2014年08月08日

◆子供要らない、犬で十分?

平井 修一


散歩中にいろいろな犬を見かけるが、10%はラブラドールのような大型犬、20%はわが家のビーグルや柴犬に代表される中型犬、残りの70%はトイ・ドッグとか玩具犬、おもちゃ犬とか呼ばれている小型犬だ。

オッサンは大型犬、オバサンは中型犬、若い人は小型犬を愛好している。若い人に小型犬はなぜ好まれるのか。必要な運動量を室内で十分得られるから毎日散歩させる必要がないし、食事は少量で、排便、排尿も少ないから面倒があまりかからない。

それでも十分に可愛いから癒しになるし、生き甲斐にもなる。自分の子供を持つとなったら莫大な手間と大変なお金がかかるが、今の世の中、家制度が崩壊する過程にあって、子供が果たして投資に値するリターンをもたらすかどうかは全然分からない。

かくして若いカップルは子供ではなく、その代替におもちゃ犬を1匹、2匹、時には三匹飼うのだ。「子供要らない、犬で十分」ということなのだろう。

かつてはどこの国でも一人前の社会人は結婚して子供を持つのはごく普通のことだったが、どうも普通ではなくなりつつあるようだ。小生は昭和26年(1951)生まれだが、育った環境や就職した当時の社会では、30過ぎで独身の男は「なんか気持ち悪い」などと敬遠され、普通の男女は20代で結婚し、やがて子を持つのが当たり前だった。

今の日本は全然そうではなくなりつつある。多分、世界中、というか特に先進国、中進国がそういう傾向なのだろう。

子供の代わりに犬を飼う、さらには配偶者、恋人、友達の代わりにする人も多いだろう。世紀末的というか亡国的な感じがする。

JBプレス8/5にアン・ヨンヒ氏が「恋愛も結婚も出産も、すべて諦める韓国の若者たち」を書いている。氏は国際会議の同時通訳のかたわら、梨花女子大学、ソウル同時通訳大学院大学で教鞭をとっている。以下、引用。

<韓国は夏休み真っ盛りだ。夏休みになる前に、大学院生たちに夏休みの計画を聞いてみたら、「私たちは『三放世代(サンポセデ)』ですから、勉強さえすればいいのではないでしょうか」という答えが返ってきた。

「三放世代」とは、「3つを放棄する世代」の略語で、日本の「さとり世代」と似たような言葉である。

「三放世代」の特徴は、1つ目は恋愛を放棄し、2つ目は結婚を放棄し、3つ目は出産を放棄することだ。

ちみに日本の「さとり世代」とは、最近の若者が現実を悟っているところから出た言葉で、彼らの特徴は、「欲がない」「恋愛に興味がない」「旅行に行かない」などと何もしないことを言う。

「三放世代」と「さとり世代」は少し観点は違うけれど、「どうせできないし、やっても無駄だ」という観念が大本に流れている。

現在韓国では少子高齢化問題が深刻化しており、出生率はOECD(経済協力開発機構)諸国の中で最下位である。政府は出産奨励金などを出しているというのに、当の若者たちは「三放世代」などと言い、出産から遠のいて
いる。

三放世代が3つを諦めている理由は、経済的理由が最も高く、就職している人とそうでない人とでは恋愛している率が異なる。

また、結婚費用の負担があるので、結婚もできない。結婚式だけでなく、ソウルで住む家を探すにはまとまったお金が必要になるからだ。

出産に関しては、子供は生むだけでいいのではなく養育費がかかる。養育費はそれこそピンからキリまであるので、生んだからには最高の教育を受けさせようと考えたり、韓国の教育環境に辟易していたりするので、やはり出産を躊躇する人が多い。

民主化すれば皆が幸せな国になると思われたが、現在は目に見えない差別が存在する。巧妙に仕組まれた差別を受けると、それを受けとめる側は、元々こんな感じなのかと素直に受けとめてしまう。

民主化され、平等だと言われつつ、実際は巧妙に格差を固定する仕組みに変わっているのだ。

例えば、教育においてどんどん格差が生まれている。昔は、勉強さえできれば名門大学に進学できたが、今の状況では勉強だけでは入れないと言われている。

付加価値をつけなければ名門大学には進学できなくなる仕組みになった。その付加価値こそ、お金がなければつけにくいもので、普通の学校では教えてくれない。私費を使って獲得した子供たちが有利になるようになっているのだ。

