2006年12月18日

◆厳しい仁坂新県政の前途


                  毛馬一三

談合事件で逮捕された前の知事が辞職したことに伴う和歌山県知事選挙は、17日の投票の結果、自民・公明両党が推薦する元経済産業省製造産業局次長の仁坂吉伸氏が初めての当選を果たした。が、投票率は35、21%と前回04年知事選の37、29%を下回って過去最低となり、県民の3人中2人が投票を忌避、「出直し選挙」による県政建て直しに不信感と突きつけたのだ。

<開票結果は、
(当) 仁坂吉伸 無新195719
    泉 敏孝 無新 90680>
仁坂氏は記者会見で、「談合の再発が絶対起こらないような仕掛けを作るのが、私の第一の使命」と語り、専門家による「再発防止のシステム」を検討することを力説した。

だが、今回の「出直し選挙」に向けた県民の目は厳しかった。木村良樹容疑者が地元和歌山県民の利益に名実共に反する談合に狂奔する「落下傘官僚知事」だったことから、選挙当初から仁坂吉伸氏の経歴に鋭い目が注がれた。確かに和歌山生まれではあったが、30年間は地元を離れ地元とは何の所縁もない知名度ゼロに等しい候補者だったからだ。所詮木村容疑者と何等変わらない「落下官僚傘官僚」にしか県民の目には映らなかったのだ。

その点を意識したのか、同氏は「全身全霊で和歌山県政を立て直す」と連呼しまくったが、実際「地べたを這い、ひとりで駆けずり回る改革闘士としての熱意と行動力」を見ることはほとんど無く、結局選挙の全面的な取り仕切を行ったのは、自民党関係者だったことが有権者には透けて見えた。

つまるところ木村容疑者と同様、肝心の票固めは政党に「丸抱え」してもらい、木村容疑者時代暗躍した建設業界ですら表面上自粛の格好を取りつつも、水面下では指令が飛ばして仁坂氏支援を積極的に動いていたことが、バレていた。大阪ゼネコン関係者もその事実を肯定する。

今回は、民主党のだらしない立候補見送りで、県民総がかりの「出直し選挙」に仕立てたいという県民の悲願も裏切られ、結果的には木村時代と変わらない県政を再現してしまつたのではないかと悔やむ関係者は多い。

今回の「選挙」は政党の主導と、地元主力産業の建設業界が影で支援するという懲りない構図が繰り返されたが、脇が甘いと極評される官僚出身の新知事が、選挙支援の「見返り」を決然と撥ね付けることが出来るだろうか。

たしかに木村容疑者と違い、野望の度合いも当初から仕組まれた刎頚の友もいないようだ。しかし和歌山で死活を掛け虎視眈々と新知事取り入ろうと狙っている業界有力組織が、摘発された業者以外に依然現存していることは紛れも無い事実だと、先のゼネコン関係者は証言する。

「選挙」は、何度もいうが怖い。金と労力を提供した側の論理と行動は、純粋培養の官僚世界で泳いできた小手先の屁理屈と書生的潔癖さだけの処世術で対処出来るものではない。彼等は命がけでやってくる。その攻勢を、エリートコースを歩んできた仁坂氏が、福島・和歌山・宮崎の3知事と同様の落とし穴に嵌ることなく、大胆な知力と胆力で問題の「見返り」の要求を撥ね付けことが出来るだろうか。

おそらく期待薄しと判断した結果が、今回の投票率として反映したものであり、仁坂氏への冷淡な県民の意思表示だったと見るのが正しい。

新知事の弱点が、地元との人脈と地縁の無さであることは、木村容疑者と極似している。
しかし極似しているとはいえ、和歌山県の総務部長を経験したことがある木村前知事は、世間とは多少の誼はあった。にも関らず、「談合と金策の相棒」にゴルフ場の元代表を頼みとしなければならなかったことを考えると、人脈と地縁の無さが木村前知事の墓穴を掘ったことに違いはない。

だとすれば、人脈・地縁を決定的に欠く新知事の成り行きは、前知事となんら変わらない道筋をたどることも予測されないことではない。新知事が公約通りの行動を実践出来るかどうか、訝しがる目線の方が各方面で強い。06、12、18

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