使った。

「迂回融資」とは、銀行が病院に直接お金を融資のではなく、表向き、「財団法人医療事業振興協会」という、大阪市の外郭団体に融資する形を取る。その財団法人医療事業振興協会は、銀行から金を受け取ると即座に、こともあろうか大阪市健康福祉局長名義の「個人口座」に振り込む。そしてこの「局長個人口座」から芦原病院へと「金」が流れたのである。

さらに、このお金を銀行に返済する時にも、不透明な手続きが断行された。其の時は別の外郭団体「大阪市社会福祉協議会」が利用されている。大阪市は架空の補助金をでっち上げて、「社会福祉協議会」に補助金を支出。社会福祉協議会は、この金をすべて、先ほど登場した健康福祉局長名義の個人口座を経由させて、銀行に返済したのだ。

このように大阪市は、表面上、芦原病院への支援を打ち切る姿勢を見せながら、裏では秘かに病院に金を流し続けていた。実に手の込んだやり方が横行した訳だ。

こうした“努力”も虚しく、芦原病院は去年(平成17年)12月、民事再生法の適用を裁判所に申請、経営破たんした。

大阪市がなぜ芦原病院のためにここまで不正に手を染めたのか、未だ明らかになってはいない。
担当者は口をそろえて、「芦原病院が無くなれば地域医療がなりたたなくなるから」と弁明するが、それは過去の時代の話であり、現在は浪速・西成地区にも多くの病院は存在する・・として税金の無駄使いそのものではないかと指摘する声が多い。

芦原病院は、一般の病院に比べて職員が多く、人件費が経営を圧迫してきた。
さらに、病院職員が4000万円を着服したり、現金1900万円を「誤ってシュレッダーに掛けた」など、常識だは到底理解出来ない、ずさんな内実も明らかになっている。

大阪市会は、民生保健委員会や市政改革特別委員会を」を8月の休会中にも頻繁に開いて、事実の解明と關市長の責任問題を厳しく追及していく構えだ。

行政の支援に頼りっぱなしで、改善努力も不十分だった病院を、なりふり構わず支援を続けてきた大阪市。大阪市を揺るがせている芦原病院問題は、大阪市の「歪んだ同和行政」のまさに究極の形そのものである。
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