名門大学に進学できないと、大企業に就職することが困難になる。大手企業に就職できないと、中産階級にとどまることができない。

現在韓国の大学では、どの大学であれ「経営学部」を最高の学部と考える。以前なら大学によって学風も違い、好まれる科や学部は異なっていたが、現在では軒並み「経営学部」の競争率が高いというのだ。

何でも経営の合理化に基づいて考える、経営学部が優勢になっているせいで、これまでの「成長第一」論が頭をもたげ、結局、現在のような「安全に無頓着な国」になってしまったという意見もある。

三放世代は、最近「五放世代(オポセデ)」とも言われ、ますます韓国の未来を暗くしている。この五放世代とは、恋愛、結婚、出産以外に「人間関係」と「マイホーム購入」を付け加えたものである。

まだ、韓国政府は彼らに対して画期的な政策は打ち出せないでいる>(以上)

日本と状況はかなり似ているのではないか。

同じJBプレス8/5に「結婚・出産は日本人の義務であって権利ではない」を元陸将補の森清勇・星槎大学非常勤講師が書いている。以下引用。

<「サンデー毎日」7/13で「結婚や出産は義務ではなく権利だと思っている」という発言には、特に違和感があった。

この考えは正しく家族や国家を無視した現憲法の結果そのものだ。「権利」というのは唯我独尊で個人至上主義であり、国家という共同体に生きるために最小限必要な共生の概念がすっぽり抜けている。

こうした考えでは少子化は際限なく進むであろうし、当人にはロビンソンクルーソーの世界で生きるよう提言したい。

日本社会の構成員であるからには、個人の主張以前に社会の一員(成員の方が自覚を伴った用語かも知れない)として存在しているという自覚を忘れてはならないと思う。

地域や国の成員であるということは、その成員としての責任があるということではないだろうか。その責任は国家が沈没しないように、また地域社会が存続できるように努める義務を生じさせる。

少子化が最大の問題である時には、それに貢献する行動が義務として権利以上に重く考えるべきことではないだろうか。

日本は共産主義国家ではないが、貧富の差が少なく、社会主義的国家に近い。国家を国民全体が共同して背負う観点からは、健康などの問題がある特殊な場合を除き一義的にはすべての男女が家庭を築き、子供を産み育てる義務があると意識するのが基本であり、公平ではないだろうか>(以上)

まったくの正論だ。ただ、正論をいくら言ったところで「先だつものはカネ」で、ある程度の所得がない、将来も所得が増えそうにない男はなかなか伴侶を持てるものではない。

明治安田生活福祉研究所が2013年2月に実施した調査によると、未婚女性が結婚相手に求める最低年収は「400万円〜500万円」と答えた人が最多で、総務省の家計調査によると、結婚適齢期の30代前半の男性の平均年収は461万円だから、このあたりが「人並み」の年収なのではないか。

だから200万円台とか300万円台とかではとても結婚できない。「年収ラボ」によると大工さんの2013年の平均年収は336万円、土木作業員は345万円、パティシエは295万円、タクシー運転手は297万円、調理師は332万円、ケアマネージャーは367万円、普通トラック運転手は385万円。

20代から50代までの平均年収だから、30歳なら200万円台はざらだろう。女性は相手にしない。

肉体労働系の仕事は概ね収入が低いから、せめて溶接工とか旋盤工とか重機オペレーターとか付加価値の高い専門技術を身に付けないと嫁さんも子供も持てないことになる。

いいか悪いかは別として、この世は競争社会、格差社会だ。漫画にゲームにテレビに赤兵衛48・・・うつつを抜かしていると努力不足とか怠惰の報いを受ける、それどころか現実は過酷で、真面目にシコシコやっていても運が悪ければ結婚できず、種を遺すこともできない。

それでは人間としての義務を果たせないのではないか。犬ではなく子供を持って育ててこそ一人前だ。せめて嫁さんを持てるくらいの市場価値を身に付けろとアドバイスしたい。

聞く耳を持つ人はそんなことは百も承知だし、聞く耳を持たない人にはムダな話だから、まあ年寄りの冷や水、差し出がましいことと笑い飛ばしてくれ。(2014/8/7)
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