2014年03月15日

◆「台湾よさよなら」論考

Andy Chang


シカゴ大学のミアシャイマー(John Mearsheimer)政治学教授が最近「台湾よさよなら(Say Goodbye to Taiwan)」と言う論文をTheNational Interest 雑誌に発表して大きな反響があった。台湾の現状とはアメリカが覇権国を維持している間だけで、長期的には中国
が台頭して中国に併呑されると言う予測はショッキングである。

ミアシャイマー論文に対する反論は、The Diplomat誌の副主筆Zachary Keckの的確な反論を含めいろいろな人が反論を書いたが、将来のことは未確定要素が多いので誰が正しいかを議論する必要はない。私の感想ではミアシャイマー論文は世界政治の分析に優れて
いても台湾人の存在が考慮されていないことだ。台湾の将来は台湾人が決めなければならない。

●ミアシャイマー論文の要約

ミアシャイマー論文の要旨は、世界の歴史は覇権国のせめぎ合いであり、最強の覇権国は常に第二の覇権国の堀起を抑止する運命にあると言うことだ。アメリカは20世紀初頭のドイツ帝国の覇権台頭を叩きつぶし、その次にヒットラーと日本の覇権台頭を叩いた。アメ
リカが最強国を維持できればよいが、衰退すれば次の覇権国が覇権の分割を狙う。

アメリカが衰退すれば中国覇権が台頭する、今の中国はアメリカと戦う力はない。しかし長期的に見れば中国がアメリカと同じぐらいの覇権国となり、アメリカはアジアの覇権を中国に譲るだろうと予測する。その時にアメリカは台湾を見捨てることになると言う。

ミアシャイマーは中国の台頭に対して、台湾には三つの選択があるという。第一は台湾が核爆弾を保有すること、核を保有すれば中国も武力侵略を躊躇う。第二は台湾が中国の武力侵攻に多大な損害を与えうる防衛力を持つことである。第三は台湾が香港方式で中国の
属国かすることであると彼は分析している。

しかし、とミアシャイマーは分析を続ける。第一の核保有について、台湾は70年代に核開発をしたがアメリカがこれを発見して計画を潰した。核保有はアメリカの核の傘から離脱を意味し、中国も台湾の核保有に反対だから不可能である。第二に、台湾が中国の侵攻に
大きな犠牲を齎すだけの武力を持つにはアメリカの援助が必要だが、アメリカが衰退すれば台湾を見捨てるかもしれない。しかも中国の武力侵攻は台湾が戦場になることだから台湾人の犠牲は大きい。だから結論として台湾に残る選択は第三の香港方式であるとミアシャイマーは述べている。これは最も犠牲の少ない方式だから、長期的
には「台湾よ、さよなら」という結論である。

●Zachary Keckの反論

ミアシャイマー論文について、Diplomat誌の副主筆、ザッカリー・ケックは早速以下の理由をあげて反論した:

(1)中国がアメリカを凌ぐほど強くなるというミアシャイマー論文の前提にはかなり疑問がある。中国の繁栄は既に限界に達しており、国内にも多くの問題を抱えている。中国がいくら強大になってもアメリカと対等に戦えるほど強くはないだろう。
(2)台湾人アイデンティティの台頭を引き起こし、中国の併呑に強い反対運動が起きる。こうなれば中国の台湾併呑に大きな障害が起きる。現在でも台湾人の反中国、反併呑は強烈である。
(3)東亜諸国が中国の台湾併呑を黙視することはありえないし、アメリカには台湾関係法があるので台湾防衛に尽くすことは予期される。
(4)中国の併呑が現実に近くなれば、台湾が核保有を選ぶ可能性のほうが香港方式で中国の属国化するより大きいだろう。

●ミアシャイマー論文の考察

ミアシャイマー論文は国際政治の観点と分析でかなりの説得力がある。しかし、ミアシャイマー本人も16世紀のトーマス・ホッブスの言葉を引用して「現在の事象のみが実在する。過去に起きた事は記憶に残るだけで、将来の事はもともと存在していない」と言う。将
来の予測は予測に過ぎず、将来彼の予測が正しかったと言われる証拠はない。但し、ミアシャイマー論文がアメリカと台湾に警告を与えた事は否めない。ケック氏の反論も然りである。以下は私の考察である。

(1)中国の台湾併呑は武力に拠るのではなく、人口侵略と文化侵略である。中国人が政権を握っているかぎり、台湾人は中国人の大量移民に反対も出来ない。台湾人が中華民国を容認している限り、中国の人口侵略と文化侵略は止まらない。台湾人にはアイデンティ
ティの欠如と、中国人支配に抵抗する行動力がないから、長期的に見れば必然的に台湾は併呑される。

(2)中国の台湾併呑に反対するには台湾人の覚醒と団結が大切だが、台湾人は勝手な主張が多いうえに目標が定まらず団結しない。主張が明確でないから漢民族思想の文化侵略を防ぐことも出来ない。これが台湾人の致命的欠陥である。

(3)中国の覇権拡張には台湾を併呑して太平洋に進出することが必要である。台湾が中国に併呑されれば日本、フィリッピンなどの東亜諸国は中国の覇権に取り込まれる。中国が強大になればアジア諸国の連合が必要になる。

(4)アメリカが台湾を放棄すれば中国の太平洋進出を阻止できなくなってアメリカはハワイまで後退する。このような事態になる前に諸国連合で中国に対抗する動きが出るのは当然で、私がこれまで何度も主張してきた東南アジア平和連盟(PASEA)の締結を急ぐべきである。

(5)ケック氏が指摘したように中国が将来アメリカよりも強くなるとは限らない。アメリカの現状は、ミアシャイマーが論文で大幅に省略した、朝鮮戦争に勝てなかったアメリカと、ベトナム戦争に負けたアメリカの精神的な落ち込み状態と似ている。だがベトナム戦争に負けたアメリカは立ち直ったではないか。アメリカの衰退はオバマに半分以上の責任があると言われている。オバマの任期はあと二年だが、オバマのあとアメリカが衰退を続けるか、復興するかは将来の大統領と国会にかかっている。

台湾が中国の併呑から逃れて独立建国を果たすには、何よりも中華民国を打倒し、台湾国を世界に認めてもらうことである。民進党が選挙に勝って政権をとっても中華民国は変わらない。台湾国が存在しなければ国連加盟はできない。

あるグループは台湾が永久中立国になることを主張しているが、国がないのに永久中立を主張しても誰も認めてくれない。台湾が独立建国を果たす以外に方法はない。ミアシャイマー論文で台湾人が覚醒し団結して中華民国打倒に努力するよう期待したい。

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