2006年12月17日

◆仏の顔も3度


               毛馬一三

3知事逮捕の官製談合が摘発されたばかりなのに、今度は大阪府で「裏金」問題が発覚、またもや露呈した自治体の不祥事に眉を顰める人が多い。公金を「裏金」に摩り替えた金額は、15日現在府庁10部局で、既に使われた1338万円を含め約3413万円に上るといわれる。まだ増えることは確実視される。

広辞苑によると「裏金」とは、<取引などを有利にとり運ぶため、表向きとは別につかませる金銭>といわゆる賄賂のことを指しているが、不正な金の運用であることは同義であっても、この場合若干ニュアンスを異にする。つまり府庁各部局に予算化された公金を、カラ出張やカラ残業などの偽装支出で捻出し、秘蔵プールした「影の金」のことだ。

報道各社は、この「裏金」問題を97年度に発覚した13億3300万円に続く2度目の事件としているが、それは違う。本当は3度目なのである。1度目は、80年に府水道部で起きた。市町村から徴収した水道供給料金からカラ出張費名目などで5000〜6000万円近い「裏金」を捻出、概ね幹部職員の飲食代や接待費に供された。

この時出納を担当する総務係員の内部告発で事件にまで発展し、それ以来「裏金」が自治体の不祥事用語として認知される不名誉なキッカケとなった。しかし、最初のこの「裏金」事件は、その職にいた幹部が巧妙に仕組み専ら私的に共用したものだったため、組織としての府の責任を追及される事態に発展はしなかった。

このことが罪悪感を府庁内に定着させない原因に繋がり、その結果先述の2回目の「裏金」事件と結びついていったのである。

2回目の「裏金」事件は、巧妙に仕組まれた。当時存在した府営「国際ホテル」を拠点にして、各部局がカラ出張・カラ残業で捻り出した「裏金」を集められ、ここから出金された。当時は国庫交付金が自治体の財政基盤を支える時代で、このために国の役人接待が行われ、陳情先の各省庁の担当者へ手土産用としてビール券・商品券などが運ばれたと、府庁幹部OBが証言する。

「我が口を癒す裏金ではなく、府民を守るための秘蔵金」という感覚で公然と組織を挙げて行われたという。とは言いながらその陰で、深夜帰宅のタクシー代、食事代、転勤お祝い金、激励会費などにも供していたのだから、いかに綺麗事を並べ立てようとも、納税者意識とは完全にズレていたかが分かるというものだ。

この事件が発覚すると横山ノック元知事は、管理職全員による13億3300万円の「裏金」全額返還を求めた。このため大阪府職員互助会が翌年全額を肩代わりして府庁に返還。以後、部長クラスが200万円、課長クラスが100万円、係長クラスが80万円、一括または03年までの分割で大阪府職員互助会に返納したのである。

その13億3300万円の「裏金」枠に組み入れられず、部局の金庫に隠し置かれた秘蔵金が今回対象となった3回目の「裏金」だった訳だ。なぜ2回目の摘発の折にそれが漏れたのか、全貌は調査結果を待つしかない。タクシー代や親睦会費用に使ったと説明している部もあるが、局によっては「裏金」の残滓とは気づかなかったと言っている。しかし局の片隅の小さな金庫の中に積まれた分厚い札束の正体を、何年も庶務担が知らないでいられる筈はない。嘘にきまっている。

今回は、紛れも無く各部局で隠蔽工作が行われている。しかも2回目からわずか7年しか経っていない。最終的に弁済が完了してからはまだ3年しか経っていないのだ。許される筈のない組織的犯罪だったと、昔話をするほどの時間も経過していない。

「仏の顔も三度」、一向に止むことの無い「裏金」事件の続発に、府議会の批判は強まっている。「横山元知事時代の名残で、私には関係ない」との素振りが見え隠れする大田房江知事の対応に、憤慨する議員も多い。

そういえば、府内部の改革より、他府県に先んじる先駆的な事業推進を好む知事に、この「裏金」の実態を悉く明らかにする胆力と行動力があるだろうかと、かって身を挺して行った府政運営に関する諌言を、「わたしのテーマにあらず」と一蹴された経験のある府特別職OBも、知事の実行力を疑問視する。

だとすれば、「裏金」問題を払拭するには、職員による「告発」を待つ以外に方法が無いというおぞましい時代に入っていくのだろうか。何にしてもこれからは、官製談合といい知事が試される時代というのは、確かなようだ。
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