毛馬 一三
(本稿は、全国版メイルマガジン「頂門の一針」18日号に掲載されたー ー編集部)
大阪府の橋下知事は、想定外の初体験だったに違いない。17日、満面の笑みを湛えて府庁内会議室に入ってきた知事は、異様な雰囲気に圧倒されたのか、一瞬のうちに表情を強張らせた。
それもその筈1100億円の歳出削減試案の発表を受けて、怒りをブッケたい41市町村の市町村長本人たちが、橋下徹知事を待ち受けていたのだ。協議は冒頭から大荒れ、市町村長から猛烈な批判や罵声が飛びだすなど、会合は修羅場の様相となった。
初協議は、まず橋下知事が叩頭、市町村への補助金を45億円削減することなどを盛り込んだ直参改革プロジェクトPTが作った試案について、「修正の余地が全くないわけではないが、これくらいの目標を設定せざるを得ないと改革はできない。市町村にも少し我慢してもらって大阪府全体の財政再建を果たしていきたい」と協力を呼びかけた。
ところが知事が着席する間もなく、市町村長からいきなり「無責任なPT案は白紙に戻せ」「血も涙も無い」などの罵声が飛び出して、知事の唖然とした様子がひと際目立った。批判はよどみなく続く。
i)医療費の打ち切り案では、患者の負担増は増大。負担を引き上げるならその幅を示せ
i)府庁内部で阿修羅のごとく血を流す改革がなければ、府民に痛みは押し付けられない
i)試案通り実施されたら大阪の道路は穴だらけ、学校もぼろぼろになる。あまりにも現実離れした案で、府政の方向を間違える
i)積み上げてきたものを急にやめるというのでは、双方の信頼関係は崩壊する
i)当初予算を執行中に、削減しろとは明らかな行政のルール違反。一切協力できない
助言する府職員も知事に近寄れる雰囲気ではなく、知事はまさに「四面楚歌」。
「政治経験が長い私たちの声にもしっかり耳を貸して欲しい」とのたしなめにわれに返えった知事は、1時間にわたる批判の嵐に立ち向かうように立ち上がり一転して強気の釈明。「府民に我慢を御願いするのも政治家の使命」と持論を訴えると、感極まったのか落涙。
最後に、「福祉を切る場合もあり、削減案を白紙に戻すことはない」と、知事は当初の話と違い、自信ありげに締めくくった。
その落涙と強気の発言が交錯する知事の姿を見た首長たちは、一様に白け顔。「泣いた知事が善玉で、攻めた首長が悪者か!まるで吉本興業とおなじやな」「泣きたいのは市町村の方。泣いたら話が続けられない」と呆れた顔を返す様子が目立った。
市町村長と橋下知事との対決は今後も簡単に収まるとは思えない。知事は市町村への補助金は45億円削減だから、府下全体としてはさしたるものではと踏んでいるようだが、この認識の違いが大きな紛争の火種になることは避けられそうに無い。
補助金に依存して財政運営をしている市町村にとって、補助金は生きるか死ぬかの問題。まして施設補助や医療補助まで切られたのでは、「夕張の二の舞」にならないとは言い切れない。日々の住民生活に直結しているからだ。
PT職員は「府に合わせて歳出を見直せば、市町村も減らせる筈」とたかを括っているが、「府が止めるからといって、そうですかと従えるものではない」と府下市町の危機に無理解な若い知事に怒りをブッつける首長は多い。
財政削減の戦いは、17日から始まったばかりだが、今のままでは橋下知事が「四面楚歌」から抜け出せそうには中々なさそうだ。(了) 08.04.17
◆メイル・マガジン「頂門の一針」 1158号 平成20(2008)年4月18日(金)
「1158号」目次
・大阪府知事「四面楚歌」:毛馬一三
・自由と民主は中共の鬼門:平井修一
・宮崎正弘のチベット紀行:宮崎正弘
・クローズアップ現代の誤認識:前田正晶
・苺は聖母マリア象徴:渡部亮次郎
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2008年04月18日
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