石岡 荘十
3月20日発売の週刊現代が「スクープ!隠された『本当の病状』」と題して、金澤一郎皇室医務主管によるオフレコ会見の内容を公開している。記者会見は今月4日午後、宮内庁の隣にある蓮池参集所で新聞・テレビ・通信社など皇室担当記者50人が出席して行われたという。
金沢医務主管は、術後の記者会見で「術後のさまざまな出来事があったが、想定内であって、すべて改善の方向に向かっている」と順調に回復したかのような発言をしていたが、実はそうではなかった、というのである。
金澤医務主管のオフレコで、
<手術中に胸水がたまっているのは分かっていた>と発言したと同誌は書いている。
これは、新しい情報だ。ならば「ドレーンは入れたのか」と記者はここで訊くべきところだが、そんな質問は出ていない。
「ドレーン」は、胸を開けたバイパス手術(開胸手術)をした場合、術後胸に溜まるかもしれない水や、じわじわと滲み出す血液を体外に排出するため、あらかじめ胸骨の下に入れて体外に出しておく管のことで、多くの外科医が、1本(場合によっては2本)入れておく。
13年前、筆者が心臓手術(大動脈弁置換手術)を受けたときには、ドレーン2本を入れ、3日後に抜いた経験がある。
また、<(術後)穿刺(注射針で水を抜く治療法)は感染症を起こす可能性があるのであまりやりたくなかった。(中略)議論の結果、やらないことになりました>と金澤医務主管が述べたと同誌は報じている。
そうこうしているうちに、3月11日の震災追悼式典が間近に迫ってくる。このままでは陛下は出席できない。7日、追い立てられるかのように穿刺に踏み切った。さらに、20日、2度目の穿刺が行われた。
術後の患者のケアは東大病院循環器内科が受け持つが、穿刺に伴う感染症のリスクは、外科医による開胸手術のリスクとは比べものにならないくらい小さい。金澤医務主管の発言は、東大が臨床についていかに自信がないかをさらけ出したものだ。
手術では天野篤順天堂大学教授がdecision makerだから、天野教授が「ドレーンは必要ない」と判断したことになる。
しかし、7年前まで現役の心臓血管外科医だった木曽一誠医師(慶應大学卒・『介護老人施設しらさぎ荘』栃木県)は「天野先生は自信があるのか、胸にはドレーンは入れていないようだが、ドレーンを入れていれば術後の胸水はなかった可能性は十分あります。結果としてこれは失点というべきでしょう」と批判している。
週刊現代は、「思ったほど術後の経過が順調でない」ことを以って、「スクープ!」とぶち上げているが、このあたりがいかにも“週刊誌的”である。
そもそも、術後の患者の経過について医学的な”常識の無い“宮内庁担当の記者の能力で報道するのは無理だ。蟷螂の斧で隆車に立ち向かうようなものだ。ちゃんとした専門知識のある記者が、東大循環器内科の責任者に訊かなければ、真実は明らかにならない。
20120322
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