毛馬 一三
(本稿は、全国版メイル・マガジン「頂門の一針」1156号に掲載されました ー編集部)
橋下徹知事が、特別編成の「改革プロジェクトチーム」(PT)に命じて作らせた1100億円の府財政削減案めぐる攻防が、いま“一触触発”の状態だ。
知事は、就任直後から大阪府の財政危機を救う選挙公約を実現するため、知事直轄組織を設け、30歳代を中心とする選抜職員11人によるプロジェクト・PTを結成した。内外の抵抗勢力の圧力を排除するという名目で、PT職員を外部から隔絶し、担当部局との調整は勿論、上司である部局長との接触さえも禁じる徹底した秘密保持策を貫いた。
その結果、この11日に知事に提出された1100億円の削減PT案は概略下記の通りで、知事はこれを見て開口一番、「2月半ばからの短期間でよくまとめてくれた」と労をねぎらったという。
i)府職員・府警察官の人件費を「10%以上カット」し、380億の削減
i)私学助成費などの事業見直しで440億円削除
i)府単独の医療費助成・府出資法人への委託料の削減
i)市町村施設整備貸付金34億円の削減、12億円の市町村補助金を半減―などがその中味だ。
この秘密裏に作られたPT案は、同日大阪府議会各会派、府下市町村に通知された。また部局長に対してもこの日初めて提示され、この席上橋下知事は「この案はどこまでもPT案であって、自分の考えではなく、あくまで叩き台」だと強調している。
そのことは、おかしな話だ。
<きっと自分は陰に隠れ、世間の批判をかわすための「隠れ蓑」にする気だ。遡上に上げたPT案に対して、突きつけられる批判と変更要求を巧に裁きながら煮詰めていく、仲立ち役の恰好いい「裁判官の役割」を演じたいのではないか。
しかも、いくら部下作成のPT案だとしても、一旦「知事の目」を経て公開された以上、「知事案」であることに違いは無い。だとすれば自ら最重要課題としている削減案の「ご本尊」とに距離を置く姿勢を示すこと自体、無責任な対応ではないか>。
これがいち早く各方面から知事に突きつけられたPT案に対する厳しい批判だが、もっともに聞こえる。
こうした批判に加え、怒りを顕にしているのは、府下市町村。11日の開示当日に府の窓口の市町村課に府下の千早赤坂村から「24億円の一般会計予算の当村に、貸付金や補助金が削減されてしまえば、それこそ府より先にわが町が赤字再建団体になってしまう」との悲痛な訴え。府さえ生き残ればいいのかという訳だ。
府下市町村の府町村長会長は「08年度には既に補助金の歳入を見込んでおり、この案は到底承諾できるものではない」と反発、大阪府市長会長は「補助金や貸付金を削減するなら、対決も辞さない」といきり立った。
また知事選で応援した府議会自民・公明両会派も、事前の調整が一切行われなかったのは与党軽視であり、特に私学助成費、医療費助成、市町村施設整備貸付金などの削減は府政の混迷につながるのは必至だとして、知事に厳しく迫る構えだ。
余談だが、筆者が以前、「大阪船場老舗」の2代目社長から、経営は「1に才覚、2に算用、3に始末」だという名言を聞いたことがある。商いは、計画性、目的を定めて算用を計り、最後に始末(節約)するものだというのだ。
早い話、始末(節約)より、才覚による算用(増益)を先ず考えていくことが経営の基本だとの説法だった。
橋下知事は、PTに「遠慮しないで、やり抜け」と、そう伝えたという。だが肝腎のPT案は、始末(削減)が先行し、才覚による算用(増益)はその中に些かも見当たらない。
一応増収として280億円を計上してはいるが、それも府施設や土地の売却処分に頼っているだけで、本来の増益ではない。つまり企業誘致や育成、観光客誘致による集客事業の推進な事業拡大に伴う府税収入の増加への新規プランは、皆無といっていい。
橋下流によるPT案是非の攻防は、いよいよ「開戦前夜」を迎える。だが「削減」を優先させ、「増収」を後回しにした片手落ちの財政改革方針に、府民はどう判断するだろうか。(了)08.04.15
★全国版メイル・マガジン「頂門の一針」 1156号
平成20(2008)年4月16日(水)
「1156号」目次
・五輪前のバブル崩壊が明瞭:宮崎正弘
・霞ヶ関をいかにせん:平井修一
・大阪府知事、「開戦前夜」?:毛馬一三
・気になる存在・与謝野馨:古澤 襄
・命の恩人高木兼寛:渡部亮次郎
・話 の 福 袋
・反 響
・身 辺 雑 記
「頂門の一針」
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2008年04月16日
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