紀ノ本 晶子
〜私を学ばせたエチオピア〜
ゴザでは出産は家でというのが当たり前です。地方都市でも出産は家でというのが、メインのようでした。クリニックが始めた無料の妊婦健診や子供のワクチン接種の日は、山のように人が訪れます。半日で100人以上の妊婦さんの健診や200人もの赤ちゃんのワクチン接種をしたこともありました。
なのに、クリニックで出産に出会ったのはたったの2件だけでした。多くの母子が衛生の概念がなく、自宅で子供を産み、感染をおこしたり出血で命を落としているようで、母が死んでしまった赤ちゃんが死んでしまったなどよく聞くことでした。また、自分で人工流産させようとして、感染を起こして亡くなったりすることもあるそうです。
私は、自宅で分娩した後30分以内に出るであろう胎盤が出ず、数日して運ばれてきたときには「へその緒」も切れてしまっていて(引っ張ってちぎれてしまったのだと思われます)無く、膿のようなものが出血と混じって出てきていた人にも出会いました、
遠くの病院に搬送されて会陰切開を受けた後、縫合はしてもらっているはずなのに、その糸もなく、ぱっくり傷は開いたまま化膿して来る方などに出会いました。トラブルの処理に来るのだけれど、病院は「最後の手段」のようで大事に至ってからが、ほとんどなのでした。
ゴサでは、一家に子どもが10人以上いることはよくあることで、(国全体では1人の女性は平均5.9人、地方都市では7.7人の子供を出産するといわれていました)ここでは子供が産めること、それが女性のステイタスなのです。12〜3歳くらいから40歳代までの妊婦さんが来ます。(もっとも人々は年齢を知らないので、何人子供がいるから何歳ぐらい、という換算だそうです)。
家の中で一番偉いのは父、その次は家畜(財産なので)、その次は家畜の世話をする子供、その次がその子供を産む母、というのが現実なようで、男性は豊かなほど、たくさんの妻をもっているようでした。
子供たちのワクチンの必要性を説明するのに、「どうして家畜にワクチンをするの?」、「病気にならないように」、「じゃあどうして、自分の子供が病気にならないようにワクチン受けさせないの?」、「あ〜そうか〜」といった調子のやりとりがあるそうです。
ゴサでは親は子供をかわいがっていましたし、物乞いをする子供たちもいませんでした。土地が豊かなことと、誇り高い民族であること(とても我慢強く、家の爆発?で足の肉まで見えているようなけがを負った子供に消毒など処置しても、我慢して声ひとつあげないのには驚きました。もちろん出産のときもです)、幼稚園・小学校・クリニックなどの教育もその理由にあるのかもしれません。
多くの子供がいても、貧しくても、子どものことを大切にしている姿はほほえましく、どこの国でどんな状況であっても、そうであってほしいと本当に思ったものでした。
また、何人も子育てしているのにもかかわらず、赤ちゃんが泣くとあたふたする様子が、なんだかおかしかったです。(あちらの赤ちゃんはずっと毛布?布きれ?に包まれておんぶ・抱っこされていることがほとんどなので、普段あまり泣かないのだと思います)。
でも少し町に行くと、親は身なりが良くても子供は骨と皮のよう、ということも時々ありました。(1歳7か月で5.4kgしかない、5〜6歳で12kgということもありました。)栄養失調で入院、ということもありました。(つづく)
(助産師・保健師)