2014年05月05日

◆「核」が日中開戦を抑止するK

平井 修一


(承前)兵頭二十八氏の論考「日本有事 憲法を捨て、核武装せよ!」から。

              ・・・

「東で声をあげると同時に西へ殴り込め」というフェイント作戦を重視した標語がシナには昔からある。シナが台湾に軍事圧力をかけて併合してやろうと企む場合、米軍を台湾にかけつけさせぬよう、北朝鮮兵をして各地で米軍を攻撃せしめ、米軍を半島に吸引させるというプランを中共はずっと考えてきた。

そのために、米軍にとり沖縄以上に重要な西太平洋の基地、グアム島に(中朝国境の)鴨緑江付近から発射して攻撃する射程の長い地対地ミサイルの開発で北朝鮮を支援してきた。

グアムにも届くような弾道ミサイルを、その半分以下の射程である日本の大都市や在日米軍向けで発射する場合は、余ったエネルギーでミサイルの到達高度を高めることができる。テポドン1は300キロが最高だが、それ以上に上昇させることができる。

そうなると、海自が米国から調達する迎撃用のSM3ミサイルは、これまでの実験では高度137キロで標的に命中させた実績が最高だから、ほとんど対処はおぼつかないだろう。

シナは、米国東部を攻撃できる長距離核ミサイルを20基、モスクワなどを破壊できる核ミサイルを10基ほど持っている。この数は1990年代からほとんど増えていないが、その理由は「オプション最大化戦略」にある。つまり「今は持っていないけれど、これからいくらでも増すことができる」という手段を取引材料として、米露のような大国から利益を引き出すのが得策だと考えているからにほかならない。

シナがアメリカ向けのICBM(大陸間弾道ミサイル)をさらに30発、40発と増やすのは、予算的には造作もない。が、そうされればアメリカとしては国防計画を大幅に見直さなければならない。巨億の予算措置が必要になり、米国政財界はてんやわんやになるであろう。

北京は「その膨大な負担と面倒を免除してあげましょうか」と米大統領スタッフにささやきかけることで、アメリカからシナに都合のよい外交的譲歩を引き出すことに成功しているのだ。

ちなみにシナの核戦力は、米国に配置がことごとく把握されている。もし米国からの正確な核攻撃を受ければ半日で武装解除されてしまう。したがって、脅しになるのはシナから先制発射する一斉射分だけなのだ。だがそのわずかな数量でも、アメリカの20の大都市の人命を人質にとれるのであるから、アメリカ大統領の日本防衛の意志を縛るには十分である。

かつてのソ連のように、やみくもに核戦力での対等を目指して米国を刺激するのは下策と見、「最小限の核武器を最大限に政治的に利用するべきだ」というのが、目下のシナ政府の判断だ。

太平洋の米軍の大根拠地であるグアム島やハワイを核攻撃しなければならなくなった場合には、シナはミサイルを鴨緑江に近接させて発射させるであろう。北朝鮮が発射したものか、シナが発射したものか、わざとわからなくして混乱を誘うためである。

中共の核武装が明瞭に予見されたのは1963年であった。翌1964年、東京オリンピックで世界の関心が極東に集まっているさなかの10月16日、彼らは原爆実験成功を声高らかに発表した。

東京五輪は、日本が戦前並の先進国の地位への復帰を世界から公認された象徴的イベントだった。日本政府は当然、専制シナの核武装を受けて、マックKEMPOHを廃止することができたし、そうすべきだった。アメリカ政府も60年代の初めから「9条」の廃止と、リアルな同盟軍化を日本に欲するようになっていた。

しかし戦前の官僚上がりの自民党の領袖たちは、1967年6月17日のシナの第1回水爆実験を聞いても、また1971年に東京を狙った弾道核ミサイル「東風3号」の満洲への実戦配備の写真をワシントンDCで内々に示されても、有権者の説得をしようと決意することはなかった。

日本はそのGNPに見合った重武装を嫌った。これは、公平で安定した自由世界に関する無関心・無責任を意味していた。庶民が無知なのはありかも知れないが、国家指導者層の無関心は道徳的に許されない。

米国指導者層は徐々に「侮日」に転じた。北京はキッシンジャーのようにもともと日本を嫌っている野心家を歓待して籠絡した。米国は対ソ戦を有利にするために中共との部分同盟を選ぶ。これはもちろん、かつてのスターリンとの同盟に次ぐ、米国外交の理想からの後退であるが、そうさせたのは日本人であった。

核攻撃の最大の特徴は、住民に逃げる暇がほとんど与えられないことである。核以外の空襲では逃げる暇がある。何百機の航空機を発進させるといった、大規模な準備を必要とせず、実行命令が出されたら即座に実行され、多数の都市民を殺すことが確実な大量破壊兵器であることが、核兵器を、同じ核兵器の報復蓋然性によってしか抑止できない政治手段としているのである。

核弾頭付きの巡航ミサイルが抑止力として無効なのも、敵国の有権者がその発射を察知してから隠れる時間が、最大で数時間も得られてしまうからである。巡航ミサイルのスピードは国際線の旅客機とまったく同じなのだ。

これに対して弾道ミサイルは、日本本土からシナ本土までわずか十数分で到達し、悪天候で墜落する可能性も、途中で撃墜される可能性もない。

都市に対する核攻撃の最大の特徴は、大量の火傷患者が一度に発生することだ。それがシナや北朝鮮からの核ミサイル攻撃によって何万人発生すると見込まれるかをケースごとに知っておくことは、防災上も必須である。

威力は10キロトンか、20キロトンか、飛距離は福岡までか、大阪までか、東京までなのか・・・こうした変数の組み合わせごとにリアルなシミュレーションがなされていないならば、有事に最善の国民保護ができるわけがない。

ところが日本政府がそんな試算をしたとは聞かず、誰かが政府にその調査を求めたという話もない。マスコミも政府に質問せず、さりとて自社で研究しているわけでもない。

マックKEMPOHを暗誦している限り、日本人のサバイバル能力は果てしなく失われ続けるであろう。
・・・

平井:この項は終わりです。次回は田母神俊雄氏の「日本核武装計画」を紹介します。
(つづく)(2014/5/3)
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